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米国の日帰り糖尿病教育プログラム
こんばんは。

高雄病院で夜診の最中に雨が降ってきました。

今日の夜診は久しぶりに早く終了しました。

さて今回は、東京糖尿人さんから、米国の日帰り糖尿病教育プログラムについて、興味深いコメント・質問ををいただきました。

「江部先生こんにちは
以前に米国のホームドクターについてコメントさせていただいた者です。
今回は州立大学病院のダイアベティック・プログラムに行きました。
日本の教育入院のような内容の日帰り治療で、インスリン未導入患者向けです。
主な内容は合併症予防と栄養指導で、糖質カウントについての指導が
あったので報告させていただきました。

糖質を取らなければ血糖値は上がらないとハッキリ前置きがあり
投薬をやめられるメリットと食事の取り方が難しくなるデメリットを
3つのチャプターに分けて指導されました

1糖質割合を下げながら、必要カロリーと栄養バランスを保つ方法
一食当たりの糖質量は1オンス(約30g)を目標、上限を2オンスにし
糖質を減らす分、脂質タンパク質が自然と増えるので足りないカロリーは補える
インスリン分泌の少ない人は更に糖質を減らすか薬を併用するか選択

血糖値を上げないように必要糖質量をとる方法
繊維の多いものやGI値の低い食品を選ぶ、油を含む食べ方にする、
小分けに時間差で食べるようにする
この大学病院に合併症で入院している患者にはおかずは通常食のまま、
パンの代わりに茹でたブロッコリや人参を出すそうです
これにより血糖値急上昇を抑えられ糖尿薬が必要なくなるケースが多い
(米国ではインスリン分泌のある患者が多いからこの点は日本とは違いますね)

3一般的な栄養バランスと違う食事になるデメリットを解消する方法
脂質で太るイメージがあるが肥満はカロリーと糖質過多が原因、
脂質とタンパク質摂取では太らない、元々肥満な場合は別
長期的に脂質過多は動脈硬化、タンパク質過多は腎臓負担の可能性を
指摘されるが、すでに患っている糖尿を悪化させないことを第一義とするか
いま患っていない別の病気を予防するかのバランスは本人の選択
一般的に、糖質を減らすと塩分過多になりやすいのと食費が高くなる

上記のような内容でしたが、ある程度の糖質摂取を推奨している点と
脂質タンパク質過多で他の病気にならないかという点が気になりました
江部先生自身の食生活でタンパク過多が腎臓を痛めないことを
証明しているように感じられますがどうでしょうか
プログラムの医師曰く、糖質カウント方針になってからタンパク過多で腎臓を痛める
リスクよりも、糖尿自体の悪化が抑えられる結果、腎不全に移行する患者は確実に
減っているが、脂質過多による糖尿患者の動脈硬化についてはデータがなく不明だそうです

今回、糖質制限が一番原始的かつ効果的な糖尿治療だと改めて思いました
米国都市部では糖尿に限らず一般人にも広くローカーボが
ライフスタイル化して肥満と糖尿に効果を上げています
それでも医療保険が自動車保険のように予算と保障内容を照らして
加入するため、手厚い保険でないと教育的治療は受けられず、
眼底出血をして始めて自分が糖尿だと知る人も依然多いようです
日本では誰でも同じ医療を受けられるのだから医療機関側が
糖質についての意識を変えてくれるといいんですが。
2009/11/23(Mon) 18:54 | URL | 糖尿東京人」


東京糖尿人さん。
いつも貴重な情報をありがとうございます。

「糖質を取らなければ血糖値は上がらないとハッキリ前置きがあり・・・」

これはフェアです。

日本の糖尿病専門医諸氏もこのくらいのことは言って欲しいですね。

<州立大学病院のダイアベティック・プログラム>

以前、米国在住の糖尿人に聞いたことがあるのですが、日帰りでも、1000ドルくらいの費用がかかるのでしょうか?あと差し支えなければ、どこの州でしたでしょうか?

というのは、例えばペンシルバニア州立大学では糖尿病専門医は基本的にカロリー制限食を勧めるそうです。

また、私の聞いた範囲では、糖質制限食を積極的にすすめる医師は、米国でも少なくて各州に1~2人で、バーンスタイン先生もその一人です。

今回、東京糖尿人さんが参加された、糖尿病教育プログラムは、ローカーボというより、糖質管理(カーボカウント)が中心ということですね。ADAの2008年度実施栄養勧告で糖質のモニタリングは、グレードAで推奨されたので、それに基づいた指導ということでしょうか。

「1 糖質割合を下げながら、必要カロリーと栄養バランスを保つ方法
一食当たりの糖質量は1オンス(約30g)を目標、上限を2オンスにし
糖質を減らす分、脂質タンパク質が自然と増えるので足りないカロリーは補える
インスリン分泌の少ない人は更に糖質を減らすか薬を併用するか選択」


この考えを、推し進めれば、糖質制限食にもなりそうですが・・・。

一食あたり、20gくらいに制限すれば、食後血糖値が180mgを超えることは、ほとんど無いと思います。

「2 血糖値を上げないように必要糖質量をとる方法
繊維の多いものやGI値の低い食品を選ぶ、油を含む食べ方にする、
小分けに時間差で食べるようにする
この大学病院に合併症で入院している患者にはおかずは通常食のまま、
パンの代わりに茹でたブロッコリや人参を出すそうです
これにより血糖値急上昇を抑えられ糖尿薬が必要なくなるケースが多い
(米国ではインスリン分泌のある患者が多いからこの点は日本とは違いますね)」


パンの代わりに茹でたブロッコリや人参を出すのは、GIも低いですが、糖質量そのものも少量となり、糖質制限食に近いですね。

また、デンプンに関しては、GI値は糖尿人ではあてにならないということを、認識してもらう必要があります。

例えば、2型糖尿人の江部康二が、

炊いた白米を150g(糖質36.8g)食べたら、食後血糖値のピークは220mgくらい、
炊いた玄米を160g(糖質36.8g)食べたら、食後血糖値のピークは200~210mgくらい

の差です。

正常人ではデンプンGIが一定の意味がありますが、糖尿人ではほとんど無意味です。

「3 一般的な栄養バランスと違う食事になるデメリットを解消する方法
脂質で太るイメージがあるが肥満はカロリーと糖質過多が原因、
脂質とタンパク質摂取では太らない、元々肥満な場合は別
長期的に脂質過多は動脈硬化、タンパク質過多は腎臓負担の可能性を
指摘されるが、すでに患っている糖尿を悪化させないことを第一義とするか
いま患っていない別の病気を予防するかのバランスは本人の選択
一般的に、糖質を減らすと塩分過多になりやすいのと食費が高くなる」


<肥満はカロリーと糖質過多が原因、脂質とタンパク質摂取では太らない>
これはその通りですし、とても嬉しい米国医師の発言です。

長期的脂質過多については、例えば、米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。

総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。

権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけですね。

タンパク質過多は腎臓負担の可能性というのも、既に血液検査で腎機能障害がある人は、低タンパク食が推奨されるということです。

腎機能検査が正常の人が高タンパク食を摂取して、腎機能障害になったという報告は今までないと思います。

1型糖尿病のバーンスタイン先生は、糖尿病腎症の第3期Aの段階(タンパク尿2+)から糖質制限食を開始されて、数年で腎機能正常に戻っておられます。

「米国都市部では糖尿に限らず一般人にも広くローカーボがライフスタイル化して肥満と糖尿に効果を上げています 」

糖尿病専門医は米国でも、2型糖尿病には相変わらずカロリー制限食を勧め、1型には糖質管理食を指導することが多いようです。

東京糖尿人さんの行かれた州立大学は、専門医の中では比較的糖質制限よりの糖質管理食という立場でしょうか。

米国では、医師はおいておいて、一般の人にはローカーボがかなり浸透しているようですね。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
75g負荷試験と中性脂肪+質問
江部先生お久しぶりです、いつもブログ読んでいます。

今月初めての75g負荷試験してきました。
今年の四月に空腹時血糖値117でHbA1C7.8
あったので糖尿病はほぼ確実だったのですが、糖質制限食の成果を見るために、怖かったですが。。。
ここ三ヶ月は空腹時血糖値80、HBA1C5.0くらいです。体重も28キロ減り113位になりました(まだまだがんばります・)

検査結果 ()内はインシュリン値
検査前   30分     60分     120分
79(8.4)  178(72.1) 157(89.6)  72(23.9)

150分   180分
61     74
という結果になりました。
150分と180分は自宅で簡易測定器で測りました。

自分の使っている簡易測定器はいつも病院の値より20くらい高く出るので「61」「74」という数値は食後高血糖→低血糖になりやすい数値ということでしょうか?

検査の結果自体はこれだけ見ると正常人に見えるので大変満足しています。糖質制限食万歳です。

あと、最近ブログで中性脂肪の話が出ていますが、ためしに負荷試験後の120分の採血の時に中性脂肪を測ってもらったら「77」と出ました。
これはここ三ヶ月の空腹時と大体同じ値になります。
最後に1つ質問があるのですが、ここ半年糖質制限食+運動をやっていますがHDLが「31」→「36」と微増しかしていません、この数値の増加量は個人差があるとわかってはいるのですが、できれば基準値の40を上回りたいところです。もし何か糖質制限的アドバイスがあればよろしくおねがいします。

2009/11/24(Tue) 23:24 | URL | てつ | 【編集
いきなりですが僕は20前後の頃オーム真理教がテレビで特集され著名人達と尊師が意見を交わすのを見て断食・東洋医学・精神世界などに興味を持ち自己流で断食を行いましたまずは身体の汚れを苦行によって落とし光を見たかったんです断食を続けると光が見え悟りの第一歩らしいのですが今考えると幻覚なんでしょうね僕はそこを見るまでもなく一週間で水生活をGive upしたんですがそれを境に髪が薄くなり20にして皺ができアトピー症状が急にでました僕の身体にとっては断食はかなりのストレスなんだととゆう結論に達しました先生は断食についてどう思いますか考えが聞きたいです余談ですがオームには入信していませんちょっと後に地下鉄サリン事件強制捜査などがあり尊師の性食などの俗な姿にはア然としましたが僕が失ったのは毛根と肌の美しさです。
2009/11/25(Wed) 01:26 | URL | 貞夫 | 【編集
江部先生
コメントを取りあげていただき光栄です
私が行ったのはカリフォルニア州立のUCSFで、州内では
生活習慣病に力を入れていると言われている大学です
プログラムの費用ですが、合併症を防ぐための指導と栄養指導で
$1,100強、それ以外に希望する検査項目を追加するシステムです

患者としての見聞ですので誤解があればお許しください
地域により食事の趣向に差があるので糖尿の食事指導も
それをふまえて個々の病院、医師により幅があるようです
UCSFではカロリー上限を設定したカーボカウントで
カロリー制限というより、肥満解消目的でカロリーに上限を設け
血糖値を上げない目的でカーボカウントだと解釈しています

細かい食事方法は、少量の糖質を毎日摂取する以外
「主食を抜けば糖尿病は良くなる」と同じ方向性でした

あまり上手に文章化できず申し訳ありません






2009/11/25(Wed) 07:27 | URL | 糖尿東京人 | 【編集
正常人の糖質制限
おかげ様で糖質制限を始め一年が過ぎ体重は20キロ減りA1cも5.0~5.1と安定しております。私が糖質制限食にしてから妻も付き合いで始め体重も10キロ落ち健康的になったのですがごくたまに糖質を採ると低血糖になるのか極度の眠気に襲われます。そんな時はほおっておいて大丈夫ですか?それとも糖質を採らせたほうが良いのですか教えて下さい。
2009/11/25(Wed) 09:58 | URL | 佐藤 | 【編集
Re: 75g負荷試験と中性脂肪+質問
てつさん。

「空腹時血糖値117でHbA1C7.8」
なら食後血糖値は軽く200mgを超えていたと考えられます。

糖質制限食で膵臓が休養できて、体重が減少したことで
耐糖能が改善したので
ブドウ糖負荷試験が、正常型
に復帰しています。

HDL-Cは個人差が大きいですが、徐々に増加すると思います。

2009/11/25(Wed) 13:50 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: タイトルなし
貞夫さん。

本断食はストレスが強すぎるので
高雄病院ではすまし汁断食(210kcal/日と3g程度の食塩あり)
をしています。
断食でグルコーススパイクがなくなり、脂肪酸-ケトン体が燃えやすい身体となります。
その後「高雄病院食生活十箇条」あるいは「糖質制限食」で代謝の安定を目指せばよいと
考えています。
2009/11/25(Wed) 13:55 | URL | ドクター江部 | 【編集
Re: 正常人の糖質制限

佐藤さん。

追加分泌インスリンが遷延して過剰にでる
機能性低血糖症と考えられます。
そうならないためには、糖質制限食が一番です。

糖尿人でなければ、GIの低いデンプン少量なら、機能性低血糖になりにくいと
思います。

症状が強ければ、糖尿病の低血糖の時のに準じて、少量の糖質を摂ってよいです。
2009/11/25(Wed) 14:02 | URL | ドクター江部 | 【編集
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