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満腹感と空腹感2010
おはようございます。

やっとお天気になった京都です。

今日は、満腹感空腹感について考えて見ます。

今回のブログは、東京都神経科学総合研究所のホームページを参考にさせていただきました。
http://www.tmin.ac.jp/medical/12/feeding1.html

東京都神経科学総合研究所のホームページによると、古典的な説では、

血糖値の上昇
②胃壁の拡張による迷走神経刺激

①②が視床下部の満腹中枢に伝わって満腹感が生じるとされてきました。

最近はこれに加えて、

「脂肪細胞の分泌するレプチンや摂取したアミノ酸も満腹中枢に影響をあたえる。」

とか

「視床下部に摂食に関連する神経ペプチドが多種存在する。」

とか、いろいろ複雑になってきているそうです。

要するに案外、満腹感に関して、きっちり理論的に説明できているわけではないようです。

人間はともかくとして、ライオンなどの肉食獣は、血糖値が上昇しなくても満腹になりますよね。
また、牛や馬といった草食獣も、血糖値が上昇することはありませんが、満腹になります。

人類も農耕前の399万年間は、血糖値の上昇はほとんどなくて満腹しています。伝統的食生活だったころのイヌイットも4000年間、血糖値の上昇はなくても満腹しています。

そうすると、あくまでも、仮説ですが、糖質制限食実践中の人、農耕前の人類、イヌイットにおいては、
「胃壁の拡張による迷走神経刺激」と「脂肪細胞の分泌するレプチンや摂取したアミノ酸」
「視床下部に摂食に関連する神経ペプチド」などが、満腹中枢に影響を与えていたと考えられます。

血糖値の上昇」による満腹中枢の刺激というのは、人類においては農耕以後の比較的新しいシステムと考えられます。

糖質制限食実践中の人は、農耕前の399万年間のシステムにより、満腹感を得ていると考えられます。


空腹感の発生

満腹感に比べると、空腹感が生じる仕組みは、さらにわかっていないようです。

「血糖値が上昇していない」「胃壁が弛緩している」状態は、満腹感の裏返しなのですが、それだけでは空腹感が生じるには、不十分です。

確かに機能性低血糖症では血糖値が60mg/dl以下に下がって、異常な空腹感が生じることはあると思います。

しかし、正常人では、食後しばらくすると肝臓で糖新生をして、血糖値を一定レベルに保つので血糖値が60mg/dl以下に下がることはありません。

つまり、正常人では、血糖値が90mg/dlとかあっても、通常の空腹感を生じるわけです。

東京都神経科学総合研究所のホームページによれば、

「胃壁の弛緩も空腹感を生み出す直接的な刺激にもなっていないようです。実際に、食事の後ずいぶん時間が経って胃が空になっているはずなのに、遊びや仕事に熱中していると空腹を忘れるのはよく経験することです。血糖値が上昇せず、胃壁が弛緩している状態は空腹感を生み出すために必要ですがそれだけでは十分でないようです。しかし、それまで空腹だと感じていなくても、おいしそうな匂いを嗅いだり、他人が何かを食べるのを目撃したり、さらには食べ物の話をしたり、想像しただけで突然、猛烈な食欲に襲われることがあります。したがって、食欲は空腹時に、なんらかの食物に関連した刺激が加わることによって誘導されると考えた方が正しいかもしれません。つまり、視覚、聴覚、嗅覚などを介した食物刺激や食物に関する想いが脳を刺激し、食欲を生み出すと考えられるのです。ただし、満腹の時には、このような刺激に反応しないどころか時に嫌悪感を抱くことさえあります。」

「摂食に関連する機能には脳の様々な領域が関係します。一番最初に述べた食欲(空腹感)の発現には大脳新皮質の扁桃体(好き嫌いの決定)や前頭前野(意欲の発現)が関係すると言われています。また食物刺激の受容には視床や大脳新皮質の味覚野、視覚野、聴覚野などが関わります。また摂食の際の咀嚼・嚥下には下位脳幹の運動ニューロンが関係しますし、延髄から伸びる迷走神経は胃腸の蠕動運動や消化活動を調節します。このように摂食促進作用には単に視床下部だけでなく広範囲の脳の領域が関係します。」


結局、空腹感というのはまだ仮説のようですが、ベースに「血糖値が上昇していない」「胃壁が弛緩している」という状態があって、視覚・聴覚・嗅覚などを介した様々な食物刺激や食物に対する想いが、単に視床下部だけでなく広範囲な脳の領域に影響を与えて、生じるということになりますね。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
江部先生
ありがとうございました。

何となくですが、空腹感はかならずしも、体が「栄養不足!」と感じて、食べることを要求している時だけではなくやって来るものだと言う事ですね。

ところで、今日体重がストンと落ちていました。
ご褒美にパスタとケーキ半分を食べてしまいました~!(^-^)
でも、禁断のケーキを食べたにもかかわらず、大して感激しませんでした。

そして、その3時間後に襲ってくるかも知れない低血糖による空腹感にドキドキしてましたが、全く大丈夫でした!
何でだろう? 分かりませんが、体が少し糖分を拒否し始めたのかな?!と想像しています。

何度もトライして数日で断念していた糖質制限食でしたが、最初の3日間断食したおかげで、今回は無事に軌道(3週間)に乗りそうです!<(ってケーキ食べてるやーん!汗)
これからも頑張りま~す!
2010/05/25(Tue) 20:34 | URL | 豆しば | 【編集
Re: 明後日
ドリーム さん。

了解です。
2010/05/25(Tue) 21:47 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: はじめまして。
fumiさん。

山田悟先生、は糖尿病専門医指導医で、年に一回糖尿病専門医1000人を集めて教育講演するような立場におられます。

そのような先生が糖質制限食に理解を示していただいたことは、私にとっても嬉しい限りでした。山田先生、仰有る通り人格的にも素晴らしい方です。
ご親族の方、良かったですね。

fumiさんのブログ、覗いて見ます。
2010/05/26(Wed) 07:39 | URL | ドクター江部 | 【編集
食べても食べても満腹感が得られない
妻が先月糖尿病の検査をし2型の糖尿病と診断されインスリン注射と飲み薬(ゼチア)((セイブル)での治療を始めました。治療をするにあたり教育入院という事で日赤病院に10日ほど入院し単位の勉強やカロリー計算など、食事療法と運動療法を中心に勉強してきたようです。入院前は、スナックで働いており毎日大量のお酒を飲んでいましたが(焼酎)仕事帰りにお腹がすきラーメンをたまに食べて帰るくらいでした。、治療を始めてから空腹感がまし食べてもお腹いっぱいにならないようです。また、入院後食事の単位制限量をゆっくり食べるようにし食事を20分かけ食べるようになりましたが全然満腹感がえられなく基準量の2倍くらい食べても満足出来ないようです。自宅にて治療を継続しておりますが体重が増えました。身長168センチ体重52キロだったのが56キロにふえて来ました。食事前の血糖値は、平均225位です。
2011/04/22(Fri) 09:53 | URL | 清水 正博 | 【編集
Re: 食べても食べても満腹感が得られない
清水 正博 さん。

インスリンで空腹感が増します。
糖質制限食なら、インスリンの量が1/3以下になります。
血糖値も改善すると思います。
主治医とご相談ください。
2011/04/22(Fri) 17:18 | URL | ドクター江部 | 【編集
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