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糖質制限食で腎機能は悪化しない。
こんにちは。
毎日新聞のwebサイトに、2022年5月18日、
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20220513/med/00m/100/011000c
食事制限で腎不全? 医師が伝えたい食べ物の大切さとは

という記事が掲載されました。

金子至寿佳・高槻赤十字病院糖尿病・内分泌・代謝内科部長
が、解説しておられます。
Taka さんから情報を頂きました。
ありがとうございます。

以下の青字の記載はは、記事の要約です。
 
【病院にやって来た20代の男性の血液検査をしたところ、腎臓の機能が著しく低下していました。
炭水化物を取らないようにしていたというこの男性に、一体何が起きたのでしょうか? 
高槻赤十字病院(大阪府高槻市)の金子至寿佳医師が、毎日口にする食べ物の大切さについて解説します。

食事から炭水化物を取り除くと
 ある日、初診で病院に来られた28歳の男性の血液検査をしたところ、腎臓の機能を表す数値がかなり悪化していました。
原因を突き止めるため、食事について男性に尋ねると、
母親が友人から「糖質を含む炭水化物を食べると血糖値には良くないから食べないほうがいいよ」と言われ、
徹底的に食事から炭水化物を抜いていたというのです。
男性は「ビタミンは必要だから、サプリメント(栄養補助食品)から取っていました」と話しました。

 腎臓は、血液に含まれるいろいろな「かす」をろ過してきれいにする臓器です。
しかし、塩分が多すぎたり、炭水化物を完全に抜いてたんぱく質と脂肪だけを食べたりしていると、
腎臓の機能を表す数値が悪くなることがあります。
この男性は、入院して総摂取エネルギーの55%を炭水化物から取っていただくようにしたところ、
正常値に戻りました。「まだ間に合った」と安心したことを思い出します。

 他の方でも、友人の言うことを信じてたんぱく質と脂肪だけを食べ続けた結果、
腎臓の機能が落ち込み、人工透析に至ったという例があります。・・・】



考察してみます。


A)

【20代の男性
腎臓の機能が著しく低下していた。
炭水化物を徹底的に抜いていた。
入院して炭水化物を摂取エネルギーの55%としたら正常値に戻った】


まず腎機能の悪化ですが、簡単に正常に戻っていますので、
脱水が原因だった可能性が高いです。
脱水で腎血流が低下すると、クレアチニン値が上昇して、
一見、腎機能障害に見えますが、初期の段階なら、脱水を改善させて
腎血流量を正常に戻してやれば、クレアチニン値もすぐに正常に改善します。
この20代男性の腎機能低下も脱水が主たる要因だったので
速やかに改善したと思います。
つまり、糖質制限が原因ではなくて、脱水が原因だったと考えられます。


B)
そもそも、『正常人が高タンパク食を食べて腎機能が悪化した』
というエビデンスは存在しません。
また脂肪は、腎機能に全く影響を与えないので、腎不全でも摂取OKです。


C)
<厚生労働省と蛋白質の耐容上限量>
「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
の、8ページに、たんぱく質の食事摂取基準が載っています。
(推定平均必要量、推奨量、目安量:g/日、目標量(中央値):%エネルギー)

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書
においては、たんぱく質の耐容上限量は設定しないと記載してあります。
II  各論
たんぱく質(PDF:1,149KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042630.pdf
<97ページ>
3.過剰摂取の回避
3─1.耐容上限量の設定
 たんぱく質の耐容上限量は、
たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。
しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は
十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。

厚生労働省によれば、現時点では、
正常人がタンパク質をたくさん食べて健康障害を生じたという
報告は十分にはないとしています。
結果として、タンパク質の耐容上限量は設定しないということです。


D)
米国糖尿病学会は、糖尿病腎症に対して
タンパク質制限は推奨しないとしています。(ランクA)


E)
米国糖尿病学会は、2019年4月のコンセンサス・レポート以降、
『エビデンスが最も豊富なのは糖質制限食である』
と明言しています。
つまり糖質制限食の有効性と安全性に関しては、
米国糖尿病学会が保証してくれているということです。


<結論>
A)B)C)D)E)を考慮すれば
糖質制限食で、腎機能が悪化するというエビデンスは存在しません。
また米国糖尿病学会は糖質制限食をキッチリ、一推しで、推奨しています。


江部康二


血糖値と血圧の関係。糖尿病と動脈硬化。
【22/05/18       境界型の40代  
血糖値と血圧の関係について
江部先生、いつも拝見しております。
糖尿病は一義的には糖代謝異常の病気であると認識していますが、
本質的には血管を障害する病気かなと思います。
血管を障害する(≒動脈硬化)と考えると、
結果として血圧が上昇すると考えて良いのでしょうか?
つまり、血圧上昇を伴わない場合、心配はいらないのでしょうか?
江部先生が長年、診てこられた糖尿病患者さんの血糖値と血圧の関係について、
教えていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。】

 
 
こんにちは。
境界型の40代 さんから、
糖尿病患者さんの血糖値と血圧の関係について、コメント・質問を頂きました。
仰る通り、糖尿病は高血糖のため、
血管が早く老化(≒動脈硬化)していく病気
と言えます。
 
糖尿病の慢性合併症に関して、細小血管の病変
大血管の病変に分けることができます。
細小血管の病変には、高血圧は関与していないので、
糖尿病があれば、血圧が正常でも、油断は禁物です。
 
A)三大合併症(細小血管の病変)

① 糖尿病網膜症
②糖尿病性腎症
③糖尿病性神経障害
 

B)動脈硬化(大血管の合併症)
①冠動脈疾患
②脳血管障害
③末梢動脈疾患

 
C)糖尿病性足病変
糖尿病性足病変は、細小血管障害も大血管障害も両方、関係しています。
糖尿病性多発性神経障害、微小循環障害、末梢動脈疾患、外傷、感染症などが
複雑に関係しています。
 
 
【糖尿病患者さんの血糖値と血圧の関係について】

糖尿病による高血糖で、血管の内皮細胞に傷がつくと、
内皮が持っている動脈硬化を防ぐ働きが失われます。
この状態を「内皮機能障害」と言い、動脈硬化の初期段階とされています。
血管が硬くなって柔軟性が失われている状態です。
こうなると、血液が送り出される圧力(血圧)によるダメージを受けやすくなります。
 
動脈硬化は中高年になってから起こるものだと思いがちですが、
実は、10歳前後から徐々に進行し、
30歳ごろになると完成された動脈硬化が現れるようになります。
動脈硬化は自覚症状なく進行して、ある日突然、
心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクが高くなってしまいます。
糖尿病や糖尿病予備軍の人は、特に要注意です。
 
血管は中を流れる血液の量に合わせて収縮・拡張することで、
スムーズな血流を助けています。
動脈硬化になると柔軟性がなくなるため自在な伸縮ができなくなって、
高血圧の発症や進行の原因になります。
また、高血圧による血管への過剰な圧力は、動脈硬化自体を進ませます。
<動脈硬化+高血圧>の悪循環ですね。
 
ともあれ、糖尿病患者であっても、血糖コントロール良好を保てば、
動脈硬化は、正常人と同じくらいの加齢に伴う動脈硬化ていどで済みます。
 
糖尿病も予備軍も、<スーパー糖質制限食>  を実践して
血糖コントロール良好を保つことが肝要です。
 
 
江部康二
縄文の犬は人間と一心同体。最古の埋葬犬分析。
こんにちは。
少し前ですが、2018年5月13日の毎日新聞に、
縄文の犬は人間と一心同体 最古の埋葬犬分析
https://mainichi.jp/articles/20180514/k00/00m/040/044000c

という記事が掲載されました。

とても興味深く読みました。
最古の埋葬犬分析によろると、
縄文の犬は人間と一心同体で、肉食性が高いことがわかりました。
以下、記事を要約してみました。

【愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)の国史跡
「上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡」で
1962年に出土した国内最古の埋葬された犬の骨について、
慶応大などが科学的分析を進め、縄文人と犬の深い関係が判明しました。

 上黒岩岩陰遺跡は、石鎚山麓(いしづちさんろく)の高原地帯の川沿いにあり、
縄文時代の女性像を刻んだ石の発見などで知られます。
犬の骨は1962年、慶大の研究者らが埋葬人骨に隣接する場所で、
屈葬された状態の2匹の全身骨格を発掘し、
地層などから最古の埋葬犬とされました。

2匹は推定体高が約38センチと約41センチで、現代の柴犬程度かやや小型で、
たくましい骨格を持っていました。

2011年に慶大の佐藤孝雄教授(動物考古学)を中心に
最新の分析手法で調べ直したところ、
放射性炭素による年代測定で7400~7200年前(縄文時代早期末~前期初頭)と
判明し、改めて最古と確認されました。

 犬の生活状態を示すものとしてあごの骨や歯に着目したところ、
2匹とも臼歯(きゅうし)の一部が生前に失われ、
あごの骨の歯槽(歯の根が入る穴)は塞がっていました。
残った歯も内部の象牙質が露出し、酷使されていました。

骨が含む窒素や炭素の分析で食性を分析したところ、
近くで出土した人骨同様に肉食性が高いことが判明しました。


 佐藤教授は「犬がイノシシなどにかみついて足止めし、
人間が仕留める分担で猟が行われ、犬は歯を失った。
危険を共にした犬には情も移ったはずで、肉を与え、
猟に出られなくなっても大切に飼い続けて葬ったのではないか」と推測しました。】


縄文時代、少なくとも、
愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)の
「上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡」
では、人も犬も肉食性が高いことがわかったのは、
糖質制限食推進派の私としては、大変喜ばしいことです。
久万高原町は愛媛県の中央部ですから、内陸で海には面していません。
犬と人間が信頼関係で結ばれていて、犬も埋葬されるくら大切にされていたことは
とても嬉しい限りです。

他の日本列島の一般的な縄文遺跡では、
木の実などが主食のことが多かったと思いますが、
上黒岩岩陰(かみくろいわいわかげ)遺跡では、
野生動物が豊富に獲れたのでしょう。
勿論、木の実も食べているでしょうが、
肉があればそれを優先的に食べたのでしょう。

旧石器時代は氷期で寒くて陸の水は凍り付き、
海位は約160m下がり日本列島は大陸と陸続きでした。
そのため大陸からマンモスやナウマン象といった
大型動物が南下してきたものを狩猟していました。
津軽海峡だけは、非常に深いので、海位が160m下がっても
陸続きにはなりませんでした。
従って、マンモスは北海道までは南下してきましたが
本州に渡ることはできなかったのです。

氷期が終わり暖かくなり、氷河が溶けて海位が上昇して、日本列島は島国となり
縄文時代(約1万6千年前~)が始まります。

その結果、ナウマン象などの大型動物が大陸から来なくなり、
シカ・イノシシ・うさぎ・タヌキ・オオカミ・ツキノワグマ・ムササビなどの小型の動物を狩って生活するようになります。
こうみると現代の食生活以上に豊富なジビエ食材ですね。 (^^)

また、暖かくなって木の実や果物などもとれるようになり、
他にも魚や貝、きのこなども食べられていて、食生活が豊かになります。

旧石器時代は大型の動物を追いかけて移動生活をしていましたが、
縄文時代は食生活が豊かになったことで家を作って、定住生活が始まります。

縄文時代は食料を保存することがなかったため、
貧富の差が少なく、みんなで食料を分け合っていたと考えられています。
縄文時代は戦争もなかったと思われます。

地方によって若干の違いはありますが、
多くは栗やクルミ、ドングリなどを主食としていました。
これら木の実をすりつぶして水で練ってクッキーのように焼いて食べていたようで、
縄文クッキーと呼ばれています。
また、木の実の多くはアクが強かったため、
熱湯でアクをとるなどの工夫もされていたようです。


江部康二
空腹時血糖値:96mg/dl。 .HbA1c:6.2.%。食後高血糖?
【22/05/15 ぱくぱく 糖尿病が怖い
私は糖尿病予備軍でしょうか。
糖質制限に出会ったのは7年前。出来るだけ糖質は避けていますが、
年々糖代謝が悪くなってきています。
この頃歯茎も、下がって来てしまい、不安です。
57歳 女 155cm 50キロ 血圧103/ 63
空腹時血糖値-96 .HbA1c-6.2
総コレストロール-234.HDL-76.LDL-149 中性脂肪62 】


こんにちは。
ぱくぱく さんから、『糖尿病が怖い』とのコメントを頂きました。

57歳 女性 155cm 50キロ BMI:20.8 血圧103/ 63
血圧は良好で、肥満もないですね。

空腹時血糖値:96mg/dl。
HbA1c:6.2%


空腹時血糖値は、しっかり正常値内ですが、
HbA1cが糖尿病予備軍のレベルです。

HbA1c
正常値:5.9%以下
糖尿病予備軍:6.0%~6.4%
糖尿病の可能性が高い:6.5%~
出典:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
※厚労省「特定健診・保健指導について」資料


推定平均血糖値 = <28.7 × HbA1c>  - 46.7

ぱくぱく さんのHbA1cは6.2%なので
推定平均血糖値は131.2mg/dlです。
そうすると、空腹時血糖値は96mg/dlなので、
食後血糖値は、160mg/dlを超えている可能性が高いです。
国際糖尿病連合は、糖尿病合併症予防のためには
食後1時間値も2時間値も160mg/dl未満を推奨しています。
ぱくぱくさんは、これを超えている可能性があるので、
糖質制限食を実践されるのが良いと思います。

まずはスーパー糖質制限食を1ヶ月実践して
HbA1cを測定しましょう。
1回の食事の糖質量が15gくらいのスーパー糖質制限食なら
食後の血糖値は、140mg/dlくらいまでにおさまります。
そうするとHbA1cも5.9%以下くらいになると思います。


この頃歯茎も、下がって来てしまい、不安です。


歯周病があると歯肉も下がってくると思います。
糖質制限食なら歯周病菌の餌となる糖質が細小量なので
歯周病も改善し、歯茎の下りも改善が期待できます。


江部康二
飲酒とがん
こんにちは。

今回は、飲酒とがん全体の発生率について、考えてみます。

私は、タバコは吸いませんが、お酒はそこそこ飲むので、
おおいに気になるところです。

結論としては、喫煙がなければ、
飲酒量が増えても、がんの発生率は不変
ということです。

タバコを吸わない酒飲みには、とても嬉しいお話しですね。 (^_^)


以下、
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html
飲酒とがん全体の発生率との関係について
から、要約してみました。

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、アンケート調査。
そのうち、40~59歳の男女約73,000人について、
その後平成13年(2001年)まで追跡した調査結果に基づいて、
飲酒とがん全体の発生率との関係について調べた結果を、
論文発表。(British Journal of Cancer 2005年92巻182-187ページ)。


お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい

調査開始時の飲酒の程度により6つのグループに分けて、
その後のがん全体の発生率を比較。
調査開始から約10年間の追跡期間中に、
調査対象者約73,000人のうち約3,500人が何らかのがんに罹患。

男性では、
たまに飲む人の間で癌を発症するリスクが最も低く、
アルコール(エタノール)摂取量の増加と線形の正の関連が認められました。
何故か、飲まない人よりたまに飲む人のほうがリスクが低いです。

飲まない人:1.1
たまに飲む人:1.0
週1〜149 gの人:1.18
週150〜299 gの人:1.17
週300gの人:1.43
週450g以上の人:1.61


たまに飲酒しているグループと比べると、
男性では、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループは、
がん全体の発生率は1.18。
一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループは、
がん全体の発生率が1.43倍、
1日平均3合以上のグループは、1.61倍。
(日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯。)

女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、
はっきりした傾向がみられませんでした。


飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる

この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、
たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は不変。
ところが、たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、
がんの発生率が高くなり
、ときどき飲むグループと比べて、
1日平均2-3合以上のグループでは1.9倍、
1日平均3合以上のグループでは2.3倍がん全体の発生率が増加。

このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、
喫煙によって助長されることがわかります。

もちろん、口唇・口腔・咽頭・食道・肝・喉頭(注)など、
飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、
喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなりますが、
喫煙が重なることにより、さらに発生率が高くなるという結果になりました。


飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか
お酒に含まれているエタノールは分解されてアセトアルデヒドになるが、
これががんの発生にかかわると考えられています。
そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、
たばこの煙の中に含まれる発がん物質を
同時に活性化してしまっているとも考えられています。


やはり多量飲酒はよくない

この研究からは、何らかのがんになりにくくするには、
日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいと言えます。

しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、
最近増加している糖尿病や大腸がんなら、
一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。

いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、
お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいと言えます。



(注)
食道癌に関しては、上述のように、
喫煙なしで飲酒単独だと、リスクとなりません。



江部康二

酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし。
こんにちは。
今回は、アルコールと食道ガンのお話しです。
糖質セイゲニストには酒飲みが多いので、耳寄りな情報かもしれませんね。

日本人に多いのですが、遺伝的に、お酒を呑むとすぐに赤くなる体質があります。
そしてこの体質の場合はアルコールを呑むと食道ガンになりやすいというのが定説です。
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解する酵素が
2型アセトアルデヒド分解酵素(ALDH2)で、この酵素の働きが弱いと
少しのお酒で赤くなってしまうのです。
アセトアルデヒドのヒトへの発ガン性は2010年に、WHOがしっかり認定しています。

実はかくいう私も、お酒を呑むとすぐに赤くなるタイプです。( ̄_ ̄|||)
まあ鍛えられたのか、かなりの量は呑めるようにはなっています。(^^)  

この鍛えて呑めるようになったというのが曲者で、
本来、アセトアルデヒド分解酵素が弱くて、
お酒など呑まない方が良いに決まっている体質なのに
ついつい呑んでしまうわけです。

結局、アセトアルデヒド分解酵素が弱いにもかかわらず、
お酒をたくさん呑む人達が日本人の食道がんの患者さんの約70%を占めているのですから、ご用心、ご用心。(=_=;)

ところが、『捨てる神あれば拾う神あり』です。
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
という結論の信頼度の高い論文を発見したのです。(☆)
しかも、欧米人でなくて、日本人のデータですから、『鬼に金棒』です。

(☆)
国立がん研究センター
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html
飲酒と食道がんの発生率との関係について
-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-


この研究によれば、
「お酒で顔が赤くなる体質でもならない体質でも、
飲酒による食道がんリスクへの影響は見られませんでした。
ただし、喫煙指数20以上のヘビースモーカーでは影響が現れ
1日当たり2合以上の大量飲酒グループで顔が赤くなる体質の食道がんのリスクが、
2合未満で顔が赤くならない体質に比べ3.4倍高くなっていました。」

げにタバコの害、恐るべしです。
喫煙の量を示す国際的な指標として、喫煙指数 Pack-yearsがあります。
Pack years=(1日の喫煙本数/20本)×喫煙年数という計算法です。
すなわち「1日のタバコの箱数×年数」という意味です。

1日1箱のタバコを20年間吸ったら、喫煙指数が20になります。
私は、タバコを吸ったことがないので、喫煙指数は20未満というかゼロです。
ということは、結構お酒を呑んでいるけれど(1日当たり2合以上、(-_-;) )、
食道がんリスクはないという誠に有り難いご宣託ではありませんか。

なお、今日のお話はあくまでも『食道がん』にしぼったお話しですので誤解のないように御願いします。

アルコールは食道がん以外にも
他のがんなどのリスクとなることも努々お忘れ無く。

それから、適量のアルコールという基本もあることをお忘れなく。
あとは自己管理、自己責任でよろしくお願い申し上げます。  m(_ _)m

<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。

米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml

に相当します。

<アルコールのリスク>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。

それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。

その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。


江部康二


芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?
こんにちは。
少し前ですが、2018年6月20日、日経グッディに、
【芋焼酎と日本酒、ビール、食後の血糖値上昇が低いのはどれか?】
http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100015/051500045/

というとても興味深い記事が掲載されました。
yanosonoさんから、情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。

早速、日経グッデイの当該の記事を読んでみました。
以下は、記事の要約、抜粋と感想です。

まずは、ちょっとビックリなのですが、

「鹿児島大学は全国唯一の“焼酎学講座”が開設された大学で、焼酎についての研究も盛んに行われています。
そして、私が糖尿病、肥満などを専門としていたことから、芋焼酎の健康面での機能性に注目しました。
特に糖代謝にいい影響があるのではないかと考えたわけです。
鹿児島は何を食べてもおいしいので、つい食べ過ぎてしまいます。
さらに、車社会で慢性的に運動不足になりがちなので、実は肥満の方が多いのです」


という、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 特任教授の乾明夫さんのコメントです。
さすが鹿児島というか、焼酎に特化して学術的に研究というのは、
衝撃的ですし、そりゃー日本全国で唯一というのも納得です。

今回の実験の被験者は30~50代の男女6人で、「郷土の宝」である芋焼酎のため、
鹿児島大学のスタッフが被験者となったそうです。
その心意気やよしであり、good job です。

芋焼酎との比較対象は、水、ビール、日本酒の3種です。
飲酒量は、芋焼酎(アルコール度数15%)は333mL、
ビール(同5%)は1000 mL、日本酒(同15%)は333mLで、
純アルコール量はいずれも約40gと同等になるように調整です。

水も比較対象になっているのが興味深いです。
おそらく約710kcalの同一の食事を摂取しての実験です。

食事摂取後の血糖値の上昇は、
ビールが最も高く、次に水、日本酒で、
芋焼酎が最も低値でした。

芋焼酎は、糖質・カロリーともにゼロの“水”より、
血糖値の上昇が抑えられていました。

つまり、芋焼酎には積極的に血糖値を下げる
何らかの成分が存在することとなります。

もっとも、ビールには結構大量の糖質が含まれています。
100g中に3gくらいの糖質ですから、1000mlなら約30gの糖質でこれは多いですね。
第2位の水は糖質ゼロ・カロリーゼロですから、
このときの血糖値の上昇は、710kcalの食事に含まれる糖質によるものです。

第3位の日本酒ですが、333ml中の糖質含有量は、約13gですが、
それでも水より少し食後血糖値の上昇が低いので
日本酒にも、何らかの血糖値を下げる物質が含まれていることとなります。

そして最後に焼酎は、水よりかなり明確に食後血糖値の上昇が少ないですが、
これには焼酎の糖質含有量がゼロということも関係していると思います。

結局、日本酒と芋焼酎が、水より食後血糖値の上昇を抑制しましたが
効果としては芋焼酎の圧勝です。

結論です。
①日本酒と芋焼酎と水の結果を考慮すれば、
 アルコールそのものに血糖上昇抑制作用がある可能性が高い。
②芋焼酎には血糖上昇抑制作用があるが、それが、アルコール以外の成分も関与しているかは 現時点ではわからない。


ということとなります。
エチルアルコール単独で40g摂取して、芋焼酎(アルコール40g)摂取と比較して頂ければ
芋焼酎にアルコール以外の血糖上昇抑制成分があるかどうかがわかると思います。
乾明夫先生、是非よろしくお願い申し上げます。


江部康二

「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」と糖質制限食
こんにちは。
「妊娠糖尿病」に関して、よく質問があります。

今回は
「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」

『糖質制限食』『従来の糖尿病食』について、考えてみました。

日本糖尿病・妊娠学会
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/information/024273.php
のサイトと

科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013

を参考にしました。

<診断基準>
1)妊娠糖尿病
糖尿病ではなかった人が、
妊娠後初めて妊娠糖尿病の基準をみたした場合は「妊娠糖尿病」です。
妊娠糖尿病は、糖尿病にいたっていない糖代謝異常であり、
妊娠時に診断された明らかな糖尿病は含まれません。
妊娠糖尿病は75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)によって診断されます。

負荷前値が92mg/dl以上、
1時間値180mg/dl以上、
2時間値153mg/dl以上、

のいずれかがあれば、
妊娠糖尿病(GDM)と診断されます。

妊婦さんの7〜9%は妊娠糖尿病と診断されます。
特に肥満がある人、糖尿病の家族歴のある人、
高齢妊娠、巨大児出産既往のある人などは
ハイリスクですので必ず検査をうけましょう。


2)妊娠中の明らかな糖尿病 (註1)
以下のいずれかを満たした場合に診断する。

空腹時血糖値 ≧126 mg/dl
HbA1c値 ≧6.5%


*随時血糖値≧200 mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200 mg/dlの場合は、
妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、
1)または2)の基準を満たすかどうか確認します。(註2)


3)糖尿病合併妊娠

妊娠前にすでに診断されている糖尿病患者の妊娠。
確実な糖尿病網膜症があるものの妊娠。
妊娠前のHbA1c:7.0未満が目標です。

(註1).妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、
妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、
および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれる。
いずれも分娩後は診断の再確認が必要である。

(註2).妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して
糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示す。
そのため、随時血糖値や75gOGTT負荷後血糖値は
非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめることはできない。


<妊娠中の血糖値コントロール目標>

朝食前血糖値:70~100mg/dl未満
食後2時間血糖値:120mg/dl未満
GA(グリコアルブミン)15.8%未満


妊娠中の血糖値コントロール目標は
「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」
の3つとも上記となります。
できれば、食後1時間血糖値:140mg/dl未満もクリアすることが望ましいです。

HbA1c6.2%未満も目標なのですが、
妊婦で鉄欠乏状態があると、HbA1cは正確な数値を示さないので、
GA(グリコアルブミン)の方が頼りになるのです。


<妊婦の高血糖によるリスクと弊害>


高血糖による母体、胎児への合併症として

【胎児への影響】
・流産、奇形、巨大児、未熟児、低血糖児、心臓病、胎児死亡 など

【母体への影響】
・糖尿病腎症の悪化、糖尿病網膜症の悪化
・早産、
・尿路感染症
・妊娠高血圧症候群、羊水過多
・赤ちゃんが巨大児になることにより、難産になったり、帝王切開になるリスクの増加などがあります。

高血糖により、これだけのリスクが母体と胎児に生じます。


<従来の糖尿病食(高糖質食)の欠陥>
そして、直接高血糖を生じるのは、糖質摂取時だけであり、
タンパク質・脂質摂取時は、血糖値が直接上昇することはありません。
従って日本糖尿病学会推奨の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)で
食後高血糖を防ぐことは、インスリン注射をしていても至難の業です。

さらに、食後高血糖を防ごうとして、インスリンの量を増やせば、
今度は母体は低血糖のリスクが大きく増加します。

そして、普通に糖質を摂取して、インスリン注射で厳格にコントロールしようとすると、一日の血糖値の変動幅が、増大します。

食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が一番大きな酸化ストレスリスクとなります。(*)

酸化ストレスは、母体にも胎児にも当然、悪影響を及ぼします。

「妊娠糖尿病」「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」で、
糖質を普通に食べてインスリン注射を打っている場合は、
上記のリスクは常にあるわけです。

糖尿病妊娠で糖質を普通に食べてインスリンを注射して、
無事出産されている方も多いと思いますが、このように見てくると、
それはある意味運が良い人と言えるのかもしれません。

(*)
酸化ストレスに関しては、
2014年07月14日 (月)の本ブログ記事
酸化ストレス・・・て何?食後高血糖と平均血糖変動幅増大がリスク!
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3030.html
をご参照いただけば幸いです。


<スーパー糖質制限食の利点>
スーパー糖質制限食に切り替えると、
「妊娠糖尿病」ならインスリンフリーになり、
血糖コントロールが一日を通して、とても良好となります。
そして、食後高血糖、低血糖、
平均血糖変動幅増大、酸化ストレス増大といった母体と胎児に悪影響を及ぼす要因が、
全てなくなります。

「妊娠中の明らかな糖尿病」「糖尿病合併妊娠」の場合も、
食前インスリンの単位は1/3以下になりますし、
フリーになることもあります。
インスリンフリーが一番良いのですが、インスリンの量が減ったなら
低血糖のリスクは確実に減るので好ましいのです。

また妊婦体重コントロールも、糖質制限食なら、ほとんど苦労はいりません。
その結果、安産で、元気な赤ちゃん誕生の可能性がとても高いということとなります。


<βヒドロキシ酪酸(ケトン体)の安全性

2014年1月12日(日)第17回日本病態栄養学会年次学術集会(大阪国際会議場)で、宗田哲男先生が、画期的な研究成果を発表されました。
人工流産胎児(58検体)の絨毛の組織間液のβヒドロキシ酪酸値の測定です。
何と平均1730μmol/Lとかなりの高値です。
成人の基準値は76~85μmol/L以下くらいなのですが、胎児の絨毛間液においては、
1730μmol/L程度が基準値ということになります。
糖質を普通に摂取している成人の基準値の、約20~30倍です。

その後、宗田先生はさらに研究を積み重ねられて、2016年
胎盤・臍帯・新生児のケトン体値に関する研究を英文で発表されました。(☆)
胎児、新生児は、ケトン体を主たるエネルギー源として利用している可能性が高いことを示唆する、画期的な研究です。
胎盤・臍帯のケトン体値論文は、世界初と思われますが、私もも共著者の一人です。
胎盤のケトン体値は基準値の20~30倍、 平均2235.0μmol/L(60検体)
臍帯のケトン体値は基準値の数倍~10倍、平均779.2μmol/L(60検体)
新生児のケトン体値は、基準値の3倍~数倍、
平均240.4μmol/L(312例、生後4日)  基準値は85 μmol/L以下。
胎盤と臍帯と新生児では、ケトン体は高値が当たり前であることが
確認できて、ケトン体の安全性の担保となりました。
このように、胎盤、新生児のケトン体の基準値は、
現行の基準値よりはるかに高値であることが確認されたわけですから、
妊婦のケトン体が少々高値でも胎児へ悪影響などあるはずもないのです。
スーパー糖質制限食で、妊婦のケトン体が、一般的基準値より高値になりますが、
妊婦においても、胎児においても、
ケトン体の安全性(基準値より高値でも)が確認されたと言えます。

(☆)Ketone body elevation in placenta, umbilical cord,newborn and mother in normal delivery  Glycative Stress Research 2016; 3 (3): 133-140
Tetsuo Muneta 1), Eri Kawaguchi 1), Yasushi Nagai 2), Momoyo Matsumoto 2), Koji Ebe 3),Hiroko Watanabe 4), Hiroshi Bando 5)


江部康二
西洋医学と東洋医学。漢方医、西洋医、そして食医。
 こんにちは。
私は、漢方医かつ西洋医で、東洋医学にも西洋医学にも共に携わっています。
また糖質制限食を推進する「食医」でもあります。

 日本で本格的に東洋医学(当時の中国で主流の医学)が隆盛となったのは、
室町・戦国時代の医師田代三喜以後とされていますが、
彼は明にわたり、当時明で盛んであった李東垣と朱丹渓の医学を学び、日本に伝えました。
即ち李朱医学とよばれています。

 その弟子の曲直瀬道三に到り、
李朱医学は日本流に完成され隆盛となっています。
この医学は傷寒論の時代(後漢末期~三国時代)に比べれば、
後世の医学ということで後世方(中国では時方)と呼ばれるようになりました。

 一方後世派の隆盛に対して、その漢方理論が思弁的であるとの批判をかかげ、
傷寒論の原点にかえれとする一派が台頭してきます。
傷寒論を唯一無二の聖典とするわけで、
李朱医学に比べれば古(いにしえ)の医学ということで、
古方(中国では経方)と呼ばれるようになりました。
この一派には江戸時代前期の医師、名古屋玄医を始めとして、
吉益東洞、尾台榕堂などがいます。
特に吉益東洞は後世に与えた影響が大きいとされています。

 又、両者を共に取り入れた折衷派と呼ばれる一派もあり
多紀元簡、浅田宗伯などがいます。

 江戸時代後期にオランダ医学が紹介されると、
それまでの医学と新しい医学とを区別する必要が生じました。
そのためオランダ医学を「蘭方」(らんぽう)と呼び、
それまでの治療法を「漢方」と呼ぶようになりました。

 現代中国での伝統医学は「中医学」と呼ばれ、
日本の伝統的「漢方」とは、異なる体系です。
高雄病院では中医学も漢方も両方、取り入れています。

 なお日本では、明治維新後、
1883年の医師免許規則配布により、西洋医だけを医師として認め、
漢方医は医師の資格として認められなくなりました。
しかし西洋医のなかで志をもって漢方を学ぶ医師により、
漢方は現代まで綿々と続いています。

 漢方も西洋医学も、患者さんが健康を取り戻すのを援助します。
それぞれに得意分野があるので、
どちらか一方が優れていて他方が劣っているということではなく、
役割分担で相補的に対応するのがよいと思います。

 これは、食事療法運動療法についても同じことがいえます。
もし、食事療法だけで健康を保てるのなら楽ですし、
食事に運動を加えてバランスの良い健康な生活が出来るのなら、
薬の世話にならずに済むわけです。
現実に糖質制限食の実践で様々な生活習慣病が改善します。

 食事と運動でどうにもならなければ、その次に漢方薬を使うことを考えます。
バランスが少し崩れていただけの人ならば、漢方だけで健康な状態に戻れます。
しかし、西洋医学も必要です。
例えば、手術が必要な病気の人は漢方ではどうにもなりません。
漢方でどうにかしようなどと無理をいわず、さっさと手術すれば良いのです。

 西洋医学は原因がはっきりしている病気はとても得意としています。
たとえば近年、一旦激減した梅毒が、再び大流行しています。
患者層は、若い女性が非常に多いのが特徴です。
梅毒は梅毒トレポネーマという菌が感染して発病することがわかって、
ペニシリンなどの抗生物質が特効薬として開発され
簡単に治るようになりましたので、速やかに治療して欲しいと思います。

 梅毒は江戸・明治時代までは原因がわからず、
当時の漢方医にとって不治の病だったのですから、西洋医学、たいしたものです。
 このように「一つの病気に対して一つの原因があり、
対応する特効的治療がある。」
というパターンは、
西洋医学が最も得意とするところです。

 ところが今、平成・令和の世の病気をみてみると、
原因がはっきりしない病気が多くを占めています。
言い換えれば西洋医学的には対症療法が主で、
特効的な治療法がない病気がおりのように溜まって残ってきたと言えます。
 
 高雄病院には西洋医学単独では難治の様々な現代病の漢方治療を求めて、
たくさんの患者さんがやってこられます。
膠原病や難病でステロイド薬減量を目的として、来院される患者さんもあります。
常勤医師すべてが漢方治療を実践しているユニークな病院ですが、
もちろん必要な場合は西洋医学的治療も行います。

 外来には潰瘍性大腸炎などの難病、気管支喘息など呼吸器疾患、リウマチなど膠原病、過敏性腸など消化器疾患、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患、
不妊症など婦人科疾患、高血圧など循環器疾患、糖尿病など代謝疾患、
ネフローゼ症候群など腎疾患・・・。
 そのほかにも、風邪をひきやすい、冷え性、なんやしんどい、微熱など、
西洋医学的には診断がつかないような訴えの人もこられます。

 このように漢方医は小児、成人、老人含めて実に多種多様な病気を診ます。
漢方的診察により、人体の気血の流れや五臓六腑のバランスをチェックして、
それを整えるような薬を処方します。
ですから原因不明の病気にもそれなりに対処できます。
しかし漢方治療も決して万能ではなく、
西洋医学の知識が必要なことが多々あります。

 西洋医学と東洋医学を上手に両立させて、
少しでも患者さんの症状が楽になればいいなと思っています。
また潰瘍性大腸炎のような難病に、
糖質制限食を併用すると顕著な効果がある場合が多いことも
判明してきましたので、こちらもさらに勉強を重ねたいと思います。

 糖尿病は勿論のこと、ニキビ、喘息、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、膠原病、
婦人科疾患、高血圧、メタボ、肥満、花粉症、逆流性食道炎、片頭痛、歯周病、機能性低血糖症など様々な「生活習慣病」の改善と予防にも糖質制限食
有効なことが多いです。
 あと、AGEs蓄積が主たる発症要因の一つである「認知症」の予防と改善においても糖質制限食の療効果が期待できます。


江部康二
インスリンと脳。筋肉のインスリン抵抗性と脳のインスリン抵抗性。
こんにちは。
今回は、インスリンと脳について、考察してみます。
その前に、まずは、知識整理をしておきましょう。


糖尿病診療において、「インスリン抵抗性」が、問題となることがあります。
すなわち、糖尿病は<インスリン分泌不足+インスリン抵抗性>という
二つが合わさって、インスリン作用不足となり、発症するからです。
ここで言うインスリン抵抗性とは「筋肉のインスリン抵抗性」 のことです。

日常臨床で、例えば肥満などで「筋肉のインスリン抵抗性」があると、
インスリン作用を確保するために、
膵臓のβ細胞が大量のインスリンを分泌して辻褄を合わせます。
インスリンは肥満ホルモンなので、さらに肥満してしまい
インスリン抵抗性の悪循環となり、さらにインスリン分泌も増加します。

そうすると分泌された大量のインスリンに対して
インスリン分解酵素が、目一杯働く必要があります。
実はインスリン分解酵素は、
アミロイドβ蛋白というアルツハーマー病の元凶を分解する役目も有しています。

従って、インスリンが大量に分泌されている人は、
インスリン分解酵素が不足気味となるので
結果としてアミロイドβ蛋白が蓄積しやすく、
アルツハイマー病を発症しやすくなります。

有名な久山町の研究で、白米を沢山食べる人ほど、
アルツハイマー病になりやすいことが分かっていますが、
白米摂取でインスリンが多量に分泌されたためと思われます。

さらに、ロッテルダム研究により、
糖尿病でインスリン注射をしている高齢者は、
糖尿病でない高齢者に比して、
4.3倍アルツハイマー病になりやすいと報告されています。

つまり、過剰のインスリンが、体内で産生されようと
体外から注射で打たれようと、脳に良くないことは間違いないのです。


一方、適切な量のインスリンが分泌されなければ、人は生命を維持できません。
スーパー糖質制限食の場合は、
必要最小限の適切なインスリン分泌で健康を維持できます。

インスリンは膵臓のβ細胞で、製造・分泌されますが、
実は、脳の海馬でもインスリンが製造・分泌されていることが
近年の研究で明らかとなりました。(☆)

脳のインスリンは記憶力を高める作用があります。
膵臓で作られたインスリンも、脳の海馬で作用しますが、
インスリン抵抗性がなければ、少量のインスリンで十分なのです。

インスリンが脳内で適切に作用するには、情報伝達リレーが必要ですが、
糖尿病やアルツハイマー病の脳では、
このリレーが上手くいかなくて「脳のインスリン抵抗性」を生じやすいのです。

全身性の「筋肉のインスリン抵抗性」と脳局所の「脳のインスリン抵抗性」とは
異なるメカニズムで生じると考えられます。


(☆)アルツハイマー病は「脳の糖尿病」 2017年
   講談社 鬼頭昭三、新郷明子 著
   115ページ



人体の臓器や細胞のエネルギー源。小腸と大腸は特殊。
こんにちは。

人体のエネルギー源として
A)脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム
B)ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム

があります。
人体のほとんどの細胞が、A)B)をエネルギー源として使用しています。

A)脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム
体内の脂肪組織の中性脂肪は、分解されて脂肪酸とグリセロールになります。
脂肪酸は脳と赤血球以外の人体組織のエネルギー源となります。
ケトン体は肝細胞内で、
「脂肪酸→β酸化→アセチルCoA→ケトン体」
という順番で誰においても日常的に生成されていて肝臓では使用されずに、
他の臓器、脳や筋肉のエネルギー源として供給されます。
これは、最も効率のよいエネルギー源であるケトン体を、
自らは使用せずに他の臓器に優先的に回すという趣旨です。
脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムは、安静時や空腹時や睡眠時は、人体の主たるエネルギーシステムです。


B)ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム
ブドウ糖は、筋肉と肝臓にグリコ-ゲンとして蓄えられています。
通常成人男子では90~150gが肝臓に肝グリコーゲンとして貯蔵されていて、
100~400gのグリコーゲンが筋肉内に存在します。
筋肉中のグリコーゲンは筋肉細胞のエネルギー源となりますが、血糖にはなりません。
糖質摂取後最初の3~4時間は消化管から吸収されたブドウ糖が身体のエネルギー源となり、
その後余った血糖は肝・筋・脂肪組織にグリコーゲンや中性脂肪として蓄えられます。
肝臓のグリコーゲンは、食後3~4時間くらいが経過したら、血糖確保のために使用されます。
さらに食後数時間が経過すると、肝臓では糖新生をして、血糖を正常値に維持します。
ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステムは、本来は緊急時(逃走・闘争など)の手っ取り早いエネルギー源です。
あとは、30分以上歩いて、筋肉の収縮が維持されると、GLUT4が細胞表面にトランスロケーションして、
インスリン非依存的に筋肉細胞が血糖を取り込みます。
糖質を摂取してインスリンが分泌されると、筋肉細胞や脂肪細胞のGLUT4が細胞表面にトランスロケーションして
血糖を取り込みます。



A)B)以外の例外のエネルギー源として、グルタミンと短鎖脂肪酸があります。

C)グルタミン

小腸はグルタミンが主たるエネルギー源です。
グルタミンが50~60%、ケトン体が15~20%、ブドウ糖は5~7%とごく少ないです。
グルタミンは血中に最も多く含まれている遊離アミノ酸です。
小腸がグルタミンを主たるエネルギー源にしているのは、食べものを消化吸収したとき、
ブドウ糖や脂肪酸などは他の臓器に優先的に供給するためと思われます。

D)短鎖脂肪酸
大腸は、短鎖脂肪酸しか、エネルギー源として使いません。
大腸は腸内細菌が、食物繊維を分解して作った短鎖脂肪酸をエネルギー源として利用しています。
また体内で産生された短鎖脂肪酸もエネルギー源とします。



さて、A)B)がエネルギー源となっているほとんどの細胞について整理してみます。

キーワードは、ミトコンドリアです。

ミトコンドリアは細胞内にあるエネルギー生産装置です。
赤血球以外の全ての臓器や組織は細胞内にミトコンドリアを持っています。

ミトコンドリアがあると、TCAサイクルを回して、脂肪酸やケトン体をエネルギー源として利用することができるのです。
血液脳関門は、脳細胞の周囲にあり、脳細胞を物理的かつ化学的に守っています。
アストロサイトは血液脳関門の構成要素であり、血管内皮と共に血液脳関門を形成しています。

1)赤血球
 ミトコンドリアを持っていないので、「ブドウ糖」しかエネルギー源として利用できません。
 人体でミトコンドリアを持っていないのは、赤血球だけです。

2)脳
①ブドウ糖、脂肪酸、ケトン体は血液脳関門を通過する。
②脂肪酸はアストロサイトではミトコンドリア内でβ酸化されてエネルギー源となる。
③脂肪酸は神経細胞では細胞膜の原料となりエネルギー源としては使われない。

 従って、脳は「ブドウ糖+ケトン体」をエネルギー源として、利用します。

3)筋肉・内臓・脂肪など、ほとんどの肝外体組織

 ミトコンドリアを細胞内に有しているので、
「ブドウ糖+ケトン体+脂肪酸」をエネルギー源として 利用します。
興味深いのは、
主たるエネルギー源はケトン体と脂肪酸でありブドウ糖ではないことです。

「ハーパー・生化学」(原著27版)の訳本、155ぺージ・図16-9の説明に、
「心臓のような肝外組織では代謝エネルギー源は次の順に好まれて酸化される。
(1)ケトン体.(2)脂肪酸.(3)グルコース」

との記載があります。


4)肝臓
 肝細胞のなかで、ケトン体が生成されますが、肝細胞自らはケトン体を利用せず、
血中に送り込んで他の 組織に供給します。
 従って肝細胞は 「ブドウ糖+脂肪酸」をエネルギー源として利用します。


江部康二
菓子職人。5月は新発売の「オレンジとホワイトチョコレートのケーキ」。
こんにちは。

2022年5月、菓子職人マンスリーケーキは
「オレンジとホワイトチョコレートのケーキ」
です。

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商品ページはこちら

100gあたり 
エリスリトールを除く糖質 3.99g 
カロリー 220kcal

ノンシュガーホワイトチョコ、発酵バター、生クリームを使い、濃厚で口溶けのよいクリームと爽やかなオレンジのジュレに、生クリームたっぷりの軽いオレンジのムースがバランスよく組み立てられたこの季節にぴったりの優しい味わいです。

monthly3.jpg

5月6日(金)
16:30 血糖値:105mg
「オレンジとホワイトチョコレートのケーキ」100g、1個摂取
17:30 血糖値:117mg


12mg上昇で、3mgで割って、4gの糖質で想定内です。

とても美味しく頂きました。

甘いけれどサッパリしていて、食べやすいです。

血糖測定人体実験のためとはいえ、いつも糖質制限OKなケーキを、一番早く味わうことができて、
ささやかながら幸せをかみしめています。

菓子職人さん、ありがとうございます。

読者の皆さんも、是非、ご賞味あれ。


江部康二
人体のエネルギー源、「脂肪酸-ケトン体」「ブドウ糖-グリコーゲン」
こんにちは。
今回は、人体のエネルギー源について考察してみます。
 
まず、知っておきたい重要なことは、
全ての人類において、糖質摂取の有無にかかわらず、
空腹時や睡眠時は、「脂肪酸-ケトン体」が主要なエネルギー源であるということです。
 
つまり、「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステムは、特殊なものではなく
全人類で日常的に利用されているエネルギーシステムなのです。
 
繰り返しますが、
普通にパンやご飯を食べている人においても(糖質カットしていなくても)
空腹時や睡眠時は「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステム
が主たるエネルギーシステムとして働いているのです。
糖質を摂取している場合は、食事開始から2時間までは
食事由来の糖質をエネルギー源として利用し
その後肝臓のグリコーゲン分解で血糖値を維持し、
数時間後(空腹時)には、肝臓の糖新生で血糖値を維持するようになります。
この数時間後(空腹時)には、前述の如く
「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステムが身体の主たるエネルギーシステムとなります。
 
糖質制限食の場合は、食事を開始したあとも、血糖値の上昇が最小限なので
「脂肪酸-ケトン体」エネルギーシステムが稼働しています。
つまり、ステーキを食べている最中にも脂肪が燃えています。
それで、糖質セイゲニストは減量しやすいのです。
 
さて、人体のエネルギー源のお話しを続けます。
細胞が生きていくには、エネルギー源が必要です。
今日のお話しは基本的に論争の余地のない、生理学的事実が中心です。
少し面倒くさいですが、この人体のエネルギーシステムのことがあるていどわかったら、
糖質制限食のことも含めて、常識の壁を越えるきっかけとなると思います。
糖新生のことも説明したいと思います。


人体にはエネルギー源として、

1)「脂肪酸-ケトン体のシステム」


と、

2)「ブドウ糖-グリコーゲンのシステム」

があります。

<人体のエネルギー源Ⅰ:脂肪酸-ケトン体システム>

①脳はケトン体(脂肪酸の代謝産物)をいつでも利用できる。
②心筋・骨格筋など多くの体細胞は日常生活では脂肪酸-ケトン体が主エネルギー源であり、人体を自動車に例えるならガソリンの代わりは脂質である。
③赤血球を除く全ての細胞はミトコンドリアを持っているので、脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムを利用できる。
④糖質制限食実践中や絶食中の血中ケトン体上昇は、インスリン作用が保たれており生理的なもので病的ではない。農耕開始前の人類は皆そうであった。
⑤備蓄の体脂肪は大量にあるエネルギー源で、体重50kg、体脂肪率20%の成人なら
 10kgで90000キロカロリーあり、水だけで2ヶ月生存できる。
⑥肝臓はケトン体を、脂肪酸から生成するが、自分では利用せずに、他の組織に供給する。



<人体のエネルギー源Ⅱ:ブドウ糖-グリコーゲンシステム>


①人体で赤血球だけはミトコンドリアがないのでブドウ糖しか利用できない。
②日常生活でブドウ糖を主エネルギー源として利用しているのは赤血球・脳・網膜など。
③ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステムの本質は
 「常に赤血球の、唯一のエネルギー源」
 「筋肉が収縮したときのエネルギー源」→緊急時のターボエンジン
 「血糖値が上昇しインスリンが追加分泌された時、筋肉・脂肪細胞のエネルギー源」
 「日常生活では脳・網膜・生殖腺胚上皮など特殊部位の主エネルギー源」
④備蓄グリコーゲンは極めて少量で、成人で約250gていどである。
 約1000キロカロリーしかなく、強度の高い運動なら1~2時間で枯渇してしまう。



ここで大切なことは、日常生活では、骨格筋・心筋を始めほとんどの体細胞は、
主エネルギー源として、備蓄がたっぷりある「脂肪酸-ケトン体システム」を利用しているということです。

即ち、人体を自動車に例えれば、ガソリンの代わりは脂肪酸-ケトン体であり、
決してブドウ糖-グリコーゲンではありません。

例えば、心筋がブドウ糖を主たるエネルギー源として利用したりしたら、
グリコーゲンの備蓄は約250gしかないので、
いつ枯渇して止まるかもしれませんね。

日常生活で、ブドウ糖をエネルギー源としているのは、
「赤血球・脳・網膜・生殖腺胚上皮」といった特殊な細胞だけです。

糖質制限食実践中は脂肪酸-ケトン体を主たるエネルギー源として、
しっかり利用しているので、エネルギー不足には決してなりません。
人類700万年の歴史の内、農耕開始前は
人類皆糖質制限食だったことをお忘れなく。

糖質を摂取したときは、血糖値が上昇し追加分泌のインスリンが出て、
筋肉でブドウ糖を利用させます。
食物吸収が終了した直後には、肝臓のグリコーゲン分解が、
循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。
食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、
ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生に切り替わります。
食後この時間帯になると筋肉や体細胞のほとんどは、
「脂肪酸-ケトン体のシステム」をエネルギー源として利用するようになります。

<糖新生>
肝臓の糖新生は、ブドウ糖しか利用できない「赤血球」などのために、
最低限の血糖値を確保するために日常的に行われています。
ですから、人類の700万年の歴史において、
ごく普通に日常的に毎日、肝臓の糖新生は行われてきたわけで、
珍しいことでも何でもありません。

肝臓の糖新生は、脂肪酸の代謝産物のグリセロール、
筋肉から供給されるアミノ酸(アラニン、グルタニン)、
ブドウ糖代謝の産物の乳酸などから行われます。
肝臓は筋肉由来のアミノ酸などから日常的に糖新生を行っていますが、
筋肉ではタンパク質の分解と合成が毎日行われています。

①脂肪組織→グリセロール(脂肪酸の分解物)や脂肪酸→肝臓→糖新生→脂肪組織・筋肉
②筋肉→アミノ酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
③ブドウ糖代謝→乳酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織

①②③はごく日常的に人体で行われており、
肝臓、筋肉、脂肪組織の間で行ったり来たりしながら、
日々糖新生の調節が行われているわけです

700万年間の人類の歴史の中で農耕前の狩猟・採集時代は、
糖質制限食を摂取しているか、空腹や絶食や飢餓が日常的でしたので、
肝臓は毎日、今以上に糖新生を行い、
よく働いてきたしそれだけのキャパシティーを持っているということですね。

糖質制限食実践中は、脂肪酸-ケトン体エネルギー源がたっぷり利用できますので、
決してエネルギー不足にはなりません。
糖質制限食の場合は、食事からのブドウ糖供給が極めて少ないので、
食事中でも、肝臓の糖新生は行われています。
肝臓の糖新生は脂肪を燃やして賄われて結構エネルギーを消費するので
痩せやすいのです。

なお肝臓の糖新生は、人体全体のエネルギー源を確保しているのではありません。
ブドウ糖しか利用できない「赤血球」という特殊な細胞と、
日常的にブドウ糖を利用している脳や網膜などのために、
最低限の血糖値を確保しているのです。


<タンパク質>

次に三大栄養素のうちタンパク質は、
エネルギー源として使われることはありえますが、基本的に少ないです。
タンパク質は、主として人体の組織の材料として使われています。

適切なエネルギー源が確保されていれば、
食事から摂取したタンパク質(アミノ酸)は、
人体に吸収されて組織のタンパク質合成に使われます。

タンパク質を主たるエネルギー源として使われざるを得ないときは、
例えば「飢餓→絶食」が続いたときなどです。
体内の糖質、脂質をエネルギー源として使い果たした後は、
やむを得ず筋肉細胞のタンパク質を主たるエネルギー源として使いますが、
これは死の一歩手前です。


江部康二
炭水化物、糖質、糖類の違いは?糖質量の計算は?
こんにちは。

日頃何気なく使っている言葉、「炭水化物、糖質、糖類」これらの違いはどうなっているのでしょう。
健康増進法における栄養表示基準というのがあって、各メーカーさんはこれに従っています。

栄養表示基準では栄養成分表示を行う場合、
基本表示は<エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム>の5成分表示とされています。

「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。

①栄養表示基準上はたんぱく質や脂質、灰分(ミネラル分)のいずれにも分類されないものは炭水化物に計算。
②炭水化物=糖質+食物繊維
③糖質=糖類+三糖類以上+糖アルコール+合成甘味料
④糖類=単糖類+二糖類


*三糖類以上=でんぷん、オリゴ糖、デキストリン
*二糖類=砂糖、麦芽糖、乳糖
*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトース
*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトールなど
*合成甘味料=アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、アドバンテームなど

**食物繊維
 一、水溶性食物繊維
  a)ポリデキストロース  
   海藻、こんにゃくの他、野菜、果汁類にも含まれる水溶性の食物繊維
   です。ぶどう糖などから作られます。
  b)難消化性デキストリン
   とうもろこしなどに含まれる水溶性の食物繊維です。とうもろこしでんぷん
   などを分解して作られます。糖質の吸収を穏やかにする作用があり、
   血糖値が高めの方向けの特定保健用食品の機能素材となっています。

 二、不溶性食物繊維  セルロース
   物の細胞壁の構成成分です。不溶性の食物繊維です。食品には粘性を
   与えたりするために利用されています。

食品100g中の炭水化物を表示するとき、基準に則れば、

炭水化物=100g-<水分+タンパク質+脂質+灰分>

となります。

つまり、栄養表示上は、たんぱく質、脂質、灰分のいずれにも分類されないものは、炭水化物に計算されます。
合成甘味料が糖質に分類されるのは、何だか変ですが、
炭水化物・糖質の栄養表示基準の定義に従えばそうなるようです。(∵)?

結論としては、
①糖質だけが血糖値を上昇させる。
②糖質のなかで、合成甘味料とエリスリトールは血糖値を上昇させない。
となります。


糖類・糖質・炭水化物の違いについては
アサヒ飲料のホームページ
https://www.asahiinryo.co.jp/customer/dictionary/ing_label.html
お客様相談室 栄養成分表示

にわかりやすく解説・図解してあるので、是非覗いてみて下さいね。

アサヒ飲料さん、お世話になります。
今日の記事は、おおいに参考にさせていただきました。
ありがとうございます。 m(_ _)mV

なお、栄養表示基準に則り、糖類ゼロなら、無糖と表示できます。
つまり砂糖やブドウ糖などの二糖類、単糖類がなければ、
合成甘味料や糖アルコールが含まれていても無糖と表示できるのです。

従って、無糖表示でマルチトールやキシリトールが含まれていても法律上はOKだけど、
血糖値は上昇することになりますので、糖尿人の皆さんはご用心ご用心。(=_=;) 

国連の食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)は、
JECFA(Joint Expert Committee on Food Additives)を設けて、
甘味料など添加物のの安全性評価を公表していますが、
糖アルコールは、極めて安全性が高いとされています。
妊婦にも大丈夫です。  
糖アルコールの中でエリスリトールだけは、
カロリーゼロで、血糖値の上昇もありません。
エリスリトールは、ワインや果物の天然の甘味成分です。
なお、食品のラベルに糖質量の表示がないことも多いです。
そういう時は、西村 典彦 さんにコメント頂きましたが、

糖質量=【総カロリー  ―  (タンパク質×4+脂質×9) 】 ÷ 4

この式で、糖質量が計算できます。
これなら、「炭水化物・食物繊維・糖質」の表示がなくても、
糖質量を正確に知ることができますね。
西村さん、ありがとうございます。

最後に追加ですが、「糖分」という単語は、かなり曖昧に使用されています。
糖質あるいは糖類と同じ意味で、一般用語として使用されていて、ますます混乱の元となっています。
栄養表示基準には「糖分」という言葉は記載無しです。
私は、基本的に糖分という言葉は、使わないようにしています。

江部康二
糖尿病治療の目標と治療の優先順位。2022年5月。
こんにちは。
今回は、糖尿病治療の目標と治療の優先順位のお話です。

糖尿病治療の目標は、

『健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、
健康な人と変わらない寿命の確保。
 血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロール状態の維持。
糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)および
動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患)の発症、進展の阻止。』


ということとなります。

日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド2022-2023 (文光堂) 、36ページに、
・・・・・・・・・・・抜粋ここから・・・・・・・・・・・・
3.治療
B. 治療方針の立て方

1.インスリン非依存状態

1)食事療法と運動
患者自身が、糖尿病の病態を十分理解し、
適切な食事療法と運動療法を行うよう指導する。
・・・中略
食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、
なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を行う。

2)薬物療法
・・・経口血糖降下薬や注射薬を少量からはじめ徐々に増量する。(以下略)・・・・・・・・・・・抜粋ここまで・・・・・・・・・・・・

 上記治療方針が、記載してあります。

 インスリン非依存状態というのは、
内因性インスリン(自分自身で分泌するインスリン)が残っていて、
インスリン注射の必要がないという意味です。
ほとんどの場合は2型糖尿病です。

1型糖尿病などで、内因性インスリンがゼロレベルの糖尿人は、
インスリン依存状態という分類となり、インスリン注射が絶対に必要です。

このように糖尿病治療ガイドには、糖尿病治療の優先順位の一番は、
食事療法と運動療法と明記してあります。
残念なのは、49ページからの食事療法の項目では、
摂取エネルギー量にしか言及がなくて、
「血糖値を直接上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
という、食事療法で最も肝腎な事実が無視されていることです。

この点、米国糖尿病学会では、患者用テキストブックにおいて、
「血糖値を直接上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
ということを、きっちり教育します。

「食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、
なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する」


この優先順位の2番目の薬物療法開始という前に、
食事療法の選択肢の一つである糖質制限食を何故考慮しないのか理解に苦しみます。
2019年4月、米国糖尿病学会は、
「成人糖尿病患者または予備軍患者への栄養療法」コンセンサス・レポート
において『糖質制限食』がエビデンスが最も豊富であるとして
一番積極的に推奨しています

その後、2020年、2021年のガイドラインでも、同様の見解です。

食事療法で改善するのなら、経口血糖降下薬も注射薬も必要ありません。
糖尿病だけでなく、どんな病気においても、
食事療法で改善するなら薬は要らないと思います。
食事療法と薬物療法の優先順位という話なら、
医者や医療関係者でなくても、誰でも理解できると思います。

繰り返しますが、優先順位の一番は、食事療法と運動療法なのです。

さて、食事療法と運動療法が効果がないときにやむを得ず、
仕方ないので開始するのが、優先順位の2番目の「薬物療法」です。

その、薬物療法、すごい勢いで種類が増えてきました。
年々、創薬が相次いで、内服薬で9種類、
注射薬で2種類の糖尿病薬が勢揃いです。

1) 経口血糖降下剤(SU剤)
2) α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン)
3) ビグアナイド剤(メトホルミン、グリコラン、メルビンなど)
4) インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体・アクトス)
5) 速効型インスリン分泌促進剤(グルファスト、スターシス)
6) DPP-4阻害剤(ジャヌビア、ネシーナなど)
7)SGLT2阻害薬(スーグラ、ルセフィ、ジャディアンスなど) 
8)GLP-1受容体作動薬(リベルサス)
9)ツイミーグ(イメグリミン塩酸塩)

A)インスリン注射
B)GLP-1注射薬(インクレチン関連薬)

 糖尿病学会は、「いろんな種類の糖尿病薬が開発され、
治療効果が期待し易くなったが、それには専門的知識が必要」

といった見解ですが、なんだが本末転倒と思うのは私だけでしょうか?

つまり糖尿病学会推奨のエネルギー制限食(カロリ-制限食)が、
本当に効果があるのなら、何故、9種類もの内服薬が必要なのでしょう?
次々と新薬が開発されて、とうとう9種類に達したということは、
カロリー制限食と運動では、どうにもならなかったので、
ひたすら薬物の創薬が行われたということにほかなりません。

端的に言えば、カロリー制限食が糖尿病治療に、
あまり効果がないので、これだけ薬物に頼らざるを得なかったということです。


さらに言えば、糖尿病から年間新たに、16000人以上の人工透析、
3000人以上の失明、3000人以上の足切断
に至るという厳しい現実の、
責任はいったい誰にあるのでしょうか?

カロリー制限食を実践し、薬を飲んで注射もしても、
これだけの合併症の犠牲者が多発していることは厳然たる事実であり、
日本の糖尿病治療が決して上手く行っていない動かぬ証拠と言えます。

日本糖尿病学会のお歴々は、この事実を真摯に受けとめて、
しっかりご自分の頭で考えて真実を見つめ直す義務があると私は思います。
そしてアメリカ糖尿病学会が、2019年4月のコンセンサス・レポートで
2型糖尿病患者に対して糖質制限食を一番に推奨した
ことや、
2020年、2021年のガイドラインでも、同様の見解であることを、
日本の医師や糖尿病患者にに知らせることが急務と思います。

 
江部康二