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低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究
こんばんは。

今回は、何人かの読者に本ブログで質問されていたのですが、保留になっていた下記の論文の記事です。


【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究

「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298 
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」

要旨
「低炭水化物食と死亡率の関連を長期にわたって調べたデータはほとんどない。今回,前向きコホート研究で,Nurses' Health Study(訳注:看護師の健康調査)に参加した85,168人の女性とHealth Professionals' Follow-up Study(訳注:医療従事者追跡研究)に参加した44,548人の男性を最大26年間追跡した。動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率,心血管死亡率,がん死亡率が高かった。一方,植物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率と心血管死亡率が低かった。」】

この論文、本文を読んでも何だか私の英語力ではよくわからないところが多いのです。それで、なかなか記事にできませんでした。

ローカーボスコアを10から1まで設定して、上記の結論としています。

さらに、この論文、ローカーボスコア以外に、新たに指標として、

overall low-carbohydrate score,
a vegetable low-carbohydrate score,
animal low-carbohydrate score

なるものを創作(create)して、そのスコアをさらに10に区分して使用しています。

なぜ、このようなスコアをわざわざ創作したのか、どういう意味があるのか、いまいちよくわからないのです。

例えば、animal low-carbohydrate scoreが区分5となる女性の場合、動物性脂肪のエネルギー比の平均が16.5%であるのに対して、vegetable low-carbohydrate scoreが区分5となる女性では、動物性脂肪のエネルギー比の平均が19.1%と高くなっています。

またanimal low-carbohydrate scoreが区分5となる男性の場合、動物性脂肪のエネルギー比の平均が17.8%であるのに対して、vegetable low-carbohydrate scoreが区分5となる男性では、動物性脂肪のエネルギー比の平均が19.0%と高くなっています。

男女共、区分5では、植物食グループのほうが、動物性脂肪の摂取比率が多いという、逆転現象がおきており、ますます意味不明です・・・(・・?)

よくわからないなりに、ただ一点、確実に言えるのは、animal low-carbohydrate scoreやvegetable low-carbohydrate scoreが10点満点グループでも、

炭水化物の摂取比率は、

女性の動物食グループで、37.4%
女性の植物食グループで、42.8%

男性の動物食グループで、35.2%
男性の植物食グループで、40.1%

も炭水化物を摂取しており、高雄病院のスーパー糖質制限食の糖質摂取比率12%とは似ても似つかぬ代物です。

ちなみに、スコアが1点のグループは、男女とも60%程度の炭水化物摂取です。

従いまして、

「低炭水化物食を実践しているグループにおいて、動物食ベース(蛋白、脂肪)のほうが、植物食ベース(蛋白、脂肪)に比べて、脳心血管系イベント、癌で亡くなる人が有意に高くなる」

という結論も、あくまでも、総摂取エネルギーの35~42%を、炭水化物から摂取しているグループにおける話です。

総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取しているグループ は、この論文のどこにも登場しないので、比較不能です。

つまり、高雄病院流のスーパー糖質制限食を実践している人においては、この論文はほとんど参考にならないと思います。

炭水化物を総摂取エネルギーの60%食べているグループに比べれば、炭水化物40%のグループのほうが、確かに低糖質食です。

一方、糖質を総摂取エネルギーの12%しか食べていないグループに比べれば、炭水化物40%のグループは3倍以上の高糖質食です。

総摂取エネルギーの35~42%を炭水化物から摂取しているグループを、低炭水化物食と定義すること自体が、
医学的にみて世界の共通理解というわけでもありません。

この論文の根拠になっている、

Nurses' Health Study(看護師の健康調査)

と、

Health Professionals' Follow-up Study(医療従事者追跡研究)は、

いろんな論文のデータベースになっています。

同じデータベースでも、論文の研究者のデザインにより、結論は違ってくるようです。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
教えてください
いつも更新楽しみにしております。
記事を読んでいてわからないことがあるのでご教授いただければと思います。
高炭水化物摂取の場合と低炭水化物摂取の場合を比べたデータはたくさんありますよね。
炭水化物を取らないことがいいのか?それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
私は、2型糖尿であり、糖質制限な食事を数回にわけて血糖値の変動が少なくなるように工夫しています。
でも、耐糖能の高い非糖尿人よりも血糖値の変動はあります。
耐糖能の高い血糖値の変動の少ない人でも炭水化物を減らした方が病気のリスクが少なくなると言うことでしょうか?
耐糖能が高いうちは、高炭水化物食でも問題ないと言うことでしょうか?
自分が糖質制限をしているので、主人や子供たちがごはんをたくさん食べたりするとどうしても心配になってしまいます。
文章力がないので、意味わかりずらい文章になってたらすいません。
2010/12/15(Wed) 12:08 | URL | 小福 | 【編集
高雄病院食生活十箇条
小福さまお早うございます。

江部先生は、ご主人やお子様のような、
小児、青少年、アトピーや喘息の若い人、糖尿病やメタボリック・シンドロームなどがない成人には、

主食を未精製の穀物(例えば玄米)にして「高雄病院食生活十箇条」を実践すること

をおススメされています。

ブログ内検索で「高雄病院食生活十箇条」と検索すると、関連記事が閲覧できます。
※2009-06-29、2010-06-28あたりの記事がおススメです。

>炭水化物を取らないことがいいのか?それとも、血糖値の変動が少ないことがいいのか?どっちなんでしょうか?
 
というご質問についてですが、今冬の講演会で江部先生が、

「血糖値を急上昇させるのは炭水化物だけである」
「血糖値の急変動(グルコーススパイク・ミニスパイク)は、血管に大きな負担をかける」
「炭水化物の摂取は、グルコーススパイク・ミニスパイクを毎日毎食、起こしていることになる」

といった説明をしておられました。

ですので、どちらが、というよりも、
両者は「イコール」と言えるのではないでしょうか。(炭水化物を摂らない=血糖値の変動が少ない)

2010/12/16(Thu) 10:41 | URL | Hetty | 【編集
1型糖尿病とバセドウ病
はじめまして★先生にご相談があるのですが、うちの姉33歳が1型糖尿病とバセドウ病の合併症になってしまい、病院からはインシュリンを自分でうちバセの方は、飲みぐすりといわれてました。 
合併症があるとこれから子供はうめなくなってしまうんでしょうか? 
インシュリンは一生うちつずけなくてはいけないのでしょうか? 
バセの方は手術したら治らないんでしょうか?
今姉のために力になりたくて、色々調べているのですが・・、私も無知で・・、色々質問ばかりですみません。 これからどうしていけばいいのか家族としてどうサポートしていってあげればいいのか・・・。 
何かいいアドバイスを教えてください・・。お願いいたします・・。
2010/12/16(Thu) 16:27 | URL | かよこ | 【編集
Re: 1型糖尿病とバセドウ病
かよこさん。

これは、姉上ご自身が主治医に、納得いくまで質問・相談されるのがよいと思います。

診察もしていない私が、どうこういえる問題ではありませんので。
2010/12/16(Thu) 19:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
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