2007年07月19日 (木)
こんばんは。明日は第三金曜日、私のバンドのライブの日です。
で、今日はリハーサルがあってもうすぐ出かけるので、その前にブログを。
今回は、トランス脂肪酸篇の続きです。
食品の三大栄養素はタンパク質、糖質及び脂質ですが、その脂質を構成しているのが脂肪酸です。
トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、加工油脂やそれらを使用した加工食品に含まれています。トランス脂肪酸には様々な種類があり、国際的にトランス脂肪酸に関する明確な定義や測定法が統一されていないのが現状です
トランス脂肪酸の生成については、次の三つの過程が考えられています。
(1) 油を高温で加熱する過程において生成
(2) 植物油等の加工に際し水素添加の過程において生成
(3) 自然界において、牛など(反芻動物)の第一胃内でバクテリアにより生成(脂肪や肉などに少量含まれる)
*日本の食品に含まれる総脂肪酸中のトランス型脂肪酸の平均割合(天然と人工込み)
マーガリン 13.5%
バター 4.1%
チーズ 5.7%
牛乳 4.5%
食パン 9.3%
ドーナツ 0.8~23.9%
フライドポテト 0.8~19.5%
レトルトカレー 6.2%
牛肉バラ 4.9%
牛肉ヒレ 2.7%
(日本食品油脂検査協会調べ)
1)
ヘキサンなどの溶媒を使用して、高温で抽出された植物性油脂(市販大豆油、コーン油、ナタネ油など)や、高温の植物性油脂を使って調理した食品(揚げ物、フライ、天ぷらなど)、植物性油脂を含み高温で調理された食品(スナック菓子、冷凍食品など)などには、油脂の高温処理という過程で産生される、人工のトランス脂肪酸が多く含まれていることが分かってきました。
フライドチキンやポテトチップなど毎日食べたりするのは危険かも・・・
2)
マーガリン類(マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング)の原材料には、食用植物油脂と硬化油脂が使用されています。
食用植物油脂はサラダ油の原料でもある比較的安価な大豆油、菜種油、コーン油などがよく使われます。
これらの油脂は、常温では液状です。これに適度な硬さを付加してマーガリンにするために、硬化油脂(水素添加して固体状にした油脂)を配合します。
この硬化油脂を製造する工程で、トランス脂肪酸が発生します。したがって、硬化油脂を使用しているマーガリン類には人工のトランス脂肪酸が含まれることになります。
3)
牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸です。
一方、人工の硬化油脂等には、エライジン酸など、多種類のトランス脂肪酸が含まれています。
牛肉や乳製品には、2-5%程度のトランス脂肪酸が含まれていますが、その大部分はバクセン酸です。バクセン酸は、エライジン酸とは不飽和結合の位置が異なる位置異性体です。
摂取されたバクセン酸は、生体内にある酵素の働きで、共役不飽和脂肪酸の一種に変換され生理的に利用されることがわかっています。
人工の硬化油脂には、バクセン酸以外のトランス脂肪酸が多く、硬化油脂に含まれるトランス脂肪酸の大部分は、生体内でも共役不飽和脂肪酸に変換されず代謝されないので、生体内に何らかのかく乱を生じる可能性があります。
いやはや、トランス脂肪酸篇、かなり苦労しました。
天然のトランス脂肪酸と人工のトランス脂肪酸が、同じなのか違うのか?
なかなか、わからなくて求めるホームページにたどり着くまで大変でした。(´ε`)
結論
同じ名称のトランス脂肪酸でも、人体に悪影響がありそうなのは、水素添加あるいは加熱による人工的なトランス脂肪酸です。天然のトランス脂肪酸は、人体内で代謝され利用され、ガン予防作用の可能性もあり、問題はなさそうです。
江部康二
で、今日はリハーサルがあってもうすぐ出かけるので、その前にブログを。
今回は、トランス脂肪酸篇の続きです。
食品の三大栄養素はタンパク質、糖質及び脂質ですが、その脂質を構成しているのが脂肪酸です。
トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、加工油脂やそれらを使用した加工食品に含まれています。トランス脂肪酸には様々な種類があり、国際的にトランス脂肪酸に関する明確な定義や測定法が統一されていないのが現状です
トランス脂肪酸の生成については、次の三つの過程が考えられています。
(1) 油を高温で加熱する過程において生成
(2) 植物油等の加工に際し水素添加の過程において生成
(3) 自然界において、牛など(反芻動物)の第一胃内でバクテリアにより生成(脂肪や肉などに少量含まれる)
*日本の食品に含まれる総脂肪酸中のトランス型脂肪酸の平均割合(天然と人工込み)
マーガリン 13.5%
バター 4.1%
チーズ 5.7%
牛乳 4.5%
食パン 9.3%
ドーナツ 0.8~23.9%
フライドポテト 0.8~19.5%
レトルトカレー 6.2%
牛肉バラ 4.9%
牛肉ヒレ 2.7%
(日本食品油脂検査協会調べ)
1)
ヘキサンなどの溶媒を使用して、高温で抽出された植物性油脂(市販大豆油、コーン油、ナタネ油など)や、高温の植物性油脂を使って調理した食品(揚げ物、フライ、天ぷらなど)、植物性油脂を含み高温で調理された食品(スナック菓子、冷凍食品など)などには、油脂の高温処理という過程で産生される、人工のトランス脂肪酸が多く含まれていることが分かってきました。
フライドチキンやポテトチップなど毎日食べたりするのは危険かも・・・
2)
マーガリン類(マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング)の原材料には、食用植物油脂と硬化油脂が使用されています。
食用植物油脂はサラダ油の原料でもある比較的安価な大豆油、菜種油、コーン油などがよく使われます。
これらの油脂は、常温では液状です。これに適度な硬さを付加してマーガリンにするために、硬化油脂(水素添加して固体状にした油脂)を配合します。
この硬化油脂を製造する工程で、トランス脂肪酸が発生します。したがって、硬化油脂を使用しているマーガリン類には人工のトランス脂肪酸が含まれることになります。
3)
牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸です。
一方、人工の硬化油脂等には、エライジン酸など、多種類のトランス脂肪酸が含まれています。
牛肉や乳製品には、2-5%程度のトランス脂肪酸が含まれていますが、その大部分はバクセン酸です。バクセン酸は、エライジン酸とは不飽和結合の位置が異なる位置異性体です。
摂取されたバクセン酸は、生体内にある酵素の働きで、共役不飽和脂肪酸の一種に変換され生理的に利用されることがわかっています。
人工の硬化油脂には、バクセン酸以外のトランス脂肪酸が多く、硬化油脂に含まれるトランス脂肪酸の大部分は、生体内でも共役不飽和脂肪酸に変換されず代謝されないので、生体内に何らかのかく乱を生じる可能性があります。
いやはや、トランス脂肪酸篇、かなり苦労しました。
天然のトランス脂肪酸と人工のトランス脂肪酸が、同じなのか違うのか?
なかなか、わからなくて求めるホームページにたどり着くまで大変でした。(´ε`)
結論
同じ名称のトランス脂肪酸でも、人体に悪影響がありそうなのは、水素添加あるいは加熱による人工的なトランス脂肪酸です。天然のトランス脂肪酸は、人体内で代謝され利用され、ガン予防作用の可能性もあり、問題はなさそうです。
江部康二
江部先生に質問です。地震の報道を見ての質問です。地震被害地では、救助食品は糖質だけみたいです。おにぎり、菓子パンなど。投薬なしで糖質制限食を信奉している私としては、心配です。まさか、配給食の度に「ちょっと運動に行ってきます。運動しないと血糖値が危ないもんで」なんて言えませんよね。どうしましょう。
2007/07/19(Thu) 21:23 | URL | 心配性 | 【編集】
バクセン酸について調べていてお邪魔しました。
http://www.sciencedaily.com/releases/2008/04/080402152140.htm
によると、ラット実験では、バクセン酸がLDL値、総コレステロール値を下げたそうです。
その他の記事でも、いろいろ勉強させていただきます。
http://www.sciencedaily.com/releases/2008/04/080402152140.htm
によると、ラット実験では、バクセン酸がLDL値、総コレステロール値を下げたそうです。
その他の記事でも、いろいろ勉強させていただきます。
よっちゃんさま。
そうですね。天然のバクセン酸は生体でちゃんといい方に利用されるみたいですね。
エライジン酸など人工のトランス脂肪酸はよくないようです。
そうですね。天然のバクセン酸は生体でちゃんといい方に利用されるみたいですね。
エライジン酸など人工のトランス脂肪酸はよくないようです。
2008/04/07(Mon) 17:05 | URL | 江部康二 | 【編集】
はじめまして、tomoです(以前、別名でコメントさせて頂きました)。天然トランス脂肪酸の有害性に関する新情報をみつけましたのでご報告します。
牛の体内にあるトランス脂肪はヴァクセン酸(VA)と共役リノール酸(CLA)ですが、人がVAを食べると体内でCLAに変化するそうです。今まで共役リノール酸(CLA)は安全でむしろ抗癌作用があり有用と思われていましたが、CLAも有害という実験結果の中間報告が発表されています。
実験は61人の男女を対象にした9週間の期間に渡るもので中間報告は2008年11月に全米心臓病協会(American Heart Association)の会合で行われました。発表者はアムステルダム自由大学のブラウエル(ブラウワー)博士で、発表を中間報告の形でおこなったのは、関係する患者に結果を早く伝えたかったから、とのことです。正式な報告は後におこなわれるそうですが、現時点ですでに発表されているか否かは不明です。(正確には正式な報告書を読む必要があります。)
実験の方法と結果の概略は、文章の引用を禁止している、以下のサイトに解説されていますので、日本語で読むことができます。直リンクを避けますので次の指示に従って記事を検索して下さい。
1. まず以下のサイトのホームページを開いてください:
「ノギボタニカル」 URL http://www.botanical.jp/
2. このページの[健康と食品の解説]という部分をクリックします。
3. ページが変わったら「no.2008120547 2008/12/05 共役リノール酸(天然トランス脂肪酸)の有害性」という項目を探してクリックすれば詳細な解説が表示されます。
なお、私はこのページを偶然Googleによる検索中に発見しました。試しに「共役リノール酸 有害性」という2つのキーワードをスペースで区切って入力して検索したところ、トップに表示されましたのでGoogleを使う方が素早く解説ページにたどり着けると思います。
一応の結論です。糖質制限食は必然的に高脂質食になりますから、食事で摂る脂質はできる限り害の少ないものを選ばないと、長期的にみて、心臓病・動脈硬化・ガンなどのリスクを高める可能性があります。現時点での自衛策として、乳製品と脂肪の多い部位の牛肉の摂取を控えめにして、他の種類の肉と脂質(オリーブ油、高オレイン酸キャノーラ油、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油、胡麻油、ラードなど)や魚を多めにする方が良さそうです。(トランス脂肪はコールドプレスのオリーブ油などを除く市販の油にも数%程度含まれていると推定されていますから乳製品の4~5%という値が異常に高いというわけではありません。摂取の総量が多くならないように気を付けましょうという意味です。)
リスクを覚悟の上で牛の脂肪をたくさん食べるのもご自由ですが、牛由来の脂肪もマーガリンやショートニング、硬化油と同じように危険かもしれない、ということを考えに入れておいて下さい。
脂肪とタンパク質を多く摂取するアメリカ人富裕層女性の平均寿命が日本人女性のそれに及ばないのもトランス脂肪の摂りすぎが原因のひとつかもしれません。(アメリカ人の心臓病の多さから考えるとトランス脂肪原因説が有力かも…)
牛の体内にあるトランス脂肪はヴァクセン酸(VA)と共役リノール酸(CLA)ですが、人がVAを食べると体内でCLAに変化するそうです。今まで共役リノール酸(CLA)は安全でむしろ抗癌作用があり有用と思われていましたが、CLAも有害という実験結果の中間報告が発表されています。
実験は61人の男女を対象にした9週間の期間に渡るもので中間報告は2008年11月に全米心臓病協会(American Heart Association)の会合で行われました。発表者はアムステルダム自由大学のブラウエル(ブラウワー)博士で、発表を中間報告の形でおこなったのは、関係する患者に結果を早く伝えたかったから、とのことです。正式な報告は後におこなわれるそうですが、現時点ですでに発表されているか否かは不明です。(正確には正式な報告書を読む必要があります。)
実験の方法と結果の概略は、文章の引用を禁止している、以下のサイトに解説されていますので、日本語で読むことができます。直リンクを避けますので次の指示に従って記事を検索して下さい。
1. まず以下のサイトのホームページを開いてください:
「ノギボタニカル」 URL http://www.botanical.jp/
2. このページの[健康と食品の解説]という部分をクリックします。
3. ページが変わったら「no.2008120547 2008/12/05 共役リノール酸(天然トランス脂肪酸)の有害性」という項目を探してクリックすれば詳細な解説が表示されます。
なお、私はこのページを偶然Googleによる検索中に発見しました。試しに「共役リノール酸 有害性」という2つのキーワードをスペースで区切って入力して検索したところ、トップに表示されましたのでGoogleを使う方が素早く解説ページにたどり着けると思います。
一応の結論です。糖質制限食は必然的に高脂質食になりますから、食事で摂る脂質はできる限り害の少ないものを選ばないと、長期的にみて、心臓病・動脈硬化・ガンなどのリスクを高める可能性があります。現時点での自衛策として、乳製品と脂肪の多い部位の牛肉の摂取を控えめにして、他の種類の肉と脂質(オリーブ油、高オレイン酸キャノーラ油、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油、胡麻油、ラードなど)や魚を多めにする方が良さそうです。(トランス脂肪はコールドプレスのオリーブ油などを除く市販の油にも数%程度含まれていると推定されていますから乳製品の4~5%という値が異常に高いというわけではありません。摂取の総量が多くならないように気を付けましょうという意味です。)
リスクを覚悟の上で牛の脂肪をたくさん食べるのもご自由ですが、牛由来の脂肪もマーガリンやショートニング、硬化油と同じように危険かもしれない、ということを考えに入れておいて下さい。
脂肪とタンパク質を多く摂取するアメリカ人富裕層女性の平均寿命が日本人女性のそれに及ばないのもトランス脂肪の摂りすぎが原因のひとつかもしれません。(アメリカ人の心臓病の多さから考えるとトランス脂肪原因説が有力かも…)
2009/04/17(Fri) 22:44 | URL | tomo | 【編集】
天然トランス脂肪酸も有害かもしれないということで、バターの代替品としてのラードについて調べたところ、ラードがかなり優れた脂肪であると判明しました。
食品成分表を使い(無塩)バターとラードの脂肪酸の構成を100g当たりのグラム数(小数点以下四捨五入)で書くと、飽和がバター52に対しラード39、一価不飽和がバター19でラード44、多価不飽和がバター2でラード10、コレステロールはバター220mg、ラード100mgとなります。
血中脂質に与える各種の脂肪酸の効果からみて、飽和脂肪とコレステロールが低く一価不飽和のオレイン酸が多いラードはバターよりも健康的な脂肪であると評価できます。しかも(精製法に問題がなければ)ラードのトランス脂肪は少ないとおもわれます。
炒め物や製菓・製パンにバターを使われている方は代りにラードを使用されることをお勧めします。味や香りに問題があるのならばバターとラードを混ぜてみては如何でしょうか。
なお、いずれにせよバターもラードも飽和脂肪が多いので摂り過ぎに注意が必要です。
不足しがちで健康に良い多価不飽和のn-3系(オメガ3系)の必須脂肪酸を積極的に摂るためには、サラダにはシソ油かエゴマ油かアマニ油を少量でも使い、ナッツはクルミ、魚では青身のサバ、サケ、イワシ、ブリ、サンマ、アジなどを摂ることをお勧めします(マグロのトロやウナギも良いです)。サバ、サケ、イワシ、サンマには低糖質の水煮やトマト煮の缶詰があり手軽に利用できます。(誤字など修正:09/4/20 12:28)
食品成分表を使い(無塩)バターとラードの脂肪酸の構成を100g当たりのグラム数(小数点以下四捨五入)で書くと、飽和がバター52に対しラード39、一価不飽和がバター19でラード44、多価不飽和がバター2でラード10、コレステロールはバター220mg、ラード100mgとなります。
血中脂質に与える各種の脂肪酸の効果からみて、飽和脂肪とコレステロールが低く一価不飽和のオレイン酸が多いラードはバターよりも健康的な脂肪であると評価できます。しかも(精製法に問題がなければ)ラードのトランス脂肪は少ないとおもわれます。
炒め物や製菓・製パンにバターを使われている方は代りにラードを使用されることをお勧めします。味や香りに問題があるのならばバターとラードを混ぜてみては如何でしょうか。
なお、いずれにせよバターもラードも飽和脂肪が多いので摂り過ぎに注意が必要です。
不足しがちで健康に良い多価不飽和のn-3系(オメガ3系)の必須脂肪酸を積極的に摂るためには、サラダにはシソ油かエゴマ油かアマニ油を少量でも使い、ナッツはクルミ、魚では青身のサバ、サケ、イワシ、ブリ、サンマ、アジなどを摂ることをお勧めします(マグロのトロやウナギも良いです)。サバ、サケ、イワシ、サンマには低糖質の水煮やトマト煮の缶詰があり手軽に利用できます。(誤字など修正:09/4/20 12:28)
2009/04/19(Sun) 21:13 | URL | tomo | 【編集】
tomo さん。
いつも貴重な情報ありがとうございます。
検討してみます。
いつも貴重な情報ありがとうございます。
検討してみます。
2009/04/19(Sun) 22:34 | URL | 江部康二 | 【編集】
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