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コーヒー、カフェインと血糖値
おはようございます。

今回は、よよさんから、コーヒーに関してコメント・質問をいただきました。

「10/06/27 よよ
コーヒーは血糖値を下げる?
コーヒーについて両極の情報がありますが、はたしてどちらが正しいのでしょうか。

たまにコーヒーを飲むことがあり、その後低血糖のような症状になることがあります。食後すぐであればそのようなことはないのですが、空腹に飲んだ場合にそうなります。
血糖値が上がるという説からすると、上がった結果インスリンが大量に出て低血糖になるということになるのでしょうか。
最近、糖質制限をさぼっていたらたびたび低血糖症状に襲われてしまい、足のすねも攣ることが頻繁になりかなり反省しています。」


よよさん。
コメントありがとうございます。


五訂日本食品標準成分表によると

「コーヒー・浸出液100g中に
エネルギー(kcal) 4.0
たんぱく質(g) 0.2
脂質(g) 0.0
炭水化物(g) 0.7
※食物繊維(g) 0.0
カフェイン40mg 」

が含まれています。

私もよくブラックコーヒー、あるいは生クリームを入れて飲みます。コーヒーが好きで、毎日、4~5杯は飲んでいるので、いろいろ調べてみました。

たかがコーヒーされどコーヒー、いやはや調べてみると結構沢山、コーヒーと糖尿病の研究があるんですね。 

成分表からみると、コーヒー1杯が約150gとして、1回の糖質量はしれていますので、糖質そのものによる血糖値への影響は少ないです。

一方、コーヒーにはカフェインが入っています。

カフェイン血糖値を上げる」という報告が、医学雑誌「Diabetes Care」2008年2月号に掲載されました。糖尿病患者10例を対象にした小規模な研究です。

対象者に1日4杯分のコーヒーに相当するカフェインを錠剤で摂取させたところ、血糖値が8%上昇したとのことです。

この研究は、24時間の短期間の血糖値をみたもので、長期間ではありません。

また、カフェインは錠剤で、コーヒーそのものとは違います。

さらに、極めて少人数なので、研究としての価値はボチボチです。

コーヒーと糖尿病に関する大規模研究は、オランダから発表されたものが最初だと思います。男女1万7000人を7年間追跡した研究で、1日7杯以上コーヒーを飲む人は、1日2杯以下の人よりも糖尿病の発症率が5割少ないことが2002年のLancet誌に掲載されました。

また「Annals of Internal Medicine誌1月6日号、2004年」に米国の大規模コホート研究結果が掲載されました。

「男性4万人、女性8万人を最長18年間追跡し、コーヒーを1日6杯以上飲む人では、2型糖尿病の発症率がコーヒーを飲まない人より大幅に低い。

一方、カフェイン抜きコーヒーを飲む人では、2型糖尿病の発症率が飲まない人より低いものの“予防効果”は通常のコーヒーほどではない。」

2型糖尿病の予防には、カフェインが有効な可能性が高いと、研究グループはみているそうです。

米医師会雑誌Journal of American Medical Association(JAMA)2004年3月10日号に載ったスウェーデンのUppsala大学公衆衛生・介護学部のJohan Arnlov氏らの研究グループの前向きコホート研究「Uppsala Longitudinal Study of Adult Men(ULSAM)」に、コーヒーの飲用に関する記述があり、2型糖尿病患者でない936人のデータを分析対象としています。

その結果、コーヒー摂取とインスリン分泌量には、関連性が見られませんでした。

オランダと米国の大規模研究では、コーヒーおよびカフェインが、糖尿病に対して良い方向に働くことを示していますので、コーヒー党の私としては一安心です。ヾ(^▽^)

研究としては<10人で24時間の研究>に対し、二つの大規模研究のほうがはるかに価値が高いのです。

結論です。

カフェインは、ごく短期的に血糖値上昇作用が少しある可能性は否定できません。

しかし、カフェインを含む食品の代表であるコーヒーは、日常的な長期的な摂取により、2型糖尿病発症のリスクを低減させることが、複数の疫学的調査で確認されているので、安心して、コーヒーや緑茶などを飲んでよいと思います。(⌒o⌒)v

なおカフェインを1日200~300mg以上摂取した場合は 個人差はありますが、不眠・動悸・いらいら・頭痛・振戦・神経過敏などのカフェイン過剰症状がでることがありますので、飲みすぎには注意ですね。( ̄_ ̄|||)

カフェインを含む飲料には、コーヒー以外にお茶がありますね。

健茶王のカフェイン含有量は、番茶についで低いですね。

それに比べ、玉露のカフェイン含有量、半端じゃないですね。ヾ(゜▽゜)


**飲料別カフェイン含有量(福岡県薬剤師会調べ)

コーヒー   40mg/100ml 
紅茶     50mg/100ml 
せん茶    20mg/100ml 
玉露     160mg/100ml 
番茶     10mg/100ml 
ウーロン茶  20mg/100ml 
健茶王    13mg/100ml


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
細胞すりつぶし効果は
毎度お世話になります(^^;
また他の先生の著書で恐縮です。

崇高クリニックの荒木先生の著書「インスリンも薬もやめられた!すごい糖尿病治療/荒木裕・荒木里」によると、コーヒーや抹茶は、すりつぶして、でんぷん質をむき出しにしているから糖質を吸収しやすい、という理由でコーヒーと抹茶をNG食品に位置づけています。

この考え方はありでしょうか
2010/07/01(Thu) 13:48 | URL | Y太 | 【編集
横レスすみません。
Y太さん、善意で皆さんの質問に答えて下さる先生に他の先生の著書の内容を聞くのは、ルールに反してると思います。
人それぞれ考え方があります。
ここは、糖質制限について先生のアドレスを頂くのでありそのような質問は失礼だと思います。
2010/07/01(Thu) 14:28 | URL |  | 【編集
細胞すりつぶし効果
Y太さん  わたしも興味があります。

抹茶は葉っぱをパウダー状にして葉っぱ全てを飲むわけで、お茶を抽出するよりもより多くの成分を飲み込むことになるのはわかります。

ところが、コーヒーのような粗い粉砕であっても、すりつぶすことで云々ということはあるのでしょうか。

食品成分表によると、コーヒーやお茶の抽出液の糖質はあってもごくわずかで、お茶そのものの炭水化物のほとんどが食物繊維です。
この食品成分分析そのものに間違いばなければ、いかに砕こうがつぶそうが、たいした糖質量ではないはずです。

当エントリーの本文にあるように、糖質ではなく、カフェインがポイントということであれば納得ができますけど、、、


横レスさん  回答されるか否かはドクターのご随意ではないでしょうか。

ネットにこんな記述を見つけた、TVでこんなこと言っていた、新聞にこんなことが載っていた、その内容が糖質制限にかかわることであれば、コメントすることは、ドクター江部のブログの主旨に反することはないかと、わたしは個人的に考えております。
2010/07/01(Thu) 14:50 | URL | 糖質ポリス | 【編集
確かに先生がお答えになるかは私には関係ありません。でも、次から次へといろんな質問が書き込まれ以前先生も糖質制限についての質問には極力答えていきますが・・と書き込みされています。本質の質問にお答えいただけなくなると困ります。ブログ炎上や掲示板閉鎖など、いろんな問題があります。私が余計な心配する必要はないかもしれませんね。先生は良識のある方ですから。失礼いたしました。
2010/07/01(Thu) 15:23 | URL |  | 【編集
ADAで以下の発表がありました。
江部先生

こんにちは。
先日開催されたADA2010の米ハーバード大学公衆衛生大学院のLawrence De Koning氏の発表です。
これについて、先生のご意見をお聞きしたいと思い、コメントさせていただきました。

動物性タンパク質と脂質が多い低炭水化物食は、男性の場合、2型糖尿病のリスクを高める可能性があるという報告があった。4万人余を20年以上にわたって追跡した研究によって明らかになった。米ハーバード大学公衆衛生大学院のLawrence De Koning氏(写真)らが、6月25日から29日まで米オーランドで開催されている第70回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2010)で発表した。

 この研究は、男性医療従事者の疫学研究(Health Professionals Follow-up Study)の一環として取り組まれたもので、数種類の低炭水化物食と2型糖尿病の発症リスクとの関連性を明らかにすることを目的としている。

 2型糖尿病や循環器疾患あるいは癌を患っていない男性(4万1212人)を対象とし、1986年から20年以上にわたって追跡した。

 4年ごとに、食事に関するアンケートを実施し、3種類の低炭水化物食のスコアを算出した。具体的には、(1)低炭水化物・高総タンパク質/脂質スコア、(2)低炭水化物・高動物性タンパク質/脂質スコア、(3)低炭水化物・高植物性タンパク質/脂質スコアの3種類。それぞれのスコアは、タンパク質と脂質の十分位(摂取量増加にそって1から10まで)と、炭水化物の逆十分位(摂取量増加にそって10から1まで)を合計して計算した。各スコアの最大値は30であった。Cox比例ハザードモデルを使って、スコア五分位のそれぞれについて2型糖尿病の発症リスクを判断した。

 追跡期間中、糖尿病は2761人に確認された。年齢、喫煙歴、身体活動レベル、BMI、コーヒー摂取量、アルコール摂取量、糖尿病の家族歴、総エネルギーで調整後、各スコアごとに2型糖尿病リスクのハザード比(五分位分析の最上位 対 最下位)を求めたところ、高総タンパク質/脂質スコアのハザード比は1.32(95%信頼区間;1.16-1.50、p<0.0001)、高動物性タンパク質/脂質スコアのハザード比は1.41(95%信頼区間;1.23-1.62、p<0.0001)、高植物性タンパク質/脂質スコアのハザード比は0.93(95%信頼区間;0.82-1.05、p=0.44)となった。動物性タンパク質と脂質で調整後は、高総タンパク質/脂質スコアは2型糖尿病と有意に関連していなかった。

 赤身肉と加工肉で調整後は、高動物性タンパク質/脂質スコアと2型糖尿病リスクの関連性は減衰(ハザード比1.19、95%信頼区間;1.02-1.39、p=0.01)した。その一方で、鶏肉(ハザード比1.40、95%信頼区間;1.22-1.61、p<0.0001)または魚(ハザード比1.42、95%信頼区間;1.24-1.63、p<0.0001)で調整後は、変化は観察されなかった。一方、乳製品で調整後の関連性はやや強まっていた(ハザード比1.49、95%信頼区間;1.30-1.72、p<0.0001)。

 これらの結果から演者らは、「動物性タンパク質と脂質が多い低炭水化物食、特に大量の赤身肉や加工肉が含まれている食事は、2型糖尿病リスクを増加させる可能性がある」とし、一方で「植物性タンパク質と脂質が多い低炭水化物食は、2型糖尿病リスクの変化に関連していない」と結論付けた。

やはり低炭水化物でも赤肉の摂り過ぎは、直接に糖尿病発症に関係するのでしょうか?


内科大学院生
2010/07/01(Thu) 15:25 | URL | 内科 | 【編集
納得です
江部先生、コーヒーに関する細かい資料を提供していただきありがとうございました。

夫は大のコーヒー党で、日に必ず5~6杯は飲みます。甘いものも好きで、飴玉はいつも口にしていますが夫は全くの正常人です。

一方私はあまりコーヒーも紅茶も飲みません。私は糖尿人の一歩手前にきています。コーヒーを飲むとフラフラしていたのは、カフェインのせいだったのですね。これからは安心してコーヒーを飲むことにします。
ただし、甘いものは道連れにしないようにしますね。夕食を主食抜きにし、海藻や野菜をしっかり摂ったところ明け方の足のこむらがえりがおきないようです。
2010/07/01(Thu) 15:49 | URL | よよ | 【編集
Re: ADAで以下の発表がありました。
内科大学院生さん。

お久しぶりです。
このADAの報告、現在検討中です。
まとまりましたら記事にします。
2010/07/01(Thu) 22:26 | URL | ドクター江部 | 【編集
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