2010年02月12日 (金)
こんにちは。
今回は、なおタロー さんから、スタンダード糖質制限食などについてコメント・質問をいただきました。
「10/02/11 なおタロー
タイトルなし
はじめまして江部先生。先生の本を読み長年疑問だった血糖値とカロリーの事についてよく分かりました。有難うございます。早速ですが質問があります。私は31歳ですが食後2時間血糖が130台(数回はかり)と高く先生の本を読みスタンダード糖質制限食を始め2週間経ちますが逆に2時間後血糖が150台と上がってしましました。体重は3キロほどやせすでに痩せ型です。父が糖尿病ということもあり自分もなるのではと思い早い段階ですい臓に負担をかけない食事をと思い始めたのですが効果がイマイチです。期間が短いせいなのか、炭水化物で負担をかけていた時のほうが食後血糖が低いので納得できません。長い期間を考えた場合、先生の提唱するスーパー糖制限食がすい臓に負担を掛けないのか、それとも追加分泌の回数を減らす事により機能自体の低下が起こっているのか、それとも期間が短いため体がこのサイクルについてこれていないのかと疑問が出てきます。あとお酒は好きなので焼酎のお湯割りを良く飲みますが、すい臓の働きとお酒の関係はどうでしょうか?よく飲みすぎると急性膵炎になると聞いたもので。お忙しいと思いますがよろしくお願いします。」
なおタローさん。
血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させません。スタンダード糖質制限食なら、朝と夕は血糖値の上昇はほとんどないと思います。昼は主食(糖質)を摂取するので、当然食後血糖値は上昇します。
次に膵臓への負担ですが、人類400万年の歴史で、農耕前399万年間は狩猟・採集生活すなわち糖質制限食でした。農耕開始後、糖質を摂取して1日に何回も追加分泌インスリンが大量にでることは、膵臓にかつてない負担をかけています。
最後に糖質制限食では、アルコールは血糖値を上げないので蒸留酒OKです。ただ膵炎のほとんどは大酒のせいです。お酒の量は、自己管理でほどほどでお願いします。
江部康二
☆☆☆
【糖質制限食とは】
食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わります。タンパク質・脂質は血糖に変わりません。 また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。これらは、含有エネルギーとは無関係な、三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので食後高血糖はほとんど生じないのです。 なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、
食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは、理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。なお、糖質制限食はカロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【『糖質制限食』の3パターン】
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
を参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。なお、血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と活動性の膵炎がある場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は、相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
今回は、なおタロー さんから、スタンダード糖質制限食などについてコメント・質問をいただきました。
「10/02/11 なおタロー
タイトルなし
はじめまして江部先生。先生の本を読み長年疑問だった血糖値とカロリーの事についてよく分かりました。有難うございます。早速ですが質問があります。私は31歳ですが食後2時間血糖が130台(数回はかり)と高く先生の本を読みスタンダード糖質制限食を始め2週間経ちますが逆に2時間後血糖が150台と上がってしましました。体重は3キロほどやせすでに痩せ型です。父が糖尿病ということもあり自分もなるのではと思い早い段階ですい臓に負担をかけない食事をと思い始めたのですが効果がイマイチです。期間が短いせいなのか、炭水化物で負担をかけていた時のほうが食後血糖が低いので納得できません。長い期間を考えた場合、先生の提唱するスーパー糖制限食がすい臓に負担を掛けないのか、それとも追加分泌の回数を減らす事により機能自体の低下が起こっているのか、それとも期間が短いため体がこのサイクルについてこれていないのかと疑問が出てきます。あとお酒は好きなので焼酎のお湯割りを良く飲みますが、すい臓の働きとお酒の関係はどうでしょうか?よく飲みすぎると急性膵炎になると聞いたもので。お忙しいと思いますがよろしくお願いします。」
なおタローさん。
血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させません。スタンダード糖質制限食なら、朝と夕は血糖値の上昇はほとんどないと思います。昼は主食(糖質)を摂取するので、当然食後血糖値は上昇します。
次に膵臓への負担ですが、人類400万年の歴史で、農耕前399万年間は狩猟・採集生活すなわち糖質制限食でした。農耕開始後、糖質を摂取して1日に何回も追加分泌インスリンが大量にでることは、膵臓にかつてない負担をかけています。
最後に糖質制限食では、アルコールは血糖値を上げないので蒸留酒OKです。ただ膵炎のほとんどは大酒のせいです。お酒の量は、自己管理でほどほどでお願いします。
江部康二
☆☆☆
【糖質制限食とは】
食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わります。タンパク質・脂質は血糖に変わりません。 また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。これらは、含有エネルギーとは無関係な、三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので食後高血糖はほとんど生じないのです。 なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、
食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは、理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。なお、糖質制限食はカロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【『糖質制限食』の3パターン】
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
を参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。なお、血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と活動性の膵炎がある場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は、相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
毎日拝見しております。たいへん参考になりありがとうございます。 2度目のコメントです。
先生の糖質制限食の本で書れるプチ糖質制限食で効果が出て3ヶ月になります。
予備糖尿人5年の55歳の男性です。
10月下旬 A1c 8.7 空腹時血糖値185 アマリール 1mg。で
12月初旬 A1c 6.9に アマリール 1mgたまに。で
1月初旬 A1c 5.7に アマリール 1mg飲まず。で
2月初旬 A1c 5.6 になりました。
江部先生から薬を止めてもいいでしょう。とのコメントをいただきました。
それでも2月初旬、K市民病院の糖尿専門医はグルファスト10mgを毎食前飲んで1ヵ月後の来院を指示しました。
とりあえず薬を2度飲んでみましたが、口内と舌の痺れがあり服薬を止めました。
市民病院に連絡したところ薬を変えますから来てくださいと・・・
わたしは「安定してきたから薬は飲まないで食事と運動で様子を見てみます」と伝えました。
空腹時血糖 125
HDL-C 64
LDL-C 105
血圧 110-74
r-GTP 49
身長 174
体重 55.6
食事はプチ糖質制限食にしています。
市民病院の先生はデータが採りたいだけでしょうか?
管理栄養士の先生は血糖値を上げるのは炭水化物ですとはっきりおっしゃっていました。
ですから とりあえず
このまま頑張るつもりです!!
先生の糖質制限食の本で書れるプチ糖質制限食で効果が出て3ヶ月になります。
予備糖尿人5年の55歳の男性です。
10月下旬 A1c 8.7 空腹時血糖値185 アマリール 1mg。で
12月初旬 A1c 6.9に アマリール 1mgたまに。で
1月初旬 A1c 5.7に アマリール 1mg飲まず。で
2月初旬 A1c 5.6 になりました。
江部先生から薬を止めてもいいでしょう。とのコメントをいただきました。
それでも2月初旬、K市民病院の糖尿専門医はグルファスト10mgを毎食前飲んで1ヵ月後の来院を指示しました。
とりあえず薬を2度飲んでみましたが、口内と舌の痺れがあり服薬を止めました。
市民病院に連絡したところ薬を変えますから来てくださいと・・・
わたしは「安定してきたから薬は飲まないで食事と運動で様子を見てみます」と伝えました。
空腹時血糖 125
HDL-C 64
LDL-C 105
血圧 110-74
r-GTP 49
身長 174
体重 55.6
食事はプチ糖質制限食にしています。
市民病院の先生はデータが採りたいだけでしょうか?
管理栄養士の先生は血糖値を上げるのは炭水化物ですとはっきりおっしゃっていました。
ですから とりあえず
このまま頑張るつもりです!!
2010/02/12(Fri) 21:14 | URL | otoki | 【編集】
otoki さん。
HbA1c著明改善ですね。
良かったです。
プチでこれだけ良くなったのなら、自前のインスリンかなり出ています。
でも今後のことを思えば、
朝と昼の糖質は少量にとどめた方がいいと思いますよ。
HbA1c著明改善ですね。
良かったです。
プチでこれだけ良くなったのなら、自前のインスリンかなり出ています。
でも今後のことを思えば、
朝と昼の糖質は少量にとどめた方がいいと思いますよ。
2010/02/12(Fri) 22:22 | URL | 江部康二 | 【編集】
otoki さん。
素晴らしい改善です。
薬はいらないと思います。
プチでいいですので、一回の糖質の量を減らして
空腹時血糖値も正常化を目指して下さいね。
素晴らしい改善です。
薬はいらないと思います。
プチでいいですので、一回の糖質の量を減らして
空腹時血糖値も正常化を目指して下さいね。
2010/02/13(Sat) 08:18 | URL | 江部康二 | 【編集】
江部先生 コメント ありがとうございます。
両親が糖尿病で大変でしたから気をつけています。
父親は、両足壊疽で足の指切断。
母親は、心臓のバイパス手術。
プチ糖質制限食で10月下旬には61Kgあった体重が55Kgになりました。
栄養士の先生からこれ以上体重を減らさないでとの厳命を受けています。
痩せないようにして、様子を見ながらスタンダード糖質制限食に移行していきたいと思います。
数値で表れると嬉しいものですね!
これからも注目しておりますので新しい情報よろしくお願いいたします。
両親が糖尿病で大変でしたから気をつけています。
父親は、両足壊疽で足の指切断。
母親は、心臓のバイパス手術。
プチ糖質制限食で10月下旬には61Kgあった体重が55Kgになりました。
栄養士の先生からこれ以上体重を減らさないでとの厳命を受けています。
痩せないようにして、様子を見ながらスタンダード糖質制限食に移行していきたいと思います。
数値で表れると嬉しいものですね!
これからも注目しておりますので新しい情報よろしくお願いいたします。
2010/02/13(Sat) 12:25 | URL | otoki | 【編集】
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