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体重減少効果:「糖質制限食」VS「高糖質低脂質食」
おはようございます。

今回は、「糖質制限食」と「高糖質低脂質食」とで、どちらが体重減少効果があるかを、理論的・疫学的に考察してみます。

高糖質低脂質食とは、従来ヘルシーと信じられてきた、糖質が主で脂質をできるだけ減らした食事のことです。


長い間、根拠は曖昧なまま医学界では、この高糖質低脂質食が、健康に良くて体重減少効果があると信じられてきましたが、その間違いを検証したいと思います。

糖質制限食:糖質12% 脂質56% タンパク質32%>
高糖質低脂質食:糖質60% 脂質20% タンパク質20%>

【理論的考察】
糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食J)とでは、痩せる効果に大きな差があるのですが、「糖質制限食」でやせるメカニズムに関しては、以下の四つの要素が重要です。

糖質制限食」では、糖質を摂取しないので

1 肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がほとんどでない。
2 体脂肪が常に燃えている。
3 血中のケトン体値が高まり、尿中に含有カロリーと共に生理的に排泄される。
4 肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われそれに高エネルギーが消費される。

一方、従来の「カロリー制限食」では、糖質を摂取するので

A 血糖値が上昇して肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がたっぷり分泌される。
B 体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C ケトン体は尿中に出なくなる。
D  肝臓の糖新生はストップする。

この<1、2、3、4>と<A、B、C、D>の比較をしてみれば、「糖質制限食」のほうが「インスリン・スイッチが作動するカロリー制限食」より、ダイエット効果があることがお解りいただけると思います。

すなわち、糖質を摂取すれば、<1、2、3、4>という体重減少への利点が、全て消えてしまうわけです。

<1、2、3、4>と<A、B、C、D>に関しては、摂取カロリーとは全く無関係の生理学的な事実であり、あくまでも糖質を摂取するか否かが鍵となります。

このように、少なくとも同一カロリーである限りは、糖質制限食が脂肪制限食よりダイエット効果が高いことは、理論的に証明できたと思います。

単純には、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば太るし、下回れば痩せます。

通常のカロリー制限食(高糖質食)なら

<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生>です。

糖質制限食なら

<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生> に加えて、

《肝臓の糖新生でエネルギーを消費+尿中ケトン体でエネルギーを消失》が追加です。

この2つの追加分に関しては、今まで医学界でほとんど知られていなかったと思います。


【疫学的証拠】

体重減少に関しては、
2008年のニューイングランド・ジャーナル、イスラエルの研究報告
NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
「低炭水化物食(糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」
が、長年の食事療法の論争に決着をつけたと思います。

これは、ネットの1個人の意見や仮説ではなく、322人を2年間追跡した権威ある疫学的研究です。

<低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。>
• イスラエルの322人(男性86%)
• (1)低脂肪法(カロリー制限あり)
• (2)オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
• (3)低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンス式ダイエット)
• 3グループの食事法を2年間経過観察。
• 低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241

体重などを分析した結果、2年後の体重減少幅の平均は
(1)低脂肪法 2.9キロ
(2)地中海法 4.4キロ
(3)低炭水化物法 4.7キロ
となり、
(3)低炭水化物法が最も減少していた。また、善玉コレステロールも増えていた。


2007年3月のJAMA(米国医師会雑誌)に、
「the A TO Z Weight Loss Study: a randomized trial.」という論文が発表されました。

アトキンス(Atkins)、ゾーン(Zone)、ラーン(LEARN)、オーニッシュ(Ornish)ダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果をみた研究論文です。

311人の女性を上記4グループに分けて追跡したものです。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものです。

結果は、アトキンス ダイエット( 糖質制限食)が最も、体重を減少させ、HDL-コレステロールを増加、中性脂肪を減少させることが明らかとなりました。 (^O^)

アトキンス ダイエットは低糖質食で私達の 糖質制限食と基本的考えは一緒です。1年間で平均4.7kg減少です。

ゾーン ダイエットはタンパク質・炭水化物・脂質の比率を40:30:30にするというものです。平均1.6kg減少です。

ラーン ダイエットは高炭水化物、低脂肪食です。平均2.6kg減少です。

オーニッシュ ダイエッは菜食主義風のダイエットです。カロリーの10%を脂肪分から、20%をたんぱく質、70%を炭水化物からという割合の食事です。平均2.2kg減症です。最も高炭水化物で、最も低脂肪です。

コレステロ-ルや飽和脂肪酸を多く含む食品は禁止なので、肉は食べられませんが、一部の乳製品(無脂肪のヨーグルトや牛乳、低脂肪チーズ等)や卵白はOKです。魚も禁止です。

また、果物や穀類などの精製されていない炭水化物(糖質+食物繊維)は良いのですが、砂糖などの精製された糖質は制限されます。蜂蜜やアルコールもだめです。玄米や全粒粉のパンを主食として、野菜や果物が中心で、日本の玄米菜食に近いですね。

このようにニューイングランド・ジャーナルと米国医師会雑誌という2つの権威ある医学雑誌に載った論文で、「糖質制限食」が「高糖質低脂質食」より体重減少効果があることが証明されました。


【結論】

理論的にも疫学的にも、体重減少効果に関して糖質制限食のほうが、高糖質低脂質食より有効であることが証明できたと思います。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
またまた質問です。
江部先生 こんにちは。
今回も興味津々の記事参考になります。

ところで、いろいろなHPや雑誌の記事などで、相変わらずよく目にするのですが、下記のような見解はどこから来るのでしょうか?
以下のような文章では、ひと時足らずも糖質をカットすることが怖くなってしまいます。

「糖質が不足すると、エネルギー不足となり、疲労感におそわれます。特に脳は、ブドウ糖が唯一のエネルギーなので、血糖値が下がると集中力が欠け極端に低下すると意識を失うこともあります。

通常、血糖値が下がると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが分解されてブドウ糖になります。これが尽きると、今度は、からだを構成するたんぱく質(アミノ酸)がブドウ糖に変化してエネルギーにします。これを糖新生といいます。たんぱく質が失われるので肌の衰えを招くことに。ダイエット中でも、一日100g以上の糖質を確保しましょう。」
2009/12/06(Sun) 18:54 | URL | 豆しば | 【編集
体内のグリコーゲンが尽き、
生命の危機になるほどの過酷な運動を
日常的に続けているアスリートが、
この掲示板を見ているかは疑問です。
また糖新生は乳酸や脂肪代謝物からも行われているのですよね???
そんなに神経質に肌の衰えが気になるのなら
ビタミンCとBCAAでも摂って運動を控えるのがよろしいかと

2009/12/06(Sun) 21:05 | URL | 素朴な疑問として | 【編集
人工甘味料
先生こんにちは

先日慢性腎炎の事で質問させて頂きましたゆかです

この前、アメリカの研究で人工甘味料の摂取で腎機能の低下が2倍早まるという記事を読みました。
いずれも腎機能が正常な女性対象に人工甘味料を摂取するグループと摂取しないグループにわけて研究したところ、人工甘味料を摂取したグループに通常の2倍もの腎機能の低下がみられたと言うものでした。

糖質制限にいつも役立ってる甘味料(私はパルスィートを使っています )は人工甘味料ですよね?

もし正常な腎機能の方達が2倍の早さで低下するのであれば、慢性腎炎の私はもっと低下が早くなるということですか?

そうだとしたらやはり砂糖を使うしか方法がないのでしょうか…(:_;)

せっかく数値が安定してるのに、目の前を塞がれた様で残念でなりません…
2009/12/06(Sun) 23:41 | URL | ゆか | 【編集
お久しぶりです
どうも自分自身、同じものを食べていても油の摂取量を増やすとカロリーが上がりますが逆に痩せていくように感じます
油が糖質の摂取を妨げているということはないでしょうか?
2009/12/07(Mon) 13:16 | URL | 甘いみかん | 【編集
Re: タイトルなし
かすみさん。

月曜日の夜は
午後5時から7時半まで
私の京大医学部の同級生、革島定雄先生が
江部診療所におられます。
咳と痰のお薬を処方して頂けると思います。
2009/12/07(Mon) 15:19 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: お久しぶりです
甘いみかんさん。

油と糖質を一緒に摂取すると、GIは下がります。
白米より、バターライスのほうがGIは低いです。
従って糖尿病でない人には一定の意味があると思います。
なお吸収速度がゆっくりになりますが、合計吸収量は一緒です。
例えばグルコバイは当初、やせ薬として開発されましたが
そちらには無効だったようです。

また糖尿人においては、GIが低いものでも、普通に主食(デンプン)を摂取すれば
血糖値は200mgを超えてきますのでGIの意味合いは少ないです。

倹約遺伝子の持ち主か否かにもよりますが、
2400キロカロリの糖質制限食で体重減少する人が1800キロカロリの糖質たっぷり食では太ることがあります。
2009/12/07(Mon) 18:13 | URL | 江部康二 | 【編集
糖質制限食を目の敵にしない医師は?
 毎度お世話様です。
 先生のご本を読んで、日本の糖尿病治療の実情を知り愕然としている中年男性です。
 さて、現在自分なりに糖質制限食を1年ほど行っているなのですが、HbA1cが7%前後から下がらずにいます。
 早い話が「制限が甘い」のですが、このため現在SU剤を処方してもらって、出張先等で糖質を食べざるを得なかった場合にだけ飲んでいます。
 いくつか質問させていただきたいのですが、

1.このような頓用の服用を行い、かつ継続しても問題はないのか?
2.先週よりDPPⅣ阻害薬のジャヌビヤを1日1回50mgづつ飲み始めたのですが、少し効きすぎるような気がします。糖質制限食を行いながら、上記のような出張等の際の朝などに、例えば、この薬の標準使用量の50mg/日・錠の半分の錠剤の25mgの物を飲むというのは大丈夫なのでしょうか?
3.このジャヌビアを処方してくれた医師もなのですが、糖質制限食をしていると言うと「何をしようがあなたの勝手だけどね!!」と、えらい剣幕で当たり散らされてしまい、上記2の質問などとても出来る状態ではありません。
 私の住所は千葉県柏市で、とても京都府の先生の所までは通えませんので、どこか糖質制限食を行っている患者に対しても、まともに話をしてくださる医師を紹介しているサイトなど、ご存じではないでしょうか?仕事上糖質制限を完全に守ることが出来ないため、何らかの薬は必要なのです。
先生の本の趣旨からは完全にはずれてしまい、大変失礼ではあるのですが、教えていただけないでしょうか?

以上、勝手な質問で誠に申し訳ないのですがご教授お願いできないでしょうか?
2009/12/08(Tue) 01:21 | URL | IKEA | 【編集
Re: 糖質制限食を目の敵にしない医師は?
IKEAさん。

東京の糖質制限食に理解のあるDrです。
まずは電話でご相談ください。


原 譲先生
〒187-0032 東京都小平市小川町1-972-7
TEL 042-348-8515 FAX 042-348-8516
ゆずるクリニック
http://www.yuzuru-clinic.com/annai.html#top

小松川クリニック
桜本薫先生、桜本美輪子先生
東京都江戸川区東小松川1-12-11
電話:03-5607-7051
2009/12/08(Tue) 10:11 | URL | 江部康二 | 【編集
Re: 人工甘味料
ゆかさん。

パルスィートゼロは98%以上が、エリスリトールです。
エリスリトールはいわゆる人工甘味料には分類されず、糖アルコールに
分類されて、安全性は確立しています。

ごく微量、人工甘味料のアスパルテームとアセスルファムカリウムが含まれていますが
まず心配ないと思います。

詳しくは記事にしますので・・・
2009/12/08(Tue) 16:07 | URL | 江部康二 | 【編集
お答えありがとうございます
江部先生 早速の解答ありがとうございます。
でも、こんなややこしい話、お電話なんかで質問するわけにもいかないと思いますので、一度訪問(受診)してみようと思います。
小平市の方は遠いので無理ですので、江東区の小松川クリニックに訪問してみたいと思います。
やはりパラダイムシフトというものは、パラダイムを支えている人間が生きている限りは無理なんでしょうかね。
2009/12/09(Wed) 00:27 | URL | IKEA | 【編集
はじめまして。一ヶ月ほど前から糖質制限を始めました。体のほうは最近ようやく軽くなって来ましたが、糖質制限を始めてから痰が絡まるようになり、毎日不快になります。特にかぜをひいているわけでもないのに、症状が消えません。毎晩飲酒をしていますが、糖質制限をはじめる前まではこのようなことはなかったのですが、何か関係があるのでしょうか?また解決策はないでしょうか?
2010/02/10(Wed) 10:04 | URL | 山本 成美 | 【編集
Re: タイトルなし
山本 成美さん。

糖質制限食と痰は無関係と思います。
普通に、呼吸器科とかでご相談ください。
2010/02/10(Wed) 13:31 | URL | 江部康二 | 【編集
私も咳と痰がひどいです
こんにちは。
私も、糖質制限(三食とも炭水化物カット)の翌日からひどい咳と痰に悩まされています。熱は無く、ただ延々と黄色い痰が喉に絡み、咳が出るという感じです。

糖質制限に伴うケトン体などが呼気として吐き出される際に、喉などの粘膜を刺激しているという可能性はありませんか?なお、私はアレルギー性鼻炎を持病として持っています。喘息ではありませんが、喉は刺激に弱いほうだと思います。

ただ、糖質制限と同時に夜間のウォーキング(1時間弱)を初めており、低温な空気が喉を刺激している可能性もあるのかなと思ってはいますが・・・

先生の患者さんには、そのような症状の方はいらっしゃいませんでしたか?
2011/12/24(Sat) 00:55 | URL | ひろし | 【編集
Re: 私も咳と痰がひどいです
ひろし さん。

咳と痰は糖質制限食とは無関係と思います。

外気が寒くなったことや、たまたまそのタイミングで風邪をひいて長引いているとかとだと
思います。

成人の百日咳も結構流行っています。
成人のしつこい咳の3割くらいが、百日咳です。
2011/12/24(Sat) 16:57 | URL | ドクター江部 | 【編集
ありがとうございます。
咳は一週間続いているので、週明けにでも呼吸器のある病院に念のためかかってみようと思います。

百日咳は、実は以前に掛かったことがあります(疑わしいという診断ですが)。

ありがとうございました。
2011/12/25(Sun) 13:18 | URL | ひろし | 【編集
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