2018年01月31日 (水)
【18/01/30 あや
糖質制限中のおやつについて
現在、スタンダード糖質制限をしていますが、たまにおやつに市販のケーキ(低糖質ではないもの)を食べてしまうことがあります。そのような日はスーパー糖質制限にすれば、ケーキを食べても1日を通して考えればいつものスタンダード糖質制限ぐらいの糖質量でそんなに問題ないかと思っているのですが、先生はどう思われますでしょうか? 】
こんにちは。
あやさんから、糖質制限中のおやつについて
コメント・質問を頂きました。
スーパー糖質制限食では、一回の食事の糖質量を
<10~20g以下> が目安となります。
これは、体重64kgの2型糖尿人において、ピークは
1gの糖質が約3mg血糖値を上昇させるということが前提となっています。
空腹時血糖値が100mg/dlとコントロール良好な2型糖尿人において
40gの糖質を摂取すると、ピークの食後血糖値は220mg/dlとなり、
安全圏の180mg/dlを超えてしまいます。
それで一定の安全率を考慮して、食後血糖値が180mg/dlを超えないように
一回の食事の糖質量を<10~20g以下> と設定しています。
同様に、間食に関しては
一回の間食の糖質量<5gていど> を目安としています。
<合併症予防のための血糖目標値>
①空腹時血糖値:110mg/dl未満
②食後1時間血糖値:180mg/dl未満
③食後2時間血糖値:140mg/dl未満
①②③をクリアすることが合併症予防において肝要です。
従って、一回の食事の糖質量が大事であって、
一日の食事の糖質量はそれに準じるという位置づけです。
一回の間食においても、その糖質量が大事です。
つまり、糖尿人が、
A)『朝:20g 昼:20g 夕:20g』
の糖質をそれぞれ摂取すると合計60g/日の糖質量ですが、
食後血糖値は②③をクリアできる可能性が高いです。
しかし
B)『朝:なし 昼:なし 夕:60g』
というパターンで、一回に60g摂取だと、「60g×3mg=180mg」
の血糖上昇となるので、食後血糖値は、軽く200mg/dlを超えることとなり危険です。
また、スタンダード糖質制限食は、
3食糖質を食べている糖尿人に比べるとはるかに好ましいのですが、
スーパー糖質制限食実践者に比べると、一日一回、180mg/dlを超える
食後高血糖のリスクがあるので
そのことを承知しておくことが大切です。
江部康二
糖質制限中のおやつについて
現在、スタンダード糖質制限をしていますが、たまにおやつに市販のケーキ(低糖質ではないもの)を食べてしまうことがあります。そのような日はスーパー糖質制限にすれば、ケーキを食べても1日を通して考えればいつものスタンダード糖質制限ぐらいの糖質量でそんなに問題ないかと思っているのですが、先生はどう思われますでしょうか? 】
こんにちは。
あやさんから、糖質制限中のおやつについて
コメント・質問を頂きました。
スーパー糖質制限食では、一回の食事の糖質量を
<10~20g以下> が目安となります。
これは、体重64kgの2型糖尿人において、ピークは
1gの糖質が約3mg血糖値を上昇させるということが前提となっています。
空腹時血糖値が100mg/dlとコントロール良好な2型糖尿人において
40gの糖質を摂取すると、ピークの食後血糖値は220mg/dlとなり、
安全圏の180mg/dlを超えてしまいます。
それで一定の安全率を考慮して、食後血糖値が180mg/dlを超えないように
一回の食事の糖質量を<10~20g以下> と設定しています。
同様に、間食に関しては
一回の間食の糖質量<5gていど> を目安としています。
<合併症予防のための血糖目標値>
①空腹時血糖値:110mg/dl未満
②食後1時間血糖値:180mg/dl未満
③食後2時間血糖値:140mg/dl未満
①②③をクリアすることが合併症予防において肝要です。
従って、一回の食事の糖質量が大事であって、
一日の食事の糖質量はそれに準じるという位置づけです。
一回の間食においても、その糖質量が大事です。
つまり、糖尿人が、
A)『朝:20g 昼:20g 夕:20g』
の糖質をそれぞれ摂取すると合計60g/日の糖質量ですが、
食後血糖値は②③をクリアできる可能性が高いです。
しかし
B)『朝:なし 昼:なし 夕:60g』
というパターンで、一回に60g摂取だと、「60g×3mg=180mg」
の血糖上昇となるので、食後血糖値は、軽く200mg/dlを超えることとなり危険です。
また、スタンダード糖質制限食は、
3食糖質を食べている糖尿人に比べるとはるかに好ましいのですが、
スーパー糖質制限食実践者に比べると、一日一回、180mg/dlを超える
食後高血糖のリスクがあるので
そのことを承知しておくことが大切です。
江部康二
2018年01月30日 (火)
こんにちは。
2018年3月16日(金)、京都にて、日本糖質制限医療推進協会主催の
『人気店のパティシエに学ぶ、低糖質スイーツ教室』 を開催します。
メイン講師は、「パティスリー ロア・レギューム」 (埼玉県朝霞市)の
小寺幹成オーナーパティシエです。
小寺パティシエは、2016年11月に文化出版局から、
著書「おいしく作れる低糖質スイーツ」
http://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579212866/
を出版され、ご自身がこれまでに開発された低糖質スイーツのレシピを
惜しみなく披露しておられます。 私は帯の推薦文を書きました(*^^)v
今回のテーマは、昨年10月、台風の影響によりやむなく開催中止としたテーマで、
「アーモンドタルト&カスタードクリーム」だそうです。
定員は24名様、先着順です。 皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
*********
ブログ読者の皆様、いつも弊会の講演会やスイーツ・料理教室へ
多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室(京都)の開催をご案内申し上げます。
関西圏の方をはじめ、皆様のご参加をお待ちしております。
◇スイーツ教室情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
『人気店のパティシエに学ぶ、低糖質スイーツ教室(京都)』
「アーモンドタルト & カスタードクリーム」(第3回分)
◆日時: 2018年3月16日(金) 13:00~16:00頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
☆内容ご紹介☆
美味しい低糖質菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
講師の小寺幹成パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、 参加者の皆様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
今回のテーマは、昨年10月に実施する予定でしたが、台風の影響により中止と致しました「アーモンドタルト & カスタードクリーム」です。
低糖質の粉類を組み合わせて、基本のタルトの作り方を実習いただきます。
プレーンのタルト生地にアーモンドクリームをのせ、2層の味が楽しめるアーモンドタルトを作ります。
さらに、今回のレッスンでは、低糖質の「カスタードクリーム」の実習も。タルトと組み合わせて、「カスタードタルト」に仕上げます。
カスタードクリームを低糖質で作るのは難しいところですが、今回も小寺パティシエが様々なテクニックをしっかりレクチャーくださいます。
それぞれに応用範囲の広い、タルトとカスタードクリーム。この機会に習得してみませんか。
◆定員・対象: 24名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明 → 実習 → 試食(復習・歓談) → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの: エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
■お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局までメールにてお申し込みください。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読みください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「3/16京都スイーツ教室、参加希望」とご記入ください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加のみご希望の方:
下のフォームからお申し込みください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/lesson-a
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。開場・受付は、レッスン開始時間の15分前からです。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、3月12日(月)までに ご連絡ください。
3月13日(火)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金としていただきますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○
2018年3月16日(金)、京都にて、日本糖質制限医療推進協会主催の
『人気店のパティシエに学ぶ、低糖質スイーツ教室』 を開催します。
メイン講師は、「パティスリー ロア・レギューム」 (埼玉県朝霞市)の
小寺幹成オーナーパティシエです。
小寺パティシエは、2016年11月に文化出版局から、
著書「おいしく作れる低糖質スイーツ」
http://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579212866/
を出版され、ご自身がこれまでに開発された低糖質スイーツのレシピを
惜しみなく披露しておられます。 私は帯の推薦文を書きました(*^^)v
今回のテーマは、昨年10月、台風の影響によりやむなく開催中止としたテーマで、
「アーモンドタルト&カスタードクリーム」だそうです。
定員は24名様、先着順です。 皆さん奮ってご参加くださいね^^v
江部康二
以下、事務局からのお知らせです。
*********
ブログ読者の皆様、いつも弊会の講演会やスイーツ・料理教室へ
多数ご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日は、低糖質スイーツ教室(京都)の開催をご案内申し上げます。
関西圏の方をはじめ、皆様のご参加をお待ちしております。
◇スイーツ教室情報URL: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
『人気店のパティシエに学ぶ、低糖質スイーツ教室(京都)』
「アーモンドタルト & カスタードクリーム」(第3回分)
◆日時: 2018年3月16日(金) 13:00~16:00頃 ※開場・受付は12:45~
◆会場: あじわい館(京の食文化ミュージアム)調理実習室
〒600-8813 京都市下京区中堂寺南町130番地 京都青果センタービル3階
http://www.kyo-ajiwaikan.com/access
♪講師:
・小寺幹成 「パティスリー ロア・レギューム」オーナーパティシエ
・佐々木栄子 管理栄養士/健康運動実践指導者
◆参加費: 賛助会員料金 3,400円/一般料金 4,000円
☆内容ご紹介☆
美味しい低糖質菓子をご自宅で作っていただけるように、お菓子作りの基礎から学べる講座です。
講師の小寺幹成パティシエに低糖質菓子を作る際のコツや工夫、様々な技術をデモンストレーションや実習でレクチャーいただき、 参加者の皆様からの質問や疑問にもお答えいただきます。
今回のテーマは、昨年10月に実施する予定でしたが、台風の影響により中止と致しました「アーモンドタルト & カスタードクリーム」です。
低糖質の粉類を組み合わせて、基本のタルトの作り方を実習いただきます。
プレーンのタルト生地にアーモンドクリームをのせ、2層の味が楽しめるアーモンドタルトを作ります。
さらに、今回のレッスンでは、低糖質の「カスタードクリーム」の実習も。タルトと組み合わせて、「カスタードタルト」に仕上げます。
カスタードクリームを低糖質で作るのは難しいところですが、今回も小寺パティシエが様々なテクニックをしっかりレクチャーくださいます。
それぞれに応用範囲の広い、タルトとカスタードクリーム。この機会に習得してみませんか。
◆定員・対象: 24名様 ・一般(18歳以上)
◆当日の流れ: レシピ説明 → 実習 → 試食(復習・歓談) → 片付け後、解散
◆ご持参いただくもの: エプロン、三角巾、ふきん(タオル)2枚(台ふき用・食器ふき用)、筆記用具
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込みください。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越しいただき、受付にてお名前をお伝えください。
■お申し込み方法:
※当教室は、一般の方にご自宅で作っていただくことを趣旨とした教室です。
製菓や料理のお仕事をしておられる方、食品会社で企画・開発をしておられる方など、
業界の方の場合は、その旨をお書き添えの上、お申し込みください。
★賛助会員の方: 事務局までメールにてお申し込みください。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読みください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「入会ならびに講演会出席のお問い合わせ」を選択いただき、
「通信」欄に「3/16京都スイーツ教室、参加希望」とご記入ください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(会員以外の方)で、教室参加のみご希望の方:
下のフォームからお申し込みください。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/lesson-a
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。開場・受付は、レッスン開始時間の15分前からです。
・お申し込み後、キャンセルされる場合は、3月12日(月)までに ご連絡ください。
3月13日(火)以降のキャンセルは、参加費の半額をキャンセル料金としていただきますので、予めご了承ください。
・実習室で作ったもの以外の飲食はできません。ご自宅で作ったお料理やお菓子などの持ち込みはできませんのでご注意ください。
・皆さまで実習と試食を行っていただきますので、香水などのフレグランスはお控えください。
●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○―●―○
2018年01月29日 (月)
【18/01/29 なつ
妊娠糖尿病 産後OGTT
江部先生こんにちは。
28週で妊娠糖尿病、空腹時70. 1時間202. 2時間169 ヘモグロビンa1c4.9でした。
妊娠中は糖質制限をし無事健康な赤ちゃんを出産いたしました。
その後妊娠中の糖質制限の反動と母乳での空腹で厳しめの糖質制限を解除し
ピザやお寿司、間食にお菓子などを食べていました。
3か月後の産後OGTTでは
空腹時85. 1時間205. 2時間114 ヘモグロビンa1cは5.2でした。
産後は正常に戻るかと思いきや1時間値だけが高いままでした。
これは元々1時間値が高い体質だったのでしょうか。
2時間値が正常なので産後ホルモンはもう関係ないのでしょうか。
ヘモグロビンa1cは5.2で正常なので、
単に空腹時のブドウ糖で上がってしまっただけなのでしょうか…。】
なつさん、
妊娠糖尿病と診断後、糖質制限食実践で
無事健康な赤ちゃんを出産、良かったです。
おめでとうございます。
糖質制限食実践で、妊娠中の体重コントロールが容易となり、
産道に脂肪もつきにくいので、
帝王切開率が減って、安産になることが多いです。
『28週 空腹時70mg/dl 1時間202mg/dl 2時間169mg/dl HbA1c4.9%』
これは、75g経口ブドウ糖負荷試験のデータでしょうか?
HbA1cが4.9%なら、平均血糖値は93.9mg/dlです。(※)
1時間値と2時間値が高血糖なのに、平均血糖値が93.9mgと低めなのは、
夜間や空腹時に60mg/dl未満の低血糖が存在した可能性があります。
従って、普通の糖尿病食を食べていたら、
「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」「低血糖」という酸化ストレスリスクが増大し
母子ともに危険があったと思います。
糖質制限食を実践されて、リスク回避できて、とても良かったです。
普通の糖尿病食で、1800kcal/日、糖質60%なら、
一回の食事の糖質量は、約90gありますので
食後1時間値は200mg/dlを超え、
2時間値も180mg/dlを超えた可能性が高いです。
これに加えて、「平均血糖変動幅増大」「低血糖」です。
『3か月後の産後OGTT
空腹時85mg/dl 1時間205mg/dl 2時間114mg/dl HbA1c5.2%』
産後のOGTTは、耐糖能としては、正常型に改善しています。
しかし、1時間値が205mg/dlと180mg/dlを超えているので
将来糖尿病になりやすいタイプです。
家族歴で糖尿病は大丈夫ですか?
また妊娠糖尿病になったことも、まったく耐糖能正常の妊婦に比べると
耐糖能に一定の問題があったわけなので、将来糖尿病になりやすいです。
このように、二重に糖尿病になりやすい体質ですので
今から糖質制限食を実践されて、将来の糖尿病予防を心がけるのが安全と思います。
1gの糖質が、ピークで血糖値を1.6mg/dl上昇させています。
一回の食事の糖質量を40gくらいまでの緩やかな糖質制限食でも
充分将来の糖尿病が予防できると思います。
美味しく楽しく糖質制限食をお続けいただければ幸いです。
※平均血糖値 = 「HbA1c×28.7」 - 46.7
江部康二
【18/01/30
タイトルなし
江部先生
コメント取り上げて頂きありがとうございます。妊娠28週の血糖値はOGTTのものです。
祖母兄弟に糖尿病があるので遺伝もあります。
産後3か月75gOGTTでは1時間値だけが異常値でした。
しかしヘモグロビンa1cは5.2ですがこれは普段の食生活では高血糖ではないのでしょうか?
妊娠中はホルモンの影響で高血糖になりましたが
産後何故2時間値が改善されて1時間値が全く変化がないのでしょうか?
無知で色々質問してしまい申し訳ありません…】
なつさん
①元々、OGTT1時間値は180mg/dlを超えていて、糖尿病になりやすい体質です。
②妊娠糖尿病を発症したこと自体が、耐糖能が、正常妊婦より悪く、糖尿病になりやすい体質です。
③祖母兄弟に糖尿病があるので、遺伝的にも糖尿病になりやすい体質です。
④OGTT1時間値が200mg/dlを超えているのは、そういう体質です。
⑤「HbA1c:5.2%」ですが、糖質を食べていると、食後高血糖と空腹時低血糖のある「質の悪いHbA1c」と思われます。
⑥緩くてもいいので糖質制限食なら食後高血糖と空腹時低血糖のない「質のいいHbA1c」になります。
妊娠糖尿病 産後OGTT
江部先生こんにちは。
28週で妊娠糖尿病、空腹時70. 1時間202. 2時間169 ヘモグロビンa1c4.9でした。
妊娠中は糖質制限をし無事健康な赤ちゃんを出産いたしました。
その後妊娠中の糖質制限の反動と母乳での空腹で厳しめの糖質制限を解除し
ピザやお寿司、間食にお菓子などを食べていました。
3か月後の産後OGTTでは
空腹時85. 1時間205. 2時間114 ヘモグロビンa1cは5.2でした。
産後は正常に戻るかと思いきや1時間値だけが高いままでした。
これは元々1時間値が高い体質だったのでしょうか。
2時間値が正常なので産後ホルモンはもう関係ないのでしょうか。
ヘモグロビンa1cは5.2で正常なので、
単に空腹時のブドウ糖で上がってしまっただけなのでしょうか…。】
なつさん、
妊娠糖尿病と診断後、糖質制限食実践で
無事健康な赤ちゃんを出産、良かったです。
おめでとうございます。
糖質制限食実践で、妊娠中の体重コントロールが容易となり、
産道に脂肪もつきにくいので、
帝王切開率が減って、安産になることが多いです。
『28週 空腹時70mg/dl 1時間202mg/dl 2時間169mg/dl HbA1c4.9%』
これは、75g経口ブドウ糖負荷試験のデータでしょうか?
HbA1cが4.9%なら、平均血糖値は93.9mg/dlです。(※)
1時間値と2時間値が高血糖なのに、平均血糖値が93.9mgと低めなのは、
夜間や空腹時に60mg/dl未満の低血糖が存在した可能性があります。
従って、普通の糖尿病食を食べていたら、
「食後高血糖」「平均血糖変動幅増大」「低血糖」という酸化ストレスリスクが増大し
母子ともに危険があったと思います。
糖質制限食を実践されて、リスク回避できて、とても良かったです。
普通の糖尿病食で、1800kcal/日、糖質60%なら、
一回の食事の糖質量は、約90gありますので
食後1時間値は200mg/dlを超え、
2時間値も180mg/dlを超えた可能性が高いです。
これに加えて、「平均血糖変動幅増大」「低血糖」です。
『3か月後の産後OGTT
空腹時85mg/dl 1時間205mg/dl 2時間114mg/dl HbA1c5.2%』
産後のOGTTは、耐糖能としては、正常型に改善しています。
しかし、1時間値が205mg/dlと180mg/dlを超えているので
将来糖尿病になりやすいタイプです。
家族歴で糖尿病は大丈夫ですか?
また妊娠糖尿病になったことも、まったく耐糖能正常の妊婦に比べると
耐糖能に一定の問題があったわけなので、将来糖尿病になりやすいです。
このように、二重に糖尿病になりやすい体質ですので
今から糖質制限食を実践されて、将来の糖尿病予防を心がけるのが安全と思います。
1gの糖質が、ピークで血糖値を1.6mg/dl上昇させています。
一回の食事の糖質量を40gくらいまでの緩やかな糖質制限食でも
充分将来の糖尿病が予防できると思います。
美味しく楽しく糖質制限食をお続けいただければ幸いです。
※平均血糖値 = 「HbA1c×28.7」 - 46.7
江部康二
【18/01/30
タイトルなし
江部先生
コメント取り上げて頂きありがとうございます。妊娠28週の血糖値はOGTTのものです。
祖母兄弟に糖尿病があるので遺伝もあります。
産後3か月75gOGTTでは1時間値だけが異常値でした。
しかしヘモグロビンa1cは5.2ですがこれは普段の食生活では高血糖ではないのでしょうか?
妊娠中はホルモンの影響で高血糖になりましたが
産後何故2時間値が改善されて1時間値が全く変化がないのでしょうか?
無知で色々質問してしまい申し訳ありません…】
なつさん
①元々、OGTT1時間値は180mg/dlを超えていて、糖尿病になりやすい体質です。
②妊娠糖尿病を発症したこと自体が、耐糖能が、正常妊婦より悪く、糖尿病になりやすい体質です。
③祖母兄弟に糖尿病があるので、遺伝的にも糖尿病になりやすい体質です。
④OGTT1時間値が200mg/dlを超えているのは、そういう体質です。
⑤「HbA1c:5.2%」ですが、糖質を食べていると、食後高血糖と空腹時低血糖のある「質の悪いHbA1c」と思われます。
⑥緩くてもいいので糖質制限食なら食後高血糖と空腹時低血糖のない「質のいいHbA1c」になります。
2018年01月28日 (日)
こんばんは。
朝日カルチャーセンター湘南教室教室・糖質制限食講座のご案内です。
糖質制限食の最新の知識や情報をわかりやすく楽しくお話します。
70分間の講演と20分間の質疑応答となります。
横浜、東京、関東方面の方々、是非ご参加いただけば幸いです。
お陰様で、糖質制限食は順調に普及してきています。
2005年に私が「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(東洋経済新報社)
を日本初の糖質制限食の本として刊行したころとは、大きな違いがあります。
なんと言っても、2013年10月に米国糖尿病学会が5年ぶりに改訂した
「栄養療法に関する声明」のなかで、
地中海食やベジタリアン食などどともに「糖質制限食」を正式に容認したことが、
大きな追い風となりました。
この1~2年、糖質制限食の展開において大きな発展があり
いい意味のサプライズもありました。
2016年7月のNHKクローズアップ現代の試算によれば、
糖質制限市場は、3184億円とのことです。
医学界より、企業のほうが糖質制限食をビジネスチャンスと捉えて
行動が迅速なようです。
2017年にはくら寿司やガストなども糖質制限メニューを投入で、なかなかのものです。
一方、医学界においても、嬉しいサプライズです。
2017年2月7日(火)午後から、生まれて初めて東京大学医学部に行ってきました。
教授室で、渡邊昌先生、門脇孝先生、江部康二の3人で鼎談を行いました。
二人で話し合うのが対談で、三人で話し合うのが鼎談です。
渡邊昌先生は、医学雑誌「医と食」の編集長です。
門脇孝先生は、
一般社団法人 日本糖尿病学会 理事長
であり、
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授
です。
日本糖尿病学会のトップとじっくり話し合うことができて、
とても有意義な90分間でした。
糖質制限食の発展、まさに、今昔の感ありですね。
江部康二
☆☆☆
以下
朝日カルチャーセンター湘南教室のサイトから
https://www.asahiculture.jp/shonan/course/33aeaa44-8384-4b97-fc0d-59cf80830b3e
糖尿病&生活習慣病と糖質制限食
人類本来の食事、人類の健康食
講師名 高雄病院理事長 江部 康二
講座内容
近年糖質制限食が注目されています。糖質制限食は糖尿病治療食として開始され、
数多くの臨床活動を通して肥満・メタボなど様々な生活習慣病にも有効ということが判明しました。
私自身が2002年から15年間実践中で、肥満と糖尿病を克服しています。
運動を勧められても長続きしなかった方や色々なダイエットを試したけれど効果が表れなかった方、
またこれから糖質制限食を始めてみようと思われている方に向け、
その正しい知識と治療効果、カロリー制限食と糖質制限食の比較、注意点等をお話しします。
糖質制限食で、明日からの食生活を美味しく・楽しく・健康に!(講師記)
日時・期間 土曜 15:30-17:00 3/10 1回
日程 2018年 3/10
受講料(税込み) 会員 3,024円 一般 3,672円
注意事項 席は自由席です。必要に応じて資料を配布します。
*個人的は治療相談は承りかねますので、ご了承ください。
お申し込み
電話:0466-24-2255
講師紹介 江部 康二 (エベ コウジ)
<プロフィール>
・1950年生まれ。
・1974年京都大学医学部卒業。
・1974年から京都大学胸部疾患研究所第一内科(現在京大呼吸器内科)
にて呼吸器科を学ぶ。
・1978年から高雄病院に医局長として勤務。1996年副院長就任。
・1999年高雄病院に糖質制限食導入。
・2000年理事長就任。
・2001年から糖質制限食に本格的に取り組む。
・ 2002年に自ら糖尿病であると気づいて以来、さらに糖尿病治療の研究に力を 注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。これにより自身の糖尿病を克服。
内科医/漢方医/一般財団法人高雄病院理事長/一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
<著書>
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』2005年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編』2008年(東洋経済新報社)
『我ら糖尿人、元気なのにはわけがある』2009年(東洋経済新報社・作家宮本輝氏との対談本)
『糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食』2010年(ナツメ社)
『主食をやめると健康になる』2011年(ダイヤモンド社)
『食品別糖質量ハンドブック』2012年(洋泉社)監修
『糖質オフ!健康法』2012年(PHP文庫)
『糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド』2013年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!新版』2014年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!2 実践編 新版』2014年(東洋経済新報社)
『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません』2014年(東洋経済新報社)
『なぜ糖質制限をすると糖尿病が良くなるのか』2015年(ナツメ社)
『糖質制限の教科書』2015年(洋泉社)監修
『よくわかる! すぐできる! 「 糖質オフ! 」健康法 』2016年(PHP研究所)
『人類最強の「糖質制限」論~ケトン体を味方に して痩せる、健康になる』2016年(SB新書)
『江部康二の糖質制限革命』2017年(東洋経済新報社)
など多数。
ブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記( http://koujiebe.blog95.fc2.com/ )は日に数千件のアクセスがあり、糖尿病のかたやそのご家族から寄せられた質問への回答や、糖尿病・糖質制限食に関する 情報の発信に、日々尽力している。
朝日カルチャーセンター湘南教室教室・糖質制限食講座のご案内です。
糖質制限食の最新の知識や情報をわかりやすく楽しくお話します。
70分間の講演と20分間の質疑応答となります。
横浜、東京、関東方面の方々、是非ご参加いただけば幸いです。
お陰様で、糖質制限食は順調に普及してきています。
2005年に私が「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(東洋経済新報社)
を日本初の糖質制限食の本として刊行したころとは、大きな違いがあります。
なんと言っても、2013年10月に米国糖尿病学会が5年ぶりに改訂した
「栄養療法に関する声明」のなかで、
地中海食やベジタリアン食などどともに「糖質制限食」を正式に容認したことが、
大きな追い風となりました。
この1~2年、糖質制限食の展開において大きな発展があり
いい意味のサプライズもありました。
2016年7月のNHKクローズアップ現代の試算によれば、
糖質制限市場は、3184億円とのことです。
医学界より、企業のほうが糖質制限食をビジネスチャンスと捉えて
行動が迅速なようです。
2017年にはくら寿司やガストなども糖質制限メニューを投入で、なかなかのものです。
一方、医学界においても、嬉しいサプライズです。
2017年2月7日(火)午後から、生まれて初めて東京大学医学部に行ってきました。
教授室で、渡邊昌先生、門脇孝先生、江部康二の3人で鼎談を行いました。
二人で話し合うのが対談で、三人で話し合うのが鼎談です。
渡邊昌先生は、医学雑誌「医と食」の編集長です。
門脇孝先生は、
一般社団法人 日本糖尿病学会 理事長
であり、
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授
です。
日本糖尿病学会のトップとじっくり話し合うことができて、
とても有意義な90分間でした。
糖質制限食の発展、まさに、今昔の感ありですね。
江部康二
☆☆☆
以下
朝日カルチャーセンター湘南教室のサイトから
https://www.asahiculture.jp/shonan/course/33aeaa44-8384-4b97-fc0d-59cf80830b3e
糖尿病&生活習慣病と糖質制限食
人類本来の食事、人類の健康食
講師名 高雄病院理事長 江部 康二
講座内容
近年糖質制限食が注目されています。糖質制限食は糖尿病治療食として開始され、
数多くの臨床活動を通して肥満・メタボなど様々な生活習慣病にも有効ということが判明しました。
私自身が2002年から15年間実践中で、肥満と糖尿病を克服しています。
運動を勧められても長続きしなかった方や色々なダイエットを試したけれど効果が表れなかった方、
またこれから糖質制限食を始めてみようと思われている方に向け、
その正しい知識と治療効果、カロリー制限食と糖質制限食の比較、注意点等をお話しします。
糖質制限食で、明日からの食生活を美味しく・楽しく・健康に!(講師記)
日時・期間 土曜 15:30-17:00 3/10 1回
日程 2018年 3/10
受講料(税込み) 会員 3,024円 一般 3,672円
注意事項 席は自由席です。必要に応じて資料を配布します。
*個人的は治療相談は承りかねますので、ご了承ください。
お申し込み
電話:0466-24-2255
講師紹介 江部 康二 (エベ コウジ)
<プロフィール>
・1950年生まれ。
・1974年京都大学医学部卒業。
・1974年から京都大学胸部疾患研究所第一内科(現在京大呼吸器内科)
にて呼吸器科を学ぶ。
・1978年から高雄病院に医局長として勤務。1996年副院長就任。
・1999年高雄病院に糖質制限食導入。
・2000年理事長就任。
・2001年から糖質制限食に本格的に取り組む。
・ 2002年に自ら糖尿病であると気づいて以来、さらに糖尿病治療の研究に力を 注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。これにより自身の糖尿病を克服。
内科医/漢方医/一般財団法人高雄病院理事長/一般社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長。
<著書>
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』2005年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編』2008年(東洋経済新報社)
『我ら糖尿人、元気なのにはわけがある』2009年(東洋経済新報社・作家宮本輝氏との対談本)
『糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食』2010年(ナツメ社)
『主食をやめると健康になる』2011年(ダイヤモンド社)
『食品別糖質量ハンドブック』2012年(洋泉社)監修
『糖質オフ!健康法』2012年(PHP文庫)
『糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド』2013年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!新版』2014年(東洋経済新報社)
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!2 実践編 新版』2014年(東洋経済新報社)
『炭水化物の食べすぎで早死にしてはいけません』2014年(東洋経済新報社)
『なぜ糖質制限をすると糖尿病が良くなるのか』2015年(ナツメ社)
『糖質制限の教科書』2015年(洋泉社)監修
『よくわかる! すぐできる! 「 糖質オフ! 」健康法 』2016年(PHP研究所)
『人類最強の「糖質制限」論~ケトン体を味方に して痩せる、健康になる』2016年(SB新書)
『江部康二の糖質制限革命』2017年(東洋経済新報社)
など多数。
ブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記( http://koujiebe.blog95.fc2.com/ )は日に数千件のアクセスがあり、糖尿病のかたやそのご家族から寄せられた質問への回答や、糖尿病・糖質制限食に関する 情報の発信に、日々尽力している。
2018年01月27日 (土)
こんばんは。
今回は、
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」について考えてみます。
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」とは、
FT3という甲状腺ホルモンだけが低値で、FT4という甲状腺ホルモンは正常で、
TSH(甲状腺刺激ホルモン)も正常な病態ですが、
これは、甲状腺機能低下症ではありません。
この「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は、臨床上、時々見かけます。
慢性消耗性の疾患で低栄養のときに見かけます。
例えば神経性食思不振症などでは比較的よく見られます。
これらは、低栄養のため見かけ上、FT3が低値なだけで、
本当の甲状腺機能低下症ではありません。
従って、甲状腺ホルモンのチラージンSなどを投与しても無意味です。
治療は原疾患の慢性消耗状態や低栄養状態を改善してやれば、
おのずから低FT3も改善して正常値となるのです。
意外かもしれませんが、神経性食思不振症では、
高コレステロール血症が見られることが多いです。
つまり摂取エネルギー不足でもコレステロール値が上昇する場合があるということです。
スーパー糖質制限食を実践して、体力がおちて
ヘロヘロになったり、
筋力が落ちたり、生理が止まったり、
髪の毛が抜けたりといった症状を訴える方々がたまにおられます。
これは糖質制限食のせいではなく、脂質も制限して、
結果として摂取エネルギーが低過ぎたために生じる症状です。
この時、血液検査をしてFT3が低いと、
甲状腺機能低下症と誤診する可能性があります。
しかしこれは「Low T3 syndrome(低T3症候群)」であり、
TSHが正常ならば、本当の甲状腺機能低下症ではありません。
真の甲状腺機能低下症なら、必ずTSHが上昇しますので鑑別は容易です。
摂取エネルギーを標準まで増やせば、症状も改善してFT3も改善します。
要は 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という状態を
医師が認識しているかどうかです。
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という概念をご存じない医師が結構おられるので
注意が必要です。
江部康二
今回は、
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」について考えてみます。
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」とは、
FT3という甲状腺ホルモンだけが低値で、FT4という甲状腺ホルモンは正常で、
TSH(甲状腺刺激ホルモン)も正常な病態ですが、
これは、甲状腺機能低下症ではありません。
この「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は、臨床上、時々見かけます。
慢性消耗性の疾患で低栄養のときに見かけます。
例えば神経性食思不振症などでは比較的よく見られます。
これらは、低栄養のため見かけ上、FT3が低値なだけで、
本当の甲状腺機能低下症ではありません。
従って、甲状腺ホルモンのチラージンSなどを投与しても無意味です。
治療は原疾患の慢性消耗状態や低栄養状態を改善してやれば、
おのずから低FT3も改善して正常値となるのです。
意外かもしれませんが、神経性食思不振症では、
高コレステロール血症が見られることが多いです。
つまり摂取エネルギー不足でもコレステロール値が上昇する場合があるということです。
スーパー糖質制限食を実践して、体力がおちて
ヘロヘロになったり、
筋力が落ちたり、生理が止まったり、
髪の毛が抜けたりといった症状を訴える方々がたまにおられます。
これは糖質制限食のせいではなく、脂質も制限して、
結果として摂取エネルギーが低過ぎたために生じる症状です。
この時、血液検査をしてFT3が低いと、
甲状腺機能低下症と誤診する可能性があります。
しかしこれは「Low T3 syndrome(低T3症候群)」であり、
TSHが正常ならば、本当の甲状腺機能低下症ではありません。
真の甲状腺機能低下症なら、必ずTSHが上昇しますので鑑別は容易です。
摂取エネルギーを標準まで増やせば、症状も改善してFT3も改善します。
要は 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という状態を
医師が認識しているかどうかです。
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」という概念をご存じない医師が結構おられるので
注意が必要です。
江部康二
2018年01月26日 (金)
こんにちは。
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年2月25日(日)、大阪にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(大阪)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
関西、中国、九州、北陸の医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年2月25日(日)、大阪にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
*3/11(日)の医療従事者向けセミナー(東京)も引き続き募集しております。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 大阪
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年2月25日(日)13:15~16:50頃 ※開場・受付は13:00~
■会場: 大阪大学中之島センター5F 講義室507
〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「2/25大阪セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは2月23日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年2月25日(日)、大阪にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(大阪)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
関西、中国、九州、北陸の医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年2月25日(日)、大阪にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
*3/11(日)の医療従事者向けセミナー(東京)も引き続き募集しております。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 大阪
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年2月25日(日)13:15~16:50頃 ※開場・受付は13:00~
■会場: 大阪大学中之島センター5F 講義室507
〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「2/25大阪セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは2月23日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2018年01月25日 (木)
【18/01/24 魚田フラント
SGLT2阻害剤について
1/9のHbA1cが7.0 と悪化してきている糖質セイゲニストの魚田フラントです。お世話になります。
小生、メトグルコ、セイブル、ジャヌビアに加え、2週間前に「ルセフィ2.5mg」を毎朝食後1錠を追加処方され、服用してきました。
体重はこの間で56.35kg→54.80kgに減少しました。
SMBGは、毎朝食前と就寝前に測っていますが、近頃140台から150台もあった空腹時血糖値が90〜100台に劇的に改善されました。
その効果に改めてビックリしました。腎臓で糖再処理をさせず尿糖で流すこの薬の作用ですね。
ところで、尿糖検査紙 「新ウリエースGA 」の取説によれば「食後に計測」とかかれていますが、試しにルセフィを飲んだ翌日朝一番に測ってみたところ尿糖+++の表示になりました。で、その日は一日中服用せず、翌日朝一番にも測ったところやはり尿糖+++でした。で二日目も服用せずで三日目の朝一番で尿糖++の表示になりました。そこで、担当の先生に毎日飲むのかを伺いましたらそうだということで、以後は毎日のんでいます。(メトグルコはのんでいますが、セイブルとジャヌビアは止めています。食前食後のSMBG値が100〜140台と改善されているので)
お伺いしたいのは、この薬はそれでも毎日飲む必要があるんでしょうか?
効き目が弱くなったら飲む-例えば3日に一錠ずつ-とかの飲み方はないのでしょうか?素朴な疑問です。 】
こんばんは。
魚田フラントさんから
SGLT2阻害薬と尿糖と空腹時血糖についてコメントを頂きました。
とても参考になります。
ありがとうございます。
『140台から150台もあった空腹時血糖値が90〜100台に劇的に改善されました。』
そうですね。早朝空腹時血糖値はSGLT2阻害薬内服の翌日には
結構劇的に改善することがあります。
『試しにルセフィを飲んだ翌日朝一番に測ってみたところ尿糖+++の表示になりました。で、その日は一日中服用せず、翌日朝一番にも測ったところやはり尿糖+++でした。で二日目も服用せずで三日目の朝一番で尿糖++の表示になりました。』
メーカーは、SGLT2阻害薬の効果は、1日で消えるといいますが、
内服中止しても、結構尿糖が出続けることがあります。
個人差があるようですが、私の患者さんでは
中止後も数日以上尿糖が出続けた人もいます。
しかしながら、
内服中止した場合は、改善していた空腹時血糖値が翌日には上昇し始めるので
やはり毎日内服する必要があると思います。
江部康二
SGLT2阻害剤について
1/9のHbA1cが7.0 と悪化してきている糖質セイゲニストの魚田フラントです。お世話になります。
小生、メトグルコ、セイブル、ジャヌビアに加え、2週間前に「ルセフィ2.5mg」を毎朝食後1錠を追加処方され、服用してきました。
体重はこの間で56.35kg→54.80kgに減少しました。
SMBGは、毎朝食前と就寝前に測っていますが、近頃140台から150台もあった空腹時血糖値が90〜100台に劇的に改善されました。
その効果に改めてビックリしました。腎臓で糖再処理をさせず尿糖で流すこの薬の作用ですね。
ところで、尿糖検査紙 「新ウリエースGA 」の取説によれば「食後に計測」とかかれていますが、試しにルセフィを飲んだ翌日朝一番に測ってみたところ尿糖+++の表示になりました。で、その日は一日中服用せず、翌日朝一番にも測ったところやはり尿糖+++でした。で二日目も服用せずで三日目の朝一番で尿糖++の表示になりました。そこで、担当の先生に毎日飲むのかを伺いましたらそうだということで、以後は毎日のんでいます。(メトグルコはのんでいますが、セイブルとジャヌビアは止めています。食前食後のSMBG値が100〜140台と改善されているので)
お伺いしたいのは、この薬はそれでも毎日飲む必要があるんでしょうか?
効き目が弱くなったら飲む-例えば3日に一錠ずつ-とかの飲み方はないのでしょうか?素朴な疑問です。 】
こんばんは。
魚田フラントさんから
SGLT2阻害薬と尿糖と空腹時血糖についてコメントを頂きました。
とても参考になります。
ありがとうございます。
『140台から150台もあった空腹時血糖値が90〜100台に劇的に改善されました。』
そうですね。早朝空腹時血糖値はSGLT2阻害薬内服の翌日には
結構劇的に改善することがあります。
『試しにルセフィを飲んだ翌日朝一番に測ってみたところ尿糖+++の表示になりました。で、その日は一日中服用せず、翌日朝一番にも測ったところやはり尿糖+++でした。で二日目も服用せずで三日目の朝一番で尿糖++の表示になりました。』
メーカーは、SGLT2阻害薬の効果は、1日で消えるといいますが、
内服中止しても、結構尿糖が出続けることがあります。
個人差があるようですが、私の患者さんでは
中止後も数日以上尿糖が出続けた人もいます。
しかしながら、
内服中止した場合は、改善していた空腹時血糖値が翌日には上昇し始めるので
やはり毎日内服する必要があると思います。
江部康二
2018年01月24日 (水)
【18/01/24 tama
タイトルなし
スーパー糖質制限8年目の2型糖尿病50代男性です。
糖質制限に不安を抱くご意見が見受けられるので、
どなたかの参考になればと思い私の体験をご報告いたします。
特定検診で糖尿病発覚し専門医の指導によりカロリー制限を開始。
(2011/10 糖尿病発覚時 A1C 11.1 空腹時血糖値 289 中性脂肪 239)
1ヵ月後にブログでカーボカウンティングを知り(この手法を実践されていた先達のブログ、カーボカウントの日々さん他数名)、記述を貪るように読み込み、
私自身素人ながら理論上間違いないと判断し開始する。
(スーパー糖質制限と同程度 2011/11 A1C 7.3 空腹時血糖値 136 中性脂肪 130)
そのころから体調に変化が有りました。症状は身体の異常なほどの冷えのため夜間に覚醒する事が週に3日程度起こりました。当時は原因が判りませんでしたか、今にして思えば最近ネット上を騒がしている低T3症候群ではと考えています。
それまでの糖質まみれの食生活から一転したため脂質、タンパク質を中心とした代謝への移行に2ヶ月から3ヶ月要したと思います。(私の場合)
*その後は真冬でも足先までポカポカして冷えで夜間覚醒することは有りません。
先達の体験に私自身が納得して始めたものの、医師の指導も無く続けていく不安は心の片隅に何時も有りましたので、2012/春頃に糖質制限=江部先生を知ったときはとても安堵いたしました。
江部先生のブログコメントにハーパー生化学が引用されたら確認のため早速購入し、ヒューマニュートリション基礎食事臨床が引用されたら確認のため購入し、バーンスタイン医師の糖尿病の解決が引用されたら確認のため購入し。(私のバイブルとなっています。しかし医学関連書価格のボッタク. 以下略)
又、ネットでレジスタントスターチの血糖値への影響の話題が出れば3ヶ月冷凍後白米を解凍し食し。
一方の主張を妄信すること無く、
異なる主張や客観的意見を自分自身が一歩引いて俯瞰するよう心がけています。
より適切な理論は明快で美しいと感じます。
結論ありきで構築していく理論は何処かで齟齬が生じると思います。
糖質まみれの食生活から一夜にして厳格な糖質制限に移行した場合に、
私のように暫くは不調が続く人がいるかも知れません。
不調になってから糖質リハビリと称して糖質を増加するよりは、
不安な人は糖質制限を始める時点でプチ糖質制限で体調の変化を見ながら数ヶ月かけて糖質を減らしていくのが無難かも知れません。
糖質制限不適応の方は当てはまりませんが。
医療ドラマのシカゴメッドでもそのような患者が運び込まれたシーンが有ったような?。
2012/6
A1C 5.9 空腹時血糖値 128 中性脂肪 55 以降現在までほぼ変動無し
長文失礼いたしました。】
こんにちは。
tamaさん(スーパー糖質制限8年目の2型糖尿病50代男性)から
<カロリー制限→糖質制限→HbA1c改善>という
とても参考になる体験談をコメント頂きました。
ありがとうございます。
2011年/10月 糖尿病発覚時
A1C:11.1% 空腹時血糖値:289mg/dl 中性脂肪:239mg/dl
カロリー制限開始。
↓
一ヶ月後カーボカウント(ほぼスーパー糖質制限)開始。
↓
おそらく約一ヶ月くらい経過して
2011年/11月
A1C:7.3 空腹時血糖値:136 中性脂肪:130mg/dl
HbA1c、空腹時血糖値、中性脂肪値・・・見事な改善です。
「そのころから体調に変化が有りました。症状は身体の異常なほどの冷えのため夜間に覚醒する事が週に3日程度起こりました。当時は原因が判りませんでしたか、今にして思えば最近ネット上を騒がしている低T3症候群ではと考えています。」
糖質制限食開始後、約一ヶ月経過したころに異常な冷えを体験ですね。
ご指摘通り、低T3症候群と思われます。
低T3症候群に関しては
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2863.html
2014年02月17日 (月)の本ブログ記事
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は本当の甲状腺機能低下症ではない
をご参照頂けば幸いです。
通常、低T3症候群は、摂取エネルギー不足により生じます。
しかしながら
通常の糖質ありの食事から「スーパー糖質制限食」に切り替えたときに
時に摂取エネルギーは充分であるのに、
極端な冷えなど低T3症候群を呈すことがあります。
これは、
人体の主たるエネルギー源が
A)糖質食:ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム
B)糖質制限食:脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム
A)とB)で異なることが要因と思われます。
<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>が充分活性化してない状態で
糖質制限食を実践しているとそうなる可能性があります。
『まあ、<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>の活性化を
数日から数週間待ちましょう』
では、あまりにつれない返事ですね。
我が畏友、水野先生によればこういうときは、
蛋白質をしっかり摂取すれば、一定のエネルギー源となるので
このような時期はそれでしのげばよいとのことです。
「2012/春頃に糖質制限=江部先生を知ったときはとても安堵いたしました。
江部先生のブログコメントにハーパー生化学が引用されたら確認のため早速購入し、ヒューマニュートリション基礎食事臨床が引用されたら確認のため購入し、バーンスタイン医師の糖尿病の解決が引用されたら確認のため購入し」
それは嬉しいですね。
お役に立てて良かったです。
そうそう、医学関係の書籍は、確かに一般書に比べたら”ボッタクリ”と思えるほど高額です。
よくぞ、購入されました。
まあ、これは販売部数が極めて限られることも理由の一つではありますが・・・。
「一方の主張を妄信すること無く、
異なる主張や客観的意見を自分自身が一歩引いて俯瞰するよう心がけています。
より適切な理論は明快で美しいと感じます。
結論ありきで構築していく理論は何処かで齟齬が生じると思います。」
同感です。
私自身も、同様に心がけています。
日本糖尿病学会のガイドラインやカロリー制限食のことも勉強しつつ
米国糖尿病学会のガイドラインなども勉強します。
「栄養素と血糖値」「ケトン体」など生理学的知識も勉強します。
そうして、糖質制限食理論をより明解で洗練されたものへと
高めていきたいと思っています。
江部康二
タイトルなし
スーパー糖質制限8年目の2型糖尿病50代男性です。
糖質制限に不安を抱くご意見が見受けられるので、
どなたかの参考になればと思い私の体験をご報告いたします。
特定検診で糖尿病発覚し専門医の指導によりカロリー制限を開始。
(2011/10 糖尿病発覚時 A1C 11.1 空腹時血糖値 289 中性脂肪 239)
1ヵ月後にブログでカーボカウンティングを知り(この手法を実践されていた先達のブログ、カーボカウントの日々さん他数名)、記述を貪るように読み込み、
私自身素人ながら理論上間違いないと判断し開始する。
(スーパー糖質制限と同程度 2011/11 A1C 7.3 空腹時血糖値 136 中性脂肪 130)
そのころから体調に変化が有りました。症状は身体の異常なほどの冷えのため夜間に覚醒する事が週に3日程度起こりました。当時は原因が判りませんでしたか、今にして思えば最近ネット上を騒がしている低T3症候群ではと考えています。
それまでの糖質まみれの食生活から一転したため脂質、タンパク質を中心とした代謝への移行に2ヶ月から3ヶ月要したと思います。(私の場合)
*その後は真冬でも足先までポカポカして冷えで夜間覚醒することは有りません。
先達の体験に私自身が納得して始めたものの、医師の指導も無く続けていく不安は心の片隅に何時も有りましたので、2012/春頃に糖質制限=江部先生を知ったときはとても安堵いたしました。
江部先生のブログコメントにハーパー生化学が引用されたら確認のため早速購入し、ヒューマニュートリション基礎食事臨床が引用されたら確認のため購入し、バーンスタイン医師の糖尿病の解決が引用されたら確認のため購入し。(私のバイブルとなっています。しかし医学関連書価格のボッタク. 以下略)
又、ネットでレジスタントスターチの血糖値への影響の話題が出れば3ヶ月冷凍後白米を解凍し食し。
一方の主張を妄信すること無く、
異なる主張や客観的意見を自分自身が一歩引いて俯瞰するよう心がけています。
より適切な理論は明快で美しいと感じます。
結論ありきで構築していく理論は何処かで齟齬が生じると思います。
糖質まみれの食生活から一夜にして厳格な糖質制限に移行した場合に、
私のように暫くは不調が続く人がいるかも知れません。
不調になってから糖質リハビリと称して糖質を増加するよりは、
不安な人は糖質制限を始める時点でプチ糖質制限で体調の変化を見ながら数ヶ月かけて糖質を減らしていくのが無難かも知れません。
糖質制限不適応の方は当てはまりませんが。
医療ドラマのシカゴメッドでもそのような患者が運び込まれたシーンが有ったような?。
2012/6
A1C 5.9 空腹時血糖値 128 中性脂肪 55 以降現在までほぼ変動無し
長文失礼いたしました。】
こんにちは。
tamaさん(スーパー糖質制限8年目の2型糖尿病50代男性)から
<カロリー制限→糖質制限→HbA1c改善>という
とても参考になる体験談をコメント頂きました。
ありがとうございます。
2011年/10月 糖尿病発覚時
A1C:11.1% 空腹時血糖値:289mg/dl 中性脂肪:239mg/dl
カロリー制限開始。
↓
一ヶ月後カーボカウント(ほぼスーパー糖質制限)開始。
↓
おそらく約一ヶ月くらい経過して
2011年/11月
A1C:7.3 空腹時血糖値:136 中性脂肪:130mg/dl
HbA1c、空腹時血糖値、中性脂肪値・・・見事な改善です。
「そのころから体調に変化が有りました。症状は身体の異常なほどの冷えのため夜間に覚醒する事が週に3日程度起こりました。当時は原因が判りませんでしたか、今にして思えば最近ネット上を騒がしている低T3症候群ではと考えています。」
糖質制限食開始後、約一ヶ月経過したころに異常な冷えを体験ですね。
ご指摘通り、低T3症候群と思われます。
低T3症候群に関しては
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2863.html
2014年02月17日 (月)の本ブログ記事
「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は本当の甲状腺機能低下症ではない
をご参照頂けば幸いです。
通常、低T3症候群は、摂取エネルギー不足により生じます。
しかしながら
通常の糖質ありの食事から「スーパー糖質制限食」に切り替えたときに
時に摂取エネルギーは充分であるのに、
極端な冷えなど低T3症候群を呈すことがあります。
これは、
人体の主たるエネルギー源が
A)糖質食:ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステム
B)糖質制限食:脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム
A)とB)で異なることが要因と思われます。
<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>が充分活性化してない状態で
糖質制限食を実践しているとそうなる可能性があります。
『まあ、<脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム>の活性化を
数日から数週間待ちましょう』
では、あまりにつれない返事ですね。
我が畏友、水野先生によればこういうときは、
蛋白質をしっかり摂取すれば、一定のエネルギー源となるので
このような時期はそれでしのげばよいとのことです。
「2012/春頃に糖質制限=江部先生を知ったときはとても安堵いたしました。
江部先生のブログコメントにハーパー生化学が引用されたら確認のため早速購入し、ヒューマニュートリション基礎食事臨床が引用されたら確認のため購入し、バーンスタイン医師の糖尿病の解決が引用されたら確認のため購入し」
それは嬉しいですね。
お役に立てて良かったです。
そうそう、医学関係の書籍は、確かに一般書に比べたら”ボッタクリ”と思えるほど高額です。
よくぞ、購入されました。
まあ、これは販売部数が極めて限られることも理由の一つではありますが・・・。
「一方の主張を妄信すること無く、
異なる主張や客観的意見を自分自身が一歩引いて俯瞰するよう心がけています。
より適切な理論は明快で美しいと感じます。
結論ありきで構築していく理論は何処かで齟齬が生じると思います。」
同感です。
私自身も、同様に心がけています。
日本糖尿病学会のガイドラインやカロリー制限食のことも勉強しつつ
米国糖尿病学会のガイドラインなども勉強します。
「栄養素と血糖値」「ケトン体」など生理学的知識も勉強します。
そうして、糖質制限食理論をより明解で洗練されたものへと
高めていきたいと思っています。
江部康二
2018年01月23日 (火)
【18/01/23 モリリン
ダイエット目的で糖尿病薬
江部先生おはようございます。
糖質制限、かなり私に合っています。
始めてからまだ5日ですが体重が3キロ落ちまして、お腹周りも少しスッキリして来ました。
私自身甘いものがあまり好きではないという事もあり、甘いものへの執着もありませんし、お米やパンが食べたいという欲求もなく、お腹いっぱい食べられるのでストレス無く続けております。
それでも月経前になると何故か無性に甘いものが欲しくなる事がたまにあるかもしれませんが、そういう時は低糖質スイーツなどで凌ぐ程度で済むかと思います。
また、開始してから今までの摂取した糖質量を記録しているのですが、1日あたりの糖質量の平均が30グラムを切っていますが問題はないでしょうか。(計算したら1日あたり約24グラムでした)
カロリーに関してはオリーブオイルなどの脂質と肉やチーズなどのたんぱく質で充分に摂っており、1日あたり約1700kcalです。(年齢は30代前半です)
そして数ヶ月前の話になりますが、私の友人で低GIダイエットを始めた方がいます。(30代後半女性)
彼女が言うには主食を白米→玄米、うどん→そば、の様に、精製していない炭水化物にする事によって食後の血糖値の急上昇を抑えられるから痩せられる、との事です。
しかし、玄米は美味しくないしお蕎麦も好きではない様で辛かったそうです。
そんな折にとある美容外科で「アカルボースを食事前に飲むと炭水化物の吸収をカットしてくれるから、白米やうどん、パンを我慢せずに食べても痩せられる」という触れ込みを見て、その美容外科から処方してもらってアカルボースを飲むようになったそうです。
彼女は糖尿病ではないそうです。
でも、アカルボース(グルコバイだったかもしれません)はうちの母(二型糖尿病)も飲んでいますが、母の担当医はそんな話はしていなかった(痩せる薬ではない)と母から聞きました。
彼女は現在もアカルボースを飲んでおりますが、失礼な話、あまり痩せてはおらず、相変わらずかなりの肥満体型です(身長は160cmあるかないかで体重は80kgくらいだそうです)
余計なお節介かもしれませんが、糖尿病でもないのに糖尿病薬を飲み続けてごはんやパンを好き放題食べるのは危険だと思うのですが…
あと、ゼニカルという脂肪の吸収を阻害する薬も併用しているそうですが、それもあまり効果が無いように思えて仕方ないのですが… 】
こんばんは。
モリリンさんから
糖質制限食でダイエット順調とのコメントを頂きました。
良かったです。
生理前には甘いものが欲しくなるパターンは時にありますが、
ここ2~3年は糖質制限食OKのスイーツがネットや街のケーキ屋さんでも
簡単に手に入るようになり、とても助かります。
1日あたりの糖質量の平均が計算したら約24グラムとのことですが
摂取エネルギーが確保されていれば問題ないと思います。
私は、1日2食で1回の糖質量が薬10~12gなので
1日の糖質量はモリリンさんと同じくらいです。
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量(一日あたり)
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
モリリンさんは、30代前半なので1750kcal/日が目標ですね。
仰る通り、動物性を含めて脂質・蛋白質は充分量食べましょう。
低GIダイエットは、糖質の吸収がややゆっくりとなるのですが、
トータルの吸収量は一緒ですので、
糖質制限食に比べると体重減少効果は少ないです。
アカルボースの内服も血糖値の上昇はやや緩やかにしてくれますが
体重減少には効果はありません。
実は、一番最初のαGI薬であるグルコバイは、体重減少効果が期待されて開発されて
臨床研究が開始された薬でした。
しかし結局、体重減少効果はないことがわかり、一方で食後高血糖を抑える効果があることが確認されて糖尿病薬として承認されたという経過があります。
「余計なお節介かもしれませんが、糖尿病でもないのに糖尿病薬を飲み続けてごはんやパンを好き放題食べるのは危険だと思うのですが…」
仰るとおりと思います。
A)炭水化物摂取が多いほど総死亡率が上昇するというランセットの研究報告
ランセット・オンライン 2017/8/29号
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32252-3
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
大規模疫学前向きコホート研究
B)炭水化物摂取が多いほど総死亡率が上昇するというNIPPON80の報告
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
前向きコホート試験NIPPON DATA80 9200人 29年間
があります。
なおゼニカルは、
高度肥満(BMI35以上)
高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝
いびき、睡眠時無呼吸症候群
肥満からくる膝痛、腰痛
その他、肥満が原因の健康障害
などがあれば、肥満外来などで
医師の判断で処方できますが自由診療です。
脂肪の吸収阻害薬なので、糖質制限的にはもったいないですし、
下痢・おなら・便失禁などの副作用もあります
まあ、糖質制限食のほうがはるかに効果は高いと思います。
江部康二
ダイエット目的で糖尿病薬
江部先生おはようございます。
糖質制限、かなり私に合っています。
始めてからまだ5日ですが体重が3キロ落ちまして、お腹周りも少しスッキリして来ました。
私自身甘いものがあまり好きではないという事もあり、甘いものへの執着もありませんし、お米やパンが食べたいという欲求もなく、お腹いっぱい食べられるのでストレス無く続けております。
それでも月経前になると何故か無性に甘いものが欲しくなる事がたまにあるかもしれませんが、そういう時は低糖質スイーツなどで凌ぐ程度で済むかと思います。
また、開始してから今までの摂取した糖質量を記録しているのですが、1日あたりの糖質量の平均が30グラムを切っていますが問題はないでしょうか。(計算したら1日あたり約24グラムでした)
カロリーに関してはオリーブオイルなどの脂質と肉やチーズなどのたんぱく質で充分に摂っており、1日あたり約1700kcalです。(年齢は30代前半です)
そして数ヶ月前の話になりますが、私の友人で低GIダイエットを始めた方がいます。(30代後半女性)
彼女が言うには主食を白米→玄米、うどん→そば、の様に、精製していない炭水化物にする事によって食後の血糖値の急上昇を抑えられるから痩せられる、との事です。
しかし、玄米は美味しくないしお蕎麦も好きではない様で辛かったそうです。
そんな折にとある美容外科で「アカルボースを食事前に飲むと炭水化物の吸収をカットしてくれるから、白米やうどん、パンを我慢せずに食べても痩せられる」という触れ込みを見て、その美容外科から処方してもらってアカルボースを飲むようになったそうです。
彼女は糖尿病ではないそうです。
でも、アカルボース(グルコバイだったかもしれません)はうちの母(二型糖尿病)も飲んでいますが、母の担当医はそんな話はしていなかった(痩せる薬ではない)と母から聞きました。
彼女は現在もアカルボースを飲んでおりますが、失礼な話、あまり痩せてはおらず、相変わらずかなりの肥満体型です(身長は160cmあるかないかで体重は80kgくらいだそうです)
余計なお節介かもしれませんが、糖尿病でもないのに糖尿病薬を飲み続けてごはんやパンを好き放題食べるのは危険だと思うのですが…
あと、ゼニカルという脂肪の吸収を阻害する薬も併用しているそうですが、それもあまり効果が無いように思えて仕方ないのですが… 】
こんばんは。
モリリンさんから
糖質制限食でダイエット順調とのコメントを頂きました。
良かったです。
生理前には甘いものが欲しくなるパターンは時にありますが、
ここ2~3年は糖質制限食OKのスイーツがネットや街のケーキ屋さんでも
簡単に手に入るようになり、とても助かります。
1日あたりの糖質量の平均が計算したら約24グラムとのことですが
摂取エネルギーが確保されていれば問題ないと思います。
私は、1日2食で1回の糖質量が薬10~12gなので
1日の糖質量はモリリンさんと同じくらいです。
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量(一日あたり)
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
モリリンさんは、30代前半なので1750kcal/日が目標ですね。
仰る通り、動物性を含めて脂質・蛋白質は充分量食べましょう。
低GIダイエットは、糖質の吸収がややゆっくりとなるのですが、
トータルの吸収量は一緒ですので、
糖質制限食に比べると体重減少効果は少ないです。
アカルボースの内服も血糖値の上昇はやや緩やかにしてくれますが
体重減少には効果はありません。
実は、一番最初のαGI薬であるグルコバイは、体重減少効果が期待されて開発されて
臨床研究が開始された薬でした。
しかし結局、体重減少効果はないことがわかり、一方で食後高血糖を抑える効果があることが確認されて糖尿病薬として承認されたという経過があります。
「余計なお節介かもしれませんが、糖尿病でもないのに糖尿病薬を飲み続けてごはんやパンを好き放題食べるのは危険だと思うのですが…」
仰るとおりと思います。
A)炭水化物摂取が多いほど総死亡率が上昇するというランセットの研究報告
ランセット・オンライン 2017/8/29号
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32252-3
5大陸18ヵ国の13万5千例以上を約7年半追跡
大規模疫学前向きコホート研究
B)炭水化物摂取が多いほど総死亡率が上昇するというNIPPON80の報告
Br J Nutr 2014; 112: 916-924
前向きコホート試験NIPPON DATA80 9200人 29年間
があります。
なおゼニカルは、
高度肥満(BMI35以上)
高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝
いびき、睡眠時無呼吸症候群
肥満からくる膝痛、腰痛
その他、肥満が原因の健康障害
などがあれば、肥満外来などで
医師の判断で処方できますが自由診療です。
脂肪の吸収阻害薬なので、糖質制限的にはもったいないですし、
下痢・おなら・便失禁などの副作用もあります
まあ、糖質制限食のほうがはるかに効果は高いと思います。
江部康二
2018年01月22日 (月)
【18/01/21 餅
実体験
自分は過去に脂質制限(カロリー制限)で境界型糖尿病から一時正常になりましたが、
最終的に反動で糖尿病になってしまいました。
左から空腹時血糖・HbA1c・体重・診断結果
↓カロリー制限
2008年08月 120 5.3(JDS) 74.6 境界型糖尿病の疑いあり
2009年08月 87 5.9(JDS) 74.0
2010年08月 97 5.5(JDS) 70.2
2011年07月 97 5.5(JDS) 68.1
2012年08月 99 5.1(JDS) 64.6
2013年07月 174 6.6(NGSP) 70.3 糖尿病です
2014年08月 183 7.2(NGSP) 74.5 糖尿病です
2015年07月 306 10.9(NGSP) 73.3 産業医から電話
2016年06月 384 10.8(NGSP) 70.9 産業医から電話
↑カロリー制限
↓スーパー糖質制限
2016年08月 147 8.4(NGSP) 66.6
2016年09月 117 64.8
2016年10月 94 63.0
2016年11月 93 5.2(NGSP) 61.0
2018年1月 101 4.8(NGSP) 59.0
糖尿病の診断が下っていた2013年~2016年6月の間もカロリーに注意し、
脂質制限を続けていました。
脂質制限なので、カロリーと脂質が少なく糖質の多い食品はかなり食べていました。
スーパー糖質制限開始後は栄養成分表示のエネルギーは見ていません。
ただし、総量をかなり食べてもリバウンドしなかったので、
調子に乗って食べまくっていたら2016年10月から半月程
食後2・3時間後に胃痛に襲われるようになり、
腹8分の食事を心掛けるようにしました。 】
こんばんは。
餅さんから、興味深い体験データをコメント頂きました。
とても参考になります。
ありがとうございます。
『過去に脂質制限(カロリー制限)で境界型糖尿病から一時正常になりましたが、
最終的に反動で糖尿病になってしまいました。』
そうですね。
2008年から2012年までの4年間は
カロリー制限食で、減量に成功されて(74.6kg→64.6kg)
耐糖能も改善(HbA1c:5.9%→5.1%)しています。
しかしとうとうリバウンドになり
2013年7月には1年間で5.7kg体重が増えて70.3kgになり
空腹時血糖値:174mg/dl HbA1c:6.6% と
とうとう糖尿病発症です。
昨日の本ブログ記事
『低カロリー食で約半分の2型糖尿病が寛解、ランセット論文。』
は12ヶ月時点の集計ですので
「1年間の短期間であれば、カロリー制限食で体重が減少して
半数が耐糖能が正常になった。」
というエビデンスがあることとなります。
ただ、そこから先、糖尿病寛解が維持できるか否かはわかりませんが、
私は、理論的には、極めて困難と思います。
餅さんは、4年間カロリー制限食で良好だったので
かなりの長期間、頑張られたと言えます。
カロリー制限食実践で多くの場合は半年で、
体重減少が止まりそこからはリバウンドとなります。
たとえばDIRECTがそうです。
2018年01月20日 (土)の本ブログ記事
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4454.html
『DIRECT。低炭水化物食で体重減少。リバウンドは?』
をご参照頂けば幸いです。
カロリー制限食を半年以上続けていくと、どこかの時点で
人体は、低摂取エネルギーの状態に適応して、基礎代謝を減らすと考えられます。
一旦基礎代謝が減ってしまうと、そこからはリバウンドになると考えられます。
『糖尿病の診断が下っていた2013年~2016年6月の間もカロリーに注意し、
脂質制限を続けていました。』
餅さんも、カロリー制限を継続していたのに
一旦、糖尿病を発症したあとは、全く効果がなく
空腹時血糖値:384mg HbA1c:10.8%(2016年6月)
と改善なしです。
一方、スーパー糖質制限食開始後は
2016年8月、空腹時血糖値:147 HbA1c:8.4 体重:66.6
2016年11月 93 5.2 61.0
2018年1月 101 4.8 59.0
スーパー糖質制限食開始後は、見事な改善です。
素晴らしい成果です。
スーパー糖質制限食なら、厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」を目安に
普通に食べていればリバウンドを起こすこともなく、
血糖コントロール・体重コントロール良好を維持するのも簡単です。
かく言う私も、2002年からスーパー糖質制限食を開始して
半年で体重67kgから57kgになり現在まで16年間維持しています。
糖尿病も、1~2ヶ月でコントロール良好となり16年間維持しています。
『正しい理屈に基づいて行動した結果と経験はボクの宝です。
間違った理屈に基づいて行動した悪い結果と経験もやはり宝です。』
そうですね。
カロリー制限食は、短期的には兎も角として
長期的には間違った理屈と私も思います。
その点、糖質制限食は短期にも長期にもスムースに対応可能です。
江部康二
実体験
自分は過去に脂質制限(カロリー制限)で境界型糖尿病から一時正常になりましたが、
最終的に反動で糖尿病になってしまいました。
左から空腹時血糖・HbA1c・体重・診断結果
↓カロリー制限
2008年08月 120 5.3(JDS) 74.6 境界型糖尿病の疑いあり
2009年08月 87 5.9(JDS) 74.0
2010年08月 97 5.5(JDS) 70.2
2011年07月 97 5.5(JDS) 68.1
2012年08月 99 5.1(JDS) 64.6
2013年07月 174 6.6(NGSP) 70.3 糖尿病です
2014年08月 183 7.2(NGSP) 74.5 糖尿病です
2015年07月 306 10.9(NGSP) 73.3 産業医から電話
2016年06月 384 10.8(NGSP) 70.9 産業医から電話
↑カロリー制限
↓スーパー糖質制限
2016年08月 147 8.4(NGSP) 66.6
2016年09月 117 64.8
2016年10月 94 63.0
2016年11月 93 5.2(NGSP) 61.0
2018年1月 101 4.8(NGSP) 59.0
糖尿病の診断が下っていた2013年~2016年6月の間もカロリーに注意し、
脂質制限を続けていました。
脂質制限なので、カロリーと脂質が少なく糖質の多い食品はかなり食べていました。
スーパー糖質制限開始後は栄養成分表示のエネルギーは見ていません。
ただし、総量をかなり食べてもリバウンドしなかったので、
調子に乗って食べまくっていたら2016年10月から半月程
食後2・3時間後に胃痛に襲われるようになり、
腹8分の食事を心掛けるようにしました。 】
こんばんは。
餅さんから、興味深い体験データをコメント頂きました。
とても参考になります。
ありがとうございます。
『過去に脂質制限(カロリー制限)で境界型糖尿病から一時正常になりましたが、
最終的に反動で糖尿病になってしまいました。』
そうですね。
2008年から2012年までの4年間は
カロリー制限食で、減量に成功されて(74.6kg→64.6kg)
耐糖能も改善(HbA1c:5.9%→5.1%)しています。
しかしとうとうリバウンドになり
2013年7月には1年間で5.7kg体重が増えて70.3kgになり
空腹時血糖値:174mg/dl HbA1c:6.6% と
とうとう糖尿病発症です。
昨日の本ブログ記事
『低カロリー食で約半分の2型糖尿病が寛解、ランセット論文。』
は12ヶ月時点の集計ですので
「1年間の短期間であれば、カロリー制限食で体重が減少して
半数が耐糖能が正常になった。」
というエビデンスがあることとなります。
ただ、そこから先、糖尿病寛解が維持できるか否かはわかりませんが、
私は、理論的には、極めて困難と思います。
餅さんは、4年間カロリー制限食で良好だったので
かなりの長期間、頑張られたと言えます。
カロリー制限食実践で多くの場合は半年で、
体重減少が止まりそこからはリバウンドとなります。
たとえばDIRECTがそうです。
2018年01月20日 (土)の本ブログ記事
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4454.html
『DIRECT。低炭水化物食で体重減少。リバウンドは?』
をご参照頂けば幸いです。
カロリー制限食を半年以上続けていくと、どこかの時点で
人体は、低摂取エネルギーの状態に適応して、基礎代謝を減らすと考えられます。
一旦基礎代謝が減ってしまうと、そこからはリバウンドになると考えられます。
『糖尿病の診断が下っていた2013年~2016年6月の間もカロリーに注意し、
脂質制限を続けていました。』
餅さんも、カロリー制限を継続していたのに
一旦、糖尿病を発症したあとは、全く効果がなく
空腹時血糖値:384mg HbA1c:10.8%(2016年6月)
と改善なしです。
一方、スーパー糖質制限食開始後は
2016年8月、空腹時血糖値:147 HbA1c:8.4 体重:66.6
2016年11月 93 5.2 61.0
2018年1月 101 4.8 59.0
スーパー糖質制限食開始後は、見事な改善です。
素晴らしい成果です。
スーパー糖質制限食なら、厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」を目安に
普通に食べていればリバウンドを起こすこともなく、
血糖コントロール・体重コントロール良好を維持するのも簡単です。
かく言う私も、2002年からスーパー糖質制限食を開始して
半年で体重67kgから57kgになり現在まで16年間維持しています。
糖尿病も、1~2ヶ月でコントロール良好となり16年間維持しています。
『正しい理屈に基づいて行動した結果と経験はボクの宝です。
間違った理屈に基づいて行動した悪い結果と経験もやはり宝です。』
そうですね。
カロリー制限食は、短期的には兎も角として
長期的には間違った理屈と私も思います。
その点、糖質制限食は短期にも長期にもスムースに対応可能です。
江部康二
2018年01月21日 (日)
THE LANCET
Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT):
an open-label, cluster-randomised trial
Published: 05 December 2017
こんにちは、。
厳しい低カロリー食で約半分の2型糖尿病が寛解したという
ランセットの論文を、大雑把に読んでみました。
はしょっているので間違いがあったら、ごめんなさい。
過去6年間に2型糖尿病と診断された20-65歳の人を新規登録してます。
BMIは27-45で、インスリンの使用はありません。
149人登録。コントロール群も149人。
カロリー制限群は、
開始後3-5ヶ月は、825–853 kcal/日の低カロリー食に変更、
その後2-8週は再び食事を再導入・・・しかし、何カロリーかが記載なし。
そして長期間の体重減少維持・・・こちらも具体的カロリーの記載なし。
12ヶ月後にチェックしています。
カロリー制限群(137名)は-10.0kg。(104.4kg→90.4kg)
コントロール群(148名)は-1.0kg。(98.7kg→97.7kg)
体重は低カロリー食で見事に減量成功です。
HbA1cは、
カロリー制限群(138名)は-0.9%。(7.7%→6.8%)
コントロール群(148名)は+0.1%。(7.5%→7.6%)
12ヶ月後、カロリー制限群ではほぼ半分の参加者が
2型糖尿病が寛解しており、糖尿病薬が不必要となっています。
重症の有害事象
カロリー制限群:157名中9名(4%)
コントロール群:149名中2名(1%)
低カロリー食で、重症の有害事象は明らかに多いですが、
糖尿病は良くなってます。
12か月後で打ち切ってありますが、
体重減少維持が何キロカロリー/日か記載がありません。
今後、普通の摂取カロリーにしたら、リバウンドがどうなるかを
是非follow up 研究して欲しいですね。
あくまでも理論的な見解ですが
カロリー制限食で1年以上の長期にわたり体重減少を維持するのは至難の技です。
以下は、本研究を糖質制限の視点からみたオスティナートさんの
コメントです。
ありがとうございます。
【18/01/20 オスティナート
ランセット誌掲載論文
グラスゴー大学の実験
極端なカロリー制限によるⅡ型糖尿病患者の改善
Ⅱ型糖尿病患者(20~65才)
極端なカロリー制限(1日825~853kcal)
1日の摂取糖質量(糖質量60%とした場合)
825kcal×60%=495kcal
495kcal÷4(1g当たりの糖質量)=123.75(糖質量g)
(リチャード・バーンスタイン博士は、1日の糖質量を130g以下)
1日3食食べた場合の1食当たりの糖質量
123.75÷3=41.25(糖質量g)
1食当たりの糖質41.25gは糖質制限食ギリギリセーフです。
(山田悟医師は1日130g、1食40gの緩い糖質制限を推奨、残り10gは間食)
http://wp-ostinato.eek.jp/wp/2011-10teitousitusyokujikaidouga/
ちなみに。最極限のカロリー制限は絶食、断食、(生化学的飢餓)
そして、これも最極限の糖質制限です。】
江部康二
Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT):
an open-label, cluster-randomised trial
Published: 05 December 2017
こんにちは、。
厳しい低カロリー食で約半分の2型糖尿病が寛解したという
ランセットの論文を、大雑把に読んでみました。
はしょっているので間違いがあったら、ごめんなさい。
過去6年間に2型糖尿病と診断された20-65歳の人を新規登録してます。
BMIは27-45で、インスリンの使用はありません。
149人登録。コントロール群も149人。
カロリー制限群は、
開始後3-5ヶ月は、825–853 kcal/日の低カロリー食に変更、
その後2-8週は再び食事を再導入・・・しかし、何カロリーかが記載なし。
そして長期間の体重減少維持・・・こちらも具体的カロリーの記載なし。
12ヶ月後にチェックしています。
カロリー制限群(137名)は-10.0kg。(104.4kg→90.4kg)
コントロール群(148名)は-1.0kg。(98.7kg→97.7kg)
体重は低カロリー食で見事に減量成功です。
HbA1cは、
カロリー制限群(138名)は-0.9%。(7.7%→6.8%)
コントロール群(148名)は+0.1%。(7.5%→7.6%)
12ヶ月後、カロリー制限群ではほぼ半分の参加者が
2型糖尿病が寛解しており、糖尿病薬が不必要となっています。
重症の有害事象
カロリー制限群:157名中9名(4%)
コントロール群:149名中2名(1%)
低カロリー食で、重症の有害事象は明らかに多いですが、
糖尿病は良くなってます。
12か月後で打ち切ってありますが、
体重減少維持が何キロカロリー/日か記載がありません。
今後、普通の摂取カロリーにしたら、リバウンドがどうなるかを
是非follow up 研究して欲しいですね。
あくまでも理論的な見解ですが
カロリー制限食で1年以上の長期にわたり体重減少を維持するのは至難の技です。
以下は、本研究を糖質制限の視点からみたオスティナートさんの
コメントです。
ありがとうございます。
【18/01/20 オスティナート
ランセット誌掲載論文
グラスゴー大学の実験
極端なカロリー制限によるⅡ型糖尿病患者の改善
Ⅱ型糖尿病患者(20~65才)
極端なカロリー制限(1日825~853kcal)
1日の摂取糖質量(糖質量60%とした場合)
825kcal×60%=495kcal
495kcal÷4(1g当たりの糖質量)=123.75(糖質量g)
(リチャード・バーンスタイン博士は、1日の糖質量を130g以下)
1日3食食べた場合の1食当たりの糖質量
123.75÷3=41.25(糖質量g)
1食当たりの糖質41.25gは糖質制限食ギリギリセーフです。
(山田悟医師は1日130g、1食40gの緩い糖質制限を推奨、残り10gは間食)
http://wp-ostinato.eek.jp/wp/2011-10teitousitusyokujikaidouga/
ちなみに。最極限のカロリー制限は絶食、断食、(生化学的飢餓)
そして、これも最極限の糖質制限です。】
江部康二
2018年01月20日 (土)
【18/01/20 金糸雀
まずタイトルが疑問です。
ほぼ同一カロリーで論じないと意味がないと思いますが。
糖質制限で5000kcalと、炭水化物60%摂取のカロリー制限2500kcalでも「糖質制限の方が減量効果が大きい」なら納得できます。
あと「楽にやせる」は江部先生側糖質制限の方達の主観ではと思いますよ。
ネット上でカロリー制限を楽しくやってる方達も多いです。
逆に炭水化物を摂れなく不満を抱きながら糖質制限をしてる方もいます。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)33102-1/fulltext?elsca1=tlpr
ランセット掲載の極端なカロリー制限で糖尿病改善データ
さすがに極端なカロリー制限を約半年ですからかなりキツいと思いますが(これも私の主観)、カロリー制限は意味無しではないということですね。
まだ江部先生はカロリー制限を少しは認めている?のかもしれませんが全く意味無しなどと根拠の無いことを言う夏井先生などの医師達はこのランセットのデータをどう読むか教えてほしいものです。】
こんにちは。
金糸雀 さんから、2018/1/19の本ブログ記事
「炭水化物摂取は太る。糖質制限は楽にやせる。」
に対して、コメントで、ご批判を頂きました。
2018/1/19の本ブログ記事では、理論的なお話しを展開しました。
エビデンスは必要ないくらいスッキリした理論です。
もしも、カロリー制限で体重がやせ続けるなら、人体が消失してしまいます。
従って、人体は基礎代謝を減らして、低エネルギー状態に適応します。
その時点で体重減少が止まり、リバウンドが始まります。
体重減少が約半年で止まるのは、この理論以外には考えにくいです。
従って、カロリー制限食に全く意味が無いのではなく、
理論的に考えて、半年以上続けることの意味が極めて少ないということです。
金糸雀 さんは、エビデンスがお好きなようですので、
さらに以下、上記理論の実例として信頼度の高いDIRECTのお話しをしましょう。

よく引用されるイスラエルのShai先生の有名な論文、DIRECT
「低炭水化物食で体重減少・ HDL-C増加・HbA1c改善 RCT研究論文」
イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3グループの食事法を2年間
低炭水化物食が、最も体重減少。HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者においてHbA1cが有意差をもって改善
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
糖質制限群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、
その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。
しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、
40~41%の糖質を摂取しています。
つまり、このDIRECT論文も、
糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を比べた研究ということになります。
3群とも、出発点のベースラインからは、日々の摂取カロリーが、
6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と全て、有意に減少しています。
ベースラインからのカロリー減少幅に3群で有意差はありませんでした。
糖質制限食群はカロリー制限なしの設定ですが、
低脂肪食群、地中海食群と有意差無く摂取エネルギーが減少しています。
つまり、同一カロリーの3群を比較検討した研究ということになります。
糖質制限食群は、脂質・蛋白質が多いので満足度・満腹度が高いので
カロリー制限なしの設定でしたが、
自然に我慢すること無く他の2群と同じだけのカロリーが減りました。
これは、かなり大きなメリットと言えます。
それで女性1500kcal、男性1800calのカロリー制限ありの他の2群に摂取カロリーを合わせてみると糖質制限食群でも、
女性で150g/日、男性で180g/日の炭水化物を摂取していることになります。
設定の120g/日をかなりオーバーしています。
これでは折角減少した体重もリバウンドを起こすでしょうね。
現実に2年後には、3群ともリバウンドを起こしています。
脂肪制限食が一番リバウンドが大きいです。
糖質制限食群も一番体重が減少していますが、
当初の5ヶ月間で達成した体重減少からは少しリバウンドしています。
この経過は、グラフをご参照ください。
私のようにスーパー糖質制限食実践中の場合、
一旦減少して適正になった体重はリバウンドを起こすことなく維持できます。
スーパー糖質制限食の場合は、
40~60g/日の糖質摂取量で、糖質の摂取比率は12%くらいです。
私の場合は、2002年にスーパー糖質制限食半年で10kg減量して、
167cm、57kgとなり、2013年4月現在も維持しています。
DIRECTの糖質摂取120g/日、糖質摂取比率40%は、
高雄病院のスーパー糖質制限食と比べると大きな差があります。
DIRECTによれば、40%の緩い糖質制限食でも、
「最も体重減少。HDL-Cも増加。HbA1cが有意差をもって改善。」
ということができます。(RCT研究論文2年間のエビデンスあり)
一方、スーパー糖質制限食に比べると、体重減少にリバウンドを生じています。
私は、やはり今後もずっと継続してスーパー糖質制限食を続けていきます。
DIRECT
Table2 炭水化物摂取比率
糖質制限群
ベースラインン:50.8%
6ヶ月後:41.4
12ヶ月後:41.6
24ヶ月後:40.4
地中海食群
ベースラインン:51.5%
6ヶ月後:49.8
12ヶ月後:50.0
24ヶ月後:50.2
低脂肪食群
ベースラインン:51.8%
6ヶ月後:50.4
12ヶ月後:50.5
24ヶ月後:50.7
江部康二
**
ランセットの論文の検討は、次回とします。
まずタイトルが疑問です。
ほぼ同一カロリーで論じないと意味がないと思いますが。
糖質制限で5000kcalと、炭水化物60%摂取のカロリー制限2500kcalでも「糖質制限の方が減量効果が大きい」なら納得できます。
あと「楽にやせる」は江部先生側糖質制限の方達の主観ではと思いますよ。
ネット上でカロリー制限を楽しくやってる方達も多いです。
逆に炭水化物を摂れなく不満を抱きながら糖質制限をしてる方もいます。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)33102-1/fulltext?elsca1=tlpr
ランセット掲載の極端なカロリー制限で糖尿病改善データ
さすがに極端なカロリー制限を約半年ですからかなりキツいと思いますが(これも私の主観)、カロリー制限は意味無しではないということですね。
まだ江部先生はカロリー制限を少しは認めている?のかもしれませんが全く意味無しなどと根拠の無いことを言う夏井先生などの医師達はこのランセットのデータをどう読むか教えてほしいものです。】
こんにちは。
金糸雀 さんから、2018/1/19の本ブログ記事
「炭水化物摂取は太る。糖質制限は楽にやせる。」
に対して、コメントで、ご批判を頂きました。
2018/1/19の本ブログ記事では、理論的なお話しを展開しました。
エビデンスは必要ないくらいスッキリした理論です。
もしも、カロリー制限で体重がやせ続けるなら、人体が消失してしまいます。
従って、人体は基礎代謝を減らして、低エネルギー状態に適応します。
その時点で体重減少が止まり、リバウンドが始まります。
体重減少が約半年で止まるのは、この理論以外には考えにくいです。
従って、カロリー制限食に全く意味が無いのではなく、
理論的に考えて、半年以上続けることの意味が極めて少ないということです。
金糸雀 さんは、エビデンスがお好きなようですので、
さらに以下、上記理論の実例として信頼度の高いDIRECTのお話しをしましょう。

よく引用されるイスラエルのShai先生の有名な論文、DIRECT
「低炭水化物食で体重減少・ HDL-C増加・HbA1c改善 RCT研究論文」
イスラエルの322人(男性86%)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(2)オリーブ油の地中海食(カロリー制限あり)女性1500kcal、男性1800kcal
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3グループの食事法を2年間
低炭水化物食が、最も体重減少。HDL-Cも増加。
36名の糖尿病患者においてHbA1cが有意差をもって改善
Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
糖質制限群は、最初の2ヶ月は20g/日に糖質を制限、
その後3ヶ月目からは徐々に緩めて120g/日までOKと設定しています。
しかしながら、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後、
40~41%の糖質を摂取しています。
つまり、このDIRECT論文も、
糖質40%の糖質制限食群(中糖質群)と
糖質約50%の低脂肪食群、地中海食群(高糖質群)を比べた研究ということになります。
3群とも、出発点のベースラインからは、日々の摂取カロリーが、
6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と全て、有意に減少しています。
ベースラインからのカロリー減少幅に3群で有意差はありませんでした。
糖質制限食群はカロリー制限なしの設定ですが、
低脂肪食群、地中海食群と有意差無く摂取エネルギーが減少しています。
つまり、同一カロリーの3群を比較検討した研究ということになります。
糖質制限食群は、脂質・蛋白質が多いので満足度・満腹度が高いので
カロリー制限なしの設定でしたが、
自然に我慢すること無く他の2群と同じだけのカロリーが減りました。
これは、かなり大きなメリットと言えます。
それで女性1500kcal、男性1800calのカロリー制限ありの他の2群に摂取カロリーを合わせてみると糖質制限食群でも、
女性で150g/日、男性で180g/日の炭水化物を摂取していることになります。
設定の120g/日をかなりオーバーしています。
これでは折角減少した体重もリバウンドを起こすでしょうね。
現実に2年後には、3群ともリバウンドを起こしています。
脂肪制限食が一番リバウンドが大きいです。
糖質制限食群も一番体重が減少していますが、
当初の5ヶ月間で達成した体重減少からは少しリバウンドしています。
この経過は、グラフをご参照ください。
私のようにスーパー糖質制限食実践中の場合、
一旦減少して適正になった体重はリバウンドを起こすことなく維持できます。
スーパー糖質制限食の場合は、
40~60g/日の糖質摂取量で、糖質の摂取比率は12%くらいです。
私の場合は、2002年にスーパー糖質制限食半年で10kg減量して、
167cm、57kgとなり、2013年4月現在も維持しています。
DIRECTの糖質摂取120g/日、糖質摂取比率40%は、
高雄病院のスーパー糖質制限食と比べると大きな差があります。
DIRECTによれば、40%の緩い糖質制限食でも、
「最も体重減少。HDL-Cも増加。HbA1cが有意差をもって改善。」
ということができます。(RCT研究論文2年間のエビデンスあり)
一方、スーパー糖質制限食に比べると、体重減少にリバウンドを生じています。
私は、やはり今後もずっと継続してスーパー糖質制限食を続けていきます。
DIRECT
Table2 炭水化物摂取比率
糖質制限群
ベースラインン:50.8%
6ヶ月後:41.4
12ヶ月後:41.6
24ヶ月後:40.4
地中海食群
ベースラインン:51.5%
6ヶ月後:49.8
12ヶ月後:50.0
24ヶ月後:50.2
低脂肪食群
ベースラインン:51.8%
6ヶ月後:50.4
12ヶ月後:50.5
24ヶ月後:50.7
江部康二
**
ランセットの論文の検討は、次回とします。
2018年01月19日 (金)
【18/01/18 かんたん
同じ体験
こんばんは。私も、実はモリリンさんと同じ体験をしています。
鈴木その子さんのダイエット方を長くしていました。
19才から、40才まで続けていました。
若い頃は、厳密に鈴木さんのダイエット方をすれば、痩せていられたのですが、
その厳密とは言っても、結局低カロリー食なんですよ。
そして、メインが炭水化物なので、すぐにお腹がすき飴やお饅頭食べてました。
代謝の落ちる年齢になり、
そのダイエット方では自分が理想とする体重は維持出来なくなりました。
そうなると、さらに制限をきつくして、以前の私は栄養不足でガリガリでした。
摂取カロリーは、800位でした。
そして、耐えられなくなり欲求が爆発して、たんぱく質と油は摂らないけれど、
大量の糖質を摂取するようになりました。
この頃は、鈴木さんのダイエット方とはかけ離れてしまっていたと思います。
そして、50キロの体重は80キロ近くになり、
インスリン抵抗性や高インスリン血症になりました。
長く糖質にさらされ、このような状態になり、
低血糖が苦しくて色々調べて江部先生の本とブログに出会えました。
それからは、みるみる間に80キロ近くから54キロまで痩せました。
10ヵ月でです。
薄くなった髪は生えはじめ、皮膚は弾力が出て血色が良くなりました。
体を動かすのも苦ではなくなりました。
そして、悩んでいた色んな病気が軽くなりました。
今は、閉経など老いてからの体の曲がり角で、
少し体重は戻りましたが(57キロ)元気にしています。
糖質制限してからは、栄養が沢山摂れてカロリーも範囲内なら沢山食べられます。
例え空腹時でも、糖質摂取して頃とは違います。
あの、ふらふらした感じではないのです。
ケトンのお陰でしょうか。
私はもう、低カロリーのダイエットや、置き換え、糖質摂取のダイエットは出来ません。
糖質制限一本です。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。】
かんたんさんからも
炭水化物摂取は太りやすいというコメントを頂きました。
炭水化物摂取しても減量できるというダイエット法は
仰る通り、現実には『カロリー制限食』になります。
カロリー制限食を開始して6ヶ月くらいまでは、体重は減少します。
しかしそこで、必ず減り止まります。
何故なら、カロリー制限食で半年経過すると
人体は、基礎代謝量を減らして、低エネルギー状態に適応していきます。
そして、カロリー制限食から元の摂取エネルギーに戻せば
リバウンドして、かえって体重は元より増加してしまいます。
つまり基礎代謝が減った分、太りやすい身体になってしまったわけです。
このように、理論的には、
「カロリー制限食で一旦減量できても必ずリバウンドする」
ことは明らかです。
無理に我慢してカロリー制限食を長期間続ければ、
筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。
19歳から糖質制限食を実践する前(体重80kg)までの
かんたんさんの自分史は、まさに上記理論を証明する実例と言えます。
大変、苦労されており、つらい経験をされてしんどかったと思います。
ともあれ、糖質制限食に巡り会えて良かったです。
私の本やブログがお役にたてて、とても嬉しく思います。
17/12/19 のかんたんさんのコメントによれば
46歳から糖質制限食を開始されて、10ヵ月で一旦54kgまで落ちて
閉経後3kg増えて、50歳現在が57kgです。
糖質制限後は、髪の毛が増え、皮膚に弾力が戻り、体力も増強で良かったです。
さらに17/12/19のコメントにあるように
『筋肉量も増えて、基礎代謝は1300kcal(50歳)。
焼き肉繁盛店のウェイトレスで、6時間の肉体労働。
この店で働いて痩せない人はいないくらいの激務。
常に歩いているか、小走りでお客さんの対応。
長年患っていた鬱と睡眠障害→布団に入ったらすぐに眠れる。』
とは、素晴らしいです。
糖質制限食は人類本来の食事であり、人類の健康食です。
厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」はしっかり確保して
糖質制限食を実践すれば、
A)太りすぎの人は、適正体重まで減量。
B)痩せすぎの人は、適正体重まで増加。
が、達成できます。
適正体重とは、BMIが20以上25未満で、
その人の体調が良い体重です。
減量を目指す場合も、ひもじい感や飢餓感は全くなしで、
筋力低下や骨粗鬆症リスクもなしで、
美味しく楽しく楽々と達成可能です。
江部康二
同じ体験
こんばんは。私も、実はモリリンさんと同じ体験をしています。
鈴木その子さんのダイエット方を長くしていました。
19才から、40才まで続けていました。
若い頃は、厳密に鈴木さんのダイエット方をすれば、痩せていられたのですが、
その厳密とは言っても、結局低カロリー食なんですよ。
そして、メインが炭水化物なので、すぐにお腹がすき飴やお饅頭食べてました。
代謝の落ちる年齢になり、
そのダイエット方では自分が理想とする体重は維持出来なくなりました。
そうなると、さらに制限をきつくして、以前の私は栄養不足でガリガリでした。
摂取カロリーは、800位でした。
そして、耐えられなくなり欲求が爆発して、たんぱく質と油は摂らないけれど、
大量の糖質を摂取するようになりました。
この頃は、鈴木さんのダイエット方とはかけ離れてしまっていたと思います。
そして、50キロの体重は80キロ近くになり、
インスリン抵抗性や高インスリン血症になりました。
長く糖質にさらされ、このような状態になり、
低血糖が苦しくて色々調べて江部先生の本とブログに出会えました。
それからは、みるみる間に80キロ近くから54キロまで痩せました。
10ヵ月でです。
薄くなった髪は生えはじめ、皮膚は弾力が出て血色が良くなりました。
体を動かすのも苦ではなくなりました。
そして、悩んでいた色んな病気が軽くなりました。
今は、閉経など老いてからの体の曲がり角で、
少し体重は戻りましたが(57キロ)元気にしています。
糖質制限してからは、栄養が沢山摂れてカロリーも範囲内なら沢山食べられます。
例え空腹時でも、糖質摂取して頃とは違います。
あの、ふらふらした感じではないのです。
ケトンのお陰でしょうか。
私はもう、低カロリーのダイエットや、置き換え、糖質摂取のダイエットは出来ません。
糖質制限一本です。
長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。】
かんたんさんからも
炭水化物摂取は太りやすいというコメントを頂きました。
炭水化物摂取しても減量できるというダイエット法は
仰る通り、現実には『カロリー制限食』になります。
カロリー制限食を開始して6ヶ月くらいまでは、体重は減少します。
しかしそこで、必ず減り止まります。
何故なら、カロリー制限食で半年経過すると
人体は、基礎代謝量を減らして、低エネルギー状態に適応していきます。
そして、カロリー制限食から元の摂取エネルギーに戻せば
リバウンドして、かえって体重は元より増加してしまいます。
つまり基礎代謝が減った分、太りやすい身体になってしまったわけです。
このように、理論的には、
「カロリー制限食で一旦減量できても必ずリバウンドする」
ことは明らかです。
無理に我慢してカロリー制限食を長期間続ければ、
筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。
19歳から糖質制限食を実践する前(体重80kg)までの
かんたんさんの自分史は、まさに上記理論を証明する実例と言えます。
大変、苦労されており、つらい経験をされてしんどかったと思います。
ともあれ、糖質制限食に巡り会えて良かったです。
私の本やブログがお役にたてて、とても嬉しく思います。
17/12/19 のかんたんさんのコメントによれば
46歳から糖質制限食を開始されて、10ヵ月で一旦54kgまで落ちて
閉経後3kg増えて、50歳現在が57kgです。
糖質制限後は、髪の毛が増え、皮膚に弾力が戻り、体力も増強で良かったです。
さらに17/12/19のコメントにあるように
『筋肉量も増えて、基礎代謝は1300kcal(50歳)。
焼き肉繁盛店のウェイトレスで、6時間の肉体労働。
この店で働いて痩せない人はいないくらいの激務。
常に歩いているか、小走りでお客さんの対応。
長年患っていた鬱と睡眠障害→布団に入ったらすぐに眠れる。』
とは、素晴らしいです。
糖質制限食は人類本来の食事であり、人類の健康食です。
厚生労働省のいう「推定エネルギー必要量」はしっかり確保して
糖質制限食を実践すれば、
A)太りすぎの人は、適正体重まで減量。
B)痩せすぎの人は、適正体重まで増加。
が、達成できます。
適正体重とは、BMIが20以上25未満で、
その人の体調が良い体重です。
減量を目指す場合も、ひもじい感や飢餓感は全くなしで、
筋力低下や骨粗鬆症リスクもなしで、
美味しく楽しく楽々と達成可能です。
江部康二
2018年01月18日 (木)
【18/01/17 モリリン
はじめまして
初めてコメントさせて頂きます。
私は元々肉や魚、卵や乳製品、野菜などがメインで主食を殆ど食べない方で子供の頃からずっと痩せ型(165cm、46kg、体脂肪率17%)でした。この頃は体調も良く毎日元気に仕事をしていたのですが、結婚を機にお米が大好きな主人と共に三食しっかり主食を食べるようになってから、そのせいなのでしょうか、どんどん体重が増えて行き、三ヶ月で7kg太ってしまいました。
これじゃまずいと思い、ジュースクレンズなど色々なダイエットします試したものの体重は減らず、そんな時に鈴木その子さんの「痩せたければ食べなさい」という本を読み、たんぱく質や脂肪を徹底的にカットしてお米をしっかり食べるダイエットをしていたら、あれよあれよという内に太り、鈴木式ダイエットを辞めてからも炭水化物中心の食生活は相変わらずで1年後には63kg・体脂肪率は33%まで太ってしまいました。
これは炭水化物ばかり食べ続けていたせいなんでしょうね…
それからはどんなダイエットをしても痩せることはなく、2年程その体重のままです。
もちろん痩せたいのでコバラサポートなどで空腹感を紛らわしたりしつつ摂取カロリーを控えてはいますが、あまり効果はありません。
幸い健康状態は良好で、血糖値も問題はありませんが、母親が糖尿病という事もあり、このままではきっといつか糖尿病になるのでは…と思い、早い内に糖質制限を試みようと思っています。
糖尿病ではないのですが、こんな私でも糖質制限をやっても大丈夫でしょうか?
また、お米やパンなどの炭水化物を食べると、食べている最中は気分が良いのですが、食べた直後にお腹が張ってきてひどい息切れをしたり、吐き気が襲って来ます。もしかしてこれも炭水化物の摂取が原因なのでしょうか?
炭水化物を殆ど食べていなかった頃は食後にこんな事にはなりませんでした。】
こんばんは。
モリリンさんから、
「炭水化物摂取と肥満」・・・減量に糖質制限食はOK?
というコメント・質問を頂きました。
以下、検討してみます。
肉や魚、卵や乳製品、野菜などがメインで主食を殆ど食べない頃は、
ずっと
165cm 46kg 体脂肪率17% BMI:16.9
だったのが、
結婚後、炭水化物中心の食生活で、三ヶ月で
165cm 53kg BMI:19.46
と7kg体重増加。
まあこの頃は、体重的には痩せすぎから脱却できて、ほどよいくらいの体重ですね。
しかし、その後
たんぱく質や脂肪を徹底的にカットしてお米をしっかり食べるダイエットを実践して
1年後には
165cm 63kg 体脂肪率33% BMI:23.1
と、10kg増加して、正常ではありますが、ややぽっちゃり体型です。
この間、筋トレはしておられないので増えた体重はほぼ脂肪のみです。
さすがに脂肪ばかりの体重増加は、やや問題です。
適正体重への減量には「糖質制限食」あるのみです。
「糖質制限をやっても大丈夫でしょうか?」
というより、糖質制限食以外の食事療法では、減量は困難です。
カロリー制限食で、短期間なら減量できますが、長期的に続けるのは無理ですし
必ずリバウンドになります。
無理にカロリー制限食を長期続ければ、筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。
この点、スーパー糖質制限食なら、苦労することなくひもじい思いをすることもなく
楽々と減量が可能です。
『お米やパンなどの炭水化物を食べると、食べている最中は気分が良いのですが、食べた直後にお腹が張ってきてひどい息切れをしたり、吐き気が襲って来ます。もしかしてこれも炭水化物の摂取が原因なのでしょうか?』
炭水化物摂取が元凶と思います。
炭水化物の摂取により、血糖値が正常範囲でも急上昇して急降下します。
この血糖値の乱高下により、様々な症状が出現します。
腹滿、息切れ、吐き気、眠気、動悸、集中力低下・・・などです。
<スーパー糖質制限食の4つの利点>
◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)が基礎分泌以外ほとんど出ない。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。
高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、
タンパク質で30%です。
食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。
◆<糖質を摂取した場合>
A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる亢進した食事誘発熱産生(DIT)はなくなる。
①②③④とA)B)C)D)両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、
体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。
たとえ低脂質食でカロリー制限していても、糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。
これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。
<摂取エネルギーと消費エネルギー、基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少しやすいことは明白です。
<推定エネルギー必要量と糖質制限食>
減量を目指す時に、日本糖尿病学会推奨のように
男性:1400~2000kcal/日
女性:1200~1800kcal/日
といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量/日
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
このように、冷静に理論的に考えると、糖質制限食以外で減量することは極めて困難であることがわかると思います。
<基礎礎代謝が低い場合は?>
基礎代謝が低いタイプの人は
「糖質制限+カロリー制限」が必要です。
女性に時にあり、数%くらいの比率です。
<大食漢タイプの場合は?>
大食いの方々がおられます。やはり数%の比率です。
このタイプは
「糖質制限食+人並みの摂取カロリー」が必要です。
<減量できないときは?>
1)
いつのまにか、糖質制限が緩くなった可能性があります。
2)
何らかの理由で、基礎代謝が低下した可能性があります。
3)
知らぬ間に、摂取カロリーが多くなった可能性があります。
4)
すでに、BMI20以上~25未満で適正体重になっていることがあります。
江部康二
はじめまして
初めてコメントさせて頂きます。
私は元々肉や魚、卵や乳製品、野菜などがメインで主食を殆ど食べない方で子供の頃からずっと痩せ型(165cm、46kg、体脂肪率17%)でした。この頃は体調も良く毎日元気に仕事をしていたのですが、結婚を機にお米が大好きな主人と共に三食しっかり主食を食べるようになってから、そのせいなのでしょうか、どんどん体重が増えて行き、三ヶ月で7kg太ってしまいました。
これじゃまずいと思い、ジュースクレンズなど色々なダイエットします試したものの体重は減らず、そんな時に鈴木その子さんの「痩せたければ食べなさい」という本を読み、たんぱく質や脂肪を徹底的にカットしてお米をしっかり食べるダイエットをしていたら、あれよあれよという内に太り、鈴木式ダイエットを辞めてからも炭水化物中心の食生活は相変わらずで1年後には63kg・体脂肪率は33%まで太ってしまいました。
これは炭水化物ばかり食べ続けていたせいなんでしょうね…
それからはどんなダイエットをしても痩せることはなく、2年程その体重のままです。
もちろん痩せたいのでコバラサポートなどで空腹感を紛らわしたりしつつ摂取カロリーを控えてはいますが、あまり効果はありません。
幸い健康状態は良好で、血糖値も問題はありませんが、母親が糖尿病という事もあり、このままではきっといつか糖尿病になるのでは…と思い、早い内に糖質制限を試みようと思っています。
糖尿病ではないのですが、こんな私でも糖質制限をやっても大丈夫でしょうか?
また、お米やパンなどの炭水化物を食べると、食べている最中は気分が良いのですが、食べた直後にお腹が張ってきてひどい息切れをしたり、吐き気が襲って来ます。もしかしてこれも炭水化物の摂取が原因なのでしょうか?
炭水化物を殆ど食べていなかった頃は食後にこんな事にはなりませんでした。】
こんばんは。
モリリンさんから、
「炭水化物摂取と肥満」・・・減量に糖質制限食はOK?
というコメント・質問を頂きました。
以下、検討してみます。
肉や魚、卵や乳製品、野菜などがメインで主食を殆ど食べない頃は、
ずっと
165cm 46kg 体脂肪率17% BMI:16.9
だったのが、
結婚後、炭水化物中心の食生活で、三ヶ月で
165cm 53kg BMI:19.46
と7kg体重増加。
まあこの頃は、体重的には痩せすぎから脱却できて、ほどよいくらいの体重ですね。
しかし、その後
たんぱく質や脂肪を徹底的にカットしてお米をしっかり食べるダイエットを実践して
1年後には
165cm 63kg 体脂肪率33% BMI:23.1
と、10kg増加して、正常ではありますが、ややぽっちゃり体型です。
この間、筋トレはしておられないので増えた体重はほぼ脂肪のみです。
さすがに脂肪ばかりの体重増加は、やや問題です。
適正体重への減量には「糖質制限食」あるのみです。
「糖質制限をやっても大丈夫でしょうか?」
というより、糖質制限食以外の食事療法では、減量は困難です。
カロリー制限食で、短期間なら減量できますが、長期的に続けるのは無理ですし
必ずリバウンドになります。
無理にカロリー制限食を長期続ければ、筋力低下や骨粗鬆症のリスクとなります。
この点、スーパー糖質制限食なら、苦労することなくひもじい思いをすることもなく
楽々と減量が可能です。
『お米やパンなどの炭水化物を食べると、食べている最中は気分が良いのですが、食べた直後にお腹が張ってきてひどい息切れをしたり、吐き気が襲って来ます。もしかしてこれも炭水化物の摂取が原因なのでしょうか?』
炭水化物摂取が元凶と思います。
炭水化物の摂取により、血糖値が正常範囲でも急上昇して急降下します。
この血糖値の乱高下により、様々な症状が出現します。
腹滿、息切れ、吐き気、眠気、動悸、集中力低下・・・などです。
<スーパー糖質制限食の4つの利点>
◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)が基礎分泌以外ほとんど出ない。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。
高蛋白食は、摂食時の食事誘発熱産生(DIT)が通常食に比べて増加します。
DITによる消費エネルギーは、実質吸収エネルギーの、糖質では6%、脂質では4%、
タンパク質で30%です。
食事誘発熱産生(DIT)を、もっと簡単に説明すると、食事において
100キロカロリーの糖質だけを摂取した時は、6キロカロリーが、
100キロカロリーの脂質だけを摂取した時は、4キロカロリーが、
100キロカロリーのタンパク質だけを摂取した時は、30キロカロリーが
熱に変わり、消費エネルギーとしてカウントされるということです。
◆<糖質を摂取した場合>
A)血糖値が上昇してインスリン(肥満ホルモン)がたっぷり分泌される。
B)体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C)肝臓の糖新生はストップする。
D)高タンパク食よる亢進した食事誘発熱産生(DIT)はなくなる。
①②③④とA)B)C)D)両者を比べてみれば、高糖質食より糖質制限食の方が、
体重減少効果が高いことが一目でわかると思います。
たとえ低脂質食でカロリー制限していても、糖質を摂れば体重減少への利点がすべて消えてしまうわけです。
これは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質であり、あくまで糖質を摂るかどうかがカギとなります。
<摂取エネルギーと消費エネルギー、基礎代謝量、身体活動量、食事誘発熱産生>
1)摂取エネルギー > 消費エネルギー → 体重増加
摂取エネルギー = 消費エネルギー → 体重不変
摂取エネルギー < 消費エネルギー → 体重減少
2)通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝量+身体活動量(運動や家事)+食事誘発熱産生(DIT)」
3)糖質制限食なら、高糖質食の時には無い
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費」→基礎代謝の増加
「高蛋白食摂取」→食事誘発熱産生(DIT)の増加 」
が認められる。
1)は生理学的事実です。
2)3)を比較すると糖質制限食の方が高糖質食に比し、体重が減少しやすいことは明白です。
<推定エネルギー必要量と糖質制限食>
減量を目指す時に、日本糖尿病学会推奨のように
男性:1400~2000kcal/日
女性:1200~1800kcal/日
といった、厳しいカロリー制限は必要ありません。
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量/日
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
くらいが目安です。
このように、冷静に理論的に考えると、糖質制限食以外で減量することは極めて困難であることがわかると思います。
<基礎礎代謝が低い場合は?>
基礎代謝が低いタイプの人は
「糖質制限+カロリー制限」が必要です。
女性に時にあり、数%くらいの比率です。
<大食漢タイプの場合は?>
大食いの方々がおられます。やはり数%の比率です。
このタイプは
「糖質制限食+人並みの摂取カロリー」が必要です。
<減量できないときは?>
1)
いつのまにか、糖質制限が緩くなった可能性があります。
2)
何らかの理由で、基礎代謝が低下した可能性があります。
3)
知らぬ間に、摂取カロリーが多くなった可能性があります。
4)
すでに、BMI20以上~25未満で適正体重になっていることがあります。
江部康二
2018年01月17日 (水)
こんにちは。
しらねのぞるばさんから
2018年1月12日、13日、14日(日)
京都の国際会館で開催された第21回 日本病態栄養学会の感想を
コメント頂きました。
いつもありがとうございます。
とても参考になります。
【8/01/13 しらねのぞるば
第21回 日本病態栄養学会[京都]感想
今回は直前までプログラム詳細が発表されず,
参加をためらっていたのですが,
結局 初日/2日目のみ参加しました.
【1】一般口演 感想
一般口演は,糖尿病(1)~(6)をすべて聴講しました.
下記はその感想ですが,口演の件名は 私が勝手に付け直していますので,
正しい件名は抄録集でご確認ください.
[O-94] サツマイモを皮ごと食べれば血糖値は上がらないか.
結果からみれば,ほとんど関係なし. 発表者も述べていたように,皮ありの場合の食物繊維量は 2.8g,無しの場合は2.2g(いずれも100gあたり)ですから,この程度の差では結果が同じでも当たりまえでしょう. 座長がコメントしていたように,『どうせやるなら,皮ありの場合は 中身をくり抜いて,皮だらけにすればよかったのに』と,まことにその通り.
[O-99] 2型糖尿病患者の食物摂取頻度調査(FFQ)による栄養状況把握
この口演に限らないのですが,代表例として挙げました. 患者が普段どのような食事をしているのか,これを正確に把握するのに,管理栄養士さんがいかに苦労しているかが よくわかる発表でした.患者に前数日の食事を思い出してもらって,それを書き出す,あるいは 食事のたびに内容を記録してもらうという方法は,自分でやってみればわかりますが,ほとんどあてになりません. 私など昨晩の食事すら記憶にありません. また 他の口演でも触れられていましたが,『BMIの高い人,つまり太っている人ほど,自分の食事を過少申告する』という現象も世界共通です.それにくらべれば,このFFQは,『普段,どういうものをどれくらいの頻度と量で食べていますか?』と尋ねるので,まだしもBiasはかかりにくいですが,『多い』『普通』『少ない』というのも主観的判断ですから,患者同士でまるで異なっていて当たり前.統計的処理には耐えないのでしょうね.
[O-105] 食べ順と食後血糖値
Vegetable 1st というのが最初に提案された食べ順療法ですが,野菜を食べて,その15分後に主食を食べる,というのはあまりにも非現実的. そこで,この発表では,おかずファースト,つまり主食を食べ始める時刻を時間=0として,その15分前,10分前からおかずを食べ始めて(おかずは,野菜,肉など区別せず)0分までに食べきる,という方法で,食後血糖値の推移を健常者で調べたものです. 結果は予想通り,10又は15分前から,おかずを食べ,最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだったというもの. 血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので,α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等になるということです.α-GIは,かなり高価なので,これでもいいかもしれませんね.
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
グルカゴンの精密定量法(=サンドイッチELISA法)を開発された群馬大学 北村忠弘先生の研究室からの発表です.予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(=したがって,血糖上昇に対してインスリン応答できない)に,脂質又は蛋白質負荷試験したところ,蛋白質の場合には,グルカゴン分泌亢進が見られた,という結果です.血糖値が上昇も下降もしていないのに,グルカゴンが応答する,というこの結果は,インスリンとグルカゴンが互いに拮抗するホルモンであるという従来の定説では説明できません.前回の糖尿病学会でも,これに関する議論がありましたが,ひょっとしたら,数百万年前の発生当初の人類は,糖質ではなくアミノ酸代謝で筋肉活動エネルギーを得ていた,という仮説の正しさを証明するものかもしれません.
[O-173] 19日間にわたる食べ順療法の効果
食べる順を変えて食後血糖値を調べる,というのは,ほとんどが単回の試験なのに対して,これは19日間にわたり,[主食の10分前おかず完食]と[主食をまず完食して10分後におかず]という2つのパターンを,それぞれ9日間,10日間実行してもらった例で,いわば食べ順の再現性を検証したもの.結果は単回試験とほぼ同じで,おかずファーストの方が血糖値上昇は緩やか,但しAUCはどちらでも同じ.
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
ビルの2階にあるが,エレベーターはないので階段を使わないと通院できないというクリニックに,外来で長年通っている80歳以上の患者の特徴を調べたもの.平均HbA1cは 7.3ですから,年齢を考えれば極めて優秀な人達ばかりです.この方たちの食事をみると,蛋白質摂取量は1.36g/kgと若者以上に蛋白質を積極的に摂っています.Ca摂取量も多い.唯一食塩摂取量が多い(~10g)ですが,かけ醤油はほとんどしない,とのことなので,モリモリとおかずを沢山食べるので,それにつられて食塩が増えた模様.また 運動量は80歳未満の人と変わりません. つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています.
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
リハビリに使われる,低周波電気刺激で両脚の筋肉を強制的に動かすベルトは,食後の運動の代わりになるかという,無精者の私には思わず身を乗り出す発表でした.対象は糖尿病患者ではなく、元気一杯の女子大生9名だったのですが,このベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られていました.今後は 糖尿病予備軍も対象にして調べてみるとの事なので期待されます.
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」感想
今回 参加の決め手になったのは,このシンポジウムがあったからです.
興味をひいた部分のみご報告します.
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
東大病院でも,入院患者の半数以上が65歳以上となり,高齢者への治療がメインになってきたようです. 中年より若い肥満の糖尿病患者にSGLT2iを投与すると,体脂肪率が低下して,体重も減少,かつ骨格筋はほとんど変わらないか微減なのですが,これが肥満・高齢の糖尿病患では,体重の低下と共に,骨格筋まで減少してサルコペニアの恐れがあるとのこと.(サルコペニア判定の基準は 握力<26kg,SMI<7.0) そこで高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物カロリー比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います.さすがに門脇先生のおられる東大病院だからでしょう.
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
学会のDebateなどで最初に登場した頃は,糖質制限食を全面否定しておられた福井先生ですが,その後徐々に軌道修正(全否定→短期間なら許容...)して,現在では糖質制限食を行うのであれば一定の注意が必要,という立場での発表でした.
概要は;
- 糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導.
- 糖質制限は,高蛋白・高脂質食となるが,蛋白では,魚や植物性のものを取り入れる,また 脂質では飽和脂肪酸を控えれば,むしろ総死亡リスクは低くなる.
- ただし,腎症3期以上には勧められない.
- 一方 SGLT2iは食事内容が極端にならないので適応が広い.
- ただし 糖質制限食を実行している患者にSGLT2i投与はリスクが高い.
というものでしたが,現時点で学会が最大限許容できるのは,この線までだという意思表明なのでしょう.ただ それならそれで構わないので,糖尿病ガイドラインに これを早く明記していただきたいものです.日本中の内科一般の先生方は,ガイドラインに糖質制限食という言葉がない以上,効果はあるだろうと思ってはいても,実際に患者に指示するのは躊躇わざるをえないでしょうから.】
以下、特に興味深い話題を検討してみます。
[O-105] 食べ順と食後血糖値
『10又は15分前から、おかずを食べ、
最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだった。
血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので、
α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等。』
そういうことなら、食後高血糖(グルコーススパイク)は防げるので
インスリン分泌もやや少なくなり、お指摘通り
それなりに意味があると言えますね。
私もどうしても糖質がやめられない糖尿人には、
「フルコースのイメージで、最初におかずばかり食べて、
最後に少量のご飯摂取に」
と指導することもあります。
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(インスリン分泌不能)での
実験ですね。
脂質摂取ではグルカゴン分泌はなしで
蛋白質摂取ではグルカゴン分泌ありです。
1型糖尿病で、内因性インスリンゼロ(β細胞破壊され、存在せず)の患者さんの場合、
脂質摂取ではグルカゴン分泌はなしで
蛋白質摂取ではグルカゴン分泌ありで、上記のマウスと同様です。
ガイトン臨床生理学(早川弘一監訳、第1版、第1刷、医学書院)990ページに、
「アラニンやアルギニンなどのアミノ酸はグルカゴン分泌を刺激する。」
988ページに、
「アルギニンやリジンなどのアミノ酸はインスリン分泌を刺激する」
という記載があります。
インスリンとグルカゴンは、血糖値とは無関係に、
単純に蛋白質の摂取で、共に分泌されるのだと思います。
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
『つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています。』
これは、とても嬉しい発表です。
私も、高齢者ほど、高タンパク食、特に動物性蛋白質を充分量摂取することが
健康長寿に大切と思います。
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
『リハビリ用の低周波ベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られた。』
これはおっしゃる通り、興味深いですね。
テレビのCM でも、似たような器具があって、減量効果をうたってますが、
もしかしたら有用なのかもしれませんね。
運動不足の糖尿人やメタボ人には、朗報かもしれません。
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
『高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物カロリー比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います。』
確かに、門脇孝日本糖尿病学会理事長が
「東大病院では、2015年4月から、糖質40%の糖質制限食を供給している。」
と、2016/7/1(金)東洋経済オンライン http://toyokeizai.net/articles/-/125237
で述べておられますが、学会など公的な場所では初めてと思います。
また高蛋白食の必要性を強調されたのも、とても好ましい変化ですね。
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
『糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導。』
これは、福井先生なかなか、興味深いご発言ですね。
糖質過多の食事というのは、
糖質60%のことなのでしょうか?糖質70~80%のことなのでしょうか?
糖尿病患者に多くに見られるということなら、
日本人の摂取カロリー比率の平均が約60%が糖質ですから
糖尿病患者もそんなもんと思いますが・・・。
『糖質過多』という概念を、日本糖尿病学会の重鎮の一人の
京都府立医大 福井道明教授が認めたのは大きな進歩と言えますね。
米国糖尿病学会が、2013年10月の「栄養療法に関する声明」の中で
糖質制限食を正式に容認しましたが、
日本糖尿病学会はいつこれに追いつくのでしょう?
江部康二
しらねのぞるばさんから
2018年1月12日、13日、14日(日)
京都の国際会館で開催された第21回 日本病態栄養学会の感想を
コメント頂きました。
いつもありがとうございます。
とても参考になります。
【8/01/13 しらねのぞるば
第21回 日本病態栄養学会[京都]感想
今回は直前までプログラム詳細が発表されず,
参加をためらっていたのですが,
結局 初日/2日目のみ参加しました.
【1】一般口演 感想
一般口演は,糖尿病(1)~(6)をすべて聴講しました.
下記はその感想ですが,口演の件名は 私が勝手に付け直していますので,
正しい件名は抄録集でご確認ください.
[O-94] サツマイモを皮ごと食べれば血糖値は上がらないか.
結果からみれば,ほとんど関係なし. 発表者も述べていたように,皮ありの場合の食物繊維量は 2.8g,無しの場合は2.2g(いずれも100gあたり)ですから,この程度の差では結果が同じでも当たりまえでしょう. 座長がコメントしていたように,『どうせやるなら,皮ありの場合は 中身をくり抜いて,皮だらけにすればよかったのに』と,まことにその通り.
[O-99] 2型糖尿病患者の食物摂取頻度調査(FFQ)による栄養状況把握
この口演に限らないのですが,代表例として挙げました. 患者が普段どのような食事をしているのか,これを正確に把握するのに,管理栄養士さんがいかに苦労しているかが よくわかる発表でした.患者に前数日の食事を思い出してもらって,それを書き出す,あるいは 食事のたびに内容を記録してもらうという方法は,自分でやってみればわかりますが,ほとんどあてになりません. 私など昨晩の食事すら記憶にありません. また 他の口演でも触れられていましたが,『BMIの高い人,つまり太っている人ほど,自分の食事を過少申告する』という現象も世界共通です.それにくらべれば,このFFQは,『普段,どういうものをどれくらいの頻度と量で食べていますか?』と尋ねるので,まだしもBiasはかかりにくいですが,『多い』『普通』『少ない』というのも主観的判断ですから,患者同士でまるで異なっていて当たり前.統計的処理には耐えないのでしょうね.
[O-105] 食べ順と食後血糖値
Vegetable 1st というのが最初に提案された食べ順療法ですが,野菜を食べて,その15分後に主食を食べる,というのはあまりにも非現実的. そこで,この発表では,おかずファースト,つまり主食を食べ始める時刻を時間=0として,その15分前,10分前からおかずを食べ始めて(おかずは,野菜,肉など区別せず)0分までに食べきる,という方法で,食後血糖値の推移を健常者で調べたものです. 結果は予想通り,10又は15分前から,おかずを食べ,最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだったというもの. 血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので,α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等になるということです.α-GIは,かなり高価なので,これでもいいかもしれませんね.
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
グルカゴンの精密定量法(=サンドイッチELISA法)を開発された群馬大学 北村忠弘先生の研究室からの発表です.予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(=したがって,血糖上昇に対してインスリン応答できない)に,脂質又は蛋白質負荷試験したところ,蛋白質の場合には,グルカゴン分泌亢進が見られた,という結果です.血糖値が上昇も下降もしていないのに,グルカゴンが応答する,というこの結果は,インスリンとグルカゴンが互いに拮抗するホルモンであるという従来の定説では説明できません.前回の糖尿病学会でも,これに関する議論がありましたが,ひょっとしたら,数百万年前の発生当初の人類は,糖質ではなくアミノ酸代謝で筋肉活動エネルギーを得ていた,という仮説の正しさを証明するものかもしれません.
[O-173] 19日間にわたる食べ順療法の効果
食べる順を変えて食後血糖値を調べる,というのは,ほとんどが単回の試験なのに対して,これは19日間にわたり,[主食の10分前おかず完食]と[主食をまず完食して10分後におかず]という2つのパターンを,それぞれ9日間,10日間実行してもらった例で,いわば食べ順の再現性を検証したもの.結果は単回試験とほぼ同じで,おかずファーストの方が血糖値上昇は緩やか,但しAUCはどちらでも同じ.
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
ビルの2階にあるが,エレベーターはないので階段を使わないと通院できないというクリニックに,外来で長年通っている80歳以上の患者の特徴を調べたもの.平均HbA1cは 7.3ですから,年齢を考えれば極めて優秀な人達ばかりです.この方たちの食事をみると,蛋白質摂取量は1.36g/kgと若者以上に蛋白質を積極的に摂っています.Ca摂取量も多い.唯一食塩摂取量が多い(~10g)ですが,かけ醤油はほとんどしない,とのことなので,モリモリとおかずを沢山食べるので,それにつられて食塩が増えた模様.また 運動量は80歳未満の人と変わりません. つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています.
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
リハビリに使われる,低周波電気刺激で両脚の筋肉を強制的に動かすベルトは,食後の運動の代わりになるかという,無精者の私には思わず身を乗り出す発表でした.対象は糖尿病患者ではなく、元気一杯の女子大生9名だったのですが,このベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られていました.今後は 糖尿病予備軍も対象にして調べてみるとの事なので期待されます.
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」感想
今回 参加の決め手になったのは,このシンポジウムがあったからです.
興味をひいた部分のみご報告します.
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
東大病院でも,入院患者の半数以上が65歳以上となり,高齢者への治療がメインになってきたようです. 中年より若い肥満の糖尿病患者にSGLT2iを投与すると,体脂肪率が低下して,体重も減少,かつ骨格筋はほとんど変わらないか微減なのですが,これが肥満・高齢の糖尿病患では,体重の低下と共に,骨格筋まで減少してサルコペニアの恐れがあるとのこと.(サルコペニア判定の基準は 握力<26kg,SMI<7.0) そこで高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物カロリー比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います.さすがに門脇先生のおられる東大病院だからでしょう.
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
学会のDebateなどで最初に登場した頃は,糖質制限食を全面否定しておられた福井先生ですが,その後徐々に軌道修正(全否定→短期間なら許容...)して,現在では糖質制限食を行うのであれば一定の注意が必要,という立場での発表でした.
概要は;
- 糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導.
- 糖質制限は,高蛋白・高脂質食となるが,蛋白では,魚や植物性のものを取り入れる,また 脂質では飽和脂肪酸を控えれば,むしろ総死亡リスクは低くなる.
- ただし,腎症3期以上には勧められない.
- 一方 SGLT2iは食事内容が極端にならないので適応が広い.
- ただし 糖質制限食を実行している患者にSGLT2i投与はリスクが高い.
というものでしたが,現時点で学会が最大限許容できるのは,この線までだという意思表明なのでしょう.ただ それならそれで構わないので,糖尿病ガイドラインに これを早く明記していただきたいものです.日本中の内科一般の先生方は,ガイドラインに糖質制限食という言葉がない以上,効果はあるだろうと思ってはいても,実際に患者に指示するのは躊躇わざるをえないでしょうから.】
以下、特に興味深い話題を検討してみます。
[O-105] 食べ順と食後血糖値
『10又は15分前から、おかずを食べ、
最後に主食をとれば食後血糖値変動は緩やかだった。
血糖値曲線のAUCはどれであれ同じだったので、
α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)を食前服用したのとほぼ同等。』
そういうことなら、食後高血糖(グルコーススパイク)は防げるので
インスリン分泌もやや少なくなり、お指摘通り
それなりに意味があると言えますね。
私もどうしても糖質がやめられない糖尿人には、
「フルコースのイメージで、最初におかずばかり食べて、
最後に少量のご飯摂取に」
と指導することもあります。
[O-172] グルカゴン分泌と摂取栄養素の関係
予め薬物で膵臓β細胞を破壊しておいたマウス(インスリン分泌不能)での
実験ですね。
脂質摂取ではグルカゴン分泌はなしで
蛋白質摂取ではグルカゴン分泌ありです。
1型糖尿病で、内因性インスリンゼロ(β細胞破壊され、存在せず)の患者さんの場合、
脂質摂取ではグルカゴン分泌はなしで
蛋白質摂取ではグルカゴン分泌ありで、上記のマウスと同様です。
ガイトン臨床生理学(早川弘一監訳、第1版、第1刷、医学書院)990ページに、
「アラニンやアルギニンなどのアミノ酸はグルカゴン分泌を刺激する。」
988ページに、
「アルギニンやリジンなどのアミノ酸はインスリン分泌を刺激する」
という記載があります。
インスリンとグルカゴンは、血糖値とは無関係に、
単純に蛋白質の摂取で、共に分泌されるのだと思います。
[O-177] 高齢でも元気な糖尿人の秘訣
『つまりは,高蛋白のおかずを沢山食べてよく動いていれば,それだけで 80歳を越えても血糖コントロールは可能だということを示してくれています。』
これは、とても嬉しい発表です。
私も、高齢者ほど、高タンパク食、特に動物性蛋白質を充分量摂取することが
健康長寿に大切と思います。
[O-179] 低周波ベルトは 運動の代わりになるか
『リハビリ用の低周波ベルトで刺激しながらOGTTを行ったところ,かなり強度の刺激であれば,トレッドミルで運動したのに近い結果が得られた。』
これはおっしゃる通り、興味深いですね。
テレビのCM でも、似たような器具があって、減量効果をうたってますが、
もしかしたら有用なのかもしれませんね。
運動不足の糖尿人やメタボ人には、朗報かもしれません。
【2】シンポジウム#4 「糖尿病薬物治療と栄養管理」
演題 S4-2
『薬物治療中の高齢糖尿病患者の栄養管理を考える』東大医学部附属病院 澤田実佳 先生
『高齢者に対しては,投薬と同時に筋低下を引き起こさない食事療法も必須,とりわけ高蛋白食の提供が重要との内容でした.そのために,通常の炭水化物カロリー比60%の,いわゆる糖尿病食だけではなく,50%,40%の病院食も行っているとのこと. 私の知る限りでは,公の場で,【炭水化物カロリー比率 40%(つまり糖質は40%未満)の糖尿病病院食】の存在を明確に紹介されたのは,これが初めてではないかと思います。』
確かに、門脇孝日本糖尿病学会理事長が
「東大病院では、2015年4月から、糖質40%の糖質制限食を供給している。」
と、2016/7/1(金)東洋経済オンライン http://toyokeizai.net/articles/-/125237
で述べておられますが、学会など公的な場所では初めてと思います。
また高蛋白食の必要性を強調されたのも、とても好ましい変化ですね。
演題 S4-3
『低炭水化物食はSGLT2阻害薬と同じ?』京都府立医大 福井道明先生
『糖尿病患者の多くに見られるのは,糖質過多の食事.これを『適正』に戻すのは糖質制限でも何でもない,ごく当然の栄養指導。』
これは、福井先生なかなか、興味深いご発言ですね。
糖質過多の食事というのは、
糖質60%のことなのでしょうか?糖質70~80%のことなのでしょうか?
糖尿病患者に多くに見られるということなら、
日本人の摂取カロリー比率の平均が約60%が糖質ですから
糖尿病患者もそんなもんと思いますが・・・。
『糖質過多』という概念を、日本糖尿病学会の重鎮の一人の
京都府立医大 福井道明教授が認めたのは大きな進歩と言えますね。
米国糖尿病学会が、2013年10月の「栄養療法に関する声明」の中で
糖質制限食を正式に容認しましたが、
日本糖尿病学会はいつこれに追いつくのでしょう?
江部康二
2018年01月16日 (火)
こんにちは。
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年3月11日(日)、東京にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(東京)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」
「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、
実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
東京、関東、東北などの医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年3月11日(日)、東京にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
内容につきましては、2月25日(日)大阪にて開催しますセミナーと
同様を予定しております。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
*2/25(日)の医療従事者向けセミナー(大阪)も引き続き募集しております。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 東京
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年3月11日(日)13:00~16:40頃 ※開場・受付は12:40~
■会場: WATERRAS COMMON 3F「ワテラスコモンホール」
東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地
http://www.waterrascommon.com/access.html
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、
最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、
よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、
糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、
少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、
体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「3/11東京セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは3月9日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年3月11日(日)、東京にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(東京)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」
「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、
実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
東京、関東、東北などの医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年3月11日(日)、東京にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
内容につきましては、2月25日(日)大阪にて開催しますセミナーと
同様を予定しております。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
*2/25(日)の医療従事者向けセミナー(大阪)も引き続き募集しております。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 東京
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年3月11日(日)13:00~16:40頃 ※開場・受付は12:40~
■会場: WATERRAS COMMON 3F「ワテラスコモンホール」
東京都千代田区神田淡路町2丁目101番地
http://www.waterrascommon.com/access.html
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、
最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、
よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、
糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、
少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、
体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「3/11東京セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは3月9日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2018年01月15日 (月)
【18/01/13 がりがり
食事のアドバイスお願いします。
低血糖症のため4年ほどスーパー糖質制限を行っています。
低血糖症の症状はほぼ完治したのですが、
今後もスーパー糖質制限を続けていくつもりです。
脂質、ビタミン、ミネラルとバランスの良い食事をしていますが
どうにもエネルギー不足を感じています。
そこで先生に食事の目安量を教えていただきたく思います。
因みに、体型についてですが身長180センチ、体重56キロ、かなりのやせ型です。
理想としては、体重60キロ程度にはしたいと考えています。】
がりがり さん。
「スーパー糖質制限食で機能性低血糖症が改善して、ほぼ完治」
良かったです。
180cm 56kg BMI:17.3
仰る通り、確かに痩せ型です。
BMI:18.5 は欲しいので、こちらも仰る通り60kgが目標です。
がりがりさんと同様、糖質制限食でHbA1cは良くなったけれど
痩せすぎで力が入らないという糖尿人も時々見かけます。
ともあれ、糖質制限食実践においては、機能性低血糖でも糖尿病でも
摂取エネルギー不足にならないよう注意が必要です。
摂取エネルギーの目安は、厚生労働省のいう推定エネルギー必要量です。
糖質を制限したぶん、脂質と蛋白質を充分量摂取して、
推定エネルギー必要量を確保することが大切です。
<推定エネルギー必要量>
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量(一日あたり)
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
<機能性低血糖>
機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、
血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。
易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・
などの症状がみられます。
ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。
やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、
追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、
早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
はっきりしている場合は、糖質摂取4~5時間後の血糖値が60mg/dl以下になります。
家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、イ
ンスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。
境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。
そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが2型糖尿病の特徴なので、
「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」
というパターンは、結構あると思います。
一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、
インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。
こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。
当然、高校生や大学生は言うまでもありません。
いずれにせよ
<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。
未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、
インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。
スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分の少量の糖質に対応して、
せいぜい2~3倍くらいまでです。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、
若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。
機能性低血糖症の場合、糖質摂取後30分で140mg/dl程度に上昇した血糖値が、
60分後に80mg/dlなったりします。
これだけ血糖動幅が大きい(60mg)と、眠気も来そうですね。
さらに4時間~5時間に40~60mg/dlとかまで下がることがあり、
低血糖症状を生じます。
血糖値が40mg~60mg/dlなら明らかな低血糖ですが、60mg/dl以上あって正常範囲でも、
血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。
江部康二
食事のアドバイスお願いします。
低血糖症のため4年ほどスーパー糖質制限を行っています。
低血糖症の症状はほぼ完治したのですが、
今後もスーパー糖質制限を続けていくつもりです。
脂質、ビタミン、ミネラルとバランスの良い食事をしていますが
どうにもエネルギー不足を感じています。
そこで先生に食事の目安量を教えていただきたく思います。
因みに、体型についてですが身長180センチ、体重56キロ、かなりのやせ型です。
理想としては、体重60キロ程度にはしたいと考えています。】
がりがり さん。
「スーパー糖質制限食で機能性低血糖症が改善して、ほぼ完治」
良かったです。
180cm 56kg BMI:17.3
仰る通り、確かに痩せ型です。
BMI:18.5 は欲しいので、こちらも仰る通り60kgが目標です。
がりがりさんと同様、糖質制限食でHbA1cは良くなったけれど
痩せすぎで力が入らないという糖尿人も時々見かけます。
ともあれ、糖質制限食実践においては、機能性低血糖でも糖尿病でも
摂取エネルギー不足にならないよう注意が必要です。
摂取エネルギーの目安は、厚生労働省のいう推定エネルギー必要量です。
糖質を制限したぶん、脂質と蛋白質を充分量摂取して、
推定エネルギー必要量を確保することが大切です。
<推定エネルギー必要量>
「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)
に示す推定エネルギー必要量の範囲、
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
推定エネルギー必要量(一日あたり)
男性 女性
15-17才 2500 2850 3150 2050 2300 2550kcal
18-29才 2300 2650 3050 1650 1950 2200
30-49才 2300 2650 3050 1750 2000 2300
50-69才 2100 2450 2800 1650 1900 2200
70才 1850 2200 2500 1500 1750 2000
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
<機能性低血糖>
機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、
血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。
易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・
などの症状がみられます。
ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。
やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、
追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、
早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
はっきりしている場合は、糖質摂取4~5時間後の血糖値が60mg/dl以下になります。
家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、イ
ンスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。
境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。
そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが2型糖尿病の特徴なので、
「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」
というパターンは、結構あると思います。
一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、
インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。
こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。
当然、高校生や大学生は言うまでもありません。
いずれにせよ
<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。
未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、
インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。
スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分の少量の糖質に対応して、
せいぜい2~3倍くらいまでです。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、
若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。
機能性低血糖症の場合、糖質摂取後30分で140mg/dl程度に上昇した血糖値が、
60分後に80mg/dlなったりします。
これだけ血糖動幅が大きい(60mg)と、眠気も来そうですね。
さらに4時間~5時間に40~60mg/dlとかまで下がることがあり、
低血糖症状を生じます。
血糖値が40mg~60mg/dlなら明らかな低血糖ですが、60mg/dl以上あって正常範囲でも、
血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。
江部康二
2018年01月14日 (日)
おはようございます。
インフルエンザが、流行しています。
国立感染研究所によれば、
2017年 第52週 (12月25日~12月31日) 2018年1月5日現在
2017年第52週の定点当たり報告数は17.88(患者報告数85,976)となり、
前週の定点当たり報告数12.87よりも増加しました。
全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は70箇所(1道2府23県)、
注意報レベルを超えている保健所地域は314箇所(1都1道2府41県)となりました。
京都府も警報レベルです。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると
約101万人(95%信頼区間:99~103万人)となり、前週の推計値(約66万人)よりも増加しました。
さて、インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。
今年のワクチンは、4種類のインフルエンザウイルス株が含まれています。
是非、知っておいて欲しいことは、インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
感染防御力は基本的になくて、重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することによりIgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
http://www0.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでした。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
インフルエンザが、流行しています。
国立感染研究所によれば、
2017年 第52週 (12月25日~12月31日) 2018年1月5日現在
2017年第52週の定点当たり報告数は17.88(患者報告数85,976)となり、
前週の定点当たり報告数12.87よりも増加しました。
全国の保健所地域で警報レベルを超えている保健所地域は70箇所(1道2府23県)、
注意報レベルを超えている保健所地域は314箇所(1都1道2府41県)となりました。
京都府も警報レベルです。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると
約101万人(95%信頼区間:99~103万人)となり、前週の推計値(約66万人)よりも増加しました。
さて、インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。
今年のワクチンは、4種類のインフルエンザウイルス株が含まれています。
是非、知っておいて欲しいことは、インフルエンザワクチンは万能ではないということです。
感染防御力は基本的になくて、重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。
ワクチンを打っている人も打っていない人も、手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。
特に、手洗いが思った以上に有効です。
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。
外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。
咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。
外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。
以下の青字は、厚生労働省サイトの記載です。
インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。
インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。
<インフルエンザワクチンの有効性>
インフルエンザワクチンは、A型にもB型にも対応しています。
しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、
水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。
感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので、過信するのは禁物です。
理論的に考えても、ワクチンを接種することによりIgG抗体が血液・体液中に産生されますが、
粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。
従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、
はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。
欧米では、鼻への噴霧ワクチンで、粘膜面のIgA抗体をつくる試みもされていますが
あまり上手くいっていません。
IgA抗体を充分量増やす技術が難しいようです。
下記の青字は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
http://www0.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」
(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。
しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには期待出来ると考えられています。」】
<集団感染>
東京・練馬区の特別養護老人ホームで、入所者49人が年末から年始(2017/2018)にかけて相次いでインフルエンザに感染していることがわかりました。
このうち、症状が重かった6人が医療機関に入院したということですが、現在は回復しているということです。
前橋市は2017年12月28日、同市内の病院の入院棟にいた入院患者26人と職員4人の計30人がインフルエンザに集団感染し、このうち80代の女性が死亡したと発表しました。
これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。
このように、感染防御にはワクチンは、実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。
そもそもインフルエンザワクチンは「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。
感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。
<誤解>
ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、水際で感染防御できると誤解しておられるのです。
私は、過去10年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでした。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。
ここ数年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。
逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。
インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して、
「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」
と付け加えます。
<必要性>
別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。
65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。
<感染防御>
①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。
その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
できればノンタッチごみ箱に廃棄すること
ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、
上記①~⑦を励行してくださいね。
これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。
<終わりに>
インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。
ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。
江部康二
2018年01月12日 (金)
こんばんは。
秋から冬は感染性胃腸炎が流行ります。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。
ウイルス感染による胃腸炎が多いのですが、
特にノロウィルス感染症は、大変うつりやすいので注意が必要です。
ノロウィルスはインフルエンザウィルスより、
はるかに感染しやすいのです。
ノロウィルスで直接死亡することは、まずありません。
しかし、高齢者などでは、
下痢・嘔吐による脱水や、吐瀉物による気道閉塞で死亡する場合もあります。
脱水には点滴での水分補給が有効です。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、主として経口で感染します。
患者のふん便や吐瀉物には、大量のノロウィルスがいます。
とくに、感染源となりやすいのは吐瀉物です。
吐瀉物がじゅうたんにあって、乾燥しても12日間くらいは感染力があります。
また、乾燥した吐瀉物が微細な浮遊物となって感染源となります。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、
使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、
ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(*)で浸すように床を拭き取り、
その後水拭きをします。
おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。
食品からの感染予防には加熱が有効です。
二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには、
中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要とされています。
手洗いは、感染予防に極めて有効です。
手指、手掌、手背、爪、指間、全てを万遍なく洗うことが必要です。
15秒ぐらいかけて洗います。
消毒タイプで液体の石鹸があれば、使用します。
石鹸がなければお湯洗い・水洗いだけでも充分有効です。
手に残った水分は素早く拭き取ります。使い捨てのペーパータオルがいいです。
(*)
■次亜塩素酸ナトリウムの消毒液の作り方(広島市、福山市のサイトから引用)
ノロウイルスに対しては塩素系消毒剤である 次亜塩素酸ナトリウム による消毒が有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは、薄めて使用します。
市販されている家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)の濃度は、約5%です。
■便やおう吐物が付着した床,衣類,トイレなどの消毒をする場合…
濃度が 0.1%(1,000ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター20ml))
■おもちゃ,調理器具,直接手で触れる部分などの消毒をする場合…
濃度が 0.02%(200ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター5ml))
●家庭用塩素系漂白剤のキャップの容量は通常20ml~25mlです。容器に書いてありますので、確認して使用してください。
【消毒液(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を扱うときの注意】
・使用する時は換気を十分に行ってください。
・有毒な塩素ガスが発生しますので,酸性のものと絶対に混ぜないでください!
・皮膚への刺激が強いので,直接触れないよう,ビニール手袋などを使用してください。
・皮膚に付着した場合は,直ちに大量の水で十分洗い流してください。
・目に入った場合は,直ちに大量の水で十分洗い流し,医師の診察を受けてください。
・消毒液は,濃度が高いほどノロウイルスに対して有効ですが,反面,金属が錆びたり,
漂白(変色)作用が強くなったりしますので,注意してください。
・金属に使用した場合は,消毒後,水で洗い流すか,ふき取るなどしてください。
★ 感染経路(広島市のサイトから引用)
感染経路は、基本的にはノロウイルスが口から入り、消化器に達して主に腸管で増殖して感染します。
ノロウイルスが口に達する経路は様々で、具体的な経路を下に示しました。
感染性胃腸炎の原因となる病原体の中でも、ノロウイルスは他の病原体と異なり、経口感染や接触感染のみならず、
飛沫感染や空気感染を起こすことが最近になってわかってきました。
これらの感染経路を理解することが、予防する上で大切です。
1. 経口感染(食中毒)
・ウイルスに汚染された食品(二枚貝に含まれていることがあります。)を、
生または十分に加熱しないで食べた場合。
・感染した人が調理して食品や水が汚染され、それを食べたり飲んだりした場合。
2. 接触感染
・感染した人の便や吐物にふれ、手指をとおして口から入った場合。
・感染した人の手指や感染した人が触れた衣服、器具等に接触し、手指をとおして口から入った場合。
3. 飛沫感染
・患者の便や吐物が飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴。1~2m飛散します。)を吸い込んだ場合。
・便や吐物を不用意に始末したときに発生した飛沫を吸い込んだ場合。
4. 空気感染
・患者の便や吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥して飛沫よりもさらに細かい粒子となって空気中を 漂い、それを吸い込んだ場合。この場合感染源からかなり離れた場所でも、感染する可能性があります。
江部康二
☆☆☆
以下厚生労働省のサイトから引用・抜粋
厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&A
(作成:平成16年2月4日 最終改定:平成27年6月30日)
ノロウイルスによる食中毒及び感染症の発生を防止するため、ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等について理解を深めていただきたく、厚生 労働省において、次のとおりノロウイルスに関するQ&Aを作成しました。今後、ノロウイルスに関する知見の進展等に対応して、逐次、本Q&Aを更新してい くこととしています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
Q1 ノロウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?
A1 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、
特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、
また、治療は輸液などの対症療法に限られます。
従って、皆様の周りの方々と一緒に、次の予防対策を徹底しましょう。
患者のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるので、
(1)食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。
(2)下痢やおう吐等の症状がある方は、
食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。
(3)胃腸炎患者に接する方は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、
感染を広げないようにしましょう。
特に、子どもやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、
加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べましょう。
また、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌しましょう。
Q3 ノロウイルスはどうやって感染するのですか?
A3
このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、
次のような感染様式があると考えられています。
(1)患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感 染した場合
(2)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫 感染等直接感染する場合
(3)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を 行う者などが含まれます。)が感染しておりその者を介して汚染した食品を食べた場合
(4)汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
(5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
などがあります。
特に、食中毒では(3)のように食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を原因とする事例が、近年増加傾向にあります。
また、ノロウイルスは(3)、(4)、(5)のように食品や水を介したウイルス性食中毒の原因になるばかりでなく、(1)、(2)のようにウイルス性急性胃腸炎(感染症)の原因にもなります。この多彩な感染経路がノロウイルスの制御を困難なものにしています。
Q8 ノロウイルスに感染するとどんな症状になるのですか?
A8
潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
Q9 国内でノロウイルスの感染による死者はいますか?
A9
病院や社会福祉施設でノロウイルスの集団感染が発生している時期に、当該施設で死者が出たことがあります。
しかし、もともとの疾患や体力の低下などにより介護を必要としていた方などが亡くなった場合、ノロウイルスの感染がどの程度影響したのか見極めることは困難です。
なお、吐いた物を誤嚥することによる誤嚥性肺炎や吐いた物を喉に詰まらせて窒息する場合など、ノロウイルスが関係したと思われる場合であっても直接の原因とはならない場合もあります。
Q10 発症した場合の治療法はありますか?
A10
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。
止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
Q13 ノロウイルス食中毒の予防方法は?
A13
ノロウイルス食中毒を防ぐためには、(1)食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防止する (2)特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱することが重要です。特に、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるため、大量調理施設の食品取扱者がノロウイルスに感染していると、大規模な食中毒となる可能性があります。
Q15 手洗いはどのようにすればいいのですか?
A15
手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。 調理を行う前(特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も)、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず行いましょう。常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
なお、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください。
Q16 ノロウイルスに汚染された可能性のある調理台や調理器具はどのように殺菌したらいいのですか?
A16
一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が用いられることがありますが、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム※や加熱による処理があります。
調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の都度洗浄、熱湯消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意するよう気をつけましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q18 ノロウイルスによる感染性胃腸炎のまん延を防止する方法は?
A18
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、そのまん延を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつからの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要があります。
毎年、11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行しますが、この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
Q19 患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意することはありますか?
A19
ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられています。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐ぶつとともに排泄されます。このため、ふん便と同様に吐ぶつ中にも大量のウイルスが存在し感染源となりうるので、その処理には十分注意する必要があります。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例も知られており、時間が経っても、患者の吐ぶつ、ふん便やそれらにより汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。このため、これら感染源となるものは必ず処理をしましょう。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。(この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約1,000ppm)を入れることが望ましい。)
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。
11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します。この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q20 吐ぶつやふん便が布団などのリネン類に付着した場合はどのように処理をすればよいですか。
A20
リネン等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理した後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際にしぶきを吸い込まないよう注意してください。下洗いしたリネン類の消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。ただし、熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、次亜塩素酸ナトリウム※の消毒が有効です。その際も十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。布団などすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。また、下洗い場所を次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をする必要があります。次亜塩素酸ナトリウム※には漂白作用があります。薬剤の「使用上の注意」を確認してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q21 感染者が使用した食器類の消毒はどのようにしたらよいですか?
A21
施設の厨房等多人数の食事の調理、配食等をする部署へ感染者の使用した食器類や吐ぶつが付着した食器類を下膳する場合、注意が必要です。可能であれば食器等は、厨房に戻す前、食後すぐに次亜塩素酸ナトリウム液に十分浸し、消毒します。
また、食器等の下洗いや嘔吐後にうがいをした場所等も次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をするようにしてください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q22 感染者が発生した場合、環境の消毒はどのようにしたらよいですか?
A22
ノロウイルスは感染力が強く、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。感染者が発生した場合、消毒が必要な場合次亜塩素酸ナトリウム※などを使用してください。ただし、次亜塩素酸ナトリウム※は金属腐食性がありますので、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
秋から冬は感染性胃腸炎が流行ります。
感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体による感染症です。
ウイルス感染による胃腸炎が多いのですが、
特にノロウィルス感染症は、大変うつりやすいので注意が必要です。
ノロウィルスはインフルエンザウィルスより、
はるかに感染しやすいのです。
ノロウィルスで直接死亡することは、まずありません。
しかし、高齢者などでは、
下痢・嘔吐による脱水や、吐瀉物による気道閉塞で死亡する場合もあります。
脱水には点滴での水分補給が有効です。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、主として経口で感染します。
患者のふん便や吐瀉物には、大量のノロウィルスがいます。
とくに、感染源となりやすいのは吐瀉物です。
吐瀉物がじゅうたんにあって、乾燥しても12日間くらいは感染力があります。
また、乾燥した吐瀉物が微細な浮遊物となって感染源となります。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、
使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、
ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(*)で浸すように床を拭き取り、
その後水拭きをします。
おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。
食品からの感染予防には加熱が有効です。
二枚貝の加熱調理でウイルスを失活させるには、
中心部が85~90℃で少なくとも90秒間の加熱が必要とされています。
手洗いは、感染予防に極めて有効です。
手指、手掌、手背、爪、指間、全てを万遍なく洗うことが必要です。
15秒ぐらいかけて洗います。
消毒タイプで液体の石鹸があれば、使用します。
石鹸がなければお湯洗い・水洗いだけでも充分有効です。
手に残った水分は素早く拭き取ります。使い捨てのペーパータオルがいいです。
(*)
■次亜塩素酸ナトリウムの消毒液の作り方(広島市、福山市のサイトから引用)
ノロウイルスに対しては塩素系消毒剤である 次亜塩素酸ナトリウム による消毒が有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは、薄めて使用します。
市販されている家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)の濃度は、約5%です。
■便やおう吐物が付着した床,衣類,トイレなどの消毒をする場合…
濃度が 0.1%(1,000ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター20ml))
■おもちゃ,調理器具,直接手で触れる部分などの消毒をする場合…
濃度が 0.02%(200ppm) の消毒液を作ります。(1リットルの水にハイター5ml))
●家庭用塩素系漂白剤のキャップの容量は通常20ml~25mlです。容器に書いてありますので、確認して使用してください。
【消毒液(次亜塩素酸ナトリウム溶液)を扱うときの注意】
・使用する時は換気を十分に行ってください。
・有毒な塩素ガスが発生しますので,酸性のものと絶対に混ぜないでください!
・皮膚への刺激が強いので,直接触れないよう,ビニール手袋などを使用してください。
・皮膚に付着した場合は,直ちに大量の水で十分洗い流してください。
・目に入った場合は,直ちに大量の水で十分洗い流し,医師の診察を受けてください。
・消毒液は,濃度が高いほどノロウイルスに対して有効ですが,反面,金属が錆びたり,
漂白(変色)作用が強くなったりしますので,注意してください。
・金属に使用した場合は,消毒後,水で洗い流すか,ふき取るなどしてください。
★ 感染経路(広島市のサイトから引用)
感染経路は、基本的にはノロウイルスが口から入り、消化器に達して主に腸管で増殖して感染します。
ノロウイルスが口に達する経路は様々で、具体的な経路を下に示しました。
感染性胃腸炎の原因となる病原体の中でも、ノロウイルスは他の病原体と異なり、経口感染や接触感染のみならず、
飛沫感染や空気感染を起こすことが最近になってわかってきました。
これらの感染経路を理解することが、予防する上で大切です。
1. 経口感染(食中毒)
・ウイルスに汚染された食品(二枚貝に含まれていることがあります。)を、
生または十分に加熱しないで食べた場合。
・感染した人が調理して食品や水が汚染され、それを食べたり飲んだりした場合。
2. 接触感染
・感染した人の便や吐物にふれ、手指をとおして口から入った場合。
・感染した人の手指や感染した人が触れた衣服、器具等に接触し、手指をとおして口から入った場合。
3. 飛沫感染
・患者の便や吐物が飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴。1~2m飛散します。)を吸い込んだ場合。
・便や吐物を不用意に始末したときに発生した飛沫を吸い込んだ場合。
4. 空気感染
・患者の便や吐物の処理が不十分なため、それらが乾燥して飛沫よりもさらに細かい粒子となって空気中を 漂い、それを吸い込んだ場合。この場合感染源からかなり離れた場所でも、感染する可能性があります。
江部康二
☆☆☆
以下厚生労働省のサイトから引用・抜粋
厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&A
(作成:平成16年2月4日 最終改定:平成27年6月30日)
ノロウイルスによる食中毒及び感染症の発生を防止するため、ノロウイルスに関する正しい知識と予防対策等について理解を深めていただきたく、厚生 労働省において、次のとおりノロウイルスに関するQ&Aを作成しました。今後、ノロウイルスに関する知見の進展等に対応して、逐次、本Q&Aを更新してい くこととしています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
Q1 ノロウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?
A1 ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、
特に冬季に流行します。
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、
また、治療は輸液などの対症療法に限られます。
従って、皆様の周りの方々と一緒に、次の予防対策を徹底しましょう。
患者のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるので、
(1)食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。
(2)下痢やおう吐等の症状がある方は、
食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう。
(3)胃腸炎患者に接する方は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、
感染を広げないようにしましょう。
特に、子どもやお年寄りなど抵抗力の弱い方は、
加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べましょう。
また、調理器具等は使用後に洗浄、殺菌しましょう。
Q3 ノロウイルスはどうやって感染するのですか?
A3
このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、
次のような感染様式があると考えられています。
(1)患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感 染した場合
(2)家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫 感染等直接感染する場合
(3)食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を 行う者などが含まれます。)が感染しておりその者を介して汚染した食品を食べた場合
(4)汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
(5)ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
などがあります。
特に、食中毒では(3)のように食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を原因とする事例が、近年増加傾向にあります。
また、ノロウイルスは(3)、(4)、(5)のように食品や水を介したウイルス性食中毒の原因になるばかりでなく、(1)、(2)のようにウイルス性急性胃腸炎(感染症)の原因にもなります。この多彩な感染経路がノロウイルスの制御を困難なものにしています。
Q8 ノロウイルスに感染するとどんな症状になるのですか?
A8
潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1~2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。
Q9 国内でノロウイルスの感染による死者はいますか?
A9
病院や社会福祉施設でノロウイルスの集団感染が発生している時期に、当該施設で死者が出たことがあります。
しかし、もともとの疾患や体力の低下などにより介護を必要としていた方などが亡くなった場合、ノロウイルスの感染がどの程度影響したのか見極めることは困難です。
なお、吐いた物を誤嚥することによる誤嚥性肺炎や吐いた物を喉に詰まらせて窒息する場合など、ノロウイルスが関係したと思われる場合であっても直接の原因とはならない場合もあります。
Q10 発症した場合の治療法はありますか?
A10
現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。
止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
Q13 ノロウイルス食中毒の予防方法は?
A13
ノロウイルス食中毒を防ぐためには、(1)食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防止する (2)特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱することが重要です。特に、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつには大量のウイルスが排出されるため、大量調理施設の食品取扱者がノロウイルスに感染していると、大規模な食中毒となる可能性があります。
Q15 手洗いはどのようにすればいいのですか?
A15
手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。 調理を行う前(特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も)、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず行いましょう。常に爪を短く切って、指輪等をはずし、石けんを十分泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄します。すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます。石けん自体にはノロウイルスを直接失活化する効果はありませんが、手の脂肪等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
なお、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください。
Q16 ノロウイルスに汚染された可能性のある調理台や調理器具はどのように殺菌したらいいのですか?
A16
一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が用いられることがありますが、ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウム※や加熱による処理があります。
調理器具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度200ppm)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
また、まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。
なお、二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の都度洗浄、熱湯消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止するよう、特に注意するよう気をつけましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q18 ノロウイルスによる感染性胃腸炎のまん延を防止する方法は?
A18
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、そのまん延を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人のふん便や吐ぶつからの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要があります。
毎年、11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行しますが、この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
Q19 患者のふん便や吐ぶつを処理する際に注意することはありますか?
A19
ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられています。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐ぶつとともに排泄されます。このため、ふん便と同様に吐ぶつ中にも大量のウイルスが存在し感染源となりうるので、その処理には十分注意する必要があります。
12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて、感染が起きた事例も知られており、時間が経っても、患者の吐ぶつ、ふん便やそれらにより汚染された床や手袋などには、感染力のあるウイルスが残っている可能性があります。このため、これら感染源となるものは必ず処理をしましょう。
床等に飛び散った患者の吐ぶつやふん便を処理するときには、使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように、ふん便、吐ぶつをペーパータオル等で静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。おむつ等は、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。
おむつや拭き取りに使用したペーパータオル等は、ビニール袋に密閉して廃棄します。(この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約1,000ppm)を入れることが望ましい。)
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。
11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行します。この時期の乳幼児や高齢者の下痢便および吐ぶつには、ノロウイルスが大量に含まれていることがありますので、おむつ等の取扱いには十分注意しましょう。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q20 吐ぶつやふん便が布団などのリネン類に付着した場合はどのように処理をすればよいですか。
A20
リネン等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理した後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。その際にしぶきを吸い込まないよう注意してください。下洗いしたリネン類の消毒は85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています。ただし、熱水洗濯が行える洗濯機がない場合には、次亜塩素酸ナトリウム※の消毒が有効です。その際も十分すすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。布団などすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。また、下洗い場所を次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をする必要があります。次亜塩素酸ナトリウム※には漂白作用があります。薬剤の「使用上の注意」を確認してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q21 感染者が使用した食器類の消毒はどのようにしたらよいですか?
A21
施設の厨房等多人数の食事の調理、配食等をする部署へ感染者の使用した食器類や吐ぶつが付着した食器類を下膳する場合、注意が必要です。可能であれば食器等は、厨房に戻す前、食後すぐに次亜塩素酸ナトリウム液に十分浸し、消毒します。
また、食器等の下洗いや嘔吐後にうがいをした場所等も次亜塩素酸ナトリウム※(塩素濃度約200ppm)で消毒後、洗剤を使って掃除をするようにしてください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
Q22 感染者が発生した場合、環境の消毒はどのようにしたらよいですか?
A22
ノロウイルスは感染力が強く、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。感染者が発生した場合、消毒が必要な場合次亜塩素酸ナトリウム※などを使用してください。ただし、次亜塩素酸ナトリウム※は金属腐食性がありますので、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意してください。
※家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。(使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。)
2018年01月11日 (木)
こんばんは。
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL1B4K7RL1BUTFK007.htmlに
小泉元首相らが「原発ゼロ法案」発表 立憲と連携の考え
という記事が、2018年1月10日掲載されました。
2013年、小泉純一郎元首相は、
フィンランドにある核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察しました。
オンカロとはフィンランド語で「洞窟」「隠し場所」などを意味します。
ヘルシンキから約250km北西に位置するオルキルオト島に建設されたこの施設は、
原子力発電所から出る使用済み核燃料、
いわゆる「核のゴミ」を地中深く封印するための施設です。
プルトニウムの半減期は2万4000年とされています。
オンカロは、こうした放射性廃棄物が無害になるまで、
10万年にわたって地下深く封じ込めるために作られたそうです。
原発賛成派が大きなメリットとして、
炭酸ガスを排出しないクリーンな電力と言っていますが、とんでもありません。
原発は炭酸ガスは排出しませんが、10万年間消えない核廃棄物を排出します。
人類は未だ、
原発を稼働させたあとに出る"核のゴミ"を安全に処理する方法を見出していません。
小泉純一郎元首相は、
10万年間も封じ込める必要がある「核のゴミ」という現実を目の当たりにして、
原発ゼロしかないという判断を下したそうです。
その小泉純一郎・細川護煕両元首相らは2018年1月10日、
国会内で記者会見を開き、
国内すべての原発を直ちに停止する
「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表しました。
小泉氏らは、
原発ゼロ基本法案の提出を目指す立憲民主党などと連携していく考えを強調しました。
法案は、両氏が顧問を務める民間団体
「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(会長=吉原毅・元城南信用金庫理事長)が作成しました。
原発を即時に停止し、再稼働や新増設を禁止することや2050年までに
電力を再生可能エネルギーで賄うことが柱で、
核燃料サイクル事業からの撤退や原発輸出の中止も盛り込まれています。
小泉氏は会見で
「安倍政権で原発ゼロを進めるのは難しいが、近い将来必ず、原発ゼロは国民多数の支持を得て実現する。
国会で議論が始まれば国民が目覚める」と訴えました。
私も、全面的に賛成です。
原発全面廃止のモデルとしてドイツがあります。
ドイツは、2011年に発生した、東京電力・福島第一原子力発電所の炉心溶融事故をきっかけに、
エネルギー政策を根本的に変えました。
もともと原子力擁護派だったメルケル首相が、
福島事故の映像を見て原子力批判派に「転向」し、
東日本大震災からわずか4ヵ月後の、2011年7月には、
原子力発電所を2022年末までに全廃することを法制化したのです。
ドイツにできたのですから、日本もできると思います。
日本の将来を担う子孫に"核のゴミ"という負の遺産を残さないように
早急に原発ゼロを進めて、再生可能エネルギーに切り替えることが必要と思います。
江部康二
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL1B4K7RL1BUTFK007.htmlに
小泉元首相らが「原発ゼロ法案」発表 立憲と連携の考え
という記事が、2018年1月10日掲載されました。
2013年、小泉純一郎元首相は、
フィンランドにある核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を視察しました。
オンカロとはフィンランド語で「洞窟」「隠し場所」などを意味します。
ヘルシンキから約250km北西に位置するオルキルオト島に建設されたこの施設は、
原子力発電所から出る使用済み核燃料、
いわゆる「核のゴミ」を地中深く封印するための施設です。
プルトニウムの半減期は2万4000年とされています。
オンカロは、こうした放射性廃棄物が無害になるまで、
10万年にわたって地下深く封じ込めるために作られたそうです。
原発賛成派が大きなメリットとして、
炭酸ガスを排出しないクリーンな電力と言っていますが、とんでもありません。
原発は炭酸ガスは排出しませんが、10万年間消えない核廃棄物を排出します。
人類は未だ、
原発を稼働させたあとに出る"核のゴミ"を安全に処理する方法を見出していません。
小泉純一郎元首相は、
10万年間も封じ込める必要がある「核のゴミ」という現実を目の当たりにして、
原発ゼロしかないという判断を下したそうです。
その小泉純一郎・細川護煕両元首相らは2018年1月10日、
国会内で記者会見を開き、
国内すべての原発を直ちに停止する
「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表しました。
小泉氏らは、
原発ゼロ基本法案の提出を目指す立憲民主党などと連携していく考えを強調しました。
法案は、両氏が顧問を務める民間団体
「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(会長=吉原毅・元城南信用金庫理事長)が作成しました。
原発を即時に停止し、再稼働や新増設を禁止することや2050年までに
電力を再生可能エネルギーで賄うことが柱で、
核燃料サイクル事業からの撤退や原発輸出の中止も盛り込まれています。
小泉氏は会見で
「安倍政権で原発ゼロを進めるのは難しいが、近い将来必ず、原発ゼロは国民多数の支持を得て実現する。
国会で議論が始まれば国民が目覚める」と訴えました。
私も、全面的に賛成です。
原発全面廃止のモデルとしてドイツがあります。
ドイツは、2011年に発生した、東京電力・福島第一原子力発電所の炉心溶融事故をきっかけに、
エネルギー政策を根本的に変えました。
もともと原子力擁護派だったメルケル首相が、
福島事故の映像を見て原子力批判派に「転向」し、
東日本大震災からわずか4ヵ月後の、2011年7月には、
原子力発電所を2022年末までに全廃することを法制化したのです。
ドイツにできたのですから、日本もできると思います。
日本の将来を担う子孫に"核のゴミ"という負の遺産を残さないように
早急に原発ゼロを進めて、再生可能エネルギーに切り替えることが必要と思います。
江部康二
2018年01月10日 (水)
こんにちは。
『インフルエンザに罹患した時に、
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、脳症になるリスクがあるので使用してはいけない。使用していいのはアセトアミノフェンのみである。』
ということを、強調して述べてきました。
そのインフルエンザ脳症ですが、
2016/17 シーズンのインフルエンザ脳症患者報告数は、
2015/16 シーズンより少なく、 2014/15 シーズンとほぼ同数でした。(2017 年 5 月 15 日現在、117 例)。
2015/16シーズンは2016/9/27時点で、
70%が9歳まで、
80%強が14歳までで、
圧倒的に小児が多いです。
2015/16シーズンは,
計224例のインフルエンザ脳症の報告がありました。(2016年9月27日現在)。
過去2シーズンと比較すると、2倍以上の症例が報告されました。
インフルエンザ脳症の症状ですが、典型例は、高熱、意識障害、けいれん、異常な言動などが見られます。
脳症を発症するのはインフルエンザの患者1万人あたり数人で、毎年100~500人程度がかかります。
1~2歳までの乳幼児を中心に、就学前の子供が重症化しやすいです。
脳症になった場合の致死率は、大分改善して、7%前後です。
しかし、脳症患者の25%程度に、知的障害や高次脳機能障害、てんかん、体のまひなどの後遺症が残ります。
脳症を予防する方法はないので、子供の異変を見つけたら、速やかに対応することが欠かせません。
脳症の主な前兆はけいれん、呼びかけに応じない意識障害、意味不明なことを言ったりする異常な言動などです。
インフルエンザ脳症になると、幻覚を見る、意味が分からないことを言う、理由もなく泣いたり怒ったりする、
突然歌い出すなどの異常な言動、壁に向かって走り出すなどの異常行動が現れることがあります。
こうした症状は、発熱などの通常のインフルエンザの症状が出てから12~24時間後に出るケースが多いです。
この時点で、早急に、医療機関にかかる必要があります。
インフルエンザ脳症は早く治療すればするほど、高い効果が得られます。
2002~04年の約300の治療例を森島教授らが分析したところ、
脳症が発症した当日に治療した患者では死亡や重度の後遺症が起きた例はみられませんでした。
しかし、発症2日目の治療開始では、約半数に死亡または後遺症が出現しました。
さらに3日目治療開始だと、死亡または後遺症が約80%に上がったといいます。
インフルエンザ脳症の治療は、とにかく早ければ早いほど良いということにつきます。
本日のブログは、2012/12/1 日本経済新聞 夕刊
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48958010Z21C12A1EL1P01
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48958010Z21C12A1EL1P01?page=2
に掲載された
森島恒雄 、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学、 特命教授の記事を参考にして、書きました。
ありがとうございました。
江部康二
『インフルエンザに罹患した時に、
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、脳症になるリスクがあるので使用してはいけない。使用していいのはアセトアミノフェンのみである。』
ということを、強調して述べてきました。
そのインフルエンザ脳症ですが、
2016/17 シーズンのインフルエンザ脳症患者報告数は、
2015/16 シーズンより少なく、 2014/15 シーズンとほぼ同数でした。(2017 年 5 月 15 日現在、117 例)。
2015/16シーズンは2016/9/27時点で、
70%が9歳まで、
80%強が14歳までで、
圧倒的に小児が多いです。
2015/16シーズンは,
計224例のインフルエンザ脳症の報告がありました。(2016年9月27日現在)。
過去2シーズンと比較すると、2倍以上の症例が報告されました。
インフルエンザ脳症の症状ですが、典型例は、高熱、意識障害、けいれん、異常な言動などが見られます。
脳症を発症するのはインフルエンザの患者1万人あたり数人で、毎年100~500人程度がかかります。
1~2歳までの乳幼児を中心に、就学前の子供が重症化しやすいです。
脳症になった場合の致死率は、大分改善して、7%前後です。
しかし、脳症患者の25%程度に、知的障害や高次脳機能障害、てんかん、体のまひなどの後遺症が残ります。
脳症を予防する方法はないので、子供の異変を見つけたら、速やかに対応することが欠かせません。
脳症の主な前兆はけいれん、呼びかけに応じない意識障害、意味不明なことを言ったりする異常な言動などです。
インフルエンザ脳症になると、幻覚を見る、意味が分からないことを言う、理由もなく泣いたり怒ったりする、
突然歌い出すなどの異常な言動、壁に向かって走り出すなどの異常行動が現れることがあります。
こうした症状は、発熱などの通常のインフルエンザの症状が出てから12~24時間後に出るケースが多いです。
この時点で、早急に、医療機関にかかる必要があります。
インフルエンザ脳症は早く治療すればするほど、高い効果が得られます。
2002~04年の約300の治療例を森島教授らが分析したところ、
脳症が発症した当日に治療した患者では死亡や重度の後遺症が起きた例はみられませんでした。
しかし、発症2日目の治療開始では、約半数に死亡または後遺症が出現しました。
さらに3日目治療開始だと、死亡または後遺症が約80%に上がったといいます。
インフルエンザ脳症の治療は、とにかく早ければ早いほど良いということにつきます。
本日のブログは、2012/12/1 日本経済新聞 夕刊
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48958010Z21C12A1EL1P01
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48958010Z21C12A1EL1P01?page=2
に掲載された
森島恒雄 、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児医科学、 特命教授の記事を参考にして、書きました。
ありがとうございました。
江部康二
2018年01月09日 (火)
おはようございます。
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年2月25日(日)、大阪にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(大阪)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
関西、中国、九州、北陸の医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年2月25日(日)、大阪にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
※2018年3月11日(日)に、東京でも同様のセミナーを開催いたしま
す。こちらの募集は1月以降に開始いたします。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 大阪
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年2月25日(日)13:15~16:50頃 ※開場・受付は13:00~
■会場: 大阪大学中之島センター5F 講義室507
〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「2/25大阪セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは2月23日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2017年、東京、大阪にて開催し、ご好評いただいた医療従事者向けセミナーを
2018年2月25日(日)、大阪にて開催致します。
日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向けセミナー(大阪)
「糖質制限食による糖尿病指導~理論と実践~」
第1部 理論編
糖尿病治療に関して、最新糖質制限食理論と共にエビデンスのお話を簡単に説明します。
2017年に得られた最新の糖質制限食情報もお話しします。
第1部は講義と質疑応答含めて45分間です。
第2部 栄養指導編
高雄病院の栄養指導の実際を、橋本眞由美管理栄養士がお話します。
第2部は講義と質疑応答を含めて60分間です。
第3部 臨床実践編
糖尿病合併症の現状や久山町の悲劇など、そして薬剤の使い方のコツをお話します。
また、糖質制限食を実践していて、「すぐに良くなった症例」「治療に難渋した症例」「1型のインスリン分泌ゼロの症例」「SGLT2阻害薬が著効した症例」「糖質制限食でインスリン注射が入院中に離脱できた例」などを、実際に入院された患者さんのデータを見ながら検討します。
SGLT2阻害薬は心臓など臓器保護作用が、経口糖尿病薬で初めて報告されました。
SGLT2阻害薬は、薬物による『糖質制限食』と考えることも可能です。
第3部は90分間ありますので、前回と同様に、
参加者の皆さんと共にディスカッション形式の症例検討を導入したいと思っています。
ご参加頂いた皆さんには、講演PPTスライドの、
CD(PDFファイル)をお配りします。
関西、中国、九州、北陸の医療従事者の皆さん、奮ってご参加くださいね。
江部康二
以下事務局からのお知らせです。
***********
ブログ読者の皆様、いつも弊会のイベントへ多数ご参加
いただきましてありがとうございます。
2018年2月25日(日)、大阪にて医療従事者の方を対象に
糖質制限食セミナーを開催致します。
第一部、第三部では、理事長 江部康二医師が、糖質制限食指導に
必要な生理学的基礎理論ならびに高雄病院での豊富な臨床例について
ディスカッションも交えながら詳しく解説いたします。
第二部は 高雄病院の橋本眞由美 管理栄養士が、外来・入院時における
栄養指導のポイント、問題点と改善のプロセスなどについてお話しいたします。
医療従事者の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
※2018年3月11日(日)に、東京でも同様のセミナーを開催いたしま
す。こちらの募集は1月以降に開始いたします。
//////////////ご案内/////////////////
(一社)日本糖質制限医療推進協会主催
医療従事者向け糖質制限食セミナー in 大阪
「糖質制限食による糖尿病指導 ~理論と実践 」
■日時:2018年2月25日(日)13:15~16:50頃 ※開場・受付は13:00~
■会場: 大阪大学中之島センター5F 講義室507
〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php
■講師:
A:江部 康二 医師
(一財)高雄病院 理事長/(一社)日本糖質制限医療推進協会 理事長
B:橋本 眞由美 管理栄養士 (一財)高雄病院 栄養管理科 科長
■内容:
第1部:理論編(45分) ※講師A
糖質制限食指導に必要な生理学的基礎理論を説明。
三大栄養素と血糖値、ケトン体の安全性、米国糖尿病学会の見解、CKDガイド2013の記載などについて言及。
宗田哲男氏のケトン体英文論文を解説。
門脇孝氏、渡邊昌氏、江部康二の鼎談(東大病院にて)について紹介。
糖質制限食の有効性と安全性について、EBMの観点からRCT研究論文、長期のコホート研究により根拠を示し、最新の話題・研究についてもお話します。
第2部:栄養指導編(60分) ※講師B
高雄病院では、3食とも主食なしのスーパー糖質制限食を実施しており、その具体的な食事内容を紹介します。
また、外来時と入院時における栄養指導の方法及びポイント、よくある問題点と改善のプロセスなどを指導事例を交えて解説し、糖質制限食を継続していただくための栄養士の関わり方についてお話しします。
糖質制限食導入を検討されている院所にとりまして、少しでもヒントになるよう管理栄養士の立場からお話を進めていきたいと思います。
第3部:臨床実践編(90分) ※講師A
高雄病院の豊富な 臨床例を取り上げて検討。
著好例や治療に難渋した症例なども提示して参加者と共に ディスカッション。
メトホルミン・DPP-4阻害薬・α-GI薬・速効型インスリン分泌促進剤・SGLT阻害薬は比較的使用頻度が高いのでコツを伝授。
SGLT阻害薬は糖毒解除などに有用、外部食事由来のブドウ糖を減らすのが糖質制限食、体内の糖新生由来のブドウ糖も排泄するのがSGLT阻害薬。
SU剤とチアゾリジン誘導体の位置づけを示します。
糖質制限食実践中に生じうる好ましくない症状・ 変化について検討します。
*各所要時間は、質疑応答、ディスカッションの時間を含みます。
■対象: 医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、栄養士、鍼灸師など)
■受講費:
・医師・歯科医師の方: 賛助会員 7,200円 / 一般(非会員) 9,000円
・上記以外の医療従事者の方: 賛助会員 5,200円 / 一般(非会員) 6,500円
*参加頂いた皆様には、映写・配布資料のデータ(PDF)CDをお配りします。
■お支払い方法: クレジットカード/銀行振込/郵便振替
※事前決済のみとなります。
※領収書をご希望の場合は、領収書宛名もお知らせ願います。
■お申し込みの流れ:
1. 下記「お申し込み方法」の該当するものからお申し込み下さい。
2. 事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3. 入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4. 当日、直接会場までお越し下さい。
■お申し込み方法:
★賛助会員の方
事務局までメールにて、医療機関でのご職種をご記入の上、お申し込み下さい。
★賛助会員入会をご希望の方:
1. 入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/sign-up
2. お申し込みは下のフォームからお願いします。
「通信」欄に以下をご記入下さい。
① 「2/25大阪セミナー、参加希望」 とご記入下さい。
② 医療機関でのご職種をご記入下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/contact
★一般(非会員)で、セミナーの受講のみご希望の方:
下のフォームからお申し込み下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/seminar-med
■その他:
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは2月23日(金)までに事務局までご連絡願います。
それ以降のご返金は対応致しかねますので予めご了承下さい。
*掲載サイト: http://www.toushitsuseigen.or.jp/activity
2018年01月08日 (月)
こんにちは。
冬場は感冒やインフルエンザなどに罹る機会が多く、
医療機関に受診すると、結構安易に、解熱剤が処方されるので注意が必要です。
処方される解熱剤のほとんどが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。
2018年01月05日 (金)の記事で
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関して、脳症になるリスクがあるので、
インフルエンザに使用してはいけないということを、記事にしました。
より正確には、ウィルス、細菌、原虫などの感染症が存在しての発熱には、
NSAIDsは使用してはいけないということです。
また、この薬は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。
実際に、私の糖尿病のご高齢の患者さんで、帯状疱疹になり、
受診した医療機関で、抗ウィルス薬と共に、ロキソニン3錠/日、
一日3回食後に内服となった方がおられました。
7日分の薬を処方されて、
すでに5日間内服した時点で、高雄病院を受診されました。
血液検査したところ、すでにクレアチニン値が悪化していて、
腎不全の状態でした。
軽症でしたので、すぐにロキソニンを中止して、幸いクレアチニン値は改善しました。
プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。
プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。
さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)の働きを妨げて、
解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。
COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。
NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。
胃炎や胃潰瘍が起こると胃の痛み、吐き気などの症状が起こりますが、
ピロリ菌が元凶の一般的な胃潰瘍に比べ、
NSAIDsによる潰瘍は症状が出にくいのです。
そのため何も症状を感じないうちに、
突然、胃から出血して吐血や下血することがあります。
調査によれば、リウマチなどでNSAIDsを4週間以上内服している場合、
胃粘膜保護剤を内服していても、6割以上の人で、
胃粘膜障害が認められたということです。
このように考察してくると、
ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・
これらのごく一般的なNSAIDsは、有害事象が非常に多いので、
使用は極めて慎重にということです。
長期投与は勿論、基本的には不可です。
例えば、ロキソニン3錠/日とかは、長期投与だと
非常に副作用リスクが高いです。
ロキソニン1~2錠/日は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、
処方することもあります。
結局、
安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。
腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。
あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。
江部康二
冬場は感冒やインフルエンザなどに罹る機会が多く、
医療機関に受診すると、結構安易に、解熱剤が処方されるので注意が必要です。
処方される解熱剤のほとんどが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。
2018年01月05日 (金)の記事で
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に関して、脳症になるリスクがあるので、
インフルエンザに使用してはいけないということを、記事にしました。
より正確には、ウィルス、細菌、原虫などの感染症が存在しての発熱には、
NSAIDsは使用してはいけないということです。
また、この薬は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。
実際に、私の糖尿病のご高齢の患者さんで、帯状疱疹になり、
受診した医療機関で、抗ウィルス薬と共に、ロキソニン3錠/日、
一日3回食後に内服となった方がおられました。
7日分の薬を処方されて、
すでに5日間内服した時点で、高雄病院を受診されました。
血液検査したところ、すでにクレアチニン値が悪化していて、
腎不全の状態でした。
軽症でしたので、すぐにロキソニンを中止して、幸いクレアチニン値は改善しました。
プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。
プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。
さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)の働きを妨げて、
解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。
COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。
NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。
胃炎や胃潰瘍が起こると胃の痛み、吐き気などの症状が起こりますが、
ピロリ菌が元凶の一般的な胃潰瘍に比べ、
NSAIDsによる潰瘍は症状が出にくいのです。
そのため何も症状を感じないうちに、
突然、胃から出血して吐血や下血することがあります。
調査によれば、リウマチなどでNSAIDsを4週間以上内服している場合、
胃粘膜保護剤を内服していても、6割以上の人で、
胃粘膜障害が認められたということです。
このように考察してくると、
ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・
これらのごく一般的なNSAIDsは、有害事象が非常に多いので、
使用は極めて慎重にということです。
長期投与は勿論、基本的には不可です。
例えば、ロキソニン3錠/日とかは、長期投与だと
非常に副作用リスクが高いです。
ロキソニン1~2錠/日は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、
処方することもあります。
結局、
安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。
腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。
あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。
江部康二
2018年01月06日 (土)
【18/01/05 ミルクティー
グルコーススパイクの改善
江部先生、明けましておめでとうございます。
いつも医学専門情報から、身近なところでは外食、スーパーの惣菜購入レポまで、
広範囲にわたり多くの情報を有難うございます。
外食レポなどは、
難しいことが苦手な私のようなものでも大いに参考にさせていただいています。
また、ここに投稿される方々のコメント、
先生の回答を読ませていただく度にとても励まされますし、
糖質制限が人類本来の食事だという確信をますます強くしています。
私は糖尿病ではないのですが、
2016年8月に心筋梗塞になりました。(LDLは240ありました。)
当時66歳、53㎏、A1cは6.0前後。
数年前から少しずつ数値が上がってきていました。
そのころ、
心筋梗塞発症者のうち多くの割合にグルコーススパイクがあるというのをテレビで知り、
自分でも血糖測定器で調べますと
(家庭では家事に追われて、時間ごとの計測が正しく出来なくて)、
2016年10月の追加ステントのための入院時での昼食の内、
150gの米飯と柿半分(主な糖質)で調べました。
血糖値
(空腹時90)(30分後165)(60分後188)(90分後220)(120分後196)
でした。
家でも、パン半分ぐらいでも、150超えていたので、
ある程度分かっていたつもりでしたがショックでした。
怖くなり、
夕食は院内ローソンで米飯の代わりにサラダチキンにすると110位でした。
退院後からスーパー糖質制限を始め、1年4か月経ちました。
始めてから8か月目経っても A1cは変化なく、6.0だったので、
その結果が歯がゆく、「スーパー糖質制限してるのに変化がないのはなぜ?」と、
以前に江部先生に質問させて頂いたことがあります。
先生から、飲んでいる薬(クレストールなど)が
血糖を上げることもあり得るとのお答えを頂き(有難うございました)、
気持ちの整理ができ、スーパー糖質制限とウォーキングを続けてきました。
糖質制限、1年2か月後の血液検査で、AIc5.5 になりました。
数値の改善は諦めてましたが思いがけず数値が下がり、うれしかったです!!!
1年4か月目、年明けを契機に自分の耐糖能を知りたくて、
思い切って今朝、米飯(130g)を食べて実験してみました。
卵かけご飯130g、(空腹時85)(30分後114)(60分後112)(90分後103)でした。
2016年の入院時とでは摂取糖質量が違うので、
正しい比較にはならないかもしれませんし、
まだ1回目の検査なので、誤差もあるかもしれませんが、
ご飯を130g(糖質48g)食べても血糖29の上昇でとどまったというのは・・・
長年続いていたと思われるグルコーススパイクが
糖質制限のお陰で、改善されたのでは(直った、とまでは甘い考えですね)と思い、
報告させていただきました。
先生のご尽力のお陰で低糖質のうどんやパスタのコマーシャルまでも
よく見かけるようになりました。
今年も糖質制限の更なる広がり、浸透を願っています。】
こんにちは。
ミルクティーさんから
糖質制限食で耐糖能改善、グルコーススパイク改善という
嬉しいコメントを頂きました。
ありがとうございます。
とても参考になり、読者の皆さんの励みになると思います。
「2016年8月に心筋梗塞になりました。(LDLは240ありました。)
当時66歳、53㎏、A1cは6.0前後。」
確かに診断基準的には糖尿病ではありませんが、
HbA1c6.0%といっても、この当時は、
血糖変動幅の大きい「質の悪いHbA1c」だったと考えられます。
即ち<食後高血糖>と<空腹時低血糖>の繰り返しの平均値が
HbA1c6.0%であったということです。
「2016年10月の追加ステントのための入院時、
150gの米飯と柿半分(主な糖質)
空腹時90、30分後165、60分後188、90分後220、120分後196mg/dl」
炊いたご飯、茶碗1杯は150gで、糖質が55gくらいです。
柿半分を加えたら70gくらいの糖質ですね。
食後血糖値上昇のピークは、90分後で、1gの糖質が1.9mgほど血糖値上昇です。
結局、ごく普通の糖質ありの食事だと食後高血糖(グルコーススパイク)が
生じています。
HbA1cの数値が徐々に、上昇してきた数年間は同様であったと思われます。
*<HbA1c×28.7>-46.7=平均血糖値
ですので、HbA1c6.0%なら平均血糖値は125.5mg/dlです。
上記のような食後高血糖が、毎食後1日3回以上はあるわけなのに、
平均血糖値125.5mg/dlは、低すぎます。
ということは、食後4~6時間とか夜中睡眠中に、
無自覚の低血糖が生じていて、
そのために平均血糖値が下がっていたと考えられます。
結果として「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という最大の酸化ストレスリスクが
毎日のように生じていたわけです。
とうとう心筋梗塞になったのも納得できます。
「退院後からスーパー糖質制限を始め、1年4か月経ちました。
始めてから8か月目経っても A1cは変化なく、6.0だったので、
その結果が歯がゆく、「スーパー糖質制限してるのに変化がないのはなぜ?」と、
以前に江部先生に質問させて頂いたことがあります。」
もうおわかりと思いますが、スーパー糖質制限実践後のHbA1cは
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」のない『質のいいHbA1c』なので、
糖質ありの食事の頃の「質の悪いHbA1c」とは、同じ6.0%でも、
中身は全く異なっているということです。
「1年4か月目、年明けを契機に自分の耐糖能を知りたくて、
思い切って今朝、米飯(130g)を食べて実験してみました。
卵かけご飯130g、(空腹時85)(30分後114)(60分後112)(90分後103)でした。」
明らかに耐糖能が改善していて、糖質を摂取しても食後高血糖がないです。
食後血糖値上昇のピークは、30分後と早めになり、1gの糖質が0.6mg血糖値上昇です。
血糖値上昇のピークが90分から30分と早くなり、
1gの糖質による血糖値上昇が、1.9mg/dlから0.6mg/dlに改善です。
トータルに、糖尿病に近い境界型から正常型に劇的に耐糖能が改善です。
「糖質制限、1年2か月後の血液検査で、AIc5.5 になりました。」
耐糖能が正常化したので、HbA1cも改善したものと思われます。
これからも美味しく楽しく末長く糖質制限食をお続けいただけば幸いです。
江部康二
グルコーススパイクの改善
江部先生、明けましておめでとうございます。
いつも医学専門情報から、身近なところでは外食、スーパーの惣菜購入レポまで、
広範囲にわたり多くの情報を有難うございます。
外食レポなどは、
難しいことが苦手な私のようなものでも大いに参考にさせていただいています。
また、ここに投稿される方々のコメント、
先生の回答を読ませていただく度にとても励まされますし、
糖質制限が人類本来の食事だという確信をますます強くしています。
私は糖尿病ではないのですが、
2016年8月に心筋梗塞になりました。(LDLは240ありました。)
当時66歳、53㎏、A1cは6.0前後。
数年前から少しずつ数値が上がってきていました。
そのころ、
心筋梗塞発症者のうち多くの割合にグルコーススパイクがあるというのをテレビで知り、
自分でも血糖測定器で調べますと
(家庭では家事に追われて、時間ごとの計測が正しく出来なくて)、
2016年10月の追加ステントのための入院時での昼食の内、
150gの米飯と柿半分(主な糖質)で調べました。
血糖値
(空腹時90)(30分後165)(60分後188)(90分後220)(120分後196)
でした。
家でも、パン半分ぐらいでも、150超えていたので、
ある程度分かっていたつもりでしたがショックでした。
怖くなり、
夕食は院内ローソンで米飯の代わりにサラダチキンにすると110位でした。
退院後からスーパー糖質制限を始め、1年4か月経ちました。
始めてから8か月目経っても A1cは変化なく、6.0だったので、
その結果が歯がゆく、「スーパー糖質制限してるのに変化がないのはなぜ?」と、
以前に江部先生に質問させて頂いたことがあります。
先生から、飲んでいる薬(クレストールなど)が
血糖を上げることもあり得るとのお答えを頂き(有難うございました)、
気持ちの整理ができ、スーパー糖質制限とウォーキングを続けてきました。
糖質制限、1年2か月後の血液検査で、AIc5.5 になりました。
数値の改善は諦めてましたが思いがけず数値が下がり、うれしかったです!!!
1年4か月目、年明けを契機に自分の耐糖能を知りたくて、
思い切って今朝、米飯(130g)を食べて実験してみました。
卵かけご飯130g、(空腹時85)(30分後114)(60分後112)(90分後103)でした。
2016年の入院時とでは摂取糖質量が違うので、
正しい比較にはならないかもしれませんし、
まだ1回目の検査なので、誤差もあるかもしれませんが、
ご飯を130g(糖質48g)食べても血糖29の上昇でとどまったというのは・・・
長年続いていたと思われるグルコーススパイクが
糖質制限のお陰で、改善されたのでは(直った、とまでは甘い考えですね)と思い、
報告させていただきました。
先生のご尽力のお陰で低糖質のうどんやパスタのコマーシャルまでも
よく見かけるようになりました。
今年も糖質制限の更なる広がり、浸透を願っています。】
こんにちは。
ミルクティーさんから
糖質制限食で耐糖能改善、グルコーススパイク改善という
嬉しいコメントを頂きました。
ありがとうございます。
とても参考になり、読者の皆さんの励みになると思います。
「2016年8月に心筋梗塞になりました。(LDLは240ありました。)
当時66歳、53㎏、A1cは6.0前後。」
確かに診断基準的には糖尿病ではありませんが、
HbA1c6.0%といっても、この当時は、
血糖変動幅の大きい「質の悪いHbA1c」だったと考えられます。
即ち<食後高血糖>と<空腹時低血糖>の繰り返しの平均値が
HbA1c6.0%であったということです。
「2016年10月の追加ステントのための入院時、
150gの米飯と柿半分(主な糖質)
空腹時90、30分後165、60分後188、90分後220、120分後196mg/dl」
炊いたご飯、茶碗1杯は150gで、糖質が55gくらいです。
柿半分を加えたら70gくらいの糖質ですね。
食後血糖値上昇のピークは、90分後で、1gの糖質が1.9mgほど血糖値上昇です。
結局、ごく普通の糖質ありの食事だと食後高血糖(グルコーススパイク)が
生じています。
HbA1cの数値が徐々に、上昇してきた数年間は同様であったと思われます。
*<HbA1c×28.7>-46.7=平均血糖値
ですので、HbA1c6.0%なら平均血糖値は125.5mg/dlです。
上記のような食後高血糖が、毎食後1日3回以上はあるわけなのに、
平均血糖値125.5mg/dlは、低すぎます。
ということは、食後4~6時間とか夜中睡眠中に、
無自覚の低血糖が生じていて、
そのために平均血糖値が下がっていたと考えられます。
結果として「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」という最大の酸化ストレスリスクが
毎日のように生じていたわけです。
とうとう心筋梗塞になったのも納得できます。
「退院後からスーパー糖質制限を始め、1年4か月経ちました。
始めてから8か月目経っても A1cは変化なく、6.0だったので、
その結果が歯がゆく、「スーパー糖質制限してるのに変化がないのはなぜ?」と、
以前に江部先生に質問させて頂いたことがあります。」
もうおわかりと思いますが、スーパー糖質制限実践後のHbA1cは
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」のない『質のいいHbA1c』なので、
糖質ありの食事の頃の「質の悪いHbA1c」とは、同じ6.0%でも、
中身は全く異なっているということです。
「1年4か月目、年明けを契機に自分の耐糖能を知りたくて、
思い切って今朝、米飯(130g)を食べて実験してみました。
卵かけご飯130g、(空腹時85)(30分後114)(60分後112)(90分後103)でした。」
明らかに耐糖能が改善していて、糖質を摂取しても食後高血糖がないです。
食後血糖値上昇のピークは、30分後と早めになり、1gの糖質が0.6mg血糖値上昇です。
血糖値上昇のピークが90分から30分と早くなり、
1gの糖質による血糖値上昇が、1.9mg/dlから0.6mg/dlに改善です。
トータルに、糖尿病に近い境界型から正常型に劇的に耐糖能が改善です。
「糖質制限、1年2か月後の血液検査で、AIc5.5 になりました。」
耐糖能が正常化したので、HbA1cも改善したものと思われます。
これからも美味しく楽しく末長く糖質制限食をお続けいただけば幸いです。
江部康二
2018年01月05日 (金)
こんばんは。
本日は、江部診療所の外来診療でしたが、インフルエンザAの患者さんが来院されました。
インフルエンザが心配な季節です。
国立感染研究所によれば、
2017年 第51週 (12月18日~12月24日)の全国の推計患者数は
約66万人であり、前週の約35万人より倍近く増加しています。
インフルエンザに関して、ブログ読者の皆さんを始め、日本中の人に知っておいて欲しいことがあります。
それはインフルエンザ罹患のとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけということです。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。
<脳炎と脳症の違い>
病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。
脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。
インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。
インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。
すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。
<インフルエンザウィルスは血中に入れない>
現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。
従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。
インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。
マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。
<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>
麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。
ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。
日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。
<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>
インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。
免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。
サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。
全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。
この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。
サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。
しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。
<解熱剤>
平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。
これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。
また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。
結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。
アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。
インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)は使用してはいけません。
要するにアセトアミノフェンだけです。
なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、
大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。
☆☆☆
http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋
免疫系におけるサイトカインの役割
病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。
平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。
江部康二
本日は、江部診療所の外来診療でしたが、インフルエンザAの患者さんが来院されました。
インフルエンザが心配な季節です。
国立感染研究所によれば、
2017年 第51週 (12月18日~12月24日)の全国の推計患者数は
約66万人であり、前週の約35万人より倍近く増加しています。
インフルエンザに関して、ブログ読者の皆さんを始め、日本中の人に知っておいて欲しいことがあります。
それはインフルエンザ罹患のとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけということです。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。
<脳炎と脳症の違い>
病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。
脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。
インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。
インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。
すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。
<インフルエンザウィルスは血中に入れない>
現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。
従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。
インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。
マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。
<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>
麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。
ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。
日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。
<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>
インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。
免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。
サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。
全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。
この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。
サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。
しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。
<解熱剤>
平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。
これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。
また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。
結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。
アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。
インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)は使用してはいけません。
要するにアセトアミノフェンだけです。
なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、
大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。
☆☆☆
http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋
免疫系におけるサイトカインの役割
病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。
平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。
江部康二
2018年01月04日 (木)
【18/01/04 はるるママ
下痢 吐き気 腹痛時の食事について
はじめまして
先生のことは5年前右足首骨折脱臼の手術入院後退院した後突然やって来た激しい吐き気舌のヒリヒリ胃痛背中痛で全く食べられなくなった時に近くの内科で逆流性胃腸炎と言われて薬もらったけど全く効かずネットで検索してる時に先生のこちらのブログで、知りました。
直ぐ行きたいでも京都!!私は東京都下住人です。そこで、同じような診療している病院と検索して出てきた今のクリニックにそこから毎週通い、院内での鍼灸の治療を取り入れ薬は全て漢方で処方してくださり4か月後に死にたいと思うほどの苦しみから脱出させてもらいました。その先生からは甘いものは取ってはいけないと言われ続け、でもその頃糖質制限の食品は無く先生の所からソースやハンバーグを買って気をつけていたのですが、良くなると徐々に元の生活へ…
しかし、一昨年の10月に乳癌大腸癌Wで見つかり大腸癌の方は進行癌とはいえリンパ転移なし乳癌は初期と言うことで手術のみでおわりました。
とはいえ乳癌は13年ぶり2度目。
せっかく助けてもらった命、まず、食事と軽い運動からと思いすっぱりと糖質制限20gより激しい荒木先生の食事療法でほぼ5g以下かもな位の勢いで始めました。そして約1年体重は10kg以上減ったけどすこぶる元気です。今は1食20gを目指した食事になりました。
たまにお寿司はご飯の下半分を切ったりくら寿司行ったりこんにゃく米を混ぜた100gで糖質20以下になるご飯炊いて楽しんでます
お菓子もラカントやエリスリトールで手作り出来ること知りチョコも先生のお陰でモリドル楽しんでます。焼き肉もタレ作ってくださったので楽しめるし、今や糖質制限って言っても工夫が楽しく全く苦ではないですね!
私の見た目と(ほぼガリガリに見える)食べる両のギャップに友達は驚きつつ何人かは緩めの糖質制限初めました。
先生のブログを拝見しててお忙しいのに丁寧にお答えされるところに感心しきりでしたので感謝も合わせて綴っていたら長くなり申し訳ありません。
お聞きしたかったのはお腹こわした時の食事何がいいのかと言うことで、お粥とかうどんをまず思い浮かべてしまうけど糖質制限では最も考えにくい為教えて頂ければとおもいます。
よろしくお願いいたします。】
はるるママさん。
糖質制限食で、きつい逆流性食道炎から脱出できてよかったですね。
また大腸癌は進行癌とはいえリンパ転移なし、乳癌は初期なら一安心です。
実は私は、ここ十数年寝込んだことがありません。
また医師になって以来、風邪などで外来を休んだことは一度もありません。
ともあれ、下痢したり、風邪をひいたり、寝込んだりしたときなどの糖質制限食ですね。
通常は、仰る通り、お粥とかうどんになりますが、
糖質制限食ではこれらはNG食品です。
このような、下痢や風邪など体調が悪くて食欲がないときのために、
糖質制限OK食品の中で、あっさり系を選んでみました。
京都は、お豆腐が美味しいですから私もよく食べます。
夏は冷や奴でもいいんですが、
風邪ひいて下痢や寒気でもあるときは湯豆腐がお奨めです。
温かい食品として、茶碗蒸し、卵スープ、野菜スープ、すまし汁、
味噌汁、豚汁などもいいですね。
いけそうだったら、おでんの大根とか豆腐とかひろうすなどは如何でしょう。
今の季節なら、鍋もお奨めですね。
白身魚や豆腐、野菜、がんもどき・・・風邪のときでも美味しそうです。 (^^)
豆腐を水きりしてつぶし、小さく刻んだ野菜などを混ぜ込んで丸め、
油で揚げたものを 関東ではがんもどき、
関西ではひろうすと呼ぶことが多いようです。
ちなみに我が家では何故か、がんもどきです。
さっぱりしたものとしては、季節の旬の果物もいいですね。
果物の糖質は果糖が主なので、穀物の糖質の半分くらいしか血糖値を上げませんので、
食欲がないときはまあいいと思います。
一人暮らしで料理の手間が面倒くさいようなときは、
前もって冷凍茶碗蒸しとか常備しとくといいです。
風邪で食欲不振のときは、脱水になりやすいので糖尿人は特に注意が必要です。
上記の料理など糖質制限食OK食材で、水分・電解質(*)補給も心掛けてくださいね。
なおごま豆腐は、主成分が葛粉で、デンプンたっぷりですので、
豆腐と名前が付いてますが、糖質制限食NG食品ですので、お忘れなく。
(*)
電解質は、体の細胞が正常に機能するために必要です。
体は多量のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、
塩化物、リン酸塩を必要とします。
江部康二
下痢 吐き気 腹痛時の食事について
はじめまして
先生のことは5年前右足首骨折脱臼の手術入院後退院した後突然やって来た激しい吐き気舌のヒリヒリ胃痛背中痛で全く食べられなくなった時に近くの内科で逆流性胃腸炎と言われて薬もらったけど全く効かずネットで検索してる時に先生のこちらのブログで、知りました。
直ぐ行きたいでも京都!!私は東京都下住人です。そこで、同じような診療している病院と検索して出てきた今のクリニックにそこから毎週通い、院内での鍼灸の治療を取り入れ薬は全て漢方で処方してくださり4か月後に死にたいと思うほどの苦しみから脱出させてもらいました。その先生からは甘いものは取ってはいけないと言われ続け、でもその頃糖質制限の食品は無く先生の所からソースやハンバーグを買って気をつけていたのですが、良くなると徐々に元の生活へ…
しかし、一昨年の10月に乳癌大腸癌Wで見つかり大腸癌の方は進行癌とはいえリンパ転移なし乳癌は初期と言うことで手術のみでおわりました。
とはいえ乳癌は13年ぶり2度目。
せっかく助けてもらった命、まず、食事と軽い運動からと思いすっぱりと糖質制限20gより激しい荒木先生の食事療法でほぼ5g以下かもな位の勢いで始めました。そして約1年体重は10kg以上減ったけどすこぶる元気です。今は1食20gを目指した食事になりました。
たまにお寿司はご飯の下半分を切ったりくら寿司行ったりこんにゃく米を混ぜた100gで糖質20以下になるご飯炊いて楽しんでます
お菓子もラカントやエリスリトールで手作り出来ること知りチョコも先生のお陰でモリドル楽しんでます。焼き肉もタレ作ってくださったので楽しめるし、今や糖質制限って言っても工夫が楽しく全く苦ではないですね!
私の見た目と(ほぼガリガリに見える)食べる両のギャップに友達は驚きつつ何人かは緩めの糖質制限初めました。
先生のブログを拝見しててお忙しいのに丁寧にお答えされるところに感心しきりでしたので感謝も合わせて綴っていたら長くなり申し訳ありません。
お聞きしたかったのはお腹こわした時の食事何がいいのかと言うことで、お粥とかうどんをまず思い浮かべてしまうけど糖質制限では最も考えにくい為教えて頂ければとおもいます。
よろしくお願いいたします。】
はるるママさん。
糖質制限食で、きつい逆流性食道炎から脱出できてよかったですね。
また大腸癌は進行癌とはいえリンパ転移なし、乳癌は初期なら一安心です。
実は私は、ここ十数年寝込んだことがありません。
また医師になって以来、風邪などで外来を休んだことは一度もありません。
ともあれ、下痢したり、風邪をひいたり、寝込んだりしたときなどの糖質制限食ですね。
通常は、仰る通り、お粥とかうどんになりますが、
糖質制限食ではこれらはNG食品です。
このような、下痢や風邪など体調が悪くて食欲がないときのために、
糖質制限OK食品の中で、あっさり系を選んでみました。
京都は、お豆腐が美味しいですから私もよく食べます。
夏は冷や奴でもいいんですが、
風邪ひいて下痢や寒気でもあるときは湯豆腐がお奨めです。
温かい食品として、茶碗蒸し、卵スープ、野菜スープ、すまし汁、
味噌汁、豚汁などもいいですね。
いけそうだったら、おでんの大根とか豆腐とかひろうすなどは如何でしょう。
今の季節なら、鍋もお奨めですね。
白身魚や豆腐、野菜、がんもどき・・・風邪のときでも美味しそうです。 (^^)
豆腐を水きりしてつぶし、小さく刻んだ野菜などを混ぜ込んで丸め、
油で揚げたものを 関東ではがんもどき、
関西ではひろうすと呼ぶことが多いようです。
ちなみに我が家では何故か、がんもどきです。
さっぱりしたものとしては、季節の旬の果物もいいですね。
果物の糖質は果糖が主なので、穀物の糖質の半分くらいしか血糖値を上げませんので、
食欲がないときはまあいいと思います。
一人暮らしで料理の手間が面倒くさいようなときは、
前もって冷凍茶碗蒸しとか常備しとくといいです。
風邪で食欲不振のときは、脱水になりやすいので糖尿人は特に注意が必要です。
上記の料理など糖質制限食OK食材で、水分・電解質(*)補給も心掛けてくださいね。
なおごま豆腐は、主成分が葛粉で、デンプンたっぷりですので、
豆腐と名前が付いてますが、糖質制限食NG食品ですので、お忘れなく。
(*)
電解質は、体の細胞が正常に機能するために必要です。
体は多量のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、
塩化物、リン酸塩を必要とします。
江部康二
2018年01月03日 (水)
【18/01/01 らいおん丸
妊婦の糖質制限について
先生。
あけましておめでとうございます。
今年もブログを楽しみにしております。
さて、新春早々、妊婦の糖質制限について警鐘を鳴らす記事がでていました。
宗田先生の著書を読んでいるのかと残念な気持ちになりました。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6266837
全国版なので、妊婦の不安を煽らないか心配です。】
【18/01/02 くどう
妊娠初期の糖質制限→子どもが肥満体質?
初めまして。
先生のブログ、書籍を拝読させて頂いております。
自身、健康のため、糖質制限を始めてまだ3ヶ月ですが、とても快調な日々を送っております。
先日、ヤフーニュースのトップに、
「妊婦の糖質制限は生活習慣病になりやすい子を産むことに繋がる」というような記事が出ていて、大変驚きました。
根拠の研究なども記事には載っていました。
現在、妊娠を希望しており、今後妊娠できたとしても、糖質を控えた食事をしようと思っています。
江部先生もお読みになりましたでしょうか?
よろしければお考えをお聞かせください。
よろしくお願いします。
↓下記記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180101-00010000-yomidr-sctch 】
こんにちは。
ライオン丸さん、くどう さんから
ヤフーニュースのトップに、
「妊婦の糖質制限は生活習慣病になりやすい子を産むことに繋がる」
という福岡秀興氏の記事が掲載されたというコメントを頂きました。
福岡秀興・早稲田大ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員は、以前から
英国のサウサンプトン研究を引用して、糖質制限食批判をされてますが、
根本的な勘違いをしておられるようです。
福岡氏の引用元の論文は、
炭水化物摂取が
261.5g/日未満
297.5g/日未満
351.0g/日未満[/太字]
351.0g/日以上
の4群の妊婦の研究です。
即ち、全員が大量の炭水化物摂取をしていての研究です。
従って、そもそも糖質制限食とは、全く無関係の論文です。
糖質制限食とは130g/日以下の糖質摂取が定義となります。
糖質制限食の妊婦と、子供の肥満に関する論文はありません。
原著は以下です。
Epigenetic Gene Promoter Methylation at Birth Is
Associated With Child’s Later Adiposity
Diabetes 60:1528–1534, 2011
「出産時のエピジェネティックな遺伝子プロモーターのメチル化が、子供の後の肥満に関係している」
という題です。
子供達が9歳のときに、肥満のチェックをしています。
261.5g/日未満の炭水化物摂取群の女性の子供が、
出産時のエピジェネティックな遺伝子プロモーターのメチル化が増加していて
それが肥満と関係しているかもしれないという仮説です。
この論文で調べられているのは、エピジェネティック修飾のなかでもDNAのメチル化です。
著者らの結論も、「may」ですから、かもしれないという仮説レベルであり、
福岡秀興氏、これを確固たるエビデンスのように語られては、困ったものです。
繰り返しますが、この論文の結論は、所詮仮説に過ぎません。(*)
私は、この論文の仮説は、子供の肥満のごく一部の要因を説明する可能性は否定しませんが、
普通に考えて、出生後の食生活のほうがはるかに大きな要因となると思います。
また、この仮説は、少なくとも日本女性には、全くあてはまらないと思います。
悪阻(つわり)も考慮すれば、妊娠初期の日本女性のかなりの人が、
炭水化物摂取が261.5g/日未満であり、この研究における最も少ない炭水化物摂取量群に入ると思います。
しかし、過去も現在も、日本の子供が英国の子供より肥満が多いとはとても言えませんね。
なお、「炭水化物摂取量」ではなくて、「飢餓と妊婦と子供の将来の肥満」に関しては
明確なデータがあります。
第2次大戦の1944年11月から1945年のドイツ降伏まで
オランダは約半年間の飢餓状態におかれました。
この時の妊婦から生まれた子供は、成人してから、肥満と糖尿病になる確率が
高かったことが知られています。
特定の遺伝子にエピジェネチックにメチル化が起こり、
これらの発現が調整されたと考えられています。
(*)
CONCLUSIONS:
Our findings suggest a substantial component of metabolic disease risk has a prenatal developmental basis. Perinatal epigenetic analysis may have utility in identifying individual vulnerability to later obesity and metabolic disease.
結論:
私たちの知見は、代謝性疾患リスクの実質的な要素が、出生前の発育基盤を有することを示唆している。周産期エピジェネティック分析は、後の肥満および代謝疾患に対する個々の脆弱性を確認するのに有用かもしれない。
江部康二
2018年01月02日 (火)
【17/12/31 宗田哲男
妊娠糖尿病は治る
千葉の産科医、宗田です。
ご紹介いただきましたので、ご報告させていただきます。
永井マザーズホスピタル永井泰先生と江部康二先生に共同研究していただいた、
今年の12月3日の糖尿病妊娠学会(宮崎)での発表です
内容は、
「妊娠糖尿病患者が、長期2-3年糖質制限していたらなおる」というものでした。
驚くことに、当院では、
妊娠糖尿病でお産した後の反復妊娠では妊娠糖尿病がほとんどいなくなったのです。
この1-2年間の症例16例中14例が、糖負荷試験で完全に陰性となりました。
糖尿病が増え続けていて、減らすすべがない中で、
妊娠糖尿病が消えていくということは、大変意味があることだと思います。
糖質制限を続けていると、耐糖能が下がるということが言われてきましたが、
これは、一時的なものであって、
真の耐糖能の低下ではないと私たちは思っていました。
数年間緩やかにでも糖質制限をしていたら、
弱まっていた、すい臓が元気になるということがわかったのです。
4年前は、この学会でも、ポスター発表でほとんど発言を遮られて、
話すこともできずに、「妊婦には糖質制限やるな」と攻撃されましたが、
今回は口演発表でしたので、思い切り糖質制限の原理から話しました。
胎児に必要な栄養として、
主食をやめることとたんぱく質と脂肪をたくさんとることを強調して、
卵には糖質がないこと、進化の歴史で卵生も胎生も栄養は変わらないことを、
ヒトの卵子のある卵胞液で示し、
日常的にも新生児はケトン体がたくさん出ていることを紹介しました。
会場では、理解できない方も多いようでしたが反論もなく、
いまだに妊婦に脂肪がいいのかとか
1型糖尿病でインスリンが再び出てくるとは信じられないと言われました。
この研究をまとめていて、2度目の妊娠中、
次々と糖負荷試験で陰性になるのは正直驚きました。
糖質をとっても血糖値が上がらなくなるということは、すごいことだと思います。
糖質制限は一時的な方便ではなくある程度続けたら、
糖尿病にならない身体を作れることがわかりましたし、
これに慣れたら元の糖質三昧の生活にも戻らないという方が多いこともわかりました。
実は2人の方が、元の食事に戻して、又妊娠糖尿病になってしまっていました。
長期的には糖尿病への移行を防ぐことを目指して、
今後も、母児の経過を追跡し続けていきたいと思います。
妊娠糖尿病が減らせたら将来の糖尿病も減らせます。
江部先生が、以前からおっしゃっていた通り
「産科で妊婦で解決することが、近道」という予告が証明されつつあるということです。
江部先生、 今年もいろいろ教えていただきありがとうございました。】
こんばんは。
我が畏友、宗田哲男先生が
宮崎で開催された糖尿病妊娠学会(2017/12/3)において
「妊娠糖尿病は治る。」
という素晴らしい研究発表をされ、今回コメントを頂きました。
妊娠糖尿病になった人は、通常は治るどころか
将来糖尿病になる確率は正常妊婦に比べて7.43倍であり、
産後1年以内では糖尿病になる頻度も2.6~38%、あります。(☆)
通常の糖質ありの食事なら、妊娠糖尿病になったその次の妊娠においても
妊娠糖尿病になる確率は極めて高いと思われます。
それが、今回の研究において
「妊娠糖尿病患者が、長期2-3年糖質制限していたらなおる」
ということで、次回の妊娠では普通に糖質を食べても食後高血糖は見られず
耐糖能が正常化したのですから、驚くべき糖質制限食の効果です。
「この1-2年間の症例16例中14例が、糖負荷試験で完全に陰性となりました。」
16人の妊娠糖尿病患者さんのうち、14名が耐糖能が正常化したのですから
宗田先生がご指摘のように、弱っていた、
すい臓のβ細胞が、1-2-3年間の糖質制限食で、
元気になったということです。
「糖質制限は一時的な方便ではなくある程度続けたら、
糖尿病にならない身体を作れることがわかりましたし、
これに慣れたら元の糖質三昧の生活にも戻らないという方が多いこともわかりました。」
その通りと思います。
糖質制限食の継続には、
将来の「妊娠糖尿病」「糖尿病」の発症予防効果があると考えられます。
そして、「食後の眠気がない」「おっぱいの出がいい」「乳腺炎になりにくい」
など体調が良くなるので糖質制限食継続のモチベーションも高まるのだと思います。
一方で、出産後糖質あり食に戻した、2名の妊娠糖尿病患者さんは
次回の妊娠でも妊娠糖尿病を発症ということで
両グループの差は明白ですね。
宗田哲男先生、貴重な研究発表をありがとうございました。
(☆)
日本糖尿病・妊娠学会
糖尿病と妊娠に関するQ&Aに下記の記載があります。
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
『産後の注意点
Q
妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?
A
最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月』
江部康二
妊娠糖尿病は治る
千葉の産科医、宗田です。
ご紹介いただきましたので、ご報告させていただきます。
永井マザーズホスピタル永井泰先生と江部康二先生に共同研究していただいた、
今年の12月3日の糖尿病妊娠学会(宮崎)での発表です
内容は、
「妊娠糖尿病患者が、長期2-3年糖質制限していたらなおる」というものでした。
驚くことに、当院では、
妊娠糖尿病でお産した後の反復妊娠では妊娠糖尿病がほとんどいなくなったのです。
この1-2年間の症例16例中14例が、糖負荷試験で完全に陰性となりました。
糖尿病が増え続けていて、減らすすべがない中で、
妊娠糖尿病が消えていくということは、大変意味があることだと思います。
糖質制限を続けていると、耐糖能が下がるということが言われてきましたが、
これは、一時的なものであって、
真の耐糖能の低下ではないと私たちは思っていました。
数年間緩やかにでも糖質制限をしていたら、
弱まっていた、すい臓が元気になるということがわかったのです。
4年前は、この学会でも、ポスター発表でほとんど発言を遮られて、
話すこともできずに、「妊婦には糖質制限やるな」と攻撃されましたが、
今回は口演発表でしたので、思い切り糖質制限の原理から話しました。
胎児に必要な栄養として、
主食をやめることとたんぱく質と脂肪をたくさんとることを強調して、
卵には糖質がないこと、進化の歴史で卵生も胎生も栄養は変わらないことを、
ヒトの卵子のある卵胞液で示し、
日常的にも新生児はケトン体がたくさん出ていることを紹介しました。
会場では、理解できない方も多いようでしたが反論もなく、
いまだに妊婦に脂肪がいいのかとか
1型糖尿病でインスリンが再び出てくるとは信じられないと言われました。
この研究をまとめていて、2度目の妊娠中、
次々と糖負荷試験で陰性になるのは正直驚きました。
糖質をとっても血糖値が上がらなくなるということは、すごいことだと思います。
糖質制限は一時的な方便ではなくある程度続けたら、
糖尿病にならない身体を作れることがわかりましたし、
これに慣れたら元の糖質三昧の生活にも戻らないという方が多いこともわかりました。
実は2人の方が、元の食事に戻して、又妊娠糖尿病になってしまっていました。
長期的には糖尿病への移行を防ぐことを目指して、
今後も、母児の経過を追跡し続けていきたいと思います。
妊娠糖尿病が減らせたら将来の糖尿病も減らせます。
江部先生が、以前からおっしゃっていた通り
「産科で妊婦で解決することが、近道」という予告が証明されつつあるということです。
江部先生、 今年もいろいろ教えていただきありがとうございました。】
こんばんは。
我が畏友、宗田哲男先生が
宮崎で開催された糖尿病妊娠学会(2017/12/3)において
「妊娠糖尿病は治る。」
という素晴らしい研究発表をされ、今回コメントを頂きました。
妊娠糖尿病になった人は、通常は治るどころか
将来糖尿病になる確率は正常妊婦に比べて7.43倍であり、
産後1年以内では糖尿病になる頻度も2.6~38%、あります。(☆)
通常の糖質ありの食事なら、妊娠糖尿病になったその次の妊娠においても
妊娠糖尿病になる確率は極めて高いと思われます。
それが、今回の研究において
「妊娠糖尿病患者が、長期2-3年糖質制限していたらなおる」
ということで、次回の妊娠では普通に糖質を食べても食後高血糖は見られず
耐糖能が正常化したのですから、驚くべき糖質制限食の効果です。
「この1-2年間の症例16例中14例が、糖負荷試験で完全に陰性となりました。」
16人の妊娠糖尿病患者さんのうち、14名が耐糖能が正常化したのですから
宗田先生がご指摘のように、弱っていた、
すい臓のβ細胞が、1-2-3年間の糖質制限食で、
元気になったということです。
「糖質制限は一時的な方便ではなくある程度続けたら、
糖尿病にならない身体を作れることがわかりましたし、
これに慣れたら元の糖質三昧の生活にも戻らないという方が多いこともわかりました。」
その通りと思います。
糖質制限食の継続には、
将来の「妊娠糖尿病」「糖尿病」の発症予防効果があると考えられます。
そして、「食後の眠気がない」「おっぱいの出がいい」「乳腺炎になりにくい」
など体調が良くなるので糖質制限食継続のモチベーションも高まるのだと思います。
一方で、出産後糖質あり食に戻した、2名の妊娠糖尿病患者さんは
次回の妊娠でも妊娠糖尿病を発症ということで
両グループの差は明白ですね。
宗田哲男先生、貴重な研究発表をありがとうございました。
(☆)
日本糖尿病・妊娠学会
糖尿病と妊娠に関するQ&Aに下記の記載があります。
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
『産後の注意点
Q
妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが本当に必要なのですか?
A
最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。また最近のメタアナリシスでは、妊娠糖尿病の妊婦さんは耐糖能が正常の妊婦さんに比べて、将来糖尿病になる確率は7.43倍であると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月』
江部康二
2018年01月01日 (月)
新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしく御願い申し上げます。
日本のお正月といったら、やっぱりお屠蘇ですね。
私も日頃日本酒は飲みませんがお屠蘇、はっきりいってあまり美味しくはないのですが、
漢方医の端くれとしておちょこで1.2杯くらいは飲みたいと思っています。
しかし近年ずっと、年末でバタバタと忙しいときに薬局に処方を頼み忘れて、
病院が休みになってから気がつくといった状態で、なかなか飲めていません。
屠蘇は正式には延寿屠蘇散といい、華陀という中国の三国時代の名漢方医が、
白朮、山椒、防風、桂皮、桔梗、細辛などの薬草を調合し、酒に浸して飲んだのが始まりといわれています。
これらの生薬は、日常的に漢方診療で出す処方の構成薬なので、高雄病院の薬局でも常備してあります。
今日、今から病院に行く用事があるので自分で作ろうかと思います。
一合の日本酒に、各生薬を1gくらいずつ浸しておけばよいです。
普通の漢方処方なら、3g~9gくらいは生薬を使用するので、屠蘇散は香りを楽しむイメージで
本格的薬効を期待するものではありません。
しかし縁起物だしガブガブ呑むものではないので、心身共に健康維持効果は期待できるでしょうか。
屠蘇という名ですが、
邪気を屠り、魂を蘇らせるという意味で屠蘇と名付けられたという解釈と、
「蘇」は「病をもたらす鬼」という意味で、すなわち鬼退治という解釈があります。
日本では平安時代、嵯峨天皇に唐からの使いが、屠蘇散を霊薬として献上したのが始まりといわれています。
天皇は元旦から三が日、四方拝の儀式の後お酒に屠蘇散を浸したものを召し上がられたということです。
この風習が徐々に一般の人たちの間にも広がっていき、よい年を迎えるお正月の行事として定着していったようです。
家族や雇用人の別なく一同に集まり、祝い膳に箸をつける前に若い者から順に杯をあげ無病息災を祈るのです。
この風習は、江戸時代におおいに流行り、大正時代まではかなり広く行われていました。
江戸後期から明治のころには、町医者がお歳暮として年末に患者に与えたと言われています。
近年は大晦日の夜、酒に屠蘇散を入れ一夜冷たく浸しておき、
元旦の朝、雑煮を食べる前に、家族の一年の健康と幸せを願って飲むのが一般的でしょうか。
<漢字の読み方>
屠蘇(トソ)
延寿屠蘇散(エンジュトソサン)
華陀(カダ)
邪気を屠(ホフ)り、魂を蘇(ヨミガエ)らせる
白朮(ビャクジュツ)、山椒(サンショウ)、防風(ボウフウ)、桂皮(ケイヒ)、
桔梗(キキョウ)、細辛(サイシン)
四方拝(シホウハイ)
江部康二
本年もどうぞよろしく御願い申し上げます。
日本のお正月といったら、やっぱりお屠蘇ですね。
私も日頃日本酒は飲みませんがお屠蘇、はっきりいってあまり美味しくはないのですが、
漢方医の端くれとしておちょこで1.2杯くらいは飲みたいと思っています。
しかし近年ずっと、年末でバタバタと忙しいときに薬局に処方を頼み忘れて、
病院が休みになってから気がつくといった状態で、なかなか飲めていません。
屠蘇は正式には延寿屠蘇散といい、華陀という中国の三国時代の名漢方医が、
白朮、山椒、防風、桂皮、桔梗、細辛などの薬草を調合し、酒に浸して飲んだのが始まりといわれています。
これらの生薬は、日常的に漢方診療で出す処方の構成薬なので、高雄病院の薬局でも常備してあります。
今日、今から病院に行く用事があるので自分で作ろうかと思います。
一合の日本酒に、各生薬を1gくらいずつ浸しておけばよいです。
普通の漢方処方なら、3g~9gくらいは生薬を使用するので、屠蘇散は香りを楽しむイメージで
本格的薬効を期待するものではありません。
しかし縁起物だしガブガブ呑むものではないので、心身共に健康維持効果は期待できるでしょうか。
屠蘇という名ですが、
邪気を屠り、魂を蘇らせるという意味で屠蘇と名付けられたという解釈と、
「蘇」は「病をもたらす鬼」という意味で、すなわち鬼退治という解釈があります。
日本では平安時代、嵯峨天皇に唐からの使いが、屠蘇散を霊薬として献上したのが始まりといわれています。
天皇は元旦から三が日、四方拝の儀式の後お酒に屠蘇散を浸したものを召し上がられたということです。
この風習が徐々に一般の人たちの間にも広がっていき、よい年を迎えるお正月の行事として定着していったようです。
家族や雇用人の別なく一同に集まり、祝い膳に箸をつける前に若い者から順に杯をあげ無病息災を祈るのです。
この風習は、江戸時代におおいに流行り、大正時代まではかなり広く行われていました。
江戸後期から明治のころには、町医者がお歳暮として年末に患者に与えたと言われています。
近年は大晦日の夜、酒に屠蘇散を入れ一夜冷たく浸しておき、
元旦の朝、雑煮を食べる前に、家族の一年の健康と幸せを願って飲むのが一般的でしょうか。
<漢字の読み方>
屠蘇(トソ)
延寿屠蘇散(エンジュトソサン)
華陀(カダ)
邪気を屠(ホフ)り、魂を蘇(ヨミガエ)らせる
白朮(ビャクジュツ)、山椒(サンショウ)、防風(ボウフウ)、桂皮(ケイヒ)、
桔梗(キキョウ)、細辛(サイシン)
四方拝(シホウハイ)
江部康二
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