2010年04月08日 (木)
こんばんは。
今回は、内科大学院生さんから、糖質制限食とLDL-コレステロールについて、コメント・質問をいただきました。
「10/04/05 内科大学院生
LDLコレステロール
江部先生
こんにちは。本日は脂質について質問させてください。
①糖質制限食を実施すると長期的にはLDLが下がることが多いようですが、何が原因なのでしょうか?
●糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下→脂質改善 というメカニズムでしょうか?
●それとも糖質制限により、糖質の過剰摂取で産生されるアセチルCoAが減少するからでしょうか?
また他にメカニズムがあるのであれば、ご教示いただければ幸いです。
②糖尿病患者においてスタチン製剤を投与する際、先生はどのような選択をなされますか?
最近3種類のストロングスタチンに副作用やその効果に有意差なしという発表がなされたようですが、アトルバスタチンは血糖上昇させる可能性があるという報告がありますよね?
やはり避けるべきでしょうか?
私は糖尿病患者にはフルバスタチンを第一選択にしています。
ご多用の中、大変恐縮ではありますが、もしお時間がございましたらご教示ただければ幸いです。
追伸:江部先生の本を両親に勧めたら、父も母も全く同じ本を買ってきてしまいました(+o+)
でも二人とも一日で読破し、昨日から糖質制限食をはじめたようです(*^_^*)
内科大学院生」
内科大学院生さん。
本のご購入ありがとうございます。ご両親にもよろしくお伝え下さい。
LDL-コレステロール値は、糖質制限食で改善することが多いです。
当初増えて、半年~1年で減少し始めるパターンもあります。
江部康二の場合は、
HDL-コレステロールが増加し、
LDL-コレステロールは少し減って、
現在は
総コレステロール:228
HDL-C:119.0
LDL-C:103
です。
私の友人、春日井市の灰本元医師は、2009年には重症DM(HbA1c>9.0%)33名への低糖質食治療で、インスリンを使用することなく半年後にHbA1c10.9から7.2%へ下がり、LDL-Cは低下、HDL-Cは上昇することを報告しています。(*)
「●糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下→脂質改善 というメカニズムでしょうか? 」
糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下
までは確実ですね。
脂質改善という意味では、TNF-αは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性(産生)を抑制し、高脂血症(高中性脂肪血症)を来たすので、高中性脂肪血症が改善すると思います。この機序でLDL-コレステロールが減るかどうかはわかりません。
「●それとも糖質制限により、糖質の過剰摂取で産生されるアセチルCoAが減少するからでしょうか?」
脂肪酸からも、より多くアセチルCoA が産生されますので、こちらは違うと思います。
さてそれでは、糖質制限食でLDL-コレステロールが正常値に改善するのは、どのような機序なのでしょう?
例えば肥満があって、インスリン抵抗性もあって、LDL-コレステロール値が高値の人がいたと仮定します。
インスリン抵抗性の本質は、
「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」
とされています。
インスリン本来の作用とは、
「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」
です。
インスリン抵抗性があると、生理的なインスリン濃度では、脂肪細胞がそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。
そして、脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。
肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。
VLDLが多ければ、結果としてLDL-コレステロールも増えます。
糖質制限食実践により、インスリン抵抗性が改善すれば、VLDLの過剰生産もなくなるのでLDL-コレステロール値も改善すると考えられます。
まあ、あまり自信がないので、あくまでも一つの仮説と考えていただけばいいと思います。
スタチン製剤については次回に・・・。
江部康二
(*)
Haimoto H, et all:Effects of a low-carbohydrate diet on glycemic control in outpatients with severe type 2 diabetes.Nutrition & metabolism.6(21)2009.
今回は、内科大学院生さんから、糖質制限食とLDL-コレステロールについて、コメント・質問をいただきました。
「10/04/05 内科大学院生
LDLコレステロール
江部先生
こんにちは。本日は脂質について質問させてください。
①糖質制限食を実施すると長期的にはLDLが下がることが多いようですが、何が原因なのでしょうか?
●糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下→脂質改善 というメカニズムでしょうか?
●それとも糖質制限により、糖質の過剰摂取で産生されるアセチルCoAが減少するからでしょうか?
また他にメカニズムがあるのであれば、ご教示いただければ幸いです。
②糖尿病患者においてスタチン製剤を投与する際、先生はどのような選択をなされますか?
最近3種類のストロングスタチンに副作用やその効果に有意差なしという発表がなされたようですが、アトルバスタチンは血糖上昇させる可能性があるという報告がありますよね?
やはり避けるべきでしょうか?
私は糖尿病患者にはフルバスタチンを第一選択にしています。
ご多用の中、大変恐縮ではありますが、もしお時間がございましたらご教示ただければ幸いです。
追伸:江部先生の本を両親に勧めたら、父も母も全く同じ本を買ってきてしまいました(+o+)
でも二人とも一日で読破し、昨日から糖質制限食をはじめたようです(*^_^*)
内科大学院生」
内科大学院生さん。
本のご購入ありがとうございます。ご両親にもよろしくお伝え下さい。
LDL-コレステロール値は、糖質制限食で改善することが多いです。
当初増えて、半年~1年で減少し始めるパターンもあります。
江部康二の場合は、
HDL-コレステロールが増加し、
LDL-コレステロールは少し減って、
現在は
総コレステロール:228
HDL-C:119.0
LDL-C:103
です。
私の友人、春日井市の灰本元医師は、2009年には重症DM(HbA1c>9.0%)33名への低糖質食治療で、インスリンを使用することなく半年後にHbA1c10.9から7.2%へ下がり、LDL-Cは低下、HDL-Cは上昇することを報告しています。(*)
「●糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下→脂質改善 というメカニズムでしょうか? 」
糖質制限→内臓脂肪減少→TNF-αなどの作用低下
までは確実ですね。
脂質改善という意味では、TNF-αは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性(産生)を抑制し、高脂血症(高中性脂肪血症)を来たすので、高中性脂肪血症が改善すると思います。この機序でLDL-コレステロールが減るかどうかはわかりません。
「●それとも糖質制限により、糖質の過剰摂取で産生されるアセチルCoAが減少するからでしょうか?」
脂肪酸からも、より多くアセチルCoA が産生されますので、こちらは違うと思います。
さてそれでは、糖質制限食でLDL-コレステロールが正常値に改善するのは、どのような機序なのでしょう?
例えば肥満があって、インスリン抵抗性もあって、LDL-コレステロール値が高値の人がいたと仮定します。
インスリン抵抗性の本質は、
「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」
とされています。
インスリン本来の作用とは、
「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」
です。
インスリン抵抗性があると、生理的なインスリン濃度では、脂肪細胞がそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。
そして、脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。
肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。
VLDLが多ければ、結果としてLDL-コレステロールも増えます。
糖質制限食実践により、インスリン抵抗性が改善すれば、VLDLの過剰生産もなくなるのでLDL-コレステロール値も改善すると考えられます。
まあ、あまり自信がないので、あくまでも一つの仮説と考えていただけばいいと思います。
スタチン製剤については次回に・・・。
江部康二
(*)
Haimoto H, et all:Effects of a low-carbohydrate diet on glycemic control in outpatients with severe type 2 diabetes.Nutrition & metabolism.6(21)2009.
江部先生
お忙しい中、大変わかりやすくご説明いただき、本当にありがとうございました。
私の患者さまでも、江部先生の本を購入して貰って、糖質制限を実践し、1ヶ月でHbA1c10.2→7.1%まで下がった患者さまがいました【もともと両NDRで眼底所見がなかったので、急激に下げても眼底は問題ありませんでした(*^_^*)】
他にも改善している例は40例以上はいます。
勝手なことをして申し訳ありませんが、私の外来には糖質制限の簡単な説明と江部先生の書籍を一覧にしたプリントのコピーが置いてあります。
腎症3期以下の患者さまには、そのコピーを配り皆さんに購入を勧めさせて貰っています。
まだまだ勉強中の身ですので、これからもたくさんのことを教えて下さいね。
内科大学院生
お忙しい中、大変わかりやすくご説明いただき、本当にありがとうございました。
私の患者さまでも、江部先生の本を購入して貰って、糖質制限を実践し、1ヶ月でHbA1c10.2→7.1%まで下がった患者さまがいました【もともと両NDRで眼底所見がなかったので、急激に下げても眼底は問題ありませんでした(*^_^*)】
他にも改善している例は40例以上はいます。
勝手なことをして申し訳ありませんが、私の外来には糖質制限の簡単な説明と江部先生の書籍を一覧にしたプリントのコピーが置いてあります。
腎症3期以下の患者さまには、そのコピーを配り皆さんに購入を勧めさせて貰っています。
まだまだ勉強中の身ですので、これからもたくさんのことを教えて下さいね。
内科大学院生
2010/04/08(Thu) 21:45 | URL | 内科大学院生 | 【編集】
こんばんは^^
先生のブログを拝見して以来、糖質制限をし血糖値が改善しており感謝しております。
実は、最近ネットで
"わが国でも、宮崎大学教育学部教授の島田彰夫氏は「私は、牛乳をよく飲む子と飲まない子の視力を調査したことがあるが、よく飲む子の方が視力が悪いと言う結果がはっきり出ている」としておられる。
近年激増している糖尿病にも牛乳が関わりをもっている。最近、糖尿病の原因となるABBOSという蛋白質の小片が牛乳中に含まれていることが確認された。
膵臓のランゲルハンス島中にあるインシュリン分泌β細胞には、このABBOSと酷似した蛋白体が存在しており、白血球がこの蛋白体をABBOSと誤認すると、β細胞を攻撃して破壊することにより、膵臓の働きが低下して糖尿病を引き起こす。
したがって、ABBOSを含む牛乳を多飲すればするほど誤認の確率が高まり、糖尿病増加の引き金となる。これは1958年学校給食に牛乳が導入されて以来、それまで横ばい状態だった糖尿病患者が、激増の一途を辿っている事実と見事に合致する。"
との文章を読みました。もしかして牛乳は糖尿に良くないのでしょうか?><;
実は牛乳を毎日飲んでいるのですが。
お忙しいところ大変恐縮ですが、先生のご見解をお伺いしたく存じます。
先生のブログを拝見して以来、糖質制限をし血糖値が改善しており感謝しております。
実は、最近ネットで
"わが国でも、宮崎大学教育学部教授の島田彰夫氏は「私は、牛乳をよく飲む子と飲まない子の視力を調査したことがあるが、よく飲む子の方が視力が悪いと言う結果がはっきり出ている」としておられる。
近年激増している糖尿病にも牛乳が関わりをもっている。最近、糖尿病の原因となるABBOSという蛋白質の小片が牛乳中に含まれていることが確認された。
膵臓のランゲルハンス島中にあるインシュリン分泌β細胞には、このABBOSと酷似した蛋白体が存在しており、白血球がこの蛋白体をABBOSと誤認すると、β細胞を攻撃して破壊することにより、膵臓の働きが低下して糖尿病を引き起こす。
したがって、ABBOSを含む牛乳を多飲すればするほど誤認の確率が高まり、糖尿病増加の引き金となる。これは1958年学校給食に牛乳が導入されて以来、それまで横ばい状態だった糖尿病患者が、激増の一途を辿っている事実と見事に合致する。"
との文章を読みました。もしかして牛乳は糖尿に良くないのでしょうか?><;
実は牛乳を毎日飲んでいるのですが。
お忙しいところ大変恐縮ですが、先生のご見解をお伺いしたく存じます。
2010/04/08(Thu) 23:34 | URL | ぴーなつ | 【編集】
はじめまして、sacoと申します。
基本的な質問で申し訳ありませんが、
良く、先生の解説の中で
①空腹時血糖値 110mg未満
②食後2時間血糖値 140mg未満
③HbA1c 5.8%未満
を保っていけば正常人ライフが全うできる
との記載がされていますが、
②について「食後2時間血糖値 140mg未満」
というのは、食べ始めてから2時間後に140未満
であれば良いということですか?
それとも、食後2時間以内のアッパーが140未満
ということなのでしょうか?
基本的な質問で申し訳ありませんが、
良く、先生の解説の中で
①空腹時血糖値 110mg未満
②食後2時間血糖値 140mg未満
③HbA1c 5.8%未満
を保っていけば正常人ライフが全うできる
との記載がされていますが、
②について「食後2時間血糖値 140mg未満」
というのは、食べ始めてから2時間後に140未満
であれば良いということですか?
それとも、食後2時間以内のアッパーが140未満
ということなのでしょうか?
2010/04/09(Fri) 12:27 | URL | saco | 【編集】
内科大学院生さん。
患者さんへの本のご推薦、ありがとうございます。
先生のような若い先生が、糖質制限食に理解を示して頂くことは
とても嬉しい限りです。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
患者さんへの本のご推薦、ありがとうございます。
先生のような若い先生が、糖質制限食に理解を示して頂くことは
とても嬉しい限りです。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
2010/04/09(Fri) 16:17 | URL | ドクター江部 | 【編集】
ぴーなつさん。
ABBOSが糖尿病の引き金になるという論文はみたことがありません。
まず大丈夫と思います。
牛乳は100gあたり、糖質含有量5gの低糖質食材です。
しかし200mlとか500mlとか簡単に飲めるので
そこまでいくと食後高血糖を生じますので注意が必要ですね。
ABBOSが糖尿病の引き金になるという論文はみたことがありません。
まず大丈夫と思います。
牛乳は100gあたり、糖質含有量5gの低糖質食材です。
しかし200mlとか500mlとか簡単に飲めるので
そこまでいくと食後高血糖を生じますので注意が必要ですね。
2010/04/09(Fri) 16:27 | URL | ドクター江部 | 【編集】
sacoさん。
食べ始めてから2時間後に140未満
であれば良いということです。
さらに理想的には食後1時間が、180未満が望ましいと言えます。
食べ始めてから2時間後に140未満
であれば良いということです。
さらに理想的には食後1時間が、180未満が望ましいと言えます。
2010/04/09(Fri) 16:30 | URL | ドクター江部 | 【編集】
先程質問させていただいたsacoです。
早速ご回答いただきありがとうございます。
てっきり食後2時間以内の最高値が140未満
でないといけないのだと思っていたので、
随分厳しいなぁと感じていました。
私は今、精製していない穀物であれば
食後2時間以内で最高値が150程度です。
この程度なら、主食をとってもよいものでしょうか?重ねての質問になってしまってすみません。
早速ご回答いただきありがとうございます。
てっきり食後2時間以内の最高値が140未満
でないといけないのだと思っていたので、
随分厳しいなぁと感じていました。
私は今、精製していない穀物であれば
食後2時間以内で最高値が150程度です。
この程度なら、主食をとってもよいものでしょうか?重ねての質問になってしまってすみません。
2010/04/09(Fri) 16:46 | URL | saco | 【編集】
saco さん。
現在までの文献によれば
さきほどの基準をクリアしていればOKです。
従って、saco さんのデータなら未精製の穀物適量なら
大丈夫ですね。
現在までの文献によれば
さきほどの基準をクリアしていればOKです。
従って、saco さんのデータなら未精製の穀物適量なら
大丈夫ですね。
2010/04/09(Fri) 17:44 | URL | ドクター江部 | 【編集】
早速のお答えありがとうございました^^
これからも先生のブログで勉強させていただきます。
これからも先生のブログで勉強させていただきます。
2010/04/09(Fri) 22:31 | URL | ぴーなつ | 【編集】
はじめまして。糖質制限食をはじめて2ヶ月になります。1ヶ月目で、ヘモグロビンa1cが、11.2から9.1に低下しました。再来週に再度の血液検査があるので楽しみにしています。ところで、制限食をはじめてから、ヒゲが伸びるのが遅くなった気がするのですが、何か因果関係があるのでしょうか?全く見当違いな質問かもしれませんが、よろしくお願いします。
2010/04/10(Sat) 10:27 | URL | Kaji | 【編集】
Kaji さん。
HbA1c改善良かったですね。
ヒゲは関係ないと思いますが、
低カロリーに成りすぎないように注意してくださいね。
HbA1c改善良かったですね。
ヒゲは関係ないと思いますが、
低カロリーに成りすぎないように注意してくださいね。
2010/04/10(Sat) 16:23 | URL | ドクター江部 | 【編集】
この記事へのトラックバック
| ホーム |