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高雄病院及び江部康二の食事療法への取り組み①
おはようございます。

高雄病院では、現在入院患者さんに、糖尿人には糖質制限食、アトピーさんには玄米魚菜食・・・といった形で、給食を提供しています。

今回は、ここに到る高雄病院食事療法変遷の歴史的経過を、説明したいと思います。

<玄米魚菜食>
高雄病院に初めて玄米魚菜食を導入したのは1984年のことです。病院給食として玄米を提供したのは高雄病院が日本初だったと思います。

当時、西洋医学を学び漢方医学も学び何とか目の前の患者さんの症状を改善したいという思いとはうらはらに、治療が上手くいかないこともあり臨床的に壁にぶちあたっていた時でした。

いろいろ悩みましたが、西洋医学も漢方治療も薬物療法中心なので、薬物治療の前に食生活そのものを根本的に見直す必要があるのではないかという思いが湧いてきたのです。

患者さんに食べてもらうのなら自らもということで、主食を玄米にし、ジャンクフードや甘い物も一切やめました。 10日間くらい経過して、不思議なことに中学校以来長年の付き合いであったアレルギー性鼻炎が、一旦ぴったりととまってしまいました。

ところが深酒が三日も続いたりたまに甘いものを食べると天罰てきめん、鼻炎が再発し、つくずく食生活の重要さを身をもって思い知らされてしまいました。

自らの体験も踏まえて1984年から当分の間は、アトピーも糖尿病もリウマチも喘息も肥満も・・・、全ての病気に対して玄米魚菜食を推奨していました。

<断食療法>
同時に絶食療法(断食療法)も病気治療の一環として導入しましたが、こちらも病院としては、日本初だったと思います。患者さんに断食して貰うなら自らもということで、早速試してみました。

最初の二日間は、午前中立ち眩み・脱力感がありましたが、三日目はそこそこの健康状態でした。それでも血糖値は35mg/dlと、ビックリするような数値が記録されました。普通なら意識不明で昏睡のレベルですが、断食中は血中ケトン体(脂肪の代謝産物)が高値となり、脳の主エネルギー源となるので、大丈夫なのです。脳はケトン体を利用するという事実を34才当時、既に自らの人体実験で証明していたみたいです。

その後しばらくはほぼ毎年1回断食をしたので計12~13回したことになります。鼻炎は断食後基本的にはコントロール良好です。しかし忘年会シーズン(深酒)や中国旅行(砂糖+酒)のおりはそれなりに再発して漢方薬を服用していました。

<糖尿病発症と糖質制限食>
ここ10数年は断食していませんが、第1回断食後は朝食抜きの1日2食でプチ断食を継続していて食生活にはそれなりに気をつけていたつもりでした。

しかし、2002年の病院の健康診断(52歳時)で遂にHbA1Cが6.3%と糖尿病の域に達しており、慌てて食後2時間の血糖値を測定してみると260mg/dlもあり愕然としました。血糖値を上昇させにくい玄米で実験してみても食後血糖値は240前後でほんの少し減少しただけでした。

ずっと玄米は食べているし魚中心で肉や油は控えめで、週に1.2回はテニスはしているし、普通のおじさんに比べればはるかに健康的なライフスタイルのはずでしたが、何故?

40歳過ぎからそれまでのウィスキーやブランデーから純米酒と恵比寿ビールに切り替えて当時浴びるように飲んでいたのが今から思えば敗因の一つでした。

また、毎日運動しているわけでもないのに、毎日食事の度に結構大量の糖質を摂取して食後高血糖を繰り返し、だめ押しに、毎晩純米酒と恵比寿ビールで、飲酒後高血糖を生じていたのでしょう。

この頃は、テニスの帰りにスポーツジムにもよって自転車こぎや腹筋・背筋運動もやってましたが、なぜか体重は徐々に増加し腹回りも順調に育っていきました。しっかり摘めるお肉なので筋肉増強ではなく脂肪増強に間違いありません。

旅行や講演や学会のときも、油ものはできるだけ控えて、ひたすらおにぎりやご飯を中心に食べてました。外食のときは当然玄米は無理で白米ですが、当時はそれがヘルシーと信じていたのでしっかり腹一杯食べていました。

結局、玄米・白米などを含めて摂取していた大量の糖質に対して、運動量が全くマッチしていなかったのですね。
 
52歳糖尿病発覚時には体重67kg(身長167cm)になって、血圧は160/100、腹囲は86cmと、最近流行のメタボリック・シンドロームの診断基準を見事に満たしていました。

ここにいたり、一念発起して、2002年6月から糖質制限食を開始しました。

高雄病院では、1999年から江部洋一郎院長(当時)が糖尿病治療に糖質制限食を導入し画期的な成果をあげていました。当初、半信半疑だった私も2001年に糖尿病の患者さんに初めて実施し劇的改善を得ていてたので、うまくいく確信はありました。

肉・魚・野菜・豆腐などおかずは食べ放題で主食(糖質)だけはなしです。酒は日本酒、ビールなどの糖質を含んでいる醸造酒は中止し、もっぱら焼酎としました。

その結果半年間の糖質制限食で、体重は56kgにおち、血圧も120/70、HbA1Cも正常になり、メタボリック・シンドロームも解消し、学生時代の体型にぴったり戻り、2010年現在も保っています。  

続く


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
コーヒーは血糖値を下げる?
コーヒーについて両極の情報がありますが、はたしてどちらが正しいのでしょうか。

たまにコーヒーを飲むことがあり、その後低血糖のような症状になることがあります。食後すぐであればそのようなことはないのですが、空腹に飲んだ場合にそうなります。
血糖値が上がるという説からすると、上がった結果インスリンが大量に出て低血糖になるということになるのでしょうか。
最近、糖質制限をさぼっていたらたびたび低血糖症状に襲われてしまい、足のすねも攣ることが頻繁になりかなり反省しています。



2010/06/27(Sun) 22:16 | URL | よよ | 【編集
Re: コーヒーは血糖値を下げる?
よよ さん。

コーヒーに関しては近日中に記事にしたいと思います。
私もコーヒーが好きです。
2010/06/28(Mon) 20:40 | URL | ドクター江部 | 【編集
いつもありがとうございます。

1年前に境界型と機能性低血糖があると
言われ小食頻回食をすすめられました。(一般食)
お腹いっぱいに食べないように
お腹ペコペコにならないように言われました。

現在はスーパー糖質制限食をしていますが
糖質制限食では食事回数を普通の3食にしてもよいでしょうか。

お腹いっぱい食べたり、長い時間空腹の後に
食べると糖質制限食でも膵臓に負担がかかるでしょうか。

家に居る日はまだ大丈夫なのですが
外出する日に小食頻回食にしようと思うと
ちょっと大変になります。
2012/05/06(Sun) 22:21 | URL | ももいちご | 【編集
Re: タイトルなし
ももいちご さん。

スーパー糖質制限食なら、普通に1日2~3回お腹いっぱいの食事でいいと思います。
人類は元々、1日2食ですので、膵臓の負担にはなりません。

もお腹が空いて間食を摂るなら、6Pチーズ2~3個、やナッツ類20~30粒、果物1/3個、
天日干しのスルメや貝柱、ツナ缶・・・
いろいろあります。
2012/05/07(Mon) 07:27 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。

小食頻回食だと
お腹がすいていなくても
時間が来たら食べるという
義務感のような食事になっていました。

十分お腹を空かせてから
「食べたい」という気持ちになってから
食べられる事がとても幸せと感じています。
2012/05/09(Wed) 07:49 | URL | ももいちご | 【編集
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