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2021年糖質制限食10大ニュース。
こんばんは 。
2020年と同様に、2021年も新型コロナに翻弄されたこの1年でした。

日本では、2021年8月26日の、24950人をピークに一気に感染者数が急減です。
しかし12月中旬から緩やかに増加に転じているので油断はできません。
糖質制限食実践で、免疫力向上に努めましょう。

一方、諸外国では、まだまだかなりの死者数がでています。
また、80.4%が2回ワクチン接種を終えている韓国でも
2021年9月中旬から、コロナ死者数が急上昇して現在に到っています。

何故、これほどの差があるのか原因不明です。
日本は、新型コロナに関して、非常に運がいい状況と言えます。

2021年もブログ読者の皆さんには、
コメントや質問など、たくさんの応援をいただきありがとうございました。
引き続き来年もよろしくお願い申し上げます。

2021年12月、糖尿病の患者さんが、世界で5億3,700万人に増加したことが、
国際糖尿病連合(IDF)が発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版で示されました。
2019年の推計から16%(7,400万)増加しており、
いまや世界の成人の10人に1人が糖尿病です。
有効な対策をしないと、糖尿病患者の激増は、免れないと思います。
そして、有効な対策としては、「糖質制限食」が最適です。
糖質制限食以外の食事療法では、糖尿病の激増は予防できません。

さて2021年も恒例となった糖質制限食10大ニュースを、
本ブログ記事のなかから、選んでみました。

それでは、良いお年をお迎えください。  m(_ _)m


<2021年糖質制限食10大ニュース>


①世界の糖尿病人口は5.4億人に増加 。予防には糖質制限食が正解。
2021年12月30日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5833.html


②食事でがんを予防できるか。国立がん研究センター。糖質制限の意義。
2021年01月13日 (水)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5490.html


日本人の死因。糖質制限食で予防。
2021年08月07日 (土)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5696.html


がんを初めとして、様々な生活習慣病が糖質制限食で予防できます。
つまり、生活習慣病は、「糖質の頻回・過剰摂取に伴う血糖変動幅増大」
「インスリンの頻回・過剰分泌」による「酸化ストレスリスクの増大」が元凶と言っても過言ではありません。

③アルツハイマー病とAGEs。糖質制限食で予防・改善。
2021年07月22日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5681.html


AGEsの蓄積が、アルツハイマー病と密接に関わっています。
糖質制限食なら、AGEsの蓄積を最小限にできるので、
アルツハイマー病の予防が可能となります。

④肥満がコロナ重症化の大きなリスク。減量に最適なのは糖質制限食。
2021年12月14日 (火)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5819.html


⑤慢性炎症って何?
2021年06月16日 (水)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5642.html


「慢性炎症」が注目されています。
慢性炎症を伴う病気としてぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患が良く知られています。最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連についてはほとんど顧みられなかった病気でも、
実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。
加齢とともに増加するがん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患、さらには老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられる証拠が見つかってきたのです。
糖化や酸化が慢性炎症の要因となっているので、糖質制限食で予防することが可能です。

⑥酸化ストレスって何?
2021年06月10日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5637.html


人体は酸化反応と抗酸化反応のバランスが取れていると正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
ヒトは、呼吸によって1日に500L以上の酸素を
体内に取り入れていると考えられています。
呼吸によって毎分約0.3Lの酸素が肺胞から血液中に送られます。
このうち約2%が活性酸素に変わるといわれています。
 生体内の抗酸化システム(SODなど)で処理しきれない活性酸素が残存した場合、
酸化ストレスとなり、
人体の構造や機能を担っている脂質、たんぱく質、酵素、DNAなどに
損傷を与えてしまい、老化の元凶とされています。
 さらに老化以外にも、糖尿病合併症、動脈硬化、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病などのさまざまな病気の元凶とも考えられています。

⑦AGEs(終末糖化産物))って何?
2021年06月09日 (水)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5636.html


糖化とは、ブドウ糖・果糖などの単糖が、
直接たんぱく質などに結合する反応のことです。
糖尿病の検査指標として一般的に使われているヘモグロビンA1c(HbA1c)は
糖化したヘモグロビンのことです。
赤血球の中にあるヘモグロビンというたんぱく質に、
血糖がへばりつくわけです。
高血糖であるほどたくさんへばりつき、HbA1cが高値となるので
糖尿病の検査として便利な存在なのです。
HbA1cは、たんぱく質と糖が結合する「糖化反応系」の初期段階で作られます。
さらに糖化反応が進むと、
最終的に「終末糖化産物(AGEs=advanced glycation endproducts)」というものが
できあがります。AGEsが、糖尿病合併症や動脈硬化の元凶とされています。

⑧スーパー糖質制限食とケトン体。
2021年05月22日 (土)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5619.html


炎症シグナルの指揮者インフラマソームをケトン体(BHB)が阻害。
2021年06月18日 (金)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5645.html


糖質制限食とケトン体。ケトン体は悪者ではなくいい奴です。
2021年12月19日 (日)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5823.html


ケトン体は長い間、「悪者」とされてきましたが、近年、脳・心・腎などの臓器保護作用や抗炎症作用があることが、確認され、いまや、とても「いい奴」と評価されています。

⑨糖質の中でも、果糖の代謝は特殊です。
2021年11月10日 (水)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5786.html


果糖はブドウの数十倍の速度でAGEsになるので、極めて危険な物質です。
果物摂取は、少量にとどめるのが安全です。

⑩ユーチューブ。糖質オフ!健康トーク▼ vol.1『糖質制限食と新型コロナ』。
2021年03月25日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5562.html


新型コロナで、対面の講演会が困難なので、ユーチューブで
情報を発信することとしました。


江部康二


<江部康二の2021年の著書>
☆体が変わる! 最強の糖質制限食-巣ごもり生活でも太らない!
2021年2月 学研プラス 江部康二 (著), 沼津りえ (著)

☆増補新版 糖質制限の大百科 単行本
2021年9月 宝島社 江部 康二(監修) ‎


<その他の糖質制限関連ニュースで興味深いもの>

☆ファクターXとインスリンレベル
2021年11月01日 (月)

☆百寿者はしっかり食べている。タンパク質摂取が大事。医師は短命?
2021年12月26日 (日)

☆糖質制限食と心臓について
2021年12月28日 (火)

☆『糖質制限食十箇条』2021年版。
2021年05月04日 (火)

☆糖質制限食実践で気をつけることは?
2021年07月04日 (日)

☆糖質制限食実践で心身の健康度が高まる。
2021年07月19日 (月)

☆1型糖尿病と食事療法
2021年08月18日 (水)

☆1型糖尿病と食事療法 その2
2021年08月19日 (木)

☆糖質制限食と登山やマラソン。
2021年10月25日 (月)

☆糖質制限食で無食登山。
2021年10月27日 (水)
世界の糖尿病人口は5.4億人に増加 。予防には糖質制限食が正解。
こんにちは。
糖尿病ネットワークに、以下の記事が掲載されました。

糖尿病ネットワーク
https://dm-net.co.jp/calendar/2021/036325.php
2021年12月09日

世界の糖尿病人口は5.4億人に増加 
10人に1人が糖尿病 
糖尿病のパンデミックが脅威に


 【世界で糖尿病とともに生きる人の数は、
2021年の統計で5億3,700万人に増加したことが、
国際糖尿病連合(IDF)が発表した「IDF糖尿病アトラス」第10版で示された。
 2019年の推計から16%(7,400万)増加しており、
いまや世界の成人の10人に1人が糖尿病だ。
 世界の糖尿病人口は、有効な対策をしないでいると、2030年までに6億4,300万人、2045年までに7億8,300万人に増加すると予測されている。
糖尿病のパンデミック(世界的拡大)が人類を脅かしている。・・・以下略】


2000年から2021年、この20年間で、約3.6倍となっています。
2019年から2021年では、16%(7400万人)の増加です。
国際糖尿病連合(IDF)の見解通り、有効な対策をしないと、
糖尿病患者の激増は、免れないと思います。

そして、有効な対策としては、「糖質制限食」が最適です。
1回の食事の糖質量を20g以下にする<スーパー糖質制限食>が、
一番良いのですが、1回の食事の糖質量を40gにする<緩やかな糖質制限食>
でもそれなりの効果はあります。


<糖質制限食と耐糖能に関する研究論文>
1)
新潟労災病院消化器内科部長前川智先生(当時)の論文
「耐糖能異常に対する低炭水化物食の効果に関する後ろ向き研究」
Diabetes, Metabolic syndrome, Obesity, Target and Therapy
(ニュージーランドの英文雑誌)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4063858/ → ここで全文が閲覧可能です。

Diabetes Metab Syndr Obes. 2014; 7: 195–201.
Retrospective study on the efficacy of a low-carbohydrate diet for impaired glucose tolerance
Satoshi Maekawa,1 Tetsuya Kawahara,2 Ryosuke Nomura,1 Takayuki Murase,1 Yasuyoshi Ann,1 Masayuki Oeholm,1 and Masaru Harada3

12ヶ月間の低炭水化物ダイエット(120g/日の糖質)により、
境界型糖尿病36名中25名(69.4%)が、OGTTで正常化。
11名(30%)は境界型(IGT)のまま。
糖尿病発症は0名(0%)。

対照群(普通食)36名中、3名(8%)が正常化。
28名(78%)は不変でIGTのまま。
5名(14%)が糖尿病発症。



<緩やかな糖質制限食>実践により、
1年後、境界型糖尿病の耐糖能が69%も正常化していて、
対照群に比べて素晴らしい成果です。
対照群は28名(78%)は不変でIGTのままであり、5名(14%)が糖尿病発症で、
正常化したのは、僅か3名(8%)に過ぎません。

1日の糖質摂取量を120gに設定したのが糖質制限食グループです。
1回の食事の糖質量が40gですから、緩やかな糖質制限食ですね。
それでも、見事に改善しています。
普通食のグループは、200~240g/日くらい糖質を摂取しています。

境界型糖尿病(IGT:食後高血糖タイプ)と糖質制限食に関する論文は、
世界的にもほとんど見られず、極めて貴重な論文と思います。

緩やかな糖質制限食で耐糖能が境界型から正常型に改善した人達は
そのまま続ければ、正常型をずっと維持できると思います。


一方、糖質制限食以外の食事療法は、
糖尿病予防にあまり期待は持てないと思います。

国際糖尿病連合(IDF)も、
「血糖値に直接影響を与えるのは糖質のみで、
蛋白質・脂質は直接影響を与えることはない。」

という生理学的事実を、しっかり広報して、
糖尿病予防に取り組むのが、唯一の正解です。

糖質制限食以外の食事療法では、
糖尿病患者の激増は止められないと考えられます。


江部康二


糖質制限食と心臓について
【21/12/26 江本
糖質制限と心臓について
江部先生いつも楽しく有益なブログ見させて頂いています。

コメン失礼致します。

もし宜しければ下記の「糖質制限による遊離脂肪酸と心臓の関係」について江部先生のご意見をお聞かせ頂けましたら幸いです。

「極端な糖質制限を行うと、エネルギー代謝は遊離脂肪酸のみとなり、常に血液中には過剰な遊離脂肪酸が存在することになります。
  心臓は遊離脂肪酸にて心筋の興奮性が亢進し、不整脈を誘発する。場合によっては心室細動による心臓突然死の原因となります。
  心臓突然死の発症は、疫学的には午前中に多く、マラソン時に多いのが知られています。空腹時、マラソン時のエネルギー代謝は遊離脂肪酸であり、交感神経緊張状態の時に発症する共通点があります。」
http://www.kawamura-cvc.jp/contents/onepoint/point56.html

またこれ以外にも下記の様な糖質制限により心臓病のリスクが上がるという情報がいくつもありまして心配になってしまいました。
https://twitter.com/ToshiyukiHorie/status/1439822185783181319

現在私も糖質制限を5年間行っていまして、最近、頻繁に不整脈が起こることがありましてコメントさせて頂きました。

何卒よろしくお願い致します。】


こんにちは。
糖質制限食と心臓について、江本さんから、コメントと質問を頂きました。

「極端な糖質制限を行うと、エネルギー代謝は遊離脂肪酸のみとなり、
常に血液中には過剰な遊離脂肪酸が存在することになります。
  心臓は遊離脂肪酸にて心筋の興奮性が亢進し、
不整脈を誘発する。場合によっては心室細動による心臓突然死の原因となります。
  心臓突然死の発症は、疫学的には午前中に多く、マラソン時に多いのが知られています。空腹時、マラソン時のエネルギー代謝は遊離脂肪酸であり、交感神経緊張状態の時に発症する共通点があります。」


この主張ですが、

「極端な糖質制限を行うと、エネルギー代謝は遊離脂肪酸のみとなり、・・・」

この前提自体が、すでに間違っています。

厳格な糖質制限食でも、断食中でも、糖新生によりブドウ糖が作られ血糖値を保ちます。
すなわち、厳格な糖質制限実践者においては

<ケトン体、脂肪酸、ブドウ糖>の三者がエネルギー源となります。

ちなみに、
「ハーパー・生化学」(原著27版)の訳本、
155ぺージ・図16-9の説明に、
「心臓のような肝外組織では代謝エネルギー源は次の順に好まれて酸化される。
(1)ケトン体.(2)脂肪酸.(3)グルコース」
との記載があります。
心筋が最も好むエネルギー源は、実はケトン体なのです。

157ページ左側27行には、
「遊離脂肪酸は肝臓、心臓、骨格筋において好まれて利用される代謝エネルギー源であ り、グル コースの消費を節約することができる。」
とあり、
157ページ、左側38行には、
「ケトン体は、骨格筋と心筋の主要な代謝エネルギー源であり、脳のエネルギーの必要 性を部分 的に満たす。」
とあります。


また、米国糖尿病学会は、
2019年4月のコンセンサス・レポートで、
糖質制限食が最もエビデンスが豊富と明言しました。
その後、2020年、2021年のガイドラインでも、同様の見解です。
糖質制限食は厳格なものも緩やかなものも、共に容認しています。
つまり糖質制限食の有効性と安全性は、米国糖尿病学会の保証付きということです。

なお、現米国糖尿病学会CEOのトレーシー・ブラウンは、
自らスーパー糖質制限食を実践中とのことです。
それにより、インスリン注射から離脱に成功しています。


ただ、頻繁に不整脈が起こるということなら、
循環器的精査をしたほうが良いです。
心電図、ホルター心電図、心エコーなどです。


江部康二
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク『コレステロールについて<後半>』
こんばんは。
日本では、2021年8月26日の24950人をピークに
一気に新型コロナ感染者数が急減しました。
その後、12月中旬から少し増え始めて、12月27日現在も漸増傾向です。
冬を迎えて年末年始にこの増加傾向がどうなるか、正念場であり、油断は禁物です。
糖質制限食実践で、免疫力向上に努めましょう。

さて、
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク 第9回は
▼ vol.9『コレステロールについて<後半>』
https://youtu.be/zbXSIHrLdiY

です。

コレステロールについては、ブログ読者の皆さんの関心も高いと思います。
一般にHDLコレステロールは善玉で、LDLコレステロールは悪玉とされていますが、
ことは、そんな単純なものではありません。
例えば、LDLコレステロールには、善玉もあるし悪玉もあるのです。
中性脂肪値が60mg/dl以下で、HDLコレステロールが60mg/dl以上なら、
LDLコレステロールは全て善玉となるのです。


江部康二


以下の青字の記載は、事務局からのお知らせです。


*********

ブログ読者の皆様、弊会のYouTube動画を多数ご覧いただいておりまして、ありがとうございます。


江部理事長による動画「ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
vol.9」の配信をご案内申し上げます。

テーマは、前回に続いて「コレステロール」についてです。

今回は、LDLコレステロール値が基準値より高い場合、薬で下げる方がよいか・下げなくてよいか、LDLコレステロールを下げる薬について、食事によるコレステロール摂取について等、お話ししております。


ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
▼ vol.9『コレステロールについて<後半>』
https://youtu.be/zbXSIHrLdiY

ご覧いただけますと、また、ご興味のある方へシェアしていただけますと幸いです。


▼協会YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCdh9uz2_XnhDyJj9pHDDW1A

一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会
https://www.toushitsuseigen.or.jp/

*********
百寿者はしっかり食べている。タンパク質摂取が大事。医師は短命?
こんばんは。
少し前ですが、

日経Goodayに
2018/2/24
「100歳以上の長寿には小食が多い」 ウソ・ホント?
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO26731380Z00C18A2000000/


という記事が載りました。
以前yanosono さんから情報を頂きました。
ありがとうございます。

結論は
「100歳以上の長寿には小食が多い」はウソでして、
「しっかり食べている」が正解です。


以下の青字の記載は、日経Goodayの記事を要約してみました。

【厚生労働省が2017年9月に発表したデータによると、
現在日本には100歳以上の高齢者が全国に6万7824人だそうで
随分増えたものだと思います。
 47年間、連続で増加し続けているとのことです。

 慶應義塾大学医学部では1992年から、
百歳以上生きる人(百寿者)の医学調査を行っています。
当時の百寿者は4000人程度ですから、
25年間で、16倍以上に増えています。
 「粗食がいい」とか「カロリーを制限すると寿命が延びる」という説もありますが
実際の「百寿者」の食生活は、どのようなものか興味ある話題です。

 長寿者の研究を行っている
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター講師の新井康通さんは、
「百寿者はむしろしっかり食べています」と述べています。
 摂取カロリーも、80代と同レベルで栄養状態が良いのが基本です。

 60代ぐらいまでは、糖尿病やメタボ予防に、
肥満しないような食生活が基本ですが、
それ以降は、むしろしっかり食べて筋肉や骨を維持することの方が重要です。
カロリー制限の目的は、体脂肪を減らすことですが、
実際は、筋肉や骨も同時に弱くなりますし、
通常、筋肉と骨は加齢とともに減っていきます。

 70~80代以降になると、筋肉と骨格系の衰えの方が重要な問題です。
新井講師は
「個人差はありますが、70代ぐらいになったら頭を切り替え、
『やせないようにしっかり食べる』ことを優先した方がいいのです。
栄養素では、たんぱく質をきちんと食べることが大事です」。
 「もちろん百寿者には肥満の人はほとんどいませんので、
若いころから食べ過ぎる習慣はなかったと思われます。
でも、小食でもない。とりわけ高齢になってからは、
むしろしっかり食べたほうがいいと、覚えておいてください」
と述べておられます。】


私も、基本は新井講師のお考えに賛成ですが、
もっと早期から高蛋白・高脂肪食にするほうが、もっと良いと思っています。
すなわち、スーパー糖質制限食実践ですが、早ければ早いほど良いと考えています。
それで、糖尿病・メタボ・肥満なども予防できます。

私自身は、52歳で糖尿病が発覚してから、
足かけ20年、スーパー糖質制限食を続けています。
つまり、52歳から「高蛋白・高脂肪食」をしっかり摂取していることになります。
おかげで、71歳現在、内服薬なしで、糖尿病合併症もなしで、他の生活習慣病もなしで、
血液検査のデータは全て正常です。
2022年1月8日には、72歳になります。

①歯は全部残っていて、虫歯はなし。 ・・・1~2人/100人
②身長も縮んでいません。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/10人
③夜間の尿も行きません。・・・・・・・・・・・・・・・・・1/10人
④聴力低下もなし。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1/10人
⑤視力は裸眼で広辞苑が読めます。・・・・・・・・・1/50人
単純計算では、①②③④⑤を全て達成している人の確率は、
250万人~500万人に一人です。
身長167cm、体重57kg前後で、20年間不変です。
単なる個人のデータですが、スーパー糖質制限食実践の成果と思われます。

私は京大医学部に、1968年に入学して、1974年に卒業です。
医学部卒業時には、同級生が、110人いましたが、
2021年12月現在、すでに10名が逝去されています。

医者の不養生というわけでもないのですが、
仕事上の重責とか毎日のようなサービス残業とか、
精神的にも肉体的にもかなりストレスフルなのがこの職業なので、
医師は思った以上に短命なのです。

岐阜県保険医協会が実施した調査(2008~2017年)で、
開業医の死亡時平均年齢が70.8歳と短く
特に60歳代の死亡割合が34%と最も多いことが明らかになりました。

厚生労働省の統計にある死亡時平均年齢(2015年)は、
男性が77.7歳、女性が84.3歳であり、明らかな差がありました。
日本人全体の死亡割合では80歳代がピークであり、
医師の60歳代が、死亡のピークというのはいかにも若すぎます。


さて、同級生諸氏の話題に戻りますが、ほとんどの方が、何か内服薬を飲んでいます。
高血圧、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、高尿酸血症、糖尿病、逆流性食道炎・・・
同級生の医師からは「江部君は変だよ。早く何か病気になりなさい。」
と誘惑されています。

ともあれ、今は、52歳で糖尿病になってとても運が良かったと、
糖尿病に感謝しています。
糖尿病を発症していなくて、普通にラーメンや寿司やケーキを食べ続けていたら
今頃は、歯は何本か抜けて、背は縮み、視力・聴力も低下し、
夜中に2~.3回は排尿に行く人生であったと思います。


江部康二
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は甲状腺機能低下症ではありません。
こんばんは。

今回は、
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」について考えてみます。

「Low T3 syndrome(低T3症候群)」とは、
FT3という甲状腺ホルモンだけが低値で、FT4という甲状腺ホルモンは正常で、
TSH(甲状腺刺激ホルモン)も正常な病態ですが、
これは、甲状腺機能低下症ではありません。

この「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は、臨床上、時々見かけます。

慢性消耗性の疾患で低栄養のときに見かけます。

例えば神経性食思不振症などでは比較的よく見られます。
これらは、低栄養のため見かけ上、FT3が低値なだけで、
本当の甲状腺機能低下症ではありません。
従って、甲状腺ホルモンのチラージンSなどを投与しても無意味です。
治療は原疾患の慢性消耗状態や低栄養状態を改善してやれば、
おのずから低FT3も改善して正常値となるのです。

意外かもしれませんが、神経性食思不振症では、
高コレステロール血症が見られることが多いです。
つまり摂取エネルギー不足でもコレステロール値が上昇する場合があるということです。

スーパー糖質制限食を実践して、体力がおちて
ヘロヘロになったり、
筋力が落ちたり、生理が止まったり、
髪の毛が抜けたりといった症状を訴える方々がたまにおられます。
これは糖質制限食のせいではなく、脂質も制限して、
結果として摂取エネルギーが低過ぎたために生じる症状です。

この時、血液検査をしてFT3が低いと、
甲状腺機能低下症と誤診する可能性があります。

しかしこれは「Low T3 syndrome(低T3症候群)」であり、
TSHが正常ならば、本当の甲状腺機能低下症ではありません。
真の甲状腺機能低下症なら、必ずTSHが上昇しますので鑑別は容易です。
摂取エネルギーを標準まで増やせば、症状も改善してFT3も改善します。

要は 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という状態を
医師が認識しているかどうかです。

「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という概念をご存じない医師が結構おられるので
注意が必要です。

江部康二
下痢や風邪など体調が悪いときの糖質制限食のお奨めは?
こんばんは。
冬は風邪を引きやすい季節です。
下痢や風邪など体調が悪いときの糖質制限食は、どんなものが良いでしょう?

実は私は、ここ十数年寝込んだことがありません。
また医師になって以来、風邪などで外来を休んだことは一度もありません。
52歳で、スーパー糖質制限食を開始してからは、とくに丈夫です。

ともあれ、下痢したり、風邪をひいたり、寝込んだりしたときなどの糖質制限食は、
どんなものがお奨めか、考えてみましょう。
通常は、お粥とかうどんなどになりますが、
糖質制限食ではこれらはNG食品です。

このような、下痢や風邪など体調が悪くて食欲がないときのために、
糖質制限OK食品の中で、あっさり系を選んでみました。

京都は、お豆腐が美味しいですから私もよく食べます。
夏は冷や奴でもいいんですが、
冬で、風邪ひいて下痢や寒気でもあるときは湯豆腐がお奨めです。

温かい食品として、茶碗蒸し、卵スープ、野菜スープ、すまし汁、
味噌汁、豚汁などもいいですね。
いけそうだったら、おでんの大根とか豆腐とかひろうすなどは如何でしょう。

今の季節なら、鍋がお奨めですね。
白身魚や豆腐、野菜、がんもどき・・・風邪のときでも美味しそうです。 (^^)

豆腐を水きりしてつぶし、小さく刻んだ野菜などを混ぜ込んで丸め、
油で揚げたものを 関東ではがんもどき、
関西ではひろうすと呼ぶことが多いようです。
ちなみに我が家では何故か、がんもどきです。

さっぱりしたものとしては、季節の旬の果物もいいですね。
果物の糖質は果糖が主なので、穀物の糖質の半分くらいしか血糖値を上げませんので、
食欲がないときは、少量なら、まあいいと思います。
果糖はブドウ糖の数十倍、AGEsに変わりやすいので、定期的に摂取するのは
よろしくないのですが、風邪の時に短期間なら問題は少ないです。

一人暮らしで料理の手間が面倒くさいようなときは、
前もって冷凍茶碗蒸しとか常備しとくといいです。

風邪で食欲不振のときは、脱水になりやすいので糖尿人は特に注意が必要です。
上記の料理など糖質制限食OK食材で、水分・電解質(*)補給も心掛けてくださいね。

糖質セイゲニストの場合は、インスリンが必要最小限の分泌ですむので、
余剰の塩分(NaCl)や水分は、体外に排泄されやすいです。
従って塩分制限は、基本、必要ありません。


なおごま豆腐は、主成分が葛粉で、デンプンたっぷりですので、
豆腐と名前が付いてますが、糖質制限食NG食品ですので、お忘れなく。


(*)
電解質は、体の細胞が正常に機能するために必要です。
体は多量のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、
塩化物、リン酸塩を必要とします。


江部康二
増補新版 糖質制限の大百科 (宝島社)。9/14(火)から発売中。
こんばんは。

増補新版 糖質制限の大百科 単行本
江部 康二  (監修)
出版社 ‎ 宝島社 (2021/9/14)

https://amzn.to/3tsRm0w

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2021年9月14日(火)から、発売中です。
シリーズ累計52万部突破です。
最新の食品成分表「八訂」に対応しています。

本当に「正しい」糖質制限のやりかたをしっかり、認識しましょう。
おなかいっぱい食べて、満腹・満足して、健康的に減量できます。
太っている人は、減量できて標準体重に、
瘠せすぎている人は、体重が増えて標準体重になります。
BMIが、18.5~24.9の間で、その人の体調が良いならその体重でOKです。


糖質制限の基礎知識や、外食&市販品活用のコツを、学ぶことができます。
糖質制限OK・NG食品が、一目でわかります。
109のかんたん糖質制限レシピが載っていて、
この1冊で知りたいことがぜんぶわかります。
巻末に食品別糖質含有量一覧表が付いています。

本書が、ブログ読者の皆さんのお役に立てれば、嬉しい限りです。


今日からできる、無理なくやせる医師が教える正しい糖質制限

p6
やせる・若返る・健康になるいいことずくめの糖質制限

糖質制限では、血糖値を直接上げる唯一の栄養素である糖質を控えます。
そのため、食事をしても血糖値の急激な上昇を招くことはありません。
これこそが、糖尿病だけにとどまらず、あらゆる不調や疾患の予防・改善につながるのです。
 さらに、血糖値の急上昇が起きるとインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは、別名“肥満ホルモン”とも呼ばれます。
過剰に分泌されることで体脂肪が蓄積され、肥満を引き起こすからです。
これらを引き起こさない糖質制限は、血糖値の乱高下をなくし代謝を安定させることで、精神的にも落ちつきます。
全身の血流も改善するため、美肌や美髪など、美容にも役立つのです。

p7
誰もがストレスなく実践できる糖質制限糖質制限のうれしいポイントは、
誰もがストレスなく取り組めるという点です。カロリー制限のような面倒な計算は不要。
ボリュームたっぷりの肉料理もOKです。そのため「食べたりない」という欲求不満とも無縁で、
正しく種類を選べばお酒を飲むこともできます。
食べものや飲みものの種類を選べば、自分のライフスタイルに合わせて思いきり食事を楽しむことができるので、
継続的に実践でき、確実に効果を実感できるのです。

p8
糖尿病の治療食として
スタートした糖質制限


日本で糖質制限をはじめたのは、私が理事長を務めている京都の高雄病院で、
当時の院長であった私の兄である江部洋一郎です。1999年のことでした。
私自身は、2001年、担当する患者さんに糖尿病治療の一環として、
糖質制限の指導を行ったところ、劇的な効果が見られました。
それ以降、当院では糖尿病の治療食として糖質制限食を実践し続けています。
従来、糖尿病に対する日本での治療方針は、カロリー制限一辺倒でした。
しかし、糖質を制限することのないカロリー制限食では、
糖尿病の大きなポイントである食後高血糖のコントロールができません。
糖質を制限せずにカロリーコントロールを行ったところで、
結局、病状は悪化し、薬に頼ることになってしまいます。
これに対して、糖質制限はまったく異なる考えかたで治療を行います。
カロリーや脂肪を制限するのではなく、「糖質を制限した食事を摂る」ことが基本となります。
糖質さえ控えれば、たんぱく質や脂質はしっかり食べてOKです。カロリー計算も必要ありません。


P153
Q9新型コロナウイルスに対して糖質制限は有効でしょうか?


A
糖質制限で免疫力を高めることで、ウイルスに強い体になります。
糖質制限食を実践している人は、糖質を食べている人に比べると、
血中ケトン体が 高値であり、AGEsの蓄積も最小限ですんでいます。
ケトン体は脂肪酸の分解産物ですが、それが高値であると、
心臓・腎臓・脳保護作用が期待できます。
スーパー糖質制限食なら、よりケトン体高値となるので、さらに効果が期待できます。
心臓・腎臓・脳が元気に活動していれば、当然免疫力も高まります。
また欧米の研究で、ケトン体がサイトカインストームを予防する可能性があります。・・・


江部康二
糖質制限中の食事と間食。一回に食べる糖質量が大事。
こんにちは。
糖質制限中の食事と間食について、考えてみます。

スーパー糖質制限食では、一回の食事の糖質量を
<10~20g以下> が目安となります。

これは、体重64kgの2型糖尿人において、ピークは
1gの糖質が約3mg血糖値を上昇させるということが前提となっています。

空腹時血糖値が100mg/dlとコントロール良好な2型糖尿人において
一回に40gの糖質を摂取すると120mgの血糖値上昇で、ピークの食後血糖値は220mg/dlとなり、
安全圏の180mg/dlを超えてしまいます。

それで一定の安全率を考慮して、食後血糖値が180mg/dlを超えないように
一回の食事の糖質量を<10~20g以下> と設定しています。


同様に、間食に関しては
一回の間食の糖質量<5gていど> を目安としています。
間食は15時くらいに、一日に一回が無難ででしょう。


<合併症予防のための目標値(日本糖尿病学会)>
①空腹時血糖値:130mg/dl未満
②食後2時間血糖値:180mg/dl未満
③HbA1c:7.0%未満


①②③をクリアすることが合併症予防において肝要です。
従って、一回の食事の糖質量が大事であって、
一日の食事の糖質量はそれに準じるという位置づけです。
一回の間食においても、その糖質量が大事です。

つまり、糖尿人が、
A)『朝:20g 昼:20g 夕:20g』
の糖質をそれぞれ摂取すると合計60g/日の糖質量ですが、
食後血糖値はをクリアできる可能性が高いです。
また、もクリアできると思います。

しかし
B)『朝:なし 昼:なし 夕:60g』
というパターンで、一回に60gの糖質を摂取すると食後血糖値は急上昇(「60g×3mg=180mg」)して、
軽く200mg/dlを超えることとなり危険です。

一日の食事の糖質量は60gで同一ですが、
食後高血糖に関しては、A)B)で大きな差があります。

また、スタンダード糖質制限食は、
三食糖質を食べている糖尿人に比べるとはるかに好ましいのですが、
スーパー糖質制限食実践者に比べると、一日一回、180mg/dlを超える
食後高血糖のリスクがあるので
そのことを承知しておくことが大切です。


江部康二
25日クリスマスの夜から年末寒波が襲来。今季最強。
こんばんは。
12/21(火) 11:52配信のYahoo!ニュースに

https://news.yahoo.co.jp/articles/4e55909563fad39a4b7ae74fd73d891f0be48d13
クリスマスの夜から年末寒波襲来 過去最強クラス 
大雪をもたらすJPCZとは?

という記事が載りました。
この先、2021年12月25日(土)クリスマスの夜から年末寒波が襲来します。
今季最強で、師走としては過去最強レベルです。
日本海側を中心に大雪の恐れもあります。
2021年の年末は、寒波と大雪に要注意です。

25日クリスマスの夜から、冬将軍(寒気)が西日本周りで襲来する予想です。
師走としては記録的な強い寒気が長く続き、寒波襲来です。
雪となる目安の寒気は、25日は西日本を、
26日~27日にかけて本州をすっぽりと覆います。

さて、大雪の大きな原因となるJPCZとは何のことでしょう?

日本海は、対馬海流という暖流が流入しているので、比較的海水が暖かい状態です。
冬型の気圧配置になると、大陸からの冷たい風がこの暖かな海の上に吹きます。
この風は朝鮮半島の北部に位置する長白山脈によっていったん二分されます。

その後、風下である日本海の上空で再び合流します。
この合流により風と風がぶつかり、背の低い雪雲ができます。
ふつう、雲の高さは2,000mから3,000mくらいなのですが、
それよりはるかに低いところで雪雲ができます。⇒乱層雲など下層雲
雪雲は筋状に何十本も平行に並びます(筋状収束雲)。
しかし時に、この筋が平行ではなく衝突することがあり、
それによりラインが形成されるのです。
このラインのことを「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」と言います。

日本海寒帯気団収束帯(にほんかいかんたいきだんしゅうそくたい)
Japan sea Polar air mass Convergence Zone:JPCZ)

なお、雲には、上層雲、中層雲、下層雲があります。


江部康二

COVID-19ワクチン接種後に心筋炎が疑われる例。青年。若年成人。
【21/12/19 中嶋一雄
最新の論文
青年および若年成人における、COVID-19ワクチン接種に一時的に関連する、
臨床的に疑われる心筋炎

Clinically Suspected Myocarditis Temporally Related to COVID-19 Vaccination in Adolescents and Young Adults

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.056583?fbclid=IwAR30FDnGTszunPM4TZbG4l-VKtv7JPdLSGuEzQUs3ZqXNUu50P5YcxTR1OQ


中嶋一雄先生から、
『青年および若年成人における、COVID-19ワクチン接種に一時的に関連する、
臨床的に疑われる心筋炎』

という医学雑誌『サーキュレイション』に掲載された論文について
コメントを頂きました。
中嶋先生、ありがとうございます。

以下、この論文のグーグル翻訳を少し修正して掲載しました。
青年および若年成人となっていますが、
年齢の中央値は15.8歳で、範囲が12.1〜20.3歳なので、
少年が多いですね。


26人の患者(18.7%)がICUに入りましたが、
ECMOを必要としたり死亡したりした患者はいなかったので、
ほとんどが軽症ですんでいます。

入院期間は、0~10日ですが、中央値は2日なので、
やはりほとんどが軽症であったようです。

COVID-19ワクチン接種後の心筋炎は、幸い短期的にはほとんどが軽症でしたが、
今後、長期的な経過観察が必要と思われます。

COVID-19ワクチン接種後の心筋炎が、長期的な観察で、
何らかの心臓への影響がある可能性があり得ると思われます。


江部康二


要約
背景:

COVID-19ワクチン接種後の疑わしい心筋炎の臨床経過と短期的な結果を理解することは、若者にワクチン接種する決定において、重要な公衆衛生上の影響を及ぼす。

方法:

2021年7月4日より前にCOVID-19ワクチン接種から30日以内に心筋炎が疑われる症状を発症した21歳未満の患者に関するデータを遡及的に収集した。
レイクルイーズ基準は、心臓磁気共鳴画像法(cMRI)の所見に使用された。
心筋炎の症例​は、米国疾病予防管理センターの定義に基づいて
確認済みまたは可能性が高いと分類された。

結果:
26のセンターで心筋炎が疑われる140のエピソード(49が確認され、91が可能性が高い)の139人の青年および若年成人について報告する。

ほとんどの患者は男性(N = 126、90.6%)と白人(N = 92、66.2%)であった。
29人(20.9%)はヒスパニック系であった。
年齢の中央値は15.8歳であった(範囲12.1〜20.3、IQR 14.5-17.0)。
心筋炎の疑いは、mRNAワクチン投与後の136人の患者(97.8%)で発生し、
ファイザー-BioNTechワクチン投与後の131人(94.2%)で発生した。
2回目の投与後に128(91.4%)が発生した。
症状は、ワクチン接種後中央値2日(範囲0〜22、IQR 1〜3)で始まった。
最も一般的な症状は胸痛(99.3%)であった。

患者は、非ステロイド性抗炎症薬(81.3%)、静脈内免疫グロブリン(21.6%)、
糖質コルチコイド(21.6%)、コルヒチン(7.9%)、
または抗炎症療法なし(8.6%)で治療された。

26人の患者(18.7%)がICUにおり、
2人は変力性/血管作用性のサポートで治療され、
ECMOを必要としたり死亡したりした患者はいなかった。

入院期間の中央値は2日であった(範囲0〜10、IQR 2-3)。
すべての患者はトロポニンI(N = 111、8.12 ng / mL、IQR 3.50-15.90)
またはT(N = 28、0.61 ng / mL、IQR 0.25-1.30)が上昇していた。
69.8%に異常な心電図および/または不整脈があった(7人は非持続性心室頻拍)。

心エコー図では、18.7%が左心室駆出率(LVEF)<55%であった。
症状の発症から中央値5日(範囲0-88、IQR 3-17)でcMRIを受けた97人の患者のうち、
75人(77.3%)に異常な所見があった:
74人(76.3%)に後期ガドリニウム増強があり、54人(55.7%)に心筋浮腫、
および49(50.5%)はレイクルイーズの基準を満たしていた。

心エコー検査でLVEFが55%未満の26人の患者のうち、
フォローアップを行ったすべての患者は正常な機能を示しました(N = 25)。

結論:
21歳未満の人に発生したCOVID-19ワクチン心筋炎が疑われる症例のほとんどは、
症状が急速に解消する軽度の臨床経過を示している。
cMRIに関する異常な所見が頻繁に見られた。
将来の研究では、危険因子、メカニズム、
および長期的な結果を評価する必要がある。



Clinically Suspected Myocarditis Temporally Related to COVID-19 Vaccination in Adolescents and Young Adults

Originally published 6Dec 2021https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.056583Circulation. 2021;0

Abstract
Background:
Understanding the clinical course and short-term outcomes of suspected myocarditis following COVID-19 vaccination has important public health implications in the decision to vaccinate youth.

Methods: We retrospectively collected data on patients <21 years-old presenting before 7/4/2021 with suspected myocarditis within 30 days of COVID-19 vaccination. Lake Louise criteria were used for cardiac magnetic resonance imaging (cMRI) findings. Myocarditis cases were classified as confirmed or probable based on the Centers for Disease Control and Prevention definitions.

Results: We report on 139 adolescents and young adults with 140 episodes of suspected myocarditis (49 confirmed, 91 probable) at 26 centers. Most patients were male (N=126, 90.6%) and White (N=92, 66.2%); 29 (20.9%) were Hispanic; and median age was 15.8 years (range 12.1-20.3, IQR 14.5-17.0). Suspected myocarditis occurred in 136 patients (97.8%) following mRNA vaccine, with 131 (94.2%) following the Pfizer-BioNTech vaccine; 128 (91.4%) occurred after the 2nd dose. Symptoms started a median of 2 days (range 0-22, IQR 1-3) after vaccination. The most common symptom was chest pain (99.3%). Patients were treated with nonsteroidal anti-inflammatory drugs (81.3%), intravenous immunoglobulin (21.6%), glucocorticoids (21.6%), colchicine (7.9%) or no anti-inflammatory therapies (8.6%). Twenty-six patients (18.7%) were in the ICU, two were treated with inotropic/vasoactive support, and none required ECMO or died. Median hospital stay was 2 days (range 0-10, IQR 2-3). All patients had elevated troponin I (N=111, 8.12 ng/mL, IQR 3.50-15.90) or T (N=28, 0.61 ng/mL, IQR 0.25-1.30); 69.8% had abnormal electrocardiograms and/or arrythmias (7 with non-sustained ventricular tachycardia); and 18.7% had left ventricular ejection fraction (LVEF) <55% on echocardiogram. Of 97 patients who underwent cMRI at median 5 days (range 0-88, IQR 3-17) from symptom onset, 75 (77.3%) had abnormal findings: 74 (76.3%) had late gadolinium enhancement, 54 (55.7%) had myocardial edema, and 49 (50.5%) met Lake Louise criteria. Among 26 patients with LVEF <55% on echocardiogram, all with follow-up had normalized function (N=25).

Conclusions:
Most cases of suspected COVID-19 vaccine myocarditis occurring in persons <21 years have a mild clinical course with rapid resolution of symptoms. Abnormal findings on cMRI were frequent. Future studies should evaluate risk factors, mechanisms, and long-term outcomes.



糖質制限食とケトン体。ケトン体は悪者ではなくいい奴です。
【21/12/19 葵
ケトン体と糖質制限について教えてください
江部先生、いつも貴重な情報をありがとうございます。お陰様で、私たち夫婦も糖質制限し不摂生な生活から脱する事が出来そうなのですが、困った事が起こりました。
夫は20年ほど前出会った頃H a1c が10台で検診で指導を受けたり、受診を勧められたけれど通院拒否をしておりました。数年前、江部先生のブログを拝見したのがきっかけで糖質制限を行い、Hb a1c が3ヶ月ほどで8台なったのがきっかけで糖質制限をするようになり、もっとa1c を下げなければと考え通院もするようになりました。経口薬を飲んで、Hb a1c は、7.2から7.5で、極たまに6.8位の月もあります。膵臓に嚢胞が見つかり、半年に一度大きな病院でMRIを撮っています。今の主治医は、この病院と繋がりのある先生のようです。

困った事とは、ずっと検査結果はa1c 以外は問題なかったのですが、最近主治医が尿のケトンに注目し始め、今は+2との事ですが、血中のケトンを検査に出してみたり(異常なし)、糖尿病に詳しい先生に相談してみたりして、今度尿ケトンに対して薬で治療しましょうと提案してきたらしいのです。夫は糖質制限をしていますと初めから申告しており、糖質制限をやりすぎないようにと言われていたそうです。

質問なのですが、糖質制限で尿ケトンは正常なのでは無いかと思うのですが、これで何か治療をされたら体の調子がおかしくなってしまうのでは無いかと心配です。また、尿ケトンがプラスなら、血中ケトンもプラスだと思っていたのに正常とは、糖質制限が検査の前は多少緩くなるので、、医師から厳しい制限をしてはダメと言われてるから、、そのせいなのでしょうか。調べてもよくわからなくて、質問させていただきました。ここにきている皆さんには今更のことなのかもしれませんが、薬?でケトン体を調整されるのが怖いです。どのようにしたら良いか教えていただけますか。】



こんにちは。
葵 さんから、ケトン体と糖質制限についてコメント・質問を頂きました。

葵さん、糖質制限食でHUSのHbA1cが、
10%台から、6.8~7.5%に改善したとのこと、良かったです。
まずは、主治医と相談されて、早朝空腹時の血糖値とインスリンを検査しましょう。
これで、「HOMA-R」(☆)も計算できるので、
<インスリン基礎分泌の状態><インスリン抵抗性の有無>が評価できます。

これにより、糖尿病内服薬なしで、スーパー糖質制限食のみで、
血糖コントロールができるか否か、が予測できます。


【糖質制限で尿ケトンは正常なのでは無いかと思うのですが、
これで何か治療をされたら体の調子がおかしくなってしまうのでは無いかと心配です。
また、尿ケトンがプラスなら、血中ケトンもプラスだと思っていたのに正常とは、
糖質制限が検査の前は多少緩くなるので、
医師から厳しい制限をしてはダメと言われてるから、、そのせいなのでしょうか。】


仰る通りです。
スーパー糖質制限食実践なら「血中ケトン体高値で、尿中ケトン体陽性」となりますが、
体内のインスリン作用は正常なので、これは生理的で安全な現象です。
従って、治療の必要はありません。
血中ケトン体値が基準値なのは、ご指摘通り、
HUSが検査前は糖質制限食を緩めたためと考えられます。

米国糖尿病学会は、2019年4月の<コンセンサス・レポート>以降、
「糖質制限食が最もエビデンスが豊富である」と明言しています。
2020年、2021年のガイドラインでも同様の見解です。
糖質制限食は「厳格な糖質制限食」「緩やかな糖質制限食」を共に容認しています。
厳格な糖質制限食を実践すれば、血中ケトン体は高値となり尿中ケトン体は陽性と
なりますが、米国糖尿病学会の保証つきで、問題なしということです。


さて、ケトン体ですが「糖尿病ケトアシドーシス」の負のイメージのため、
長い間悪者にされてきました。

しかし、近年、悪者どころか、効率のよいエネルギー源となるだけでなくシグナル伝達因子の役割を果たしていることが明らかとなりました。(*)
またケトン体の一種である「βヒドロキシ酪酸」は、抗酸化ストレス作用を有すという知見も示されました。
そして、マウスを用いた研究では、ケトン体に抗老化作用があることが認められています。(*)

さらに、
イタリア・ピサ大学のFerranniniらと
米・カリフォルニア大学サンディエゴ校のMudaliarらは、
「Diabetes Care 2016;39:1108-1114、Diabetes Care 2016;39:1115-1122」)において
ケトン体に、臓器保護作用があるという説を提唱しました。

今回は、ケトン体の有用性と安全性について考察してみます。


A)
胎盤・臍帯のケトン体値英文論文


宗田らは、胎盤・臍帯・新生児のケトン体値に関する研究を英文で発表。
  胎盤・臍帯のケトン体値論文は、世界初と思われる。江部も共著者の一人。
胎盤のケトン体値は基準値の20~30倍、 平均2235.0μmol/L(60検体)
臍帯のケトン体値は基準値の数倍~10倍、平均779.2μmol/L(60検体)
新生児のケトン体値は、基準値の3倍~数倍、
  平均240.4μmol/L(312例、生後4日)  基準値は85 μmol/L以下。
胎盤と臍帯と新生児では、ケトン体は高値が当たり前である→安全性の担保

*Ketone body elevation in placenta, umbilical cord,newborn and mother in normal delivery  Glycative Stress Research 2016; 3 (3): 133-140
Tetsuo Muneta 1), Eri Kawaguchi 1), Yasushi Nagai 2), Momoyo Matsumoto 2), Koji Ebe 3),Hiroko Watanabe 4), Hiroshi Bando 5)


この世界初の胎盤・臍帯のケトン体値論文は、ケトン体の安全性に関するエビデンスと言えます。

B)
ヒューマン・ニュートリション第10版(医歯薬出版)2004年、P748

脳の代謝の項目に
「・・・母乳は脂肪含有量が高くケトン体生成に必要な基質を供給することができる。発達中の脳では血中からケトン体を取り込み利用できるという特殊な能力があり、新生児においてはケトン体は脳における重要なエネルギー源となっている。・・・」 
との記載がある。


ヒューマン・ニュートリションは、英国で最も権威のある人間栄養学の教科書です。
新生児においては、ケトン体は脳の重要なエネルギー源ということを明記してあるのはさすがです。
新生児において重要なエネルギー源ということは、胎児においてもケトン体が重要なエネルギー源である可能性が高いです。


ただ特殊な能力という記載ですが、小児ケトン食や絶食療法やスーパー糖質制限食実践者においては、ごく日常的に脳はケトン体を利用しています。
新生児だけでなく、小児も成人も、ごく普通に脳はケトン体を利用できると思います。

2015年2月に高雄病院に入院されて超少食療法を実践された男性は、
断食(超少食期)あけの朝で

空腹時血糖値:41mg/dl
βヒドロキシ酪酸:5562μM/

というデータでしたが、全く普通に喋って歩いて問題なく元気でした。
脳は、ケトン体を主なエネルギー源としていたと考えられます。
βヒドロキシ酪酸が5562μM/Lあったことにより、
血糖値が41mg/dlでも、元気に過ごせたと考えられます。


1984年に、私は本断食を行いました。水だけ摂取で、カロリーゼロで、塩ゼロです。
断食あけの朝で空腹時血糖値:35mg/dlでした。
やはり脳はケトン体を主なエネルギー源としいたと考えられます。


C)
EMPA-REG outcome trial

対象患者 心血管疾患のある2型糖尿病患者7,028例。
結論 心血管イベントのリスクが高い2型糖尿病患者において, 
標準治療へのempagliflozinの追加は心血管疾患による死亡,心血管イベント,
および全死亡の発症率を低下させた。
糖尿病治療薬ではじめての効果。
 
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.


ケトン体値上昇による心保護作用が
EMPA-REG outcome trialにおける好結果を生んだという仮説は、
魅力的であり、上述のようにDiabetes Careに掲載されました。

D)糖尿病 医師・医療スタッフの プラクティス
2017年Vol.34 No.1 医歯薬出版株式会社 
(*)
ケトン体は効率のよいエネルギー源となるだけでなく
シグナル伝達因子の役割を果たしている。
ケトン体の一種である「βヒドロキシ酪酸」は、抗酸化ストレス作用を有す。
マウスを用いた研究では、ケトン体に抗老化作用がある。

<考察>
A)B)C)D)を合わせて考察すると、
ケトン体の安全性と有用性は、確立されたと言えます。


江部康二

(☆)
「HOMA-R」 インスリン抵抗性指標

<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
糖質制限食とこむら返りについて。
こんばんは。
糖質制限食とこむら返りについて考えて見ようと思います。
腓(こむら)というのは「ふくらはぎ」のことです。
こむら返りというのはふくらはぎに生じる筋肉の痙攣(けいれん)のことで、
かなりの痛みを伴います。
頻度が多いのがふくらはぎの筋肉の痙攣なのですが、
基本的にはどこの筋肉にも起こりえます。

こむら返りの発生メカニズムについては、いろんな仮説がありますが、
明確にはわかっていないようです。
判っていることとしては、大ざっぱに言えば、
筋肉の収縮においてはカルシウムが重要な役割を果たしていて、
マグネシウムは筋肉を弛緩させる役割であるということです。

カルシウムやマグネシウム、ナトリウムやカリウムなどが、
ほどよく協力して、筋肉の収縮の調整をしてくれているのだと思います。
そして、冷えや運動や脱水があって、
相対的に血流が不足するとこむら返りを起こしやすいことも判っています。

私自身は糖質制限食開始後、全くこむら返りを起こしませんでした。
また当初、糖質制限食実践中の患者さんにおいても、
こむら返りの訴えはあまりなかったので気にしていませんでした。
しかし、その後、糖質制限食実践中に、こむら返りが生じる人がたまにおられることが、
ブログのコメントなどで判明しました。
また、高雄病院や江部診療所の糖質制限食実践中の患者さんでも、
その後まれではありますが、糖質制限後こむら返りを生じる方がおられました。

確かに野菜・海藻も摂らない極端な糖質制限食だと、カルシウムなどミネラル不足などで、
こむらがえりを起こすことがあるようですね。
一般にカルシウムやマグネシウムが不足すると、
こむら返りを起こしやすいとされています。

これらミネラルの補給ですが、カルシウムは、乳製品・小魚・大豆製品・海藻・緑黄色野菜などに多く含まれています。
マグネシウムは、大豆製品・魚介類・海藻・ナッツ類に多く含まれています。
従って、通常は糖質制限食OK食品に多く含まれているので、
こむら返りも起こらないのだと思います。

一方、糖質制限食に関係なく、
スポーツの最中や後にこむら返りを起こすことはよくありますよね。
実際、私の所属するテニスクラブのメンバーでも、
よくこむら返りを起こすタイプがおられます。

幸い私は、スポーツ中やその後も起こしたことがありません。
激しいスポーツをして汗をかくと、
汗とともに多量のミネラルが体の外に排出されてしまいます。
ですから、カルシウム・マグネシウムなどミネラルをちゃんと補給してやらないと、
筋肉が痙攣したり足が攣ったりします。

糖質制限食の場合、相対的に高脂質・タンパク食となります。
また、葉野菜や海藻や茸を摂取するので食物繊維も豊富です。
自ら1型糖尿人でスーパー糖質制限食実践中のバーンスタイン医師によれば、
野菜に多い食物繊維は、食事中のカルシウムと結合してカルシウム吸収をさまたげ、
タンパク質中のリン化合物もカルシウムとわずかに結合するそうです。

バーンスタイン医師は、
「糖質制限食実践中で、チーズ・ヨーグルト・クリームを摂らない人たち、
特に閉経後の女性」
には、カルシウム補充を奨めています。

つまり、糖質制限食実践中のほとんどの人でサプリは必要ないと思いますが、
上記のバーンスタイン医師の条件に当てはまる人やこむら返りをよく起こす人、
また結構スポーツをする人は、安価なカルシウム・マグネシウム剤、
或いは安価なマルチビタミン剤を補充して、こむら返りを予防するのもよいと思います。

スポーツを全くしない人でも糖質制限食実践中にこむら返りを起こすことがあります。
この場合もカルシウム・マグネシウム剤、マルチビタミン剤でほとんど良くなります。
なお、漢方薬の芍薬甘草湯(68番)もこむら返りに有効です。
2週間以上、芍薬甘草湯を内服すると、時に血中カリウムが低下することがあるので、
連用している人は注意してくださいね。

今回の記事は、
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-348.html
たがしゅうブログ こむら返り熟考を参考にしました。
たがしゅう先生ありがとうございます。

なお、カルニチンという物質が不足するとこむら返りを生じることがあります。
カルニチンは、生体において脂質の代謝に関与するビタミン様物質です。
食材におけるL-カルニチンは肉類と乳製品に多く含まれています。
カルニチン不足に対して、エルカルチンFFという内服薬もあり保健収載ですが、
高価です。

芍薬甘草湯が効かないこむら返りにも、エルカルチンFFはよく効きます。
エルカルチンFF錠250mgを6錠、分×3食後/日が、常用量ですが、
高価なので、数日間6錠を内服して、あとは、
寝る前に2錠を一回くらいでコントロールできることが多いです。


江部康二
魚をたくさん食べる人は、うつ病リスク半減。疫学調査結果。
こんばんは。
少し前になりますが、毎日新聞のサイトに、2017年9月27日、
「魚介を多く食べる人は、そうでない人と比べてうつ病の発症率が半減する」
https://mainichi.jp/articles/20170927/k00/00m/040/174000c
という興味深い記事が掲載されました。
国立がん研究センターと慶応大のチームによる疫学調査結果です。
青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」による予防効果が考えられるそうです。
具体的にはオメガ3脂肪酸に分類されるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサペンタエン酸(DPA)が多いと
発症率が低くなる傾向がありました。

私は、糖尿病だけでなく生活習慣病の患者さんには
スーパー糖質制限食を奨めることが多いのですが、
常々、魚と肉を半々くらいでと、お話ししています。
勿論、私自身もそれを実践しています。

日本人はもともと、魚の消費量は世界一でした。

例えば、水産庁の統計(2007年)によれば
人口100万人以上の国の中で
我が国の1人当たりの食用魚介類供給量は世界一だそうです。

また、各国の国民1人当たりの魚介類供給量と平均寿命の関係をみると、
魚介類供給量が多い国ほど平均寿命が長いようです。
日本が世界有数の長寿国なのも、
魚食大国の影響があると思われます。

このように、魚介類をしっかり摂取すると心身ともに元気になるようです。

しかし、近年魚貝類の摂取量が徐々に減少していて
平成18年(2006年)には初めて肉類の摂取量が魚貝類を上まわりました。

政府の「2015年度水産白書」によると、
2014年度の国民1人当たりの年間水産物消費量は前年度比0.1キロ減の27.3キロと、
ピークの2001年度(40.2キロ)から約3割減少し、
1960年代前半と同程度まで落ち込んでいることがわかりました。

ブログ読者の皆さん、魚介類を意識してしっかり食べて
心身共に健康度を高めたいものですね。


江部康二


☆☆☆
https://mainichi.jp/articles/20170927/k00/00m/040/174000c
以下、毎日新聞のサイトから、抜粋・要約

疫学調査
魚たくさん食べる人、うつ病リスク半減

毎日新聞2017年9月27日

 魚介を多く食べる人は、そうでない人と比べてうつ病の発症率が半減するとの疫学調査結果を、
国立がん研究センターと慶応大のチームがまとめました。
青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」による予防効果が考えられます。
 オメガ3脂肪酸には脳内で情報伝達に関わる物質の合成や、
神経の栄養になる物質を増やす作用があるとされており、うつ病の予防効果は海外でも報告されています。
 脂肪酸の摂取量を計算すると、オメガ3脂肪酸に分類される
エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサペンタエン酸(DPA)が多いと発症率が低くなる傾向がありました。

 研究チームは長野県南佐久郡の住民1181人を25年間追跡調査し、
魚介の摂取量とうつ病との関係を調べました。
1日当たり摂取量の多い順に4グループに分けると、2番目(中央値111グラム)の集団は
最下位(同57グラム)の集団より発症率が56%低かったのですが、
最も多く摂取した集団の発症率は26%の低減にとどまりました。
他の食材や調理法の影響を受けたとみられるます。

 魚介の摂取とうつ病の予防効果が日本人を対象にした疫学調査で確かめられたのは初めてといいます。
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)について。
こんばんは。
今回は、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)について考えてみます。
実は、HbA1cは食後高血糖を見逃しやすい欠陥のある検査です。
健康診断では、「空腹時血糖値」と「HbA1c」
糖尿病の有無や状態を評価していますが、
これでは食後高血糖を見逃すリスクがあるのです。

現実に<カロリー制限・高糖質食 + 薬物療法> という
日本糖尿病学会推奨の標準治療を実践していても、
毎年新たに、糖尿病腎症からの人工透析が16000人以上、
糖尿病網膜症からの失明が3000人以上、
糖尿病足病変からの足切断が3000人以上
という合併症が生じています。
これは現行の糖尿病治療が決して上手くいっていない動かぬ証拠と言えます。

<質の良いHbA1cと質の悪いHbA1c>

従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を摂取しつつ、
インスリン注射やSU剤で治療していて<HbA1c:6.5%>で、
一見コントロール良好に見えても、
これは食後高血糖と平均血糖変動幅増大を伴う「質の悪いHbA1c」なのです。
これでは、糖尿病合併症を予防することは困難です。

上述のように日本では、糖尿病合併症が減っていないのですが、
ほとんどの病院で、この「質の悪いHbA1c」でコントロール良好と錯覚して評価しているためと思われます。

一方、糖質制限食を実践していて、<HbA1c:6.5%>なら
食後高血糖や平均血糖変動幅増大のない「質の良いHbA1c」です。
こちらなら、糖尿病合併症を予防できることは言うまでもありません。


<HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)>
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、
蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いによりHbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。

血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。

これを略してグリコヘモグロビンですが、HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。

HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。

HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られ、血液中を循環し寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。

より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3、4ヶ月で作られます。

従いまして、HbA1cの値は通常は、
過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映していると考えればよいことになります。

血糖値は、空腹時や食後で変動するのに対し、
HbA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があります。
すなわち、血糖値は常に変化していますが、HbA1cは血中濃度が安定しています。

<HbA1cが実態より低値を示す場合>
溶血性貧血、腎性貧血など、赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、
HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、実際の値よりも低くなります。
肝硬変に伴う脾機能亢進による貧血も赤血球の寿命が短縮します。

鉄欠乏性貧血が鉄剤投与により急速に回復している時期も、
幼弱赤血球が増えて、赤血球の寿命が短くなり、HbA1cは低値となります。

糖尿病腎症から透析になった糖尿人の場合は、
腎性貧血で赤血球の寿命が短くなっているので、
見かけ上はHbA1cが改善して、低下したようにみえますが、
実態を反映していないことになります。

それで日本透析医学会では透析患者の血糖指標としては、
グリコアルブミン(GA)を推奨しています。

血液中のタンパク質の一種であるアルブミンに
ブドウ糖がくっついたものをグリコアルブミン(GA)といい、
GAは、約2週間の血糖状態をもっとも鋭敏に反映すると言われています。

そして、アルブミンは赤血球の寿命とは無関係なので、
貧血にも影響されないので、日本透析医学会が推奨しているわけですね。

<HbA1cが実態より高値を示す場合>
鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血があり未治療のときは、
代償性に赤血球の寿命が延びるので、
HbA1cは寿命が延びた分蓄積して、高値にシフトします。

妊婦においては、妊娠の進行とともに胎児の鉄需要が増加しますが、
それに供給が追いつかず、しばしば鉄欠乏性貧血が生じます。
そのとき、代償的に赤血球寿命が延びて、
血糖と結合するヘモグロビンの量が相対的に増えます。
結果として、妊娠中、特に妊娠後期には、
HbA1cが偽高値をとることが知られています。
従って妊娠中の血糖コントロールの指標は
HbA1cではなく、グリコアルブミン(GA)が推奨されています。
「GA15.8%未満」をめざして妊娠中の血糖管理をします。


<HbA1cが異常値な場合に疑われる病気>

高値…糖尿病、異常ヘモグロビン血症、未治療の鉄欠乏性貧血など
低値…溶血性貧血、、腎不全、肝硬変、インスリノーマ(膵島線種)など


江部康二
肥満がコロナ重症化の大きなリスク。減量に最適なのは糖質制限食。
こんにちは。
新型コロナウイルス感染症ですが、肥満が重症化の大きなリスクとなります。

日本では、2021年9月20日頃から、
新型コロナ死者数が急速に減少しています。
11月7日には、死者数はゼロとなり、
その後12/12現在まで、ずっと0~2名程度が続いていて、
7日間の平均は1名です。
11月18日だけは例外的に5名の死者数でした。

一方、米国では、少しだけ減少しましたが、まだまだ多いままです。
12/10の死者数は2087名です。
12/12の死者数は、195名と減ったのですが、7日間平均では1280名です。

この日米の死者数の差の要因の一つが、日米の肥満率の差と考えられます。
日本では、BMI30以上の成人の肥満者は、極めて少ないです。
2015年のデータで、男性が4.4%、女性が3.1%です。
米国では、BMI30以上の成人(20歳以上)の肥満率が、
世紀の変わり目からずっと上昇を続けています。
1999~2000年には30.5%だった割合は、
2015~2016年には過去最悪の水準をさらに更新し、39.6%に達しました。
2015年のデータでは、男性が35.5%(日本の8倍)、
女性が41.0%(日本の13倍)です。
日本と異なり、米国では女性の方が肥満率が高いです。

『肥満』があると、新型コロナ感染重症化リスクとなることが明らかとなっています。
他に、『65歳以上』『男性』『2糖尿病』も重症化リスクとなります。

スーパー糖質制限食実践で、肥満から脱却することは、
新型コロナ重症化リスクをおおいに減らすことに繋がります。

よく言われる「肥満関連遺伝子」は、
ベータ2、及びベータ3アドレナリン受容体(β2AR、及びβ 3AR)、
そして脱共役蛋白1(UCP1)の3つです。
この3遺伝子(御三家)に
ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体遺伝⼦(PPARγ)を加えたも のが、
ちまたでよく取り上げられる「肥満遺伝子」の四天王ですかね。
しかしこれら以外に肥満関連遺伝子は50以上も報告されているので、
この4つで、肥満を説明する事はほとんど不可能と言えます。
つまり、ちまたのサイトで、あたかも確定事項のように記載されている
「肥満遺伝子」四天王関連の話題に関しては、
『そんな簡単なもんやおまへんで!』と言うことに尽きます。

肥満に関して、最も肝要なことがあります。
それは、インスリンこそが、『肥満ホルモンである』ということです。

①インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制する。
②インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内に蓄える。
③インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
 余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪として蓄える。

◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。
◇インスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみ。
◇ハーバード大学医学部元教授、ジョージ・ケーヒル
 「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
◇糖質が肥満の元凶・真犯人、脂肪は無実。


①②③で明らかなように、インスリンは『三重の肥満ホルモン』です。
つまり、どんな肥満関連遺伝子を所有していようといまいと、
<糖質過剰摂取⇒インスリン過剰分泌⇒中性脂肪過剰蓄積>
が、肥満の根本要因ということです。

スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は最小限ですみ、
中性脂肪蓄積も生じません。
それどころか、糖質制限食なら食事中にも脂肪が燃えています。
このように考察してくると
肥満改善には、スーパー糖質制限食が最適の食事療法である
自信をもって言うことができます。

江部康二
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク『コレステロールについて<前半>』
こんばんは。
日本では、急激に新型コロナウイルス感染症が減少しています。
一方、諸外国では、まだまだかなりの死者数がでています。
また、80.4%が2回ワクチン接種を終えている韓国でも
2021年9月中旬から、コロナ死者数が急上昇して現在に到っています。

何故、これほどの差があるのか原因不明です。
日本は、新型コロナに関して、非常に運がいい状況と言えます。

ただ、日本でも、12月末で冬になれば、新型コロナ感染症が再燃する可能性はあり、
油断は禁物です。
糖質制限食実践で、免疫力向上に努めましょう。

さて、
ドクター江部の糖質オフ!健康トーク 第8回は
▼ vol.8『コレステロールについて<前半>』
https://youtu.be/Z4CMJokvD5E

です。

コレステロールについては、ブログ読者の皆さんの関心も高いと思います。
一般にHDLコレステロールは善玉で、LDLコレステロールは悪玉とされていますが、
ことは、そんな単純なものではありません。
例えば、LDLコレステロールには、善玉もあるし悪玉もあるのです。
中性脂肪値が60mg/dl以下で、HDLコレステロールが60mg/dl以上なら、
LDLコレステロールは全て善玉となるのです。

江部康二

以下の青字の記載は、事務局からのお知らせです。

*********

ブログ読者の皆様、弊会のYouTube動画を多数ご覧いただいておりまして、ありがとうございます。

江部理事長による動画「ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
vol.8」の配信をご案内申し上げます。
テーマは「コレステロール」についてで、今回と次回の2回に渡ってお話しいたします。

今回は、コレステロールとは、LDL/HDLコレステロールの役割、
本当の悪玉/善玉コレステロールとは、糖質制限食とコレステロール値等について解説しております。

ドクター江部の糖質オフ!健康トーク
▼ vol.8『コレステロールについて<前半>』
https://youtu.be/Z4CMJokvD5E

ご覧いただけますと、また、ご興味のある方へシェアしていただけますと幸いです。

▼協会YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCdh9uz2_XnhDyJj9pHDDW1A

一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会
https://www.toushitsuseigen.or.jp/

*********
動物と糖尿病。犬、猫、鯉。ピューマと糖尿病。
こんばんは。
今回は、動物と糖尿病について、考察してみます。
少し前ですが、毎日新聞に以下の記事が載りました。

【毎日新聞https://mainichi.jp/articles/20191228/k00/00m/040/166000c  
国内最高齢ピューマの「ピコ」死ぬ 17歳、腎不全で治療 天王寺動物園
死因は調査中。毎日新聞2019年12月28日。

以下は記事の要約です。
国内最高齢だった雌のピューマ「ピコ」が2019/12/28、死亡しました。
2018年夏ごろから慢性的な腎不全の治療を受け、12月には糖尿病と診断されていました。
 園によると、ピコは12月6日に突然、歩行時にふらつくようになり、
検査で糖尿病と判明しました。高齢が主な原因とみられるといいます。
 園は11日から展示を見合わせて投薬治療をしていたが、ピコは立つのがつらい様子で、徐々に食欲もなくなり、28日朝、飼育員が寝室を訪れると死んでいた。 
 飼育員によると、ピューマの飼育下の平均年齢は15~20歳とのことです。
園の獣医、高見一利さん(53)は「高齢動物が多くなってきている。人為的な原因で動物が死なないように管理を徹底していきたい」と話しました。】


ピューマが糖尿病になったという記事をみてびっくりしました。
より身近な動物の中では、犬は、1型糖尿病が多く、猫は2型糖尿病が多いようです。

犬の糖尿病は、中高齢で発症することが多い病気です。
7歳を超えると糖尿病発症リスクが高くなります。
雌のほうが雄より糖尿病になりやすいようです。

猫の糖尿病のほとんどは慢性膵炎を基礎疾患とするタイプ、ヒトの2型糖尿病に似たタイプ、薬剤誘発性のいずれかです。
その中でも慢性膵炎からの糖尿病が最も多いとされています。
従って、猫の糖尿病の場合は、ベースにある慢性膵炎に早く気がついてあげることが大切です。
しかしながら、本人の自覚症状を伴わない状態で進行していくため、初期では発見しにくいのが現状です。
猫の膵炎の原因は、はっきりわかっていないのが現状ですが、
発症予防のための食事療法としては、猫本来の肉食、
すなわちスーパー糖質制限食が良いと考えられます。

1型糖尿病のほとんどは、自己免疫疾患であり、生活習慣病ではありません。
何らかのウィルス疾患などに罹患して、発熱などの症状が出た時、
体内の免疫細胞の活動が亢進して対処します。
このとき、亢進した免疫細胞活動が、勢い余って、自身の膵臓のβ細胞を
攻撃(免疫の誤作動)して、β細胞を破壊してしまい、1型糖尿病を発症します。

2型糖尿病は、食生活が色濃く関わる生活習慣病です。
人間でもそうですが、猫でも食べ過ぎや運動不足、肥満などが元凶です。
猫は、本来完全肉食動物なので、
「高タンパク質+低炭水化物」食即ち「糖質制限食」が、好ましいのです。
そこに、飼い主が食べているような「高糖質食」を餌として与えてしまうと、
必然的に肥満を生じやがて「2型糖尿病」を発症してしまうわけです。

このように猫の糖尿病は、犬とは異なり、自己免疫疾患ではない2型糖尿病です。
飼い主さんが、猫の食性(肉食)をしっかり把握して、
餌として「糖質制限食」を与えていれば、
肥満にも、慢性膵炎にも、生活習慣病タイプの2型糖尿病にもなりにくいと思います



ピューマ「ピコ」ですが、
2018年夏ごろから慢性的な腎不全の治療を受け、
12月には糖尿病と診断されていたそうです。
これは、普通に考えると、先に糖尿病を発症していて、
糖尿病腎症から腎不全になったという順番と思われます。

ピューマの飼育において、プロの動物園ですから、
餌は完全肉食であったと思われます。
そうすると、あくまでも仮説ですが、
2型糖尿病(生活習慣病)の発症は考えにくいので
1型糖尿病(自己免疫疾患)であった可能性のほうが高いです。

犬や猫を含めて、動物の糖尿病の治療は「インスリン注射+食事療法」が一般的です。
国内最高齢ピューマの「ピコ」も、
「インスリン注射+肉食」で治療していたと思われます。
死因は調査中とのことですが、腎不全の治療は極めて困難なので
腎不全そのもので死亡した可能性が高いと思います。

人間の場合は、腎不全になったら人工透析がありますが、
動物の人工透析は無理です。

「ピコ」の冥福を祈ります。


なお、鯉にも1型糖尿病があるようです。
正常の鯉の血糖値は50mg/dlを切るほど低く、
糖尿病の鯉にしても100mg/dl程度だそうです。

高血糖、即、糖尿病ではなく、例えば鶏の血糖は200mg/dlでも、
それが正常であり、糖尿病ではありません。
高血糖が存在して、それによる二次的な障害、
合併症がある場合に糖尿病ということとなります。


江部康二
理研がコロナの「ファクターX」一部解明 オミクロン株に効果か
こんばんは。
2021年12月8日(水)のヤフーニュースに産経新聞の記事、

https://news.yahoo.co.jp/articles/5c3b2bcd7625ba2e6580afd3ef935d58726c3fca
理研がコロナの「ファクターX」一部解明 オミクロン株に効果
12/8(水)


が掲載されました。

以下の青字の記載は、上記の産経新聞記事の要約です。

【日本人の新型コロナ患者の重症者や死亡者が、
欧米人に比べて非常に少ない理由として存在が指摘されてきた謎の要因「ファクターX」について、理化学研究所は8日、
「日本人に多い特定の免疫タイプが要因の一部だと解明した」と発表した。

感染した細胞を免疫細胞の一つであるキラーT細胞が破壊する仕組みも判明。
仕組みを応用すれば、新たな脅威となっている変異株「オミクロン株」にも有効なワクチンの開発につながりそうだとしている。

新型コロナのウイルスが細胞に感染すると、免疫の作用で細胞の表面に、
ウイルスが侵入したことを示す抗原となるペプチドという物質が表れる。
これにキラーT細胞が刺激されて増殖し、感染細胞を破壊して重症化を防ぐ。
免疫のタイプは多数あって表れるペプチドの種類が異なり、
反応するキラーT細胞も異なる。
反応しない場合もある。

研究チームは、日本人の約6割が持っているが、
欧米人は1~2割しか持たない白血球の型「HLA―A24」という免疫タイプに着目。
このタイプの細胞が新型コロナに感染した際、
細胞表面にどのような種類のペプチドが表れ、
それらにキラーT細胞が反応するか分析した。

その結果、「QYI」というペプチドにキラーT細胞が効率的に反応することが判明。
同じ免疫タイプで新型コロナ未感染の人の細胞を採取しQYIを投与すると、83・3%でキラーT細胞が反応し増殖した。
これらから、日本人の新型コロナ感染者に重症者などが少ないファクターXは、
この免疫タイプの多さが要因の一部だと結論づけた。

この仕組みを利用しQYIをワクチンとして投与すれば、
重症化を抑止できる可能性がある。
また、既存のワクチンとは働きが異なるため、
チームではオミクロン株にも有効ではないかとみている。
理研の藤井真一郎チームリーダーは
「これまでワクチンが効かなかった人の新たな治療法になる可能性もある。
さらに研究を進めたい」と話した。】


「ファクターX」一部解明とは、なかなかに心強いお話です。

『新型コロナのウイルスが細胞に感染すると、免疫の作用で細胞の表面に、
ウイルスが侵入したことを示す抗原となるペプチドという物質が表れる。
これにキラーT細胞が刺激されて増殖し、感染細胞を破壊して重症化を防ぐ。
免疫のタイプは多数あって表れるペプチドの種類が異なり、
反応するキラーT細胞も異なる。
反応しない場合もある。』


免疫の作用で感染細胞の表面に現れるペプチドは多種類あって、
これに対する免疫のタイプも多種類あります。
そしてそれぞれに反応する『キラーT細胞』も異なっています。

日本人の約6割にある白血球の型「HLA―A24」という免疫のタイプを持つ人は、
風邪の原因となる季節性コロナウイルスに対する免疫細胞が、
新型コロナウイルスの感染細胞も攻撃するという実験結果を、
理化学研究所のチームが発表し、
英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに論文が掲載されました。
ちなみに欧米人は、白血球の型「HLA―A24」は、1~2割しか持っていません。


『その結果、「QYI」というペプチドにキラーT細胞が効率的に反応することが判明。
同じ免疫タイプで新型コロナ未感染の人の細胞を採取しQYIを投与すると、83・3%でキラーT細胞が反応し増殖した。』


免疫の作用で感染細胞の表面に現れるペプチドが「QYI」であれば、
新型コロナウイルス感染に対して、
キラーT細胞が効率的に反応するということが判明しました。
日本人には、「QYI」というペプチドが感染細胞表面に現れやすいという特徴があり、
これが、新型コロナ感染症に大変有利に働いたようです。

つまり日本人の場合、コロナウイルス感染による「普通の風邪」に罹患した既往があれば、
新型コロナウイルス感染に対しても、既に一定の準備ができているということになります。
従って新型コロナウイルスに感染した際には、
速やかに『キラーT細胞』が、駆けつけて感染した細胞を破壊してくれるので、
重症化が防げるわけです。


日本人のファクターXの要因の一つは
<白血球の型「HLA―A24」 と「QYI」というペプチド>
と判明しました。
これらなら、デルタ株にもオミクロン株にも有効と考えられます。
また、「QYI」というペプチドを投与することで
重症化が防げる可能性が高いです。

もっとも、デルタ株はともかくとして、
オミクロン株は、幸い、現在までのところ、弱毒性の可能性が高いです。
このまま、オミクロン株がデルタ株に置き換わって単なる感冒になってくれたら、
一番ラッキーなストーリー展開となるのですが・・・。


江部康二

コロナもきっかけ  米国で温水洗浄便座販売が急増
こんばんは。

産経新聞のWEBサイトに2021年12月5日、

https://www.sankei.com/article/20211205-5Y6S46FYEVP5TDKYYDPN3SWZCU/

経済インサイド
コロナもきっかけ 
米国で温水洗浄便座販売が急増


という記事が掲載されました。
以下の青字の記載はその要約です。

【日本が誇る技術である温水洗浄便座の海外販売が急伸している。
文化の違いなどから長年反応が鈍かった米国でも上昇が顕著で、
企業によっては今年1~6月の北米での販売台数が2019年同期比で
3倍近くに達した。
理由は衛生面で優れていることや、
トイレットペーパーの使用量を抑えられる環境優位性が見直されたこと。
新型コロナウイルスによる紙不足が認知拡大のきっかけとなり、
業界では海外での普及に向けた手応えを感じている。
「ようやく海外普及に向けて軌道に乗った。
これからは拡大のスピードが全然違うだろう」
温水洗浄便座「ウォシュレット」の商標で知られる業界トップTOTOの田村信也常務は11月下旬、
産経新聞の取材に今後の海外販路拡大に自信を見せた。】

日本初の温水洗浄便座は
1967年10月に伊奈製陶(後のINAX、現LIXIL)が温水洗浄便座付きの便器として発売した「サニタリーナ61」です。
ウォシュレットの発売は1980年6月ですから、
随分前から、サニタリーナがあったわけです。

TOTOは1967年にアメリカンビデ社より特許を取得し、「ウォッシュエアシート」の国産化に踏み切ります。
しかし、初代ウォシュレットの発売まで、完成された商品は少なく、広告展開も難しいとされていたので、
なかなか普及には至りませんでした。
なぜなら、温水洗浄便座はお湯の温度を安定させることや水の角度が難しいなど、かなりの技術が必要だったのです。
やっと完成した「ウォシュレット」ですが、なかなか売れませんでした。

有名なCM「おしりだって洗って欲しい」の放映が1982年です。
このCMをきかっけに徐々に売れ始めて行き、
その後は右肩上がりで売れ行き上昇です。

今や2人以上世帯への普及率は80%を超えています。
内閣府が2018年3月にまとめた消費動向調査によると、
2人以上世帯の家庭の温水洗浄便座普及率は80.2%です。

日本では、もはやあって当たり前の ウォシュレットですが
海外ではなかなか売れませんでした。
日本の水は「軟水」ですが、海外では「硬水」の地域が非常に多く、
この水質の違いが海外でのウォシュレット普及の妨げになっていたと思われます。
ヨーロッパでは水道水が石灰分を含んだ、飲料にも適さない硬水であり、
これをウォシュレットに使用すると、含まれている石灰分が内部で凝固し、
ポンプが故障したりノズルが詰まる可能性があります。

あとトイレと浴室が別々なのが一般的な日本では、トイレにコンセントがあるのは当たり前です。
しかし、ユニットバスが普及している海外では、トイレの傍にコンセントを設置するという発想自体がないようです。
西欧のトイレはユニットバスが基本なので「水回りに電源を確保する」という難しさもあるようです。

こういった、海外での普及の困難さが
コロナ禍で、一掃されたと言えます。
衛生面での清潔さに紙の節約などのメリットがあり、
一気に普及が広まったと考えられます。

温水洗浄便座メーカーの
企業努力で、硬水への対応も
可能となったと思われます。

このまま海外でも、温水洗浄便座が普及していき
海外の方々にも快適な生活を送って欲しいものです。

江部康二
キング醸造株式会社さんの「糖質ゼロ・オフシリーズ」のご紹介。
こんにちは。
私が理事長を務める日本糖質制限医療推進協会の賛助団体会員で、
「日の出みりん」でお馴染みの、キング醸造株式会社さんの「糖質ゼロ・オフシリーズ」のご紹介です。

・糖質ゼロでは、料理酒やみりん風調味料、便利な甘酢
・糖質オフでは、ぽんずやドレッシング、ケチャップ
といった調味料がラインナップされています。
また、新商品で糖質オフ梅酒も登場しています。

私も「野菜にかけるMCT和風(糖質オフ)」ドレッシングや
「明日誰かにすすめたくなるケチャップ」を試食させてもらったことがあります。

糖質大幅カットで安心、かつ普通の糖質たっぷりのものと比べて、味も遜色なく、美味しかったです。

糖質セイゲニストにとって、心強い味方ですね(*^^)v

キング醸造さんとは、日の出みりん『低糖質メニュー料理教室 in
神戸北野ホテル』での講演会を主催して頂いたご縁があります。
その場で、神戸北野ホテルの総支配人・総料理長の山口浩さんと私の糖質制限なトークショーを、2回ほど行いました。

神戸北野ホテルは「世界一の朝食」で有名ですね。

以下はキング醸造さんのオンラインショップ情報です。

・公式オンラインストアはこちらです。
https://www.happysun-hinode.com/?mode=cate&cbid=2398960&csid=0

・糖質ゼロ・オフシリーズ商品の詳細情報はこちらです。
https://hinode-mirin.co.jp/products/zero_carbohydrate/
がんのリスク、飲酒と喫煙、どっちがより悪い?
こんばんは。
去年と今年は、新型コロナの影響で、忘年会は一切なしです。
なかなか、さみしい年末を過ごしています。
去年もですが今年も、好物の河豚ののフルコースも自粛しようと思います。

しかし私はお酒はよく飲みます。
今は、もっぱら家のみです。
糖質制限OKのお酒を、雨の日も風の日も晴れの日も雪の日も・・・、
ほぼ毎日、律儀に飲んでいます。
糖質ゼロのビール(350ml缶)をまず一缶のんで、
そのあとは、焼酎が多いです。
25%の焼酎をオンザロックで、チビチビ呑みます。
37%とか40%とか濃い酒は、咽頭・食道粘膜に刺激過剰となり、
発がんリスクとなるので、避けています。
辛口の赤ワインも飲みますが、ほぼピノ・ノワールです。
しかしながら、定期的に検査している肝機能は全く正常であり、
人生で一回も肝機能障害を経験したことはありません。
万一、肝機能障害が発症したら、きっと酒を減らすと思います。

一方、タバコは人生で一回も吸ったことはありません。
ですから、患者さんを診察するときには、
酒飲みには優しく、喫煙者には厳しい傾向があります。

このように、私は、
酒とタバコに関してかなりバイアスの入った診療をする医師ということになりますが、
さて、「飲酒」と「喫煙」と、どっちがより悪いのでしょう?

とりあえず、一番懸念される「がん」について
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)を調べて見ました。

<お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい>
 時々飲酒しているグループと比べると、男性において、
アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、
がん全体の発生率は高くなりませんでした。
 一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、
がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。
 要するに、お酒をたくさん呑むほど、
単純にがん発症リスクが増えるということであり、
左党にはとても頭の痛いお話しです。
なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、
ウイスキーダブルで1杯です。
 女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、
はっきりした傾向がみられませんでした。

<飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる>
 ところが、この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、
たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。
この事実は、左党には大変嬉しいことと言えます。
 一方、たばこを吸う人では、ときどき飲むグループに比べて、
飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、
1日平均3合以上のグループでは2.3倍、がん全体の発生率が高くなりました。
 このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、
喫煙によって助長されることがわかります。
 げにタバコの害、恐るべしです。
 もちろん、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、
喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなるので、油断は禁物です。
ともあれ、そうすると、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など特殊な部位のがんを除けば、飲酒単独で喫煙なしなら、飲酒量が増えてもがんのリスクにはならないと言えます。
私など左党(酒飲み)には大変嬉しいJPHC研究報告であり、
国立がんセンターの方角に足を向けて眠れないですね。

なお、とても嬉しいことに
「酒飲みでも、タバコ(-)なら食道がんのリスクなし」
です。
2018年05月01日 (火)の本ブログ記事
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4547.html

をご参照頂けば幸いです。


<飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか>
 アルコール(エタノール)の分解物のアセトアルデヒドが、がんの発生にかかわるようです。
そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、
たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。

<やはり多量飲酒はよくない>
がんを含めて、いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、
お酒は日本酒換算で一日1合程度までに控えておいた方が安全なようです。
大量の飲酒は、シンプルに肝臓や膵臓にダメージを与えます。


結論です。
アルコール依存症の問題はありますが、総合的に飲酒と喫煙のどっちがより悪いのかと言えば、喫煙と結論できます。
しかし、当たりまえではありますが、大量の飲酒は厳禁です。

本日のブログ記事、グラフや図も含めてより詳しくは
多目的コホート研究(JPHC研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html

をご参照頂けば幸いです。


江部康二



多目的コホート研究(JPHC研究)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html

飲酒とがん全体の発生率との関係について
―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2004年現在)管内にお住まいの方々に、アンケート調査の回答をお願いしました。そのうち、40~59歳の男女約73,000人について、その後平成13年(2001年)まで追跡した調査結果に基づいて、飲酒とがん全体の発生率との関係について調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので、紹介します(British Journal of Cancer 2005年92巻182-187ページ)。

お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい
調査開始時には、男性の70%はほぼ毎日飲酒していると回答していましたが、女性ではほぼ毎日飲酒しているのは12%でした。調査開始時の飲酒の程度により6つのグループに分けて、その後のがん全体の発生率を比較してみました。調査開始から約10年間の追跡期間中に、調査対象者約73,000人のうち約3,500人が何らかのがんにかかりました。
時々飲酒しているグループと比べると、男性では、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、がん全体の発生率は高くなりませんでした。一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。(なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯です。)
この結果をもとにして、平均1日2合以上のような多量飲酒に起因してがんになる、すなわち、多量の飲酒を避けていれば何らかのがんにかからなくてすんだ割合を推計したところ、13%でした。
女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、はっきりした傾向がみられませんでした。

図1.飲酒とがんの発生率.男

飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる
この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。ところが、たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、ときどき飲むグループと比べて、1日平均2-3合以上のグループでは1.9倍、1日平均3合以上のグループでは2.3倍がん全体の発生率が高くなりました。このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、喫煙によって助長されることがわかります。
もちろん、口唇・口腔・咽頭・食道・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなりますが、喫煙が重なることにより、さらに発生率が高くなるという結果になりました。

図2.喫煙習慣別に見た飲酒とがんの発生率.男

飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか

お酒に含まれているエタノールは分解されてアセトアルデヒドになりますが、これががんの発生にかかわると考えられています。そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。

やはり多量飲酒はよくない
この研究からは、何らかのがんになりにくくするには、日本酒換算で一日平均2合以上の多量飲酒は慎んだ方がいいといえます。しかし、同じ多目的コホート研究からの結果では、最近増加している糖尿病や大腸がんなら、一日平均1合を超えると危険性が高くなるという結果となっています。いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、お酒は日本酒換算で一日1合(ビールなら大びん1本、ワインならグラス2杯)程度までに控えておいた方がよいといえるでしょう。

米ファウチ博士 オミクロン株 “重症化の度合い高くないか”
こんばんは。
NHK NEWS WEB
2021年12月6日 21時26分
米ファウチ博士 オミクロン株 “重症化の度合い高くないか
という記事が掲載されました。

以下の青字の記載は、NHK NEWS WEB の記事の要約です。


【NHK
NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211206/k10013377381000.html

米ファウチ博士 オミクロン株 “重症化の度合い高くないか”
2021年12月6日 21時26分 新型コロナウイルス

アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士は、
2021年12月5日、新たな変異ウイルス、オミクロン株について、
CNNテレビのインタビューに応じ、
南アフリカからの情報をもとに「これまでのところ、重症化の度合いはそれほど高くないようだ。これは勇気づけられる兆候だ」などと述べました。

一方で「デルタ株ほど、重症化しないと判断するのは相当慎重にならねばならない。
決定的なことを言うのは時期尚早だ」と強調し、
最終的な判断にはさらなる研究が必要だとする考えを示しました。

このほか、アメリカ政府が国民向けに出している、
アフリカ南部の国々への「渡航中止の勧告」については
「現在、オミクロン株に関する多くの情報を入手し、注意深く見ている。
できるなら妥当な期間内に解除できるようにしたい」と述べました。】



ファウチ博士は、
『デルタ株ほど、重症化しないと判断するのは相当慎重にならねばならない。』
と述べておられますが、その通りと思います。

一方、2021/12/7現在まで、
世界各国に、オミクロン株が広がっていますが、幸い、死者は一人もでていません。

2021年12月1日、羽田空港から入国した日本人男性が、
新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に感染していることが分かりました。
日本人の感染確認は、本例が初めてです。

政府関係者によるとオミクロン株への感染が確認されたのは、
イタリアに滞在歴があり12月1日に羽田空港から入国した日本人の30代の男性です。
男性は空港の検査でコロナの陽性が判明し、
厚労省は、国立感染症研究所で「オミクロン株」かどうか遺伝子解析をしていました。
男性は今年8月までにモデルナのワクチンを2回打っていて、
空港に到着した時は無症状だったということです。

日本人初のオミクロン株陽性者も、無症状ですので、
今のところ、「重症化の度合いは高くない」 という範疇に収まっています。
一番望ましいストーリーは、
【オミクロン株は「重症化の度合いは高くない」ウイルス株であり、
このまま、デルタ株と置き換わっていって、
そのうち単なる「コロナ風邪」として落ち着いていく。】

というものですが、甘すぎる見通しでしょうか?


江部康二
新型コロナワクチン接種後に重症心臓発作の発症リスクが非常に高くなる。
【21/12/05 中嶋一雄
米国循環器学会
柳澤厚生先生の解説
https://www.facebook.com/yanagisawa.atsuo/posts/4947463588649199


こんにちは。
中嶋一雄先生から貴重な情報をコメント頂きました。
ありがとうございます。
米国心臓病専門医、柳澤厚生医師のフェイスブックの記事です。
「ぜひあなたの言葉で周囲の方に情報を伝えてください」
とのことですので全文を掲載します。

「新型コロナmRNAワクチン接種後に重症心臓発作の発症リスクが非常に高くなる」
と心臓外科医ガンドリー博士が
アメリカ心臓学会学術集会(2021/11/13~11/15)で発表しました。

<柳沢医師の指摘する「新型コロナmRNAワクチン」の問題点>
[1] この研究から、ファイザーやモデルナのmRNAワクチン接種により
 心臓や他の臓器の血管に炎症、しいては重症の心臓病発作を引き起こす可能性があります。
 そこのことから、既に重症心臓発作を起こしている多くのワクチン接種者の存在を考えなければなりません。
 重症心臓発作では突然死を起こすことがあり、
 原因不明の家庭での突然死の中にワクチンによるものが相当数存在しているかもしれません。
 そして、これは希な現象ではなく、無症状であるがワクチン接種後にかなりの頻度で普通に起きている可能性があります。

[2] この現象はワクチン接種後の一時的なものではなく、
  少なくとも3ヶ月あるいはそれ以上の長期間続く可能性があります。
  従って、3回目のブースター接種によりさらに炎症が悪化し、重症心臓発作を引き起こす危険があります。

[3] 診断或いは未診断の心臓血管疾患を有する中高年だけでなく、
  血管の炎症を有する自己免疫疾患患者、
  さらには冠動脈の病変を有している可能性のある川崎病に罹患している既往のある小児においても、
  mRNAワクチン接種後長期間を経て重症心臓発作を引き起こす可能性があります。

江部康二


☆☆☆
以下の青字の記載は、
アメリカの心臓病専門医(Felow of American College of Cardiology, FACC)柳澤 厚生医師の
フェイスブックの記事です。

柳澤 厚生
12月2日 20:07 ·
【「新型コロナmRNAワクチン接種後に重症心臓発作の発症リスクが非常に高くなる」
と心臓外科医ガンドリー博士がアメリカ心臓学会学術集会で発表・・・英国ではデータ隠しも!?】

<長文ですがとても重要な記事です。ぜひ最後までお読みください>

11月13〜15日に開催されたアメリカ心臓学会学術集会で
「モデルナやファイザーのmRNAワクチン接種後に急性冠症候群の5年間発症リスクが11%から25%に増加した」
と発表がありました。
https://www.ahajournals.org/.../circ.144.suppl_1.10712...

■スティーブン・ガンドリー博士は8年間にわたり血液バイオマーカー(IL-16, sFas, HGFなど)から
「重症心臓発作が今後5年間に発症する確率」を予測する検査(PULS Cardiac Test)を3〜6ヶ月毎に患者にしてきました。
ところがモデルナやファイザーのワクチン接種が始まってから、
多くの患者のPULSスコアが悪化したのに気づき、調査をしたのです。
心臓病予防外来通院中の患者566人がmRNAワクチンの2回目接種をしてから2〜10週後にバイオマーカーを測定、
接種3〜5ヶ月前の測定値と比較しました。

接種後にバイオマーカーは異常に増加し、
「重症心臓発作が今後5年間に発症する確率」が11%から25%に増加したのでした。
さらに2.5ヶ月後でも傾向は同じでした。

ガンドレ−博士は「mRNAワクチン接種が血管内皮の炎症とT細胞の心筋浸潤を劇的に引き起こし、
これがワクチン接種後の血栓症、心筋症、および他の血管イベントが増加していることを説明しうる」と結論しました。

■ アメリカ心臓学会のガンドレ−博士の発表は世界中の研究者に大きなインパクトを与えました。
さらに11月26日にイギリスのニュース専門局GB Newsで
心臓病専門医のアシーム・マルホートラ(Aseem Malhotra)医師のライブインタビューが行われ、
その中で爆弾発言があったのです。
https://www.youtube.com/watch?v=gJ8t0qQ5R4I

マルホートラ医師はガンドレ−博士の発表を解説し、次のように話しました。
「2〜3日前にイギリスの心臓病研究施設の研究者から私に連絡がありました。
ガンドレ−博士が発表したワクチンと心臓発作の関連について、
その施設では既に同じような研究結果を出していたのです。
その施設ではこの研究結果を公表するかどうかについて会議が行われました。
何と、これを公表することで製薬会社からの研究費がなくなることを恐れて公表しないという結論になったのです。
私にこれを教えてくれた研究者はとても怒っていました。」

ワクチン接種が市民の健康に重大な害を及ぼすという研究結果を、
製薬会社からの研究費がストップされることを恐れて公表しないというのは、
重大な裏切り行為であり、あってはならないことです。
しかし、同様のことは世界中で起きているごく一部かもしれません。

さらに、マルホートラ医師は
「ガンドレ−博士の発表で、ジグゾーパズルのピースがはまったような気がします。
イギリスでは7月からコロナに関係していない超過死亡が1万人もいて、
その多くが心臓病や脳卒中で亡くなっています。
さらには自宅で突然死をする人が30%も増加しています。
これは大事なシグナルです。
ここで科学者はしっかりと製薬会社の影響を受けずに事実を明らかにしなければなりません。
もしワクチンと心臓発作の関連が正しければ、
そしてこのまま世界中で強制的に接種が行われるようであれば、
これまでの歴史を顧みても民衆はこれを絶対に許さないでしょう。」と締めくくりました。

■ 私(柳澤)はアメリカの心臓病専門医(Felow of American College of Cardiology, FACC)の資格があります。
専門医から見て、
そもそも「5年間における重症心臓発作の発症リスクがワクチン接種で11%から25%に増加する」というのは
とんでもない数値であり、直ちに真偽を明らかにして、修正しなければなりません。
今後の問題点を下記にまとめました。

[1] この研究から、ファイザーやモデルナのmRNAワクチン接種により
 心臓や他の臓器の血管に炎症、しいては重症の心臓病発作を引き起こす可能性があります。
 そこのことから、既に重症心臓発作を起こしている多くのワクチン接種者の存在を考えなければなりません。
 重症心臓発作では突然死を起こすことがあり、
 原因不明の家庭での突然死の中にワクチンによるものが相当数存在しているかもしれません。
 そして、これは希な現象ではなく、無症状であるがワクチン接種後にかなりの頻度で普通に起きている可能性があります。

[2] この現象はワクチン接種後の一時的なものではなく、
  少なくとも3ヶ月あるいはそれ以上の長期間続く可能性があります。
  従って、3回目のブースター接種によりさらに炎症が悪化し、重症心臓発作を引き起こす危険があります。

[3] 診断或いは未診断の心臓血管疾患を有する中高年だけでなく、
  血管の炎症を有する自己免疫疾患患者、
  さらには冠動脈の病変を有している可能性のある川崎病に罹患している既往のある小児においても、
  mRNAワクチン接種後長期間を経て重症心臓発作を引き起こす可能性があります。

■ 私は心臓病専門医として、ガンドレ−博士の研究結果の再確認がされるまでは、
  ブースター接種を含めてワクチン接種に慎重になるべきだと考えます。
  さらに、小児についてはワクチンを絶対にしてはならないでしょう。
  心臓の血管に病変を起こす可能性のある川崎病の既往のある子どもから成人の方も接種は慎重にすべきでしょう。
  そして、国際オーソモレキュラー医学会が提唱するビタミンC、ビタミンD、亜鉛などによる栄養療法で、
  安全に、そして確実に新型コロナの感染予防と重症化予防を推奨します。

■ ぜひあなたの言葉で周囲の方に情報を伝えてください。そして「いいね」とシェアをお願いします。
麻疹とインフルエンザ。麻疹ワクチン、インフルエンザワクチン。
こんにちは。
麻疹ウイルスに関して、勘違いしていました。
済みません。
中嶋一雄先生にご教示頂きました。
ありがとうございます。

以下の青字は、感染症情報センターにある記載です。
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html

「・・・麻疹とは強い感染力を有する急性熱性発疹性疾患であり、ヒトを自然宿主とする。
原因ウイルスである麻疹ウイルスはParamyxovirus 科Morbillivirus 属に属し、直径100~250nmのエンベロープを有する一本鎖RNAウイルスである。・・・」

「・・・感染症研究所ウイルス製剤部で実施した遺伝子解析の結果、
現在日本で流行しているウイルスは、
WHOの遺伝子型分類によるD3およびD5タイプが主流であることがわかった 。
 ウイルス粒子には6つの構造蛋白が存在し、3つはウイルスRNAとコンプレックスを形成し、他の3つはエンベロープに存在する。エンベロープ蛋白のうち、F(fusion)蛋白とH(hemagglutinin)蛋白がその病原性に大きくかかわっており、F蛋白はウイルスと宿主細胞の膜融合を引き起こし、宿主細胞へのウイルスの侵入を可能にすることが知られている 8)。1980年代の流行から始まったH遺伝子の変異は1990年代になってF遺伝子に及んでいる。最近の流行ウイルスは1950年代の流行ウイルスとの間にH遺伝子で50~60塩基(アミノ酸では16~18カ所)、F遺伝子では30~33塩基(アミノ酸で2~3カ所)に置換が起こっている。H蛋白、F蛋白は感染防御抗体を作らせる蛋白なので、これらの部位での変異を注視する必要がある。幸い、現在までのところ現行ワクチンによる感染防御効果には変化は見られない。・・・」



すなわち、麻疹ウイルスもRNAウイルスでした。
従って変異も結構していますが、幸い、現行のワクチンが継続して有効です。
何故、インフルエンザや新型コロナウイルスのように、
ワクチンが効かない変異株が登場しないのか不思議と言えば不思議です。 (∵)?


今回は、麻疹とインフルエンザの違いと、
ワクチンの有効性の違いを再検討してみます。

まず、麻疹に関する
厚生労働省のサイトhttp://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/
を読んでみました。

それによると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、
平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、
平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。

またウイルス分離・検出状況からは、平成22年11月以降は海外由来型のみであり、
平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、
日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。


つまり、麻疹ワクチンを2回摂取することを徹底した結果、平成22年11月以降は、
日本発の麻疹は消滅したわけで、劇的な効果を示しています。

そして、平成27年3月27日、WHOにより「日本が麻疹の排除状態」にあることが認定されたわけです。

毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、毎年インフルエンザワクチンを多くの日本人が接種していますが、
流行は防げていません。


麻疹とインフルエンザで、何が違うのでしょう?

麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも、IgG抗体は作るけれど、粘膜面のIgA抗体は作れませんので、
粘膜表面での感染防御は困難なのは同一なのに、何故効果にこれほどの差があるのでしょう?

検討してみます。

インフルエンザワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。

従って、インフルエンザウイルスが、
咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)

はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
ワクチンで産生されるIgG抗体は呼吸器粘膜面に滲出して、
細胞外でウイルスと戦うこととなります。

普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、
呼吸器と消化器でだけ生存できて、
血中には入れません。

一方、麻疹は、麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7~14日間程度かかります。
その後カタル期(口腔粘膜症状と37~38度前後の風邪症状)が3~4日間続き、
いったん解熱したあと半日で39~40度の発熱と全身の発疹がでます。

麻疹ウィルスが口腔粘膜から血中に入って全身にばらまかれるので、
カタル期のあと「39~40度の発熱と全身の発疹」が出現すると考えられます。

麻疹ワクチンを接種している場合、麻疹ウィルスが口腔粘膜内に侵入したら、
粘膜細胞外の血液中のIgG抗体が、麻疹ウィルスとの戦いの準備を開始します。
実は、現在のIgG抗体は細胞内では不安定で、
その作用は細胞外の標的に限定されています。

従って、カタル期には、すでに麻疹ウィルスを駆逐すべく、
IgG抗体が活躍の準備をしているので、
血中に入ってもすぐに抗原抗体反応が開始され、
高熱や発疹の発症を予防できる可能性が高いのです。

インフルエンザウィルスと違って発病までが長いし、
血中に入るまでに一定の期間があるので、
粘膜細胞外の血中のIgG抗体が間に合うのです。

この時点で、ほぼ防衛成功と考えられます。

麻疹ウィルスが血中で増えることを防ぐことができれば、
「39~40度の発熱と全身の発疹」が防げる
ので、
感染源となることが激減して、流行もしないと考えられます。


結論です。

1)麻疹ウィルスは血中に侵入して全身に播種されるが、麻疹ワクチン接種によるIgG抗体がそれを防ぐ。従って高熱や発疹が予防できる。それにより発症予防・流行予防が可能である。

2)インフルエンザワクチン接種によるIgG抗体では、感染防御は困難である。インフルエンザウイルスは呼吸器粘膜や腸管粘膜で増殖する。インフルエンザウィルスは血中に侵入できないので、麻疹ワクチンほどのIgG抗体による顕著な効果は期待できない。



江部康二

心筋炎を「重大な副反応」に 厚労省、警戒度引き上げ。コロナワクチン。
こんばんは。
ヤフーニュースに2021/12/3(金)19:54に、
共同通信の記事
『心筋炎を「重大な副反応」に 厚労省、警戒度引き上げ』
①が掲載されました。
そのほか、②③④という情報があります。
心筋炎を、新型コロナワクチンの「重大な副反応」と引き上げたのは正解です。

以下のブログ記事で明らかなように
コロナワクチン。心筋炎で20代男性が2名死亡。
2021年11月14日 (日)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-5790.html

10代未満ではコロナ感染症による死亡率は、ゼロです。
20代でも、コロナ感染症による死亡率は、29411人に1人で、
おそらく何らかの持病があった方と思われます。

これに対して、新型コロナワクチン摂取後心筋炎が死亡された2名の20代男性は
持病なしの健常人です。
例によって、ワクチンとの因果関係不明とされていますが、
心筋炎という希な病気が、ワクチン接種後すぐに、
健康な若者にたまたま自然に発症したというのには無理があり、
ワクチンとの因果関係を疑うのは当然と思います。

データをみると、30歳代より若いと、コロナ死亡率は激減します。
持病がない39歳以下の人は、新型コロナワクチンの接種は不必要です。
30歳代と20歳代では、持病がある人だけが接種すれば良いと思います。
19歳以下も持病がある人だけ接種すればよいと思います。
9歳以下は、死亡率0%ですから、ワクチン接種は不必要と言えます。



【ヤフーニュース。
共同通信。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c737f540fd3ae5a6b170ceb80770c5e1906adb3f
心筋炎を「重大な副反応」に 厚労省、警戒度引き上げ
12/3(金) 19:54配信

 厚生労働省は3日、
米ファイザーと米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチン接種後、
若い男性で通常より高い頻度で報告されている心筋炎や心膜炎の症状について、通常の注意喚起から「重大な副反応」に警戒度を引き上げ、
医師らに報告を義務付けることを決めた。
副反応を分析している厚労省の専門部会で了承された。

 一方で心筋炎などは新型コロナ感染の合併症として起こることもあり、
その頻度はワクチン接種後よりも高いことが分かっています。
そのため厚労省は「接種によるメリットの方が副反応などのデメリットよりも大きい」として引き続き接種を推奨している。】



【また、
地方紙と共同通信のよんななニュースに、以下の記事が掲載されまた。
https://www.47news.jp/relation/2021120401
モデルナ接種で心筋炎に注意喚起 若い男性に症状、厚労省

厚生労働省は15日、10~20代の男性は、
米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチン接種後に心筋炎などの症状が出る割合が高いとして、添付文書を改訂して注意喚起することを決めた。
心筋炎が心配な場合は、1回目にモデルナ製を接種した人が、
2回目に米ファイザー製を選ぶことも認めることとした。】




【一般社団法人日本循環器病学会提出の資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796566.pdf
によれば、

新型コロナ感染症の心筋炎の頻度は、2.3%で
新型コロナワクチンの副反応による心筋炎の頻度は、0.006%です。

新型コロナウイルス感染症の合併症として急性心筋炎が報告され
平均年齢 19 歳の米国のアスリートで新型コロナウイル感染者 1597 人におい
て、2.3%にあたる37 人が無症状あるいは軽症の心筋炎を認めた。

500 万人超が、ファイザー社のの新型コロナワクチン接種済みのイスラエルでは、
心筋炎の報告が275例(頻度0.006%)で、
米国と同様に多くは 2 回目の接種後で、主に 16~19 歳の若い男性に認めた。】




【ヤフーニュースに以下の記事が掲載されました。共同通信の記事です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c1dfd314c26c9d0707cbc35e1f2e5368cb87815f
モデルナ接種、心筋炎で4人死亡 うち2人は20代男性、因果不明
11/12(金) 19:41配信

 厚生労働省は12日に開いた副反応に関する専門部会で、米モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンの接種後、男性4人が心筋炎を発症し死亡したと報告した。うち2人は20代男性で、若い男性へのモデルナ接種を巡っては、心臓の筋肉に炎症が起こる心筋炎などが出る割合が比較的高いとして、厚労省が注意を呼び掛けている。  心筋炎で死亡した事例が報告されたのは、モデルナ製では初めて。接種との因果関係はいずれも評価不能とされた。先行したファイザー製でも死亡事例は13例あり、若い男性に限ると20代の死亡例が1例ある。  
報告によると、死亡したのは20代2人と40代2人。】


江部康二

糖質制限食と塩分摂取。
こんばんは。
今回は、糖質制限食と塩分摂取について考えてみます。

 インスリンは、交感神経を活性化させたり、腎臓でナトリウムの再吸収を促進させます。
ナトリウムと共に水分も再吸収されるので、高血圧の要因となります。
糖質ありの普通の食事をしていると過剰のインスリンが分泌されるので
浮腫みやすく血圧も上昇しやすくなります。

つまりインスリンは体内に水分と塩分を溜め込む作用があるのです。

スーパー糖質制限食を実践すると、インスリン分泌が必要最小限に減るので
ナトリウムと水分は腎臓から排泄される方向にシフトします。
スーパー糖質制限食を開始して、2~3日~数日で、2kgくらい体重が減少することが
よくありますが、これは脂肪が燃えたのではなく水分の移動です。

糖質制限と共に、体に良いと思って『塩分制限』も実践してしまうと、
摂取エネルギーは充分量であっても、
身体の塩分が不足することがあります。
こうなると、だるくなったり、ぼーっとしたり、頭重・頭痛があったり、
ぼんやりしたり、動きが鈍くなったりします。

過去の記事で、
「スーパー糖質制限食で血糖値は改善し体重も改善したが、
身体がだるかったり、動きが悪くなったりした。」
というような訴えがあったら
ほとんどが、『摂取エネルギー不足』であると説明してきました。

しかしながら、摂取エネルギーは明らかに充分であるにもかかわらず、
同様の訴えをする人が散見されるという実態があります。
このようなケースは、『塩分不足』の可能性が高いと思われます。

私自身、以前、塩分制限実験をしたことがあります。
摂取カロリーは普通にして、厳格な塩分制限食(味はほとんどないです)にしたら
ぼーとしてだるくなって集中力が低下しました。

このように考察してくると
糖質制限食の場合は、塩分制限は必要ない可能性が高いです。
また、とくにスーパー糖質制限食実践の場合は
『水分・塩分』が排泄されやすくなるので
しっかり水分補給して塩分も普通に摂るほうが良いと思われます。

塩分制限しなくてよいし、魚貝類や牛・豚・鶏などの美味しい動物性タンパク質も
満足いくまで食べても良いのは、糖質制限食のおおきなメリットと言えます。


江部康二
麻疹ワクチン、インフルエンザワクチンそして新型コロナワクチン。
こんばんは。

RNAウイルスは、非常に変異しやすいので、
ワクチンがすぐに効かなくなります。

α株、β株までは、一定新型コロナワクチンが有効であったようですが、
デルタ株になってからは、効いていません。
まして、オミクロン株には効かないでしょう。

< ワクチン VS RNAウイルス >
の闘いは、後出しじゃんけんが可能な分、ウイルスの圧勝と思います。
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスはRNAウイルスです。
従って、新型コロナワクチンの有効性はあまり期待できないと考えられます。

これに対して、麻疹ウイルスはDNAウイルスです。
DNAウイルスは変異しないので、ワクチンの有効性が持続します。


麻疹ウィルス、ほんのちょっとしたすれ違いくらいで感染するので
すごい感染力です。
空気、飛沫(ひまつ)、接触で感染です。

血中抗体は麻疹ワクチン接種後約2週間から出現しますが、
麻しんの患者と接触して緊急に発症を予防したい場合、
接触後72時間以内に予防接種を受けることで発症を防御できる可能性があります。

ただし、100%ではないので、事前に予防接種を受けておくことが重要です。

さて、麻疹ワクチンは新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンと違って、
明確に感染防御にも流行予防にも有効です。



今回は、麻疹とインフルエンザの違いと、
ワクチンの有効性の違いを検討してみます。

まず、麻疹の厚生労働省のサイト(*)を読んでみました。

それによると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。

またウイルス分離・検出状況からは、平成22年11月以降は海外由来型のみであり、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、
日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。

つまり、麻疹ワクチンを2回摂取することを徹底した結果、平成22年11月以降は、
日本発の麻疹は消滅したわけで、劇的な効果を示しています。

そして、平成27年3月27日、WHOにより「日本が麻疹の排除状態」にあることが認定されたわけです。

毎年、流行を繰り返しているインフルエンザに対して、毎年インフルエンザワクチンを多くの日本人が接種していますが、流行は防げていません。

麻疹とインフルエンザで、何が違うのでしょう?

麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも、IgG抗体は作るけれど、粘膜面のIgA抗体は作れませんので、粘膜表面での感染防御は困難なのは同一なのに、何故効果にこれほどの差があるのでしょう?

検討してみます。

インフルエンザワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。

従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。

普通のインフルエンザウィルス(弱毒型)は、呼吸器と消化器でだけ生存できて、血中には入れません。

鳥インフルエンザの変異した強毒型(今のところなし)が危険なのは、血中に侵入できて、全身にウィルスがばらまかれるからです。

つまり血中に侵入した強毒型インフルエンザウィルスは、脳にも侵入してインフルエンザ脳炎を生じ得るので危険なのです。

従って強毒型インフルエンザウィルスに対しては、IgG抗体をつくる今のインフルエンザワクチンが一定有効な可能性がありますが、普通の弱毒型インフルエンザウィルスには、現行のインフルエンザワクチンは、感染防御に関しては、効果は期待できませんし、流行予防も困難なのです。

一方、麻疹は、麻疹ウイルスへの曝露から、発症まで7~14日間程度かかります。

その後カタル期(口腔粘膜症状と37~38度前後の風邪症状)が3~4日間続き、いったん解熱したあと半日で39~40度の発熱と全身の発疹がでます。

麻疹ウィルスが口腔粘膜から血中に入って全身にばらまかれるので、カタル期のあと「39~40度の発熱と全身の発疹」が出現すると考えられます。

麻疹ワクチンを接種している場合、麻疹ウィルスが口腔粘膜内に侵入したら、粘膜内の体液中のIgG抗体が、麻疹ウィルスと戦いを開始します。

従って、カタル期には、すでに麻疹ウィルスを駆逐すべく、IgG抗体が活躍しているので、血中に入るのを予防できる可能性が高いのです。

インフルエンザウィルスと違って発病までが長いし、血中に入るまでに一定の期間があるので、粘膜細胞内のIgG抗体が間に合うのです。

この時点で、ほぼ防衛成功と考えられます。

麻疹ウィルスが血中に入るのを防ぐことができれば、「39~40度の発熱と全身の発疹」が防げるので、感染源となることが激減して、流行もしないと考えられます。


結論です。

1)麻疹ウィルスは血中に侵入して全身に播種されるが、麻疹ワクチン接種によるIgG抗体がそれを防ぐ。従って高熱や発疹が予防できる。それにより発症予防・流行予防が可能である。

2)インフルエンザワクチン接種によるIgG抗体では、感染防御は困難である。インフルエンザウイルスは呼吸器粘膜や腸管粘膜で増殖する。 インフルエンザウィルスは血中に侵入できないので、麻疹ワクチンほどのIgG抗体による顕著な効果は期待できない。



江部康二



(*)厚生労働症のサイト
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/

I 麻しんに関する基礎知識

I-1 麻しんとはどんな病気ですか?

「麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。

麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。また、麻しんウイルスは、ヒトからヒトへ感染すると言われています。

感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。

近年はワクチンの2回接種が行われ、麻しんに感染する方の人数は減っています。」


Ⅰ-2 麻しんはどうやって予防するのですか?

「麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻しんワクチンが有効な予防法といえるでしょう。また、麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの予防接種をすることも効果的であると考えられています。」http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/

I-3  近年の麻しんの流行はどのような状況ですか?

「麻しんは毎年春から初夏にかけて流行が見られます。過去5年の推移を見ると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。患者発生の中心は0~1歳となった一方で、20歳以上の成人例の割合も増加しています。

またウイルス分離・検出状況からは平成22年11月以降は海外由来型のみであり、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。

平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。

麻しんの流行状況等に関する情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで確認することができます。国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、( http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html)です。」


I-4 なぜ、平成19・20年に10代から20代の人を中心に流行したのですか?

「かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。

10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいます。そのうえ、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人達が蓄積していたものと考えられています。

さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴って、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少しました。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいたことも原因の一つと考えられています。

Ⅰ-3で述べられているように、平成21年以降の10~20代の麻しんは激減し、患者発生の動向は変化しています。」


重症低血糖で搬送、年2万件…薬の誤使用原因か?糖質摂取のせいか?
こんばんは。

医療ニュース m3.com において、2017年8月12日 (土)
重症低血糖で搬送、年2万件…薬の誤使用原因か
という記事が掲載されました。

2015年7月に、
日本糖尿病学会が631施設にアンケートを送付して調査した結果です。


 調査結果をまとめた兵庫医科大学病院の難波光義院長は

「重症低血糖の原因として、インスリンを注射で補充するタイミングや使用量の誤り、
薬の飲み間違いなどが多い。

高齢などで発症リスクが高い患者には、服薬指導に加え、
生活面も含めた指導を行う必要がある」と話している。



ということですが、もう少し整理して、より具体的な方策を立てないと
重症低血糖を減らすことは困難と思います。
ともあれ、インスリン注射かSU剤を内服している糖尿人が、
重症低血糖のほとんどを占めていると思います。
65歳以上の高齢の糖尿人には、SU剤は禁忌と言っても過言ではないと思います。


とくに重症低血糖の起きた2型糖尿病患者では、
HbA1cが7%以下が60%を占めていました。
これは、糖質を普通に摂取して、
血糖コントロールを厳格に行いHbA1cを下げようとすると、
低血糖が増えてしまう
ということを意味しています。

このことは、以下の研究で明らかとなっています。
『血糖コントロール良好を目指してHbA1cを下げるべく厳格に薬物療法を行うと
かえって総死亡率が上昇する』

という信頼度の高いACCORD試験というエビデンスがあります。(☆)

最近では低血糖を起こしにくい血糖降下薬が治療に使われるようになってきています。
私が、最もよく処方するのは「GLP1受容体作動薬」.と」「SGLT2阻害薬」です。
何故なら低血糖を起こしにくいし、効果も高いからです。
あとは「αGI薬」や「グリニド系薬」を、糖質摂取直前に内服して貰います。
勿論、必要に応じて、メトホルミンやDPP-4阻害薬も使用します。
SU剤は、ほぼ使いません。
アクトスは男性で膀胱がん、女性で体重増加が懸念されるので
使いにくい薬です。
新薬のツイミーグ®錠(一般名:イメグリミン塩酸塩)は、
少し様子をみているところです。

1)<インスリン注射>
当たり前のお話しですが、
インスリン注射の単位が多いほど低血糖になりやすいです。
糖質制限食なら、インスリンの単位は必要最小限ですむので
低血糖になりにくいです。
従来の糖尿病食は、高炭水化物食となるので、必要なインスリンの単位数が多くなり
その分、低血糖になりやすいのです。

2)<SU剤>

アマリール、グリミクロン、オイグルコンなどがSU剤です。
SU剤は、多くの場合、「食後高血糖は防げず、空腹時低血糖を生じる」
ということが、CGMの普及により、確認されるようになりました。
それを受けて、現在SU剤の使用は、日本中で激減しています。

SU剤の処方割合は
2005年 50%
2015年 20%


で、半減以下です。
もともとSU剤は、疲れたβ細胞を鞭打つ側面がありますから、
本来、少量投与に越したことはないのです。

そしてもし、グリペンクラミド(オイグルコン、ダオニール:第2世代SU剤)や
第一世代のSU剤(ジメリンなど)を服用しておられる方がいたら、
心筋障害のリスクがあるので即刻中止することをお奨めします。

アマリールやグリミクロン(第3世代)も、
HbA1cの改善効果だけはあるものの、上述の様に
食後高血糖をマッチング良く防ぐことができないことと、
空腹時には低血糖を招きやすい欠点が、CGMにより明らかとなってきました。
SU剤は12~24時間と作用時間が長いのも低血糖になりやすい理由の一つです。

3)<糖質制限食で低血糖予防>
糖質制限食なら、99%、SU剤は不必要です。
そもそも、高齢者の糖尿人には、低血糖リスクの高いSU剤は
基本的に処方しないほうが無難です。
それなら、経口糖尿病薬による低血糖発作は、激減すると思います。
同様に、インスリン注射をしている場合も、単位が少ないほど
低血糖発作は起こしにくいです。
糖質制限食なら、従来の糖尿病食に比し、食前のインスリン注射は1/3以下となりますので、
低血糖発作のリスクはおおいに減少します。


江部康二

(☆)ACCORD
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group, , Miller ME, Byington RP, Goff DC, Bigger JT, Buse JB, Cushman WC, Genuth S, Ismail-Beigi F, et al.: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.