2023年05月30日 (火)
こんにちは。
今回は、食後高血糖の害と高インスリン血症の害について、検討してみます。
<食後高血糖の害>
食後高血糖が良くないことは、
2007年と2011年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
において、エビデンスが明示されています。
以下、国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
の内容の抜粋を紹介します。
2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から、4年ぶりの改訂です。
まずは
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から抜粋です。
• 食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
• 糖負荷(GL*)の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
• 食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
• 食後高血糖は糖尿病網膜症と関係する。
• 食後高血糖はIMT肥厚と関係する。
• 食後高血糖は、酸化ストレスを生じ、血管内皮を障害する。
• 食後高血糖は認知障害にも関係する。
• 食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連する。
• 食後血糖と空腹時血糖を共にターゲットにすることは、血糖コントロール達成の最善の戦略である。
• HbA1cは6.5%未満が目標。
• 空腹時血糖値は100mg/dl未満をめざす。
• 食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。
*GL(glycemic lord)
GI値を100で割り、その食品1食分に含まれる糖質のグラム数をかけた数値。
GIよりGLのほうが、実際に食事をするときの参考になりやすい。
GL値10以下の食品が、低GL食品。
国際糖尿病連合2007年発表の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」と比べて、
2011年のガイドラインはそれほど大きな変化はないように思います。
いずれも食後高血糖のリスクを、列挙して明示しています。
違いですが、私の発見したところでは、
*SMBG(血糖自己測定)を、食後高血糖チェックに一押しで推奨。
*食後血糖値は、食後1~2時間で測定されるべきで、
160mg/dl未満が目標というのが追加。
*食後高血糖は心筋の血液量と血流を減らすと新たに言及。
*CGMが普及してきて、薬、食事、ストレス、運動など
様々な要素が血糖に影響を与えるのをチェックできる。
これらが、2007年版に追加で、加わりました。
<他のエビデンス>
エビデンスですが
①日本の熊本スタディー。Kumamoto Study。
<細小血管合併症予防>のための目標
HbA1c:6.9%未満・・・DCCTとUKPDSと合わせて、7.0%未満
空腹時血糖値:110mg/dl未満
食後2時間血糖値:180mg/dl未満
改訂第7版
糖尿病専門医研修ガイドブック
19、20ページ
②以下は、 国際肥満研究連合のシステマティックレビューなので、信頼度は高いです。
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。
13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
③以下も有名な、RCT研究論文です。
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
311人の女性を上記4グループに分けて追跡。
これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
①②③のエビデンス以外に、
高血糖により糖化蛋白生成が亢進し、糖化蛋白は SOD などの抗酸化酵素と反応して劣化させ、活性酸素の除去が困難となり活性酸素が増え、酸化ストレスとなります。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等の元凶とされています。
<高インスリン血症の害>
次に、食後高血糖と共に
過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
①たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、活性酸素を発生させて、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの生活習慣病の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
②ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
③インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
その後、Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258 、に論文掲載。
このようにインスリンの弊害を見てみると、「インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましい」ことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、食後高血糖、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
<生活習慣病=糖質過剰病>です。
<結論>
<食後高血糖の害>と<高インスリン血症の害> を考察してみました。
「糖質摂取⇒食後高血糖⇒高インスリン血症」の悪循環パターンを生じるのは、
糖質摂取時のみであり、脂質・タンパク質摂取時には、この悪循環は起こりません。
スーパー糖質制限食を実践すれば、上記の悪循環は生じず、
インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
様々な生活習慣病の予防・改善が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
江部康二
今回は、食後高血糖の害と高インスリン血症の害について、検討してみます。
<食後高血糖の害>
食後高血糖が良くないことは、
2007年と2011年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
において、エビデンスが明示されています。
以下、国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
の内容の抜粋を紹介します。
2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から、4年ぶりの改訂です。
まずは
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
から抜粋です。
• 食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
• 糖負荷(GL*)の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
• 食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
• 食後高血糖は糖尿病網膜症と関係する。
• 食後高血糖はIMT肥厚と関係する。
• 食後高血糖は、酸化ストレスを生じ、血管内皮を障害する。
• 食後高血糖は認知障害にも関係する。
• 食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連する。
• 食後血糖と空腹時血糖を共にターゲットにすることは、血糖コントロール達成の最善の戦略である。
• HbA1cは6.5%未満が目標。
• 空腹時血糖値は100mg/dl未満をめざす。
• 食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。
*GL(glycemic lord)
GI値を100で割り、その食品1食分に含まれる糖質のグラム数をかけた数値。
GIよりGLのほうが、実際に食事をするときの参考になりやすい。
GL値10以下の食品が、低GL食品。
国際糖尿病連合2007年発表の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」と比べて、
2011年のガイドラインはそれほど大きな変化はないように思います。
いずれも食後高血糖のリスクを、列挙して明示しています。
違いですが、私の発見したところでは、
*SMBG(血糖自己測定)を、食後高血糖チェックに一押しで推奨。
*食後血糖値は、食後1~2時間で測定されるべきで、
160mg/dl未満が目標というのが追加。
*食後高血糖は心筋の血液量と血流を減らすと新たに言及。
*CGMが普及してきて、薬、食事、ストレス、運動など
様々な要素が血糖に影響を与えるのをチェックできる。
これらが、2007年版に追加で、加わりました。
<他のエビデンス>
エビデンスですが
①日本の熊本スタディー。Kumamoto Study。
<細小血管合併症予防>のための目標
HbA1c:6.9%未満・・・DCCTとUKPDSと合わせて、7.0%未満
空腹時血糖値:110mg/dl未満
食後2時間血糖値:180mg/dl未満
改訂第7版
糖尿病専門医研修ガイドブック
19、20ページ
②以下は、 国際肥満研究連合のシステマティックレビューなので、信頼度は高いです。
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。
13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
③以下も有名な、RCT研究論文です。
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。
311人の女性を上記4グループに分けて追跡。
これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
①②③のエビデンス以外に、
高血糖により糖化蛋白生成が亢進し、糖化蛋白は SOD などの抗酸化酵素と反応して劣化させ、活性酸素の除去が困難となり活性酸素が増え、酸化ストレスとなります。
酸化ストレスが、糖尿病合併症・動脈硬化・老化・癌・アルツハイマー・パーキンソン等の元凶とされています。
<高インスリン血症の害>
次に、食後高血糖と共に
過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
①たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は、活性酸素を発生させて、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの生活習慣病の元凶とされていて、パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも酸化ストレスの関与の可能性があります。
②ロッテルダム研究によれば、インスリン使用中の糖尿人ではアルツハイマー病の相対危険度は4.3倍です。
Rotterdam研究(Neurology1999:53:1937-1942)
「高齢者糖尿病における、脳血管性痴呆(VD)の相対危険度は2.0倍。
アルツハイマー型痴呆(AD)の相対危険度は1.9倍。
インスリン使用者の相対危険度は4.3倍」
③インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べてガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
その後、Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258 、に論文掲載。
このようにインスリンの弊害を見てみると、「インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、身体には好ましい」ことがわかります。
別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、食後高血糖、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、様々な生活習慣病の元凶となった構造が見えてきます。
<生活習慣病=糖質過剰病>です。
<結論>
<食後高血糖の害>と<高インスリン血症の害> を考察してみました。
「糖質摂取⇒食後高血糖⇒高インスリン血症」の悪循環パターンを生じるのは、
糖質摂取時のみであり、脂質・タンパク質摂取時には、この悪循環は起こりません。
スーパー糖質制限食を実践すれば、上記の悪循環は生じず、
インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
様々な生活習慣病の予防・改善が期待できます。
ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖こントロールを維持して、健康ライフを送ってくださいね。
江部康二
2023年05月29日 (月)
こんにちは。
個人的にとても嬉しいお知らせです。
ダイヤモンド社のダイヤモンド・オンラインで
内臓脂肪がストンと落ちる食事術(江部康二著)
が、紹介されたところ、
2023年5月28日(日)時点で
ダイヤモンド・オンライン全体の
アクセス・ランキングで第1位となっています。
以下は、その記事の要約です。
詳しくは、https://diamond.jp/articles/-/323278
をクリックして記事を見て頂ければ、幸いです。
【医師が教える】
実は「果物」が“体の害悪”になる決定的理由
江部康二
https://diamond.jp/articles/-/323278
内臓脂肪がストンと落ちる食事術 江部康二著
2023.5.28 3:10
TBS系『金スマ ~中居正広の金曜日のスマイルたちへ~』で
「番組史上最も楽して痩せる食事術」として紹介され、
爆発的な反響をみせた『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)。
美味しいものをお腹いっぱい食べて、なんならお酒も飲めるのに、
運動なしでも痩せられるという驚きの食事術。
この食事術を、やはり運動なしで半年間実践して10kg痩せた経験があり、
現在70代にして20代の頃の体重をキープしている著者・江部康二医師が、
もう2度と太らない医学的に正しいダイエット法を伝授!
ひもじくなるようなカロリー制限は一切ナシ。
お腹いっぱい食べていいし、筋トレもジョギングもしなくていい。
その体脂肪、運動ナシで落とす方法を教えましょう!
果物はヘルシーな食べ物?
果物の甘みのもとは要注意
猛毒を生み出しやすい果糖
※本稿は、『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
江部康二
個人的にとても嬉しいお知らせです。
ダイヤモンド社のダイヤモンド・オンラインで
内臓脂肪がストンと落ちる食事術(江部康二著)
が、紹介されたところ、
2023年5月28日(日)時点で
ダイヤモンド・オンライン全体の
アクセス・ランキングで第1位となっています。
以下は、その記事の要約です。
詳しくは、https://diamond.jp/articles/-/323278
をクリックして記事を見て頂ければ、幸いです。
【医師が教える】
実は「果物」が“体の害悪”になる決定的理由
江部康二
https://diamond.jp/articles/-/323278
内臓脂肪がストンと落ちる食事術 江部康二著
2023.5.28 3:10
TBS系『金スマ ~中居正広の金曜日のスマイルたちへ~』で
「番組史上最も楽して痩せる食事術」として紹介され、
爆発的な反響をみせた『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)。
美味しいものをお腹いっぱい食べて、なんならお酒も飲めるのに、
運動なしでも痩せられるという驚きの食事術。
この食事術を、やはり運動なしで半年間実践して10kg痩せた経験があり、
現在70代にして20代の頃の体重をキープしている著者・江部康二医師が、
もう2度と太らない医学的に正しいダイエット法を伝授!
ひもじくなるようなカロリー制限は一切ナシ。
お腹いっぱい食べていいし、筋トレもジョギングもしなくていい。
その体脂肪、運動ナシで落とす方法を教えましょう!
果物はヘルシーな食べ物?
果物の甘みのもとは要注意
猛毒を生み出しやすい果糖
※本稿は、『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
江部康二
2023年05月28日 (日)
【日付名前
23/05/27yamamoto
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について
はじめまして、
先生のブログを拝見し、
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について、
アドバイスいただきたく連絡いたしました。
男性(59歳 )です。 身長 168cm 体重 59kg
毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。
過去の健康診断の結果を見ると、
6~7年前からA1Cや空腹時血糖が高くなり始めているので、
6~7年前に1型糖尿病に罹患したのではないかと思っています。
糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。
緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。
糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)をはじめ、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。
今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)
その上で、先生に幾つか質問があります。
○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。
○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。
○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?
○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?
○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが
A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)
〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?
○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
200~300ぐらいです。
ケトン体の数値があまり上がりませんが、
ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?
よろしくお願いします。
年齢 59歳 身長 168cm 体重 59kg
検査結果
2023/3/9 2023/4/20
抗GAD抗体 36.6 -
インスリン空腹 2.7 -
c-ペプチド 1.2 -
A1C 6.0 6.1
血糖(BS)前 110 113
総ケトン体 269 164
アセト酢酸 63 39
3ヒドロキシラク酸 206 125
尿素窒素 22.6 32.0
中性脂肪 42 42
HDL 70 87
LDL 140 188】
こんにちは。緩徐進行1型糖尿病のyamamoto さんから、
コメント・質問を頂きました。
2023/3/9
抗GAD抗体 36.6(5未満)
空腹時インスリン値 2.7(2.7~10.4)
血中インスリン値:2.7~10.4μU/mL(国立がん研究センター)
空腹時インスリン基準値は、検査機関により少し異なることがありますが、
yamamoto さんの場合、正常の下限くらいの分泌量が残っているようです。
抗GAD抗体 は明らかに陽性ですので、
緩徐進行1型糖尿病という診断で間違いないと思います。
【毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。】
HbA1cの正常値は、日本糖尿病学会は6.0未満としています。
HbA1cが5.7~5.9%なので、ぎりぎり正常値内に収まっています。
従って、現時点ではインスリン治療の必要はありません。
【糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。】
玄米を食べていた頃は、「食後高血糖」と「血糖変動幅増大」
という酸化ストレスリスク、合併症リスクがあったと考えられます。
【緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。】
ご自分で考えて、<血糖値の上下の変動が少ない食生活⇒糖質制限>
に辿り着かれたのは、素晴らしいことです。
【糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)を始め、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。】
そうですね、1型糖尿病と確定診断ですから、
食後高血糖から自分のβ細胞を守るためには
スーパー糖質制限食という選択がベストです。
180mg/dlを超える血糖値は、β細胞に障害を与えます。
揺るやかな糖質制限食で、
1回に40gの糖質だと、2型でも食後血糖値は120mg/dl上昇して、
180mg/dlを超えます。
まして1型なら食後血糖値は180mg/dlを軽く超えてしまうと思います。
【今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)】
主治医のドクターは、「糖質制限をするな」と言わないのは、素晴らしいです。
【○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。】
自己免疫的にβ細胞が壊れるのが1型糖尿病ですが、その速度は遅いと思います。
現実には高血糖がβ細胞を障害する速度の方が遥かに早いので、
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つことが、極めて重要です。
【○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。】
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つのみです。
【○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?】
スーパー糖質制限食は相対的に高蛋白食となるので、BUN が上昇することがあります。
しかし、クレアチニン値やシスタチンC値が正常なら、腎機能は大丈夫です。
一度、最も信頼度が高い腎機能検査である<シスタチンC>を検査しましょう。
【○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?】
中性脂肪値が60mg/dl以下でHDL-Cが60mg/dl以上あれば
LDL-Cも全て標準の大きさの善玉ですので心配ありません。
【○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが
A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)】
3/9のHbA1c値は、血糖変動幅増大のある<質の悪いHbA1c>です。
一方、4/20のHbA1cは、血糖変動幅増大がほとんどない<質の良いHbA1c> です。
【〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?】
5.8%とか5.9%になる可能性はあると思います。
【○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
200~300ぐらいです。
ケトン体の数値があまり上がりませんが、
ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?】
3月20日からスーパー糖質制限を始めておられて、
1ヶ月後の4月20日の総ケトン体が 164 です。
スーパー糖質制限を続ければ今後さらに上昇してくると思います。
ただ、ケトン体の上昇には個人差があります。
スーパー糖質制限食で総ケトン体が2000とか3000の人もおられます。
スーパー糖質制限歴21年間の江部康二の総ケトン体値は
300~600~900~1200くらいです。
基準値
総ケトン体 26~122μmoL/L
アセト酢酸 13~ 69μmoL/L
3-ヒドロキシ酪酸 0~ 76μmoL/L
江部康二
23/05/27yamamoto
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について
はじめまして、
先生のブログを拝見し、
緩徐進行性1型糖尿病と糖質制限について、
アドバイスいただきたく連絡いたしました。
男性(59歳 )です。 身長 168cm 体重 59kg
毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。
過去の健康診断の結果を見ると、
6~7年前からA1Cや空腹時血糖が高くなり始めているので、
6~7年前に1型糖尿病に罹患したのではないかと思っています。
糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。
緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。
糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)をはじめ、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。
今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)
その上で、先生に幾つか質問があります。
○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。
○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。
○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?
○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?
○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが
A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)
〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?
○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
200~300ぐらいです。
ケトン体の数値があまり上がりませんが、
ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?
よろしくお願いします。
年齢 59歳 身長 168cm 体重 59kg
検査結果
2023/3/9 2023/4/20
抗GAD抗体 36.6 -
インスリン空腹 2.7 -
c-ペプチド 1.2 -
A1C 6.0 6.1
血糖(BS)前 110 113
総ケトン体 269 164
アセト酢酸 63 39
3ヒドロキシラク酸 206 125
尿素窒素 22.6 32.0
中性脂肪 42 42
HDL 70 87
LDL 140 188】
こんにちは。緩徐進行1型糖尿病のyamamoto さんから、
コメント・質問を頂きました。
2023/3/9
抗GAD抗体 36.6(5未満)
空腹時インスリン値 2.7(2.7~10.4)
血中インスリン値:2.7~10.4μU/mL(国立がん研究センター)
空腹時インスリン基準値は、検査機関により少し異なることがありますが、
yamamoto さんの場合、正常の下限くらいの分泌量が残っているようです。
抗GAD抗体 は明らかに陽性ですので、
緩徐進行1型糖尿病という診断で間違いないと思います。
【毎年受けている健康診断でA1Cの値が5.7~5.9とやや高く、
今年3月に糖尿の専門医院に受診したところ、
抗AGD抗体陽性で緩徐進行性1型糖尿病と診断されました。
早期発見でインスリンが分泌されている状態なので
今のところインスリンの必要は無く経過観察といわれています。】
HbA1cの正常値は、日本糖尿病学会は6.0未満としています。
HbA1cが5.7~5.9%なので、ぎりぎり正常値内に収まっています。
従って、現時点ではインスリン治療の必要はありません。
【糖質制限を始める前は、玄米や野菜中心の食生活をしていました。
お酒は飲みません、タバコもすいません。】
玄米を食べていた頃は、「食後高血糖」と「血糖変動幅増大」
という酸化ストレスリスク、合併症リスクがあったと考えられます。
【緩徐進行性1型糖尿病と診断せれてから、
掛かり付けの医師に相談しながら
私なりに膵臓に負担をかけない、
血糖値の上下の変動が少ない食生活が良いと思い
糖質制限を始めようと思いました。】
ご自分で考えて、<血糖値の上下の変動が少ない食生活⇒糖質制限>
に辿り着かれたのは、素晴らしいことです。
【糖質制限は、今年、1月中旬から
1日120g以下(週一回は甘いお菓子などを食べていました)を始め、
1型糖尿病と診断されたため3月20日からスーパー糖質制限を始めました。】
そうですね、1型糖尿病と確定診断ですから、
食後高血糖から自分のβ細胞を守るためには
スーパー糖質制限食という選択がベストです。
180mg/dlを超える血糖値は、β細胞に障害を与えます。
揺るやかな糖質制限食で、
1回に40gの糖質だと、2型でも食後血糖値は120mg/dl上昇して、
180mg/dlを超えます。
まして1型なら食後血糖値は180mg/dlを軽く超えてしまうと思います。
【今後、できれば糖質制限など食生活や生活習慣の改善で
インスリンを使わず生活していきたいと思っています。
(掛かり付けの医師は糖質制限には否定派ですが、
私が糖質制限を行っていることについては受け入れて頂いています。)】
主治医のドクターは、「糖質制限をするな」と言わないのは、素晴らしいです。
【○ ブログには1型糖尿病でインスリンフリーを続けている患者さんの話が
載っていますが、緩徐進行1型糖尿病での糖質制限の効果、
インスリンフリーの可能性などをお聞かせください。】
自己免疫的にβ細胞が壊れるのが1型糖尿病ですが、その速度は遅いと思います。
現実には高血糖がβ細胞を障害する速度の方が遥かに早いので、
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つことが、極めて重要です。
【○ 緩徐進行1型糖尿病で糖質制限行っていくうえで注意点をお聞かせください。】
スーパー糖質制限食で、血糖コントロール良好を保つのみです。
【○ 尿素窒素の値が高くなってきてますが大丈夫ですか?】
スーパー糖質制限食は相対的に高蛋白食となるので、BUN が上昇することがあります。
しかし、クレアチニン値やシスタチンC値が正常なら、腎機能は大丈夫です。
一度、最も信頼度が高い腎機能検査である<シスタチンC>を検査しましょう。
【○ 中性脂肪、低い HDLとLDLが高いが大丈夫ですか?】
中性脂肪値が60mg/dl以下でHDL-Cが60mg/dl以上あれば
LDL-Cも全て標準の大きさの善玉ですので心配ありません。
【○ スーパー糖質制限を始めて約1ヵ月後に検査を受けましたが
A1Cの値に変化は見られませんでした、なぜでしょうか?
A1C 6.0%(3/9)→6.1%(4/20)】
3/9のHbA1c値は、血糖変動幅増大のある<質の悪いHbA1c>です。
一方、4/20のHbA1cは、血糖変動幅増大がほとんどない<質の良いHbA1c> です。
【〇今後、A1Cが下がる可能性はありますか?】
5.8%とか5.9%になる可能性はあると思います。
【○ ケトン体について、時々血液(リブレで測定)でケトン体を測定しています。
200~300ぐらいです。
ケトン体の数値があまり上がりませんが、
ケトン回路に切り替わっていないと言う事ですか?】
3月20日からスーパー糖質制限を始めておられて、
1ヶ月後の4月20日の総ケトン体が 164 です。
スーパー糖質制限を続ければ今後さらに上昇してくると思います。
ただ、ケトン体の上昇には個人差があります。
スーパー糖質制限食で総ケトン体が2000とか3000の人もおられます。
スーパー糖質制限歴21年間の江部康二の総ケトン体値は
300~600~900~1200くらいです。
基準値
総ケトン体 26~122μmoL/L
アセト酢酸 13~ 69μmoL/L
3-ヒドロキシ酪酸 0~ 76μmoL/L
江部康二
2023年05月26日 (金)
【23/05/24 佐々木カルフ
食物の吸収タイミングと血糖値について
江部先生
お世話になっております。
食物の消化の時間や吸収のタイミングについて確認していたのですが、
一般的に口から胃までは10秒程度、その後胃の中で2〜3時間滞留するとありました。
つまり、炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?
また、糖質制限食においては概ね血糖値に変化がないことは存じておりますが、
そもそも摂取したものを吸収していない段階で、
糖質のあるなしを身体は認識しているのでしょうか
(口腔内で認識しているのでしょうか)?
吸収していないのに糖質を摂れば血糖値が上がり、
摂らなければ上がらないという点が不思議だな、と、素人の疑問なのですが、
よろしければご教示いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。 】
こんばんは。
佐々木カルフ さんから、
【食物の吸収タイミングと血糖値】
について、コメント・質問を頂きました。
【炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?】
以下の、☆☆☆の記載でも説明しますが、
炭水化物摂取直後から胃の分泌液と混合され、
胃の内容物が持続的に小腸に送り込まれるので
速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
つまり、実際に小腸で吸収されるまで数時間もかかりません。
例えば炭水化物を食べたら、直後から血糖値が上昇して
90分間で吸収が終了します。
この、速やかな血糖値の上昇には、糖新生は関与していません。
☆☆☆
<脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について>
脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について検討してみました。
「胃内の停滞時間は、炭水化物→タンパク質→脂質の順に長くなります。」
などとしれっと根拠なしに記載してあるサイトもあるのですが、
これは、間違っていると思います。
GI(グリセミック・インデックス)でみると、確かに、単独で摂取したブドウ糖や白米の 消化・吸収速度は速いです。
しかし、食材として、デンプンを摂取したときの消化・吸収は、場合により、脂質・蛋白質より長くなることがありえます。
<脂質と蛋白質>
食事後の胃内滞留時間は脂質と蛋白質が30分から1時間程度です。
そこから小腸で吸収されて代謝される時間ですが、
蛋白質は胃でほとんどがペプチドというアミノ酸数個の分子に分解されるため吸収速度は一定しています。
脂質も小腸に行く前に、十二指腸で胆汁などにより一連の変化を受けるのでこれも吸収速度が一定しています。
小腸では、15~30分以内に全て吸収されれると思われます。
普通の食物(魚介類や肉類)の脂質と蛋白質は、上記でよいと思います。
なお牛乳から作られるホエイプロテインは1~2時間で消化・吸収されますが、
カゼインプロテインが完全に消化・分解されるまでには7~8時間もかかるとされています。
大豆から作られるソイプロテインも完全に消化・分解されるまでには5~6時間とされています。
<炭水化物>
炭水化物の消化・吸収については
2018年11月18日(日)の本ブログを、以下一部修正して再掲します。
炭水化物の消化・吸収について
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html。
2018年11月18日 (日)
blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
【18/11/17 オスティナート
Re:Re: Re: ???
≪「デンプンは、胃で、45~60分かけていの分泌液と混合され、その糜粥(ビジュク)が胃から十二指腸に移動する。
十二指腸では糜粥(ビジュク)は膵液と混合して、15~30分以内に全て吸収されれる。」
ということですね。≫
についてですが、
ガイトンによりますと、
【時として1時間も継続する】とあります。
「継続」ですので、炭水化物を食べた直後から胃の分泌液と混合され、
糜粥(ビジュク)がその都度、胃から十二指腸に送り込まれ、
小腸では短時間で単糖まで分解され、吸収されるのだと思います。
(食べた全ての食物が胃の分泌液と混合されるまで、
胃から十二指腸に送り込まれないのではない。)
そのためブドウ糖の吸収には遅れますが、炭水化物を食べた場合にも、
直後から血糖値上昇があるのだと思います。
追記
※【時として1時間も継続する】について、、
●「場合によって(食べた食物の量や、食べ合わせ、又状態(製粉や、液状)によって異なる)すべて胃の分泌液と混合されるまでに1時間も継続する。」
と読み替えてみるとわかりやすいかと思います。】
なるほど。
オスティナートさん、ありがとうございます。
おかげさまで、やっと整合性をもって理解できました。
炭水化物の主成分はデンプンです。
①デンプンは、唾液中のα-アミラーゼにより加水分解される。
②食道は、消化吸収の働きはなく、蠕動運動で食物を通過させる。
③胃内でも、胃液と混和しない部分では、消化が進行して約70%が加水分解される。
④大量の胃液(粘液、塩酸、ペプシン)が分泌され、撹拌運動により食物と胃液が混ぜ合わされる。
⑤胃内で混ぜ合わされて糜粥(ビジュク)となり、蠕動運動によりその都度、チビチビ小刻みに十二指腸に移動していく。
⑥胃の内部の糜粥(ビジュク)は、時として1時間くらいかけて継続的に消化されて十二指腸に移送される。すなわち胃には貯留の働きもある。
⑦糜粥(ビジュク)は、小腸(十二指腸・空腸・回腸)で単糖に分解されて吸収される。
胃の消化物(糜粥)の十二指腸への移動は、
基本的にブドウ糖と同じメカニズム(胃の蠕動運動)と思われます。
胃の蠕動運動には、撹拌・粉砕・移送があります。
従って、炭水化物摂取後、
ブドウ糖の吸収速度にはおよびませんが、
あるていど速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
しかし、胃内に1時間以上、停留している場合もあり、
その時は全て消化・吸収されるには、一定以上の時間がかかるので、
脂質・蛋白質より消化・吸収時間は長くなります。
なお、水分、塩分、アルコールも、ほとんどは小腸で吸収され、
胃では一部しか吸収されません。
江部康二
食物の吸収タイミングと血糖値について
江部先生
お世話になっております。
食物の消化の時間や吸収のタイミングについて確認していたのですが、
一般的に口から胃までは10秒程度、その後胃の中で2〜3時間滞留するとありました。
つまり、炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?
また、糖質制限食においては概ね血糖値に変化がないことは存じておりますが、
そもそも摂取したものを吸収していない段階で、
糖質のあるなしを身体は認識しているのでしょうか
(口腔内で認識しているのでしょうか)?
吸収していないのに糖質を摂れば血糖値が上がり、
摂らなければ上がらないという点が不思議だな、と、素人の疑問なのですが、
よろしければご教示いただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。 】
こんばんは。
佐々木カルフ さんから、
【食物の吸収タイミングと血糖値】
について、コメント・質問を頂きました。
【炭水化物を口に入れた場合に、
実際に小腸で吸収されるまでは数時間かかることになるため、
食後に血糖値が上がるには摂取した糖質がそのまま血液中に流れ込むわけではなく、
肝臓におけるグリコーゲン分解や糖新生の亢進によるものなのかな(グルカゴンやら何やらホルモンの影響)、
と考えましたが、それで正しいでしょうか?】
以下の、☆☆☆の記載でも説明しますが、
炭水化物摂取直後から胃の分泌液と混合され、
胃の内容物が持続的に小腸に送り込まれるので
速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
つまり、実際に小腸で吸収されるまで数時間もかかりません。
例えば炭水化物を食べたら、直後から血糖値が上昇して
90分間で吸収が終了します。
この、速やかな血糖値の上昇には、糖新生は関与していません。
☆☆☆
<脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について>
脂質・蛋白質・炭水化物の消化・吸収時間について検討してみました。
「胃内の停滞時間は、炭水化物→タンパク質→脂質の順に長くなります。」
などとしれっと根拠なしに記載してあるサイトもあるのですが、
これは、間違っていると思います。
GI(グリセミック・インデックス)でみると、確かに、単独で摂取したブドウ糖や白米の 消化・吸収速度は速いです。
しかし、食材として、デンプンを摂取したときの消化・吸収は、場合により、脂質・蛋白質より長くなることがありえます。
<脂質と蛋白質>
食事後の胃内滞留時間は脂質と蛋白質が30分から1時間程度です。
そこから小腸で吸収されて代謝される時間ですが、
蛋白質は胃でほとんどがペプチドというアミノ酸数個の分子に分解されるため吸収速度は一定しています。
脂質も小腸に行く前に、十二指腸で胆汁などにより一連の変化を受けるのでこれも吸収速度が一定しています。
小腸では、15~30分以内に全て吸収されれると思われます。
普通の食物(魚介類や肉類)の脂質と蛋白質は、上記でよいと思います。
なお牛乳から作られるホエイプロテインは1~2時間で消化・吸収されますが、
カゼインプロテインが完全に消化・分解されるまでには7~8時間もかかるとされています。
大豆から作られるソイプロテインも完全に消化・分解されるまでには5~6時間とされています。
<炭水化物>
炭水化物の消化・吸収については
2018年11月18日(日)の本ブログを、以下一部修正して再掲します。
炭水化物の消化・吸収について
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html。
2018年11月18日 (日)
blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4740.html
【18/11/17 オスティナート
Re:Re: Re: ???
≪「デンプンは、胃で、45~60分かけていの分泌液と混合され、その糜粥(ビジュク)が胃から十二指腸に移動する。
十二指腸では糜粥(ビジュク)は膵液と混合して、15~30分以内に全て吸収されれる。」
ということですね。≫
についてですが、
ガイトンによりますと、
【時として1時間も継続する】とあります。
「継続」ですので、炭水化物を食べた直後から胃の分泌液と混合され、
糜粥(ビジュク)がその都度、胃から十二指腸に送り込まれ、
小腸では短時間で単糖まで分解され、吸収されるのだと思います。
(食べた全ての食物が胃の分泌液と混合されるまで、
胃から十二指腸に送り込まれないのではない。)
そのためブドウ糖の吸収には遅れますが、炭水化物を食べた場合にも、
直後から血糖値上昇があるのだと思います。
追記
※【時として1時間も継続する】について、、
●「場合によって(食べた食物の量や、食べ合わせ、又状態(製粉や、液状)によって異なる)すべて胃の分泌液と混合されるまでに1時間も継続する。」
と読み替えてみるとわかりやすいかと思います。】
なるほど。
オスティナートさん、ありがとうございます。
おかげさまで、やっと整合性をもって理解できました。
炭水化物の主成分はデンプンです。
①デンプンは、唾液中のα-アミラーゼにより加水分解される。
②食道は、消化吸収の働きはなく、蠕動運動で食物を通過させる。
③胃内でも、胃液と混和しない部分では、消化が進行して約70%が加水分解される。
④大量の胃液(粘液、塩酸、ペプシン)が分泌され、撹拌運動により食物と胃液が混ぜ合わされる。
⑤胃内で混ぜ合わされて糜粥(ビジュク)となり、蠕動運動によりその都度、チビチビ小刻みに十二指腸に移動していく。
⑥胃の内部の糜粥(ビジュク)は、時として1時間くらいかけて継続的に消化されて十二指腸に移送される。すなわち胃には貯留の働きもある。
⑦糜粥(ビジュク)は、小腸(十二指腸・空腸・回腸)で単糖に分解されて吸収される。
胃の消化物(糜粥)の十二指腸への移動は、
基本的にブドウ糖と同じメカニズム(胃の蠕動運動)と思われます。
胃の蠕動運動には、撹拌・粉砕・移送があります。
従って、炭水化物摂取後、
ブドウ糖の吸収速度にはおよびませんが、
あるていど速やかに血糖値が上昇し始めると考えられます。
しかし、胃内に1時間以上、停留している場合もあり、
その時は全て消化・吸収されるには、一定以上の時間がかかるので、
脂質・蛋白質より消化・吸収時間は長くなります。
なお、水分、塩分、アルコールも、ほとんどは小腸で吸収され、
胃では一部しか吸収されません。
江部康二
2023年05月25日 (木)
こんにちは。
2023年6月13日(火)京都で、
日本糖質制限医療推進協会主催の「低糖質スイーツ教室」
を開催します。
京都でのスイーツ教室開催は、2019年の秋以来です。
講師は以前と同様で、パティシエの小寺幹成さんと管理栄養士の佐々木栄子さんです。
・小寺さんのプロフェッショナルな技を直接見て、おいしく低糖質なスイーツづくりを学べること
さらに、
・糖質制限による栄養指導のご経験豊富な佐々木さんの的確なアドバイスも得られること
が、この教室の嬉しいところと思います。
テーマは、先日開催した東京での講習会と同じ「フィナンシェとババロア」ですが、
今回は、参加者の皆さんで実際に作ってみる「実習」も行うそうです。
私もフィナンシェとババロアをバレンタイン?プレゼントでいただき、試食しました。
食べやすく、美味しかったです。
皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
******************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室の開催をご案内申し上げます。
2023年6月13日(火)京都で、「低糖質スイーツ教室」を開催いたします。
☆低糖質スイーツ教室
おいしい低糖質洋菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
小寺パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、参加者様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
また、佐々木先生に、低糖質菓子をご家庭で作りやすくするための工夫やレッスンで学んだことを更に活用するアイデアなど、多岐に渡ってアドバイスいただきます。
血糖値が気になってお菓子を控えているという方、安心の低糖質スイーツを作りたいという方、お菓子作りは初めてという方も、是非ご参加ください。
☆今回の内容
テーマ:「フィナンシェとババロア」
マドレーヌと違って、全卵ではなく、卵白を使う金塊型の焼き菓子「フィナンシェ」。
今回は、このフィナンシェ作りをメインに催し、実習も行います。
フィナンシェを上手に作るには、「焦がしバター」がキーになります。
デモンストレーションとあわせて、この焦がしバターの作り方、材料の混ぜ方など、各工程を丁寧に説明。
その後、実際に参加者の皆様で作っていただき、簡単なようで難しいフィナンシェ作りを学んでいただきます。
試食では、少量の小麦粉を使ったものと大豆粉を使ったもの、2種のプレーンタイプと、アレンジタイプを召し上がっていただく予定です。
また、フィナンシェ作りで余った卵黄の活用法として、「ババロア」作りも、デモと試食にてご紹介します。
関西にお住まいの方をはじめ、皆さまのご参加をお待ちしております。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(京都)」
♪テーマ:「フィナンシェとババロア」
◆日時: 2023年6月13日(火) 13:00~15:45頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者(当会アドバイザー)
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
◆定員・対象: 20名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明・デモ→ 実習 → 試食 → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの:
エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
◆お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局へメールにてお申し込み下さい。
★賛助会員入会+教室参加をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「6/13京都スイーツ教室、参加希望」とご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加ご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/cooking
◆その他
・予約制です。当日参加はできません。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、6月8日(木)までにご連絡ください。
6月9日(金)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金として頂戴いたしますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
◆弊会イベント情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
2023年6月13日(火)京都で、
日本糖質制限医療推進協会主催の「低糖質スイーツ教室」
を開催します。
京都でのスイーツ教室開催は、2019年の秋以来です。
講師は以前と同様で、パティシエの小寺幹成さんと管理栄養士の佐々木栄子さんです。
・小寺さんのプロフェッショナルな技を直接見て、おいしく低糖質なスイーツづくりを学べること
さらに、
・糖質制限による栄養指導のご経験豊富な佐々木さんの的確なアドバイスも得られること
が、この教室の嬉しいところと思います。
テーマは、先日開催した東京での講習会と同じ「フィナンシェとババロア」ですが、
今回は、参加者の皆さんで実際に作ってみる「実習」も行うそうです。
私もフィナンシェとババロアをバレンタイン?プレゼントでいただき、試食しました。
食べやすく、美味しかったです。
皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
******************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室の開催をご案内申し上げます。
2023年6月13日(火)京都で、「低糖質スイーツ教室」を開催いたします。
☆低糖質スイーツ教室
おいしい低糖質洋菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
小寺パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、参加者様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
また、佐々木先生に、低糖質菓子をご家庭で作りやすくするための工夫やレッスンで学んだことを更に活用するアイデアなど、多岐に渡ってアドバイスいただきます。
血糖値が気になってお菓子を控えているという方、安心の低糖質スイーツを作りたいという方、お菓子作りは初めてという方も、是非ご参加ください。
☆今回の内容
テーマ:「フィナンシェとババロア」
マドレーヌと違って、全卵ではなく、卵白を使う金塊型の焼き菓子「フィナンシェ」。
今回は、このフィナンシェ作りをメインに催し、実習も行います。
フィナンシェを上手に作るには、「焦がしバター」がキーになります。
デモンストレーションとあわせて、この焦がしバターの作り方、材料の混ぜ方など、各工程を丁寧に説明。
その後、実際に参加者の皆様で作っていただき、簡単なようで難しいフィナンシェ作りを学んでいただきます。
試食では、少量の小麦粉を使ったものと大豆粉を使ったもの、2種のプレーンタイプと、アレンジタイプを召し上がっていただく予定です。
また、フィナンシェ作りで余った卵黄の活用法として、「ババロア」作りも、デモと試食にてご紹介します。
関西にお住まいの方をはじめ、皆さまのご参加をお待ちしております。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(京都)」
♪テーマ:「フィナンシェとババロア」
◆日時: 2023年6月13日(火) 13:00~15:45頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者(当会アドバイザー)
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
◆定員・対象: 20名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明・デモ→ 実習 → 試食 → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの:
エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
◆お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局へメールにてお申し込み下さい。
★賛助会員入会+教室参加をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「6/13京都スイーツ教室、参加希望」とご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加ご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/cooking
◆その他
・予約制です。当日参加はできません。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、6月8日(木)までにご連絡ください。
6月9日(金)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金として頂戴いたしますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
◆弊会イベント情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
2023年05月24日 (水)
こんにちは。
ヒトには人体で作れない栄養素があります。
人体で作れないので、
「必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維」は、
食事から摂取する必要があります。
高雄病院のスーパー糖質制限食では、
魚介類、肉類、卵、卵製品、乳製品、野菜、海草、茸、大豆製品など・・・
まんべんなく摂取するので、これらが不足することはまずありません。
A)必須アミノ酸
スーパー糖質制限食では魚介や肉や卵を充分量摂るので不足はまずないです。
ヒトでは、一般に次の9種類が必須アミノ酸に含まれます。
トリプトファン
リシン
メチオニン
フェニルアラニン
トレオニン
バリン
ロイシン
イソロイシン
ヒスチジン
B)必須脂肪酸
厳密にはαリノレン酸とリノール酸の2つだけが、必須脂肪酸です。
α-リノレン酸からEPAやDHAは合成できるのですが、効率は悪く、
体内合成量だけでは足らない可能性があります。
従って、魚をしっかり摂取するのがよいと思います。
EPA、DHAは、サバ、サンマ、イワシなど青物の魚や
クロマグロ、ミナミマグロの脂身等に豊富です。
魚を食べないと、EPAとDHAは不足しますので注意が必要です。
また、αリノレン酸は、シソ油、
くるみ、マヨネーズと、
油揚げ、凍り豆腐(高野豆腐)、湯葉、納豆など大豆製品に豊富です。
「シソ油」は、しそ科の植物“エゴマ”の種子を搾った油です。
これらの植物性食材を摂取しないと、
αリノレン酸が不足するので注意が必要です。
カツオ缶詰、マグロ缶詰にもα-リノレン酸が比較的豊富です。
リノール酸は、必須ですが、日本人は過剰摂取しているので、
注意が必要です。
糖質制限OK食材の中では、
鶏肉、サラダ油、ナッツ、マヨネーズ、卵などにリノール酸が豊富です。
リノール酸の摂取が多くてα-リノレン酸が少ないと、
動脈硬化、アレルギー疾患、欧米型ガンなどのリスクとなるとされています。
なお、菜種油やカノーラ菜種油に関しては、αリノレンン酸含有量は多いですが、
日本脂質栄養学会は、環境ホルモン作用があり、良くないとしています。
C)ビタミン
例えばビタミンCは、野菜や海苔などに豊富です。
果物にもビタミンCは豊富ですが、
糖質制限食ではごく少量摂取かなしですので野菜や海苔を食べないと、
ビタミンCが不足するので注意が必要です。
他のビタミンは、スーパー糖質制限食で不足することは、まずありません。
ビタミンA
β-カロテン
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミンB1
ビタミンB2
ナイアシン
ビタミンB6
ビタミンB12
葉酸
パントテン酸
ビタミンC
D)ミネラル
亜鉛・カリウム・カルシウム・クロム・セレン・鉄・銅・ナトリウム・マグネシウム・マンガン・モリブデン・ヨウ素・リンの13元素がが健康増進法に基づく食事摂取基準の対象として厚生労働省により定められています。
スーパー糖質制限食なら、ミネラルが不足することはありません。
E)食物繊維
大腸の唯一のエネルギー源は短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)です。
食材としては、バターくらいにしか含まれていません。
従って、ヒトは摂取した食物繊維を大腸の腸内細菌(酪酸菌など)が餌にして酪酸などの短鎖脂肪酸を作ることで、大腸のエネルギー源を確保していると考えられます。
従って、食物繊維の摂取は、ヒトにとって必須と言えます。
糖質制限食では、野菜、海草、茸、大豆製品などから食物繊維を摂取できます。
勿論体内で産生される、βヒドロキシ酪酸などの短鎖脂肪酸も大腸細胞は利用します。
A)B)C)D)E)を考慮すれば
スーパー糖質制限食なら、
「必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維」
が不足することはないと考えられます。
*
なお玄米菜食を厳密に行うと、動物性食品に含まれるビタミンB12や、
魚に含まれるEPA・DHAが不足する可能性があるので注意が必要です。
ビタミンD、亜鉛、カルシウム、鉄不足にも注意が必要です。
**
そして必須糖質は存在しません。
体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、
食物から摂取する必要はないのです。
国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)
と明記されています。
(☆)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.
江部康二
ヒトには人体で作れない栄養素があります。
人体で作れないので、
「必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維」は、
食事から摂取する必要があります。
高雄病院のスーパー糖質制限食では、
魚介類、肉類、卵、卵製品、乳製品、野菜、海草、茸、大豆製品など・・・
まんべんなく摂取するので、これらが不足することはまずありません。
A)必須アミノ酸
スーパー糖質制限食では魚介や肉や卵を充分量摂るので不足はまずないです。
ヒトでは、一般に次の9種類が必須アミノ酸に含まれます。
トリプトファン
リシン
メチオニン
フェニルアラニン
トレオニン
バリン
ロイシン
イソロイシン
ヒスチジン
B)必須脂肪酸
厳密にはαリノレン酸とリノール酸の2つだけが、必須脂肪酸です。
α-リノレン酸からEPAやDHAは合成できるのですが、効率は悪く、
体内合成量だけでは足らない可能性があります。
従って、魚をしっかり摂取するのがよいと思います。
EPA、DHAは、サバ、サンマ、イワシなど青物の魚や
クロマグロ、ミナミマグロの脂身等に豊富です。
魚を食べないと、EPAとDHAは不足しますので注意が必要です。
また、αリノレン酸は、シソ油、
くるみ、マヨネーズと、
油揚げ、凍り豆腐(高野豆腐)、湯葉、納豆など大豆製品に豊富です。
「シソ油」は、しそ科の植物“エゴマ”の種子を搾った油です。
これらの植物性食材を摂取しないと、
αリノレン酸が不足するので注意が必要です。
カツオ缶詰、マグロ缶詰にもα-リノレン酸が比較的豊富です。
リノール酸は、必須ですが、日本人は過剰摂取しているので、
注意が必要です。
糖質制限OK食材の中では、
鶏肉、サラダ油、ナッツ、マヨネーズ、卵などにリノール酸が豊富です。
リノール酸の摂取が多くてα-リノレン酸が少ないと、
動脈硬化、アレルギー疾患、欧米型ガンなどのリスクとなるとされています。
なお、菜種油やカノーラ菜種油に関しては、αリノレンン酸含有量は多いですが、
日本脂質栄養学会は、環境ホルモン作用があり、良くないとしています。
C)ビタミン
例えばビタミンCは、野菜や海苔などに豊富です。
果物にもビタミンCは豊富ですが、
糖質制限食ではごく少量摂取かなしですので野菜や海苔を食べないと、
ビタミンCが不足するので注意が必要です。
他のビタミンは、スーパー糖質制限食で不足することは、まずありません。
ビタミンA
β-カロテン
ビタミンD
ビタミンE
ビタミンK
ビタミンB1
ビタミンB2
ナイアシン
ビタミンB6
ビタミンB12
葉酸
パントテン酸
ビタミンC
D)ミネラル
亜鉛・カリウム・カルシウム・クロム・セレン・鉄・銅・ナトリウム・マグネシウム・マンガン・モリブデン・ヨウ素・リンの13元素がが健康増進法に基づく食事摂取基準の対象として厚生労働省により定められています。
スーパー糖質制限食なら、ミネラルが不足することはありません。
E)食物繊維
大腸の唯一のエネルギー源は短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)です。
食材としては、バターくらいにしか含まれていません。
従って、ヒトは摂取した食物繊維を大腸の腸内細菌(酪酸菌など)が餌にして酪酸などの短鎖脂肪酸を作ることで、大腸のエネルギー源を確保していると考えられます。
従って、食物繊維の摂取は、ヒトにとって必須と言えます。
糖質制限食では、野菜、海草、茸、大豆製品などから食物繊維を摂取できます。
勿論体内で産生される、βヒドロキシ酪酸などの短鎖脂肪酸も大腸細胞は利用します。
A)B)C)D)E)を考慮すれば
スーパー糖質制限食なら、
「必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、食物繊維」
が不足することはないと考えられます。
*
なお玄米菜食を厳密に行うと、動物性食品に含まれるビタミンB12や、
魚に含まれるEPA・DHAが不足する可能性があるので注意が必要です。
ビタミンD、亜鉛、カルシウム、鉄不足にも注意が必要です。
**
そして必須糖質は存在しません。
体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、
食物から摂取する必要はないのです。
国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では、
「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)
と明記されています。
(☆)
Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S177-8.
Report of the IDECG Working Group on lower and upper limits of carbohydrate and fat intake. International Dietary Energy Consultative Group.
Bier DM, Brosnan JT, Flatt JP, Hanson RW, Heird W, Hellerstein MK, Jéquier E, Kalhan S, Koletzko B, Macdonald I, Owen O, Uauy R.
江部康二
2023年05月23日 (火)
こんばんは。
今回は
<インスリンと脳。筋肉のインスリン抵抗性と脳のインスリン抵抗性。>について、考察してみます。
まずは、少しインスリンと脳について、知識整理をしておきましょう。
例えば肥満などで「筋肉のインスリン抵抗性」があると、
インスリン作用を確保するために、
膵臓のβ細胞が大量のインスリンを分泌して辻褄を合わせます。
そうすると分泌された大量のインスリンに対して
インスリン分解酵素が、目一杯働く必要があります。
実はインスリン分解酵素は、
アミロイドβ蛋白というアルツハーマー病の元凶を分解する役目も有しています。
従って、インスリンが大量に分泌されている人は、
インスリン分解酵素が不足気味となるので
結果としてアミロイドβ蛋白が蓄積しやすく、
アルツハイマー病を発症しやすくなります。
有名な久山町の研究で、白米を沢山食べる人ほど、
アルツハイマー病になりやすいことが分かっていますが、
白米摂取でインスリンが多量に分泌されたためと思われます。
さらに、ロッテルダム研究により、
糖尿病でインスリン注射をしている高齢者は、
糖尿病でない高齢者に比して、
4.3倍アルツハイマー病になりやすいと報告されています。
つまり、過剰のインスリンが身体(脳)に良くないことは間違いないです。
一方、適切な量のインスリンが分泌されなければ、人は生命を維持できません。
スーパー糖質制限食の場合は、
必要最低限の適切なインスリン分泌で健康を維持できます。
インスリンは膵臓のβ細胞で、製造・分泌されますが、
実は、脳の海馬でもインスリンが製造・分泌されていることが
近年の研究で明らかとなりました。(☆)
脳のインスリンは、記憶力を高める作用があります。
膵臓で作られたインスリンも、脳の海馬で作用しますが、
インスリン抵抗性がなければ、少量のインスリンで十分なのです。
インスリンが脳内で適切に作用するには、情報伝達リレーが必要ですが、
糖尿病やアルツハイマー病の脳では、
このリレーが上手くいかなくて「脳のインスリン抵抗性」を、生じやすいのです。
全身性の「筋肉のインスリン抵抗性」と脳局所の「脳のインスリン抵抗性」とは
異なるメカニズムで生じると考えられます。
(☆)アルツハイマー病は「脳の糖尿病」 2017年
講談社 鬼頭昭三、新郷明子 著
115ページ
江部康二
今回は
<インスリンと脳。筋肉のインスリン抵抗性と脳のインスリン抵抗性。>について、考察してみます。
まずは、少しインスリンと脳について、知識整理をしておきましょう。
例えば肥満などで「筋肉のインスリン抵抗性」があると、
インスリン作用を確保するために、
膵臓のβ細胞が大量のインスリンを分泌して辻褄を合わせます。
そうすると分泌された大量のインスリンに対して
インスリン分解酵素が、目一杯働く必要があります。
実はインスリン分解酵素は、
アミロイドβ蛋白というアルツハーマー病の元凶を分解する役目も有しています。
従って、インスリンが大量に分泌されている人は、
インスリン分解酵素が不足気味となるので
結果としてアミロイドβ蛋白が蓄積しやすく、
アルツハイマー病を発症しやすくなります。
有名な久山町の研究で、白米を沢山食べる人ほど、
アルツハイマー病になりやすいことが分かっていますが、
白米摂取でインスリンが多量に分泌されたためと思われます。
さらに、ロッテルダム研究により、
糖尿病でインスリン注射をしている高齢者は、
糖尿病でない高齢者に比して、
4.3倍アルツハイマー病になりやすいと報告されています。
つまり、過剰のインスリンが身体(脳)に良くないことは間違いないです。
一方、適切な量のインスリンが分泌されなければ、人は生命を維持できません。
スーパー糖質制限食の場合は、
必要最低限の適切なインスリン分泌で健康を維持できます。
インスリンは膵臓のβ細胞で、製造・分泌されますが、
実は、脳の海馬でもインスリンが製造・分泌されていることが
近年の研究で明らかとなりました。(☆)
脳のインスリンは、記憶力を高める作用があります。
膵臓で作られたインスリンも、脳の海馬で作用しますが、
インスリン抵抗性がなければ、少量のインスリンで十分なのです。
インスリンが脳内で適切に作用するには、情報伝達リレーが必要ですが、
糖尿病やアルツハイマー病の脳では、
このリレーが上手くいかなくて「脳のインスリン抵抗性」を、生じやすいのです。
全身性の「筋肉のインスリン抵抗性」と脳局所の「脳のインスリン抵抗性」とは
異なるメカニズムで生じると考えられます。
(☆)アルツハイマー病は「脳の糖尿病」 2017年
講談社 鬼頭昭三、新郷明子 著
115ページ
江部康二
2023年05月22日 (月)
【23/05/22 西村典彦
タンパク質摂取時の糖の産生量について
タンパク質摂取による糖新生は、
どの程度の糖をどの程度の時間で産生するのでしょうか?
私はインスリン初期分泌が遅く、糖質摂取では血糖値が急上昇しますが、
タンパク質摂取ではほとんど変動はありません。
要するにタンパク質摂取時に産生される糖の量とスピードであれば
インスリンの自己分泌で対応できていると考えられます。
また、宴会などで2時間ほどかけてゆっくりと食事をした最後に締めのご飯などを少し食べた場合も
血糖値は正常範囲の変動です。
これらの事から私の血糖値がジェットコースターにならないためには、
時間をかけて食事をする事でインスリンの分泌が間に合うようにすれば良い事はわかりますが、
タンパク質摂取時には血糖変動がない事から
その時の糖新生の量とスピードが目安になるのではないかと考えています。】
こんにちは。
西村典彦さんから、
「タンパク質摂取時の糖の産生量」
について、コメント・質問を頂きました。
正常人や軽症2型糖尿病の場合は、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
結果として、血糖値は上昇しません。
タンパク質摂取による血糖値上昇に関しては、
以下の本ブログ記事が参考になるので、再掲します。
2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。
江部康二
☆☆☆
2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。
【19/11/14 もーりー
初めまして!
江部先生の事は何年も前から知ってますが、初めてコメントさせて頂きます。
私は1型糖尿病です。
CGMを見ながら、色々な事をやるのが好きです。
例えば、朝昼晩全く同じ物を食べた時の血糖変動です。
今回は「脂質でどれくらい血糖変動があるか?」を見てみたくなりました。
(私の通院している病院では脂質での上昇に注目しているからです。)
本日、朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。
ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。
この長時間引っ張る原因が脂質だと思っていたのですが、違うのでしょうか?
ふと思ったのが、ある程度の糖質と脂質が合わさると引っ張るのかな?と思いました。
もしそうだとしたら、スーパー糖質制限を実施している1型の方は、CGMも横ばいなグラフなのでしょうか?
教えて頂けるのであれば宜しく御願いします。】
こんばんは。
1型糖尿病のモーリーさんから、蛋白質・脂質・糖質と血糖値上昇に関して
コメント・質問を頂きました。
まず、米国糖尿病学会によれば、
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、蛋白質・脂質は影響を与えません。
直接という言葉を使用しているのは、
1型糖尿病や2型でもインスリン分泌能が一定以上低下している場合には
蛋白質が間接的に血糖値を上げるからです。
【朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。】
脂質は直接的にも、間接的にも、
血糖値をあげませんし、インスリンも分泌させません。
蛋白質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので
摂取しても、健常人や軽症糖尿人では血糖値を上昇させません。
【ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。】
1型糖尿病で、内因性インスリン分泌がなくて、グルカゴン分泌能が普通に
残っている場合は、グルカゴンによる糖新生で、
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させますが、数時間以上持続します。
また2型糖尿病でも『 グルカゴン分泌 > インスリン分泌』の場合は
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させます。
江部康二
以下のブログ記事も参考になりますので再掲します。
蛋白質と血糖値
2019年02月10日 (日)
【19/02/09 しらねのぞるば
蛋白質だけを食べた場合の血糖値
すぱ郎さんが面白い実験をされてますね.
[血糖値386からの挑戦状]
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_4.html
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html
低脂肪の牛ランプ肉だけを,調味料など一切使わず,
つまりほぼ蛋白質だけを食べた場合,食後血糖値がどうなるのか,という実験です.
この実験の貴重なのは,すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)とで,
まったく同じものを同じ時間で食べている点です.
めったにこういうケースはありません.
その結果は,糖尿人では食後1~4時間にかけて,血糖値が30mg/dlほど上昇したが,
健常人はまったく変化なし,というものでした.
やはり糖尿人は,蛋白摂取でも血糖値が応答してしまうようです.
そこで,自分の過去のデータとも比較してみたところ,
私の場合は純粋に牛肉だけに近い食事をした場合(2例あり)は,
食後1時間で20ほど上昇,しかし食後2時間ではほぼ食前に復帰,というものでした.
すぱ郎さんのようにランプ肉ではないので直接の比較はできないのですが,
同じ糖尿人でも微妙な差がありそうです.
更に考えてみると,これは自分の糖尿病の程度が測定できる(糖負荷試験以外の)「もう一つの指標」になるのではないかな,
と思いました.
牛肉だけでなく他の蛋白質でも実験されているので,
皆様ご覧になると興味深いと思います.
実験にご協力いただいた,すぱ郎さんの奥様,
トウシツセイゲニストを代表してお礼申し上げます.】
こんにちは。
しらねのぞるばさんから
蛋白質摂取と血糖値に関して、とても興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
血糖値386からの挑戦状
すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)が比較してあり、とても参考になります。
https://suparou386.blogspot.com/search/label/%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E5%AE%9F%E9%A8%93
牛ランプ肉100g中に、蛋白質21.6g、脂質3g、炭水化物0.5gですので、
糖質はほとんどなしですね。
脂質は、血糖値にもインスリン分泌にも、影響を与えません。
以下の緑文字の記載は、高雄病院で検査した、蛋白質摂取と血糖値の変化の
2型糖尿人と1型糖尿人のデータです。
2型糖尿病のAさん。60代男性。
2017/2/23(木)
血糖値 インスリン グルカゴン
8:30 139 8.0 151
ささみ200g摂取 210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 140 7.7 190
60分後 151 23.3 257
2時間後 147 26.2 195
3時間後 137 7.5 144
4時間後 127 5.7 100
1型糖尿病のBさん。インスリン強化療法中。10代男性。
ささみ。200g。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
2017/2/17(金)
血糖値 CPR グルカゴン
8:30 115 0.6(1.5~3.5ng/ml) 128(70~174pg/ml)
ささみ200g摂取。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 160 1.0 229
60分後 176 1.3 186
2時間後 193 1.3 154
3時間後 167 1.2 173
4時間後 159 0.9 122
2型糖尿人Aさんは、内因性インスリンはある程度分泌されていますが、グルカゴンの方が優性です。
そのため蛋白質摂取60分後がピークで、12mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、0.26mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、5.7%~5.9%くらいで、コントロール良好です。
1型糖尿人Bさんも、内因性インスリンが少しだけ分泌されていますが、グルカゴンの方がはるかに優性です。
そのため蛋白質摂取120分後がピークで、78mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、1.7mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、6.0~6.5%くらいで、GAは18から19.5%くらいで、コントロール良好です。
このように、たんぱく質は、直接血糖値を上昇させることはありませんが、
グルカゴンによる糖新生によって、間接的に血糖値を上昇させることがあります。
その場合、以下のA)B)C)の3つのパターンがあると思います。
A)は確定ですし、B)C)はそれに準じると考えられます。
A)1型糖尿病で内因性インスリンがゼロレベルの人は、たんぱく質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、間接的にかなり血糖値が上昇する。
高雄病院の1型の患者さん数人の検査で、個人差はあるが、
1gのたんぱく質で、1.0~3.6mg/dl上昇した。
B)2型糖尿病でも、内因性インスリン分泌能がかなり不足している場合は、
たんぱく質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがあると考えられる。
C)ロイシン、アルギニン、リジンなどの摂取刺激によって、
体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプがあれば、
2型糖尿病でインスリン分泌能が残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇すると思われる。
今まで、2型糖尿病では、基本的にB)パターン以外には、
たんぱく質が間接的に血糖値を上昇させることはないと考えていましたが
C)パターンがあることが明らかとなりました。
頻度がどのくらいあるかは、まだよくわかりませんが、ブログコメントなどを参考にすると
結構おられるように思います。
なお正常人では、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
すぱ郎さんの奥様のように、血糖値上昇がないと思われます。
日頃、摂取糖質量に比し、血糖値が上昇し過ぎるという2型糖尿人は、
上述の様な、
ささみ実験をして、「たんぱく質と血糖上昇」に関して調べてみては如何でしょう。
江部康二
タンパク質摂取時の糖の産生量について
タンパク質摂取による糖新生は、
どの程度の糖をどの程度の時間で産生するのでしょうか?
私はインスリン初期分泌が遅く、糖質摂取では血糖値が急上昇しますが、
タンパク質摂取ではほとんど変動はありません。
要するにタンパク質摂取時に産生される糖の量とスピードであれば
インスリンの自己分泌で対応できていると考えられます。
また、宴会などで2時間ほどかけてゆっくりと食事をした最後に締めのご飯などを少し食べた場合も
血糖値は正常範囲の変動です。
これらの事から私の血糖値がジェットコースターにならないためには、
時間をかけて食事をする事でインスリンの分泌が間に合うようにすれば良い事はわかりますが、
タンパク質摂取時には血糖変動がない事から
その時の糖新生の量とスピードが目安になるのではないかと考えています。】
こんにちは。
西村典彦さんから、
「タンパク質摂取時の糖の産生量」
について、コメント・質問を頂きました。
正常人や軽症2型糖尿病の場合は、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
結果として、血糖値は上昇しません。
タンパク質摂取による血糖値上昇に関しては、
以下の本ブログ記事が参考になるので、再掲します。
2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。
江部康二
☆☆☆
2019年11月15日 (金)の本ブログ記事
蛋白質、脂質、糖質と血糖値。1型糖尿病、2型糖尿病。
【19/11/14 もーりー
初めまして!
江部先生の事は何年も前から知ってますが、初めてコメントさせて頂きます。
私は1型糖尿病です。
CGMを見ながら、色々な事をやるのが好きです。
例えば、朝昼晩全く同じ物を食べた時の血糖変動です。
今回は「脂質でどれくらい血糖変動があるか?」を見てみたくなりました。
(私の通院している病院では脂質での上昇に注目しているからです。)
本日、朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。
ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。
この長時間引っ張る原因が脂質だと思っていたのですが、違うのでしょうか?
ふと思ったのが、ある程度の糖質と脂質が合わさると引っ張るのかな?と思いました。
もしそうだとしたら、スーパー糖質制限を実施している1型の方は、CGMも横ばいなグラフなのでしょうか?
教えて頂けるのであれば宜しく御願いします。】
こんばんは。
1型糖尿病のモーリーさんから、蛋白質・脂質・糖質と血糖値上昇に関して
コメント・質問を頂きました。
まず、米国糖尿病学会によれば、
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、蛋白質・脂質は影響を与えません。
直接という言葉を使用しているのは、
1型糖尿病や2型でもインスリン分泌能が一定以上低下している場合には
蛋白質が間接的に血糖値を上げるからです。
【朝昼晩に各マカダミアナッツ100gを摂りました。
1回の食事で糖質7g、脂質76gです。
結果は、血糖変動はなく、CGMのグラフは横ばいでした。】
脂質は直接的にも、間接的にも、
血糖値をあげませんし、インスリンも分泌させません。
蛋白質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので
摂取しても、健常人や軽症糖尿人では血糖値を上昇させません。
【ステーキや焼肉を食べると長時間血糖値の上昇を引っ張るイメージがあります。】
1型糖尿病で、内因性インスリン分泌がなくて、グルカゴン分泌能が普通に
残っている場合は、グルカゴンによる糖新生で、
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させますが、数時間以上持続します。
また2型糖尿病でも『 グルカゴン分泌 > インスリン分泌』の場合は
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させます。
江部康二
以下のブログ記事も参考になりますので再掲します。
蛋白質と血糖値
2019年02月10日 (日)
【19/02/09 しらねのぞるば
蛋白質だけを食べた場合の血糖値
すぱ郎さんが面白い実験をされてますね.
[血糖値386からの挑戦状]
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_4.html
https://suparou386.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html
低脂肪の牛ランプ肉だけを,調味料など一切使わず,
つまりほぼ蛋白質だけを食べた場合,食後血糖値がどうなるのか,という実験です.
この実験の貴重なのは,すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)とで,
まったく同じものを同じ時間で食べている点です.
めったにこういうケースはありません.
その結果は,糖尿人では食後1~4時間にかけて,血糖値が30mg/dlほど上昇したが,
健常人はまったく変化なし,というものでした.
やはり糖尿人は,蛋白摂取でも血糖値が応答してしまうようです.
そこで,自分の過去のデータとも比較してみたところ,
私の場合は純粋に牛肉だけに近い食事をした場合(2例あり)は,
食後1時間で20ほど上昇,しかし食後2時間ではほぼ食前に復帰,というものでした.
すぱ郎さんのようにランプ肉ではないので直接の比較はできないのですが,
同じ糖尿人でも微妙な差がありそうです.
更に考えてみると,これは自分の糖尿病の程度が測定できる(糖負荷試験以外の)「もう一つの指標」になるのではないかな,
と思いました.
牛肉だけでなく他の蛋白質でも実験されているので,
皆様ご覧になると興味深いと思います.
実験にご協力いただいた,すぱ郎さんの奥様,
トウシツセイゲニストを代表してお礼申し上げます.】
こんにちは。
しらねのぞるばさんから
蛋白質摂取と血糖値に関して、とても興味深い情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
血糖値386からの挑戦状
すぱ郎さん(糖尿人)と奥様(健常人)が比較してあり、とても参考になります。
https://suparou386.blogspot.com/search/label/%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E5%AE%9F%E9%A8%93
牛ランプ肉100g中に、蛋白質21.6g、脂質3g、炭水化物0.5gですので、
糖質はほとんどなしですね。
脂質は、血糖値にもインスリン分泌にも、影響を与えません。
以下の緑文字の記載は、高雄病院で検査した、蛋白質摂取と血糖値の変化の
2型糖尿人と1型糖尿人のデータです。
2型糖尿病のAさん。60代男性。
2017/2/23(木)
血糖値 インスリン グルカゴン
8:30 139 8.0 151
ささみ200g摂取 210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 140 7.7 190
60分後 151 23.3 257
2時間後 147 26.2 195
3時間後 137 7.5 144
4時間後 127 5.7 100
1型糖尿病のBさん。インスリン強化療法中。10代男性。
ささみ。200g。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
2017/2/17(金)
血糖値 CPR グルカゴン
8:30 115 0.6(1.5~3.5ng/ml) 128(70~174pg/ml)
ささみ200g摂取。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 160 1.0 229
60分後 176 1.3 186
2時間後 193 1.3 154
3時間後 167 1.2 173
4時間後 159 0.9 122
2型糖尿人Aさんは、内因性インスリンはある程度分泌されていますが、グルカゴンの方が優性です。
そのため蛋白質摂取60分後がピークで、12mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、0.26mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、5.7%~5.9%くらいで、コントロール良好です。
1型糖尿人Bさんも、内因性インスリンが少しだけ分泌されていますが、グルカゴンの方がはるかに優性です。
そのため蛋白質摂取120分後がピークで、78mg血糖値上昇ですので、1gの蛋白質が、1.7mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、6.0~6.5%くらいで、GAは18から19.5%くらいで、コントロール良好です。
このように、たんぱく質は、直接血糖値を上昇させることはありませんが、
グルカゴンによる糖新生によって、間接的に血糖値を上昇させることがあります。
その場合、以下のA)B)C)の3つのパターンがあると思います。
A)は確定ですし、B)C)はそれに準じると考えられます。
A)1型糖尿病で内因性インスリンがゼロレベルの人は、たんぱく質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、間接的にかなり血糖値が上昇する。
高雄病院の1型の患者さん数人の検査で、個人差はあるが、
1gのたんぱく質で、1.0~3.6mg/dl上昇した。
B)2型糖尿病でも、内因性インスリン分泌能がかなり不足している場合は、
たんぱく質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがあると考えられる。
C)ロイシン、アルギニン、リジンなどの摂取刺激によって、
体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプがあれば、
2型糖尿病でインスリン分泌能が残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇すると思われる。
今まで、2型糖尿病では、基本的にB)パターン以外には、
たんぱく質が間接的に血糖値を上昇させることはないと考えていましたが
C)パターンがあることが明らかとなりました。
頻度がどのくらいあるかは、まだよくわかりませんが、ブログコメントなどを参考にすると
結構おられるように思います。
なお正常人では、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
すぱ郎さんの奥様のように、血糖値上昇がないと思われます。
日頃、摂取糖質量に比し、血糖値が上昇し過ぎるという2型糖尿人は、
上述の様な、
ささみ実験をして、「たんぱく質と血糖上昇」に関して調べてみては如何でしょう。
江部康二
2023年05月20日 (土)
【23/05/19
まー
糖尿病になると寿命が10年縮む?
江部先生、こんにちは。
今日ネットで、「糖尿病になると寿命が10年縮む」という記事がありました。
同患者の死因トップはがんで、その他にも感染症、心筋梗塞、脳梗塞などが上位をしめているそうです。
同患者、境界型の方で、服薬あるなし、糖質制限あるなし、年齢などの視点で解説して頂けないでしょうか。
よろしくお願いします。】
こんばんは。まーさんから、
「糖尿病になると寿命が10年縮む?」という、
ネットの記事の信憑性についてコメント・質問を頂きました。
確かに、糖尿病になると若いうちから加齢症状があらわれるので早期治療が大切という研究報告もあります。
つまりコントロールが悪い糖尿病は、「老化が早く進む病気」と言っても過言ではありません。
服薬のあるなしよりも、血糖コントロールが良好か否かのほうが、重要です。
境界型(食後高血糖)でも、心筋梗塞のリスクは糖尿病の人に近いくらいあることもわかっています。
そして、厄介なのは、「質の良いHbA1c」と「質の悪いHbA1c」があるということです。
現状の健康診断などでは、「早朝空腹時血糖値」と「HbA1c」で糖尿病コントロールの評価をしています。
HbA1c検査の弱点は、食後高血糖を見逃すという点です。
つまり平均血糖値を見ているので、食後200mg/dlであっても、
夜中に65mg/dlとかであれば、平均血糖値としてのHbA1cは6.2%くらいになり、一見、良好です。
しかしこのようなHbA1cは、食後高血糖が存在し、
血糖変動幅が大きく「酸化ストレスリスク」となる「質の悪いHbA1c」です。
これでは、動脈硬化を予防できません。
すなわち日本糖尿病学会推奨の糖尿病食(低脂肪・高糖質食)では、
HbA1cが6.2%とか6.5%とか一見コントロール良好でも
「食後高血糖」や「平均血糖変動幅増大」を伴なう「質の悪いHbA1c」であり、
これでは、糖尿病合併症を防げません。
毎年新たに、人工透析が16000人以上、失明が3000人以上、、下肢切断が3000人以上
というのが、日本の糖尿病患者さんの現状であり、大変つらい状況です。
これに対して、スーパー糖質制限食実践なら、
食後高血糖は最小限となり、血糖変動幅増大も最小限となるので
達成されたHbA1cは、「質の良いHbA1c」であり、
動脈硬化や糖尿病合併症の予防ができます。
日本全国の糖尿人の皆さん、
是非糖質制限食を実践されて、
合併症を予防し健康長寿を目指しましょう。
江部康二
まー
糖尿病になると寿命が10年縮む?
江部先生、こんにちは。
今日ネットで、「糖尿病になると寿命が10年縮む」という記事がありました。
同患者の死因トップはがんで、その他にも感染症、心筋梗塞、脳梗塞などが上位をしめているそうです。
同患者、境界型の方で、服薬あるなし、糖質制限あるなし、年齢などの視点で解説して頂けないでしょうか。
よろしくお願いします。】
こんばんは。まーさんから、
「糖尿病になると寿命が10年縮む?」という、
ネットの記事の信憑性についてコメント・質問を頂きました。
確かに、糖尿病になると若いうちから加齢症状があらわれるので早期治療が大切という研究報告もあります。
つまりコントロールが悪い糖尿病は、「老化が早く進む病気」と言っても過言ではありません。
服薬のあるなしよりも、血糖コントロールが良好か否かのほうが、重要です。
境界型(食後高血糖)でも、心筋梗塞のリスクは糖尿病の人に近いくらいあることもわかっています。
そして、厄介なのは、「質の良いHbA1c」と「質の悪いHbA1c」があるということです。
現状の健康診断などでは、「早朝空腹時血糖値」と「HbA1c」で糖尿病コントロールの評価をしています。
HbA1c検査の弱点は、食後高血糖を見逃すという点です。
つまり平均血糖値を見ているので、食後200mg/dlであっても、
夜中に65mg/dlとかであれば、平均血糖値としてのHbA1cは6.2%くらいになり、一見、良好です。
しかしこのようなHbA1cは、食後高血糖が存在し、
血糖変動幅が大きく「酸化ストレスリスク」となる「質の悪いHbA1c」です。
これでは、動脈硬化を予防できません。
すなわち日本糖尿病学会推奨の糖尿病食(低脂肪・高糖質食)では、
HbA1cが6.2%とか6.5%とか一見コントロール良好でも
「食後高血糖」や「平均血糖変動幅増大」を伴なう「質の悪いHbA1c」であり、
これでは、糖尿病合併症を防げません。
毎年新たに、人工透析が16000人以上、失明が3000人以上、、下肢切断が3000人以上
というのが、日本の糖尿病患者さんの現状であり、大変つらい状況です。
これに対して、スーパー糖質制限食実践なら、
食後高血糖は最小限となり、血糖変動幅増大も最小限となるので
達成されたHbA1cは、「質の良いHbA1c」であり、
動脈硬化や糖尿病合併症の予防ができます。
日本全国の糖尿人の皆さん、
是非糖質制限食を実践されて、
合併症を予防し健康長寿を目指しましょう。
江部康二
2023年05月19日 (金)
【23/05/18 yk
インスリン抵抗性と脂肪摂取
たまに投稿してる健常者です。
ネット記事のなかに、時々出てくるのが、糖尿の治療で脂質を減らしたほうが、
インスリン抵抗性が少なく、
少量のインスリンで血糖値を下げることができる、というのがあります。
また、インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。
また、健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。
直接血糖値を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。
上記の内容を総合すると、糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。
なので、脂質を減らしたほうがインスリン抵抗性は少ないというのも一理あり、糖尿の重症化防止に一定の効果があるかもしれませんが、長期で見た場合は、血糖値の乱高下とインスリン過分泌は続くので、重症化のリスクはなくならないと思います。
炭水化物と脂質の割合が等量でなく、スーパー糖質制限の場合は、インスリンの過分泌は大幅に少なくなるので、糖新生が高まったとしても、インスリンの分泌は少なくなってるので、糖尿発症はないものと思います。】
こんにちは。
インスリン抵抗性と脂肪摂取について、yk さんから、コメント・質問を頂きました。
【インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。】
①糖質は唯一、直接血糖値を上昇させます。
②蛋白質は、直接血糖値を上昇させることはありません。
蛋白質はグルカゴンを分泌させて、、糖新生により間接的に血糖値を上昇させますが、
通常は同時にインスリンも分泌されるので、効果が相殺されて、
血糖値は上昇しません。
1型糖尿病で、インスリン分泌能力がない場合は、
蛋白質摂取でグルカゴンのみ分泌されるので、
糖新生により間接的に血糖値が上昇します。
2型糖尿病でも、インスリン分泌能力が極めて低下している場合は
蛋白質摂取で糖新生により、間接的血糖値が上昇します。
③脂質は、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させませんし、インスリンもグルカゴンも 分泌させません。
【健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。】
これは、その通りと思います。
【糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。】
ご指摘通り、間接的血糖値上昇には、糖新生が密接に関わっています。
しかし脂質は糖新生は生じず、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させません。
脂質は、当然ながら、インスリンも分泌させません。
そして、2023/5/18(木)のブログ記事で述べましたように、
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、低脂肪食に比し、
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加に有効で
体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
上記の最高レベルのエビデンスにより証明されています。
<体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加>
となれば、当然、インスリン抵抗性は改善します。
すなわち、高脂肪・低糖質食により、インスリン抵抗性は改善します。
江部康二
インスリン抵抗性と脂肪摂取
たまに投稿してる健常者です。
ネット記事のなかに、時々出てくるのが、糖尿の治療で脂質を減らしたほうが、
インスリン抵抗性が少なく、
少量のインスリンで血糖値を下げることができる、というのがあります。
また、インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。
また、健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。
直接血糖値を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。
上記の内容を総合すると、糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。
なので、脂質を減らしたほうがインスリン抵抗性は少ないというのも一理あり、糖尿の重症化防止に一定の効果があるかもしれませんが、長期で見た場合は、血糖値の乱高下とインスリン過分泌は続くので、重症化のリスクはなくならないと思います。
炭水化物と脂質の割合が等量でなく、スーパー糖質制限の場合は、インスリンの過分泌は大幅に少なくなるので、糖新生が高まったとしても、インスリンの分泌は少なくなってるので、糖尿発症はないものと思います。】
こんにちは。
インスリン抵抗性と脂肪摂取について、yk さんから、コメント・質問を頂きました。
【インスリン分泌がない糖尿患者では、
脂質もタンパク質もある程度血糖値を上げるという報告があります。】
①糖質は唯一、直接血糖値を上昇させます。
②蛋白質は、直接血糖値を上昇させることはありません。
蛋白質はグルカゴンを分泌させて、、糖新生により間接的に血糖値を上昇させますが、
通常は同時にインスリンも分泌されるので、効果が相殺されて、
血糖値は上昇しません。
1型糖尿病で、インスリン分泌能力がない場合は、
蛋白質摂取でグルカゴンのみ分泌されるので、
糖新生により間接的に血糖値が上昇します。
2型糖尿病でも、インスリン分泌能力が極めて低下している場合は
蛋白質摂取で糖新生により、間接的血糖値が上昇します。
③脂質は、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させませんし、インスリンもグルカゴンも 分泌させません。
【健常者が炭水化物だけを摂取した場合、
炭水化物と脂質を等量摂取した場合、
炭水化物とタンパク質を等量摂取した場合の、血糖値の比較では、
炭水化物だけの場合は食後血糖値は急上昇後急下降、
炭水化物と脂質の場合は食後血糖は炭水化物だけの半分ぐらいまで上昇後
ゆっくり時間をかけて下降、
炭水化物とタンパク質の場合も脂肪の場合と同じような経過をたどる、
という報告もあります。】
これは、その通りと思います。
【糖新生の関りが重要ではないかと思います。
血糖値上昇の試験で、脂質、タンパク質が加わると、血糖の上昇は低いが、ゆっくり降下するのは、糖新生が脂質、タンパク質の摂取で高まり、インスリン分泌が増えてるのではないかと思います。】
ご指摘通り、間接的血糖値上昇には、糖新生が密接に関わっています。
しかし脂質は糖新生は生じず、直接的にも間接的にも血糖値を上昇させません。
脂質は、当然ながら、インスリンも分泌させません。
そして、2023/5/18(木)のブログ記事で述べましたように、
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、低脂肪食に比し、
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加に有効で
体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
上記の最高レベルのエビデンスにより証明されています。
<体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加>
となれば、当然、インスリン抵抗性は改善します。
すなわち、高脂肪・低糖質食により、インスリン抵抗性は改善します。
江部康二
2023年05月18日 (木)
こんにちは。
世の中相変わらず「脂肪悪玉説」が蔓延っていますね。( ̄_ ̄|||)
すなわち、脂肪摂取が肥満の原因であるという根強い説です。
糖質制限食を実践すれば、相対的に高脂肪食になります。
「脂肪悪玉説」には反論しておかなくてはなりませんせんね。('-^*)☆
以下の茶文字の記載は、国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部で、
2002年に作成された<高脂血症とインスリン抵抗性>という論文の要旨です。
「脂肪摂取量の増大はインスリン抵抗性を引き起こす最も重要な環境因子である。
これは、高脂肪食の摂取により肥満が発症し、
それによって脂肪組織や筋肉での糖の取り込みが低下するためと考えられている。
その機序として、筋肉や肝臓への脂肪の過剰蓄積による代謝異常、脂肪細胞の肥大化によるTNF-αやレプチンなどの生理活性物質の分泌増加が考えられる。
また、インスリン依存的に血中から脂肪組織に糖を輸送するGLUT4 は、高脂肪食の摂取でmRNA発現量が減少することから、高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性発症に関与している可能性がある。
しかし、脂肪には様々な種類があり、摂取する脂肪の質の違いによってインスリン抵抗性の発症は大きく異なる。
一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。
また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。
魚油によるインスリン抵抗性の改善には、肝臓での脂肪合成の抑制と熱産生の増加が寄与していると考えられる。これらの成績は、インスリン抵抗性の予防法として食事療法が重要であることを強く示唆している。」
国立健康・栄養研究所の論文ですから、権威あるものなのでしょうが、
「高脂肪食の摂取により肥満が発症」という常識から出発して論じておられます。
しかし、これはマウスにおいては兎も角、少なくともヒトにおいては、根拠のない神話です。
以下の青字の記載は、最高のエビデンスレベルの研究論文で、3つあります。
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu
このように、ヒトにおいては、糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、
もっとも体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
最高レベルのエビデンスに基づき証明されましたので、
国立健康・栄養研究所の論文は出発点から問題ありですね。
「一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。」
これもマウスの実験が根拠になっているなら、ヒトに当てはまるかどうかは疑問ですね。
なぜこのような間違いが生じるのでしょうか?。
一つには例の脂肪悪玉説という「常識の壁」があります。
もう一つはこれも別の意味の医学界の常識の壁なのですが、
どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいことがあります。
しかし、マウスで高脂肪食の実験をすること自体が、
根本的なカテゴリー・エラーなのです。(*- -)(*_ _)
なぜなら、マウスなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。
草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。
510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに、
高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。
これは単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて
病気を作るという実験です。
インスリン抵抗性を始めとして、全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。
例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。
ゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、
マウスと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。
人類の主食が島泰三氏の説(親指はなぜ太いのか・中公新書)の如く「骨、骨髄」であったかは兎も角 、
穀物で無かったことは確実です。
そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。
またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、
シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠です。
EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれていません。
従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高蛋白・高脂肪食を、
脳が急速に発達した20万年前頃、主食として食べてたことは間違いないでしょう。
結論です。
①
肥満に関して「脂肪悪玉説」は間違いであり、
糖質が肥満の元凶である。
②
薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として特に問題はないと思います。
(動物実験自体の是非はおいておきます。)
しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究をおこなうのは出発点から根本的に間違っています。
③
研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、
全く意味が異なることを、認識してほしいと思います。
そこのところ、
是非よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
江部康二
世の中相変わらず「脂肪悪玉説」が蔓延っていますね。( ̄_ ̄|||)
すなわち、脂肪摂取が肥満の原因であるという根強い説です。
糖質制限食を実践すれば、相対的に高脂肪食になります。
「脂肪悪玉説」には反論しておかなくてはなりませんせんね。('-^*)☆
以下の茶文字の記載は、国立健康・栄養研究所 生活習慣病研究部で、
2002年に作成された<高脂血症とインスリン抵抗性>という論文の要旨です。
「脂肪摂取量の増大はインスリン抵抗性を引き起こす最も重要な環境因子である。
これは、高脂肪食の摂取により肥満が発症し、
それによって脂肪組織や筋肉での糖の取り込みが低下するためと考えられている。
その機序として、筋肉や肝臓への脂肪の過剰蓄積による代謝異常、脂肪細胞の肥大化によるTNF-αやレプチンなどの生理活性物質の分泌増加が考えられる。
また、インスリン依存的に血中から脂肪組織に糖を輸送するGLUT4 は、高脂肪食の摂取でmRNA発現量が減少することから、高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性発症に関与している可能性がある。
しかし、脂肪には様々な種類があり、摂取する脂肪の質の違いによってインスリン抵抗性の発症は大きく異なる。
一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。
また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。
魚油によるインスリン抵抗性の改善には、肝臓での脂肪合成の抑制と熱産生の増加が寄与していると考えられる。これらの成績は、インスリン抵抗性の予防法として食事療法が重要であることを強く示唆している。」
国立健康・栄養研究所の論文ですから、権威あるものなのでしょうが、
「高脂肪食の摂取により肥満が発症」という常識から出発して論じておられます。
しかし、これはマウスにおいては兎も角、少なくともヒトにおいては、根拠のない神話です。
以下の青字の記載は、最高のエビデンスレベルの研究論文で、3つあります。
<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>
①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021
③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu
このように、ヒトにおいては、糖質制限食(高脂肪・低糖質食)が、
もっとも体重,脂質,血糖,血圧を改善させることが、
最高レベルのエビデンスに基づき証明されましたので、
国立健康・栄養研究所の論文は出発点から問題ありですね。
「一般に、飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を来しやすい。また、マウスに高脂肪食を負荷した研究では、リノール酸を多量に含む紅花油の摂取はインスリン抵抗性を発症しやすく、一方、魚油はインスリン抵抗性の発症が改善される傾向にあった。」
これもマウスの実験が根拠になっているなら、ヒトに当てはまるかどうかは疑問ですね。
なぜこのような間違いが生じるのでしょうか?。
一つには例の脂肪悪玉説という「常識の壁」があります。
もう一つはこれも別の意味の医学界の常識の壁なのですが、
どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいことがあります。
しかし、マウスで高脂肪食の実験をすること自体が、
根本的なカテゴリー・エラーなのです。(*- -)(*_ _)
なぜなら、マウスなどネズミ類は、本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。
草原が地球上の有力な植生として現れる鮮新世(510万年前)以降ネズミ科の動物が出現して爆発的に繁栄します。
510万年間、草原の草の種子(穀物)を食べ続けてきたネズミに、
高脂肪食を与えれば、代謝が破綻するのは当たり前です。
これは単純に、マウスの代謝に合わない(主食でない)高脂肪食を与えて
病気を作るという実験です。
インスリン抵抗性を始めとして、全ての代謝が狂って病気だらけになるのもいわずもがなです。
例えば、ゴリラの主食は「棘の多い大きな蔓や大きな草」です。
ゴリラに高脂肪食を食べさせたら、代謝はガタガタになり、
マウスと同様、たちどころに様々な病気になるでしょう。
人類の主食が島泰三氏の説(親指はなぜ太いのか・中公新書)の如く「骨、骨髄」であったかは兎も角 、
穀物で無かったことは確実です。
そして歴史的事実として、農耕の前は人類皆、糖質制限食でした。
またヒトの進化の過程で脳が急速に大きくなり、
シナプシスが張り巡らされるためには、EPAとDHAの摂取が不可欠です。
EPAとDHAは地上の植物性食品には含まれていません。
従って少なくとも、肉・骨髄・昆虫・地虫・魚貝・・・などの高蛋白・高脂肪食を、
脳が急速に発達した20万年前頃、主食として食べてたことは間違いないでしょう。
結論です。
①
肥満に関して「脂肪悪玉説」は間違いであり、
糖質が肥満の元凶である。
②
薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として特に問題はないと思います。
(動物実験自体の是非はおいておきます。)
しかし、本来主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究をおこなうのは出発点から根本的に間違っています。
③
研究者の皆さん、「薬物の動物実験」と「食物の動物実験」は、
全く意味が異なることを、認識してほしいと思います。
そこのところ、
是非よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
江部康二
2023年05月16日 (火)
こんにちは。
糖尿病の検査としてHbA1cとGAがあります。
今回はHbA1cとGAの統一性と信頼度と意義について考察してみます。
「HbA1c」
HbA1cの測定には大きく分けて「HPLC法」「酵素法」「免疫法」が臨床の場で使用されています。いずれの測定法も精度の高い定量検査が可能であり、世界的な標準化も進み原理間差は少なくなってきています。とは言っても、「HPLC法」「酵素法」「免疫法」を同一日、同時刻、同人物で測定した場合は少し、差が出る可能性があります。HbA1c値として、0.1~0.3%くらいの差はあると思います。
「グリコアルブミン(GA)」
旭化成ファーマ株式会社
https://www.asahi-kasei.co.jp/shindan/ga-l/ability.html
グリコアルブミンの測定は、旭化成ファーマ株式会社、一社となっています。
以前は協和キリンも測定していましたが撤退したようです。
従って、グリコアルブミンのほうが、HbA1cよりも信頼性も統一性も勝っていると思います。
さらに、
グリコアルブミン(GA)とグリコヘモグロビン(HbA1c)
に関してを比較・検討してみます。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため4ヵ月前から採血時まで、
一般には、過去2ヶ月の平均血糖値を反映します。
GAはアルブミンの半減期が17日であるため17日前から採血時まで、
一般には、過去2週間の平均血糖値を反映します。
高雄病院の糖尿病学校(14日間入院)では、
タイミングが許せば、
糖質制限入院時と退院時のGAを検査します。
必ず退院時GAが改善しますので患者さんに説明しやすいです。
HbA1cは2週間では、血糖コントロール良好でも変化はありません。
従って、退院時のHbA1cは検査しません。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の反映度合い>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血糖が、血液中のヘモグロビンとアルブミンと、
それぞれ結合して変化したものの割合をパーセントで示す検査です。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、
ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、
アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、
グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、
ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードより、
9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖に対しては、
グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
言い換えれば、HbA1cという検査は、食後高血糖を見逃している可能性が極めて高く
欠陥のある検査と言えます。
例えば糖質を普通に食べている糖尿人で、HbA1cが6.5%とか、一見コントロール良好であっても、
実際には食後高血糖が毎食生じていて合併症予防は困難なことも考えられます。
このことが、
日本で糖尿病合併症(透析16000人以上、切断3000人以上、失明3000人以上)が
一向に減らないことの理由の一つと考えられます。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、
グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、
両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、
HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、
JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、
先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、
GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、
それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、
合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
江部康二の検査データ(2019年4月)
HbA1c(NGSP):5.7%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.3%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.5%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データ(2019年4月)だと、
JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.37:1とかなり低いです。
これは食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
一方、
ある50代男性糖尿人Aさんの検査では
HbA1c(NGSP):5.8%
HbA1c(JDS):5.4%
グリコアルブミン(GA):18.0%
でした。
江部康二とAさんと、HbA1cは全く同じです。
一方AさんのGAも20%未満と、コントロール良好ではあるのですが、
私のデータと比べるとかなり高値です。
Aさんの、GA/HbA1c比は、3.33:1で、私よりかなり高いです。
つまりAさんは、私に比べると食後高血糖が一定あったこととなります。
よくよくAさんに聞いてみると
「麺類が好きで時々食べていました」
ということでした。
麺類を止めて貰ったら、GAも16.0%をきるようになりました。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、
GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、
かわりばんこに調べるとか、基本HbA1cで、時々GAとかいろいろ
工夫して検査すればいいと思います。
HbA1cより、有用なので、グリコアルブミン検査は今後、
もっと普及して欲しいと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
☆☆☆
なお献血協力者へのサービスとしての生化学検査で、
ALT(GPT)、γ-GTP、総蛋白、アルブミン、アルブミン/グロブリン比、コレステロール、グリコアルブミン
の各検査値が協力者に提供されています。
糖尿病の検査としてHbA1cとGAがあります。
今回はHbA1cとGAの統一性と信頼度と意義について考察してみます。
「HbA1c」
HbA1cの測定には大きく分けて「HPLC法」「酵素法」「免疫法」が臨床の場で使用されています。いずれの測定法も精度の高い定量検査が可能であり、世界的な標準化も進み原理間差は少なくなってきています。とは言っても、「HPLC法」「酵素法」「免疫法」を同一日、同時刻、同人物で測定した場合は少し、差が出る可能性があります。HbA1c値として、0.1~0.3%くらいの差はあると思います。
「グリコアルブミン(GA)」
旭化成ファーマ株式会社
https://www.asahi-kasei.co.jp/shindan/ga-l/ability.html
グリコアルブミンの測定は、旭化成ファーマ株式会社、一社となっています。
以前は協和キリンも測定していましたが撤退したようです。
従って、グリコアルブミンのほうが、HbA1cよりも信頼性も統一性も勝っていると思います。
さらに、
グリコアルブミン(GA)とグリコヘモグロビン(HbA1c)
に関してを比較・検討してみます。
<GAとHbA1cのそれぞれの意義>
HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため4ヵ月前から採血時まで、
一般には、過去2ヶ月の平均血糖値を反映します。
GAはアルブミンの半減期が17日であるため17日前から採血時まで、
一般には、過去2週間の平均血糖値を反映します。
高雄病院の糖尿病学校(14日間入院)では、
タイミングが許せば、
糖質制限入院時と退院時のGAを検査します。
必ず退院時GAが改善しますので患者さんに説明しやすいです。
HbA1cは2週間では、血糖コントロール良好でも変化はありません。
従って、退院時のHbA1cは検査しません。
<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の反映度合い>
HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血糖が、血液中のヘモグロビンとアルブミンと、
それぞれ結合して変化したものの割合をパーセントで示す検査です。
血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、
ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、
アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。
そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、
グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。
アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、
ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードより、
9倍くらい速いと推測されています。
そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖に対しては、
グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。
ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。
これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。
言い換えれば、HbA1cという検査は、食後高血糖を見逃している可能性が極めて高く
欠陥のある検査と言えます。
例えば糖質を普通に食べている糖尿人で、HbA1cが6.5%とか、一見コントロール良好であっても、
実際には食後高血糖が毎食生じていて合併症予防は困難なことも考えられます。
このことが、
日本で糖尿病合併症(透析16000人以上、切断3000人以上、失明3000人以上)が
一向に減らないことの理由の一つと考えられます。
<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>
食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、
グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。
血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、
両者の比は、およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)
つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。
この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、
HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。
従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、
JDS値のHbA1cにするとよいです。
*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値
食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、
先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、
GA/HbA1c比が大きくなります。
食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、
それ以上に差が開くこともあるようです。
この差が大きいほど、
合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。
<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
江部康二の検査データ(2019年4月)
HbA1c(NGSP):5.7%(基準値4.6~6.2%)
HbA1c(JDS):5.3%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.5%(基準値11.8~16.0%)
上記、江部康二の検査データ(2019年4月)だと、
JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.37:1とかなり低いです。
これは食後高血糖が極めて少ないことを示しています。
一方、
ある50代男性糖尿人Aさんの検査では
HbA1c(NGSP):5.8%
HbA1c(JDS):5.4%
グリコアルブミン(GA):18.0%
でした。
江部康二とAさんと、HbA1cは全く同じです。
一方AさんのGAも20%未満と、コントロール良好ではあるのですが、
私のデータと比べるとかなり高値です。
Aさんの、GA/HbA1c比は、3.33:1で、私よりかなり高いです。
つまりAさんは、私に比べると食後高血糖が一定あったこととなります。
よくよくAさんに聞いてみると
「麺類が好きで時々食べていました」
ということでした。
麺類を止めて貰ったら、GAも16.0%をきるようになりました。
すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、
GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。
GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、
かわりばんこに調べるとか、基本HbA1cで、時々GAとかいろいろ
工夫して検査すればいいと思います。
HbA1cより、有用なので、グリコアルブミン検査は今後、
もっと普及して欲しいと思います。
それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。
江部康二
☆☆☆
なお献血協力者へのサービスとしての生化学検査で、
ALT(GPT)、γ-GTP、総蛋白、アルブミン、アルブミン/グロブリン比、コレステロール、グリコアルブミン
の各検査値が協力者に提供されています。
2023年05月15日 (月)
【23/05/14 佐々木カルフ
Google Bard(AI)に2型糖尿病患者の適切な糖質量を質問してみました
江部先生
いつもお世話になっております。
昨今世間を賑わせているAIに、表題の通り質問を投げてみたところ、
なかなかな回答をもらえたのでお知らせいたします。
質問:2型糖尿病患者の糖質摂取量で適切と思われる量はいくら?
GoogleBardの回答
-----ここから
米国糖尿病協会によると、2型糖尿病患者の糖質摂取量は1日あたり45〜60グラムに抑えることが推奨されています。これは、全体的なカロリーの15〜20%に相当します。ただし、最適な糖質摂取量は個人によって異なるため、糖尿病患者は医師または登録栄養士に相談して、自分に合った食事計画を立てることが重要です。
糖質は体にとって重要な栄養素ですが、血糖値の上昇につながる可能性があるため、2型糖尿病患者は糖質を制限することが重要です。糖質を制限することで、血糖値をよりよく管理し、合併症のリスクを減らすことができます。
2型糖尿病患者は、糖質摂取量を制限するためにできることがいくつかあります。
果物や野菜などの複合炭水化物を食べます。複合炭水化物は、血糖値をゆっくりと上昇させるのに役立つ食物繊維が豊富です。
加工食品、甘い飲み物、砂糖を制限します。これらの食品は単純炭水化物が豊富で、血糖値を急上昇させる可能性があります。
定期的に運動する。運動は血糖値を調節するのに役立ちます。
十分な水を飲む。水は血糖値を調節するのに役立ち、脱水症状を防ぐのに役立ちます。
糖質摂取量を制限することに不安がある場合は、医師または登録栄養士に相談して、あなたに合った食事計画を立てることが重要です。
-----ここまで
流石に米国のAIだけありますね。
今後はAIも糖尿病のみならず、医療の手助けをしてくれるのではないでしょうか。】
こんにちは。
佐々木カルフさんから、興味深いコメントを頂きました。
ありがとうございます。
Google Bard(AI)、なかなかの回答ですね。
私も、ほとんど賛成です。
【果物や野菜などの複合炭水化物を食べます。
複合炭水化物は、血糖値をゆっくりと上昇させるのに役立つ食物繊維が豊富です。
加工食品、甘い飲み物、砂糖を制限します。
これらの食品は単純炭水化物が豊富で、血糖値を急上昇させる可能性があります。】
しかし、Google Bard(AI)君、この記載はイマイチですね。
これは、一般論的にはこう言われていますが、
正常人には当てはまっても、糖尿人には当てはまりません。
例えば、糖尿人の江部康二が
炊いた胚芽米を一人前食べたら、食後血糖値のピークは1時間で240mg/dlくらいで
炊いた玄米を一人前食べたら、食後血糖値のピークは1時間で220mg/dlくらいです。
確かに複合炭水化物である玄米のほうが、胚芽米より血糖値の上昇が少ないです。
しかし、所詮は食後血糖値が200mg/dlを越えているので
血管内皮に与えるダメージは、ほとんど変わりません。
すなわち、糖尿人においては、複合炭水化物も単純炭水化物と同様に
食後高血糖を生じ、活性酸素を発生させ、酸化ストレスとなり、
合併症のリスクとなるので、危険な食物なのです。
また、現代の果物は、大きさが大きくなり糖度が高くなり、
狩猟・採集時代のご先祖が食べていたものとは、似て非なる物と言えます。
例えば、『野いちご』と『あまおう』を比較すればよくわかりますね。
「現代の果物は、糖尿人には毒である」 といっても過言ではありません。
☆☆☆
以下は、米国糖尿病学会ガイドライン2023年版の
食事療法に関する記載の要約です。
参考にして頂ければ、幸いです。
米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2023年版。
2023年新春、米国糖尿病学会(ADA)はガイドライン2023年版を発表しました。
食事療法に関しては、
食事療法に関するADAのコンセンサスレポート(2019年4月)が
今回も引用されており、推奨内容は2020年ガイドライン以降概して変わっていません。
Standards of Medical Care in Diabetes-2023
STANDARDS OF CARE| DECEMBER 12 2023. Prevention or Delay of Type 2 Diabetes and Associated Comorbidities: Standards of Care in Diabetes—2023Diabetes Care 2023;46(Supplement_1):S41–S48
ガイドラインの中で、食事療法に関しては以下の記載があります。
食事療法 食事療法に関するADAのコンセンサスレポートが今回も引用されており、
推奨内容は概して変わっていません。
最適な栄養素のバランスについてのエビデンスはないため、
栄養素バランス自体よりも健康的な食事パターンが推奨されています。
具体的な食事パターン例として、
地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などが挙げられており、
特に炭水化物については質について強調されています。
低炭水化物の食事パターン、特に超低炭水化物(VLC)の食事パターンは、
A1Cと抗高血糖薬の必要性を減らすことが示されています。
これらの食事パターンは、2型糖尿病で最も研究されている食事パターンの1つです。
一方、低炭水化物食は短期間の血糖コントロールに有効ですが、
1-2年後にはその効果は消失してしまうことが繰り返されています。
また、低炭水化物食の不適例として妊婦、授乳婦、小児、摂食障害者、腎疾患者が挙げられており、SGLT2阻害薬服用者にはケトアシドーシスのリスクが潜在するために慎重に適用すべきことも記載されています。
肥満患者では5%の体重低下が推奨されており、体重減少のためには前述のいずれの食事パターンに優劣はなく、運動療法に加えて個別化食事パターン(栄養士の介入推奨)で摂取エネルギー低下(一般に、500-700kcal/日低下)を達成するよう推奨されています。
①最適な栄養素のバランスについてのエビデンスはない。
いくつかの健康的な食事パターンを推奨。
糖尿病患者に最適な栄養素のバランス(PFC比率)についてのエビデンスはないことを明言しています。
②具体的な食事パターン例として、地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などが挙げられている。
最適な唯一の食事療法はないので、地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などを推奨して、糖尿病患者が選ぶように指導しています。
③低炭水化物食は短期間の血糖コントロールに有効であるが、
1-2年後にはその効果は消失してしまうことが繰り返されている。
確かに、過去の研究論文によると、効果が1-2年で消失するという報告があります。
しかし、高雄病院と江部診療所での 外来通院糖尿病患者さんは、
累計では4000人以上で、 糖質制限食をキッチリ継続している患者さんは、
血糖コントロール良好を年余に渡って維持しています。
例えば、江部康二は2002年から2023年まで、スーパー糖質制限食を21年間、
継続していて HbA1cは5.6~5.8%で保っています。
④低炭水化物食の不適例として妊婦、授乳婦、小児、摂食障害者、腎疾患者が挙げられている。
高雄病院の糖質制限食は、妊婦・授乳婦にも推奨しています。
宗田先生と永井先生のご研究により、糖尿病妊娠・妊娠糖尿病においても
糖質制限食で、インスリンなしで血糖コントロール良好を保つことがほとんどです。
人類は700万年間、穀物は食べていないので小児も糖質制限食摂取して大丈夫です。
学習塾・三島塾の三島学塾長の、小児と糖質制限食のご報告もあります。
摂食障害は私には経験がないのでよくわかりませんが、
ブログのコメントでは 糖質制限食で改善した方々の報告がありました。
しかし摂食障害に関しては個人差があると思います。
腎疾患ですが、糖尿病腎症なら、毎月クレアチニン検査などをしながら
糖質制限食を実践することが多いです。
IgA腎症は、糖質制限食の効果が期待できないので推奨しません。
⑤SGLT2阻害薬服用者にはケトアシドーシスのリスクが潜在するために慎重に適用すべきことも記載されている。
⑥肥満患者では5%の体重低下が推奨されている。
⑦体重減少のためには前述のいずれの食事パターンに優劣はなく、運動療法に加えて個別化食事パターン(栄養士の介入推奨)で 摂取エネルギー低下(一般に、500-700kcal/日低下)を達成するよう推奨されている。
江部康二
Google Bard(AI)に2型糖尿病患者の適切な糖質量を質問してみました
江部先生
いつもお世話になっております。
昨今世間を賑わせているAIに、表題の通り質問を投げてみたところ、
なかなかな回答をもらえたのでお知らせいたします。
質問:2型糖尿病患者の糖質摂取量で適切と思われる量はいくら?
GoogleBardの回答
-----ここから
米国糖尿病協会によると、2型糖尿病患者の糖質摂取量は1日あたり45〜60グラムに抑えることが推奨されています。これは、全体的なカロリーの15〜20%に相当します。ただし、最適な糖質摂取量は個人によって異なるため、糖尿病患者は医師または登録栄養士に相談して、自分に合った食事計画を立てることが重要です。
糖質は体にとって重要な栄養素ですが、血糖値の上昇につながる可能性があるため、2型糖尿病患者は糖質を制限することが重要です。糖質を制限することで、血糖値をよりよく管理し、合併症のリスクを減らすことができます。
2型糖尿病患者は、糖質摂取量を制限するためにできることがいくつかあります。
果物や野菜などの複合炭水化物を食べます。複合炭水化物は、血糖値をゆっくりと上昇させるのに役立つ食物繊維が豊富です。
加工食品、甘い飲み物、砂糖を制限します。これらの食品は単純炭水化物が豊富で、血糖値を急上昇させる可能性があります。
定期的に運動する。運動は血糖値を調節するのに役立ちます。
十分な水を飲む。水は血糖値を調節するのに役立ち、脱水症状を防ぐのに役立ちます。
糖質摂取量を制限することに不安がある場合は、医師または登録栄養士に相談して、あなたに合った食事計画を立てることが重要です。
-----ここまで
流石に米国のAIだけありますね。
今後はAIも糖尿病のみならず、医療の手助けをしてくれるのではないでしょうか。】
こんにちは。
佐々木カルフさんから、興味深いコメントを頂きました。
ありがとうございます。
Google Bard(AI)、なかなかの回答ですね。
私も、ほとんど賛成です。
【果物や野菜などの複合炭水化物を食べます。
複合炭水化物は、血糖値をゆっくりと上昇させるのに役立つ食物繊維が豊富です。
加工食品、甘い飲み物、砂糖を制限します。
これらの食品は単純炭水化物が豊富で、血糖値を急上昇させる可能性があります。】
しかし、Google Bard(AI)君、この記載はイマイチですね。
これは、一般論的にはこう言われていますが、
正常人には当てはまっても、糖尿人には当てはまりません。
例えば、糖尿人の江部康二が
炊いた胚芽米を一人前食べたら、食後血糖値のピークは1時間で240mg/dlくらいで
炊いた玄米を一人前食べたら、食後血糖値のピークは1時間で220mg/dlくらいです。
確かに複合炭水化物である玄米のほうが、胚芽米より血糖値の上昇が少ないです。
しかし、所詮は食後血糖値が200mg/dlを越えているので
血管内皮に与えるダメージは、ほとんど変わりません。
すなわち、糖尿人においては、複合炭水化物も単純炭水化物と同様に
食後高血糖を生じ、活性酸素を発生させ、酸化ストレスとなり、
合併症のリスクとなるので、危険な食物なのです。
また、現代の果物は、大きさが大きくなり糖度が高くなり、
狩猟・採集時代のご先祖が食べていたものとは、似て非なる物と言えます。
例えば、『野いちご』と『あまおう』を比較すればよくわかりますね。
「現代の果物は、糖尿人には毒である」 といっても過言ではありません。
☆☆☆
以下は、米国糖尿病学会ガイドライン2023年版の
食事療法に関する記載の要約です。
参考にして頂ければ、幸いです。
米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2023年版。
2023年新春、米国糖尿病学会(ADA)はガイドライン2023年版を発表しました。
食事療法に関しては、
食事療法に関するADAのコンセンサスレポート(2019年4月)が
今回も引用されており、推奨内容は2020年ガイドライン以降概して変わっていません。
Standards of Medical Care in Diabetes-2023
STANDARDS OF CARE| DECEMBER 12 2023. Prevention or Delay of Type 2 Diabetes and Associated Comorbidities: Standards of Care in Diabetes—2023Diabetes Care 2023;46(Supplement_1):S41–S48
ガイドラインの中で、食事療法に関しては以下の記載があります。
食事療法 食事療法に関するADAのコンセンサスレポートが今回も引用されており、
推奨内容は概して変わっていません。
最適な栄養素のバランスについてのエビデンスはないため、
栄養素バランス自体よりも健康的な食事パターンが推奨されています。
具体的な食事パターン例として、
地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などが挙げられており、
特に炭水化物については質について強調されています。
低炭水化物の食事パターン、特に超低炭水化物(VLC)の食事パターンは、
A1Cと抗高血糖薬の必要性を減らすことが示されています。
これらの食事パターンは、2型糖尿病で最も研究されている食事パターンの1つです。
一方、低炭水化物食は短期間の血糖コントロールに有効ですが、
1-2年後にはその効果は消失してしまうことが繰り返されています。
また、低炭水化物食の不適例として妊婦、授乳婦、小児、摂食障害者、腎疾患者が挙げられており、SGLT2阻害薬服用者にはケトアシドーシスのリスクが潜在するために慎重に適用すべきことも記載されています。
肥満患者では5%の体重低下が推奨されており、体重減少のためには前述のいずれの食事パターンに優劣はなく、運動療法に加えて個別化食事パターン(栄養士の介入推奨)で摂取エネルギー低下(一般に、500-700kcal/日低下)を達成するよう推奨されています。
①最適な栄養素のバランスについてのエビデンスはない。
いくつかの健康的な食事パターンを推奨。
糖尿病患者に最適な栄養素のバランス(PFC比率)についてのエビデンスはないことを明言しています。
②具体的な食事パターン例として、地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などが挙げられている。
最適な唯一の食事療法はないので、地中海式食事、低脂肪食、低炭水化物食などを推奨して、糖尿病患者が選ぶように指導しています。
③低炭水化物食は短期間の血糖コントロールに有効であるが、
1-2年後にはその効果は消失してしまうことが繰り返されている。
確かに、過去の研究論文によると、効果が1-2年で消失するという報告があります。
しかし、高雄病院と江部診療所での 外来通院糖尿病患者さんは、
累計では4000人以上で、 糖質制限食をキッチリ継続している患者さんは、
血糖コントロール良好を年余に渡って維持しています。
例えば、江部康二は2002年から2023年まで、スーパー糖質制限食を21年間、
継続していて HbA1cは5.6~5.8%で保っています。
④低炭水化物食の不適例として妊婦、授乳婦、小児、摂食障害者、腎疾患者が挙げられている。
高雄病院の糖質制限食は、妊婦・授乳婦にも推奨しています。
宗田先生と永井先生のご研究により、糖尿病妊娠・妊娠糖尿病においても
糖質制限食で、インスリンなしで血糖コントロール良好を保つことがほとんどです。
人類は700万年間、穀物は食べていないので小児も糖質制限食摂取して大丈夫です。
学習塾・三島塾の三島学塾長の、小児と糖質制限食のご報告もあります。
摂食障害は私には経験がないのでよくわかりませんが、
ブログのコメントでは 糖質制限食で改善した方々の報告がありました。
しかし摂食障害に関しては個人差があると思います。
腎疾患ですが、糖尿病腎症なら、毎月クレアチニン検査などをしながら
糖質制限食を実践することが多いです。
IgA腎症は、糖質制限食の効果が期待できないので推奨しません。
⑤SGLT2阻害薬服用者にはケトアシドーシスのリスクが潜在するために慎重に適用すべきことも記載されている。
⑥肥満患者では5%の体重低下が推奨されている。
⑦体重減少のためには前述のいずれの食事パターンに優劣はなく、運動療法に加えて個別化食事パターン(栄養士の介入推奨)で 摂取エネルギー低下(一般に、500-700kcal/日低下)を達成するよう推奨されている。
江部康二
2023年05月13日 (土)
【23/05/10 ぺーすけ
最近、釜石豊秋氏の「糖質ゼロ健康法」という本を読んだところ、
江部先生の話も出てきて、スーパー糖質制限では、
追加インスリンが出るので1日の糖質を5グラム以下にしないといけないと書かれていました。
この件に関しては、どう思われますか?】
こんにちは。
ぺーすけさんから、 釜石豊秋先生の「糖質ゼロ健康法」とスーパー糖質制限食について、コメント・質問を頂きました。
丁度いいので、
『日本で実践されている各糖質制限食のスタンスと役割。』
について、考察してみます。
1999年に高雄病院で、糖尿病入院患者さんに
糖質制限給食の供給が開始されました。
第二次大戦以降では、日本で初めてのことです。
その経験をもとに、2005年、やはり日本で初めての糖質制限食の本、
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新報社)を上梓しました。
2006年、荒木裕医師が、「断糖宣言!」(エディットハウス)、
2007年、釜池豊秋医師が、
「医者に頼らない! 糖尿病の新常識・糖質ゼロの食事術」(実業之日本社)
を刊行されましたが、ここまでが、糖質制限食草創期の本と言えると思います。
その後、糖質制限食が徐々に広がっていきましたが、
2010年代になると、様々な医師が「糖質制限食」関連の本を
数多く出版するようになりました。
糖質制限食の日本における発展という意味では、望ましいことと言えますが、
各医師の推奨する「糖質制限食」のスタンスが一定異なっていることもあり、
糖質制限食を実践している方々に少々とまどいが見受けられるようです。
今回は、そこらあたりを整理してみたいと思います。
まず、糖質制限食は、美味しく楽しく末長く続けることが大切です。
毎日、朝昼夕と糖質(主食)を食べている場合に比べれば、
1/週とか1/月とかの糖質摂取なら、おおいにましです。
糖尿人であれば、そういうとき、可能なら、グリニド系薬かα-GI薬、
或いはその両者を食直前30秒に内服して
食後高血糖をできるだけ抑えるようにすればいいですね。
私は多数の糖尿人を診察していますが、きっちりスーパー糖質制限食を実践されて、
血液検査データ全て正常で、薬なし、合併症なしの方も、おられます。
私自身も2002年以来、焼酎飲んで、肉類や魚貝類をいろいろ食べて、
卵にチーズに豆腐に野菜・海藻・茸を食べて、
糖質制限ピザ、糖質制限ケーキ、糖質制限チョコ・・・を食べて、
美味しく楽しく、そしてきっちり長くスーパー糖質制限食を続けています。
勿論、内服薬なしで合併症もなしです。
私は全くつらくないので、末長く糖質制限食を続けることができると思います。
しかしながら、人はなかなか弱いものです。
「わかっちゃいるけど、やめられない」人もまた結構おられます。
私の患者さんでも、どうしても糖質がやめられない人もおられます。
私は糖質制限食の先達の医師として、糖尿病患者さんに、
最良の糖尿病食事療法である糖質制限食を説明して、
糖尿病のコントロールの仕方を指導するのがお仕事です。
糖尿病合併症の話もして、
それを防ぐことができるのは糖質制限食だけであることも説明します。
それを患者さんが受け止めて理解してどう実践するかは、
患者さん自身の仕事であり、私の仕事ではありません。
ですから、私は決して押しつけることはありません。
高雄病院方式の糖質制限食には3パターンがあります。
もちろん
1)スーパー糖質制限食(3食主食なし)
2)スタンダード糖質制限食(2食主食なし)
3)プチ糖質制限食(1食主食なし)
のなかで、
1)が一番効果があることは明らかですのでそれを薦めます。
しかし患者さんによっては、1)ができない人もいます。
そのようなときは、2)でも3)でもいいです。
スーパー糖質制限食では、1回の食事の糖質量は20g以下が目安です。
間食は、1日に1~2回で、1回の糖質量は5g以下が目安です。
糖質制限食は、やらないよりやった方が、例えどのタイプであれ、
糖尿病学会推奨のカロリー制限食(高糖質食)よりは、はるかにましなのです。
私は、ぬるいかもしれませんが、そういうスタンスの医師です。
皆さんが、糖質セイゲニストで優秀な患者さんだったら
糖質制限な医師はとても楽なのですが、現実はそうはいきません。
また、話のしやすい対等感覚の医師もいれば、
残念ながら上から目線の相談しにくい医師もいるのが現実です。
私に関しては、対等感覚の医師を目指しているので、
このブログへのコメント・質問も糖質制限食に関することなら、
初歩的なことも含めて大丈夫、OKです。
反復して似たような質問があっても、
またそれがブログ読者の皆さんの復習になるし新たな勉強にもなります。
糖質制限食に関する知識をインターネットで世界中で共有できて・・・。
それが、私自身の貢献感にもなりますので・・・
さて、日本で実践されている糖質制限食には
A)高雄病院のスーパー糖質制限食(1回の食事の糖質量20g以下)
B)山田悟先生の緩い糖質制限食(1回の食事の糖質量30~40g)
最近は(1回の食事の糖質量20~40gで3食食べ、それとは別に間食を1日あたり10g)
C)釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)
α)荒木裕先生の断糖食
β)渡辺信幸先生のMEC食
などがあり、1回の糖質摂取量設定に違いがあります。
それでは、各糖質制限食のスタンスはどう違うのでしょうか?
まず、A)B)C)について検討してみます。
1)継続し易さと普及に関する配慮
継続し易さ、普及という面からは、普通に考えてB)が一番楽です。
A)はそれに、次いで楽ですし、当初から「スーパー」「スタンダード」「プチ」といったラインナップが設定されていて、
最近は「緩やかな」という選択肢もあるので、
継続し易さと普及ということを重視しているわけです。
C)は、ベストと思う食事療法をストイックに実践するという求道者のスタンスであり、
継続し易さや普及ということは、優先順位としては全く考慮されていません。
つまりC)はやりたい人やれる人が実践すればよいのであって、
やりやすくするというスタンスは皆無です。
従って、A)B)の立場の糖質セイゲニストとC)の立場の求道者とは、
いくら話し合っても折り合いがつくことは不可能ですので、
私も無駄な努力をするつもりはありません。
2)食後高血糖改善効果
食後高血糖改善効果はC)が一番高いです。
A)がその次でB)はかなり劣ります。
C)なら、食後高血糖はほとんどありません。
A)は、臨床的に合併症予防ができるレベル、
食後1時間血糖値180mg/dl未満、食後2時間血糖値140mg/dl未満達成を
目指していて、ほとんどの場合それが可能です。
B)は食後1時間血糖値180mg/dl未満、
食後2時間血糖値140mg/dl未満を達成することは、
困難な糖尿人が多いと思いますが、従来の糖尿病食(高糖質食)よりはましです。
3)追加分泌インスリン
C)は耐糖能正常型の人でも、インスリン追加分泌はごくごく少量です。
A)は耐糖能正常型の人の場合でもインスリン追加分泌は2~3倍レベルですみます。
B)は耐糖能正常型なら、追加分泌インスリンは10倍~20倍レベルでます。
インスリンは人体に絶対必要であり、基礎分泌インスリンがなければヒトは死にます。
しかし、インスリンには発ガンリスクやアルツハイマー病のリスクがあるので、
少量ですむにこしたことはないのです。
従って、B)の場合は、野放しの高糖質食に比べればましですが、
インスリン過剰のリスクがあるていどあることになります。
A)の場合は、人類700万年間の狩猟・採集時代に、
野生の果物、ナッツ類、根茎類を食べたレベルと同程度の追加分泌インスリンなので
許容範囲と思います。
4)問題点
B)は、インスリン分泌が多いこと以外にも、
食後高血糖と平均血糖変動幅増大という酸化ストレスリスクに関しては、
効果が弱いので問題と言えます。
C)は、始めにくいこと、継続しにくいこと、普及しにくいことが問題点です。
5)考察
A)の場合、C)よりは治療効果は若干劣りますが、
殆どの糖尿人において、合併症予防という観点からは、問題ないと思われます。
体重減少効果も同様であり、「継続し易さ」「普及」「治療効果」において
バランスのとれた食事療法と言えます。
B)は、「継続し易さ」「普及」は優れていますが、肝腎の治療効果が劣ることと、
食後高血糖と平均血糖変動幅増大という問題点を抱えています。
C)は、始めにくいこと・継続しにくいこと・普及しにくいことという弱点がありますが、
治療効果は抜群ですので、ビタミンCの摂取(野菜から摂取)に留意して、
個人的にやれる人はやればいいと思います。
結論として、自画自賛になりますが、
高雄病院のスーパー糖質制限食が一番バランスがいいのかなと思います。(^^)
一方、山田悟先生の緩い糖質制限食や釜池豊秋先生の糖質ゼロ食も、
役割分担という視点に立てば、対立するというよりも、
一人一人の嗜好やニーズに応じて、相補的なものと思います。
A)B)C)の3者ともに、
日本糖尿病学会推奨の従来の糖尿病食(高糖質食)に比べれば
治療効果ははるかに高いのですから。
6) α)とβ)について
α)の荒木式は、ほぼスーパー糖質制限食に近いと思います。
ただ、ビールに関して、麦芽とホップだけの本物のビールは
呑んでもよいとされていますが、糖質含有量は、
米・コーン・スターチが含まれている普通のビールと同じだけあるので、
勿論NG食品です。
β)のMEC食も、基本的にはスーパー糖質制限食に近いと思います。
一日に摂るべき食品はM(お肉)・E(卵)・C(チーズ)の三点で、
これらをしっかり食べて、
その上でさらに食べたいと思ったら他の食品(糖質を含む)も
適度にOKということです。
あとは、一口、30回は噛んで食べようということです。
ビタミンCと食物繊維の摂取に注意すれば、MEC食もOKと思います。
ただ糖質を多く摂取すれば当然食後高血糖となるので、注意が必要です。
江部康二
最近、釜石豊秋氏の「糖質ゼロ健康法」という本を読んだところ、
江部先生の話も出てきて、スーパー糖質制限では、
追加インスリンが出るので1日の糖質を5グラム以下にしないといけないと書かれていました。
この件に関しては、どう思われますか?】
こんにちは。
ぺーすけさんから、 釜石豊秋先生の「糖質ゼロ健康法」とスーパー糖質制限食について、コメント・質問を頂きました。
丁度いいので、
『日本で実践されている各糖質制限食のスタンスと役割。』
について、考察してみます。
1999年に高雄病院で、糖尿病入院患者さんに
糖質制限給食の供給が開始されました。
第二次大戦以降では、日本で初めてのことです。
その経験をもとに、2005年、やはり日本で初めての糖質制限食の本、
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新報社)を上梓しました。
2006年、荒木裕医師が、「断糖宣言!」(エディットハウス)、
2007年、釜池豊秋医師が、
「医者に頼らない! 糖尿病の新常識・糖質ゼロの食事術」(実業之日本社)
を刊行されましたが、ここまでが、糖質制限食草創期の本と言えると思います。
その後、糖質制限食が徐々に広がっていきましたが、
2010年代になると、様々な医師が「糖質制限食」関連の本を
数多く出版するようになりました。
糖質制限食の日本における発展という意味では、望ましいことと言えますが、
各医師の推奨する「糖質制限食」のスタンスが一定異なっていることもあり、
糖質制限食を実践している方々に少々とまどいが見受けられるようです。
今回は、そこらあたりを整理してみたいと思います。
まず、糖質制限食は、美味しく楽しく末長く続けることが大切です。
毎日、朝昼夕と糖質(主食)を食べている場合に比べれば、
1/週とか1/月とかの糖質摂取なら、おおいにましです。
糖尿人であれば、そういうとき、可能なら、グリニド系薬かα-GI薬、
或いはその両者を食直前30秒に内服して
食後高血糖をできるだけ抑えるようにすればいいですね。
私は多数の糖尿人を診察していますが、きっちりスーパー糖質制限食を実践されて、
血液検査データ全て正常で、薬なし、合併症なしの方も、おられます。
私自身も2002年以来、焼酎飲んで、肉類や魚貝類をいろいろ食べて、
卵にチーズに豆腐に野菜・海藻・茸を食べて、
糖質制限ピザ、糖質制限ケーキ、糖質制限チョコ・・・を食べて、
美味しく楽しく、そしてきっちり長くスーパー糖質制限食を続けています。
勿論、内服薬なしで合併症もなしです。
私は全くつらくないので、末長く糖質制限食を続けることができると思います。
しかしながら、人はなかなか弱いものです。
「わかっちゃいるけど、やめられない」人もまた結構おられます。
私の患者さんでも、どうしても糖質がやめられない人もおられます。
私は糖質制限食の先達の医師として、糖尿病患者さんに、
最良の糖尿病食事療法である糖質制限食を説明して、
糖尿病のコントロールの仕方を指導するのがお仕事です。
糖尿病合併症の話もして、
それを防ぐことができるのは糖質制限食だけであることも説明します。
それを患者さんが受け止めて理解してどう実践するかは、
患者さん自身の仕事であり、私の仕事ではありません。
ですから、私は決して押しつけることはありません。
高雄病院方式の糖質制限食には3パターンがあります。
もちろん
1)スーパー糖質制限食(3食主食なし)
2)スタンダード糖質制限食(2食主食なし)
3)プチ糖質制限食(1食主食なし)
のなかで、
1)が一番効果があることは明らかですのでそれを薦めます。
しかし患者さんによっては、1)ができない人もいます。
そのようなときは、2)でも3)でもいいです。
スーパー糖質制限食では、1回の食事の糖質量は20g以下が目安です。
間食は、1日に1~2回で、1回の糖質量は5g以下が目安です。
糖質制限食は、やらないよりやった方が、例えどのタイプであれ、
糖尿病学会推奨のカロリー制限食(高糖質食)よりは、はるかにましなのです。
私は、ぬるいかもしれませんが、そういうスタンスの医師です。
皆さんが、糖質セイゲニストで優秀な患者さんだったら
糖質制限な医師はとても楽なのですが、現実はそうはいきません。
また、話のしやすい対等感覚の医師もいれば、
残念ながら上から目線の相談しにくい医師もいるのが現実です。
私に関しては、対等感覚の医師を目指しているので、
このブログへのコメント・質問も糖質制限食に関することなら、
初歩的なことも含めて大丈夫、OKです。
反復して似たような質問があっても、
またそれがブログ読者の皆さんの復習になるし新たな勉強にもなります。
糖質制限食に関する知識をインターネットで世界中で共有できて・・・。
それが、私自身の貢献感にもなりますので・・・
さて、日本で実践されている糖質制限食には
A)高雄病院のスーパー糖質制限食(1回の食事の糖質量20g以下)
B)山田悟先生の緩い糖質制限食(1回の食事の糖質量30~40g)
最近は(1回の食事の糖質量20~40gで3食食べ、それとは別に間食を1日あたり10g)
C)釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)
α)荒木裕先生の断糖食
β)渡辺信幸先生のMEC食
などがあり、1回の糖質摂取量設定に違いがあります。
それでは、各糖質制限食のスタンスはどう違うのでしょうか?
まず、A)B)C)について検討してみます。
1)継続し易さと普及に関する配慮
継続し易さ、普及という面からは、普通に考えてB)が一番楽です。
A)はそれに、次いで楽ですし、当初から「スーパー」「スタンダード」「プチ」といったラインナップが設定されていて、
最近は「緩やかな」という選択肢もあるので、
継続し易さと普及ということを重視しているわけです。
C)は、ベストと思う食事療法をストイックに実践するという求道者のスタンスであり、
継続し易さや普及ということは、優先順位としては全く考慮されていません。
つまりC)はやりたい人やれる人が実践すればよいのであって、
やりやすくするというスタンスは皆無です。
従って、A)B)の立場の糖質セイゲニストとC)の立場の求道者とは、
いくら話し合っても折り合いがつくことは不可能ですので、
私も無駄な努力をするつもりはありません。
2)食後高血糖改善効果
食後高血糖改善効果はC)が一番高いです。
A)がその次でB)はかなり劣ります。
C)なら、食後高血糖はほとんどありません。
A)は、臨床的に合併症予防ができるレベル、
食後1時間血糖値180mg/dl未満、食後2時間血糖値140mg/dl未満達成を
目指していて、ほとんどの場合それが可能です。
B)は食後1時間血糖値180mg/dl未満、
食後2時間血糖値140mg/dl未満を達成することは、
困難な糖尿人が多いと思いますが、従来の糖尿病食(高糖質食)よりはましです。
3)追加分泌インスリン
C)は耐糖能正常型の人でも、インスリン追加分泌はごくごく少量です。
A)は耐糖能正常型の人の場合でもインスリン追加分泌は2~3倍レベルですみます。
B)は耐糖能正常型なら、追加分泌インスリンは10倍~20倍レベルでます。
インスリンは人体に絶対必要であり、基礎分泌インスリンがなければヒトは死にます。
しかし、インスリンには発ガンリスクやアルツハイマー病のリスクがあるので、
少量ですむにこしたことはないのです。
従って、B)の場合は、野放しの高糖質食に比べればましですが、
インスリン過剰のリスクがあるていどあることになります。
A)の場合は、人類700万年間の狩猟・採集時代に、
野生の果物、ナッツ類、根茎類を食べたレベルと同程度の追加分泌インスリンなので
許容範囲と思います。
4)問題点
B)は、インスリン分泌が多いこと以外にも、
食後高血糖と平均血糖変動幅増大という酸化ストレスリスクに関しては、
効果が弱いので問題と言えます。
C)は、始めにくいこと、継続しにくいこと、普及しにくいことが問題点です。
5)考察
A)の場合、C)よりは治療効果は若干劣りますが、
殆どの糖尿人において、合併症予防という観点からは、問題ないと思われます。
体重減少効果も同様であり、「継続し易さ」「普及」「治療効果」において
バランスのとれた食事療法と言えます。
B)は、「継続し易さ」「普及」は優れていますが、肝腎の治療効果が劣ることと、
食後高血糖と平均血糖変動幅増大という問題点を抱えています。
C)は、始めにくいこと・継続しにくいこと・普及しにくいことという弱点がありますが、
治療効果は抜群ですので、ビタミンCの摂取(野菜から摂取)に留意して、
個人的にやれる人はやればいいと思います。
結論として、自画自賛になりますが、
高雄病院のスーパー糖質制限食が一番バランスがいいのかなと思います。(^^)
一方、山田悟先生の緩い糖質制限食や釜池豊秋先生の糖質ゼロ食も、
役割分担という視点に立てば、対立するというよりも、
一人一人の嗜好やニーズに応じて、相補的なものと思います。
A)B)C)の3者ともに、
日本糖尿病学会推奨の従来の糖尿病食(高糖質食)に比べれば
治療効果ははるかに高いのですから。
6) α)とβ)について
α)の荒木式は、ほぼスーパー糖質制限食に近いと思います。
ただ、ビールに関して、麦芽とホップだけの本物のビールは
呑んでもよいとされていますが、糖質含有量は、
米・コーン・スターチが含まれている普通のビールと同じだけあるので、
勿論NG食品です。
β)のMEC食も、基本的にはスーパー糖質制限食に近いと思います。
一日に摂るべき食品はM(お肉)・E(卵)・C(チーズ)の三点で、
これらをしっかり食べて、
その上でさらに食べたいと思ったら他の食品(糖質を含む)も
適度にOKということです。
あとは、一口、30回は噛んで食べようということです。
ビタミンCと食物繊維の摂取に注意すれば、MEC食もOKと思います。
ただ糖質を多く摂取すれば当然食後高血糖となるので、注意が必要です。
江部康二
2023年05月12日 (金)
こんにちは。
2023年6月13日(火)京都で、
日本糖質制限医療推進協会主催の「低糖質スイーツ教室」を開催します。
京都でのスイーツ教室開催は、2019年の秋以来です。
講師は以前と同様で、パティシエの小寺幹成さんと管理栄養士の佐々木栄子さんです。
・小寺さんのプロフェッショナルな技を直接見て、おいしく低糖質なスイーツづくりを学べること
さらに、
・糖質制限による栄養指導のご経験豊富な佐々木さんの的確なアドバイスも得られること
が、
この教室の嬉しいところと思います。
テーマは、先日開催した東京での講習会と同じ「フィナンシェとババロア」ですが、
今回は、参加者の皆さんで実際に作ってみる「実習」も行うそうです。
私もフィナンシェとババロアをバレンタイン?プレゼントでいただき、試食しました。
食べやすく、美味しかったです。
皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
******************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室の開催をご案内申し上げます。
2023年6月13日(火)京都で、「低糖質スイーツ教室」を開催いたします。
☆低糖質スイーツ教室
おいしい低糖質洋菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
小寺パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、参加者様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
また、佐々木先生に、低糖質菓子をご家庭で作りやすくするための工夫やレッスンで学んだことを更に活用するアイデアなど、多岐に渡ってアドバイスいただきます。
血糖値が気になってお菓子を控えているという方、安心の低糖質スイーツを作りたいという方、お菓子作りは初めてという方も、是非ご参加ください。
☆今回の内容
テーマ:「フィナンシェとババロア」
マドレーヌと違って、全卵ではなく、卵白を使う金塊型の焼き菓子「フィナンシェ」。
今回は、このフィナンシェ作りをメインに催し、実習も行います。
フィナンシェを上手に作るには、「焦がしバター」がキーになります。
デモンストレーションとあわせて、この焦がしバターの作り方、材料の混ぜ方など、各工程を丁寧に説明。
その後、実際に参加者の皆様で作っていただき、簡単なようで難しいフィナンシェ作りを学んでいただきます。
試食では、少量の小麦粉を使ったものと大豆粉を使ったもの、2種のプレーンタイプと、アレンジタイプを召し上がっていただく予定です。
また、フィナンシェ作りで余った卵黄の活用法として、「ババロア」作りも、デモと試食にてご紹介します。
関西にお住まいの方をはじめ、皆さまのご参加をお待ちしております。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(京都)」
♪テーマ:「フィナンシェとババロア」
◆日時: 2023年6月13日(火) 13:00~15:45頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者(当会アドバイザー)
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
◆定員・対象: 20名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明・デモ→ 実習 → 試食 → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの:
エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
◆お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局へメールにてお申し込み下さい。
★賛助会員入会+教室参加をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「6/13京都スイーツ教室、参加希望」とご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加ご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/cooking
◆その他
・予約制です。当日参加はできません。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、6月8日(木)までにご連絡ください。
6月9日(金)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金として頂戴いたしますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
◆弊会イベント情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
2023年6月13日(火)京都で、
日本糖質制限医療推進協会主催の「低糖質スイーツ教室」を開催します。
京都でのスイーツ教室開催は、2019年の秋以来です。
講師は以前と同様で、パティシエの小寺幹成さんと管理栄養士の佐々木栄子さんです。
・小寺さんのプロフェッショナルな技を直接見て、おいしく低糖質なスイーツづくりを学べること
さらに、
・糖質制限による栄養指導のご経験豊富な佐々木さんの的確なアドバイスも得られること
が、
この教室の嬉しいところと思います。
テーマは、先日開催した東京での講習会と同じ「フィナンシェとババロア」ですが、
今回は、参加者の皆さんで実際に作ってみる「実習」も行うそうです。
私もフィナンシェとババロアをバレンタイン?プレゼントでいただき、試食しました。
食べやすく、美味しかったです。
皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
******************
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室の開催をご案内申し上げます。
2023年6月13日(火)京都で、「低糖質スイーツ教室」を開催いたします。
☆低糖質スイーツ教室
おいしい低糖質洋菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
小寺パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、参加者様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
また、佐々木先生に、低糖質菓子をご家庭で作りやすくするための工夫やレッスンで学んだことを更に活用するアイデアなど、多岐に渡ってアドバイスいただきます。
血糖値が気になってお菓子を控えているという方、安心の低糖質スイーツを作りたいという方、お菓子作りは初めてという方も、是非ご参加ください。
☆今回の内容
テーマ:「フィナンシェとババロア」
マドレーヌと違って、全卵ではなく、卵白を使う金塊型の焼き菓子「フィナンシェ」。
今回は、このフィナンシェ作りをメインに催し、実習も行います。
フィナンシェを上手に作るには、「焦がしバター」がキーになります。
デモンストレーションとあわせて、この焦がしバターの作り方、材料の混ぜ方など、各工程を丁寧に説明。
その後、実際に参加者の皆様で作っていただき、簡単なようで難しいフィナンシェ作りを学んでいただきます。
試食では、少量の小麦粉を使ったものと大豆粉を使ったもの、2種のプレーンタイプと、アレンジタイプを召し上がっていただく予定です。
また、フィナンシェ作りで余った卵黄の活用法として、「ババロア」作りも、デモと試食にてご紹介します。
関西にお住まいの方をはじめ、皆さまのご参加をお待ちしております。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(京都)」
♪テーマ:「フィナンシェとババロア」
◆日時: 2023年6月13日(火) 13:00~15:45頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者(当会アドバイザー)
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
◆定員・対象: 20名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明・デモ→ 実習 → 試食 → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの:
エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
◆お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
◆お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局へメールにてお申し込み下さい。
★賛助会員入会+教室参加をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「6/13京都スイーツ教室、参加希望」とご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加ご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/cooking
◆その他
・予約制です。当日参加はできません。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、6月8日(木)までにご連絡ください。
6月9日(金)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金として頂戴いたしますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
◆弊会イベント情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
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2023年05月11日 (木)
こんにちは。
和田さんから
「縄文人、意外と長生き。65歳以上が3割。」
という本ブログの過去記事についてコメントを頂きました。
ありがとうございます。
以前、
精神科医師Aさんからも、縄文人の寿命に関してコメントを頂きました。
ありがとうございます。
定説とは異なり、縄文人は意外に長生きだったようです。
朝日新聞デジタル2010年11月13日に、
聖マリアンナ医科大講師の長岡朋人氏の
今までの定説を覆す内容の研究結果が掲載されました。
以下の小林和正氏のような論述が、今までの定説の典型です。
「縄文時代に出土した人骨は15歳以上がほとんど、235例のデータで、
男女とも平均の余命は16歳で、31歳までにほとんどが死亡」
と、
『小林和正:出土人骨による日本縄文時代人の寿命の推定、人口問題研究、No.102,1-10,1967)』
に記載されています。
小林和正氏の時代の年齢推定は「恥骨結合面」の骨により判定されていましたが、
そもそもこの部位は、後世に残りにくいのです。
このため、長岡朋人氏は比較的残りやすく細かな年齢推定が可能な、
同じ腰骨の腸骨耳状面という部分を検討対象にしました。
その結果、新しい方法で再調査した岩手・蝦島貝塚や千葉・祇園原貝塚など9遺跡から出土した計86体の人骨は、65歳以上が32.5%を占めました。
「縄文人=早死に」のイメージのもとになった人類学者小林和正氏の1967年の論文では、65歳以上はゼロでしたので大きく異なります。
人類学者や考古学者においても、今回の長岡氏氏の研究は評価が高いようです。
一部慎重な意見もありますが、今までの定説とは異なり、
縄文人は意外に長生きだったと考えられます。
江部康二
☆☆☆
以下、朝日新聞デジタルより、要約。
【http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201011130129.html
縄文人、意外と長生き 65歳以上が3割 聖マリアンナ医科大
2010年11月13日
平均寿命が30歳前後とされ、「過酷な生活環境のため、早死にする人が多かった」と考えられてきた縄文時代の人たち。しかし、出土人骨の年齢推定に関する最新の研究で、実は65歳以上とみられる個体が全体の3割以上を占める――という結論がこのほど提示された。なぜ、これほど違う結果が出たのだろうか。
この研究を行ったのは聖マリアンナ医科大講師の長岡朋人さん(人類学・古人口学)。文部科学省の科学研究費の成果として、このほど「月刊考古学ジャーナル」の臨時増刊号で発表した。
年齢にまつわるデータがまったくない人骨について、人類学者たちは、歯の生え具合や、すり減り具合、手足の軟骨の癒合(ゆごう)の程度(くっつき具合)などを基準に年齢推定をしている。中でも、成人以上の判定でよく使われるのが「恥骨結合面」と呼ばれる部分だ。腰骨の一部で、年齢が若いと表面の凹凸が激しく、年をとるにつれ滑らかになる特徴がある。
「ただし、恥骨は残りにくい。このため今回は、比較的残りやすく細かな年齢推定が可能な、同じ腰骨の腸骨耳状面という部分を検討対象にしました」。この部分は若い時は滑らかだが、年をとると、骨棘(こつきょく)ができたり穴があいたりすることが指摘されている。
「ベイズ推定」と呼ばれる、新たな統計的手法も採用した。これまでは、たとえば20代の可能性が高い人骨の年齢を表す場合、他の年齢の可能性が残っていてもそれらを切り捨て、単に「20代」と表現してきた。
「でも、20代の可能性が7割だったとしても、あとの3割は30代や40代の可能性が残されている。それらの誤差が蓄積され続けると、集団全体で考えた際、事実と異なる結果が出る可能性が高い」
長岡さんがこう考えたのは、古人骨に基づく研究では、いずれの人類集団も30~40代で構成員の大半が死んでしまうことが指摘されているのに、古文書などの記録に残っている範囲では、このような傾向を示す集団はほとんど存在しないからだ。
「縄文人と近い暮らしをしていたと考えられるアフリカの狩猟採集民でも、乳幼児死亡率が高かった江戸時代の人々でも、50代以上でなくなった人が3割を超す。とすれば、今までの縄文人の年齢構成には疑問符がつく」
長岡さんが新しい方法で再調査した岩手・蝦島貝塚や千葉・祇園原貝塚など9遺跡から出土した計86体の人骨は、65歳以上が32.5%を占めたという。「縄文人=早死に」のイメージのもとになった人類学者小林和正さんの1967年の論文では、65歳以上はゼロだったから大きく異なる。「今までの年齢推定法は老年の人を実際より若く推定してきたのではないか」
琉球大教授の石田肇さん(形質人類学)は「長岡君の精密な調査で、どんな集団でも長命な個体が存在することが分かってきた。確率的にみても、縄文時代における65歳以上の個体が3割という割合は間違いない」と評価する。
考古学者も肯定的だ。「縄文時代は伝統的、かつ複雑な社会構造を持った社会だったことが明らかになりつつある。30代で大半の人が亡くなるのでは、技術継承などの面で支障があったはず。寿命が長かったなら、そうした問題はなくなる」と、明治大教授の阿部芳郎さん(考古学)。
国学院大名誉教授(考古学)の小林達雄さんも「若い人には創造性があるが、それらを体系づけ、安定した状態を維持していくためには、30代以下だけでは無理。50代以上の構成員も多かったのなら納得できる」と話す。
一方で、やや慎重な意見も。国立長寿医療センター研究所所長の鈴木隆雄さん(老年学・古病理学)は「興味深い説だが、完全に結論が出たわけではない。今回の腸骨耳状面を使うやり方が、従来、年齢推定の判断基準となってきた恥骨結合面などの変化と整合性があるかどうか。今後、年齢推定のやり方を総合的に検証する必要があるのではないか」と話している。(宮代栄一)】
和田さんから
「縄文人、意外と長生き。65歳以上が3割。」
という本ブログの過去記事についてコメントを頂きました。
ありがとうございます。
以前、
精神科医師Aさんからも、縄文人の寿命に関してコメントを頂きました。
ありがとうございます。
定説とは異なり、縄文人は意外に長生きだったようです。
朝日新聞デジタル2010年11月13日に、
聖マリアンナ医科大講師の長岡朋人氏の
今までの定説を覆す内容の研究結果が掲載されました。
以下の小林和正氏のような論述が、今までの定説の典型です。
「縄文時代に出土した人骨は15歳以上がほとんど、235例のデータで、
男女とも平均の余命は16歳で、31歳までにほとんどが死亡」
と、
『小林和正:出土人骨による日本縄文時代人の寿命の推定、人口問題研究、No.102,1-10,1967)』
に記載されています。
小林和正氏の時代の年齢推定は「恥骨結合面」の骨により判定されていましたが、
そもそもこの部位は、後世に残りにくいのです。
このため、長岡朋人氏は比較的残りやすく細かな年齢推定が可能な、
同じ腰骨の腸骨耳状面という部分を検討対象にしました。
その結果、新しい方法で再調査した岩手・蝦島貝塚や千葉・祇園原貝塚など9遺跡から出土した計86体の人骨は、65歳以上が32.5%を占めました。
「縄文人=早死に」のイメージのもとになった人類学者小林和正氏の1967年の論文では、65歳以上はゼロでしたので大きく異なります。
人類学者や考古学者においても、今回の長岡氏氏の研究は評価が高いようです。
一部慎重な意見もありますが、今までの定説とは異なり、
縄文人は意外に長生きだったと考えられます。
江部康二
☆☆☆
以下、朝日新聞デジタルより、要約。
【http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201011130129.html
縄文人、意外と長生き 65歳以上が3割 聖マリアンナ医科大
2010年11月13日
平均寿命が30歳前後とされ、「過酷な生活環境のため、早死にする人が多かった」と考えられてきた縄文時代の人たち。しかし、出土人骨の年齢推定に関する最新の研究で、実は65歳以上とみられる個体が全体の3割以上を占める――という結論がこのほど提示された。なぜ、これほど違う結果が出たのだろうか。
この研究を行ったのは聖マリアンナ医科大講師の長岡朋人さん(人類学・古人口学)。文部科学省の科学研究費の成果として、このほど「月刊考古学ジャーナル」の臨時増刊号で発表した。
年齢にまつわるデータがまったくない人骨について、人類学者たちは、歯の生え具合や、すり減り具合、手足の軟骨の癒合(ゆごう)の程度(くっつき具合)などを基準に年齢推定をしている。中でも、成人以上の判定でよく使われるのが「恥骨結合面」と呼ばれる部分だ。腰骨の一部で、年齢が若いと表面の凹凸が激しく、年をとるにつれ滑らかになる特徴がある。
「ただし、恥骨は残りにくい。このため今回は、比較的残りやすく細かな年齢推定が可能な、同じ腰骨の腸骨耳状面という部分を検討対象にしました」。この部分は若い時は滑らかだが、年をとると、骨棘(こつきょく)ができたり穴があいたりすることが指摘されている。
「ベイズ推定」と呼ばれる、新たな統計的手法も採用した。これまでは、たとえば20代の可能性が高い人骨の年齢を表す場合、他の年齢の可能性が残っていてもそれらを切り捨て、単に「20代」と表現してきた。
「でも、20代の可能性が7割だったとしても、あとの3割は30代や40代の可能性が残されている。それらの誤差が蓄積され続けると、集団全体で考えた際、事実と異なる結果が出る可能性が高い」
長岡さんがこう考えたのは、古人骨に基づく研究では、いずれの人類集団も30~40代で構成員の大半が死んでしまうことが指摘されているのに、古文書などの記録に残っている範囲では、このような傾向を示す集団はほとんど存在しないからだ。
「縄文人と近い暮らしをしていたと考えられるアフリカの狩猟採集民でも、乳幼児死亡率が高かった江戸時代の人々でも、50代以上でなくなった人が3割を超す。とすれば、今までの縄文人の年齢構成には疑問符がつく」
長岡さんが新しい方法で再調査した岩手・蝦島貝塚や千葉・祇園原貝塚など9遺跡から出土した計86体の人骨は、65歳以上が32.5%を占めたという。「縄文人=早死に」のイメージのもとになった人類学者小林和正さんの1967年の論文では、65歳以上はゼロだったから大きく異なる。「今までの年齢推定法は老年の人を実際より若く推定してきたのではないか」
琉球大教授の石田肇さん(形質人類学)は「長岡君の精密な調査で、どんな集団でも長命な個体が存在することが分かってきた。確率的にみても、縄文時代における65歳以上の個体が3割という割合は間違いない」と評価する。
考古学者も肯定的だ。「縄文時代は伝統的、かつ複雑な社会構造を持った社会だったことが明らかになりつつある。30代で大半の人が亡くなるのでは、技術継承などの面で支障があったはず。寿命が長かったなら、そうした問題はなくなる」と、明治大教授の阿部芳郎さん(考古学)。
国学院大名誉教授(考古学)の小林達雄さんも「若い人には創造性があるが、それらを体系づけ、安定した状態を維持していくためには、30代以下だけでは無理。50代以上の構成員も多かったのなら納得できる」と話す。
一方で、やや慎重な意見も。国立長寿医療センター研究所所長の鈴木隆雄さん(老年学・古病理学)は「興味深い説だが、完全に結論が出たわけではない。今回の腸骨耳状面を使うやり方が、従来、年齢推定の判断基準となってきた恥骨結合面などの変化と整合性があるかどうか。今後、年齢推定のやり方を総合的に検証する必要があるのではないか」と話している。(宮代栄一)】
2023年05月10日 (水)
こんにちは。
糖質制限食は、アバウトに言えば、
700万年間の狩猟・採集時代のご先祖の食生活が一つのモデルです。
しかし狩猟・採集時代のご先祖の平均寿命は、
農耕開始以降の寿命より短いのではないかという問題があります。
つまり、糖質制限食時代のほうが、
農耕時代(糖質時代)より平均寿命が短いということですね。
あと、簡単に言えば、農耕時代に限っても
「昔は短命」という事実があります。
平均寿命に関しては、
『食糧事情』『周産期死亡』『飲料水と感染症』『環境』などが大きく関与していますので、
以下考察してみます。
昔にもいろいろありますが、
この「昔は短命」には食生活もかなり関係していると思います。
飢餓で亡くなった時代もありますから、
食糧事情の安定化が平均寿命に大きく関与しています。
例えば日本の戦後の平均寿命の増加には、食料事情の安定化の寄与が大きいです。
ついで、医療の発達も平均寿命増加の大きな要因です。
0才児の平均余命が「平均寿命」です。
平均寿命でポイントとなるのが乳幼児死亡率です。
例えば江戸時代の平均寿命は30~40歳と短いのですが、
生まれた子どもの半分以上が5歳までに死亡していたようです。
出産時の死亡や周産期の死亡、その後は感染症での死亡もあります。
麻疹や天然痘、コレラやインフルエンザ、
そして脚気でも多くの人が亡くなっています。
飢饉や火事、台風、水害など災害でも多くの人が亡くなっています。
江戸時代は出産で死亡する女性もかなり多かったとされています。
江戸時代も含め、昔は
赤ちゃんや乳幼児の死亡率、そして出産時の死亡率が高いので、
必然的に、平均寿命は短くなります。
実は、明治時代までは、
乳幼児死亡率と出産時の赤ちゃんの死亡率はかなり高かったのです。
赤ちゃんや乳幼児死亡、出産で死亡する女性は
医療の発展で激減しました。
江戸、明治までは、医療が未発達だったので、
赤ちゃんの死亡や出産時に死亡する女性は、かなり多かったのです。
平成の時代に、赤ちゃんが亡くなるとか、出産時に母親が亡くなることは
極めてまれなできごとなので、大変な事態なのですが、
江戸、明治では日常的な出来事だったのです。
三つ目は、上下水道の発達です。
これにより、伝染性の感染症などによる死亡が大幅に減少しました。
しかし現在でも世界で6億6,300万人の人々が、安心して飲める水がなく、
川、湖、沼、整備されていない井戸などを飲料水をせざるを得ない状況にあります。
その半数近くが、サハラ以南のアフリカ諸国に集中していますが、
これらの地域では、飲料水からの感染症が多発しています 。
四つ目に環境がありました。
クレバスや滝に落ちる、氷期で寒さで凍える、肉食獣に食べられる、火山の爆発で地域全体が低温に・・・
6600万年前に巨大隕石が今のメキシコ・ユカタン半島付近に衝突し、
恐竜を始めとして地球上の動物のほとんどが滅亡したことが
ありますが、これは人類誕生以前ですね。
このように考察してくると、
現代のように食糧事情、上下水道、医療水準、環境が安定している中での糖質制限食なら
動脈硬化や西洋型がんの予防が期待でき、
血流・代謝が良くなり免疫力も増強で肺炎予防効果もあり、
平均寿命が延びる可能性が高いのです。
江部康二
糖質制限食は、アバウトに言えば、
700万年間の狩猟・採集時代のご先祖の食生活が一つのモデルです。
しかし狩猟・採集時代のご先祖の平均寿命は、
農耕開始以降の寿命より短いのではないかという問題があります。
つまり、糖質制限食時代のほうが、
農耕時代(糖質時代)より平均寿命が短いということですね。
あと、簡単に言えば、農耕時代に限っても
「昔は短命」という事実があります。
平均寿命に関しては、
『食糧事情』『周産期死亡』『飲料水と感染症』『環境』などが大きく関与していますので、
以下考察してみます。
昔にもいろいろありますが、
この「昔は短命」には食生活もかなり関係していると思います。
飢餓で亡くなった時代もありますから、
食糧事情の安定化が平均寿命に大きく関与しています。
例えば日本の戦後の平均寿命の増加には、食料事情の安定化の寄与が大きいです。
ついで、医療の発達も平均寿命増加の大きな要因です。
0才児の平均余命が「平均寿命」です。
平均寿命でポイントとなるのが乳幼児死亡率です。
例えば江戸時代の平均寿命は30~40歳と短いのですが、
生まれた子どもの半分以上が5歳までに死亡していたようです。
出産時の死亡や周産期の死亡、その後は感染症での死亡もあります。
麻疹や天然痘、コレラやインフルエンザ、
そして脚気でも多くの人が亡くなっています。
飢饉や火事、台風、水害など災害でも多くの人が亡くなっています。
江戸時代は出産で死亡する女性もかなり多かったとされています。
江戸時代も含め、昔は
赤ちゃんや乳幼児の死亡率、そして出産時の死亡率が高いので、
必然的に、平均寿命は短くなります。
実は、明治時代までは、
乳幼児死亡率と出産時の赤ちゃんの死亡率はかなり高かったのです。
赤ちゃんや乳幼児死亡、出産で死亡する女性は
医療の発展で激減しました。
江戸、明治までは、医療が未発達だったので、
赤ちゃんの死亡や出産時に死亡する女性は、かなり多かったのです。
平成の時代に、赤ちゃんが亡くなるとか、出産時に母親が亡くなることは
極めてまれなできごとなので、大変な事態なのですが、
江戸、明治では日常的な出来事だったのです。
三つ目は、上下水道の発達です。
これにより、伝染性の感染症などによる死亡が大幅に減少しました。
しかし現在でも世界で6億6,300万人の人々が、安心して飲める水がなく、
川、湖、沼、整備されていない井戸などを飲料水をせざるを得ない状況にあります。
その半数近くが、サハラ以南のアフリカ諸国に集中していますが、
これらの地域では、飲料水からの感染症が多発しています 。
四つ目に環境がありました。
クレバスや滝に落ちる、氷期で寒さで凍える、肉食獣に食べられる、火山の爆発で地域全体が低温に・・・
6600万年前に巨大隕石が今のメキシコ・ユカタン半島付近に衝突し、
恐竜を始めとして地球上の動物のほとんどが滅亡したことが
ありますが、これは人類誕生以前ですね。
このように考察してくると、
現代のように食糧事情、上下水道、医療水準、環境が安定している中での糖質制限食なら
動脈硬化や西洋型がんの予防が期待でき、
血流・代謝が良くなり免疫力も増強で肺炎予防効果もあり、
平均寿命が延びる可能性が高いのです。
江部康二
2023年05月08日 (月)
こんにちは。
10時間以上の絶食で、
早朝空腹時のインスリン値、空腹時血糖値、空腹時Cペプチド値を
検査することで、インスリン分泌指標、インスリン抵抗性指標などを、
計算式で出すことができるので
今回は、それらを整理してみました。
インスリン分泌指標
【HOMA-β】
HOMA-βは内因性インスリン分泌機能を推定する指数です。
HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、
経口血糖負荷試験(OGTT)時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関することがわかっています。
homeostatic model assessment beta cell function
→略してHOMA-β
HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63)
という式で計算します。
空腹時血糖値130mg/dl以下なら信頼度が高いです。
正常値:40-60
【Cペプチド】
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、
インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプチド(CPR)というものを調べます。**
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、
CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、
内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時血中CPRを測定することで、
インスリンの基礎分泌能力がわかります。
蓄尿して一日尿中のCPRを測定することは、
一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
【SUIT指数】
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
20~23%以下だとインスリン治療が必要。
【Cペプチドインデックス(CPI)】
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
インスリン抵抗性指標
【HOMA-R】
HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405
という式で計算します。
homeostasis model assessment insulin resistance
→略して HOMA-R
HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。
1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
空腹時血糖値140mg/dl以下なら信頼度が高いです。
**
C-ペプチド(CPR)
C-ペプチド(CPR)は、
インスリン生合成の過程におけるプロインスリンの分解によって生じる副産物です。
インスリンとCPRの分泌動態には平行関係が存在します。
血中・尿中のCPR濃度を測定することにより、
膵ランゲルハンス島β細胞機能、
内因性インスリン分泌能を推測することができます。
10時間以上の絶食で、
早朝空腹時のインスリン値、空腹時血糖値、空腹時Cペプチド値を
検査することで、インスリン分泌指標、インスリン抵抗性指標などを、
計算式で出すことができるので
今回は、それらを整理してみました。
インスリン分泌指標
【HOMA-β】
HOMA-βは内因性インスリン分泌機能を推定する指数です。
HOMA-βは、空腹時血糖値と空腹時インスリン値で計算するのですが、
経口血糖負荷試験(OGTT)時の2時間値のインスリン分泌量と、
よく相関することがわかっています。
homeostatic model assessment beta cell function
→略してHOMA-β
HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63)
という式で計算します。
空腹時血糖値130mg/dl以下なら信頼度が高いです。
正常値:40-60
【Cペプチド】
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、
インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプチド(CPR)というものを調べます。**
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、
CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、
内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時血中CPRを測定することで、
インスリンの基礎分泌能力がわかります。
蓄尿して一日尿中のCPRを測定することは、
一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
【SUIT指数】
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
20~23%以下だとインスリン治療が必要。
【Cペプチドインデックス(CPI)】
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
インスリン抵抗性指標
【HOMA-R】
HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405
という式で計算します。
homeostasis model assessment insulin resistance
→略して HOMA-R
HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。
1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
空腹時血糖値140mg/dl以下なら信頼度が高いです。
**
C-ペプチド(CPR)
C-ペプチド(CPR)は、
インスリン生合成の過程におけるプロインスリンの分解によって生じる副産物です。
インスリンとCPRの分泌動態には平行関係が存在します。
血中・尿中のCPR濃度を測定することにより、
膵ランゲルハンス島β細胞機能、
内因性インスリン分泌能を推測することができます。
2023年05月07日 (日)
こんにちは。
現在は、知る人ぞ知るといった状況ですが、
私は、コロナ前は、バンドとライブ活動を長年やってきました。
まずは、以下のYouTubeをご視聴頂ければ幸いです。
いちご白書をもう一度https://www.youtube.com/watch?v=Lot0HeIv-jw
1,411 回視聴 2014/01/22江部康二医師が趣味でやっているバンド、
Turning Pointのライブの映像です。
毎月第三金曜日(午後8時~)がライブです。
今回は、2014年1月17日(金)の第三金曜ライブから「いちご白書をもう一度」です。
ターニング・ポイント(TURNING POINT)1987年結成、当初年1回のライブ活動、1992年から年3回のライブ活動。
1994年11月からマンスリー第三金曜ライブを開始。
第三金曜ライブは、2014年12月が最後で20周年で、いったん終了しました。
理由は、ライブハウス(憧夢)が閉店してしまったからです。
まあ20年よく続いたと思いますので、一区切りでした。
そこからは、年二回、春と秋に京都のライブハウス「モダンタイムス」や「アメリカングラフィティー」で、
貸し切りのライブパーティーを開催してきました。
¥4500-で、2ドリンクつきで、バイキング形式の食べ放題ですから、お得感が満載です。
「下手な歌がなければもっとお得だけど・・・」。という影の声も聞こえてきそうですが、大丈夫です。
わたし、そこそこ歌はそこそこ上手なのです。 (^^)
まあ、好みはあると思いますが、聞いて頂ければわかると思います。
年二回のライブパーティーも、新型コロナ感染症の影響で、2020年からは開催できていません。
2019年秋までは、年2回の貸し切りライブパーティーは続いていたので、
かなかに息の長いバンドであったといえます。
レパートリーは、ビートルズ、ジョン・レノン、オールディーズ、レイ・チャールズ、エリック・クラプトン、
サイモンとガーファンクル、カーペンターズ、キャロル・キング、CCR、テンプテーションズ、
ベン・E・キング、ローリング・ストーンズ、ベット・ミドラー、ママス&パパス、ルイ・アームストロング、
日本のフォークソング、サザンオースターズ、尾崎豊、バンバン、井上陽水、ワイルド・ワンズ、安全地帯、
ユーミン、中島みゆき、モップス、いるか、坂本九、Jウォーク、ズー・ニー・ブー、
と、要するに何でもありのバンドです。
まあだからこそ煮詰まることなく長く続いたのかなと思います。プ
レスリーバンドとか、特化すると、レパートリーが限られるので年二回とかのライブでも曲目がかぶってしまい、
お客さんもあきるので、なかなか長続きしないようです。
そろそろ、なんとか再開したい想いは強いのですが、
ボーカル3名
ギター1名
ドラムス1名
キーボード1名
ベース1名
と大所帯であり、練習も大変で、
一部高齢化もあり、なかなか踏み切れないのです。
現在まだまだ思案中なのですが、
ライブ活動再開の際は、ブログ読者の皆さん、
是非、応援よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
江部康二
現在は、知る人ぞ知るといった状況ですが、
私は、コロナ前は、バンドとライブ活動を長年やってきました。
まずは、以下のYouTubeをご視聴頂ければ幸いです。
いちご白書をもう一度https://www.youtube.com/watch?v=Lot0HeIv-jw
1,411 回視聴 2014/01/22江部康二医師が趣味でやっているバンド、
Turning Pointのライブの映像です。
毎月第三金曜日(午後8時~)がライブです。
今回は、2014年1月17日(金)の第三金曜ライブから「いちご白書をもう一度」です。
ターニング・ポイント(TURNING POINT)1987年結成、当初年1回のライブ活動、1992年から年3回のライブ活動。
1994年11月からマンスリー第三金曜ライブを開始。
第三金曜ライブは、2014年12月が最後で20周年で、いったん終了しました。
理由は、ライブハウス(憧夢)が閉店してしまったからです。
まあ20年よく続いたと思いますので、一区切りでした。
そこからは、年二回、春と秋に京都のライブハウス「モダンタイムス」や「アメリカングラフィティー」で、
貸し切りのライブパーティーを開催してきました。
¥4500-で、2ドリンクつきで、バイキング形式の食べ放題ですから、お得感が満載です。
「下手な歌がなければもっとお得だけど・・・」。という影の声も聞こえてきそうですが、大丈夫です。
わたし、そこそこ歌はそこそこ上手なのです。 (^^)
まあ、好みはあると思いますが、聞いて頂ければわかると思います。
年二回のライブパーティーも、新型コロナ感染症の影響で、2020年からは開催できていません。
2019年秋までは、年2回の貸し切りライブパーティーは続いていたので、
かなかに息の長いバンドであったといえます。
レパートリーは、ビートルズ、ジョン・レノン、オールディーズ、レイ・チャールズ、エリック・クラプトン、
サイモンとガーファンクル、カーペンターズ、キャロル・キング、CCR、テンプテーションズ、
ベン・E・キング、ローリング・ストーンズ、ベット・ミドラー、ママス&パパス、ルイ・アームストロング、
日本のフォークソング、サザンオースターズ、尾崎豊、バンバン、井上陽水、ワイルド・ワンズ、安全地帯、
ユーミン、中島みゆき、モップス、いるか、坂本九、Jウォーク、ズー・ニー・ブー、
と、要するに何でもありのバンドです。
まあだからこそ煮詰まることなく長く続いたのかなと思います。プ
レスリーバンドとか、特化すると、レパートリーが限られるので年二回とかのライブでも曲目がかぶってしまい、
お客さんもあきるので、なかなか長続きしないようです。
そろそろ、なんとか再開したい想いは強いのですが、
ボーカル3名
ギター1名
ドラムス1名
キーボード1名
ベース1名
と大所帯であり、練習も大変で、
一部高齢化もあり、なかなか踏み切れないのです。
現在まだまだ思案中なのですが、
ライブ活動再開の際は、ブログ読者の皆さん、
是非、応援よろしくお願い申し上げます。 m(_ _)m
江部康二
2023年05月06日 (土)
【23/05/04 はじめ327
人工甘味料の飲料水と血糖値について
江部先生
ご無沙汰いたしております。
糖質制限をして9年目の者です。
ここ3年ほど、体重と体脂肪計が微増しており、なかなか以前のレベルにもどりません。
コロナ禍での活動量の減少もさることながら、糖質制限自体の緩みもあるとは思います。
ここ数ヶ月、夜な夜なの楽しみで人工甘味料(アセスルファムK、スクラロース)を使用した飲料水をよく飲みます。
5月からまたストイックに制限をしようと自己血液での血糖値測定をフリースタイルで実施していますが、
食後2時間での測定値が84の時に、上記の人工甘味料飲料水を飲み、
40分後の測定結果が111でした。
人工甘味料では血糖値は上がらないという認識があったのですが、
①どういった理由で血糖値が上昇したのでしょうか?
②また、人工甘味料飲料水での血糖値上昇が心配ないなら、
たまに嗜むのは大丈夫でしょうか? 】
はじめ327 さん
まずは確認ですが、人工甘味料摂取では、血糖は上昇しません。
【①どういった理由で血糖値が上昇したのでしょうか?】
一つには、血糖自己測定器の誤差範囲の可能性があります。
ニプロでもテルモでも、どこの製品でも
病院での測定とは、+-10%くらいの誤差はありえるとメーカーが言っています。
また、同じ血糖自己測定器で計測しても 、
+-10%くらいの誤差はありえると思います。
またびっくりしても怒っても血糖値は上昇します。
【②また、人工甘味料飲料水での血糖値上昇が心配ないなら、
たまに嗜むのは大丈夫でしょうか? 】
350ml缶を、1~2本とかなら、全く問題ないと思います。
さてそれでは、<血糖調節システム>について検討してみます。
人体の血糖調節は、なかなか精妙で複雑なシステムにより維持されています。
血糖値は、
「食事」「肝臓によるグリコーゲン分解・糖新生と糖の取り込み」
「運動」「ストレス」「インスリン・グルカゴンなどホルモン」「女性の生理」・・・
などなど、いろいろな要素が合わさって調節されています。
1) 空腹時
食物吸収が終了した直後(食事開始2時間後)には、肝臓のグリコーゲン分解が、
循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。
食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、血糖値維持のために、筋肉など多くの組織のエネルギー源は、
ブドウ糖から脂肪酸やケトン体に変わります。
そして、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生(*)に切り替わります。
なお、筋肉には「グルコース6リン酸→グルコース」 とする回路がないので
筋肉中のグリコーゲンからはグルコース(ブドウ糖)は作れません。
つまり筋肉中のグリコーゲンは筋肉細胞のみのエネルギー源であり
血糖にはなりません。
2) 主食摂食時(糖質あり)
血糖値を直接上昇させるのは、糖質・脂質・タンパク質のうち、糖質だけです。
糖質摂食時には、消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血からまず肝臓に約50%取り込まれ、
それ以外が血液の大循環に回ります。
肝細胞でのブドウ糖取り込み自体は、糖輸送体Glut2(**)を介して行われ、インスリン追加分泌とは関係ありません。
しかし、肝に取り込まれたブドウ糖は、インスリンによりグリコーゲンとして蓄えられます。
糖質を摂取して血糖値が上昇すれば、正常人では速やかにインスリンが追加分泌されます。
この場合、追加分泌は基礎分泌の数倍~30倍レベルの大量となります。
例えば基礎分泌が5μU/mlなら追加分泌は、30~150μU/mlとかです。
肝臓に取り込まれなかったブドウ糖は、肝静脈から血中に入り、動脈血中に入ったブドウ糖は、
インスリン追加分泌により細胞表面に移動した糖輸送体GLUT4により、骨格筋細胞や脂肪細胞に取り込まれます。
骨格筋が、約70%の血糖を取り込みます。
これにより血糖値も速やかに下がります。
筋肉中に取り込まれた血糖は、エネルギー源として使われ、残りはグリコーゲンとして蓄えられます。
取り込まれず余った血糖は、インスリンにより脂肪組織か肝臓に取り込まれ、中性脂肪に変換され蓄えられます。
インスリン濃度が高いと、脂肪細胞の毛細血管にあるリポ蛋白リパーゼが活性化されて、血液中の中性脂肪が分解されて、
脂肪酸とグリセロールになります。
脂肪酸は、筋肉や体細胞や脂肪細胞のエネルギー源となります。
グリセロールはほとんどエネルギー源にはなりませんが、肝臓での糖新生の原料となります。
余剰の脂肪酸は、脂肪細胞に取り込まれて、中性脂肪として蓄えられます。
インスリンは、中性脂肪の合成を促進し、中性脂肪の分解を抑制します。
インスリンが肥満ホルモンたる所以です。
糖尿人では、<肝臓のグリコーゲン分解と糖新生>が摂食時にも抑制されにくいので、食後高血糖となります。
また糖尿人は、門脈血からの肝臓のブドウ糖取り込みも低下しているので、この面でも食後高血糖を起こしやすいのです。
さらに糖尿人の場合は、血液中のブドウ糖(食後高血糖)は、
<インスリン分泌不足>と<筋肉や脂肪細胞におけるインスリン抵抗性>により、
処理されにくいので、食後高血糖が遷延します。
また、インスリン作用不足による脂質代謝異常、アミノ酸代謝異常、高血糖そのものによるインスリン作用低下、
インスリン拮抗ホルモン優位など、様々な因子が重なり合って、高血糖が持続します。
さらに、糖尿人の一部においては、胃不全麻痺(***)による内容物の排出遅延があり、
吸収も遅延して通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。
3) 糖質制限食を摂取時(糖質がごく少量)
糖質摂取が野菜分のごく少量なので、食後血糖値はほとんど上昇しません。
追加分泌インスリンもごく少量で、基礎分泌の2倍くらいです。
正常人で基礎分泌が5μU/mlなら追加分泌は、10μU/mlとかです。
糖質制限食を摂取時は、食事している最中にも脂質が常に燃えています。
また食事中にも、肝臓でアミノ酸などから糖新生も行われています。
このため糖質摂取がごく少量でも低血糖にはならないのです。
糖尿人が糖質制限食を実践すれば、食後高血糖が改善しますが、糖新生により低血糖にはなりません。
正常人が糖質制限食を実践すれば、食後血糖値は正常値の範囲で低めとなります。
例えば正常人で食後1時間のピークの血糖値は、
糖質ありでは、130~160mg/dl
糖質制限ならせいぜい110~120mg/dl
くらいです。
勿論、肝臓で糖新生しますので、低血糖にはなりません。
4) 運動時
安静時には、インスリンの基礎分泌はありますが少量なので、糖輸送体(Glut4)は細胞表面に出てこれず、
筋肉細胞・脂肪細胞は血糖をほとんど取り込まめません。
運動時(筋収縮時)には筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)がインスリン追加分泌がなくても細胞表面に移動して、
血糖を取り込むことが可能となり、血糖値が下がります。
筋肉細胞が血糖を取り込んでエネルギー源とした後、筋肉中のグリコーゲンが満杯になれば、取り込みはストップします。
脂肪細胞は、運動には無関係です。
ジョギングや歩行ていどの軽い運動が適切とされています。
糖尿人でインスリンの基礎分泌があるていど以上不足していると、
運動によりかえって血糖値が上昇することがあるので注意が必要です。
バーンスタイン医師によれば、個人差はありますが、空腹時血糖値170mg/dlを超えているような場合は、
そのような可能性があるとのことです。
また、強度の強い運動だと、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどのインスリン拮抗ホルモンが分泌されますので、
血糖値が上昇することがあります。
4) ストレス
急性のストレスがあると、アドレナリン、グルカゴン、副腎皮質ステロイドホルモンなど血糖値を上げるホルモンが分泌されますので血糖値が上昇します。
血糖値は、1)、2)、3)、4)などの因子が複雑に絡み合ったシステムにより調節されています。
たかが血糖値されど血糖値、なかなか一筋縄ではいきませんね。
江部康二
(*)糖新生
①脂肪組織→グリセロール(中性脂肪の分解物)→肝臓→糖新生→脂肪組織・筋肉
②筋肉→アミノ酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
③ブドウ糖代謝→乳酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
①②③はごく日常的に誰でも行っており、肝臓、筋肉、脂肪組織の間で行ったり来たり、日々糖新生の調節が行われているわけです。
糖新生の調整は、インスリンが行っています。
インスリンは、強力な糖新生抑制因子です。
インスリン不足だと肝臓がブドウ糖をつくり過ぎることになります。
(**)糖輸送体(Glut:glucose transporter)
ブドウ糖が細胞膜を通過して細胞内に取り込まれるためには、
グルコーストランスポーター(糖輸送体)と呼ばれる膜蛋白が必要です。
Glut1~Glut14が報告されています。
Glut1(脳、赤血球、網膜などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut2(肝臓、膵臓のβ細胞などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut4(筋肉細胞、脂肪細胞の糖輸送体)はインスリン依存性です。
(***)胃不全麻痺
バーンスタイン医師(米国の1型糖尿病の医師で糖質制限食実践中)の本にも記載されている<胃排泄遅延・胃不全麻痺>が
年期の入った糖尿人ではありえます。
欧米人には、胃不全麻痺が結構多いようですが日本人でも当然ありえます。
胃不全麻痺のある糖尿人は、夕食を午後6時頃食べても、胃からの排泄が遅延して吸収が遅くなり、
通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。
そのため翌朝の空腹時血糖値が高値となることがあります。
人工甘味料の飲料水と血糖値について
江部先生
ご無沙汰いたしております。
糖質制限をして9年目の者です。
ここ3年ほど、体重と体脂肪計が微増しており、なかなか以前のレベルにもどりません。
コロナ禍での活動量の減少もさることながら、糖質制限自体の緩みもあるとは思います。
ここ数ヶ月、夜な夜なの楽しみで人工甘味料(アセスルファムK、スクラロース)を使用した飲料水をよく飲みます。
5月からまたストイックに制限をしようと自己血液での血糖値測定をフリースタイルで実施していますが、
食後2時間での測定値が84の時に、上記の人工甘味料飲料水を飲み、
40分後の測定結果が111でした。
人工甘味料では血糖値は上がらないという認識があったのですが、
①どういった理由で血糖値が上昇したのでしょうか?
②また、人工甘味料飲料水での血糖値上昇が心配ないなら、
たまに嗜むのは大丈夫でしょうか? 】
はじめ327 さん
まずは確認ですが、人工甘味料摂取では、血糖は上昇しません。
【①どういった理由で血糖値が上昇したのでしょうか?】
一つには、血糖自己測定器の誤差範囲の可能性があります。
ニプロでもテルモでも、どこの製品でも
病院での測定とは、+-10%くらいの誤差はありえるとメーカーが言っています。
また、同じ血糖自己測定器で計測しても 、
+-10%くらいの誤差はありえると思います。
またびっくりしても怒っても血糖値は上昇します。
【②また、人工甘味料飲料水での血糖値上昇が心配ないなら、
たまに嗜むのは大丈夫でしょうか? 】
350ml缶を、1~2本とかなら、全く問題ないと思います。
さてそれでは、<血糖調節システム>について検討してみます。
人体の血糖調節は、なかなか精妙で複雑なシステムにより維持されています。
血糖値は、
「食事」「肝臓によるグリコーゲン分解・糖新生と糖の取り込み」
「運動」「ストレス」「インスリン・グルカゴンなどホルモン」「女性の生理」・・・
などなど、いろいろな要素が合わさって調節されています。
1) 空腹時
食物吸収が終了した直後(食事開始2時間後)には、肝臓のグリコーゲン分解が、
循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。
食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、血糖値維持のために、筋肉など多くの組織のエネルギー源は、
ブドウ糖から脂肪酸やケトン体に変わります。
そして、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生(*)に切り替わります。
なお、筋肉には「グルコース6リン酸→グルコース」 とする回路がないので
筋肉中のグリコーゲンからはグルコース(ブドウ糖)は作れません。
つまり筋肉中のグリコーゲンは筋肉細胞のみのエネルギー源であり
血糖にはなりません。
2) 主食摂食時(糖質あり)
血糖値を直接上昇させるのは、糖質・脂質・タンパク質のうち、糖質だけです。
糖質摂食時には、消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血からまず肝臓に約50%取り込まれ、
それ以外が血液の大循環に回ります。
肝細胞でのブドウ糖取り込み自体は、糖輸送体Glut2(**)を介して行われ、インスリン追加分泌とは関係ありません。
しかし、肝に取り込まれたブドウ糖は、インスリンによりグリコーゲンとして蓄えられます。
糖質を摂取して血糖値が上昇すれば、正常人では速やかにインスリンが追加分泌されます。
この場合、追加分泌は基礎分泌の数倍~30倍レベルの大量となります。
例えば基礎分泌が5μU/mlなら追加分泌は、30~150μU/mlとかです。
肝臓に取り込まれなかったブドウ糖は、肝静脈から血中に入り、動脈血中に入ったブドウ糖は、
インスリン追加分泌により細胞表面に移動した糖輸送体GLUT4により、骨格筋細胞や脂肪細胞に取り込まれます。
骨格筋が、約70%の血糖を取り込みます。
これにより血糖値も速やかに下がります。
筋肉中に取り込まれた血糖は、エネルギー源として使われ、残りはグリコーゲンとして蓄えられます。
取り込まれず余った血糖は、インスリンにより脂肪組織か肝臓に取り込まれ、中性脂肪に変換され蓄えられます。
インスリン濃度が高いと、脂肪細胞の毛細血管にあるリポ蛋白リパーゼが活性化されて、血液中の中性脂肪が分解されて、
脂肪酸とグリセロールになります。
脂肪酸は、筋肉や体細胞や脂肪細胞のエネルギー源となります。
グリセロールはほとんどエネルギー源にはなりませんが、肝臓での糖新生の原料となります。
余剰の脂肪酸は、脂肪細胞に取り込まれて、中性脂肪として蓄えられます。
インスリンは、中性脂肪の合成を促進し、中性脂肪の分解を抑制します。
インスリンが肥満ホルモンたる所以です。
糖尿人では、<肝臓のグリコーゲン分解と糖新生>が摂食時にも抑制されにくいので、食後高血糖となります。
また糖尿人は、門脈血からの肝臓のブドウ糖取り込みも低下しているので、この面でも食後高血糖を起こしやすいのです。
さらに糖尿人の場合は、血液中のブドウ糖(食後高血糖)は、
<インスリン分泌不足>と<筋肉や脂肪細胞におけるインスリン抵抗性>により、
処理されにくいので、食後高血糖が遷延します。
また、インスリン作用不足による脂質代謝異常、アミノ酸代謝異常、高血糖そのものによるインスリン作用低下、
インスリン拮抗ホルモン優位など、様々な因子が重なり合って、高血糖が持続します。
さらに、糖尿人の一部においては、胃不全麻痺(***)による内容物の排出遅延があり、
吸収も遅延して通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。
3) 糖質制限食を摂取時(糖質がごく少量)
糖質摂取が野菜分のごく少量なので、食後血糖値はほとんど上昇しません。
追加分泌インスリンもごく少量で、基礎分泌の2倍くらいです。
正常人で基礎分泌が5μU/mlなら追加分泌は、10μU/mlとかです。
糖質制限食を摂取時は、食事している最中にも脂質が常に燃えています。
また食事中にも、肝臓でアミノ酸などから糖新生も行われています。
このため糖質摂取がごく少量でも低血糖にはならないのです。
糖尿人が糖質制限食を実践すれば、食後高血糖が改善しますが、糖新生により低血糖にはなりません。
正常人が糖質制限食を実践すれば、食後血糖値は正常値の範囲で低めとなります。
例えば正常人で食後1時間のピークの血糖値は、
糖質ありでは、130~160mg/dl
糖質制限ならせいぜい110~120mg/dl
くらいです。
勿論、肝臓で糖新生しますので、低血糖にはなりません。
4) 運動時
安静時には、インスリンの基礎分泌はありますが少量なので、糖輸送体(Glut4)は細胞表面に出てこれず、
筋肉細胞・脂肪細胞は血糖をほとんど取り込まめません。
運動時(筋収縮時)には筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)がインスリン追加分泌がなくても細胞表面に移動して、
血糖を取り込むことが可能となり、血糖値が下がります。
筋肉細胞が血糖を取り込んでエネルギー源とした後、筋肉中のグリコーゲンが満杯になれば、取り込みはストップします。
脂肪細胞は、運動には無関係です。
ジョギングや歩行ていどの軽い運動が適切とされています。
糖尿人でインスリンの基礎分泌があるていど以上不足していると、
運動によりかえって血糖値が上昇することがあるので注意が必要です。
バーンスタイン医師によれば、個人差はありますが、空腹時血糖値170mg/dlを超えているような場合は、
そのような可能性があるとのことです。
また、強度の強い運動だと、アドレナリンや副腎皮質ホルモンなどのインスリン拮抗ホルモンが分泌されますので、
血糖値が上昇することがあります。
4) ストレス
急性のストレスがあると、アドレナリン、グルカゴン、副腎皮質ステロイドホルモンなど血糖値を上げるホルモンが分泌されますので血糖値が上昇します。
血糖値は、1)、2)、3)、4)などの因子が複雑に絡み合ったシステムにより調節されています。
たかが血糖値されど血糖値、なかなか一筋縄ではいきませんね。
江部康二
(*)糖新生
①脂肪組織→グリセロール(中性脂肪の分解物)→肝臓→糖新生→脂肪組織・筋肉
②筋肉→アミノ酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
③ブドウ糖代謝→乳酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
①②③はごく日常的に誰でも行っており、肝臓、筋肉、脂肪組織の間で行ったり来たり、日々糖新生の調節が行われているわけです。
糖新生の調整は、インスリンが行っています。
インスリンは、強力な糖新生抑制因子です。
インスリン不足だと肝臓がブドウ糖をつくり過ぎることになります。
(**)糖輸送体(Glut:glucose transporter)
ブドウ糖が細胞膜を通過して細胞内に取り込まれるためには、
グルコーストランスポーター(糖輸送体)と呼ばれる膜蛋白が必要です。
Glut1~Glut14が報告されています。
Glut1(脳、赤血球、網膜などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut2(肝臓、膵臓のβ細胞などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut4(筋肉細胞、脂肪細胞の糖輸送体)はインスリン依存性です。
(***)胃不全麻痺
バーンスタイン医師(米国の1型糖尿病の医師で糖質制限食実践中)の本にも記載されている<胃排泄遅延・胃不全麻痺>が
年期の入った糖尿人ではありえます。
欧米人には、胃不全麻痺が結構多いようですが日本人でも当然ありえます。
胃不全麻痺のある糖尿人は、夕食を午後6時頃食べても、胃からの排泄が遅延して吸収が遅くなり、
通常よりかなり遅れて血糖値が上昇することがあります。
そのため翌朝の空腹時血糖値が高値となることがあります。
2023年05月04日 (木)
こんにちは。
毎日新聞の2023年5月4日(木・祝)の朝刊に
くらしの明日
私の社会保障論 健康長寿の10年
=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
という記事が、掲載されました。
以下の青字の記載は記事の要約です。
【 「ヘルシーエージング(健康長寿)の10年」という言葉は、
日本ではほとんど報じられていないが、国連と世界保健機関(WHO)は、
2021年から30年までの10年間をそう位置づける決議を採択した。
特にアクションを起こすべき四つのエリアなどを掲げ、取り組みを進めている。
途上国を含め世界中で高齢化が進行しており、それへの対応が求められているからだ。
WHOの専門家グループ会議が2023年4月にジュネーブ開催され、
筆者は、それに参加した。
高齢者が生活機能を保つには、本人の能力だけでなく
環境も大事だとWHOはいう。
例えば、エレベーターや手すりがない環境だったら、
集合住宅の上層階に暮らせる高齢者は激減するだろう。
だから四つのアクションをすべきエリアの一つは、
高齢者に優しいコミュニティーづくりである。
すなわち、環境づくりの重視である。
高齢者に優しい環境にも3種類ある。
一つ目は、公園や公共交通機関、住宅などの物理的な環境、
二つ目は、就労や市民生活、趣味活動などに参加しやすく、
高齢者差別のない社会的な環境、
三つ目が、医療や介護、情報などの行政サービス環境である。
政策形成・遂行プロセスへの高齢者の参加が大事で、
それによって環境づくりなどが進む。
その結果、高齢者に優しいコミュニティー環境などが形成され、
高齢者のウェルビーイング(幸福・健康)が維持・向上する。
・・・超高齢化に加え、人口減少が加速する「課題先進国日本」だが、
他国もそれぞれの課題を抱えている。
日本は世界一の超高齢社会への対応をこなしてきたのだと
感じた3日間であった。】
近藤克則教授の、述べておられること、WHOのいうこと、共に正論だと思います。
しかし、私は
【高齢者が生活機能を保つには、本人の能力だけでなく環境も大事】
という表現が気になります。
この環境づくりの重視というのは、正論なのですが
一方で「高齢者は体力・気力ともに衰えている」ことを
大前提にして、議論を展開させていると感じます。
同じ高齢者でも、「元気いっぱいで活動的な人」と
「年齢相応の人」と「実年齢より老けて見える人」の
三者に分類できると思います。
これらのどれに属するかは本人の意志や努力にもよると思います。
二つ目の
【就労や市民生活、趣味活動などに参加しやすく、
高齢者差別のない社会的な環境】
というのは、元気な高齢者を育成するのに、
大いに役に立つので望ましいです。
一つ目と三つ目は、
「高齢者は体力・気力ともに衰えている」
ことを前提にしているので、少し違和感を覚えます。
実際には、元気な高齢者も、結構増えていると思います。
漫画「サザエさん」に登場する磯野波平さんのプロフィール
国民的漫画「サザエさん」に、登場する磯野波平さんは、漫画掲載開始時は、
年齢は54歳。原作での誕生年は1895年(明治28年)。フネとは結婚して28年。
サザエとカツオとワカメの父。
磯野家の大黒柱で京都大学卒。
連載初期の役職は「局長」であったがいつの間にか降格しており、
後期には平社員となっていた。
原作においては威厳がなく、家族を叱るシーンもあまり多くなく、
登場回数も必ずしも多くない。
波平さんは、はげ頭に毛が一本だけです。
少なくとも令和の感覚では、54歳ではなく70~80歳くらいに見えます。
「サザエさん」は、
1946年(昭和21年)4月22日、福岡の地方新聞『夕刊フクニチ』で連載を始めてます。
東京に作者の長谷川町子さんが、転居されて、
1951年(昭和26年)4月16日からは『朝日新聞』の朝刊に連載です。
ですから、1950年代の54歳は、波平さん的な方が普通に存在していたのでしょう。
この頃は55歳が定年でした。
定年制度の変化
【昭和初期】55歳定年がスタート
【1980年代】55歳から60歳定年に引き上げ(努力義務化)
【1990年】:定年後再雇用を義務化
【1998年】60歳定年
【2000年】65歳までの雇用確保措置(努力義務化)
【2006年】65歳までの雇用確保措置(義務化)
【2013年】65歳までの継続雇用を企業に義務化(対象:全希望者)
定年制度の変化を見てみると
2000年代には、「55歳→65歳」と10年の延長となっています。
いちがいには言えないのですが、現実に日本人が普通に働ける年数が
10年延びています。
実際、元気な高齢者が増えています。
私の患者さん(80代後半)も大学病院に受診したときに、年寄扱いされたと怒っておられました。
80歳代後半で、一人で通院しておられる、元気な患者さんです。
私は、73歳ですが、
眼は裸眼で広辞苑が読め、歯は全て残っていて虫歯なし、聴力低下なし、身長の低下なし、
夜間の尿なしです。
スーパー糖質制限実践、21年間の賜物と思います。
ブログ読者の皆さんも
<スーパー糖質制限食>+<インターバル速歩>
の実践で、美味しく楽しく末永く健康長寿を目指して頂ければ幸いです。
江部康二
毎日新聞の2023年5月4日(木・祝)の朝刊に
くらしの明日
私の社会保障論 健康長寿の10年
=千葉大予防医学センター教授・近藤克則
という記事が、掲載されました。
以下の青字の記載は記事の要約です。
【 「ヘルシーエージング(健康長寿)の10年」という言葉は、
日本ではほとんど報じられていないが、国連と世界保健機関(WHO)は、
2021年から30年までの10年間をそう位置づける決議を採択した。
特にアクションを起こすべき四つのエリアなどを掲げ、取り組みを進めている。
途上国を含め世界中で高齢化が進行しており、それへの対応が求められているからだ。
WHOの専門家グループ会議が2023年4月にジュネーブ開催され、
筆者は、それに参加した。
高齢者が生活機能を保つには、本人の能力だけでなく
環境も大事だとWHOはいう。
例えば、エレベーターや手すりがない環境だったら、
集合住宅の上層階に暮らせる高齢者は激減するだろう。
だから四つのアクションをすべきエリアの一つは、
高齢者に優しいコミュニティーづくりである。
すなわち、環境づくりの重視である。
高齢者に優しい環境にも3種類ある。
一つ目は、公園や公共交通機関、住宅などの物理的な環境、
二つ目は、就労や市民生活、趣味活動などに参加しやすく、
高齢者差別のない社会的な環境、
三つ目が、医療や介護、情報などの行政サービス環境である。
政策形成・遂行プロセスへの高齢者の参加が大事で、
それによって環境づくりなどが進む。
その結果、高齢者に優しいコミュニティー環境などが形成され、
高齢者のウェルビーイング(幸福・健康)が維持・向上する。
・・・超高齢化に加え、人口減少が加速する「課題先進国日本」だが、
他国もそれぞれの課題を抱えている。
日本は世界一の超高齢社会への対応をこなしてきたのだと
感じた3日間であった。】
近藤克則教授の、述べておられること、WHOのいうこと、共に正論だと思います。
しかし、私は
【高齢者が生活機能を保つには、本人の能力だけでなく環境も大事】
という表現が気になります。
この環境づくりの重視というのは、正論なのですが
一方で「高齢者は体力・気力ともに衰えている」ことを
大前提にして、議論を展開させていると感じます。
同じ高齢者でも、「元気いっぱいで活動的な人」と
「年齢相応の人」と「実年齢より老けて見える人」の
三者に分類できると思います。
これらのどれに属するかは本人の意志や努力にもよると思います。
二つ目の
【就労や市民生活、趣味活動などに参加しやすく、
高齢者差別のない社会的な環境】
というのは、元気な高齢者を育成するのに、
大いに役に立つので望ましいです。
一つ目と三つ目は、
「高齢者は体力・気力ともに衰えている」
ことを前提にしているので、少し違和感を覚えます。
実際には、元気な高齢者も、結構増えていると思います。
漫画「サザエさん」に登場する磯野波平さんのプロフィール
国民的漫画「サザエさん」に、登場する磯野波平さんは、漫画掲載開始時は、
年齢は54歳。原作での誕生年は1895年(明治28年)。フネとは結婚して28年。
サザエとカツオとワカメの父。
磯野家の大黒柱で京都大学卒。
連載初期の役職は「局長」であったがいつの間にか降格しており、
後期には平社員となっていた。
原作においては威厳がなく、家族を叱るシーンもあまり多くなく、
登場回数も必ずしも多くない。
波平さんは、はげ頭に毛が一本だけです。
少なくとも令和の感覚では、54歳ではなく70~80歳くらいに見えます。
「サザエさん」は、
1946年(昭和21年)4月22日、福岡の地方新聞『夕刊フクニチ』で連載を始めてます。
東京に作者の長谷川町子さんが、転居されて、
1951年(昭和26年)4月16日からは『朝日新聞』の朝刊に連載です。
ですから、1950年代の54歳は、波平さん的な方が普通に存在していたのでしょう。
この頃は55歳が定年でした。
定年制度の変化
【昭和初期】55歳定年がスタート
【1980年代】55歳から60歳定年に引き上げ(努力義務化)
【1990年】:定年後再雇用を義務化
【1998年】60歳定年
【2000年】65歳までの雇用確保措置(努力義務化)
【2006年】65歳までの雇用確保措置(義務化)
【2013年】65歳までの継続雇用を企業に義務化(対象:全希望者)
定年制度の変化を見てみると
2000年代には、「55歳→65歳」と10年の延長となっています。
いちがいには言えないのですが、現実に日本人が普通に働ける年数が
10年延びています。
実際、元気な高齢者が増えています。
私の患者さん(80代後半)も大学病院に受診したときに、年寄扱いされたと怒っておられました。
80歳代後半で、一人で通院しておられる、元気な患者さんです。
私は、73歳ですが、
眼は裸眼で広辞苑が読め、歯は全て残っていて虫歯なし、聴力低下なし、身長の低下なし、
夜間の尿なしです。
スーパー糖質制限実践、21年間の賜物と思います。
ブログ読者の皆さんも
<スーパー糖質制限食>+<インターバル速歩>
の実践で、美味しく楽しく末永く健康長寿を目指して頂ければ幸いです。
江部康二
2023年05月02日 (火)
こんにちは。
近年CGMの普及により見直された薬剤があります。それはα-GI薬です。
今回は、そのα(アルファ)-グルコシターゼ阻害薬薬(α-GI薬)について考えてみます。
糖質制限食を実践していても、旅行や外食などで、
どうしても糖質摂取せざるを得ないこともありますので
その様なときは、α-GI薬の出番なのです。
デンプンのような多糖類は、α-アミラーゼという消化酵素の作用を得て、
二糖類(麦芽糖や蔗糖)やオリゴ糖に分解されます。
つまり、α-アミラーゼは、
穀物や芋のデンプンと呼ばれる多くの糖の集合体を
まず第一段階で分解して少し大きさを小さくしています。
その後、この二糖類やオリゴ糖は、
マルターゼ、スクラーゼ、グルコアミラーゼなどの酵素により、
単糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース等)に分解されて小腸から体内に吸収されます。
マルターゼ、スクラーゼ、グルコアミラーゼなどの酵素を総称して、
α-グルコシダーゼと呼びます。
この、α-グルコシダーゼの働きを阻害することにより、
腸管からの糖質の分解・吸収を遅延させて、
食後高血糖を抑制するお薬が、
『α-グルコシダーゼ阻害薬』(グルコバイ、ベイスン、セイブル)です。
グルコバイ(アカルボース)はα-グルコシダーゼだけではなく、
α-アミラーゼに対する阻害作用も、もっています。
ベイスン(ボグリボース)やセイブル(ミグリトール)は、
α-グルコシダーゼの活性を阻害しますが、α-アミラーゼには影響を与えません。
従って、グルコバイの方が少し効果が強いですが、副作用もやや生じやすいです。
副作用とは、ガス、腹満、腹痛、軟便などです。
それぞれ常用量で下記程度に血糖値を下げるとされています。
グルコバイ: 1時間値50mg、 2時間値40mg
ベイスン: 1時間値40mg、 2時間値30mg
セイブル: 1時間値60mg、 2時間値20mg
しかし、これほど下がらない人もあります。
セイブルは1時間値を下げるけれど、2時間値はあまり下げないのが特徴です。
いずれの薬も結構個人差が大きいですし、
印象としては上記の数字ほど下がらない人のほうが多いです。
作用機序から考えて、膵臓のβ細胞には全く影響を与えないので、
SU剤のように疲れた膵臓を鞭打つといった欠点はありません。(^^)
しかし、比較的頻度の多い副作用として、
分解が遅れて腸管に残った糖質が醗酵してガスがでたり、
お腹が張ったり、下痢をすることがあります。(-_-;)
ガスの貯留により、腸閉塞(イレウス)のような症状になる事があるので、
腹部手術歴の有る方は、禁忌とされています。
私自身で行った人体実験では、かなり興味深いことがありました。
グルコバイの常用量を食直前に服用して何種類かの食品を試食してみました。
蕎麦はほとんど腹満がなかったのですが、
お餅は最悪で、腹満・腹痛・ガスのフルコースで、
病院に行こうか?(∵)?と思ったくらいでした。
うどんやご飯は、蕎麦に比べたらやや腹満・ガスなど出やすかったですね。
個人差はあると思いますが、参考にしていただければと思います。
現在は、私は、食事の工夫(スーパー糖質制限食)をしていますので、内服薬は一切なしです。
糖尿人でスーパー 糖質制限食実践中の患者さんの場合は、ほとんど薬はなしですが、
お昼だけ主食ありの『スタンダード 糖質制限食』の時は、
α-GI薬を食直前に内服してもらうことがあります。
従いまして、「糖尿病には糖質制限食」の高雄病院でも
比較的使用頻度の高いのが『α-グルコシダーゼ阻害薬』です。
高雄病院入院中にグルコバイ100mgを、食時開始30秒前に内服して、
昼食に例えば炊いたご飯100g摂取など少なめで実験し、
食後2時間血糖値値が180mgを超えない量をリサーチすることもあります。
炊いたご飯お茶碗一杯は約150gで、糖質を55g含んでいますが、
それでは糖質が多すぎて太刀打ちできないので、約100gに減らして実験します。
グルコバイ・ベイスン・セイブルを飲み忘れた場合、
食べ始めてからすぐに飲んでもそれなりに有効です。
食事終了時に内服しても無効です。
基本的に安全性の高い薬ですが、まれに肝障害を来す例があるので、
定期的な血液検査を推奨します。
朗報として、最近のCGM(Continuous Glucose Monitoring:持続ブドウ糖測定)システムの普及で、
α-GI薬が、食後高血糖と共に平均血糖変動幅増大を
ある程度コントロールしていることが判明し、
その有効性が見直されています。
これなら活性酸素の発生が少なくなり、酸化ストレスも減少します。
2002年、2003年に、LancetやJAMA(米国医師会雑誌)に掲載されたSTOP-NIDDMという臨床試験(*)(**)で、
アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬・グルコバイ)による治療は、
2型糖尿病の発症を36%、心血管疾患の発症を49%抑制すると報告されました。
2008年6月にヘルシンキで「第5回糖尿病とその合併症予防に関する世界会議」(WCPD)が開催され、
STOP-NIDDM試験のまとめが発表されました。
あまりにも、結果が良すぎるので、当時私は信用していなかったのですが、
近年のCGMの普及により、STOP-NIDDMの結果は、
信頼できるものであったと納得がいきました。
CGMの普及により、α-GI薬のように見直される薬剤もあれば、
SU剤のように欠点がもろに暴露された薬剤もあり、栄枯盛衰ですね。
(*)
Lancet. 2002 Jun 15;359(9323):2072-7.
Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus: the STOP-NIDDM randomised trial.
Chiasson JL1, Josse RG, Gomis R, Hanefeld M, Karasik A, Laakso M; STOP-NIDDM Trail Research Group.
(**)
Chiasson JL, Josse RG, Gomis R, Hanefeld M, Karasik A, Laakso M, STOP-NIDDM Trial Research Group
: Acarbose treatment and the risk of cardiovascular disease and hypertension in patients with impaired glucose tolerance: the STOP-NIDDM trial. JAMA 2003; 290: 486-494.
江部康二
近年CGMの普及により見直された薬剤があります。それはα-GI薬です。
今回は、そのα(アルファ)-グルコシターゼ阻害薬薬(α-GI薬)について考えてみます。
糖質制限食を実践していても、旅行や外食などで、
どうしても糖質摂取せざるを得ないこともありますので
その様なときは、α-GI薬の出番なのです。
デンプンのような多糖類は、α-アミラーゼという消化酵素の作用を得て、
二糖類(麦芽糖や蔗糖)やオリゴ糖に分解されます。
つまり、α-アミラーゼは、
穀物や芋のデンプンと呼ばれる多くの糖の集合体を
まず第一段階で分解して少し大きさを小さくしています。
その後、この二糖類やオリゴ糖は、
マルターゼ、スクラーゼ、グルコアミラーゼなどの酵素により、
単糖(ブドウ糖、果糖、ガラクトース等)に分解されて小腸から体内に吸収されます。
マルターゼ、スクラーゼ、グルコアミラーゼなどの酵素を総称して、
α-グルコシダーゼと呼びます。
この、α-グルコシダーゼの働きを阻害することにより、
腸管からの糖質の分解・吸収を遅延させて、
食後高血糖を抑制するお薬が、
『α-グルコシダーゼ阻害薬』(グルコバイ、ベイスン、セイブル)です。
グルコバイ(アカルボース)はα-グルコシダーゼだけではなく、
α-アミラーゼに対する阻害作用も、もっています。
ベイスン(ボグリボース)やセイブル(ミグリトール)は、
α-グルコシダーゼの活性を阻害しますが、α-アミラーゼには影響を与えません。
従って、グルコバイの方が少し効果が強いですが、副作用もやや生じやすいです。
副作用とは、ガス、腹満、腹痛、軟便などです。
それぞれ常用量で下記程度に血糖値を下げるとされています。
グルコバイ: 1時間値50mg、 2時間値40mg
ベイスン: 1時間値40mg、 2時間値30mg
セイブル: 1時間値60mg、 2時間値20mg
しかし、これほど下がらない人もあります。
セイブルは1時間値を下げるけれど、2時間値はあまり下げないのが特徴です。
いずれの薬も結構個人差が大きいですし、
印象としては上記の数字ほど下がらない人のほうが多いです。
作用機序から考えて、膵臓のβ細胞には全く影響を与えないので、
SU剤のように疲れた膵臓を鞭打つといった欠点はありません。(^^)
しかし、比較的頻度の多い副作用として、
分解が遅れて腸管に残った糖質が醗酵してガスがでたり、
お腹が張ったり、下痢をすることがあります。(-_-;)
ガスの貯留により、腸閉塞(イレウス)のような症状になる事があるので、
腹部手術歴の有る方は、禁忌とされています。
私自身で行った人体実験では、かなり興味深いことがありました。
グルコバイの常用量を食直前に服用して何種類かの食品を試食してみました。
蕎麦はほとんど腹満がなかったのですが、
お餅は最悪で、腹満・腹痛・ガスのフルコースで、
病院に行こうか?(∵)?と思ったくらいでした。
うどんやご飯は、蕎麦に比べたらやや腹満・ガスなど出やすかったですね。
個人差はあると思いますが、参考にしていただければと思います。
現在は、私は、食事の工夫(スーパー糖質制限食)をしていますので、内服薬は一切なしです。
糖尿人でスーパー 糖質制限食実践中の患者さんの場合は、ほとんど薬はなしですが、
お昼だけ主食ありの『スタンダード 糖質制限食』の時は、
α-GI薬を食直前に内服してもらうことがあります。
従いまして、「糖尿病には糖質制限食」の高雄病院でも
比較的使用頻度の高いのが『α-グルコシダーゼ阻害薬』です。
高雄病院入院中にグルコバイ100mgを、食時開始30秒前に内服して、
昼食に例えば炊いたご飯100g摂取など少なめで実験し、
食後2時間血糖値値が180mgを超えない量をリサーチすることもあります。
炊いたご飯お茶碗一杯は約150gで、糖質を55g含んでいますが、
それでは糖質が多すぎて太刀打ちできないので、約100gに減らして実験します。
グルコバイ・ベイスン・セイブルを飲み忘れた場合、
食べ始めてからすぐに飲んでもそれなりに有効です。
食事終了時に内服しても無効です。
基本的に安全性の高い薬ですが、まれに肝障害を来す例があるので、
定期的な血液検査を推奨します。
朗報として、最近のCGM(Continuous Glucose Monitoring:持続ブドウ糖測定)システムの普及で、
α-GI薬が、食後高血糖と共に平均血糖変動幅増大を
ある程度コントロールしていることが判明し、
その有効性が見直されています。
これなら活性酸素の発生が少なくなり、酸化ストレスも減少します。
2002年、2003年に、LancetやJAMA(米国医師会雑誌)に掲載されたSTOP-NIDDMという臨床試験(*)(**)で、
アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬・グルコバイ)による治療は、
2型糖尿病の発症を36%、心血管疾患の発症を49%抑制すると報告されました。
2008年6月にヘルシンキで「第5回糖尿病とその合併症予防に関する世界会議」(WCPD)が開催され、
STOP-NIDDM試験のまとめが発表されました。
あまりにも、結果が良すぎるので、当時私は信用していなかったのですが、
近年のCGMの普及により、STOP-NIDDMの結果は、
信頼できるものであったと納得がいきました。
CGMの普及により、α-GI薬のように見直される薬剤もあれば、
SU剤のように欠点がもろに暴露された薬剤もあり、栄枯盛衰ですね。
(*)
Lancet. 2002 Jun 15;359(9323):2072-7.
Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus: the STOP-NIDDM randomised trial.
Chiasson JL1, Josse RG, Gomis R, Hanefeld M, Karasik A, Laakso M; STOP-NIDDM Trail Research Group.
(**)
Chiasson JL, Josse RG, Gomis R, Hanefeld M, Karasik A, Laakso M, STOP-NIDDM Trial Research Group
: Acarbose treatment and the risk of cardiovascular disease and hypertension in patients with impaired glucose tolerance: the STOP-NIDDM trial. JAMA 2003; 290: 486-494.
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