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インクレチン関連薬と糖尿病と糖質制限食
こんにちは。

昨夜、京都市左京区医師会の会合の帰りに広沢の池の辺りを車で通ったら、佐野藤右衛門さんのお宅の庭園の桜がライトアップされていました。桜、もうしっかり見頃に咲いてましたよ。 (^_^)

今日は、朝から日が照ったり、雨が降ったり、雪がふったり、風が吹いたり・・・。

花びらが散ってしまわないか心配ですね。

さて今回は、しげるさんから、インクレチン関連薬について、コメント・質問をいただきました。

「10/03/27 しげる
インクレチン関連薬
江部先生
いつも、ブログ拝見しています。
私は、15年前に糖尿病と診断され、7年前から薬を服用して来ました。
糖質制限食にしてから、約半年になります。HbA1cは下がり、現在は、6.1で、ここ3ヶ月間は同じ値です。
ただ、起床時の血糖値は、115~145位で少々高く、私のβ細胞は疲弊していて,
もうこれ以上望めないのかとも思っています。
さて、本日は、新しい糖尿病治療薬として、注目されている、インクレチンの関連薬、GLP-1とDPP-4が開発されましたが、江部先生のお考えをお聞きしたく、投稿致しました。
DPP-4の方は、錠剤で服用可能のようです。これらの薬の特徴は、膵臓のβ細胞を疲弊することなく、(回復も期待されている)インシュリンを出すということで、現在の治療法のパラダイムシフトが起きる可能性があるということです。私などは、この薬を使ってみることは意味があるでしょうか?
更に、値を下げたい気持ちの一方で、薬のまだ知られていない副作用も気になり、複雑な気持ちです。
先生のお考えをお聞かせ下さい。」


しげるさん、コメントありがとうございます。

インクレチンの関連薬として、GLP-1の注射薬とDPP-4阻害剤の内服薬が承認されました。

GLP-1は注射なので、やや使いにくく、私も使用していません。

DPP-4阻害剤の内服薬は早速使用していますので、そちらを解説したいと思います。

国内初のDPP-4阻害剤(ジャヌビア、グラクティブ)が、2009年12月に販売開始されました。

それでは、DPP-4阻害剤とはいったいどんな薬なのでしょう?

それに答えるには、まずインクレチンの説明が必要です。

インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンであり、GIPとGlp-1があります。

これらは、高血糖時には、SU剤とは異なる機序でインスリン分泌を促進させます。また、インスリン生合成を促進させます。さらに動物モデルでは、膵β細胞の保護作用が確認されています。

血糖値が低いときには、インスリン分泌をほとんど促進させず、食後高血糖の時にインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいです。

まことに都合のいいホルモンなのですが、DPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのです。

このDPP-4という酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中に当分存在して、血糖降下作用を発揮してくれることになります。

そこで登場したのが、DPP-4阻害剤です。

この薬は内服薬であり、1日1回投与でよいので、使い勝手がいいです。

まったく同じ成分(一般名シタグリプチン)の、ジャヌビア(万有製薬)とグラクティブ(小野製薬)が同時に発売されます。

勿論健康保険収載で、SU剤、インスリン抵抗性改善剤(アクトス)、メトホルミンなどビグアナイド剤との併用もOKですし、単独使用もOKです。

理論的にはグルコバイなどαグルコシダーゼ阻害薬やグルファストなどとも併用できそうな気がしますが、保険収載されていません。
またインスリン注射との併用も理論的には可能と思いますが、やはり保険収載されていません。

膵β細胞保護作用など、糖質制限食的にも好ましいところがあるので、コントロールがあと一歩の糖尿人には、使ってみたいお薬ですね。

私も早速、10数名ていどに処方しましたが、かなりの有効性がありました。

例えば、心は糖質制限食を目指しておられますが、身体が間食を求めるタイプのキャラで、なかなかコントロール良好となりがたい糖尿人・・・(-_-;)

高雄病院入院後、退院して数ヶ月はHbA1c6%くらいをキープしているけれど、徐々に緩んで6.5%、7%、7.5%・・・。

ちょっと引き締めて7.1%・・・。

また緩んで7.3%・・・。

こんな感じで1年あまり、なかなか7%を切れなかった糖尿人が、ジャヌビア内服1ヶ月でHbA1c6.3%と1%改善した例を経験しました。 (^_^)

また、糖質制限食は、食後高血糖は速やかに改善しますが、早朝空腹時血糖値だけはなかなか減りがたい場合があります。

このような糖尿人にジャヌビアを投与したところ、翌日にはSMBGで、早朝空腹時血糖値200mg→150mgと改善した例もありました。2ヶ月経過してさらに早朝空腹時血糖値が100~130mgまで改善されました。

使用経験、わずか2ヶ月半ですが、このように明らかな有効例を複数経験しました。

過半数の人には有効でしたが、HbA1cが1ヶ月で1%改善した上述のような例もありましたが0.3%程度の例もありました。2名の糖尿人は、1ヶ月間では変化なしでした。

なお、インクレチンがDPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのは、399万年の人類の進化の過程では、糖質摂取が少量なので食後高血糖がほとんどなかったせいと考えられます。

農耕が始まり、食後高血糖が日常的に生じるようになった後は、インクレチンにおおいに活躍して欲しいところですが、如何せん399万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまう癖がついているのですね。

糖質を主食として約60%も摂取している現代において、DPP-4阻害剤が登場したのは、歴史の皮肉といえますね。

気になる副作用ですが、SU剤などの併用例以外では低血糖はほとんどないようです。吐き気などの副作用も比較的少ないようです。

ただ、どの薬にもあるような、皮膚障害、胃腸障害、肝機能障害、赤血球減少、浮腫・・・などは、頻度は少ないけれど報告されています。

すでに欧米では、3年半の使用経験がありますが、現時点では特に問題となるような副作用は報告されていません。

ただ、10年・20年・30年使ってどうなるかというのは誰にもわかりませんので、私達医師にも処方する責任がありますが、ここらは患者さんも自己判断・自己責任で、ということになります。

私自身は、今ある高血糖をコントロールすることを優先したいと思っていますので、糖質制限食がゆるくて血糖コントロールがいまいちの糖尿人には、DPP-4阻害剤のことを説明して、相談しようと思います。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
スーパー糖質制限食と血糖値上昇の不思議について
はじめまして。

突然ですがスーパー糖質制限食と血糖値上昇の不思議について質問させて下さい。

去年の10月にした献血の検査結果でGA30.3という結果だったので、その後4ヶ月糖質制限食を実施してみたものの、1月末の検査結果はGA27.2とあまり改善されなかったので病院に行ってきました。

結果は糖尿病との診断で食前血糖値165 HbA1c8.4とのことでした。
すぐにスーパー糖質制限食に切り替えて1ヶ月後には食後6時間の血糖値147 HbA1c7.4と下がりスーパー糖質制限食の素晴らしさを実感したのですが、この間の2週間おきに計る血糖値(食後6時間)では174と今までに無い数値が出てしまい困惑しています。

その日に食べた朝食は鶏の胸肉200gに味付けはラカントSと塩湖沼のみでした。
それと厚揚げ1枚を生姜醤油で味付けしたものです。
飲み物はブラックコーヒーとミネラルウォーターでした。

前日の夜は豚肩ロース肉300gを生姜焼きでラカントSを使用したものです。

確か先生のブログにはタンパク質は血糖値を上昇させないと載っていたと記憶していたのですが、何故スーパー糖質制限食を実行中なのに血糖値が上がってしまったのか不思議に思い質問してみました。

血糖値以外の数値はすべて正常だった為に今のかかりつけの先生は、3ヶ月食事制限してみて様子をみましょうと言うだけで、この間の血糖値の結果が高かった原因は判らずじまいでした。

1人で不安な気持ちのままでいるより、私と同じ症状の人がいれば納得できるので宜しくをお願いします。

長文失礼致しました。
2010/03/29(Mon) 20:56 | URL | ゆっきぃ | 【編集
インクレチン関連薬
江部先生

お忙しいところ、インクレチン関連薬であるDPP-4の実際の有効性のお話、ありがとうございました。とても感謝しております。
さて、インシュリンを促進させるホルモンであるインクレチンですが、インシュリンを出すのは当然膵臓です。SU剤もそうですが、疲弊している膵臓から出るインシュリンなのに、どうして膵臓を疲れさせないのでしょう?しかもβ細胞を回復させる可能性もあるということです。もし、このことが本当であれば、むしろ初期の糖尿病患者にこそ、有効性が高いのではないでしょうか? 
血糖値を下げる膵臓のβ細胞の復活こそが、治療の根本的解決である筈であろうからです。
人間の体に元々具わっているホルモン―インクレチンだから膵臓に優しいというのは判りますが、どうも腑に落ちません。

お忙しいところ、大変申し訳ありませんが、もし、お答え頂ければ幸いです。
2010/03/30(Tue) 09:19 | URL | しげる | 【編集
Re: スーパー糖質制限食と血糖値上昇の不思議について
ゆっきぃさん。

血糖値上昇は食事以外にも、肝臓の糖新生、急性のストレス、運動・・・
いろいろな要素が関わってきます。
インスリン分泌能力が糖尿病で低下していると、空腹時に肝臓の糖新生が制御されず作りすぎることがあります。

ただ1日24時間を通して、血糖値が180mg/dlを超えなくなると、糖毒による
インスリン抵抗性が急速に改善して、血糖値も低下します。

今しばらく経過をみられては如何でしょう。

2010年01月25日 (月) のブオRグ「血糖調節システム 2010年1月 」もご参照ください。
2010/03/30(Tue) 11:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございました。
スーパー糖質制限食を始めてからは食後の眠気もなくなり、目覚めも快適だったのに何故だろうと思ってた疑問が判ってスッキリしました。

先生のブログを全部読んだのに理解出来てなかった自分が恥ずかしいです。

このブログに出逢えたことも感謝しています。
これからもスーパー糖質制限食を長く楽しく続けて行こうと思ってます。

ありがとうございました。
2010/03/30(Tue) 18:20 | URL | ゆっきぃ | 【編集
グラクティブ使用中
タイトルの通りグラクティブを使っています、
6ケ月以上になります、
A1c % 数値は現在5.5~6.2で安定しています、

副作用ではと思うことが今起こっています、
症状:10日程前に背中全体がかゆくなりました、
    次第にかゆみから痛かゆい状態になっています、
    耐えられない程ではなく気になる程度です、
    
 この状態でグラクティブ薬を続けても良いでしょうか?
2011/06/09(Thu) 12:28 | URL | 坂井 彰 | 【編集
Re: グラクティブ使用中
坂井 彰 さん。

副作用か否かは主治医とご相談ください。

HbA1cはコントロール良好ですので、スーパー糖質制限食なら
グラクティブなしでいける可能性がありますね。
2011/06/10(Fri) 18:14 | URL | ドクター江部 | 【編集
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