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血糖調節システム・2010
こんにちは。

今日も寒いです。寒いですが、雨も雪も降らなくて良かったです。

定例の第三金曜ライブ、寒さにめげずお客さん来てくれるかな。

さて今回は、血糖のお話しです。

人体の血糖調節は、なかなか精妙で複雑なシステムにより維持されています。

血糖値は、「食事」、「肝臓によるグリコーゲン分解・糖新生と糖の取り込み」、「運動」、「ストレス」、「インスリン・グルカゴンなどホルモン」「女性の生理」・・・など、いろいろな要素が合わさって調節されています。

① 空腹時
食物吸収が終了した直後には、肝臓のグリコーゲン分解が、循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生に切り替わります。


② 主食摂食時(糖質あり)
摂食時には消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血からまず肝臓に約50%取り込まれて、それ以外が血液の大循環に回ります。

肝細胞でのブドウ糖取り込み自体は、糖輸送体Glut2*を介して行われ、インスリン追加分泌とは関係ありません。
しかし、肝に取り込まれたブドウ糖は、インスリンによりグリコーゲンとして蓄えられます。

糖尿人では<肝臓のグリコーゲン分解と糖新生>が摂食時にも抑制されにくいので、食後高血糖となります。

また糖尿人は、門脈血からの肝臓のブドウ糖取り込みも低下しているので、この面でも食後高血糖を起こしやすいのです。

糖質摂食して血糖値が上昇すれば、正常人では速やかにインスリンが追加分泌されます。

肝臓に取り込まれなかったブドウ糖は、肝静脈から血中に入り、動脈血中に入ったブドウ糖は、インスリン追加分泌により細胞表面に移動した糖輸送体GLUT4により、骨格筋や脂肪細胞に取り込まれます。骨格筋が、約70%の血糖を取り込みます。これにより血糖値も速やかに下がります。

筋肉中に取り込まれた血糖はエネルギー源として使われ、残りはグリコーゲンとして蓄えられます。取り込まれず余った血糖は、インスリンにより中性脂肪に変換され、脂肪組織か肝臓に蓄えられます。

しかし、糖尿人の場合は、血液中のブドウ糖(食後高血糖)は<インスリン分泌不足>と<筋肉や脂肪細胞におけるインスリン抵抗性>により処理されにくいので、食後高血糖が遷延します。

また、インスリン作用不足による脂質代謝異常、アミノ酸代謝異常、高血糖そのものによるインスリン作用低下、インスリン拮抗ホルモン優位、など様々な因子が重なり合って、高血糖が持続します。

さらに糖尿人の一部においては、胃不全麻痺**による内容物の排出遅延があり、吸収も遅延して通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。

③ 糖質制限食を摂食時(糖質がごく少量)
糖質摂取がごく少量なので、食後血糖値はほとんど上昇しません。追加分泌インスリンもごく少量です。糖質制限食を摂取時は、食事中にも脂質が常に燃えています。

また食事中にも、肝臓でアミノ酸などから糖新生も行われています。このため糖質摂取がごく少量でも低血糖にはならないのです。

④ 運動時
安静時には、インスリンの基礎分泌はありますが少量なので、糖輸送体(Glut4)は細胞表面にでてこれず、
筋肉細胞・脂肪細胞は血糖をほとんど取り込まめません。

運動時(筋収縮時)には筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)がインスリン追加分泌がなくても細胞表面に移動して、
血糖を取り込むことが可能となり、血糖値が下がります。

筋肉細胞が血糖を取り込んでエネルギー源とした後、筋肉中のグリコーゲンが満杯になれば、取り込みはストップします。

脂肪細胞は、運動には無関係です。ジョギングや歩行ていどの軽い運動が適切とされています。

糖尿人でインスリンの基礎分泌があるていど以上不足していると、運動によりかえって血糖値が上昇することがあるので注意が必要です。

バーンスタイン医師によれば、個人差はありますが、空腹時血糖値170mg/dlを超えているような場合は、そのような可能性があるとのことです。

また、強度の強い運動だと、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどのインスリン拮抗ホルモンが分泌されますので、血糖値が上昇することがあります。

④ ストレス
急性のストレスがあると、アドレナリン、グルカゴン、副腎皮質ステロイドホルモンなど血糖値を上げるホルモンが分泌されますので血糖値が上昇します。

血糖値は、①.②.③.④などの因子が複雑に絡み合ったシステムにより調節されています。
たかが血糖値されど血糖値、なかなか一筋縄ではいきませんね。


☆☆☆
*糖輸送体(Glut:glucose transporter)
ブドウ糖が細胞膜を通過して細胞内に取り込まれるためには、グルコーストランスポーター(糖輸送体)と呼ばれる膜蛋白が必要です。

Glut1~Glut14が報告されています。
Glut1(脳、赤血球、網膜などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut2(肝臓、膵臓のβ細胞などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut4(筋肉細胞、脂肪細胞の糖輸送体)はインスリン依存性です。


**胃不全麻痺
バーンスタイン医師(米国の1型糖尿病の医師で糖質制限食実践中)の本にも記載されている<胃排泄遅延・胃不全麻痺>が年期の入った糖尿人ではありえます。
欧米人には胃不全麻痺が結構多いようですが日本人でも当然ありえます。

胃不全麻痺のある糖尿人は、夕食を午後6時頃食べても、胃からの排泄が遅延して吸収が遅くなり、通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。
そのため翌朝の空腹時血糖値が高値となることがあります。



江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
空腹時血糖値がここ3年ほど120前後となり、中性脂肪や尿酸値も高くなってきたので、ここ1年で運動やカロリーにも気を配って体重を5キロ落としたにもかかわらず改善せず、おかしいなぁと思っていたところ、年末に先生の「糖質制限食」に出会い、年明けから実施させていただいております。何よりも、焼酎は飲んで良いというのがいいですね。
できるだけスーパーでやろうと思っておりますが、やはり困るのが昼食です。
今は、「納豆3パックと6Pチーズ2個とサラダ」とか「ハムとチーズとプチトマト」とかをメインに食べているのですが、栄養面で見ても、こんなので良いのでしょうか。
とりあえず1ヶ月ぐらいがんばってみて、検査に行くのが楽しみです。
2010/01/16(Sat) 07:18 | URL |  | 【編集
ブログに(2)をアップしました
「糖質制限食のすすめ」-糖尿病・メタボの治療・予防のために(2)をアップしました。糖質制限による体内の代謝変化を理解するのに助けになるのではないかと思います。もしコメントがありましたら、ブログにしてください。
2010/01/16(Sat) 11:01 | URL | GreenIsar | 【編集
こんにちは。

昨年夏に糖尿病から脳梗塞(片足に力が入らない症状)となり
投薬治療2週間後に退院。一ヶ月ほどカロリー制限食をして
いましたが、その後糖質制限食に切り替え半年が経とうとして
います。

昨年末に人間ドックを受け以下のような数値が出ました。
(左が今回、右が1年前の数値です。)

中性脂肪 132 ← 127
HDLコレステロール 63 ← 36
LDLコレステロール 199 ← 120
AST(GOT) 17 ← 43
ALT(GPT) 19 ← 66
γ-GTP 18 ← 86
空腹時血統 87 ← 123
ヘモグロビンAlc 5.1 ← 7.1

だいたい良い数値ですが、気になることが2つあります。
ひとつはLDLコレステロール値がかなり上がっていること、
ふたつめは骨密度が基準値を下回ったことです。
わたしは46歳・男です。

これは糖質制限食の内容に何か問題があるのでしょうか。
例えば毎日おやつにあたりめを食べていることとか、毎日
たまごを2こ食べていることなど。自分で考えられるのは
この程度なのですが...。

これからもずっと糖質制限食をしていく上で注意すべきことが
ありましたらご教示いただけないでしょうか。
2010/01/16(Sat) 16:44 | URL | たろう | 【編集
糖質制限について…
いつもブログ拝見してます。
江部先生の糖質制限に出会って、すごく痩せました!!
本当にありがとうございます。

夕飯に枝豆やら豚バラ肉やら低糖質・高脂質なものを
腹がはちきれそうな程、ドカ食いしてしまいました…
食後5時間たっても血糖値が120で下がりません…
足も痺れています
これはもう立派な糖尿病でしょうか?
食べ過ぎると血糖は高いまま長時間続きますか?

お忙しいところ申し訳ないのですが
回答よろしくお願いします。
2010/01/16(Sat) 16:50 | URL | もか | 【編集
Re: 糖質制限について…
もか さん。

どか食いは、さすがに好ましくないですね。
タンパク質、脂質は血糖値を上昇させませんが、
枝豆には少量ですが、ある程度糖質が含まれています。
大量なら血糖値を上昇させます。

診断基準としては糖尿病ではありません。
2010/01/16(Sat) 17:20 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
たろうさん。

「ひとつはLDLコレステロール値がかなり上がっていること」

LDLコレステロールに関しては糖質制限食初期で上昇する人がいますが、
半年から1年で正常化することが多いです。

「ふたつめは骨密度が基準値を下回ったことです。」

こちらは糖質制限食には関係ありません。
2010/01/16(Sat) 17:23 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
翔さん。

糖質制限食、昼食は結構苦労しますね。

「納豆3パックと6Pチーズ2個とサラダ」とか「ハムとチーズとプチトマト」

お昼にこれだけとしても、夜は魚・肉・野菜・豆腐などしっかり摂取してもらえば
問題ないと思います。

コンビニのおでんとか、定食屋でもおかずだけ選べる店などあれば便利ですね。
2010/01/16(Sat) 17:31 | URL | 江部康二 | 【編集
こんばんは。
江部先生、こんばんは。ご無沙汰しております。

今日はちょっと驚いたことがあったので、ご報告を。

「我ら糖尿人、元気なのには理由がある」は皆さんのおっしゃるように、近所の本屋で平積みされていますが、今日は図書館に行って、それよりも凄い光景を目撃しました。

大分県立図書館(貸し出し率が全国第1位らしいです。江部先生の著書に出会ったのもこの図書館です。)の健康コーナーで1000冊以上はあると思われる本の中でたった4冊だけが書棚の上に立てかけられていたのですが、その中に、江部先生の著書がありました。

「糖質制限食 春のレシピ」です。
立春にはまだ2週間以上ありますが、図書館の書士というのはファッションの世界とおなじで、「季節を先取りするんだな。」
「医療も先取りしてる???」
と思いました。

写真も撮ってきました。
http://blog-imgs-36.fc2.com/s/u/n/sunap21/tosyo.jpg

2010/01/16(Sat) 19:20 | URL | さわ | 【編集
吉政先生
江部先生、はじめまして。

糖質制限食に理解のある先生を偶然ネットで見つけたので念のためにお知らせいたします。
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/pamph74.html#anchor-1

こういう先生が増えてくれると良いですね。
2010/01/16(Sat) 20:58 | URL | にまる | 【編集
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