FC2ブログ
糖質制限食中のケトン体、糖質摂取中のケトン体
おはようございます。

今回はメタボ人間さんから、ケトン体についてコメント・質問をいただきました。

ケトン体、なかなかなじみがなくてわかりにくいですよね(∵)?

検討してみましょう。

【10/04/20 メタボ人間
ケトン体について、質問させてください。
江部康二先生

糖質制限食を勉強中・実践中のメタボ人間です。
先生の著作やブログで勉強させて頂いております。

さて今日は、本食事法のキーワードの一つであるケトン体に関してお尋ねしたいと思い、初心者レベルで申し訳ないのですが、質問をさせて下さい。

学生時代は既に遠く、 固くなったアタマでは、 いまひとつ納得できないもので。。

脳細胞はブドウ糖以外にもケトン体を利用できるという話は、 しばしば出てくる事で了解できました。

問題はそれ以外の「日常生活では、心筋・骨格筋など多くの体細胞は、 脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としている」という説明です。

糖質制限や断食をしないと、血中に、脂肪を分解したケトン体が出てくることは少ないのではないのですか?

血中のケトン体濃度の話も先生のブログ・著作でよく説明されております。
現代社会では稀な(しかし399万年の人類史では普通であった)糖質制限食でこそ、ケトン体が血中にも現れるということだと理解(誤解・誤読?)しています。

先生も紹介されていた灰本先生のブログでも、厳格な糖質制限食では血中ケトン体濃度は高いが、
「ところが一食高炭水化物食を食べてしまうと、急激な血糖値とインスリンの上昇(図1)とともにわずか2時間でケトン体は急激に血中から消えていきます(図2)」。
と説明されています。

日本型食生活をしていると、ケトン体が血中に出る事がないと考えて仕舞いますが、この理解、どこが間違っているのですか?

日常生活でケトン体を利用する心筋・骨格筋は、糖質制限食をしない場合、それをどこから・どのようなメカニズムで手に入れているのでしょうか?

オバカな質問で申し訳ありませんが、時間がある時にでも御教え下さい。宜しくお願い致します。】

メタボ人間さん。
本のご購入、ありがとうございます。

『問題はそれ以外の「日常生活では、心筋・骨格筋など多くの体細胞は、 脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としている」という説明です。糖質制限や断食をしないと、血中に、脂肪を分解したケトン体が出てくることは少ないのではないのですか?』

まず、糖質を普通に摂取している人の血中ケトン体の基準値が施設により差はありますが、「26~122μM/L 」くらいです。

つまり、日常的に糖質を摂取している人でも、これくらいの血中ケトン体は常に存在していて、主として心筋や骨格筋などのエネルギー源となっているのです。

糖質を摂取して、吸収されて血糖値が上昇したら、インスリンが分泌されて筋肉細胞にブドウ糖が取り込まれ、エネルギー源として利用されグリコーゲン(ブドウ糖の集合体)として蓄積されます。

吸収が一段落したら、血中のブドウ糖濃度を保つために、肝臓のグリコーゲン分解が開始されます。食後数時間経過すると、肝臓はグリコーゲン分解から糖新生に切り替えて、血糖値を確保します。この頃には、筋肉のエネルギー源は脂肪酸-ケトン体が主に切り替わっています。

従って食事(糖質あり)摂取後しばらくして空腹時には、筋肉は血中の遊離脂肪酸や肝臓で産生されるケトン体を、優先的に主エネルギー源として利用しています。

つまり、糖質取後の3~4時間は、筋肉はブドウ糖をあるていど利用するけれど、それ以外の時間帯では、ケトン体が主エネルギー源となっているわけです。

ハーパー生化学(原書27版、訳本157ページ)によれば、

「ケトン体は骨格筋と心筋の主要なエネルギー源である・・・。長期の絶食ではブドウ糖代謝は体全体のエネルギー代謝の10%未満となる」

と明示してあります。

グリコーゲンの人体の備蓄は、200~300gと極少量で、たった800~1200キロカロリーしかありません。
筋肉中のグリコーゲンレベルが一定以下になれば筋肉は収縮できなくなります。

仮に心筋がブドウ糖を主エネルギー源にしていたら、いつ心臓が止まっても不思議ではないですね。

だからこそ、心筋は人体で最もケトン体を好む細胞(ハーパー生化学)なのです。

糖質制限食を実践しているとケトン体は現行の基準値よりは高値となります。

例えば、2002年からスーパー糖質制限食実践中の江部康二の血中ケトン体は、「500~900~1200/μM/L」くらいです。

このくらいが、狩猟・採集だったころ400万年間の人類の基準値と思われます。
また、断食の初期には「3000~4000μM/L」にもなります。

私が初めて本断食(カロリーゼロ)を3日間行った時は、血糖値は35mg/dlでした。

しかし、外来をこなしておりましたので、この時の脳のエネルギー源は、ほとんどがケトン体であったと考えられます。

このときのケトン体は「3000~4000μM/L」くらいと思われます。

ケトン体レベルが 「26~122μM/L 」くらいで血糖値が35mg/dlなら、意識不明で失神していたはずです。

『先生も紹介されていた灰本先生のブログでも、 厳格な糖質制限食では血中ケトン体濃度は高いが、 「ところが一食高炭水化物食を食べてしまうと、 急激な血糖値とインスリンの上昇(図1)とともに わずか2時間でケトン体は急激に血中から消えていきます(図2)」。』

メタボ人間さん、消えていくというのは言葉の綾で、本当にゼロということではありません。

糖質を摂取している人の基準値レベルの「26~122μM/L 」になるということです。

つまり、糖質制限食や絶食療法中は血中ケトン体は、糖質を摂取している人の基準値よりはかなりの高値になりますが、糖質を摂取している人でも、常に日常的にケトン体をエネルギー源として利用しているので、血中ケトン体濃度は一定程度は確保されているわけですね。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
江部康二先生、有難う御座います。
江部康二先生

早速分かりやすい解説をして頂き、
感謝・感激です。

これまでの疑問が解消し、
スッキッリしました。
本当に有難う御座いました。

それにしても、先生の御本・ブログで勉強させて頂いてから、
世の中の多くのお医者さんは、何を勉強しているんだ!
難関の医学部に入れる優秀な方々なのに
シッカリしてくれ!!
と叫びたい気分です。

「常識」は手強いですね。

江部先生の益々の御活躍を祈念致します。
2010/04/21(Wed) 20:12 | URL | メタボ人間 | 【編集
日経メディカルオンラインに
いつも江部先生のブログを読みながら糖質制限食を実践しているKIです。

今日日経メディカルオンラインを見ていたら、
「その患者指導、大丈夫?
【糖尿病】脂肪を控えてカロリーを減らすべきか」

という項目が、アクセスランキング一位でした。

要するに糖尿病の患者さんには、糖質制限が常識ですよ、という書き方でした。

時代は、あっという間にかわるものですね。
2010/04/21(Wed) 23:49 | URL | copyki | 【編集
Re: 日経メディカルオンラインに
copykiさん。

ありがとうございます。
日経メディカルオンライン4月15日の記事ですね。
調度、明日の記事に
この話題を取り上げようと思っていました。
私もほんの少しコメントしてます。
2010/04/21(Wed) 23:58 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
クッキー さん

尿のケトン体は問題ないです。

尿タンパクは、糖質制限食と関係ないと思います。
ベースに腎疾患が隠れていないか再検査してみては如何でしょう。
2013/02/06(Wed) 23:21 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
クッキー さん

私はその治療法を知りません。
従ってコメントする立場にありません。
2013/02/24(Sun) 17:33 | URL | ドクター江部 | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック