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脂質摂取と糖尿病・ヒムスワースの誤解
おはようございます。

本ブログでもよく質問がありますが、

「高糖質食が糖尿病に良い。糖質制限食は糖尿尿に良くない。」

と主張されている山梨医科大学名誉教授の佐藤彰夫先生のホームページがあります。

その佐藤先生が、根拠としてよく引用されているロンドンのヒムスワースの報告について、東北大学名誉教授後藤由夫先生が、興味深い見解を述べておられます。

後藤先生は日本の糖尿病医療をずっとリードされてきた医師で、ヒムスワース(Himsworth)の誤解を明快に指摘しておられます。

すなわち、

「脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物ではこれと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられる」

というヒムスワースの報告は、はっきり、間違いだったわけです。

さらに、後藤先生は「動物実験で大量の脂肪を与えて糖尿病が現れたという報告はない」と明言しておられます。

ヒトにおいても動物においても「脂肪摂取量が糖尿病発症に関係する」という説は否定されたわけです。

以下は「糖尿病メディカルネット」に記載されている後藤先生の文章からの引用です。

<後藤由夫 私の糖尿病50年 -糖尿病医療の歩み->
43. 糖尿病の増減
http://dm-medical.net/14/000242.php

2. 脂肪摂取と糖尿病
 ロンドンのHimsworth(1935、1949年)は各国の糖尿病の死亡率と国民の栄養素摂取量との関係が図2のように、脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物ではこれと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられると報告した。この成績をもとにHimsworthは脂肪摂取が糖尿病の増加と関係すると結論した。筆者はこれに興味を抱き、追試して同様な成績を得たが、次に粗死亡率ではなく訂正死亡率について関係を求めた。その結果は図3のように相関関係は認められなかった。このことから、Himsworthがみていたのは脂肪摂取量の多い国は豊かで糖尿病罹病年齢まで生存するのに対し、経済的に遅れている国では脂肪摂取量が少なく、安価な炭水化物をエネルギー源として、しかも糖尿病罹病年齢まで生存する者は少なく、若年期に死亡する者が多いことをみているにすぎない、と理解された。このことから脂肪摂取が糖尿病の発症と関係するという説は否定された。動物に大量の脂肪を与える実験も行われたが、これによって糖尿病が現れたという報告もなかった。

☆☆☆
後藤由夫先生プロフィール 糖尿病メディカルネットより引用

日本人の生活環境が戦後から高度成長期を経て現在までに激変したのと同じように、糖尿病の医療にも大きな変化があった。このコーナーは、この間の糖尿病医療の進歩の跡を、永らくこの分野をリードされてきた後藤由夫先生に、その体験をもとに語っていただき、今後の糖尿病医療を担う方々の参考に資するために企画されたものである。

後藤 由夫
1925年10月3日生まれ
県立酒田中学、第二高等学校理乙を経て
東北大学医学部 1948年9月卒業
1年間のインターン後、東北大学内科学第3講座にて研究
ペンシルベニア大学内科客員科学者(1958年-60年)
弘前大学教授(1970年-76年)
東北大学教授(1976年-88年)
東北大学名誉教授(1988年-)
東北厚生年金病院院長(1988年-94年)
東北厚生年金病院名誉院長(1994年-)
日本糖尿病協会理事長(1992年-2000年)
日本臨床内科医会会長(1999年-)

糖尿病の成因、合併症、治療法を研究し、糖尿病モデル動物GKラットの開発に成功。
日本内科学会会頭をはじめ糖尿病学会、老年医学会、動脈硬化学会、臨床栄養学会、膵臓病研究会、体質学会、自律神経学会、過酸化脂質学会、肥満学会、東洋医学会、人間ドック学会、発汗研究会、末梢神経研究会などの会長・会頭をはじめ、糖尿病関係の5つの国際シンポジウムの会長を担当。現在約18,000人の内科医が加入する日本臨床内科医会会長。

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
Re: タイトルなし
tarouhさん。

私は炭水化物の質が関係していると思います。
未精製炭水化物→精製炭水化物

厚生労働省(3) 食品摂取量の推移http://sugar.alic.go.jp/japan/data/jd4_03.htm

分類の仕方の変更にもよると思いますが「調味嗜好飲料」がとんでもない量になってます。
H13年、14年の穀物も分類の仕方が変わったのだと思います。
ということはもともと、穀類は減っていなくて昭和30年から不変だったことになります。
こうなると「調味嗜好飲料」と「精製炭水化物」によるブドウ糖ミニスパイクが
糖尿病増加の真犯人と思います。

ここら辺、一度記事にしようと思っています。
2010/01/13(Wed) 11:51 | URL | 江部康二 | 【編集
>Himsworthがみていたのは
>脂肪摂取量の多い国は豊かで
>糖尿病罹病年齢まで生存するのに対し、
>経済的に遅れている国では
>脂肪摂取量が少なく、安価な炭水化物を
>エネルギー源として、しかも
>糖尿病罹病年齢まで生存する者は少なく、
>若年期に死亡する者が多いことをみている
>にすぎない、と理解された。

江部先生が口を酸っぱくして繰り返し説明されている「糖質制限食実行者のケトン体値上昇」と全く同じで

●根本を見落とす → 間違った結論

になるのですね。これからも安心して脂肪を
摂って蒸留酒呑み続けます。
2010/01/13(Wed) 16:24 | URL | らこ | 【編集
はじめまして。40歳で糖尿と言われ20K減量で正常値にしましたが年とともにメタボで55にして再発?アクトス30のお世話になり、新聞で先生の糖質制限を知り本を4冊購入し実践して3週間です。何が是か非かわかりせんが酒を呑めるの言葉で心酔しております。糖尿と言われるまで酒は呑みませんでしたが闘病に向かうにあたり飲み始めたオオバカ者です。しばらく先生のブログと本のお世話になります。
楽しみにしております。
2010/01/13(Wed) 20:47 | URL | クワポン | 【編集
Re: タイトルなし
らこさん。

ありがとうございます。
同感です。
2010/01/13(Wed) 22:13 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 基礎代謝量低下
tarouhさん。

荒木先生のエアコン説は、私も賛成です。
2010/01/13(Wed) 22:16 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: タイトルなし
クワポンさん。

本のご購入ありがとうございます。
清く正しくより美味しく楽しく糖質制限食です。

酒は大量でなければ、人生の楽しみの一つと思います。
飲める人は飲んだ方がよいと思いますよ。(⌒o⌒)v
2010/01/13(Wed) 22:19 | URL | 江部康二 | 【編集
イヌイットとガン
先生のブログいつも興味深く拝見させていただいております。
ヒムワースの結論が若死である事をみているにすぎないという話なるほどと思いましたが、一方昔のイヌイットにガンが少なかったというのも彼らが若死だったためという可能性もあるかなとふと思いました。糖質制限でガンが予防できれば本当に凄いとは思いますし、昨年話題になった猿のカロリー制限の論文では半分くらいになっていたと記憶していますが...
2010/01/14(Thu) 04:59 | URL | whitesnake | 【編集
他山の石
先生こんにちは。

「誤った母集団の取り方で導かれた、間違った統計」に騙される典型的な例ですね。

他人の失敗には気づくんですが、自分の失敗ってのは見えにくいんですよね。

ま、それはそうと、「加齢を要因とする病気」が増えてくるであろうこれから、「長生きできる生活習慣」=「生活習慣病の原因」と言うミスディレクションには注意が必要ですね。



2010/01/14(Thu) 16:45 | URL | 飯山忍 | 【編集
Re: 他山の石
飯山忍さん。

同感です。
2010/01/14(Thu) 17:50 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: イヌイットとガン
whitesnakeさん。

若死にという可能性もありますが
白人とイヌイットとガンの種類が全く異なっていたことが、
糖質制限食的には興味深いです。
2010/01/17(Sun) 18:20 | URL | 江部康二 | 【編集
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