2010年09月27日 (月)
こんばんは。
夕方から雨が降り始めた京都です。
さて今回は、mmx233さんから、貴重な情報をいただきました。
mmx233さん、ありがとうございます。
「糖尿病の青年男性は、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクが健康男性の3倍」
という何ともこわい、スウェーデンの報告です。
「1992~1993年にかけて、診断時に15~34歳の患者を国内登録研究であるスウェーデン糖尿病発生率調査(Diabetes Incidence Study in Sweden)に登録した(n=879)。対照者は、患者が糖尿病と診断された時に、生年月日と性別が一致する健康な人を患者ごとに選んで設定した(n=837)。」
ということなので、かなり若い人が対象の研究ですね。
「15年間の追跡期間中、患者群の3.3%(879人中29人。男性24人、女性5人)と、対照群の1.1%(837人中9人。男性7人、女性2人)が死亡した。糖尿病患者が死亡するリスクは、糖尿病でない患者のほぼ3倍であった。」
死亡原因は何であれ、総死亡率が糖尿病患者さんの方が、約3倍多かったということです。
「患者群では糖尿病が第1の死因で、34%(10人)で死亡原因と特定された。さらに糖尿病が死亡の一因と考えられるケースが5件あった。患者群で2番目に多かった死因は、循環器疾患の17%(5人)だった。」
これは、やや不思議ですが、若い人だからでしょうね。
糖尿病で直接亡くなるというのは、低血糖とか糖尿病性ケトアシドーシスとか特殊なものと考えられます。
患者群では、過半数の55%(16人)が自宅で死亡しているので、突然死に近い上記のようなことが起こったようです。
もっと高齢だと、糖尿病によって頻度が高くなるガンや心疾患、脳血管疾患などの死亡が、糖尿病による直接死亡より、はるかに多くなります。
日本の糖尿病糖尿病患者の死因で多いのは、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、脳血管障害(脳卒中)などや糖尿病腎症で、これらを合わせると約4割です。
第2位はガンで約3割、第3位は感染症によるもので約1割です。
これらの血管障害、ガン、感染症を合わせると、糖尿病による死因の約8割を占めています。
今回のスエーデンの報告は、若年者対象なので、日本の一般的な糖尿人の事情とは異なっています。
ともあれ、糖質制限食で食前・食後の血糖値を良好に保てば、低血糖も高血糖も起こしませんし、将来的な動脈硬化の予防もできます。
糖尿人の平均寿命は男性が66.5歳、女性が68.4歳で、日本人全体の平均寿命より、男女とも10歳ほど短命であるという報告もあります。
糖尿人は、できるだけ早く、美味しく楽しく糖質制限食で、身を守ることが必要ですね。
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は日経メディカル オンライン
2010. 9. 24に載った記事です。
『学会ダイジェスト
糖尿病の成人男性、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクは健康男性の3倍
スウェーデン・マルメ市のC.Törn氏
糖尿病と診断された人を平均15年間追跡したコホート研究で、糖尿病の成人男性は、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクが健康な男性の3倍に上ることが示された。スウェーデン・マルメ市のC.Törn氏(写真)らが、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会(EASD2010)で発表した。
これまでのいくつかの研究で、糖尿病患者は早期の死亡リスクが高いことが指摘されている。Törn氏らは、こうした事実がスウェーデンでも確認されるかどうか調べるために、スウェーデンの糖尿病患者を診断時から15年間追跡して、全ての死因および死因ごと死亡率、死亡した場所、死亡した日付を調べ、健康な対照者と比較した。
1992~1993年にかけて、診断時に15~34歳の患者を国内登録研究であるスウェーデン糖尿病発生率調査(Diabetes Incidence Study in Sweden)に登録した(n=879)。対照者は、患者が糖尿病と診断された時に、生年月日と性別が一致する健康な人を患者ごとに選んで設定した(n=837)。
追跡においては、記録をスウェーデン死因登録と照合して、2009年3月2日まで患者群(n=879)と対照群(n=837)両方の生存状態を確認した。追跡期間は中央値15.9年(範囲1~17年)、合計2万7173患者年であった。
15年間の追跡期間中、患者群の3.3%(879人中29人。男性24人、女性5人)と、対照群の1.1%(837人中9人。男性7人、女性2人)が死亡した。糖尿病患者が死亡するリスクは、糖尿病でない患者のほぼ3倍であった(ハザード比2.9、95%信頼区間:1.4-6.2)。この傾向は特に男性で著しかった(ハザード比2.8、95%信頼区間:1.2-6.5)。
死亡時の年齢は、患者群(29人)では、平均年齢が37歳(18~48歳)、対照群(9人)では、平均年齢が38歳(20~49歳)だった。
患者群では糖尿病が第1の死因で、34%(10人)で死亡原因と特定された。さらに糖尿病が死亡の一因と考えられるケースが5件あった。患者群で2番目に多かった死因は、循環器疾患の17%(5人)だった。
患者群では、過半数の55%(16人)が自宅で死亡し、残りは医療機関で28%(8人)またはその他の場所で17%(5人)が死亡した。これに対し、対照群では33%(3人)が自宅、33%(3人)が医療機関、そして33%(3人)がその他の場所で死亡した。
なお、死亡証明書に死亡日が明記されていたのは、対照群で100%だったのに対し、患者群では45%にとどまっていた。
これらの結果をもとにTörnは、「特に糖尿病の成人男性は、糖尿病発病後15年以内に死亡するリスクが糖尿病でない健康な男性の3倍であった。また、大半が自宅で死亡し、そのうち約半数は、死亡日が特定されないようなかたちで死亡していた」と指摘。「糖尿病の成人男性は、若年での死亡リスクが高い可能性がある。若年、中年の糖尿病患者をケアする際には、このような事実があることを認識し、自宅での生活に留意すべきだろう」と話した。(日経メディカル別冊編集)』
夕方から雨が降り始めた京都です。
さて今回は、mmx233さんから、貴重な情報をいただきました。
mmx233さん、ありがとうございます。
「糖尿病の青年男性は、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクが健康男性の3倍」
という何ともこわい、スウェーデンの報告です。
「1992~1993年にかけて、診断時に15~34歳の患者を国内登録研究であるスウェーデン糖尿病発生率調査(Diabetes Incidence Study in Sweden)に登録した(n=879)。対照者は、患者が糖尿病と診断された時に、生年月日と性別が一致する健康な人を患者ごとに選んで設定した(n=837)。」
ということなので、かなり若い人が対象の研究ですね。
「15年間の追跡期間中、患者群の3.3%(879人中29人。男性24人、女性5人)と、対照群の1.1%(837人中9人。男性7人、女性2人)が死亡した。糖尿病患者が死亡するリスクは、糖尿病でない患者のほぼ3倍であった。」
死亡原因は何であれ、総死亡率が糖尿病患者さんの方が、約3倍多かったということです。
「患者群では糖尿病が第1の死因で、34%(10人)で死亡原因と特定された。さらに糖尿病が死亡の一因と考えられるケースが5件あった。患者群で2番目に多かった死因は、循環器疾患の17%(5人)だった。」
これは、やや不思議ですが、若い人だからでしょうね。
糖尿病で直接亡くなるというのは、低血糖とか糖尿病性ケトアシドーシスとか特殊なものと考えられます。
患者群では、過半数の55%(16人)が自宅で死亡しているので、突然死に近い上記のようなことが起こったようです。
もっと高齢だと、糖尿病によって頻度が高くなるガンや心疾患、脳血管疾患などの死亡が、糖尿病による直接死亡より、はるかに多くなります。
日本の糖尿病糖尿病患者の死因で多いのは、虚血性心疾患(心筋梗塞など)、脳血管障害(脳卒中)などや糖尿病腎症で、これらを合わせると約4割です。
第2位はガンで約3割、第3位は感染症によるもので約1割です。
これらの血管障害、ガン、感染症を合わせると、糖尿病による死因の約8割を占めています。
今回のスエーデンの報告は、若年者対象なので、日本の一般的な糖尿人の事情とは異なっています。
ともあれ、糖質制限食で食前・食後の血糖値を良好に保てば、低血糖も高血糖も起こしませんし、将来的な動脈硬化の予防もできます。
糖尿人の平均寿命は男性が66.5歳、女性が68.4歳で、日本人全体の平均寿命より、男女とも10歳ほど短命であるという報告もあります。
糖尿人は、できるだけ早く、美味しく楽しく糖質制限食で、身を守ることが必要ですね。
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は日経メディカル オンライン
2010. 9. 24に載った記事です。
『学会ダイジェスト
糖尿病の成人男性、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクは健康男性の3倍
スウェーデン・マルメ市のC.Törn氏
糖尿病と診断された人を平均15年間追跡したコホート研究で、糖尿病の成人男性は、糖尿病発症後15年以内に死亡するリスクが健康な男性の3倍に上ることが示された。スウェーデン・マルメ市のC.Törn氏(写真)らが、9月20日から24日までスウェーデンのストックホルムで開催されている第46回欧州糖尿病学会(EASD2010)で発表した。
これまでのいくつかの研究で、糖尿病患者は早期の死亡リスクが高いことが指摘されている。Törn氏らは、こうした事実がスウェーデンでも確認されるかどうか調べるために、スウェーデンの糖尿病患者を診断時から15年間追跡して、全ての死因および死因ごと死亡率、死亡した場所、死亡した日付を調べ、健康な対照者と比較した。
1992~1993年にかけて、診断時に15~34歳の患者を国内登録研究であるスウェーデン糖尿病発生率調査(Diabetes Incidence Study in Sweden)に登録した(n=879)。対照者は、患者が糖尿病と診断された時に、生年月日と性別が一致する健康な人を患者ごとに選んで設定した(n=837)。
追跡においては、記録をスウェーデン死因登録と照合して、2009年3月2日まで患者群(n=879)と対照群(n=837)両方の生存状態を確認した。追跡期間は中央値15.9年(範囲1~17年)、合計2万7173患者年であった。
15年間の追跡期間中、患者群の3.3%(879人中29人。男性24人、女性5人)と、対照群の1.1%(837人中9人。男性7人、女性2人)が死亡した。糖尿病患者が死亡するリスクは、糖尿病でない患者のほぼ3倍であった(ハザード比2.9、95%信頼区間:1.4-6.2)。この傾向は特に男性で著しかった(ハザード比2.8、95%信頼区間:1.2-6.5)。
死亡時の年齢は、患者群(29人)では、平均年齢が37歳(18~48歳)、対照群(9人)では、平均年齢が38歳(20~49歳)だった。
患者群では糖尿病が第1の死因で、34%(10人)で死亡原因と特定された。さらに糖尿病が死亡の一因と考えられるケースが5件あった。患者群で2番目に多かった死因は、循環器疾患の17%(5人)だった。
患者群では、過半数の55%(16人)が自宅で死亡し、残りは医療機関で28%(8人)またはその他の場所で17%(5人)が死亡した。これに対し、対照群では33%(3人)が自宅、33%(3人)が医療機関、そして33%(3人)がその他の場所で死亡した。
なお、死亡証明書に死亡日が明記されていたのは、対照群で100%だったのに対し、患者群では45%にとどまっていた。
これらの結果をもとにTörnは、「特に糖尿病の成人男性は、糖尿病発病後15年以内に死亡するリスクが糖尿病でない健康な男性の3倍であった。また、大半が自宅で死亡し、そのうち約半数は、死亡日が特定されないようなかたちで死亡していた」と指摘。「糖尿病の成人男性は、若年での死亡リスクが高い可能性がある。若年、中年の糖尿病患者をケアする際には、このような事実があることを認識し、自宅での生活に留意すべきだろう」と話した。(日経メディカル別冊編集)』
初期臨床研修医です。
整形外科の術前血糖コントロールの患者さん(インスリン使用)で、元々の食事のオーダーは1600kcal、主食190gで、朝食後2時間の血糖が250程度になっていました。そこで、腎機能は問題ないことを確認後、総カロリーは変えず、主食半量(100g、病院食の主食は量が多く、食べきれないので半量を希望する方もいます)にしてみたところ、朝食後、血糖は朝食前とほぼ変わらない値(日によってばらつきはありますが、200超えはしなくなり110-150程度)となりました。また、超速攻型インスリンの使用量も全体的に減りました。
この患者さんの1日の糖質摂取量はスーパー糖質制限食ほど制限できてはいませんが、それでも効果があると感じました。
ちなみに私は糖尿病ではないですが、1年まえから厳格ではないですが、糖質制限しています。
前後の血液検査データは
(前 後)
Cr 0.7 0.7
BUN 16 24
BS 80(朝食なし) 90(食後4時間)
HbA1c 4.8 4.9
HDL-C 58 67
LDL-C 87 88
で、BUN、HDL-Cが上昇した以外著変ありませんでした。肝機能、尿酸値も著変なしでした。
整形外科の術前血糖コントロールの患者さん(インスリン使用)で、元々の食事のオーダーは1600kcal、主食190gで、朝食後2時間の血糖が250程度になっていました。そこで、腎機能は問題ないことを確認後、総カロリーは変えず、主食半量(100g、病院食の主食は量が多く、食べきれないので半量を希望する方もいます)にしてみたところ、朝食後、血糖は朝食前とほぼ変わらない値(日によってばらつきはありますが、200超えはしなくなり110-150程度)となりました。また、超速攻型インスリンの使用量も全体的に減りました。
この患者さんの1日の糖質摂取量はスーパー糖質制限食ほど制限できてはいませんが、それでも効果があると感じました。
ちなみに私は糖尿病ではないですが、1年まえから厳格ではないですが、糖質制限しています。
前後の血液検査データは
(前 後)
Cr 0.7 0.7
BUN 16 24
BS 80(朝食なし) 90(食後4時間)
HbA1c 4.8 4.9
HDL-C 58 67
LDL-C 87 88
で、BUN、HDL-Cが上昇した以外著変ありませんでした。肝機能、尿酸値も著変なしでした。
2010/09/27(Mon) 21:39 | URL | チワワ | 【編集】
チワワさん。
血糖コントロール良好で、超速効型インスリンの量も減量できてよかったです。
チワワさんのように病院給食の範囲内で、適宜糖質を減らす方法なら、
栄養士さんとのトラブルもあまりなくて折り合いがつけやすいですね。
血糖コントロール良好で、超速効型インスリンの量も減量できてよかったです。
チワワさんのように病院給食の範囲内で、適宜糖質を減らす方法なら、
栄養士さんとのトラブルもあまりなくて折り合いがつけやすいですね。
2010/09/28(Tue) 09:46 | URL | ドクター江部 | 【編集】
もし、江部先生のブログがなかったら、私は未だにグルコーススパイクの日々だったでしょう。
それを思うと、本当にぞっとします。 改めて先生に感謝します。
糖質制限食が、出来るだけはやく、日本の糖尿病治療の常識になればいいですね。
それを思うと、本当にぞっとします。 改めて先生に感謝します。
糖質制限食が、出来るだけはやく、日本の糖尿病治療の常識になればいいですね。
2010/09/28(Tue) 10:26 | URL | のばやん | 【編集】
うさぎさん。
(質問1)糖質制限.comのお菓子でしたら、3日に一回ほど食べても良いでしょうか?
糖質制限食OKのお菓子なら、毎日でも大丈夫です。
(質問2)オートミールには糖質は含まれているのでしょうか?
オートミールは、燕麦(エンバク)を調理しやすく加工したものです。
麦ですので、糖質は含まれています。
(質問1)糖質制限.comのお菓子でしたら、3日に一回ほど食べても良いでしょうか?
糖質制限食OKのお菓子なら、毎日でも大丈夫です。
(質問2)オートミールには糖質は含まれているのでしょうか?
オートミールは、燕麦(エンバク)を調理しやすく加工したものです。
麦ですので、糖質は含まれています。
2010/09/28(Tue) 15:18 | URL | ドクター江部 | 【編集】
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