2014年12月05日 (金)
こんばんは。
武田薬品のピオグリタゾン(アクトス)に関して、男性に膀胱がんリスクがあるということで、フランスとドイツでは2011年以降、同薬の処方を中止しています。
FDA(米食品医薬品局)は2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし、膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出しました。
欧州医薬品庁(EMA)は、さらに厳しい対応を示し、原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限しました。
これらを考慮して、私も、男性には投与しないようにしてきました。
肥満や浮腫の副作用もあるので、太った糖尿人には処方しにくい薬です。
結局、私の場合は、やせ型の女性の2型糖尿病患者さんに限定してまれに使用してきました。
今回、100万例以上の大規模コホート研究で、ピオグリタゾン(アクトス)と膀胱がんに関連は認められなかったとDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告されました。
さらなる研究が必要であることは言うまでもないのですが、肥満のない糖尿病患者には、アクトスは、今までより使いやすくなったと言えます。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1412/1412013.html
メディカル・トリビューン
インターネットサイト
Mt Pro
ピオグリタゾンによる膀胱がんリスク認められず
統合してバイアスを最小化した国際データ100万例以上を解析
糖尿病治療薬ピオグリタゾンは膀胱がんとの関連が指摘されているが,観察研究における知見は一貫していない。英・University of DundeeのHelen Colhoun氏らは,欧州と北米の6コホート100万例以上のデータを収集し,施設間で解析方法を統一するとともに割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いて検討した結果,両者の関連は認められなかったことをDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告した。
規制当局の投与制限後に発表された知見は一貫せず
膀胱がんは世界で9番目に多いがんで,2012年には43万人が新規に診断されている。発症率は欧州と北米で最も高く,糖尿病患者ではさらに上昇する。膀胱腫瘍では,脂肪細胞の分化を調節する核内転写因子PPARγが正常な尿路上皮と比べ過剰発現していることが知られている。
ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬は,PPARγアゴニストであり,PPARγの活性化が主作用である。前臨床試験においてピオグリタゾンを投与したラットで膀胱がんリスクが上昇したことから,安全性が懸念されていた。また欧州におけるピオグリタゾンの大規模臨床試験ProActiveでも,有意ではないものの膀胱がん発症率が上昇した。
これらの知見を受け,米食品医薬品局(FDA)は,製薬会社に対し10年間の長期観察研究の実施を指示し,中間解析結果では2年以上のピオグリタゾン使用で膀胱がんリスク上昇が確認された。同時期のフランスにおける研究でもリスク上昇が認められ,フランスとドイツでは2011年以降,同薬の処方を中止している。
一方,FDAは2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし,膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出した。欧州医薬品庁(EMA)はさらに厳しい対応を示し,原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限した。しかし,こうした対応の後に発表された複数の研究やメタ解析における知見は一貫していない。
複数地域のデータを統一した方法で解析
Colhoun氏らは,これまでの研究について「そのほとんどは小規模な観察研究で,さまざまな交絡因子を調整しても割り付けバイアス(ピオグリタゾン群で膀胱がんの背景リスクが高かった可能性)を完全に排除することはできない」と指摘している。また,ピオグリタゾン群で治療開始後に尿検査の頻度が増え,膀胱がん検出率が高まった可能性もある(検出バイアス)。
今回の研究では,こうした従来研究の限界を克服するために,複数施設のデータをプールして統一した方法で解析し,標本サイズを大きくした。カナダ・ブリティッシュコロンビア州,フィンランド,英・マンチェスター,オランダ・ロッテルダム,スコットランド,英・臨床診療研究データリンク(CPRD:英国の一般医566施設を網羅するデータベース)の6つの大規模コホートから薬剤処方とがん・死亡率に関するデータを収集し,Poisson回帰を用いた離散時間モデルを個別に適用し,ピオグリタゾンの累積使用が膀胱がん発症に与える影響のモデルを構築し,ピオグリタゾン使用に関する時間依存変数を調整した。
全センターで計101万例,590万人・年のデータを収集し,3,248件の膀胱がん発症を特定したが,ピオグリタゾン使用歴のあった患者における膀胱がん発症は117件のみであった。追跡期間は中央値で4.0~7.4年であった。
長期使用者でも関連性は認められず
全体的に,男女のいずれでもピオグリタゾンの累積使用と膀胱がんとの関連は認められなかった。年齢,暦年,糖尿病罹患期間,喫煙,ピオグリタゾン使用歴で調整後の100日間の累積使用当たりの発症率比(RR)は,男性が1.01(95%CI 0.97~1.06)で,女性が1.04(同0.97~1.11)であった。また,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連に用量依存的な関係が見られるか否かも検討されたが,ピオグリタゾンの長期使用者で膀胱がんリスクは上昇しななかった。
今回の研究では,別のチアゾリジン系薬であるrosiglitazoneについても検討されたが,膀胱がんリスクとの関連は認められず,RRは男性が1.01(95%CI 0.98~1.03),女性が1.00(同0.94~1.07)であった。
Colhoun氏らは「今回の解析は,われわれの知る限り,糖尿病患者の大規模国際コホートに対して同一の解析方法を適用し,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連を検討した唯一の研究である」と指摘。得られた知見を基に「今回の大規模国際解析の結果はピオグリタゾンと膀胱がんの間の因果関係を支持するものではなく,両者の関連を示したこれまでの研究とは相容れない」と結論付けている。さらに「この問題を完全に解決するためには,割り付けバイアスを最小化する方法を用いて,さらに長期間のピオグリタゾン投与に関する解析を行う必要がある」と付け加えている。
(小路 浩史)
武田薬品のピオグリタゾン(アクトス)に関して、男性に膀胱がんリスクがあるということで、フランスとドイツでは2011年以降、同薬の処方を中止しています。
FDA(米食品医薬品局)は2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし、膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出しました。
欧州医薬品庁(EMA)は、さらに厳しい対応を示し、原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限しました。
これらを考慮して、私も、男性には投与しないようにしてきました。
肥満や浮腫の副作用もあるので、太った糖尿人には処方しにくい薬です。
結局、私の場合は、やせ型の女性の2型糖尿病患者さんに限定してまれに使用してきました。
今回、100万例以上の大規模コホート研究で、ピオグリタゾン(アクトス)と膀胱がんに関連は認められなかったとDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告されました。
さらなる研究が必要であることは言うまでもないのですが、肥満のない糖尿病患者には、アクトスは、今までより使いやすくなったと言えます。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1412/1412013.html
メディカル・トリビューン
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Mt Pro
ピオグリタゾンによる膀胱がんリスク認められず
統合してバイアスを最小化した国際データ100万例以上を解析
糖尿病治療薬ピオグリタゾンは膀胱がんとの関連が指摘されているが,観察研究における知見は一貫していない。英・University of DundeeのHelen Colhoun氏らは,欧州と北米の6コホート100万例以上のデータを収集し,施設間で解析方法を統一するとともに割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いて検討した結果,両者の関連は認められなかったことをDiabetologia(2014年12月3日オンライン版)で報告した。
規制当局の投与制限後に発表された知見は一貫せず
膀胱がんは世界で9番目に多いがんで,2012年には43万人が新規に診断されている。発症率は欧州と北米で最も高く,糖尿病患者ではさらに上昇する。膀胱腫瘍では,脂肪細胞の分化を調節する核内転写因子PPARγが正常な尿路上皮と比べ過剰発現していることが知られている。
ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬は,PPARγアゴニストであり,PPARγの活性化が主作用である。前臨床試験においてピオグリタゾンを投与したラットで膀胱がんリスクが上昇したことから,安全性が懸念されていた。また欧州におけるピオグリタゾンの大規模臨床試験ProActiveでも,有意ではないものの膀胱がん発症率が上昇した。
これらの知見を受け,米食品医薬品局(FDA)は,製薬会社に対し10年間の長期観察研究の実施を指示し,中間解析結果では2年以上のピオグリタゾン使用で膀胱がんリスク上昇が確認された。同時期のフランスにおける研究でもリスク上昇が認められ,フランスとドイツでは2011年以降,同薬の処方を中止している。
一方,FDAは2010年に膀胱がん患者に対しては投与すべきでないとし,膀胱がん既往者に対しては慎重投与とする勧告を出した。欧州医薬品庁(EMA)はさらに厳しい対応を示し,原因が未特定の顕微鏡的血尿を呈する患者でも同薬の使用を制限した。しかし,こうした対応の後に発表された複数の研究やメタ解析における知見は一貫していない。
複数地域のデータを統一した方法で解析
Colhoun氏らは,これまでの研究について「そのほとんどは小規模な観察研究で,さまざまな交絡因子を調整しても割り付けバイアス(ピオグリタゾン群で膀胱がんの背景リスクが高かった可能性)を完全に排除することはできない」と指摘している。また,ピオグリタゾン群で治療開始後に尿検査の頻度が増え,膀胱がん検出率が高まった可能性もある(検出バイアス)。
今回の研究では,こうした従来研究の限界を克服するために,複数施設のデータをプールして統一した方法で解析し,標本サイズを大きくした。カナダ・ブリティッシュコロンビア州,フィンランド,英・マンチェスター,オランダ・ロッテルダム,スコットランド,英・臨床診療研究データリンク(CPRD:英国の一般医566施設を網羅するデータベース)の6つの大規模コホートから薬剤処方とがん・死亡率に関するデータを収集し,Poisson回帰を用いた離散時間モデルを個別に適用し,ピオグリタゾンの累積使用が膀胱がん発症に与える影響のモデルを構築し,ピオグリタゾン使用に関する時間依存変数を調整した。
全センターで計101万例,590万人・年のデータを収集し,3,248件の膀胱がん発症を特定したが,ピオグリタゾン使用歴のあった患者における膀胱がん発症は117件のみであった。追跡期間は中央値で4.0~7.4年であった。
長期使用者でも関連性は認められず
全体的に,男女のいずれでもピオグリタゾンの累積使用と膀胱がんとの関連は認められなかった。年齢,暦年,糖尿病罹患期間,喫煙,ピオグリタゾン使用歴で調整後の100日間の累積使用当たりの発症率比(RR)は,男性が1.01(95%CI 0.97~1.06)で,女性が1.04(同0.97~1.11)であった。また,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連に用量依存的な関係が見られるか否かも検討されたが,ピオグリタゾンの長期使用者で膀胱がんリスクは上昇しななかった。
今回の研究では,別のチアゾリジン系薬であるrosiglitazoneについても検討されたが,膀胱がんリスクとの関連は認められず,RRは男性が1.01(95%CI 0.98~1.03),女性が1.00(同0.94~1.07)であった。
Colhoun氏らは「今回の解析は,われわれの知る限り,糖尿病患者の大規模国際コホートに対して同一の解析方法を適用し,ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連を検討した唯一の研究である」と指摘。得られた知見を基に「今回の大規模国際解析の結果はピオグリタゾンと膀胱がんの間の因果関係を支持するものではなく,両者の関連を示したこれまでの研究とは相容れない」と結論付けている。さらに「この問題を完全に解決するためには,割り付けバイアスを最小化する方法を用いて,さらに長期間のピオグリタゾン投与に関する解析を行う必要がある」と付け加えている。
(小路 浩史)
2014年12月04日 (木)
【14/12/04 宗田 哲男
学会発表報告
11月27日 長崎での糖尿病妊娠学会発表が終わりました。
私たちは永井クリニックと共同研究で、4演題を発表しました!
30年目という歴史的節目の「糖尿病妊娠学会」で総括的な講演が多かったのですが、総括の共通点教訓は、「血糖値を上下させない管理が大切だ」ということでした。
でも今のやり方は、ネズミ(血糖値)の動き回るのがいけないと言いながら、ネズミにエサ(糖質)を与えてさんざん動き回らせて、医者はいかに槍や銃(インスリンほか薬剤)で押さえようかとしているのです。なかなか、ネズミはすばしっこいのでつかまりません。エサをやめたらすぐにおとなしくなるのですが。
私たちの演題は以下です。今年は昨年のような、学会会長が襲撃するといようなにぎやかさはなく、粛々と発表ができました。昨年は、「糖質制限したらケトン体が出て、知能指数が下がって馬鹿になる。」とか「こんなことしたら、許せん、倫理委員会にかけろ」などと学会幹部が怒鳴り込んできたのでした。
この4演題はその幹部たちへの回答です。1-3は永井クリニック、4は宗田マタニティクリニックです。
1)妊娠末期における母体の血中β-ヒドロキシ酪酸濃度の測定
2)臍帯動脈血中のケトン体測定による胎児・新生児の熱源の検討-第2報
3)2型糖尿病合併妊娠の低糖質食事療法による管理の1例
4)インスリンを使わないで分娩に至った1型糖尿病合併妊娠管理の1例
1)は妊娠後期に、普通妊婦と妊娠糖尿病妊婦 各1人を普通食と従来の糖尿病食と低糖質食を同じ方に2日間づつ食べてもらい毎食前のケトン体をはかったものです。
これでどの食事でも食前にはケトン体が上昇していて日常的にβーヒドロキシ酪酸が産生されていることがわかりました。この値は「ケトン体で知能が下がる」と言ったRizzo論文(1991)よりも半分以上は、高値でした。
また前の食事との間隔が空くほど、ケトン体が産生され200-400μmol/lにもなることがわかりました。
ケトン体は、つわりでも3000μmol/lにもなりますし、知能指数が下がるという論文が180μmol/l程度での話ですから、論外だと思います。
2)は、468人の正常経過の妊婦の臍帯血を調べてみると、ヒドロキシ酪酸は 中央値400μmol/l 血糖値は75mg/mlであった。ヒドロキシ酪酸の正常値は80μmol/l前後であり、これが胎児・新生児の熱源となると発表した。
永井クリニックでも、こういうデーターが出ていることは、私のクリニックとともに胎児、新生児のケトン体高値の環境が明らかになり、安全性も証明されました。
3)は80キロのⅡ型糖尿病合併妊婦が、体重は81キロで分娩した例で、低糖質で管理し、妊娠中に1キロ増でも2595gの子を分娩しています。
昨年、ある大学病院から、同様なケースで1600キロカロリーとインスリンを、135単位使っても高血糖と低血糖を繰り返して、難渋した例が報告されて いましたが、インスリンを使わないで、カロリーはそれほど制限しないでも、体重は管理できて、肥満型糖尿病には特に、糖質制限が有効であることを示しました。
4)は、インスリンを使わないで、管理した1型糖尿病です。驚くことに、妊娠中にも分娩後も、さらにインスリン分泌が増加し、膵臓機能が回復している例です。
私の1つ前の演題は同じく急性発症型1型糖尿病で、妊娠初期にわかった方ですが、妊娠11週で、妊娠中絶していましたし、2つ前の発表は1型糖尿病にて、持続皮下インスリン注入法をしていて、後期に入院中に、刺入針の不具合で高血糖となりケトアシドーシスを起こして、結局、帝王切開した例でした。
1型糖尿病で、HbA1cが11.5で妊娠がわかり、インスリンをまったく使わないで、まったく入院しないで普通にお産した方なんて、まるでありえない別世界のケースでしようから、私の発表は、理解不能の人が多かったのかもしれません。好意的な質問もありまして、昨年とは大きく雰囲気が変わった発表でした。
この症例につきましては、また報告させていただきます。
この4演題を合わせますと、ケトン体の妊婦、胎児、新生児の環境での安全性と2型糖尿病、あるいは1型糖尿病にも糖質制限が有効、有利であることが示せたかと思います。
いろいろご指導いただきありがとうございました。】
こんばんは。
宗田マタニティクリニックの宗田 哲男先生から、長崎での糖尿病妊娠学会のご報告をいただきました。
宗田先生。
またまた、画期的なご発表、ありがとうございます。m(_ _)mV
1)
妊娠後期には、普通の妊婦でも妊娠糖尿病妊婦でも日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値であることが示されたのは、
画期的なことです。
普通食と従来の糖尿病食と低糖質食で検討して、どの食事でも食前には日常的にβーヒドロキシ酪酸が上昇していることが示唆されました。
つまり、少なくとも妊娠後期においては、全ての妊婦で日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値ということであり、危険でもなんでもないということです。
2)
468人の正常経過の妊婦の臍帯血において、βーヒドロキシ酪酸の中央値は、400μmol/lと成人の基準値(80μmol/l)よりはるかに高値であることが示されました。
本研究でも、胎児・新生児において、βーヒドロキシ酪酸が主たるエネルギー源である可能性が示唆されました。
3)
肥満のある2型糖尿病妊娠において、糖質制限食が画期的な成果をあげた症例です。
肥満がある糖尿病にインスリンを打つとますます肥満しやすくなり、体重コントロールに苦慮するのは、臨床でよく経験します。
ましてそれが妊婦であれば、体重・血糖コントロールに難渋するのは、当然と言えます。
糖尿病妊娠において、インスリンなしの糖質制限食による血糖・体重コントロールが、如何に優れた治療法であるかがわかります。
4)
1型糖尿病で妊娠時にHbA1cが11.5%ということが判明。
大学病院の糖尿病専門医に、中絶を薦められたけれど、一念発起して自力でスーパー糖質制限食を開始されて、血糖コントロール良好を確保して宗田先生に受信。
実は私のブログ経由で、宗田マタニティ-クリニックに受診された方です。
宗田先生はいつでもインスリン治療に切り替えるバックアップ体制は整えておられましたが、結局、インスリンなしで満期安産達成。
私としても、驚愕の一症例であり、ヾ(゜▽゜)
この1型の妊婦さんとそれを支えられた宗田先生に、脱帽です。ヾ(^▽^)
江部康二
学会発表報告
11月27日 長崎での糖尿病妊娠学会発表が終わりました。
私たちは永井クリニックと共同研究で、4演題を発表しました!
30年目という歴史的節目の「糖尿病妊娠学会」で総括的な講演が多かったのですが、総括の共通点教訓は、「血糖値を上下させない管理が大切だ」ということでした。
でも今のやり方は、ネズミ(血糖値)の動き回るのがいけないと言いながら、ネズミにエサ(糖質)を与えてさんざん動き回らせて、医者はいかに槍や銃(インスリンほか薬剤)で押さえようかとしているのです。なかなか、ネズミはすばしっこいのでつかまりません。エサをやめたらすぐにおとなしくなるのですが。
私たちの演題は以下です。今年は昨年のような、学会会長が襲撃するといようなにぎやかさはなく、粛々と発表ができました。昨年は、「糖質制限したらケトン体が出て、知能指数が下がって馬鹿になる。」とか「こんなことしたら、許せん、倫理委員会にかけろ」などと学会幹部が怒鳴り込んできたのでした。
この4演題はその幹部たちへの回答です。1-3は永井クリニック、4は宗田マタニティクリニックです。
1)妊娠末期における母体の血中β-ヒドロキシ酪酸濃度の測定
2)臍帯動脈血中のケトン体測定による胎児・新生児の熱源の検討-第2報
3)2型糖尿病合併妊娠の低糖質食事療法による管理の1例
4)インスリンを使わないで分娩に至った1型糖尿病合併妊娠管理の1例
1)は妊娠後期に、普通妊婦と妊娠糖尿病妊婦 各1人を普通食と従来の糖尿病食と低糖質食を同じ方に2日間づつ食べてもらい毎食前のケトン体をはかったものです。
これでどの食事でも食前にはケトン体が上昇していて日常的にβーヒドロキシ酪酸が産生されていることがわかりました。この値は「ケトン体で知能が下がる」と言ったRizzo論文(1991)よりも半分以上は、高値でした。
また前の食事との間隔が空くほど、ケトン体が産生され200-400μmol/lにもなることがわかりました。
ケトン体は、つわりでも3000μmol/lにもなりますし、知能指数が下がるという論文が180μmol/l程度での話ですから、論外だと思います。
2)は、468人の正常経過の妊婦の臍帯血を調べてみると、ヒドロキシ酪酸は 中央値400μmol/l 血糖値は75mg/mlであった。ヒドロキシ酪酸の正常値は80μmol/l前後であり、これが胎児・新生児の熱源となると発表した。
永井クリニックでも、こういうデーターが出ていることは、私のクリニックとともに胎児、新生児のケトン体高値の環境が明らかになり、安全性も証明されました。
3)は80キロのⅡ型糖尿病合併妊婦が、体重は81キロで分娩した例で、低糖質で管理し、妊娠中に1キロ増でも2595gの子を分娩しています。
昨年、ある大学病院から、同様なケースで1600キロカロリーとインスリンを、135単位使っても高血糖と低血糖を繰り返して、難渋した例が報告されて いましたが、インスリンを使わないで、カロリーはそれほど制限しないでも、体重は管理できて、肥満型糖尿病には特に、糖質制限が有効であることを示しました。
4)は、インスリンを使わないで、管理した1型糖尿病です。驚くことに、妊娠中にも分娩後も、さらにインスリン分泌が増加し、膵臓機能が回復している例です。
私の1つ前の演題は同じく急性発症型1型糖尿病で、妊娠初期にわかった方ですが、妊娠11週で、妊娠中絶していましたし、2つ前の発表は1型糖尿病にて、持続皮下インスリン注入法をしていて、後期に入院中に、刺入針の不具合で高血糖となりケトアシドーシスを起こして、結局、帝王切開した例でした。
1型糖尿病で、HbA1cが11.5で妊娠がわかり、インスリンをまったく使わないで、まったく入院しないで普通にお産した方なんて、まるでありえない別世界のケースでしようから、私の発表は、理解不能の人が多かったのかもしれません。好意的な質問もありまして、昨年とは大きく雰囲気が変わった発表でした。
この症例につきましては、また報告させていただきます。
この4演題を合わせますと、ケトン体の妊婦、胎児、新生児の環境での安全性と2型糖尿病、あるいは1型糖尿病にも糖質制限が有効、有利であることが示せたかと思います。
いろいろご指導いただきありがとうございました。】
こんばんは。
宗田マタニティクリニックの宗田 哲男先生から、長崎での糖尿病妊娠学会のご報告をいただきました。
宗田先生。
またまた、画期的なご発表、ありがとうございます。m(_ _)mV
1)
妊娠後期には、普通の妊婦でも妊娠糖尿病妊婦でも日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値であることが示されたのは、
画期的なことです。
普通食と従来の糖尿病食と低糖質食で検討して、どの食事でも食前には日常的にβーヒドロキシ酪酸が上昇していることが示唆されました。
つまり、少なくとも妊娠後期においては、全ての妊婦で日常的にβ-ヒドロキシ酪酸が高値ということであり、危険でもなんでもないということです。
2)
468人の正常経過の妊婦の臍帯血において、βーヒドロキシ酪酸の中央値は、400μmol/lと成人の基準値(80μmol/l)よりはるかに高値であることが示されました。
本研究でも、胎児・新生児において、βーヒドロキシ酪酸が主たるエネルギー源である可能性が示唆されました。
3)
肥満のある2型糖尿病妊娠において、糖質制限食が画期的な成果をあげた症例です。
肥満がある糖尿病にインスリンを打つとますます肥満しやすくなり、体重コントロールに苦慮するのは、臨床でよく経験します。
ましてそれが妊婦であれば、体重・血糖コントロールに難渋するのは、当然と言えます。
糖尿病妊娠において、インスリンなしの糖質制限食による血糖・体重コントロールが、如何に優れた治療法であるかがわかります。
4)
1型糖尿病で妊娠時にHbA1cが11.5%ということが判明。
大学病院の糖尿病専門医に、中絶を薦められたけれど、一念発起して自力でスーパー糖質制限食を開始されて、血糖コントロール良好を確保して宗田先生に受信。
実は私のブログ経由で、宗田マタニティ-クリニックに受診された方です。
宗田先生はいつでもインスリン治療に切り替えるバックアップ体制は整えておられましたが、結局、インスリンなしで満期安産達成。
私としても、驚愕の一症例であり、ヾ(゜▽゜)
この1型の妊婦さんとそれを支えられた宗田先生に、脱帽です。ヾ(^▽^)
江部康二
2014年12月04日 (木)
【14/11/30 はなこ
すばらしい!!糖質制限!!
江部先生の主食をやめると健康になるという本を読みました。156センチ62キロで二十代のころと比べて15キロ近く太ってしましました。
現在46さいですが。。
バナナダイェットから流行りのダイェットは色々試しましたが全く減らず、高脂血症でいつも健康診断でひっかかっていました。
スーパー糖質制限を始めて5ヶ月で10キロの減量に成功、高脂血症も治り標準値に落ち着きました。かなりの酒好きで二日酔いも酷かったのですが、それも全くなくなりました。本当に不思議です。
こんなに炭水化物が体に悪影響を与えていたとは。。
朝からお肉を食べお昼もお肉、間食にはチーズとくるみを食べ、空腹感も感じずそして、十キロの減量も短期間ででき、お友だちにも進めているのですが、やはり白米を抜くことが難しいようです。。
こんなに痩せられてしかも健康体でいられるのに、もどかしい感じです。。
でも本当に江部先生、ありがとうございました!!】
おはようございます。
はなこさんから、糖質制限食で減量成功、高脂血症、二日酔い改善、という嬉しいコメントをいただきました。
ありがとうございます。
バナナダイエット、タマネギダイエット・・・いろいろありあましたね。
これら、食材関係のダイエットは、ほとんどが上手くいきません。
例えば、バナナは果物の中では、最も糖質含有量が多い部類ですし、タマネギも野菜の中では、かなり糖質含有量が多いです。
ダイエットのこつは、何と言っても「インスリンと炭水化物」に注目することです。
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」なのです。
<インスリンは三重の肥満ホルモン>
◇インスリンは脂肪細胞内の中性脂肪分解を抑制
する。
◇インスリンは血中の中性脂肪を分解し脂肪細胞内
に取り込んで再び中性脂肪に合成して蓄える。
◇インスリンは筋肉細胞に血糖を取り込ませるが、
余剰の血糖は脂肪細胞に取り込ませて中性脂肪
に合成して蓄える。
◇肥満のメカニズムはインスリンによる脂肪蓄積。
◇インスリンを大量に分泌させるのは、糖質のみ。
◇ハーバード大学医学部元教授、
ジョージ・ケーヒルの名言
「脂肪を操るインスリンを、炭水化物(糖質)が操る」
二日酔いがなくなったのも、想定範囲内とはいえ素晴らしいです。
糖質制限食で、ほとんどの人において、むかつきや嘔吐などの消化器症状を伴うような、ひどい二日酔いはなくなります。
私もそうでしたし、夏井睦先生のサイトでも、二日酔いがなくなったという報告は多いです。
まあ、正確には、いくら糖質制限食と焼酎でも、大量に飲みすぎたらさすがに翌朝、頭が重いくらいはありますが、消化器症状はないので、以前の本格的二日酔いで嘔気で起きれないようなことはないですね。
ご友人の方々、残念ですが、糖質制限食は強制するような話ではありません。
本を読んだり、ブログをみたり、自分の頭で考えて、納得して自己管理することが大切と思います。
でも、一度情報として頭の片隅に入力されていると、何かをきっかけに開始するモチベーションが湧き上がることもあるので
、ご友人に教えてあげることは、無駄ではないと思いますよ。
江部康二
2014年12月03日 (水)
こんにちは。
さきほど、高知県から帰京しました。
2014年12月2日(火)午後6:45~
高知県須崎市の須崎プリンスホテルにおいて
糖質制限食による糖尿病治療 ~理論と実践~
と題して、高知県高岡郡医師会学術講演会が開催され、私が講師を務めました。
普段は20名くらいのところを、医師、栄養士、薬剤師を中心に40名の参加があり盛況でした。
質疑応答および懇親会にて、実りの多いお話をすることができました。
須崎市や高岡郡にも糖質制限食が広がりそうです。
すでに糖質制限食の指導を薦めておられる医師も参加されていました。
薬剤師で糖質制限食を実践されている人もおられました。
座長をつとめて頂きました
須崎くろしお病院院長の
田村静平 先生
お招きいただき、ありがとうございました。
田村先生によれば、健康診断で急速に減量成功した人が2名おられて、聞いてみると糖質制限食実践者だったとのことでした。須崎市にも糖質セイゲニストがおられて嬉しい限りです。
医療法人 杏クリニック(088-856-6301)
〒781-1103 高知県土佐市高岡町丙64−1
山本 拓 先生
は、ご自身も糖質制限を実践しておられ、糖尿病患者さんには糖質制限食を指導しておられます。
高知県の糖尿人やメタボ人の皆さん、糖質制限食ご希望のときは、山本拓先生にご相談くださいね。
江部康二
さきほど、高知県から帰京しました。
2014年12月2日(火)午後6:45~
高知県須崎市の須崎プリンスホテルにおいて
糖質制限食による糖尿病治療 ~理論と実践~
と題して、高知県高岡郡医師会学術講演会が開催され、私が講師を務めました。
普段は20名くらいのところを、医師、栄養士、薬剤師を中心に40名の参加があり盛況でした。
質疑応答および懇親会にて、実りの多いお話をすることができました。
須崎市や高岡郡にも糖質制限食が広がりそうです。
すでに糖質制限食の指導を薦めておられる医師も参加されていました。
薬剤師で糖質制限食を実践されている人もおられました。
座長をつとめて頂きました
須崎くろしお病院院長の
田村静平 先生
お招きいただき、ありがとうございました。
田村先生によれば、健康診断で急速に減量成功した人が2名おられて、聞いてみると糖質制限食実践者だったとのことでした。須崎市にも糖質セイゲニストがおられて嬉しい限りです。
医療法人 杏クリニック(088-856-6301)
〒781-1103 高知県土佐市高岡町丙64−1
山本 拓 先生
は、ご自身も糖質制限を実践しておられ、糖尿病患者さんには糖質制限食を指導しておられます。
高知県の糖尿人やメタボ人の皆さん、糖質制限食ご希望のときは、山本拓先生にご相談くださいね。
江部康二
2014年12月02日 (火)
【14/12/01 涼子
妊娠中の血糖値について
江部先生。いつも楽しくブログや本を拝見させていただいています。
昨年、不妊治療をしている病院で受精卵の質が悪く、BMI22、空腹時血糖やA1cは問題なかったのですが、一応ブドウ糖負荷試験を勧められ、結果2H値の血糖が204で、「糖尿病」と診断されてしまいました。
そこから卵子の質改善のためジャヌビアを飲みながら、昼だけ玄米1日1膳のゆるい糖質制限をしてきました。
結果、BMI20、ブドウ糖負荷試験の結果も
血糖:空腹時88 30分154 60分185 120分146
インスリン2.8 3.1 36.9 51.6
A1C4.8
と、境界型に落ち着きました。
そして糖質制限のお陰で、無事妊娠することができました。
今までにない質のいい受精卵を得ることができました。
江部先生のお陰だと思っております!
先生有難うございます。
世の中には、そう太ってもいないけど、なぜか受精卵の質が悪いという方がたくさんみえると思います。
「かくれ糖尿病」の方が多いと、不妊の先生もおっしゃってみえました。
今は妊娠したので、ジャヌビアは飲んでいません。
自己血糖測定してみたところ、
空腹時:88~90
30分:120~148
1H:120
2H:104
でした。
やはり、玄米を食べると血糖は140を越えてしまうため、妊娠中は玄米はやめようかなと考えています。
そこで先生にご質問なのですが
①妊娠すると血糖値が上昇しやすくなるということですが、実際はどのくらい血糖が上昇することが考えられますか。
②ジャヌビアは今は服用していませが、血糖が高い時に作用すると聞いております。
実際はどのくらいの血糖上昇がみられると作用するのでしょうか。
私の場合、高くても150台まで血糖は上昇しませんが、ジャヌビアを飲むと、インスリンの働きが改善されると
聞いています。 改善目的での服用はしても問題ないでしょうか。
③私の場合、インスリンの初期分泌が殆どないようなデータです。
初期分泌を改善させる方法がございましたら ご教示ください。
今から、また江部先生の本3冊を読み、夕食を作る予定です。
健康な赤ちゃんが授かるように頑張ります。】
涼子さん。
75g経口ブドウ糖負荷試験において、緩い糖質制限食実践により、糖尿病型が境界型に改善とのこと、良かったですね。
拙著のご購入、ありがとうございます。
そして妊娠、おめでとうございます。
A)
糖尿病の場合、HbA1c7.0未満が、妊娠許容の条件です。
B)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。
C)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。
B)C)をまとめると、具体的な
<妊娠中の血糖値コントロール目標>は
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後1時間血糖値140mg/dl未満
食後2時間血糖値120mg/dl未満
GA(グリコアルブミン)15.8%未満
となります。
『①妊娠すると血糖値が上昇しやすくなるということですが、実際はどのくらい血糖が上昇することが考えられますか。』
これは、個人差が大きいでしょうね。
耐糖能が正常な人は、妊娠して血糖値が上昇しやすくなった場合も、リアルタイムにインスリンを分泌調整して正常血糖値に保ちます。
しかし、耐糖能に一定の問題がある場合、妊娠前は正常型でも、妊娠後の血糖上昇要因をうまくカバーできずに「妊娠糖尿病」となると思われます。
『②ジャヌビアは今は服用していませが、血糖が高い時に作用すると聞いております。
実際はどのくらいの血糖上昇がみられると作用するのでしょうか。
私の場合、高くても150台まで血糖は上昇しませんが、ジャヌビアを飲むと、インスリンの働きが改善されると聞いています。
改善目的での服用はしても問題ないでしょうか。』
DPP-4阻害薬(ジャヌビアなど)は高血糖の時は作用し、血糖値が108mg/dlくらいになると作用しなくなるので、単独使用では、理論的に低血糖は生じにくいです。
しかし妊娠中は、ジャヌビア服用はなしです。
妊娠中は原則として経口血糖降下薬は使用せず、必要なときはインスリンを使います。
涼子さんのデータなら、糖質制限食で、勿論インスリンも要りません。
『③私の場合、インスリンの初期分泌が殆どないようなデータです。 初期分泌を改善させる方法がございましたら ご教示ください。』
空腹時血糖値88mg/dl
インスリン2.8μU/ml
インスリンの基準値も検査機関で異なります。
3~15μU/ml
とか
5~15μU/ml
とかです。
涼子さんの場合、2.8μU/mlと確かにやや低めです。
しかし、空腹時血糖値は88mg/dlと良好で、少量のインスリンで血糖コントロールができている状況なので、インスリン抵抗性が少なくてとても良いことと思います。
ちなみに、
インスリン抵抗性の指数HOMA-Rは0.61(1.6以下)と正常です。
インスリン分泌指数HOMA-βは40.32(40-60)と正常です。
従って、空腹時インスリンも問題なしです。
今後も美味しく楽しく糖質制限食で、上記血糖コントロール目標とGA値をクリアしてくださいね。
そして元気な赤ちゃんの誕生をお祈りしてます。
☆☆☆
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
☆☆☆
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
HOMA-βはブドウ糖負荷試験における、2時間値のインスリン分泌能と相関する。
***
HOMA-RもHOMA-βも糖尿病が進行した状態では適応がない。
耐糖能異常から軽度の糖尿病までの時期において有用な方法である。
***参考
改訂第4版「糖尿病専門医研修ガイドブック」日本糖尿病学会編(診断と治療社)2009
183ページ
江部康二
妊娠中の血糖値について
江部先生。いつも楽しくブログや本を拝見させていただいています。
昨年、不妊治療をしている病院で受精卵の質が悪く、BMI22、空腹時血糖やA1cは問題なかったのですが、一応ブドウ糖負荷試験を勧められ、結果2H値の血糖が204で、「糖尿病」と診断されてしまいました。
そこから卵子の質改善のためジャヌビアを飲みながら、昼だけ玄米1日1膳のゆるい糖質制限をしてきました。
結果、BMI20、ブドウ糖負荷試験の結果も
血糖:空腹時88 30分154 60分185 120分146
インスリン2.8 3.1 36.9 51.6
A1C4.8
と、境界型に落ち着きました。
そして糖質制限のお陰で、無事妊娠することができました。
今までにない質のいい受精卵を得ることができました。
江部先生のお陰だと思っております!
先生有難うございます。
世の中には、そう太ってもいないけど、なぜか受精卵の質が悪いという方がたくさんみえると思います。
「かくれ糖尿病」の方が多いと、不妊の先生もおっしゃってみえました。
今は妊娠したので、ジャヌビアは飲んでいません。
自己血糖測定してみたところ、
空腹時:88~90
30分:120~148
1H:120
2H:104
でした。
やはり、玄米を食べると血糖は140を越えてしまうため、妊娠中は玄米はやめようかなと考えています。
そこで先生にご質問なのですが
①妊娠すると血糖値が上昇しやすくなるということですが、実際はどのくらい血糖が上昇することが考えられますか。
②ジャヌビアは今は服用していませが、血糖が高い時に作用すると聞いております。
実際はどのくらいの血糖上昇がみられると作用するのでしょうか。
私の場合、高くても150台まで血糖は上昇しませんが、ジャヌビアを飲むと、インスリンの働きが改善されると
聞いています。 改善目的での服用はしても問題ないでしょうか。
③私の場合、インスリンの初期分泌が殆どないようなデータです。
初期分泌を改善させる方法がございましたら ご教示ください。
今から、また江部先生の本3冊を読み、夕食を作る予定です。
健康な赤ちゃんが授かるように頑張ります。】
涼子さん。
75g経口ブドウ糖負荷試験において、緩い糖質制限食実践により、糖尿病型が境界型に改善とのこと、良かったですね。
拙著のご購入、ありがとうございます。
そして妊娠、おめでとうございます。
A)
糖尿病の場合、HbA1c7.0未満が、妊娠許容の条件です。
B)
妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<妊娠中の血糖値コントロール目標>糖尿病治療ガイド(2014-2015)によれば
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c6.2%未満、NGSP値、
です。
C)
さらに、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013、223ページによれば
「HbA1cが、鉄欠乏状態の影響を受け、血糖コントロール状態を反映しいない」
ため、GA(グリコアルブミン)15.8%未満が目標としています。
また食後1時間値140mg/dl未満が目標として好ましいとされています。
B)C)をまとめると、具体的な
<妊娠中の血糖値コントロール目標>は
朝食前血糖値70~100mg/dl
食後1時間血糖値140mg/dl未満
食後2時間血糖値120mg/dl未満
GA(グリコアルブミン)15.8%未満
となります。
『①妊娠すると血糖値が上昇しやすくなるということですが、実際はどのくらい血糖が上昇することが考えられますか。』
これは、個人差が大きいでしょうね。
耐糖能が正常な人は、妊娠して血糖値が上昇しやすくなった場合も、リアルタイムにインスリンを分泌調整して正常血糖値に保ちます。
しかし、耐糖能に一定の問題がある場合、妊娠前は正常型でも、妊娠後の血糖上昇要因をうまくカバーできずに「妊娠糖尿病」となると思われます。
『②ジャヌビアは今は服用していませが、血糖が高い時に作用すると聞いております。
実際はどのくらいの血糖上昇がみられると作用するのでしょうか。
私の場合、高くても150台まで血糖は上昇しませんが、ジャヌビアを飲むと、インスリンの働きが改善されると聞いています。
改善目的での服用はしても問題ないでしょうか。』
DPP-4阻害薬(ジャヌビアなど)は高血糖の時は作用し、血糖値が108mg/dlくらいになると作用しなくなるので、単独使用では、理論的に低血糖は生じにくいです。
しかし妊娠中は、ジャヌビア服用はなしです。
妊娠中は原則として経口血糖降下薬は使用せず、必要なときはインスリンを使います。
涼子さんのデータなら、糖質制限食で、勿論インスリンも要りません。
『③私の場合、インスリンの初期分泌が殆どないようなデータです。 初期分泌を改善させる方法がございましたら ご教示ください。』
空腹時血糖値88mg/dl
インスリン2.8μU/ml
インスリンの基準値も検査機関で異なります。
3~15μU/ml
とか
5~15μU/ml
とかです。
涼子さんの場合、2.8μU/mlと確かにやや低めです。
しかし、空腹時血糖値は88mg/dlと良好で、少量のインスリンで血糖コントロールができている状況なので、インスリン抵抗性が少なくてとても良いことと思います。
ちなみに、
インスリン抵抗性の指数HOMA-Rは0.61(1.6以下)と正常です。
インスリン分泌指数HOMA-βは40.32(40-60)と正常です。
従って、空腹時インスリンも問題なしです。
今後も美味しく楽しく糖質制限食で、上記血糖コントロール目標とGA値をクリアしてくださいね。
そして元気な赤ちゃんの誕生をお祈りしてます。
☆☆☆
<HOMA-R=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405 >
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
☆☆☆
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)>
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度高い。
正常値:40-60
HOMA-βはブドウ糖負荷試験における、2時間値のインスリン分泌能と相関する。
***
HOMA-RもHOMA-βも糖尿病が進行した状態では適応がない。
耐糖能異常から軽度の糖尿病までの時期において有用な方法である。
***参考
改訂第4版「糖尿病専門医研修ガイドブック」日本糖尿病学会編(診断と治療社)2009
183ページ
江部康二
2014年12月01日 (月)
【14/11/29 中年サムライ
肝臓学会にて
11/27の肝臓学会東部会に出ていました。NASHの新展開というシンポで、東北大学の諸沢DRが「非アルコール性脂肪性肝炎患者における低糖質食事療法介入と免疫能解析」という演題で発表されました。
NASH患者11症例に、糖質40%、蛋白20-25%、脂質35-40%、1600カロリーで指導。
3か月後の検査で、体重、体脂肪量の減少。肝機能の改善、肝線維化マーカーの改善、IRIの減少などが得られ、同時に末梢血分画で異常であった免疫パラメーターも正常者に近づいたとの発表でした。
某教授からは素晴らしい臨床結果とのコメントが。
全体にも好意的な反応で、今後、カロリー制限と糖質制限のコントロールstudyをやってほしいなどの意見が出ていました。
皆の印象でも、NASHの患者さんは糖質摂取が多い印象はあるようです。
糖尿・代謝学の一部では、異所性脂肪化(肝や筋肉)がメタボ~2型DMの源流であるという研究の流れが出来ているようです。】
中年サムライ さん
肝臓学会ご参加、お疲れ様です。
興味深い情報をありがとうございます。
私も、NASHそのものが、糖質摂取過剰病と考えています。
東北大学の諸沢DR、すばらしいです。
『NASH患者11症例に、糖質40%、蛋白20-25%、脂質35-40%、1600カロリーで指導』
『3か月後の検査で、体重、体脂肪量の減少。肝機能の改善、肝線維化マーカーの改善、IRIの減少などが得られ、同時に末梢血分画で異常であった免疫パラメーターも正常者に近づいた』
肝臓学会で、糖質制限食肯定の発表とは嬉しいですね。
欲を言えば、糖質40%の緩い糖質制限食でこれだけの効果がでたのですから、糖質12%の高雄病院式スーパー糖質制限食ならもっと顕著な効果が得られたと思うのですが・・・。
まあ、贅沢は言えませんね。
『糖尿・代謝学の一部では、異所性脂肪化(肝や筋肉)がメタボ~2型DMの源流であるという研究の流れが出来ているようです。』
異所性脂肪化(肝や筋肉)も、スーパー糖質制限食なら、速やかな改善が得られると思います。
江部康二
☆☆☆
参考までに
以下は2014/04/30の本ブログ記事です。
ドクター江部の糖尿病徒然日記
脂肪肝と糖質制限食。2014年4月。
こんばんは
今日は、脂肪肝のお話です。
脂肪肝(しぼうかん)とは、文字通り肝臓に脂肪が蓄積した状態です。
近年、30代~40代を中心に増加傾向にあります。
脂肪肝は
1)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)
a)単純脂肪肝 肥満などによるもの
b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic SteatoHepatitis)
2)アルコール性脂肪肝 飲酒によるもの
3)妊娠に伴うもの 急性妊娠性脂肪肝(AFLP)
AFLP:Acute Fatty Liver of Pregnancy
などにわけられます。
NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease、非アルコール性脂肪肝疾患)は、アルコールを原因としない脂肪肝です。
NAFLDの8割から9割は炎症や線維化を伴わない「単純性脂肪肝」です。
多くは肥満が関係します。単純脂肪肝の予後は良好です。
非アルコール性の脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、上述の「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。
NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。NAFLDの1割くらいが、NASHです。
単純性脂肪肝からNASHへ進行することもあります。
肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌
B型ウィルスやC型ウィルスや飲酒以外に、NASHからも肝癌になり得るので、ゆめゆめ油断は禁物なのです。
脂肪肝の根本要因は、脂質ではなく糖質です。
①糖質を摂取すると血糖値が上昇します。
②血糖値が上昇すると追加分泌のインスリンが大量に分泌されます。
③追加分泌インスリンにより、筋肉細胞の糖輸送体が内部から細胞表面に移動します。
④筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)により血液中のブドウ糖は細胞内に取り込まれます。
⑤まずエネルギー源として利用し、次いでグリコーゲンとして筋肉中に蓄えます。
⑥筋肉細胞に取り込まれずに、血液中で余ったブドウ糖は全て中性脂肪に変わり、
脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。
このように、追加分泌のインスリンが大量・頻回に出ることが、脂肪肝や肥満の根本要因であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。
3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、血糖値に直接影響を与えるのは、糖質だけです。
脂質・タンパク質は血糖値に直接影響を与えることはありません。
追加分泌インスリンが大量に必要となるのは、糖質摂取時だけです。
タンパク質は、ごく少量の追加分泌インスリンを分泌させます。
脂質は、追加分泌インスリンを分泌させません。
脂肪肝も内臓脂肪肥満もメタボリック・シンドロームも、糖質の頻回・過剰摂取によるインスリンの頻回・過剰分泌が根本要因と思います。
内臓脂肪肥満やメタボになれば、インスリン抵抗性も出現してきて、血糖値を正常に保つために基礎分泌インスリンの量も増加します。
このようにして、インスリン追加分泌も基礎分泌も過剰になり、ますます、脂肪肝や内臓脂肪肥満やメタボリック・シンドロームは進行して悪循環に陥ります。
上述の如く人体の生理・栄養・代謝面から理論的に考えてみると、
<糖質→食後血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成→脂肪肝・肥満>
ということが明確に理解できます。
つまり、糖質を普通に食べていたら、少々のカロリー制限をしても、脂肪肝が改善することは極めて困難なのです。
一方、糖質制限食実践で、例えば肉・魚・豆腐などを摂取すれば、当然高脂質・高タンパク食となりますが、この間常に脂肪が分解されエネルギー源として使われています。
つまり、糖質制限食を食べている最中にも同時に中性脂肪が分解されて脂肪酸やケトン体になり、骨格筋・心筋・内臓でエネルギー源として利用されているのです。
この「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が日常的に利用されているのが、人類本来の姿であり、農耕前の700万年間はずっとそうでした。
糖質制限食で脂肪が分解されていた人が、糖質を摂取して血糖値が上昇すると、
「糖質制限食→中性脂肪分解→脂肪酸・ケトン体→骨格筋・心筋・内臓のエネルギー源」
というパターンが
「糖質摂取→血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成」
というパターンに変化し、脂肪肝・肥満につながるわけです。
私自身、2002年の糖尿病発覚の時点で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていました。
<身長167cm 体重66kg 高血圧140~180/90~110 腹囲86cm>
スーパー糖質制限食実践半年で10kg減量して56kg。
血圧は140~180/90~110 → 120~130/70~80。
メタボリックシンドロームの基準が全て正常になりました。
内臓脂肪CT126cm2 → 70cm2 (正常は100未満)
となりました。
腹部エコーでも脂肪肝は改善しました。
私だけでなく多くの脂肪肝の患者さんがスーパー糖質制限食で速やかに改善しています。
ブログ読者の脂肪肝の皆さん、安心して魚も肉も卵も野菜もしっかり食べて、美味しく楽しくスーパー糖質制限食で、脂肪肝改善を目指して下さいね。
なお、急性妊娠性脂肪肝(AFLP)はまれな疾患(6000~7000妊娠に1例ていど)ですが、重篤となることもあり注意が必要です。
AFLPは理論的には糖質制限食で予防できると思います。
江部康二
肝臓学会にて
11/27の肝臓学会東部会に出ていました。NASHの新展開というシンポで、東北大学の諸沢DRが「非アルコール性脂肪性肝炎患者における低糖質食事療法介入と免疫能解析」という演題で発表されました。
NASH患者11症例に、糖質40%、蛋白20-25%、脂質35-40%、1600カロリーで指導。
3か月後の検査で、体重、体脂肪量の減少。肝機能の改善、肝線維化マーカーの改善、IRIの減少などが得られ、同時に末梢血分画で異常であった免疫パラメーターも正常者に近づいたとの発表でした。
某教授からは素晴らしい臨床結果とのコメントが。
全体にも好意的な反応で、今後、カロリー制限と糖質制限のコントロールstudyをやってほしいなどの意見が出ていました。
皆の印象でも、NASHの患者さんは糖質摂取が多い印象はあるようです。
糖尿・代謝学の一部では、異所性脂肪化(肝や筋肉)がメタボ~2型DMの源流であるという研究の流れが出来ているようです。】
中年サムライ さん
肝臓学会ご参加、お疲れ様です。
興味深い情報をありがとうございます。
私も、NASHそのものが、糖質摂取過剰病と考えています。
東北大学の諸沢DR、すばらしいです。
『NASH患者11症例に、糖質40%、蛋白20-25%、脂質35-40%、1600カロリーで指導』
『3か月後の検査で、体重、体脂肪量の減少。肝機能の改善、肝線維化マーカーの改善、IRIの減少などが得られ、同時に末梢血分画で異常であった免疫パラメーターも正常者に近づいた』
肝臓学会で、糖質制限食肯定の発表とは嬉しいですね。
欲を言えば、糖質40%の緩い糖質制限食でこれだけの効果がでたのですから、糖質12%の高雄病院式スーパー糖質制限食ならもっと顕著な効果が得られたと思うのですが・・・。
まあ、贅沢は言えませんね。
『糖尿・代謝学の一部では、異所性脂肪化(肝や筋肉)がメタボ~2型DMの源流であるという研究の流れが出来ているようです。』
異所性脂肪化(肝や筋肉)も、スーパー糖質制限食なら、速やかな改善が得られると思います。
江部康二
☆☆☆
参考までに
以下は2014/04/30の本ブログ記事です。
ドクター江部の糖尿病徒然日記
脂肪肝と糖質制限食。2014年4月。
こんばんは
今日は、脂肪肝のお話です。
脂肪肝(しぼうかん)とは、文字通り肝臓に脂肪が蓄積した状態です。
近年、30代~40代を中心に増加傾向にあります。
脂肪肝は
1)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)
a)単純脂肪肝 肥満などによるもの
b)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic SteatoHepatitis)
2)アルコール性脂肪肝 飲酒によるもの
3)妊娠に伴うもの 急性妊娠性脂肪肝(AFLP)
AFLP:Acute Fatty Liver of Pregnancy
などにわけられます。
NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease、非アルコール性脂肪肝疾患)は、アルコールを原因としない脂肪肝です。
NAFLDの8割から9割は炎症や線維化を伴わない「単純性脂肪肝」です。
多くは肥満が関係します。単純脂肪肝の予後は良好です。
非アルコール性の脂肪肝はかつては、放置してもさしたることはないと言われていましたが、近年、上述の「NASH」が認識されるようになり、様相が一変しました。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis)を略してNASHです。
NASHは、肝炎から肝硬変や肝臓癌に進展することもあり、結構こわいのです。NAFLDの1割くらいが、NASHです。
単純性脂肪肝からNASHへ進行することもあります。
肝臓に脂肪が蓄積→脂肪肝→非アルコール性脂肪性肝炎→肝硬変→肝癌
B型ウィルスやC型ウィルスや飲酒以外に、NASHからも肝癌になり得るので、ゆめゆめ油断は禁物なのです。
脂肪肝の根本要因は、脂質ではなく糖質です。
①糖質を摂取すると血糖値が上昇します。
②血糖値が上昇すると追加分泌のインスリンが大量に分泌されます。
③追加分泌インスリンにより、筋肉細胞の糖輸送体が内部から細胞表面に移動します。
④筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)により血液中のブドウ糖は細胞内に取り込まれます。
⑤まずエネルギー源として利用し、次いでグリコーゲンとして筋肉中に蓄えます。
⑥筋肉細胞に取り込まれずに、血液中で余ったブドウ糖は全て中性脂肪に変わり、
脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。
このように、追加分泌のインスリンが大量・頻回に出ることが、脂肪肝や肥満の根本要因であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。
3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、血糖値に直接影響を与えるのは、糖質だけです。
脂質・タンパク質は血糖値に直接影響を与えることはありません。
追加分泌インスリンが大量に必要となるのは、糖質摂取時だけです。
タンパク質は、ごく少量の追加分泌インスリンを分泌させます。
脂質は、追加分泌インスリンを分泌させません。
脂肪肝も内臓脂肪肥満もメタボリック・シンドロームも、糖質の頻回・過剰摂取によるインスリンの頻回・過剰分泌が根本要因と思います。
内臓脂肪肥満やメタボになれば、インスリン抵抗性も出現してきて、血糖値を正常に保つために基礎分泌インスリンの量も増加します。
このようにして、インスリン追加分泌も基礎分泌も過剰になり、ますます、脂肪肝や内臓脂肪肥満やメタボリック・シンドロームは進行して悪循環に陥ります。
上述の如く人体の生理・栄養・代謝面から理論的に考えてみると、
<糖質→食後血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成→脂肪肝・肥満>
ということが明確に理解できます。
つまり、糖質を普通に食べていたら、少々のカロリー制限をしても、脂肪肝が改善することは極めて困難なのです。
一方、糖質制限食実践で、例えば肉・魚・豆腐などを摂取すれば、当然高脂質・高タンパク食となりますが、この間常に脂肪が分解されエネルギー源として使われています。
つまり、糖質制限食を食べている最中にも同時に中性脂肪が分解されて脂肪酸やケトン体になり、骨格筋・心筋・内臓でエネルギー源として利用されているのです。
この「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が日常的に利用されているのが、人類本来の姿であり、農耕前の700万年間はずっとそうでした。
糖質制限食で脂肪が分解されていた人が、糖質を摂取して血糖値が上昇すると、
「糖質制限食→中性脂肪分解→脂肪酸・ケトン体→骨格筋・心筋・内臓のエネルギー源」
というパターンが
「糖質摂取→血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成」
というパターンに変化し、脂肪肝・肥満につながるわけです。
私自身、2002年の糖尿病発覚の時点で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていました。
<身長167cm 体重66kg 高血圧140~180/90~110 腹囲86cm>
スーパー糖質制限食実践半年で10kg減量して56kg。
血圧は140~180/90~110 → 120~130/70~80。
メタボリックシンドロームの基準が全て正常になりました。
内臓脂肪CT126cm2 → 70cm2 (正常は100未満)
となりました。
腹部エコーでも脂肪肝は改善しました。
私だけでなく多くの脂肪肝の患者さんがスーパー糖質制限食で速やかに改善しています。
ブログ読者の脂肪肝の皆さん、安心して魚も肉も卵も野菜もしっかり食べて、美味しく楽しくスーパー糖質制限食で、脂肪肝改善を目指して下さいね。
なお、急性妊娠性脂肪肝(AFLP)はまれな疾患(6000~7000妊娠に1例ていど)ですが、重篤となることもあり注意が必要です。
AFLPは理論的には糖質制限食で予防できると思います。
江部康二
2014年12月01日 (月)

こんにちは。
これまで何度かご紹介している、沖縄で唯一、私、江部康二監修の糖質制限OKレストラン、
ドルチェとパスタのお店
ピキタン
那覇市松尾1-10-7
TEL:090-1864-6990
URL:http://dolcepastapichitan.web.fc2.com/pichitan.html
【定休日】火曜日
ピキタンさんは、イタリアンの店で修行したご主人と、パティシエの奥さんが7年前に那覇でオープンされました。
「本当に美味しくて安心なものを食べてもらいたい。」と、パンやスイーツ、ソーセージからベーコンまで、殆どの食材を手作りされているお店です。
沖縄病のあらてつさんがフラッとお店に入り、そのままご主人と意気投合、糖質制限のメニューを作ってもらうことになりました。
ご主人と奥さんの糖質制限食にかける真摯な思いは、「1型糖尿病の方が食べても血糖値の上がらないものを作りたい」との言葉に現れていて、私だけでなく、1型糖尿病の栄養士さんも実際に食べて血糖値を測り、合格したものしか出さないという徹底ぶりです。
これだけの熱意を持って糖質制限食に取り組んで頂けるのは、我々糖尿人としては嬉しい限りですね(^O^)
現在、やせる食べ方ドットコムで販売している、パティシエの奥さんが作る季節の糖質制限タルトは、「これが糖質制限?」と思わず疑ってしまうくらい素晴らしい完成度と美味しさで、何も聞かされずに食べて糖質制限と分かる人はまずいないのではないかと思います(^O^)
今回、そのピキタンさんより、奇跡のスペシャルミックス粉、京都江部粉を使ったクリスマスケーキが登場しました。
江部粉で作った特製スポンジ生地にたっぷりの白い生クリーム、その上にトッピングされたイチゴがクリスマスのムードを盛り上げてくれます(^^)
血糖値を上げないスポンジ生地はなかなか難しく、これまで納得のいくスポンジができませんでしたが、ABS株式会社のマジック粉部長ことS粉部長が苦心惨憺の上開発してくださった京都江部粉と、ピキタンのスイーツ担当島崎奥様の技術と情熱が、小麦のケーキと変わらない、いやそれ以上の美味しさ&血糖値の上昇を最小限に抑えたクリスマスケーキを完成させてくれました\(^o^)/
もちろん美味しいだけでなく、私自ら血糖測定実験を行っています。
午後5:28 空腹時血糖値:111mg/dl
ピキタンのケーキ(イチゴが先に2個のほう)を1個(約100ḡ)摂取
午後6:28 食後1時間血糖値:116mg/dl
100ḡ食べて5mgの上昇、素晴らしい結果です(^^)
今回のピキタン特製クリスマスケーキ、90台の限定発売で残り僅かだそうです。
これまでありそうでなかったイチゴのホワイトショートケーキが糖質制限で、しかも、私江部康二による血糖即ても見事に合格\(^o^)/
糖尿人、メタボ人、ダイエッターと全ての糖質セイゲニストの皆さん、手に入れるなら今がラストチャンスです。
是非お試しあれ。
江部康二
詳細と販売はこちらです。
ピキタン 糖質オフ クリスマスケーキ
http://www.yaserutabekata.com/shop/sweets_xmas.php

DOLCE&PASTA
ピキタン
那覇市松尾1-10-7
TEL:090-1864-6990
URL:http://dolcepastapichitan.web.fc2.com/pichitan.html
【定休日】火曜日
糖質制限食ご希望の方、当日も対応してくださいますが、できれば予約をお願い致しますm(__)m