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糖質制限食と脳、便通、炭水化物中毒
おはようございます。

今回は、糖質制限食を始めて40日のゆうやんさんから、糖質制限食に関するコメント・質問をいただきました。


「10/04/29 ゆうやん
タイトルなし
初めまして。

現在、親子でスーパー糖質制限食に挑戦しているゆうやんと申します。

糖質制限食を始めて40日が経ちました。

『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』
糖質制限食 春のレシピ』

などの書籍も購入し、
素人でも出来る範囲で実践しています。

以下質問になります。

糖質制限食をすると脂肪が燃えやすくなる、ということですが、食事の量を減らした場合、足りないエネルギーをお腹まわりの脂肪で代用することは出来るのでしょうか?その場合、脳などに影響は出ませんでしょうか?

今現在、便通が安定していないのですが、便通が安定するようになったら、ケトン体システムも活性化した、といえるのでしょうか?ケトン体システムが活性化するまでの期間は大体どのくらいなのでしょうか?

スーパー糖質制限食を始めてから、精神が不安定になることが多くなったのですが、これもまだケトン体システムがうまく働いていないからでしょうか?カロリーはオーバーしないように肉や卵などで適量摂るようにしています。先生が診られた患者さんで途中、精神が不安定になられた患者さんはいらっしゃいましたか?

質問ばかりで申し訳ないのですが、宜しければお答えいただけると有り難いです。」


ゆうやんさん。

『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』
『糖質制限食 春のレシピ』

のご購入ありがとうございました。

「糖質制限食をすると脂肪が燃えやすくなる、ということですが、食事の量を減らした場合、足りないエネルギーをお腹まわりの脂肪で代用することは出来るのでしょうか?その場合、脳などに影響は出ませんでしょうか? 」

体脂肪(皮下脂肪+内臓脂肪)は基本的に食料の備蓄代わりですから、普通の体型の人は絶食しても水だけで1ヶ月は生存できます。

体重50kg、体脂肪率20%の人なら、体脂肪は10kgあり、9万キロカロリーの備蓄エネルギーを保有していますから・・・。

一方、糖質制限食を実践すれば、高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。肝臓でアミノ酸や乳酸やグリセロール(中性脂肪の代謝産物)からブドウ糖を作り(糖新生)、血糖値を保つからです。

さらに、脳は脂肪酸の代謝産物のケトン体を、エネルギー源としていつでも利用できます。つまり、脳がエネルギー源としてブドウ糖しか利用できないというのは、明確な間違いということですね。

「今現在、便通が安定していないのですが、便通が安定するようになったら、ケトン体システムも活性化した、といえるのでしょうか?ケトン体システムが活性化するまでの期間は大体どのくらいなのでしょうか? 」

糖質制限食と便通に関しては、よく質問があります。

過去、外来患者さん・入院患者さん・ブログ読者さんから、それぞれいろんな情報をもらってきました。個人差があり、何種類かのパターンがありますので説明いたします。

Aさんは、3日に一度ひどい腹痛・下痢だったのが、糖質制限食の実践により、有形の写真に撮って飾りたくなるような、綺麗なUNKOに改善したそうです。

Bさんは、ひどい便秘だったのが毎日あるようになったそうです。

Cさんは、糖質制限食を始める前は、毎日あった便通が、糖質制限食を始めて10日目くらいから、便秘ぎみになったそうです。でも「野菜をよく噛むようにして多めに摂って、1ヶ月目くらいから少しずつ改善し、現在3ヶ月目ですが、快調」とのことです。

さて、糖質制限食により、下痢が治った人、便秘が治った人、初期便秘になった人、三者三様の変化がでました。

私自身も、当初の三ヶ月間、普通の便の時と、便秘気味になったり、逆に急に下痢したりと定まらなかったのですが、四ヶ月目くらいから快便となり安定してきました。今までと全く異なる食生活になるので、腸内細菌が安定するまで約3割程度の人に便通の変化が起こるようです。

一旦便秘気味になったとしても、糖質制限食で代謝全てが改善するので、しばらく経過したらCさんのように、便通も好調になることがほとんどです。

肉類や魚貝類や豆腐などと共に、Cさんの如く野菜をたっぷりよく噛んで摂取するのが、便通のコントロールには良いように思います。

スーパー糖質制限食を実践すれば、当日から徐々に脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムが活性化していきます。

個人差がありますが、血中ケトン体は数日で基準値を超えてきて、尿中ケトン体が陽性となります。血中ケトン体は、一旦、2000~3000~4000μM/L程度と基準値(26~122)を大幅に超えますが、その後徐々に落ち着いていきます。

スーパー糖質制限食開始3ヶ月くらいで、血中ケトン体は1000前後になりますが、腎臓の再吸収がよくなるのと心筋や骨格筋のケトン体利用効率が良くなるので、尿中には出なくなります。

このくらいの血中ケトン体値が、農耕前400万年間の人類の基準値と考えられます。この頃になると体重減少は緩やかとなっていきます。

「スーパー糖質制限食を始めてから、精神が不安定になることが多くなったのですが、これもまだケトン体システムがうまく働いていないからでしょうか?カロリーはオーバーしないように肉や卵などで適量摂るようにしています。先生が診られた患者さんで途中、精神が不安定になられた患者さんはいらっしゃいましたか? 」

スーパー糖質制限食を始めてから、精神が不安定になる人は、まれにおられます。そのほとんどがいわゆる<炭水化物中毒>の人です。炭水化物中毒というのは日本では聞き慣れない言葉ですが、米国では定着していて、本まで出版されています。

①食べることばかり考える。
②食事で満足感が得られない。食後2~3時間でまた何か食べたくなる。
③疲労感が常にある。
④原因不明の不安や怒りを覚えることがある。
⑤感情が高ぶりやすい。
⑥肥満がある。

リチャード・ヘラー&レイチェル・ヘラー著の「低炭水化物ダイエット」(ネコ・パブリッシング)によれば、炭水化物中毒の人には、上記①~⑥がよくみられ、高インスリン血症を伴うことが多いそうです。

最終的に慣れるしかないのですが、まずは、スタンダード糖質制限食くらいから始めて見てください。つまり、1日1回(例えば昼食)は少量の主食を摂取して、朝と夕食はスーパー糖質制限食。

1~2ヶ月で慣れることが多いです。一方、炭水化物中毒は、ニコチン中毒とよく似ているという説もありますので、それなりの覚悟はいるかもしれませんね。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
お忙しい中失礼いたします。
先生のブログ読ませていただいております。本も4冊買わせていただきました。昨年は「1日1食」をしていましたが、血糖値はいったりきたりしていました。そこで「1日1食」に「糖質制限」を組み合わせることにしたのです。糖質制限を始めてから40日ほどになります。体重も10キロほど減りました。いよいよ本格的に軌道にのせようと考えていたのですが、最近なんだか調子がよくないのです。手が荒れたり、手足が冷えたり、しびれたり、下痢は3日ほどでなおりましたが、足が冷たいのは神経障害や壊疽の初期症状だったりするのでしょうか?かかりつけの医者にはまだ説明しておりません。不安が不安をよんで、パニックみたいになっています。先生のおっしゃられている理論はとてもわかりやすくて、納得のいくものです。本などで調べてみると、急激な血糖の回復に伴い、なんらかの症状が出たりするなどというものもありました。お忙しい中、本当に恐縮ですが、何かコメントをいただけるとありがたいです。
2010/05/01(Sat) 18:11 | URL | マツくん | 【編集
お忙しい中、回答頂き有り難うございます。

心の靄が晴れたようで、すっきり致しました!

私は現在23歳で自律神経失調症を抱えています。

担当のお医者さんから江部康二先生の本を勧められて、

初めて糖質制限食というものを知りました。

先生の本を拝見してから、私の食事に対する考え方は180度変わった気がします。

先生は私の神さまです(笑)

本当に感謝しています!!!

まだまだ完治には程遠いですが、

いつか先生に良い報告が出来る日が来れば良いな、と思っています^^

これからも先生のブログを楽しみにしています!

糖質制限食がもっと、もっと、広まるその日がくることを心から祈ってます<○>
2010/05/01(Sat) 18:20 | URL | ゆうやん | 【編集
Re: お忙しい中失礼いたします。
マツくん 様

本のご購入ありがとうございました。

1日1食ですと、低カロリーにならないように注意が必要です。

私自身は、3ヶ月くらい1日1食にしていましたが、食べる楽しみを確保するため
1日2食に戻しました。

手足が冷えたりは摂取カロリー不足の可能性がありますので検討してみてください。

糖尿病神経症害はある程度の期間高血糖が持続して発症します。
通常は数年以上と思います。
糖尿病診断時で7.5%、診断25年後50%と言われています。
血糖コントロール良好なら頻度は増加しません。

血糖値の急速な改善で、下肢などに激しい痛みを来すことがあり、治療後神経障害と
呼ばれています。数ヶ月で落ち着きますが、HbA1c改善を1%/月以内にすると防げるようです。
2010/05/02(Sun) 11:07 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。
江部先生
 お忙しい中、コメントへの返答ありがとうございました。書いたときには、正直かなり動揺しておりました。文章的にも配慮を欠いたものになっていたと思います。先生からコメントをいただき、心の平穏を取り戻すことができそうです。
 体重の減少が日に日に形になっていて、1月から15キロくらい減りました。効果は高いと実感しています。どうか先生の「糖質制限」で希望をもてる方がひろがっていくと、すばらしいと思います。本当は先生のもとへ直接伺ってみていただけるといいのですが、このようなコメントという形で甘えてしまいました。もっと気軽に通える場所に「糖質制限」が出来る場所があるといいな、と願います。
 コメントをいただいただけでも、たいへんありがたいのですが、「壊疽」について、「フットケア」ということばがあります。これはとにかく傷などができたら、すぐにでも医者に行く必要があるのでしょうか。それとも血糖のコントロールで、自然治癒力を保ち、菌などにたいする抵抗力を高めれば、リスクが落ち着く方向にむかうのでしょうか。つきつめて考え込んでしまうタイプで、糖尿の人は水虫などの感染がこわいので、さまざまな人が出入りする温泉などにはいけないのではないか、なんて悪いことを考えたりしています。
2010/05/03(Mon) 07:15 | URL | マツくん | 【編集
Re: ありがとうございます。
マツくん様

優先順位の一番は血糖コントロールです。
血糖コントロールが良ければ、合併症は生じません。

「それとも血糖のコントロールで、自然治癒力を保ち、菌などにたいする抵抗力を高めれば、リスクが落ち着く方向にむかうのでしょうか。」

その通りと思います。
2010/05/03(Mon) 09:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
【炭水化物中毒】とは?
江部先生、1つ教えて頂けますでしょうか。
先生の著書を探してみたのですが、「炭水化物中毒」の具体的症状を見付けられませんでした。「ニコチン中毒並み」とのこと、もしかすると父が罹患している可能性が高いです。食後2時間の血糖値=173、HbA1C=10.1 なので、計算が全く合わないのです。私に隠れて炭水化物を喰っているとなると、理屈に合います><
私が見落としていると思いますので、書籍名と頁数だけでもお忙しい中と存じますが、御教示下さいませ。
2010/05/03(Mon) 10:17 | URL | らこ | 【編集
Re: 【炭水化物中毒】とは?
らこ さん。

私自身の本には、炭水化物中毒のことは書いていません。

リチャード・ヘラー&レイチェル・ヘラー著の
「低炭水化物ダイエット」(株式会社ネコ・パブリッシング発行)に詳しく載っています。

http://insu.saotan.net/isurin.html
このサイトにも炭水化物中毒のことが載っています。
2010/05/04(Tue) 09:13 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました
お忙しい中を「炭水化物中毒」情報を、しかも迅速に頂きましてありがとうございました。
ヘラーさんの本は絶版だか版元品切になっているようなので、下に記載されていたサイトを全部読みました。
 私らこ が「炭水化物中毒かどうかの診断テスト  http://insu.saotan.net/test.html」を実行したところ、「4点」でした(4番該当)。これも江部先生に出会えたおかげが全てであります。ちなみに、江部先生の著書と出会う前の記憶をたどって採点したら「26点」なので、やはり私らこ も
「炭水化物中毒」に毒されていたようです><
 軽度の内に、江部先生の著書に出会えて、足抜け出来たのは本当にありがたい限りです!
 お忙しい中と存じますが、今後も御指導のほどよろしくお願い申しあげます ><
2010/05/04(Tue) 21:21 | URL | らこ | 【編集
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