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糖質制限食と食後の脂質代謝、ケトン体と胎児
おはようございます。

今回は、糖質制限食と食後の脂質代謝、ケトン体と胎児について研修医さんからコメント・質問をいただきました。

「09/12/05 研修医I
糖質制限食糖尿病合併症
江部先生こんばんは。
先生のブログを拝見し糖質制限食は血糖コントロールを良好に保ち、合併症の進展・抑制に有効であり特にグルコーススパイクを抑制することは動脈硬化の抑制に重要と感じたのですが、糖質制限食の実践で高脂肪食に傾き食後の脂質代謝異常を引き起こしトータルで動脈硬化を進展させる可能性はないでしょうか?また、妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では糖質制限食により高濃度のケトン体が生じ胎児の知能低下を引き起こす可能性はないでしょうか?」


研修医さん。
コメントありがとうございます。

脂質代謝異常症を起こすのは、高糖質食です。

特に、メタボでインスリン抵抗性がある人が高糖質食を食べると、食後も翌朝の空腹時中性脂肪値も高値となります。

現在、高雄病院では、スーパー糖質制限食実践中の患者さんの空腹時、食後2時間、5時間の中性脂肪値を検査していますが、いずれも正常範囲です。

ケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)は、人体内で筋肉や脂肪など体細胞のほとんどで日常的にエネルギー源として利用されています。従って催奇形性はありませんし、胎児への悪影響もありません。

糖質制限食を実践すれば、生理的にケトン体が上昇しますが、これは全く正常です。

勿論、胎児にも母体にも何の問題もありません。

ちなみに、スーパー糖質制限食を2002年から続けている私の

2009年9月のデータでは、

血中ケトン体値:530μM/L(26~122)
尿中ケトン体:陰性

です。

農耕以前の狩猟・採集が生業だったころの人類のケトン体の基準値は、これぐらいだったと考えられます。

農耕以前は人類皆糖質制限食で、妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。

農耕以前の人類は、皆、今のケトン体の基準値より、はるかに高い血中ケトン体濃度であったと考えられます。

また、イヌイットも4000年間、生肉・生魚が主食のスーパー糖質制限食で妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。


江部康二


☆☆☆
インスリンリポタンパクリパーゼと中性脂肪

2009年11月23日 (月)
こんにちは。

今回は、「インスリンリポタンパクリパーゼと中性脂肪」のお話しです。

インスリンは、

①筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)を抑制します。
②脂肪細胞中の リポタンパクリパーゼ(LPL)を活性化します。

筋肉細胞や脂肪細胞の毛細血管の壁には、リポタンパクリパーゼ(LPL)があります。

リポタンパクリパーゼ(LPL)が、キロミクロンやV-LDLの積み荷の中性脂肪を、脂肪酸とグリセロールに分解して、筋肉細胞や脂肪細胞に取り込ませてエネルギー源として利用させ、余ったら中性脂肪に再合成して蓄えるのです。

健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。

糖質摂取で血糖値が上昇して、追加分泌インスリンがでます。脂質摂取でキロミクロンも出現します。

筋肉細胞では、インスリンによりリポタンパクリパーゼ(LPL)が抑制されるので、脂肪酸・ケトン体をエネルギーとして使えなくなるので、もっぱらブドウ糖を利用します。それで血糖値は下がります。

一方、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)は、インスリンにより活性化されるので、中性脂肪をどんどん分解し、脂肪酸とグリセロールにしてエネルギー源として利用しますが、余剰のものは中性脂肪に再合成して脂肪細胞に蓄えます。

このようにして、血液中の中性脂肪は基準値に下がります。

健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人は、このように、少々何を食べても血糖値も中性脂肪値も基準値内にすぐ戻ります。

一方、肥満などでインスリン抵抗性がある人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。

インスリン抵抗性の本質は、「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」とされています。

インスリン本来の作用とは、「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」です。

インスリン抵抗性があると、生理的なインスリン濃度では、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)が充分に活性化されず、脂肪細胞内にそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。それでキロミクロンの積み荷の中性脂肪は減りません。

そして、脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。

肝臓でのVLDL合成は、通常はインスリン濃度が増えれば抑制されますが、インスリン抵抗性があるため、抑制がきかず合成されるのです。

一方、筋肉細胞もインスリン抵抗性はあり、血糖値をやや取り込みにくくなっていますが、追加分泌インスリンにより筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)はある程度抑制されます。

糖尿病になっていない段階なら、筋肉細胞は脂肪酸を取り込めない代わりに、ブドウ糖を取り込んで血糖値は下がりますが、中性脂肪は分解されず血中に残ります。

このようにインスリン抵抗性がある人が、<糖質+脂質>を摂取すれば、食事由来のキロミクロンと肝臓由来のVLDLの両方で血中の中性脂肪が高値となります。この場合、食後高中性脂肪血症は遷延して、空腹時中性脂肪値も高値となることが多いです。

インスリン抵抗性がある人が、スーパー糖質制限食を摂取した時は、追加分泌インスリンは極少量しか出ません。従いまして、筋肉中のリポタンパクリパーゼは、食中・食後もよく働いてキロミクロンの中性脂肪を分解して筋肉細胞に取り込みます。そして血中の中性脂肪値は減少するわけです。 (^^)


いやはや食後脂質代謝は、なかなか複雑で難しいです。おぼろげに解ったことを説明してみましたが、まだ不十分と思います。(・・?)

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
私が2人目を妊娠中、妊娠8か月の後半からどんどん胎児が大きくなってしまい、調べたらHba1cが6.8もあったのに「食事を控えめに」としか指示されず、いわゆる普通の糖尿病食のような食事(カロリー控えめで主食あり)を続けましたが、私の体重は全く増えなかったのに子供は4500gの巨大児で生まれて呼吸が困難になり1か月入院することになってしまいました。

あのとき糖質制限を知っていれば…と悔やまれます。
子供は3歳になりすっかり元気で標準体型ですが…
2009/12/10(Thu) 08:52 | URL | リュカ | 【編集
2年前の人間ドックで糖尿型と診断され、このブログに出会い、糖質制限を開始しました。
半年後の再検査で境界型に、さらに半年後の人間ドックでぎりぎりアウトで境界型になるまで回復したところで妊娠が発覚しました。

妊娠中も糖質制限を継続し、血糖値検査では、再検査(50g)となりましたが、75gでは高めだったものの妊娠糖尿病には該当しないということで、
食事制限もなく、私の体重(+6kg)も赤ちゃんの大きさ(約3000g)も指導されることなく、先日無事に出産しました。
出産後も母子ともに健康そのものです。

糖尿型と診断されたときに、このブログに出会ってなかったら…と考えるとゾッとします。
本当にありがとうございました。
2009/12/11(Fri) 17:11 | URL | たま | 【編集
Re: タイトルなし
たまさん。

赤ちゃん誕生良かったですね。
おめでとうございます。
2009/12/12(Sat) 07:37 | URL | 江部康二 | 【編集
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