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グリコアルブミン(GA)とHbA1cの比較。
こんにちは。

今回の記事は、グリコアルブミン(GA)とグリコヘモグロビン(HbA1c)を比較してみます。

<GAとHbA1cのそれぞれの意義>

一般的知識では、

「HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで」
「GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時まで」

の平均血糖値を反映します。

<GAとHbA1cの測定原理と食後高血糖の反映度合い>

HbA1cとグリコアルブミン(GA)は、血液中のヘモグロビンとアルブミンが、それぞれ血糖と結合して変化したものの割合を示す検査値で、原理は同じです。

血液中のブドウ糖は、いろんなものにへばり付く性質があり、ヘモグロビン(赤血球の中にあるタンパク質)にくっついて変化したものがHbA1cで、アルブミンという血清中のタンパク質にくっついて変化したものが、グリコアルブミン(GA)ということです。

そして、同じ HbA1C値の糖尿病患者さんでも、食後高血糖が頻回にある患者さんの方が、グリコアルブミンが高くなりやすいことが分かりました。

アルブミンが血糖と結合してグリコアルブミンになるスピードは、ヘモグロビンが血糖と結合して HbA1Cになるスピードより、9倍くらい速いと推測されています。

そのため、ごく短時間だけ現れる高血糖に対しては、グリコアルブミン値の方が HbA1C値より敏感に反応しやすいと考えられます。

ごく短時間だけ現れる高血糖は、通常は糖質摂取後の高血糖です。

これが、「グリコアルブミン検査は食後高血糖の評価に適している」とされる理由です。

<GA/HbA1cの比が大きいと食後高血糖が頻回>

食後高血糖の存在をよりはっきりとさせる方法として、グリコアルブミン値を HbA1C値で割って両者の比を計算する方法があります。

血糖コントロールが良いにしろ悪いにしろ、それが安定している場合、両者の比は、
およそ3:1です。(但しHbA1cはJDS値)

つまりGA値が HbA1C(JDS)の約3倍です。

この約3倍というのは昔のHbA1c(JDS値)で計算したらぴったりですが、HbA1c(NGSP値)の場合は少し小さくずれます。

従って、GA/HbA1c比の計算をするときは、JDS値のHbA1cにするとよいです。

*JDS値+0.4=NGSP値
*NGSP値-0.4=JDS値


食後血糖値の変動が大きい糖尿人では、先ほど述べたようにグリコアルブミンの方が上昇しやすいため、GA/HbA1c比が大きくなります。

食後高血糖が頻回の場合は、GA/HbA1c比が4:1に近付いたり、それ以上に差が開くこともあるようです。

この差が大きいほど、合併症が進行しやすくなることを示した研究報告が最近増えてきました。

<糖質制限食なら、GA/HbA1cの比が小さい>
HbA1c(NGSP):5.6%(基準値4.6~6.2%) 
HbA1c(JDS):5.2%(基準値4.3~5.8%)
グリコアルブミン(GA):13.1%(基準値11.8~16.0%)

上記、江部康二の検査データ(2015年9月)だと、JDS値で計算して、GA/HbA1c比は、2.52:1とかなり低いです。
食後高血糖が極めて少ないことを示しています。

一方、〔薬物療法+従来の糖尿病食(高糖質食)〕で
HbA1cが、5.6%(NGSP)
HbA1c5.2%(JDS)
であっても、食後高血糖があるので、
GA/HbA1c比は、3:1以上の可能性が高いのです。

すなわち、食後高血糖のない質の良いHbA1cと、食後高血糖のある質の悪いHbA1cとを、
GA/HbA1c比によって、区別し評価できるということになります。

GAとHbA1cは同じ月には保険請求できませんので、やや安価なHbA1cのほうを実費で保険外で調べればいいと思います。

私費で、HbA1cは¥500-くらいと思います。

HbA1cより、有用なので、グリコアルブミン検査は今後、もっと普及して欲しいと思います。

それによりグリコアルブミンと合併症の関係がさらに明確になることでしょう。




江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
質の悪いHbA1cと合併症。血糖自己測定器の活用。
【15/11/02 田中鈴木佐藤

薬局視点

空腹時低血糖と食後高血糖のマスクされた一見良好の質の悪いHbA1cの患者は多いと思います。

アマリール3mgを処方されて薬局でブドウ糖もらってくださいと指導された患者、頻繁に軽症の低血糖を起こし毎月タケダのブドウ糖タブレットを1~2箱持って帰ります。

本人も処方医もブドウ糖で治れば大丈夫といった認識です。

検査後のご褒美としてケーキバイキングに行ったり、意識の低い人がとても多いです。

困った事に内科の処方医も空腹時血糖値とHbA1cだけを見てまあまあと評価するものだからお咎め無し、こうした習慣を注意すると数値が良いから大丈夫だと主治医からお叱りを受けるのが薬局の辛い立ち位置です。

最終的に眼科クリニックにかかり、網膜症治療の為病院に紹介されて食事指導を受けるハメになる人だって居ました。

CGMを使う患者でもこの検査中だけ食事を気を付けるような人が多いとも聞き、意識の高い患者以外は難しいんだろうなと思います。

インスリン使用がなければ自費で毎月の負担は大きくなりますが、それでも予後を考えれば毎食前後の自己血糖測定はして欲しいです。】



薬局の田中鈴木佐藤さんからコメントをいただきました。
ありがとうございます。

「空腹時低血糖と食後高血糖のマスクされた一見良好の質の悪いHbA1cの患者は多いと思います。
アマリール3mgを処方されて薬局でブドウ糖もらってくださいと指導された患者、頻繁に軽症の低血糖を起こし毎月タケダのブドウ糖タブレットを1~2箱持って帰ります。
本人も処方医もブドウ糖で治れば大丈夫といった認識です。」


SU剤(アマリール)は、食後高血糖は防がず、空腹時の低血糖を生じやすい危険な薬です。
特殊な例を除いて使用禁止にしてもいいくらいの薬と思います。
それをアマリール3mgとは、困ったものです。
糖尿病学会もさすがに最近は、0.5mgとか1mgの錠剤を推奨しています。
つまり低血糖になりやすいので少量投与にとどめよということです。
高血糖より低血糖のほうが危険であり、心筋梗塞のリスクが高まります。
低血糖を頻回に生じているような人は、見かけ上のHbA1cはコントロール良好になりますが、これはあくまでも「空腹時低血糖+食後高血糖」が背後にある極めて質の悪いHbA1cで、合併症は防げません。

「困った事に内科の処方医も空腹時血糖値とHbA1cだけを見てまあまあと評価するものだからお咎め無し、こうした習慣を注意すると数値が良いから大丈夫だと主治医からお叱りを受けるのが薬局の辛い立ち位置です。」

この医師は、質の悪いHbA1cという概念をご存じないのだと思います。

空腹時血糖値とHbA1cだけで、評価してしまうと
『食後高血糖、空腹時低血糖、平均血糖変動幅増大』
という合併症リスクを、見逃しているわけで危険です。
勉強不足の医師というほかありませんね。

「最終的に眼科クリニックにかかり、網膜症治療の為病院に紹介されて食事指導を受けるハメになる人だって居ました。」

結局、一見HbA1cコントロール良好でも、質の悪いHbA1cであれば、合併症は防げなかったという一症例ですね。

「インスリン使用がなければ自費で毎月の負担は大きくなりますが、それでも予後を考えれば毎食前後の自己血糖測定はして欲しいです。」

そうですね。

血糖自己測定器が安価になったので、糖尿人は是非購入して食後血糖値を測定してみて欲しいですね。

ステーキ200g食べても血糖値は3mgも上昇しないのに、ご飯軽く1杯150g食べたら血糖値は165mgも上昇することが自分の目で見て確認できれば、否が応でも糖質制限食へのモチベーションが高まると思います。

☆☆☆
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江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
HbA1cと空腹時血糖値による評価では食後高血糖を見逃す。GAは?
こんにちは。

日本糖尿病学会は血糖コントロールの指標としてHbA1cを選択しています。

2013年の熊本宣言後血糖コントロール目標として
合併症予防のために、血糖管理目標値をHbA1c7%未満とし、対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満をおおよその目安としました。

現在、ほとんどの病院で血糖コントロールの評価に用いられているのは、「HbA1c」と「早朝空腹時血糖値」の2つです。

しかし、「HbA1c」と「早朝空腹時血糖値」の2つを検査しても、食後高血糖があるかどうかは、全くわかりません。

HbA1cが6.8~6.9%であれば、一応目標達成です。

しかし、従来の糖尿病食(高糖質食)を摂取しながら、SU剤(アマリールなど)やインスリン注射で、HbA1c6.8~6.9%を達成していても、食後高血糖と空腹時低血糖を生じている可能性が高いのです。

食後血糖値が250mg/dl前後あり、一方で夜間空腹時血糖値が薬物のせいで50mg/dl前後とかになっていると、平均血糖値を反映するHbA1cは6.8~6.9%くらいになり、糖尿病学会の目標では、見かけ上はコントロール良好となります。

HbA1cは短時間の食後高血糖は、反映しないのです。

この場合、HbA1c6.8~6.9%といっても、食後高血糖と平均血糖変動幅増大のある酸化ストレスリスクの高い、極めて質の悪いHbA1cであり、合併症の予防は困難です。

現実に、HbA1cがコントロール良好にも関わらず、合併症を起こす糖尿人が後を絶たないのは、従来の糖尿病食(高糖質食)と薬物療法のコンビによる「質の悪いHbA1c」であるからに他なりません。

CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続ブドウ糖測定)システムで、24時間ブドウ糖を測定すれば、質の悪いHbA1cのもとである「食後高血糖」と「平均血糖変動幅増大」の存在は一目瞭然です。

しかし、CGMはなかなか、面倒くさいです。

そこで、グリコアルブミン(GA)の登場です。

GAは食後高血糖があると短時間でもそれを反映する優れた指標なのです。

グリコアルブミンの基準値は、11.8~16.0%で、コントロール良好は、20.0%未満です。

私は最近の採血で

HbA1c(NGSP):5.8%(基準値4.6~6.2%)
グリコアルブミン(GA):13.4%(基準値11.8~16.0%)

というデータでした。

GAは基準値内の低めですので食後高血糖がほとんどないことを示しています。

従ってHbA1cも極めて質のいいHbA1cです。

ある50代男性糖尿人Aさんの検査では
HbA1c:5.8% 
グリコアルブミン:18.0%
でした。

江部康二とAさんと、HbA1cは全く同じです。

一方AさんのGAもコントロール良好ではあるのですが、私のデータと比べるとかなり高値です。

つまりAさんは、私に比べると食後高血糖が一定あることとなります。

よくよくAさんに聞いてみると

「麺類が好きで時々食べていました」

ということでした。

麺類を止めて貰ったら、GAも16.0%をきるようになりました。

このように考えて見ると本当は、月1回の健康保険の検査は、HbA1cよりもグリコアルブミン(GA)のほうが好ましいと言えます。

GAと空腹時血糖値あるいは随時血糖値の検査をしておけば、短時間の食後高血糖も見落とすことがなくなり、一日を通して、HbA1cより正確な血糖値の変化を反映していることとなります。

HbA1cとGAに関して、糖尿病専門医の先生方、そして日本糖尿病学会の見解を聞きたいところですね。

現在、日本の病院のほとんどがHbA1cなので、高雄病院でも転院の患者さんとか紹介の患者さんとかは、HbA1cの検査をします。

その後は、HbA1cとGAを1ヶ月交代とか、患者さんの希望があれば、片方は保険外で同一月に測定とか、いろいろ工夫しています。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット