2011年04月08日 (金)
こんにちは。
ここのところ、機能性低血糖に関わるコメントが続いてますので、復習を兼ねて、整理してみます。
機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。
易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。
ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。
境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。
そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが、2型糖尿病の特徴なので、「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」というパターンは、結構あると思います。
一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。
こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。当然、高校生や大学生は言うまでもありません。
いずれにせよ
<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。
スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分のせいぜい2~3倍くらいまでです。
糖質制限食実践中は、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われるので、通常は基本的に適正血糖値が保たれます。
ちなみに脂質は、インスリンを分泌させません。タンパク質は、ごく少量インスリンを分泌させます。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。
診断は、75g経口ブドウ糖負荷試験で行います。
通常、糖尿病の診断のためには空腹時に開始して、ブドウ糖を服用後2時間までの血糖値を測定します。機能性低血糖症の場合は、ブドウ糖服用後5時間まで血糖値を検査します。
機能性低血糖症の場合、負荷後30分で120~140mg程度に上昇した血糖値が、60分で60mgになったりします。これだと眠気も来そうですね。さらに4時間後とかに40mgとかまで下がることもあります。
血糖値が40mgなら明らかな低血糖ですが、60mg以上あって正常範囲でも、血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。
また、空腹時の検査開始時血糖値より20%以上、負荷後血糖値が下がる時点があることが多いようです。
例えば負荷前空腹時血糖値が90mgくらいで、ブドウ糖負荷後4時間で60mgとかになります。これで33%下がってますね。
本来血糖値が正常になれば、インスリン追加分泌も即中止になるはずなのですが、出過ぎた場合と遷延した場合には必要以上に血糖値が下がります。
ともあれ5時間の「75gブドウ糖経口負荷試験」って、患者さんもスタッフもちょっと大変なので、高雄病院では実施していません。だいたいは問診で見当がつきますし・・・。
大多数の機能性低血糖症が、糖質制限食で改善する可能性が高いと思います。
江部康二
ここのところ、機能性低血糖に関わるコメントが続いてますので、復習を兼ねて、整理してみます。
機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。
易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。
ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。
境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。
そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが、2型糖尿病の特徴なので、「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」というパターンは、結構あると思います。
一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。
こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。当然、高校生や大学生は言うまでもありません。
いずれにせよ
<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。
スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分のせいぜい2~3倍くらいまでです。
糖質制限食実践中は、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われるので、通常は基本的に適正血糖値が保たれます。
ちなみに脂質は、インスリンを分泌させません。タンパク質は、ごく少量インスリンを分泌させます。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。
診断は、75g経口ブドウ糖負荷試験で行います。
通常、糖尿病の診断のためには空腹時に開始して、ブドウ糖を服用後2時間までの血糖値を測定します。機能性低血糖症の場合は、ブドウ糖服用後5時間まで血糖値を検査します。
機能性低血糖症の場合、負荷後30分で120~140mg程度に上昇した血糖値が、60分で60mgになったりします。これだと眠気も来そうですね。さらに4時間後とかに40mgとかまで下がることもあります。
血糖値が40mgなら明らかな低血糖ですが、60mg以上あって正常範囲でも、血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。
また、空腹時の検査開始時血糖値より20%以上、負荷後血糖値が下がる時点があることが多いようです。
例えば負荷前空腹時血糖値が90mgくらいで、ブドウ糖負荷後4時間で60mgとかになります。これで33%下がってますね。
本来血糖値が正常になれば、インスリン追加分泌も即中止になるはずなのですが、出過ぎた場合と遷延した場合には必要以上に血糖値が下がります。
ともあれ5時間の「75gブドウ糖経口負荷試験」って、患者さんもスタッフもちょっと大変なので、高雄病院では実施していません。だいたいは問診で見当がつきますし・・・。
大多数の機能性低血糖症が、糖質制限食で改善する可能性が高いと思います。
江部康二
お忙しいところ、アドバイスありがとうございました。
昨日 コメントさせていただいた せいこです。
ひどい空腹感、体中汗だくになるほどの発汗は機能性低血糖症によるものだったのですね。
機能性低血糖症についても 本文で取り上げていただき、
機能性低血糖症のことが 良くわかりました。
私も、スーパー糖質制限をしていた頃は、機能性低血糖症にはなりませんでした。
やはり、スーパー糖質制限食に戻します。
これまでの私は、糖尿病に関する知識が全く無かったのですが、
これからも江部先生のブログを愛読させていただき、知識を深めてまいりたいと思います。
真摯な先生の文章には いつも癒されます。
ほんまに、おおきに。
ありがとうございました。
昨日 コメントさせていただいた せいこです。
ひどい空腹感、体中汗だくになるほどの発汗は機能性低血糖症によるものだったのですね。
機能性低血糖症についても 本文で取り上げていただき、
機能性低血糖症のことが 良くわかりました。
私も、スーパー糖質制限をしていた頃は、機能性低血糖症にはなりませんでした。
やはり、スーパー糖質制限食に戻します。
これまでの私は、糖尿病に関する知識が全く無かったのですが、
これからも江部先生のブログを愛読させていただき、知識を深めてまいりたいと思います。
真摯な先生の文章には いつも癒されます。
ほんまに、おおきに。
ありがとうございました。
2011/04/09(Sat) 06:28 | URL | せいこ | 【編集】
お久しぶりです。以前、糖質制限を知ってダイエットのためはじめ、最初から調子よく体重が落ち、
あれよあれよと言う間に10キロ今日体重が落ち、成功と思った矢先、食事の量初め、食べているものも
全く体重が落ちたときと同じ物を食べていたんですが、じわりじわりと元に戻り、半分戻ったくらい
のときに先生に相談し、食べ過ぎているかもと言われ量を減らしても体重は増える一方。これしかないと
思っていた方法だったので途方にくれ、また、ネットでダイエットを調べたら、炭水化物を減らして
痩せるのは、男性で女性は一度痩せてもリバウンドする人が多いと言うのを何箇所か見つけ、また
いろんな方法おにぎりダイエット(頭では糖質だからやせるはずはないと思いながら)やってみたりで、
結局もとの木阿弥(それ以上かもしれません。怖くて体重が量れなくなりました。)
やってはいけないと分りながら食べたものを戻したりすることもありました。(罪悪感バリバリ)
しばらく、江部先生のブログも覗かずにいました。
でも、頭にはずっと糖質制限しかないって分っているのに、もう1回始めて痩せなかったら
どうしよう・・・これ以上に太ったらどうしよう・・・と言うことが頭によぎり、なかなか踏み
出せないでいました。
でもやっぱり痩せたいです。痩せれたときはすごく幸せで、毎日が楽しかった。今は毎日が苦痛です。
もう一度始める際の注意点や、最初は体重が落ちたほうがモチベーションアップになると思うので、
そうなりやすいきっかけみたいなものをアドバイスしてもらえたら嬉しいと思い、思い切って江部先生の
元に舞い戻ってきました。
大阪に住んでいるので、大阪で糖質制限に理解のある病院か先生の病院の診察を受けてみたいとも思って
います。
糖尿病ではないのですが、薬等は使っていませんが、ガンの治療中(今は経過観察中)なので、ちゃんと
指導してもらったほうが良いんではないかと考えています。
長々とすみません。出来ればアドバイスお願いします。
P,S.身長は146cm 以前は50キロから40キロになり喜んでいました。
多分今は50キロを超え55キロ位あると思います。(泣)
あれよあれよと言う間に10キロ今日体重が落ち、成功と思った矢先、食事の量初め、食べているものも
全く体重が落ちたときと同じ物を食べていたんですが、じわりじわりと元に戻り、半分戻ったくらい
のときに先生に相談し、食べ過ぎているかもと言われ量を減らしても体重は増える一方。これしかないと
思っていた方法だったので途方にくれ、また、ネットでダイエットを調べたら、炭水化物を減らして
痩せるのは、男性で女性は一度痩せてもリバウンドする人が多いと言うのを何箇所か見つけ、また
いろんな方法おにぎりダイエット(頭では糖質だからやせるはずはないと思いながら)やってみたりで、
結局もとの木阿弥(それ以上かもしれません。怖くて体重が量れなくなりました。)
やってはいけないと分りながら食べたものを戻したりすることもありました。(罪悪感バリバリ)
しばらく、江部先生のブログも覗かずにいました。
でも、頭にはずっと糖質制限しかないって分っているのに、もう1回始めて痩せなかったら
どうしよう・・・これ以上に太ったらどうしよう・・・と言うことが頭によぎり、なかなか踏み
出せないでいました。
でもやっぱり痩せたいです。痩せれたときはすごく幸せで、毎日が楽しかった。今は毎日が苦痛です。
もう一度始める際の注意点や、最初は体重が落ちたほうがモチベーションアップになると思うので、
そうなりやすいきっかけみたいなものをアドバイスしてもらえたら嬉しいと思い、思い切って江部先生の
元に舞い戻ってきました。
大阪に住んでいるので、大阪で糖質制限に理解のある病院か先生の病院の診察を受けてみたいとも思って
います。
糖尿病ではないのですが、薬等は使っていませんが、ガンの治療中(今は経過観察中)なので、ちゃんと
指導してもらったほうが良いんではないかと考えています。
長々とすみません。出来ればアドバイスお願いします。
P,S.身長は146cm 以前は50キロから40キロになり喜んでいました。
多分今は50キロを超え55キロ位あると思います。(泣)
2011/04/09(Sat) 17:04 | URL | みかん | 【編集】
機能性低血糖症・2011年拝読させていただきました。
そして、自分にもそうした傾向があると思いました。
昨年はじめてブドウ糖経口負荷試験をやって、空腹時90、1時間後は143になりましたが、2時間後には77になっておりました。
また、私は先生がブログでお書きになっておられる節約型遺伝子の持ち主らしく、糖質制限をしても体重は一向に減りません。私の、糖質制限はスーパーに近いもので、主食は煮た黒大豆にオメガ3,6,9と食物繊維が豊富な挽いたFlax Seedsをまぜたもので、炭水化物はほとんど摂取しておりません。
幸い、現時点で糖尿病の傾向は出ておりませんが、コレステロールが高い状態が過去長く続いていたために、頚動脈のエコー検査でかなり厚いプラーク(1.12mmから1.42mm)がたまっているようです。おかげさまで、コレステロール値は、糖質制限で正常値内(LDL 133, HDL 53, Triglycedride 127)に戻りました。
そこで質問ですが、糖質制限をしていると炭水化物に対する感受性が強くなり、比較的少量でもインシュリンが大量に分泌されるようになるのではないかという気がするのですが、この点はいかがお考えでしょうか?
私は、糖尿病ではないのでときどき炭水化物や糖質をとります。その際に、過剰にインシュリンが出て、そのことが体重を減らさないように作用するという、節約型遺伝子の特性となっているのではないかという気がしています。
間食にアーモンドやチーズをかなり食べているので、それでカロリーをとりすぎているのかもしれませんが、インシュリンが人より出すぎていることは確かなようです。
何か、この辺りでお考えのことがございましたら、またブログにUpしていただければ幸いです。
そして、自分にもそうした傾向があると思いました。
昨年はじめてブドウ糖経口負荷試験をやって、空腹時90、1時間後は143になりましたが、2時間後には77になっておりました。
また、私は先生がブログでお書きになっておられる節約型遺伝子の持ち主らしく、糖質制限をしても体重は一向に減りません。私の、糖質制限はスーパーに近いもので、主食は煮た黒大豆にオメガ3,6,9と食物繊維が豊富な挽いたFlax Seedsをまぜたもので、炭水化物はほとんど摂取しておりません。
幸い、現時点で糖尿病の傾向は出ておりませんが、コレステロールが高い状態が過去長く続いていたために、頚動脈のエコー検査でかなり厚いプラーク(1.12mmから1.42mm)がたまっているようです。おかげさまで、コレステロール値は、糖質制限で正常値内(LDL 133, HDL 53, Triglycedride 127)に戻りました。
そこで質問ですが、糖質制限をしていると炭水化物に対する感受性が強くなり、比較的少量でもインシュリンが大量に分泌されるようになるのではないかという気がするのですが、この点はいかがお考えでしょうか?
私は、糖尿病ではないのでときどき炭水化物や糖質をとります。その際に、過剰にインシュリンが出て、そのことが体重を減らさないように作用するという、節約型遺伝子の特性となっているのではないかという気がしています。
間食にアーモンドやチーズをかなり食べているので、それでカロリーをとりすぎているのかもしれませんが、インシュリンが人より出すぎていることは確かなようです。
何か、この辺りでお考えのことがございましたら、またブログにUpしていただければ幸いです。
オレンジメロン さん。
「糖質制限をしていると炭水化物に対する感受性が強くなり、比較的少量でもインシュリンが大量に分泌されるようになるのではないかという気がするのですが、この点はいかがお考えでしょうか? 」
炭水化物依存症のように、頻回に糖質を摂取している方は、
そのたびに大量のインスリンを追加分泌しています。
糖質制限食をしていて、いきなり糖質を摂取すれば、もっと大量のインスリンがでるかというと
そんなことはないと思います。
そもそも精製炭水化物摂取に対する、30倍・40倍レベルの追加分泌インスリン自体が
既に生体において救急車出動状態と私は考えています。
「糖質制限をしていると炭水化物に対する感受性が強くなり、比較的少量でもインシュリンが大量に分泌されるようになるのではないかという気がするのですが、この点はいかがお考えでしょうか? 」
炭水化物依存症のように、頻回に糖質を摂取している方は、
そのたびに大量のインスリンを追加分泌しています。
糖質制限食をしていて、いきなり糖質を摂取すれば、もっと大量のインスリンがでるかというと
そんなことはないと思います。
そもそも精製炭水化物摂取に対する、30倍・40倍レベルの追加分泌インスリン自体が
既に生体において救急車出動状態と私は考えています。
2011/04/09(Sat) 20:39 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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