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食後高脂血症と糖質制限食
こんばんは。

先ほど、テニスから帰ってきました。先週の最後の試合は、コーチ相手のダブルスで絶好調でしたが今週はボチボチでした。

さて今回はたかたろうさんから食後高脂血症について、コメント・質問をいただきました。

「09/11/07 たかたろう
食後高脂血症
江部先生 こんにちは、

最近、食後高血糖だけでなく食後高脂血症も話題になっていることを知りました。 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2007/200703/502776.html によると、明確な定義は決まっていないものの、「食後に血清脂肪が異常な増加を示し、この増加が遷延することと、空腹時には正脂血症を示すが食後に高脂血症を呈する潜在性高脂血症」だそうで、動脈硬化のリスクとなるそうです。 http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H9/971013http://tomochans.exblog.jp/3342717/ 等をみると、食事に含まれる脂肪が動脈硬化リスクとなるので脂質の摂取は控えた方がよいようにも見えますが、一方で、糖質制限食により空腹時TG値が低下することが江部先生の知見により明らかにされていますので、糖質制限食が食後TG値も低下させることが期待されます。糖質制限食が食後TG値やRLP-C値も改善することが明らかになれば、糖質制限食の優位性はさらに高まると思いますが、この辺に関する知見を示していただけないでしょうか?
余談ですが、「医師が食事指導を行っても、診療報酬の保険点数には反映されない。」という事実を初めて知りました。うがちすぎかもしれませんが、食事指導がおざなりにされているのは、こんなところにも理由があるのかもしれませんね。」


たかたたろうさん。コメントありがとうございます。

食後高脂血症、しばらく頭の中で熟成させてましたので回答が遅くなりすいませんでした。

糖尿病と共にインスリン抵抗性症候群(メタボリックシンドローム)が動脈硬化の重要な危険因子ということが解ってきました。

インスリン抵抗性症候群における脂質代謝異常の特徴としては、高中性脂肪血症(空腹時)、低HDL-C血症、小粒子LDLの出現と食後高脂血症です。

インスリン抵抗性症候群の本質は、「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」とされています。

インスリン本来の作用とは、「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」です。

筋肉や肝臓のグリコーゲンの蓄積は200~300gと、脂肪に比べれば、ごく僅かです。食後(糖質摂取後)血糖値が上昇すると、追加分泌インスリンが大量にでて、まずは筋肉や肝臓がブドウ糖を取り込みエネルギーとして利用して、次いでグリコーゲンとして蓄積します。それ以上の余剰のブドウ糖は全て中性脂肪として脂肪細胞に蓄えられます。

また食事由来の脂質なども、余剰のものは全て脂肪細胞に蓄えられます。食物中の脂質(ほとんどが中性脂肪)は、グリセロールと脂肪酸に分解されて小腸上皮から吸収されますが、そのなかで中性脂肪に再合成され集合します。

この集合体は、キロミクロンと呼ばれ、リンパ液に瞬時に入り、リンパ管に拡散します。キロミクロンは胸管を上行し静脈に移行します。

静脈に入ったキロミクロンのほとんどは、肝臓、あるいは脂肪組織・筋肉組織などの毛細血管を通る間に、毛細血管壁にあるリポ蛋白リパーゼにより、脂肪酸とグリセロールに分解され、血液中から取り除かれて、筋肉細胞などでエネルギー源として利用され、残ったものは、肝臓と脂肪組織の中に拡散します。肝臓や脂肪組織の脂肪酸は、再び中性脂肪に合成され細胞内に蓄えられます。

インスリン抵抗性症候群では、生理的なインスリン濃度では脂肪細胞がそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。

そして脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。

肝臓でのVLDL合成は、通常はインスリン濃度が増えれば抑制されますが、インスリン抵抗性があるため、抑制がきかず合成されるのです。

食後高脂血症はこのようにインスリン抵抗性症候群(メタボリックシンドローム)が密接に関わっています。インスリン抵抗性が改善すれば、食後の肝臓由来のVLDLの放出は減少します。

食後高脂血症に関しては、食後脂質代謝が複雑なことと、今まで標準的な評価法が確立していなかったので、研究報告も少なくこれからの検討が必要な段階ですが、あるていど解ってきたこともあります。

即ち、近年、食後高脂血症が動脈硬化の独立した危険因子とされています。食後4時間TG(中性脂肪値)が200mg/dl以上の群は頸動脈の肥厚が有意に多かったという報告があります。

2008年に行われた東海大学と高雄病院の共同研究で、8人の糖尿病患者さんのデータを取らしていただきました。

食前、食後30分、60分、90分、120分で採血して血糖、インスリン、中性脂肪(TG)、遊離脂肪酸、ケトン体を調べました。

高糖質食(350キロカロリー、糖質60%、52.5g)と低糖質食(350キロカロリー、糖質10%、8.75g)とを比較しました。

今回のテーマの中性脂肪ですが、空腹時の中性脂肪が正常値だった6名は、高糖質食でも低糖質食でも、食後30分、60分、90分、120分すべて正常値で、変化もあまりありませんでした。

空腹時中性脂肪値が200mgを超えていたAさんは、

高糖質食だと「346、330、324、311、289mg」と高値が持続しました。

一方、低糖質食だと「293、267、250、238,229mg」と少しましな印象もありますが

やはりやや高値が持続しています。

次にBさんです。

高糖質食で「270、206、206、178、167mg」

低糖質食で「153、159、155、159、155mg」

でした。

AさんとBさんは、インスリン抵抗性症候群(メタボリックシンドローム)でした。食後4時間まで追っていないので、はっきりとしたことは言えないのですが、インスリン抵抗性そのものが糖質制限食で改善することは明白なので、食後高脂血症も改善する可能性が高いと思います。

結論です。

糖質制限食により空腹時中性脂肪値は、速やかに減少し正常となる。
②糖質制限食により食後高脂血症も改善すると思われる。
<糖質制限食実践→内臓脂肪減少→インスリン抵抗性改善→食後高脂血症改善>

**
今回の記事は
食後高脂血症
北海道医療大学 医療科学センター 辻昌宏先生の
PDFファイルhttp://www.gik.gr.jp/~CLRG/Dr-Tuji.pdf
を参考にさせて頂きました。
ありがとうございました。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
コメント
ジャヌビアについて
江部先生こんばんは。
先日の測定でHbA1cが5,5から5,3に
下がって大喜びしているゆうです。

さて、先日ニュースで知ったのですが、
ジャヌビア錠なるものが、いよいよ
日本国内でも認可・販売されるとききました。
この薬の作用はネットでなんとか理解
できたのですが、その有効性や副作用が
気になるところです。
特に私のようなケースで服用する場合、
ベイスンのように炭水化物の摂取前の
頓服的な処方にどれだけ有効なのかが知りたいです。

いつも本当にすみませんがどうか宜しくお願いいたします。
2009/11/15(Sun) 20:44 | URL | ゆう | 【編集
ありがとうございます
記事に取り上げて頂きましてどうもありがとうございます。
糖代謝だけでなく、脂質代謝においてもインスリン抵抗性を改善することが大切なのですね。糖質制限食の有効性をあらためて知らしめていただきました。
2009/11/16(Mon) 00:11 | URL | たかたろう | 【編集
Re: 先月お尋ねしました。マメです。
マメさん。

前日昼・夕に「糖質+脂肪」を摂取すると、翌朝の中性脂肪値が上昇します。
スーパー糖質制限食ならすみやかに正常化しますよ。
2009/11/16(Mon) 18:11 | URL | 江部康二 | 【編集
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