2022年10月31日 (月)
こんにちは。
糖質制限食と便通に関しては、よく質問があります。
過去、外来患者さん・入院患者さん・ブログ読者さんから、
それぞれいろんな情報をもらってきました。
個人差があり、何種類かのパターンがあります。
Aさんは、3日に一度ひどい腹痛・下痢だったのが、糖質制限食の実践により、
有形の写真に撮って飾りたくなるような、綺麗なUNKOに改善したそうです。
Bさんは、ひどい便秘だったのが、毎日便通があるようになったそうです。
Cさんは、糖質制限食を始める前は毎日あった便通が、
糖質制限食を始めて10日目くらいから、便秘ぎみになったそうです。
でも「野菜をよく噛むようにして多めに摂って、1ヶ月目くらいから少しずつ改善し、
3ヶ月目からは、快便」とのこと、良かったです。
さて、糖質制限食により、下痢が治った人、便秘が治った人、初期便秘になった人、
三者三様の変化がでました。
私自身も、当初の三ヶ月間、普通の便の時と、便秘気味になったり、
逆に急に下痢したりと定まらなかったのですが、
四ヶ月目くらいから快便となり安定してきました。
今までと全く異なる食生活になるので、
腸内細菌が安定するまで約2~3割程度の人に便通の変化が起こるようです。
一旦便秘気味になったとしても、糖質制限食で代謝全てが改善するので、
しばらく経過したらCさんのように、便通も好調になることがほとんどです。
また一時流行ったココナッツオイルも便秘改善には有効です。
ココナッツオイルの摂取量の目安は、1日大さじ2杯~3杯です。
まずは2杯くらいから試してみましょう。
高雄病院にコントロール・教育入院した、1600名以上の糖尿病患者さんの場合は、
約7~8割の人は便通に特に問題はありませんでした。
残りの2~3割くらいに便秘気味になる人がありました。
入院中、ダイエット希望も兼ねて、女性で1200kcal/日ていどに低めのエネルギー摂取だと、
運動もあまりしないこともあり、便秘しやすいようです。
単純に低カロリーで食事摂取量が少ないと便秘しやすいことがあります。
入院中、女性で1600kcal、男性で1800kcal/日くらいにしていくと、
便通もましになることが多いです。
入院中は、給食費の関係で、1800kcal/日くらいが限界なのですが
退院後はもっと食べてOKです。
外来患者さんでは、便秘の訴えはそれほど多くありません。
運動量にもよりますが、 糖質制限食においても、
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>くらいのカロリーが目安です。
身体活動レベルが低い人でも
男性:1850~2250キロカロリー/日
女性:1450~1700キロカロリー/日
くらいは食べた方が、便通には良いと思います。
肉類や魚貝類や豆腐などと共に、Cさんの如く野菜や海藻や茸をたっぷりよく噛んで摂取するのが、
食物繊維も補充できて便通のコントロールには良いように思います。
江部康二
糖質制限食と便通に関しては、よく質問があります。
過去、外来患者さん・入院患者さん・ブログ読者さんから、
それぞれいろんな情報をもらってきました。
個人差があり、何種類かのパターンがあります。
Aさんは、3日に一度ひどい腹痛・下痢だったのが、糖質制限食の実践により、
有形の写真に撮って飾りたくなるような、綺麗なUNKOに改善したそうです。
Bさんは、ひどい便秘だったのが、毎日便通があるようになったそうです。
Cさんは、糖質制限食を始める前は毎日あった便通が、
糖質制限食を始めて10日目くらいから、便秘ぎみになったそうです。
でも「野菜をよく噛むようにして多めに摂って、1ヶ月目くらいから少しずつ改善し、
3ヶ月目からは、快便」とのこと、良かったです。
さて、糖質制限食により、下痢が治った人、便秘が治った人、初期便秘になった人、
三者三様の変化がでました。
私自身も、当初の三ヶ月間、普通の便の時と、便秘気味になったり、
逆に急に下痢したりと定まらなかったのですが、
四ヶ月目くらいから快便となり安定してきました。
今までと全く異なる食生活になるので、
腸内細菌が安定するまで約2~3割程度の人に便通の変化が起こるようです。
一旦便秘気味になったとしても、糖質制限食で代謝全てが改善するので、
しばらく経過したらCさんのように、便通も好調になることがほとんどです。
また一時流行ったココナッツオイルも便秘改善には有効です。
ココナッツオイルの摂取量の目安は、1日大さじ2杯~3杯です。
まずは2杯くらいから試してみましょう。
高雄病院にコントロール・教育入院した、1600名以上の糖尿病患者さんの場合は、
約7~8割の人は便通に特に問題はありませんでした。
残りの2~3割くらいに便秘気味になる人がありました。
入院中、ダイエット希望も兼ねて、女性で1200kcal/日ていどに低めのエネルギー摂取だと、
運動もあまりしないこともあり、便秘しやすいようです。
単純に低カロリーで食事摂取量が少ないと便秘しやすいことがあります。
入院中、女性で1600kcal、男性で1800kcal/日くらいにしていくと、
便通もましになることが多いです。
入院中は、給食費の関係で、1800kcal/日くらいが限界なのですが
退院後はもっと食べてOKです。
外来患者さんでは、便秘の訴えはそれほど多くありません。
運動量にもよりますが、 糖質制限食においても、
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>くらいのカロリーが目安です。
身体活動レベルが低い人でも
男性:1850~2250キロカロリー/日
女性:1450~1700キロカロリー/日
くらいは食べた方が、便通には良いと思います。
肉類や魚貝類や豆腐などと共に、Cさんの如く野菜や海藻や茸をたっぷりよく噛んで摂取するのが、
食物繊維も補充できて便通のコントロールには良いように思います。
江部康二
2022年10月30日 (日)
新型コロナとインフルエンザ 2つ同時に感染しうるのか?
同時感染すれば重症化しやすいのか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
こんにちは。
ヤフーニュースに2022年10月29日、上記、記事が掲載されました。
季節性のインフルエンザは、日本では
例年11~12月頃に流行が始まり、翌年の1~3月にピークを迎えます。
流行期間は約4ヶ月間です。
寒い時期、つまり冬が主の感染症です。
気象庁の定義によると、冬とは12月から2月の3ヶ月間です。
インフルエンザの感染力は非常に強く、
日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。
インフルエンザは流行性が強く、
いったん流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。
2021年11月30日の本ブログ記事で、
新型コロナウイルスとのウイルス間干渉により、
2020年11月~2021年3月期と
2021年11月~2022年3月期の
二つの期間は、インフルエンザ感染者は極めて少数であったと述べました。
しかしながら、反省です。
「ウイルス間干渉で、同時に2つのウイルスは流行しない」
というのは、あくまでも仮説に過ぎませんでした。
現実にオーストラリアでは2022年4月後半(冬です)から、
まだ新型コロナが流行している最中にインフルエンザの流行が始まり、
7月中旬には急速に感染者数が減少し、8月中旬に終息しています。
インフルエンザの流行期間は、冬の4ヶ月間です。
つまり、ウイルス間干渉仮説は、脆くも崩れ去ったのです。
また、忽那医師の解説では、
ハムスターを用いた実験では、
それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、
同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
人間でも同時感染で重症化する恐れがあるので要注意です。
イギリスでの調査(THE LANCET March 25,2022 発表)では、
新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
そしてインフルエンザと同時感染していた患者は、
新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
さて、忽那医師推奨のワクチンですが、
インフルエンザワクチンは感染や流行予防効果はなく、
重症化を防ぐ可能性があるというのが効能です。
そして、新型コロナワクチンも感染や流行予防効果はないが
重症化を防ぐことになっていて、まあインフルエンザワクチンと
同様の効能をうたっていますね。
しかしながら、必要な新型コロナワクチン接種完了率と
人口10万人あたりの累計感染者数をみると、
ワクチン接種率が高い国々で、しっかり感染してますね。
一方、ワクチン接種率が極めて低い、一桁の国々を見てみると
人口10万人あたりの累計感染者数は極めて低いのです。
イエメンで韓国の1250分の1、日本の457分の1です。
セネガルで韓国の95分の1、日本の35分の1です。
ブルンジは韓国の120分の1、日本の44分の1です。
ワクチン接種率の高い国々のほうが、極めて接種率が低い国々よりも
人口10万人あたりの累計感染者数は、
35倍から1250倍と桁違いに多いことは明白ですが、
忽那医師はどのように考えられているのでしょうね?
日本経済新聞のサイト
チャートでみる世界の感染状況
新型コロナウイルス
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/
累計感染者数
2022/10/28時点
必要な接種完了率 人口10万人あたり累計感染者数
韓国: 86.3% 49221人
イタリア: 80.5 39812
英国: 75.7 35732
米国: 67.4 28803
日本: 80.4 17924
ブラジル: 81.1 16169
ロシア: 68.8 14584
インド: 68.8 3150
中国: 90.7 72人
セネガル 6.9 % 515.6人
パプアニューギニア 3.3 497.8
カメルーン 4.8 7/25まで 441.1
イエメン 2.2 39.2
ブルンジ 0.2 411.7
コンゴ民主共和国 4.2 100.8
ハイチ 2.0% 293人
江部康二
ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
新型コロナとインフルエンザ 2つ同時に感染しうるのか?
同時感染すれば重症化しやすいのか?
忽那賢志感染症専門医
大阪大学医学部 感染制御学 教授
10/29(土) 12:11
以下の青字の記載は、上記記事の要約です。
今年はオーストラリアで、
新型コロナとインフルエンザの同時流行がみられました。
これらのウイルス性呼吸器感染症について「同時に感染したらどうなるの?」と周りの方によく聞かれるのですが、
そもそも同時感染は起こり得るのでしょうか?同時感染するとしたら重症化しやすくなるのでしょうか?
ウイルス干渉とは?
複数の呼吸器系ウイルスが同時に流行している時期に、
人が同時に、あるいは連続してウイルスに感染することでお互いの感染に影響を与えることがあります。
例えば、新型コロナウイルスに感染した人が、その後にインフルエンザに感染すると、
新型コロナウイルス感染症の経過がインフルエンザウイルスによる影響を受けるということです。
これは「ウイルス干渉」と呼ばれ、1960年代から複数のウイルス間の相互作用について研究されています。
例えば、あるウイルスに感染すると一時的に自然免疫によりインターフェロンが誘導され、
次に感染するウイルスの増殖を抑える作用が起こると考えられています。
すごく簡単に言うと、人があるウイルスに感染すると免疫が活性化するので、
その時期に他のウイルスが入り込んできても追い払われることがある、ということです。
これは、マウスの実験や人でも証明されていますし、
疫学的にもRSウイルス感染症とインフルエンザの流行時期がずれることは
この「ウイルス干渉」が関係しているのではないかという報告もあります。
新型コロナとインフルの同時流行は起こらないのか?
ではウイルス干渉があるから新型コロナとインフルの同時流行は杞憂に過ぎないのでしょうか?
しかし、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとの間のウイルス干渉は、
少なくとも人にとって良い方向には働かなさそうという報告が増えてきています。
今年の5月から6月にかけて南半球のオーストラリアで新型コロナ発生以降初めてのインフルエンザの流行がみられました。
この時期、オーストラリアでは1日あたり2万〜6万人の新型コロナの感染者が報告されており、
まさに同時流行が起こっています。
新型コロナが出現してからの数年間、ほとんどの地域でインフルエンザが全く流行しなかったのは、
新型コロナの感染対策が徹底して行われたこと、海外からのウイルスの流入が激減したことなどが原因であり、
感染対策も緩和が進み、海外からの旅行者が急増している今シーズンは同時流行の可能性は低くないと考えられます。
新型コロナとインフルの同時感染では重症化しやすくなる
ウイルス干渉には疾患の重症度や病原性を悪化させるものもあり、
インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの組み合わせは、
この悪い方のウイルス干渉に当てはまる可能性が指摘されています。
ハムスターを用いた実験では、それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、
同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
イギリスでの調査では、新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、
227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
インフルエンザと同時感染していた患者は、
新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
今シーズンは新型コロナ、インフルエンザの両方に備えよう
このように、今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行が起こる可能性があり、
また万が一同時感染ということになれば重症化につながるかもしれません。
すでに同じ北半球のアメリカでも増加傾向にあり、日本国内でも大阪府などで報告数が増えてきています。
これらが必ずしも同時に流行のピークを迎えるというわけではありませんが、
それぞれの感染症についてしっかりと備える必要があります。
インフルエンザワクチンについては10月から全国の医療機関で接種が開始されています。
また、新型コロナワクチンについては、オミクロン株対応ワクチンが接種できるようになっています。
今シーズンから同時接種が可能となりました。
また、「接種間隔についても問わない」となりました。
例えば今日インフルエンザワクチンを打って、明日新型コロナワクチンを接種する、ということも可能になりました。
これにより、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。
同時接種にこだわる必要はありません。流行期の前にそれぞれのワクチンを接種して流行に備えましょう。
同時感染すれば重症化しやすいのか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
こんにちは。
ヤフーニュースに2022年10月29日、上記、記事が掲載されました。
季節性のインフルエンザは、日本では
例年11~12月頃に流行が始まり、翌年の1~3月にピークを迎えます。
流行期間は約4ヶ月間です。
寒い時期、つまり冬が主の感染症です。
気象庁の定義によると、冬とは12月から2月の3ヶ月間です。
インフルエンザの感染力は非常に強く、
日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。
インフルエンザは流行性が強く、
いったん流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。
2021年11月30日の本ブログ記事で、
新型コロナウイルスとのウイルス間干渉により、
2020年11月~2021年3月期と
2021年11月~2022年3月期の
二つの期間は、インフルエンザ感染者は極めて少数であったと述べました。
しかしながら、反省です。
「ウイルス間干渉で、同時に2つのウイルスは流行しない」
というのは、あくまでも仮説に過ぎませんでした。
現実にオーストラリアでは2022年4月後半(冬です)から、
まだ新型コロナが流行している最中にインフルエンザの流行が始まり、
7月中旬には急速に感染者数が減少し、8月中旬に終息しています。
インフルエンザの流行期間は、冬の4ヶ月間です。
つまり、ウイルス間干渉仮説は、脆くも崩れ去ったのです。
また、忽那医師の解説では、
ハムスターを用いた実験では、
それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、
同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
人間でも同時感染で重症化する恐れがあるので要注意です。
イギリスでの調査(THE LANCET March 25,2022 発表)では、
新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
そしてインフルエンザと同時感染していた患者は、
新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
さて、忽那医師推奨のワクチンですが、
インフルエンザワクチンは感染や流行予防効果はなく、
重症化を防ぐ可能性があるというのが効能です。
そして、新型コロナワクチンも感染や流行予防効果はないが
重症化を防ぐことになっていて、まあインフルエンザワクチンと
同様の効能をうたっていますね。
しかしながら、必要な新型コロナワクチン接種完了率と
人口10万人あたりの累計感染者数をみると、
ワクチン接種率が高い国々で、しっかり感染してますね。
一方、ワクチン接種率が極めて低い、一桁の国々を見てみると
人口10万人あたりの累計感染者数は極めて低いのです。
イエメンで韓国の1250分の1、日本の457分の1です。
セネガルで韓国の95分の1、日本の35分の1です。
ブルンジは韓国の120分の1、日本の44分の1です。
ワクチン接種率の高い国々のほうが、極めて接種率が低い国々よりも
人口10万人あたりの累計感染者数は、
35倍から1250倍と桁違いに多いことは明白ですが、
忽那医師はどのように考えられているのでしょうね?
日本経済新聞のサイト
チャートでみる世界の感染状況
新型コロナウイルス
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/
累計感染者数
2022/10/28時点
必要な接種完了率 人口10万人あたり累計感染者数
韓国: 86.3% 49221人
イタリア: 80.5 39812
英国: 75.7 35732
米国: 67.4 28803
日本: 80.4 17924
ブラジル: 81.1 16169
ロシア: 68.8 14584
インド: 68.8 3150
中国: 90.7 72人
セネガル 6.9 % 515.6人
パプアニューギニア 3.3 497.8
カメルーン 4.8 7/25まで 441.1
イエメン 2.2 39.2
ブルンジ 0.2 411.7
コンゴ民主共和国 4.2 100.8
ハイチ 2.0% 293人
江部康二
ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
新型コロナとインフルエンザ 2つ同時に感染しうるのか?
同時感染すれば重症化しやすいのか?
忽那賢志感染症専門医
大阪大学医学部 感染制御学 教授
10/29(土) 12:11
以下の青字の記載は、上記記事の要約です。
今年はオーストラリアで、
新型コロナとインフルエンザの同時流行がみられました。
これらのウイルス性呼吸器感染症について「同時に感染したらどうなるの?」と周りの方によく聞かれるのですが、
そもそも同時感染は起こり得るのでしょうか?同時感染するとしたら重症化しやすくなるのでしょうか?
ウイルス干渉とは?
複数の呼吸器系ウイルスが同時に流行している時期に、
人が同時に、あるいは連続してウイルスに感染することでお互いの感染に影響を与えることがあります。
例えば、新型コロナウイルスに感染した人が、その後にインフルエンザに感染すると、
新型コロナウイルス感染症の経過がインフルエンザウイルスによる影響を受けるということです。
これは「ウイルス干渉」と呼ばれ、1960年代から複数のウイルス間の相互作用について研究されています。
例えば、あるウイルスに感染すると一時的に自然免疫によりインターフェロンが誘導され、
次に感染するウイルスの増殖を抑える作用が起こると考えられています。
すごく簡単に言うと、人があるウイルスに感染すると免疫が活性化するので、
その時期に他のウイルスが入り込んできても追い払われることがある、ということです。
これは、マウスの実験や人でも証明されていますし、
疫学的にもRSウイルス感染症とインフルエンザの流行時期がずれることは
この「ウイルス干渉」が関係しているのではないかという報告もあります。
新型コロナとインフルの同時流行は起こらないのか?
ではウイルス干渉があるから新型コロナとインフルの同時流行は杞憂に過ぎないのでしょうか?
しかし、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとの間のウイルス干渉は、
少なくとも人にとって良い方向には働かなさそうという報告が増えてきています。
今年の5月から6月にかけて南半球のオーストラリアで新型コロナ発生以降初めてのインフルエンザの流行がみられました。
この時期、オーストラリアでは1日あたり2万〜6万人の新型コロナの感染者が報告されており、
まさに同時流行が起こっています。
新型コロナが出現してからの数年間、ほとんどの地域でインフルエンザが全く流行しなかったのは、
新型コロナの感染対策が徹底して行われたこと、海外からのウイルスの流入が激減したことなどが原因であり、
感染対策も緩和が進み、海外からの旅行者が急増している今シーズンは同時流行の可能性は低くないと考えられます。
新型コロナとインフルの同時感染では重症化しやすくなる
ウイルス干渉には疾患の重症度や病原性を悪化させるものもあり、
インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの組み合わせは、
この悪い方のウイルス干渉に当てはまる可能性が指摘されています。
ハムスターを用いた実験では、それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、
同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
イギリスでの調査では、新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、
227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
インフルエンザと同時感染していた患者は、
新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
今シーズンは新型コロナ、インフルエンザの両方に備えよう
このように、今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行が起こる可能性があり、
また万が一同時感染ということになれば重症化につながるかもしれません。
すでに同じ北半球のアメリカでも増加傾向にあり、日本国内でも大阪府などで報告数が増えてきています。
これらが必ずしも同時に流行のピークを迎えるというわけではありませんが、
それぞれの感染症についてしっかりと備える必要があります。
インフルエンザワクチンについては10月から全国の医療機関で接種が開始されています。
また、新型コロナワクチンについては、オミクロン株対応ワクチンが接種できるようになっています。
今シーズンから同時接種が可能となりました。
また、「接種間隔についても問わない」となりました。
例えば今日インフルエンザワクチンを打って、明日新型コロナワクチンを接種する、ということも可能になりました。
これにより、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。
同時接種にこだわる必要はありません。流行期の前にそれぞれのワクチンを接種して流行に備えましょう。
2022年10月28日 (金)
【13/11/14 北九州 三島
負のスパイラル
ダマされている患者(国民)
通院・服薬⇒お薬の追加⇒インスリン⇒人工透析(500万/年)、健康保険(個人負担1万円)、障害年金79万~、⇒合併症。
*公費の無駄遣いという観点から、患者でないあなたも犠牲者。
私は、それを知って、糖質制限で、服薬無し。こんな私でも、お国のお役に立っている?
今朝の新聞の広告(夏井先生のでなく、笑)を見て忸怩たる思いです。】
こんにちは
大分前になりますが、北九州三島塾の三島学学長から糖尿病治療『負のパイラル』という
コメントを頂きました。
私も全く同感です、
そして2022年10月現在も、『負のスパイラル』が継続しているのが日本の糖尿病治療の現状なのです。
日本糖尿病学会『第56回日本糖尿病学会年次学術集会』熊本宣言2013の記載が以下です。
『糖尿病合併症で苦しむ患者さんの数は今なお減少していません。糖尿病腎症で透析になる人が年間16000人以上。
糖尿病網膜症で失明する人が年間3000人以上。糖尿病足病変で切断する人が年間3000人以上。』
毎年新たに、
16000人×500万円=800億円
ですね。
糖尿病腎症から透析になる患者さんで、年間800億が必要となります。
2011年度の人工透析患者さんは、全部で304592人で、初めて30万人を超えました。
30万人×500万円=1兆5000億円
です。
透析導入になった患者さんの原疾患の第一位は糖尿病性腎症で44.2%です。
1兆5000億円の内、3~4割くらいは、糖尿病腎症由来なのでしょうか?
2021/08/24の透析医学界の発表で、
2019 年末透析患者総数は 34 万 4,640 人(前年比 1.4%増)、
平均年齢は 69.09 歳、
最も多い原疾患は 糖尿病性腎症16019人(41.6%)。
次いで慢性糸球体腎炎、第三位は腎硬化症でした。
透析患者数の増加は続いていますが、その伸びは緩やかです。
年齢に着目して透析患者数をみると、
最も割合が高い年齢層は男女とも 70~74 歳でした。
人工透析だけではありません。
糖尿病網膜症で失明される人が、年間3000人以上。
糖尿病足病変で足切断にいたる人が、年間3000人以上です。
合併症に苦しむ本人がつらいのは勿論のこと、日本の医療費をかなり底上げしていることは間違いありません。
糖尿病治療の第一選択は、日本糖尿病学会のホームページに書いてあるように「食事療法と運動」です。
食事療法と運動でも血糖コントロール不良の場合、
初めて薬物療法を開始します。
しかしながら、現行の糖尿病治療で薬物療法なしの糖尿人はいったいどのくらいいるのでしょう?
年々、新薬が開発されて、今や内服薬が9種類、注射薬が2種類です。
日本糖尿病学会推奨の「唯一無二の食事療法」である「カロリー制限・高糖質食」が血糖コントロールに本当に有効ならば、何故、9種類もの薬が必要となるのでしょう。
「カロリー制限・高糖質食」が血糖コントロールに無効であるからこそ、これだけの薬物が必要になるのです。
さらに「カロリー制限・高糖質食」は無効どころか、「食後高血糖」と「平均血糖幅増大」という最大の酸化ストレスを朝・昼・夕の三度の食事のたびに、必ず生じさせます。
これでは、動脈硬化は必発であり、糖尿病合併症が防げるはずがありません。
「カロリー制限・高糖質食」こそが、糖尿病合併症を起こす元凶なのです。
カロリー制限・高糖質食を摂取する限りは「食後高血糖」「平均血糖幅増大」は必発です。
糖尿病通院→カロリー制限・高糖質食指導→血糖コントロール不良→糖尿病内服薬→血糖コントロール不良→糖尿病内服薬数種類に増加→血糖コントロール不良→インスリン→「食後高血糖」と「平均血糖幅増大」→糖尿病合併症
現在、この負のスパイラルを断ち切るための唯一の治療法が、
糖質制限食です。
糖尿病通院→糖質制限食→血糖コントロー良好→薬物療法必要なし、合併症なし
日本の糖尿人の皆さん、一医師として、一糖尿人として申し上げます。
できるだけ早く、「カロリー制限・高糖質食」から「糖質制限食」に切り替えてください。
米国糖尿病学会は2019年の「コンセンサス・レポート」で
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』と明言し、
2020年、2021年、2022年のガイドラインでも同様の見解です。
糖尿病合併症を確実に防ぐには糖質制限食以外の選択肢はありません。
幸い、日本全国に北海道から沖縄まで糖質制限食を指導される医師が増えてきました。
なお経口糖尿病薬、インスリン、Glp-1注射薬を使用されている糖尿人は、
糖質制限食を始める場合は、
低血糖を予防するために必ず医師と相談してくださいね。
江部康二
負のスパイラル
ダマされている患者(国民)
通院・服薬⇒お薬の追加⇒インスリン⇒人工透析(500万/年)、健康保険(個人負担1万円)、障害年金79万~、⇒合併症。
*公費の無駄遣いという観点から、患者でないあなたも犠牲者。
私は、それを知って、糖質制限で、服薬無し。こんな私でも、お国のお役に立っている?
今朝の新聞の広告(夏井先生のでなく、笑)を見て忸怩たる思いです。】
こんにちは
大分前になりますが、北九州三島塾の三島学学長から糖尿病治療『負のパイラル』という
コメントを頂きました。
私も全く同感です、
そして2022年10月現在も、『負のスパイラル』が継続しているのが日本の糖尿病治療の現状なのです。
日本糖尿病学会『第56回日本糖尿病学会年次学術集会』熊本宣言2013の記載が以下です。
『糖尿病合併症で苦しむ患者さんの数は今なお減少していません。糖尿病腎症で透析になる人が年間16000人以上。
糖尿病網膜症で失明する人が年間3000人以上。糖尿病足病変で切断する人が年間3000人以上。』
毎年新たに、
16000人×500万円=800億円
ですね。
糖尿病腎症から透析になる患者さんで、年間800億が必要となります。
2011年度の人工透析患者さんは、全部で304592人で、初めて30万人を超えました。
30万人×500万円=1兆5000億円
です。
透析導入になった患者さんの原疾患の第一位は糖尿病性腎症で44.2%です。
1兆5000億円の内、3~4割くらいは、糖尿病腎症由来なのでしょうか?
2021/08/24の透析医学界の発表で、
2019 年末透析患者総数は 34 万 4,640 人(前年比 1.4%増)、
平均年齢は 69.09 歳、
最も多い原疾患は 糖尿病性腎症16019人(41.6%)。
次いで慢性糸球体腎炎、第三位は腎硬化症でした。
透析患者数の増加は続いていますが、その伸びは緩やかです。
年齢に着目して透析患者数をみると、
最も割合が高い年齢層は男女とも 70~74 歳でした。
人工透析だけではありません。
糖尿病網膜症で失明される人が、年間3000人以上。
糖尿病足病変で足切断にいたる人が、年間3000人以上です。
合併症に苦しむ本人がつらいのは勿論のこと、日本の医療費をかなり底上げしていることは間違いありません。
糖尿病治療の第一選択は、日本糖尿病学会のホームページに書いてあるように「食事療法と運動」です。
食事療法と運動でも血糖コントロール不良の場合、
初めて薬物療法を開始します。
しかしながら、現行の糖尿病治療で薬物療法なしの糖尿人はいったいどのくらいいるのでしょう?
年々、新薬が開発されて、今や内服薬が9種類、注射薬が2種類です。
日本糖尿病学会推奨の「唯一無二の食事療法」である「カロリー制限・高糖質食」が血糖コントロールに本当に有効ならば、何故、9種類もの薬が必要となるのでしょう。
「カロリー制限・高糖質食」が血糖コントロールに無効であるからこそ、これだけの薬物が必要になるのです。
さらに「カロリー制限・高糖質食」は無効どころか、「食後高血糖」と「平均血糖幅増大」という最大の酸化ストレスを朝・昼・夕の三度の食事のたびに、必ず生じさせます。
これでは、動脈硬化は必発であり、糖尿病合併症が防げるはずがありません。
「カロリー制限・高糖質食」こそが、糖尿病合併症を起こす元凶なのです。
カロリー制限・高糖質食を摂取する限りは「食後高血糖」「平均血糖幅増大」は必発です。
糖尿病通院→カロリー制限・高糖質食指導→血糖コントロール不良→糖尿病内服薬→血糖コントロール不良→糖尿病内服薬数種類に増加→血糖コントロール不良→インスリン→「食後高血糖」と「平均血糖幅増大」→糖尿病合併症
現在、この負のスパイラルを断ち切るための唯一の治療法が、
糖質制限食です。
糖尿病通院→糖質制限食→血糖コントロー良好→薬物療法必要なし、合併症なし
日本の糖尿人の皆さん、一医師として、一糖尿人として申し上げます。
できるだけ早く、「カロリー制限・高糖質食」から「糖質制限食」に切り替えてください。
米国糖尿病学会は2019年の「コンセンサス・レポート」で
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』と明言し、
2020年、2021年、2022年のガイドラインでも同様の見解です。
糖尿病合併症を確実に防ぐには糖質制限食以外の選択肢はありません。
幸い、日本全国に北海道から沖縄まで糖質制限食を指導される医師が増えてきました。
なお経口糖尿病薬、インスリン、Glp-1注射薬を使用されている糖尿人は、
糖質制限食を始める場合は、
低血糖を予防するために必ず医師と相談してくださいね。
江部康二
2022年10月27日 (木)
こんにちは。
食べる順番療法が一時期、流行りましたが、効果はどうなのでしょう。
さて、古い話で恐縮なのですが、
2010年7月4日(日)、『第9回日本GI研究会』が
東京慈恵医大 大学1号館3階講堂で開催され、
私は、糖質制限食の特別講演を行いました。
この時「食べる順番療法」の発表があり、
「オリーブオイルたっぷりの野菜サラダを10分かけてゆっくり食べて、
その後白いご飯を摂取すると、血糖値上昇のピークが2割くらい下がる。」
「白米をさきに食べて後で野菜サラダだと、
白米単独のときと血糖値上昇のピークは不変である。」
という報告がありました。
正常人のデータですが、食べる順番療法が一定の効果があるという結果でした。
それで、
Yahoo知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11108579016
の、boron_phosphate さんのデータを拝見したら
野菜が先で麺が後で、食後高血糖のピークは100mg→205mg
麺が先で野菜が後で、食後高血糖のピークは100mg→225mg
所詮は200mg/dlを超えています。
これでは、合併症予防効果はありません。
また血糖値上昇曲線のAUC(曲線下面積)も、両者の差はないので、
boron_phosphate さんの仰有る通り
「食物繊維の多いものを先に食べても、多少消化を手間取らせるのみであり、
糖質の吸収量まで妨害できるわけではない」
というように、私も思います。
結論です。
1)「食べる順番療法」は正常人においては、
食後血糖値上昇のピークを2割くらい下げる可能性がある。
2)「食べる順番療法」は糖尿人においては、
食後高血糖是正効果は、あったとしても微細であり、意味はない。
3)「食べる順番療法」は糖尿人においては、
普通に一人前の糖質を食べたらピークは200mg/dlを超えるので
合併症予防効果は期待できない。
4)従って、血糖測定せずに、「食べる順番療法」を盲信するのは危険である。
5)糖尿人の食後高血糖の是正には糖質摂取の絶対量を制限する
「糖質制限食」が明確に有効である。
江部康二
食べる順番療法が一時期、流行りましたが、効果はどうなのでしょう。
さて、古い話で恐縮なのですが、
2010年7月4日(日)、『第9回日本GI研究会』が
東京慈恵医大 大学1号館3階講堂で開催され、
私は、糖質制限食の特別講演を行いました。
この時「食べる順番療法」の発表があり、
「オリーブオイルたっぷりの野菜サラダを10分かけてゆっくり食べて、
その後白いご飯を摂取すると、血糖値上昇のピークが2割くらい下がる。」
「白米をさきに食べて後で野菜サラダだと、
白米単独のときと血糖値上昇のピークは不変である。」
という報告がありました。
正常人のデータですが、食べる順番療法が一定の効果があるという結果でした。
それで、
Yahoo知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11108579016
の、boron_phosphate さんのデータを拝見したら
野菜が先で麺が後で、食後高血糖のピークは100mg→205mg
麺が先で野菜が後で、食後高血糖のピークは100mg→225mg
所詮は200mg/dlを超えています。
これでは、合併症予防効果はありません。
また血糖値上昇曲線のAUC(曲線下面積)も、両者の差はないので、
boron_phosphate さんの仰有る通り
「食物繊維の多いものを先に食べても、多少消化を手間取らせるのみであり、
糖質の吸収量まで妨害できるわけではない」
というように、私も思います。
結論です。
1)「食べる順番療法」は正常人においては、
食後血糖値上昇のピークを2割くらい下げる可能性がある。
2)「食べる順番療法」は糖尿人においては、
食後高血糖是正効果は、あったとしても微細であり、意味はない。
3)「食べる順番療法」は糖尿人においては、
普通に一人前の糖質を食べたらピークは200mg/dlを超えるので
合併症予防効果は期待できない。
4)従って、血糖測定せずに、「食べる順番療法」を盲信するのは危険である。
5)糖尿人の食後高血糖の是正には糖質摂取の絶対量を制限する
「糖質制限食」が明確に有効である。
江部康二
2022年10月25日 (火)
こんにちは。
今回は、
ホルモンと血糖値。
ストレスと血糖値。
運動と血糖値。
のお話です。
<ホルモンと血糖値>
血糖値を下げるホルモンはインスリンだけです。
これに対して血糖値を上昇させるホルモンは、
グルカゴン
アドレナリン
副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン)
副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)
成長ホルモン
甲状腺ホルモン
ソマトスタチン
と複数あります。
700万年の人類の進化過程において、
血糖値を下げる必要性は、たまに果物や根茎類が手に入ったときなどであり、
かなり限られていました。
そのためインスリンというかなり脆弱な装置がたった一つで
間に合っていたのでしょう。
これに対して、赤血球はミトコンドリアがないのでブドウ糖だけが唯一の
エネルギー源であり、それを確保するために
複数の装置が用意されていたと考えられます。
成長ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなどは。
インスリン抵抗性を高めるホルモンで、過剰だと血糖値が上がります。
ソマトスタチンはインスリンの分泌を直接抑制して血糖を上昇させます。
アルドステロンはカリウムの低下に伴いインスリン分泌能を低下させます。
グルカゴンはインスリン分泌には関わりませんが、肝臓からの糖の放出を促進し、血糖を上昇させます。
<ストレスと血糖値>
ストレスでも血糖値は上昇します。
怒りとかの感情とか不眠などがストレスとなり、
アドレナリンや副腎皮質ホルモンが分泌されます。
一方、単純に心拍数が上がるレベルの運動を行うと、
アドレナリンが出て血糖値は上昇します。
これは、運動している本人が心理的ストレスを感じていなくても、
身体は何らかのストレッサーがあれば反応するのです。
運動も勿論ストレッサーになります。
ストレスの原因はストレッサーと呼ばれその外的刺激の種類から一般に、
物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線、光など)
化学的ストレッサー(酸素、薬物、タバコなど)
生物的ストレッサー(炎症、感染)
心理的ストレッサー(怒り、不安など)
に分類されます。
<運動と血糖値>
運動は、上記分類にはあてはまらない、
非特異的ストレッサーという位置づけにでもなるのでしょうか?
コロナ前は、私は空いている日曜日はテニスに出かけていました。
早朝空腹時の血糖値が96~108mg/dl前後です。
ごく軽い食事(スーパー糖質制限食)を午前11時頃して、
夕方5時頃とか試合のあと血糖値を測定すると、
空腹時なのに140mg/dlくらいあることがあります。
おじさんのダブルスていどの運動30分ていど後のデータです。
30~60分くらいで通常のデータ(100mg/dl前後)に戻ります。
なお適度な運動は健康度を高めて、良いストレッサーとなります。
江部康二
今回は、
ホルモンと血糖値。
ストレスと血糖値。
運動と血糖値。
のお話です。
<ホルモンと血糖値>
血糖値を下げるホルモンはインスリンだけです。
これに対して血糖値を上昇させるホルモンは、
グルカゴン
アドレナリン
副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン)
副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)
成長ホルモン
甲状腺ホルモン
ソマトスタチン
と複数あります。
700万年の人類の進化過程において、
血糖値を下げる必要性は、たまに果物や根茎類が手に入ったときなどであり、
かなり限られていました。
そのためインスリンというかなり脆弱な装置がたった一つで
間に合っていたのでしょう。
これに対して、赤血球はミトコンドリアがないのでブドウ糖だけが唯一の
エネルギー源であり、それを確保するために
複数の装置が用意されていたと考えられます。
成長ホルモン、甲状腺ホルモン、アドレナリンなどは。
インスリン抵抗性を高めるホルモンで、過剰だと血糖値が上がります。
ソマトスタチンはインスリンの分泌を直接抑制して血糖を上昇させます。
アルドステロンはカリウムの低下に伴いインスリン分泌能を低下させます。
グルカゴンはインスリン分泌には関わりませんが、肝臓からの糖の放出を促進し、血糖を上昇させます。
<ストレスと血糖値>
ストレスでも血糖値は上昇します。
怒りとかの感情とか不眠などがストレスとなり、
アドレナリンや副腎皮質ホルモンが分泌されます。
一方、単純に心拍数が上がるレベルの運動を行うと、
アドレナリンが出て血糖値は上昇します。
これは、運動している本人が心理的ストレスを感じていなくても、
身体は何らかのストレッサーがあれば反応するのです。
運動も勿論ストレッサーになります。
ストレスの原因はストレッサーと呼ばれその外的刺激の種類から一般に、
物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線、光など)
化学的ストレッサー(酸素、薬物、タバコなど)
生物的ストレッサー(炎症、感染)
心理的ストレッサー(怒り、不安など)
に分類されます。
<運動と血糖値>
運動は、上記分類にはあてはまらない、
非特異的ストレッサーという位置づけにでもなるのでしょうか?
コロナ前は、私は空いている日曜日はテニスに出かけていました。
早朝空腹時の血糖値が96~108mg/dl前後です。
ごく軽い食事(スーパー糖質制限食)を午前11時頃して、
夕方5時頃とか試合のあと血糖値を測定すると、
空腹時なのに140mg/dlくらいあることがあります。
おじさんのダブルスていどの運動30分ていど後のデータです。
30~60分くらいで通常のデータ(100mg/dl前後)に戻ります。
なお適度な運動は健康度を高めて、良いストレッサーとなります。
江部康二
2022年10月24日 (月)
こんにちは。
ブログ読者の皆さんも、PET検査を受ける機会があると思います。
PETの知識があると便利なので今回、記事にしました。
PETとは、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography)の略語です。
陽電子を放出する放射性同位元素で標識された薬剤を体内に静脈注射して、
その陽電子が周囲の電子と結合して消滅するときに放出される放射線を検出することにより、
薬剤の体内での分布から細胞の活動状態を画像化する撮影法です。
PETは、がんの性質を利用してがん細胞を発見します。
放射性同位元素をブドウ糖に結合させて<18F-FDG>という薬剤を作り、
静脈に注射します。
がんは正常な細胞と比べて、数倍のブドウ糖を利用する性質があるので、
それを利用してがんを見つけだします。
<18F-FDG>はブドウ糖に似た性質を持っているので、
ブドウ糖と同じようにがんにたくさん集まります。
これによりがんがどこにあるのか、
あるいはがんの広がり具合・転移している場所などがわかり、
CTやMRIなどの診断結果と合わせれば、
治療方法や治療範囲を決めるのに役に立ちます。
放射性同位元素でラベルしたブドウ糖に似た物質を静脈注射するので、
食事で糖質を摂ったりすると、正確な検査の邪魔になります。
それでPET検査6時間前までに、軽い食事を済ませて、
あとは水などゼロカロリーの飲料だけOKです。
通常の血圧の薬などは大丈夫ですが、糖尿病の薬は事前に相談が必要です。
運動により、筋肉にブドウ糖が集まるので、一定時間の安静が必要です。
食事とは無関係に、興奮したり怒ったりすると、
アドレナリンがでて、血糖値上昇することがあります。
30~60分の歩行など軽い運動だと血糖血が下がることがあります。
激しい運動だと、アドレナリンが出て、血糖値が上昇することがあります。
運動をせずに心もリラックスしていて、食事もなしなら、血糖値上昇はないと思います。
検査前日…
食事は通常通りでOKですがが、飲酒はなしです。
検査当日…
受付時間の6時間前までに軽く(腹7分目程度)済ませます。
以後は水分のみを摂るようにしましょう。
水を摂る場合は、お水・白湯に限ります。
糖質の入ったものや乳製品を飲むと、
検査に使用する薬剤の性質上、正確な検査ができなくなります。
なお、お茶やブラックコーヒーや紅茶にはカフェインが含まれているので
人によっては血糖値が上昇することがあるので、カロリーはほぼなしですが、
NGなのです。
江部康二
ブログ読者の皆さんも、PET検査を受ける機会があると思います。
PETの知識があると便利なので今回、記事にしました。
PETとは、陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography)の略語です。
陽電子を放出する放射性同位元素で標識された薬剤を体内に静脈注射して、
その陽電子が周囲の電子と結合して消滅するときに放出される放射線を検出することにより、
薬剤の体内での分布から細胞の活動状態を画像化する撮影法です。
PETは、がんの性質を利用してがん細胞を発見します。
放射性同位元素をブドウ糖に結合させて<18F-FDG>という薬剤を作り、
静脈に注射します。
がんは正常な細胞と比べて、数倍のブドウ糖を利用する性質があるので、
それを利用してがんを見つけだします。
<18F-FDG>はブドウ糖に似た性質を持っているので、
ブドウ糖と同じようにがんにたくさん集まります。
これによりがんがどこにあるのか、
あるいはがんの広がり具合・転移している場所などがわかり、
CTやMRIなどの診断結果と合わせれば、
治療方法や治療範囲を決めるのに役に立ちます。
放射性同位元素でラベルしたブドウ糖に似た物質を静脈注射するので、
食事で糖質を摂ったりすると、正確な検査の邪魔になります。
それでPET検査6時間前までに、軽い食事を済ませて、
あとは水などゼロカロリーの飲料だけOKです。
通常の血圧の薬などは大丈夫ですが、糖尿病の薬は事前に相談が必要です。
運動により、筋肉にブドウ糖が集まるので、一定時間の安静が必要です。
食事とは無関係に、興奮したり怒ったりすると、
アドレナリンがでて、血糖値上昇することがあります。
30~60分の歩行など軽い運動だと血糖血が下がることがあります。
激しい運動だと、アドレナリンが出て、血糖値が上昇することがあります。
運動をせずに心もリラックスしていて、食事もなしなら、血糖値上昇はないと思います。
検査前日…
食事は通常通りでOKですがが、飲酒はなしです。
検査当日…
受付時間の6時間前までに軽く(腹7分目程度)済ませます。
以後は水分のみを摂るようにしましょう。
水を摂る場合は、お水・白湯に限ります。
糖質の入ったものや乳製品を飲むと、
検査に使用する薬剤の性質上、正確な検査ができなくなります。
なお、お茶やブラックコーヒーや紅茶にはカフェインが含まれているので
人によっては血糖値が上昇することがあるので、カロリーはほぼなしですが、
NGなのです。
江部康二
2022年10月23日 (日)
こんにちは。
高齢者の腎機能はクレアチニンで評価してはいけません。
高齢者の腎機能はシスタチンCで評価しなくてはなりません。
ブログ読者の医師・看護師の方々は、是非同僚や知り合いの医師・看護師の方々に
この情報を拡散するようよろしくお願い申し上げます。
例えば、75歳男性Aさんの血清クレアチニン値は0.76mg/dlで基準値内で、
eGFRは75.9mL/min/1.73m2と正常でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.76mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは30.61 mL/min/1.73m2としっかり腎機能障害でした。
同様に、77歳女性Aさんのクレアチニン値は0.58mg/dlで基準値内で
eGFRは73.89 mL/min/1.73m2で正常でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.48mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは39.59 mL/min/1.73m2で腎機能障害が認められました。
つまり、AさんもBさんも、本当は腎機能障害があるけれど、
血清クレアチニン検査は正常であり、
見逃してしまうということになります。
クレアチニンは筋肉量や運動が結果に影響します。
高齢者は筋肉量が少ないので、
本当は腎機能障害があるのに見かけ上、正常にでてしまうのです。
血清シスタチンCが、それらに影響を受けない
最も、信頼度の高い腎機能検査です。
高齢者の場合は、ほとんどの人において、筋肉量が少ないです。
そうすると、一般によく用いられる腎機能検査の「血清クレアチニン値」だと、
筋肉量が少ない分、低値になります。
つまり、本当は腎機能障害があるのに、「血清クレアチニン値」だと
正常範囲になってしまうケースがかなりあると思われます。
このような時、「血清シスタチンC」だと、筋肉量に影響されずに
正確な腎機能を評価することができ、とても有用です。
血清クレアチニンの基準値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。
血清シスタチンCの基準値は、男性0.63~0.95mg/L、女性0.56~0.87mg/L です。
国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人が高齢者です。
65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
総務省によれば、日本の65歳以上の高齢者は、
2020年は3617万人・総人口の28.7%で、過去最高の更新が続いています。
筋肉量
20歳を基準。
30歳で、6%低下
40歳で、12%低下。
50歳で、18%低下。
60歳で、24%低下。
70歳で、30%低下。
筋肉量に関しては
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/undoukei-rouka.html
健康長寿ネット
を参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。
これだと、
少なくとも60歳以上はクレアチニンは当てにならないのでシスタチンCで評価すべきです。
基本40歳以上はシスタチンCがいいです。
しかし、1/3ヶ月でないと保険適応となりません。
つまり、1月に検査したら、次は4月となります。
腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、
取り過ぎた塩分などを尿と一緒に
体の外へ出してくれる働きがあります
腎臓はいらなくなった余分なものを体から排出して、
必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、
体内の環境を正常に保つことができるのです。
糸球体での濾過量(GFR)は、正常では一定に維持され、
腎機能を知るうえで最も重要な指標となります。
血清シスタチンCの数値や血清クレアチニンの数値から、
年齢と性別を考慮して、腎臓の働きを推測した値を、
eGFR(推定糸球体濾過量)と言います。
<血清シスタチンC GFR>
<血清クレアチニン GFR>
で、ネットで検索すれば、
eGFR(推定糸球体濾過量)を計算するサイトが見つかります。
便利なので、利用しましょう。
そこで計算して、eGFRが60以上なら心配ないです。
腎機能検査として、一般的な血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、
運動などの影響を受けますが、
血清シスタチンC値はそれらの影響を受けないため、
小児・老人・妊産婦・アスリートなどでも問題なく測定できます。
また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。
したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、
尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には、
早期腎症の可能性がありえるので、血清シスタチンCを調べるのが有用です。
血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、
シスタチンCを測定する意義はありません。
一方、ごく軽度上昇例で評価が困難な場合、
シスタチンC測定で腎機能を検査するのがお奨めです。
江部康二
高齢者の腎機能はクレアチニンで評価してはいけません。
高齢者の腎機能はシスタチンCで評価しなくてはなりません。
ブログ読者の医師・看護師の方々は、是非同僚や知り合いの医師・看護師の方々に
この情報を拡散するようよろしくお願い申し上げます。
例えば、75歳男性Aさんの血清クレアチニン値は0.76mg/dlで基準値内で、
eGFRは75.9mL/min/1.73m2と正常でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.76mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは30.61 mL/min/1.73m2としっかり腎機能障害でした。
同様に、77歳女性Aさんのクレアチニン値は0.58mg/dlで基準値内で
eGFRは73.89 mL/min/1.73m2で正常でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.48mg/dlで基準値を超えていて
eGFRは39.59 mL/min/1.73m2で腎機能障害が認められました。
つまり、AさんもBさんも、本当は腎機能障害があるけれど、
血清クレアチニン検査は正常であり、
見逃してしまうということになります。
クレアチニンは筋肉量や運動が結果に影響します。
高齢者は筋肉量が少ないので、
本当は腎機能障害があるのに見かけ上、正常にでてしまうのです。
血清シスタチンCが、それらに影響を受けない
最も、信頼度の高い腎機能検査です。
高齢者の場合は、ほとんどの人において、筋肉量が少ないです。
そうすると、一般によく用いられる腎機能検査の「血清クレアチニン値」だと、
筋肉量が少ない分、低値になります。
つまり、本当は腎機能障害があるのに、「血清クレアチニン値」だと
正常範囲になってしまうケースがかなりあると思われます。
このような時、「血清シスタチンC」だと、筋肉量に影響されずに
正確な腎機能を評価することができ、とても有用です。
血清クレアチニンの基準値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。
血清シスタチンCの基準値は、男性0.63~0.95mg/L、女性0.56~0.87mg/L です。
国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人が高齢者です。
65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
総務省によれば、日本の65歳以上の高齢者は、
2020年は3617万人・総人口の28.7%で、過去最高の更新が続いています。
筋肉量
20歳を基準。
30歳で、6%低下
40歳で、12%低下。
50歳で、18%低下。
60歳で、24%低下。
70歳で、30%低下。
筋肉量に関しては
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/undoukei-rouka.html
健康長寿ネット
を参考にさせて頂きました。
ありがとうございます。
これだと、
少なくとも60歳以上はクレアチニンは当てにならないのでシスタチンCで評価すべきです。
基本40歳以上はシスタチンCがいいです。
しかし、1/3ヶ月でないと保険適応となりません。
つまり、1月に検査したら、次は4月となります。
腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、
取り過ぎた塩分などを尿と一緒に
体の外へ出してくれる働きがあります
腎臓はいらなくなった余分なものを体から排出して、
必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、
体内の環境を正常に保つことができるのです。
糸球体での濾過量(GFR)は、正常では一定に維持され、
腎機能を知るうえで最も重要な指標となります。
血清シスタチンCの数値や血清クレアチニンの数値から、
年齢と性別を考慮して、腎臓の働きを推測した値を、
eGFR(推定糸球体濾過量)と言います。
<血清シスタチンC GFR>
<血清クレアチニン GFR>
で、ネットで検索すれば、
eGFR(推定糸球体濾過量)を計算するサイトが見つかります。
便利なので、利用しましょう。
そこで計算して、eGFRが60以上なら心配ないです。
腎機能検査として、一般的な血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、
運動などの影響を受けますが、
血清シスタチンC値はそれらの影響を受けないため、
小児・老人・妊産婦・アスリートなどでも問題なく測定できます。
また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。
したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、
尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には、
早期腎症の可能性がありえるので、血清シスタチンCを調べるのが有用です。
血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、
シスタチンCを測定する意義はありません。
一方、ごく軽度上昇例で評価が困難な場合、
シスタチンC測定で腎機能を検査するのがお奨めです。
江部康二
2022年10月21日 (金)
【22/10/19 たがしゅう
PD-1の下げ方の違い
江部先生
ご無沙汰しております。
今回の記事、大変興味深く拝見しました。
特に気になったのは「BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました」の部分です。
PD-1と言いますと、ご存知のように「PD-1」というのは新規抗がん剤「免疫チェックポイント阻害剤」でブロックされるターゲットの一つです。
T細胞表面に発現しているPD-1は本来、抗原提示細胞の表面や血管内皮等に発現しているPD-L1と結合することで、T細胞がこれを攻撃することを抑制される働き、つまり「自己の名札」としての働くことが示されています。
一方でなぜか一部の進行がんの患者さんのがん細胞にもこのPD-L1が過剰発現していて、T細胞ががん細胞を攻撃できなくなっている状況があると、この状況でPD-1の働きをブロックすることでT細胞に再びがんを攻撃させることを可能にし、抗がん剤としての効果を発揮することが言われています。
つまり今回のブログ記事で書かれていた「BHB(ケトン体)でのT細胞のPD-1の発現低下」は、
免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の作用の仕方と同じだということです。
ところが免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1を過剰発現しているがん細胞だけではなく、もともとPD-L1を発現している正常細胞(抗原提示細胞、血管内皮細胞など)も攻撃してしまうように仕向けられるため、副作用として自己免疫疾患が誘発されるということも問題となっている薬です。
ですがBHB(ケトン体)で同じように自己免疫疾患が起こるかと言われたら、むしろ逆でケトン体には抗炎症作用があることもすでに先生の別記事で示されていたと思います(http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3626.html)。
この話はHbA1cが高い状態をインスリンで急に血糖値を下げたら網膜症が悪化するけれど、糖質制限食で下げた場合にはそのような現象は起こらないという話と似ているように思えます。
いかに人間がもともと持っているシステムを活用することが大事であるかということを物語っている話であるように私には思えます。
ちなみに拙ブログでもT細胞の疲弊について取り上げたことがございます。T細胞の疲弊は解糖系の過剰亢進の結果であり、これを脂質代謝へ切り替えるとT細胞は活動的なエフェクターT細胞から休眠的なメモリーT細胞に変わるということを学びました。今回の話とも整合性が取れるように思います。参考になれば幸いに存じます。
参考:
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
「細胞性免疫」が最も適切に働く条件
https://tagashuu.jp/blog-entry-1874.html】
こんにちは。
たがしゅう先生からとても参考になるコメントを頂きました。
ありがとうございます。
医学用語もあるので少し解説しながら、
私の意見を述べようと思います。
【特に気になったのは「BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました」の部分です。】
in vitroというのは、試験管内という意味で、
in vivo というのは、生体内という意味です。
【「PD-1」というのは新規抗がん剤「免疫チェックポイント阻害剤」でブロックされるターゲットの一つです。
T細胞表面に発現しているPD-1は本来、抗原提示細胞の表面や血管内皮等に発現しているPD-L1と結合することで、T細胞がこれを攻撃することを抑制される働き、つまり「自己の名札」としての働くことが示されています。
一方でなぜか一部の進行がんの患者さんのがん細胞にもこのPD-L1が過剰発現していて、T細胞ががん細胞を攻撃できなくなっている状況があると、この状況でPD-1の働きをブロックすることでT細胞に再びがんを攻撃させることを可能にし、抗がん剤としての効果を発揮することが言われています。】
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。
T細胞の表面には、
「攻撃するな」という命令を受け取るためのアンテナ(PD-1)があります。
体細胞や血管内皮細胞にあるアンテナ(PD-L1)と結合することで、
自己の名札として働きT細胞が、攻撃しなくなります。
一方、がん細胞表面にもアンテナ(PD-L1)が多くあり、
T細胞のアンテナに結合して、「攻撃するな」というサインをだします。
すると、T細胞の攻撃ににブレーキがかかり、
がん細胞は排除されなくなります。
このように、T細胞にブレーキがかかる仕組みを
「免疫チェックポイント」といいます。
免疫チェックポイント阻害薬は、
T細胞やがん細胞に作用して、
免疫にブレーキがかかるのを防ぎます。
【つまり今回のブログ記事で書かれていた
「BHB(ケトン体)でのT細胞のPD-1の発現低下」は、
免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の作用の仕方と
同じだということです。
ところが免疫チェックポイント阻害剤は、
PD-L1を過剰発現しているがん細胞だけではなく、
もともとPD-L1を発現している正常細胞(抗原提示細胞、血管内皮細胞など)も攻撃してしまうように仕向けられるため、
副作用として自己免疫疾患が誘発されるということも
問題となっている薬です。
ですがBHB(ケトン体)で同じように自己免疫疾患が起こるかと言われたら、むしろ逆でケトン体には抗炎症作用があることもすでに先生の別記事で示されていたと思います(http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3626.html)。】
たがしゅう先生がご指摘のように、免疫チェックポイント阻害剤が
がん細胞のアンテナ(PD-L1)だけに作用してくれたらいいのですが、
正常なT細胞のアンテナ(PD-1)にも作用してしまうのが大きな欠点です。
免疫チェックポイント阻害剤のその欠点により、副作用として
自己免疫疾患などが誘発されるのです。
PD-1阻害薬で有名なのはオプジーボ(二ポルマブ)です。
オプジーボの開発で、本庶佑京都大特別教授が
ノーベル生理学・医学賞を受賞されましね。
大きな欠点のある免疫チェックポイント阻害剤に対して、
BHB(ケトン体)は、
がん細胞のアンテナにだけ作用して正常細胞のアンテナには作用しないので
いいとこ取りが可能なのです。
【この話はHbA1cが高い状態をインスリンで急に血糖値を下げたら網膜症が悪化するけれど、糖質制限食で下げた場合にはそのような現象は起こらないという話と似ているように思えます。
いかに人間がもともと持っているシステムを活用することが大事であるかということを物語っている話であるように私には思えます。】
まったく同感です。
【ちなみに拙ブログでもT細胞の疲弊について取り上げたことがございます。T細胞の疲弊は解糖系の過剰亢進の結果であり、これを脂質代謝へ切り替えるとT細胞は活動的なエフェクターT細胞から休眠的なメモリーT細胞に変わるということを学びました。今回の話とも整合性が取れるように思います。参考になれば幸いに存じます。
参考:
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
「細胞性免疫」が最も適切に働く条件
https://tagashuu.jp/blog-entry-1874.html】
がん組織内に潜り込んだ「T細胞」の実に半分以上が本来の機能を失っていると言われています。
このような機能が失われた状態を一般には「T細胞の疲弊」と呼びます。
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
では、たがしゅう先生が
『T細胞が無理に酷使され過ぎたことによって、
T細胞が不可逆的に機能を停止させてしまった状態だと
言うことができるかもしれません。』
と仮説を述べておられます。
詳しくは、たがしゅうブロクをご参照ください。
江部康二
PD-1の下げ方の違い
江部先生
ご無沙汰しております。
今回の記事、大変興味深く拝見しました。
特に気になったのは「BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました」の部分です。
PD-1と言いますと、ご存知のように「PD-1」というのは新規抗がん剤「免疫チェックポイント阻害剤」でブロックされるターゲットの一つです。
T細胞表面に発現しているPD-1は本来、抗原提示細胞の表面や血管内皮等に発現しているPD-L1と結合することで、T細胞がこれを攻撃することを抑制される働き、つまり「自己の名札」としての働くことが示されています。
一方でなぜか一部の進行がんの患者さんのがん細胞にもこのPD-L1が過剰発現していて、T細胞ががん細胞を攻撃できなくなっている状況があると、この状況でPD-1の働きをブロックすることでT細胞に再びがんを攻撃させることを可能にし、抗がん剤としての効果を発揮することが言われています。
つまり今回のブログ記事で書かれていた「BHB(ケトン体)でのT細胞のPD-1の発現低下」は、
免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の作用の仕方と同じだということです。
ところが免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1を過剰発現しているがん細胞だけではなく、もともとPD-L1を発現している正常細胞(抗原提示細胞、血管内皮細胞など)も攻撃してしまうように仕向けられるため、副作用として自己免疫疾患が誘発されるということも問題となっている薬です。
ですがBHB(ケトン体)で同じように自己免疫疾患が起こるかと言われたら、むしろ逆でケトン体には抗炎症作用があることもすでに先生の別記事で示されていたと思います(http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3626.html)。
この話はHbA1cが高い状態をインスリンで急に血糖値を下げたら網膜症が悪化するけれど、糖質制限食で下げた場合にはそのような現象は起こらないという話と似ているように思えます。
いかに人間がもともと持っているシステムを活用することが大事であるかということを物語っている話であるように私には思えます。
ちなみに拙ブログでもT細胞の疲弊について取り上げたことがございます。T細胞の疲弊は解糖系の過剰亢進の結果であり、これを脂質代謝へ切り替えるとT細胞は活動的なエフェクターT細胞から休眠的なメモリーT細胞に変わるということを学びました。今回の話とも整合性が取れるように思います。参考になれば幸いに存じます。
参考:
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
「細胞性免疫」が最も適切に働く条件
https://tagashuu.jp/blog-entry-1874.html】
こんにちは。
たがしゅう先生からとても参考になるコメントを頂きました。
ありがとうございます。
医学用語もあるので少し解説しながら、
私の意見を述べようと思います。
【特に気になったのは「BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました」の部分です。】
in vitroというのは、試験管内という意味で、
in vivo というのは、生体内という意味です。
【「PD-1」というのは新規抗がん剤「免疫チェックポイント阻害剤」でブロックされるターゲットの一つです。
T細胞表面に発現しているPD-1は本来、抗原提示細胞の表面や血管内皮等に発現しているPD-L1と結合することで、T細胞がこれを攻撃することを抑制される働き、つまり「自己の名札」としての働くことが示されています。
一方でなぜか一部の進行がんの患者さんのがん細胞にもこのPD-L1が過剰発現していて、T細胞ががん細胞を攻撃できなくなっている状況があると、この状況でPD-1の働きをブロックすることでT細胞に再びがんを攻撃させることを可能にし、抗がん剤としての効果を発揮することが言われています。】
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬です。
T細胞の表面には、
「攻撃するな」という命令を受け取るためのアンテナ(PD-1)があります。
体細胞や血管内皮細胞にあるアンテナ(PD-L1)と結合することで、
自己の名札として働きT細胞が、攻撃しなくなります。
一方、がん細胞表面にもアンテナ(PD-L1)が多くあり、
T細胞のアンテナに結合して、「攻撃するな」というサインをだします。
すると、T細胞の攻撃ににブレーキがかかり、
がん細胞は排除されなくなります。
このように、T細胞にブレーキがかかる仕組みを
「免疫チェックポイント」といいます。
免疫チェックポイント阻害薬は、
T細胞やがん細胞に作用して、
免疫にブレーキがかかるのを防ぎます。
【つまり今回のブログ記事で書かれていた
「BHB(ケトン体)でのT細胞のPD-1の発現低下」は、
免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)の作用の仕方と
同じだということです。
ところが免疫チェックポイント阻害剤は、
PD-L1を過剰発現しているがん細胞だけではなく、
もともとPD-L1を発現している正常細胞(抗原提示細胞、血管内皮細胞など)も攻撃してしまうように仕向けられるため、
副作用として自己免疫疾患が誘発されるということも
問題となっている薬です。
ですがBHB(ケトン体)で同じように自己免疫疾患が起こるかと言われたら、むしろ逆でケトン体には抗炎症作用があることもすでに先生の別記事で示されていたと思います(http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3626.html)。】
たがしゅう先生がご指摘のように、免疫チェックポイント阻害剤が
がん細胞のアンテナ(PD-L1)だけに作用してくれたらいいのですが、
正常なT細胞のアンテナ(PD-1)にも作用してしまうのが大きな欠点です。
免疫チェックポイント阻害剤のその欠点により、副作用として
自己免疫疾患などが誘発されるのです。
PD-1阻害薬で有名なのはオプジーボ(二ポルマブ)です。
オプジーボの開発で、本庶佑京都大特別教授が
ノーベル生理学・医学賞を受賞されましね。
大きな欠点のある免疫チェックポイント阻害剤に対して、
BHB(ケトン体)は、
がん細胞のアンテナにだけ作用して正常細胞のアンテナには作用しないので
いいとこ取りが可能なのです。
【この話はHbA1cが高い状態をインスリンで急に血糖値を下げたら網膜症が悪化するけれど、糖質制限食で下げた場合にはそのような現象は起こらないという話と似ているように思えます。
いかに人間がもともと持っているシステムを活用することが大事であるかということを物語っている話であるように私には思えます。】
まったく同感です。
【ちなみに拙ブログでもT細胞の疲弊について取り上げたことがございます。T細胞の疲弊は解糖系の過剰亢進の結果であり、これを脂質代謝へ切り替えるとT細胞は活動的なエフェクターT細胞から休眠的なメモリーT細胞に変わるということを学びました。今回の話とも整合性が取れるように思います。参考になれば幸いに存じます。
参考:
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
「細胞性免疫」が最も適切に働く条件
https://tagashuu.jp/blog-entry-1874.html】
がん組織内に潜り込んだ「T細胞」の実に半分以上が本来の機能を失っていると言われています。
このような機能が失われた状態を一般には「T細胞の疲弊」と呼びます。
2021年1月28日(木)たがしゅうブログ記事
では、たがしゅう先生が
『T細胞が無理に酷使され過ぎたことによって、
T細胞が不可逆的に機能を停止させてしまった状態だと
言うことができるかもしれません。』
と仮説を述べておられます。
詳しくは、たがしゅうブロクをご参照ください。
江部康二
2022年10月20日 (木)
こんにちは。
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク vol.14
▼ 『糖質制限食は変わった食事か?
~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える』
https://youtu.be/_BQiQv4Pg8k
のご案内です。
今回のテーマですが、原点に戻って、
「糖質制限食は巷で言われているような変わった食事なのか?」
ということを考察してみました。
まずは日本列島にヒトが住みついた
38000年前の旧石器時代の食生活から開始です。
結論をいうと『スーパー糖質制限食 ≒ 旧石器時代食』でした。
以前は『新縄文食』と言っていましたが、
糖質摂取比率10%ていどのスーパー糖質制限食は
旧石器時代の食事とほぼ一緒でした。
そして、旧石器時代は約22000年間という長期にわたって続きましたが、
この時に日本人の消化・吸収・生理・代謝システムなどが完成されたわけです。
従って我々日本人の身体は、
『スーパー糖質制限食 ≒ 旧石器時代食』に最も適合していると考えられます。
詳しくはユーチューブをご視聴頂ければ幸いです。
なお、旧石器~弥生時代を原始時代と呼ぶとは浅学にして知りませんでした。
糖質制限食に関して、米国糖尿病学会は、
2019年4月のコンセンサス・レポートで
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』と明言して以降は、
2020年、2021年、2022年のガイドラインでも同様の見解です。
このように糖質制限食には
エビデンスに基づいた米国糖尿病学会のお墨付きがあります。
私は、糖質制限食はブームではなく、生理学的なな真実そのものと考えています。
従ってブームのように消え去ることはなく、
今後もどんどん繁栄していくと思っています。
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
*********
ブログ読者の皆様、弊会のYouTube動画を多数ご覧いただいておりまして、ありがとうございます。
江部理事長による動画「ドクター江部の糖質オフ!健康トーク vol.14」の配信をご案内申し上げます。
テーマは「糖質制限食は変わった食事か? ~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える」です。
・日本の旧石器、縄文、弥生の各時代の食生活
・糖質制限食の定義と高雄病院の3つのコース
・旧石器時代の食生活とスーパー糖質制限食
・日本人が精製炭水化物を食べ始めたのはいつ頃か
・生活習慣病の根本要因
等について述べつつ、糖質制限食はどのような食事と言えるかを話しております。
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
▼ vol.14
『糖質制限食は変わった食事か?
~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える』
https://youtu.be/_BQiQv4Pg8k
ご覧いただけますと、また、ご興味のある方へシェアしていただけますと幸いです。
▼協会YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCdh9uz2_XnhDyJj9pHDDW1A
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会
https://www.toushitsuseigen.or.jp/
*********
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク vol.14
▼ 『糖質制限食は変わった食事か?
~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える』
https://youtu.be/_BQiQv4Pg8k
のご案内です。
今回のテーマですが、原点に戻って、
「糖質制限食は巷で言われているような変わった食事なのか?」
ということを考察してみました。
まずは日本列島にヒトが住みついた
38000年前の旧石器時代の食生活から開始です。
結論をいうと『スーパー糖質制限食 ≒ 旧石器時代食』でした。
以前は『新縄文食』と言っていましたが、
糖質摂取比率10%ていどのスーパー糖質制限食は
旧石器時代の食事とほぼ一緒でした。
そして、旧石器時代は約22000年間という長期にわたって続きましたが、
この時に日本人の消化・吸収・生理・代謝システムなどが完成されたわけです。
従って我々日本人の身体は、
『スーパー糖質制限食 ≒ 旧石器時代食』に最も適合していると考えられます。
詳しくはユーチューブをご視聴頂ければ幸いです。
なお、旧石器~弥生時代を原始時代と呼ぶとは浅学にして知りませんでした。
糖質制限食に関して、米国糖尿病学会は、
2019年4月のコンセンサス・レポートで
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』と明言して以降は、
2020年、2021年、2022年のガイドラインでも同様の見解です。
このように糖質制限食には
エビデンスに基づいた米国糖尿病学会のお墨付きがあります。
私は、糖質制限食はブームではなく、生理学的なな真実そのものと考えています。
従ってブームのように消え去ることはなく、
今後もどんどん繁栄していくと思っています。
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
*********
ブログ読者の皆様、弊会のYouTube動画を多数ご覧いただいておりまして、ありがとうございます。
江部理事長による動画「ドクター江部の糖質オフ!健康トーク vol.14」の配信をご案内申し上げます。
テーマは「糖質制限食は変わった食事か? ~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える」です。
・日本の旧石器、縄文、弥生の各時代の食生活
・糖質制限食の定義と高雄病院の3つのコース
・旧石器時代の食生活とスーパー糖質制限食
・日本人が精製炭水化物を食べ始めたのはいつ頃か
・生活習慣病の根本要因
等について述べつつ、糖質制限食はどのような食事と言えるかを話しております。
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
▼ vol.14
『糖質制限食は変わった食事か?
~日本の原始時代(旧石器~弥生時代)の食生活から考える』
https://youtu.be/_BQiQv4Pg8k
ご覧いただけますと、また、ご興味のある方へシェアしていただけますと幸いです。
▼協会YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCdh9uz2_XnhDyJj9pHDDW1A
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会
https://www.toushitsuseigen.or.jp/
*********
2022年10月19日 (水)
【日付 名前 22/10/18 よよ 夜間多尿についていつもありがとうございます。
数年ぶりに膀胱炎にかかりました。
糖質の多い食事をしたのと、過度のストレス疲れがあった時になりました。
尿の状態を見るため尿量を測り始めましたら、
就寝後から起床時を含む尿量が総尿量の40パーセントを占めていることがわかりました。
夜間回数は3回です。昼間は約7回くらいです。
喉が渇いて飲むということもなく、寝る前には水分は摂りません。
心配なのは体重が減る一方なのです。
内臓検査は異常なしです。尿に栄養が出過ぎているのでしょうか。
糖質制限で身体がインスリンを出さないようになると、
エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになるというのを見ました。
空腹時血糖値は正常で、ヘモグロビンは6、4です。
やはり糖尿病性多尿になるのでしょうか。
これ以上痩せないためにはどうすれば良いのか、
夜間多尿を治すのにはどうすれば良いかお教え願えませんでしょうか。
ちなみに現在飲んでいる漢方薬は、牛車腎気丸、補中益気湯、です。
身長は164センチ 体重は47キロ 女性74歳 】
こんばんは。
よよさんから、糖質制限食とインスリン分泌などについて
コメント・質問を頂きました。
「糖質制限で身体がインスリンを出さないようになると、エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになる」
糖質制限食でも、野菜は食べます。
野菜の中にも糖質は含まれていますので、
その分食後の『追加分泌インスリン』が分泌されます。
糖質摂取時の追加分泌に比べればはるかに少ないですが
それなりに分泌されています。
また『基礎分泌インスリ』は、
糖質あり食でも、糖質制限食でも空腹時や睡眠時を含めて
24時間ずっと分泌されています。
従って、スーパー糖質制限食を実践したら
インスリン分泌がなくなるということはありません。
「エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになる」
ヒトの普段の主エネルギー源は、そもそも
<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>です。
安静時や睡眠時は、心臓など内臓も、筋肉も含めて身体のほとんどは
このシステムからエネルギーを得ています。
脳もケトン体が最も効率の良いエネルギー源となります。
<ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム>は、
闘争時や逃走時の緊急時や糖質摂取したときに作動するシステムです。
グリコーゲン250gで、1000kcalしかありませんので、
すぐに枯渇してしまいます。
あと、赤血球はミトコンドリアを持っていないので
ブドウ糖が唯一のエネルギー源となります。
肝臓が「糖新生」でブドウ糖をせっせと作っているのはもっぱら赤血球のためなのです。
脂肪酸やケトン体やブドウ糖があるうちは、蛋白質はエネルギー源としては
利用されません。
飢餓で脂肪酸、ケトン体、ブドウ糖が枯渇したら
蛋白質をエネルギー源としますが、それはすでに死の一歩手前段階です。
「身長は164センチ 体重は47キロ 女性74歳」
BMIが17.47しかありませんので痩せすぎです。
単純に摂取エネルギー不足ですので
意識して動物性脂肪と動物性蛋白質を積極的に食べて摂取エネルギーを増やしましょう。
ウォキングもして、体重を徐々に増やして、
筋肉も増やして49.8kgを目指しましょう。
「夜間回数は3回」
74歳で、夜間尿2~3回の人は 、結構おられると思います。
HbA1c6.4%でコントロール良好なので糖尿病で夜間尿が増えているのではないです。
体重を増やしてBMIを18.5くらいまでもっていって
基礎体力をつけ筋力もつければ、夜間尿も減ると思います。
江部康二
数年ぶりに膀胱炎にかかりました。
糖質の多い食事をしたのと、過度のストレス疲れがあった時になりました。
尿の状態を見るため尿量を測り始めましたら、
就寝後から起床時を含む尿量が総尿量の40パーセントを占めていることがわかりました。
夜間回数は3回です。昼間は約7回くらいです。
喉が渇いて飲むということもなく、寝る前には水分は摂りません。
心配なのは体重が減る一方なのです。
内臓検査は異常なしです。尿に栄養が出過ぎているのでしょうか。
糖質制限で身体がインスリンを出さないようになると、
エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになるというのを見ました。
空腹時血糖値は正常で、ヘモグロビンは6、4です。
やはり糖尿病性多尿になるのでしょうか。
これ以上痩せないためにはどうすれば良いのか、
夜間多尿を治すのにはどうすれば良いかお教え願えませんでしょうか。
ちなみに現在飲んでいる漢方薬は、牛車腎気丸、補中益気湯、です。
身長は164センチ 体重は47キロ 女性74歳 】
こんばんは。
よよさんから、糖質制限食とインスリン分泌などについて
コメント・質問を頂きました。
「糖質制限で身体がインスリンを出さないようになると、エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになる」
糖質制限食でも、野菜は食べます。
野菜の中にも糖質は含まれていますので、
その分食後の『追加分泌インスリン』が分泌されます。
糖質摂取時の追加分泌に比べればはるかに少ないですが
それなりに分泌されています。
また『基礎分泌インスリ』は、
糖質あり食でも、糖質制限食でも空腹時や睡眠時を含めて
24時間ずっと分泌されています。
従って、スーパー糖質制限食を実践したら
インスリン分泌がなくなるということはありません。
「エネルギーを脂肪やタンパク質で使うようになる」
ヒトの普段の主エネルギー源は、そもそも
<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>です。
安静時や睡眠時は、心臓など内臓も、筋肉も含めて身体のほとんどは
このシステムからエネルギーを得ています。
脳もケトン体が最も効率の良いエネルギー源となります。
<ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム>は、
闘争時や逃走時の緊急時や糖質摂取したときに作動するシステムです。
グリコーゲン250gで、1000kcalしかありませんので、
すぐに枯渇してしまいます。
あと、赤血球はミトコンドリアを持っていないので
ブドウ糖が唯一のエネルギー源となります。
肝臓が「糖新生」でブドウ糖をせっせと作っているのはもっぱら赤血球のためなのです。
脂肪酸やケトン体やブドウ糖があるうちは、蛋白質はエネルギー源としては
利用されません。
飢餓で脂肪酸、ケトン体、ブドウ糖が枯渇したら
蛋白質をエネルギー源としますが、それはすでに死の一歩手前段階です。
「身長は164センチ 体重は47キロ 女性74歳」
BMIが17.47しかありませんので痩せすぎです。
単純に摂取エネルギー不足ですので
意識して動物性脂肪と動物性蛋白質を積極的に食べて摂取エネルギーを増やしましょう。
ウォキングもして、体重を徐々に増やして、
筋肉も増やして49.8kgを目指しましょう。
「夜間回数は3回」
74歳で、夜間尿2~3回の人は 、結構おられると思います。
HbA1c6.4%でコントロール良好なので糖尿病で夜間尿が増えているのではないです。
体重を増やしてBMIを18.5くらいまでもっていって
基礎体力をつけ筋力もつければ、夜間尿も減ると思います。
江部康二
2022年10月18日 (火)
こんにちは。
現生人類(ホモ・サピエンス)誕生後に起こった最初の大きな歴史的変化は、
組織的農耕の開始です。
ティグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野であるメソポタミアは、現在のイラクの一部にあたり、
小麦や大麦が自生していました。
この肥沃な三日月地帯に属する地域で、
小麦(あるいは大麦)の栽培が約12000年(或いは10000年)前から始まりました。
アジアでは、約10000年ほど前、
中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が開始されました。
農耕の発達により、単位面積当たりで養える人口は20倍~100倍に
激増しました。
しかし「天才と分裂病の進化論」(デビット・ホロビン著、新潮社、2002年、金沢 泰子翻訳)によれば、
水棲食物中心の食事から穀物中心への食事への変化は、
少なくとも過渡期に人間に健康状態の悪化をもたらしました。
狩猟採集生活者の遺骸が見つかった場所で生活していた農耕生活者
の遺骸についての数多くの調査結果で、身長は数インチ低くなり、
遺骨は変性疾患の痕跡を示していました。
人口が少ない狩猟民族の頃は、魚や肉など動物性タンパク質をかな
りの割合で摂取していたと考えられます。
組織的農耕が始まってからは、増えた人口を養うためには、穀物
(糖質)中心の食生活とならざるを得ず、結果として動物性タンパ
ク質の摂取不足が発生した可能性が高いのです。
この動物性タンパク質不足が、健康状態の悪化を招いたと思われます。
現代でイメージするとすれば、穀物と野菜中心の菜食主義者の食生活の場合、
ビタミンB12が不足しがちで、貧血のリスクとなります。
ビタミンB12はレバー、牡蠣、あさり、しじみ、さんまなどに多く含まれます。
主に動物性食品に含まれている栄養素であり、植物性食品にはほとんど含まれていません。
また、アトピー性皮膚炎の子供たちに、一時「除去食」が過剰に行
われたことがあります。穀物と野菜中心で、動物性タンパク質は除
去の場合、カロリーは足りていても、成長障害が問題になったのは
記憶に新しいところです。
さらに穀物中心の食生活からは、正常な脳機能に必要なEPA・DHA
(ω3系必須脂肪酸)の摂取が不足するため、脳の代謝に悪影響が
でる可能性があります。
EPA・DHAは、穀物や野菜・果物・ナッツなど植物性食品にはほとん
ど含まれていません。一部の海草、苔、肉微小藻類には含まれてい
ます。
肉微小藻類を食べる水棲小動物や地虫・水鳥・魚・は虫類・両生
類・昆虫・肉・臓器・脳・骨髄などの動物性食品にEPA・DHAは含ま
れています。
精製炭水化物を中心に食事を摂取する文明国の統合失調症は、
重症のことが多いのです。
例えば、精神疾患患者に対して
ドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペンタエン酸(EPA)を既存の精神疾患治療薬と共に投与すると
症状緩和の増強効果が認められること、
統合失調症では赤血球膜や死後脳で多価不飽和脂肪酸が低下していること、
気分障害では血中のDHAやEPAが低い患者ほど自殺の危険性が増すことなどが知られています。
このように、脳機能におけるDHAやEPAの役割の大切さが立証されてきています。
ブログ読者の皆さんで菜食主義のかたも、EPA不足にならないよう
に、せめてお魚は食べてくださいね。
江部康二
現生人類(ホモ・サピエンス)誕生後に起こった最初の大きな歴史的変化は、
組織的農耕の開始です。
ティグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野であるメソポタミアは、現在のイラクの一部にあたり、
小麦や大麦が自生していました。
この肥沃な三日月地帯に属する地域で、
小麦(あるいは大麦)の栽培が約12000年(或いは10000年)前から始まりました。
アジアでは、約10000年ほど前、
中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が開始されました。
農耕の発達により、単位面積当たりで養える人口は20倍~100倍に
激増しました。
しかし「天才と分裂病の進化論」(デビット・ホロビン著、新潮社、2002年、金沢 泰子翻訳)によれば、
水棲食物中心の食事から穀物中心への食事への変化は、
少なくとも過渡期に人間に健康状態の悪化をもたらしました。
狩猟採集生活者の遺骸が見つかった場所で生活していた農耕生活者
の遺骸についての数多くの調査結果で、身長は数インチ低くなり、
遺骨は変性疾患の痕跡を示していました。
人口が少ない狩猟民族の頃は、魚や肉など動物性タンパク質をかな
りの割合で摂取していたと考えられます。
組織的農耕が始まってからは、増えた人口を養うためには、穀物
(糖質)中心の食生活とならざるを得ず、結果として動物性タンパ
ク質の摂取不足が発生した可能性が高いのです。
この動物性タンパク質不足が、健康状態の悪化を招いたと思われます。
現代でイメージするとすれば、穀物と野菜中心の菜食主義者の食生活の場合、
ビタミンB12が不足しがちで、貧血のリスクとなります。
ビタミンB12はレバー、牡蠣、あさり、しじみ、さんまなどに多く含まれます。
主に動物性食品に含まれている栄養素であり、植物性食品にはほとんど含まれていません。
また、アトピー性皮膚炎の子供たちに、一時「除去食」が過剰に行
われたことがあります。穀物と野菜中心で、動物性タンパク質は除
去の場合、カロリーは足りていても、成長障害が問題になったのは
記憶に新しいところです。
さらに穀物中心の食生活からは、正常な脳機能に必要なEPA・DHA
(ω3系必須脂肪酸)の摂取が不足するため、脳の代謝に悪影響が
でる可能性があります。
EPA・DHAは、穀物や野菜・果物・ナッツなど植物性食品にはほとん
ど含まれていません。一部の海草、苔、肉微小藻類には含まれてい
ます。
肉微小藻類を食べる水棲小動物や地虫・水鳥・魚・は虫類・両生
類・昆虫・肉・臓器・脳・骨髄などの動物性食品にEPA・DHAは含ま
れています。
精製炭水化物を中心に食事を摂取する文明国の統合失調症は、
重症のことが多いのです。
例えば、精神疾患患者に対して
ドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペンタエン酸(EPA)を既存の精神疾患治療薬と共に投与すると
症状緩和の増強効果が認められること、
統合失調症では赤血球膜や死後脳で多価不飽和脂肪酸が低下していること、
気分障害では血中のDHAやEPAが低い患者ほど自殺の危険性が増すことなどが知られています。
このように、脳機能におけるDHAやEPAの役割の大切さが立証されてきています。
ブログ読者の皆さんで菜食主義のかたも、EPA不足にならないよう
に、せめてお魚は食べてくださいね。
江部康二
2022年10月17日 (月)
こんにちは。
今回は糖質制限食と低GI食の違いについて考えてみます。
まず、GIは正常人ではあるていど参考になりますが、
糖尿人では、あまり参考になりません。
糖尿人では、GIよりも食品に含まれる糖質のグラム数が大事です。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させ、
1型糖尿人の血糖値を5mg上昇させます。
従いまして、たとえ低GIの食品でも、糖質が主成分の食品(穀物など)を普通に一人前摂取すれば、糖質は50g~60gは含まれているので、糖尿人では食後血糖値は200mgを超えてきます。
糖質制限食では、1回の食事の糖質摂取量を、
10~20g以下にするので、食後血糖値の上昇は、かなり少なくなります。
糖質制限食は、肉・魚貝・大豆製品などがメインですが、
糖質含有量の少ない葉野菜・ブロッコリー・カリフラワー・ゴーヤ・ピーマン、海藻、茸などはOKなので、
食物繊維もしっかり摂れると思います。
それから、GI値は研究者により、データにばらつきがありますが、
豚肉や牛肉や魚のGI値はそもそも存在しません。
GI値は、糖質50gを含む食品を摂取して、基準となる食品(50gのブドウ糖)と食後の血糖値を比較して決定します。
例えば糖質50gを含む豚肉というと、25kg以上はあります。ヾ(゜▽゜)
これは摂取不可能です。
つまり、GI値というものは、あくまでも糖質が主成分の食物を対象にしたものであり、
脂質やタンパク質が主成分の食品は、対象外で計算不能です。
従って、牛肉や豚肉や魚などのGI値は、ないと思っていただいて結構です。
http://www.mendosa.com/gi.htm
このサイトは、David Mendosaという、「ミスターGI」とも呼べるマニアックなおじさんが運営していて、
およそGIのことならなんでも載っています。
英文ですが、お暇なときに覗いてみてください。
このサイトの、最後に、四角で囲んである
Most Popular Articles and Blog Posts
の中の Glycemic Index ををクリックすると、
グリセミック インデックスの 場所に飛びます。
江部康二
☆☆☆
<グリセミック・インデックス:glycemic index:GI:血糖指数>
GIは血糖上昇反応度とも言われています。
一時流行した低インスリンダイエットの本などにGIのことも載っていたので、
聞いたことのある方、またご存知の方もおられるでしょう。
GIというのは、糖質50gを含む食品を摂取した後の血糖値の上昇カーブを2時間追って、
基準となる食品(ブドウ糖50g)を摂取した後の血糖値の上昇カーブの面積と比較し、
パーセントで表した数値のことです。
*
GIの算出方法
糖質50gを含有する食品摂取後
2時間までの血糖曲線下面積
GI=─────────────────────── ×100
糖質50gを含有する基準食(ブドウ糖)
摂取後2時間までの血糖曲線下面積
何やよくわかりませんよね。
グラフにするともう少しわかりやすいのですが、実は私パソコン苦手なもので、写真や絵を貼り付ける技が・・・
すいません。 (*- -)(*_ _)
拒否反応を起こしかけている皆さんのために簡潔に言うと、GIの数値が高ければ血糖値を急激に上昇させやすい食品であり、
GIの数値が低ければ血糖値を急激には上昇させにくい食品であるということです。
GIが高い食品ほど血糖が急激に上昇し、ブドウ糖スパイクを生じます。
実際、50gの糖質を含む玄米と、50gの糖質を含む白米を摂取しても、血糖値の上がり方はそれぞれ異なります。
GIの数値は、70以上は高い、56~69が中等度、GI55以下は低い、と評価されています。
ちなみに玄米のGIは50~60くらいで、白米は70です。
その他、ブドウ糖や白パンのGIは100、豆類は30、乳製品は35くらいです。
糖尿病でない人は、玄米などGIの低いものを主食としていれば、ブドウ糖スパイクは小さく、代謝が安定するというわけです。
しかし、GIに関して一般に言われてる数値は正常人のもので、糖尿人にはあてはまりません。
糖尿病の人は玄米などGIの低いものを食べたとしても、普通に一人前摂取すれば、
200mg/dl以上のブドウ糖スパイクを起こしてしまうことを、
私達は高雄病院の3000人以上のデータで確認しています。
一方糖尿人おいても、GIの高い白米の方が、玄米より血糖値をさらに上昇させやすいということはあります。
しかし、白米一人前で食後血糖値260mgが、玄米一人前なら240mgくらいの差なので臨床的には意味は少ないのです。
また、現在のGIの数値は主に欧米人のデータで、日本人のものではありませんので、
日本人のGIを調べようという動きもあります。
もともとジェンキンスが62品目の数字を出し、
現在International table of GIというアメリカ栄養学会の出したリストで、600種類の食品に関するデータが出ています。
50gのブドウ糖を基準にしたものと、白パン50gを基準にしたものでは、おなじ食品でもGIが異なります。
それからライスとバターライスを比べたら、バターライスのほうがGIが低いというように、
食品の組み合わせでも違いが生じます。
GIというのは、糖質を含む食品、例えばニンジンならニンジンだけを単品で食べてみて計測した数値です。
実際の食事では何種類か一緒に食品を食べますから、GIはあくまでも実験室的なデータですね。
このように見てくるとGIは正常人ではある程度参考にはなりますが、確定的なものではありません。
まして、糖尿人においてはGIはあてにならず、糖質のグラム数の計算のほうが重要です。
そこで糖質制限食の出番となるわけです。
糖質制限食ならば、糖尿人においても血糖値の上下動は極めて少なくなり、
薬に頼ることなく良好な血糖コントロールが期待できます。
江部康二
今回は糖質制限食と低GI食の違いについて考えてみます。
まず、GIは正常人ではあるていど参考になりますが、
糖尿人では、あまり参考になりません。
糖尿人では、GIよりも食品に含まれる糖質のグラム数が大事です。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させ、
1型糖尿人の血糖値を5mg上昇させます。
従いまして、たとえ低GIの食品でも、糖質が主成分の食品(穀物など)を普通に一人前摂取すれば、糖質は50g~60gは含まれているので、糖尿人では食後血糖値は200mgを超えてきます。
糖質制限食では、1回の食事の糖質摂取量を、
10~20g以下にするので、食後血糖値の上昇は、かなり少なくなります。
糖質制限食は、肉・魚貝・大豆製品などがメインですが、
糖質含有量の少ない葉野菜・ブロッコリー・カリフラワー・ゴーヤ・ピーマン、海藻、茸などはOKなので、
食物繊維もしっかり摂れると思います。
それから、GI値は研究者により、データにばらつきがありますが、
豚肉や牛肉や魚のGI値はそもそも存在しません。
GI値は、糖質50gを含む食品を摂取して、基準となる食品(50gのブドウ糖)と食後の血糖値を比較して決定します。
例えば糖質50gを含む豚肉というと、25kg以上はあります。ヾ(゜▽゜)
これは摂取不可能です。
つまり、GI値というものは、あくまでも糖質が主成分の食物を対象にしたものであり、
脂質やタンパク質が主成分の食品は、対象外で計算不能です。
従って、牛肉や豚肉や魚などのGI値は、ないと思っていただいて結構です。
http://www.mendosa.com/gi.htm
このサイトは、David Mendosaという、「ミスターGI」とも呼べるマニアックなおじさんが運営していて、
およそGIのことならなんでも載っています。
英文ですが、お暇なときに覗いてみてください。
このサイトの、最後に、四角で囲んである
Most Popular Articles and Blog Posts
の中の Glycemic Index ををクリックすると、
グリセミック インデックスの 場所に飛びます。
江部康二
☆☆☆
<グリセミック・インデックス:glycemic index:GI:血糖指数>
GIは血糖上昇反応度とも言われています。
一時流行した低インスリンダイエットの本などにGIのことも載っていたので、
聞いたことのある方、またご存知の方もおられるでしょう。
GIというのは、糖質50gを含む食品を摂取した後の血糖値の上昇カーブを2時間追って、
基準となる食品(ブドウ糖50g)を摂取した後の血糖値の上昇カーブの面積と比較し、
パーセントで表した数値のことです。
*
GIの算出方法
糖質50gを含有する食品摂取後
2時間までの血糖曲線下面積
GI=─────────────────────── ×100
糖質50gを含有する基準食(ブドウ糖)
摂取後2時間までの血糖曲線下面積
何やよくわかりませんよね。
グラフにするともう少しわかりやすいのですが、実は私パソコン苦手なもので、写真や絵を貼り付ける技が・・・
すいません。 (*- -)(*_ _)
拒否反応を起こしかけている皆さんのために簡潔に言うと、GIの数値が高ければ血糖値を急激に上昇させやすい食品であり、
GIの数値が低ければ血糖値を急激には上昇させにくい食品であるということです。
GIが高い食品ほど血糖が急激に上昇し、ブドウ糖スパイクを生じます。
実際、50gの糖質を含む玄米と、50gの糖質を含む白米を摂取しても、血糖値の上がり方はそれぞれ異なります。
GIの数値は、70以上は高い、56~69が中等度、GI55以下は低い、と評価されています。
ちなみに玄米のGIは50~60くらいで、白米は70です。
その他、ブドウ糖や白パンのGIは100、豆類は30、乳製品は35くらいです。
糖尿病でない人は、玄米などGIの低いものを主食としていれば、ブドウ糖スパイクは小さく、代謝が安定するというわけです。
しかし、GIに関して一般に言われてる数値は正常人のもので、糖尿人にはあてはまりません。
糖尿病の人は玄米などGIの低いものを食べたとしても、普通に一人前摂取すれば、
200mg/dl以上のブドウ糖スパイクを起こしてしまうことを、
私達は高雄病院の3000人以上のデータで確認しています。
一方糖尿人おいても、GIの高い白米の方が、玄米より血糖値をさらに上昇させやすいということはあります。
しかし、白米一人前で食後血糖値260mgが、玄米一人前なら240mgくらいの差なので臨床的には意味は少ないのです。
また、現在のGIの数値は主に欧米人のデータで、日本人のものではありませんので、
日本人のGIを調べようという動きもあります。
もともとジェンキンスが62品目の数字を出し、
現在International table of GIというアメリカ栄養学会の出したリストで、600種類の食品に関するデータが出ています。
50gのブドウ糖を基準にしたものと、白パン50gを基準にしたものでは、おなじ食品でもGIが異なります。
それからライスとバターライスを比べたら、バターライスのほうがGIが低いというように、
食品の組み合わせでも違いが生じます。
GIというのは、糖質を含む食品、例えばニンジンならニンジンだけを単品で食べてみて計測した数値です。
実際の食事では何種類か一緒に食品を食べますから、GIはあくまでも実験室的なデータですね。
このように見てくるとGIは正常人ではある程度参考にはなりますが、確定的なものではありません。
まして、糖尿人においてはGIはあてにならず、糖質のグラム数の計算のほうが重要です。
そこで糖質制限食の出番となるわけです。
糖質制限食ならば、糖尿人においても血糖値の上下動は極めて少なくなり、
薬に頼ることなく良好な血糖コントロールが期待できます。
江部康二
2022年10月16日 (日)
こんにちは。
ひまわりさんからコメント頂いた
https://www.nature.com/articles/s42255-022-00646-1
• News & Views
• Published: 30 September 2022
COVID-19
Fasting as key tone for COVID immunity
(COVID免疫のキートーンとしての断食)
という、nature metabolism に掲載された論文について、
考察してみます。
ネイチャー掲載論文ですから、信頼度は高いです。
論文に、
「ケトン体β-ヒドロキシブチレート(BHB)がCOVID-19の疾病予後を改善することを示した。」
という記載があります。
そうすると、ひまわりさんがご指摘のように、
『スーパー糖質制限は、BHB産生を高めるので、コロナ後遺症にも有効、あるいはコロナ後遺症を予防する』
可能性があります。
以下、論文を要約して、かなり短くして、わかりやすく述べてみます。
絶食条件下では、BHBが肝臓で遊離脂肪酸のβ酸化から合成され、
筋肉、心臓、脳などの末梢組織から代替エネルギー源として吸収されます。
BHBはエネルギー燃料としてだけでなく、細胞シグナル伝達能を持ち、
免疫細胞に直接作用する多機能分子であることが示唆されます。
ケトジェニックダイエット由来のBHBは、
ヒトではT細胞の機能改善と関連しています。
BHBの産生が減衰していることが、
重症のCOVID-19患者におけるCD4+ T細胞機能の低下と相関しており、
ケトジェニック食またはケトンエステルの経口投与によるBHB補充が
CD4+ T細胞の生存とインターフェロン-γ (IFNγ) 産生の能力を高め、
それによって抗ウイルス免疫応答を高めます。
絶食やケトジェニックダイエット実践時は、肝臓で脂肪酸からケトン体β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が合成され、TCAサイクルの代替炭素源となるため、ミトコンドリアのOXPHOSが促進され解糖が減少し、細胞のIFNγ生成能力が高まり抗ウイルス免疫応答が増強されます。
試験管内のアミノ酸欠乏条件下でヒトおよびマウスの1型ヘルパー(TH1)細胞の細胞数が増加し、IFNγ産生が増強することを確認しました。
さらに、SARS-CoV-2感染臨床モデルにおいて、飲料水またはケトジェニック食によるケトンエステルの経口投与は、
抗ウイルスCD4+ T細胞の機能的体力およびウイルスクリアランスを改善し、肺損傷の減少、体重減少からの早期回復、
全生存期間の改善をもたらしました。
細胞代謝の変化は、COVID-19を含む多くの疾患におけるT細胞機能不全のドライバーとして浮上しており、
機能不全ミトコンドリアは
COVID-19の重症患者におけるT細胞の特徴です。
COVID-19患者のT細胞では、ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)の能力が全体的に低下していることが示唆されます。
TH1細胞の機能に必要なミトコンドリアOXPHOSは、
重症のCOVID-19では損なわれています。
重度のCOVID-19患者では、
BHBの生成とT細胞応答が損なわれています。
試験管内の実験で、
BHBを添加したTH1細胞では、
基礎および最大ミトコンドリア呼吸と予備の呼吸容量が上昇し、ミトコンドリアOXPHOSの改善を示していることがわかりました。
BHBがCD4+ T細胞における代替炭素源であり、
栄養不足の環境下でミトコンドリア機能をサポートするために細胞代謝を変化させることを明らかにしました。
新たにCOVID-19と診断された患者におけるBHBの血清濃度の低下は、
重症COVID-19発症の予測危険因子として機能する可能性があります。
BHB補充によりin vitroおよびin vivoで
T細胞のPD-1の発現が低下することを示しました。
PD-1は多くの臨床場面でT細胞の疲弊や機能障害と関連しています。
江部康二
Fasting as key tone for COVID immunity
(COVID免疫のキートーンとしての断食)
https://www.nature.com/articles/s42255-022-00646-1
SARS-CoV-2による食欲不振は、全身的な代謝の変化を誘発する。
Natureに掲載された研究で、Karagiannisらは、ケトン体β-ヒドロキシブチレート(BHB)がCOVID-19の疾病予後を改善することを示した。
さらに、BHBは代謝的および機能的にCD4+ T細胞を再プログラムし、COVID-19における免疫の免疫代謝的調整を強調するものである。
SARS-CoV-2-induced anorexia triggers systemic metabolic alterations. In a study published in Nature, Karagiannis et al. show that the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) improves COVID-19 disease outcomes. Further, BHB metabolically and functionally reprograms CD4+ T cells, highlighting immunometabolic tuning of immunity in COVID-19.
感染症による食欲不振は、進化的に保存された疾病行動であり、免疫機能の保護または有害性を媒介することができる1。
食欲不振を含む絶食状態は、ケトン体の生成を含む代謝燃料供給における明確な生化学的変化をもたらし、これは癌、心血管疾患、神経変性疾患における疾患症状の緩和と関連しています2。
絶食条件下では、ケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が肝臓で遊離脂肪酸のβ酸化から合成され、筋肉、心臓、脳などの末梢組織から代替エネルギー源として吸収されます。
BHBはエネルギー燃料としてだけでなく、細胞シグナル伝達能を持ち、免疫細胞に直接作用する多機能分子であることを示唆する証拠が蓄積されています3。
ケトジェニックダイエット由来のBHBは、ヒトではT細胞の機能改善と関連しているが4、
T細胞のリンパ球減少および機能不全を特徴とするSARS-CoV-2感染の重症化にどの程度寄与しているかは、依然として不明である5。
Natureに掲載された最近の研究で、Karagiannisらは、BHBの産生が減衰していることが、重症のCOVID-19患者におけるCD4+ T細胞機能の低下と相関しており、
ケトジェニック食またはケトンエステルの経口投与によるBHB補充がCD4+ T細胞の生存とインターフェロン-γ (IFNγ) 産生の能力を高め、
それによって抗ウイルス免疫応答を高めることを示しています6 (Fig. 1).
Infection-induced anorexia is an evolutionarily conserved sickness behaviour that can mediate protective or detrimental immune functions1. Fasting conditions, including anorexia, lead to distinct biochemical alterations in the metabolic fuel supply, including the generation of ketones, and this is associated with alleviated disease symptoms in cancer, cardiovascular disease, and neurodegenerative disease2. Under conditions of fasting, the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) is synthesized in the liver from β-oxidation of free fatty acids and absorbed as an alternative energy source by peripheral tissues, such as the muscles, heart, and brain. Accumulating evidence suggests that BHB not only serves as an energy fuel, but also is a multifunctional molecule with cellular signalling capability, exerting direct effects on immune cells3. Although BHB derived from a ketogenic diet is associated with improved T cell function in humans4, the extent to which it contributes to the severity of SARS-CoV-2 infection, which is characterized by T cell lymphopenia and dysfunction5, remains unclear. In a recent study published in Nature, Karagiannis et al. show that attenuated production of BHB is correlated with impaired CD4+ T cell function in patients with severe COVID-19, and BHB supplementation through a ketogenic diet or oral administration of ketone esters enhances survival of CD4+ T cells and their capacity to produce interferon-γ (IFNγ), thereby boosting the antiviral immune response6 (Fig. 1).
Fig. 1: The ketone body β-hydroxybutyrate supports CD4+ T cell functional fitness by fuelling mitochondrial OXPHOS to combat SARS-CoV-2 infection.図1:ケトン体β-ヒドロキシ酪酸は、ミトコンドリアOXPHOSを煽ることで、SARS-CoV-2感染に対抗するCD4+ T細胞の機能的体力をサポートします。
左、重症COVID-19関連ARDS患者からのCD4+T細胞は、PD-1を発現し、代謝的に解糖に偏っている。主な炭素源として、グルコースはTCAサイクルではなく、乳酸とペントースリン酸経路の中間体の生成に転用され、アミノ酸の合成が減少し、IFNγの産生能が損なわれている。一方、感染症による食欲不振やケトジェニックダイエットなどの絶食時には、肝臓で脂肪酸からケトン体β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が合成され、TCAサイクルの代替炭素源となるため、ミトコンドリアのOXPHOSが促進され解糖が減少し、細胞のIFNγ生成能力が高まり抗ウイルス免疫応答が増強されます。
Left, CD4+ T cells from patients with severe COVID-19-associated ARDS express PD-1 and are metabolically skewed towards glycolysis. As the main carbon source, glucose is diverted into production of lactate and pentose phosphate pathway intermediates, rather than into the TCA cycle, resulting in reduced synthesis of amino acids and impaired capacity to produce IFNγ. Right, during fasting conditions (for instance, infection-induced anorexia or ketogenic diet), the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) is synthesized in the liver from fatty acids and serves as an alternative carbon source to fuel the TCA cycle, leading to enhanced mitochondrial OXPHOS and reduced glycolysis and thereby enhancing cellular capacity to produce IFNγ and boosting the antiviral immune response.
SARS-CoV-2、インフルエンザ、細菌性呼吸器感染症による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の末梢血を比較した結果、
SARS-CoV-2に感染した患者は、ケトジェネシス異常を示すBHBの血清濃度が大幅に低下していることが判明した。
予想通り、いくつかの炎症性サイトカインの血清濃度は、中程度の症状の患者または非感染の対照群と比較して、
SARS-CoV-2誘発ARDS患者で上昇したが、インターロイキン-6(IL-6)およびIL-8は、
インフルエンザまたは細菌誘発ARDSよりもSARS-CoV-2誘発ARDSで著しく低かったことから、
サイトカインの嵐は重症COVID-19の主因ではないかもしれないということが示唆された。
これまでの研究で、中等度および重度のCOVID-19は、トリプトファンやシステインなどのアミノ酸レベルの減少を含む、
細胞および全身の代謝の変化と関連していることが示されている7,8。
そこで、著者らはさらにBHBとアミノ酸レベルの関係を調べ、BHB補充により、
in vitroのアミノ酸欠乏条件下でヒトおよびマウスの1型ヘルパー(TH1)細胞の細胞数が増加し、IFNγ産生が増強することを確認した6。
さらに、SARS-CoV-2感染の前臨床モデルにおいて、飲料水またはケトジェニック食によるケトンエステルの経口投与は、
抗ウイルスCD4+ T細胞の機能的体力およびウイルスクリアランスを改善し、肺損傷の減少、体重減少からの早期回復、全生存期間の改善をもたらした6。
これらの研究を総合すると、BHBは重症COVID-19の治療ターゲットとなる可能性があることが示唆されます。
By comparing peripheral blood from patients suffering from acute respiratory distress syndrome (ARDS) induced by SARS-CoV-2, influenza or bacterial respiratory infections, the authors found that patients infected with SARS-CoV-2 had substantially lower serum concentrations of BHB, indicative of dysregulated ketogenesis. While, as expected, serum concentrations of several pro-inflammatory cytokines were elevated in patients with SARS-CoV-2-induced ARDS as compared to those with moderate symptoms or uninfected control participants, interleukin-6 (IL-6) and IL-8 were significantly lower in SARS-CoV-2-induced ARDS than in influenza- or bacteria-induced ARDS, which suggests that cytokine storm might not be a primary driver of severe COVID-19. Previous studies have shown that moderate and severe COVID-19 are associated with altered cellular and systemic metabolism, including reduced levels of amino acids such as tryptophan and cysteine7,8. Therefore, the authors further explored the relationship between BHB and amino acid levels and observed that BHB supplementation increased cell numbers and enhanced IFNγ production in human and mouse type 1 helper (TH1) cells under amino acid-deficient conditions in vitro6. Furthermore, in a preclinical model of SARS-CoV-2 infection, oral administration of ketone esters via drinking water or a ketogenic diet improved antiviral CD4+ T cell functional fitness and viral clearance, resulting in reduced lung injury, faster recovery from weight loss and improved overall survival6. Collectively, this research suggests that BHB is a potential therapeutic target for the treatment of severe COVID-19.
細胞代謝の変化は、COVID-199を含む多くの疾患におけるT細胞機能不全のドライバーとして浮上しており、
機能不全ミトコンドリアはCOVID-1910の重症患者におけるT細胞の特徴である。
著者らは、SCENITH(single-cell energetic metabolism by profiling translation inhibition)11を用いて、
COVID-19患者由来のCD4+およびCD8+T細胞の単一細胞代謝プロファイリング解析を行い、
気管支肺胞洗浄液由来のT細胞が、ミトコンドリア依存性を同時に弱めながら解糖を優先して、
顕著に変わった代謝プロファイルを示していることを示しました。
さらに、これらの患者の末梢血由来T細胞は、脂肪酸とアミノ酸の両方を酸化する能力が低下していた。
このことは、COVID-19患者のT細胞では、ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)の能力が全体的に低下していることを示唆するものである。
重要なことは、システインレベルの減少もまた、重篤なCOVID-19におけるT細胞の生存障害につながる不均衡なレドックス状態に寄与するかもしれないということであるが、
これはまだ検証されていない。
したがって、TH1細胞の機能に必要なミトコンドリアOXPHOSは、重症のCOVID-19では損なわれており、
細胞外的および細胞内的な代謝の変化が、COVID-19および他の疾患におけるT細胞免疫および疾患の重症度に影響を与えるという考えを支持するものである9。
Cellular metabolic alterations are emerging as drivers of T cell dysfunction in many diseases, including COVID-199, and dysfunctional mitochondria are characteristic of T cells in severely ill patients with COVID-1910. Using SCENITH (single-cell energetic metabolism by profiling translation inhibition)11 for single-cell metabolic profiling analysis of CD4+ and CD8+ T cells from patients with COVID-19, the authors showed that T cells derived from bronchoalveolar lavage fluid displayed a markedly altered metabolic profile, favouring glycolysis with concomitantly dampened mitochondrial dependence. Further, peripheral blood-derived T cells from these patients had reduced capacity to oxidize both fatty acids and amino acids, which suggests that the overall capacity for mitochondrial oxidative phosphorylation (OXPHOS) is reduced in T cells from patients with COVID-19. Importantly, reduced cysteine levels might also contribute to an imbalanced redox state that could lead to impaired T cell survival in severe COVID-19, although this remains to be tested. Therefore, mitochondrial OXPHOS, which is required for TH1 cell function12, is impaired in severe COVID-19, thereby supporting the notion that both cell-extrinsic and cell-intrinsic metabolic alterations can affect T cell immunity and disease severity in COVID-19 and other diseases9.
重度のCOVID-19患者では、BHBの生成とT細胞応答が損なわれており、BHBを補充することで疾患の転帰が改善されることから、
著者らは次に、BHBがT細胞の代謝にどのように影響するかを探った。
BHBは、酵素BDH1(β-hydroxybutyrate dehydrogenase)を介したケト化により、ミトコンドリアOXPHOSの代替代謝基質として機能する13。
したがって、BDH1の細胞内在性欠損は、BHBによるT細胞の生存およびサイトカイン産生の改善を元に戻した。
これは、BHBによるCD4+ T細胞機能の促進が、BDH1を介したケト化に大きく依存していることを示唆する。
次に著者らは、BHBがミトコンドリア機能を改善することを実証するために、一連のin vitro実験を行った。
まず、BHBを添加したTH1細胞では、基礎および最大ミトコンドリア呼吸と予備の呼吸容量が上昇し、ミトコンドリアOXPHOSの改善を示していることがわかった。
次に、SCENITH分析を用いて、著者らは、BHB添加後の培養TH1細胞は、ミトコンドリア依存性が高まり、解糖能が損なわれていることを明らかにした。
さらに、CD4+ T細胞の脂肪酸とアミノ酸を代謝する能力は、BHBの存在下で増強された。
第三に、13C標識BHBを用いたキネティックトレース実験により、著者らは、TH1細胞においてBHBがトリカルボン酸(TCA)サイクル中間体に統合されることを示した。
さらに、13C標識BHBの炭素は、生体エネルギー源であるアミノ酸(例えば、グルタミン酸やアスパラギン酸)や酸化型グルタチオン(GSSG)にも取り込まれており、
Cpt1(脂肪酸酸化)、Got1(アミノ酸代謝)、Ndufs8(OXPHOS)など、細胞内の代謝経路に関わる酵素の発現が増加していることと一致している。
一方、13C標識グルコースからの炭素は、乳酸を含む解糖系中間体やペントースリン酸経路に完全に見いだされた。
したがって、これらの結果は、BHBがCD4+ T細胞における代替炭素源であり、
栄養不足の環境下でミトコンドリア機能をサポートするために細胞代謝を変化させることを総体的に明らかにした。
Given that BHB generation and T cell responses were impaired in patients with severe COVID-19 and that BHB supplementation improved disease outcomes, the authors next explored how BHB affects T cell metabolism. Upon its ketolysis, which is mediated by the enzyme BDH1 (β-hydroxybutyrate dehydrogenase), BHB serves as an alternative metabolic substrate for mitochondrial OXPHOS13. Accordingly, cell-intrinsic deficiency of BDH1 reverted the BHB-induced improvements in T cell survival and cytokine production, suggesting that the promotion of CD4+ T cell function by BHB is largely dependent on BDH1-mediated ketolysis. The authors then performed a series of in vitro experiments to demonstrate that BHB improves mitochondrial function. First, they showed that BHB-supplemented TH1 cells had elevated basal and maximal mitochondrial respiration and spare respiratory capacity, indicative of improved mitochondrial OXPHOS. Second, using SCENITH analysis, the authors showed that cultured TH1 cells had increased mitochondrial dependence and compromised glycolytic capacity after the addition of BHB. In addition, the ability of CD4+ T cells to metabolize fatty acids and amino acids was enhanced in the presence of BHB. Third, using kinetic tracing experiments with 13C-labelled BHB, the authors showed that BHB was integrated into tricarboxylic acid (TCA) cycle intermediates in TH1 cells. Furthermore, carbons from 13C-labelled BHB were also incorporated into bioenergetic amino acids (for example, glutamate and aspartate) and oxidized glutathione (GSSG), consistent with the upregulated expression of genes encoding enzymes involved in cellular metabolic pathways, such as Cpt1 (fatty acid oxidation), Got1 (amino acid metabolism), and Ndufs8 (OXPHOS). By contrast, carbons from 13C-labelled glucose were entirely found in glycolytic intermediates, including lactate, and the pentose phosphate pathway. Therefore, these results collectively identify BHB as an alternative carbon source in CD4+ T cells that alters cellular metabolism to support mitochondrial function in nutrient-deprived environments.
重症のCOVID-19患者とインフルエンザ患者の間で観察されるケトーシスの格差は、まだ解明されていない。
BHBの合成はBDH1とHMGCS2の発現と触媒活性によって時間的、空間的に正確に制御されており(文献14)、
このことが重症COVID-19患者のBHB生産障害の基礎因子である可能性がある。
さらに、新たにCOVID-19と診断された患者におけるBHBの血清濃度の低下は、
重症COVID-19発症の予測危険因子として機能する可能性もあり、
これらの患者には抗ウイルス免疫力を高める治療戦略としてケトジェニック食を採用することが推奨されるかもしれません。
最後に、著者らは、COVID-19関連ARDS患者の末梢血と気管支肺胞洗浄液のT細胞でPD-1の発現が増強されていること、
BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました。
PD-1は多くの臨床場面でT細胞の疲弊や機能障害と関連していることから9、
BHBが慢性感染症や癌など他の疾患においても同様にPD-1や他の疲弊・機能障害関連分子の発現に影響を与えるかどうかを調べるのは興味深いことだろう。
The disparity in ketosis observed between patients with severe COVID-19 and those with influenza remains to be determined. The synthesis of BHB is tightly regulated with temporal and spatial precision by the expression and catalytic activities of BDH1 and HMGCS2 (ref. 14), which may be underlying factors for impaired BHB production in patients with severe COVID-19. Furthermore, lower serum concentrations of BHB in patients with newly diagnosed COVID-19 might also serve as a predictive risk factor for the development of severe COVID-19, and those patients could be recommended to adopt a ketogenic diet as a therapeutic strategy to enhance antiviral immunity. Finally, the authors showed that PD-1 expression was enhanced on T cells from peripheral blood and bronchoalveolar lavage fluid from patients with COVID-19-associated ARDS and that BHB supplementation reduced PD-1 expression on T cells in vitro and in vivo. As PD-1 is associated with T cell exhaustion or dysfunction in many clinical settings9, it will be interesting to determine whether BHB similarly affects the expression of PD-1 or other exhaustion- or dysfunction-related molecules in other diseases, including chronic infections and cancer.
全体として、本研究は、ケトン体BHBをミトコンドリアOXPHOSに燃料を供給する代替炭素源として同定し、
それによってTH1細胞を代謝的に再プログラムし、感染誘発性食欲不振の状態において抗ウイルス免疫を向上させたのである。
BHBの多様な細胞シグナル伝達活性を考慮すると、BHBが転写調節やエピジェネティック修飾などの付加的な手段によってCD4+ T細胞の機能を変化させる可能性があり、
エピジェネティック調節を介してCD8+メモリーT細胞の発達を制御するBHBの役割と一致している15.
代謝プログラムは、CD4+およびCD8+ T細胞の可塑性および異種性の重要なレギュレーターであるため9、
ケトジェニック食によって誘導されたBHBおよび他の代謝物が、
ウイルス感染時または腫瘍微小環境を含む他の栄養欠乏状態において他のタイプのT細胞に対して同様の効果を有するかどうかを議論するための追加研究が必要である。
要約すると、これらの重要な発見は、抗ウイルス免疫に対する食事の影響に関する我々の知識を広げ、
COVID-19に関連する様々な病的状態に対する新しい洞察と理解を提供するものである。
Overall, this study has identified the ketone body BHB as an alternative carbon source to fuel mitochondrial OXPHOS, thereby metabolically reprogramming TH1 cells and improving antiviral immunity in conditions of infection-induced anorexia. Considering the diverse cellular signalling activities of BHB3, it is possible that BHB alters CD4+ T cell function through additional means such as transcriptional regulation or epigenetic modifications, consistent with a role for BHB in controlling CD8+ memory T cell development via epigenetic regulation15. As metabolic programs are crucial regulators of CD4+ and CD8+ T cell plasticity and heterogeneity9, additional studies are required to address whether BHB and other metabolites induced by a ketogenic diet have similar effects on other types of T cell during viral infection or in other nutrient-deprived contexts, including the tumour microenvironment. In summary, these important findings broaden our knowledge of dietary influence on antiviral immunity and provide new insights into and understanding of the variable morbidity associated with COVID-19.
ひまわりさんからコメント頂いた
https://www.nature.com/articles/s42255-022-00646-1
• News & Views
• Published: 30 September 2022
COVID-19
Fasting as key tone for COVID immunity
(COVID免疫のキートーンとしての断食)
という、nature metabolism に掲載された論文について、
考察してみます。
ネイチャー掲載論文ですから、信頼度は高いです。
論文に、
「ケトン体β-ヒドロキシブチレート(BHB)がCOVID-19の疾病予後を改善することを示した。」
という記載があります。
そうすると、ひまわりさんがご指摘のように、
『スーパー糖質制限は、BHB産生を高めるので、コロナ後遺症にも有効、あるいはコロナ後遺症を予防する』
可能性があります。
以下、論文を要約して、かなり短くして、わかりやすく述べてみます。
絶食条件下では、BHBが肝臓で遊離脂肪酸のβ酸化から合成され、
筋肉、心臓、脳などの末梢組織から代替エネルギー源として吸収されます。
BHBはエネルギー燃料としてだけでなく、細胞シグナル伝達能を持ち、
免疫細胞に直接作用する多機能分子であることが示唆されます。
ケトジェニックダイエット由来のBHBは、
ヒトではT細胞の機能改善と関連しています。
BHBの産生が減衰していることが、
重症のCOVID-19患者におけるCD4+ T細胞機能の低下と相関しており、
ケトジェニック食またはケトンエステルの経口投与によるBHB補充が
CD4+ T細胞の生存とインターフェロン-γ (IFNγ) 産生の能力を高め、
それによって抗ウイルス免疫応答を高めます。
絶食やケトジェニックダイエット実践時は、肝臓で脂肪酸からケトン体β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が合成され、TCAサイクルの代替炭素源となるため、ミトコンドリアのOXPHOSが促進され解糖が減少し、細胞のIFNγ生成能力が高まり抗ウイルス免疫応答が増強されます。
試験管内のアミノ酸欠乏条件下でヒトおよびマウスの1型ヘルパー(TH1)細胞の細胞数が増加し、IFNγ産生が増強することを確認しました。
さらに、SARS-CoV-2感染臨床モデルにおいて、飲料水またはケトジェニック食によるケトンエステルの経口投与は、
抗ウイルスCD4+ T細胞の機能的体力およびウイルスクリアランスを改善し、肺損傷の減少、体重減少からの早期回復、
全生存期間の改善をもたらしました。
細胞代謝の変化は、COVID-19を含む多くの疾患におけるT細胞機能不全のドライバーとして浮上しており、
機能不全ミトコンドリアは
COVID-19の重症患者におけるT細胞の特徴です。
COVID-19患者のT細胞では、ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)の能力が全体的に低下していることが示唆されます。
TH1細胞の機能に必要なミトコンドリアOXPHOSは、
重症のCOVID-19では損なわれています。
重度のCOVID-19患者では、
BHBの生成とT細胞応答が損なわれています。
試験管内の実験で、
BHBを添加したTH1細胞では、
基礎および最大ミトコンドリア呼吸と予備の呼吸容量が上昇し、ミトコンドリアOXPHOSの改善を示していることがわかりました。
BHBがCD4+ T細胞における代替炭素源であり、
栄養不足の環境下でミトコンドリア機能をサポートするために細胞代謝を変化させることを明らかにしました。
新たにCOVID-19と診断された患者におけるBHBの血清濃度の低下は、
重症COVID-19発症の予測危険因子として機能する可能性があります。
BHB補充によりin vitroおよびin vivoで
T細胞のPD-1の発現が低下することを示しました。
PD-1は多くの臨床場面でT細胞の疲弊や機能障害と関連しています。
江部康二
Fasting as key tone for COVID immunity
(COVID免疫のキートーンとしての断食)
https://www.nature.com/articles/s42255-022-00646-1
SARS-CoV-2による食欲不振は、全身的な代謝の変化を誘発する。
Natureに掲載された研究で、Karagiannisらは、ケトン体β-ヒドロキシブチレート(BHB)がCOVID-19の疾病予後を改善することを示した。
さらに、BHBは代謝的および機能的にCD4+ T細胞を再プログラムし、COVID-19における免疫の免疫代謝的調整を強調するものである。
SARS-CoV-2-induced anorexia triggers systemic metabolic alterations. In a study published in Nature, Karagiannis et al. show that the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) improves COVID-19 disease outcomes. Further, BHB metabolically and functionally reprograms CD4+ T cells, highlighting immunometabolic tuning of immunity in COVID-19.
感染症による食欲不振は、進化的に保存された疾病行動であり、免疫機能の保護または有害性を媒介することができる1。
食欲不振を含む絶食状態は、ケトン体の生成を含む代謝燃料供給における明確な生化学的変化をもたらし、これは癌、心血管疾患、神経変性疾患における疾患症状の緩和と関連しています2。
絶食条件下では、ケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が肝臓で遊離脂肪酸のβ酸化から合成され、筋肉、心臓、脳などの末梢組織から代替エネルギー源として吸収されます。
BHBはエネルギー燃料としてだけでなく、細胞シグナル伝達能を持ち、免疫細胞に直接作用する多機能分子であることを示唆する証拠が蓄積されています3。
ケトジェニックダイエット由来のBHBは、ヒトではT細胞の機能改善と関連しているが4、
T細胞のリンパ球減少および機能不全を特徴とするSARS-CoV-2感染の重症化にどの程度寄与しているかは、依然として不明である5。
Natureに掲載された最近の研究で、Karagiannisらは、BHBの産生が減衰していることが、重症のCOVID-19患者におけるCD4+ T細胞機能の低下と相関しており、
ケトジェニック食またはケトンエステルの経口投与によるBHB補充がCD4+ T細胞の生存とインターフェロン-γ (IFNγ) 産生の能力を高め、
それによって抗ウイルス免疫応答を高めることを示しています6 (Fig. 1).
Infection-induced anorexia is an evolutionarily conserved sickness behaviour that can mediate protective or detrimental immune functions1. Fasting conditions, including anorexia, lead to distinct biochemical alterations in the metabolic fuel supply, including the generation of ketones, and this is associated with alleviated disease symptoms in cancer, cardiovascular disease, and neurodegenerative disease2. Under conditions of fasting, the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) is synthesized in the liver from β-oxidation of free fatty acids and absorbed as an alternative energy source by peripheral tissues, such as the muscles, heart, and brain. Accumulating evidence suggests that BHB not only serves as an energy fuel, but also is a multifunctional molecule with cellular signalling capability, exerting direct effects on immune cells3. Although BHB derived from a ketogenic diet is associated with improved T cell function in humans4, the extent to which it contributes to the severity of SARS-CoV-2 infection, which is characterized by T cell lymphopenia and dysfunction5, remains unclear. In a recent study published in Nature, Karagiannis et al. show that attenuated production of BHB is correlated with impaired CD4+ T cell function in patients with severe COVID-19, and BHB supplementation through a ketogenic diet or oral administration of ketone esters enhances survival of CD4+ T cells and their capacity to produce interferon-γ (IFNγ), thereby boosting the antiviral immune response6 (Fig. 1).
Fig. 1: The ketone body β-hydroxybutyrate supports CD4+ T cell functional fitness by fuelling mitochondrial OXPHOS to combat SARS-CoV-2 infection.図1:ケトン体β-ヒドロキシ酪酸は、ミトコンドリアOXPHOSを煽ることで、SARS-CoV-2感染に対抗するCD4+ T細胞の機能的体力をサポートします。
左、重症COVID-19関連ARDS患者からのCD4+T細胞は、PD-1を発現し、代謝的に解糖に偏っている。主な炭素源として、グルコースはTCAサイクルではなく、乳酸とペントースリン酸経路の中間体の生成に転用され、アミノ酸の合成が減少し、IFNγの産生能が損なわれている。一方、感染症による食欲不振やケトジェニックダイエットなどの絶食時には、肝臓で脂肪酸からケトン体β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が合成され、TCAサイクルの代替炭素源となるため、ミトコンドリアのOXPHOSが促進され解糖が減少し、細胞のIFNγ生成能力が高まり抗ウイルス免疫応答が増強されます。
Left, CD4+ T cells from patients with severe COVID-19-associated ARDS express PD-1 and are metabolically skewed towards glycolysis. As the main carbon source, glucose is diverted into production of lactate and pentose phosphate pathway intermediates, rather than into the TCA cycle, resulting in reduced synthesis of amino acids and impaired capacity to produce IFNγ. Right, during fasting conditions (for instance, infection-induced anorexia or ketogenic diet), the ketone body β-hydroxybutyrate (BHB) is synthesized in the liver from fatty acids and serves as an alternative carbon source to fuel the TCA cycle, leading to enhanced mitochondrial OXPHOS and reduced glycolysis and thereby enhancing cellular capacity to produce IFNγ and boosting the antiviral immune response.
SARS-CoV-2、インフルエンザ、細菌性呼吸器感染症による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の末梢血を比較した結果、
SARS-CoV-2に感染した患者は、ケトジェネシス異常を示すBHBの血清濃度が大幅に低下していることが判明した。
予想通り、いくつかの炎症性サイトカインの血清濃度は、中程度の症状の患者または非感染の対照群と比較して、
SARS-CoV-2誘発ARDS患者で上昇したが、インターロイキン-6(IL-6)およびIL-8は、
インフルエンザまたは細菌誘発ARDSよりもSARS-CoV-2誘発ARDSで著しく低かったことから、
サイトカインの嵐は重症COVID-19の主因ではないかもしれないということが示唆された。
これまでの研究で、中等度および重度のCOVID-19は、トリプトファンやシステインなどのアミノ酸レベルの減少を含む、
細胞および全身の代謝の変化と関連していることが示されている7,8。
そこで、著者らはさらにBHBとアミノ酸レベルの関係を調べ、BHB補充により、
in vitroのアミノ酸欠乏条件下でヒトおよびマウスの1型ヘルパー(TH1)細胞の細胞数が増加し、IFNγ産生が増強することを確認した6。
さらに、SARS-CoV-2感染の前臨床モデルにおいて、飲料水またはケトジェニック食によるケトンエステルの経口投与は、
抗ウイルスCD4+ T細胞の機能的体力およびウイルスクリアランスを改善し、肺損傷の減少、体重減少からの早期回復、全生存期間の改善をもたらした6。
これらの研究を総合すると、BHBは重症COVID-19の治療ターゲットとなる可能性があることが示唆されます。
By comparing peripheral blood from patients suffering from acute respiratory distress syndrome (ARDS) induced by SARS-CoV-2, influenza or bacterial respiratory infections, the authors found that patients infected with SARS-CoV-2 had substantially lower serum concentrations of BHB, indicative of dysregulated ketogenesis. While, as expected, serum concentrations of several pro-inflammatory cytokines were elevated in patients with SARS-CoV-2-induced ARDS as compared to those with moderate symptoms or uninfected control participants, interleukin-6 (IL-6) and IL-8 were significantly lower in SARS-CoV-2-induced ARDS than in influenza- or bacteria-induced ARDS, which suggests that cytokine storm might not be a primary driver of severe COVID-19. Previous studies have shown that moderate and severe COVID-19 are associated with altered cellular and systemic metabolism, including reduced levels of amino acids such as tryptophan and cysteine7,8. Therefore, the authors further explored the relationship between BHB and amino acid levels and observed that BHB supplementation increased cell numbers and enhanced IFNγ production in human and mouse type 1 helper (TH1) cells under amino acid-deficient conditions in vitro6. Furthermore, in a preclinical model of SARS-CoV-2 infection, oral administration of ketone esters via drinking water or a ketogenic diet improved antiviral CD4+ T cell functional fitness and viral clearance, resulting in reduced lung injury, faster recovery from weight loss and improved overall survival6. Collectively, this research suggests that BHB is a potential therapeutic target for the treatment of severe COVID-19.
細胞代謝の変化は、COVID-199を含む多くの疾患におけるT細胞機能不全のドライバーとして浮上しており、
機能不全ミトコンドリアはCOVID-1910の重症患者におけるT細胞の特徴である。
著者らは、SCENITH(single-cell energetic metabolism by profiling translation inhibition)11を用いて、
COVID-19患者由来のCD4+およびCD8+T細胞の単一細胞代謝プロファイリング解析を行い、
気管支肺胞洗浄液由来のT細胞が、ミトコンドリア依存性を同時に弱めながら解糖を優先して、
顕著に変わった代謝プロファイルを示していることを示しました。
さらに、これらの患者の末梢血由来T細胞は、脂肪酸とアミノ酸の両方を酸化する能力が低下していた。
このことは、COVID-19患者のT細胞では、ミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)の能力が全体的に低下していることを示唆するものである。
重要なことは、システインレベルの減少もまた、重篤なCOVID-19におけるT細胞の生存障害につながる不均衡なレドックス状態に寄与するかもしれないということであるが、
これはまだ検証されていない。
したがって、TH1細胞の機能に必要なミトコンドリアOXPHOSは、重症のCOVID-19では損なわれており、
細胞外的および細胞内的な代謝の変化が、COVID-19および他の疾患におけるT細胞免疫および疾患の重症度に影響を与えるという考えを支持するものである9。
Cellular metabolic alterations are emerging as drivers of T cell dysfunction in many diseases, including COVID-199, and dysfunctional mitochondria are characteristic of T cells in severely ill patients with COVID-1910. Using SCENITH (single-cell energetic metabolism by profiling translation inhibition)11 for single-cell metabolic profiling analysis of CD4+ and CD8+ T cells from patients with COVID-19, the authors showed that T cells derived from bronchoalveolar lavage fluid displayed a markedly altered metabolic profile, favouring glycolysis with concomitantly dampened mitochondrial dependence. Further, peripheral blood-derived T cells from these patients had reduced capacity to oxidize both fatty acids and amino acids, which suggests that the overall capacity for mitochondrial oxidative phosphorylation (OXPHOS) is reduced in T cells from patients with COVID-19. Importantly, reduced cysteine levels might also contribute to an imbalanced redox state that could lead to impaired T cell survival in severe COVID-19, although this remains to be tested. Therefore, mitochondrial OXPHOS, which is required for TH1 cell function12, is impaired in severe COVID-19, thereby supporting the notion that both cell-extrinsic and cell-intrinsic metabolic alterations can affect T cell immunity and disease severity in COVID-19 and other diseases9.
重度のCOVID-19患者では、BHBの生成とT細胞応答が損なわれており、BHBを補充することで疾患の転帰が改善されることから、
著者らは次に、BHBがT細胞の代謝にどのように影響するかを探った。
BHBは、酵素BDH1(β-hydroxybutyrate dehydrogenase)を介したケト化により、ミトコンドリアOXPHOSの代替代謝基質として機能する13。
したがって、BDH1の細胞内在性欠損は、BHBによるT細胞の生存およびサイトカイン産生の改善を元に戻した。
これは、BHBによるCD4+ T細胞機能の促進が、BDH1を介したケト化に大きく依存していることを示唆する。
次に著者らは、BHBがミトコンドリア機能を改善することを実証するために、一連のin vitro実験を行った。
まず、BHBを添加したTH1細胞では、基礎および最大ミトコンドリア呼吸と予備の呼吸容量が上昇し、ミトコンドリアOXPHOSの改善を示していることがわかった。
次に、SCENITH分析を用いて、著者らは、BHB添加後の培養TH1細胞は、ミトコンドリア依存性が高まり、解糖能が損なわれていることを明らかにした。
さらに、CD4+ T細胞の脂肪酸とアミノ酸を代謝する能力は、BHBの存在下で増強された。
第三に、13C標識BHBを用いたキネティックトレース実験により、著者らは、TH1細胞においてBHBがトリカルボン酸(TCA)サイクル中間体に統合されることを示した。
さらに、13C標識BHBの炭素は、生体エネルギー源であるアミノ酸(例えば、グルタミン酸やアスパラギン酸)や酸化型グルタチオン(GSSG)にも取り込まれており、
Cpt1(脂肪酸酸化)、Got1(アミノ酸代謝)、Ndufs8(OXPHOS)など、細胞内の代謝経路に関わる酵素の発現が増加していることと一致している。
一方、13C標識グルコースからの炭素は、乳酸を含む解糖系中間体やペントースリン酸経路に完全に見いだされた。
したがって、これらの結果は、BHBがCD4+ T細胞における代替炭素源であり、
栄養不足の環境下でミトコンドリア機能をサポートするために細胞代謝を変化させることを総体的に明らかにした。
Given that BHB generation and T cell responses were impaired in patients with severe COVID-19 and that BHB supplementation improved disease outcomes, the authors next explored how BHB affects T cell metabolism. Upon its ketolysis, which is mediated by the enzyme BDH1 (β-hydroxybutyrate dehydrogenase), BHB serves as an alternative metabolic substrate for mitochondrial OXPHOS13. Accordingly, cell-intrinsic deficiency of BDH1 reverted the BHB-induced improvements in T cell survival and cytokine production, suggesting that the promotion of CD4+ T cell function by BHB is largely dependent on BDH1-mediated ketolysis. The authors then performed a series of in vitro experiments to demonstrate that BHB improves mitochondrial function. First, they showed that BHB-supplemented TH1 cells had elevated basal and maximal mitochondrial respiration and spare respiratory capacity, indicative of improved mitochondrial OXPHOS. Second, using SCENITH analysis, the authors showed that cultured TH1 cells had increased mitochondrial dependence and compromised glycolytic capacity after the addition of BHB. In addition, the ability of CD4+ T cells to metabolize fatty acids and amino acids was enhanced in the presence of BHB. Third, using kinetic tracing experiments with 13C-labelled BHB, the authors showed that BHB was integrated into tricarboxylic acid (TCA) cycle intermediates in TH1 cells. Furthermore, carbons from 13C-labelled BHB were also incorporated into bioenergetic amino acids (for example, glutamate and aspartate) and oxidized glutathione (GSSG), consistent with the upregulated expression of genes encoding enzymes involved in cellular metabolic pathways, such as Cpt1 (fatty acid oxidation), Got1 (amino acid metabolism), and Ndufs8 (OXPHOS). By contrast, carbons from 13C-labelled glucose were entirely found in glycolytic intermediates, including lactate, and the pentose phosphate pathway. Therefore, these results collectively identify BHB as an alternative carbon source in CD4+ T cells that alters cellular metabolism to support mitochondrial function in nutrient-deprived environments.
重症のCOVID-19患者とインフルエンザ患者の間で観察されるケトーシスの格差は、まだ解明されていない。
BHBの合成はBDH1とHMGCS2の発現と触媒活性によって時間的、空間的に正確に制御されており(文献14)、
このことが重症COVID-19患者のBHB生産障害の基礎因子である可能性がある。
さらに、新たにCOVID-19と診断された患者におけるBHBの血清濃度の低下は、
重症COVID-19発症の予測危険因子として機能する可能性もあり、
これらの患者には抗ウイルス免疫力を高める治療戦略としてケトジェニック食を採用することが推奨されるかもしれません。
最後に、著者らは、COVID-19関連ARDS患者の末梢血と気管支肺胞洗浄液のT細胞でPD-1の発現が増強されていること、
BHB補充によりin vitroおよびin vivoでT細胞のPD-1の発現が低下することを示しました。
PD-1は多くの臨床場面でT細胞の疲弊や機能障害と関連していることから9、
BHBが慢性感染症や癌など他の疾患においても同様にPD-1や他の疲弊・機能障害関連分子の発現に影響を与えるかどうかを調べるのは興味深いことだろう。
The disparity in ketosis observed between patients with severe COVID-19 and those with influenza remains to be determined. The synthesis of BHB is tightly regulated with temporal and spatial precision by the expression and catalytic activities of BDH1 and HMGCS2 (ref. 14), which may be underlying factors for impaired BHB production in patients with severe COVID-19. Furthermore, lower serum concentrations of BHB in patients with newly diagnosed COVID-19 might also serve as a predictive risk factor for the development of severe COVID-19, and those patients could be recommended to adopt a ketogenic diet as a therapeutic strategy to enhance antiviral immunity. Finally, the authors showed that PD-1 expression was enhanced on T cells from peripheral blood and bronchoalveolar lavage fluid from patients with COVID-19-associated ARDS and that BHB supplementation reduced PD-1 expression on T cells in vitro and in vivo. As PD-1 is associated with T cell exhaustion or dysfunction in many clinical settings9, it will be interesting to determine whether BHB similarly affects the expression of PD-1 or other exhaustion- or dysfunction-related molecules in other diseases, including chronic infections and cancer.
全体として、本研究は、ケトン体BHBをミトコンドリアOXPHOSに燃料を供給する代替炭素源として同定し、
それによってTH1細胞を代謝的に再プログラムし、感染誘発性食欲不振の状態において抗ウイルス免疫を向上させたのである。
BHBの多様な細胞シグナル伝達活性を考慮すると、BHBが転写調節やエピジェネティック修飾などの付加的な手段によってCD4+ T細胞の機能を変化させる可能性があり、
エピジェネティック調節を介してCD8+メモリーT細胞の発達を制御するBHBの役割と一致している15.
代謝プログラムは、CD4+およびCD8+ T細胞の可塑性および異種性の重要なレギュレーターであるため9、
ケトジェニック食によって誘導されたBHBおよび他の代謝物が、
ウイルス感染時または腫瘍微小環境を含む他の栄養欠乏状態において他のタイプのT細胞に対して同様の効果を有するかどうかを議論するための追加研究が必要である。
要約すると、これらの重要な発見は、抗ウイルス免疫に対する食事の影響に関する我々の知識を広げ、
COVID-19に関連する様々な病的状態に対する新しい洞察と理解を提供するものである。
Overall, this study has identified the ketone body BHB as an alternative carbon source to fuel mitochondrial OXPHOS, thereby metabolically reprogramming TH1 cells and improving antiviral immunity in conditions of infection-induced anorexia. Considering the diverse cellular signalling activities of BHB3, it is possible that BHB alters CD4+ T cell function through additional means such as transcriptional regulation or epigenetic modifications, consistent with a role for BHB in controlling CD8+ memory T cell development via epigenetic regulation15. As metabolic programs are crucial regulators of CD4+ and CD8+ T cell plasticity and heterogeneity9, additional studies are required to address whether BHB and other metabolites induced by a ketogenic diet have similar effects on other types of T cell during viral infection or in other nutrient-deprived contexts, including the tumour microenvironment. In summary, these important findings broaden our knowledge of dietary influence on antiviral immunity and provide new insights into and understanding of the variable morbidity associated with COVID-19.
2022年10月14日 (金)
こんにちは。
今回は、麻疹とインフルエンザの違いと、
ワクチンの有効性の違いを検討してみます。
まず、麻疹に関する
厚生労働省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/
を読んでみました。
それによると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、
平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、
平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。
またウイルス分離・検出状況からは、平成22年11月以降は海外由来型のみであり、
平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。
平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、
日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。
つまり、麻疹ワクチンを2回摂取することを徹底した結果、平成22年11月以降は、
日本発の麻疹は消滅したわけで、劇的な効果を示しています。
そして、平成27年3月27日、WHOにより「日本が麻疹の排除状態」にあることが認定されたわけです。
一方、毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、
毎年インフルエンザワクチンを多くの日本人が接種していますが、
流行は防げていません。
麻疹とインフルエンザで、何が違うのでしょう?
麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも、
IgG抗体は作るけれど、粘膜面のIgA抗体は作れませんので、
粘膜表面での感染防御は困難なのは同一なのに、
何故効果にこれほどの差があるのでしょう?
検討してみます。
インフルエンザワクチンを注射することにより、
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
つまり粘膜面での感染防御は不可能ということです。
従って、インフルエンザウイルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
ワクチンで産生されるIgG抗体は呼吸器粘膜面に滲出して、
細胞外でウイルスと戦うこととなります。
普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、
呼吸器と消化器でだけ生存できて、
血中には入れません。
一方、麻疹は、麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7~14日間程度かかります。
その後カタル期(口腔粘膜症状と37~38度前後の風邪症状)が3~4日間続き、
いったん解熱したあと半日で39~40度の発熱と全身の発疹がでます。
麻疹ウィルスが口腔粘膜から血中に入って全身にばらまかれるので、
カタル期のあと「39~40度の発熱と全身の発疹」が出現すると考えられます。
麻疹ワクチンを接種している場合、麻疹ウィルスが口腔粘膜内に侵入したら、
粘膜細胞外の血液中のIgG抗体が、麻疹ウィルスとの戦いの準備を開始します。
実は、現在のIgG抗体は細胞内では不安定で、
その作用は細胞外の標的に限定されています。
従って、カタル期には、すでに麻疹ウィルスを駆逐すべく、
IgG抗体が活躍の準備をしているので、
血中に入ってもすぐに抗原抗体反応が開始され、
高熱や発疹の発症を予防できる可能性が高いのです。
インフルエンザウィルスと違って発病までが長いし、
血中に入るまでに一定の期間があるので、
粘膜細胞外の血中のIgG抗体が間に合うのです。
この時点で、ほぼ防衛成功と考えられます。
麻疹ウィルスが血中で増えることを防ぐことができれば、
「39~40度の発熱と全身の発疹」が防げるので、
感染源となることが激減して、流行もしないと考えられます。
結論です。
1)麻疹ウィルスは口腔粘膜に感染して発症するまで7~14日間かかる。
ワクチンで口腔粘膜感染を予防することはできない。
その後、粘膜から血中に侵入して全身に播種されるが、
麻疹ワクチン接種によるIgG抗体が待ち構えていてそれを防ぐ。
従って高熱や発疹が予防できる。
それにより発症予防・流行予防が可能である。
2)インフルエンザワクチン接種によるIgG抗体では、
粘膜感染防御は困難である。
つまり感染予防はできない。
インフルエンザウイルスは呼吸器粘膜や腸管粘膜で増殖する。
インフルエンザウィルスは血中に侵入できないので、
麻疹ワクチンほどのIgG抗体による顕著な効果は期待できない。
江部康二
今回は、麻疹とインフルエンザの違いと、
ワクチンの有効性の違いを検討してみます。
まず、麻疹に関する
厚生労働省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/
を読んでみました。
それによると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、
平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、
平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。
またウイルス分離・検出状況からは、平成22年11月以降は海外由来型のみであり、
平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。
平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、
日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。
つまり、麻疹ワクチンを2回摂取することを徹底した結果、平成22年11月以降は、
日本発の麻疹は消滅したわけで、劇的な効果を示しています。
そして、平成27年3月27日、WHOにより「日本が麻疹の排除状態」にあることが認定されたわけです。
一方、毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、
毎年インフルエンザワクチンを多くの日本人が接種していますが、
流行は防げていません。
麻疹とインフルエンザで、何が違うのでしょう?
麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも、
IgG抗体は作るけれど、粘膜面のIgA抗体は作れませんので、
粘膜表面での感染防御は困難なのは同一なのに、
何故効果にこれほどの差があるのでしょう?
検討してみます。
インフルエンザワクチンを注射することにより、
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
つまり粘膜面での感染防御は不可能ということです。
従って、インフルエンザウイルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
ワクチンで産生されるIgG抗体は呼吸器粘膜面に滲出して、
細胞外でウイルスと戦うこととなります。
普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、
呼吸器と消化器でだけ生存できて、
血中には入れません。
一方、麻疹は、麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7~14日間程度かかります。
その後カタル期(口腔粘膜症状と37~38度前後の風邪症状)が3~4日間続き、
いったん解熱したあと半日で39~40度の発熱と全身の発疹がでます。
麻疹ウィルスが口腔粘膜から血中に入って全身にばらまかれるので、
カタル期のあと「39~40度の発熱と全身の発疹」が出現すると考えられます。
麻疹ワクチンを接種している場合、麻疹ウィルスが口腔粘膜内に侵入したら、
粘膜細胞外の血液中のIgG抗体が、麻疹ウィルスとの戦いの準備を開始します。
実は、現在のIgG抗体は細胞内では不安定で、
その作用は細胞外の標的に限定されています。
従って、カタル期には、すでに麻疹ウィルスを駆逐すべく、
IgG抗体が活躍の準備をしているので、
血中に入ってもすぐに抗原抗体反応が開始され、
高熱や発疹の発症を予防できる可能性が高いのです。
インフルエンザウィルスと違って発病までが長いし、
血中に入るまでに一定の期間があるので、
粘膜細胞外の血中のIgG抗体が間に合うのです。
この時点で、ほぼ防衛成功と考えられます。
麻疹ウィルスが血中で増えることを防ぐことができれば、
「39~40度の発熱と全身の発疹」が防げるので、
感染源となることが激減して、流行もしないと考えられます。
結論です。
1)麻疹ウィルスは口腔粘膜に感染して発症するまで7~14日間かかる。
ワクチンで口腔粘膜感染を予防することはできない。
その後、粘膜から血中に侵入して全身に播種されるが、
麻疹ワクチン接種によるIgG抗体が待ち構えていてそれを防ぐ。
従って高熱や発疹が予防できる。
それにより発症予防・流行予防が可能である。
2)インフルエンザワクチン接種によるIgG抗体では、
粘膜感染防御は困難である。
つまり感染予防はできない。
インフルエンザウイルスは呼吸器粘膜や腸管粘膜で増殖する。
インフルエンザウィルスは血中に侵入できないので、
麻疹ワクチンほどのIgG抗体による顕著な効果は期待できない。
江部康二
2022年10月13日 (木)
【22/10/12
まるみ
子どものインフルエンザワクチン
いつもブログを拝見して、勉強させていただいています。
インフルエンザワクチンについて質問させてください。
先生は子どものインフルエンザワクチンは必要と考えられますか?
私はインフルエンザ脳症が怖くて毎年接種させていましたが、
ワクチンを打つことで脳症になることを防げるのでしょうか?
二つ目です。
インフルエンザワクチンもmRNAワクチンの治験が始まっているとニュースで見ました。
日本でも今期、既にインフルエンザのmRNAが使用している病院もあるのでしょうか?
以上、よろしくお願いします。】
こんにちは。
まるみさんから『子供のインフルエンザワクチン』について
コメント・質問を頂きました。
①インフルエンザ脳症は、ロキソニン、ポンタールなどのNSAIDsを
内服すると発生するので、基本解熱剤はアセトアミノフェンのみとします。
ワクチンを打っていても NSAIDsを内服したら、脳症のリスクは防げないと思います。
②米国では「mRNAインフルエンザワクチン」の治験が始まっているようですが
日本ではまだだと思います。
インフルエンザワクチンは、子供も大人も一緒のものなのでまとめて考察します。
<インフルエンザワクチンに関する考察>
今日は2022年10月13日(木)で、高雄病院の外来診療でした。
数人の患者さんに「今年のインフルエンザワクチンは、いつから接種できますか?」と聞かれました。
また、今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行する可能性があるため、
インフルエンザワクチンを早めに接種したいと思う患者さんもおられるようです。
ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、
効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2023年の3月初めまではカバーできます。
さて、インフルエンザワクチンを接種したことがある人も
接種したことがない人もいると思います。
是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。
そして、日頃、自分の自然免疫を高めるような生活習慣を心がけることも大切です。
例えば、私はスーパー糖質制限食を実践して、8000歩/日(そのうち過半数は速歩)歩いています。
あとは、自分の頭で考えて、接種するか否かを選択して頂ければ幸いです。
江部康二
まるみ
子どものインフルエンザワクチン
いつもブログを拝見して、勉強させていただいています。
インフルエンザワクチンについて質問させてください。
先生は子どものインフルエンザワクチンは必要と考えられますか?
私はインフルエンザ脳症が怖くて毎年接種させていましたが、
ワクチンを打つことで脳症になることを防げるのでしょうか?
二つ目です。
インフルエンザワクチンもmRNAワクチンの治験が始まっているとニュースで見ました。
日本でも今期、既にインフルエンザのmRNAが使用している病院もあるのでしょうか?
以上、よろしくお願いします。】
こんにちは。
まるみさんから『子供のインフルエンザワクチン』について
コメント・質問を頂きました。
①インフルエンザ脳症は、ロキソニン、ポンタールなどのNSAIDsを
内服すると発生するので、基本解熱剤はアセトアミノフェンのみとします。
ワクチンを打っていても NSAIDsを内服したら、脳症のリスクは防げないと思います。
②米国では「mRNAインフルエンザワクチン」の治験が始まっているようですが
日本ではまだだと思います。
インフルエンザワクチンは、子供も大人も一緒のものなのでまとめて考察します。
<インフルエンザワクチンに関する考察>
今日は2022年10月13日(木)で、高雄病院の外来診療でした。
数人の患者さんに「今年のインフルエンザワクチンは、いつから接種できますか?」と聞かれました。
また、今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行する可能性があるため、
インフルエンザワクチンを早めに接種したいと思う患者さんもおられるようです。
ワクチン接種後、抵抗力がつく まで2週間かかるとされ、
効果が持続する期間は約5か月間ですので、
10月初めに接種すれば、翌2023年の3月初めまではカバーできます。
さて、インフルエンザワクチンを接種したことがある人も
接種したことがない人もいると思います。
是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、
「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、
マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、
必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体が駆けつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて記事にしました。
そして、日頃、自分の自然免疫を高めるような生活習慣を心がけることも大切です。
例えば、私はスーパー糖質制限食を実践して、8000歩/日(そのうち過半数は速歩)歩いています。
あとは、自分の頭で考えて、接種するか否かを選択して頂ければ幸いです。
江部康二
2022年10月12日 (水)
【22/10/12 倉田
縄文時代の食事についての質問です。
縄文時代は、狩猟・漁労による肉や魚が中心の食事ではなく、
クルミやドングリなどの植物性食材が中心の食事だったという
論文があります。
例えば、クルミは25粒のカロリーが約700kcalと高いですが、
糖質は1粒(4g程度)で0.17g、25粒(100g程度)で4.2gとなっています。
クルミで1日1500kcalを摂取する場合は、約50粒食べればよいことになります。
糖質量は、8.4gとなり、この食事でもスーパー糖質制限食と言えます。
縄文時代は、肉・魚中心の食事ではなく、植物性食材中心の食事であっても、
結局、スーパー糖質制限になっていると理解してよいのではないでしょうか。
(参考論文 http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~imozuru/img/file4561.pdf )】
こんにちは。
倉田さんから、縄文時代の食事について
コメント・質問を頂きました。
ありがとうございます。
【参考論文 http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~imozuru/img/file4561.pdf
縄文時代の食生活 日暮晃一氏 食品経済研究 第19号 1991年3月 】
を読んでみると、
[ 1. 縄文時代の食物
1) 縄文人骨が示す食物摂取
の項目で、
①北海道
②本州の海岸集落遺跡
③本州の内陸遺跡
では、タンパク質の供給源が大きく違っている。
①北海道は海棲獣類、魚など海産資源がタンパク質摂取量の
約90%を占めているのに対し、
③本州内陸部の北村人は植物質食糧が85.1%とその大半を占めている。
・・・中略・・・
北村人は極端な植物食であり、陸獣のウエイトが6.5%しかない点が注目される。
②一方古作貝塚人(縄文後期)は、植物、陸獣、海洋資源が
組み合わさったバラエティーのある食卓であったことがうかがえる。・・・]
ということで
①北海道、②本州の海岸集落遺跡、③本州の内陸遺跡
の三つの地域で、全く異なる食生活を営んでいたようです。
すなわち縄文時代の食生活は多様性に富んでいたと考えられます。
古作貝塚(こさくかいづか)は千葉県舟橋市にあります。
すなわち本州の海岸集落遺跡です。
貝類(アワビ+ダンベイキサゴ+ウミニナ+タカラガイ+ハイガイ+サルボウ+アカガイ)+イカ+ボラ+スズキ+クロダイ+マダイ+ヘダイ+イノシシ+シカ+クジラ)
などが出土しています。
鹿や猪の骨も発見されています。
日暮氏が指摘しているように
植物、陸獣、海洋資源が組み合わさった多様な食卓であったようです。
富山市北代縄文館
https://www.city.toyama.toyama.jp/etc/maibun/kitadai/j_kouza/kouza-06.htm
のサイトをみると、
『・・・クリ、クルミ、トチノミ、ドングリなどの木の実は、
今のお米にあたるような主食だったと考えられます・・・』
とあるので、山がある地域では、木の実が主食であったのでしょう。
【クルミで1日1500kcalを摂取する場合は、約50粒食べればよいことになります。
糖質量は、8.4gとなり、この食事でもスーパー糖質制限食と言えます。】
クルミを中心の食事をしていた縄文時代の地域があれば
仰る通り、スーパー糖質制限食ですね。
しかし、一般にはクルミばかり食べるという地域はなくて
クリ、クルミ、トチノミ、ドングリなどの木の実を万遍なく食べていたと思います。
江部康二
縄文時代の食事についての質問です。
縄文時代は、狩猟・漁労による肉や魚が中心の食事ではなく、
クルミやドングリなどの植物性食材が中心の食事だったという
論文があります。
例えば、クルミは25粒のカロリーが約700kcalと高いですが、
糖質は1粒(4g程度)で0.17g、25粒(100g程度)で4.2gとなっています。
クルミで1日1500kcalを摂取する場合は、約50粒食べればよいことになります。
糖質量は、8.4gとなり、この食事でもスーパー糖質制限食と言えます。
縄文時代は、肉・魚中心の食事ではなく、植物性食材中心の食事であっても、
結局、スーパー糖質制限になっていると理解してよいのではないでしょうか。
(参考論文 http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~imozuru/img/file4561.pdf )】
こんにちは。
倉田さんから、縄文時代の食事について
コメント・質問を頂きました。
ありがとうございます。
【参考論文 http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~imozuru/img/file4561.pdf
縄文時代の食生活 日暮晃一氏 食品経済研究 第19号 1991年3月 】
を読んでみると、
[ 1. 縄文時代の食物
1) 縄文人骨が示す食物摂取
の項目で、
①北海道
②本州の海岸集落遺跡
③本州の内陸遺跡
では、タンパク質の供給源が大きく違っている。
①北海道は海棲獣類、魚など海産資源がタンパク質摂取量の
約90%を占めているのに対し、
③本州内陸部の北村人は植物質食糧が85.1%とその大半を占めている。
・・・中略・・・
北村人は極端な植物食であり、陸獣のウエイトが6.5%しかない点が注目される。
②一方古作貝塚人(縄文後期)は、植物、陸獣、海洋資源が
組み合わさったバラエティーのある食卓であったことがうかがえる。・・・]
ということで
①北海道、②本州の海岸集落遺跡、③本州の内陸遺跡
の三つの地域で、全く異なる食生活を営んでいたようです。
すなわち縄文時代の食生活は多様性に富んでいたと考えられます。
古作貝塚(こさくかいづか)は千葉県舟橋市にあります。
すなわち本州の海岸集落遺跡です。
貝類(アワビ+ダンベイキサゴ+ウミニナ+タカラガイ+ハイガイ+サルボウ+アカガイ)+イカ+ボラ+スズキ+クロダイ+マダイ+ヘダイ+イノシシ+シカ+クジラ)
などが出土しています。
鹿や猪の骨も発見されています。
日暮氏が指摘しているように
植物、陸獣、海洋資源が組み合わさった多様な食卓であったようです。
富山市北代縄文館
https://www.city.toyama.toyama.jp/etc/maibun/kitadai/j_kouza/kouza-06.htm
のサイトをみると、
『・・・クリ、クルミ、トチノミ、ドングリなどの木の実は、
今のお米にあたるような主食だったと考えられます・・・』
とあるので、山がある地域では、木の実が主食であったのでしょう。
【クルミで1日1500kcalを摂取する場合は、約50粒食べればよいことになります。
糖質量は、8.4gとなり、この食事でもスーパー糖質制限食と言えます。】
クルミを中心の食事をしていた縄文時代の地域があれば
仰る通り、スーパー糖質制限食ですね。
しかし、一般にはクルミばかり食べるという地域はなくて
クリ、クルミ、トチノミ、ドングリなどの木の実を万遍なく食べていたと思います。
江部康二
2022年10月11日 (火)
こんにちは。
今回は、「カロリーゼロ」と「カロリーオフ」の違いについて考察します。
「カロリーゼロ」と「カロリーオフ」の違いですが、
前回のブログ記事(2022年10月10日)と同様、
「食品表示法」に基づく「栄養成分表示」というのがあり、
そこに基準が掲載されています。
まず「カロリーゼロ」です。
基準によれば食品・飲料ともに
100gあたり5kcal未満であれば「ゼロカロリー」と表記できます。
未満ですので、例えば100gあたり4kcalであっても、
「カロリーゼロ」「ゼロカロリー」と表記できるわけです。
つまり、本当の「ゼロカロリー」でなくても
ゼロカロリーと記載してもいいのです。
例えばゼロカロリービールを1リットル飲んだら、
40kcalカロリーを含有している可能性があるということです。
次に「カロリーオフ」です。
「カロリーオフ」と表記しても良い基準ですが、
食品で100gあたり40kcal未満、飲料で100gあたり20kcal未満となっています。
「カロリーオフ」以外にも「低カロリー」「ライト」といった表記も
この範疇に含まれています。
そうすると、
カロリーオフ・低カロリー・ライトといった表示のあるペットボトルの清涼飲料水を1本(1リットル)飲むと、
200kcal近くもカロリーを摂取してしまっている可能性もあるので、要注意となりますね。
【表記基準】
ゼロカロリー……100gあたり5kcal未満
カロリーオフ……100gあたり40kcal未満(食品)、同20kcal未満(飲料)
江部康二
今回は、「カロリーゼロ」と「カロリーオフ」の違いについて考察します。
「カロリーゼロ」と「カロリーオフ」の違いですが、
前回のブログ記事(2022年10月10日)と同様、
「食品表示法」に基づく「栄養成分表示」というのがあり、
そこに基準が掲載されています。
まず「カロリーゼロ」です。
基準によれば食品・飲料ともに
100gあたり5kcal未満であれば「ゼロカロリー」と表記できます。
未満ですので、例えば100gあたり4kcalであっても、
「カロリーゼロ」「ゼロカロリー」と表記できるわけです。
つまり、本当の「ゼロカロリー」でなくても
ゼロカロリーと記載してもいいのです。
例えばゼロカロリービールを1リットル飲んだら、
40kcalカロリーを含有している可能性があるということです。
次に「カロリーオフ」です。
「カロリーオフ」と表記しても良い基準ですが、
食品で100gあたり40kcal未満、飲料で100gあたり20kcal未満となっています。
「カロリーオフ」以外にも「低カロリー」「ライト」といった表記も
この範疇に含まれています。
そうすると、
カロリーオフ・低カロリー・ライトといった表示のあるペットボトルの清涼飲料水を1本(1リットル)飲むと、
200kcal近くもカロリーを摂取してしまっている可能性もあるので、要注意となりますね。
【表記基準】
ゼロカロリー……100gあたり5kcal未満
カロリーオフ……100gあたり40kcal未満(食品)、同20kcal未満(飲料)
江部康二
2022年10月10日 (月)
こんにちは。
「糖質ゼロ」「糖質オフ」「糖類ゼロ」の意味を考察します。
その前にまず、
「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。
①炭水化物=糖質+食物繊維
②糖質=糖類+三糖類以上+糖アルコール+合成甘味料
③糖類=単糖類+二糖類
*三糖類以上=でんぷん、オリゴ糖、デキストリン
*二糖類=砂糖、麦芽糖、乳糖
*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトース
*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトールなど
*合成甘味料=アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテームなど
つまり、<糖質=炭水化物-食物繊維>
であり、<糖類=単糖類+二糖類>
となります。
食品において栄養に関する表示は、食品表示法に従います。
食品衛生法、JAS法(旧:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)及び健康増進法の3つの法律の食品の表示に係る規定を一元化した「食品表示法」が平成25年6月28日に公布され、事業者にも消費者にも分かりやすい表示を目指した具体的な表示ルールである「食品表示基準」が策定され、「食品表示法」が平成27年4月1日に施行されました。
具体的には、
「糖質ゼロ」:食品100gあたり、飲料100mlあたり糖質が0.5g未満
「糖類ゼロ」:食品100gあたり、飲料100mlあたり糖類が0.5g未満
と定められています。
一般的には、ブドウ糖・果糖、砂糖などが糖類としてよく食品に使用されています。
「糖類ゼロ」というのは、これらが使用されていないということであり、
甘味料として糖アルコールがよく使われています。
ガムには虫歯予防としてキシリトールが有名ですね。
一般の食品の甘味料としてはマルチトールが使われることが多いです。
そして、キシリトールやマルチトールは砂糖の半分くらい血糖値を上昇させるので
油断は禁物です。
糖アルコールの中で、エリスリトールだけは、カロリーゼロで血糖値も上げません。
「糖質オフ」という記載に関しては、表示基準がないので、自分で表示されている糖質量を確認するようにしましょう。
「糖質ゼロ」の食品や飲料は、糖質セイゲニストにおいても大丈夫です。
一方、「糖質ゼロ」という表示がしてあっても、糖質が0.5g未満、含まれている可能性があります。
例えば0.4g/100mlほど含まれているビールなら、1リットルのめば
4gの糖質量となります。
なお三大栄養素(脂質、蛋白質、糖質)のなかで、
摂取して直接血糖値を上昇させるのは糖質だけであり、
脂質・蛋白質は直接血糖値を上げることはありません。
江部康二
「糖質ゼロ」「糖質オフ」「糖類ゼロ」の意味を考察します。
その前にまず、
「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。
①炭水化物=糖質+食物繊維
②糖質=糖類+三糖類以上+糖アルコール+合成甘味料
③糖類=単糖類+二糖類
*三糖類以上=でんぷん、オリゴ糖、デキストリン
*二糖類=砂糖、麦芽糖、乳糖
*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトース
*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトールなど
*合成甘味料=アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテームなど
つまり、<糖質=炭水化物-食物繊維>
であり、<糖類=単糖類+二糖類>
となります。
食品において栄養に関する表示は、食品表示法に従います。
食品衛生法、JAS法(旧:農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)及び健康増進法の3つの法律の食品の表示に係る規定を一元化した「食品表示法」が平成25年6月28日に公布され、事業者にも消費者にも分かりやすい表示を目指した具体的な表示ルールである「食品表示基準」が策定され、「食品表示法」が平成27年4月1日に施行されました。
具体的には、
「糖質ゼロ」:食品100gあたり、飲料100mlあたり糖質が0.5g未満
「糖類ゼロ」:食品100gあたり、飲料100mlあたり糖類が0.5g未満
と定められています。
一般的には、ブドウ糖・果糖、砂糖などが糖類としてよく食品に使用されています。
「糖類ゼロ」というのは、これらが使用されていないということであり、
甘味料として糖アルコールがよく使われています。
ガムには虫歯予防としてキシリトールが有名ですね。
一般の食品の甘味料としてはマルチトールが使われることが多いです。
そして、キシリトールやマルチトールは砂糖の半分くらい血糖値を上昇させるので
油断は禁物です。
糖アルコールの中で、エリスリトールだけは、カロリーゼロで血糖値も上げません。
「糖質オフ」という記載に関しては、表示基準がないので、自分で表示されている糖質量を確認するようにしましょう。
「糖質ゼロ」の食品や飲料は、糖質セイゲニストにおいても大丈夫です。
一方、「糖質ゼロ」という表示がしてあっても、糖質が0.5g未満、含まれている可能性があります。
例えば0.4g/100mlほど含まれているビールなら、1リットルのめば
4gの糖質量となります。
なお三大栄養素(脂質、蛋白質、糖質)のなかで、
摂取して直接血糖値を上昇させるのは糖質だけであり、
脂質・蛋白質は直接血糖値を上げることはありません。
江部康二
2022年10月08日 (土)
こんにちは。
季節性のインフルエンザは、日本では
例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。
つまり冬の感染症です。
インフルエンザの感染力は非常に強く、日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。
インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。
2021年11月30日の本ブログ記事で、
新型コロナウイルスとのウイルス間干渉により、
2020年11月~2021年3月期と
2021年11月~2022年3月期の
二つの期間は、インフルエンザ感染者は極めて少数であったと述べました。
しかしながら、反省です。
「ウイルス間干渉で、同時に2つのウイルスは流行しない」
というのは、あくまでも仮説に過ぎませんでした。
現実にオーストラリアでは2022年4月後半(冬です)から、
まだ新型コロナが流行している最中にインフルエンザの流行が始まり、
7月中旬には急速に感染者数が減少し、8月中旬に終息しています。
つまり、ウイルス間干渉仮説は、脆くも崩れ去ったのです。
ただ日本では、オミクロン株は、弱毒化して、ほとんど普通の感冒となった感があり、
2022年10月6日(木)現在で、感染者数はかなり終息に近づいた状況です。
おそらく冬に再び新型コロナウイルスが復活して、インフルエンザとの同時流行があったとしても
オミクロン株が変異して別の株になって再び強毒化するというのはウイルスの戦略として考えにくいので
インフルエンザ対策に集中していればよいと思います。
さて、インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。
インフルエンザ予防にワクチンを打つのなら、種類が多いA型と、感染力が弱くはないB型に備えておきたいです。
国内で広く用いられている「4価ワクチン」は、A型とB型両方への効果が期待されています。
しかし是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
『手洗い、うがい、マスク、三密を避ける』がインフルエンザ予防の基本ですね。
これは、新型コロナ予防策と一緒です。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページ(2018年度)からの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、
このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
季節性のインフルエンザは、日本では
例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。
つまり冬の感染症です。
インフルエンザの感染力は非常に強く、日本では毎年約1千万人、約10人に1人が感染しています。
インフルエンザは流行性があり、いったん流行が始まると短期間に多くの人へ感染が拡がります。
2021年11月30日の本ブログ記事で、
新型コロナウイルスとのウイルス間干渉により、
2020年11月~2021年3月期と
2021年11月~2022年3月期の
二つの期間は、インフルエンザ感染者は極めて少数であったと述べました。
しかしながら、反省です。
「ウイルス間干渉で、同時に2つのウイルスは流行しない」
というのは、あくまでも仮説に過ぎませんでした。
現実にオーストラリアでは2022年4月後半(冬です)から、
まだ新型コロナが流行している最中にインフルエンザの流行が始まり、
7月中旬には急速に感染者数が減少し、8月中旬に終息しています。
つまり、ウイルス間干渉仮説は、脆くも崩れ去ったのです。
ただ日本では、オミクロン株は、弱毒化して、ほとんど普通の感冒となった感があり、
2022年10月6日(木)現在で、感染者数はかなり終息に近づいた状況です。
おそらく冬に再び新型コロナウイルスが復活して、インフルエンザとの同時流行があったとしても
オミクロン株が変異して別の株になって再び強毒化するというのはウイルスの戦略として考えにくいので
インフルエンザ対策に集中していればよいと思います。
さて、インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。
インフルエンザ予防にワクチンを打つのなら、種類が多いA型と、感染力が弱くはないB型に備えておきたいです。
国内で広く用いられている「4価ワクチン」は、A型とB型両方への効果が期待されています。
しかし是非、知っておいて欲しいことは、
インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
すなわち感染防御力は基本的になくて、
重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、
『手洗い、うがい、マスク、三密を避ける』がインフルエンザ予防の基本ですね。
これは、新型コロナ予防策と一緒です。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、
自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することにより
IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページ(2018年度)からの抜粋です。
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、
ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、
この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。
従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を
完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。
しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、
インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる
気道の粘膜免疫や、
回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。
これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では
大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、
ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。
また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、
インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や
最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには
期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、
入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、
現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、
同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、
このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、
実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、
水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、
感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、
皆なかなか信じてもらえませんでした。
どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、
「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、
あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、
そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、
私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、
ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、
糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、
インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、
生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。
若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、
接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、
感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、
インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
2022年10月07日 (金)
こんにちは。
NHKのサイトに
2022年10月2日(日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221002/k10013845201000.html
アニサキスの食中毒 年間約2万人か 厚労省に報告の50倍以上
という記事が、掲載されました。
以下の青字の記載はその要約です。
【魚介類に寄生し、激しい腹痛を引き起こす「アニサキス」による食中毒について、
国立感染症研究所の研究グループが診療報酬明細書のデータをもとに患者の数を試算したところ、
厚生労働省に報告された50倍以上の年間およそ2万人にのぼるとみられることが分かった。
アニサキスは、体長2、3センチほどの幼虫がサバやアジなどの魚介類に寄生し、
生きたまま人の体内に入ると胃や腸を傷つけ、
激しい腹痛やおう吐などを引き起こす。
国立感染症研究所の杉山広 客員研究員のグループは診療報酬明細書に注目し、
研究用の843万人分のデータを解析した。
その結果、アニサキスによる食中毒で診療報酬が請求されていたのは2018年と2019年では平均およそ880人で、
これをもとに全人口での患者数を推計したところ、
年間1万9737人にのぼると分かった。
2021年に厚生労働省に報告された件数は食中毒の原因の中では最も多いものの344件で、
実際の患者は50倍以上いるとみられる。
2005年から2011年では年間およそ7000人と推計されていて、
今回、増加が裏付けられた。】
アニサキスによる食中毒、2005年~2011年では、年間約7000人という推計に対して
2018年と2019年は、年間約20000人弱と増加しています。
流通機構が発達して、全国的に新鮮な生の魚を食べる機会が
増えていることが原因と考えられます。
アニサキス亜科に属する線虫の総称がアニサキスです。
まずは、魚を食べて生じるアレルギーの全体像を考察してみます。
<魚を食べて生じるアレルギー>
①魚自体のアレルギー
②ヒスタミンによる“アレルギー様食中毒”または“ヒスタミン食中毒”
③アニサキスアレルギー
魚を食べて生じるアレルギーには、上記の3つのタイプがあります。
このうち一番多いのが③のアニサキスアレルギーです。
また、②のヒスタミン中毒の場合は、抗原抗体反応が関与していないので、
厳密にはアレルギーではありません。
①の魚アレルギーを起こしやすいのは、
魚の筋肉に含まれた『パルブアルブミン』という蛋白質です。
<アニサキスアレルギー>
魚を食べて蕁麻疹や口唇のピリピリ感などがでたことがある人は、かなりおられると思います。
こんな時は、この魚はアレルギーがでるので自分には合わないと、普通は思います。
まあ、上記①のパターンと思うわけですね。
しかし、実態として、一番多いのは、実はアニサキスアレルギーなのです。
蕁麻疹、発熱、頭痛、顔や体の紅潮、口唇のピリピリ感、ひどければ、
アナフィラキシーショックなどの様々なアレルギー症状が出現します。
これらは1型アレルギーで、IgE抗体が関与して、抗原抗体反応により、
ヒスタミンが遊離されてアレルギー症状がでます。
アニサキスの幼虫(白くて2~3mm×0.5mm)が寄生している魚を
人が生で食べると「アニサキス症」を発症します。
「アニサキス症」に第一回目に罹患した時に、
「感作」されると、第二回目にアニサキスのタンパク成分を保有する魚を食べるとアニサキスアレルギーを発症します。
感作されていなければ、アニサキスアレルギーは生じません。
感作というのは、特定の抗原(アレルゲン)に対して過敏状態になることです。
アレルゲンは、基本的にタンパク質成分です。
アニサキスは死んでいても、タンパク成分が魚の筋肉に
残っていれば、アレルギー反応を生じるわけです。
現在アレルゲンとして、
アニサキスの16種類のタンパク成分がわかっています。
このアニサキスの抗原は、熱にも凍結にも強いものがあります。
これらのアレルゲンに対するアレルギー反応は、個人差が大きいです。
極端に言えば、1人1人皆、それぞれ反応は異なると考えられます。
アナフィラキシーショックまで起こす人は、まれとは思いますが、
アナフィラキシーショックは命に関わる病態なので、
魚を食べるときは、細心の注意が必要となります。
アニサキス類の成虫は、クジラやイルカな どの海の哺乳類の胃に寄生しています。
虫卵が糞便とともに海中に放出され、
オキアミなどの甲殻 類に取り込まれ、その体内で幼虫に発育します。
アニサキス症の元となる魚は、
サバ、イワシ、アジ、カツオ、キンメダイ、タラ、ホッケ、サケ、イカなどですが、
一番多いのはサバです。
オキアミは、ほとんどの種類の魚の餌となっているので、
オキアミのもつアニサキスをほとんどの魚が保有していることとなります。
養殖魚では冷凍オキアミなどを食料として使用するので、
養殖魚にはアニサキスの寄生は大変少ないです。
<症状の治療>
アニサキスアレルギーを発症したときは、
抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を内服します。
症状が強ければ、ステロイド剤の内服や注射が必要となります。
アナフィラキシーショックで血圧低下のときは、
ボスミン0.3mlの筋注が一番有効です。
以下は、
厚生労働省のサイトhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
より引用です
消費者の皆さまへ
◆ 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 内臓を生で食べないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
事業者の皆さまへ
◆ 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 魚の内臓を生で提供しないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
◆ 冷凍してください。 (-20℃で24時間以上冷凍)
◆ 加熱してください。(70℃以上、または60℃なら1分)
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
江部康二
NHKのサイトに
2022年10月2日(日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221002/k10013845201000.html
アニサキスの食中毒 年間約2万人か 厚労省に報告の50倍以上
という記事が、掲載されました。
以下の青字の記載はその要約です。
【魚介類に寄生し、激しい腹痛を引き起こす「アニサキス」による食中毒について、
国立感染症研究所の研究グループが診療報酬明細書のデータをもとに患者の数を試算したところ、
厚生労働省に報告された50倍以上の年間およそ2万人にのぼるとみられることが分かった。
アニサキスは、体長2、3センチほどの幼虫がサバやアジなどの魚介類に寄生し、
生きたまま人の体内に入ると胃や腸を傷つけ、
激しい腹痛やおう吐などを引き起こす。
国立感染症研究所の杉山広 客員研究員のグループは診療報酬明細書に注目し、
研究用の843万人分のデータを解析した。
その結果、アニサキスによる食中毒で診療報酬が請求されていたのは2018年と2019年では平均およそ880人で、
これをもとに全人口での患者数を推計したところ、
年間1万9737人にのぼると分かった。
2021年に厚生労働省に報告された件数は食中毒の原因の中では最も多いものの344件で、
実際の患者は50倍以上いるとみられる。
2005年から2011年では年間およそ7000人と推計されていて、
今回、増加が裏付けられた。】
アニサキスによる食中毒、2005年~2011年では、年間約7000人という推計に対して
2018年と2019年は、年間約20000人弱と増加しています。
流通機構が発達して、全国的に新鮮な生の魚を食べる機会が
増えていることが原因と考えられます。
アニサキス亜科に属する線虫の総称がアニサキスです。
まずは、魚を食べて生じるアレルギーの全体像を考察してみます。
<魚を食べて生じるアレルギー>
①魚自体のアレルギー
②ヒスタミンによる“アレルギー様食中毒”または“ヒスタミン食中毒”
③アニサキスアレルギー
魚を食べて生じるアレルギーには、上記の3つのタイプがあります。
このうち一番多いのが③のアニサキスアレルギーです。
また、②のヒスタミン中毒の場合は、抗原抗体反応が関与していないので、
厳密にはアレルギーではありません。
①の魚アレルギーを起こしやすいのは、
魚の筋肉に含まれた『パルブアルブミン』という蛋白質です。
<アニサキスアレルギー>
魚を食べて蕁麻疹や口唇のピリピリ感などがでたことがある人は、かなりおられると思います。
こんな時は、この魚はアレルギーがでるので自分には合わないと、普通は思います。
まあ、上記①のパターンと思うわけですね。
しかし、実態として、一番多いのは、実はアニサキスアレルギーなのです。
蕁麻疹、発熱、頭痛、顔や体の紅潮、口唇のピリピリ感、ひどければ、
アナフィラキシーショックなどの様々なアレルギー症状が出現します。
これらは1型アレルギーで、IgE抗体が関与して、抗原抗体反応により、
ヒスタミンが遊離されてアレルギー症状がでます。
アニサキスの幼虫(白くて2~3mm×0.5mm)が寄生している魚を
人が生で食べると「アニサキス症」を発症します。
「アニサキス症」に第一回目に罹患した時に、
「感作」されると、第二回目にアニサキスのタンパク成分を保有する魚を食べるとアニサキスアレルギーを発症します。
感作されていなければ、アニサキスアレルギーは生じません。
感作というのは、特定の抗原(アレルゲン)に対して過敏状態になることです。
アレルゲンは、基本的にタンパク質成分です。
アニサキスは死んでいても、タンパク成分が魚の筋肉に
残っていれば、アレルギー反応を生じるわけです。
現在アレルゲンとして、
アニサキスの16種類のタンパク成分がわかっています。
このアニサキスの抗原は、熱にも凍結にも強いものがあります。
これらのアレルゲンに対するアレルギー反応は、個人差が大きいです。
極端に言えば、1人1人皆、それぞれ反応は異なると考えられます。
アナフィラキシーショックまで起こす人は、まれとは思いますが、
アナフィラキシーショックは命に関わる病態なので、
魚を食べるときは、細心の注意が必要となります。
アニサキス類の成虫は、クジラやイルカな どの海の哺乳類の胃に寄生しています。
虫卵が糞便とともに海中に放出され、
オキアミなどの甲殻 類に取り込まれ、その体内で幼虫に発育します。
アニサキス症の元となる魚は、
サバ、イワシ、アジ、カツオ、キンメダイ、タラ、ホッケ、サケ、イカなどですが、
一番多いのはサバです。
オキアミは、ほとんどの種類の魚の餌となっているので、
オキアミのもつアニサキスをほとんどの魚が保有していることとなります。
養殖魚では冷凍オキアミなどを食料として使用するので、
養殖魚にはアニサキスの寄生は大変少ないです。
<症状の治療>
アニサキスアレルギーを発症したときは、
抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を内服します。
症状が強ければ、ステロイド剤の内服や注射が必要となります。
アナフィラキシーショックで血圧低下のときは、
ボスミン0.3mlの筋注が一番有効です。
以下は、
厚生労働省のサイトhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
より引用です
消費者の皆さまへ
◆ 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう。また、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 内臓を生で食べないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
事業者の皆さまへ
◆ 新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除いてください。
◆ 魚の内臓を生で提供しないでください。
◆ 目視で確認して、アニサキス幼虫を除去してください。
◆ 冷凍してください。 (-20℃で24時間以上冷凍)
◆ 加熱してください。(70℃以上、または60℃なら1分)
※ 一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
江部康二
2022年10月05日 (水)
こんにちは。
米国のCDC(疾病対策センター)が2022年4月に公表した調査では、
感染した時にできる抗体を持つ人の割合は2月時点で推計57・7%でした。
つまり欧米では現在、「集団免疫」に近い状況が生じているので。
「ノーマスク」が当たり前になっていると言えます。
日本では第6波や第7波で感染者数が大きく増えましたが、
2022年8月下旬にピークを迎えて、9月になってからは急速に減少しています。
そして人口比で見た累計感染者数は
米国や英国などに比べて格段に少ないのです。
従って、感染してできる抗体の保有率は非常に低いのが現状です。
厚生労働省が2022年4月に発表した都道府県の抽出調査によると、
最も高い東京で5・65%でした。
以下、大阪5・32%、愛知3・09%、福岡2・71%、宮城1・49%であり、
米国人の抗体保有率の10分の1~38分の1以下と極めて少ないのです。
抗体保有率が極めて少ない現状なので、
日本ではマスク着用には意味があると言えます。
札幌医科大フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門が
公開している統計によると、
人口100万人あたりの累計コロナ死者数は
2022年9月29日時点で
日本が353・7人です。
すなわち、
米国の3181・9人、
英国の3032・9人、
などと比べ圧倒的に少なく抑えられているのです。
日本政府の新型コロナ対策、
賛否両論でいろいろ言われてきましたが、
累積死亡者数で評価すれば、
結果としては大成功と言えます。
まあ、政府の政策というよりも日本国民の
真面目さや誠実さやルールを守るといった性格が大いに寄与していると考えられますが・・・。
デルタ株までは、重症化率や死亡率も
結構あったので、
三密を避ける、マスク、手洗い、うがい、ソーシャルディスタンス・・・などの対策で、感染予防することは大きな意義があったと思います。
そして、そうこうする内に、2021年12月末ごろからオミクロン株に変異して
重症化率や死亡率が激減したので、
日本国民は、デルタ株の期間を上手くしのいで、やり過ごしたと言えます。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2133849.pdf
大分県の統計では
デルタ株 オミクロン株
重症化率 5.5% 0.8%
致死率 0.4% 0.04%
オミクロン株の致死率はデルタ株の10分の1です。
新型コロナウイルス、
2020年1月6日に中国帰りの男性が発熱で受診したのが、
日本での第一例目です。
約2年10ヶ月と、私が思っていたより、少し早い期間で、
人類と共存するオミクロン株に変異したのだと考えられます。
共存ウイルスに変異するには、3年以上かかるかと思っていたので
結果としては良かったです。
江部康二
米国のCDC(疾病対策センター)が2022年4月に公表した調査では、
感染した時にできる抗体を持つ人の割合は2月時点で推計57・7%でした。
つまり欧米では現在、「集団免疫」に近い状況が生じているので。
「ノーマスク」が当たり前になっていると言えます。
日本では第6波や第7波で感染者数が大きく増えましたが、
2022年8月下旬にピークを迎えて、9月になってからは急速に減少しています。
そして人口比で見た累計感染者数は
米国や英国などに比べて格段に少ないのです。
従って、感染してできる抗体の保有率は非常に低いのが現状です。
厚生労働省が2022年4月に発表した都道府県の抽出調査によると、
最も高い東京で5・65%でした。
以下、大阪5・32%、愛知3・09%、福岡2・71%、宮城1・49%であり、
米国人の抗体保有率の10分の1~38分の1以下と極めて少ないのです。
抗体保有率が極めて少ない現状なので、
日本ではマスク着用には意味があると言えます。
札幌医科大フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門が
公開している統計によると、
人口100万人あたりの累計コロナ死者数は
2022年9月29日時点で
日本が353・7人です。
すなわち、
米国の3181・9人、
英国の3032・9人、
などと比べ圧倒的に少なく抑えられているのです。
日本政府の新型コロナ対策、
賛否両論でいろいろ言われてきましたが、
累積死亡者数で評価すれば、
結果としては大成功と言えます。
まあ、政府の政策というよりも日本国民の
真面目さや誠実さやルールを守るといった性格が大いに寄与していると考えられますが・・・。
デルタ株までは、重症化率や死亡率も
結構あったので、
三密を避ける、マスク、手洗い、うがい、ソーシャルディスタンス・・・などの対策で、感染予防することは大きな意義があったと思います。
そして、そうこうする内に、2021年12月末ごろからオミクロン株に変異して
重症化率や死亡率が激減したので、
日本国民は、デルタ株の期間を上手くしのいで、やり過ごしたと言えます。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2133849.pdf
大分県の統計では
デルタ株 オミクロン株
重症化率 5.5% 0.8%
致死率 0.4% 0.04%
オミクロン株の致死率はデルタ株の10分の1です。
新型コロナウイルス、
2020年1月6日に中国帰りの男性が発熱で受診したのが、
日本での第一例目です。
約2年10ヶ月と、私が思っていたより、少し早い期間で、
人類と共存するオミクロン株に変異したのだと考えられます。
共存ウイルスに変異するには、3年以上かかるかと思っていたので
結果としては良かったです。
江部康二
2022年10月03日 (月)
こんにちは。
ヤフーニュースに2022年10月2日、
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221002-00317739
第7波の流行後にコロナ後遺症の相談事例が急増
コロナ後遺症について現時点で分かっていること
という記事が掲載されました。
感染症専門医の忽那賢志医師の執筆です。
詳しくは上記の記事を見て頂ければ幸いです。
オミクロン株はデルタ株に比べると、明らかに軽症化していて
重症化率は極めて少ないです。
従って、後遺症がでるひとの割合もデルタ株よりは少ないです。
イギリスの研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下です。
しかし、日本国内で新型コロナに感染した2100万人のうち1900万人はオミクロン株になってから感染した人ですので、
後遺症率は少なくても、後遺症患者の絶対数は増加しています。
後遺症は男性よりも女性に、若い人よりも高齢者に、そして新型コロナに感染したときに重症だった人に多いです。
コロナ後遺症で頻度が高いのは、
「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
後遺症が何故発生するのかはよくわかっていません。
残念ながら後遺症に有効な治療法は確立されていません。
私は、後遺症の患者さんには漢方薬で個別対応しています。
忽那医師は、後遺症に有効な治療法はなく
『ワクチンによる予防が重要』と述べています。
しかし、『新型コロナワクチンに感染予防効果・流行予防効果がない』ことは
以下の本ブログ記事の結論で明らかです。
またワクチン接種率の極めて高い日本でこれだけ流行している現実をみると
感染予防効果がないことを証明したようなものです。
①
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6086.html
新型コロナワクチン「コミナティ筋注」の効果に関する理論的考察。2022年9月。
2022年09月22日 (木)
②
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6085.html
世界のワクチン接種状況と新規感染者数は。
2022年09月20日 (火)
現時点で新型コロナワクチンには、
新型コロナ感染を予防する効果がないことは明白です。
ワクチン接種率の高い国々のほうが
低い国々より、新規感染者数が多いです。
ワクチンがかえって足を引っ張っているように見えます。
このように、新型コロナワクチンには感染予防効果はないので、
ブログ読者の皆さんは、スーパー糖質制限食実践で自然免疫を高めて
感染予防や感染してもごく軽くすむことを目指しましょう。
江部康二
以下の青字の記載は記事の要約です。
【コロナ後遺症の相談件数が急増している
大阪府新型コロナ受診相談センターにおける後遺症相談件数の推移(大阪府資料より)
新型コロナ第7波の流行は過去最大の感染者数となり、およそ1000万人が新型コロナウイルスに感染しました。
新規感染者数はピークを過ぎましたが、少し遅れてコロナ後遺症に関する相談が増えてきています。
大阪府の後遺症相談件数の推移ですが、8月だけで3000件以上という過去にない規模の相談件数となっています。
新規感染者数のピークは8月中旬でしたので、コロナ後遺症に悩む方はこれからもしばらく増加する可能性があります。
コロナ後遺症とは?
コロナ後遺症で頻度が高いのは、
「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
海外では「LONG COVID」「Post COVID-19 condition」などと呼ばれています。
コロナ後遺症がなぜ起こるのかについては、まだ十分分かっていませんが、
・ウイルスの持続感染
・ウイルスによる組織障害
・自己免疫反応
・常在細菌叢の多様性の低下
・集中治療後症候群(PICS)
などが複合的に起こっていると考えられています。
コロナ後遺症が起こる頻度や起こりやすい人は?
コロナ後遺症は、海外の報告では5人から8人に1人くらいの頻度で生じると考えられています。
また、男性よりも女性に、若い人よりも高齢者に、そして新型コロナに感染したときに重症だった人に多いことが分かっています。
日本人を対象としたコロナ後遺症の調査では1年後でも約11人に1人が何らかの症状が残っていることが分かりました。
オミクロン株になってコロナ後遺症はどう変わったか?
感染力の極めて高いオミクロン株では、世界中で過去にないほどの感染者が報告されましたが、オミクロン株ではどれくらいの頻度でコロナ後遺症が起こるのかに注目が集まっていました。
イギリスの携帯アプリを用いた研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下であったとのことです。
しかし、オミクロン株ではコロナ後遺症が起こる割合が低くなったとしても、日本国内で新型コロナに感染した2100万人のうち1900万人はオミクロン株になってから感染した人であり、コロナ後遺症に悩む人の数そのものはデルタ株の流行期よりも増えることが懸念されます。
実際に、大阪府の8月の後遺症相談件数は過去最大となっています。
オミクロン株となって、後遺症の症状の頻度も変わってきています。
大阪府の後遺症相談件数の内訳を見ると、デルタ株までは、特に若い世代を中心にコロナ後遺症の症状として頻度が高かった「嗅覚異常」「味覚異常」が、オミクロン株流行語は頻度が減っています。
これはオミクロン株の急性期の症状として、嗅覚異常・味覚異常が減っていることが関連していると考えられます。
そして、オミクロン株の流行以降、全世代に渡って頻度が高いのが「倦怠感」「咳」となっています。
後遺症に有効な治療法はなく、ワクチンによる予防が重要】
ヤフーニュースに2022年10月2日、
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221002-00317739
第7波の流行後にコロナ後遺症の相談事例が急増
コロナ後遺症について現時点で分かっていること
という記事が掲載されました。
感染症専門医の忽那賢志医師の執筆です。
詳しくは上記の記事を見て頂ければ幸いです。
オミクロン株はデルタ株に比べると、明らかに軽症化していて
重症化率は極めて少ないです。
従って、後遺症がでるひとの割合もデルタ株よりは少ないです。
イギリスの研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下です。
しかし、日本国内で新型コロナに感染した2100万人のうち1900万人はオミクロン株になってから感染した人ですので、
後遺症率は少なくても、後遺症患者の絶対数は増加しています。
後遺症は男性よりも女性に、若い人よりも高齢者に、そして新型コロナに感染したときに重症だった人に多いです。
コロナ後遺症で頻度が高いのは、
「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
後遺症が何故発生するのかはよくわかっていません。
残念ながら後遺症に有効な治療法は確立されていません。
私は、後遺症の患者さんには漢方薬で個別対応しています。
忽那医師は、後遺症に有効な治療法はなく
『ワクチンによる予防が重要』と述べています。
しかし、『新型コロナワクチンに感染予防効果・流行予防効果がない』ことは
以下の本ブログ記事の結論で明らかです。
またワクチン接種率の極めて高い日本でこれだけ流行している現実をみると
感染予防効果がないことを証明したようなものです。
①
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6086.html
新型コロナワクチン「コミナティ筋注」の効果に関する理論的考察。2022年9月。
2022年09月22日 (木)
②
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6085.html
世界のワクチン接種状況と新規感染者数は。
2022年09月20日 (火)
現時点で新型コロナワクチンには、
新型コロナ感染を予防する効果がないことは明白です。
ワクチン接種率の高い国々のほうが
低い国々より、新規感染者数が多いです。
ワクチンがかえって足を引っ張っているように見えます。
このように、新型コロナワクチンには感染予防効果はないので、
ブログ読者の皆さんは、スーパー糖質制限食実践で自然免疫を高めて
感染予防や感染してもごく軽くすむことを目指しましょう。
江部康二
以下の青字の記載は記事の要約です。
【コロナ後遺症の相談件数が急増している
大阪府新型コロナ受診相談センターにおける後遺症相談件数の推移(大阪府資料より)
新型コロナ第7波の流行は過去最大の感染者数となり、およそ1000万人が新型コロナウイルスに感染しました。
新規感染者数はピークを過ぎましたが、少し遅れてコロナ後遺症に関する相談が増えてきています。
大阪府の後遺症相談件数の推移ですが、8月だけで3000件以上という過去にない規模の相談件数となっています。
新規感染者数のピークは8月中旬でしたので、コロナ後遺症に悩む方はこれからもしばらく増加する可能性があります。
コロナ後遺症とは?
コロナ後遺症で頻度が高いのは、
「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
海外では「LONG COVID」「Post COVID-19 condition」などと呼ばれています。
コロナ後遺症がなぜ起こるのかについては、まだ十分分かっていませんが、
・ウイルスの持続感染
・ウイルスによる組織障害
・自己免疫反応
・常在細菌叢の多様性の低下
・集中治療後症候群(PICS)
などが複合的に起こっていると考えられています。
コロナ後遺症が起こる頻度や起こりやすい人は?
コロナ後遺症は、海外の報告では5人から8人に1人くらいの頻度で生じると考えられています。
また、男性よりも女性に、若い人よりも高齢者に、そして新型コロナに感染したときに重症だった人に多いことが分かっています。
日本人を対象としたコロナ後遺症の調査では1年後でも約11人に1人が何らかの症状が残っていることが分かりました。
オミクロン株になってコロナ後遺症はどう変わったか?
感染力の極めて高いオミクロン株では、世界中で過去にないほどの感染者が報告されましたが、オミクロン株ではどれくらいの頻度でコロナ後遺症が起こるのかに注目が集まっていました。
イギリスの携帯アプリを用いた研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下であったとのことです。
しかし、オミクロン株ではコロナ後遺症が起こる割合が低くなったとしても、日本国内で新型コロナに感染した2100万人のうち1900万人はオミクロン株になってから感染した人であり、コロナ後遺症に悩む人の数そのものはデルタ株の流行期よりも増えることが懸念されます。
実際に、大阪府の8月の後遺症相談件数は過去最大となっています。
オミクロン株となって、後遺症の症状の頻度も変わってきています。
大阪府の後遺症相談件数の内訳を見ると、デルタ株までは、特に若い世代を中心にコロナ後遺症の症状として頻度が高かった「嗅覚異常」「味覚異常」が、オミクロン株流行語は頻度が減っています。
これはオミクロン株の急性期の症状として、嗅覚異常・味覚異常が減っていることが関連していると考えられます。
そして、オミクロン株の流行以降、全世代に渡って頻度が高いのが「倦怠感」「咳」となっています。
後遺症に有効な治療法はなく、ワクチンによる予防が重要】
2022年10月02日 (日)
こんにちは。
2022年10月号の最新医学雑誌を読むと、
腎臓内科専門医が、高齢者の CKD(慢性腎臓病)について
解説しておられました。
60歳代~70歳代について、血清クレアチニン値検査を指標にしての解説です。
しかし、クレアチニン値は、筋肉量に大きく影響されるので
高齢者の腎機能の指標としては好ましくないのです。
とくに、60歳以上の高齢者では、筋肉量が20歳のときより24%も低下しているので
クレアチニン値は低くでます。
つまり本当は腎機能障害があるのに、正常にでてしまうのです。
血清シスタチンC値検査なら筋肉量の影響は受けませんので
特に高齢者の腎機能検査の指標は、シスタチンCとするべきなのです。
また、若者でも、<食事や筋肉量や運動>などの影響を受けない
シスタチンCのほうが、腎機能検査としては信頼度が高いのです。
成人における筋肉の重量は、体重のおよそ40%です。
もちろん個人差はありますが、20歳ころの筋肉量を基準に考えると、
70歳くらいでは男女ともに30%の低下がみられることから、
10年間でおよそ6%ずつ、低下していることになります。
人は誰でも高齢になると、筋肉を構成する筋繊維数が減少し、
さらに筋繊維が萎縮してしまうことにより、筋肉量が低下します。
加齢による筋変化は、筋繊維そのものの変化よりも、
筋肉量の低下が目立ちます。
加齢による筋力低下の本質は、筋の萎縮によるものです。
筋肉量。
20歳を基準。
30歳で、6%低下
40歳で、12%低下。
50歳で、18%低下。
60歳で、24%低下。
70歳で、30%低下。
シスタチンCは1/3ヶ月でないと保険適応となりません。
つまり、1月に検査したら、次は4月となります。
腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、
取り過ぎた塩分などを尿と一緒に
体の外へ出してくれる働きがあります
腎臓はいらなくなった余分なものを体から排出して、
必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、
体内の環境を正常に保つことができるのです。
腎臓の糸球体での濾過量(GFR)は、正常では一定に維持され、
腎機能を知るうえで最も重要な指標となります。
年齢と性別を考慮して、腎臓の働きを推測した値を、
eGFR(推定糸球体濾過量)と言います。
<血清シスタチンC GFR>
で、ネットで検索すれば、
eGFR(推定糸球体濾過量)を計算するサイトが見つかります。
便利なので、利用しましょう。
そこで計算して、eGFRが60以上なら心配ないです。
腎機能検査として、一般的な血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、
運動などの影響を受けますが、
血清シスタチンC値はそれらの影響を受けないため、
小児・老人・妊産婦・アスリートなどでも問題なく測定できます。
また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。
したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、
尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には、
早期腎症の可能性がありえるので、血清シスタチンCを調べるのが有用です。
血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、
シスタチンCを測定する意義はありません。
一方、ごく軽度上昇例で評価が困難な場合、
シスタチンC測定で腎機能を検査するのがお奨めです。
<高齢者とクレアチニンとシスタチンC>
高齢者の場合は、ほとんどの人で、筋肉量が少ないです。
そうすると、一般によく用いられる腎機能検査の「血清クレアチニン値」だと、
筋肉量が少ない分、低値になります。
つまり、本当は腎機能障害があるのに、「血清クレアチニン値」だと
正常範囲になってしまうケースがかなりあると思われます。
このような時、「血清シスタチンC」だと、筋肉量に影響されずに
正確な腎機能を評価することができ、とても有用です。
血清クレアチニンの基準値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。
血清シスタチンCの基準値は、
男性0.63~0.95mg/L、女性0.56~0.87mg/L です。
例えば75歳男性Aさんの血清クレアチニン値は0.76mg/dlで基準値内でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.76mg/dlで基準値を超えていて
腎機能障害が認められました。
同様に、77歳女性Aさんのクレアチニン値は0.58mg/dlで基準値内でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.48mg/dlで基準値を超えていて
腎機能障害が認められました。
つまり、AさんもBさんも、腎機能障害があるけれど、
筋肉量低下のため血清クレアチニン検査だけでは
見逃してしまうということになります。
今後、高齢者の腎機能検査は、血清クレアチニンではなく
血清シスタチンCを主に実施するのが良いと言えます。
国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人が高齢者となります。
65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
総務省によれば、日本の65歳以上の高齢者は、
2020年は3617万人・総人口の28.7%で、過去最高の更新が続いています。
なお、私は72歳と高齢者ですが、
クレアチニン0.60mg/dl(0.6~1.1) eGFR:99.4
シスタチンC:0.75/Ldl(0.53~0.95) eGFR:96.48
と両者がほとんど、変わらないので、
筋肉量は若い頃と比べて、あまり落ちてないということとなります。
本日の記事は、
健康長寿ネット(☆)のサイトを参考にしました。
ありがとうございます。
(☆)公益財団法人
長寿科学振興財団
健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/undoukei-rouka.html
江部康二
2022年10月号の最新医学雑誌を読むと、
腎臓内科専門医が、高齢者の CKD(慢性腎臓病)について
解説しておられました。
60歳代~70歳代について、血清クレアチニン値検査を指標にしての解説です。
しかし、クレアチニン値は、筋肉量に大きく影響されるので
高齢者の腎機能の指標としては好ましくないのです。
とくに、60歳以上の高齢者では、筋肉量が20歳のときより24%も低下しているので
クレアチニン値は低くでます。
つまり本当は腎機能障害があるのに、正常にでてしまうのです。
血清シスタチンC値検査なら筋肉量の影響は受けませんので
特に高齢者の腎機能検査の指標は、シスタチンCとするべきなのです。
また、若者でも、<食事や筋肉量や運動>などの影響を受けない
シスタチンCのほうが、腎機能検査としては信頼度が高いのです。
成人における筋肉の重量は、体重のおよそ40%です。
もちろん個人差はありますが、20歳ころの筋肉量を基準に考えると、
70歳くらいでは男女ともに30%の低下がみられることから、
10年間でおよそ6%ずつ、低下していることになります。
人は誰でも高齢になると、筋肉を構成する筋繊維数が減少し、
さらに筋繊維が萎縮してしまうことにより、筋肉量が低下します。
加齢による筋変化は、筋繊維そのものの変化よりも、
筋肉量の低下が目立ちます。
加齢による筋力低下の本質は、筋の萎縮によるものです。
筋肉量。
20歳を基準。
30歳で、6%低下
40歳で、12%低下。
50歳で、18%低下。
60歳で、24%低下。
70歳で、30%低下。
シスタチンCは1/3ヶ月でないと保険適応となりません。
つまり、1月に検査したら、次は4月となります。
腎臓には血液をろ過して、体の中に溜まった老廃物や水分、
取り過ぎた塩分などを尿と一緒に
体の外へ出してくれる働きがあります
腎臓はいらなくなった余分なものを体から排出して、
必要なものだけをしっかり体の中に残してくれるので、
体内の環境を正常に保つことができるのです。
腎臓の糸球体での濾過量(GFR)は、正常では一定に維持され、
腎機能を知るうえで最も重要な指標となります。
年齢と性別を考慮して、腎臓の働きを推測した値を、
eGFR(推定糸球体濾過量)と言います。
<血清シスタチンC GFR>
で、ネットで検索すれば、
eGFR(推定糸球体濾過量)を計算するサイトが見つかります。
便利なので、利用しましょう。
そこで計算して、eGFRが60以上なら心配ないです。
腎機能検査として、一般的な血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、
運動などの影響を受けますが、
血清シスタチンC値はそれらの影響を受けないため、
小児・老人・妊産婦・アスリートなどでも問題なく測定できます。
また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、
シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇するので、
腎機能障害の早期診断にたいへん有用です。
したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、
尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には、
早期腎症の可能性がありえるので、血清シスタチンCを調べるのが有用です。
血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、
シスタチンCを測定する意義はありません。
一方、ごく軽度上昇例で評価が困難な場合、
シスタチンC測定で腎機能を検査するのがお奨めです。
<高齢者とクレアチニンとシスタチンC>
高齢者の場合は、ほとんどの人で、筋肉量が少ないです。
そうすると、一般によく用いられる腎機能検査の「血清クレアチニン値」だと、
筋肉量が少ない分、低値になります。
つまり、本当は腎機能障害があるのに、「血清クレアチニン値」だと
正常範囲になってしまうケースがかなりあると思われます。
このような時、「血清シスタチンC」だと、筋肉量に影響されずに
正確な腎機能を評価することができ、とても有用です。
血清クレアチニンの基準値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。
血清シスタチンCの基準値は、
男性0.63~0.95mg/L、女性0.56~0.87mg/L です。
例えば75歳男性Aさんの血清クレアチニン値は0.76mg/dlで基準値内でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.76mg/dlで基準値を超えていて
腎機能障害が認められました。
同様に、77歳女性Aさんのクレアチニン値は0.58mg/dlで基準値内でした。
しかし、同時に血清シスタチンCを調べたら、1.48mg/dlで基準値を超えていて
腎機能障害が認められました。
つまり、AさんもBさんも、腎機能障害があるけれど、
筋肉量低下のため血清クレアチニン検査だけでは
見逃してしまうということになります。
今後、高齢者の腎機能検査は、血清クレアチニンではなく
血清シスタチンCを主に実施するのが良いと言えます。
国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人が高齢者となります。
65-74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。
総務省によれば、日本の65歳以上の高齢者は、
2020年は3617万人・総人口の28.7%で、過去最高の更新が続いています。
なお、私は72歳と高齢者ですが、
クレアチニン0.60mg/dl(0.6~1.1) eGFR:99.4
シスタチンC:0.75/Ldl(0.53~0.95) eGFR:96.48
と両者がほとんど、変わらないので、
筋肉量は若い頃と比べて、あまり落ちてないということとなります。
本日の記事は、
健康長寿ネット(☆)のサイトを参考にしました。
ありがとうございます。
(☆)公益財団法人
長寿科学振興財団
健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/undoukei-rouka.html
江部康二
2022年10月01日 (土)

医者が教える 正しい糖質の減らし方 (TJMOOK) ムック – 2022/5/26
江部 康二 (監修) 宝島社
https://www.amazon.co.jp/dp/429902981X/
こんばんは。
『医者が教える 正しい糖質の減らし方 』
が、2022年5月26日(木)刊行されました。
おかげさまで、2022年9月、重版となりました。
初版が20000部、重版が8000部で、合計28000部です。
自画自賛になりますが、最新の知識も含めて、
とてもわかりやすく、よくまとまっています。 (^^)
コロナ禍前のとある1週間に、私が食べた糖質制限食も掲載されています。
外食もありの月曜日から土曜日まで、実際に食べたメニューです。
コロナ禍以降は、外食は一切していません。
そして、
何だか、恥ずかしいのですが、7ページに私の全身の写真が載っています。
超健康体 江部康二
糖質制限20年目!72歳で持病なし、
虫歯なし、20代の体型をしっかり維持
身長:167cm/体重:57kg
髪:白髪はあるが薄毛には悩んでいない
耳:聴力低下もなく、患者さんとも楽しくお喋りできる
肌:シワもなくツヤがありつるんとした肌。
肌年齢は52歳。
糖質制限を始めた年齢で止まったまま。
睡眠:毎日7時間睡眠。
夜中に尿意で目覚めることもなく睡眠の質は極めて良好。
運動:日頃からよく歩くことを心がけているが
ジム通いなどの経験はなし。
1~2週間に1回
趣味のテニスをしている。
目:視力良好。
近視、遠視、乱視はあるが
それがほどよく相まって、
『広辞苑』の小さな文字が
裸眼で読めるほどの
視力を維持している。
歯:歯は全部残っている。
虫歯ゼロ、歯周病もなし。
食後歯磨き、
寝る前はていねい磨き。
それと、年に1度歯科健診で
歯石除去をしているだけ
脂肪:コレステロール値も
中性脂肪値も基準値内。
もちろんお腹もでていない
常備薬:定期的に飲んでいる薬なし。
サプリメントも
一切のんでいない
糖質制限ダイエットはブームを超え、もはや定番となっています。
しかし、ハードな糖質制限はハードルが高く、挫折する人も多いのが実情です。
そこで、糖質制限のパイオニアである江部康二が監修して、
改めて知りたい「糖質の正しい減らし方」を教えます。
はじめて糖質制限をする人、かつて制限したけどリバウンドした人、
これからの人生を軽やかに元気に暮らしたい人に最適な一冊です。
江部康二
| ホーム |