fc2ブログ
糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない変化。高LDL血症。
こんにちは。

糖質制限食実践中に好ましくない症状・変化が出現することがあります。
「全身倦怠感」「こむら返り」「高尿酸血症」「高LDLコレステロール血症」
「便秘」「高血糖の記憶」

などです。

これらのほとんどは予防あるいは対処可能なので、
その方策などを説明しようと思います。
今回は、高LDLコレステロール血症です。

<高LDLコレステロール血症>


日本動脈硬化学会のガイドラインにおいて、
総コレステロール(TC)は評価項目から外れています。
評価対象は、HDLコレステロールとLDLコレステロールです。
糖質制限食で、HDLコレステロールは増加するので、良いことです。
LDLコレステロールに関しては、<低下・不変・増加>の3パターンがあります。
何故3パターンあるのかを突き止めるために、
まずはコレステロールの成り立ちを考えてみます。

コレステロールは、生体のあらゆる細胞膜の構築に必須の物質であり、
肝臓で合成し腸肝循環によって制御・調節されています。
このように、コレステロールは、人体にとって必要不可欠な、
重要な構成成分の一つです。
ヒトだけではなく、約2億2500万年前に哺乳類が誕生して以来、
生命現象の根幹をなす細胞膜などの原料として一貫して利用されてきたのです。
そのため血清コレステロール値は、
摂取された食物のコレステロールが少ない場合は肝臓での合成が高まり、
一方、摂取コレステロールが多い場合は、肝臓での合成が徐々に減少して、
一定量を必ず確保するよう調整しています。

例えば玄米菜食の実践により
「コレステロールを食事からあまりとらない食生活」だったとすれば、
肝臓でのコレステロール合成能力はかなり高まっています。

玄米菜食的な食生活をしていて糖尿病を発症した人が、
糖質制限食を開始して食事からコレステロールがたくさん入ってきたら、
「肝臓のコレステロール合成増強 + 食事からのコレステロールの増加」
となりますので、普通の食事だった人に比し、
血清コレステロールが高値となりやすいです。

この場合、基準値(140mg/dl未満)だったLDLコレステロール値が、
200mg/DL超えなどに一旦上昇します。
総コレステロール値は、300mg/dlを超えてきます。

しかし、一旦上昇したコレステロールも、
肝臓が徐々にコレステロール産生を調整するので、
半年、1年、2年或いは数年単位で基準値に落ち着いてきます。

なお、糖質制限食実践でLDLコレステロール値が上昇した場合、
HDLコレステロールが上昇して、60mg/dl以上になり、
空腹時中性脂肪は改善して、80mg/dl以下になるので、
悪玉の小粒子LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールは、
ほとんどないので安心です。
糖質制限食実践でLDLコレステロール値が上昇した場合は、
肝臓から末梢組織へコレステロールという細胞膜の原料を運んでいく
標準の大きさの善玉のLDLコレステロールなので心配ないのです。

どうしてもLDLコレステロール高値が気になる人は、
ゼチーアが食材から体内へののコレステロール吸収を減らすので、
しばらくの間、内服するのもありと思います。
ゼチーアはスタチンよりは副作用が少ないです。

もともと卵とか肉とかコレステロールを多く含むものをよく食べていた人は、
糖質制限食を実践しても血清コレステロール値はあまり変化がないと思います。

このように糖質制限食開始前の食生活において
コレステロールをどの程度摂取していたかで、
開始後のコレステロール値が、かなり影響を受けると考えられます。

いずれにせよ、スーパー糖質制限食を長期間実践している人は、
皆さん、LDLコレステロール値もHDLコレステロール値も
空腹時忠誠脂肪値も基準値となっていくことがほとんどです。


江部康二
糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない変化。高尿酸血症。
こんにちは。
糖質制限食実践中に好ましくない症状が出現することがあります。
「全身倦怠感」「こむら返り」「高尿酸血症」「高LDLコレステロール血症」
「便秘」「高血糖の記憶」

などです。
これらのほとんどは予防あるいは対処可能なので、
その方策などを説明しようと思います。
今回は、高尿酸血症です。


<高尿酸血症>


糖質制限食実践中に生じることがある好ましくな変化について、
今回は、「高尿酸血症」
を取り上げます。

高尿酸血症もスーパー糖質制限食実践中によく見かける所見の一つです。
尿酸(UA)値に関してスーパー糖質制限食開始後<減少、不変、増加>
の3パターンがあります。
当初は理由がわからず、経過観察が一般的対応策でしたが、
殆どの場合、自然に基準値になっていきました。

自らが痛風患者であり、痛風専門医でもある、
元鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生によれば、
食事よりストレスや肥満のほうが、尿酸値への影響が大きいとのことです。(*)

尿酸値を確実に上昇させるのは、重要なものから順番に
1、ストレス
2、肥満
3、大量の飲酒
4、激しい運動
5、プリン体の摂りすぎ

です。

納先生の指摘されているストレスは、精神的なもののようです。
これらの5項目に加えて、私の考えでは、
特殊例として肉体的ストレスである
「断食や極端な低カロリーのときは尿酸値上昇」というのがあります。
高雄病院では、1984年以来、絶食療法(断食療法)を実施しています。
最近はスーパー糖質制限食で絶食療法に匹敵する効果が得られるので、
入院して絶食療法をする患者さんは、まれとなりました。

一方、1984年から10数年間は年間100人以上、絶食療法を行ってきました。
トータルすれば2000人以上ですね。
そして絶食療法を行った場合、殆ど全ての人において、
尿酸値が急上昇しました。

尿酸(UA)の基準値は3.4~7.0mg/dlです。
もともと基準値内だった人が、
絶食療法中に、8~9~11mg/dlと急上昇しました。
幸いそれで、痛風発作を起こす人は、ありませんでした。

私自身の患者さんで、スーパー糖質制限食実践後、
本来正常だった尿酸値が、基準値を超えて上昇した人が、
当初の段階で、約10名くらいおられたのですが、
絶食療法の経験を思い出して、
きっちり問診したら、
結局全員が摂取エネルギー不足だったことが判明しました。
それで、しっかり脂質・たんぱく質を摂取してエネルギーを確保したら、
速やかに高尿酸血症は改善しました。

その後、スーパー糖質制限食を実践するときは
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>を、
確保するように指導してからは、高尿酸血症はほぼなくなりました。

ちなみに、私は高たんぱく食で、140~160g/日のたんぱく質を摂取しています。
すなわち、
超高たんぱく食(2.5g/kg)ですが、摂取エネルギーが充分確保されているので、
尿酸値は、何回測定しても、2.7~3.7mg/dlくらいです。
またスーパー糖質制限食実践で、酸化ストレスが極めて少ないので
抗酸化作用のある尿酸が低いという見方もできます。

尿酸値に関しては体質もあるていど関係していると思いますが、
急に上昇した場合は、摂取エネルギー不足がポイントです。
もし、スーパー糖質制限食を開始して、
今まで正常値だった尿酸値が急に上昇してきたときは、
摂取エネルギー不足を考慮していただけば幸いです。


(*)参考
「痛風はビールを飲みながらでも治る」(小学館文庫)2004年
鹿児島大学病院内科教授、納(おさめ)光弘先生 著



江部康二
食品別糖質量ハンドブック 江部 康二 (監修) 宝島社 2020/9/10刊行。
こんばんは。

ダイエット・糖質制限に必携! 食品別糖質量ハンドブック 江部 康二 (監修)
宝島社 2020/9/10
handbook.jpg
https://www.amazon.co.jp/dp/4299008561/


が刊行されました。
2012年11月に『食品別糖質制限ハンドブック』(洋泉社)を上梓して以降、
累計約17万部以上となっています。
2015年12月に日本食品標準成分表が改訂され、七訂となりました。
15年ぶりの大幅な改訂で、項目が200増え、
成分表のデータもかなりの変更がありました。
『食品別糖質量ハンドブック』もこれに対応して、収録食品の数も増やしました。

今回、版元の合併で宝島社の刊行となる本書では、さらに内容を追加しています。
この間、米国糖尿病学会は、2013年10月に糖質制限食を正式に容認し、
2019年4月には、『エビデンスが一番豊富なのは、糖質制限食である』と明言しました。

日本でも、近年、飲食業界において、
糖質制限食がおおいにクローズアップされてきました。
今や糖尿病や肥満・メタボだけでなく、
健康のためにもよい人類の正解の食事であり、糖質制限食の時代到来と言えます。

以下の青字は、本書の「はじめに」です。


はじめに

私が理事長を務める高雄病院は1999年、
日本で初めて糖質制限食を糖尿病治療に導入しました。
以来、高雄病院では入院患者と外来患者を合わせると
5000人以上の、糖質制限食による劇的な血糖値改善の治療実績を持っています。
そうした中で、手近に食品別の糖質量がひと目でわかる本があれば
というニーズに応えようと、
2012年11月に『食品別糖質制限ハンドブック』(洋泉社刊)を刊行し、
おかげさまで読者の皆さまの大きな支持を得て、版を重ねることができました。
現在、発行部数は17万部に達しようとする勢いです。 
この間の2015年12月に日本食品標準成分表が改訂され、七訂となりました。
15年ぶりの大幅な改訂で、項目が200増え、
成分表のデータもかなりの変更がありました。
『食品別糖質ハンドブック』もこれに完全に対応して、
収録食品を見直すとともに、収録食品の数も1200に増やしました。
今回、版元の合併で宝島社の刊行となる本書では、さらに内容を追加しています。
身近な食品や料理の糖質・カロリー・たんぱく質・脂質・塩分量などが
写真入りでわかるように工夫されている本書は、
糖質制限食を指導する立場の医師・栄養士はもちろん、
糖質制限食実践中の方々の強い味方となってくれると思います。 
近年、糖質制限食は社会的に広く認知されるようになり、
糖尿病、メタボリック・シンドローム、肥満の患者さんだけでなく、
健康のために実践されている方も多くなっています。
2013年10月に米国糖尿病学会が「栄養療法に関する声明」において、
地中海食やベジタリアン食、低脂質食などとともに糖質制限食を正式に受容したのは、
糖質制限食の普及にとり大きな追い風となりました。おかげで日本においても医師の支持がかなり増えてきました。 
糖質制限食というと、
現代の普通の食事である高糖質食と比べて特別な食事と思いがちですが、
実は糖質制限食こそが人類本来の食事なのです。 
諸説ありますが、人類がチンパンジーと分かれて誕生したのが約700万年前、
農耕がはじまったのが約1万年前です。
農耕がはじまる前は、「狩猟」「採集」「漁労」で食べものを手に入れていて、
穀物はなかったのですから、人類皆糖質制限食といえます。
すなわち、糖質制限食は約700万年間の人類の食事であり、
人類の健康食といえるのです。 
読者の皆さまには、本書を参考に、おいしく楽しく末永く糖質制限食を実践されて、
健康を保っていただければ幸いです。

2020年8月
高雄病院理事長 江部康二
<独自>塩野義の国産ワクチン 年明け6千万人分供給可能。朗報。
こんにちは。
ヤフーニュースに、6/26(土)、以下の産経新聞の記事が掲載されました。
これは朗報です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/599e924869a8e0422e976f933d39f92d578dc9e1
<独自>塩野義の国産ワクチン 年明け6千万人分供給可能


この塩野義のワクチンは「遺伝子組み換えタンパクワクチン」と呼ばれています。
新型コロナウイルスの遺伝子の一部を基に昆虫細胞でタンパク質を培養して作ります。
すでにインフルエンザワクチンなどで実績がある技術なので安心です。

スパイクタンパクが関与していないのも、大きな安心材料であり、
はやく実用化されれば、副反応や問題点の多い「海外の遺伝子ワクチン」に
取って代われるものと思います。


ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチン
アストラゼネカ社とジョンソンエンドジョンソン社のウイルスベクターワクチンは、
いずれもスパイクタンパクが関与しています。
またそれ以外にも問題点があります。

ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンは
mRNAワクチン接種によって抗原提示細胞でスパイクタンパクが生成され、
結果的に生体内にスパイクタンパク質に対する特異抗体が誘導されます。

アストラゼネカ社とジョンソンエンドジョンソン社のウイルスベクターワクチンは、
病原性のないアデノウイルスをベクター(運び屋)として利用しますが、
内部に新型コロナウイルスのスパイクタンパクの遺伝子全体が組み込んであり、
それに対して特異抗体が誘導されます。
mRNAワクチンもウイルスベクターワクチンも遺伝子ワクチンです。
これらのワクチン、1年以内とごく短期間で、つくられ便利なように思えますが、
問題点が複数あります。

<新型コロナウイルス遺伝子ワクチンの問題点>
①人類初の遺伝子ワクチンで、人類が未経験のワクチンである。
②スパイクタンパクが人体にどのくらいとどまるのか不明である。
③スパイクタンパクが抗体産生以外に、人体にどのような作用を有すのか不明である。
④2021年2月17日から6月13日までに報告されたワクチン接種後死亡者は
 合計277 件で、その多くが、脳出血、脳血栓、心疾患など心血管疾患で死亡している。
 報告されていない接種後死亡者もあると思われる。
 スパイクタンパクが心血管系に障害を与えて死亡した可能性がある。
⑤長期的安全性は全く担保されていない。
⑥新型コロナに感染したときにADE(抗体依存性免疫増強)が生じる可能性がある。
⑦1年以内で作られており、過去にない短期間の製造である。
⑧2021年、2022年は本来臨床試験の段階である。



江部康二

糖質制限食実践中に生じる好ましくない症状。高血糖の記憶。検査と対処。
こんにちは。

糖質制限食実践中に好ましくない症状が出現することがあります。
「全身倦怠感」「こむら返り」「高尿酸血症」「高LDLコレステロール血症」
「便秘」「高血糖の記憶」

などです。

これらのほとんどは予防あるいは対処可能なので、
その方策などを説明しようと思います。
今回は、糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状・変化「高血糖の記憶」についてです。

「高血糖の記憶」そのものは、消えないので対処しようがないようにも思えますが、
糖尿人においては、前もって、頸動脈エコーや心臓の検査などをしておくことは大切です。
例えば、高血糖の記憶により冠動脈狭窄などがあった場合、
検査で発見されれば、心筋梗塞を起こす前にステントを入れて予防することが可能です。

<高血糖の記憶>

糖尿病血管合併症のメカニズムを特徴的に説明する、
高血糖の記憶(hyperglycemic memory)と呼ばれる概念があります。
「高血糖の記憶」とは、過去の高血糖レベルとその曝露期間が生体に記憶され、
その後の血管合併症の進展を左右するという考え方です。

ヒトの糖尿病において、この「高血糖の記憶」の存在を示すエビデンス(証拠)として、
米国の1型糖尿病患者の大規模臨床研究・DCCTの
フォローアップ試験であるEDIC-DCCTの報告があります。
DCCTでは、1型糖尿病患者を従来の通常療法群と、
より厳格に血糖管理を行う強化療法群に分け、平均6.5年間追跡しました。
その結果、通常療法群に比べ強化療法群で平均HbA1c値が1.9%低下
し、強化療法群で血管合併症の進展リスクが大幅に減少しました。(*)

同研究終了後に行われたEDIC-DCCTでは、通常療法群にも強化療法を実施し、
両群をさらに平均11年間追跡しました。
つまり「継続的な強化療法群」と「通常療法→強化療法群」の2つのグループの比較が、
DCCT終了後11年間行われたことになりますね。
その結果、開始から3~4年で両群の平均HbA1c値がほぼ同等となったにも関わらず、
11年間の心筋梗塞、脳卒中、心血管死のリスクは
「継続的な強化療法群」の方が
やはり低かった(相対リスク57%低下)ことが報告されたのです。(**)

すなわち、糖尿人において一定期間血糖コントロールが不良であれば、
高血糖の記憶が「借金」のように生体内に残り、
その後良好なコントロールが得られても、
血管合併症リスクの差は縮まらないことが示されたわけです。
この借金の正体が、組織沈着「AGEs」ではないかと言われています。
まだ仮説ではありますが、組織に沈着したAGEsが血管を傷害し続け、
動脈硬化の元凶となり「高血糖の記憶」を最もよく説明するとされています。(***)
高血糖の記憶・借金を残さないためには、
糖尿病発症の初期の段階から血糖コントロールを保つことが大切です。
当然、早ければ早いほどいいわけです。

体内で蓄積されるAGEsの量について考察してみると、
「AGEsの蓄積量=血糖値の高さ×持続期間」で予測できると思われます。
糖尿人の皆さん、カロリー制限食(高糖質食)では必ず、
食後高血糖が生じAGEsも蓄積していき、将来に借金を残します。
是非、糖質制限食で速やかな血糖コントロールを目指して下さいね。

「高血糖の記憶」が存在すれば、例え糖質制限食で血糖コントロール良好になっても、
半年後や1年後や2年後に、過去の借金の動脈硬化のために、
狭心症や心筋梗塞など糖尿病合併症を起こしえるということです。


(*)N Engl J Med 1993; 329: 977-986
(**)N Engl J Med 2005; 353: 2643-2653

(***)AGEs
ブドウ糖や果糖は生体内で蛋白質にへばり付く性質を持っています。
血糖は、糖化反応により血管壁のコラーゲンなど様々なタンパク質に付着します。
糖とタンパク質の結合物は変性してアマドリ化合物となります。
ここまでが糖化反応系の初期段階で、HbA1cやグリコアルブミンも
このアマドリ化合物の一種です。
この段階だとまだ分解・代謝が可能です。
このアマドリ化合物は糖化反応の後期段階になると、さらに変性してAGEsとなります。
Advanced Glycation End-productsの頭文字をとってAGEsと呼ばれます。
日本語では終末糖化産物と訳されています。
AGEsは分解・代謝は困難であり、消えない借金となります。
AGEsは、糖尿病合併症を引き起こす、重大な原因の1つです。


江部康二
オリゴ糖とは?血糖値上昇は?フラクトオリゴ糖は血糖値上昇なし。
こんにちは。
今回は、オリゴ糖について、考えてみます。
オリゴ糖は、少糖類と呼ばれることもあります。
オリゴとは少ないという意味です。

明確な定義はないのですが、一般には、
単糖類が3~20分子縮合して1分子になったものをオリゴ糖と言います。(☆)

中でも、
フラクトオリゴ糖


乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)

は、
血糖値とインスリン値にほとんど影響を与えません。


ラフィノース、キシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖は
一定難消化性ですが、少し血糖値を上げる可能性があります。

イソマルトオリゴ糖は、あるていど血糖値をあげると思います。



ラフィノースは、 消化されにくく、低カロリーで、腸内のビフィズス菌の増殖を促進する働きがあり、
エネルギー換算係数は2kcal/g です。


キシロオリゴ糖も、消化されにくく、低カロリーで、腸内のビフィズス菌の増殖を促進する働きがあり、
エネルギー換算係数は2kcal/g です。


ガラクトオリゴ糖も、消化されにくく、低カロリーで、腸内のビフィズス菌の増殖を促進する働きがあり、
エネルギー換算係数は2~3kcal/g です。


フラクトオリゴ糖は、摂取しても、血糖値を上昇させず、インスリンの分泌も促しません。
消化酵素によって消化されにくいため、体内に吸収されることもほとんどなく
低カロリーです。血糖値は上げませんが、腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸を作ると思われ、
エネルギー換算係数は約1.6~2.2kcal/g です。


乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)も、 消化されにくく、摂取しても血糖値の上昇や、
インスリン分泌にほとんど影響を与えません。
また、腸内のビフィズス菌の増殖を促進し、便の性状を改善する働きがあります。
エネルギー換算係数は2kcal/g ですので、やはり短鎖脂肪酸のエネルギーと思います。


イソマルトオリゴ糖は、
他の難消化性のオリゴ糖に比べると小腸内ではある程度消化されますが、
でん粉などに比べると消化されにくいです
エネルギー換算係数は4kcal/g で、ビフィズス菌の餌になります。
小腸であるていど消化されるので、血糖値もあるていど上昇すると思います。



(☆)

健康増進法における栄養表示基準では栄養成分表示を行う場合、基本表示は

<エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム>

の5成分表示とされています。

「炭水化物、糖質、糖類」を整理すると下記の如くにまとめることができます。

栄養表示基準上はたんぱく質や脂質、灰分(ミネラル分)のいずれにも分類されないものは炭水化物に計算。

①炭水化物=糖質+食物繊維
②糖質=糖類+糖アルコール+三糖類以上+合成甘味料
③糖類=単糖類+二糖類

*単糖類=ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど
*二糖類=ショ糖、麦芽糖、乳糖など
*三糖類以上
 1)オリゴ糖:単糖類が3~20分子縮合して1分子になったもの
 2)多糖類:単糖類、数百~数千分子が縮合して1分子になったものでんぷん、デキストリンなど)

*糖アルコール=エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなど
*合成甘味料=アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、アドバンテーム



江部康二
糖質制限食実践中に生じることがある好ましくない症状とその解決
こんにちは。

糖質制限食実践中に好ましくない症状が出現することがあります。
「全身倦怠感」「こむら返り」「高尿酸血症」「高LDLコレステロール血症」
「便秘」「高血糖の記憶」

などです。

これらのほとんどは予防あるいは対処可能なので、
その方策などを説明しようと思います。
今回は、「便秘」についてです。


<便秘>


糖質制限食と便通に関してはよく質問があります。
過去、外来患者さん・入院患者さん・ブログ読者さんから、
それぞれいろんな情報をもらってきました。
個人差があり、何種類かのパターンがあります。

Aさんは、3日に一度ひどい腹痛・下痢だったのが、
糖質制限食の実践により見事に改善したそうです。

Bさんは、ひどい便秘だったのが、毎日便通があるようになったそうです。

Cさんは、糖質制限食を始める前は毎日あった便通が、
糖質制限食を始めて10日目くらいから、便秘ぎみになったそうです。
でも
「野菜をよく噛むようにして多めに摂って、
1ヶ月目くらいから少しずつ改善し、3ヶ月目からは、快便」
とのこと、良かったです。


さて、糖質制限食により、下痢が治った人、便秘が治った人、
初期便秘になった人、三者三様の変化がでました。

私自身も、当初の三ヶ月間、普通の便の時と、便秘気味になったり、
逆に急に下痢したりと定まらなかったのですが、
四ヶ月目くらいから快便となり安定しました。

今までと全く異なる食生活になるので、
腸内細菌が安定するまで約2~3割程度の人に便通の変化が起こるようです。
一旦便秘気味になったとしても、糖質制限食で代謝全てが改善するので、
しばらく経過したらCさんのように、便通も好調になることがほとんどです。

高雄病院にコントロール・教育入院された、
1500名以上(2001年~2020年)の糖尿病患者さんの場合は、
約7~8割の人は便通に特に問題はありませんでした。
残りの2~3割くらいに入院中に便秘気味になる人がありました。

入院中、ダイエット希望も兼ねて、
女性で1200kcal/日ていどに低めのエネルギー摂取だと、
運動もあまりしないこともあり、便秘しやすいようです。
単純に低カロリーで食事摂取量が少ないと便秘しやすいことがあります。

入院中、女性で1600kcal、男性で1800kcal/日くらいにしていくと、
便通もましになることが多いです。
入院中の給食のエネルギーは、
予算上あまり多くできないという事情があるので退院したら、
日常の摂取量に増やしてOKです。
<推定エネルギー必要量>が参考になります。

外来患者さんでは、便秘の訴えはそれほど多くありません。
運動量にもよりますが、 糖質制限食として、
厚生労働省のいう<推定エネルギー必要量>を目安に、
身体活動レベルが低い人でも

男性:2100 ~2300kcal/日
女性:1650~1750 kcal/日 日


くらいは食べた方が、便通には良いと思います。

肉類や魚貝類や豆腐などと共に、
Cさんの如く野菜や海藻や茸をたっぷりよく噛んで摂取するのが、
食物繊維も補充できて便通のコントロールには良いように思います。


江部康二
「ミネルスダイナー」プチ糖質制限食応援プラン7days。ご紹介。
こんにちは。
今まで私が監修する「ミネルスダイナー」の糖質制限OK食品を
私の人体実験を経て、いろいろ本ブログで紹介してきました。

株式会社フォワードはサラヤグループで新たに誕生した
食品を専門に取り扱う会社です。
ミルネスダイナーは株式会社フォワードが運営するECサイトです。

本日はプチ糖質制限食応援プラン7daysのご紹介です。
今回もミルネスダイナーから私の読者の皆さん専用のクーポンもあるそうです。
詳しくは、末文青字のミルネスダイナーのお知らせを見て頂ければ幸いです。

基本的にはスーパー糖質制限食推奨が私の立場なのですが、
今回は、プチ糖質制限食を実践される人への応援プランです。

例えば、スーパー糖質制限食で目標の減量に成功したあと、
プチ糖質制限食でそれを維持する場合などにお奨めです。
プチ糖質制限食では、夕食はキッチリ、糖質20g以下の糖質制限食ですが、
朝食と昼食は、糖質40gくらいの緩い糖質制限となります。

糖尿病の人には、1回の食事の糖質量40gはお奨めできませんが、
ダイエット目的なら、大丈夫です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
プチ糖質制限食応援プラン7days
https://milnesdiner.jp/goods/index.html?ggcd=C210526

■セットについて
プチ糖質制限食は基本、「1食は主食抜き」にする糖質制限食ですが、
他の2食もできるだけ糖質は抑えることが推奨されています。

その2食の主食を低糖質主食などに代替して
しっかりとプチ糖質制限食を実行できるように考えた応援セットです。

江部先生推奨の低糖質スープや糖質を抑えたお菓子も含まれているので
無理なくプチ糖質制限食をしていただけるセットとなってます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


江部康二


☆☆☆
以下の青字の記載は、ミネルスダイナーからのお知らせです。

低糖質食品をメインに販売を行っている
「ミルネスダイナー」(https://milnesdiner.jp/)です。
今回は江部先生ブログの読者様に江部先生にご紹介頂いた
「プチ糖質制限食応援プラン7days」と「糖質制限入門セット」のクーポンをプレゼントいたします。

◆対象商品お買い上げで使える500円オフクーポン◆
【対象商品】
プチ糖質制限食応援プラン7days
https://milnesdiner.jp/goods/index.html?ggcd=C210526
糖質制限入門セット 
https://milnesdiner.jp/goods/index.html?ggcd=drbeginnersset
【クーポンコード】
tu2khkJGDK
【クーポン有効期限】
2021/07/09まで

ご購入手続きのお支払い方法の画面にてクーポンコードをご入力する欄がございますので、
上記のクーポンコードをコピーして貼り付けて「適用」ボタンを押してください。

※クーポンご使用のご注意
・指定対象商品をご購入いただいた方のみご利用いただけるクーポンです。
・期間中、お一人様、1回限りご利用いただけます。他のクーポンと併用はできません。
・商品のキャンセル、返品等に伴う再発行・返金・換金は受け付けておりません。

皆様の糖質制限食のお手伝いができましたら私共も嬉しいです。
今後もミルネスダイナーをよろしくお願いいたします。
糖尿病発症に到るプロセス。
こんにちは。
今日は、糖尿病発症に至るプロセスを考察してみます。


<糖尿病発症に到るプロセス>

1) 正常型→IGT→糖尿病 

2) 正常型→ IGT→IFG/IGT→糖尿病

3) 正常型→IFG→IFG/IGT→糖尿病 
 

糖尿病発症に到る流れとしては、上記1)2)3)の3つのパターンがあります。

1)の場合は、既に糖尿病を発症していても早朝空腹時血糖値は正常で健診で見逃されるので、注意が必要です。
2)の場合は、IFG/IGTの段階で、通常の健診でもチェックできます。
3)の場合も通常の健診でチェックできますが、パターンとしては少ないです。

日本人では、IGTや200mg/dl以上の食後高血糖が数年から10年続いて、初めて早朝空腹時血糖値が110mg/dlを超えることが多いとされています。

つまり1)のパターンが多くて、3)のパターンは少ないのですね。

従いまして、一般的な健康診断の早朝空腹時血糖値で、糖尿病の早期診断をするのは、大いに無理があります。

そもそも日本人ではIFG単独の例は、かなり少ないと考えられます。

1)2)3)どのパターンでも、最終的には、IGTを経て糖尿病型になると考えられます。
IFGからいきなり糖尿病型になるというのは、少ないと思います。

<糖尿病早期発見のためには>

従って、なんとかIGTの段階(糖尿病発症前)でチェックできれば、治療的には大変役立ちます。

そのためには、75g経口ブドウ糖負荷試験が一番確実です。

しかし、かなり面倒で手間暇がかかりますから、一人前のご飯やパンを食べ始めて60分後の血糖値、あるいは60~90分後の尿糖を調べれば簡便です。

1時間値が180mg/dlを超えていると、2時間値が140mg/dl未満で正常でも、将来糖尿病になりやすいので注意が必要なのです。

尿糖が陽性だと、ピークの血糖値が180mg/dlを超えている可能性が高いのです。

ともあれ、IGT、IFG、IFG/IGTの段階で発見できればおおきなアドバンテージですね。

この段階でなら、緩やかな糖質制限食でも、糖尿病発症は防げると思いますよ。

勿論、すでに糖尿病と診断された人は、スーパー糖質制限食が最適です。

<日本人と糖尿病発症パターンと欧米人の糖尿病発症パターンは異なる>

糖尿病は、インスリン作用不足(インスリン分泌不足+インスリン抵抗性)がベースにあり、発症します。

日本人では、インスリン分泌不足が主で、インスリン抵抗性が従と言われています。

IGTの段階で、まずインスリン追加分泌が不足、あるいは遷延しています。

それが数年以上続いて、インスリン基礎分泌も不足してきたら、IFGも合併してきます。
発症時の平均BMIは24~25くらいです。

一方、欧米人では、インスリン抵抗性が主で、インスリン分泌不足が従とされています。
発症時の平均BMIは31~32くらいで、かなりの肥満です。

この場合、インスリン分泌能力はまだあるけれど、効きが悪い(インスリン抵抗性)ため高血糖となります。

そうすると、インスリン抵抗性のため、基礎分泌のインスリンの量では早朝空腹時血糖値がやや高いけど、追加分泌は大量に出せるので食後高血糖は防いでいるというIFGの人が、欧米人では日本より高率に存在する可能性があります。

日本人でも肥満が目立つ人は、インスリン抵抗性が主の欧米パターンの糖尿病発症もありえます。

この場合、早期に発見できれば、インスリン分泌能力は残っているので、肥満が改善してインスリン抵抗性が改善すれば、糖尿病がほぼ治ることもあり得ます。


☆☆☆ 参考

A) 正常型
「空腹時血糖値が110mg/dl未満かつ
 120分後血糖値が140mg/dl未満」を満たせば正常型。

B) 境界型

正常型にも糖尿病型にも属さない場合を言う。
具体的にはWHO分類のIGT、IFG、IFG/IGTがある。

1) 2時間値が140-199mg/dlとなる耐糖能異常であるIGT (Impaired Glucose Tolerance)
IGT単独なら早朝空腹時血糖値は110mg/dl未満で正常である。

2) 空腹時血糖値が110-125mg/dlとなるIFG (Impaired fasting glycaemia)
IFG単独なら75gOGTTにて2時間値は140mg/dl未満で正常である。

3) 両者の合併であるIFG/IGT

の3つのパターンがある。

C) 糖尿病型

①「空腹時血糖値が126mg/dl以上または120分後血糖値が200mg/dl以上」
   を満たせば糖尿病型。

② 随時血糖値200mg/dl以上は糖尿病型

③ HbA1c≧6.5%は糖尿病型

1型糖尿病と食事療法 その2
こんにちは。
今回の記事は、1型糖尿病と食事療法 その2です。

成人で糖質制限食がつらくなければ、
バーンスタイン医師と同様にスーパー糖質制限食が、一番のお奨めです。

人類約700万年間の歴史で、農耕以前の700万年は、人類みんな糖質制限食ですので、
本来の食生活に戻るということです。

スーパー糖質制限食だと、「毎食前の超速効型インスリン(追加分泌インスリンの代わり)」は量的に1/3以下に減らせることが多いです。

「約24時間持続型インスリン(基礎分泌インスリンの代わり)」は同量の場合もあれば、
1/2程度まで減らせることもあります。 

ただ1型糖尿病は小児期の発症が多く、学校での給食等もあり、
糖質制限食が困難な場合もあります。
その場合は糖質管理食で良いと思います。
糖質管理食では、摂取する糖質量に応じて、食前のインスリンの単位を調整します。

小児の1型糖尿病は、家にいる時は、糖質制限食でインスリンの量を減らす、
給食時はインスリンの量を増やして糖質管理食的に摂取する、
というようなパターンも有効かと思われます。

インスリンの量は、少なくてすむほど血糖コントロールも良くなりますし、
身体への影響は少ないので、工夫してみる価値はあるでしょう。
過剰のインスリンは酸化ストレスとなり、
がん、老化、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などのリスクとなります。

カロリー計算だけに頼って、インスリンの量を決めるのは、
食後血糖値の予測が不可能ですので危険です。

1型糖尿病は、血糖値が乱高下するというように言われていますが、
これは血糖値を直接上昇させる糖質摂取量の計算をしないからそうなるのです。

糖尿病専門医の先生方も1型糖尿病患者さんに対して、
血糖値乱高下を避けるために糖質制限食は無理でも、
せめて糖質管理食は導入して欲しいものです。


正常人やインスリン分泌能が残っている糖尿人の場合は、
摂取後血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、
糖質はほぼ100%血糖に変わります。
タンパク質や脂質は直接血糖値に影響を与えることはありません。

しかし、1型糖尿人で、内因性インスリン分泌がゼロの場合、
タンパク質摂取によるグルカゴン分泌で糖新生がおこり、
間接的に血糖値が上昇します。

正常人やインスリン分泌能が残っている糖尿人の場合は、
タンパク質摂取により、
インスリンとグルカゴンが同時に分泌され効果が相殺されるので血糖値は上昇しません。

1型糖尿人でも、内因性インスリンがある程度残っている場合は、
タンパク質は血糖値に影響を与えない場合が多いです。



バーンスタイン医師によれば、通常の64kg程度の成人で、
1gの糖質が1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
体重が32kg程度の小児なら、1gの糖質が10mg血糖値を上昇させます。

通常の64kg程度の成人で1gのタンパク質が1型糖尿人の血糖値を0.93mg上昇させます。32kg程度の小児なら、1gのタンパク質が1.86mg血糖値を上昇させます。

摂取する糖質のグラム数を計算して、
血糖値がどのくらい上昇するかを予測して、
それに見合う超速効型インスリンを食前に打つのが、糖質管理食です。

2型の場合は糖質の計算だけで充分なのですが、
1型の場合は、タンパク質の摂取量の計算も必要なことがあります。
糖質の計算だけで血糖コントロールが上手くいかないときは、
タンパク質の計算も試してみましょう。


江部康二
1型糖尿病と食事療法 その1
こんにちは。
今回は、1型糖尿病の人の食事療法について考えてみます。

1型糖尿人の食事療法は、「糖質制限食」あるいは「糖質管理食」がお奨めです。

従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食食)は、
糖質60%、脂質20%、タンパク質20%といった構成であり、
血糖値を急激に上昇させる糖質摂取が主となります。
たんぱく質、脂質、糖質のうち血糖値を直接上昇させるのは糖質だけですので、
これでは、血糖コントロールは極めて困難です。

糖質制限食なら、血糖コントロールは、比較的容易となります。
ただし、糖質制限食実践でリアルタイムに食後血糖値が改善するので、
インスリン注射中の場合、減量が必要です。
減量しないと低血糖の恐れがあるので、主治医とよく相談していただく必要があります。

欧米では、特に1型糖尿病に関しては、糖質管理食はすっかり定着している食事療法です。
日本では、残念ながら糖質管理食を実施している医療機関は、
まだ少ない段階ですが、
大阪市大小児科のグループなど、糖質管理食を導入している医療機関もあります。

1型糖尿病を診療している小児科医なら、
糖質管理食を導入していることもあると思います。

しかし、成人の1型糖尿病の場合は、糖尿病専門医においても、
まだまだ糖質管理食を導入している場合は少ないようです。

1型糖尿人の食事療法の推奨図書として、
まずは「バーンスタイン医師の糖尿病の解決」を是非お読み下さい。
とても参考になります。

バーンスタイン医師の糖尿病の解決 正常血糖値を得るための完全ガイド
2016/5/23 金芳堂; 第4版
リチャード・K・バーンスタイン (著), 柴田 寿彦 (翻訳)


バーンスタイン医師は、自らが1型糖尿病の医師です。
1934年6月17日生まれ。
小児期12才のとき、1型糖尿病を発症し、以後インスリンを打ち続けておられます。

35才、すでに糖尿病腎症の初期となった頃、
SMBGで血糖測定をしながら食事療法を研究し、
徹底した糖質制限食を開始。
蛋白尿が出現する段階の顕性腎症前期から、糖質制限食で回復しタンパク尿消失。

45才で医学部に入学、49才で医師になり、糖尿病を徹底的に研究。
以後、多数の糖尿病患者を診察。
87才現在、糖尿病合併症もなく、現役医師としてお元気にお過ごしです。

バーンスタイン医師の糖質制限食は、1型なのでかなり厳しく、
朝6g、昼12g、夕12gで合計30g/日の糖質摂取です。

ちなみに、2型糖尿病の江部康二は、1日2食(朝食抜き)の糖質制限食です。
1回の食事の糖質量が10gくらいで、糖質は合計20g/日です。
肉や魚の糖質量はほとんどないので、
糖質制限食実践中の糖質は大部分が野菜やキノコなどと調味料由来です。

日本糖尿病学会は、糖尿病患者さんの血糖コントロールの目標として

①空腹時血糖値130mg/dl未満

②食後2時間血糖値180mg/dl未満

③HbA1c7.0未満


を達成していれば、糖尿病合併症の予防ができるとしています。

インスリン注射と糖質制限食、あるいは糖質管理食で、
血糖コントロール良好をめざしましょう。


江部康二


医学的に正しい「糖質制限」見るだけノート(宝島社)刊行。
こんにちは。
新刊のご案内です。
 
医学的に正しい「糖質制限」見るだけノート
宝島社 江部康二監修


医学的に正しい「糖質制限」見るだけノート

Amazon商品ページ

2020年10月12日に刊行されました。
以下、五つのチャプターに分けて、それぞれ簡潔に
わかりやすく糖質制限食の基礎知識を述べてあります。
通勤の合間とかでも気軽に読めてとても役に立ってくれる優れものと
自負しております。
ブログ読者の皆さん、是非、ご一読頂ければ、幸いです。
 
Chapter 01
糖質制限がからだにいい理由

14項目
 
Chapter 02
糖質制限でやせる仕組み

12項目
 
Chapter 03
糖質制限の実践法

18項目
 
Chapter 04
糖質制限のエビデンス

5項目
 
Chapter 05
糖質制限で大病を予防

7項目
 
column
01 糖質制限中のお酒との付き合い方
  お酒の選び方
02   糖質制限中のお酒との付き合い方
飲んではいけないカクテル
03  糖質制限中のお酒との付き合い方
  飲んでもいい醸造酒
04 糖質制限中のお酒との付き合い方
さっぱり系スナックにご用心
05 生活習慣・体質別
  糖質制限活用テクニッック


 
以下の青字の記載は本書の「はじめに」です。
 
はじめに
「糖質制限」は人類本来の食事のとり方
 
人類が誕生してから約700万年が経ったと言われています。
そして農耕が始まったのが約1万年前。
長い人類の歴史の中で、穀類を主食にしたのはたった700分の1の期間に過ぎません
つまり、人類にとっては穀物を主食としなかった
「糖質制限食」のほうが馴染み深いのです。
 
人類が農耕生活を始める以前、糖質を含んだ食物は、
たまに食べることができる貴重なエネルギー源でした。
人類の祖先は、果物やナッツ類、ヤマイモやユリネなどの根菜類を
たまに見つけて食べていました。
摂取されたそれら糖質を含んだ食物が消化されると、
血糖値が上がり、インスリンが分泌され筋肉に取り込まれます。
そして余った血糖は中性脂肪に変わり脂肪組織に蓄えられます。
この脂肪が、冬などの食物が手に入りづらい時期や、
大干ばつといった危機的な飢餓から人類を救う役割を果たしてきました。
 
 狩猟・採集時代にはたまにしか口にされなかった糖質ですが、
農耕が始まり穀類が人類の主食になっていきます。
時代がさらに進むと、玄米は白米に、小麦は小麦粉にと、
精製された穀類が人類の食卓を彩るようになります。
 そして現代、食卓にはパンやご飯、麺といった精製された炭水化物が並び、
自販機には糖分が大量に入った清涼飲料水があふれています。
もともとは飢餓をしのぐために重要な役割を果たしていた糖質ですが、
飽食の時代にあっては肥満や糖尿病など生活習慣病の原因となっています。
 
 人類の身体の消化、吸収、栄養、代謝システムは、
人類誕生以来行われてきた糖質制限食によって突然変異を繰り返して完成されたもの。
そもそも人間の身体は糖質制限が前提になっているのです。
現代は総摂取カロリーの50~60%が糖質という、超糖質食が主流になっています。
これは、人間本来の食の在り方としては
とても不自然でアンバランスなものであると言わざるを得ません。
糖質制限食は、人類本来の食事であり、現代人にとっては健康食でもあります。
糖尿病などの生活習慣病を遠ざける上に、
脂質やたんぱく質、蒸留酒は摂っても大丈夫なので、
食事制限のストレスも少ないのが特徴。
ダイエット効果も高いことから、現在では多くの人たちが実践しています。
 
糖尿病と認知症、どちらも日本人の生活に密着した悩ましい病気です。
糖尿病には遺伝や生活習慣によって発症する「2型糖尿病」と
自己免疫疾患によりインスリンを分密するすい臓のβ細胞が破壊されて発症する
「1型糖尿病」の2種類がありますが、日本人の糖尿病患者の95%以上は2型です。
 
一方、近年ではインスリンが記憶の定着と関係していることが分かってきています。
糖尿病や認知症の原因は老化にあります。
老化は体内の糖化や酸化が進むことによって起こります。
近年、糖質のとり過ぎでぽっちゃり体型であることは、
ただの見た目の問題ではないということが一般的な認識になりつつあります。
心臓病、脳卒中、がんといった生活習慣病のリスクを高めることがわかっているからです。それらを防ぐには人間本来の食事、つまり糖質制限食を実践することが有効です。
 
 最近では、糖質制限には高いダイエット効果が見込まれることが、
巷に浸透してきました。
糖質制限開始当初は、2~3kg程度の体重はストンと落ちます。
しかし問題は、ダイエットとして糖質制限に取り組んだ人が、
一定の目標を達成したら、糖質制限を止めてしまいリバウンドしてしまうことです。
確かに、糖質を含む食物には美味しい物が多いです。
しかもそれを1日に3食も習慣的に食べ、巷には糖質を多く含んだ食物であふれています。そのような状況では、
糖質制限を新しい習慣として定着させることは難しいのかもしれません。
 
一時的なダイエット法として糖質制限を捉えている人にまず理解して欲しいのは、
糖質制限は、糖尿病治療として開発されたということです。
糖尿病の人にとって糖質制限は、「食後高血糖」という
シリアスな合併リスクに立ち向かうための手段になります。
20~30代の頃には、あまりリアリティを感じないかもしれませんが、
40代に入ると、生活習慣病は現実感をもって
そこにあるリスクとして立ちはだかってきます。
 
「糖質を含んだ食物を摂らない」。
そのことに高いハードルを感じる人も多いかと思いますが、
食材選びにもちょっとしたコツがあります。
糖質を避けて高い満足感を食事から得ることは、実はそれほど難しいことではないのです。毎日の運動やストレス回避するための心の持ちよう、睡眠への意識などと同じく、
糖質制限を生活に取り入れ続けていくことは、
長いあなたの人生をきっと豊かにするはずです。
 
 

江部康二
炎症シグナルの指揮者インフラマソームをケトン体(BHB)が阻害。
ブログに頂くコメントや質問ですが、
マスメディアのサイトやヤフーニュースなどの記事に対しては
私なりの意見を述べることは可能な場合が多いと思います。
一方、ユーチューブや個人的なサイトなどの記事に関しては、
私に判断が困難な場合もあり、
コメントや質問を削除させて頂くことがありますので、
ご了承頂ければ幸いです。
また、いったん、ブログに載せたコメントも、
相応しくないと判断すれば、その時点で削除しますので、
ご了承頂ければ、幸いです。


こんにちは。
「インフラマソーム」という概念が注目されています。
私も浅学にして、あまりよく知らなかったのですが、
最新の注目される研究分野のようです。
とても難しいのですが、学術用語をできるだけなしにして
私にもわかる範囲で概略を説明したいと思います。

細胞内の“異物”により活性化し、
炎症反応を誘導するタンパク質複合体が「インフラマソーム」です。

以下、京都大学のサイトから引用
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131104_1.htm

 「インフラマソームの形成は病原微生物の感染によって誘導され、それに基づく炎症応答は多くの場合、感染防御に有効であり、インフラマソームは腸内細菌叢の制御および腸管上皮バリアの保護に働き、腸管の恒常性維持に寄与するとも考えられています。
 一方、インフラマソームが示す負の側面も知られており、刺激因子の種類によっては、過剰なインフラマソーム形成が不適切かつ持続した炎症を惹起し、動脈硬化、痛風、2型糖尿病、アルツハイマー病などの各種疾患の発症に関わります。
 また、ある種の自己炎症疾患の発症はインフラマソーム構成タンパクの突然変異が関与することも示唆されています。そのため、インフラマソームの形成または活性の制御機構を解明することは、病態機構の理解を深め、診断や治療へ貢献するものと期待されます。」

このようにインフラマソームは、感染防御に役立つ側面もあるのですが、
近年研究されて問題となっているのは、負の側面のほうです。
インフラマソームは、病原微生物以外にも
アスベストなどの外来性因子、尿酸結晶などの内在性因子により活性化され、
感染症、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患、虚血傷害など、様々な疾患の発症と進行に中心的役割を果たしています。

さて、ここからが本題です。
「絶食や低炭水化物食、激しい運動で炎症が抑制されるのは
ケトン体(とくにBHB)による効果の可能性が示唆された」


という論文が、Nature Medicineという国際医学雑誌に掲載されたのです。(*)

ネイチャー・メディスンはインパクトファクターが27と高くて
大変権威ある医学雑誌です。

論文によれば、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)が、
インフラマソームと呼ばれる炎症関連の分子複合体の一部であるNLRP3を
直接的に阻害していたということです。

β-ヒドロキシ酪酸(BHB)は、ケトン基は持っていないのですが、
慣例上ケトン体の一種に分類されています。

結論としては、

『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』

ということです。

炎症を抑制することにより、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、
ケトン体(BHB)が役に立つ可能性がある
こととなります。

スーパー糖質制限食で、糖尿病や肥満だけではなく、
アレルギー疾患など含めて様々な生活習慣病が改善する要因として
血中ケトン体が上昇してインフラマソームを阻害することが
関与している可能性が示唆されます。


(*)
http://www.nature.com/nm/journal/v21/n3/full/nm.3804.html
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome-mediated inflammatory disease
Nature Medicine 21, 263-269 (2015) doi:10.1038/nm.3804


江部康二
スーパー中和抗体作製 コロナ変異株に有効 重症化予防に期待 富大が研究
こんにちは。
北國新聞 DIGITAL
に、2021年6月16日(水)、
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/442312
スーパー中和抗体作製 コロナ変異株に有効 重症化予防に期待 富大が研究

という記事が掲載されました。
モン吉さんからの情報です。
モン吉さん、ありがとうございます。

富山大学医学部の仁井見英樹准教授、小澤龍彦准教授らの研究グループが、
新型コロナウイルス感染症の多種類の変異株が体内で増殖するのを防ぐ「スーパー中和抗体」を特定し、
人工的に作り出すことに成功し発表したとのことです。

新型コロナに感染し、重症から回復した患者の血漿には、中和抗体があります。
今までも、新型コロナ感染症重症者に、回復者の血漿を注射する治療法はありましたが、
確実に有効と言える研究はありませんでした。

これは、回復者の血漿に含まれる中和抗体がどのていど新型コロナウイルス増殖を防ぐのか、
回復者血漿の個体差もあり、明確でなかったためです。

今回の研究は、多種類の変異株の増殖を防ぐ「スーパー中和抗体」を特定したものであり、素晴らしい成果です。
さらにその「スーパー中和抗体」を人工的に合成することにも成功ですので、臨床応用しやすい可能性があります。

これなら軽症や中等症の新型コロナ感染患者が、
「スーパー中和抗体」治療により、重症化を防ぐことができる可能性が高いです。
できるだけ早く、実用化されればいいと思います。

一方、
新型コロナ感染症の予防と治療には、
イベルメクチン内服が、優先順位の一番であることに、
変わりはないと思います。


江部康二
慢性炎症って何?
こんばんは。
炎症には急性炎症と慢性炎症がありますが、
今日は主に慢性炎症について考えてみます。
 
<炎症>

炎症はその経過によって、急性炎症と慢性炎症に分けられます。
経過がすみやかで早期に終息する炎症を急性炎症といいます。
 
<急性炎症>

急性炎症の徴候として、古くから、ケルススの 4 徴と呼ばれる
発赤(赤くなる)・発熱(熱が出る)・疼痛(痛い)・腫脹(腫れる) が知られています。
外因性因子としては細菌、ウイルス、外傷、熱、紫外線、強酸、毒物などがあり、内因性因子としては免疫反応があります。
 
<慢性炎症>

一方、組織障害が長期にわたる場合や、原因となる病原がなかなか処理されない場合には炎症が長引きます。
4 週間以上、長引く炎症を慢性炎症といいます。.
 
近年この「慢性炎症」が注目されています。
慢性炎症を伴う病気として
ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患が良く知られています。 最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連についてはほとんど顧みられなかった病気でも、
実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。
加齢とともに増加するがん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患、さらには老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられる証拠が見つかってきたのです。
糖化酸化が慢性炎症の要因となっているのです。
 
<慢性炎症に対する糖質制限食の意義>

糖化ストレス酸化ストレスの蓄積により慢性炎症を生じます。
そして、その延長上に老化やがんを始めとして、
様々な生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、高血圧、パーキンソン病、アルツハイマー病など)の発症があります。
糖質を摂取すると血糖値が上昇し、血糖値が高いほどAGEsがたくさん蓄積していき糖化ストレスとなっていきます。
すなわち、三大栄養素のうち、糖化ストレスを生じるのは糖質だけであり、
脂質・タンパク質では生じません。
 
糖質制限食を実践すれば、糖化ストレスを大幅に減らすことができるので
老化やがんや慢性炎症を予防することが可能となります。
また、『食後高血糖』『血糖変動幅増大』『インスリン過剰分泌』
活性酸素を発生させて、酸化ストレスの元となります。
糖質制限食なら、食後高血糖、血糖変動幅増大、インスリン過剰分泌を、
防ぐことが可能です。
 
このように、糖質制限食なら、糖化ストレスも酸化ストレスも
最小限
ですみますので、がん、老化、生活習慣病を予防できる可能性が高いのです。
 
ブログ読者の皆さん、是非、美味しく楽しく末長く糖質制限食実践で、
がん、老化、生活習慣病を予防し、健康長寿を目指しましょう。
 
 
江部康二
がんと血糖値とインスリン。発症予防にはスーパー糖質制限食。
こんにちは。
現在、日本人の死因の一位はがんです。

今回はがんと血糖値とインスリンについて考察してみました。
合わせて、スーパー糖質制限食によるがん発症予防についても
検討してみました。

Ⅰ 血糖値上昇と発がんリスク

A)国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2011年
「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
によれば、食後血糖値は1時間か2時間で測定すべきであり、
ピークで160mg/dlを超える食後血糖値は、
癌のリスクとなります。

B)JPHC研究によれば、
肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました 。
すなわちB型ウィルス、C型ウィルスという
ウィルス感染による特殊な発がんリスクを除外すると
『血糖値が高いほど、直線的に全がんになりやすい』
という、とても簡明な結論です。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について。
多目的コホート研究(JPHC研究)。
(International Journal of Cancer 2015年11月WEB先行公開)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3753.html


C)韓国のJee等は空腹時血糖値140mg/dl以上で、
男女とも悪性腫瘍の発症リスクが有意に上昇すると報告。(2005年)
JAMA. 2005;293(2):194-202.


Ⅱ インスリンと発がんリスク

A)インスリン注射をしている糖尿人は、メトグルコで治療している糖尿人に比べて
ガンのリスクが1.9倍というカナダの研究もあります。
2005年の第65回米国糖尿病学会、
カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告、
その後論文化。コホート研究。
 「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。
SU剤(インスリン分泌促進剤)を内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」 
Diabetes Care February 2006 vol. 29 no. 2 254-258

B)Cペプタイド値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸癌になりやすい。
国立がん研究センター、「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果。
57%が空腹時、他は非空腹時で共に大腸癌群は高値。厚生労働省研究班が2007年、疫学調査結果を発表し英文論文化。研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。                       
Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.

Ⅰ、Ⅱより、
『血糖値上昇と高インスリン血症は、発がんリスクとなる』
いうエビデンスがあります。
このように過剰インスリンの弊害を考慮すると、
インスリンは血糖コントロールができている限り少なければ少ないほど、
身体には好ましいことがわかります。

別の言い方をすれば、農耕開始後、精製炭水化物開始後、
特に第二次大戦後に世界の食糧事情が良くなってからの糖質の頻回・過剰摂取が、
インスリンの頻回・過剰分泌を招き、
がん発症リスクの元凶となった構造が見えてきます。

スーパー糖質制限食を実践すれば、
インスリンの分泌は必要最小限で済むようになり、
がん発症予防が期待できます。

ブログ読者の皆さんも、スーパー糖質制限食実践で、
必要最低限のインスリンで血糖コントロール良好を維持して、
健康ライフを送ってくださいね。

スーパー糖質制限食なら、血糖上昇が少なくて、インスリン分泌が少ないので、
理論的に、がん発症予防が期待できます。


糖質制限食とヒト発癌に関する考察

A)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク上昇というエビデンスはない。」
B)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク減少というエビデンスもない。」
C)「糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団における癌の発生を、
長期間経過観察した臨床研究は、存在しない。」


1)スーパー糖質制限食で、明確な発癌リスクである高血糖と高インスリン血症は、
一日を通して確実に改善する。
2)スーパー糖質制限食で、発癌リスクを減らすHDL-Cが増加する。
3)スーパー糖質制限食を長期間続けて将来発癌リスクが上昇するとしたら1)2)の利点を帳消しにしてさらにそれを上回る何らかの発癌リスクがあると仮定するしかない。  →そのようなリスクは知られてない。


4) 1)2)3)を考慮すれば、あくまでも仮説であるが、糖質制限食により、西欧型癌の予防効果が期待できる。

江部康二
がんを予防する食事療法。スーパー糖質制限食。疫学研究考察。
こんにちは。
血糖値とがんの関連について、
国立がん研究センターからの報告が、論文化されています。
すなわち、血糖値とがんの関連についてのエビデンスです。

肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました 。
すなわちB型ウィルス、C型ウィルスというウィルス感染による特殊な発がんリスクを除外すると
『血糖値が高いほど、直線的に全がんになりやすい』
という、とても簡明な結論です。
つまり血糖値が正常な段階でもHbA1cが高くなるほど発がんリスクも高くなるということです。
従って、正常人も糖尿人も、糖質制限食でHbA1c(平均血糖値)を下げることが発がん予防になるのです。
勿論スーパー糖質制限食が最も望ましいです。


ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について。
多目的コホート研究(JPHC研究)。
(International Journal of Cancer 2015年11月WEB先行公開)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3753.html

国立がん研究センターがん予防・健診研究センター・予防研究グループの多目的コホート研究(JPHC研究)から、
興味深い報告がなされ、論文化されました。

これまでのコホート研究により糖尿病患者では大腸がん、膵がん、肝がん、子宮内膜がんなどのがん罹患リスクが1.5~4倍高く、全がんも約1.2倍高いと報告されています。

今回の報告では、非糖尿病域の高HbA1c値でも全がんリスクが高いことが判明しました。

こうなると軽度の高血糖でもがんリスクが高まるので、注意が必要ですが、
スーパー糖質制限食なら、糖尿病は勿論のこと、
非糖尿病領域の軽度の高血糖もたちどころに改善させますので、
全がんリスクは低下すると考えられます。


HbA1c:5.0%未満  推定平均血糖値:96.8mg/dl未満
HbA1c:5.0~5.4% 推定平均血糖値:96.8~108.28mg/dl
HbA1c:5.5~5.9% 推定平均血糖値:111.15~122.63mg/dl
HbA1c:6.0~6.4% 推定平均血糖値:125.5~136.98mg/dl
HbA1c:6.5%以上  推定平均血糖値:139.85mg/dl以上

HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、
5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、
および既知の糖尿病の5群のがんリスクは、
それぞれ1.27 (1.06-1.52) 、1.01 (0.90-1.14)、1.28 (1.09-1.49)、1.43 (1.14-1.80)、
1.23 (1.02-1.47)であり、
非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で全がんリスクが上昇していました。

HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値であり、
本研究結果は、慢性的な高血糖が全がんリスクと関連することを示唆しています。

高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることで
DNAを損傷し、発がんにつながる可能性が想定されています。

また、がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため、
慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も考えられます。

5%未満でも、がんのリスクが上昇していますが、
肝硬変などがあると見かけ上HbA1cが低下することが多いことが
関係している可能性があります。

すなわち低HbA1c値群には、
臨床的には診断されていない肝がんや膵がんを有する人が含まれていて、
追跡期間中にがんと診断された可能性があります。

肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました。

糖尿病は勿論のことですが、
正常範囲内の軽度の高血糖でも油断は禁物ということで
ますます「スーパー糖質制限食」の役割は大きくなりました。


江部康二



☆☆☆
以下、国立がん研究センターのサイトから一部抜粋です。

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3753.html

ヘモグロビンA1c(HbA1c)とがん罹患との関連について

-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2015年現在)管内にお住まいで、1998~2000年度および2003~2005年度に実施された糖尿病調査にご協力いただいた方々のうち、ヘモグロビンA1c(HbA1c)のデータがあり、初回の調査時までにがんに罹患していなかった29,629人(男性11,336人、女性18,293人)を対象としてHbA1cとがん罹患リスクとの関係を調べました。その結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer 2015年11月WEB先行公開)。

これまでのコホート研究により糖尿病患者では大腸がん、膵がん、肝がん、子宮内膜がんなどのがん罹患リスクが1.5~4倍高く、全がんも約1.2倍高いと報告されています。糖尿病は慢性的な高血糖を特徴とする病気で、HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値として知られています。そのため、HbA1c(6.5%以上)は、糖尿病の診断基準の一つとしても採用されています。

糖尿病ががんのリスク因子だとすると、HbA1cはがんリスクと関連することが予想されますが、HbA1c値とがんリスクとの関連は十分に明らかにされていません。そこで、本研究では、この関係を、「多目的コホート」の糖尿病調査のデータを用いて調べることを目的としました。

非糖尿病域の高HbA1c値でも全がんリスクが高い

糖尿病調査で測定したHbA1cの値を用いて、5.0%未満、5.0~5.4%、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の6つの群に分けて、その後の全がんリスク、臓器別リスクを分析しました。なお、2回の糖尿病調査に参加していた場合(研究対象者の35%)、2つのHbA1cの平均値を用いました。本研究の追跡期間中に、1955件のがんが発生していました。

年齢,性別、居住地域,BMI,喫煙歴,飲酒歴,身体活動、野菜摂取、総エネルギー摂取、コーヒー摂取、および心血管疾患の既往を統計学的に調整したうえで、がんリスク(95%信頼区間)を計算しました。HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の5群のがんリスクは、それぞれ1.27 (1.06-1.52) 、1.01 (0.90-1.14)、1.28 (1.09-1.49)、1.43 (1.14-1.80)、1.23 (1.02-1.47)であり、非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で全がんリスクが上昇していました(図1)。また、低HbA1c値の群でも全がんリスクの上昇がみられました。

がん種別に分析したところ、非糖尿病域および糖尿病域の高HbA1c値の群で大腸がん(特に結腸がん)リスクが上昇しており、肝がんや膵がんでは、低HbA1c値群(5%未満)でもリスク上昇がみられました(図2)。また、肝がんを除外すると、HbA1c値は直線的に全がんリスク上昇と関連していました(図3)。

高HbA1c値群におけるがんリスクのメカニズム

HbA1c は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値であり、本研究結果は、慢性的な高血糖が全がんリスクと関連することを裏付けるものと考えられます。高血糖はミトコンドリア代謝などを介して酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性が想定されています。また,がん細胞の増殖には、大量の糖を必要とするため,慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も考えられます。

一部のがん種(肝がんや膵がん)のリスクが低HbA1c値群で上昇していた理由

肝硬変などでは、実際の血糖値に比べてHbA1cが低値を示すことが多く、肝硬変は肝がんになりやすい状態です。その結果として、低HbA1群で、肝がんリスクが上昇していた可能性が考えられます。また、低HbA1c値は不健康の指標とも考えられています。低HbA1c値群には、臨床的には診断されていない肝がんや膵がんを有する方が含まれていて、追跡期間中にがんと診断されたのかもしれません。そのほか、解析結果のぶれ(誤差)をあらわす95%信頼区間の幅が大きいことから、偶然リスク上昇がみられた可能性も考えられます。

この研究について

本研究では、非糖尿病域の高HbA1c値も全がんリスクと関連していることを報告した最初の論文です。多目的コホート研究を含む多くの疫学研究から糖尿病と全がんリスクとの関連が報告されており、がん予防のためにも糖尿病を予防することが重要であると考えられています。非糖尿病域の高HbA1c値群における全がんリスク上昇を示した本研究により、糖尿病予防対策の重要性が一層示唆されました。
【本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い】2021年6月。

ブログに頂くコメントや質問ですが、
マスメディアのサイトやヤフーニュースなどの記事に対しては
私なりの意見を述べることは可能な場合が多いと思います。
一方、ユーチューブや個人的なサイトなどの記事に関しては、
私に判断が困難な場合もあり、コメントや質問を削除させて頂くことがありますので、
ご了承頂ければ幸いです。




【本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い】

こんばんは。
ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。

糖質制限食に関する質問についてですが、実際に高雄病院や江部診療所に来院されて診察した患者さんに対しては、
医師としての責任・債務がありますので、個別に説明もしっかりさせて頂いていますし、フォローもしております。

一方、ブログ読者の皆さんの質問に関しては、糖質制限食に詳しい医師として、
ボランティアで回答させていただいています。
診察もしておりませんしフォローもできませんので、責任もとれません。
私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。
また、ブログ記事や本に関しても同様に、
糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。
従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、
自己責任でよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m

そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、
普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、
ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。
またネットで簡単に検索可能なことは、ご自分でお調べください。
質問が増えてきましたので、
糖質制限食と関わりがないと判断した質問にはお答えできない場合もありますので、
ご了承ください。m(_ _)m

普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、
何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)
掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、
ブログ本文記事にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。
質問によってはコメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。
一方、質問がかなり増えてきていますので、
なかなか即、お答えすることが困難となってきています。

糖質制限食に関わりのある全ての質問に、
本文かコメントでお答えするようできるだけ努力はしていますが、
できないときはご容赦願います。m(_ _)m

それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、
コメント欄にお答えするか、
一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、
よろしくお願い申し上げます。


【糖質制限食を実践される時のご注意】

糖質制限食実践によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、
減薬しないと低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。


一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、
自力で糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると、
食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。
血糖値が正常範囲である程度下がると、
肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、
ブドウ糖を作るからです。
これを糖新生といいます。

塩分に関しては、スーパー糖質制限食の場合は、今まで通りで特に制限の必要はありません。
「スーパー糖質制限+塩分制限」だと、塩分不足で身体がだるかったり、集中力が低下することがあるので注意が必要です。


診断基準を満たす膵炎がある場合、肝硬変の場合、
そして長鎖脂肪酸代謝異常症・尿素サイクル異常症は、
糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高脂肪食になるので、診断基準を満たしている膵炎の患者さんには適応とならないのです。
進行した肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症では、肉や魚などに含まれる長鎖脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。
尿素サイクル異常症もまれな疾患ですが、
タンパク質の代謝に問題があるので
高タンパク食である糖質制限食は向きません。


腎機能に関して、日本腎臓病学会編「CKD診療ガイド2018」において、eGFR60ml/分以上あれば顕性たんぱく尿の段階でも、
たんぱく質は過剰な摂取をしないという表現となっていて、
制限という記載はなしです。
従いまして、糖尿病腎症第3期でも、eGFR60ml/分以上なら、糖質制限食OKです。

また、米国糖尿病学会(ADA)は
Position Statement on Nutrition Therapy(栄養療法に関する声明)
Diabetes Care 2013年10月9日オンライン版
において、糖尿病腎症患者に対する蛋白質制限の意義を明確に否定しました。
根拠はランク(A)ですので、信頼度の高いRCT研究論文に基づく見解です。

今後は、糖尿病腎症第3期以降で、eGFRが60ml/分未満の場合も、
患者さんとよく相談して、糖質制限食を実践するか否か、
個別に対応することとなります。


なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、
糖新生能力が低下していることがあり、
まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、
合わないとご自分で判断されたら中止して頂ければ幸いです。


【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)の患者教育用のテキストブックLife With Diabetes(2004年版)には、以下の記載があります。

「摂取後直接血糖に影響を与えるのは糖質のみである。
糖質は速やかに吸収され、直接100%血糖に変わり、ほぼ120分以内に吸収は終了する。
蛋白質・脂質は、摂取後、直接血糖に影響を及ぼすことはない。
『炭水化物・タンパク質・脂肪はカロリーを含有している。
炭水化物だけが、血糖値に直接影響を及ぼす。』」


これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 
1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版以降は変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが直接、血糖値を上昇させます。
従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。
タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、
食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、
心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
また一日における、食前・食後・空腹時など
血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、
酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。
そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、
三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、
血糖値を166mg上昇させます。
一方、和牛サーロインステーキ(脂身つき)を200g(約1000キロカロリー)食べても、
糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、
できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは 、
米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、
薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、
カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、
食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、
カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。

なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2018-2019」の
男性1600~2000kcal
女性1400~1800kcal
ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、

「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf

推定エネルギー必要量(一日あたり)
                                      男性                                         女性
15-17才        2500 2850 3150       2050 2300 2550kcal
18-29才        2300  2650    3050              1650  1950   2200
30-49才        2300  2650   3050              1750  2000   2300
50-69才        2100  2450   2800               1650  1900 2200 
70才             1850  2200   2500               1500  1750 2000

身体活動レベル    低い 普通 高い          低い  普通  高い

くらいが目安です。


そして2013年に糖尿病食事療法に関して画期的な変化がありました。
米国糖尿病学会が、
2013年10月発表の『栄養療法に関する声明』において、
全ての糖尿病患者に適した唯一無二の治療食は存在しないと明記したのです。
これはそのまま、1969年の食品交換表第2版以降一貫して、糖尿病治療食として、
唯一無二の「カロリー制限・高糖質食」を推奨し続けている日本糖尿病学会への
痛烈な批判となっています。

さらに、米国糖尿病学会は『栄養療法に関する声明2013』において
地中海食、ベジタリアン食、DASH食、低脂質食などと共に
「糖質制限食」も正式に受容しました。
このことは糖質制限食を推進する私達にとって、大変大きな追い風となりました。

また米国糖尿病学会は、2019年4月、
「成人糖尿病患者または予備軍患者への栄養療法」コンセンサスレポート
において、糖質制限食(Low-carbohydrate eating patterns)が、
エビデンスも最も豊富であると明言
しています。
2020年4月、「栄養療法」ガイドラインにおいても
 『地中海式、低炭水化物、およびベジタリアン食事パターンは、
 いずれも研究で良好な結果が示されている 健康的な食事パターンの例である。
 個別の食事計画は、個人の好み、ニーズ、 および目標に焦点を当てるべきである。
 糖尿病患者の全体的な炭水化物摂取量を減らすことは、
 血糖値を改善するために最も多くのエビデンスが示されているので、
 個人のニーズや好みに応じた様々な食事パターンに 適用することができる。』
と明言しています。

このように糖質制限食の信頼度はますます高まっています。

なお、門脇孝日本糖尿病学会理事長によれば
東大病院では、2015年4月から、糖質40%の糖質制限食を供給しているそうです。
また門脇孝東大糖尿病・代謝内科教授ご自身も、緩やかな糖質制限食を実践されているとのことです。
2016/7/1(金)
東洋経済オンライン 
http://toyokeizai.net/articles/-/125237



<江部康二著 参考図書>


理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年 宮本輝先生との対談本
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書)2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド」 (別冊宝島)2012年
「食品別糖質量ハンドブック」2012年(洋泉社)、
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病はよくなる!糖質制限食のすすめ」(文春文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」(文春文庫)2012年
「女性のための糖質制限ダイエットハンドブック」2012年(洋泉社)
「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」2013年(東洋経済新報社)
「医療の巨大転換を加速する」糖質制限食と湿潤療法のインパクト
 2013年(東洋経済新報社) 夏井睦先生との対談本
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ 新版」2014年(東洋経済新報社)
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!2 実践編 新版」2014年(東洋経済新報社)
「炭水化物の食べ過ぎで早死にしてはいけません」2014年(東洋経済新報社)
一生太らない「やせる! 食べ方」2014年 (PHP文庫)
江部先生、「糖質制限は危ない」って本当ですか?2015年(洋泉社)
「なぜ糖質制限をすると糖尿病が良くなるのか」2015年(ナツメ社)
「糖質制限の教科書」2015年(洋泉社)監修
「糖質オフ!健康法」2016年3月(PHP研究所 )
「人類最強の糖質制限論」2016年4月(SB新書)
「ハンディ版糖質制限の教科書」2016年4月(洋泉社)
「増補新版食品別糖質量ハンドブック」2016年6月(洋泉社)
「Dr.江部の健康食の新常識100 」(TJMOOK)2016年11月(宝島社)
マンガでわかる「糖質オフ! 」健康法2016年12月、(PHP研究所 )
外食でやせる! 「糖質オフ」で食べても飲んでも太らない体を手に入れる、2017年4月(毎日新聞出版)
「江部康二の糖質制限革命」2017年4月(東洋経済新報社)
「男・50代からの糖質制限」2018年11月(東洋経済新報社)
「内臓脂肪がストン!とおちる食事術」2019年5月(ダイヤモンド社)
「糖質制限の大百科」2019年7月(洋泉社)
「糖質量&炭水化物量ポケットガイド」電子書籍、2019年8月(SBクリエイティブ)
名医が考えた認知症にならない最強の食事術2020年6月(宝島社)
ダイエット・糖質制限に必携! 食品別糖質量ハンドブック 2020年9月(宝島社)江部 康二 (監修)
医学的に正しい「糖質制限」見るだけノート2020年10月(宝島社)
体が変わる! 最強の糖質制限食-巣ごもり生活でも太らない! 2021年2月(学研プラス)江部康二 (著), 沼津りえ (著)

など多数。

レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん2009年(アスペクト)
dancyuプレジデントムック 「満腹ダイエット 」 2009年(プレジデント社)
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」2010年(東洋経済新報社)
「やせる食べ方レシピ集」 2010年(東洋経済新報社)
「糖質オフダイエット 」2011年(レタスクラブ、角川マーケティング)
「誰もがストレスなくやせられる!糖質制限ダイエット」2011年(講談社)
「主食を抜けば糖尿病はよくなる」レシピ集2011年(東洋経済新報社)
高雄病院の「糖質制限」給食2012年(講談社)
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集2012年(ナツメ社)
糖質制限の「主食もどき」レシピ2013年(東洋経済新報社)
高雄病院Dr江部が食べている「糖質制限」ダイエット2013年(講談社)
糖質オフのダイエット弁当2013年(家の光協会)
高雄病院「糖質制限給食」朝 昼 夕 14日間完全プログラム
糖尿病・肥満改善が自宅でできる! 2013年(講談社)
2週間チャレンジ! 糖質制限の太らない生活 2014年(洋泉社mook)
電子レンジで糖質オフの作りおき 2016年10月(宝島社)
「やせぐせがつく糖質オフの作りおき 」2017年3月(宝島社)
「高雄病院の糖質制限作りおき 」2017年5月(洋泉社)
「作りおきおかずで簡単! 朝・昼・晩 糖質オフのダイエット献立」2017年10月 (家の光協会)
「いくら食べても太らない! 旨い酒のつまみ 」2018年5月(宝島社)
「決定版! スグやせ! 糖質オフのラクうまレシピ150」2018年6月(ナツメ社)
「女性のためのラクやせ糖質制限ハンドブック」2018年9月(洋泉社)
「男性のための糖質制限最強ダイエットハンドブック」2018年10月(洋泉社)
「レンチン!糖質オフの作りおきおかず」2018年10月(宝島社)
「魔法のダイエットみそ汁 」 2019年2月(日本文芸社)
「決定版! 作りおき&レンチンで簡単! 糖質オフのやせる! ラクうま弁当350 」 2020年2月(ナツメ社)
「決定版! 作りおき&帰ってすぐできる 糖質オフのやせる! ラクうまレシピ350 」 2020年7月(ナツメ社



江部康二
貧血とHbA1c(ヘモグロビンA1c)の関係。
こんばんは。
本日は、貧血とHbA1cの関係について考えてみたいと思います。

貧血とHbA1cの関係を説明する前に、
HbA1c(ヘモグロビンA1c)とは何かを考えてみましょう。

<HbA1cとは何か>
赤血球の中に含まれているヘモグロビンは、鉄を含む赤色の色素部分のヘムと、
蛋白部分のグロビンでできています。
ヘモグロビンはグロビン部分の違いにより
HbA、HbA2、HbFの3種類に分けられます。
成人では、HbAが97%を占めています。
血液中には、赤血球や糖類やその代謝産物が流れていて、
お互いに結合する傾向があります。
赤血球中のヘモグロビンと、血中のブドウ糖など単糖類が結合したものが、
グリケーティッドヘモグロビンです。
これを略してグリコヘモグロビンですが、
HbA1とほぼ同義語として使用されています。
グリコヘモグロビンは、元のヘモグロビンとは電気的性質が異なるため、
検査により識別することができます。

HbA1は、さらにHbA1a、HbA1b、HbA1cなどに分けることができます。
このうち糖尿病の検査の指標として汎用されているHbA1cは、
ヘモグロビンA(HbA)にグルコース(ブドウ糖)が結合したものです。
当然、血糖値が高値であるほど、ヘモグロビンと結合しやすいのです。

HbA1cの生産量は、Hb(ヘモグロビン)の寿命と血糖値に依存します。
赤血球は骨髄で作られて血液中を循環し、寿命は約120日間ですから、
HbA1cは過去4ヶ月(120日間)の血糖値の動きを示しています。
より詳しく分析すると、HbA1c値の約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、
約25%が過去2ヶ月、残りの約25%が過去3-4ヶ月で作られます。
従いまして、HbA1cの値は通常は過去1-2ヶ月の平均血糖値を反映していると、
考えればよいことになります。

<貧血とHbA1Cの関係>
さて、溶血性貧血、腎性貧血など、
赤血球の寿命が短縮するような病態のときは、
HbA1cの生産量がその分蓄積されずに減りますので、
実際の値よりも低くなります。

鉄欠乏性貧血の場合、鉄不足で貧血のときは、赤血球の寿命がのびるので、
HbA1cは実際の数値より高値にシフトします。

鉄剤投与を開始して、鉄欠乏性貧血が回復している時期は、
幼弱赤血球が増えてどんどん回転しているので、
HbA1cは実際の値より低値となります。


江部康二

酸化ストレスって何?
こんにちは。
今回は酸化ストレスについて考えてみます。

<酸化ストレスとは>
 人体は酸化反応と抗酸化反応のバランスが取れていると正常に機能します。
酸化反応が抗酸化反応を上まわった状態を酸化ストレスといいます。
ヒトは、呼吸によって1日に500L以上の酸素を
体内に取り入れていると考えられています。
呼吸によって毎分約0.3Lの酸素が肺胞から血液中に送られます。
このうち約2%が活性酸素に変わるといわれています。

 生体内の抗酸化システム(SODなど)で処理しきれない活性酸素が残存した場合、
酸化ストレスとなり、
人体の構造や機能を担っている脂質、たんぱく質、酵素、DNAなどに
損傷を与えてしまい、老化の元凶とされています。
 さらに老化以外にも、糖尿病合併症、
動脈硬化、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病
などの
さまざまな病気の元凶とも考えられています。

また、これらの病気を発症すると、
さらに酸化ストレスのリスクが上昇するという悪循環パターンとなり、
症状が進行する可能性があります。

<活性酸素を増やす要因>
 活性酸素を増やす外因としては、紫外線、大気汚染、化学物質、農薬など
さまざまな環境因子が明らかになっています。
体内でSODを作る能力は40歳前後から低下していきます。
従って食物から抗酸化成分をしっかり取ることが必要です。
野菜、海藻、キノコ、大豆、ナッツなど糖質制限食の食材にも
抗酸化成分が豊富に含まれますので、積極的に食べましょう。

 一方で、内因としては、血中のインスリン値が高い状態が続く「高インスリン血症」が、
活性酸素を発生させて酸化ストレスのリスクになるといわれています。
高インスリン血症を生じさせるリスクが最も高いのは糖質です。
たんぱく質もある程度インスリンを分泌させますが、脂質は分泌させません。
 たんぱく質はインスリンを分泌させますが、グルカゴンも分泌させるので、
通常は効果が相殺されて、血糖値に影響を与えません。
食後一定時間が経過した後も血糖値の高い状態が続く「食後高血糖」や、
血糖値が高い時と低い時の差「平均血糖変動幅増大」も活性酸素を発生させ
酸化ストレスのリスクになると考えられています。

 従来の糖尿病食(カロリー制限食=高糖質食)など、
糖質を1日の総摂取カロリーの50~60%摂取する食事では、
「高インスリン血症」「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」を必ず生じ、
酸化ストレスのリスクが増大する可能性が高いのです。

<酸化ストレスのリスクを少なくする「糖質制限食」>
 「糖質制限食」は食事で摂取する糖質をできるだけ減らして、
血糖を良好にコントロールしようというものです。
これなら必要最低限のインスリン分泌ですみますし、
食後高血糖や平均血糖変動幅増大も生じませんので、
酸化ストレスのリスクは極めて少なくて済みます。

 このように、酸化ストレスリスクを効率よく予防するには、
糖質制限食以外の選択肢はないと考えられます。
糖質制限食は老化を緩和させ、
糖尿病合併症や生活習慣病を予防できる唯一の食事療法と言えます。


江部康二

AGEs(終末糖化産物))って何?  
こんばんは。
近年、医学界においてAGEs(終末糖化産物))が注目されています。
advanced glycation endproductsの頭文字をとって、AGEsです。
では、「糖化」とは何でしょう?
 
<糖化=たんぱく質と糖が結合>
 糖化とは、ブドウ糖・果糖などの単糖が、
直接たんぱく質などに結合する反応のことです。
糖尿病の検査指標として一般的に使われているヘモグロビンA1c(HbA1c)は
糖化したヘモグロビンのことです。
赤血球の中にあるヘモグロビンというたんぱく質に、
血糖がへばりつくわけです。
高血糖であるほどたくさんへばりつき、HbA1cが高値となるので
糖尿病の検査として便利な存在なのです。
HbA1cは、たんぱく質と糖が結合する「糖化反応系」の初期段階で作られます。
さらに糖化反応が進むと、
最終的に「終末糖化産物(AGEs=advanced glycation endproducts)」というものが
できあがります。
HbA1cはまだ分解代謝できる段階ですが、
AGEsの段階になると分解代謝が困難となります。
 
<体内で作られるAGEsが糖尿病合併症を引き起こす>

  AGEsが注目されるようになったのは、
さまざまな糖尿病合併症の元凶と考えられるようになったからです。
そのプロセスは多様ですが、最も分かりやすいのは、
AGEsが血管の内壁にたまり、動脈硬化を引き起こす例でしょう。
動脈硬化によって障害を受ける血管の部位によって、
生じる糖尿病合併症は異なりますが、
いずれも血管病と言って過言ではありません。
血管壁のAGEsは消えない借金であり「高血糖の記憶」と呼ばれています。
 AGEsによる合併症発症のリスクは、「血糖値×持続期間」で決まります。
高血糖であればあるほど、そして高血糖である期間が長ければ長いほど、
AGEsの生成、蓄積量は多くなるからです。
従って、長年糖尿病を患っている患者は糖化が生じやすく、
AGEsの蓄積も、糖尿病でない人に比べて必然的に多くなります。
その結果、三大合併症と言われる
糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症や、
大血管合併症である心筋梗塞や脳梗塞にもなりやすいのです。
このようにコントロールの悪い糖尿病は
血管の老化が早く進む病気とも言われてきました。
 
<コントロール良好の糖尿病なら合併症は生じない>

一方、血糖コントロール良好の糖尿病は、
AGEsの蓄積は健常人と変わりないので、合併症は生じません。
スーパー糖質制限食ならそれが可能ですが、
従来の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)では、
合併症予防は極めて困難です。
従来の糖尿病食は、遺憾ながら「合併症製造食」と言わざるをえません。
血糖値を直接上昇させるのは、<糖質、たんぱく質、脂質>のうち
糖質だけなのです。
 

江部康二
糖質制限食と耐糖能
こんばんは。
今回は、糖質制限食と耐糖能について、考えてみます。
「糖質制限食を続けると耐糖能が落ち糖尿病になる」
主張する医師がいますが、これは本当でしょうか?

結論から言えば、正しくありません。
高雄病院では1999年から 江部洋一郎院長(当時)が糖質制限食を始めて、
2001年からは私、江部康二も取り組んでいますので、
2021年現在もう足かけ23年になります。

この間、下記の三点は高雄病院の1600人以上の糖尿病入院患者さん
でもしっかり確認済みです。

・糖質制限食により食後血糖値も空腹時血糖値も改善します。

・糖質制限食により膵臓のβ細胞が休養できるので、
 疲弊していた β細胞が回復します。

・β細胞の回復により、耐糖能とインスリン分泌能も改善します。


糖質制限食で耐糖能が落ちるという話は、
ヒムスワースの正常人の耐糖能に関する論文(1935年発表)に
由来すると思われます。

「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。
高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食に
よって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」(☆)


というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。

一方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、
受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、
「糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても、
耐糖能には大きな影響を及ぼさない」(☆☆)
という報告を行いました。

この報告がNew England Journal of Medicineという
影響力の大きな医学誌に掲載されました。
正常人が糖質制限食をして75gブドウ糖負荷試験をした場合、
ヒムスワースとウィルカーソンで全く異なる結論です。
論文の信頼度としては、New England Journal of Medicineの
ウィルカーソンのほうが上ですが、断定することはできません。

ブログ読者さんのコメントで、「糖質制限食を実践して75gブドウ糖
負荷試験をしたら以前より悪化した。」
という報告もときにありますので、
これについて検討してみます。

75g経口ブドウ糖負荷試験実施前3日間は、
150g/日以上の糖質摂取が、日本糖尿病学会の推奨となっています。

糖質制限をあるていどの期間続けた正常人が、
いきなり、ブドウ糖負荷試験あるいは糖質一人前摂取で、
耐糖能低下のように見えるデータがでることが、時にあります。

私見ですが、これは、
追加分泌インスリンを出す必要がほとんどない糖質制限食を続けていた場合には、
糖質摂取に対して、β細胞が準備ができていない状態であった可能性があります。

従って、150g/日以上の糖質を3日間摂取することで準備を整えてから検査をすると、
β細胞の準備ができているので、
もともと正常型だった人なら耐糖能が普通に戻ると思われます。

スーパー糖質制限食実践でβ細胞は休養できていて、
なおかつ血糖コントロール良好ですので、
高血糖によりβ細胞が障害されている可能性はありません。
ですから、β細胞のインスリン分泌能力も準備さえ整えば、
正常に作用すると考えられます。

つまり、正常人が糖質制限中にいきなり糖質摂取したとき、
一見耐糖能が低下したようなデータが出ることがありますが、
これは本当にβ細胞が障害されて耐糖能が落ちたのではないので、
心配ないということです。
糖質制限食実践者においては、食後高血糖によるβ細胞の障害はないので、
本当にインスリン分泌能が低下するということは考えられません。


一方、2型糖尿病の診断基準をしっかり満たした人が、
1年間のスーパー糖質制限食実践で血糖値もHbA1cも正常値となり、
試しに白ご飯を一人前摂取しても、
食後血糖値は140mg/dlを超えなくなった例もあります。

これは、スーパー糖質制限食で膵臓が休養できて、
β細胞が回復して耐糖能も改善したためと考えられます。

なお本ブログの読者の糖尿人の方々で、
糖質制限食で耐糖能改善されたかたは複数おられます。


(☆)
Himsworth HP. The dietetic factor determining the glucose tolerance and sensitivity to insulin of healthy men. Clin Sci 2, 67-94, 1935.

(☆☆)
Wilkerson HLC, Hyman C, Kaufman M, McCuistion AC, Francis JO. Diagnostic evaluation of oral glucose tolerance tests in nondiabetic subjects after various levels of carbohydrate intake. N Engl J Med 262, 1047-1053, 1960.


江部康二
逆流性食道炎は糖質制限食でリアルタイムに改善する。
こんばんは。

逆流性食道炎は、酸性の胃液やそれと混ざった食物が、
食道に逆流して食道が炎症を起こし、
胸やけや胸の痛みなどを生じる病気です。

逆流性食道炎の症状を訴える患者さんのほとんどが、
糖質制限食開始後、リアルタイムに改善します。(^^)

当初、私自身が信じられなかったのですが、もう300人以上に試してみて、
脂っこいものより炭水化物が胸やけを起こす真犯人と確信しました。

ここまでくると、逆流性食道炎は、
炭水化物の過剰摂取が根本要因である可能性が極めて高いと思います。

700万年の人類の歴史のなかで、
特に精製炭水化物を大量に常食し始めたここ200~300年に発症した特殊な病気の一つが逆流性食道炎です。

一番印象的だったのは、中学校の頃から、
毎日昼食後1時間と夕食後1時間に、必ず胸やけがあった30代の男性患者さんです。
胸やけ以外は、何の病気も症状もありません。
特に、カレーライスの日は最悪で、夕食後1時間に加えて、
夜中の1時にも胸やけがあって苦しんだそうです。

この患者さんに、ブログ読者の皆さんでの成功経験があったので、
「騙されたと思って兎に角スーパー糖質制限食を試してごらん?」
と奨めてみました。

2週間後の外来診察で、糖質制限食開始当日から、
20年来の胸やけが一切消失したという
驚きの報告をしていただきました。ヾ(゜▽゜)

カレーライスというのは、<ご飯+カレールーの小麦粉>で二重の糖質なので、
寿司飯(ご飯+砂糖)と共に最も血糖値を上げやすい食材です。σ(=_=;)ヾ 

「饅頭1個だと胸やけなしだけど、2個だと胸やけ必発」という人もあり、
個人の糖質摂取許容量の限界を超えると、
胃酸が出過ぎて胸やけを生じるような気もします。
逆流性食道炎を生じる限界の糖質摂取許容量には個人差があるようです。

逆流性食道炎の症状は、糖質制限食でリアルタイムに改善する例がほとんどです。
言い換えれば、糖質の過剰摂取が逆流性食道炎の原因の可能性が高いです。

それでは、そのメカニズムについて考察してみましょう。
まず血糖値が上昇すると、視床下部が感知し
副交感神経(迷走神経)を介して膵臓のランゲルハンス島のβ細胞に伝えられます。
このとき副交感神経が優位だと幽門が収縮し、噴門は弛緩しますので、
胃の内容物は食道へ逆流しやすくなります。
つまり糖質を摂取すると逆流性食道炎を起こしやすくなる理屈です。

この仮説は、岩手県久慈市の関上こどもクリニック、
関上勇先生からご教示頂きました。
私もこの仮説に賛成です。
関上先生、ありがとうございます。


江部康二
糖新生と糖尿病と暁現象。
こんばんは。
今回は糖新生について考えてみます。

糖新生とは、糖質以外の物質からグルコースを生産することで、
中性脂肪の分解産物グリセロールからの糖新生、
筋肉のタンパク質分解によるアミノ酸からの糖新生などがあります。
正常人でも日常的に肝臓で糖新生を行っています。

「筋肉のタンパク質分解」というとなにやら怖そうですが、
私達の身体の営みにおいて少量の筋肉の分解・再生は毎日、
正常人でも生理的に行われているます。

食物中のタンパク質は、消化管でアミノ酸に分解され吸収されます。
アミノ酸は、吸収されて門脈から肝臓に到り、アミノ酸プールに入ります。
生体内では肝臓及び血液を中心に、アミノ酸がプールされています
食事由来のアミノ酸は、肝臓から肝静脈を経て大静脈に入り、
心臓を経て各組織へ送られます。

各組織の細胞では、筋肉や爪などになる新しいタンパク質がアミノ酸からつくられ、
一方で古いタンパク質が分解されて、アミノ酸として静脈血中に放出され、
大静脈から心臓を経て肝動脈から肝臓に入ります。

筋肉の分解などで血中に供給されたアミノ酸は、肝臓でアミノ酸プールに入り、
糖新生やタンパク合成などに利用されます。
体重70kgの男性では、10~11kgの体タンパクがあり、タンパク質代謝の異化と同化の過程で、
そのうち約250~300gのタンパクが毎日入れ替わります。(約3%)。

2型糖尿病で、寝る前の血糖値より早朝空腹時血糖値のほうが高値だったりするのは、
夜中の睡眠時に肝臓が糖新生しているからです。

インスリンの基礎分泌が、ある程度低下してしまった2型糖尿病だと、
インスリンの血中濃度が不足するため肝臓の糖新生にフィードバックがかからず、
夜中にブドウ糖を作りすぎてしまうのです。
そのため、早朝空腹時血糖値は高くなります。
とくに明け方の4時とか5時に糖新生が活発になるので
寝る前の血糖値より早朝空腹時血糖値のほうが高値なのを<暁現象>と呼んでいます。

さて、人体のエネルギー源の流れとしては、

<アルコール→ブドウ糖→脂質→タンパク質>

の順番で利用されます。
糖質制限食をしていない人でも、安静時や事務仕事の時や空腹時や睡眠時は、
心筋や骨格筋などほとんどの体細胞の主エネルギー源は、
「脂肪酸ーケトン体」であり、「ブドウ糖」はわずかです。
人体で赤血球だけは、ミトコンドリアを持っていないので、
ブドウ糖しかエネルギー源にできません。
人類誕生以来700万年間、
糖新生はもっぱら赤血球の生存のために成されてきたと言えます。
脳細胞はミトコンドリアを持っているので、ケトン体をネルギー源にできます。
むしろ脳はブドウ糖よりもケトン体を好むとされています。

脂肪酸-ケトン体エネルギーシステムは、人体を自動車に例えるな
らばガソリンに当たる、日常的なエネルギー源なのです。

人体では
<アルコール→ブドウ糖→脂質→タンパク質>
の順番にエネルギー源として利用していきますが、
極端な飢餓状態になると、
最終的に筋肉(タンパク質)が分解されて心筋にも及べば、死亡してしまいます。


江部康二
体が変わる! 最強の糖質制限食-巣ごもり生活でも太らない! 刊行。
こんばんは。
2021年2月12日、

体が変わる! 最強の糖質制限食-巣ごもり生活でも太らない!
江部康二・沼津りえ著(学研プラス)
が刊行されました。

saikyo.png


太る理由は単純です。

『糖質摂取⇒血糖値上昇⇒インスリン分泌⇒血糖を筋肉が取り込む⇒余った血糖は全て中性脂肪に変わり脂肪組織に蓄えられる。』

これが生理学的事実であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。
そして糖質摂取こそが太る原因なのです。

脂質を食べても血糖値は上昇せず、インスリンの分泌もありません。
たんぱく質摂取は、インスリンとグルカゴンを両方分泌させますが、
両ホルモンの効果が相殺されて、血糖値は上昇しません。
糖質制限食実践なら肥満ホルモンインスリンの分泌は
必要最小限ですむので太らないのです。

本書では、とてもわかりやすく糖質制限食の基礎理論が説明してあります。
また具体的な実践法もシンプルに具体的に記述してあります。
朝食、昼食、夕食jにわけてレシピ集もついています。
本書が皆さんの、太らない対策にお役に立てれば幸いです。

江部康二


以下の青字の記載は、本書のはじめにです。

はじめに  

新型コロナウイルスによる感染症が流行して以来、
世の中が大きく変わりました。
感染拡大を防ぐため、外出を控え、
自宅で“巣ごもり生活”を送っている人も多いと思います。
こうした生活が長引くなかで、
「以前よりも太ってしまった」という声をよく聞きます。
巣ごもり中の食生活では、家にあるもの、
保存がきくもので済ませようとして、
ごはんものやめん類など、
糖質メインの食事をよくとるようになったという人も多いのではないでしょうか。

また、リモートワーク中心の生活で、
あまりおなかが減っていないのに、
習慣的に以前と同じ量の食事をとっているのも原因かもしれません。
なかには、運動不足解消とダイエットのために、
エクササイズを始めてみたものの、うまく続かず、挫折した人もいるでしょう。 

そんなときこそ、糖質制限食がおすすめです。
糖質制限食は、糖質の多い食品を控えるだけの食事法です。
糖質さえ控えれば、食事の量を減らさなくても、
運動をしなくても、脂肪が燃えやすい体に変わります。
カロリー制限は不要で、お肉や脂っこいメニューをがまんする必要もなく、
満腹になるまで食べられます。

糖質制限食は、健康管理にも有効で、
生活習慣病をはじめ、さまざまな病気の予防や改善に効果があります。
筋肉の維持や増強にも役立つので、多くのアスリートも実践しています。
さらに、最近の研究結果では、糖質制限食を実践している人は、
糖質を多くとる食生活を送っている人に比べて、
AGEsの蓄積が少ないことや血中ケトン体高値により、
免疫力が高くなることもわかりました。 

本書では、まずPart1で、
糖質制限食のルールや食品の選び方、実践のコツを解説し、
Part2~4では、朝食・昼食・夕食の糖質制限食のポイントと、
3食自炊でもラクラク作れる、おすすめのレシピをそれぞれ紹介しています。
最後にPart5では、
糖質制限食を実践している人からよく寄せられる疑問をまとめた
Q&A集を設けました。 

糖質制限食は、運動不足でも筋肉を落とさずに健康的にやせられる、
まさに最強の食事法です。
ウィズコロナの時代、糖質制限食が、
みなさまの健康を守る一助となれば幸いです。

2020年2月        江部康二

新型コロナ。サイトカインストーム。「ADE」(抗体依存性感染増強。
こんばんは。
新型コロナウイルス感染症で、重症化したり死亡したりするときに、
『サイトカインストーム』『「ADE」(抗体依存性感染増強』という現象が
関与しています。


<サイトカインストーム>
サイトカインストームは、「免疫ブレーキの故障」が主たる要因です。
免疫の働きが正常な状態であれば、ウイルスの感染に対して免疫応答が行われたあと、
免疫細胞たちに「撤収」を呼びかける細胞がいます。
それが、「レギュラトリーT細胞」です。
このレギュラトリーT細胞の機能が上手くいってないと
免疫の暴走であるサイトカインストームを生じます。
サイトカインストームは、ワクチン接種とは無関係に生じます。
サイトカインとは細胞から分泌されるたんぱく質の総称です。
ウイルスが細胞に侵入すると、サイトカインが出て免疫細胞が活性化し、
ウイルスに感染した細胞を攻撃します。 
「レギュラトリーT細胞」がキッチリ働いてくれない状況だと、
サイトカインが過剰に分泌されて制御不能となってしまいます。
こうなると、正常な細胞まで攻撃してしまうこととなります。
この過剰反応は、嵐のように急激に起こるため、
サイトカインストームと呼ばれています。 
サイトカインストームになると、
肺だけでなく腎臓や肝臓などにも重度の障害を引き起こします。
また血管内皮を傷つけ血管炎を起こし、血栓や出血を生じるリスクとなります。 

肥満者は重症化しやすいのですが、
サイトカインストームが関わっている可能性があります。
肥満者の脂肪組織は慢性炎症を起こしているため、
感染をきっかけに内臓脂肪からサイトカインが過剰に放出されやすいのです。 
さまざまな種類のサイトカインの中でも特に重症化の原因と考えられているのが
「インターロイキン6」(IL6)です。

サイトカインストームを抑止する薬剤としてステロイド薬が最も効果的です。
なお欧米と比べ、日本やアジアで死者や重症者が極めて少ない理由の一つに、
アジア人はサイトカインストームが生じにくい可能性があります。


<「ADE」(抗体依存性感染増強)>
新型コロナワクチン接種で、質の良くない抗体が産生されると、
新型コロナウイルスに感染したときに、
重症化につながる現象「ADE」(抗体依存性感染増強)が起こりえます。
つまり本来ウイルスと戦うべき役目の抗体が、
コロナウイルスに感染したときに、かえって人体に不都合な作用をして
感染が増強してしまうのです。
新型コロナワクチン接種には、ADEを生じるリスクがあるのです。
ADEは、ウイルスへの一次ないし二次感染時やワクチン接種後のウイルスの攻撃によって起こり得ます。
ADEが起こったことにより、それをきっかけに、サイトカインストームが発症することもあります。


江部康二

新型コロナワクチンのスパイクタンパクは諸刃の剣
こんばんは。
新型コロナワクチンを2020年12月からいち早く接種開始した、イスラエルや英国では
2021年3月、4月、5月と感染者数と死者数がどんどん減少しています。
今や、7日間の新規死者数(人口100万人あたり、2021/06/02現在)は、
イスラエルで0.76人、英国で0.7人であり、日本の5.1人より少なくなっています。


mRNAワクチンで、スパイクタンパクを作り、このスパイクタンパクに対して
抗体が産生され、新型コロナウイルス感染時には、ウイルスと戦います。
そしてこのスパイクタンパクは、ACE2受容体を介して血管内に侵入するので
全身にくまなく行き渡り抗体産生を促します。
粘膜にも行き渡ります。
結果として、IgA抗体、IgM抗体、IgG抗体が作られます。
IgA抗体、IgG抗体は一定期間継続して残るので、感染予防効果が期待できます。
このように、新型コロナワクチンの有効性は間違いなくあると思われます。


一方、スパイクタンパクそのものが、身体に対して、特に心血管系に対して、
障害をもたらす
可能性があります。
日本でファイザー社のワクチンを700万人くらい接種した、2021/5/21時点で、
接種後死亡者が85人ありました。
そのほとんどが、脳出血など心血管系の障害でした。
スパイクタンパクが、血管内に侵入して、脳出血などを起こす確率は低いとはいえ
ロシアンルーレットのようなものです。
また、ACE2受容体は、血管、肺、心臓、小腸、腎臓、精巣、卵巣、子宮内膜、肝臓の、特に組織表面にあるので、それを介して、スパイクタンパクは侵入します。
精巣や卵巣に侵入して一定期間とどまれば、
機能が障害されて不妊の原因となりえます。
妊娠の可能性がある女性、その女性のパートナーの男性は、
新型コロナワクチンは接種してはいけません。


人口100万人あたりの累積コロナ死者数は、
日本は欧米の12~18分の1です。
そうすると単純計算では、日本におけるワクチンの価値は、
欧米の12~18分の1に過ぎないという言い方もできます。

以下、新型コロナワクチンの問題点を列挙します。

<新型コロナワクチンの問題点>
①人類初の遺伝子ワクチンである。
②スパイクタンパクが人体にどのくらいとどまるのか不明である。
③スパイクタンパクが抗体産生以外にどのような作用を有すのか不明である。
④スパイクタンパクが心血管系に障害を与えて死亡する可能性がある。
⑤スパイクタンパクが不妊の原因となる可能性がある。
⑥長期的安全性は全く担保されていない。
⑦新型コロナに感染したときにADE(抗体依存性免疫増強)が生じる可能性がある。
⑧僅か、10ヶ月で作られ、過去にない短期間の製造である。
⑨2021年、2022年は本来臨床試験の段階である。
⑩製薬会社の利権が絡んでいる可能性がある。



これらの情報を踏まえた上で、新型コロナワクチンを接種するか否かは
自分の頭で考えて、充分吟味した上で、選択しましょう。



江部康二
糖質制限食に肯定的な信頼度の高いエビデンス。
こんばんは。
今回は、糖質制限食に肯定的なエビデンスとなる信頼度の高い論文を
取り上げてみました。
まずは、エビデンスレベルのもっとも高い
「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」
の論文で、糖質制限食の有効性を示すものを列挙してみました。

集めてみると、こんなにたくさんあるのですね。

一方、糖質制限食に否定的な、
「エビデンスレベル1+」と「エビデンスレベル1」の論文は皆無です。

この時点で、「糖質制限食是非論争」に
エビデンスレベルで、明白な決着がついたと言えます。


さらに追加で
<米国糖尿病学会と糖質制限食。その変遷。>  
について、記載しました。


<RCT(ランダム化比較試験)レベル1+>

①Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2009年
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は低炭水化物食が低脂質・低カロリー食に比し有効。13の電子データベースの2000年1月~2007年3月の低炭水化物食と低脂質食比較RCTをメタ解析。
Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
 Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
 Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009

②Obesity Reviews(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)2012年
23レポートのメタ解析によって
研究期間にかかわらず糖質制限食が体重,脂質,血糖,血圧を改善させる。
Obes Rev 2012; 13: 1048-1066Systematic review and meta-analysis of clinical trialsof the effects of low carbohydrate diets oncardiovascular risk factorsobr_1021

③システマティック・レビュー/53RCTのメタアナリシス。ランセット。
1)低脂肪食よりも糖質制限食の方が減量効果が高い。
2)低脂肪食は他の高脂肪食との比較で減量効果に有意差なし。
3)低脂肪食は普通食との比較でのみ、体重減少効果があった。
4)低脂肪食は、長期的な減量効果についての科学的裏付けがない。
Effect of Low-Fat Diet Interventions Versus Other Diet Interventions on Long-Term Weight Change in Adults:
  A Systematic Review and Meta-Analysis Lancet Diabetes Endocrinol 2015 Dec 01;3(12)968-979,
 DK Tobias, M Chen, JE Manson, DS Ludwig, W Willett, FB Hu



<RCT(ランダム化比較試験)レベル1>

①低糖質食 vs. 低脂質食。低糖質食の圧勝
低糖質食 vs. 低脂質食、減量や脂質データなどCVD(心血管疾患)リスク低減で、
低糖質食の圧勝。148人の肥満者を、1年間研究。
低糖質食は40g/日未満。
Effects of low-carbohydrate and low-fat diets: a randomized trial.
Bazzano LA et all
Ann Intern Med. 2014 Sep 2;161(5):309-18

②DIRECT低炭水化物食で一番体重減少・ HDL-C増加 
脂肪制限食(カロリー制限)、                           
地中海食(カロリー制限)、                            
低炭水化物食(カロリー無制限)の3群
低炭水化物群のみカロリー無制限のハンディがあったが、結局3群全て同じだけのカロリーが減少。満足度と満腹度。
当初糖質20g/日以下。3ヶ月後から120g/日以下を目指すも、結局女性150g/日、男性180g/日で40%の糖質。
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)
DIRECT(Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)         
322人を3群に分けて、2年間の研究。
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359.NO.3  229-241

③DIRECTのフォローアップ研究。合計6年間。
地中海食、低炭水化物食の2群は、6年後も 体重減少に有意差あり。
Four-Year Follow-up after Two-Year Dietary Interventions
 N Engl J Med 2012; 367:1373-1374October 4, 2012

④低糖質地中海食(LCMD)。HbA1cレベルの大きな減少。
低糖質地中海食(LCMD)。8年間RCT研究論文。
糖質50%未満のLCMD群(108人)と低脂肪群(107人)の比較。女性は1500kcal/日。男性は1800kcal/日。
新たに診断された2型糖尿病患者では、LCMDは低脂肪食と比較して、HbA1cレベルの大きな減少、糖尿病の寛解率が高く、糖尿病治療薬の導入を遅らせた。
Diabetes Care. 2014 Jul;37(7):1824-30.
The effects of a Mediterranean diet on the need for diabetes drugs and remission of newly diagnosed type 2 diabetes: follow-up of a randomized trial.

⑤低炭水化物食が、肥満・HDL-C・TGを改善。   
       
JAMA  2007年3月  A TO Z 体重減少研究
アトキンス、ゾーン、ラーン、オーニッシュダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果などをみた。311人の女性を上記4グループに分けて追跡。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものである。
アトキンスは低炭水化物食(スーパー糖質制限食)、ラーンとオーニッシュは高炭水化物、低脂肪食、ゾーンは炭水化物40%
低炭水化物食が体重を最も減少させて、HDL-CとTGを改善。
Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
 The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977



エビデンスレベル 「糖尿病診療ガイドライン2016」

レベル1 + 質の高いランダム化比較試験(RCT)および
     それらのメタアナリシス(MA)/システマティック・ レビュー(SR)
レベル1  それ以外のRCTおよびそれらのMA/SR
レベル2   前向きコホート研究およびそれらのMA/SR
         (事前に定めた)RCTサブ解析
レベル3  非ランダム化比較試験 前後比較試験
         後ろ向きコホート研究
         ケースコントロール研究およびそれらのMA/SR
         RCT後付けサブ解析
レベル4  横断研究 
      症例集積

*質の高いRCTとは①多数例②二重盲検、独立判定③高追跡率④ランダム割り付け法が明確などをさす。




<米国糖尿病学会と糖質制限食。
  その変遷。>  

1)2007年までは、糖質制限食を否定です。
2)2008年に、肥満を伴う糖尿病患者に1年間の期限つきで有効性を認めました。
3)2011年に、肥満を伴う糖尿病患者に2年間の期限つきで有効性を認めました。
4)2013年10月、「成人糖尿病患者の食事療法に関する声明」(ガイドライン)を
  2008年以来5年ぶりに改訂しました。
  そして適切な三大栄養素比率は確立されていないことを示し、
  全ての糖尿病患者に適した唯一無二の食事パターンは存在しないと明言しました。
  そして「糖質130g/日が平均的な最小必要量」という文言を削除し、
  肥満の有無は関係なく、期限なしで、正式に糖質制限食を容認しました。
  そして患者ごとに個別に様々な食事パターン
  〔地中海食,ベジタリアン食,糖質制限  食,低脂質食,高血圧食〕が
  受容可能としました。 
5)米国糖尿病学会は、2019年4月、
  「成人糖尿病患者または予備軍患者への栄養療法」コンセンサスレポートにおいて、
  『糖質制限食(Low-carbohydrate eating patterns)が、血糖コントロールに関してエビデンスが最も豊富である』
  と明言しました。 


江部康二
「コロナワクチン夫婦同時に打たないで」副反応対策
こんにちは。

ヤフーニュースに2020年6月1日
以下の記事が掲載されました。
アエラのニュースです。

AERAdot.
https://news.yahoo.co.jp/articles/c53e888c51fa45cce982f65807437829ed29fd85?page=1
「コロナワクチン夫婦同時に打たないで」
2回目接種後の高熱2割超 
医師に聞く副反応対策

6/1(火)

以下の>青字の記載☆は、記事のなかの山形大学付属病院の事例の要約です。
ファイザー社のワクチンを
1回目に接種をした1247人、2回目に接種をした974人です。
合計2221接種と少ないので、脳出血、脳血栓、心血管疾患、死亡、
ギランバレー症候群
といった重篤な副反応はなかったようです。
しかし2回目の接種後の副反応は結構きついです。
疲労・倦怠感が81%、頭痛が55%、発熱が43%と目立っています。
接種部位の腫れですが、人によっては腕が動かせないレベルという場合もあります。

河野太郎行政改革相は先月28日、コロナワクチン接種後に副反応が生じた場合などに公務員が「ワクチン休暇」を取れるようにしたことを表明しました。
『コロナワクチン夫婦同時に打たないで』というのは、看病が必要なレベルの副反応が2回目接種ではあり得るということでしょう。

外来患者さんでワクチン接種した人でも、2回目接種の翌日は仕事を休んだとか、2日間休んだというケースもあります。
ギターのエリック・クラプトンもワクチンの副反応で大変苦しんだようですが
こちらは、アストラゼネカ社のワクチンです。


【山形大学医学部附属病院は、
同院で接種した職員や医学部学生らの接種後の副反応について、
詳細なデータを公表した。
3月8日から4月9日にかけてアンケート調査を行い、
1回目に接種をした1247人、2回目に接種をした974人から回答を得た。
その結果、1回目接種→2回目接種で症状を訴えた人の割合は、
次のように変化していた。

(1)接種部位の痛み     91.5% → 91.6%
(2)接種部位の腫れ     9.7% → 18.1%
(3)発熱(37.5度以上)    3.3% → 43.4%
(4)疲労・倦怠感       35.4% → 80.7%
(5)頭痛           19.7% → 55.1%
(6)悪寒(寒気)       6.3% → 51.5%
(7)吐き気・嘔吐       4.0% → 10.6%
(8)注射部位以外の筋肉痛  26.1% → 37.7%
(9)関節痛           6.3% → 37.1% 】



以下の緑文字の記載は、
2021/5/19(水)のヤフーニュース、エリック・クラプトンの記事の要約です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4a67aa8a7de98cf8ad108b0e2824f4a704b07801
ギターの神様、ワクチン副反応で2週間苦しむ「焼けつくようだった」

【英アストラゼネカ製のワクチンを受けたというクラプトン、
接種後、一時はもうギターを演奏することが出来なくなるのではないかと思うほど、
体調が悪くなったといいます。

「アストラゼネカのワクチン1回目を受けたら、すぐに激しい反応があり、
それが10日間続いた。やっと回復し、
2回目の接種までに12週間を空けるように言われた」
「6週間ほど経った頃、2回目の接種がオファーされ、再びワクチンを接種した。
前よりは危険性について知っていたつもりだったが、
言うまでもなく、副反応はひどいものだった。
私の手や足は凍り付いているか、感覚がないか、
焼けつくような感じかのどれかで、2週間くらいは全く使い物にならなかった。
もうプレイすることができないのではないかと恐れた。
このワクチンは『誰にでも安全』と言われていたはずなのだが……」】