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糖質制限食と臨床研究など
おはようございます。

今日は、昼から大阪リバーサイドホテルで、糖質制限食の講演会です。

協賛の大塚化学さん提供の、糖質制限OKカレーの試食も楽しみです。

さて今回は、しょうこたんから、糖質制限食のデータなどについて、コメント・質問をいただきました。

「10/06/09 しょうこたん
糖質制限の臨床研究は?
東京都に住む理系学部四年生です。いつも先生のブログを楽しく拝見させていただいております。

さて、質問なのですが、ブログの内容を見る限り、これだけ成果を上げておられる「糖質制限」が日本の医学界ではまだ第一選択とみなされていないのは、単に臨床的に正確なデータが出てないからではないでしょうか。意図的に糖尿病状態のノックアウトマウス等を用いて糖質制限におけるデータ収集等は行われていないのでしょうか。糖尿病の救世主であると思われる療法のため、大変疑問に思います。」


しょうこたん。
コメントありがとうございます。

臨床的なデータは、日本でも糖尿病学会などで発表されるようになってきました。
また、医学雑誌にも、私も含めて論文が掲載されるようになってきました。

また欧米の、ニューイングンランド・ジャーナルやJAMA(米国医師会雑誌)といった権威ある医学雑誌に、糖質制限食に肯定的な結論の論文が、ここ数年よくのります。

それでも常識の壁は厚いものです。医学界のような専門家集団ほど、保守的になる傾向があります。かなり糖質制限食に理解を示す医師が増えてましたが、それでもまだまだマイナーの段階です。

米国でも、糖尿病専門医は、従来のカロリー制限食(糖質60%食)を推奨することがほとんどですが、全米最大の糖尿病患者会は、糖質40%程度ですが糖質制限食を推奨しています。このように、米国でも医師と患者会の間にギャップがあります。


☆☆☆日本の糖質制限食・学会発表

1)山門一平,江部康二,金大成,大櫛陽一.東海大学医学部,高雄病院:2型糖尿病における低炭水化物食の有用性とテーラーメード運動処方,第52回日本糖尿病学会年次学術集会.2009年
2)田中てる美,丸岡文雄,平田英一他.丸岡内科小児科クリニック,九州大学:糖質制限食による糖尿病及び肥満症導入・維持のための栄養指導上の工夫,第52回日本糖尿病学会年次学術集会.2009年
3)山田悟.北里研究所病院糖尿病センター:主食抜き指導にて血糖コントロールが改善した一例,日本糖尿病学会関東甲信越地方会.2010年1月30日

☆☆☆日本の糖質制限食・医学雑誌掲載
1)江部康二他:糖尿病食事療法として糖質制限食を実施した3症例,
      京都医学会雑誌51(1):125-130、2004
2)坂東浩,中村巧:カーボカウントと糖質制限食, 治療,90(12):3105-3111,2008
3) 江部康二:主食を抜けば(糖質を制限すれば)糖尿病は良くなる!,
  治療,91(4):682-683,2009
4)中村巧,坂東浩:昨日の常識・食事療法ではカロリー制限すべきである
今日の常識・食事療法では糖質制限すべきである 治療,91(12):2858-2859,2009
5)江部康二:低糖質食(糖質制限食carbohydrate restriction)の意義,
  内科,105(1):100-103,2010

2010年5月、岡山で開催された第53回日本糖尿病学会年次学術集会では、慈恵医大第三病院から、胃瘻のある患者さんへの流動食で、血糖値の比較をした研究が発表されました。

流動栄養食を

①糖質制限食②低GI食③一般食

の3つのグループにわけて、食後血糖値の変動を比較検討し、糖質制限食が一番血糖値の上昇がなかったとのことでした。

その他にも、糖質制限食に関する発表が、かなりの数あったようです。

確実に糖尿病学会レベルでも、糖質制限食が広がっています。糖質制限食に対して反発・拒絶の時代から、受容の時代に向かっていくものと期待しています。


☆☆☆糖質制限食に肯定的な欧米の疫学論文・・・他にもたくさん報告されています。

<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。

この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的には、トップランクに位置する権威あるものです。権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。

つまり糖質制限食では相対的に高脂肪食となりますが、脂肪をたくさん摂取したグループにおいても、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクが増えることはなく、その安全性が保証されたことになります。

<New England Journal of Medicine、2006年11月9日>
『米国の女性看護師82,802人を20年間追跡したところ、炭水化物が少なく脂肪とたんぱく質が多い食事でも、冠動脈疾患のリスクは上昇しなかった』

このような内容の研究が、New England Journal of Medicine、
2006年11月9日号にハーバード大学のグループにより報告されました。

今まで、 糖質制限食(即ち高脂肪・高タンパク食)の長期的な予後に関する本格的な研究がなかったのですが、とうとう出たという感じです。

論文を要約すると

『1980年、米国の女性看護師82,802人に対して、質問票を使った食事調査を行い、研究を開始した。
1980年から1998年までのあいだに、2~4年間隔で食事調査を6回実施し、一人一人の低炭水化物食の度合を得点化。
2000年まで20年間の追跡調査を行ったところ、1994人が心筋梗塞などの冠動脈疾患に罹患した。
解析の結果、「低炭水化物食得点」が上位10%のグループの冠動脈疾患の発生率は、下位10%のグループの0.94倍で有意差なし。

つまり、脂肪とたんぱく質が多く炭水化物が少ない食事をしているグループでも、心臓病のリスクは上昇しなかった。
**Halton TL, et al. Low-carbohydrate-diet score and the risk of coronary heart disease in women. New England Journal of Medicine 2006;355:1991-2002.』

低炭水化物食を長期に続けた場合、心臓病リスクの上昇などの害が生じるのではないかという批判が、従来の医学界おいてありました。

今回の研究は、低炭水化物食の長期的な安全性を調べる目的で、20年間、82,802人の女性の分析が行われました。

その結果、少なくとも心臓病に関しては、高タンパク・高脂肪食の長期的安全性があるていど保証されたということになります。


<2008年のニューイングランド・ジャーナル、イスラエルの研究報告>
NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
低炭水化物食(糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」
が、長年の食事療法の論争に決着をつけたと思います。

これは、ネットの1個人の意見や仮説ではなく、322人を2年間追跡した権威ある疫学的研究です。

低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• イスラエルの322人(男性86%)
• (1)低脂肪法(カロリー制限あり)
• (2)オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
• (3)低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンス式ダイエット)
• 3グループの食事法を2年間経過観察。
• 低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241

体重などを分析した結果、2年後の体重減少幅の平均は
(1)低脂肪法 2.9キロ
(2)地中海法 4.4キロ
(3)低炭水化物法 4.7キロ
となり、
(3)低炭水化物法が最も減少していた。また、善玉コレステロールも増えていた。


***

さて一方、動物実験で食事の研究をするのは、大きなカテゴリー・エラーです。それは、主食がヒトとは異なっているからです。

例えば、マウスなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降、ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。

510万年間、草原の草の種子(穀物・高糖質食)を食べ続けてきたネズミに、高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。

これは単純に、代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて、マウスに病気を作るという実験です。インスリン抵抗性を始めとして、全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。

また、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。ゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、マウスと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。

人類の主食が島泰三氏の説(親指はなぜ太いのか・中公新書)の如く「骨、骨髄」であったかは兎も角 、穀物で無かったことは確実です。そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。

またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠です。EPAとDHAは、地上の植物性食品には含まれていません。

従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高蛋白・高脂肪食を、脳が急速に発達した20万年前頃、主食として食べてたことは、間違いないでしょう。

結論です。

農耕前の400万年間、人類の主食は穀物ではありませんでした。マウスで薬物の毒性試験のような安全性の確認をするのはいいでしょう。

しかし、主食が穀物のマウスに高脂肪食をあたえるような実験をして、その結果をヒトに当てはめて考察するのは、根幹が間違っています。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
髪の毛
糖尿病発覚時は抜け毛が酷くて頭頂部がスカスカ状態でしたが、1年経ち見事復活しました。一時はプロペシアを飲もうと考えましたが、見事な復活に正直驚いています。今は安物の育毛剤だけでOKです。よく脂物をとると禿げるといいますが、糖質が原因なんですかね。
2010/06/13(Sun) 14:04 | URL | ケイ | 【編集
ネズミを使った実験
いつも先生のブログを楽しみにしております。
草の種子が主食のネズミに高脂肪食を与えた次の実験の結果は気にしなくてよろしいですね。

http://www.lifescience.jp/ebm/cms/ms/no.12/data.pdf
2010/06/13(Sun) 19:14 | URL | にまる | 【編集
ネズミの血糖値
ネズミの血糖値を高糖質食でとり続けるとインスリンの分泌量がどう変化するのか逆に興味が出てきました。

及び一般の草食動物は?
高繊維の時の高糖質と

液体での高糖質ではどう変化するのか?とか

今後の研究にならないものでしょうか?
2010/06/14(Mon) 13:49 | URL | 哲学者 | 【編集
糖尿病に効くサブリメント
江部先生のブログを昨晩開いたら「糖尿病の本当の原因」はとのタイトルがありてっきり先生の書かれた内容と思い、最後まで拝見させて頂いたところ、クロムフェリンという物質が糖尿病の大きな改善に結び付くもので画期的なサブリメントがあるとのことですが実際どうなのでしょうか?愚問ならお詫び致します。
2010/06/14(Mon) 15:31 | URL | レクサス | 【編集
Re: ネズミを使った実験
にまるさん。

仰有る通りです。
典型的なカテゴリーエラーです。

510万年間、高糖質食(穀物)が主食だったネズミに
高脂肪食や高タンパク食を与えれば、代謝はかく乱されます。
2010/06/14(Mon) 17:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: ネズミの血糖値
哲学者さん。

お久しぶりです。
草食動物や肉食動物の血糖値は、ほんんど上昇しません。
肝臓の糖新生が活発に行われていると思います。

正常のネズミは高糖質食を食べても、510万年間大丈夫だったので問題ないと思います。

動物実験でよく使われるのは、GKラットという糖尿病に無理矢理したネズミなので
当然糖質を摂取すると高血糖となります。
2010/06/14(Mon) 17:17 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 糖尿病に効くサブリメント
レクサス さん。

それは、私が書いたものではありません。

当然、クロムフェリンで糖尿病が改善することはありません。
2010/06/14(Mon) 17:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
ソラさん。

酒は100ml中に5gくらいの糖質ですので
調味料くらいなら大丈夫です。

野菜も大量摂りすぎれば、糖質が結構あります。
例えばタマネギ中玉1個が200gですが、糖質14gあります。

具体的には
「やせる食べ方」(東洋経済新報社)2010
をご参照いただけば幸いです。
2010/06/14(Mon) 17:28 | URL | ドクター江部 | 【編集
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