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2型糖尿病の厳格な血糖管理・大規模試験ACCORDの衝撃的な結果
こんにちは。

今朝のLancetの報告に関連して、ACCORD試験の記事を再掲します。

江部康二

☆☆☆再掲
2型糖尿病の厳格な血糖管理・大規模試験ACCORDの衝撃的な結果

2008年の米国糖尿病学会学術集会で、ACCORD、ADVANCEという、2つの大規模臨床試験の結果が報告されました。共にハイリスクな糖尿病患者を対象に、HbA1cの目標値を従来より低く設定して厳格な血糖管理を行い、大血管合併症予防効果を検討した試験でした。大血管合併症とは、心・脳血管の障害で心筋梗塞や脳卒中のことです。

その結果は、予想を大きく覆し、有意な大血管障害予防効果は、証明できませんでした。しかも、ACCORD試験にいたっては、「厳格血糖管理群」の死亡率が、「通常血糖管理群」を上回るという、衝撃的な結果となりました。ヾ(゜▽゜)

ACCORDは、米国とカナダの77施設から10251例が、ADVANCEは、アジア・オセアニア・欧州・北米20カ国215施設から11140例が登録されました。

厳格血糖管理群の目標HbA1cは、ACCORDが6.0%未満、ADVANCEが6.5%未満で、予定追跡期間はいずれも5年間でした。

しかしながら、2008年2月、ACCORDの厳格血糖管理群における総死亡率および、心血管死亡率が通常血糖管理群を有意に上回ることが確認され、同試験は期間満了を待たずに平均追跡期間3.4年で中止となりました。中止時の平均HbA1cは厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。

総死亡のリスク比は、厳格血糖管理群が通常血糖管理群の1.22倍、心血管死は1.35倍で、いずれも統計的に有意の差がありました。

一方、ADVANCE試験は、5年間の追跡期間を完遂しています。到達平均HbA1cは厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.0%でした。こちらも大血管障害予防効果に有意差は認められませんでした。

いずれにせよ、驚きの結果なのですが、特にACCORD試験のほうは、短絡的に考えたら「厳格な血糖管理をしたらかえって死亡率が上昇する」というとんでもない結論になります。これではさすがに困るので、糖尿病専門医諸氏が共通のコメントを述べています。すなわち、「血糖を下げるプロセスに問題があった」ということです。

ACCORD試験の厳格血糖管理群では、最初の4ヶ月でHbA1c値が平均して1.4%も低下していて、相当強力な薬物介入がなされたと考えられます。

事実、厳格血糖管理群では、77%の患者にインスリン注射が使用され、経口血糖降下薬も3~4剤が併用されていて、3.4年間で平均3.5kgも体重が増加していました。

日本の糖尿病専門医による、ACCORD試験失敗への意見をまとめると、以下の3つに集約されます。


食事療法や運動療法がきっちり行われず、薬物療法のみで無理矢理急速に血糖値だけ低下させたことで、生体になんらかのひずみが生じ、総死亡率が上昇した可能性がある。


インスリンやアクトス(チアゾリジン誘導体)といった、体重増加作用のある薬物を多用したことによる体重の増加も心血管障害リスク要因として無視できない。


ACCORD試験の厳格血糖管理群では、重症低血糖の発生頻度が16.2%もあり、これが心血管障害のリスクとなった。

これら、3つの問題点は糖質制限食だと

①血糖値、HbA1c値は急速に改善するが、脂質をはじめ代謝全てがよくなるので生体内にひずみは生じない。

②薬物は使用しないか使用してもごく少量なので薬物による体重増加はない。また糖質制限食の効果により体重減少が期待できる。

③薬物は使わないかごく少量なので、低血糖の危険性もきわめて少ない。

ということで、大きなアドバンテージとなります。(^-^)v(^-^)v 

薬物療法のみに頼って、食事療法や運動療法を無視すれば、例え血糖コントロールが良くなっても、総死亡率は変わらないか、かえって増加することもあるという、極めて示唆にとんだ大規模臨床試験「ACCORD、ADVANCE」の結果でした。

さらに言えば、カロリー制限が主体の従来の糖尿病食(高糖質食)では、糖尿病学会推奨の運動療法(1回15~30分間の歩行を1日2回、できれば毎日、少なくとも1週間に3日以上)をしても、食後高血糖は決して防げません。

HbA1c値を低く保つためには、必ずやインスリンをはじめ、大量の薬物療法が必要となります。これらの諸問題を全て解決するのは、糖質制限食だけです。

食後高血糖が、大血管障害に強く関与していることは、複数の研究で明らかになっています。
糖質・脂質・タンパク質の中で食後高血糖を起こすのは、糖質だけです。

糖質制限食VSカロリー制限食(高糖質食)

糖尿人の皆さんよくよくお考えくださいね。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
糖尿初心者のミス
自分もそうでしたが、糖尿病に罹患したと信じたくないものですよね。まずそれを認めないことには何も始まらないんですが。
何を食えば良くなるのじゃなくて、何を食わなければ良くなるのかへの発送の転換が必要と思います。飽食の時代はかえって生き延びるのが難しいですね。
糖質制限食は飽食の世の中ではすばらしいと思います。しかし、経済が悪化して食材を選べなくなった時に一抹の不安を感じます。
2010/02/23(Tue) 19:11 | URL | 街のクマ | 【編集
、今回のLancet報告についての江部先生の解説で、如何に血糖値の乱高下が悪いのかが理解できます。

昨年大阪で開催された糖尿病学会に参加した時に、1型の患者の血糖値の乱高下のデーターには驚きました。食後は優に300mgを超え、インスリンを投与すると50mg程度に下がります。これが3食繰り返されます。このようなデーターを何の疑問も持たずに糖尿病専門医が発表しているのですから驚きです。

糖尿病の診断でHbA1cが重要視されていますが、HbA1cは2ケ月から3ケ月の血糖値の平均値で、薬物投与の場合は乱高下の平均値になり、これを信用することは問題です。

糖質制限食の場合と薬物投与場合のHbA1cの意味合いが異なり、コホート研究においても其の辺りをきちんと整理しないと間違った結論になる恐れがあると思います。
2010/02/23(Tue) 19:14 | URL | イーサン | 【編集
Re: タイトルなし

イーサン 様

「昨年大阪で開催された糖尿病学会に参加した時に、1型の患者の血糖値の乱高下のデーターには驚きました。食後は優に300mgを超え、インスリンを投与すると50mg程度に下がります。これが3食繰り返されます。このようなデーターを何の疑問も持たずに糖尿病専門医が発表しているのですから驚きです。 」

カーボカウントや糖質制限食を実施していない1型糖尿病では、
血糖値の乱高下が今までの常識です。
しかし、ご指摘通りこのようなことは悲劇です。
糖尿病専門医ならせめて1型にはカーボカウントくらいはしてほしいですね。
2010/02/23(Tue) 22:45 | URL | ドクター江部 | 【編集
低血糖リスク
こんにちは。



現在HbA1c5.4%の2型糖尿人サスケと申します。

ACCORD試験の結果は大変興味深く、5%の身としては心配にもなり

日経メディカルを覗いてみました。



日経メディカル記事2008. 6. 9

「厳格管理群の方が薬剤の種類・用量・ともに多量で

低血糖発生率も厳格管理群の方が高かった。」

日経メディカル記事2010. 2. 8

「どちらのグループにおいても、症状性の重症低血糖イベントを経験した患者の死亡リスクは

そうでない患者に比べて有意に高かった。しかし、重症低血糖歴のある患者の死亡リスクを比較すると

標準治療群より厳格管理群で低かった。」



先生がブログで幾度となく述べられている、低血糖のリスクを踏まえると

私は、ACCORD試験の結果を以下のように解釈しました。

「血糖値高低差を引き起こす低血糖は、例えそれが重症な低値でなくとも、

高血糖に比してよりリスク高になり、高低差が大きいほどリスクは更に高まる。」



Lancet誌の記事も同様な解釈です。



低血糖こそが、かような結果の原因だと思います。

2010/02/24(Wed) 13:59 | URL | サスケ | 【編集
1型談話室から
http://dm-net-danwa.jp/board8/danwa5.cgi?mode=setview&code=11679

1型の方の間ではすでに話題になっていたようですね。
2010/02/24(Wed) 22:26 | URL | 血糖値レーダー | 【編集
今こそ強く
グルコーススパイクを起こさない糖質制限食の必要性をより強く訴えなければいけないと思います。

食後高血糖を抑えることこそが大切なのだと。
2010/02/26(Fri) 00:48 | URL | 哲学者 | 【編集
Re: 今こそ強く
哲学者さん。

同感です。
2010/02/26(Fri) 16:00 | URL | ドクター江部 | 【編集
低血糖は、それによる高低差も危険だけど
低血糖それ自体が回避システムを麻痺させるようです。
低血糖回避システムが4重にも用意されているくらい、低血糖による脳への危険性が極めて高いのですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4
2010/02/26(Fri) 17:30 | URL | すとら | 【編集
Re: タイトルなし
すとらさん。

情報ありがとうございます。
2010/02/26(Fri) 17:34 | URL | ドクター江部 | 【編集
最適解
米国,英国における広軸な研究結果は、薬物投与による低血糖多発が死亡率を上昇させる、というエビデンスであり、糖尿病二大危険因子,グルコーススパイク&低血糖の発生度をHbA1cは示さないのであるから、
現状多数の,HbA1c重視&薬物処方なる方針,が適切でないことは明白です。

両国研究結果に対する最適解は、糖質制限をおいて他に見当たりません。
2010/02/27(Sat) 04:01 | URL | 単五 | 【編集
Re: 最適解
単五 さん。

同感です。
2010/02/27(Sat) 08:20 | URL | ドクター江部 | 【編集
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