2010年12月16日 (木)
こんばんは。
明日は、今年最後の第三金曜ライブです。
今から、スタジオにリハーサルに出かけます。
さて今回は、小福さんから、高炭水化物食の問題点、糖尿人と正常人・・・についてコメント・質問をいただきました。
「10/12/15 小福
教えてください
いつも更新楽しみにしております。
記事を読んでいてわからないことがあるのでご教授いただければと思います。
高炭水化物摂取の場合と低炭水化物摂取の場合を比べたデータはたくさんありますよね。
炭水化物を取らないことがいいのか?
それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
私は、2型糖尿であり、糖質制限な食事を数回にわけて血糖値の変動が少なくなるように工夫しています。
でも、耐糖能の高い非糖尿人よりも血糖値の変動はあります。
耐糖能の高い血糖値の変動の少ない人でも炭水化物を減らした方が病気のリスクが少なくなると言うことでしょうか?
耐糖能が高いうちは、高炭水化物食でも問題ないと言うことでしょうか?
自分が糖質制限をしているので、主人や子供たちがごはんをたくさん食べたりするとどうしても心配になってしまいます。
文章力がないので、意味わかりずらい文章になってたらすいません。」
小福さん。
コメント、ありがとうございます。
「炭水化物を取らないことがいいのか?
それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
糖尿人が、普通に一人前の主食(パンやご飯など炭水化物)を摂取すれば、食後2時間血糖値は必ず200mg/dlを超えます。
180mg/dlを超える血糖値は、血管内皮を障害しますので、動脈硬化のリスクとなります。
糖尿人でも、糖質制限食なら、食後高血糖が生じませんので、動脈硬化のリスクとなりません。
血糖値を上げるのは、糖質だけであり、タンパク質・脂質は上げません。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
勿論、食前食後血糖値の幅が少ないほど、好ましいです。従いまして、糖尿人には糖質制限食が必須なのですね。
「耐糖能の高い血糖値の変動の少ない人でも炭水化物を減らした方が病気のリスクが少なくなると言うことでしょうか? 耐糖能が高いうちは、高炭水化物食でも問題ないと言うことでしょうか? 」
それでは耐糖能が正常型の人を考えて見ましょう。
人類の食生活の歴史を振り返ってみると、追加分泌インスリン(*)の必要性は、くっきり3段階に分かれます。
<農耕の始まる前>
人類の歴史が400万年として、農耕が始まる前の399万年間は、食生活の中心は狩猟・採集であり穀物はないのですから、人類皆糖質制限食です。
食前食後の血糖値を切り口に考えてみると、鮮明に変化が見えてきます。すなわち農耕が始まる前の人類の食生活なら、血糖値の上下動がほとんどありません。
例えば空腹時血糖値が100mg/dl程度と仮定して、食後の血糖値はせいぜい110~120mg/dlくらいで、血糖値上昇の幅は10~20mgていどの少なさです。これならインスリンの追加分泌はごく少量ですみます。
勿論、基礎分泌のインスリンは絶対に必要です。
この頃は、実りの秋に果物やナッツなどを食べると血糖値がある程度上昇するので、初めて追加分泌インスリンの本格的出番がありました。
秋に追加分泌インスリンで果物やナッツから得た血糖を中性脂肪にかえて体内に蓄えて、来るべき冬の飢餓に備えたと考えられます。
<農耕の始まりと血糖値の変化とインスリン>
農耕が定着し、小麦や米のデンプン(糖質)を摂取するようになると、血糖値が急峻に上昇します。糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素の中で血糖値を上昇させるのは糖質だけです。
穀物(糖質)を摂取すれば、未精製のものでも空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は140mgていどまで上昇し、インスリンが大量に追加分泌されます。
血糖値上昇の幅は40mgもあり、狩猟・採集民だったころに比べると2倍に達しています。
こうなると1回のインスリンの追加分泌は、正常人では基礎分泌レベルの数倍~10倍以上の量となります。
農耕以後の4000年間は、人類の膵臓のβ細胞は、それ以前に比べて毎日数倍~10倍以上働き続けなくてはならず、まるで原罪を背負ったようなものなのです。
<精製炭水化物以後の血糖値とインスリン>
さらに18世紀に欧米で、小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。
日本では、江戸中期には白米の習慣が定着していきます。
すなわち、ここ200年~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。
現代では、世界中の多くの国で、主食は白いパンか白米などの精製された穀物です。
精製された炭水化物は、未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させます。
これらを食べると、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170mgまで上昇します。血糖値上昇の幅は60~70mgで、狩猟・採集生活のころに比べると3倍に達しています。
これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、400万年の人類史上、類をみないものです。追加分泌のインスリンは、未精製穀物摂取時に比し、さらに大量に分泌せざるを得ません。
インスリンを大量に分泌し続けて40~50年、膵臓が疲弊すれば分泌能力はは低下し糖尿病になります。インスリン分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満・メタボリックシンドロームになります。
<追加分泌インスリンの必要性とβ細胞の酷使>
このように、人類の歴史をたどってみると、病態の構造がはっきり見えてみます。
399万年間ほとんど必要のなかった追加分泌インスリンが農耕後は数倍から10倍レベル必要となりました。
精製炭水化物以後は、更に大量の追加分泌インスリンが必要となり、膵臓のβ細胞は日常的に酷使されるようになりました。運動不足はそれに拍車をかけます。
現代はまさに膵臓受難の時代と言えます。糖尿病が世界中で激増しているのも、宜なるかなですね。
結論です。
正常人でも精製炭水化物を日常的に摂取して、運動不足が続けば様々な生活習慣病のリスクとなります。
(*)
インスリンは人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的にでている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときにその10、20倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。脂質を摂取しても追加分泌インスリンはでません。タンパク質摂取ではごく少量のインスリンがでます。
江部康二
明日は、今年最後の第三金曜ライブです。
今から、スタジオにリハーサルに出かけます。
さて今回は、小福さんから、高炭水化物食の問題点、糖尿人と正常人・・・についてコメント・質問をいただきました。
「10/12/15 小福
教えてください
いつも更新楽しみにしております。
記事を読んでいてわからないことがあるのでご教授いただければと思います。
高炭水化物摂取の場合と低炭水化物摂取の場合を比べたデータはたくさんありますよね。
炭水化物を取らないことがいいのか?
それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
私は、2型糖尿であり、糖質制限な食事を数回にわけて血糖値の変動が少なくなるように工夫しています。
でも、耐糖能の高い非糖尿人よりも血糖値の変動はあります。
耐糖能の高い血糖値の変動の少ない人でも炭水化物を減らした方が病気のリスクが少なくなると言うことでしょうか?
耐糖能が高いうちは、高炭水化物食でも問題ないと言うことでしょうか?
自分が糖質制限をしているので、主人や子供たちがごはんをたくさん食べたりするとどうしても心配になってしまいます。
文章力がないので、意味わかりずらい文章になってたらすいません。」
小福さん。
コメント、ありがとうございます。
「炭水化物を取らないことがいいのか?
それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
糖尿人が、普通に一人前の主食(パンやご飯など炭水化物)を摂取すれば、食後2時間血糖値は必ず200mg/dlを超えます。
180mg/dlを超える血糖値は、血管内皮を障害しますので、動脈硬化のリスクとなります。
糖尿人でも、糖質制限食なら、食後高血糖が生じませんので、動脈硬化のリスクとなりません。
血糖値を上げるのは、糖質だけであり、タンパク質・脂質は上げません。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
勿論、食前食後血糖値の幅が少ないほど、好ましいです。従いまして、糖尿人には糖質制限食が必須なのですね。
「耐糖能の高い血糖値の変動の少ない人でも炭水化物を減らした方が病気のリスクが少なくなると言うことでしょうか? 耐糖能が高いうちは、高炭水化物食でも問題ないと言うことでしょうか? 」
それでは耐糖能が正常型の人を考えて見ましょう。
人類の食生活の歴史を振り返ってみると、追加分泌インスリン(*)の必要性は、くっきり3段階に分かれます。
<農耕の始まる前>
人類の歴史が400万年として、農耕が始まる前の399万年間は、食生活の中心は狩猟・採集であり穀物はないのですから、人類皆糖質制限食です。
食前食後の血糖値を切り口に考えてみると、鮮明に変化が見えてきます。すなわち農耕が始まる前の人類の食生活なら、血糖値の上下動がほとんどありません。
例えば空腹時血糖値が100mg/dl程度と仮定して、食後の血糖値はせいぜい110~120mg/dlくらいで、血糖値上昇の幅は10~20mgていどの少なさです。これならインスリンの追加分泌はごく少量ですみます。
勿論、基礎分泌のインスリンは絶対に必要です。
この頃は、実りの秋に果物やナッツなどを食べると血糖値がある程度上昇するので、初めて追加分泌インスリンの本格的出番がありました。
秋に追加分泌インスリンで果物やナッツから得た血糖を中性脂肪にかえて体内に蓄えて、来るべき冬の飢餓に備えたと考えられます。
<農耕の始まりと血糖値の変化とインスリン>
農耕が定着し、小麦や米のデンプン(糖質)を摂取するようになると、血糖値が急峻に上昇します。糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素の中で血糖値を上昇させるのは糖質だけです。
穀物(糖質)を摂取すれば、未精製のものでも空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は140mgていどまで上昇し、インスリンが大量に追加分泌されます。
血糖値上昇の幅は40mgもあり、狩猟・採集民だったころに比べると2倍に達しています。
こうなると1回のインスリンの追加分泌は、正常人では基礎分泌レベルの数倍~10倍以上の量となります。
農耕以後の4000年間は、人類の膵臓のβ細胞は、それ以前に比べて毎日数倍~10倍以上働き続けなくてはならず、まるで原罪を背負ったようなものなのです。
<精製炭水化物以後の血糖値とインスリン>
さらに18世紀に欧米で、小麦の精製技術が発明されます。白いパンの登場です。
日本では、江戸中期には白米の習慣が定着していきます。
すなわち、ここ200年~300年間、世界で精製された炭水化物が摂取されるようになりました。
現代では、世界中の多くの国で、主食は白いパンか白米などの精製された穀物です。
精製された炭水化物は、未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させます。
これらを食べると、空腹時血糖値が100mgとして、食後血糖値は160~170mgまで上昇します。血糖値上昇の幅は60~70mgで、狩猟・採集生活のころに比べると3倍に達しています。
これほど急激に血糖値を上昇させる食品は、400万年の人類史上、類をみないものです。追加分泌のインスリンは、未精製穀物摂取時に比し、さらに大量に分泌せざるを得ません。
インスリンを大量に分泌し続けて40~50年、膵臓が疲弊すれば分泌能力はは低下し糖尿病になります。インスリン分泌能力が高い人は、さらに出し続けて肥満・メタボリックシンドロームになります。
<追加分泌インスリンの必要性とβ細胞の酷使>
このように、人類の歴史をたどってみると、病態の構造がはっきり見えてみます。
399万年間ほとんど必要のなかった追加分泌インスリンが農耕後は数倍から10倍レベル必要となりました。
精製炭水化物以後は、更に大量の追加分泌インスリンが必要となり、膵臓のβ細胞は日常的に酷使されるようになりました。運動不足はそれに拍車をかけます。
現代はまさに膵臓受難の時代と言えます。糖尿病が世界中で激増しているのも、宜なるかなですね。
結論です。
正常人でも精製炭水化物を日常的に摂取して、運動不足が続けば様々な生活習慣病のリスクとなります。
(*)
インスリンは人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的にでている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときにその10、20倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。脂質を摂取しても追加分泌インスリンはでません。タンパク質摂取ではごく少量のインスリンがでます。
江部康二
いきなり失礼いたします
2ヶ月くらい前に、ストレス重なってついに朝血糖値400超えてしまい、ブドウ糖を元から立たなきゃいかんと考え
主食の炭水化物を全廃しました
するとすぐに効果が出て200くらいになり(当たり前ですよね)
インシュリンは少なくしました
体重も落ちて脂肪率も落ちました
逆に体調はよくなってます
運動はさぼってたんですが、毎日1時間いろいろやってます
発症したころは糖質制限なんて本見たことなかったです
自分で糖質制限してから、先生のことを知りました
間違ってなかったんだと思いうれしかったです
2ヶ月くらい前に、ストレス重なってついに朝血糖値400超えてしまい、ブドウ糖を元から立たなきゃいかんと考え
主食の炭水化物を全廃しました
するとすぐに効果が出て200くらいになり(当たり前ですよね)
インシュリンは少なくしました
体重も落ちて脂肪率も落ちました
逆に体調はよくなってます
運動はさぼってたんですが、毎日1時間いろいろやってます
発症したころは糖質制限なんて本見たことなかったです
自分で糖質制限してから、先生のことを知りました
間違ってなかったんだと思いうれしかったです
2010/12/16(Thu) 19:51 | URL | たか | 【編集】
いつも、日記で勉強させていただいてます。
ちょっと驚いたことがあってコメントいたします。
昨年5月に足の異常な重だるさがあり、主治医から「キネダック」を処方されました。
1年後主治医が替わった時に「しびれますか?」と手足のタッチ
「まったくしびれはありません、重くだるいだけです」と言ったら首を傾げています。
キネダックを飲んでいた1年間、ずっと「本当に合併症だろうか」の疑問が消えなかったので神経内科で末梢神経電動速度、誘発筋電図、MRIとCT、首と腰のレントゲンを受けました。
末梢神経電動速度はまったく正常で合併症ではないという診断でしたが、先生のご注意はまず、しびれがあり、そのご暫くして電動速度が遅れるので、しびれがでたらまたテストに来るようにとの事でした。
こんな事もあるのだと驚いた次第です。
ちょっと驚いたことがあってコメントいたします。
昨年5月に足の異常な重だるさがあり、主治医から「キネダック」を処方されました。
1年後主治医が替わった時に「しびれますか?」と手足のタッチ
「まったくしびれはありません、重くだるいだけです」と言ったら首を傾げています。
キネダックを飲んでいた1年間、ずっと「本当に合併症だろうか」の疑問が消えなかったので神経内科で末梢神経電動速度、誘発筋電図、MRIとCT、首と腰のレントゲンを受けました。
末梢神経電動速度はまったく正常で合併症ではないという診断でしたが、先生のご注意はまず、しびれがあり、そのご暫くして電動速度が遅れるので、しびれがでたらまたテストに来るようにとの事でした。
こんな事もあるのだと驚いた次第です。
先生こんにちは。
私には6歳と4歳の子供がおり、先生の本に「成長期の子供には糖質制限をすべきではない」とあったので通常の主食ありの食事をさせています。
ただ、糖尿病になりやすい体質は遺伝するということを考えると、このままでいいのか???と不安になることがあります。
今気をつけているのは、おかずをしっかり食べさせて主食ばかり大量に食べさせないようにしているのと、糖分の多い菓子を与え過ぎないことぐらいです。2人とも肥満ではありません。
成人して糖尿病を発症するまでこれ以上何もできないのかと思うともどかしいです。
アドバイスお願いいたします。
私には6歳と4歳の子供がおり、先生の本に「成長期の子供には糖質制限をすべきではない」とあったので通常の主食ありの食事をさせています。
ただ、糖尿病になりやすい体質は遺伝するということを考えると、このままでいいのか???と不安になることがあります。
今気をつけているのは、おかずをしっかり食べさせて主食ばかり大量に食べさせないようにしているのと、糖分の多い菓子を与え過ぎないことぐらいです。2人とも肥満ではありません。
成人して糖尿病を発症するまでこれ以上何もできないのかと思うともどかしいです。
アドバイスお願いいたします。
2010/12/17(Fri) 10:43 | URL | リュカ | 【編集】
たか さん。
血糖値改善良かったです。
血糖自己測定器で血糖値を適宜測定して、低血糖に注意して
徐徐にインスリン減量を目指してくださいね。
血糖値改善良かったです。
血糖自己測定器で血糖値を適宜測定して、低血糖に注意して
徐徐にインスリン減量を目指してくださいね。
2010/12/17(Fri) 15:55 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ドルフィンママさん。
お久しぶりです。
糖尿病神経障害でなくて良かったですね。
お久しぶりです。
糖尿病神経障害でなくて良かったですね。
2010/12/17(Fri) 17:22 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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