2022年03月31日 (木)
【22/03/31 倉田
質問
どう考えたらよいのか分からないことがあるので、
江部先生のお考えを聞かせていただきたいと思い連絡してみました。
よろしくお願いいたします。
私は約7年前に糖尿病であることを知り、
医院で血糖降下薬を処方され薬を飲んでいましたが、
自分で勉強するために先生の著書を読み、
糖質制限で治療してみようと思い、同時にスーパー糖質制限を実行しました。
血糖値は最初279、A1c9.2でしたが、
3か月後に血糖値112、A1c6.0、5か月後に血糖値100、A1c5.6になりました。
これは明らかに薬の効果ではなく糖質制限のためだと判断し
、自己判断で薬をやめることにしました。
それ以後、血液検査だけすると、半年くらい同じ正常値を維持していました。
それでもう治ったのだと思い血液検査もやめて、糖尿のことを気にしなくになりました。
迂闊にもそれで油断してしまい、食事も糖質制限をやめて普通食を続けていたところ、
今から半年前に糖尿であることを発見したので、医院に行くと薬を処方されました。
血糖値は225、A1cは8.5でした。
再び糖質制限行を実行していますが、判年後の空腹時糖値107、A1c7.0です。
薬をやめてみたらどうなるかと試してみると、
空腹時でも血糖値は170前後を推移しています。
食事を20時間まったくせずにいると血糖値130~150くらいにはなります。
そこでお尋ねしたいのは、今回は糖質制限だけでは駄目で、
薬も併用しなければならなくなっているのかどうなのかということです。
それとも、薬なしでこのまま糖質制限を続けると血糖値は改善されるものか、
あるいは空腹時血糖値170前後という値は、
やはり薬を飲む必要がある数値なのかどうか、ということです。
薬はメトホルミンとアマリールを食前食後に各一錠2回として処方されています。】
こんにちは。
倉田さんから、
「糖尿病を発症したが、糖質制限食だけで改善するのか否か?
それとも薬を飲む必要があるのか?」
といっts、コメント・質問を頂きました。
糖尿病は
<インスリン分泌不足+インスリン抵抗性>が合わさって、
<インスリン作用不足>を生じて、発症します。
日本人はインスリン分泌不足が主で、発症時平均BMIは25くらいです。
欧米人はインスリン抵抗性が主で、発症時平均BMIは32くらいです。
倉田さんも、インスリン分泌不足が主たる要因の糖尿病だと思われます。
このタイプは、糖尿病を発症した時点で、
すでに膵臓のベータ細胞が1~3割くらい壊れています。
壊れたベータ細胞は再生しないので、
このタイプの糖尿病は決して治らないということになります。
【約7年前に糖尿病発覚。
スーパー糖質制限を実行。
最初279mg/dl、A1c9.2%。、
3か月後に血糖値112、A1c6.0、
5か月後に血糖値100、A1c5.6%。
それ以後、薬なしで、半年くらい同じ正常値を維持】
素晴らしい成果です。
糖質制限食の効果は抜群で、この時点では<good job>でした。
【それでもう治ったのだと思い血液検査もやめて、
糖尿のことを気にしなくになりました。
それで油断して、食事も糖質制限をやめて普通食を持続。
今から半年前に、再び糖尿病であることを発見。
医院受診で内服薬処方。
血糖値は225mg/dl、A1cは8.5%。】
とても残念な経過で、もったいないです。
7年前にそのまま糖質制限食を続けていたら、
血糖コントロール良好を維持できていて、
ベータ細胞の破壊の進行もなかったと考えられます。
今回、半年前(2021年9月頃)に、糖尿病の再燃に気がつかれたのですが、
その時点で、7年前と比べると、ベータ細胞の破壊はかなり進行しています。
そのため、空腹時でも血糖値は170前後と上昇してしまいました。
【①今回は糖質制限だけでは駄目で、
薬も併用しなければならなくなっているのかどうなのか?
それとも、薬なしでこのまま糖質制限を続けると血糖値は改善されるものか、
あるいは空腹時血糖値170前後という値は、
やはり薬を飲む必要がある数値なのかどうか】
そうですね。
スーパー糖質制限食を実践していても
空腹時血糖値が170mg/dl前後ということは
糖尿病のステージが、内服薬が必要な段階にワンランク進行したということです。
【②薬はメトホルミンとアマリールを食前食後に各一錠2回として処方されています。】
メトホルミン内服はよいと思います。
アマリールは低血糖を生じる可能性があるSU剤なので、中止しましょう。
その代わり、SGLT2阻害薬(スーグラ、ルセフィ、ジャディアンスなど)を
内服しましょう。
SGLT2阻害薬は脱水注意なので、内服開始後は
それまでより500~600ml/日くらい水分摂取を増やしましょう。
それで、脱水を予防できて、ケトアシドーシスのリスクがほとんどなくなります。
SGLT2阻害薬内服で、空腹時血糖値が下がります。
それでも、空腹時血糖値が130mg/dl未満とならなかったら、
リベルサスを1錠、起床時に内服しましょう。
それで、空腹時血糖値130mg/dl未満を達成できると思います。
<メトホルミン、SGLT2阻害薬、リベルサス>
の組み合わせなら、低血糖の心配はありませんので、
安心して<スーパー糖質制限食>を実践して頂ければ幸いです。
江部康二
質問
どう考えたらよいのか分からないことがあるので、
江部先生のお考えを聞かせていただきたいと思い連絡してみました。
よろしくお願いいたします。
私は約7年前に糖尿病であることを知り、
医院で血糖降下薬を処方され薬を飲んでいましたが、
自分で勉強するために先生の著書を読み、
糖質制限で治療してみようと思い、同時にスーパー糖質制限を実行しました。
血糖値は最初279、A1c9.2でしたが、
3か月後に血糖値112、A1c6.0、5か月後に血糖値100、A1c5.6になりました。
これは明らかに薬の効果ではなく糖質制限のためだと判断し
、自己判断で薬をやめることにしました。
それ以後、血液検査だけすると、半年くらい同じ正常値を維持していました。
それでもう治ったのだと思い血液検査もやめて、糖尿のことを気にしなくになりました。
迂闊にもそれで油断してしまい、食事も糖質制限をやめて普通食を続けていたところ、
今から半年前に糖尿であることを発見したので、医院に行くと薬を処方されました。
血糖値は225、A1cは8.5でした。
再び糖質制限行を実行していますが、判年後の空腹時糖値107、A1c7.0です。
薬をやめてみたらどうなるかと試してみると、
空腹時でも血糖値は170前後を推移しています。
食事を20時間まったくせずにいると血糖値130~150くらいにはなります。
そこでお尋ねしたいのは、今回は糖質制限だけでは駄目で、
薬も併用しなければならなくなっているのかどうなのかということです。
それとも、薬なしでこのまま糖質制限を続けると血糖値は改善されるものか、
あるいは空腹時血糖値170前後という値は、
やはり薬を飲む必要がある数値なのかどうか、ということです。
薬はメトホルミンとアマリールを食前食後に各一錠2回として処方されています。】
こんにちは。
倉田さんから、
「糖尿病を発症したが、糖質制限食だけで改善するのか否か?
それとも薬を飲む必要があるのか?」
といっts、コメント・質問を頂きました。
糖尿病は
<インスリン分泌不足+インスリン抵抗性>が合わさって、
<インスリン作用不足>を生じて、発症します。
日本人はインスリン分泌不足が主で、発症時平均BMIは25くらいです。
欧米人はインスリン抵抗性が主で、発症時平均BMIは32くらいです。
倉田さんも、インスリン分泌不足が主たる要因の糖尿病だと思われます。
このタイプは、糖尿病を発症した時点で、
すでに膵臓のベータ細胞が1~3割くらい壊れています。
壊れたベータ細胞は再生しないので、
このタイプの糖尿病は決して治らないということになります。
【約7年前に糖尿病発覚。
スーパー糖質制限を実行。
最初279mg/dl、A1c9.2%。、
3か月後に血糖値112、A1c6.0、
5か月後に血糖値100、A1c5.6%。
それ以後、薬なしで、半年くらい同じ正常値を維持】
素晴らしい成果です。
糖質制限食の効果は抜群で、この時点では<good job>でした。
【それでもう治ったのだと思い血液検査もやめて、
糖尿のことを気にしなくになりました。
それで油断して、食事も糖質制限をやめて普通食を持続。
今から半年前に、再び糖尿病であることを発見。
医院受診で内服薬処方。
血糖値は225mg/dl、A1cは8.5%。】
とても残念な経過で、もったいないです。
7年前にそのまま糖質制限食を続けていたら、
血糖コントロール良好を維持できていて、
ベータ細胞の破壊の進行もなかったと考えられます。
今回、半年前(2021年9月頃)に、糖尿病の再燃に気がつかれたのですが、
その時点で、7年前と比べると、ベータ細胞の破壊はかなり進行しています。
そのため、空腹時でも血糖値は170前後と上昇してしまいました。
【①今回は糖質制限だけでは駄目で、
薬も併用しなければならなくなっているのかどうなのか?
それとも、薬なしでこのまま糖質制限を続けると血糖値は改善されるものか、
あるいは空腹時血糖値170前後という値は、
やはり薬を飲む必要がある数値なのかどうか】
そうですね。
スーパー糖質制限食を実践していても
空腹時血糖値が170mg/dl前後ということは
糖尿病のステージが、内服薬が必要な段階にワンランク進行したということです。
【②薬はメトホルミンとアマリールを食前食後に各一錠2回として処方されています。】
メトホルミン内服はよいと思います。
アマリールは低血糖を生じる可能性があるSU剤なので、中止しましょう。
その代わり、SGLT2阻害薬(スーグラ、ルセフィ、ジャディアンスなど)を
内服しましょう。
SGLT2阻害薬は脱水注意なので、内服開始後は
それまでより500~600ml/日くらい水分摂取を増やしましょう。
それで、脱水を予防できて、ケトアシドーシスのリスクがほとんどなくなります。
SGLT2阻害薬内服で、空腹時血糖値が下がります。
それでも、空腹時血糖値が130mg/dl未満とならなかったら、
リベルサスを1錠、起床時に内服しましょう。
それで、空腹時血糖値130mg/dl未満を達成できると思います。
<メトホルミン、SGLT2阻害薬、リベルサス>
の組み合わせなら、低血糖の心配はありませんので、
安心して<スーパー糖質制限食>を実践して頂ければ幸いです。
江部康二
2022年03月30日 (水)
こんにちは。
メトホルミン内服のリスクについて、
「ドクターシミズのひとりごとの2022/3/29の記事」
に書いてあるとの情報を通りすがりさんからコメント頂きました。
ありがとうございます。
①
メトホルミン内服が、肺癌や膵臓癌、大腸(結腸直腸)癌、乳癌など各種癌の予防に有効である可能性が示唆されています。
②
英国で行われた大規模研究「UKPDS」では、メトホルミンは他の治療薬と比べ、2型糖尿病患者の動脈硬化を抑制し、心血管疾患の発症リスクを減少させることが確かめられています。
③
米国立老化研究所の研究では、メトホルミンを投与したマウスはそうでないマウスに比べ、寿命が5%延びることが明らかになっています。
メトホルミンの主な副作用として、下痢、食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便秘、消化不良、発疹、かゆみ、全身けん怠感、筋肉痛などが報告されていますが、
重篤なものはなく、これまで
①②③のメリットのほうが大きいと考えられてきました。
但し、腎機能が悪化した患者さんにまれに生じることがある乳酸アシドーシスは
メトホルミンの重篤な副作用です。
しかしながら、
「Preconception Antidiabetic Drugs in Men and Birth Defects in Offspring : A Nationwide Cohort Study」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344380/
「男性の妊娠前の糖尿病薬と子孫の先天性異常:全国コホート研究」
このコホート研究では、
「父親のメトホルミン使用は男の赤ちゃんに先天性異常をもたらす」
との結論となっています。
1997年から2016年までのデンマークでの1,255,772人の出生すべてを対象とし、
最終的な分析は1,116,779人です。
100万回以上の出生を、20年間追った研究ですので信頼度は高いです。
以下の清水先生のブログ記事にその解説があります。
【ドクターシミズのひとりごとの2022/3/29の記事
https://promea2014.com/blog/?p=18528
父親のメトホルミン使用は男の赤ちゃんに先天性異常をもたらす】
結論として、
メトホルミンは精子に影響を与えると考えられ、
男の赤ちゃんの生殖器の異常を引き起こす可能性が高まります。
こうなると、子供を作ることを考えている男性は、
メトホルミンを内服するべきではないし、
もし内服している場合は、即、中止すべきです。
『安全な薬は存在しません。糖尿病は糖質過剰症候群です。
できる限り早い段階での糖質制限で、薬の使用は回避できるはずです。』
清水先生のこのお考えに私も、全面的に賛成です。
江部康二
メトホルミン内服のリスクについて、
「ドクターシミズのひとりごとの2022/3/29の記事」
に書いてあるとの情報を通りすがりさんからコメント頂きました。
ありがとうございます。
①
メトホルミン内服が、肺癌や膵臓癌、大腸(結腸直腸)癌、乳癌など各種癌の予防に有効である可能性が示唆されています。
②
英国で行われた大規模研究「UKPDS」では、メトホルミンは他の治療薬と比べ、2型糖尿病患者の動脈硬化を抑制し、心血管疾患の発症リスクを減少させることが確かめられています。
③
米国立老化研究所の研究では、メトホルミンを投与したマウスはそうでないマウスに比べ、寿命が5%延びることが明らかになっています。
メトホルミンの主な副作用として、下痢、食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便秘、消化不良、発疹、かゆみ、全身けん怠感、筋肉痛などが報告されていますが、
重篤なものはなく、これまで
①②③のメリットのほうが大きいと考えられてきました。
但し、腎機能が悪化した患者さんにまれに生じることがある乳酸アシドーシスは
メトホルミンの重篤な副作用です。
しかしながら、
「Preconception Antidiabetic Drugs in Men and Birth Defects in Offspring : A Nationwide Cohort Study」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344380/
「男性の妊娠前の糖尿病薬と子孫の先天性異常:全国コホート研究」
このコホート研究では、
「父親のメトホルミン使用は男の赤ちゃんに先天性異常をもたらす」
との結論となっています。
1997年から2016年までのデンマークでの1,255,772人の出生すべてを対象とし、
最終的な分析は1,116,779人です。
100万回以上の出生を、20年間追った研究ですので信頼度は高いです。
以下の清水先生のブログ記事にその解説があります。
【ドクターシミズのひとりごとの2022/3/29の記事
https://promea2014.com/blog/?p=18528
父親のメトホルミン使用は男の赤ちゃんに先天性異常をもたらす】
結論として、
メトホルミンは精子に影響を与えると考えられ、
男の赤ちゃんの生殖器の異常を引き起こす可能性が高まります。
こうなると、子供を作ることを考えている男性は、
メトホルミンを内服するべきではないし、
もし内服している場合は、即、中止すべきです。
『安全な薬は存在しません。糖尿病は糖質過剰症候群です。
できる限り早い段階での糖質制限で、薬の使用は回避できるはずです。』
清水先生のこのお考えに私も、全面的に賛成です。
江部康二
2022年03月29日 (火)
【22/03/28 姫
食物繊維と血糖値との関係
難消化性デキストリンと水溶性食物繊維イヌリンとエリスリトールを実際に摂取して、
血糖値の上昇を検証してみてください】
姫 さん
私個人の検証ということではなくて、それぞれ既にキッチリ検証されています。
①難消化デキストリン(食物繊維の一種)
血糖値は上昇させないが、腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸を産生させる。
産生される短鎖脂肪酸のエネルギーは、1kcal/1gです。
②水溶性食物繊維イヌリン
フジ日本精糖は世界で初めて、砂糖からイヌリンを作ることに成功した会社です。
そのホームページからの引用です。
・・・・引用ここから・・・・
イヌリンは、ヒトの胃や腸などの消化管では消化・吸収されにくい難消化性の炭水化物(食物繊維)です。
消化・吸収される消化性糖質のでん粉やオリゴ糖とは異なり、
胃や小腸ではまったく分解されません。
大腸ではじめて腸内の善玉菌であるビフィズス菌などの餌として利用されます。
イヌリンのカロリー値は、消化性糖質の約半分にあたる2kcal/gと推定されています。
・・・・引用ここまで・・・・
③エリスリトール(食物繊維ではない)
糖アルコールの中で血糖値を全く上昇させないのは、唯一エリスリトールだけです。
他の糖アルコールは、砂糖の半分くらい血糖値を上昇させますが、上昇幅には個人差があります。エリスリトールは、糖アルコールの中で例外的に体内に9割以上吸収されますが、全く代謝されずにそのまま尿中に排泄されます。
ですから厚生労働省お墨付きのゼロカロリーで、かつ全く血糖値を上昇させません。
エリスリトールはJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)により、1999年、
『安全性が十分に高いので、1日摂取許容量は定める必要がない(ADI not specified)』
との評価を受けており、その安全性は世界的にも認証されています。
<ヒトと腸内細菌と食物繊維の関係。短鎖脂肪酸。>
さて、ヒトと腸内細菌と食物繊維の関係性について考察してみます。
実は一般にはあまり知られていませんが、
大腸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」を
ほぼ唯一のエネルギー源としています。(注1)。
『大腸の細胞のエネルギー源は、短鎖脂肪酸のみである』
このことの意味を、考えてみます。
短鎖脂肪酸は食材では、牛乳か乳製品か酢くらいにしか含まれていません。
牛乳・バターや酢だけでは、食材からの短鎖脂肪酸補充は、
大腸のエネルギー源としては到底足りません。
そうすると、短鎖脂肪酸を人体内で自ら作成するしかありません。
つまり、
「大腸内の腸内細菌が、食物繊維を餌にして産生する短鎖脂肪酸」が
ヒトの大腸細胞のエネルギー源となっているということです。
大腸細胞で利用されずに余った腸内細菌由来の短鎖脂肪酸は、
吸収されて全身の臓器のエネルギー源となります。
これは、意外に多くて、全使用エネルギーの約10%になります。
従来食物繊維は、ヒトは消化・吸収できないので、
栄養学上エネルギーにならないと考えられ、0kcalとされてきましたが、
大腸内で腸内細菌により発酵分解を受けるものがあることが明らかになりました。
現在では、食物繊維の種類によって「0kcal」「1kcal」「2kcal」と3種類あります。
カロリーの多い食物繊維ほど、大腸の中で発酵しやすく、
短鎖脂肪酸が多く産生すると考えられています。
食物繊維
①発酵・分解率が 25%未満のもの 0 kcal/g
②発酵・分解率が 25%以上,75%未満のもの 1 kcal/g
③発酵・分解率が 75%以上のもの 2 kcal/g
食物繊維
1)0kcal/g :ポリデキストロース、セルロース、寒天、キサンタンガム
2)1kcal/g :難消化デキストリン、アラビアガム
3)2kcal/g :グアーガム、グアーガム酵素分解物、難消化でんぷん、水溶性大豆食物繊維
「食物繊維から腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が、大腸細胞のエネルギー源になる」
というのは、少なくとも現世人類全てにおいて共通の生理学的事実と考えられます。
酪酸菌、ビフィズス菌などの腸内細菌が、活躍して、水溶性食物繊維を餌にして
短鎖脂肪酸を生成してくれています。
大腸のエネルギー源となる短鎖脂肪酸は、主として酪酸と考えられます。
大腸内の酪酸菌が、食物繊維を餌にして酪酸を生産しています。
このように、ヒトにおいて、大腸細胞のエネルギー源確保のためには、
食物繊維の摂取が極めて重要ということになります。
つまり「食物繊維は、ヒトと腸内細菌にとって必須」なのです。
食物繊維は、水に溶けにくい不溶性食物繊維と、
水に溶ける水溶性食物繊維の2種類に分類されます
腸内細菌が食べる食物繊維は、水溶性食物繊維だと考えてほぼ間違いありません。
糖質制限食では、野菜、海藻、キノコ、大豆製品などから食物繊維を摂取できます。
特に水溶性食物繊維はアボカド、オクラ、こんにゃく、納豆などに多く含まれています。
なお、断食382日という記録があり、イギリスの文献に載っていたようです。
ということは、水だけで食物繊維もなしですから、
脂肪の分解物のβヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)が
大腸細胞のエネルギー源になると考えられます。
(注1)
清水健一郎「治療に活かす!栄養療法 はじめの一歩」181ページ、2011年、羊土社
江部康二
食物繊維と血糖値との関係
難消化性デキストリンと水溶性食物繊維イヌリンとエリスリトールを実際に摂取して、
血糖値の上昇を検証してみてください】
姫 さん
私個人の検証ということではなくて、それぞれ既にキッチリ検証されています。
①難消化デキストリン(食物繊維の一種)
血糖値は上昇させないが、腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸を産生させる。
産生される短鎖脂肪酸のエネルギーは、1kcal/1gです。
②水溶性食物繊維イヌリン
フジ日本精糖は世界で初めて、砂糖からイヌリンを作ることに成功した会社です。
そのホームページからの引用です。
・・・・引用ここから・・・・
イヌリンは、ヒトの胃や腸などの消化管では消化・吸収されにくい難消化性の炭水化物(食物繊維)です。
消化・吸収される消化性糖質のでん粉やオリゴ糖とは異なり、
胃や小腸ではまったく分解されません。
大腸ではじめて腸内の善玉菌であるビフィズス菌などの餌として利用されます。
イヌリンのカロリー値は、消化性糖質の約半分にあたる2kcal/gと推定されています。
・・・・引用ここまで・・・・
③エリスリトール(食物繊維ではない)
糖アルコールの中で血糖値を全く上昇させないのは、唯一エリスリトールだけです。
他の糖アルコールは、砂糖の半分くらい血糖値を上昇させますが、上昇幅には個人差があります。エリスリトールは、糖アルコールの中で例外的に体内に9割以上吸収されますが、全く代謝されずにそのまま尿中に排泄されます。
ですから厚生労働省お墨付きのゼロカロリーで、かつ全く血糖値を上昇させません。
エリスリトールはJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)により、1999年、
『安全性が十分に高いので、1日摂取許容量は定める必要がない(ADI not specified)』
との評価を受けており、その安全性は世界的にも認証されています。
<ヒトと腸内細菌と食物繊維の関係。短鎖脂肪酸。>
さて、ヒトと腸内細菌と食物繊維の関係性について考察してみます。
実は一般にはあまり知られていませんが、
大腸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの「短鎖脂肪酸」を
ほぼ唯一のエネルギー源としています。(注1)。
『大腸の細胞のエネルギー源は、短鎖脂肪酸のみである』
このことの意味を、考えてみます。
短鎖脂肪酸は食材では、牛乳か乳製品か酢くらいにしか含まれていません。
牛乳・バターや酢だけでは、食材からの短鎖脂肪酸補充は、
大腸のエネルギー源としては到底足りません。
そうすると、短鎖脂肪酸を人体内で自ら作成するしかありません。
つまり、
「大腸内の腸内細菌が、食物繊維を餌にして産生する短鎖脂肪酸」が
ヒトの大腸細胞のエネルギー源となっているということです。
大腸細胞で利用されずに余った腸内細菌由来の短鎖脂肪酸は、
吸収されて全身の臓器のエネルギー源となります。
これは、意外に多くて、全使用エネルギーの約10%になります。
従来食物繊維は、ヒトは消化・吸収できないので、
栄養学上エネルギーにならないと考えられ、0kcalとされてきましたが、
大腸内で腸内細菌により発酵分解を受けるものがあることが明らかになりました。
現在では、食物繊維の種類によって「0kcal」「1kcal」「2kcal」と3種類あります。
カロリーの多い食物繊維ほど、大腸の中で発酵しやすく、
短鎖脂肪酸が多く産生すると考えられています。
食物繊維
①発酵・分解率が 25%未満のもの 0 kcal/g
②発酵・分解率が 25%以上,75%未満のもの 1 kcal/g
③発酵・分解率が 75%以上のもの 2 kcal/g
食物繊維
1)0kcal/g :ポリデキストロース、セルロース、寒天、キサンタンガム
2)1kcal/g :難消化デキストリン、アラビアガム
3)2kcal/g :グアーガム、グアーガム酵素分解物、難消化でんぷん、水溶性大豆食物繊維
「食物繊維から腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が、大腸細胞のエネルギー源になる」
というのは、少なくとも現世人類全てにおいて共通の生理学的事実と考えられます。
酪酸菌、ビフィズス菌などの腸内細菌が、活躍して、水溶性食物繊維を餌にして
短鎖脂肪酸を生成してくれています。
大腸のエネルギー源となる短鎖脂肪酸は、主として酪酸と考えられます。
大腸内の酪酸菌が、食物繊維を餌にして酪酸を生産しています。
このように、ヒトにおいて、大腸細胞のエネルギー源確保のためには、
食物繊維の摂取が極めて重要ということになります。
つまり「食物繊維は、ヒトと腸内細菌にとって必須」なのです。
食物繊維は、水に溶けにくい不溶性食物繊維と、
水に溶ける水溶性食物繊維の2種類に分類されます
腸内細菌が食べる食物繊維は、水溶性食物繊維だと考えてほぼ間違いありません。
糖質制限食では、野菜、海藻、キノコ、大豆製品などから食物繊維を摂取できます。
特に水溶性食物繊維はアボカド、オクラ、こんにゃく、納豆などに多く含まれています。
なお、断食382日という記録があり、イギリスの文献に載っていたようです。
ということは、水だけで食物繊維もなしですから、
脂肪の分解物のβヒドロキシ酪酸(ケトン体の一種)が
大腸細胞のエネルギー源になると考えられます。
(注1)
清水健一郎「治療に活かす!栄養療法 はじめの一歩」181ページ、2011年、羊土社
江部康二
2022年03月28日 (月)
こんにちは。
以前、コロナ禍前、同窓会があったとき、「一番罹りたくない病気は何?」っていう話がでて、
その病気は全員一致でアルツハイマー病など認知症でした。
今日は認知症が糖質制限食で予防・改善できるというお話です
「認知症」という言葉には、ほとんどの人が不安を感じると思います。
認知症とは「いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の障害によって低下した状態」と定義されています。
知能の低下とは、たとえば「さっき人と会ったことを覚えていない」「食事をしたことを忘れる」などの記憶障害、
「文字を読んでも意味がわからない」「簡単な計算ができない」といった判断力の低下、
「見えないものが見える」という幻覚、「財布を盗まれた」という妄想に至るまで
記憶や判断力に障害が起こることを指します。
認知症の患者とその予備軍は65歳以上では4人にひとりであり、これは大変な数といえます。
さて、この認知症ですが、ひとつの病気のことを指すのではなく、いくつかの病気の総称として用いられています。
つまり、知能を低下させる病気はひとつに限定されるわけではないということです。
その代表的なものとしては4つあり、
それぞれ「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」と呼ばれています。
さて、この認知症のなかで、圧倒的に多いのが、アルツハイマー病で、およそ70%を占めています。
70%というのはすごい数字ですが、逆に言えばアルツハイマー病に気をつけておけば、
認知症に対する不安は大きく軽減されることになるわけです。
そしてアルツハイマー病をはじめとする認知症の予防に絶大な効果を発揮するのが、糖質制限食です。
認知症は、日本のような高齢化社会において、もっとも重要な病気の一つです。
現在わが国には約 462 万人の認知症患者がいます。
また認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)を呈する高齢者は約 400万人存在すると考えられています。
MCI は、アルツハイマー病を含む認知症のリスクを増加させる老化の一般的な障害とされています。
MCI と判定された場合は、年率 10 ~15% で認知症に進行することが知られています。
認知症患者数は 、今後さらに増加していくと予想されますが、
これまで認知症の根治につながる治療法は確立していません。
近年認知症との関連で注目されている糖化ストレスマーカーとして
終末糖化産物(advanced glycation endproducts: AGEs)があります。
AGEs の産生増加は糖尿病にともなう炎症や酸化ストレスの亢進など多くの病態と関連し、
加齢や動脈硬化もその一つです。
そして、アルツハイマー病のような認知症では正常老化のそれに比べてAGEsの蓄積が加速されているのです。
AGEsの蓄積という糖化ストレスが、酸化ストレスも招きアルツハイマー病の元凶となっていますし、
他の型の認知症にも関与していると思われます。
また、動脈硬化や老化も同様にAGEsのせいです。
治療法も治療薬もない現状では、
可能な限り早期に認知症および MCIを発見して何らかの介入を行うことが必要です。
そしてその唯一の解決法が『糖質制限食』です。
糖質制限食なら、蓄積するAGEsを最小限に抑えることができるので
MCIや認知症の予防・改善が可能です。
本ブログに、よくコメントを頂いている『らこさん』の場合も、
釣り銭が計算できなくなるといったアルツハイマー病発症の段階から
糖質制限食開始してわずか1週間足らずで正常に復活しておられ、
その後現在まで10年間元気に過ごしておられます。
ブログ読者の皆さんも、是非糖質制限食を実践されて、
将来のMCIやアルツハイマー病の予防を心がけて頂ければ幸いです。
江部康二
以前、コロナ禍前、同窓会があったとき、「一番罹りたくない病気は何?」っていう話がでて、
その病気は全員一致でアルツハイマー病など認知症でした。
今日は認知症が糖質制限食で予防・改善できるというお話です
「認知症」という言葉には、ほとんどの人が不安を感じると思います。
認知症とは「いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の障害によって低下した状態」と定義されています。
知能の低下とは、たとえば「さっき人と会ったことを覚えていない」「食事をしたことを忘れる」などの記憶障害、
「文字を読んでも意味がわからない」「簡単な計算ができない」といった判断力の低下、
「見えないものが見える」という幻覚、「財布を盗まれた」という妄想に至るまで
記憶や判断力に障害が起こることを指します。
認知症の患者とその予備軍は65歳以上では4人にひとりであり、これは大変な数といえます。
さて、この認知症ですが、ひとつの病気のことを指すのではなく、いくつかの病気の総称として用いられています。
つまり、知能を低下させる病気はひとつに限定されるわけではないということです。
その代表的なものとしては4つあり、
それぞれ「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」と呼ばれています。
さて、この認知症のなかで、圧倒的に多いのが、アルツハイマー病で、およそ70%を占めています。
70%というのはすごい数字ですが、逆に言えばアルツハイマー病に気をつけておけば、
認知症に対する不安は大きく軽減されることになるわけです。
そしてアルツハイマー病をはじめとする認知症の予防に絶大な効果を発揮するのが、糖質制限食です。
認知症は、日本のような高齢化社会において、もっとも重要な病気の一つです。
現在わが国には約 462 万人の認知症患者がいます。
また認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)を呈する高齢者は約 400万人存在すると考えられています。
MCI は、アルツハイマー病を含む認知症のリスクを増加させる老化の一般的な障害とされています。
MCI と判定された場合は、年率 10 ~15% で認知症に進行することが知られています。
認知症患者数は 、今後さらに増加していくと予想されますが、
これまで認知症の根治につながる治療法は確立していません。
近年認知症との関連で注目されている糖化ストレスマーカーとして
終末糖化産物(advanced glycation endproducts: AGEs)があります。
AGEs の産生増加は糖尿病にともなう炎症や酸化ストレスの亢進など多くの病態と関連し、
加齢や動脈硬化もその一つです。
そして、アルツハイマー病のような認知症では正常老化のそれに比べてAGEsの蓄積が加速されているのです。
AGEsの蓄積という糖化ストレスが、酸化ストレスも招きアルツハイマー病の元凶となっていますし、
他の型の認知症にも関与していると思われます。
また、動脈硬化や老化も同様にAGEsのせいです。
治療法も治療薬もない現状では、
可能な限り早期に認知症および MCIを発見して何らかの介入を行うことが必要です。
そしてその唯一の解決法が『糖質制限食』です。
糖質制限食なら、蓄積するAGEsを最小限に抑えることができるので
MCIや認知症の予防・改善が可能です。
本ブログに、よくコメントを頂いている『らこさん』の場合も、
釣り銭が計算できなくなるといったアルツハイマー病発症の段階から
糖質制限食開始してわずか1週間足らずで正常に復活しておられ、
その後現在まで10年間元気に過ごしておられます。
ブログ読者の皆さんも、是非糖質制限食を実践されて、
将来のMCIやアルツハイマー病の予防を心がけて頂ければ幸いです。
江部康二
2022年03月27日 (日)
こんにちは。
ケトン体は、「糖尿病ケトアシドーシス」という重篤な病態があって、
ICU入院とかが必要となるので、日本では相変わらず、結構恐れられています。
しかし、糖尿病ケトアシドーシスは、
インスリン作用が欠乏~重度の不足があるときにだけ発症する特殊な病態です。
インスリン作用があるていど、確保されていれば、
糖尿病ケトアシドーシスは起こりません。
例えば、断食とか小児ケトン食を実践したときは、
血中ケトン体値は2000~4000μmol/L(基準値:26~122μmoL/L)と
高値となりますが、インスリン作用が確保されている限り、
生理的で安全なケトーシスであり、アシドーシスにはなりません。
つまりケトン体そのものは、極めて安全な物質であり、
危険どころか、脳が最も好むエネルギー源なのです。
そして、現在では、ケトン体には<心・腎・脳保護作用>があるとされています。
今回は、『ケトン体と脳と低血糖』について考察してみます。
脳のエネルギー源はブドウ糖とケトン体です。
脳のエネルギー源はブドウ糖だけと信じてる人は、
さすがに大分減ってきたと思います。
それでは、ケトン体が十分産生できていて、
脳のエネルギー源となっている場合は、
血糖値が低下したとき(60mg/dl以下)でも、
いわゆる低血糖症状はでないのでしょうか?
答えは、「yes、低血糖症状はでない。」です。
血中総ケトン体値が3000~4000μmol/L以上のレベルであれば、
脳のエネルギー源はケトン体だけでも賄えると思われます。
私が初めて本断食(カロリーゼロ、塩分ゼロ、水摂取のみ)を3日間行ったとき、
4日目朝の空腹時血糖値は、35mg/dlでした。
1984年、34才の時のことです。
断食前は普通に糖質を摂取していましたし、初めての断食なので、
肝臓の糖新生があまり上手くできていなかったのでしょう。
またスーパー糖質制限食でも30~60g/日の糖質を摂取しますが、
断食の場合は0g/日の糖質摂取という差もあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、
低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
35mg/dlという検査データは完全な低血糖ですが、
動悸・頻脈・頭痛などいわゆる低血糖症状はなかったので、
厳密には「低血糖症」とは言えないかもしれません。
35mg/dlというのは、普通なら意識不明で昏睡のレベルですが、
断食中は血中ケトン体(脂肪酸の代謝産物)が高値となり、
脳の主エネルギー源となっているので、大丈夫なのです。
実際、ちゃんと外来診察も行っていました。
脳はケトン体をしっかり利用するという事実を34才の本断食当時、
既に自らの人体実験で証明していたみたいです。
脳がケトン体を利用できないならば、私は血糖値35mg/dlのとき、
あの世に旅立っていたはずですね。
低血糖症の症状は、まずは低血糖によって誘発された自律神経系の
変化に基づく反応から始まります。
個人差がありますが60mg/dl~70mg/dl以下になると、
自律神経症状(アドレナリンなどの分泌による症状)が出現します。
自覚症状:不安、心悸亢進、動悸
他覚所見:発汗、蒼白、低体温、頻脈、振戦、高血圧、不整脈・・・
次いで血糖値が50mg/dl以下になると、
中枢神経系の機能不全による症状が出現します。
中枢神経機能低下症状
自覚症状:頭痛、かすみ目、複視、異常知覚、嘔気、眠気、倦怠感・・・
他覚所見:錯乱、奇異行動、興奮、譫妄、傾眠、失語、麻痺、痙攣、昏睡・・・
私の血糖値は35mg/dlでしたから、
通常なら、上記の低血糖症状が出現して当たり前なのですが、
基準値よりはるかに高値の血中ケトン体が脳のエネルギー源となって、
低血糖症状から、身体を守ってくれたのです。
ケトン体、とても頼りになる良い奴ですね。
江部康二
ケトン体は、「糖尿病ケトアシドーシス」という重篤な病態があって、
ICU入院とかが必要となるので、日本では相変わらず、結構恐れられています。
しかし、糖尿病ケトアシドーシスは、
インスリン作用が欠乏~重度の不足があるときにだけ発症する特殊な病態です。
インスリン作用があるていど、確保されていれば、
糖尿病ケトアシドーシスは起こりません。
例えば、断食とか小児ケトン食を実践したときは、
血中ケトン体値は2000~4000μmol/L(基準値:26~122μmoL/L)と
高値となりますが、インスリン作用が確保されている限り、
生理的で安全なケトーシスであり、アシドーシスにはなりません。
つまりケトン体そのものは、極めて安全な物質であり、
危険どころか、脳が最も好むエネルギー源なのです。
そして、現在では、ケトン体には<心・腎・脳保護作用>があるとされています。
今回は、『ケトン体と脳と低血糖』について考察してみます。
脳のエネルギー源はブドウ糖とケトン体です。
脳のエネルギー源はブドウ糖だけと信じてる人は、
さすがに大分減ってきたと思います。
それでは、ケトン体が十分産生できていて、
脳のエネルギー源となっている場合は、
血糖値が低下したとき(60mg/dl以下)でも、
いわゆる低血糖症状はでないのでしょうか?
答えは、「yes、低血糖症状はでない。」です。
血中総ケトン体値が3000~4000μmol/L以上のレベルであれば、
脳のエネルギー源はケトン体だけでも賄えると思われます。
私が初めて本断食(カロリーゼロ、塩分ゼロ、水摂取のみ)を3日間行ったとき、
4日目朝の空腹時血糖値は、35mg/dlでした。
1984年、34才の時のことです。
断食前は普通に糖質を摂取していましたし、初めての断食なので、
肝臓の糖新生があまり上手くできていなかったのでしょう。
またスーパー糖質制限食でも30~60g/日の糖質を摂取しますが、
断食の場合は0g/日の糖質摂取という差もあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック(改訂第4版、2009年)293ページには、
低血糖症の定義として、
「低血糖症状があり血糖値60mg/dl以下」
と記載されています。
35mg/dlという検査データは完全な低血糖ですが、
動悸・頻脈・頭痛などいわゆる低血糖症状はなかったので、
厳密には「低血糖症」とは言えないかもしれません。
35mg/dlというのは、普通なら意識不明で昏睡のレベルですが、
断食中は血中ケトン体(脂肪酸の代謝産物)が高値となり、
脳の主エネルギー源となっているので、大丈夫なのです。
実際、ちゃんと外来診察も行っていました。
脳はケトン体をしっかり利用するという事実を34才の本断食当時、
既に自らの人体実験で証明していたみたいです。
脳がケトン体を利用できないならば、私は血糖値35mg/dlのとき、
あの世に旅立っていたはずですね。
低血糖症の症状は、まずは低血糖によって誘発された自律神経系の
変化に基づく反応から始まります。
個人差がありますが60mg/dl~70mg/dl以下になると、
自律神経症状(アドレナリンなどの分泌による症状)が出現します。
自覚症状:不安、心悸亢進、動悸
他覚所見:発汗、蒼白、低体温、頻脈、振戦、高血圧、不整脈・・・
次いで血糖値が50mg/dl以下になると、
中枢神経系の機能不全による症状が出現します。
中枢神経機能低下症状
自覚症状:頭痛、かすみ目、複視、異常知覚、嘔気、眠気、倦怠感・・・
他覚所見:錯乱、奇異行動、興奮、譫妄、傾眠、失語、麻痺、痙攣、昏睡・・・
私の血糖値は35mg/dlでしたから、
通常なら、上記の低血糖症状が出現して当たり前なのですが、
基準値よりはるかに高値の血中ケトン体が脳のエネルギー源となって、
低血糖症状から、身体を守ってくれたのです。
ケトン体、とても頼りになる良い奴ですね。
江部康二
2022年03月26日 (土)
『22/03/26 モン吉
流れている血液の濃淡▼江部先生、こんにちは
糖質制限は16年目に入りますが、お陰様でHbA1cはずっと6以下を保てています。
ありがとうございます。
長年のHbA1c検査で時々?と思う事があります。
年末や正月で結構糖質を摂ってしまって、2月の検査は少し悪くなっているだろうなと思っての結果が、前回と同じだったり0.1良くなっていたり、逆に今回は少し良くなっていると思っていたら、0.1~0.2悪くなっていたりという事がたまに有ります。
測定器の誤差もあるのでしょうが、それ以外に流れている血液の濃淡と言っていいのか分かりませんが、あるのでしょうか?
腕から採血しますが、例えば最初の採決から10秒後、30秒後、1分後、3分後等の時間差でA1cや他のデーターにも差が出てくるのでしょうか?
出る場合どの程度あり得るのでしょうか?
又、そのような採決時間差による検査をしたデーターはあるのでしょうか?
数値に一喜一憂してはいけないのですが、小心者の私は一喜一憂してしまいます。
お時間のある時に、教えて頂ければ幸いです。』
こんにちは。
モン吉さんから、HbA1cの検査データの差異について、コメント・質問を頂きました。
まず、以下の緑文字の米国の糖尿病退役軍人285,705人の研究で、
A1c値は冬に高く、夏に低く、0.22の差がありました。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。
つまり28万人という大規模な研究では、
平均血糖値は夏に低く、冬に高いということとなります。
『毎月のヘモグロビンA1c値の季節的パターン
American Journal of Epidemiology, Volume 161, Issue 6, 15 March 2005, Pages 565-574,
要約
この研究の目的は、米国の糖尿病退役軍人における2年間(1998年10月から2000年9月まで)の月間ヘモグロビンA1c(A1c)値の季節変動を調査することでした。
研究コホートには、856,181回のA1c検査を受けた285,705人の退役軍人が含まれていました。
著者らは、全例および年齢、性別、人種、インスリン使用、および気候地域によって定義された亜集団の月平均A1c値を計算しました。
A1c値は冬に高く、夏に低く、0.22の差がありました。・・・ 以下略 』
『腕から採血しますが、
例えば最初の採決から10秒後、30秒後、1分後、3分後等の時間差でA1cや他のデーターにも差が出てくるのでしょうか?
出る場合どの程度あり得るのでしょうか?』
HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映しているので、
採決後の時間差などには影響されません。
貧血検査、肝機能・腎機能・膵機能検査、電解質(カリウムやナトリウムなど)検査などの一般的な検査も
採決後30秒でも30分でも3時間でも6時間でも、問題はありません。
診療所の採血では、朝9時に採血して、検査機関がそれを回収に来るのが、
午後1時とかになりますが大丈夫です。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られ、血液中を循環し寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3、4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は、
過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映していると考えればよいことになります。
血糖値は、空腹時や食後で変動するのに対し、
HbA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があります。
すなわち、血糖値は常に変化していますが、HbA1cは血中濃度が安定しています。
『又、そのような採決時間差による検査をしたデーターはあるのでしょうか?』
採血時間差による検査データ調査などはないと思います。
ただ、午前9時に採血した人も、検査機関が回収にくる午後1時直前に採血した人も
検査データの差は、とくにないと思います。
『採血そのものに時間がかかった場合』
①赤血球が壊れて血清が赤く染まることがあります。
こうなると元々赤血球の中に含まれる成分が血清中に溶け出して
正確な検査結果が得られません。
例えば、血清カリウム値が異常高値となりますが、
これは本当の高カリウム血症ではありません。
②採血後、すぐに抗凝固剤の入っている試験管に入れないと
血液が固まってしまうことがあります。
江部康二
流れている血液の濃淡▼江部先生、こんにちは
糖質制限は16年目に入りますが、お陰様でHbA1cはずっと6以下を保てています。
ありがとうございます。
長年のHbA1c検査で時々?と思う事があります。
年末や正月で結構糖質を摂ってしまって、2月の検査は少し悪くなっているだろうなと思っての結果が、前回と同じだったり0.1良くなっていたり、逆に今回は少し良くなっていると思っていたら、0.1~0.2悪くなっていたりという事がたまに有ります。
測定器の誤差もあるのでしょうが、それ以外に流れている血液の濃淡と言っていいのか分かりませんが、あるのでしょうか?
腕から採血しますが、例えば最初の採決から10秒後、30秒後、1分後、3分後等の時間差でA1cや他のデーターにも差が出てくるのでしょうか?
出る場合どの程度あり得るのでしょうか?
又、そのような採決時間差による検査をしたデーターはあるのでしょうか?
数値に一喜一憂してはいけないのですが、小心者の私は一喜一憂してしまいます。
お時間のある時に、教えて頂ければ幸いです。』
こんにちは。
モン吉さんから、HbA1cの検査データの差異について、コメント・質問を頂きました。
まず、以下の緑文字の米国の糖尿病退役軍人285,705人の研究で、
A1c値は冬に高く、夏に低く、0.22の差がありました。
HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。
つまり28万人という大規模な研究では、
平均血糖値は夏に低く、冬に高いということとなります。
『毎月のヘモグロビンA1c値の季節的パターン
American Journal of Epidemiology, Volume 161, Issue 6, 15 March 2005, Pages 565-574,
要約
この研究の目的は、米国の糖尿病退役軍人における2年間(1998年10月から2000年9月まで)の月間ヘモグロビンA1c(A1c)値の季節変動を調査することでした。
研究コホートには、856,181回のA1c検査を受けた285,705人の退役軍人が含まれていました。
著者らは、全例および年齢、性別、人種、インスリン使用、および気候地域によって定義された亜集団の月平均A1c値を計算しました。
A1c値は冬に高く、夏に低く、0.22の差がありました。・・・ 以下略 』
『腕から採血しますが、
例えば最初の採決から10秒後、30秒後、1分後、3分後等の時間差でA1cや他のデーターにも差が出てくるのでしょうか?
出る場合どの程度あり得るのでしょうか?』
HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映しているので、
採決後の時間差などには影響されません。
貧血検査、肝機能・腎機能・膵機能検査、電解質(カリウムやナトリウムなど)検査などの一般的な検査も
採決後30秒でも30分でも3時間でも6時間でも、問題はありません。
診療所の採血では、朝9時に採血して、検査機関がそれを回収に来るのが、
午後1時とかになりますが大丈夫です。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。
HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。
HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られ、血液中を循環し寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3、4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は、
過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映していると考えればよいことになります。
血糖値は、空腹時や食後で変動するのに対し、
HbA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があります。
すなわち、血糖値は常に変化していますが、HbA1cは血中濃度が安定しています。
『又、そのような採決時間差による検査をしたデーターはあるのでしょうか?』
採血時間差による検査データ調査などはないと思います。
ただ、午前9時に採血した人も、検査機関が回収にくる午後1時直前に採血した人も
検査データの差は、とくにないと思います。
『採血そのものに時間がかかった場合』
①赤血球が壊れて血清が赤く染まることがあります。
こうなると元々赤血球の中に含まれる成分が血清中に溶け出して
正確な検査結果が得られません。
例えば、血清カリウム値が異常高値となりますが、
これは本当の高カリウム血症ではありません。
②採血後、すぐに抗凝固剤の入っている試験管に入れないと
血液が固まってしまうことがあります。
江部康二
2022年03月25日 (金)
こんにちは。
今回は、復習を兼ねて、
蛋白質・脂質・糖質の摂取と血糖値上昇に関して、考察してみます。
まず、米国糖尿病学会によれば、
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、
蛋白質・脂質は影響を与えません。
直接という言葉を使用しているのは、
1型糖尿病や2型でもインスリン分泌能が一定以上低下している場合には
蛋白質が糖新生により間接的に血糖値を上げるからです。
脂質は直接的にも、間接的にも、
血糖値をあげませんし、インスリンも分泌させません。
蛋白質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので
摂取しても、健常人や軽症糖尿人では血糖値を上昇させません。
1型糖尿病で、内因性インスリン分泌がなくて、グルカゴン分泌能が普通に
残っている場合は、グルカゴンによる糖新生で、
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させますが、数時間以上持続します。
また2型糖尿病でも『 グルカゴン分泌 > インスリン分泌』の場合は
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させます。
以下の青文字の記載は、高雄病院で検査した、
『蛋白質摂取と血糖値の変化』の
2型糖尿人と1型糖尿人のデータです。
あえてささみだけ食べて実験しました。
2型糖尿病のAさん。60代男性。
2017/2/23(木)
血糖値 インスリン グルカゴン
8:30 139 8.0 151
ささみ200g摂取 210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 140 7.7 190
60分後 151 23.3 257
2時間後 147 26.2 195
3時間後 137 7.5 144
4時間後 127 5.7 100
1型糖尿病のBさん。インスリン強化療法中。10代男性。
ささみ。200g。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
2017/2/17(金)
血糖値 CPR グルカゴン
8:30 115 0.6(1.5~3.5ng/ml) 128(70~174pg/ml)
ささみ200g摂取。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 160 1.0 229
60分後 176 1.3 186
2時間後 193 1.3 154
3時間後 167 1.2 173
4時間後 159 0.9 122
2型糖尿人Aさんは、内因性インスリンはある程度分泌されていますが、グルカゴンの方が優性です。
そのため蛋白質摂取60分後がピークで、12mg血糖値上昇ですので、
1gの蛋白質が、0.26mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、5.7%~5.9%くらいで、コントロール良好です。
1型糖尿人Bさんも、内因性インスリンが少しだけ分泌されていますが、
グルカゴンの方がはるかに優性です。
そのため蛋白質摂取120分後がピークで、78mg血糖値上昇ですので、
1gの蛋白質が、1.7mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、6.0~6.5%くらいで、GAは18から19.5%くらいで、コントロール良好です。
このように、たんぱく質は、直接血糖値を上昇させることはありませんが、
グルカゴンによる糖新生によって、間接的に血糖値を上昇させることがあります。
その場合、以下のA)B)C)の3つのパターンがあると思います。
A)は確定ですし、B)C)はそれに準じると考えられます。
A)1型糖尿病で内因性インスリンがゼロレベルの人は、
たんぱく質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、
間接的にかなり血糖値が上昇する。
高雄病院の1型の患者さん数人の検査で、個人差はあるが、
1gのたんぱく質で、1.0~3.6mg/dl上昇した。
B)2型糖尿病でも、内因性インスリン分泌能がかなり不足している場合は、
たんぱく質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがあると考えられる。
C)たんぱく質分解物のロイシン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸摂取刺激によって、
体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプがあれば、
2型糖尿病でインスリン分泌能が普通に残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇すると思われる。
今まで、2型糖尿病では、基本的にB)パターン以外には、
たんぱく質が間接的に血糖値を上昇させることはないと考えていましたが
C)パターンがあることが明らかとなりました。
頻度がどのくらいあるかは、まだよくわかりませんが、
ブログコメントなどを参考にすると
結構おられるように思います。
なお正常人では、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
血糖値上昇がないと思われます。
日頃、摂取糖質量に比し、血糖値が上昇し過ぎるという2型糖尿人は、
上述の様な、ささみ実験をして、「たんぱく質と血糖上昇」に関して調べてみては如何でしょう。
江部康二
今回は、復習を兼ねて、
蛋白質・脂質・糖質の摂取と血糖値上昇に関して、考察してみます。
まず、米国糖尿病学会によれば、
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、
蛋白質・脂質は影響を与えません。
直接という言葉を使用しているのは、
1型糖尿病や2型でもインスリン分泌能が一定以上低下している場合には
蛋白質が糖新生により間接的に血糖値を上げるからです。
脂質は直接的にも、間接的にも、
血糖値をあげませんし、インスリンも分泌させません。
蛋白質はインスリンとグルカゴンを両方分泌させるので
摂取しても、健常人や軽症糖尿人では血糖値を上昇させません。
1型糖尿病で、内因性インスリン分泌がなくて、グルカゴン分泌能が普通に
残っている場合は、グルカゴンによる糖新生で、
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させますが、数時間以上持続します。
また2型糖尿病でも『 グルカゴン分泌 > インスリン分泌』の場合は
蛋白質が間接的に血糖値を上昇させます。
以下の青文字の記載は、高雄病院で検査した、
『蛋白質摂取と血糖値の変化』の
2型糖尿人と1型糖尿人のデータです。
あえてささみだけ食べて実験しました。
2型糖尿病のAさん。60代男性。
2017/2/23(木)
血糖値 インスリン グルカゴン
8:30 139 8.0 151
ささみ200g摂取 210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 140 7.7 190
60分後 151 23.3 257
2時間後 147 26.2 195
3時間後 137 7.5 144
4時間後 127 5.7 100
1型糖尿病のBさん。インスリン強化療法中。10代男性。
ささみ。200g。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
2017/2/17(金)
血糖値 CPR グルカゴン
8:30 115 0.6(1.5~3.5ng/ml) 128(70~174pg/ml)
ささみ200g摂取。210kcal。46.0gのたんぱく質。糖質ゼロ。脂質1.58g。
30分後 160 1.0 229
60分後 176 1.3 186
2時間後 193 1.3 154
3時間後 167 1.2 173
4時間後 159 0.9 122
2型糖尿人Aさんは、内因性インスリンはある程度分泌されていますが、グルカゴンの方が優性です。
そのため蛋白質摂取60分後がピークで、12mg血糖値上昇ですので、
1gの蛋白質が、0.26mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、5.7%~5.9%くらいで、コントロール良好です。
1型糖尿人Bさんも、内因性インスリンが少しだけ分泌されていますが、
グルカゴンの方がはるかに優性です。
そのため蛋白質摂取120分後がピークで、78mg血糖値上昇ですので、
1gの蛋白質が、1.7mg血糖値を上昇させています。
HbA1cは、6.0~6.5%くらいで、GAは18から19.5%くらいで、コントロール良好です。
このように、たんぱく質は、直接血糖値を上昇させることはありませんが、
グルカゴンによる糖新生によって、間接的に血糖値を上昇させることがあります。
その場合、以下のA)B)C)の3つのパターンがあると思います。
A)は確定ですし、B)C)はそれに準じると考えられます。
A)1型糖尿病で内因性インスリンがゼロレベルの人は、
たんぱく質摂取でグルカゴンだけが分泌され、
インスリンは分泌できないので、グルカゴンによる糖新生で、
間接的にかなり血糖値が上昇する。
高雄病院の1型の患者さん数人の検査で、個人差はあるが、
1gのたんぱく質で、1.0~3.6mg/dl上昇した。
B)2型糖尿病でも、内因性インスリン分泌能がかなり不足している場合は、
たんぱく質摂取で『グルカゴン分泌量 > インスリン分泌量』 となり、
血糖値が上昇することがあると考えられる。
C)たんぱく質分解物のロイシン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸摂取刺激によって、
体質的に、相対的にインスリン分泌量よりグルカゴン分泌量が多いタイプがあれば、
2型糖尿病でインスリン分泌能が普通に残っていても、たんぱく質摂取で血糖値が上昇すると思われる。
今まで、2型糖尿病では、基本的にB)パターン以外には、
たんぱく質が間接的に血糖値を上昇させることはないと考えていましたが
C)パターンがあることが明らかとなりました。
頻度がどのくらいあるかは、まだよくわかりませんが、
ブログコメントなどを参考にすると
結構おられるように思います。
なお正常人では、蛋白質摂取で
インスリンとグルカゴンが同程度分泌されて、効果が相殺されるので
血糖値上昇がないと思われます。
日頃、摂取糖質量に比し、血糖値が上昇し過ぎるという2型糖尿人は、
上述の様な、ささみ実験をして、「たんぱく質と血糖上昇」に関して調べてみては如何でしょう。
江部康二
2022年03月24日 (木)
こんにちは。
牛乳やヨーグルトを飲んだり食べたりする機会は
糖尿人でもそこそこあると思います。
そこで、2型糖尿人が牛乳やヨーグルトをを飲んだら、
血糖値の上昇はどうなるかと思い、以前自分で実験してみました。
牛乳とヨーグルトに含まれている糖質の差はどの程度あるのでしょう。
そして、両者を摂取したあとの、血糖値の上昇に差はあるのでしょうか。
今回は、これらについて、考察してみます。
まず、牛乳100ml中に5gの糖質が含まれていますが、
この糖質のほぼ全てが乳糖です。
一方、ヨーグルトに含まれている糖質は、乳糖だけではありません。
ヨーグルトは発酵乳に分類されます。
プレーンヨーグルトも100ml中に5gの糖質です。
「発酵乳は乳糖が牛乳よりも20~30%減少し、少量のガラクトース(0.2~1.3%)とブドウ糖(通常は痕跡)になり、これが乳酸に変化する。乳酸が生成しすぎると乳酸菌の生育が止まるので乳糖は完全に消費されない。普通乳酸は0.85~1.2%生成する。」
以上のことから発酵乳(ヨーグルト)に含まれる糖質は、
<乳糖+ガラクトース>
ということになります。
「乳酸」は、分類上は短鎖脂肪酸に含まれますが、血糖は上昇させません。
ガラクトースの血糖上昇作用はブドウ糖より低く、果糖(フルクトース)並のようです。
ブドウ糖は「通常は痕跡」レベルだそうです。
従いましてプレーンヨーグルト摂取による血糖上昇要因は、
乳糖と乳糖分解後のガラクトースが主です。
牛乳の糖質は全て乳糖なのに対して、ヨーグルトの糖質は<乳糖+ガラクトース>です。
従って、100g中に5gと、同量の糖質であれば、
ヨーグルトは牛乳よりは血糖上昇が少ない可能性が高いですね。
なお、日本人やアジア人に多い乳糖不耐症の場合は、
ラクターゼ(乳糖分解酵素)が少ないです。
ラクターゼは乳糖を分解して、ガラクトースとブドウ糖にします。
乳糖不耐症では、乳糖が分解できないかできても少量なので、
血糖値の上昇はラクターゼを正常に持っている人に比べると少ない可能性が高いですね。
通常は1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を3mg上昇させます。
欧米人が牛乳を飲んだ場合は、乳糖を100%分解してブドウ糖とガラクトースになります。
ガラクトースはエネルギーを含有していて100%体内に吸収されますが、
ガラクトースの血糖上昇作用は果糖と同様にきわめて少ないです。
そうすると1gの乳糖は、3mg血糖上昇させることはなく、
それより少ないと考えられます。
しかし、日本人やアジア人では、乳糖分解酵素がどの程度残っているかによりますが、
乳糖の分解が少ないので1gの乳糖による血糖上昇は、
1~2mg以下のこともありうると思います。
以下、私自身(2型糖尿人)で実験してみました。
午後5:30 空腹時血糖値:126mg
明治牛乳、200ml、炭水化物9.9g、食物繊維0。
午後6:30血糖値:148mg・・・22mg上昇
私の場合、牛乳は、1gの乳糖が2.2mg血糖値を上昇させています。
しかし、炊いたご飯やパンのように、
1gの糖質が3mg血糖値を上昇はさせていません。
私にはあるていど乳糖分解酵素が残っているので、
牛乳を飲んでも下痢をすることはないし、かなり吸収されています。
私は乳糖分解酵素は、ほとんど普通に残っていて、
乳糖(ラクトース)を分解して、ブドウ糖とガラクトースとして吸収しているけれど、
ガラクトース分はあまり血糖値を上げないので、
1gの乳糖が血糖値を、2.2mg上昇させたと考えられます。
乳糖が血糖値をどのていど上昇させるかは、
乳糖分解酵素の残存量により、かなり個人差がありそうですね。
次に、ヨーグルトで実験してみました。
空腹時血糖値:107mg
小岩井ヨーグルト209g摂取(100g中に4.6gなので、9.6gの糖質)
1時間後血糖値:117mg
ヨーグルト成分の中の9.6gの糖質
を食べて、血糖値は10mgの上昇。
ヨーグルトの場合は、糖質は<乳糖+ガラクトース>なので、9.6gのうち、
乳糖分だけだと、少し少ないはずです。
結果として、ヨーグルトでは、1gの糖質が、1mgくらいしか血糖値を上昇させていませんでした。
私の場合は、牛乳の糖質に対してヨーグルトの糖質は、
約半分の血糖上昇ですんだということとなります。
個人差はあると思いますが、参考にして頂ければ幸いです。
ヨーグルトなら200g食べても、血糖値は10mgしか上昇しません。
この実験で少しヨーグルトが食べやすくなりました。(^^)
今回のブログ記事は、
元(株)江崎グリコ研究員・八木章さんにアドバイスをいただきました。
八木さん、ありがとうございました。
江部康二
☆☆☆
追記
私は2型糖尿人です。
2002年、52才のとき発症(発覚)です。
私の場合、
A)1gの糖質(穀物の澱粉、ブドウ糖、砂糖など)が
約3mg血糖値を上昇させます。
B)牛乳の糖質(乳糖)1gが、血糖値を約2.2mg上昇
させます。
つまり乳糖は普通の糖質の2/3くらい私の血糖値を
上昇させます。
C)ヨーグルトの糖質(乳糖+ガラクトース)1gが、血糖
値を約1mg上昇させます。
つまりヨーグルトの糖質は普通の糖質の、1/3くらい
私の血糖値を上昇させます。
*私の場合、いろんな食材で食後血糖値のピークを測定しましたが
ほぼ常に60分値がピークでした。
*私は成人後、20才代とか、牛乳を500mlとか1Lとか
飲んだこともありますが、下痢も何もないので、私は
比較的乳糖分解酵素が多く残存しているタイプと考
えられます。
*牛乳を少し飲むと下痢する人は、乳糖分解酵素が
あまり残存していないタイプなので、牛乳を少々飲ん
でも血糖値は上昇しにくいはずですが、そもそもあま
り飲めないですね。
牛乳やヨーグルトを飲んだり食べたりする機会は
糖尿人でもそこそこあると思います。
そこで、2型糖尿人が牛乳やヨーグルトをを飲んだら、
血糖値の上昇はどうなるかと思い、以前自分で実験してみました。
牛乳とヨーグルトに含まれている糖質の差はどの程度あるのでしょう。
そして、両者を摂取したあとの、血糖値の上昇に差はあるのでしょうか。
今回は、これらについて、考察してみます。
まず、牛乳100ml中に5gの糖質が含まれていますが、
この糖質のほぼ全てが乳糖です。
一方、ヨーグルトに含まれている糖質は、乳糖だけではありません。
ヨーグルトは発酵乳に分類されます。
プレーンヨーグルトも100ml中に5gの糖質です。
「発酵乳は乳糖が牛乳よりも20~30%減少し、少量のガラクトース(0.2~1.3%)とブドウ糖(通常は痕跡)になり、これが乳酸に変化する。乳酸が生成しすぎると乳酸菌の生育が止まるので乳糖は完全に消費されない。普通乳酸は0.85~1.2%生成する。」
以上のことから発酵乳(ヨーグルト)に含まれる糖質は、
<乳糖+ガラクトース>
ということになります。
「乳酸」は、分類上は短鎖脂肪酸に含まれますが、血糖は上昇させません。
ガラクトースの血糖上昇作用はブドウ糖より低く、果糖(フルクトース)並のようです。
ブドウ糖は「通常は痕跡」レベルだそうです。
従いましてプレーンヨーグルト摂取による血糖上昇要因は、
乳糖と乳糖分解後のガラクトースが主です。
牛乳の糖質は全て乳糖なのに対して、ヨーグルトの糖質は<乳糖+ガラクトース>です。
従って、100g中に5gと、同量の糖質であれば、
ヨーグルトは牛乳よりは血糖上昇が少ない可能性が高いですね。
なお、日本人やアジア人に多い乳糖不耐症の場合は、
ラクターゼ(乳糖分解酵素)が少ないです。
ラクターゼは乳糖を分解して、ガラクトースとブドウ糖にします。
乳糖不耐症では、乳糖が分解できないかできても少量なので、
血糖値の上昇はラクターゼを正常に持っている人に比べると少ない可能性が高いですね。
通常は1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を3mg上昇させます。
欧米人が牛乳を飲んだ場合は、乳糖を100%分解してブドウ糖とガラクトースになります。
ガラクトースはエネルギーを含有していて100%体内に吸収されますが、
ガラクトースの血糖上昇作用は果糖と同様にきわめて少ないです。
そうすると1gの乳糖は、3mg血糖上昇させることはなく、
それより少ないと考えられます。
しかし、日本人やアジア人では、乳糖分解酵素がどの程度残っているかによりますが、
乳糖の分解が少ないので1gの乳糖による血糖上昇は、
1~2mg以下のこともありうると思います。
以下、私自身(2型糖尿人)で実験してみました。
午後5:30 空腹時血糖値:126mg
明治牛乳、200ml、炭水化物9.9g、食物繊維0。
午後6:30血糖値:148mg・・・22mg上昇
私の場合、牛乳は、1gの乳糖が2.2mg血糖値を上昇させています。
しかし、炊いたご飯やパンのように、
1gの糖質が3mg血糖値を上昇はさせていません。
私にはあるていど乳糖分解酵素が残っているので、
牛乳を飲んでも下痢をすることはないし、かなり吸収されています。
私は乳糖分解酵素は、ほとんど普通に残っていて、
乳糖(ラクトース)を分解して、ブドウ糖とガラクトースとして吸収しているけれど、
ガラクトース分はあまり血糖値を上げないので、
1gの乳糖が血糖値を、2.2mg上昇させたと考えられます。
乳糖が血糖値をどのていど上昇させるかは、
乳糖分解酵素の残存量により、かなり個人差がありそうですね。
次に、ヨーグルトで実験してみました。
空腹時血糖値:107mg
小岩井ヨーグルト209g摂取(100g中に4.6gなので、9.6gの糖質)
1時間後血糖値:117mg
ヨーグルト成分の中の9.6gの糖質
を食べて、血糖値は10mgの上昇。
ヨーグルトの場合は、糖質は<乳糖+ガラクトース>なので、9.6gのうち、
乳糖分だけだと、少し少ないはずです。
結果として、ヨーグルトでは、1gの糖質が、1mgくらいしか血糖値を上昇させていませんでした。
私の場合は、牛乳の糖質に対してヨーグルトの糖質は、
約半分の血糖上昇ですんだということとなります。
個人差はあると思いますが、参考にして頂ければ幸いです。
ヨーグルトなら200g食べても、血糖値は10mgしか上昇しません。
この実験で少しヨーグルトが食べやすくなりました。(^^)
今回のブログ記事は、
元(株)江崎グリコ研究員・八木章さんにアドバイスをいただきました。
八木さん、ありがとうございました。
江部康二
☆☆☆
追記
私は2型糖尿人です。
2002年、52才のとき発症(発覚)です。
私の場合、
A)1gの糖質(穀物の澱粉、ブドウ糖、砂糖など)が
約3mg血糖値を上昇させます。
B)牛乳の糖質(乳糖)1gが、血糖値を約2.2mg上昇
させます。
つまり乳糖は普通の糖質の2/3くらい私の血糖値を
上昇させます。
C)ヨーグルトの糖質(乳糖+ガラクトース)1gが、血糖
値を約1mg上昇させます。
つまりヨーグルトの糖質は普通の糖質の、1/3くらい
私の血糖値を上昇させます。
*私の場合、いろんな食材で食後血糖値のピークを測定しましたが
ほぼ常に60分値がピークでした。
*私は成人後、20才代とか、牛乳を500mlとか1Lとか
飲んだこともありますが、下痢も何もないので、私は
比較的乳糖分解酵素が多く残存しているタイプと考
えられます。
*牛乳を少し飲むと下痢する人は、乳糖分解酵素が
あまり残存していないタイプなので、牛乳を少々飲ん
でも血糖値は上昇しにくいはずですが、そもそもあま
り飲めないですね。
2022年03月23日 (水)
こんにちは。
少し前ですが、
「卵やコレステロールを多く摂取する人は、心疾患リスク増大の可能性あり」
2019.03.18 Mon posted at 18:28 JST
という米国CNNニュースの報道がありました。
https://www.cnn.co.jp/fringe/35134378.html#:~:text=%EF%BC%88%EF%BC%A3%EF%BC%AE%EF%BC%AE%EF%BC%89%20%EF%BC%91%E9%80%B1%E9%96%93%E3%81%AB%E5%8D%B5,%EF%BC%AA%EF%BC%A1%EF%BC%AD%EF%BC%A1%E3%81%AB%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82
(JAMA. 2019; 321(11):1081-1095.)
この論文が掲載されたのは一流医学雑誌JAMAですから、
一見、信頼度は高そうに思えます。
読者の皆さんにも、複数コメントを頂きましたが、
コレステロール問題への関心の高さが伺えます。
さて、
A)
米農務省は「コレステロールは過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない」として、
摂取量を1日300ミリグラム未満に抑えていた食事指針を2015年見直す方向です。
B)
厚生労働省は、5年おきに改定する「食事摂取基準」の2015年版で、
科学的根拠が得られなかったとしてコレステロールの摂取基準を撤廃しました。
C)
2015年5月1日
日本動脈硬化学会が、「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」との声明を発表しました。
A)B)C)のいずれもコレステロール摂取基準撤廃です。
これでもう、コレステロール摂取問題は解決と思っていたのですが、
またぞろ、「コレステロール危険説」登場ですから、なかなか懲りない人達がいるのですね。
米農務省、日本の厚生労働省、日本動脈硬化学会のいずれも
多数のコレステロール摂取に関する論文を検討しての結論です。
今回のJAMAの論文は、たった一つの論文に過ぎませんので、
多数の論文を検討した結果のA)B)C)のほうが、はるかに信頼度は高いと言えます。
また、清水先生がご指摘のように、
『(ドクターシミズのひとりごとhttp://promea2014.com/blog/?p=7525)
この論文、参加者を平均して17年間追跡しています。
参加者は食事のアンケートでデータを収集しているのですが、
食事の調査はたったの1回だけでした。
アンケートでは前年や前月何を食べたかを調査票に書きますが、
人の記憶はあいまいであり、アンケート自体が正確ではない可能性があります。
私自身で考えてみても、前年や前月の食事の記憶などないに等しいです。
そして、たった1回の調査で、参加者が17年間同じ食事をし続けたということが前提となっている調査なので、
それだけでも信頼度が?です。』
清水先生、いつも迅速で的確なご見解をありがとうございます。 m(_ _)m
大変、参考になります。
結論です。
今回のJAMA論文の信頼度は低く、
A)B)C)の見解のほうが、はるかに信頼度は高いと言えます。
従いまして、安心して、卵など、コレステロールを多く含む食材を
できれば、糖質制限食の範疇で、食べてよいと思います。
江部康二
☆☆☆
以下の青字の記載は、当該のCNNニュースの要約です。
【CNNニュース 2019.03.18 Mon posted at 18:28 CNN.co.jp
週に3個以上の卵を摂取、心疾患のリスク増大か 米研究
週3個以上の卵や1日当たり300ミリグラムのコレステロールを摂取する人は
心疾患や早死にのリスクが高まる可能性があるとの調査結果が明らかになった
(CNN) 1週間に卵を3~4個食べる人や、食事から1日当たり300ミリグラムのコレステロールを摂取する人は、
そうでない人に比べて心疾患や早死にのリスクが高い――。
そんな調査結果がこのほど医学誌JAMAに発表された。
論文を執筆した米ノースウエスタン大学のビクター・ゾン氏によると、
卵の黄身は特にコレステロール値が高く、卵1個には大きなもので約186ミリグラムのコレステロールが含まれる。
研究チームは、
2万9000人あまりについて平均で17年半にわたって追跡調査した米国内の6研究グループのデータを詳しく調べた。
その結果、心血管系の疾患を発症していたのは計5400人で、
うち1302人は脳卒中(死者を含む)、1897人は心不全(同)を発症し、
113人はそのほかの心疾患のため死亡していた。
それ以外の原因で死亡した患者は6132人だった。
今回の調査では、食事からのコレステロール摂取が1日当たり300ミリグラム増えると、
心疾患に関連したリスクは3.2%高まり、早死にする可能性は4.4%増えるという結果が出た。
卵は1日当たりの消費量が半個増えるごとに、心血管系疾患のリスクは1.1%上昇し、
早死にリスクは1.9%上昇するとしている。
この結果は、過去の研究と矛盾する部分もある。
その理由として、過去の研究では、卵の消費と他の不健康な行動(運動不足や喫煙、
不健康な食生活など)との関係を考慮していなかった可能性が考えられる。
加えて、コレステロールの多い食品は一般的に、飽和脂肪や動物性たんぱく質も多く含まれる。
一方、今回の研究では、そうした要因も包括的に評価したとゾン氏らは述べている。
今回の研究にはかかわっていないコロラド大学医学校のロバート・エッケル氏は、
医師にとっても患者にとっても、このテーマは重要だと指摘する。
同氏によると、卵の消費や食事からのコレステロール摂取と、
心血管系疾患との関係は長年の論議の的になっているが、最近の研究では重要性は薄いと考えられていた。
しかし今回の研究は従来の研究に比べてはるかに包括性が高いとエッケル氏は指摘、
「心臓にいい食生活に対し、卵の消費やコレステロール摂取が及ぼす悪影響を考えると、
コレステロールの多い食品の摂取を制限することの重要性を見過ごすことはできない」と解説している。】
少し前ですが、
「卵やコレステロールを多く摂取する人は、心疾患リスク増大の可能性あり」
2019.03.18 Mon posted at 18:28 JST
という米国CNNニュースの報道がありました。
https://www.cnn.co.jp/fringe/35134378.html#:~:text=%EF%BC%88%EF%BC%A3%EF%BC%AE%EF%BC%AE%EF%BC%89%20%EF%BC%91%E9%80%B1%E9%96%93%E3%81%AB%E5%8D%B5,%EF%BC%AA%EF%BC%A1%EF%BC%AD%EF%BC%A1%E3%81%AB%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82
(JAMA. 2019; 321(11):1081-1095.)
この論文が掲載されたのは一流医学雑誌JAMAですから、
一見、信頼度は高そうに思えます。
読者の皆さんにも、複数コメントを頂きましたが、
コレステロール問題への関心の高さが伺えます。
さて、
A)
米農務省は「コレステロールは過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない」として、
摂取量を1日300ミリグラム未満に抑えていた食事指針を2015年見直す方向です。
B)
厚生労働省は、5年おきに改定する「食事摂取基準」の2015年版で、
科学的根拠が得られなかったとしてコレステロールの摂取基準を撤廃しました。
C)
2015年5月1日
日本動脈硬化学会が、「食事で体内のコレステロール値は大きく変わらない」との声明を発表しました。
A)B)C)のいずれもコレステロール摂取基準撤廃です。
これでもう、コレステロール摂取問題は解決と思っていたのですが、
またぞろ、「コレステロール危険説」登場ですから、なかなか懲りない人達がいるのですね。
米農務省、日本の厚生労働省、日本動脈硬化学会のいずれも
多数のコレステロール摂取に関する論文を検討しての結論です。
今回のJAMAの論文は、たった一つの論文に過ぎませんので、
多数の論文を検討した結果のA)B)C)のほうが、はるかに信頼度は高いと言えます。
また、清水先生がご指摘のように、
『(ドクターシミズのひとりごとhttp://promea2014.com/blog/?p=7525)
この論文、参加者を平均して17年間追跡しています。
参加者は食事のアンケートでデータを収集しているのですが、
食事の調査はたったの1回だけでした。
アンケートでは前年や前月何を食べたかを調査票に書きますが、
人の記憶はあいまいであり、アンケート自体が正確ではない可能性があります。
私自身で考えてみても、前年や前月の食事の記憶などないに等しいです。
そして、たった1回の調査で、参加者が17年間同じ食事をし続けたということが前提となっている調査なので、
それだけでも信頼度が?です。』
清水先生、いつも迅速で的確なご見解をありがとうございます。 m(_ _)m
大変、参考になります。
結論です。
今回のJAMA論文の信頼度は低く、
A)B)C)の見解のほうが、はるかに信頼度は高いと言えます。
従いまして、安心して、卵など、コレステロールを多く含む食材を
できれば、糖質制限食の範疇で、食べてよいと思います。
江部康二
☆☆☆
以下の青字の記載は、当該のCNNニュースの要約です。
【CNNニュース 2019.03.18 Mon posted at 18:28 CNN.co.jp
週に3個以上の卵を摂取、心疾患のリスク増大か 米研究
週3個以上の卵や1日当たり300ミリグラムのコレステロールを摂取する人は
心疾患や早死にのリスクが高まる可能性があるとの調査結果が明らかになった
(CNN) 1週間に卵を3~4個食べる人や、食事から1日当たり300ミリグラムのコレステロールを摂取する人は、
そうでない人に比べて心疾患や早死にのリスクが高い――。
そんな調査結果がこのほど医学誌JAMAに発表された。
論文を執筆した米ノースウエスタン大学のビクター・ゾン氏によると、
卵の黄身は特にコレステロール値が高く、卵1個には大きなもので約186ミリグラムのコレステロールが含まれる。
研究チームは、
2万9000人あまりについて平均で17年半にわたって追跡調査した米国内の6研究グループのデータを詳しく調べた。
その結果、心血管系の疾患を発症していたのは計5400人で、
うち1302人は脳卒中(死者を含む)、1897人は心不全(同)を発症し、
113人はそのほかの心疾患のため死亡していた。
それ以外の原因で死亡した患者は6132人だった。
今回の調査では、食事からのコレステロール摂取が1日当たり300ミリグラム増えると、
心疾患に関連したリスクは3.2%高まり、早死にする可能性は4.4%増えるという結果が出た。
卵は1日当たりの消費量が半個増えるごとに、心血管系疾患のリスクは1.1%上昇し、
早死にリスクは1.9%上昇するとしている。
この結果は、過去の研究と矛盾する部分もある。
その理由として、過去の研究では、卵の消費と他の不健康な行動(運動不足や喫煙、
不健康な食生活など)との関係を考慮していなかった可能性が考えられる。
加えて、コレステロールの多い食品は一般的に、飽和脂肪や動物性たんぱく質も多く含まれる。
一方、今回の研究では、そうした要因も包括的に評価したとゾン氏らは述べている。
今回の研究にはかかわっていないコロラド大学医学校のロバート・エッケル氏は、
医師にとっても患者にとっても、このテーマは重要だと指摘する。
同氏によると、卵の消費や食事からのコレステロール摂取と、
心血管系疾患との関係は長年の論議の的になっているが、最近の研究では重要性は薄いと考えられていた。
しかし今回の研究は従来の研究に比べてはるかに包括性が高いとエッケル氏は指摘、
「心臓にいい食生活に対し、卵の消費やコレステロール摂取が及ぼす悪影響を考えると、
コレステロールの多い食品の摂取を制限することの重要性を見過ごすことはできない」と解説している。】
2022年03月22日 (火)
【22/03/21 らこ
食後血糖値タイプで合併症発症者には無効
「日本の健康診断」は、江部先生のように『日本糖尿病学会基準の糖尿病に至っているが合併症皆無』の人には極めて有効です。しかし、私らこ のように
◎食後高血糖タイプだけで「糖尿病合併症発症」には全く無効
です。糖尿病合併症として
1. 糖尿病性神経症
2. アルツハイマー型認知症
と「糖尿病4大合併症」の内、2つ併発していますから重症です><
「しめじ」の順序で発症とのことなので、「し」で止まっていた、と考えてます。
◎糖尿病性神経症とアルツハイマー型認知症はどちらが先に発症するか? は不明
尚、スーパー糖質制限食実行1週間で、アルツハイマー型認知症寛解、糖尿病性神経症は完治だか寛解しました。
これはひとえに江部先生のお蔭様です。】
こんにちは。
らこさんから
『「食後高血糖タイプ」の境界型糖尿病診断には
現行の健康診断は役に立たない』
とのご指摘をコメント頂きました。
仰る通りと思います。
早朝空腹時血糖値とHbA1cの検査だけでは
食後高血糖の人を見逃してしまいます。
つまり、
正常型→IGT(食後高血糖)→糖尿病発症
という一番多いパターンを見逃してしまうということです。
現実にらこさんは、食後高血糖の段階で
糖尿病神経障害とアルツハイマー病を合併しておられます。
糖尿病3大合併症(しめじ)
①糖尿病神経障害・・・・・・し
②糖尿病網膜症・・・・・・・・め
③糖尿病腎症・・・・・・・・・・じ
④アルツハイマー型認知症
『◎糖尿病性神経症とアルツハイマー型認知症はどちらが先に発症するか? は不明』
通常は、糖尿病神経障害が先に発症し、
そのうちアルツハイマー型認知症発症とされています。
しかし脳をキッチリ検査すれば、
アルツハイマー型認知症発症を早期に発見できる可能性があります。
脳FDG-PET(エフディージーペット)を実施すると、
画像的にアルツハイマー型認知症の診断ができます。
しかし、健康保険が効かず高価なのが難点です。
『スーパー糖質制限食実行1週間で、
アルツハイマー型認知症寛解、糖尿病性神経症は完治だか寛解しました』
完治は困難なので、寛解状態だと思いますが、症状がないのは素晴らしいです。
現在、らこさんの脳細胞は、ケトン体をエネルギー源にしています。
そしてらこさんの脳細胞は、ブドウ糖を利用できない状態であり、
糖質を食べて、血中ケトン体値が低下すると、
速やかに認知症の症状が出現するのだと考えられます。
今後も、美味しく楽しくスーパー糖質制限食実践で、健康長寿を目指しましょう。
江部康二
食後血糖値タイプで合併症発症者には無効
「日本の健康診断」は、江部先生のように『日本糖尿病学会基準の糖尿病に至っているが合併症皆無』の人には極めて有効です。しかし、私らこ のように
◎食後高血糖タイプだけで「糖尿病合併症発症」には全く無効
です。糖尿病合併症として
1. 糖尿病性神経症
2. アルツハイマー型認知症
と「糖尿病4大合併症」の内、2つ併発していますから重症です><
「しめじ」の順序で発症とのことなので、「し」で止まっていた、と考えてます。
◎糖尿病性神経症とアルツハイマー型認知症はどちらが先に発症するか? は不明
尚、スーパー糖質制限食実行1週間で、アルツハイマー型認知症寛解、糖尿病性神経症は完治だか寛解しました。
これはひとえに江部先生のお蔭様です。】
こんにちは。
らこさんから
『「食後高血糖タイプ」の境界型糖尿病診断には
現行の健康診断は役に立たない』
とのご指摘をコメント頂きました。
仰る通りと思います。
早朝空腹時血糖値とHbA1cの検査だけでは
食後高血糖の人を見逃してしまいます。
つまり、
正常型→IGT(食後高血糖)→糖尿病発症
という一番多いパターンを見逃してしまうということです。
現実にらこさんは、食後高血糖の段階で
糖尿病神経障害とアルツハイマー病を合併しておられます。
糖尿病3大合併症(しめじ)
①糖尿病神経障害・・・・・・し
②糖尿病網膜症・・・・・・・・め
③糖尿病腎症・・・・・・・・・・じ
④アルツハイマー型認知症
『◎糖尿病性神経症とアルツハイマー型認知症はどちらが先に発症するか? は不明』
通常は、糖尿病神経障害が先に発症し、
そのうちアルツハイマー型認知症発症とされています。
しかし脳をキッチリ検査すれば、
アルツハイマー型認知症発症を早期に発見できる可能性があります。
脳FDG-PET(エフディージーペット)を実施すると、
画像的にアルツハイマー型認知症の診断ができます。
しかし、健康保険が効かず高価なのが難点です。
『スーパー糖質制限食実行1週間で、
アルツハイマー型認知症寛解、糖尿病性神経症は完治だか寛解しました』
完治は困難なので、寛解状態だと思いますが、症状がないのは素晴らしいです。
現在、らこさんの脳細胞は、ケトン体をエネルギー源にしています。
そしてらこさんの脳細胞は、ブドウ糖を利用できない状態であり、
糖質を食べて、血中ケトン体値が低下すると、
速やかに認知症の症状が出現するのだと考えられます。
今後も、美味しく楽しくスーパー糖質制限食実践で、健康長寿を目指しましょう。
江部康二
2022年03月21日 (月)
こんにちは。
今回は、健康診断の意義について、考えてみます。
かつて医師になりたての頃、自営業などのおじさんなどで、
「自分は元気でどこも悪くないから健康診断など必要ない。」
などと豪語していた人が、
いきなり心筋梗塞とか、いきなり眼底出血で視力低下とかいうことが、
結構ありました。
ベースに糖尿病などが隠れているとそういうことがあり得ます。
多くの場合、血糖が200mg、300mgあっても無症状であり、
血液検査をしない限りわかりませんので、このようなケースがあったのです。
近年、会社などでは、1/年の健康診断が、法律で義務づけられているので
糖尿病や高血圧でも早期発見が可能となっています。
糖尿病に関しては、
HbA1c6.5%以上、早朝空腹時血糖値126mg/dl以上で
糖尿病型と基準が決まっているので、わかりやすいです。
尿検査では、尿たんぱくや尿潜血など腎臓病(IgA腎症など)のチェックができます。
尿中微量アルブミン検査で、糖尿病腎症が一番初期の段階でチェックできます。
大腸がんが増えているので、検便も有用です。
近年は大便を1日に1回ずつ2日に分けて採取する「便潜血2日法」が主流で、
通常は検査当日を含む3日以内の便で検査します。
胸部X線写真や心電図もあります。
日本では、欧米に比べて結核もまだまだ多いし、
肺がんも、大腸がん、胃がんについで第三位なので、油断は禁物なのです。
血圧は、健康診断とか病院で測定すると、普段よりかなり高めになる人が多いです。
従って、健康診断で高血圧と言われて、すぐに内服薬を飲むのではなくて、
家で朝の血圧を測定してみるのが、良いのです。
京都府立医大糖尿病治療学講師・牛込恵美医師の
『血圧測定データに基づく10年間の研究データ報告』
によると
①2型糖尿病患者において、早朝に家庭で測定した収縮期血圧(SBP)の最大値は、
合併症の一つである糖尿病腎症の予測因子になり得る
②家庭血圧が大事で、病院で測定した血圧は参考にならない。
③特に朝の収縮期血圧が大事で、拡張期血圧は参考にならない。
④120/未満が、糖尿病腎症予防には、一番安全。
⑤季節変動のある血圧は、前もって処方して、自己管理が良い。
つまり、朝測定した家庭血圧が最も信頼度が高いのです。
さて、問題となるのは血清コレステロール値や中性脂肪値です。
いずれも、早朝空腹時のデータが信頼度が高いです。
基準値
総コレステロール:140~149mg/dl
HDLコレステロール:40mg/dl以上
LDLコレステロール:60~119mg/dl
中性脂肪:30~149mg/dl
一般の医療機関では、健康診断でLDLコレステロール値が120mg/dl以上あると
高コレステロール血症と診断されてしまい、即スタチン系製剤を処方されることが
よくあります。
しかしここで、よく考える必要があります。
通常、HDLコレステロールが善玉で、LDLコレステロールが悪玉とされていますが、
実はLDLコレステロールにも善玉があるのです。
標準の大きさの善玉のLDLコレステロールは、
肝臓から細胞膜の原料であるコレステロールを末梢組織に運ぶ大切な役割があります。
そこで細胞膜の原料となったあと余ったコレステロールを、
HDLコレステロールとして肝臓まで回収するわけです。
つまり、善玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールは
人体にとって必要不可欠な大事な物質ということです。
悪玉のLDLコレステロールは、
小さくて比重の重い「小粒子LDL-C」と活性酸素を浴びた「酸化LDL-C」の
2種となります。
HDL-Cが低値で、中性脂肪が高値の場合は、これらの悪玉コレステロールが
増加するので、動脈硬化のリスク要因となります。
一方、、HDLコレステロールが60mg/dl以上あり、
中性脂肪値が60mg/dl以下ならば、
小粒子LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールといった悪玉は皆無で、
LDLコレステロール値が180mg/dlとかあっても、全て善玉なので
問題ないのです。
スーパー糖質制限食を実践して早朝空腹時の採血であれば
ほとんどの人で、この目標が達成できます。
あと、脂肪肝の診断は腹部エコー検査で確定するのですが、
血液検査でもあるていど、判断できます。
ブログ読者の皆さん、スーパー糖質制限食を実践されて
美味しく、楽しく、健康長寿を目指しましょう。
江部康二
今回は、健康診断の意義について、考えてみます。
かつて医師になりたての頃、自営業などのおじさんなどで、
「自分は元気でどこも悪くないから健康診断など必要ない。」
などと豪語していた人が、
いきなり心筋梗塞とか、いきなり眼底出血で視力低下とかいうことが、
結構ありました。
ベースに糖尿病などが隠れているとそういうことがあり得ます。
多くの場合、血糖が200mg、300mgあっても無症状であり、
血液検査をしない限りわかりませんので、このようなケースがあったのです。
近年、会社などでは、1/年の健康診断が、法律で義務づけられているので
糖尿病や高血圧でも早期発見が可能となっています。
糖尿病に関しては、
HbA1c6.5%以上、早朝空腹時血糖値126mg/dl以上で
糖尿病型と基準が決まっているので、わかりやすいです。
尿検査では、尿たんぱくや尿潜血など腎臓病(IgA腎症など)のチェックができます。
尿中微量アルブミン検査で、糖尿病腎症が一番初期の段階でチェックできます。
大腸がんが増えているので、検便も有用です。
近年は大便を1日に1回ずつ2日に分けて採取する「便潜血2日法」が主流で、
通常は検査当日を含む3日以内の便で検査します。
胸部X線写真や心電図もあります。
日本では、欧米に比べて結核もまだまだ多いし、
肺がんも、大腸がん、胃がんについで第三位なので、油断は禁物なのです。
血圧は、健康診断とか病院で測定すると、普段よりかなり高めになる人が多いです。
従って、健康診断で高血圧と言われて、すぐに内服薬を飲むのではなくて、
家で朝の血圧を測定してみるのが、良いのです。
京都府立医大糖尿病治療学講師・牛込恵美医師の
『血圧測定データに基づく10年間の研究データ報告』
によると
①2型糖尿病患者において、早朝に家庭で測定した収縮期血圧(SBP)の最大値は、
合併症の一つである糖尿病腎症の予測因子になり得る
②家庭血圧が大事で、病院で測定した血圧は参考にならない。
③特に朝の収縮期血圧が大事で、拡張期血圧は参考にならない。
④120/未満が、糖尿病腎症予防には、一番安全。
⑤季節変動のある血圧は、前もって処方して、自己管理が良い。
つまり、朝測定した家庭血圧が最も信頼度が高いのです。
さて、問題となるのは血清コレステロール値や中性脂肪値です。
いずれも、早朝空腹時のデータが信頼度が高いです。
基準値
総コレステロール:140~149mg/dl
HDLコレステロール:40mg/dl以上
LDLコレステロール:60~119mg/dl
中性脂肪:30~149mg/dl
一般の医療機関では、健康診断でLDLコレステロール値が120mg/dl以上あると
高コレステロール血症と診断されてしまい、即スタチン系製剤を処方されることが
よくあります。
しかしここで、よく考える必要があります。
通常、HDLコレステロールが善玉で、LDLコレステロールが悪玉とされていますが、
実はLDLコレステロールにも善玉があるのです。
標準の大きさの善玉のLDLコレステロールは、
肝臓から細胞膜の原料であるコレステロールを末梢組織に運ぶ大切な役割があります。
そこで細胞膜の原料となったあと余ったコレステロールを、
HDLコレステロールとして肝臓まで回収するわけです。
つまり、善玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールは
人体にとって必要不可欠な大事な物質ということです。
悪玉のLDLコレステロールは、
小さくて比重の重い「小粒子LDL-C」と活性酸素を浴びた「酸化LDL-C」の
2種となります。
HDL-Cが低値で、中性脂肪が高値の場合は、これらの悪玉コレステロールが
増加するので、動脈硬化のリスク要因となります。
一方、、HDLコレステロールが60mg/dl以上あり、
中性脂肪値が60mg/dl以下ならば、
小粒子LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールといった悪玉は皆無で、
LDLコレステロール値が180mg/dlとかあっても、全て善玉なので
問題ないのです。
スーパー糖質制限食を実践して早朝空腹時の採血であれば
ほとんどの人で、この目標が達成できます。
あと、脂肪肝の診断は腹部エコー検査で確定するのですが、
血液検査でもあるていど、判断できます。
ブログ読者の皆さん、スーパー糖質制限食を実践されて
美味しく、楽しく、健康長寿を目指しましょう。
江部康二
2022年03月20日 (日)
【22/03/20 伸之介
「飲酒量目安」
お世話になります。
3月16日(水)の、らこさまに関する記事についての(せつなる)質問です。
私伸之介は十年前に、「膵臓での嚢胞が成長している、要観察」「これは膵炎」(嚢胞の直径寸法により所見が分かれる由)「定期検査を」との指摘を受け、
それが、丁度糖質制限食生活の開始の頃でした。
活性な膵炎でなければ糖質制限食は大丈夫との指導を頂き、
翌年、嚢胞サイズが小さくなり、「膵炎の所見」は無くなりました。
この頃「膵炎の原因は殆どが飲酒」と説かれていました。
(尚、サラリーマン現役時の30年前の定期人間ドッグでも、
「膵臓に嚢胞あり」との所見が記載されている記録が出てきました。)
それをいいことに飲酒生活を謳歌している訳ですが・・・。
質問です。
「①糖質ゼロビール350ml、1缶・②ハイボール350ml、1缶・③焼酎約240ml(25%)を、漏斗でボトルに入れ替えて、その日の量とする。ロックか水割りで飲む。これでも、適量よりかなり多いですが、野放しに飲むよりはましです。
ちなみに①②③は、私自身の日常的な飲酒量ですが、肝機能も正常ですし、膵炎になったこともありません。①②③をテーブルに並べておいて、それ以外のお酒は、戸棚にしまっておきましょう。」
とのコメントでありますが、一晩の摂取量として「①or②or③」なのか、「①+②+③」なのか、どちらでありましょうか?】
伸之介 さん
【1年間の糖質制限食実践で、
囊胞サイズが小さくなり、「膵炎の所見」が無くなった】とは素晴らしいです。
私の飲酒量ですが、誠に遺憾ながら[太字]「①+②+③」[/太字]なので、
軽く「適量」を超えているのです。 ( ̄_ ̄|||)
今は正常範囲ですが、
肝機能検査で異常がでれば、すぐに飲酒量を減らそうという覚悟はできています。
これでも、若い頃に比べたら、随分飲酒量は減らしてはいるのですが・・・。
焼酎も、25%のもので、濃いアルコールは、避けるようにしています。
さてアルコール1gは約7kcalの燃焼エネルギーを有し、
摂取時の利用効率は70%ていどと推定されています。
一方、糖尿病専門医研修ガイドブック 改定第4版 81ページの記載によれば、
アルコールは体重増加作用がないので、
お酒のカロリーは計算しなくてもよいと思います。
そして、アルコール単体では、血糖を上昇させることはありません。
蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)は糖質を含まないので血糖を上昇させません。
醸造酒(ビール、日本酒など)は糖質を含むので血糖値を上昇させます。
<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
糖質ゼロビール(4%)なら750ml
に相当します。
<アルコールのリスク①>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。
それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。
その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。
<アルコールのリスク②>
保健指導リソースガイド
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2017/006667.php に、2017年08月02日、
適量のアルコールでも脳には悪影響が 海馬の萎縮リスクが3倍以上に
というニュースが記載されました。
オックスフォード大学とロンドン大学の研究チームにより、
適量のアルコールが脳にどのような影響をおよぼすのかを検討しています。
研究は「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」(BMJ)に発表されました。
適量のアルコールでも海馬萎縮のリスクがあるとは、
げにアルコール恐るべしです。
<アルコールと血糖低下作用>
ご存知の方も多いと思いますが、アルコールには、血糖低下作用があります。
ただ個人差が大きいので、(A)gのアルコールが血糖値を(B)mg、低下させるというように一律にはいきません。
エネルギー源としては、[アルコール→糖質→脂質→タンパク質]の順で利用されます。
焼酎、ウィスキーなど蒸留酒には糖質は含まれていないので、血糖は全く上昇しません。
しかし、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて、優先的に肝臓で分解されますので、
その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
血中アルコール濃度が上昇している間は、糖新生はブロックされるので、個人差が大きいと思いますが、酒を飲んでいる最中は、血糖値が下がる人もいると思います。
また、一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
アルコールの血糖低下作用については個人差が大きいので、ご注意ください。
なお、SU剤内服中の糖尿人やインスリン注射中の糖尿人は、過度のアルコール摂取により糖新生が阻害されると低血糖になりやすいので要注意です。
正常人でも、空きっ腹で大量のアルコールを摂取すれば、低血糖になる可能性もあります。
<江部康二の酒量は?>
私自身のお酒の摂取量ですが、平均的には、糖質ゼロビール350mlを1缶、ハイボールを350mlを1缶、その後、25%焼酎のロックを240mlです。
焼酎は25%の濃さで、720mlが3日間で空くくらいのペースです。
あるいは、糖質ゼロビール350mlを1缶と赤ワインを1/3本とかです。
糖質ゼロビール(4%)350ml:アルコール分は14ml
角ハイボール(7%)350ml:アルコール分は24.5ml
25%焼酎240ml:アルコール分は60ml
合計:アルコール分98.5ml
従って、私は毎日90ml以上のアルコールを摂取していますので、
世界がん研究基金や米国糖尿病協会の「適量=30ml」は、
確実にオーバーしています。( ̄_ ̄|||)
これは、何とかしなくてはなりません。
とりあえず、ハイボールのアルコール分が結構多いので検討の余地ありですね。
25%の焼酎も180mlくらいに減らそうかと思います。
<結論>
上述のようにアルコールには発ガン性や脂肪肝のリスク、
さらには海馬萎縮のリスクも指摘されていますので、
各自が自己責任で自己管理で適量!?の飲酒ということになるでしょうか?
勿論、私は、アルコール摂取のリスクは充分承知した上で、
自己責任でそれなりに飲酒していきます。 (^^)
江部康二
「飲酒量目安」
お世話になります。
3月16日(水)の、らこさまに関する記事についての(せつなる)質問です。
私伸之介は十年前に、「膵臓での嚢胞が成長している、要観察」「これは膵炎」(嚢胞の直径寸法により所見が分かれる由)「定期検査を」との指摘を受け、
それが、丁度糖質制限食生活の開始の頃でした。
活性な膵炎でなければ糖質制限食は大丈夫との指導を頂き、
翌年、嚢胞サイズが小さくなり、「膵炎の所見」は無くなりました。
この頃「膵炎の原因は殆どが飲酒」と説かれていました。
(尚、サラリーマン現役時の30年前の定期人間ドッグでも、
「膵臓に嚢胞あり」との所見が記載されている記録が出てきました。)
それをいいことに飲酒生活を謳歌している訳ですが・・・。
質問です。
「①糖質ゼロビール350ml、1缶・②ハイボール350ml、1缶・③焼酎約240ml(25%)を、漏斗でボトルに入れ替えて、その日の量とする。ロックか水割りで飲む。これでも、適量よりかなり多いですが、野放しに飲むよりはましです。
ちなみに①②③は、私自身の日常的な飲酒量ですが、肝機能も正常ですし、膵炎になったこともありません。①②③をテーブルに並べておいて、それ以外のお酒は、戸棚にしまっておきましょう。」
とのコメントでありますが、一晩の摂取量として「①or②or③」なのか、「①+②+③」なのか、どちらでありましょうか?】
伸之介 さん
【1年間の糖質制限食実践で、
囊胞サイズが小さくなり、「膵炎の所見」が無くなった】とは素晴らしいです。
私の飲酒量ですが、誠に遺憾ながら[太字]「①+②+③」[/太字]なので、
軽く「適量」を超えているのです。 ( ̄_ ̄|||)
今は正常範囲ですが、
肝機能検査で異常がでれば、すぐに飲酒量を減らそうという覚悟はできています。
これでも、若い頃に比べたら、随分飲酒量は減らしてはいるのですが・・・。
焼酎も、25%のもので、濃いアルコールは、避けるようにしています。
さてアルコール1gは約7kcalの燃焼エネルギーを有し、
摂取時の利用効率は70%ていどと推定されています。
一方、糖尿病専門医研修ガイドブック 改定第4版 81ページの記載によれば、
アルコールは体重増加作用がないので、
お酒のカロリーは計算しなくてもよいと思います。
そして、アルコール単体では、血糖を上昇させることはありません。
蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)は糖質を含まないので血糖を上昇させません。
醸造酒(ビール、日本酒など)は糖質を含むので血糖値を上昇させます。
<アルコールの適量>
世界がん研究基金2007年の勧告では、アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
糖質ゼロビール(4%)なら750ml
に相当します。
<アルコールのリスク①>
世界がん研究基金の2007年の勧告で、アルコール摂取は、「口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん」の確実なリスクであり、「肝臓がん、大腸がん(女性)」 のリスクとなるので要注意です。
それから、過度のアルコール摂取は、肝細胞内での脂肪酸からの中性脂肪の過剰合成を引き起こします。
その一部は肝臓外へ分泌されて高中性脂肪血症の原因となり、一部は肝細胞内に蓄積されて脂肪肝の原因となります。
<アルコールのリスク②>
保健指導リソースガイド
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2017/006667.php に、2017年08月02日、
適量のアルコールでも脳には悪影響が 海馬の萎縮リスクが3倍以上に
というニュースが記載されました。
オックスフォード大学とロンドン大学の研究チームにより、
適量のアルコールが脳にどのような影響をおよぼすのかを検討しています。
研究は「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」(BMJ)に発表されました。
適量のアルコールでも海馬萎縮のリスクがあるとは、
げにアルコール恐るべしです。
<アルコールと血糖低下作用>
ご存知の方も多いと思いますが、アルコールには、血糖低下作用があります。
ただ個人差が大きいので、(A)gのアルコールが血糖値を(B)mg、低下させるというように一律にはいきません。
エネルギー源としては、[アルコール→糖質→脂質→タンパク質]の順で利用されます。
焼酎、ウィスキーなど蒸留酒には糖質は含まれていないので、血糖は全く上昇しません。
しかし、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて、優先的に肝臓で分解されますので、
その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
血中アルコール濃度が上昇している間は、糖新生はブロックされるので、個人差が大きいと思いますが、酒を飲んでいる最中は、血糖値が下がる人もいると思います。
また、一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
アルコールの血糖低下作用については個人差が大きいので、ご注意ください。
なお、SU剤内服中の糖尿人やインスリン注射中の糖尿人は、過度のアルコール摂取により糖新生が阻害されると低血糖になりやすいので要注意です。
正常人でも、空きっ腹で大量のアルコールを摂取すれば、低血糖になる可能性もあります。
<江部康二の酒量は?>
私自身のお酒の摂取量ですが、平均的には、糖質ゼロビール350mlを1缶、ハイボールを350mlを1缶、その後、25%焼酎のロックを240mlです。
焼酎は25%の濃さで、720mlが3日間で空くくらいのペースです。
あるいは、糖質ゼロビール350mlを1缶と赤ワインを1/3本とかです。
糖質ゼロビール(4%)350ml:アルコール分は14ml
角ハイボール(7%)350ml:アルコール分は24.5ml
25%焼酎240ml:アルコール分は60ml
合計:アルコール分98.5ml
従って、私は毎日90ml以上のアルコールを摂取していますので、
世界がん研究基金や米国糖尿病協会の「適量=30ml」は、
確実にオーバーしています。( ̄_ ̄|||)
これは、何とかしなくてはなりません。
とりあえず、ハイボールのアルコール分が結構多いので検討の余地ありですね。
25%の焼酎も180mlくらいに減らそうかと思います。
<結論>
上述のようにアルコールには発ガン性や脂肪肝のリスク、
さらには海馬萎縮のリスクも指摘されていますので、
各自が自己責任で自己管理で適量!?の飲酒ということになるでしょうか?
勿論、私は、アルコール摂取のリスクは充分承知した上で、
自己責任でそれなりに飲酒していきます。 (^^)
江部康二
2022年03月18日 (金)
【18/03/21 中嶋一雄
動物実験について
1) 厚生労働省の食事摂取基準に引用された文献は、すべてヒトの研究論文です。
私が読んだ限り、動物実験の論文は一切引用されてません。
2) 薬の致死量の決定には、動物実験が有用です。
人間データは、731部隊が唯一のものです。
3) サリドマイドは当初ラットで催奇形性がないため安全と思われていました。
ところがヒトで催奇形性が報告されたので、
いろんな動物を用い実験をやりなおしました。
その結果哺乳類の実験動物で、唯一ウサギのみ催奇形性が確認できました
つまり、サリドマイドは哺乳類の中で、
ウサギとヒトのみに催奇形性を示すわけです。
これ以後催奇形性の実験には、すべてウサギが用いられるようになりました。
4) マタタビはネコ科動物に陶酔作用を示します。
ネコ科以外の動物にはこの作用を示しません。
ましてやヒトに対しては示しません。】
こんにちは。
「動物実験でヒトの食物代謝の研究を行うことの是非」
について、以前、中嶋一雄先生から、
貴重なご意見をコメントして頂きました。
ありがとうございます。
興味深い話題なので、もう一度、ブログ記事にしたいと思います。
以前のブログ記事で、
『薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として特に問題はないと思います(動物実験自体の是非は置いておきます)。
しかし、本来ヒトと主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究を行うのは、
出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。』
と書いたことがあります。
しかし、中嶋一雄先生のサリドマイドへのコメントを読んで、
『薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として比較的問題は少ないと思います(動物実験自体の是非は置いておきます)。
しかし、本来ヒトと主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究を行うのは、
出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。』
に訂正したいと思います。
【 1) 厚生労働省の食事摂取基準に引用された文献は、すべてヒトの研究論文です。
私が読んだ限り、動物実験の論文は一切引用されてません。】
厚生労働省もなかなかの見識ですね。
やはり、動物実験でヒトの食物代謝の研究を行うことには、
否定的な見解なのだと思われます。
【2) 薬の致死量の決定には、動物実験が有用です。
人間データは、731部隊が唯一のものです。】
薬の毒性については、動物実験が一定有用と思われます。
というかヒトではそのような研究は基本的に不可能ですから、
動物実験以外にないです。
【3) サリドマイドは当初ラットで催奇形性がないため安全と思われていました。
ところがヒトで催奇形性が報告されたので、
いろんな動物を用い実験をやりなおしました。
その結果哺乳類の実験動物で、唯一ウサギのみ催奇形性が確認できました
つまり、サリドマイドは哺乳類の中で、
ウサギとヒトのみに催奇形性を示すわけです。
これ以後催奇形性の実験には、すべてウサギが用いられるようになりました。】
これは、極めて興味深いです。
以前マウスとヒトの代謝の違いを調べたことがあります。
それで、少なくとも脂質代謝に関しては、
「ヒトの血中コレステロールはLDLが主でり、マウスではHDLが大半である」
「マウスはリポ蛋白質代謝の回転が速い」
「マウスは肝臓を中心に脂質代謝の制御幅が広いので、血中コレステロール値は食事負荷などの外因性変動を受けにくい」
など、かなり大きな違いがあります。
一方、脂質代謝に関してヒトと類似しているのは、ウサギです。
脂質代謝に関連する酵素は ヒ トとマ ウスや ラッ トで大 き く異な り、
ウ サギはヒ トに類似 しています。
脂質代謝だけで、全体の代謝を語ることはできないのですが、
サリドマイドは哺乳類の中で、ウサギとヒトのみに催奇形性を示すという
興味深い事実を一定説明してくれると思います。
江部康二
動物実験について
1) 厚生労働省の食事摂取基準に引用された文献は、すべてヒトの研究論文です。
私が読んだ限り、動物実験の論文は一切引用されてません。
2) 薬の致死量の決定には、動物実験が有用です。
人間データは、731部隊が唯一のものです。
3) サリドマイドは当初ラットで催奇形性がないため安全と思われていました。
ところがヒトで催奇形性が報告されたので、
いろんな動物を用い実験をやりなおしました。
その結果哺乳類の実験動物で、唯一ウサギのみ催奇形性が確認できました
つまり、サリドマイドは哺乳類の中で、
ウサギとヒトのみに催奇形性を示すわけです。
これ以後催奇形性の実験には、すべてウサギが用いられるようになりました。
4) マタタビはネコ科動物に陶酔作用を示します。
ネコ科以外の動物にはこの作用を示しません。
ましてやヒトに対しては示しません。】
こんにちは。
「動物実験でヒトの食物代謝の研究を行うことの是非」
について、以前、中嶋一雄先生から、
貴重なご意見をコメントして頂きました。
ありがとうございます。
興味深い話題なので、もう一度、ブログ記事にしたいと思います。
以前のブログ記事で、
『薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として特に問題はないと思います(動物実験自体の是非は置いておきます)。
しかし、本来ヒトと主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究を行うのは、
出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。』
と書いたことがあります。
しかし、中嶋一雄先生のサリドマイドへのコメントを読んで、
『薬物の作用や毒性をネズミ類で動物実験するのは、
研究方法として比較的問題は少ないと思います(動物実験自体の是非は置いておきます)。
しかし、本来ヒトと主食が全く異なるマウス・ラットなどネズミ類で、
人類の食物代謝の研究を行うのは、
出発点から根本的に間違っている可能性が高いので注意が必要です。』
に訂正したいと思います。
【 1) 厚生労働省の食事摂取基準に引用された文献は、すべてヒトの研究論文です。
私が読んだ限り、動物実験の論文は一切引用されてません。】
厚生労働省もなかなかの見識ですね。
やはり、動物実験でヒトの食物代謝の研究を行うことには、
否定的な見解なのだと思われます。
【2) 薬の致死量の決定には、動物実験が有用です。
人間データは、731部隊が唯一のものです。】
薬の毒性については、動物実験が一定有用と思われます。
というかヒトではそのような研究は基本的に不可能ですから、
動物実験以外にないです。
【3) サリドマイドは当初ラットで催奇形性がないため安全と思われていました。
ところがヒトで催奇形性が報告されたので、
いろんな動物を用い実験をやりなおしました。
その結果哺乳類の実験動物で、唯一ウサギのみ催奇形性が確認できました
つまり、サリドマイドは哺乳類の中で、
ウサギとヒトのみに催奇形性を示すわけです。
これ以後催奇形性の実験には、すべてウサギが用いられるようになりました。】
これは、極めて興味深いです。
以前マウスとヒトの代謝の違いを調べたことがあります。
それで、少なくとも脂質代謝に関しては、
「ヒトの血中コレステロールはLDLが主でり、マウスではHDLが大半である」
「マウスはリポ蛋白質代謝の回転が速い」
「マウスは肝臓を中心に脂質代謝の制御幅が広いので、血中コレステロール値は食事負荷などの外因性変動を受けにくい」
など、かなり大きな違いがあります。
一方、脂質代謝に関してヒトと類似しているのは、ウサギです。
脂質代謝に関連する酵素は ヒ トとマ ウスや ラッ トで大 き く異な り、
ウ サギはヒ トに類似 しています。
脂質代謝だけで、全体の代謝を語ることはできないのですが、
サリドマイドは哺乳類の中で、ウサギとヒトのみに催奇形性を示すという
興味深い事実を一定説明してくれると思います。
江部康二
2022年03月17日 (木)
こんにちは。
人工甘味料に関してネガティブなことを書いているサイトが多くて、
気になっている人もおられると思います。
今回はゼロカロリー飲料水などに使用されている人工甘味料の許容量に関して、
考察してみます。
結論から言えば、
私は許容量の範囲内の人工甘味料は、あまり気にしていません。
果糖ブドウ糖液化糖のほうが危険と思っています。
まず、人工甘味料は血糖値を上昇させませんし、インスリンも分泌させません。
現在、流通している人工甘味料には、
アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アドバンテーム
などがあります。
これらは米国食品医薬品庁(FDA)が認可しています。
ズルチン、チクロは使用禁止となっています。
まれな遺伝性疾患であるフェニルケトン尿症の患者さんは、
アスパルテームの成分であるフェニルアラニンの代謝困難になるので、アスパルテームの摂取を避けることが必要です。
http://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/3f49dc74640c688e471ac1bcbf0c91b111a23406.pdf
各添加物の使用基準及び保存基準 (平成30年8月8日改正まで記載)
http://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/3f49dc74640c688e471ac1bcbf0c91b111a23406.pdf (厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)
各添加物の使用基準及び保存基準 (令和2年1月15日改正まで記載)
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
https://www.ffcr.or.jp/webupload/e3984852a08b38bffaa3d166a8176173c3916dd2.pdf
(厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)
人工甘味料をはじめ添加物には使用基準と保存基準が決められています。
人工甘味料ではありませんが、
人工的に作る果糖ブドウ糖液化糖やブドウ糖果糖液化糖は異性化糖と呼ばれ、
血糖値も上げるし、インスリンも分泌させます。
安価なため、日本では清涼飲料水によく使用されており、
今では砂糖類の需要の40%程度となっています。
こちらは血糖値を上昇させますし、果糖はAGEsにブドウ糖の数十倍変わりやすいし、
これらの点に関して、果糖ブドウ糖液化糖など異性化糖は
人工甘味料よりはるかに危険がいっぱいです。
AGEsを考慮すれば、果糖ブドウ糖液化糖は、砂糖より危険と言えます。
人工甘味料のほうは、
使用基準と保存基準を守っていれば大丈夫と思います。
私自身も、サントリーオールフリーを時々飲んでいますが、
100mlあたり、エネルギーゼロ、糖質ゼロであり、糖質制限OK食品です。
オールフリーの栄養成分
麦芽、ホップ、香料、酸味料、糖類(糖化スターチ)、酸化防止剤(ビタミンC)、、
甘味料(アセスルファムK、スクラロース)
人工甘味料のアセスルファムKとスクラロースが含まれていますが、
オールフリー350ml缶を3本/日くらいなら、なんの問題もないと思います。
まあ私は、1日にせいぜい1本ですが・・・。
さて、安全性に関してですが、
まず人工の添加物に対する無毒性量という基準があります。
無毒性量というのは「これ以上食べると毒になる」という量の1/2の量のことです。
無毒性量を、さらに安全係数100で割ったものが1日許容摂取量(ADI)です。
日本人の人工甘味料の一日摂取量について調べてみました。
JECFA 又は内閣府食品安全委員会において設定された
一日摂取許容量(ADI)に対する占有率(以下「対 ADI 比」という。)
をみると
どの年齢層においても ADI を大きく下回っています。
すなわち日本人の人工甘味料の摂取量については安全性上、
特段の問題はないと考えられます。
種々の添加物の安全性に関しては、
食品添加物のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
https://www.ffcr.or.jp/tenka/secure/post-20.html
を見ると、あいうえお順で、
人工甘味料を始めとしてほとんどの添加物が記載されています。
なお、ラカントSの主成分である
糖アルコールのエリスリトールは
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)により、1999年、
『安全性が十分に高いので、1日摂取許容量は定める必要がない(ADI not specified)』
との評価を受けており、その安全性は世界的にも認証されています。
ステビア甘味料に関しては、2008年6月の第69回JECFAで評価し、ADIが設定されました。
さらに2010年4月、EFSA(欧州食品安全機関)でも安全性に問題がないことが確認されました。
江部康二
人工甘味料に関してネガティブなことを書いているサイトが多くて、
気になっている人もおられると思います。
今回はゼロカロリー飲料水などに使用されている人工甘味料の許容量に関して、
考察してみます。
結論から言えば、
私は許容量の範囲内の人工甘味料は、あまり気にしていません。
果糖ブドウ糖液化糖のほうが危険と思っています。
まず、人工甘味料は血糖値を上昇させませんし、インスリンも分泌させません。
現在、流通している人工甘味料には、
アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アドバンテーム
などがあります。
これらは米国食品医薬品庁(FDA)が認可しています。
ズルチン、チクロは使用禁止となっています。
まれな遺伝性疾患であるフェニルケトン尿症の患者さんは、
アスパルテームの成分であるフェニルアラニンの代謝困難になるので、アスパルテームの摂取を避けることが必要です。
http://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/3f49dc74640c688e471ac1bcbf0c91b111a23406.pdf
各添加物の使用基準及び保存基準 (平成30年8月8日改正まで記載)
http://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/3f49dc74640c688e471ac1bcbf0c91b111a23406.pdf (厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)
各添加物の使用基準及び保存基準 (令和2年1月15日改正まで記載)
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
https://www.ffcr.or.jp/webupload/e3984852a08b38bffaa3d166a8176173c3916dd2.pdf
(厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)
人工甘味料をはじめ添加物には使用基準と保存基準が決められています。
人工甘味料ではありませんが、
人工的に作る果糖ブドウ糖液化糖やブドウ糖果糖液化糖は異性化糖と呼ばれ、
血糖値も上げるし、インスリンも分泌させます。
安価なため、日本では清涼飲料水によく使用されており、
今では砂糖類の需要の40%程度となっています。
こちらは血糖値を上昇させますし、果糖はAGEsにブドウ糖の数十倍変わりやすいし、
これらの点に関して、果糖ブドウ糖液化糖など異性化糖は
人工甘味料よりはるかに危険がいっぱいです。
AGEsを考慮すれば、果糖ブドウ糖液化糖は、砂糖より危険と言えます。
人工甘味料のほうは、
使用基準と保存基準を守っていれば大丈夫と思います。
私自身も、サントリーオールフリーを時々飲んでいますが、
100mlあたり、エネルギーゼロ、糖質ゼロであり、糖質制限OK食品です。
オールフリーの栄養成分
麦芽、ホップ、香料、酸味料、糖類(糖化スターチ)、酸化防止剤(ビタミンC)、、
甘味料(アセスルファムK、スクラロース)
人工甘味料のアセスルファムKとスクラロースが含まれていますが、
オールフリー350ml缶を3本/日くらいなら、なんの問題もないと思います。
まあ私は、1日にせいぜい1本ですが・・・。
さて、安全性に関してですが、
まず人工の添加物に対する無毒性量という基準があります。
無毒性量というのは「これ以上食べると毒になる」という量の1/2の量のことです。
無毒性量を、さらに安全係数100で割ったものが1日許容摂取量(ADI)です。
日本人の人工甘味料の一日摂取量について調べてみました。
JECFA 又は内閣府食品安全委員会において設定された
一日摂取許容量(ADI)に対する占有率(以下「対 ADI 比」という。)
をみると
どの年齢層においても ADI を大きく下回っています。
すなわち日本人の人工甘味料の摂取量については安全性上、
特段の問題はないと考えられます。
種々の添加物の安全性に関しては、
食品添加物のFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による安全性評価
https://www.ffcr.or.jp/tenka/secure/post-20.html
を見ると、あいうえお順で、
人工甘味料を始めとしてほとんどの添加物が記載されています。
なお、ラカントSの主成分である
糖アルコールのエリスリトールは
JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)により、1999年、
『安全性が十分に高いので、1日摂取許容量は定める必要がない(ADI not specified)』
との評価を受けており、その安全性は世界的にも認証されています。
ステビア甘味料に関しては、2008年6月の第69回JECFAで評価し、ADIが設定されました。
さらに2010年4月、EFSA(欧州食品安全機関)でも安全性に問題がないことが確認されました。
江部康二
2022年03月16日 (水)
【22/03/15 らこ
急性膵炎とブドウ糖点滴
2021年12月27日に急性膵炎になり、3週間断酒しました><
3ヶ月足らずで今年3月13日に急性膵炎再発しました><
◎原因は多量飲酒
これだけです。江部先生、夏井先生程度の酒量で止まれば無問題なのですが、私らこ は「急性膵炎に至るバカ飲み」です。
◎飲酒量を記憶出来ないが直接原因
です。若年性アルツハイマー型認知症を再発した訳ではありません。「酔った頭で記憶出来ない」だけです。
google検索で「急性膵炎 治療」を当てると、
◎断酒&断食で点滴
だけです。
--------
経口ブドウ糖負荷試験で
・1時間値 200越え
・2時間値 140未満
・糖尿病の可能性皆無
と言われて「49才で若年性アルツハイマー型認知症発症」の私らこ です。
--------
江部先生に質問です。
◎急性膵炎発症時、断食&断酒&点滴すると、若年性アルツハイマー型認知症再発しますか?
私らこ は若年性アルツハイマー型認知症再発が怖いので、前回は3週間断酒 & スーパー糖質制限食継続 で完治だか寛解しました。】
こんにちは。
らこさんから、
急性膵炎とブドウ糖点滴について、コメント・質問を頂きました。
らこさん、仰る通り、急性膵炎の原因のほとんどが
『多量飲酒』です。
【◎飲酒量を記憶出来ないが直接原因
です。若年性アルツハイマー型認知症を再発した訳ではありません。
「酔った頭で記憶出来ない」だけです。】
そういうことなら、
飲酒開始前に、酔っ払う前に、
その日に飲む量を決めてから飲み始めましょう。
例えば
①糖質ゼロビール350ml、1缶
②ハイボール350ml、1缶
③焼酎約240ml(25%)を、漏斗でボトルに入れ替えて、その日の量とする。ロックか水割りで飲む。
これでも、適量よりかなり多いですが、
野放しに飲むよりはましです。
ちなみに①②③は、私自身の日常的な飲酒量ですが、
肝機能も正常ですし、膵炎になったこともありません。
①②③をテーブルに並べておいて、
それ以外のお酒は、戸棚にしまっておきましょう。
なお、ブドウ糖以外の血糖値を上昇させない点滴製剤には
以下のようなものがあります。
糖尿人が入院して点滴が必要な場合は、
これらを示して、主治医と相談するようにしましょう。
Ⅰ
生理的食塩水
エネルギーなしで水分補給のみ。
Ⅱ
キシリトール注
キシリトール注射液5%の基本情報
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/32/3234400A3191.html
効能・効果
糖尿病のエネルギー補給
糖尿病の水補給
糖尿病状態時のエネルギー補給
糖尿病状態時の水補給
用法・用量(主なもの)
キシリトールとして、1日2〜50gを1〜数回に分けて静脈内注射又は点滴静注する
なお、年齢、症状により適宜増減する
但し、キシリトールとして、1日量100gまでとする
点滴静注する場合、その速度はキシリトールとして、0.3g/kg/hr以下とする
Ⅲ
ラクテック注
・・・5%ソルビトール加乳酸リンゲル液。乳酸加リンゲル液
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058244.pdf
臨床成績
外科手術患者を中心に189症例を対象として術中・術後に本剤を静脈内に投与し、その臨床的効果を検討した。その結果、血行動態(血圧、Ht値、Hb値等)、酸塩基平衡(PaO2、PaCO2、pH等)、血漿電解質(Na+、K+、Cl−)及び血糖値は、いずれも正常範囲内あるいは術前値と同程度に維持されていた1)
Ⅳ
ポタコールR ・・・ 血糖値上昇なし。インスリン分泌なし。
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3319538A4109_1_05
臨床成績
全国17施設で、消化器手術患者を中心とした386症例に本剤を投与した臨床試験の概要は次のとおりである3〜8)。
1.
血圧、血漿浸透圧、血漿電解質、血液ガス、酸・塩基平衡は、術前、術後を通じ良好に維持された。
2.
非糖尿病症例、糖尿病合併症例の術前又は術後のいずれにおいても、血糖値の上昇は軽微であり、インスリン分泌の亢進もほとんど認められなかった。
ピルビン酸、乳酸の上昇はいずれもゆるやかで、乳酸/ピルビン酸は比較的安定していた。
3.
遊離脂肪酸及びケトン体の上昇抑制傾向がみられ、トリグリセライド、総コレステロールに大きな変動はなかった。
薬効薬理
1.
絶食飢餓ウサギを用いた実験で、本剤の静注による血糖値の上昇は軽微であり、インスリンの分泌増加もほとんど認められなかった。また、乳酸値、ピルビン酸値への影響はなく、NEFAの上昇が抑制された9)。
2.
急性失血ウサギに対する本剤の効果を、糖(5%ブドウ糖又は5%ソルビトール)加乳酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液と比較検討した。その結果、本剤は、救命率、血圧維持効果において最も優れており、動脈血pH及び血漿浸透圧を正常域値内に維持した10)。
江部康二
急性膵炎とブドウ糖点滴
2021年12月27日に急性膵炎になり、3週間断酒しました><
3ヶ月足らずで今年3月13日に急性膵炎再発しました><
◎原因は多量飲酒
これだけです。江部先生、夏井先生程度の酒量で止まれば無問題なのですが、私らこ は「急性膵炎に至るバカ飲み」です。
◎飲酒量を記憶出来ないが直接原因
です。若年性アルツハイマー型認知症を再発した訳ではありません。「酔った頭で記憶出来ない」だけです。
google検索で「急性膵炎 治療」を当てると、
◎断酒&断食で点滴
だけです。
--------
経口ブドウ糖負荷試験で
・1時間値 200越え
・2時間値 140未満
・糖尿病の可能性皆無
と言われて「49才で若年性アルツハイマー型認知症発症」の私らこ です。
--------
江部先生に質問です。
◎急性膵炎発症時、断食&断酒&点滴すると、若年性アルツハイマー型認知症再発しますか?
私らこ は若年性アルツハイマー型認知症再発が怖いので、前回は3週間断酒 & スーパー糖質制限食継続 で完治だか寛解しました。】
こんにちは。
らこさんから、
急性膵炎とブドウ糖点滴について、コメント・質問を頂きました。
らこさん、仰る通り、急性膵炎の原因のほとんどが
『多量飲酒』です。
【◎飲酒量を記憶出来ないが直接原因
です。若年性アルツハイマー型認知症を再発した訳ではありません。
「酔った頭で記憶出来ない」だけです。】
そういうことなら、
飲酒開始前に、酔っ払う前に、
その日に飲む量を決めてから飲み始めましょう。
例えば
①糖質ゼロビール350ml、1缶
②ハイボール350ml、1缶
③焼酎約240ml(25%)を、漏斗でボトルに入れ替えて、その日の量とする。ロックか水割りで飲む。
これでも、適量よりかなり多いですが、
野放しに飲むよりはましです。
ちなみに①②③は、私自身の日常的な飲酒量ですが、
肝機能も正常ですし、膵炎になったこともありません。
①②③をテーブルに並べておいて、
それ以外のお酒は、戸棚にしまっておきましょう。
なお、ブドウ糖以外の血糖値を上昇させない点滴製剤には
以下のようなものがあります。
糖尿人が入院して点滴が必要な場合は、
これらを示して、主治医と相談するようにしましょう。
Ⅰ
生理的食塩水
エネルギーなしで水分補給のみ。
Ⅱ
キシリトール注
キシリトール注射液5%の基本情報
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/32/3234400A3191.html
効能・効果
糖尿病のエネルギー補給
糖尿病の水補給
糖尿病状態時のエネルギー補給
糖尿病状態時の水補給
用法・用量(主なもの)
キシリトールとして、1日2〜50gを1〜数回に分けて静脈内注射又は点滴静注する
なお、年齢、症状により適宜増減する
但し、キシリトールとして、1日量100gまでとする
点滴静注する場合、その速度はキシリトールとして、0.3g/kg/hr以下とする
Ⅲ
ラクテック注
・・・5%ソルビトール加乳酸リンゲル液。乳酸加リンゲル液
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058244.pdf
臨床成績
外科手術患者を中心に189症例を対象として術中・術後に本剤を静脈内に投与し、その臨床的効果を検討した。その結果、血行動態(血圧、Ht値、Hb値等)、酸塩基平衡(PaO2、PaCO2、pH等)、血漿電解質(Na+、K+、Cl−)及び血糖値は、いずれも正常範囲内あるいは術前値と同程度に維持されていた1)
Ⅳ
ポタコールR ・・・ 血糖値上昇なし。インスリン分泌なし。
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3319538A4109_1_05
臨床成績
全国17施設で、消化器手術患者を中心とした386症例に本剤を投与した臨床試験の概要は次のとおりである3〜8)。
1.
血圧、血漿浸透圧、血漿電解質、血液ガス、酸・塩基平衡は、術前、術後を通じ良好に維持された。
2.
非糖尿病症例、糖尿病合併症例の術前又は術後のいずれにおいても、血糖値の上昇は軽微であり、インスリン分泌の亢進もほとんど認められなかった。
ピルビン酸、乳酸の上昇はいずれもゆるやかで、乳酸/ピルビン酸は比較的安定していた。
3.
遊離脂肪酸及びケトン体の上昇抑制傾向がみられ、トリグリセライド、総コレステロールに大きな変動はなかった。
薬効薬理
1.
絶食飢餓ウサギを用いた実験で、本剤の静注による血糖値の上昇は軽微であり、インスリンの分泌増加もほとんど認められなかった。また、乳酸値、ピルビン酸値への影響はなく、NEFAの上昇が抑制された9)。
2.
急性失血ウサギに対する本剤の効果を、糖(5%ブドウ糖又は5%ソルビトール)加乳酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液と比較検討した。その結果、本剤は、救命率、血圧維持効果において最も優れており、動脈血pH及び血漿浸透圧を正常域値内に維持した10)。
江部康二
2022年03月15日 (火)
こんにちは。
前回の続きです。
『炭水化物をしっかり食べても太らない人』とは、
基礎代謝が高いタイプ以外にはどんなパターンがあるのでしょう。
以下はあくまでも仮説ですが、
インスリンの効きが非常に良い(インスリン抵抗性が極めて低い)体質の人があるように思います。
つまり少量のインスリンでも筋肉が血糖値を取り込んでくれるので、
結構な量の炭水化物を摂取しても、
普通の人に比べて追加分泌インスリンが少なくてすんでいるタイプです。
また夜間の肝臓の糖新生も基礎分泌のインスリンが制御しているのですが、
インスリンの効きが悪いタイプだと、
夜中絶食中でもかなりの量のインスリンを分泌しないと、
早朝空腹時血糖値が制御できず高値になるので、
早朝空腹時の血中インスリン濃度が正常範囲でも高めとなります。
こういう人は、ぽっちゃり型で、糖尿病ではないですが、
早朝空腹時インスリンが、10~15μU/mL(基準値3~15)も出ていても、
早朝空腹時血糖値は100~109mg/dl(基準値109以下)とかで正常上限に近いです。
これに対して、インスリンの効きがいいタイプは、
夜中の基礎分泌も少量で糖新生をコントロールできるので、
早朝空腹時の血中インスリンは正常下限、
あるいはそれ以下でも制御できている人がいます。
こういう人はたいていやせ型で、
早朝空腹時インスリンが、1.5~3μU/mL(3~15)くらいなのに、
早朝空腹時血糖値は60~70mg/dlだったりします。
こういうタイプなら、かなり炭水化物を食べても太らないと思います。
さて、次にインスリンは二重三重の肥満ホルモンということを説明します。
脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPL(リポタンパクリパーゼ)が活発になると、
血中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して、
遊離脂肪酸を脂肪細胞内に取り込み中性脂肪に合成して蓄え太っていきます。
インスリンは脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLを活性化させるので、
脂肪細胞内に中性脂肪を蓄える方向に働きます。
これに対してHSL(ホルモン感受性リパーゼ)は脂肪細胞内にあって、
中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して血中に放出させる作用があります。
まとめると、脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLは内部に中性脂肪を蓄えて太らせる働きがあり、
脂肪細胞内のHSLは逆に内部の中性脂肪を分解して血中に放出させ、やせさせる働きがあります。
インスリンはLPLを活性化させ、HSLを抑制するので、
インスリンが分泌されると太りやすいのです。
さらにインスリンは、GLUT4を介して余剰の血糖を脂肪細胞内に取り込み、
中性脂肪に合成して蓄えます。
このように二重三重の肥満ホルモンがインスリンなのです。
インスリン注射をしている糖尿病患者はしばしば太ります。
『ジョスリン糖尿病学』には
「食物摂取とは無関係の、インスリンの脂肪組織への直接的な脂肪生成効果」
と説明されています。
ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒルは
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
と述べています。
肥満のメカニズムは、インスリンによる脂肪蓄積であり、
その血中濃度と総量が関係します。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。
基礎代謝が高い人とインスリンの効きが非常にいい人を例外として、
結局、糖質の頻回・過剰摂取とそれによるインスリンの頻回・過剰分泌が肥満の元凶と思います。
江部康二
前回の続きです。
『炭水化物をしっかり食べても太らない人』とは、
基礎代謝が高いタイプ以外にはどんなパターンがあるのでしょう。
以下はあくまでも仮説ですが、
インスリンの効きが非常に良い(インスリン抵抗性が極めて低い)体質の人があるように思います。
つまり少量のインスリンでも筋肉が血糖値を取り込んでくれるので、
結構な量の炭水化物を摂取しても、
普通の人に比べて追加分泌インスリンが少なくてすんでいるタイプです。
また夜間の肝臓の糖新生も基礎分泌のインスリンが制御しているのですが、
インスリンの効きが悪いタイプだと、
夜中絶食中でもかなりの量のインスリンを分泌しないと、
早朝空腹時血糖値が制御できず高値になるので、
早朝空腹時の血中インスリン濃度が正常範囲でも高めとなります。
こういう人は、ぽっちゃり型で、糖尿病ではないですが、
早朝空腹時インスリンが、10~15μU/mL(基準値3~15)も出ていても、
早朝空腹時血糖値は100~109mg/dl(基準値109以下)とかで正常上限に近いです。
これに対して、インスリンの効きがいいタイプは、
夜中の基礎分泌も少量で糖新生をコントロールできるので、
早朝空腹時の血中インスリンは正常下限、
あるいはそれ以下でも制御できている人がいます。
こういう人はたいていやせ型で、
早朝空腹時インスリンが、1.5~3μU/mL(3~15)くらいなのに、
早朝空腹時血糖値は60~70mg/dlだったりします。
こういうタイプなら、かなり炭水化物を食べても太らないと思います。
さて、次にインスリンは二重三重の肥満ホルモンということを説明します。
脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPL(リポタンパクリパーゼ)が活発になると、
血中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して、
遊離脂肪酸を脂肪細胞内に取り込み中性脂肪に合成して蓄え太っていきます。
インスリンは脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLを活性化させるので、
脂肪細胞内に中性脂肪を蓄える方向に働きます。
これに対してHSL(ホルモン感受性リパーゼ)は脂肪細胞内にあって、
中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解して血中に放出させる作用があります。
まとめると、脂肪細胞の周囲の毛細血管壁にあるLPLは内部に中性脂肪を蓄えて太らせる働きがあり、
脂肪細胞内のHSLは逆に内部の中性脂肪を分解して血中に放出させ、やせさせる働きがあります。
インスリンはLPLを活性化させ、HSLを抑制するので、
インスリンが分泌されると太りやすいのです。
さらにインスリンは、GLUT4を介して余剰の血糖を脂肪細胞内に取り込み、
中性脂肪に合成して蓄えます。
このように二重三重の肥満ホルモンがインスリンなのです。
インスリン注射をしている糖尿病患者はしばしば太ります。
『ジョスリン糖尿病学』には
「食物摂取とは無関係の、インスリンの脂肪組織への直接的な脂肪生成効果」
と説明されています。
ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒルは
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
と述べています。
肥満のメカニズムは、インスリンによる脂肪蓄積であり、
その血中濃度と総量が関係します。
そしてインスリンを大量に分泌させるのは糖質のみです。
基礎代謝が高い人とインスリンの効きが非常にいい人を例外として、
結局、糖質の頻回・過剰摂取とそれによるインスリンの頻回・過剰分泌が肥満の元凶と思います。
江部康二
2022年03月14日 (月)
こんにちは。
全く糖質制限せず、たくさん糖質を食べていても、
太らないどころか痩せているうらやましい(?)人も一定います。
この人たちはなぜ太らないのでしょうか?
まず基本のおさらいです。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
<基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発
熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、
高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少し
やすいことは明白です。
それでは
「全く糖質制限せず、たくさん糖質を食べていても、太らないどころか痩せているうらやましい(?)人」
は、いったいどういうメカニズムいなっているのでしょう。
まず基礎代謝が高い人が、そうなります。
かくいう私も30代までは、炭水化物をいくら食べても太りませんでした。
ラーメンもうどんもご飯もパンもおかずもしっかり食べてましたが体重は不変でした。
医学部で野球部だったので、6年間はかなり運動していて、細身でもそれなりの筋肉量があって、
基礎代謝が高かったのだと思います。
いくら食べても体重は学生時代と同じ56~57kgでした。
しかし40代になって、徐々にお腹がでてきて太りはじめました。
これは、十数年間学生時代と同じ体重であっても、運動してないので、
現実には筋肉量が徐々に減り続けて、脂肪が徐々に増え続けて
見かけ上の体重だけが一緒だったのだと思われます。
結局筋肉量が減って基礎代謝が減ったので、同じ摂取カロリーでも、
消費カロリーを上回るようになり太り始めたのだと思います。
このパターンが所謂中年太りの本態と思われます。
もう一つのパターンは、インスリンが曲者と思います。
インスリンの分泌が多ければ太ります。
基礎分泌インスリンも追加分泌インスリンも一緒のことで、その分泌量が多いほど太ります。
インスリンが肥満ホルモンたる所以です。
私見で仮説ですが、過剰のインスリンは基礎代謝を減らしている可能性があります。
インスリンは同化ホルモンであり、脂肪やタンパク質の分解(異化)を邪魔しますので、
基礎代謝が減る可能性があるのです。
異化には、「基礎代謝」「生活代謝」「食事誘発熱産生」
があります。
常々言ってますように、糖質こそが肥満の元凶です。
それは、糖質だけが血糖値を上昇させ、インスリンを大量に分泌させるからです。
脂質は、単独ではインスリンを全く分泌させませんし、血糖値も上げません。
それでは、『炭水化物をしっかり食べても太らない人』とは、
基礎代謝が高いタイプ以外にはどんなパターンがあるのでしょうか?
次回に続きます。
江部康二
全く糖質制限せず、たくさん糖質を食べていても、
太らないどころか痩せているうらやましい(?)人も一定います。
この人たちはなぜ太らないのでしょうか?
まず基本のおさらいです。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
<基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発
熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、
高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少し
やすいことは明白です。
それでは
「全く糖質制限せず、たくさん糖質を食べていても、太らないどころか痩せているうらやましい(?)人」
は、いったいどういうメカニズムいなっているのでしょう。
まず基礎代謝が高い人が、そうなります。
かくいう私も30代までは、炭水化物をいくら食べても太りませんでした。
ラーメンもうどんもご飯もパンもおかずもしっかり食べてましたが体重は不変でした。
医学部で野球部だったので、6年間はかなり運動していて、細身でもそれなりの筋肉量があって、
基礎代謝が高かったのだと思います。
いくら食べても体重は学生時代と同じ56~57kgでした。
しかし40代になって、徐々にお腹がでてきて太りはじめました。
これは、十数年間学生時代と同じ体重であっても、運動してないので、
現実には筋肉量が徐々に減り続けて、脂肪が徐々に増え続けて
見かけ上の体重だけが一緒だったのだと思われます。
結局筋肉量が減って基礎代謝が減ったので、同じ摂取カロリーでも、
消費カロリーを上回るようになり太り始めたのだと思います。
このパターンが所謂中年太りの本態と思われます。
もう一つのパターンは、インスリンが曲者と思います。
インスリンの分泌が多ければ太ります。
基礎分泌インスリンも追加分泌インスリンも一緒のことで、その分泌量が多いほど太ります。
インスリンが肥満ホルモンたる所以です。
私見で仮説ですが、過剰のインスリンは基礎代謝を減らしている可能性があります。
インスリンは同化ホルモンであり、脂肪やタンパク質の分解(異化)を邪魔しますので、
基礎代謝が減る可能性があるのです。
異化には、「基礎代謝」「生活代謝」「食事誘発熱産生」
があります。
常々言ってますように、糖質こそが肥満の元凶です。
それは、糖質だけが血糖値を上昇させ、インスリンを大量に分泌させるからです。
脂質は、単独ではインスリンを全く分泌させませんし、血糖値も上げません。
それでは、『炭水化物をしっかり食べても太らない人』とは、
基礎代謝が高いタイプ以外にはどんなパターンがあるのでしょうか?
次回に続きます。
江部康二
2022年03月13日 (日)
こんばんは。
チンパンジーとヒトは、約700万年前に分岐して、
「生物種としては、最も近縁である」ということです。
そして、『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』と以前から講演のスライドなどにも記載していたのですが、
「あれ?ゲノムとDNAってどう違うんだっけ?」
「ついでに、遺伝子とか染色体とか、言葉はよく使うけど、正確な定義は?」
などという、原初の疑問が湧いてきて、フリーズしてしまいました。
医学部で絶対、学んだはずなのですが、
いつのまにやらアヤフヤ状態に陥っていました。(-_-;)
それで、心機一転、ネットで勉強し直しました。
読者の皆さんも、トリビアで役に立たない知識かもしれないけれど
知っていて損はないのでお付き合い頂ければ幸いです。
いろいろ探して、
一番わかりやすいし他人にも説明しやすい解説のあるサイトを見つけました。
ということで、まずは音楽のカセットテープをイメージしてください。
未録音のテープが「DNA」です。
テープにすり込まれた曲情報が「遺伝子」です。
録音済みのテープが「ゲノム」です。
ここまでで、何となく全体像がつかめたことと思います。
DNAは、2重らせん構造の繊維です。
遺伝子は情報そのものです。
遺伝子情報が組み込まれたDNAがゲノムです。
ゲノムには、録音済みテープと同様に、情報がある部分とない部分が存在しています。
長いテープ(DNA)の中で、曲が録音された部分を「遺伝子」と呼びます。
そして、このテープの情報全部のことを「ゲノム」と呼びます。
DNAだけなら単なる構造物に過ぎませんので役に立ちませんが(未録音のテープ)、
遺伝子という情報を組み込むことで(録音済みのテープ)、様々なタンパク質をつくることが可能となります。
それでは次に、染色体って何なん?ということになりますが、
「染色体」はカセットの役割を兼ねて、トータルして未録音カセットテープです。
DNAという2重らせんの繊維は、ヒストンというタンパク質に巻き付くことによって
安定した構造を確保していて、それを染色体と呼ぶのです。
生テープだと、構造的に不安定なので、カセットテープにして
安定化させているのと一緒の理屈ですね。
体は、タンパク質でできています。
遺伝子はタンパク質をつくる情報です。
どんなタンパク質をつくるか、という情報が遺伝子です。
DNAというひもの上に、遺伝子という「情報」が書かれています。
DNAは、ひもが2本、らせん状にからまっている形をした長い分子です。
<DNA=単なるらせんの紐2本>のことであり、
<ゲノム=DNA+遺伝子>です。
ここまで説明してきましたが、すなわち冒頭の
『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』というのは不正確であり
『チンパンジーとヒトのゲノムは99%同一』というのが正確ということになります。
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2017/11/research-highlights_ja/20171102.html
国立遺伝学研究所 によれば、
「チンパンジーは、進化的に私たちの最も近縁であり、99%のゲノム情報を私たちと共有している「進化の隣人」です。しかし、残りの1%のゲノムの違いに、「ヒトをヒトに」「チンパンジーをチンパンジーに」した原因があると考えられています。」
ヒトのゲノムにおいて、
タンパク質の情報が書いてある部分はほんの一部とされています。
遺伝子情報が入っていない部分には、何が書かれているのか、
今もよくわかっていません。
なお、ヒトの「遺伝子」の数は、現在のところ約2万9千箇所とのことです。
今回の記事は理学博士の加藤牧菜先生の
以下の記事を参考にさせて頂きました。
ありがとうございました。
https://www.manabinoba.com/science/9304.html
内田洋行教育総合研究所
おすすめ特集記事
科学夜話
第5回「生命科学」
科学エッセイ:遺伝子、DNA、ゲノムってなに?
江部康二
チンパンジーとヒトは、約700万年前に分岐して、
「生物種としては、最も近縁である」ということです。
そして、『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』と以前から講演のスライドなどにも記載していたのですが、
「あれ?ゲノムとDNAってどう違うんだっけ?」
「ついでに、遺伝子とか染色体とか、言葉はよく使うけど、正確な定義は?」
などという、原初の疑問が湧いてきて、フリーズしてしまいました。
医学部で絶対、学んだはずなのですが、
いつのまにやらアヤフヤ状態に陥っていました。(-_-;)
それで、心機一転、ネットで勉強し直しました。
読者の皆さんも、トリビアで役に立たない知識かもしれないけれど
知っていて損はないのでお付き合い頂ければ幸いです。
いろいろ探して、
一番わかりやすいし他人にも説明しやすい解説のあるサイトを見つけました。
ということで、まずは音楽のカセットテープをイメージしてください。
未録音のテープが「DNA」です。
テープにすり込まれた曲情報が「遺伝子」です。
録音済みのテープが「ゲノム」です。
ここまでで、何となく全体像がつかめたことと思います。
DNAは、2重らせん構造の繊維です。
遺伝子は情報そのものです。
遺伝子情報が組み込まれたDNAがゲノムです。
ゲノムには、録音済みテープと同様に、情報がある部分とない部分が存在しています。
長いテープ(DNA)の中で、曲が録音された部分を「遺伝子」と呼びます。
そして、このテープの情報全部のことを「ゲノム」と呼びます。
DNAだけなら単なる構造物に過ぎませんので役に立ちませんが(未録音のテープ)、
遺伝子という情報を組み込むことで(録音済みのテープ)、様々なタンパク質をつくることが可能となります。
それでは次に、染色体って何なん?ということになりますが、
「染色体」はカセットの役割を兼ねて、トータルして未録音カセットテープです。
DNAという2重らせんの繊維は、ヒストンというタンパク質に巻き付くことによって
安定した構造を確保していて、それを染色体と呼ぶのです。
生テープだと、構造的に不安定なので、カセットテープにして
安定化させているのと一緒の理屈ですね。
体は、タンパク質でできています。
遺伝子はタンパク質をつくる情報です。
どんなタンパク質をつくるか、という情報が遺伝子です。
DNAというひもの上に、遺伝子という「情報」が書かれています。
DNAは、ひもが2本、らせん状にからまっている形をした長い分子です。
<DNA=単なるらせんの紐2本>のことであり、
<ゲノム=DNA+遺伝子>です。
ここまで説明してきましたが、すなわち冒頭の
『チンパンジーとヒトのDNAは99%同一』というのは不正確であり
『チンパンジーとヒトのゲノムは99%同一』というのが正確ということになります。
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2017/11/research-highlights_ja/20171102.html
国立遺伝学研究所 によれば、
「チンパンジーは、進化的に私たちの最も近縁であり、99%のゲノム情報を私たちと共有している「進化の隣人」です。しかし、残りの1%のゲノムの違いに、「ヒトをヒトに」「チンパンジーをチンパンジーに」した原因があると考えられています。」
ヒトのゲノムにおいて、
タンパク質の情報が書いてある部分はほんの一部とされています。
遺伝子情報が入っていない部分には、何が書かれているのか、
今もよくわかっていません。
なお、ヒトの「遺伝子」の数は、現在のところ約2万9千箇所とのことです。
今回の記事は理学博士の加藤牧菜先生の
以下の記事を参考にさせて頂きました。
ありがとうございました。
https://www.manabinoba.com/science/9304.html
内田洋行教育総合研究所
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科学夜話
第5回「生命科学」
科学エッセイ:遺伝子、DNA、ゲノムってなに?
江部康二
2022年03月11日 (金)
【22/03/10 小福
SGLTT2阻害薬について
大変お世話になります
落ち着くまで質問の連投お許しください
緩徐進行一型糖尿
糖質制限→スーパー20年
痩せ型
SGLTT2阻害薬を病院に処方してもらうに辺り、
先生の過去の説明を主治医に見ていただこうと思ってます。
前回ご教示いただいた尿路感染症や水分を取ることも理解しました。
そこで質問が
1.痩せ型の場合、体重減少は問題ないか?
2.筋トレ、ウォーキングによる低血糖はないか?
3.夕食の糖質オフアルコールを飲んでもよいか?
4.早朝に食事なしで血糖値が140以上になるのを抑えるには、入眠前の服用でよいか?
5.寝ている間に低血糖にならないか?
6.スーパー糖質制限を少し緩める日があっても大丈夫か?
外食を何年もしていないので、阻害薬を飲んでいれば、糖質を10g越えても大丈夫なら、出かけてみたいので。
7.スーパー糖質制限継続で大丈夫か?
主治医に服薬中は、ケトアシドーシスになるからと、今より糖質を摂るように何度も言われるので。
7.一生飲み続ける薬になるか?飲み忘れは危険か?
8.インスリンへの切り替えポイントは?
たくさんすいません
恐らく、主治医にもいろいろ確認されそうなので、
少しでも不安を減らしておきたいと考えてます。】
こんばんは。
緩徐進行1型糖尿で、糖質制限→スーパー20年、の
小福さんから、スーグラの内服について、コメント・質問を頂きました。
まず、最初に言っておかなくてはならないのは、
健康保険上、スーグラ内服は、1型糖尿病患者さんにおいては、
インスリン注射をしている人のみ、補助的に内服できるということです。
つまり、インスリン注射をしていない1型糖尿病患者さんには
スーグラ内服は健康保険上はNGということです。
小福さん、てっきり2型糖尿病だと思っていたので
スーグラ内服に関して混乱させてしまいました。
済みませんでした。
1.痩せ型の場合、体重減少は問題ないか?
インスリン注射を打っていない1型患者さんにはスーグラは適応となりませんので、
この質問は、答えようがないです。。
2.筋トレ、ウォーキングによる低血糖はないか?
スーグラなし、インスリンなしの現在の状況なら
通常の筋トレやウォーキングで低血糖になることはまずありません。
空腹で、激しい運動をすれば、低血糖になることはあり得ます。
3.夕食の糖質オフアルコールを飲んでもよいか?
大丈夫です。適量のアルコールは健康に良いです。
世界がん研究基金2007年の勧告では、
アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。
4.早朝に食事なしで血糖値が140以上になるのを抑えるには、入眠前の服用でよいか?
スーグラは1日1回朝内服ですが、
1型糖尿病にはスーグラ単独投与は保険適応となりません。
5.寝ている間に低血糖にならないか?
2型糖尿病で、スーグラなどSGLT2阻害薬単独内服の場合は、
夜間低血糖を起こすことはまずありません。
6.スーパー糖質制限を少し緩める日があっても大丈夫か?
外食を何年もしていないので、
阻害薬を飲んでいれば、糖質を10g越えても大丈夫なら、出かけてみたいので。
この目的なら、αGI剤が良いと思いますが、
1型糖尿病の場合は、やはりインスリン治療との併用で保険適応となります。
7.スーパー糖質制限継続で大丈夫か?
主治医に服薬中は、ケトアシドーシスになるからと、
今より糖質を摂るように何度も言われるので。
インスリン注射をしていて、スーグラを内服しての
スーパー糖質食実践なら、インスリン作用が確実に充分あるので、
ケトアシドーシスの心配はまずありません。
2型糖尿病で<スーグラ内服+スーパー糖質制限食実践>なら、
少しケトアシドーシスのリスクがありえるので、脱水にならないように
充分な水分補給が重要です。
8一生飲み続ける薬になるか?飲み忘れは危険か?
1回くらい飲み忘れても、大きな問題はありません。
ともあれ、1型糖尿病で、スーグラ内服単独治療はなしです。
9.インスリンへの切り替えポイントは?
10時間以上絶食して、早朝空腹時血糖値とCペプチド値を検査しましょう。
SUIT指数
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
30%以下だとインスリン治療が必要。
Cペプチドインデックス(CPI)
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、
CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
血糖自己測定器(SMBG)
血糖自己測定器で、10時間以上絶食後、早朝空腹時血糖値を測定して、
毎回、130mg/dlを超えているようなら
長時間作用型のインスリンの1日1回注射の適応と思います。
江部康二
SGLTT2阻害薬について
大変お世話になります
落ち着くまで質問の連投お許しください
緩徐進行一型糖尿
糖質制限→スーパー20年
痩せ型
SGLTT2阻害薬を病院に処方してもらうに辺り、
先生の過去の説明を主治医に見ていただこうと思ってます。
前回ご教示いただいた尿路感染症や水分を取ることも理解しました。
そこで質問が
1.痩せ型の場合、体重減少は問題ないか?
2.筋トレ、ウォーキングによる低血糖はないか?
3.夕食の糖質オフアルコールを飲んでもよいか?
4.早朝に食事なしで血糖値が140以上になるのを抑えるには、入眠前の服用でよいか?
5.寝ている間に低血糖にならないか?
6.スーパー糖質制限を少し緩める日があっても大丈夫か?
外食を何年もしていないので、阻害薬を飲んでいれば、糖質を10g越えても大丈夫なら、出かけてみたいので。
7.スーパー糖質制限継続で大丈夫か?
主治医に服薬中は、ケトアシドーシスになるからと、今より糖質を摂るように何度も言われるので。
7.一生飲み続ける薬になるか?飲み忘れは危険か?
8.インスリンへの切り替えポイントは?
たくさんすいません
恐らく、主治医にもいろいろ確認されそうなので、
少しでも不安を減らしておきたいと考えてます。】
こんばんは。
緩徐進行1型糖尿で、糖質制限→スーパー20年、の
小福さんから、スーグラの内服について、コメント・質問を頂きました。
まず、最初に言っておかなくてはならないのは、
健康保険上、スーグラ内服は、1型糖尿病患者さんにおいては、
インスリン注射をしている人のみ、補助的に内服できるということです。
つまり、インスリン注射をしていない1型糖尿病患者さんには
スーグラ内服は健康保険上はNGということです。
小福さん、てっきり2型糖尿病だと思っていたので
スーグラ内服に関して混乱させてしまいました。
済みませんでした。
1.痩せ型の場合、体重減少は問題ないか?
インスリン注射を打っていない1型患者さんにはスーグラは適応となりませんので、
この質問は、答えようがないです。。
2.筋トレ、ウォーキングによる低血糖はないか?
スーグラなし、インスリンなしの現在の状況なら
通常の筋トレやウォーキングで低血糖になることはまずありません。
空腹で、激しい運動をすれば、低血糖になることはあり得ます。
3.夕食の糖質オフアルコールを飲んでもよいか?
大丈夫です。適量のアルコールは健康に良いです。
世界がん研究基金2007年の勧告では、
アルコールの推奨量は、男性は1日2杯、女性は1日1杯までとしています。
1杯はアルコール10~15グラムに相当します。
米国糖尿病学会は、
アルコール24g(30ml)/日を食事と共に摂る程度なら適量としていますが、
ビール(5%)なら600ml
ワイン(15%)なら200ml
ウイスキー(43%)なら70ml
焼酎(25%)なら120ml
糖質ゼロ発泡酒(4%)なら750ml
に相当します。
4.早朝に食事なしで血糖値が140以上になるのを抑えるには、入眠前の服用でよいか?
スーグラは1日1回朝内服ですが、
1型糖尿病にはスーグラ単独投与は保険適応となりません。
5.寝ている間に低血糖にならないか?
2型糖尿病で、スーグラなどSGLT2阻害薬単独内服の場合は、
夜間低血糖を起こすことはまずありません。
6.スーパー糖質制限を少し緩める日があっても大丈夫か?
外食を何年もしていないので、
阻害薬を飲んでいれば、糖質を10g越えても大丈夫なら、出かけてみたいので。
この目的なら、αGI剤が良いと思いますが、
1型糖尿病の場合は、やはりインスリン治療との併用で保険適応となります。
7.スーパー糖質制限継続で大丈夫か?
主治医に服薬中は、ケトアシドーシスになるからと、
今より糖質を摂るように何度も言われるので。
インスリン注射をしていて、スーグラを内服しての
スーパー糖質食実践なら、インスリン作用が確実に充分あるので、
ケトアシドーシスの心配はまずありません。
2型糖尿病で<スーグラ内服+スーパー糖質制限食実践>なら、
少しケトアシドーシスのリスクがありえるので、脱水にならないように
充分な水分補給が重要です。
8一生飲み続ける薬になるか?飲み忘れは危険か?
1回くらい飲み忘れても、大きな問題はありません。
ともあれ、1型糖尿病で、スーグラ内服単独治療はなしです。
9.インスリンへの切り替えポイントは?
10時間以上絶食して、早朝空腹時血糖値とCペプチド値を検査しましょう。
SUIT指数
空腹時CPR(ng/ml)×1485/<空腹時血糖値(mg/dl)-61.8>
50%以下は軽度、20%以下は顕著なインスリン分泌低下。
30%以下だとインスリン治療が必要。
Cペプチドインデックス(CPI)
空腹時CPR(ng/ml)×100/空腹時血糖値(mg/dl)
1.2以上は正常。0.8以下でインスリン分泌低下。
1.2以上の場合は食事や経口薬治療、0.8未満の場合はインスリン療法を選択。
空腹時血糖値140mg/dl以上なら、
CPIのほうが、HOMA-βやSUIT指数より信頼度が高い。
血糖自己測定器(SMBG)
血糖自己測定器で、10時間以上絶食後、早朝空腹時血糖値を測定して、
毎回、130mg/dlを超えているようなら
長時間作用型のインスリンの1日1回注射の適応と思います。
江部康二
2022年03月10日 (木)
ワクチン接種完了率
日経新聞デジタル
国別コロナワクチン接種比率
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
2022/3/9現在
人口100万人あたりの新型コロナ累計死者数
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?s=y&n=j
札幌医大。 接種完了率
①ブラジル:3055.1972.1人 73.4%
②アメリカ:2895.1 64.0%
③アルゼンチン:2783.7 79.9
④イタリア:2590.1 79.5
⑤メキシコ:2457.9 61.4
⑥ロシア:2406.4 50.0
⑦イギリス:2384.3 72.4
⑧フランス:2137.4 77.6
⑨南アフリカ:1659.3 29.7
⑩ドイツ:1490.2 75.2
⑪トルコ:1128.3 62.7
⑫カナダ:977.4 81.1
⑬世界:764.7 56.7
⑭インドネシア:546.9 54.3
⑮インド:369.9 58.3
⑯サウジアラビア:255.0 68.8
⑰オーストラリア:214.1 80.1
⑱日本:202.5 79.1
⑲韓国:188.0 85.6
⑳中国:3.2 87.4
・
・
・
タンザニア:13.4人 4.2% 人口は5973万人
エチオピア:63.5 接種率は極めて少ないが数値は不明
コンゴ共和国:66.8 0.5%
南スーダン:12.0 3.8%
こんにちは。
新型コロナワクチン接種完了率と
人口100万人当たりの新型コロナ死者数の関係を調べてみました。
世界平均で
人口100万人当たり764.7人の死者数と56.7%の接種完了率です。
人口100万人当たりの死者数が、世界平均より上の1位から12位までの国において
ほとんどの国で、ワクチン接種完了率は世界平均を上回っています。
接種率は上回っているのにコロナ死者数は世界平均より多いのが実情ということになります。
ロシアと南アフリカだけが、世界平均より接種率が下回っています。
そして、タンザニア、エチオピア、コンゴ共和国、南スーダンなどの
アフリカ諸国では、新型コロナワクチン接種完了率は、極めて低く
0.5%~4.2%しかありません。
ところが人口100万人当たりのコロナ死者数は、12.0人~66.8人と
極めて少ないです。
『経済的に豊かでないアフリカ諸国に新型コロナワクチンを接種しないのは、
人道的にみて如何なものか』というのがマスコミの一貫した論調でしたが、
この数値を見る限りでは、経済的理由でワクチンを接種することができなかったアフリカ諸国のほうが、
結果として、非常にラッキーだったということになります。
これらの客観的データから、考察すると
新型コロナワクチンは、デルタ株、オミクロン株には無効であり、
かえって足を引っ張っている可能性さえあることとなります。
ちなみに私は新型コロナワクチンは接種しません。
江部康二
2022年03月09日 (水)
メディカルトリビューン 医療ニュース
80歳以上の降圧、140/90未満で死亡リスク上昇
ドイツ・高齢高血圧患者コホート研究
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login
2019年03月22日
こんにちは。
少し前ですが、
メディカルトリビューンに
興味深い記事が掲載されました。
ヨーロッパハートジャーナルの2019年2月25日オンライン版に掲載された
ドイツの研究報告です。
Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.
登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、
血圧正常化は収縮期血圧140mmHg未満および拡張期血圧90mmHg未満とし、
非正常化は収縮期血圧140mmHg以上または 拡張期血圧90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡しました。
結果は、
正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、
特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、
同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇しました。
一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、
この傾向は観察されませんでした。
それを受けて結論としては、
「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは
死亡リスクを高める可能性がある」
というものでした。
日本の「高齢者高血圧ガイドライン2017」
9ページに、
●高度に機能が障害されていない高齢者に対する降圧
治療は,年齢に関わらず心血管病の発症を抑制し生
命予後を改善するので行う.(推奨グレード A)
との記載がありますが、
少なくとも80歳以上や心血管イベント既往歴がある高血圧患者さんには
血圧を下げるか否か、一考の余地がありますね。
私自身は、80歳以上の高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することはしませせん。
江部康二
☆☆☆
以下、メディカルトリビューンの記事から一部抜粋です。
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login
【最近まで、高齢者では血圧を140/90mmHg未満に管理することが有益と考えられてきたが、この目標値は一般化できないとの研究結果が示された。ドイツ・Charité's Institute of Clinical Pharmacology and ToxicologyのAntonios Douros氏らは、70歳以上の降圧薬服用患者を前向きに検討した結果、80歳以上または心血管イベント既往例では、血圧140/90mmHg未満への降圧が死亡リスク上昇に関連していたとEur Heart J(2019年2月25日オンライン版)で発表した。
Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.
Control of blood pressure and risk of mortality in a cohort of older adults: the Berlin Initiative Study.
高齢患者の降圧目標値は議論中
高血圧有病率は70歳の70~80%に上る。欧州のガイドラインでは、心筋梗塞や脳卒中を予防するための降圧目標値として65歳以上で140/90mmHg以下を推奨。80歳以上にも同じ目標値が適用されるが、個々の患者で併存症などの付加的要素を考慮する必要がある。高齢高血圧患者の予後を改善する至適降圧目標値については、いまだ結論が出ていない。
今回の研究では、降圧療法により地域在住高齢者の血圧を140/90mmHg未満に管理することと全死亡リスク低下との関連を検討した。対象は、慢性腎臓病対策のための高齢者コホートBerlin Initiative Study(BIS)登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、血圧正常化は収縮期血圧(SBP)140mmHg未満および拡張期血圧(DBP)90mmHg未満とし、非正常化はSBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡した。
イベント既往で死亡リスク61%上昇
8,853人・年の追跡期間中に1,628例のうち636例で血圧の正常化が認められ、469例が死亡した。
Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、正常化血圧は非正常化血圧に比べて、性、BMI、喫煙状態、飲酒量、糖尿病、降圧薬数を調整後の全死亡リスク上昇と関連していた。正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇した。一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、この傾向は観察されなかった。
降圧療法で個別調整が必要
以上の結果から、Douros氏らは「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは死亡リスクを高める可能性がある」と結論。また、これらの患者群の降圧療法について、「個人のニーズに応じて調整する必要性が示された。欧州の高血圧診療ガイドラインを全ての患者に適用する、現行のアプローチを変更するべきである」と付言している。
今回使用されたデータは、同施設のElke Schäffner氏が主導するBISの一部として集積されたもので、2009年以降、2年ごとに問診、血圧・腎機能測定、血液・尿検査が実施された。同氏は「今回、降圧が6年後の死亡に及ぼす影響とその程度を検討した。次のステップとして、どのような高齢高血圧患者で降圧療法が有益なのか検討したい」と述べている。(坂田真子)】
80歳以上の降圧、140/90未満で死亡リスク上昇
ドイツ・高齢高血圧患者コホート研究
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login
2019年03月22日
こんにちは。
少し前ですが、
メディカルトリビューンに
興味深い記事が掲載されました。
ヨーロッパハートジャーナルの2019年2月25日オンライン版に掲載された
ドイツの研究報告です。
Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.
登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、
血圧正常化は収縮期血圧140mmHg未満および拡張期血圧90mmHg未満とし、
非正常化は収縮期血圧140mmHg以上または 拡張期血圧90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡しました。
結果は、
正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、
特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、
同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇しました。
一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、
この傾向は観察されませんでした。
それを受けて結論としては、
「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは
死亡リスクを高める可能性がある」
というものでした。
日本の「高齢者高血圧ガイドライン2017」
9ページに、
●高度に機能が障害されていない高齢者に対する降圧
治療は,年齢に関わらず心血管病の発症を抑制し生
命予後を改善するので行う.(推奨グレード A)
との記載がありますが、
少なくとも80歳以上や心血管イベント既往歴がある高血圧患者さんには
血圧を下げるか否か、一考の余地がありますね。
私自身は、80歳以上の高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することはしませせん。
江部康二
☆☆☆
以下、メディカルトリビューンの記事から一部抜粋です。
https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0322519583/?_login=1#_login
【最近まで、高齢者では血圧を140/90mmHg未満に管理することが有益と考えられてきたが、この目標値は一般化できないとの研究結果が示された。ドイツ・Charité's Institute of Clinical Pharmacology and ToxicologyのAntonios Douros氏らは、70歳以上の降圧薬服用患者を前向きに検討した結果、80歳以上または心血管イベント既往例では、血圧140/90mmHg未満への降圧が死亡リスク上昇に関連していたとEur Heart J(2019年2月25日オンライン版)で発表した。
Eur Heart J. 2019 Feb 25. pii: ehz071. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071.
Control of blood pressure and risk of mortality in a cohort of older adults: the Berlin Initiative Study.
高齢患者の降圧目標値は議論中
高血圧有病率は70歳の70~80%に上る。欧州のガイドラインでは、心筋梗塞や脳卒中を予防するための降圧目標値として65歳以上で140/90mmHg以下を推奨。80歳以上にも同じ目標値が適用されるが、個々の患者で併存症などの付加的要素を考慮する必要がある。高齢高血圧患者の予後を改善する至適降圧目標値については、いまだ結論が出ていない。
今回の研究では、降圧療法により地域在住高齢者の血圧を140/90mmHg未満に管理することと全死亡リスク低下との関連を検討した。対象は、慢性腎臓病対策のための高齢者コホートBerlin Initiative Study(BIS)登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、血圧正常化は収縮期血圧(SBP)140mmHg未満および拡張期血圧(DBP)90mmHg未満とし、非正常化はSBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡した。
イベント既往で死亡リスク61%上昇
8,853人・年の追跡期間中に1,628例のうち636例で血圧の正常化が認められ、469例が死亡した。
Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、正常化血圧は非正常化血圧に比べて、性、BMI、喫煙状態、飲酒量、糖尿病、降圧薬数を調整後の全死亡リスク上昇と関連していた。正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇した。一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、この傾向は観察されなかった。
降圧療法で個別調整が必要
以上の結果から、Douros氏らは「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは死亡リスクを高める可能性がある」と結論。また、これらの患者群の降圧療法について、「個人のニーズに応じて調整する必要性が示された。欧州の高血圧診療ガイドラインを全ての患者に適用する、現行のアプローチを変更するべきである」と付言している。
今回使用されたデータは、同施設のElke Schäffner氏が主導するBISの一部として集積されたもので、2009年以降、2年ごとに問診、血圧・腎機能測定、血液・尿検査が実施された。同氏は「今回、降圧が6年後の死亡に及ぼす影響とその程度を検討した。次のステップとして、どのような高齢高血圧患者で降圧療法が有益なのか検討したい」と述べている。(坂田真子)】
2022年03月08日 (火)
こんにちは。
今回は、高雄病院の「糖尿病・糖質制限食入院治療」についてのご案内です。
高雄病院の「糖尿病・糖質制限食入院治療」ですが、
基本的には、まず外来診察を経て、担当医が入院の適応ありと判断して、
入院の手続きが始まります。
一方、高雄病院では、県外や遠方の患者さんで入院希望の方も多いので、
「診療情報提供書」があれば、場合により、
外来受診なしで、直接入院も可能としています。
具体的には、主治医の先生に前もって診療情報提供書を高雄病院に送付して頂いて、
高雄病院の担当医が入院可能か否かをまず、判断します。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策のため、
2022年3月現在、必ず、一回、高雄病院外来に受診して頂き、
入院前後の決まり事などを説明する手順となっておりますので
ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
入院OKとなれば、患者さんが直接、入院担当職員と電話で相談していただき、
入院日、入院期間などを決めていきます。
診療情報提供書があり、入院OKとなった時は、外来診察を経ずに、直接入院も可能です。
通常、2週間くらいの入院が多いです。
入院時に「CGM」(☆)を装着します。
入院初日と2日目までは、通常の糖尿病食(高糖質食)でCGMでチェックします。
3日目からは、スーパー糖質制限食に切り替えてCGMでチェックします。
糖尿病や肥満が改善すれば、
高脂血症、喘息、痛風、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、脂肪肝も良くなると思います。
糖尿病という病名がありますので、健康保険が効きます。
高雄病院には、
糖質制限食治療を希望して入院される患者さんが日本全国から来られます。
遠方の方は、入院して糖質制限食で糖尿病自己管理の体験をし知識を会得してもらい、
退院されたら地元の医師にフォローしていただきます。
京都や近くの糖尿人でも、外来で、なかなか血糖値が下がりきらない時などは、
入院すると改善する人がほとんどですので、
『コントロール・教育入院』がお奨めです。
14日間~21日間あれば、コントロール・教育入院が可能です。
勿論健康保険が効きます。
当初の数日間のスーパー糖質制限食で内服薬中止して、
コントロール良好となることがほとんどなので、
退院前には、グルコバイ(100)1錠を、食直前30秒に内服して、
あえて炊いたご飯2/3膳(約100g)など摂取して、
食後血糖値がどのくらい上昇するかを試して実験することがあります。
食後2時間で180mg/dl未満ならまあまあで、140mg/dl未満なら合格です。
グルコバイだけで力が及ばない時は、
「グルコバイ+グルファスト」食直前30秒に内服で試します。
期間的に余裕があれば、パンやうどんなども試します。
これは、退院後どうしても、
或いはやむを得ず糖質摂取せざるを得ないときのための
シミュレーションです。(^^)
インスリン注射をされている時は、3~4週間あった方が確実に減量できます。
インスリンの量は1/3以下になります。
内因性インスリンがあるていど残存している方は、
インスリン離脱できることもあります。
2型だけでなく、1型の糖尿人でも、インスリンの量は1/3以下になります。
入院して、CGMを装着することで、
「通常のカロリー制限の糖尿病食」と「糖質制限食」の効果の大きな差がリアルタイムに確認できます。
血糖値を直接上げるのは糖質だけで、タンパク質・脂質はあげないということを、
身をもって体験することで、糖質制限食へのモチベーションが高まります。
「通常のカロリー制限の糖尿病食(高糖質食)」摂取だと食後の血糖値は
軽く200~240mg/dlを超えることがほとんどです。
「スーパー糖質制限食」だと食後血糖値は140~180mg/dl未満となります。
入院して糖質制限食を摂取してCGM検査を実施しているのは、
日本中で高雄病院以外には、ほとんどありません。
同一カロリーでも、糖質を摂取すれば、インスリン注射や経口血糖降下剤を内服していても、
食後血糖値は200~240mg/dlを超えることが多いですが、
スーパー糖質制限食なら、薬・注射なしで食後血糖値は140~180mg/dl未満のことがほとんどです。
勿論、個人差はあります。
入院中はその他、血液・尿検査、心電図、胸部レ線、頭部CTや頸動脈エコー・腹部エコーなど、糖尿病に関連するいろいろな検査もあります。
一日の尿をためて、尿糖測定やインスリン分泌量測定(尿中Cペプチド測定)も行います。
一日尿のCペプチド測定で、トータルなインスリンの分泌量がチェックできます。
早朝空腹時の血中IRI(インスリン)かCペプチド(インスリン注射をしている人はこちらを測定)を調べることで、
基礎分泌のインスリンがどのくらいでているかわかります。
インスリン抵抗性の検査やインスリン追加分泌能の検査もあります。
管理栄養士による具体的な栄養指導も2回あります。
糖質制限食を体験し学ばれて、退院後は地元の病院で通院され、
6ヶ月に一回くらい京都観光を兼ねて、高雄病院に来て頂いている方もおられます。
遠方の場合、年に一回、糖質制限食入院をされる方もおられます。
入院・外来治療の実績があれば、
高雄病院への電話で栄養相談やメールでの質問もOKです。
高雄病院では現実に、関東、北海道、九州、東海、中部、中国、九州地方など、
様々な遠方地域の糖尿人の入院も多いです。
北海道から沖縄まで万遍なくこられます。
全国の糖尿人の方々も、糖質制限食入院治療ご希望の場合は、
高雄病院 075-871-0245
まで、電話され、入院担当職員とご相談いただけば幸いです。 (^_^)
江部康二
(☆)CGM
CGM(Continuous Glucose Monitoring):持続ブドウ糖測定。
CGM測定装置のごく細いビニール製の管を、専用の器具で皮下に装着します。
パチンという感じで装着しますが、痛みはありません。
24時間、15分毎に組織間液のブドウ糖を測定できて、14日間継続可能です。
CGMはインスリンポンプを実施している患者さんがいる病院でないと
健康保険では検査できません。
高雄病院では、2016年12月から、CGMが健康保険で検査可能となりました。
今回は、高雄病院の「糖尿病・糖質制限食入院治療」についてのご案内です。
高雄病院の「糖尿病・糖質制限食入院治療」ですが、
基本的には、まず外来診察を経て、担当医が入院の適応ありと判断して、
入院の手続きが始まります。
一方、高雄病院では、県外や遠方の患者さんで入院希望の方も多いので、
「診療情報提供書」があれば、場合により、
外来受診なしで、直接入院も可能としています。
具体的には、主治医の先生に前もって診療情報提供書を高雄病院に送付して頂いて、
高雄病院の担当医が入院可能か否かをまず、判断します。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策のため、
2022年3月現在、必ず、一回、高雄病院外来に受診して頂き、
入院前後の決まり事などを説明する手順となっておりますので
ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
入院OKとなれば、患者さんが直接、入院担当職員と電話で相談していただき、
入院日、入院期間などを決めていきます。
診療情報提供書があり、入院OKとなった時は、外来診察を経ずに、直接入院も可能です。
通常、2週間くらいの入院が多いです。
入院時に「CGM」(☆)を装着します。
入院初日と2日目までは、通常の糖尿病食(高糖質食)でCGMでチェックします。
3日目からは、スーパー糖質制限食に切り替えてCGMでチェックします。
糖尿病や肥満が改善すれば、
高脂血症、喘息、痛風、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、脂肪肝も良くなると思います。
糖尿病という病名がありますので、健康保険が効きます。
高雄病院には、
糖質制限食治療を希望して入院される患者さんが日本全国から来られます。
遠方の方は、入院して糖質制限食で糖尿病自己管理の体験をし知識を会得してもらい、
退院されたら地元の医師にフォローしていただきます。
京都や近くの糖尿人でも、外来で、なかなか血糖値が下がりきらない時などは、
入院すると改善する人がほとんどですので、
『コントロール・教育入院』がお奨めです。
14日間~21日間あれば、コントロール・教育入院が可能です。
勿論健康保険が効きます。
当初の数日間のスーパー糖質制限食で内服薬中止して、
コントロール良好となることがほとんどなので、
退院前には、グルコバイ(100)1錠を、食直前30秒に内服して、
あえて炊いたご飯2/3膳(約100g)など摂取して、
食後血糖値がどのくらい上昇するかを試して実験することがあります。
食後2時間で180mg/dl未満ならまあまあで、140mg/dl未満なら合格です。
グルコバイだけで力が及ばない時は、
「グルコバイ+グルファスト」食直前30秒に内服で試します。
期間的に余裕があれば、パンやうどんなども試します。
これは、退院後どうしても、
或いはやむを得ず糖質摂取せざるを得ないときのための
シミュレーションです。(^^)
インスリン注射をされている時は、3~4週間あった方が確実に減量できます。
インスリンの量は1/3以下になります。
内因性インスリンがあるていど残存している方は、
インスリン離脱できることもあります。
2型だけでなく、1型の糖尿人でも、インスリンの量は1/3以下になります。
入院して、CGMを装着することで、
「通常のカロリー制限の糖尿病食」と「糖質制限食」の効果の大きな差がリアルタイムに確認できます。
血糖値を直接上げるのは糖質だけで、タンパク質・脂質はあげないということを、
身をもって体験することで、糖質制限食へのモチベーションが高まります。
「通常のカロリー制限の糖尿病食(高糖質食)」摂取だと食後の血糖値は
軽く200~240mg/dlを超えることがほとんどです。
「スーパー糖質制限食」だと食後血糖値は140~180mg/dl未満となります。
入院して糖質制限食を摂取してCGM検査を実施しているのは、
日本中で高雄病院以外には、ほとんどありません。
同一カロリーでも、糖質を摂取すれば、インスリン注射や経口血糖降下剤を内服していても、
食後血糖値は200~240mg/dlを超えることが多いですが、
スーパー糖質制限食なら、薬・注射なしで食後血糖値は140~180mg/dl未満のことがほとんどです。
勿論、個人差はあります。
入院中はその他、血液・尿検査、心電図、胸部レ線、頭部CTや頸動脈エコー・腹部エコーなど、糖尿病に関連するいろいろな検査もあります。
一日の尿をためて、尿糖測定やインスリン分泌量測定(尿中Cペプチド測定)も行います。
一日尿のCペプチド測定で、トータルなインスリンの分泌量がチェックできます。
早朝空腹時の血中IRI(インスリン)かCペプチド(インスリン注射をしている人はこちらを測定)を調べることで、
基礎分泌のインスリンがどのくらいでているかわかります。
インスリン抵抗性の検査やインスリン追加分泌能の検査もあります。
管理栄養士による具体的な栄養指導も2回あります。
糖質制限食を体験し学ばれて、退院後は地元の病院で通院され、
6ヶ月に一回くらい京都観光を兼ねて、高雄病院に来て頂いている方もおられます。
遠方の場合、年に一回、糖質制限食入院をされる方もおられます。
入院・外来治療の実績があれば、
高雄病院への電話で栄養相談やメールでの質問もOKです。
高雄病院では現実に、関東、北海道、九州、東海、中部、中国、九州地方など、
様々な遠方地域の糖尿人の入院も多いです。
北海道から沖縄まで万遍なくこられます。
全国の糖尿人の方々も、糖質制限食入院治療ご希望の場合は、
高雄病院 075-871-0245
まで、電話され、入院担当職員とご相談いただけば幸いです。 (^_^)
江部康二
(☆)CGM
CGM(Continuous Glucose Monitoring):持続ブドウ糖測定。
CGM測定装置のごく細いビニール製の管を、専用の器具で皮下に装着します。
パチンという感じで装着しますが、痛みはありません。
24時間、15分毎に組織間液のブドウ糖を測定できて、14日間継続可能です。
CGMはインスリンポンプを実施している患者さんがいる病院でないと
健康保険では検査できません。
高雄病院では、2016年12月から、CGMが健康保険で検査可能となりました。
2022年03月07日 (月)
【22/03/07 らこ
1時間値と2時間値について教えて下さい
みほこさんの75gブドウ糖負荷試験値について教えて下さい。
今回も1年前も
◎1時間値 と 2時間値 がほぼ同じ
です。
この状態は糖尿病進行具合としては、どのステージなのでしょうか? 】
こんにちは。
らこさんから、
『75gブドウ糖負荷試験値で1時間値と2時間値がほぼ同じ数値なのは
糖尿病進行具合としては、どのステージなのか?』
というコメント・質問を頂きました。
それについて、今回は、
正常人および糖尿人における食後血糖値上昇のピーク時間は、
いつになるのかを検討してみました。
東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授の西村理明氏の研究によれば、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
上記はm3.com 2012年5月23日 (水)配信の記事の要約です。(*)
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、
40分から50分の時間帯に収まっていました。
次に、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
らこさんの質問の『ブドウ糖負荷後1時間値と2時間値がほぼ同じ数値』
なのは、2時間値がピークと言えるので、
糖尿病としては、HbA1c8%以上に相当するあるていど進行した糖尿病と言えます。
糖尿人においては、自分自身の食後血糖値のピークが、
1時間なのか90分なのか2時間なのか知っておくと便利です。
休みの日などに、
<食前血糖値、食後1時間血糖値、食後90分血糖値、食後2時間血糖値>
を、血糖自己測定器(SMBG)で検査して把握しておきましょう。
自分の食後血糖値のピーク時間が確認できたら、
外食時などは、その時間に検査すれば良いです。
なお食後1時間血糖値というのは、食事開始後1時間という意味です。
例えば午前8時に食事を開始したならば
食後1時間血糖値は午前9時に測定です。
(*)https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
江部康二
1時間値と2時間値について教えて下さい
みほこさんの75gブドウ糖負荷試験値について教えて下さい。
今回も1年前も
◎1時間値 と 2時間値 がほぼ同じ
です。
この状態は糖尿病進行具合としては、どのステージなのでしょうか? 】
こんにちは。
らこさんから、
『75gブドウ糖負荷試験値で1時間値と2時間値がほぼ同じ数値なのは
糖尿病進行具合としては、どのステージなのか?』
というコメント・質問を頂きました。
それについて、今回は、
正常人および糖尿人における食後血糖値上昇のピーク時間は、
いつになるのかを検討してみました。
東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科准教授の西村理明氏の研究によれば、
1)耐糖能正常者24名の食後血糖値のピークは、40分から50分
2)HbA1c8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピーク
3)HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピーク
です。
上記はm3.com 2012年5月23日 (水)配信の記事の要約です。(*)
ピークが、後にずれるほど、耐糖能が良くないと言えるようです。
西村氏はCGMを駆使して血糖の変動を研究しています。
例えば、耐糖能正常者の24人を調べたところ、
朝食後、昼食後、夕食後ともに血糖のピークは、
40分から50分の時間帯に収まっていました。
次に、糖尿病患者の血糖変化も検証しています。
その結果、HbA1cが8%を超える患者では2時間後にピークがあったものの、
8%未満の患者はおおむね1時間から90分の間にピークがありました。
らこさんの質問の『ブドウ糖負荷後1時間値と2時間値がほぼ同じ数値』
なのは、2時間値がピークと言えるので、
糖尿病としては、HbA1c8%以上に相当するあるていど進行した糖尿病と言えます。
糖尿人においては、自分自身の食後血糖値のピークが、
1時間なのか90分なのか2時間なのか知っておくと便利です。
休みの日などに、
<食前血糖値、食後1時間血糖値、食後90分血糖値、食後2時間血糖値>
を、血糖自己測定器(SMBG)で検査して把握しておきましょう。
自分の食後血糖値のピーク時間が確認できたら、
外食時などは、その時間に検査すれば良いです。
なお食後1時間血糖値というのは、食事開始後1時間という意味です。
例えば午前8時に食事を開始したならば
食後1時間血糖値は午前9時に測定です。
(*)https://www.m3.com/clinical/sanpiryoron/152762
江部康二
2022年03月06日 (日)
【22/03/04 みほこ
空腹時インスリンが少ないことについて
江部先生
こんにちは。
いつも情報発信ありがとうございます。
先日1年ぶりに2回目の75gブドウ糖付加試験があり、
食後2時間値が2回とも200超で糖尿病判定でした。
気になったことがあり宜しければ教えてください。
空腹時のインスリンが2.1と前回より低くなっており、また基準値以下でした。
これは薬を服用したりインスリンを打ったりしなくて大丈夫なのでしょうか。
《昨年2021年3月の検査》
ヘモグロビンA1c 6.0
75gブドウ糖摂取前90(インスリン2.6)
30分後167(インスリン17.9)
1時間後237(インスリン24.2)
2時間後244(インスリン63.3)
《数日前の検査》
ヘモグロビンA1c 5.9
75gブドウ糖摂取前88(インスリン2.1)
30分後196(インスリン19.1)
1時間後265(インスリン測定なし)
2時間後258(インスリン測定なし)
以上でした。】
こんにちは。
みほこさんから、空腹時のインスリンについて、コメント・質問を頂きました。
ブログ読者の皆さんにも知っておいてほしいので、記事にしました。
みほこ さん
75gブドウ糖摂取前:88
インスリン:2.1
これは、非常に好ましい素晴らしいデータです。
2.1と少ない量のインスリン分泌で、空腹時血糖値は88mg/dl、と正常です。
血糖値が正常である限り、インスリンは少なければ少ない程、良いのです。
過剰のインスリンは、百害あって一利なしです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、確かに糖尿病型ですが、
スーパー糖質制限食なら食後血糖値の上昇は最小限ですみます。
食前と食後の血糖変動幅の少ない「質の良いHbA1c」となり、
合併症の心配もありません。
そして、75g経口ブドウ糖負荷試験ですが、
もう実施しないほうが良いです。
日本糖尿病学会も糖尿病が確定診断できている人は
75gブドウ糖負荷試験は実施しないとしています。
みほこさんが、ブドウ糖負荷試験を行えば、180mg/dl以上の高血糖が
確実に2時間以上続きますので、勿論、望ましくないのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、正常人や境界型の人を対象に、実施します。
それで、将来糖尿病になりやすいタイプか否かなどがわかります。
例えば、負荷試験で、1時間値が190mg/dlと上昇しても
2時間値が140mg/dl未満なら正常型と診断されます。
しかし、1時間値が180mg/dlを越えた人は将来糖尿病を発症しやすいことが
わかっているので注意が必要なのです。
具体的には糖質制限食で、糖尿病発症を予防することが必要です。
「スーパー糖質制限食」なら、
AGEs蓄積も最小限となり<糖化⇒老化>というパターンが防げるので、
アンチエイジング効果が期待できます。
「緩やかな糖質制限食」でも、糖尿病発症予防効果はあります。
なお、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、
1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
インスリンが開発されて以降、1型糖尿病の寿命は劇的に改善しています。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、
アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は活性酸素を発生させ、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされています。
パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも
酸化ストレスの関与の可能性があります。
江部康二
空腹時インスリンが少ないことについて
江部先生
こんにちは。
いつも情報発信ありがとうございます。
先日1年ぶりに2回目の75gブドウ糖付加試験があり、
食後2時間値が2回とも200超で糖尿病判定でした。
気になったことがあり宜しければ教えてください。
空腹時のインスリンが2.1と前回より低くなっており、また基準値以下でした。
これは薬を服用したりインスリンを打ったりしなくて大丈夫なのでしょうか。
《昨年2021年3月の検査》
ヘモグロビンA1c 6.0
75gブドウ糖摂取前90(インスリン2.6)
30分後167(インスリン17.9)
1時間後237(インスリン24.2)
2時間後244(インスリン63.3)
《数日前の検査》
ヘモグロビンA1c 5.9
75gブドウ糖摂取前88(インスリン2.1)
30分後196(インスリン19.1)
1時間後265(インスリン測定なし)
2時間後258(インスリン測定なし)
以上でした。】
こんにちは。
みほこさんから、空腹時のインスリンについて、コメント・質問を頂きました。
ブログ読者の皆さんにも知っておいてほしいので、記事にしました。
みほこ さん
75gブドウ糖摂取前:88
インスリン:2.1
これは、非常に好ましい素晴らしいデータです。
2.1と少ない量のインスリン分泌で、空腹時血糖値は88mg/dl、と正常です。
血糖値が正常である限り、インスリンは少なければ少ない程、良いのです。
過剰のインスリンは、百害あって一利なしです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、確かに糖尿病型ですが、
スーパー糖質制限食なら食後血糖値の上昇は最小限ですみます。
食前と食後の血糖変動幅の少ない「質の良いHbA1c」となり、
合併症の心配もありません。
そして、75g経口ブドウ糖負荷試験ですが、
もう実施しないほうが良いです。
日本糖尿病学会も糖尿病が確定診断できている人は
75gブドウ糖負荷試験は実施しないとしています。
みほこさんが、ブドウ糖負荷試験を行えば、180mg/dl以上の高血糖が
確実に2時間以上続きますので、勿論、望ましくないのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、正常人や境界型の人を対象に、実施します。
それで、将来糖尿病になりやすいタイプか否かなどがわかります。
例えば、負荷試験で、1時間値が190mg/dlと上昇しても
2時間値が140mg/dl未満なら正常型と診断されます。
しかし、1時間値が180mg/dlを越えた人は将来糖尿病を発症しやすいことが
わかっているので注意が必要なのです。
具体的には糖質制限食で、糖尿病発症を予防することが必要です。
「スーパー糖質制限食」なら、
AGEs蓄積も最小限となり<糖化⇒老化>というパターンが防げるので、
アンチエイジング効果が期待できます。
「緩やかな糖質制限食」でも、糖尿病発症予防効果はあります。
なお、インンスリンがないと、人は死亡します。
基礎分泌のインスリンは生命維持に絶対に必要なのです。
実際、1921年にインスリンが合成されるまでは、
1型糖尿病で内因性インスリンゼロの場合は平均余命は半年程度でした。
インスリンが開発されて以降、1型糖尿病の寿命は劇的に改善しています。
一方で過剰なインスリンの害にはエビデンスがあります。
たとえ基準値内でも、インスリンの血中濃度が高いほど、
アルツハイマー病、がん、肥満、高血圧などのリスクとなります。
また、高インスリン血症は活性酸素を発生させ、酸化ストレスを増加させます。
酸化ストレスは、老化・癌・動脈硬化・その他多くの疾患の元凶とされています。
パーキンソン病、狭心症、心筋梗塞、アルツハイマー病などにも
酸化ストレスの関与の可能性があります。
江部康二
2022年03月05日 (土)
こんにちは。
私が監修をつとめる「菓子職人糖質制限マンスリーケーキ」のご案内です。
2022年3月・4月は、ムースフレーズです。
菓子職人ムースフレーズ
糖質 3.62g カロリー 236kcal
※100gあたり ※エリストールを除く
【商品紹介ページはこちら】

表示糖質は100gあたり3.62gです。
春らしい甘酸っぱいムースフレーズです。
ブルーベリー、ピスタチオ刻み、生クリーム、
ムースフレーズ、いちごジャム、シフォン生地、
バタームース、フォンドマカロン生地で構成されています。
江部康二の人体実験で、
2022年3月4日(土)
17時 血糖値:105mg
ムースフレーズ 100g摂取
18時 血糖値106mg (食後1時間血糖値)
私の場合は、糖質1gが血糖値を3mg上昇させます。
菓子職人ムースフレーズ(1個100g、糖質3.62g)で、
本来、10.86mg上昇するはずですが1mgしか上昇しませんでした。
私の追加分泌インスリン第一相が、ちょっぴり頑張ってくれたようです。
勿論個人差はあると思いますが、
これなら糖質セイゲニストにも、安心です。
甘味料はもっぱら、
血糖上昇ゼロのエリスリトールです。
糖質制限中の方にも、美味しいケーキで季節を感じていただけます。
菓子職人さんの『糖質制限マンスリーケーキ』
我々糖質セイゲニストの強い味方です。
菓子職人さん、ありがとうございます。
菓子職人糖質制限マンスリーケーキ、3月・4月はムースフレーズです。
私にとっては、月替わりで糖質制限OKなケーキを食べることができて嬉しい限りです。
ブログ読者の皆さん、是非ご賞味あれ!!
お問い合わせは以下です。
☆☆☆
彩韻菓子工房有限会社
〒615-0032 京都府京都市右京区西院西高田町19
TEL:075-311-4606
FAX:075-311-4123
営業時間:午前9:00から午後8:00(年中無休)
ホームページ: http://www.kashishokunin.co.jp/
お問い合わせ: info@kashishokunin.co.jp
江部康二
私が監修をつとめる「菓子職人糖質制限マンスリーケーキ」のご案内です。
2022年3月・4月は、ムースフレーズです。
菓子職人ムースフレーズ
糖質 3.62g カロリー 236kcal
※100gあたり ※エリストールを除く
【商品紹介ページはこちら】

表示糖質は100gあたり3.62gです。
春らしい甘酸っぱいムースフレーズです。
ブルーベリー、ピスタチオ刻み、生クリーム、
ムースフレーズ、いちごジャム、シフォン生地、
バタームース、フォンドマカロン生地で構成されています。
江部康二の人体実験で、
2022年3月4日(土)
17時 血糖値:105mg
ムースフレーズ 100g摂取
18時 血糖値106mg (食後1時間血糖値)
私の場合は、糖質1gが血糖値を3mg上昇させます。
菓子職人ムースフレーズ(1個100g、糖質3.62g)で、
本来、10.86mg上昇するはずですが1mgしか上昇しませんでした。
私の追加分泌インスリン第一相が、ちょっぴり頑張ってくれたようです。
勿論個人差はあると思いますが、
これなら糖質セイゲニストにも、安心です。
甘味料はもっぱら、
血糖上昇ゼロのエリスリトールです。
糖質制限中の方にも、美味しいケーキで季節を感じていただけます。
菓子職人さんの『糖質制限マンスリーケーキ』
我々糖質セイゲニストの強い味方です。
菓子職人さん、ありがとうございます。
菓子職人糖質制限マンスリーケーキ、3月・4月はムースフレーズです。
私にとっては、月替わりで糖質制限OKなケーキを食べることができて嬉しい限りです。
ブログ読者の皆さん、是非ご賞味あれ!!
お問い合わせは以下です。
☆☆☆
彩韻菓子工房有限会社
〒615-0032 京都府京都市右京区西院西高田町19
TEL:075-311-4606
FAX:075-311-4123
営業時間:午前9:00から午後8:00(年中無休)
ホームページ: http://www.kashishokunin.co.jp/
お問い合わせ: info@kashishokunin.co.jp
江部康二
2022年03月04日 (金)
こんにちは。
「「老化と万病」のもと『糖化』を防ぐ!「糖質制限食」のすすめ 」。
オンライン講演会
2022年2月27日(日)無事終了しました。
71名の参加者がありました。
カンボジア、中国、オランダと海外からもご参加頂きました。
これはオンライン講演会の利点ですね。
25名の方にアンケートに回答して頂きました。
その中で、糖質制限食を3年以上続けている方が76%ありました。
当日は、たくさんの質問を頂き、その場で回答しました。
また、アンケートでのご意見・質問も頂きました。
赤ちゃんの離乳食に重湯や粥を重用しない方が良いのではとのご意見もありましたが
その通りです。
体を構成するのは、タンパク質と脂質ですから、離乳食もそれらが必要です。
産婦人科医の宗田哲男先生は、すでに赤ちゃんに高タンパク・高脂肪食を与えて、
成果をあげておられます。
殆どの病院で入院患者さんへの栄養や水分の補給にブドウ糖液の点滴を行いますす。
糖尿病患者さんには、生理的食塩水、ラクテック注、キシリトール、ポタコールRなどの血糖を上げない点滴があります。
病院によっては糖尿病患者さんがお願いすれば、
ブドウ糖ではなく、それらで対応してくれますのでお願いしてみましょう。。
高インスリン状態が活性酸素を発生させる機序についての質問がありました。
β細胞がインスリンを分泌するときにミトコンドリアの機能も活性化します。
酸素を消費する過程でミトコンドリアは活性酸素を発生させます。
過剰なインスリン分泌が、過剰な活性酸素産生につながります。
糖化ストレスや酸化ストレスの蓄積により慢性炎症を生じます。
そして、その延長上に老化やがんを始めとして、
様々な生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、高血圧、パーキンソン病、アルツハイマー病など)の発症があります。
糖質を摂取すると血糖値が上昇し、
血糖値が高いほどAGEsがたくさん蓄積していき糖化ストレスとなっていきます。
すなわち、三大栄養素のうち、糖化ストレスを生じるのは糖質だけであり、
脂質・タンパク質では生じません。
糖質制限食を実践すれば、糖化ストレスを大幅に減らすことができるので
老化やがんや慢性炎症を予防することが可能となります。
また、『食後高血糖』『血糖変動幅増大』『インスリン過剰分泌』は
活性酸素を発生させて、酸化ストレスの元となります。
糖質制限食なら、食後高血糖、血糖変動幅増大、インスリン過剰分泌を、
防ぐことが可能です。
このように、糖質制限食なら、糖化ストレスも酸化ストレスも
最小限ですみますので、がん、老化、生活習慣病を予防できる可能性が高いのです。
江部康二
「「老化と万病」のもと『糖化』を防ぐ!「糖質制限食」のすすめ 」。
オンライン講演会
2022年2月27日(日)無事終了しました。
71名の参加者がありました。
カンボジア、中国、オランダと海外からもご参加頂きました。
これはオンライン講演会の利点ですね。
25名の方にアンケートに回答して頂きました。
その中で、糖質制限食を3年以上続けている方が76%ありました。
当日は、たくさんの質問を頂き、その場で回答しました。
また、アンケートでのご意見・質問も頂きました。
赤ちゃんの離乳食に重湯や粥を重用しない方が良いのではとのご意見もありましたが
その通りです。
体を構成するのは、タンパク質と脂質ですから、離乳食もそれらが必要です。
産婦人科医の宗田哲男先生は、すでに赤ちゃんに高タンパク・高脂肪食を与えて、
成果をあげておられます。
殆どの病院で入院患者さんへの栄養や水分の補給にブドウ糖液の点滴を行いますす。
糖尿病患者さんには、生理的食塩水、ラクテック注、キシリトール、ポタコールRなどの血糖を上げない点滴があります。
病院によっては糖尿病患者さんがお願いすれば、
ブドウ糖ではなく、それらで対応してくれますのでお願いしてみましょう。。
高インスリン状態が活性酸素を発生させる機序についての質問がありました。
β細胞がインスリンを分泌するときにミトコンドリアの機能も活性化します。
酸素を消費する過程でミトコンドリアは活性酸素を発生させます。
過剰なインスリン分泌が、過剰な活性酸素産生につながります。
糖化ストレスや酸化ストレスの蓄積により慢性炎症を生じます。
そして、その延長上に老化やがんを始めとして、
様々な生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、高血圧、パーキンソン病、アルツハイマー病など)の発症があります。
糖質を摂取すると血糖値が上昇し、
血糖値が高いほどAGEsがたくさん蓄積していき糖化ストレスとなっていきます。
すなわち、三大栄養素のうち、糖化ストレスを生じるのは糖質だけであり、
脂質・タンパク質では生じません。
糖質制限食を実践すれば、糖化ストレスを大幅に減らすことができるので
老化やがんや慢性炎症を予防することが可能となります。
また、『食後高血糖』『血糖変動幅増大』『インスリン過剰分泌』は
活性酸素を発生させて、酸化ストレスの元となります。
糖質制限食なら、食後高血糖、血糖変動幅増大、インスリン過剰分泌を、
防ぐことが可能です。
このように、糖質制限食なら、糖化ストレスも酸化ストレスも
最小限ですみますので、がん、老化、生活習慣病を予防できる可能性が高いのです。
江部康二
2022年03月03日 (木)
【22/03/02 ゆり
LDLコレステロール高値
先生のブログ毎回楽しみに拝見しております。
先生に質問ですが今回の健康診断結果が返ってきまして、
ちょっとビックリしたもので。
糖質制限5年目、40代半ば女性です。
LDLコレステロール330!
HDLコレステロール72
TG 38
BMI 19.3
糖質制限をしているとコレステロール上昇が言われておりますがさすがにこれは…
その他検査の数値は優等生??でしたが、
以前に主治医に話したところ、死にますよ?と。
私のような一般人にとっては診察してくださる医師の言葉は絶対で、
その言葉は恐怖でしかありませんでした。
高すぎるのも低すぎるのもよろしく無いのも承知しておりますが、
20代の頃は低コレステロールと言われていましたので
家族性のものでは無いだろうと思います。
更年期に差し掛かっているのもあるでしょうが、
この状態については一般的に何が原因と考えられますか?
もそも糖質制限をしている人の基準が無いですから一般的に、
というのもおかしいですが。
肉も魚も野菜も海藻、キノコ類もよくたべます。
卵もそれなりですが1日に5個も6個も食べません。
食べたとしてもせいぜい2個くらいでしょうか。それとも乳脂肪?
コーヒーにチョロっと入れて飲んではおりますが。
近くに日糖医の先生がいらっしゃる病院もありません。
主治医にまた死にますよ、と言われに行くのも恐怖ですね。】
こんにちは。
ゆりさんから糖質制限食とコレステロール値について
コメント・質問を頂きました。
【糖質制限5年目、40代半ば女性です。
LDLコレステロール330!
HDLコレステロール72
TG 38
BMI 19.3】
いつも本ブログで、述べていますが
HDLコレステロールが72で、60以上あり
TGが 38で、60以下なので、
小粒子LDLコレステロール、酸化LDLコレステロールは皆無であり、
LDLコレステロールは全て善玉なので問題ないです。
とはいえ、主治医の心配もわかりますので、
頸動脈エコー(Carotid echo)、
心電図(electro-cardiogram、ECG)
心エコー(Echocardiography)
を検査しましょう。
LDL-C高値で懸念されるのは、
動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなる冠動脈狭窄なので、
画像診断で、その問題がなければ、経過をみて良いと思います。、
また、画像診断はOKでも医師がなお納得しないなら、
スタチンは何かと副作用(横紋筋融解症など)が多い薬なので
副作用が比較的少ないゼチーア(エゼチミブ、Ezetimibe)を処方して貰うのが良いです。
糖質制限食でLDLコレステロールが上昇した場合は、
食事中のコレステロールの吸収を抑えるゼチーアが劇的に効きます。
服用1ヶ月で、LDLコレステロールが100~180mg/dlくらい下がります。
①標準の大きさのLDLコレステロール:
肝臓から末梢組織にコレステロールという細胞膜の原料を運ぶ善玉。
②小粒子LDLコレステロール:
コレステロール輸送という本来の仕事をほとんどせずに、血管壁の傷などに入り込んで
活性酸素に触れ、酸化して酸化LDLコレステロールになりやすいので危険。
③酸化LDLコレステロール:
異物であり血管壁にこびりついて動脈硬化の元凶となる真の悪玉。
つまり、危険なのは②と③であり、
①はなくてはならない大切なものなのです。
http://promea2014.com/blog/?p=1101
ドクターシミズのひとりごと
に掲載してある、図を見て頂ければ上記が確認できます。
(図はAtherogenic lipoprotein phenotype. A proposed genetic marker for coronary heart disease risk.M A Austin, M C King, K M Vranizan and R M Krauss Circulation. 1990;82:495-506より抜粋)
清水先生、ありがとうございます。
江部康二
LDLコレステロール高値
先生のブログ毎回楽しみに拝見しております。
先生に質問ですが今回の健康診断結果が返ってきまして、
ちょっとビックリしたもので。
糖質制限5年目、40代半ば女性です。
LDLコレステロール330!
HDLコレステロール72
TG 38
BMI 19.3
糖質制限をしているとコレステロール上昇が言われておりますがさすがにこれは…
その他検査の数値は優等生??でしたが、
以前に主治医に話したところ、死にますよ?と。
私のような一般人にとっては診察してくださる医師の言葉は絶対で、
その言葉は恐怖でしかありませんでした。
高すぎるのも低すぎるのもよろしく無いのも承知しておりますが、
20代の頃は低コレステロールと言われていましたので
家族性のものでは無いだろうと思います。
更年期に差し掛かっているのもあるでしょうが、
この状態については一般的に何が原因と考えられますか?
もそも糖質制限をしている人の基準が無いですから一般的に、
というのもおかしいですが。
肉も魚も野菜も海藻、キノコ類もよくたべます。
卵もそれなりですが1日に5個も6個も食べません。
食べたとしてもせいぜい2個くらいでしょうか。それとも乳脂肪?
コーヒーにチョロっと入れて飲んではおりますが。
近くに日糖医の先生がいらっしゃる病院もありません。
主治医にまた死にますよ、と言われに行くのも恐怖ですね。】
こんにちは。
ゆりさんから糖質制限食とコレステロール値について
コメント・質問を頂きました。
【糖質制限5年目、40代半ば女性です。
LDLコレステロール330!
HDLコレステロール72
TG 38
BMI 19.3】
いつも本ブログで、述べていますが
HDLコレステロールが72で、60以上あり
TGが 38で、60以下なので、
小粒子LDLコレステロール、酸化LDLコレステロールは皆無であり、
LDLコレステロールは全て善玉なので問題ないです。
とはいえ、主治医の心配もわかりますので、
頸動脈エコー(Carotid echo)、
心電図(electro-cardiogram、ECG)
心エコー(Echocardiography)
を検査しましょう。
LDL-C高値で懸念されるのは、
動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなる冠動脈狭窄なので、
画像診断で、その問題がなければ、経過をみて良いと思います。、
また、画像診断はOKでも医師がなお納得しないなら、
スタチンは何かと副作用(横紋筋融解症など)が多い薬なので
副作用が比較的少ないゼチーア(エゼチミブ、Ezetimibe)を処方して貰うのが良いです。
糖質制限食でLDLコレステロールが上昇した場合は、
食事中のコレステロールの吸収を抑えるゼチーアが劇的に効きます。
服用1ヶ月で、LDLコレステロールが100~180mg/dlくらい下がります。
①標準の大きさのLDLコレステロール:
肝臓から末梢組織にコレステロールという細胞膜の原料を運ぶ善玉。
②小粒子LDLコレステロール:
コレステロール輸送という本来の仕事をほとんどせずに、血管壁の傷などに入り込んで
活性酸素に触れ、酸化して酸化LDLコレステロールになりやすいので危険。
③酸化LDLコレステロール:
異物であり血管壁にこびりついて動脈硬化の元凶となる真の悪玉。
つまり、危険なのは②と③であり、
①はなくてはならない大切なものなのです。
http://promea2014.com/blog/?p=1101
ドクターシミズのひとりごと
に掲載してある、図を見て頂ければ上記が確認できます。
(図はAtherogenic lipoprotein phenotype. A proposed genetic marker for coronary heart disease risk.M A Austin, M C King, K M Vranizan and R M Krauss Circulation. 1990;82:495-506より抜粋)
清水先生、ありがとうございます。
江部康二
2022年03月02日 (水)
【22/03/01スぬこ 拒否する 野菜の糖質根菜類(じゃがいも、さつまいも、山芋、レンコン、里芋)は糖質高い認識ですが、
なすびも、糖質高い部類にはいりますか?
100g中糖質10g以下は低糖質だと思っていたので。】
こんにちは。
スぬこ さんから、低糖質の定義などについて、コメント・質問を頂きました。
糖質含有量に関する定義ですが、
糖質オフとか糖質ゼロとかいろいろ出てきます。
読者の皆さんも、糖質「オフ」と「ゼロ」は同じなのか違うのかとか、
気になるところと思います。
それで、今回の記事は
低糖質、糖質ゼロ、糖質オフ、カロリーゼロ、カロリーオフなどの意味について
調べてみました。
まず、低糖質ですが「低糖質」の法的な定義は、ないと思われます。
低糖質と表記されている商品をみると
例えばそれぞれのメーカーが100g当たり糖質5gまでを
当社では低糖質と表記していますという風に書かれています。
なので各社によって低糖質の基準設定が違う可能性もあると思います。
以下は
「健康増進法」の基準に則り、それぞれの表示基準を整理してみました。
<カロリー>
食品100ml当たり 5kcal未満:無、ゼロ、ノン、レス
食品100g当たり 5kcal未満:無、ゼロ、ノン、レス
上記基準を満たせば、『カロリー無』『カロリーゼロ』などと表示可能
食品100ml当たり 20kcal以下:低、ひかえめ、小、ライト、ダイエット、オフ
食品100g当たり 40kcal以下 :低、ひかえめ、小、ライト、ダイエット、オフ
この基準を満たしていれば、『低カロリー』『ロリーオフ』など上記表示可能。
<糖類>
健康増進法の「栄養表示基準制度」で糖類とは、
「単糖類+二糖類、但し糖アルコールは除く」です。
単糖類にはブドウ糖、果糖などがあり、
二糖類には砂糖(ショ糖)、乳糖などがあります。
<糖類ゼロ>
チョコレートなどで、よく「糖類ゼロ」とうい表示がありますが
具体的には砂糖、ブドウ糖、果糖が含まれていないという意味で、
ほとんどの場合、「マルチトール」が甘味料として使用してあります。
マルチトールは糖アルコールの一種ですが、砂糖の半分から9割くらい
血糖値を上昇させるという報告もあるので、糖質制限的には
「マルチトール」はNG食材です。
つまり糖類ゼロという表示は、糖質制限的には、ほぼNGと考えた方がよいです。
<糖質に関する規程>
糖質の定義は「炭水化物-食物繊維」です。
糖質ゼロと糖質オフ。
①糖質ゼロ表示できる基準として、
「糖質ゼロ」:食品100gあたり0.5g未満の糖質。
「糖質ゼロ」:一般に飲用の液体では100mlあたり0.5g未満の糖質。
②糖質オフ表示できる基準として
「糖質オフ」:食品100gあたり5g以下の糖質。
「糖質オフ」:一般に飲用の液体では100mlあたり2.5g以下。
結論としては
基本的に、「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」なら、まず糖質制限OK食品です。
一方、糖質ゼロ表示でも、
100gあたり、0.4g以下の糖質が含まれている可能性がありえることも
知っておく必要があります。
江部康二
なすびも、糖質高い部類にはいりますか?
100g中糖質10g以下は低糖質だと思っていたので。】
こんにちは。
スぬこ さんから、低糖質の定義などについて、コメント・質問を頂きました。
糖質含有量に関する定義ですが、
糖質オフとか糖質ゼロとかいろいろ出てきます。
読者の皆さんも、糖質「オフ」と「ゼロ」は同じなのか違うのかとか、
気になるところと思います。
それで、今回の記事は
低糖質、糖質ゼロ、糖質オフ、カロリーゼロ、カロリーオフなどの意味について
調べてみました。
まず、低糖質ですが「低糖質」の法的な定義は、ないと思われます。
低糖質と表記されている商品をみると
例えばそれぞれのメーカーが100g当たり糖質5gまでを
当社では低糖質と表記していますという風に書かれています。
なので各社によって低糖質の基準設定が違う可能性もあると思います。
以下は
「健康増進法」の基準に則り、それぞれの表示基準を整理してみました。
<カロリー>
食品100ml当たり 5kcal未満:無、ゼロ、ノン、レス
食品100g当たり 5kcal未満:無、ゼロ、ノン、レス
上記基準を満たせば、『カロリー無』『カロリーゼロ』などと表示可能
食品100ml当たり 20kcal以下:低、ひかえめ、小、ライト、ダイエット、オフ
食品100g当たり 40kcal以下 :低、ひかえめ、小、ライト、ダイエット、オフ
この基準を満たしていれば、『低カロリー』『ロリーオフ』など上記表示可能。
<糖類>
健康増進法の「栄養表示基準制度」で糖類とは、
「単糖類+二糖類、但し糖アルコールは除く」です。
単糖類にはブドウ糖、果糖などがあり、
二糖類には砂糖(ショ糖)、乳糖などがあります。
<糖類ゼロ>
チョコレートなどで、よく「糖類ゼロ」とうい表示がありますが
具体的には砂糖、ブドウ糖、果糖が含まれていないという意味で、
ほとんどの場合、「マルチトール」が甘味料として使用してあります。
マルチトールは糖アルコールの一種ですが、砂糖の半分から9割くらい
血糖値を上昇させるという報告もあるので、糖質制限的には
「マルチトール」はNG食材です。
つまり糖類ゼロという表示は、糖質制限的には、ほぼNGと考えた方がよいです。
<糖質に関する規程>
糖質の定義は「炭水化物-食物繊維」です。
糖質ゼロと糖質オフ。
①糖質ゼロ表示できる基準として、
「糖質ゼロ」:食品100gあたり0.5g未満の糖質。
「糖質ゼロ」:一般に飲用の液体では100mlあたり0.5g未満の糖質。
②糖質オフ表示できる基準として
「糖質オフ」:食品100gあたり5g以下の糖質。
「糖質オフ」:一般に飲用の液体では100mlあたり2.5g以下。
結論としては
基本的に、「糖質ゼロ」「カロリーゼロ」なら、まず糖質制限OK食品です。
一方、糖質ゼロ表示でも、
100gあたり、0.4g以下の糖質が含まれている可能性がありえることも
知っておく必要があります。
江部康二
2022年03月01日 (火)
こんにちは。
糖質・脂質・タンパク質のなかで、消化・吸収されて直接血糖に変わるのは糖質だけです。
脂質・タンパク質は、消化・吸収されて直接血糖に変わることはありません。
このように血糖値を直接上昇させるのは糖質だけなのですが、血糖値を上げない糖質もあるのです。
すなわち糖質の中でエリスリトールと合成甘味料は、血糖値を上げません。
エリスリトール以外の糖アルコールは、砂糖の半分くらい血糖値を上げます。
上記以外の残りのほとんどの糖質は、どのような食材でも同じように血糖を上げます。
糖アルコールは糖質ですが、
その中でエリスリトールだけは、ゼロカロリーで血糖値も上昇させません。
キシリトールやマルチトールやソルビトールなどの糖アルコールは、
砂糖の半分くらい血糖値を上昇させます。
エリスリトールは、
ラカントS(サラヤ)
パルスイートカロリーゼロ(味の素KK)
シュガーカットゼロ(浅田飴)
の主成分です。
すなわち、ラカントSやパルスイートカロリーゼロやシュガーカットゼロは糖質制限OK食材です。
エリスリトールの安全性は、EUでもFDAでも認められていて、総量規制も特にありません。
まあ大量に摂取すれば、まれに下痢することはありえるとは思います。
合成甘味料も、栄養表示基準では糖質に分類されますが、
FDA(米国食料医薬品庁)と厚生労働省の認めている
アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム
の6種類は、ゼロカロリーで血糖値も上昇させません。
人工甘味料のほうも、FDAにおいて安全性は認められていますが総量規制があります。
日本の、カロリーゼロのダイエットコーラ350mlを1日1~2本くらいまでは、許容範囲と思います。
結論です。
糖質のほとんどが血糖値を上昇させます。
しかし、糖質の中でエリスリトールと合成甘味料は、血糖値を上昇させません。
なお、羅漢果(中国広西チワン族自治区を原産地とするウリ科ラカンカ属の多年生つる植物)の果実の甘味成分は、
小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。
ステビアの甘味成分も同様で人体に吸収されないので、食物繊維に分類されるのかなと思います。
糖質+食物繊維=炭水化物です。
食物繊維は人体に消化吸収されないので、血糖値は上昇させません。
一方、食物繊維は腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸を産生させますのでアネルギーは含有しています。
市販食物繊維素材のエネルギー換算係数(奥らの表を簡略化して以下作成)
① 2kcal/g: タマリンドシードガム、グァーガム、
グァーガム酵素分解物
小麦胚芽、湿熱処理でんぷん(難消化性でんぷん)、
水溶性大豆食物繊維(WSSF)、プルラン
② 1kcal/g: アラビアガム、難消化性デキストリン、
ビートファイバー
③ 0kcal/g: 低分子化アルギン酸ナトリウム、寒天、
キサンタンガム、ジェランガム、サイリウム種皮、
セルロース、ポリデキストロース
江部康二
☆☆☆
健康増進法における栄養表示基準では栄養成分表示を行う場合、基本表示は
<エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム>
の5成分表示とされています。
「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。
栄養表示基準上はたんぱく質や脂質、灰分(ミネラル分)のいずれにも分類されないものは炭水化物に計算。
①炭水化物=糖質+食物繊維
②糖質=糖類+糖アルコール+三糖類以上+合成甘味料
③糖類=単糖類+二糖類
*三糖類以上=オリゴ糖、多糖類(でんぷん、デキストリンなど)
*二糖類=ショ糖、麦芽糖、乳糖など
*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど
*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなど
*合成甘味料=アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム
糖質・脂質・タンパク質のなかで、消化・吸収されて直接血糖に変わるのは糖質だけです。
脂質・タンパク質は、消化・吸収されて直接血糖に変わることはありません。
このように血糖値を直接上昇させるのは糖質だけなのですが、血糖値を上げない糖質もあるのです。
すなわち糖質の中でエリスリトールと合成甘味料は、血糖値を上げません。
エリスリトール以外の糖アルコールは、砂糖の半分くらい血糖値を上げます。
上記以外の残りのほとんどの糖質は、どのような食材でも同じように血糖を上げます。
糖アルコールは糖質ですが、
その中でエリスリトールだけは、ゼロカロリーで血糖値も上昇させません。
キシリトールやマルチトールやソルビトールなどの糖アルコールは、
砂糖の半分くらい血糖値を上昇させます。
エリスリトールは、
ラカントS(サラヤ)
パルスイートカロリーゼロ(味の素KK)
シュガーカットゼロ(浅田飴)
の主成分です。
すなわち、ラカントSやパルスイートカロリーゼロやシュガーカットゼロは糖質制限OK食材です。
エリスリトールの安全性は、EUでもFDAでも認められていて、総量規制も特にありません。
まあ大量に摂取すれば、まれに下痢することはありえるとは思います。
合成甘味料も、栄養表示基準では糖質に分類されますが、
FDA(米国食料医薬品庁)と厚生労働省の認めている
アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム
の6種類は、ゼロカロリーで血糖値も上昇させません。
人工甘味料のほうも、FDAにおいて安全性は認められていますが総量規制があります。
日本の、カロリーゼロのダイエットコーラ350mlを1日1~2本くらいまでは、許容範囲と思います。
結論です。
糖質のほとんどが血糖値を上昇させます。
しかし、糖質の中でエリスリトールと合成甘味料は、血糖値を上昇させません。
なお、羅漢果(中国広西チワン族自治区を原産地とするウリ科ラカンカ属の多年生つる植物)の果実の甘味成分は、
小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。
ステビアの甘味成分も同様で人体に吸収されないので、食物繊維に分類されるのかなと思います。
糖質+食物繊維=炭水化物です。
食物繊維は人体に消化吸収されないので、血糖値は上昇させません。
一方、食物繊維は腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸を産生させますのでアネルギーは含有しています。
市販食物繊維素材のエネルギー換算係数(奥らの表を簡略化して以下作成)
① 2kcal/g: タマリンドシードガム、グァーガム、
グァーガム酵素分解物
小麦胚芽、湿熱処理でんぷん(難消化性でんぷん)、
水溶性大豆食物繊維(WSSF)、プルラン
② 1kcal/g: アラビアガム、難消化性デキストリン、
ビートファイバー
③ 0kcal/g: 低分子化アルギン酸ナトリウム、寒天、
キサンタンガム、ジェランガム、サイリウム種皮、
セルロース、ポリデキストロース
江部康二
☆☆☆
健康増進法における栄養表示基準では栄養成分表示を行う場合、基本表示は
<エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム>
の5成分表示とされています。
「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。
栄養表示基準上はたんぱく質や脂質、灰分(ミネラル分)のいずれにも分類されないものは炭水化物に計算。
①炭水化物=糖質+食物繊維
②糖質=糖類+糖アルコール+三糖類以上+合成甘味料
③糖類=単糖類+二糖類
*三糖類以上=オリゴ糖、多糖類(でんぷん、デキストリンなど)
*二糖類=ショ糖、麦芽糖、乳糖など
*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど
*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなど
*合成甘味料=アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム
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