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国内初、インフルエンザ“経鼻ワクチン”承認へ
【 https://www.ctv.co.jp/ctvnews/news91dy9f6af2fmjocw54.html
中京テレビ 全国ニュース
CHUKYO TV 全国ニュース 中京テレビNEWS 
国内初、インフルエンザ“経鼻ワクチン”承認へ 
対象は2歳から18歳

東京 2023.02.27  以下記事の要約です。

国内初、注射ではなく、
鼻の中にふきかける新しいタイプのインフルエンザのワクチンが、
2歳から18歳むけとして承認されることになりました。

厚労省の部会が薬事承認を了承したのは、
第一三共が開発したインフルエンザの経鼻ワクチン「フルミスト」で、
対象は2歳から18歳です。
「フルミスト」は毒性を弱めたウイルスを使った、
いわゆる生ワクチンで、両方の鼻の中に1回ずつふきかけ、
インフルエンザの発症を予防します。

2016年の申請から7年かかったことについて、
厚労省は臨床試験が追加された上、
データの精査に時間がかかったと説明しました。
注射ではなく、鼻にふきかけるワクチンの承認は国内初です。】



こんにちは。
中京テレビニュースのサイトに
2023年2月27日、
国内初、インフルエンザ“経鼻ワクチン”承認へ
対象は2歳から18歳   東京 2023.02.27

https://www.ctv.co.jp/ctvnews/news91dy9f6af2fmjocw54.html
という記事が掲載されました。
対象は、2歳から18歳なので、子供向けということです。
経鼻ワクチンなら、痛くないので子供達は大歓迎でしょう。

さらに、いままでのインフルエンザワクチン(皮下注射)には
大きな欠点があったのですが、経鼻ワクチンなら、
その欠点が克服できている可能性があるのです。


①インフルエンザワクチン(今までの皮下注射)
毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、
毎年インフルエンザワクチン(皮下注射)を多くの日本人が接種していますが、
流行は防げていません。
これは、実は理論上、仕方のないことなのです。

インフルエンザワクチンを皮下注射することにより、
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
つまり粘膜面での感染防御はそもそも不可能ということです。
感染予防が不可能なのですから、当然流行予防もできません。

つまりインフルエンザウイルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦
うことになります。
ワクチンで産生されるIgG抗体は呼吸器粘膜面に滲出して、
細胞外でウイルスと戦うこととなります。

毎年流行している普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、
呼吸器と消化器でだけ生存できて、血中には入れません。
万一血中に侵入できるインフルエンザウイルス(強毒性)が出現したら
脳を含めて全身の臓器に感染可能なので極めて危険なのです。


②インフルエンザ“経鼻ワクチン”

インフルエンザ経鼻ワクチンを接種すれば、、
粘膜面を防御しているIgA抗体が産生される可能性があります。
つまり粘膜面での感染防御ができるかもしれません。
粘膜面での感染予防が可能なら、当然流行予防も可能となるので
これは、おおいに朗報と言えます。

日本を含む北半球では、毎年11月頃からインフルエンザの流行が始まり、
翌年の1~2月頃にピークとなり、3月頃まで続きます。
日本ではその年によって流行の大小はありますが、
毎年1千万人を超える感染者がみられ、死亡者数は2,3千人となります。

経鼻ワクチンで、粘膜面での感染予防・流行予防が可能なら、
2,3千人の死者が減ることとなります。
インフルエンザ“経鼻ワクチン”、是非とも活躍して欲しいものです。


江部康二

糖質制限食、体調が悪くて食欲がないときのの対処法は?
こんにちは。
冬は、かぜなどをひきやすい季節です。
外来診察をしていると、時々、
風邪やインフルエンザで寝込んだ時の食事についての質問があります。

レトルトのお粥やうどんあるいは果物なら、
簡単に調理できるので、一人暮らしで、
風邪でなどでしんどいときでもなんとかなりそうです。
しかし、残念ながらいずれも糖質制限NG食品ですね。

さて、それでは、風邪をひいたり寝込んだりしたときなどの糖質制限食について
考えてみましょう。
このような食欲がないときのために、
糖質制限OK食品の中で、あっさり系を選んでみました。

京都は、お豆腐が美味しいですから私もよく食べます。
冷や奴でもいいんですが、
風邪ひいて寒気でもあるときは湯豆腐がお奨めですね。

温かい食品として、
茶碗蒸し、卵スープ、野菜スープ、すまし汁、味噌汁、豚汁などもいいですね。
いけそうだったら、おでんの大根とか豆腐とかひろうすなどは如何でしょう。

寒い今の季節なら、鍋もお奨めですね。
具としては、白身魚や豆腐、野菜、がんもどき
・・・風邪のときでも美味しそうです。 (^^)

豆腐を水きりしてつぶし、小さく刻んだ野菜などを混ぜ込んで丸め、
油で揚げたものを 関東ではがんもどき、
関西ではひろうすと呼ぶことが多いようです。
ちなみに我が家では何故か、がんもどきです。

一人暮らしで料理の手間が面倒くさいようなときは、
前もって冷凍茶碗蒸しとか常備しとくといいですね

風邪などで食欲不振のときは、
脱水になりやすいので糖尿人は特に注意が必要です。
上記の料理など糖質制限食OK食材で、
水分・電解質(*)補給も心掛けてくださいね。
麦茶はカフェインなしで、ナトリウムやカリウムが豊富に含まれていますので、
脱水予防によい飲み物の一つです。
大量の汗をかいたときは、麦茶に少量の塩分や梅干しなどを入れて電解質を補うのが良いです。
1日から2日くらいなら、水分補給で脱水さえ予防しておけば少々低カロリーでも大丈夫です。

糖質制限食OKで電解質補充できて脱水予防できるのは
飲料水の『アクエリアスゼロ』です。
長持ちするので、糖尿人や糖質セイゲニストは是非、備蓄しておきましょう。

なおごま豆腐(100gあたり81kcal)と木綿豆腐(100gあたり72kcakl)は
カロリーの差があまりありませんが、
100gあたりのごま豆腐には、たんぱく質1.5g、脂質4.3g、炭水化物9.1gと
炭水化物がく含まれています。
木綿豆腐100gあたりのたんぱく質量は6.6g、炭水化物は1.6gとなっており、
ごま豆腐の炭水化物含有量はは木綿豆腐の5.7倍であり、
糖質制限食的にはNG食品です。


(*)
電解質は、体の細胞が正常に機能するために必要です。
体は多量のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、リン酸塩を必要とします。


江部康二
西淀川区いきいき講演会のご報告。
第24回 西淀川区いきいき講演会

日時 令和5年2月25日(土) 午後2時30分より 入場無料先着200名

場所 エルモ西淀川 1階大ホール (西淀川区大和田2-5-7)

第1部 午後2時30分~
    に~よん参考書から 認知症を理解して安心した生活を! 
    陽だまり西淀川オレンジチーム

第2部 午後3時30分~
   「認知症を防ぐ最強の食事術 ~健康は食事から!糖質制限を始めよう~」   
一般社団法人 高雄病院 理事長 江部 康二 先生


【感染防止対策に関するお願い】
・ご来場の際は、事前の検温、マスク着用、手指消毒にご協力をお願いします。
・発熱、風邪症状のある場合には、ご来場を控えてくださいますようお願いします。
 ※新型コロナウイルス感染症の拡大等により、
  中止または開催方法を変更する場合があります。


主催:西淀川区医師会/に~よん地域包括ケアシステム委員会

共催:西淀川区老人クラブ連合会/西淀川区地域包括支援センター/西淀川区南   
西部地域包括支援センター/西淀川区老人福祉センター】


こんにちは。

2023年2月25日(土)
江部診療所の外来を少し早めに切り上げて
第24回 西淀川区いきいき講演会
に、講師として出かけました。

一般向けの講演なので、できるだけわかりやすくお話しました。
HbA1cに関して、参加者から質問がありました。
HbA1cが6.2~6.4%くらいでコントロール良好なのに、
主治医がエクメットHDを処方したとのことでした。

私は「エクメットHDは、低血糖リスクのない良いお薬です。
   ただ血糖コントロールがとても良好なので、
   薬なしでやっていける可能性が高いです。
   そして、本日の講演で<糖質制限食>のことを学ばれたので、
   まったく、薬なしで、
   このままコントロール良好をずっと維持できると思います。」

と、お答えしました。
また、主治医が糖質制限食に賛成でないときはどうしたらいいですか?
という質問もありました。
幸い
「日本糖質制限医療推進協会」の提携医療機関
https://www.toushitsuseigen.or.jp/med-institution

が北海道から沖縄までありますので、是非、ご相談して頂ければ幸いです。


主催の西淀川区医師会の先生方と、講演終了後5分間くらい
お話しする時間がありました。
そうしたら、「目から鱗が落ちる」とは、このことでしたとのご発言でした。
特に米国糖尿病学会による以下の見解に感銘を受けておられました。

2004年
 「血糖値を直接上昇させるのは、糖質だけで、蛋白質、脂質は上昇させない。」
2013年10月
「糖質制限食を、地中海食、ベジタリアン食、高血圧食、脂肪制限食と共に
 正式に容認」
2019年4月
「米国糖尿病学会は<コンセンサス・レポート>において、
  『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』と明言しました。」
その後、
2020年、
2021年、
2022年、
2023年のガイドラインでも
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』という見解を維持しています。



このように、糖質制限食はその有効性と安全性について
米国糖尿病学会のお墨付きというわけで、私としても嬉しい限りなのです。

日本の糖尿病専門医も早く、変わって欲しいものです。
また日本糖尿病学会も、米国糖尿病学会の見解を、
日本の一般の開業の先生方に、是非知らせて欲しいものです。


江部康二
カナダ・イヌイットの物語③
こんばんは。

カナダ・イヌイットの物語①②として、
ルーツ・主食の変化(2月21日)、社会の変化(2月22日)と過去のブログで述べてきました。

カナダ以外の極北の地アラスカ、シベリア、グリーンランドにもモンゴロイドが住んでいて、
同様の生業で伝統的に暮らしてきました。
極北の地に暮らす人々は、それぞれ名前も違っています。
以下、簡潔にまとめてみます。

<極北の人々>

カナダ:ケベック州の北の極北民の集団が「イヌイット」です。

    かつてエスキモーと呼ばれていましたが、1970年代からカナダ政府は
    「イヌイット」と呼ぶようになりました。

アメリカ:アラスカの北西部沿岸の集団は自称「イヌピア-ト」です。

     アラスカ南西部の沿岸の集団は自称「ユピート」です。
     アメリカ政府は2つの集団をまとめて「エスキモー」と呼びます。

ロシア:シベリアの集団は自称は 「ユピート」です。
    ロシア政府は「エスキモー」と呼びます。

デンマーク:グリーンランドの集団は、現在ではカラーリットと自称しています。
      12世紀のチューレ文化の時にグリーンランドに渡ったモンゴロイドが直接の祖先と考えられます。
      18世紀初頭、デンマークから再征服とキリスト教化を受けました。

<エスキモー>

エスキモー (Eskimo) は、
北極圏のシベリア極東部・アラスカ・カナダ北部・グリーンランドに至るまでのツンドラ地帯に住む
先住民族(モンゴロイド)の総称です。
考古学や言語学では、極北民を総称してエスキモーと呼んでいます。
「エスキモー」は他のカナダ先住民の言葉で「生肉を食べるやから」という他称であり、
侮蔑的な意味があるとして、1970年代先住民運動の高まりの中で、
カナダ政府は「イヌイット」という名称を使用するようになりました。
イヌイットは彼等の言葉で「人々」を意味します。

近年「エスキモー」は、他のカナダ先住民の言葉で「かんじきをはく人々」という意味という説も唱えられていて、
こちらであれば差別的ではありませんね。


江部康二
血糖値とHbA1cの関係性。
【23/02/22 おかもと
血糖値とa1cの関係性
こんにちは!
私、静岡県在住39歳男性でこの度島田市横田川まさと市議の秀美夫人よりご紹介いただき相談させていただきました。
今年1月に2型糖尿病診断され現在投薬治療と食事療法で改善に取り組んでまいります。

先日、かかりつけ泌尿器科より紹介状いただいた市立病院で診察させていただき
血糖値 341→155
a1c 8.9→10.0
※共に食後2時間の測定
※測定日1/23→2/8
という不可解な反比例した結果でした。
医師の説明によるとa1cが下がっていない要因はインスリンがなんらかの原因で機能していない可能性が高いとの見解で、次回膵臓を見るのと眼底検査を予定しています。

この見解は江部さんとしてはいかがでしょうか?正解がわからず路頭に迷っています。

直近体調は腎炎の炎症はほぼ治まり、夜間頻尿はひどい時は2時間おきですが調子いいときは一回行くくらいです。

ちなみその他の関連数値推移は
AST 17→18
ALT 13→14
LDL-C 143→133
HDL-C 41→57
eGFR 83.1→68.5
BUN 13.9→22.9
クレアチニン 0.83→0.99
尿アルブミン 6.5

下記、発症までの経緯と経過です。
1/8〜 発熱
1/12 コロナ、インフル検査陰性
1/17 熱がひかず喉の渇き、頻尿症状のため泌尿器科診察し腎盂腎炎診断 。
1/23 検査結果でて2型糖尿病診断。投薬治療(オングリザ5m)、食事療法開始。
2/1 秀美夫人よりご教授いただき主食炭水化物抜き糖質制限の療法開始。
2/8 泌尿器科より紹介状受け市内の市立病院にて診察。メトグルコ250mを追加処方。

以上の事も踏まえて何か少しでもわかる事ご教授いただけましたら幸いです。
何かその他必要な情報や検査数値ございましたらご遠慮なくお聞きください。

よろしくお願いいたします🙇】



こんばんは。
おかもとさんから、【血糖値とHbA1cの関係性】
について、コメント・質問を頂きました。


【血糖値 341→155
a1c 8.9→10.0
※共に食後2時間の測定
※測定日1/23→2/8
という不可解な反比例した結果でした。】


この結果は不可解ではなくて、妥当な結果と思います。

【1/23 検査結果でて2型糖尿病診断。
投薬治療(オングリザ5m)、食事療法開始。
2/1 秀美夫人よりご教授いただき主食炭水化物抜き糖質制限の療法開始。】


1/23に糖尿病の診断が確定して
2/1から糖質制限食開始です。
食後2時間血糖値は、341mgから155mg/dlと著明な改善です。
糖尿病型から境界型に改善しています。

HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。
特に過去1ヶ月間の平均血糖値をよく示す指標です。
おかもとさんは、1/31までは、普通に糖質を摂取しておられます。
HbA1c10.0%は、2023年1月の1ヶ月間の平均血糖値をよく反映しているので
そんなもんだと思います。

3月に血液検査をすれば、糖質制限食を開始して、1ヶ月以上が経過しているので
HbA1cは、1%以上改善すると思います。


【医師の説明によるとHbA1cが下がっていない要因はインスリンがなんらかの原因で機能していない可能性が高いとの見解で、次回膵臓を見るのと眼底検査を予定しています。】

膵臓の検査と眼底検査はとても有用なので、是非実施しましょう。
「頸動脈エコー」「心エコー」「心電図」など循環器的検査もしておくと安心です。

ともあれ、インスリンに関しては、
食後2時間血糖値は、341mgから155mg/dlと著明に改善していて、
追加分泌インスリンはしっかり作用しているので安心してください。


【AST 17→18

ALT 13→14
LDL-C 143→133
HDL-C 41→57
eGFR 83.1→68.5
BUN 13.9→22.9
クレアチニン 0.83→0.99
尿アルブミン 6.5】


HDL-Cが41から57に増えてとても良い変化です。
糖質制限食を継続して、さらに60以上を目指しましょう。
尿中アルブミンは6.5と正常であり、糖尿病腎症は大丈夫です。


江部康二


カナダ・イヌイットの物語②
こんばんは。
2023年2月21日のブログで、カナダ・イヌイットのルーツと主食の変化を
概説しました。
今回は、カナダ・イヌイット社会の歴史的変化をみてみましょう。

<社会の変化>
イヌイットといえば誰でもイメージするような、アザラシ猟をして雪の家に住むという文化は、15世紀頃に形成されました。
その後、ホッキョクイワナ、アザラシ、シロイルカ、カリブーといった食材がイヌイットの主食となっていきました。

1900年代初頭までは、散発的にヨーロッパからのタラ漁民、捕鯨者、探検家などとの接触はありましたが、
この伝統的食生活・生活様式が保たれていました。
冬季と夏季では、動物資源の分布や自然環境に応じて、周期的にキャンプ地を変えて生活していました。
1910年代にハドソン湾会社などの交易会社がカナダの東部極北地帯へと進出し交易所をつくり始めました。
これで欧米人との交易が本格的に始まり、1920年代から1940年代まで、
ホッキョクギツネの毛皮交易が、イヌイットの主たる収入源となりました。
しかし、第二次世界大戦のため欧米の高級毛皮市場が崩壊して、大戦終了後も、毛皮市場は停滞しました。
1940年代は、ホッキョクギツネの毛皮の暴落と結核の蔓延のため、イヌイットの生活は最悪の状態にありました。
結核、梅毒、麻疹などの伝染病で総人口の1/3が命を落とし、人口減少が続きました。

1939年以降、カナダ.イヌイットはカナダ政府の管轄におかれ、法律上は「インディアン」と見なされるようになりました。
1950年代半ば以降に、北ケベックのイヌイットは、急速な社会変動を経験しました。
すなわち、カナダ政府による極北官僚制行政時代です。

①定住化、学校教育、福祉・医療サービス
②狩猟を中心とする生業経済から賃金労働を中心とする混交経済への移行
③船外機付きの小型ボート、スノーモービル、高性能ライフルの導入
④交通・通信網の発達


このカナダ政府による政策により、イヌイットの生活様式は、急速に都市化・欧米化していきました。
1970年頃までには、ほとんど全てのイヌイットが村の中で定住するようになりました。
アルコール、タバコ、麻薬はかつてイヌイット社会に無かったものですが、急速に浸透していき、
人々を苦しめ大きな影を落とすこととなりました。
1961年にノルウェーでアザラシの皮をなめす技術が開発されて、
高級毛皮コートの材料としてイヌイットの新たな交易品となりました。
このアザラシの毛皮の交易は、20年間以上イヌイットの主たる収入源となっていました。

しかし、毛皮獣の捕殺に反対する欧米の動物愛護団体の圧力で、
1983年ヨーロッパ共同体(EC)が全面的に毛皮の輸入を禁止し、イヌイットの経済は大きな打撃を受けました。
朝日新聞時代の本多勝一氏が、
1960年代初頭に現地でイヌイットと共に生活し取材し名著「カナダ・エスキモー」を刊行しています。
この本に書いてあるような、季節的に移動生活を行い、冬季には雪の家に住むような生活は、今ではもうみられません。

1980年代からは定住化のもと、灯油によるセントラル・ヒーティング、村の発電所からの電気、電気冷蔵庫、電気ストーブ、電気オーブン、水洗トイレ・・・が徐々に普及していきます。
冬期には全てが凍結するので下水道、水道はなく、週に1~2回の給水車、汚水や屎尿は各戸のタンクに溜められ、週に1回くみ取り車がきて処理します。
従って、現在のカナダ・イヌイットの家は、電話・テレビなど含め、定期的にシャワーを浴び、衣類も洗濯するので、毛皮の匂いや独特の生活臭などもありません。家をみただけでは、イヌイットの家か白人の家か区別はつきません。


参考文献

①岸上伸啓:イヌイット.中公新書.2005
②岸上伸啓:極北の民カナダ・イヌイット.弘文堂.1998





江部康二
カナダ・イヌイットの物語①
こんにちは。

今朝起きたら、雪がそこそこ降っていました。
屋根にも車にも雪が積もっていました。
2023/1/24の大雪のときの冷え込みには及びませんが
それでも最低気温の午前6時は、0.5℃でした。
日中も4.8℃までした上がらないので寒い一日です。

冷え込みついでに、今日はもっと寒い地方のお話しです。
イヌイットは糖質制限食的にはとても興味深い民族ですので時々記事にして、
歴史や社会や食生活の変遷を紹介したいと思います。

<イヌイットのルーツ>
第四紀の氷河時代の最後の氷期(ウルム氷期)で特に寒冷化が強まった28000~13000年前に、
陸上に存在する大量の氷河のために、海のもとである水が少なくなり、
海面が下がり、ベーリング海峡が陸続きとなりました。
これは、ベリンギア陸橋と呼ばれています。
名は陸橋ですが、規模はベリンギア大陸と呼べるほど、広大でした。

このとき、シベリアから狩猟民(モンゴロイド)が、アメリカ大陸に渡りました。
彼等は、氷河期が終わり陸路が開けると、南下してアメリカ西部から南米に到りました。
これが、それぞれアメリカ・インディアンと南米のインディオの祖先と考えられます。

彼等とは別に約4000年前、ベリンギア陸橋がすでに水没したあと、
シベリアからカヌーで渡ってきた狩猟民が、現在のカナダ・イヌイットの祖先と考えられています。

<主食の変化>
4000年前、すでにカナダ極北やアラスカに、人類(モンゴロイド)が移住し居住していました。
現在のイヌイット文化と同様の生活様式をしていたとは、必ずしもいえませんが、
セイウチ猟などを中心に生業としていたようです。

現在のイヌイットの生活様式の原型ですが、まず10世紀頃、アラスカイヌイットでホッキョククジラが主食の時代がありました。

その後200~300年で他の極北周囲地域、西はチュコト半島、
東はグリーンランドまでホッキョククジラ猟が広まりました。この文化は、チューレ文化と呼ばれています。

12世紀から17世紀にかけて極北地域に寒冷化が起こり、それまで豊富だったクジラが少なくなりました。
そのためクジラ以外のものを主食とせざるを得なくなり、
各地域でチューレ文化は多様化して、独自の文化が形成されていきました。

アザラシ猟をして雪の家に住むという文化は、15世紀頃に形成された生活様式です。
その後、ホッキョクイワナ、アザラシ、シロイルカ、カリブーといった食材がイヌイットの主食となっていきました。
この頃は、穀物など一切なしで究極の糖質制限食ですね。 (^_^)
1900年代初頭までは、この伝統的食生活が保たれていました。

1920年代に北ケベックの各地に、交易所が設置されていきました。
1940年代までは、ホッキョクギツネの毛皮が主たる交易品でした。
イヌイットは、ホッキョクギツネの毛皮交易で、小麦粉、砂糖、ビスケット、紅茶、ラードなどを購入しました。
小麦粉とふくらし粉とラードで、無発酵パンのバノクを作り、主食として定着しました。
これが、穀物を摂取し始めた起源と考えられます。
バノクや紅茶は、スコットランド系の捕鯨者や、ハドソン湾会社の交易者がイヌイットの間に持ち込んだ習慣であり、
1920年代から急速に広まったと考えられます。

1950年代半ば以降に、カナダ政府の政策もあり、北ケベックのイヌイットは、
急速な社会変動と食生活の変化を経験しました。
都市化、欧米化の進行です。

1993年、マッギル大学の先住民栄養環境研究センターの調査によれば、
イヌイットの若者は、ハンバーガー、ピザ、ポテトチップス、コーラ、ガム、チョコレートを好み、
カロリーの大半が、
これら糖質を大量に含むジャンク・フ-ドでした。( ̄_ ̄|||)



江部康二


参考文献
①岸上伸啓:イヌイット.中公新書.2005
②岸上伸啓:極北の民カナダ・イヌイット.弘文堂.1998



2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催。
こんにちは。

2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催いたします。

参加方法は、東京での会場参加かオンライン参加かを選択していただけます。

第1部は高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士による講義です。

第2部は私による講義で、糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論の解説や症例検討などを行います。

第3部は発表・討議で、糖質制限食の指導を行っておられる6名の医師の方々に発表いただき、 ディスカッションを行います。

6名の医師は勿論、高雄病院勤務ではありません。

参加者皆で、活発な討論を行い、実のあるセミナーにしたいと思います。

江部康二


以下事務局からのお知らせです。

***********

ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきましてありがとうございます。

本日は、医療従事者向けセミナーの開催をご案内申し上げます。

2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催いたします。

参加方法は、東京での会場参加かオンライン参加かを選択していただけます。

第1部は高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士による講義で、高雄病院の糖質制限食と栄養指導について、コロナ禍の影響や患者様の様子なども交えてお話しいたします。

第2部は江部理事長による講義で、糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論の解説や症例検討などを予定しております。

第3部は発表・討議で、糖質制限食の指導を行っておられる6名の医師の方々に発表いただき、 ディスカッションを行います。

医療従事者向けセミナーは、医療機関での糖質制限食指導の普及促進、ブラッシュアップ、発展を目指して2013年より開催しております。

また、2019年3月のセミナーより、臨床で糖質制限を採り入れておられる医療従事者の方々に発表いただき、指導法や症例などの共有、意見交換をしていただく「発表・討議」の時間を設け、参加いただいた方から、大変参考になる、刺激になる等ご好評いただいております。

今回も多様なテーマで6名の医師の方々にエントリーしていただいております。

医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

*セミナー情報URL:http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity

//////////////ご案内/////////////////

一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会主催
「医療従事者向け糖質制限食セミナー」<東京&オンライン>

■日時:2023年4月16日(日)12:30~17:00頃

■会場:アットビジネスセンター東京駅八重洲通り 604号室

〒104-0032 東京都中央区八丁堀1-9-8 八重洲通ハタビル 6階
https://abc-kaigishitsu.com/tokyo_yaesudori/access.html

■内容:

◇第1部:「糖質制限食による糖尿病指導① ~高雄病院の食事と栄養指導」12:30~

 講師: 橋本 眞由美 管理栄養士 / (一財)高雄病院 栄養科

◇第2部:「糖質制限食による糖尿病指導② ~理論と臨床」 13:20頃~

 講師: 江部 康二 医師 
    (一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長

◇第3部: 「発表・討議」 15:05頃~

・「糖質制限治療の実践症例 ~年間のべ1,000名を超える外来指導より見えるもの」
 佐藤 信昭 医師 / 茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川)  副院長(内科)

・「対話する糖質制限医療 ~糖質制限を指導してはいけない!?」
 田頭 秀悟 医師 / たがしゅうオンラインクリニック 院長

・「高LDL-C血症に対する中等度糖質制限食と筋力トレーニングの組み合わせの効果について」
 宇佐見 啓治 医師 / うさみ内科(福島) 院長

・「糖質制限と薬理学的糖質制限の失敗から学ぶ糖質中毒~糖質依存症のメカニズム~」
 影山 広行 医師 / 株式会社ドクターバンク

・「カンボジアにおける『ほろ酔い低糖質食セミナー&パーティー』の実施」
 奥澤 健 医師 / ケンクリニック(カンボジア) 院長

・「糖質制限食の導入の実際 ~フリースタイルリブレプロを用いて」
 髙橋 裕彦 医師 / たかはし整形外科医院(香川) 院長

*第3部は、発表10分・討議6分ずつを予定しております。

*第3部の発表者様の中には、オンラインで発表される方もいらっしゃる予定です。

*第1部・第2部の映写資料データ(PDF)は、後日ダウンロードしていただけます。

*当日のセミナー動画は、後日一定期間ご覧いただけます。(セミナー参加予約者様限定)

■参加対象:

医療従事者の方(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、鍼灸師など)

■受講費:

1.会場参加(東京会場へご来場の方)

・医師・歯科医師の方: 賛助会員 6,800円 / 一般(会員以外) 8,500円

・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 4,800円 / 一般(会員以外)6,000円

2.オンライン参加

・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(会員以外) 9,000円

・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(会員以外)6,500円

<オンライン参加についての補足・ご案内>

*Zoomを使用して行います。

・スマートフォンでもご参加可能ですが、パソコンかタブレット端末でご参加いただくと、画面が大きいため、スライド資料を閲覧しやすいです。

・事前に招待URLをお送りし、当日はそのURLにアクセスして、オンライン受講(参加)していただくかたちとなります。

・詳細はご予約後にご案内申し上げます。

・Zoomの挙手機能を使用して、オンライン参加の方も質疑応答や討議で挙手・発言していただる予定です。

■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。

※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。

■お申し込みの流れ:

1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。

■お申し込み方法:

★賛助会員の方:

事務局へメールにて、
①会場 or オンライン、どちらでの参加ご希望か
②医療機関でのご職種
をご記入の上、お申し込み下さい。

★賛助会員入会をご希望の方:

1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up

2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席に関するお問い合せ」をご選択下さい。
「通信」欄には、以下をご記入下さい。
① 「4/16セミナー、会場 or オンライン(←ご希望の参加方法をご記入下さい)参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact

★一般(会員以外)で、セミナーの受講のみご希望の方:

下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med

■その他:

・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは4月14日(金)までに事務局へご連絡願います。それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。

膝の手術のため、HbA1cを7%未満に!6週間で目標達成?
【23/02/19 Sk
3か月前から、ヘモグロビンA 1C値が8%.

初めまして。
福岡在住の69歳の主婦です。 
正座はできるのですが、左膝の痛みで手術をします。
ヘモグロビンA 1Cが2022年9月に8%、
2023年1月も8%あり、
ヘモグロビンを7以下にしないと手術はできないと言われ、
2023年1月中頃からスーパー糖質制限をやり出してます。

今月末に再度ヘモグロビンA 1Cの採血を致します。
2022年夏までは、6.5 6.8%を維持していたのですが
9月にコロナで16日間入院して、お薬のデカドロンやらインスリンを
毎日打たれたので血糖値が上昇したみたいです。
ワクチンは打っていません。

江部先生を崇拝してる妹も15年前からスーパー糖質制限を実行している為
すこぶる体調が良く本人も感謝してます。
今回の件で妹に教えてもらいながら
私もスーパー糖質制限をやってます。

2月末にヘモグロビンA 1Cを採血します。
が、2カ月くらいの糖質制限でもA 1Cは落ちるのでしょうか?
体重は3Kほど減りました。
最近、ブラン100のパンが近くにできたのですが、
ブラン100も食べてもよいか合わせてお願い致します。

本当に妹は先生のおかげで素晴らしく
楽しくスーパー糖質制限をし今は何の薬も飲んでいません。】



こんにちは。
福岡在住の69歳の主婦さんから
【膝の手術のため、HbA1cを7%未満に!6週間で目標達成できるか?】
というコメント・質問を頂きました。

妹さんが、15年前からスーパー糖質制限を実行している為
すこぶる体調が良いとのこと、良かったです。


【2022年夏までは、HbA1c6.5~ 6.8%を維持していたのですが
9月にコロナで16日間入院して、お薬のデカドロンやらインスリンを
毎日打たれたので血糖値が上昇したみたいです。】


なるほど、新型コロナウイルス感染症で入院されて
治療でデカドロン(ステロイド薬)の注射を打たれて、
血糖値が上昇し、そのためインスリン注射も打たれたという経過ですね。

仰る通り、ステロイド注射の影響で、血糖値が急上昇したと
考えられます。
そのため、やむをえず、インスリン注射が必要となったのです。
新型コロナの治療を優先しますので、このことは仕方がないと思います。


【ヘモグロビンを7以下にしないと手術はできないと言われ、
2023年1月中頃からスーパー糖質制限をやり出してます。】


スーパー糖質制限食の開始、正解です。
スーパー糖質制限食を実践すれば、HbA1cは速やかに改善します。
2023年1月中旬に、HbA1c8%くらいで、スーパー糖質制限食を開始したなら
1ヶ月で1%以上は改善するので、
2月末には、確実に6.9%以下となっています。
従って、左膝の手術は、滞りなく予定通り実施できると思います。
妹さんともよく相談されて、「スーパー糖質制限食」をきっちり実践して頂ければ
幸いです。

体重も3kg低下しているので、「スーパー糖質制限食」が上手に
実践できていると思います。
ちなみに、元々の身長と体重はどのくらいですか?
3kgの減量成功は、膝にもとても優しいと思いますよ。

【2022年夏までは、HbA1c6.5 6.8%を維持していた。】

もともと、軽症の糖尿病がありましたね。
今後は、スーパー糖質制限食の実践で
HbA1cは、6・2%以下になっていくと思います。



市販の6枚切り食パンの糖質量は1枚あたり約26.6gですが、
「ブラン100」の糖質量は1枚あたり約2.97gです。


小樽フィッシャーマンズキッチンの
大豆ブリオッシュモーニングブレッド(見た目は食パン)は
6枚切りだと、1枚に糖質が約3.7gです。


①②ともに、糖質制限食OK食材です。
最近はローソンや山崎パンでも
糖質制限パンを販売していますので、実に便利になったものです。


江部康二
生理的ケトン体と病理的ケトン体。糖尿病は不治の病?
こんにちは。
  
2型糖尿病の人は基本的にインスリン作用不足がありますが、
ほとんどの場合インスリン分泌欠落まではいっていません。(*)
従って、2型糖尿病の人が、『糖尿病ケトアシドーシス』を発症することはめったにないのです。
 
例えば、正常人のインスリン分泌能力が10あるとすれば、
2型糖尿病を発症した時点で、糖尿人の分泌能力は7くらいに減っています。
 
これが糖尿病歴10年、20年、30年と続き、血糖コントロールが良くなければ、
7→6→5→4→3→2→1→0 とインスリン分泌能力が低下していきます。
 
従って、2型糖尿病の人でも、血糖コントロールが不良で、
じり貧でインスリン分泌が減少して、なくなるような病態までいけば、
インスリン注射が絶対に必要でインスリン依存状態になりえるわけです。
高血糖が確実にβ細胞を障害するので、コントロール不良の糖尿病は
インスリン分泌能力が、経時的に減っていくわけです。
 
例えば、1998年に発表されたUKPDSというイギリスの大規模な疫学的研究では、
インスリン、経口血糖降下剤、従来の食事療法(カロリー制限・高糖質食)で徹底的に強化治療をしても、
10年たった時点では、HbA1cは基本的に悪化していて、
 
「2型糖尿病は慢性の進行性のインスリン分泌障害で不治の病である」
 
という、恐るべき結論になっています。(=_=;)  

いわゆる糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を食べる限りは、UKPDSと同じ結論にならざるをえません。
 
まあこの結論は、糖質制限食で変えることができて、進行は止まると考えられます。
 
 
私も2型糖尿病で、正常人に比べれば、インスリン分泌不足は、存在します。
しかし、私のインスリン、それなりに働いてくれてますので、
糖質制限食で生理的ケトン体上昇はありますが、血糖値はほぼ正常です。
52歳で糖尿病を発症して、今73歳ですが、スーパー糖質制限食を21年継続していて
糖尿病合併症もなく、HbA1cは、5.6~5.9%くらいで、経過していて、糖尿病の進行は止まっています。
インスリン分泌能力も、21年間、変化はありません。


 病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスは、
1型のシック・デイとか2型のペットボトル症候群(**)とか、
1型でいきなりインスリン注射を中止したとか、
インスリン作用欠落(10→0~1)の時にしか生じません。
血糖値は、通常は500mg/dl以上となります。
 
いきなり急速に発症した1型なら、病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスになりえます。
しかし2型であれば医療機関に全く受診せず放置したとかよほどのことが無い限り、
病理的ケトン体上昇を伴う糖尿病性ケトアシドーシスはまずありません。
糖質制限食を実践中の糖尿病患者さんで、血中ケトン体が今の基準値より高くても、
血糖コントロールが比較的良好なら、インスリン作用も確保されていて、生理的なもので何の問題もありません。
 
(*)
インスリン分泌不足とインスリン抵抗性(効きが悪い)が合わさってインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。
日本人の場合はインスリン分泌不足が主で、欧米白人はインスリン抵抗性が主とされています。
 
(**)

ペットボトル症候群
ペットボトルを持ち歩いたりして、清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと糖尿病の素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が、このように吸収されやすい糖質を多量に摂取していると、飲む度に血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されるのですが、ついにはインスリンの供給が追いつかなくなり血糖値が高くなります。
 
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となります。
それが続けば、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
 
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
 
江部康二
3月29日(水)に東京・池袋で、「低糖質スイーツ作りのデモ・試食会」を開催
こんにちは。

2023年3月29日(水)東京・池袋にて、
日本糖質制限医療推進協会主催の「低糖質スイーツ作りのデモ・試食会」
を開催します。


当会は、低糖質スイーツ教室を2017年~2020年1月まで東京と京都で開催し、
ブログ読者の皆さんにも多数参加いただきました。
その節は、ありがとうございました。

このたび、「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(東京)~デモ・試食会」と題して、
久しぶりに講習会を催すことになりました。

講師は以前と同様で、パティシエの小寺幹成さんと管理栄養士の佐々木栄子さんです。

・小寺さんのプロフェッショナルな技を直接見て、おいしく低糖質なスイーツづくりを学べること
さらに、
・糖質制限による栄養指導のご経験豊富な佐々木さんの的確なアドバイスも得られること
が、この教室の嬉しいところと思います。

今回のテーマは「フィナンシェとババロア」だそうです。
私もバレンタイン?プレゼントでいただき、どちらも試食しました。
食べやすく、美味しかったです。
皆さん奮ってご参加くださいね^^v


江部康二


以下、事務局からのお知らせです。

******************

ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。

本日は、低糖質スイーツ講習会の開催をご案内申し上げます。

2023年3月29日(水)に東京・池袋で、「低糖質スイーツ作りのデモ・試食会」を開催いたします。

☆低糖質スイーツ作りのデモ・試食会

パティシエによる低糖質スイーツ作りのデモンストレーションや解説を聴講および試食いただく会です。

おいしい低糖質洋菓子をご自宅で作っていただけるよう、パティシエの小寺幹成先生が、作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションでレクチャー。参加者様からの質問や疑問にもお答え下さいます。

また、管理栄養士の佐々木栄子先生から、低糖質菓子をご家庭で作りやすくするための工夫、学んだことを更に活用するアイデアなど、様々なアドバイスをいただきます。

血糖値が気になってお菓子を控えているという方、安心の低糖質スイーツを作りたいという方、お菓子作りは初めてという方も、是非ご参加ください。

☆今回の内容

マドレーヌと違って、全卵ではなく、卵白を使う金塊型の焼き菓子「フィナンシェ」。

今回は、このフィナンシェをメインに催します。

フィナンシェを上手に作るには、「焦がしバター」がキーになります。

デモンストレーションとあわせて、この焦がしバターの作り方、材料の混ぜ方など、各工程を丁寧に説明。

簡単なようで難しいフィナンシェ作りを学んでいただきます。

試食では、少量の小麦粉を使ったもの、大豆粉を使ったもの、2種のプレーンタイプと、アレンジタイプ1種を召し上がっていただく予定です。

また、フィナンシェ作りで余った卵黄の活用法として、「ババロア」作りもご紹介。こちらもご試食を用意いたします。

関東にお住まいの方をはじめ、皆さまのご参加をお待ちしております。

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(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
「パティシエに学ぶ、おいしく作れる低糖質スイーツ(東京)~デモ・試食会」

♪テーマ:「フィナンシェとババロア」

◆日時: 2023年3月29日(水) 13:30~15:30頃 ※開場・受付は13:15~

◆会場: としま区民センター5F 「キッチンルーム」
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-10
https://toshima-civic-center.jp/access/

以前教室開催していた会場(IKE・Biz)とは異なります。お間違えの無いようお越し下さい。

♪講師:

・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ

・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者(当会アドバイザー)

◆参加費: 賛助会員 2,800円 / 一般(会員以外) 3,400円

◆定員・対象: 18名様 ・一般(18歳以上)

◆ご持参いただくもの:筆記用具

◆お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。

◆お申し込みの流れ:

1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。

◆お申し込み方法:

※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。

★賛助会員の方: 事務局へメールにてお申し込み下さい。

★賛助会員入会+教室参加をご希望の方:

1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up

2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「3/29スイーツデモ・試食会、参加希望」とご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact

★一般(会員以外の方)で、教室参加ご希望の方:

下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/cooking

◆その他

・予約制です。当日参加はできません。

・当日の開場・受付は、デモ・試食会開始時間の15分前からです。

・デモ・試食会では、実習は行いません。

・お申し込み後、キャンセルされる場合は、3月24日(金)までにご連絡ください。
3月25日(土)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金として頂戴しますので、予めご了承ください。

・皆様でご試食いただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。

◆弊会イベント情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity

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生理的ケトン体と病理的ケトン体とケトン食。
こんばんは。

日、月のブログで「生理的ケトン体上昇」「病理的ケトン体上昇」の説明をしてきました。
その中で、骨格筋や心筋は、日常的には脂肪酸やケトン体が主エネルギー源であり、ブドウ糖は従であると記載しました。

これもまぎれもない生理学的事実で論争の余地などないのですが、
念のために補足しておきます。

「ハーパー・生化学」(原著27版)の訳本、155ぺージ・図16-9の説明に、

「心臓のような肝外組織では代謝エネルギー源は次の順に好まれて酸化される。
(1)ケトン体.(2)脂肪酸.(3)グルコース」


との記載があります。

また157ページ左側27行には、

「遊離脂肪酸は肝臓、心臓、骨格筋において好まれて利用される代謝エネルギー源であり、グルコースの消費を節約することができる。」

とあり、

157ページ、左側38行には、

「ケトン体は、骨格筋と心筋の主要な代謝エネルギー源であり、脳のエネルギーの必要性を部分的に満たす。」

とあります。

さて、ケトン体と脳の話がでたところで、ケトン食のお話しです。

<ケトン食と脳、糖質制限食>

ケトン食というと「何、それ?」といった反応が返ってきそうで、一般にはおよそ馴染みのない言葉ですよね。でもそのケトン食、小児科領域では、結構認知度は高いのです。

小児のてんかんで極めて難治性の場合があります。これは、通常のてんかんの薬を飲んでもひきつけの発作が治まらないというものなのですが、その治療として用いられているのがケトン食です。

この食事は、総摂取カロリーの75~80%が脂質という内容で、これによって難治性てんかんの発作が治まるようになるのです。これは、欧米で1920年代から続いている治療法で、有効性がはっきりと証明されています。

日本でも、小児科領域でケトン食療法は実施されています。2才~5才くらいの年齢で行われることが多いのですが、どうしても味が良くないので、物心ついてきたらなかなか続けることができないようです。2年間ぐらい継続が一つの目安になります。
 
なぜ、難治性てんかんにケトン食が有効なのか未解明のことも多いのですが、血中ケトン体そのものが発作を起きにくくするとされています。また、発作抑制だけでなく、ぼんやりとしていた患児が生き生きとしてきたり、多動な子供が落ちついてきたりなど精神行動面での改善が期待できるのもケトン食療法の利点です。

ケトン食療法は、「糖質制限食」以上の超高脂肪食で脂肪からケトン体への変換を起こし、そのケトン体が、ブドウ糖の代わりのエネルギー源として利用されることにその名前が由来しています。実際、脳を始めとして身体のほとんどのエネルギー源としてケトン体が利用されます。*

以前のブログでも説明しましたが、このように脳は、脂肪の分解産物であるケトン体をしっかり利用します。

「脳はエネルギー源としてブドウ糖しか利用できない」というのは、間違いであることを改めて強調したいと思います。

ケトン食の場合、脳のエネルギー源は、大部分がケトン体になりますが、糖質制限食の場合は、ブドウ糖もケトン体も両方利用していると思います。

ケトン食というのは究極の 糖質制限食ですので、私は以前から興味をもっていました。ケトン食の脂肪摂取率が75~80%ですが、スーパー糖質制限食で約56%です。

なお「ケトン食」及び「スーパー糖質制限食」では、血中ケトン体が高値となりますが、これはあくまでも生理的なケトン体上昇で何の問題もありません。
インスリン作用が欠落した時に生じる病理的ケトン体上昇とは異なります。

余談ですが、メリル・ストリープ(アカデミー主演女優賞を2度獲得している大女優)が97年2月に「…first do no harm(何よりも害を成すなかれ)」(邦題「メリル・ストリープ誤診」〔ビデオ販売/(株)アクロス〕)という映画を製作しています。

実話に基づいた映画で、難治性のてんかんの子供が、薬物療法が無効で脳の手術をするしかないといわれたが、ケトン食療法で良くなったというストーリーです。 (^_^)



赤血球だけは、ミトコンドリアというエネルギー生産装置をもっていないので、
人体で唯一、ブドウ糖しか利用できません。従って最低限の血糖値は、赤血球のために絶対に必要なのです。

なお、糖質制限食やケトン食を実践すれば高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。
肝臓や腎臓でアミノ酸やグリセロール(脂肪酸の代謝産物)から糖新生するからです。


江部康二

生理的ケトン体上昇と病理的ケトン体上昇と糖尿病ケトアシドーシス。
こんにちは。

前回、「生理的ケトン体上昇」の説明をしました。
医師に糖質制限食理論を話すとき、必ずといっていいほど質問されるのがケトン体のことです。
糖尿病緊急的重症病態の「病理的ケトン体上昇-糖尿病ケトアシドーシス」の危険性をよくご存知だからでしょうね。

最も簡潔に言うと、一般的には
ケトン体が今の基準値(26~122μM/l)より上昇しているとき、

インスリン作用が一定以上あるなら「生理的ケトン体上昇」

インスリン作用が欠落レベルまで低下していれば「病理的ケトン体上昇」

です。

<糖尿病と病理的ケトン体上昇>

糖尿病はインスリンの作用不足(分泌不足とインスリン抵抗性)があり、
細胞内にうまくブドウ糖が取り込めなくなる病気で、そのため慢性の高血糖状態が生じます。

高血糖にもいろんなレベルがありますが、非常に重症の糖尿病を考えてみましょう。

血糖値が500mg/dl以上もあり、尿中ケトン体が強陽性で、
口渇・多飲・多尿・腹痛・悪心・嘔吐・脱水・意識レベル低下などの症状があれば、
糖尿病ケトアシドーシスと診断できます。
もちろん血中ケトン体も高値であり、生理的食塩水の点滴・速効型インスリンの静注など緊急的治療が必要となります。

1型糖尿病の発症時や、1型糖尿病の患者さんがなんらかの理由でインスリンの注射(またはインスリンポンプによる注入)を中断した場合に起こることが多いです。
また最近では、1型糖尿病の患者さんでSGLT2阻害薬(尿中にブドウ糖を排出することで血糖値を下げる内服薬)を飲んでいる場合に、血糖値は高くないにもかかわらず体内でケトン体が作られケトアシドーシスを起こす「正常血糖ケトアシドーシス」という病態が報告されており、SGLT2阻害薬を服用している患者さんはそのことを念頭に置いておく必要があります。

糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。
「インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰」により、
糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症と高ケトン血症を生じます。
つまり肝要なのは、高ケトン血症は結果であり、原因ではないということです。

遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。
血中のケトン体が過剰に蓄積して血液の緩衝作用を上回ってくると、アシドーシスや脱水となり、重症では昏睡にいたります。

即ち「病理的ケトン体産生の亢進」は、
インスリン作用の欠乏が前提にある病態
です。
2型糖尿病では、清涼飲料水多飲による、
所謂「ペットボトル症候群」でケトアシドーシスを生じることがあります。

断食や スーパー糖質制限食実践に伴う「生理的ケトン体産生の亢進」の場合は、
インスリン作用の欠乏はありませんし、血液の緩衝作用も有効に作用していますので、安全なのです。

例えば断食の初期は一過性にアシドーシスになりますが、緩衝作用で徐々に補正されていきます。
また、健常人が激しい運動をした場合にも、一過性に血中ケトン体は増加しますが、勿論生理的現象です。


<結論>

インスリンの作用が欠乏していて高血糖を伴う、血中・尿中ケトン体の上昇は
極めて危険な病態である糖尿病ケトアシドーシスであり緊急治療が必要です。

一方、インスリンの作用が確保されていて、高血糖を伴わない血中・尿中ケトン体の上昇は、
生理的範囲内の現象であり、
人類700万年の歴史のなかで日常的に経験されてきたことなので安全なのです。


江部康二
生理的ケトン体上昇と病理的ケトン体上昇について。
こんにちは。
今日は、ケトン体について説明します。

糖質制限食を実践すると、血中ケトン体が上昇してきます。
これは生理的なもので何の問題もありませんが、かなり誤解を受けていて、
体に悪いと勘違いしている人が多いようです。

多くの医師、栄養士が生理的ケトン体上昇病理的ケトン体上昇
混同しておられますので、きっちり説明しようと思います。

まずは、一言

「農耕の始まる前は700万年間、人類、皆、糖質制限食で生理的ケトン体上昇は日常的な事象であった」

ということをお忘れなく。

ケトン体について知っておいて頂きたいのは
「正常で生理的な状態で産生が高まるケトン体がある」ということです。
これは「糖尿病が大悪化した病理的な状態で産生が高まるケトン体」とは体内の状況が全く異なり、
生体への危険性はありません。

「生理的な状態のケトン体上昇」「病理的状態のケトン体上昇」
をしっかり区別する必要があります。

アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸のことをまとめてケトン体といいます。
ケトン体は脂肪の分解により肝臓で作られ、血液中に出されます。
ケトン体は心筋、骨格筋、腎臓などさまざまな臓器で日常的にエネルギー源として利用されており、
脂肪の合成にも再利用されます。
実際、基礎代謝の大部分を占める骨格筋や心筋は、安静時にはエネルギー源の大部分が脂肪酸-ケトン体です。
つまり、私達は、ごく日常的に「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」を利用して生きているのです。

それで「正常で生理的な状態で産生が高まるケトン体」は、断食した時や 糖質制限食を実践して、
「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が活発化したときに起こる現象です。
この時は血糖値は基本的に正常です。
断食というと特殊に思えますが、人類の700万年の長い歴史の中では食料不足の方が普通ですので、
「脂肪-ケトン体エネルギーシステム」は、ごく日常的に活性化したり普通に戻ったりしながら稼働してきたと考えられます。

総ケトン体の基準値は26~122μM/Lですが、
これはあくまでも、現代人が日常的に三食以上糖質を摂取している条件下の基準値です。
断食中や 糖質制限食の初期の段階だと、総ケトン体は2000~4000μM/lていど上昇するのが普通です。
江部康二のように21年間、スーパー糖質制限食を続けている場合、
総ケトン体は、300~1400~2000μM/Lていどで、
これはスーパー糖質制限食を実践している場合の正常値と考えられます。
日常的に糖質を摂取している場合は基準値は「26~122μM/L」です。

要するに「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が活性化すれば、
単純に血中のケトン体値は高値となりますが、インスリン作用が確保されていて、
血糖値が正常なら全く何の問題もありませんし、これは生理的な現象なのです。

また糖質制限食の初期段階では、尿中や呼気中にケトン体が排泄されます。
一方、3ヶ月~半年くらい糖質制限食を継続していると、筋肉などの体細胞が、
極めて効率よくケトン体を利用するようになります。
そして、この課程の中で、腎臓や肺ののケトン体再吸収も効率良く高まると思われ、尿中には排泄されなくなります。
例えばスーパー糖質制限食実践中のある日の江部康二の血中ケトン体は1400μM/Lでしたが、
尿中ケトン体はマイナスでした。


江部康二






テーラーメイドダイエットと糖質制限食。糖尿病・メタボ・生活習慣病。
こんばんは

近年、西洋医学では、一人一人の患者さんの体質に合わせて処方を工夫しようという、
テーラーメード(tailor made)の薬物療法が注目されています。

従来、画一的な処方内容だった西洋医学においても、個に対応しようとする、好ましい変化と言えます。

高雄病院で実践している漢方医学は、まさにテーラーメードの治療なのですが、
食生活においても、私は最近テーラーメードの食事療法(tailor made diet)を提唱しています。

どんな病気の人でも共通に食べてよいもの、個別の病気において避けたほうがいいもの、
誰もが食べないほうがいいもの、個人の嗜好・・・などを考慮して一人一人に最適の食事療法を選んでいきます。

具体的には、アレルギー疾患、膠原病、消化器疾患、循環器疾患、呼吸器疾患など、糖尿病以外の病気の治療食に、
そして、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病予防に、「ブドウ糖ミニスパイク」が生じにくい「食生活十箇条」を提案しました。


『高雄病院食生活十箇条』 -アレルギー疾患の治療や生活習慣病予防に-
一、主食は未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
二、白パン・白砂糖など精製炭水化物の摂取は極力減らす
三、発酵食品(味噌、漬け物、納豆など)をきちんと食べる
四、液体でカロリーを摂らない(飲みものは水、番茶、麦茶、ほうじ茶など)
五、魚貝類はしっかり食べ、肉類は適量を摂る
六、季節の野菜や海草はしっかり食べ、旬の果物も適量摂る
七、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)など身体に良い油脂は積極的に摂る
八、牛乳は極力減らし、チーズやプレーンヨーグルトは適量摂る
九、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ
十、食事は楽しく、ゆっくり、よくかんで 



一方、既に糖尿病になった人や肥満・メタボリックシンドロームの人には、糖質制限食がお奨めです。
『糖質制限食十箇条』
一、 糖質の摂取を減らす。可能なら一回の食事の糖質量は20g以下とする。
二、 糖質制限した分、タンパク質や脂質が主成分の食品は充分量食べる。
三、やむを得ず主食(ご飯、パン、麺類など)を摂るときは少量とする。
四、水、番茶、麦茶、ほうじ茶などゼロカロリー飲料はOK。果汁・清涼飲料水はNG。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類はOK。果物なしか、ごく少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)、糖質ゼロビール・発泡酒はOK。辛口ワインなら赤白を適量OK。
醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツはNG。
十、可能なら化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。


*糖尿病の人がやむを得ず主食を摂る時は「食直前のα-GI薬又はグリニド系薬」内服。

『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。

*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。


☆☆☆
グルコーススパイク(ブドウ糖スパイク)と
グルコースミニスパイク (ブドウ糖ミニスパイク)


近年の糖尿病関係の話題として、『空腹時血糖値と食後高血糖値の差(ブドウ糖スパイク)が大きいほど、
リアルタイムに大血管の内皮が傷害されて動脈硬化になりやすく、
将来心筋梗塞の危険性が高まる』という説が有力となっています。

糖尿病の人は、当然、ブドウ糖スパイクが大きいわけです。

例えば、空腹時血糖値が100~120mgとかでも、糖質摂取後の血糖値は200、300mgとなってしまいます。
脂質やタンパク質を食べても、ブドウ糖スパイクは起こりません。

一方、糖尿病がない人でも、精製された糖質(高GI食品)を食べれば、糖尿病の人に比べれば小さいとはいえ、
ブドウ糖スパイクが生じますから、
代謝全般に乱れが生じてアレルギー疾患や高脂血症・肥満など様々な生活習慣病にも悪影響がでる可能性があります。

私は、この小さなブドウ糖スパイクを、『ミニスパイク』と呼んでいます。

精製された糖質は、特に血糖を上昇させやすい食品です。中でも白パン、
ケーキなどの精製小麦粉製品は血糖上昇指数(GI)が100もあります。ちなみに白米は70、玄米は50です。

糖尿病が無ければ、玄米などGIの低いものを主食としていれば、
ミニスパイクもほとんど起こらず、血管内皮の障害のリスクも無くなりますし代謝も安定します。

過去経験的に、「玄米魚菜食がいろんな病気の改善に良い」と言われ、
高雄病院でも1984年から玄米魚菜食を給食で提供してきました。

なぜ良いのか、理論的根拠に長年悩んでいましたが、「ブドウ糖スパイク理論」でやっと説明がつきました。
世界中に、今まで様々な食事療法があり、それぞれ治療効果を謳っていますが、
やはり「ブドウ糖ミニスパイクが少ない」という一点で共通していることが多いようです。

700万年間の人類の歴史で、穀物を本格的に摂取し始めたのは、わずか1万年前です。
700万年間は穀物摂取なしですから基本は糖質制限食となります。
スーパー糖質制限食は、人類本来の食事であり人類の健康食と言えます。
なお、糖質制限食ならブドウ糖ミニスパイクも全く起こらず、血糖値は勿論、代謝全てが安定しますので、
糖尿病やメタボをはじめ生活習慣病全ての予防・改善が期待できます。


江部康二
GIと血糖値。糖質量と糖尿病。
こんばんは。
糖尿病食事療法において、
GI(血糖上昇指数)という概念が登場することがあります。

正常人においてはGI(血糖上昇指数)が確かに有意義です。
例えば、正常人ではブドウ糖や白いパンが血糖値を上昇させる指数を100とすれば、
白米は75~89と高GI値、玄米は48~62と低・中GI値です。
精製度の低い玄米のほうが、少し血糖値を上げにくいということになります。
上記はシドニー大学のGIデータベースを参考にしましたが、GI値は研究者により、
まだまだばらつきがあります。

GIというのは、糖質50gを含む食品を摂取した後の血糖値の上昇カーブを2時間追って、
基準となる食品(ブドウ糖50g)を摂取した後の血糖値の上昇カーブの面積と比較し、パーセントで表した数値のことです。 )

GIの算出方法
      糖質50gを含有する食品摂取後
      2時間までの血糖曲線下面積
GI=─────────────────────── ×100
    糖質50gを含有する基準食(ブドウ糖)
    摂取後2時間までの血糖曲線下面積

何やら小難しいですが、要するに
同じ量の糖質でも血糖を上げやすい食品と上げにくい食品があるわけです。
GI値が高いほど、血糖値を急峻に上昇させます。

精製された炭水化物は全て、高GI食品です。
精製された炭水化物は、血糖値を急峻に上昇させる唯一の食材で、
代謝を乱す元凶です。

血糖値が上昇すれば、インスリンが追加分泌されて、
筋肉細胞や脂肪細胞にブドウ糖を取り込ませますが、
余ったブドウ糖は、中性脂肪となり蓄えられます。
このためインスリンは、肥満ホルモンと呼ばれます。

急峻に血糖値が上昇すれば、追加分泌のインスリンも大量にでます。
従ってGIの高い精製炭水化物を摂らないことは、
将来の生活習慣病の予防になります。

つまり正常人が主食に玄米や全粒粉のパンなどGIの低い未精製の穀物を食べることは
とても有意義なのです。

ちなみに、空腹時血糖値が100mg/dlの正常人がいると仮定して、
個人差はありますが、炊いた白米を一人前150g(糖質量約55g)食べたら、
食後60分血糖値は140~170mg程度に上昇しますが、
炊いた玄米150g(糖質量約55g)でしたら、
60分後のピークも140mgまでですみます。


しかし糖尿人においては、事情が全く違います。
糖尿人が炊いた白米150gを食べたあとの血糖値のピークが280mgとしたら
炊いた玄米150gなら260mgといった程度の差で、
所詮は軽く200mgを超えてきます。
つまり糖尿人が常用量の1人前の主食(糖質)を摂取すれば、
GIなど全く無関係に血糖値は200mgを超えて上昇する
とうことです。

従って糖尿人においては、GIは意味をなさないと考えた方がいいのです。
糖尿人では、
「体重64kgの人で1gの糖質が、2型で3mg、1型で5mg血糖値を上昇させる」
という公式を覚えておくことのほうが有用です。

例えば牛乳を水代わりに500ml飲めば、糖質は25gも摂取することとなります。
そうすると血糖値は2型の糖尿人で75mgも上昇することになります。
逆に言えば、100mlていどの牛乳を飲むとか、紅茶に牛乳を少々入れるとか、
料理に牛乳をちょっと使うとかは問題はありませんね。


結論です。
GIは正常人では参考になりますが、糖尿人では、ほとんど参考になりません。
糖尿人では、GIよりも食品に含まれる糖質のグラム数が大事です。



江部康二

2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催。
こんばんは。

2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催いたします。

参加方法は、東京での会場参加かオンライン参加かを選択していただけます。

第1部は高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士による講義です。

第2部は私による講義で、糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論の解説や症例検討などを行います。

第3部は発表・討議で、糖質制限食の指導を行っておられる6名の医師の方々に発表いただき、 ディスカッションを行います。

6名の医師は勿論、高雄病院勤務ではありません。

参加者皆で、活発な討論を行い、実のあるセミナーにしたいと思います。

江部康二

以下事務局からのお知らせです。

***********

ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加いただきましてありがとうございます。

本日は、医療従事者向けセミナーの開催をご案内申し上げます。

2023年4月16日(日)、医療従事者の方を対象にセミナーを開催いたします。

参加方法は、東京での会場参加かオンライン参加かを選択していただけます。

第1部は高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士による講義で、高雄病院の糖質制限食と栄養指導について、コロナ禍の影響や患者様の様子なども交えてお話しいたします。

第2部は江部理事長による講義で、糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論の解説や症例検討などを予定しております。

第3部は発表・討議で、糖質制限食の指導を行っておられる6名の医師の方々に発表いただき、 ディスカッションを行います。

医療従事者向けセミナーは、医療機関での糖質制限食指導の普及促進、ブラッシュアップ、発展を目指して2013年より開催しております。

また、2019年3月のセミナーより、臨床で糖質制限を採り入れておられる医療従事者の方々に発表いただき、指導法や症例などの共有、意見交換をしていただく「発表・討議」の時間を設け、参加いただいた方から、大変参考になる、刺激になる等ご好評いただいております。

今回も多様なテーマで6名の医師の方々にエントリーしていただいております。

医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

*セミナー情報URL:http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity

//////////////ご案内/////////////////

一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会主催
「医療従事者向け糖質制限食セミナー」<東京&オンライン>

■日時:2023年4月16日(日)12:30~17:00頃

■会場:アットビジネスセンター東京駅八重洲通り 604号室

〒104-0032 東京都中央区八丁堀1-9-8 八重洲通ハタビル 6階
https://abc-kaigishitsu.com/tokyo_yaesudori/access.html

■内容:

◇第1部:「糖質制限食による糖尿病指導① ~高雄病院の食事と栄養指導」12:30~

 講師: 橋本 眞由美 管理栄養士 / (一財)高雄病院 栄養科

◇第2部:「糖質制限食による糖尿病指導② ~理論と臨床」 13:20頃~

 講師: 江部 康二 医師 
    (一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長

◇第3部: 「発表・討議」 15:05頃~

・「糖質制限治療の実践症例 ~年間のべ1,000名を超える外来指導より見えるもの」
 佐藤 信昭 医師 / 茅ヶ崎徳洲会病院(神奈川)  副院長(内科)

・「対話する糖質制限医療 ~糖質制限を指導してはいけない!?」
 田頭 秀悟 医師 / たがしゅうオンラインクリニック 院長

・「高LDL-C血症に対する中等度糖質制限食と筋力トレーニングの組み合わせの効果について」
 宇佐見 啓治 医師 / うさみ内科(福島) 院長

・「糖質制限と薬理学的糖質制限の失敗から学ぶ糖質中毒~糖質依存症のメカニズム~」
 影山 広行 医師 / 株式会社ドクターバンク

・「カンボジアにおける『ほろ酔い低糖質食セミナー&パーティー』の実施」
 奥澤 健 医師 / ケンクリニック(カンボジア) 院長

・「糖質制限食の導入の実際 ~フリースタイルリブレプロを用いて」
 髙橋 裕彦 医師 / たかはし整形外科医院(香川) 院長

*第3部は、発表10分・討議6分ずつを予定しております。

*第3部の発表者様の中には、オンラインで発表される方もいらっしゃる予定です。

*第1部・第2部の映写資料データ(PDF)は、後日ダウンロードしていただけます。

*当日のセミナー動画は、後日一定期間ご覧いただけます。(セミナー参加予約者様限定)

■参加対象:

医療従事者の方(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士、鍼灸師など)

■受講費:

1.会場参加(東京会場へご来場の方)

・医師・歯科医師の方: 賛助会員 6,800円 / 一般(会員以外) 8,500円

・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 4,800円 / 一般(会員以外)6,000円

2.オンライン参加

・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(会員以外) 9,000円

・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(会員以外)6,500円

<オンライン参加についての補足・ご案内>

*Zoomを使用して行います。

・スマートフォンでもご参加可能ですが、パソコンかタブレット端末でご参加いただくと、画面が大きいため、スライド資料を閲覧しやすいです。

・事前に招待URLをお送りし、当日はそのURLにアクセスして、オンライン受講(参加)していただくかたちとなります。

・詳細はご予約後にご案内申し上げます。

・Zoomの挙手機能を使用して、オンライン参加の方も質疑応答や討議で挙手・発言していただる予定です。

■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。

※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。

■お申し込みの流れ:

1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。

■お申し込み方法:

★賛助会員の方:

事務局へメールにて、
①会場 or オンライン、どちらでの参加ご希望か
②医療機関でのご職種
をご記入の上、お申し込み下さい。

★賛助会員入会をご希望の方:

1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up

2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会等出席に関するお問い合せ」をご選択下さい。
「通信」欄には、以下をご記入下さい。
① 「4/16セミナー、会場 or オンライン(←ご希望の参加方法をご記入下さい)参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact

★一般(会員以外)で、セミナーの受講のみご希望の方:

下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med

■その他:

・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは4月14日(金)までに事務局へご連絡願います。それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。

糖質制限食と間食とAGEs。
【23/02/05 masa
間食の是非について
いつも拝読させていただいております。
一つお伺いさせていただけませんでしょうか。

当方、血糖値が上がりやすいため(糖質1gで血糖値3〜4程度)、
先生の著書も参考にさせていただき、
毎食の糖質を極力15g以内に抑えるようにしています。

そのような生活をここ4〜5年続けている中で、
最近抱いている疑問があります。
食事の血糖値は3時間程度で戻るようですので、
それも勘案し間食(糖質約10g以内)を取ることも多いのですが、
間食は無いに越したことはないのでしょうか。

つまり、例えば①1日3食のみと、②加えて間食を日に1〜2回取る場合では、
いずれも血糖値が100台後半以上の、
血管にダメージを与える水準には達しないと考えられますが、
それでも平均血糖値が低くなる①の方がベターと言えるのでしょうか。
それともそこまで健康面で差は無いでしょうか。

食べることが好きで、間食が心の支えになっている面もあるのですが、
一方で間食が膵臓への負担等になっていないか心配しています。
なお、HbA1c:5.8%、空腹時血糖値100mg/dl前後(直近は106mg/dl)、
40歳男性です。
どうぞよろしくお願いいたします。】



こんばんは。
masa さんから、糖質制限食と間食について
コメント・質問を頂きました。

【当方、血糖値が上がりやすいため(糖質1gで血糖値3mg〜4mg程度)、
先生の著書も参考にさせていただき、
毎食の糖質を極力15g以内に抑えるようにしています。】


体重64kgの糖尿人で、1gの糖質が3mg血糖値を上昇させますので
masaさんは、平均的な糖尿人と言えます。
そして、毎食の糖質を15g以内に抑えるということなら
スーパー糖質制限食実践であり、望ましいです。

国際糖尿病連合によれば、
食後1時間血糖値も食後2時間血糖値も
160mg/dl未満を目指すことで、糖尿病合併症の予防ができるとのことです。
masaさんは、この目標をクリアしていると思います。


【つまり、例えば①1日3食のみと、②加えて間食を日に1〜2回取る場合では、
いずれも血糖値が100台後半以上の、
血管にダメージを与える水準には達しないと考えられますが、
それでも平均血糖値が低くなる①の方がベターと言えるのでしょうか。
それともそこまで健康面で差は無いでしょうか。】


食後高血糖に関しては、①も②も目標をクリア(160mg/dl未満)しているので
糖尿病合併症の予防という意味では、問題ないです。

一方AGEs(終末糖化産物)(☆)
の問題があります。

血糖値が高ければ高いほど、糖と蛋白質の非酵素的な反応により、
AGEs(終末糖化産物)がより多く形成されます。
AGEsの蓄積は、血管内皮細胞障害を引き起こします。

AGEsの蓄積は、糖尿病合併症の元凶の一つとされています。
また、糖尿病でない人でもAGEsの蓄積は様々な問題を引き起こします。

皮膚のコラーゲンというタンパク質にAGEsが蓄積して、弾力を失えば
皮膚はシワシワとなり高齢者の皮膚となります。
骨のコラーゲンにAGEsが蓄積すれば、胸椎や腰椎が弾力を失って
骨粗鬆症や圧迫骨折などを生じます。
眼にAGEsが蓄積すれば、白内障になり
耳にAGEsが蓄積すれば、聴力低下を生じます。
歯肉にAGEsが蓄積すれば歯周病の要因となります。

要するに糖化(AGEs)の延長上に老化があるということです。

結論としては、糖尿病合併症予防という意味では
①と②に差はありませんが、
AGEsの蓄積という視点から考察すると、①より②のほうが蓄積が多いと言えます。


【食べることが好きで、間食が心の支えになっている面もある】


そういうことなら、ストレス緩和というメリットもありますので、
間食もありと思います。
なお、私の推奨は、間食の糖質量は5以下としています。


江部康二


(☆)AGEs(終末糖化産物)
タンパク質と糖が結びついた物質で、
Advanced Glycation End-productの頭文字をとってAGEと呼ばれます。
日本語では終末糖化産物と訳されています。
過剰な血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に付着します。
付着した糖は一部変性してアマドリ化合物(変性ブドウ糖)となります。
このアマドリ化合物と糖が結合しAGEsができます。
AGEsは、糖尿病合併症を引き起こす、重大な原因の1つです。
またAGEsは、老化の元凶とも言われています。
江部康二のシック・デイと血糖値。
こんにちは。

大分前のことですが、
東京講演会往復の新幹線かどこかで貰ったのか、珍しく風邪をひきました。

2月11日が東京講演会。
2月12日の朝から鼻水がとまらなくて、外来診察で困るので、
小青龍湯の錠剤を3日分くらいを、半日で飲みました。
薬はよく効いて、鼻水は止まりました。
ついでに寝る前にももう一回2袋飲みました。

そうすると、ドーピングならさしずめ陽性になるだろう麻黄がたっぷり含まれてますのでその夜、
これまた珍しくほとんど眠れませんでした。

翌日は水鼻はほとんどありませんが、粘っこい黄色い鼻が出ました。
食欲も大丈夫ですし咳もほとんどありませんが、少し体がけだるい感じです。

これはちょうどシックデイだということで、
早朝空腹時血糖値を測定したところ

2.13金曜日 早朝空腹時血糖値:158mg/dl

過去最高記録を更新してしまいました。

シックデイとは、糖尿病患者さんがほかの病気(風邪、肺炎、下痢、嘔吐など)にかかった状態のことです。
糖尿人が、シックデイになると、基本的に血糖値が上昇します

私の場合、元々基礎分泌がインスリンやや低下しているので、
早朝空腹時血糖値はやや高めで、前夜豚カツとか餃子とか食べたりしたら、
翌日の早朝空腹時血糖値が130mg/dl前後になることがたまにあるのですが、
150mgを超えたのは計測を始めて初めてでした。
食後高血糖はないので、HbA1cは5.6~5.8%前後です。

通常の早朝空腹時血糖値は正常~境界型です。
1.18 97mg
1.26 120mg
2.2  118mg
などです。

そして風邪引きはじめの
2.12木曜日 122mg 
2.13金曜日 158mg シック・デイ+不眠
2.14土曜日 129mg シック・デイ3日目 
2.15日曜日 136mg まだシック・デイ 朝まだ黄色い鼻。
        テニスにでかけたがややだるい感じあり。
2.16月曜日 112mg
        起床時鼻なし。シックデイほぼ終了。

いやはやシック・デイ、恐るべしですね。
不眠という急性ストレスも恐るべしですね。

12日から16日、食べたのはスーパー糖質制限食でとくに変わりはありませんので、
こんなショボイ風邪でもかなりの影響がでるのだなと実感したことでした。


江部康二
糖尿病と糖質制限食と腎機能 続き
こんばんは。
相変わらず寒い京都です。
日中は5.5℃まで上昇しましたが、朝7時は1.5℃でした。
さて今日は、昨日の続きです。

高血糖が持続すると、腎糸球体の細小血管の障害が起こります。
その結果、糸球体の構造が破壊され、機能障害が生じていきます。

<糖尿病腎症の5段階>
糖尿病腎症は、以下の5段階に分類されます。

第1期(腎症前期)
糖尿病性腎症かどうか検査ではわからない時期、糖尿病の人は3ヶ月に1回は微量アルブミン尿の検査を受けることが奨められます。

第2期(早期腎症期)

腎症の一番初期の段階は、尿中微量アルブミンの増加としてとらえられます。
この段階で早期腎症期です。
3ヶ月に1回ていど尿中微量アルブミンを検査すれば、一般的に測定されている尿タンパクが出現する以前の段階で、早期腎症を発見することができます。
この検査は、健康保険が効きますのでお奨めです。

第3期(顕性腎症期)
タンパク尿が出てくる時期です。
タンパク尿が出始めたら、顕性腎症期の段階に入ります。
この段階では血液の腎機能検査は正常です。

第4期(腎不全期)
クレアチニン・クリアランスが低下する時期。
血液検査で、クレアチニン、BUNなどに異常が出現すれば腎不全期となります。
この段階になると、糖質制限食を実践する場合は必ず医師と相談する必要があります。

第5期(透析療法期)
ほとんど腎臓が機能しなくなり、透析療法が必要となります。
年間約1万6千人の方が糖尿病性腎症により人工透析を導入していますが、
慢性腎炎を抜いて疾患別では1位となっています。


できれば微量アルブミンの早期腎症の段階で発見し、進行をくいとめたいものです。
この段階なら、糖質制限食で血糖コントロールを良好に保てば、
充分正常への回復が期待できます。


顕性腎症期になっても、糖質制限食で血糖コントロール良好を保てば
進行が止まったり、進行をゆっくりさせてくれる可能性があります。
非常に上手くいけば、以下のバーンスタイン医師のように
蛋白尿が陰性となることもありえます。



本ブログに時々登場する、ご自身が1型糖尿病の米国のバーンスタイン医師は、
小児期12才に1型糖尿病を発症し、以後インスリンを打ち続けておられます。

35才、顕性腎症となった頃、SMBGで血糖自己測定をしながら食事療法を研究し、
徹底した糖質制限食を開始されました。

蛋白尿が出現する段階の顕性腎症期から、
糖質制限食で回復しタンパク尿が消失しました。
45才で医学部に入学、49才で医師になり、糖尿病を徹底的に研究されました。
以後、多数の糖尿病患者を診察しておられます。

バーンスタイン医師は、1934年6月17日生まれですから
2023年2月現在、88歳ですが、
糖尿病合併症もなく、現役医師としてお元気にお過ごしです。


江部康二二
糖尿病と糖質制限食と腎機能
こんばんは。

講演会やブログ記事や拙著において、

「血液検査で既に腎機能が悪化している場合は
糖質制限食を実践するかどうかは必ず医師と相談して下さい。」


ということを説明しています。

これは、具体的には、血清クレアチニンの悪化を指しています。
血清クレアチニンは、腎機能が正常人の30%以下に低下して、初めて上昇してきます。この時点で腎不全です。

クレアチニンの基準値ですが、ネットで4つの異なる検査機関で調べてみました。

男性で
A:0.7~1.4mg/dL、
B:0.66~1.13 mg/dl、
C:0.5~1.1mg/dl
D:0.6 ~1.2 mg/dl

など検査機関A、B、C、Dにより基準値が少し異なります。

いずれにせよ、その検査機関の基準値を超えて上昇し始めたら、腎不全です。
つまり、糖尿病で血糖コントロールが悪くて、
血清クレアチニン値が上昇し始めたとういことは、
腎臓の糸球体(毛細血管の集合体)が70%障害されていることになり、
その時点で血糖コントロールが良くなっても、
既にある障害は、回復困難なのです。

もっと早い段階で腎機能の悪化がチェックできればいいのですが、
それには血清シスタチンCという検査が良いと思います。

クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。

既にクレアチン値が上昇するレベルの腎不全がある場合は、
日本では一般に高タンパク食は良くないとされています。

一方、米国糖尿病学会は、
『糖尿病腎症に関しては低タンパク食は推奨しない。』

と明言しています。
ということは、米国糖尿病学会の見解に従えば
高タンパク食である『糖質制限食』も、糖尿病腎症であれば
少々腎不全があっても実践可能となります。
勿論、必ず医師と相談しつつ、毎月検査しながら慎重に糖質制限食に
取り組むことが重要なのは言うまでもありません。

なお、高タンパク食を摂取すると腎臓が悪くなるというエビデンス(根拠)はありません。
従って、腎機能が正常の糖尿人やメタボ人が 糖質制限食(高タンパク食)を食べても全く問題はありません。


江部康二

花粉症と漢方と糖質制限食
こんばんは。
今朝も寒かったです。
京都市の気温は、2023/2/1(水)、-1.2℃~11.2℃の予想です。
午前7時が、-1.0℃、午前8時が、0℃でした。
 
さて、いよいよ花粉症シーズンとなってきました。
 
花粉の飛散時期
・スギ:京都では年初から飛び始めて3月にピークを迎えて3月末くらいまで飛散します。
・ヒノキ:京都ではスギ花粉終了後に飛び始めて4月にピークを迎えてGW前くらいまで飛散します。
・シラカンバ:北海道ではシラカンバ属の飛散が5~6月にピークを迎えます。
・イネ科:北海道で6~9月に飛散しますが、本州以西ではほぼ1年を通して飛散します。
・キク科:秋の花粉として知られるキク科のブタクサ属・ヨモギ属、クワ科のカナムグラは8~10月に飛散します。

 
 今回は、花粉症と漢方・糖質制限食について、検討してみました。
  
糖質制限食実践により、代謝全てが安定し(ブドウ糖スパイクがない)、
動脈硬化のリスク要因全てが改善し、血流も毛細血管に到るまでさらさらとなります。
 これにより、人体の自然治癒力が高まるので、糖尿病・メタボは勿論のこと、
ほとんどの生活習慣病の改善が期待できます。
 例えば、アトピー性皮膚炎などでも、皮膚がしっとりしてくることが多いです。
また数人の人からは、毛髪が太くしっかりして抜けにくくなったと報告を受けました。
花粉症に関しても、ブログ読者の皆さんのコメントでも、かなりの確率で改善するようです。
 
さて、高雄病院職員の20代の男性、小学生からのスギ花粉症で、
年々症状がきつくなっていったそうです。
 花粉症シーズンは、耳鼻科医のお薦め通り、1ヶ月前から抗アレルギー剤を内服し、
点眼薬、点鼻薬も開始して準備万端整えていたそうです。
 
しかしあに図らんや、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりのフルコースで、
息も絶え絶えで、仕事も手につかない状態でした。(+_+)
ひたすら十数年間耳鼻科へ通い続けていた訳ですが、
一向に良くならないどころか年々悪化していく事態に、
藁をもすがる思いで高雄病院で診察して貰いました。
 
この職員さん、まあ「漢方なんて藁?」くらいの認識だったのでしょうか。
 ところがどっこい、西洋薬を一切中止して煎じ薬を飲んだその日から
くしゃみ・鼻水・鼻づまりがぴったりとまって、奇蹟のように改善したのです。ヾ(゜▽゜)
 
煎じ薬、はっきり言ってメチャまずいです。σ(=_=;)ヾ
 
それでもシーズン中は飲み続けました。
そしてその年の冬からは、花粉症予防薬の漢方エキスを飲んで、
翌シーズン中は煎じ薬に切り替えて、その後は、ほとんど花粉症が出ずに済みました。
 
そして一念発起して、スーパー糖質制限食も開始しました。
そうすると、まったく薬もなしで花粉症フリー状態、となりました。
 
なお、私は、花粉症ではなくて、ダニアレルギーによる通年性のアレルギー性鼻炎です。
若い頃は、ほんとにひどかったです。
ティッシュペーパーと一日中縁が切れず、
自称「水も滴るいい男」とか強がりを言ってましたが結構苦労しました。(=_=;) 
 
漢方もよく飲んでコントロールしていました。
 
現在は、当時のピーク10としたら1くらいに落ち着いています。
糖質制限食開始後、明らかに症状は改善し、薬は何も飲んでいません。
 
ただ、アルコールが過ぎると鼻炎がでますね。
このときは、小青竜湯を錠剤かエキス剤で飲んでコントロールしています。
 
  
江部康二