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アルツハイマー病と糖尿病2010
こんにちは。

今回は、アルツハイマー病と糖尿病について、ゆうこさんからコメント・質問をいただきました。


【10/07/29 ゆうこ
古い記事ですが
先生

古い記事なのですが、たまたまネットで、
糖尿病患者の場合、アルツハイマー病の発症率は2~4倍以上”という記事に行き当たりました。
「血糖値を下げるインスリンは、記憶力などの認知機能に重要な役割を果たしているとされるが、合併(アルツハイマーと糖尿病)マウスでは脳内のインスリン量が減少していた。糖尿病のみのマウスに比べ、合併マウスでは糖尿病が重症化することも分かった。」
http://www.jiji.com/jc/v2?id=20100511health_08

という記事を見つけました。

糖質制限をして、インスリン分泌をあまりさせていないと、記憶力が悪くなる、のでしょうか・・・?
アルツハイマーになりやすい??

他の合併症であれば、高血糖を起こさなければ心配ないというのはわかりますが、インスリンを分泌が少ないとアルツハイマーになりやすいというのはちょっと気になります。】


ゆうこさん。

脳内のインスリン量と、血中のインスリン濃度は、また別の事柄です。

インスリンの分泌が少ないとアルツハイマー病になるとは、上記サイトにも記載はありません。

インスリン分泌が多い方が、はっきりアルツハイマー病の危険因子です。

7月28日(水)のブログ
<人類の主食は穀物ではない・ヒューマン・ニュートリションより>
にも書いた通り、

「血漿インスリン値の定期的な上昇が、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。」

「精製炭水化物摂取によるグルコースミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」

というのが、ヒューマン・ニュートリション及び私の意見です。

また、インスリンの過剰分泌・高インスリン血症が、メタボリック・シンドロームに認められるのは、世界の医学者の共通認識です。

そして、ヒトにおいては、外部からのインスリン注射がアルツハイマー病のハイリスクということと②、高インスリン血症がアルツハイマー病のリスクということが確認されています。

高インスリン血症では、脳内へのインスリン移行が低下するため、脳内のインスリンの作用が低下し、神経保護作用が減弱するそうです⑤。

糖尿病があるとアルツハイマー病になりやすいことは、過去の研究で確認されています。

以下、今までの主な文献を参考に考察してみます。

①九州大学の清原裕教授(環境医学)らによる久山町研究
「1985年時点で、神経疾患などを研究する米国立衛生研究所の研究機関の基準で認知症ではないと判断した65歳以上の826人を15年間にわたって追跡調査。その結果糖尿病やその予備群の人は、アルツハイマー病を発症するリスクが4.6倍高いことを報告」

②Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」

③Janson J等 Diabetes2004:53:474-481
「アルツハイマー病の約80%に2型糖尿病あるいは耐糖能低下がみられる」

④神戸新聞 2008年11月8日
「糖尿病の通院患者の半数以上に、「海馬傍回(かいばぼうかい)」と呼ばれる脳の部位が萎縮(いしゅく)するアルツハイマー病の初期症状がみられることが、加古川市内の病院に勤務する医師らの臨床研究で分かった。十五日から米国・ワシントンDCで開かれる北米神経科学会で発表される。」

⑤高齢者糖尿病の臨床 横野浩一 日老医誌 2007:44:572-574 
「肝臓などのインスリン分解酵素が末梢血液中のベータアミロイドを分解する。
インスリンはベータアミロイドの遊離を促進させ細胞内への蓄積を防ぐことが動物実験では報告されている。
高インスリン血症では脳内へのインスリン移行が、低下するため、脳内のインスリンの作用が低下して神経保護作用が減弱する。
高インスリン状態ではインスリン分解酵素がベータアミロイドを分解するのとインスリンを分解するのと競合するので、ベータアミロイドが血液中に残存しやすい。」


①の久山町研究によれば、糖尿病およびその予備軍はアルツハイマー病を発症する確率が4.6倍です。

②のRotterdam研究で興味深いのは高齢糖尿病患者で、脳血管性痴呆(VD)とアルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は約2倍でほぼ一緒なのに、インスリン使用者だけが4.3倍と非常な高値を示していることです。

①②③④にて糖尿病があるとアルツハイマー病になりやすいことは間違いないようです。

②と⑤を合わせて考えると、外部からの注射であろうと内因性であろうと、高インスリン血症がインスリン分解酵素を消費して、ベータアミロイドを分解するのを邪魔するため、アルツハイマー病になりやすいというパターン仮説が一つあることは間違いないようです。

それでは、インスリン分泌能が既に低下している時期の糖尿人は、どうなるのでしょう。

清原教授は、

「脳にたまってアルツハイマー病を引き起こすとされる物質(ベータアミロイド)は、インスリン分解酵素によって分解される。耐糖能異常の人はインスリンが少ない場合が多く、分解酵素も減るので、アルツハイマー病の危険性が高まる。」

と仮説を述べておられます。

こちらは単純にインスリン分解酵素が少ないので、ベータアミロイドが血液中に残存しやすいということですね。

「インスリン、インスリン分解酵素、ベータアミロイド」の3つのキーワードでここまで考察してきましたが、高血糖そのものによる代謝異常と認知症の関係はどうなのでしょう。

この問題に関しては、②のRotterdam研究が一定の参考になります。

糖尿病がない高齢者に比べたら、脳血管性痴呆(VD)とアルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は約2倍ですので、糖尿病で高血糖があると、両タイプの認知症に同等になりやすいと言えます。

一方、ことアルツハイマー型痴呆に関しては、インスリン使用者の相対危険度は4.3倍ですから、インスリンおよびインスリン分解酵素が大きく関与しているようです。

一方、コントロール良好の糖尿病でどうなのかは、疫学的調査がないので、よくわかりません。

しかし、他の合併症と同様糖尿病のコントロールが良好なら、アルツハイマー病にもなりにくいと予想されます。

また、糖質制限食なら人体の代謝全てが改善しますので、当然脳細胞の代謝もよくなりアルツハイマー病予防にも有効と思います。 (^_^)


*アルツハイマー病の病理
病理学的には脳組織の萎縮、大脳皮質の老人斑の出現がみられる。
老人斑はベータアミロイドの沈着であることが明らかになっている。(ウィキペディア)



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: タイトルなし
オレンジ さん。

糖質制限食で妊娠・出産された
糖尿病妊婦あるいは妊娠糖尿病の方は、本ブログでわかっているだけでも
数名以上おられます。
食事は自己管理でいいと思います。

農耕以前の人類やかつてのイヌイットは、当然ながら糖質制限食で妊娠・出産で
問題はありませんでしたね。
2010/07/29(Thu) 19:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
オレンジさん。

産婦人科の医師には
「糖尿病」と必ず告げてください。

2010/07/29(Thu) 21:42 | URL | ドクター江部 | 【編集
いつもブログ拝見させていただいています。

妊娠中に受けた糖負荷試験により、境界方の食後高血糖であろうと自覚している36歳女性です。

産後2年ほど経ちますが、HbA1Cが4.8→5.2→5.4とゆるゆると上がり始めていて、3ヶ月程前から先生の著書なども参考に自己流ですが、糖質制限を心がけた食生活に変えています。

ただ、現在の測定値では、糖尿専門医にかかっても、大丈夫としか言われないし、負荷試験もしてもらえません。
別件(肝機能検査)で半年に一度血液検査はしているのですが、この時空腹時血糖値&HbA1Cを測るくらいで、自己血糖測定をしているわけでもないので、このまま自己流で続けていっていいのだろうかと不安もあります。

私としては糖質制限に理解のある糖尿病専門医に一度きちんとみていただきたいと思うのですが、先生の診察は現実的に遠方なこともあり難しいので、大阪府堺市近辺でそのような専門医をご存知ないでしょうか?

大変失礼な質問だとは思いますが、よろしくお願いいたします。



2010/07/29(Thu) 21:57 | URL | 千咲 | 【編集
タイトルとは関係ない質問で恐縮です
糖質制限を始めてから約1ヶ月
とても体温が下がっているのですが
皆さんそんなもんですか?
以前は36.5度ほどあった体温が
現在は35.5度程です
またお時間のあるときにでもコメントを頂けると嬉しいです
2010/07/30(Fri) 06:40 | URL | たな | 【編集
Re: タイトルなし
千咲さん。

蛭間先生とご相談ください。


蛭間医院

内科,小児科

〒559-0003 大阪府大阪市住之江区安立4-1-12
TEL: 06-6673-3031
2010/07/30(Fri) 15:17 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
たなさん。

体温が下がるとは聞いたことがありません。
低カロリーに過ぎてないか、ご注意ください。
2010/07/30(Fri) 15:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
ラカントSのキャンディ
先日はコメントに丁寧に答えて頂いて、ありがとうございました。

タイトルに関係ないことですいません。

先日、ラカントSのキャンディを購入して間食していたのですが、何も食べないときより空腹感が増すのです。
これは血糖値が上がったということなのでしょうか?
ラカントSの中のエリスリトールは血糖値を上げないのですよね?
2010/07/30(Fri) 15:43 | URL | ゆき | 【編集
Re: ラカントSのキャンディ
ゆきさん。

ラカントカロリーゼロ飴は血糖値を上昇させません。
エリスリトールも血糖値を上昇させません。
2010/07/30(Fri) 17:43 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖質制限食がアルツハイマーと脳梗塞の進行を止めたらしい
江部先生、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、らこのアホ父(82)が通院先を変更して新年想像MRI で全身の画像を撮ってもらいました。脳梗塞が多数見つかりましたが全て「古い」と言われました。スーパー糖質制限食を開始して1年半です。脳が前部が左右ともに萎縮しており、
74.5% になっていました。
 少なくとも脳梗塞に関しては「糖質制限食が効果抜群」であり、アルツハイマー進行も遅くなったようです。
 お礼とともにご報告致しました。
2012/01/11(Wed) 12:15 | URL | らこ | 【編集
Re: 糖質制限食がアルツハイマーと脳梗塞の進行を止めたらしい
らこ さん。

お父上、良い方に向いて良かったですね。
2012/01/11(Wed) 13:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
糖尿病とアルツハイマーが関係あるとの事ですが、急に症状がでるにでしょうか?
朝起きたら部屋の入り口がないとか、カメラで監視されてるとか言います。
脳外科に行ってCTは異常ないが、糖の数値が高いと言われました。
1日でこんな状態になるのでしょうか?

2012/05/06(Sun) 11:23 | URL | しょう | 【編集
Re: タイトルなし
しょう さん。

アルツハイマー病は、1日で症状が急変することはないと思います。
脳外科にて診察されておられるので、あとは精神科か神経内科で相談されるのがよいと思います。
2012/05/06(Sun) 12:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
ジャヌビアとアルハイマー病の関係
私は糖尿病で先生の低炭水化物食をとっております。最近、NHKのためして合点という番組でジャヌビアとアルツハイマー病との関係について報道していました。つまりインクチンがβアミロイドを分解しているため、ジャヌビアなどの薬が却ってβアミロイド蓄積が助長されるという内容であったようです。私もその薬を内服しているため少し心配になっております。大丈夫でしょうか。教えていただければ幸いです。
2012/09/28(Fri) 17:43 | URL | 小野田利弘 | 【編集
Re: ジャヌビアとアルハイマー病の関係
小野田利弘 さん。


「インクレチンのβアミロイドタンパク蓄積抑制作用—アルツハイマー病治療薬創薬への期待」

インクレチンのβアミロイドタンパク蓄積抑制作用ということで
大丈夫と思います。
2012/09/28(Fri) 18:31 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました。
 ありがとうございました。安心致しました。
2012/10/06(Sat) 09:29 | URL | 小野田利弘 | 【編集
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