2011年03月20日 (日)
☆☆☆☆☆
第29回大阪病院機能向上研究会
http://www.good-hospital.org/jikai.html
テーマ
「糖質制限食を考える」
日時 平成23年3月19日(土)午後2時より午後6時
場所 毎日新聞オーバルホール
プログラム
・講演1
「糖質制限食による生活習慣病の治療」
京都 高雄病院 江部康二
・講演2
「糖質制限食の実際」
京都 高雄病院管理栄養士 橋本眞由美
・講演3
「糖質制限食は生活習慣病予防に有効か(仮題)」
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野 佐々木敏 先生
こんばんは。
2011年3月19日(土)午后、第29回大阪病院機能向上研究会にて講演を行ってきました。
医師、栄養士、看護師・・・100人を超える参加者で盛況でした。
私は、最新の糖質制限食基礎理論と疫学研究、症例報告などを80分間お話ししました。
そのあと橋本眞由美管理栄養士が、高雄病院で実際に供給されている糖質制限食の写真や入院患者さんの栄養指導、外来患者さんの栄養指導など具体的な内容でお話ししました。
第3部のニュートラルな立場からの佐々木敏 先生のご講演には、深い感銘を受けました。
欧米の論文に関して、質の良い研究を認識できる力をもつこと、そして研究結果だけに拘るのではなく、どういうプロセスを経て、研究が実施されたのかまで把握することの大切さを、まず指摘されました。
興味深かったのは、2000年までの論文では、脂肪制限食が体重減少に有効との報告が多かったそうですが、
2006年以降の論文では脂肪制限より炭水化物制限のほうが有効という流れに変わってきている(まだ断定はできないが・・・)とのことでした。
これは、全米健康調査が2000年に行われて、
脂肪摂取比率が
1971年:36.9%→2000年:32.8%
と減少して、脂肪摂取比率減少政策は成功したにもかかわらず、
肥満率は
1971年:14.5%→2000年:30.9%
と倍増したことも関係しているのかもしれません。
それにしても、良質の研究においても、結果が正反対になること自体が理解不能で不思議です。
疫学研究とは、げに難しいものですね。
また、2009年のDiabetes care に掲載された「総脂質摂取比率と糖尿病発症には関連がない」という疫学研究(メタアナリシス)も紹介され、糖質制限食的には嬉しい限りでした。
講演後、数分間、お話ししたのですが印象的だったのは、日本には、人間栄養学という学問が存在していないそうです。 確かに、医学部の教育においても、栄養学の単位はないに等しいと思います。
例えば、欧米の栄養学のガイドラインには、「未精製の穀物を摂取すること」と明記してあるそうです。
また、
「血糖値をあげるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させない。」
「脳はブドウ糖しか利用できないというのは間違いでケトン体を利用する。」
など、生理学的なごく基本的な知識を日本の医師・栄養士のほとんどが持っていないのは、極めて大きな問題です。
欧米の医師・栄養士に比較してみると、日本はスタート地点にさえ立っておらず、人間栄養学的にはまさにガラパゴス状態です。
今後、医療において、人間栄養学は、極めて重要な位置を占めていくと思います。
せめて、欧米なみの人間栄養学の知識を、栄養士や医師が身につけていくことが、大切な第一歩と感じました。
江部康二
第29回大阪病院機能向上研究会
http://www.good-hospital.org/jikai.html
テーマ
「糖質制限食を考える」
日時 平成23年3月19日(土)午後2時より午後6時
場所 毎日新聞オーバルホール
プログラム
・講演1
「糖質制限食による生活習慣病の治療」
京都 高雄病院 江部康二
・講演2
「糖質制限食の実際」
京都 高雄病院管理栄養士 橋本眞由美
・講演3
「糖質制限食は生活習慣病予防に有効か(仮題)」
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野 佐々木敏 先生
こんばんは。
2011年3月19日(土)午后、第29回大阪病院機能向上研究会にて講演を行ってきました。
医師、栄養士、看護師・・・100人を超える参加者で盛況でした。
私は、最新の糖質制限食基礎理論と疫学研究、症例報告などを80分間お話ししました。
そのあと橋本眞由美管理栄養士が、高雄病院で実際に供給されている糖質制限食の写真や入院患者さんの栄養指導、外来患者さんの栄養指導など具体的な内容でお話ししました。
第3部のニュートラルな立場からの佐々木敏 先生のご講演には、深い感銘を受けました。
欧米の論文に関して、質の良い研究を認識できる力をもつこと、そして研究結果だけに拘るのではなく、どういうプロセスを経て、研究が実施されたのかまで把握することの大切さを、まず指摘されました。
興味深かったのは、2000年までの論文では、脂肪制限食が体重減少に有効との報告が多かったそうですが、
2006年以降の論文では脂肪制限より炭水化物制限のほうが有効という流れに変わってきている(まだ断定はできないが・・・)とのことでした。
これは、全米健康調査が2000年に行われて、
脂肪摂取比率が
1971年:36.9%→2000年:32.8%
と減少して、脂肪摂取比率減少政策は成功したにもかかわらず、
肥満率は
1971年:14.5%→2000年:30.9%
と倍増したことも関係しているのかもしれません。
それにしても、良質の研究においても、結果が正反対になること自体が理解不能で不思議です。
疫学研究とは、げに難しいものですね。
また、2009年のDiabetes care に掲載された「総脂質摂取比率と糖尿病発症には関連がない」という疫学研究(メタアナリシス)も紹介され、糖質制限食的には嬉しい限りでした。
講演後、数分間、お話ししたのですが印象的だったのは、日本には、人間栄養学という学問が存在していないそうです。 確かに、医学部の教育においても、栄養学の単位はないに等しいと思います。
例えば、欧米の栄養学のガイドラインには、「未精製の穀物を摂取すること」と明記してあるそうです。
また、
「血糖値をあげるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させない。」
「脳はブドウ糖しか利用できないというのは間違いでケトン体を利用する。」
など、生理学的なごく基本的な知識を日本の医師・栄養士のほとんどが持っていないのは、極めて大きな問題です。
欧米の医師・栄養士に比較してみると、日本はスタート地点にさえ立っておらず、人間栄養学的にはまさにガラパゴス状態です。
今後、医療において、人間栄養学は、極めて重要な位置を占めていくと思います。
せめて、欧米なみの人間栄養学の知識を、栄養士や医師が身につけていくことが、大切な第一歩と感じました。
江部康二
同感です。大学ではこの分野の教育はまったくされておりません。私の学生時代でも、国試のときにビタミン関係の問題がチョロチョロとでる程度でした。
例えば脚気を発病していなくても、血糖調節障害の患者のなかに潜在性のビタミンB1不足の患者はかなり沢山存在していると推察できますし、それらの患者の不定愁訴は日常診療では殆どすべて誤診されていると考えます。ビタミンCにおいてもしかり。
うがった見方をすれば、大学で栄養学を教えないのは、「薬では病気を治せない」、という事実を隠蔽するため(製薬会社の陰謀)なんでしょうか??(笑)
例えば脚気を発病していなくても、血糖調節障害の患者のなかに潜在性のビタミンB1不足の患者はかなり沢山存在していると推察できますし、それらの患者の不定愁訴は日常診療では殆どすべて誤診されていると考えます。ビタミンCにおいてもしかり。
うがった見方をすれば、大学で栄養学を教えないのは、「薬では病気を治せない」、という事実を隠蔽するため(製薬会社の陰謀)なんでしょうか??(笑)
2011/03/21(Mon) 10:07 | URL | 小松川クリニック 院長 | 【編集】
とても有意義な一歩になったようで何よりですね。
何回かコメントにて質問させていただいております、みいこです。
11月下旬から糖質制限を始めて、ジャヌビアだけでHbA1c9.2から6.6まで下がり体調もよく喜んでおります。
今回お聞きしたいのは、
網膜症の検診のタイミングについてです。
前回は去年の12月中旬に眼科で検査をし、異常なしでした。
当時のHbA1cは8.5で、
今年1月は6.5,2月も6.5,今月は6.6%でした。
ただ、1型のためか暁現象が頻発しており、
生理の前から最中の約2週間程は早朝空腹時血糖が200を越える事が多く、ランタスもしくはインクレチンの自己注射を検討中です(なるべく注射はしたくないのですが)
体調や気分はいいのですが、数値が高いので血管が傷ついているだろうと心配です。
前回の網膜症の検査から3ヶ月過ぎましたので、そろそろ検査した方が良いかなと思っていますが、半年に1度位でも大丈夫かなとも思うのですが、先生のご意見を伺えればと思います。
お手すきの時で結構ですのでよろしくお願いいたします。
ちなみに現在身長154cm
体重44kg 42才 女です。
何回かコメントにて質問させていただいております、みいこです。
11月下旬から糖質制限を始めて、ジャヌビアだけでHbA1c9.2から6.6まで下がり体調もよく喜んでおります。
今回お聞きしたいのは、
網膜症の検診のタイミングについてです。
前回は去年の12月中旬に眼科で検査をし、異常なしでした。
当時のHbA1cは8.5で、
今年1月は6.5,2月も6.5,今月は6.6%でした。
ただ、1型のためか暁現象が頻発しており、
生理の前から最中の約2週間程は早朝空腹時血糖が200を越える事が多く、ランタスもしくはインクレチンの自己注射を検討中です(なるべく注射はしたくないのですが)
体調や気分はいいのですが、数値が高いので血管が傷ついているだろうと心配です。
前回の網膜症の検査から3ヶ月過ぎましたので、そろそろ検査した方が良いかなと思っていますが、半年に1度位でも大丈夫かなとも思うのですが、先生のご意見を伺えればと思います。
お手すきの時で結構ですのでよろしくお願いいたします。
ちなみに現在身長154cm
体重44kg 42才 女です。
2011/03/21(Mon) 13:04 | URL | みいこ | 【編集】
江部先生、こんにちは。
先日質問させて頂いたロッキーです。
その時に暁現象は『疲弊した細胞か休息することにより回復する可能性がある』とのことでした。
2年間スーパーで頑張ってますがまだ回復する可能性があるのでしょうか?
暁現象さえ改善されれば、大変ありがたいのですが2年以上経ってからが回復された患者さんの例があるのでしょうか?
忙しいところよろしくお願いいします。
先日質問させて頂いたロッキーです。
その時に暁現象は『疲弊した細胞か休息することにより回復する可能性がある』とのことでした。
2年間スーパーで頑張ってますがまだ回復する可能性があるのでしょうか?
暁現象さえ改善されれば、大変ありがたいのですが2年以上経ってからが回復された患者さんの例があるのでしょうか?
忙しいところよろしくお願いいします。
ロッキーさん。
2年間スーパー糖質制限食を実践されていて、なおかつ暁現象があるのなら
既に一定レベルのβ細胞がダメージを受けていて、その分に関しては改善は困難と思います。
一方、例え暁現象があるとしても、早朝空腹時血糖値が126mg未満、あるいは理想的には110mg未満で
あるなら動脈硬化的には心配は少ないです。
2年間スーパー糖質制限食を実践されていて、なおかつ暁現象があるのなら
既に一定レベルのβ細胞がダメージを受けていて、その分に関しては改善は困難と思います。
一方、例え暁現象があるとしても、早朝空腹時血糖値が126mg未満、あるいは理想的には110mg未満で
あるなら動脈硬化的には心配は少ないです。
2011/03/21(Mon) 17:41 | URL | ドクター江部 | 【編集】
きのこ さん。
はるばるありがとうございました。
本のご購入もありがとうございます。
きのこさん、きっと運もいいですよ。
佐々木先生のご講演は大変素晴らしいものでした。
それから南山の焼き肉も、ビタミンA欠乏牛肉ではない、本当の美味しい牛肉ですので
堪能していただけたかなと思います。
はるばるありがとうございました。
本のご購入もありがとうございます。
きのこさん、きっと運もいいですよ。
佐々木先生のご講演は大変素晴らしいものでした。
それから南山の焼き肉も、ビタミンA欠乏牛肉ではない、本当の美味しい牛肉ですので
堪能していただけたかなと思います。
2011/03/21(Mon) 22:47 | URL | ドクター江部 | 【編集】
先生、おはようございます。
早朝空腹時値はほとんどが110前後でたまに130くらいの時もあります。
これからも楽しく糖質制限食を続けていきたいと思います。
また何かありましたら質問させてください。
よろしくお願いします。
早朝空腹時値はほとんどが110前後でたまに130くらいの時もあります。
これからも楽しく糖質制限食を続けていきたいと思います。
また何かありましたら質問させてください。
よろしくお願いします。
私が糖質制限食をはじめてはや2ヶ月になります。
カロリー偏重の食事を離れたとはいえ、この糖質制限食ではややもすると1200カロリーくらいにしかならないことがあるので逆にその点について気をつけ、足らない場合にはプロテインを飲んだり、チーズを食べて、
やせすぎないようにしています。
空腹時血糖も順調に低下してきており、150以下をキープしていますので今度のA1Cの検査が楽しみです。(前回は6.7)
ところで、10年ほど前に済生会中央病院に2週間の教育入院で一緒だった方にこの制限食をお伝えしようと連絡をとったのですが、時既に遅しで、3年前から透析をはじめたそうです。透析をしているとこの制限食はできないということですが・・・ 透析をしていてもできることは何かありませんか?
ちょっとしたことで何度も骨折して今では完全に寝たきり状態です。
トイレにも行けないだけでなく、ベッドに座ることもできません。
なんとかそんな彼女を励ましたいのですが、これから先透析を卒業することはできないのでしょうか。
教育入院で知り合ったその他の2人にも電話で制限食と江部先生のブログを伝えました。やってみるそうです。
カロリー偏重の食事を離れたとはいえ、この糖質制限食ではややもすると1200カロリーくらいにしかならないことがあるので逆にその点について気をつけ、足らない場合にはプロテインを飲んだり、チーズを食べて、
やせすぎないようにしています。
空腹時血糖も順調に低下してきており、150以下をキープしていますので今度のA1Cの検査が楽しみです。(前回は6.7)
ところで、10年ほど前に済生会中央病院に2週間の教育入院で一緒だった方にこの制限食をお伝えしようと連絡をとったのですが、時既に遅しで、3年前から透析をはじめたそうです。透析をしているとこの制限食はできないということですが・・・ 透析をしていてもできることは何かありませんか?
ちょっとしたことで何度も骨折して今では完全に寝たきり状態です。
トイレにも行けないだけでなく、ベッドに座ることもできません。
なんとかそんな彼女を励ましたいのですが、これから先透析を卒業することはできないのでしょうか。
教育入院で知り合ったその他の2人にも電話で制限食と江部先生のブログを伝えました。やってみるそうです。
さくら さん。
糖尿病腎症から透析になった方は、卒業は困難です。
そうならないように、糖尿病治療は、兎に角早ければ早いほどいいです。
糖尿病腎症から透析になった方は、卒業は困難です。
そうならないように、糖尿病治療は、兎に角早ければ早いほどいいです。
2011/03/22(Tue) 22:45 | URL | ドクター江部 | 【編集】
現在、スーパー糖質制限食で9ヶ月減量中です。
スーパー糖質制限食で、ひどい便秘に悩まされました。1週間に1回、
便秘薬を飲んでいました。
食物繊維、オリゴ糖、ヨーグルト(炭水化物が増えますが)を試しましたがよけいに便秘になりました。
便秘の原因は、ごはんを食べないからだと、思うようになりました。
その後、ミネラルの補給と、食物繊維、食事中の水分量を増やすために、海草サラダ、糸寒天を毎日食べることにより、便秘はなくなりました。
最近、たまたま、下記記事を見つけました。
食生活と機能性便秘の関係
http://www.nyusankin.or.jp/health/health1-14.html
ごはんの摂取量が多いほど機能性便秘が少ないということです。
ここはには、他の記事もありますが、まだまだ、糖質制限食とは考え方が違うようです。
http://www.nyusankin.or.jp/health/index.html
参考まで
スーパー糖質制限食で、ひどい便秘に悩まされました。1週間に1回、
便秘薬を飲んでいました。
食物繊維、オリゴ糖、ヨーグルト(炭水化物が増えますが)を試しましたがよけいに便秘になりました。
便秘の原因は、ごはんを食べないからだと、思うようになりました。
その後、ミネラルの補給と、食物繊維、食事中の水分量を増やすために、海草サラダ、糸寒天を毎日食べることにより、便秘はなくなりました。
最近、たまたま、下記記事を見つけました。
食生活と機能性便秘の関係
http://www.nyusankin.or.jp/health/health1-14.html
ごはんの摂取量が多いほど機能性便秘が少ないということです。
ここはには、他の記事もありますが、まだまだ、糖質制限食とは考え方が違うようです。
http://www.nyusankin.or.jp/health/index.html
参考まで
2011/05/04(Wed) 10:46 | URL | konkon | 【編集】
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