2013年09月30日 (月)
こんばんは。
愛知県鍼灸マッサージ師会主催の 第23回 はり灸健康講座
2013年9月29日 (日曜日) 午後1時より午後3時まで 中部電力ビル2F 中電ホールにて
「糖質制限食と糖尿病 ~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
と題して、私がお話ししました。
210名を超える大勢の参加者がありました。
本ブログを見て、かなり遠方から来ていただいた方もありました。
ブログ読者の皆さんには、この場を借りて御礼申し上げます。m(_ _)m
今回は市民公開講座なので、本来、論文や文献などなくてもいいお話しにしようかと思ったのですが、以前、関東の鍼灸師さんの会で講演したときは、EBM(evidence based medicine、 根拠に基づく医学)に関する質問が相次いだので、医学論文もスライドに盛り込みました。説得力という意味では、EBMも必要かと思いました。
従いまして、86枚のスライドの内、一部はやや難しい内容になったので、一般の参加者の皆さんには、わかりにくかったかもしれず申し訳なかったのですが、過半数のスライドは誰にでもわかりやすい内容だったので、ご容赦願います。
針灸治療の対象疾患として、腰痛や膝痛が結構多いと思います。
肥満があり、腰痛や膝痛がある場合、糖質制限食で減量をしながら、針灸治療で自然治癒力を向上させるという相乗効果が期待できると思います。
鍼灸治療と糖質制限食は共に、血流・代謝が良くなり、自然治癒力を高める効果が期待できて相性がいいと思います。
今回、はり灸健康講座に招聘いただいた、山ノ下会長、松井事務局長はじめ、ご準備いただいた先生方、誠にありがとうございました。m(_ _)mV
江部康二
愛知県鍼灸マッサージ師会主催の 第23回 はり灸健康講座
2013年9月29日 (日曜日) 午後1時より午後3時まで 中部電力ビル2F 中電ホールにて
「糖質制限食と糖尿病 ~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
と題して、私がお話ししました。
210名を超える大勢の参加者がありました。
本ブログを見て、かなり遠方から来ていただいた方もありました。
ブログ読者の皆さんには、この場を借りて御礼申し上げます。m(_ _)m
今回は市民公開講座なので、本来、論文や文献などなくてもいいお話しにしようかと思ったのですが、以前、関東の鍼灸師さんの会で講演したときは、EBM(evidence based medicine、 根拠に基づく医学)に関する質問が相次いだので、医学論文もスライドに盛り込みました。説得力という意味では、EBMも必要かと思いました。
従いまして、86枚のスライドの内、一部はやや難しい内容になったので、一般の参加者の皆さんには、わかりにくかったかもしれず申し訳なかったのですが、過半数のスライドは誰にでもわかりやすい内容だったので、ご容赦願います。
針灸治療の対象疾患として、腰痛や膝痛が結構多いと思います。
肥満があり、腰痛や膝痛がある場合、糖質制限食で減量をしながら、針灸治療で自然治癒力を向上させるという相乗効果が期待できると思います。
鍼灸治療と糖質制限食は共に、血流・代謝が良くなり、自然治癒力を高める効果が期待できて相性がいいと思います。
今回、はり灸健康講座に招聘いただいた、山ノ下会長、松井事務局長はじめ、ご準備いただいた先生方、誠にありがとうございました。m(_ _)mV
江部康二
2013年09月29日 (日)
こんばんは。
9月28日に続き、スペイン、バルセロナの第49回欧州糖尿病学会からの記事です。
精神科医師Aさん、コメント・情報をありがとうございます。
「低炭水化物食の方が低脂肪食よりも健康関連の生活の質向上に効果」
という、大変嬉しい内容の発表がありました。
スウェーデンのリンドストレーム氏らによる発表です。
エネルギー摂取量は男性で1800kcal、女性で1600kcalに設定。
低脂肪食群は、脂肪30%、炭水化物55‐60%、タンパク質10-15%、
低炭水化物食群は、脂肪50%、炭水化物20%、タンパク質30%
61人の2型糖尿病患者の、2年間のRCT研究論文
ですので信頼度は高いです。
今までのRCT研究論文の多くは、低炭水化物食群といっても糖質を35~40%摂取していたので、低糖質食というより中糖質食の研究と言わざるを得なかったのですが、今回のスウェーデンのRCT研究論文は、糖質20%であり、立派な低糖質食(スーパー糖質制限食)です。
さすが、スウェーデン、2008年1月にスウェーデン社会保険庁が、正式に糖質制限食を認めた国だけありますね。
結果は、体重減少効果は、低脂肪食群と低炭水化物食群で、有意差はありませんでした。
しかし「身体機能、肉体的苦痛、健康全般、および活動力」といった健康関連の生活の質に関しては、低炭水化物食群では、ベースラインに比べて有意差をもって改善していましたが、低脂肪食群では改善が見られませんでした。
演者らは、
「健康関連の生活の質においては、低脂肪食に比べて低炭水化物食の方が好ましい方法であることを示している」
とまとめました。
1)2年間のRCT研究論文であること。
2)糖質摂取比率20%の、本当の糖質制限食の論文であること。
1)2)の2点により、糖質制限食関連論文として信頼度が大変高いと言えます。
なお、
「体重減少効果は両者で同等であったが、健康関連の生活の質において低炭水化物食の方が好ましい方法」
という演者らの結論からは、同じエネルギー制限という縛りがあったとしても、低炭水化物食(スーパー糖質制限食)の方が低脂肪食より健康関連の生活の質が良くなるので、モチベーションも高まり継続しやすい可能性が高いと言えます。
これは、我々糖質セイゲニストの実感とよく一致します。
江部康二
学会ダイジェスト: 第49回欧州糖尿病学会
2013年9月23日~27日 Barcelona,Spain
2013. 9. 25
低炭水化物食の方が低脂肪食よりも健康関連の生活の質向上に効果
三和 護=日経メディカル別冊
スウェーデンのDepartment of Medical and Health SciencesのT. Lindström氏
2型糖尿病患者で同等の減量効果が得られる低脂肪食と低炭水化物食だが、健康関連の生活の質(HRQoL)の向上という点では、低炭水化物食の方が効果があることが示された。スウェーデンのDepartment of Medical and Health SciencesのT. Lindström氏らが、9月23日からバルセロナで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2013)で発表した。
演者らは、肥満あるいは2型糖尿病患者のHRQoLに関しては、減量の影響を調べた研究はいくつかあるものの、さまざまな食事療法の影響を比較したデータはほとんどないことから、今回の研究に着手した。低脂肪食(LFD)あるいは低炭水化物食(LCD)による食事療法を取り上げ、2型糖尿病患者に対する2年間の介入を実施、それぞれのHRQoLへの影響を比較した。
研究デザインは、前向き、無作為化試験で、61人の2型糖尿病患者を対象とした。ベースライン、6カ月、12カ月、24カ月時にSF-36質問票を用いて健康状態を把握した。エネルギー摂取量は男性で1800kcal、女性で1600kcalに設定した。LFD群は脂肪30%E、炭水化物55‐60%E、タンパク質10-15%E、LCD群は脂肪50%E、炭水化物20%E、タンパク質30%Eという内容だった。
試験の結果、ベースライン時の平均BMIは32.7±5.4kg/m2だった。減量の効果には両群間で認められ6カ月時で最大となった(LFD群:-3.99±4.1kg、LCD群:-4.31±3.6kg、ぞれぞれP<0.001)が、群間差はなかった。12カ月時点で、身体機能、肉体的苦痛、健康全般、および活動力は、LFD群ではベースラインと比べて変化がなかったが、LCD群では改善していた。具体的には、SF-36の身体的要素スコアは、LFD群に変化がなかったのに対し、LCD群では12カ月時に46.7に上昇し(ベースライン:44.1、P<0.009)、LCD群の方が有意に改善していた(P<0.03)。心理的要素については両群とも変化は見られなかった。
これらの結果から演者らは、「体重の変化に両群間で差はなかったが、LCD群で1年後にHRQoLの改善が認められた。LFD群では減量効果は同等であったにもかかわらずHRQoLに変化はなかった」と結論。今回のデータは、「HRQoLにおいては、LFDに比べてLCDの方が好ましい方法であることを示している」とまとめた。
9月28日に続き、スペイン、バルセロナの第49回欧州糖尿病学会からの記事です。
精神科医師Aさん、コメント・情報をありがとうございます。
「低炭水化物食の方が低脂肪食よりも健康関連の生活の質向上に効果」
という、大変嬉しい内容の発表がありました。
スウェーデンのリンドストレーム氏らによる発表です。
エネルギー摂取量は男性で1800kcal、女性で1600kcalに設定。
低脂肪食群は、脂肪30%、炭水化物55‐60%、タンパク質10-15%、
低炭水化物食群は、脂肪50%、炭水化物20%、タンパク質30%
61人の2型糖尿病患者の、2年間のRCT研究論文
ですので信頼度は高いです。
今までのRCT研究論文の多くは、低炭水化物食群といっても糖質を35~40%摂取していたので、低糖質食というより中糖質食の研究と言わざるを得なかったのですが、今回のスウェーデンのRCT研究論文は、糖質20%であり、立派な低糖質食(スーパー糖質制限食)です。
さすが、スウェーデン、2008年1月にスウェーデン社会保険庁が、正式に糖質制限食を認めた国だけありますね。
結果は、体重減少効果は、低脂肪食群と低炭水化物食群で、有意差はありませんでした。
しかし「身体機能、肉体的苦痛、健康全般、および活動力」といった健康関連の生活の質に関しては、低炭水化物食群では、ベースラインに比べて有意差をもって改善していましたが、低脂肪食群では改善が見られませんでした。
演者らは、
「健康関連の生活の質においては、低脂肪食に比べて低炭水化物食の方が好ましい方法であることを示している」
とまとめました。
1)2年間のRCT研究論文であること。
2)糖質摂取比率20%の、本当の糖質制限食の論文であること。
1)2)の2点により、糖質制限食関連論文として信頼度が大変高いと言えます。
なお、
「体重減少効果は両者で同等であったが、健康関連の生活の質において低炭水化物食の方が好ましい方法」
という演者らの結論からは、同じエネルギー制限という縛りがあったとしても、低炭水化物食(スーパー糖質制限食)の方が低脂肪食より健康関連の生活の質が良くなるので、モチベーションも高まり継続しやすい可能性が高いと言えます。
これは、我々糖質セイゲニストの実感とよく一致します。
江部康二
学会ダイジェスト: 第49回欧州糖尿病学会
2013年9月23日~27日 Barcelona,Spain
2013. 9. 25
低炭水化物食の方が低脂肪食よりも健康関連の生活の質向上に効果
三和 護=日経メディカル別冊
スウェーデンのDepartment of Medical and Health SciencesのT. Lindström氏
2型糖尿病患者で同等の減量効果が得られる低脂肪食と低炭水化物食だが、健康関連の生活の質(HRQoL)の向上という点では、低炭水化物食の方が効果があることが示された。スウェーデンのDepartment of Medical and Health SciencesのT. Lindström氏らが、9月23日からバルセロナで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2013)で発表した。
演者らは、肥満あるいは2型糖尿病患者のHRQoLに関しては、減量の影響を調べた研究はいくつかあるものの、さまざまな食事療法の影響を比較したデータはほとんどないことから、今回の研究に着手した。低脂肪食(LFD)あるいは低炭水化物食(LCD)による食事療法を取り上げ、2型糖尿病患者に対する2年間の介入を実施、それぞれのHRQoLへの影響を比較した。
研究デザインは、前向き、無作為化試験で、61人の2型糖尿病患者を対象とした。ベースライン、6カ月、12カ月、24カ月時にSF-36質問票を用いて健康状態を把握した。エネルギー摂取量は男性で1800kcal、女性で1600kcalに設定した。LFD群は脂肪30%E、炭水化物55‐60%E、タンパク質10-15%E、LCD群は脂肪50%E、炭水化物20%E、タンパク質30%Eという内容だった。
試験の結果、ベースライン時の平均BMIは32.7±5.4kg/m2だった。減量の効果には両群間で認められ6カ月時で最大となった(LFD群:-3.99±4.1kg、LCD群:-4.31±3.6kg、ぞれぞれP<0.001)が、群間差はなかった。12カ月時点で、身体機能、肉体的苦痛、健康全般、および活動力は、LFD群ではベースラインと比べて変化がなかったが、LCD群では改善していた。具体的には、SF-36の身体的要素スコアは、LFD群に変化がなかったのに対し、LCD群では12カ月時に46.7に上昇し(ベースライン:44.1、P<0.009)、LCD群の方が有意に改善していた(P<0.03)。心理的要素については両群とも変化は見られなかった。
これらの結果から演者らは、「体重の変化に両群間で差はなかったが、LCD群で1年後にHRQoLの改善が認められた。LFD群では減量効果は同等であったにもかかわらずHRQoLに変化はなかった」と結論。今回のデータは、「HRQoLにおいては、LFDに比べてLCDの方が好ましい方法であることを示している」とまとめた。
2013年09月28日 (土)
こんにちは。
欧州糖尿病学会が2013年9月23日~27日、スペインのバルセロナで開催されました。
「低血糖と高血糖、どちらも脳萎縮の進行と関連」
という研究成果が藍野病院の吉田麻美氏らにより発表されました。
吉田氏らによると
「高齢の糖尿病患者の脳の萎縮度を調べ、その関連因子を解析した結果、高血糖だけでなく、内臓肥満や低血糖なども認知症の進行と関連している。」
とのことです。
糖質を摂取しながら、薬物療法を行う場合、薬効が強すぎれば低血糖になりますし、薬効が弱ければ高血糖になります。
糖質量と薬物量とをぴったりマッチングさせて、正常血糖値を維持して、血糖変動幅を低下させるのは現実には至難の技です。またSU剤やインスリン注射はあきらかに肥満を悪化させます。
これに対して糖質制限食なら、低血糖も高血糖もほとんど起こらないし、肥満も改善します。
今回の研究でも、糖質制限食がカロリー制限食(高糖質食)に比し有用であることを、明確に示しています。
江部康二
学会ダイジェスト: 第49回欧州糖尿病学会
2013年9月23日~27日 Barcelona,Spain
2013. 9. 27
低血糖と高血糖、どちらも脳萎縮の進行と関連
友吉 由紀子=日経メディカル別冊
藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏
糖尿病(DM)は、アルツハイマー病(AD)のリスクファクターとされ、高血糖やインスリン抵抗性などの関与が指摘されている。そこで、高齢の糖尿病患者の脳の萎縮度を調べ、その関連因子を解析した結果、高血糖だけでなく、内臓肥満や低血糖なども認知症の進行と関連していることなどが示された。9月23日からバルセロナで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2013)で、藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏らが発表した。
対象は、60歳以上の2型DM患者121人(平均年齢71.1歳、男性58人/女性63人、HbA1c値:6.9%)。頭部MRIを撮影し、アルツハイマー病診断支援システムのVSRADソフトを用いて海馬傍回の萎縮度を解析した。
5年間の追跡で、萎縮度の平均値は1.59から1.79に悪化した。萎縮の進行がほとんどなかったのは89人(萎縮-群)、萎縮度の進行が0.2以上見られたのは32人(萎縮+群)だった。
萎縮+群は、萎縮-群に比べて有意に高齢で(74.1歳 対 70.0歳、P=0.012)、HbA1c値が高く(7.2% 対 6.8%、P=0.033)、食後2時間血糖値が高かった(223mg/dL 対 189mg/dL、P=0.016)。2群間で、糖尿病罹病期間、空腹時血糖値については有意差がなかった。
また萎縮+群は、萎縮-群に比べて低血糖発作の回数が有意に多く(月に3回以上、25% 対 6.7%、P=0.029)、内臓肥満の割合も多かった(75.0% 対 48.3%、P=0.014)。
萎縮の進行と関連因子について重回帰分析を行った結果では、HbA1c値のみが有意な関連因子だった。
これらの結果を踏まえ吉田氏は、「本研究から、高血糖、低血糖のいずれもが認知症の進行と関連していることが示唆された。認知症の予防の意味からも、適切な血糖値を維持することが極めて重要であると言えるだろう」とまとめた。
欧州糖尿病学会が2013年9月23日~27日、スペインのバルセロナで開催されました。
「低血糖と高血糖、どちらも脳萎縮の進行と関連」
という研究成果が藍野病院の吉田麻美氏らにより発表されました。
吉田氏らによると
「高齢の糖尿病患者の脳の萎縮度を調べ、その関連因子を解析した結果、高血糖だけでなく、内臓肥満や低血糖なども認知症の進行と関連している。」
とのことです。
糖質を摂取しながら、薬物療法を行う場合、薬効が強すぎれば低血糖になりますし、薬効が弱ければ高血糖になります。
糖質量と薬物量とをぴったりマッチングさせて、正常血糖値を維持して、血糖変動幅を低下させるのは現実には至難の技です。またSU剤やインスリン注射はあきらかに肥満を悪化させます。
これに対して糖質制限食なら、低血糖も高血糖もほとんど起こらないし、肥満も改善します。
今回の研究でも、糖質制限食がカロリー制限食(高糖質食)に比し有用であることを、明確に示しています。
江部康二
学会ダイジェスト: 第49回欧州糖尿病学会
2013年9月23日~27日 Barcelona,Spain
2013. 9. 27
低血糖と高血糖、どちらも脳萎縮の進行と関連
友吉 由紀子=日経メディカル別冊
藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏
糖尿病(DM)は、アルツハイマー病(AD)のリスクファクターとされ、高血糖やインスリン抵抗性などの関与が指摘されている。そこで、高齢の糖尿病患者の脳の萎縮度を調べ、その関連因子を解析した結果、高血糖だけでなく、内臓肥満や低血糖なども認知症の進行と関連していることなどが示された。9月23日からバルセロナで開催中の欧州糖尿病学会(EASD2013)で、藍野病院(大阪府茨木市)の吉田麻美氏らが発表した。
対象は、60歳以上の2型DM患者121人(平均年齢71.1歳、男性58人/女性63人、HbA1c値:6.9%)。頭部MRIを撮影し、アルツハイマー病診断支援システムのVSRADソフトを用いて海馬傍回の萎縮度を解析した。
5年間の追跡で、萎縮度の平均値は1.59から1.79に悪化した。萎縮の進行がほとんどなかったのは89人(萎縮-群)、萎縮度の進行が0.2以上見られたのは32人(萎縮+群)だった。
萎縮+群は、萎縮-群に比べて有意に高齢で(74.1歳 対 70.0歳、P=0.012)、HbA1c値が高く(7.2% 対 6.8%、P=0.033)、食後2時間血糖値が高かった(223mg/dL 対 189mg/dL、P=0.016)。2群間で、糖尿病罹病期間、空腹時血糖値については有意差がなかった。
また萎縮+群は、萎縮-群に比べて低血糖発作の回数が有意に多く(月に3回以上、25% 対 6.7%、P=0.029)、内臓肥満の割合も多かった(75.0% 対 48.3%、P=0.014)。
萎縮の進行と関連因子について重回帰分析を行った結果では、HbA1c値のみが有意な関連因子だった。
これらの結果を踏まえ吉田氏は、「本研究から、高血糖、低血糖のいずれもが認知症の進行と関連していることが示唆された。認知症の予防の意味からも、適切な血糖値を維持することが極めて重要であると言えるだろう」とまとめた。
2013年09月27日 (金)
こんにちは。
東北楽天イーグルス、優勝おめでとうございます。
こうなったらクライマックスシリーズも、日本シリーズも勝って、日本一を目指してくださいね!
優勝記念で昨晩から始まった「楽天ブックス・ベスト9プレゼント」で、
ダイエットに最適!ラカントS&糖質制限レシピ本2冊セット
ラカントS 9000円相当
『糖質制限の「主食もどき」レシピ』
『糖質制限の健康おつまみ』
がセットで5名に当たるプレゼントをやっています。
どなたでも応募できますので、是非どうぞ。
http://books.rakuten.co.jp/event/campaign/rakuteneagles/present/
江部康二
東北楽天イーグルス、優勝おめでとうございます。
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『糖質制限の「主食もどき」レシピ』
『糖質制限の健康おつまみ』
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どなたでも応募できますので、是非どうぞ。
http://books.rakuten.co.jp/event/campaign/rakuteneagles/present/
江部康二
2013年09月26日 (木)
こんばんは。
「メディカル トリビューン」の本の広場 <書籍点描> という欄に
「医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する糖質制限食と湿潤療法のインパクト」
の書評が載りました。
メディカル トリビューン 2013年9月26日
本の広場
<書籍点描>
医療の巨大転換を加速する糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
221ページ
1575円
東洋経済新報社
「医学は異端が主流になる戦いの繰り返しで進歩してきた。」
糖質制限食や湿潤療法など、これまでの常識を覆す治療方を提唱してきた著者らが、非科学的な医学界に警鐘を鳴らし、新しい医学常識と良い医者の条件を語り尽くした対談。
医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社
アマゾンで購入できますので、是非ご一読を。
江部康二
「メディカル トリビューン」の本の広場 <書籍点描> という欄に
「医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する糖質制限食と湿潤療法のインパクト」
の書評が載りました。
メディカル トリビューン 2013年9月26日
本の広場
<書籍点描>
医療の巨大転換を加速する糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
221ページ
1575円
東洋経済新報社
「医学は異端が主流になる戦いの繰り返しで進歩してきた。」
糖質制限食や湿潤療法など、これまでの常識を覆す治療方を提唱してきた著者らが、非科学的な医学界に警鐘を鳴らし、新しい医学常識と良い医者の条件を語り尽くした対談。
医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社
アマゾンで購入できますので、是非ご一読を。
江部康二
2013年09月26日 (木)
こんにちは。
10月6日(日)に博多にて開催する、講演・座談会ですが、定員一杯100名の申込を頂きました(^O^)
参加申込してくださったブログ読者の皆さん、ありがとうございますm(__)m
わかりやすく楽しい会にしますので、どうぞ宜しくお願いします。
主催の日本糖質制限食医療推進協会事務局では、キャンセル待ちを受け付けているそうです。
以下、事務局からの案内です。
江部康二
**********************
10月6日(日)に博多にて、「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」をテー
マに講演・座談会をおこないます。
座談会では、「糖質セイゲニストin北九州」世話人の三島さん、同会のメンバー
でNHK「クローズアップ現代」にも出演された薮田さん、ホテル ニューオータニ
博多で糖質制限メニューを開発された
山口シェフにご登壇いただきます。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 博多講演会
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
■日時:2013年10月6日(日) 13:15~15:30頃 (受付・開場:12:50~ )
■場所:福岡交通センター 3・4ホール
福岡市博多区博多駅中央街2-1 博多バスターミナル9F
http://www.f-kc.jp/index.php?option=com_content&task=view&id=87&
Itemid=56
■内容:
・講演: 江部 康二 (一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 理事長)
・座談会:
三島 学氏 (「糖質セイゲニストin北九州」世話人/三島塾代表)
薮田 亜矢子氏 (「糖質セイゲニストin北九州」メンバー)
山口 雅美氏 (「ホテルニューオータニ博多」シェフ)
江部 康二
・質疑応答
■参加費:
・賛助会員 2,000円
・一般(非会員) 2,300円
■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなりま
す。
■お申し込み方法
・賛助会員の方
事務局までメールにてお申し込み下さい。
・賛助会員入会をご希望の方
1.入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://toushitsuseigen.or.jp/member.html
2.お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
http://toushitsuseigen.or.jp/contact.php
「お問い合せ内容」欄に「博多講演、受講希望」とご記入下さい。
・一般(非会員)で、講演会の受講のみご希望の方
こちらのフォームよりお申し込み下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/b3217b6a262638
■お申し込みの流れ
1.会員の方はメールにて、会員以外の方は各種フォームにてご連絡下さい。
2.事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3.入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4.当日、直接会場までお越し下さい。
■注意事項
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは10月1日(火)までにお願い致します。
それ以降の返金には対応致しかねますので予めご了承ください。
10月6日(日)に博多にて開催する、講演・座談会ですが、定員一杯100名の申込を頂きました(^O^)
参加申込してくださったブログ読者の皆さん、ありがとうございますm(__)m
わかりやすく楽しい会にしますので、どうぞ宜しくお願いします。
主催の日本糖質制限食医療推進協会事務局では、キャンセル待ちを受け付けているそうです。
以下、事務局からの案内です。
江部康二
**********************
10月6日(日)に博多にて、「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」をテー
マに講演・座談会をおこないます。
座談会では、「糖質セイゲニストin北九州」世話人の三島さん、同会のメンバー
でNHK「クローズアップ現代」にも出演された薮田さん、ホテル ニューオータニ
博多で糖質制限メニューを開発された
山口シェフにご登壇いただきます。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 博多講演会
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
■日時:2013年10月6日(日) 13:15~15:30頃 (受付・開場:12:50~ )
■場所:福岡交通センター 3・4ホール
福岡市博多区博多駅中央街2-1 博多バスターミナル9F
http://www.f-kc.jp/index.php?option=com_content&task=view&id=87&
Itemid=56
■内容:
・講演: 江部 康二 (一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 理事長)
・座談会:
三島 学氏 (「糖質セイゲニストin北九州」世話人/三島塾代表)
薮田 亜矢子氏 (「糖質セイゲニストin北九州」メンバー)
山口 雅美氏 (「ホテルニューオータニ博多」シェフ)
江部 康二
・質疑応答
■参加費:
・賛助会員 2,000円
・一般(非会員) 2,300円
■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなりま
す。
■お申し込み方法
・賛助会員の方
事務局までメールにてお申し込み下さい。
・賛助会員入会をご希望の方
1.入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://toushitsuseigen.or.jp/member.html
2.お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
http://toushitsuseigen.or.jp/contact.php
「お問い合せ内容」欄に「博多講演、受講希望」とご記入下さい。
・一般(非会員)で、講演会の受講のみご希望の方
こちらのフォームよりお申し込み下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/b3217b6a262638
■お申し込みの流れ
1.会員の方はメールにて、会員以外の方は各種フォームにてご連絡下さい。
2.事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
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■注意事項
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは10月1日(火)までにお願い致します。
それ以降の返金には対応致しかねますので予めご了承ください。
2013年09月25日 (水)
こんにちは。
スーパー糖質制限食でHbA1cは改善したけれど、早朝空腹時血糖値だけがなかなか下がらないとのコメントをよくいただきます。
例えば、
「寝る前午後11時の血糖値は100mg/dlと好調だったのに、その後何も食べずに寝て起きて、翌朝午前9時の血糖値は130mg/dlに上昇していた。」
といったことが糖尿人において時々見られます。
この眠前より翌朝の血糖値が上昇することを、糖尿人特有の「暁現象」と呼びます。
多くの場合、就寝後8~10時間で、血糖値が一番上昇します。
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。
グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。
一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。
しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となり、暁現象を生じるものと考えられます。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。
1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。
インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。
正常人はこのとき、インスリンを増産して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
暁現象の改善のために、
①スーパー糖質制限食で膵臓のβ細胞に休養を与える。
②筋トレで筋肉量を増やす。
③有酸素運動を継続して、筋肉細胞へのインスリンの効きを良くする。
内服薬を増やさずに①②③を根気よく続けるのもよい方法と思います。
また内服薬のDPP-4阻害剤(エクア、ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナなど)は、内服継続により膵臓のインスリン分泌能力が改善したという報告が最近ありました。
インスリン分泌能力が改善したら、早朝空腹時血糖値も改善する可能性があります。
なおDPP-4阻害剤にはグルカゴン分泌抑制作用もあり、これが空腹時血糖値低下に繋がります。
上記実践しても、早朝空腹時血糖値が改善しないときは、メトホルミン(ビグアナイド剤、メトグルコ、メルビンなど)内服で、肝臓の糖新生を抑制する選択肢もあります。
メトホルミンは米国糖尿病学会の勧告では、2型糖尿人において、第一選択剤と評価されています。
早朝空腹時血糖値が140mg/dlを超えると、いろいろリスクが出てきます。
日本糖尿病学会は、合併症予防のための目標値として
2013年6月1日から、早朝空腹時血糖値130mg/dl未満を推奨しています。
スーパー糖質セイゲニストとしては、目指すのは早朝空腹時血糖値110mg/dl未満の正常値ですね。
江部康二
スーパー糖質制限食でHbA1cは改善したけれど、早朝空腹時血糖値だけがなかなか下がらないとのコメントをよくいただきます。
例えば、
「寝る前午後11時の血糖値は100mg/dlと好調だったのに、その後何も食べずに寝て起きて、翌朝午前9時の血糖値は130mg/dlに上昇していた。」
といったことが糖尿人において時々見られます。
この眠前より翌朝の血糖値が上昇することを、糖尿人特有の「暁現象」と呼びます。
多くの場合、就寝後8~10時間で、血糖値が一番上昇します。
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。
グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。
一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。
しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となり、暁現象を生じるものと考えられます。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。
1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。
インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。
正常人はこのとき、インスリンを増産して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
暁現象の改善のために、
①スーパー糖質制限食で膵臓のβ細胞に休養を与える。
②筋トレで筋肉量を増やす。
③有酸素運動を継続して、筋肉細胞へのインスリンの効きを良くする。
内服薬を増やさずに①②③を根気よく続けるのもよい方法と思います。
また内服薬のDPP-4阻害剤(エクア、ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナなど)は、内服継続により膵臓のインスリン分泌能力が改善したという報告が最近ありました。
インスリン分泌能力が改善したら、早朝空腹時血糖値も改善する可能性があります。
なおDPP-4阻害剤にはグルカゴン分泌抑制作用もあり、これが空腹時血糖値低下に繋がります。
上記実践しても、早朝空腹時血糖値が改善しないときは、メトホルミン(ビグアナイド剤、メトグルコ、メルビンなど)内服で、肝臓の糖新生を抑制する選択肢もあります。
メトホルミンは米国糖尿病学会の勧告では、2型糖尿人において、第一選択剤と評価されています。
早朝空腹時血糖値が140mg/dlを超えると、いろいろリスクが出てきます。
日本糖尿病学会は、合併症予防のための目標値として
2013年6月1日から、早朝空腹時血糖値130mg/dl未満を推奨しています。
スーパー糖質セイゲニストとしては、目指すのは早朝空腹時血糖値110mg/dl未満の正常値ですね。
江部康二
2013年09月24日 (火)
こんにちは。
しー さんから、グリコヘモグロビン(HbA1c)とグリコアルブミン(GA)について、コメント・質問をいただきました。
ブドウ糖は様々なタンパク質と結合して、糖タンパクとなります。
糖タンパクには赤血球ヘモグロビンと結合したグリコヘモグロビン(HbA1c)、血清アルブミンと結合したグリコアルブミン(GA)などがあり、ともに血糖コントロールの指標となります。
HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで、GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時までの平均血糖値を反映します。
日本赤十字社は2009年3月15日から、献血協力者に対するサービスとして、肝機能検査やコレステロール値の検査に加えて、生化学検査の項目にグリコアルブミン値を追加しました。糖尿病チェックもしてくれるわけで、親切と言えば親切ですね。
HbA1Cは、過去2カ月間の血糖値の平均値と相関しますが、専用の検体が必要でコストが高くなります。
グリコアルブミン検査は、過去1カ月(とくに直近の2週間)の血糖値の平均と相関する検査値ですが、他の生化学検査と同じ一つの検体で済み、測定コストも安価です。
従って、献血時のサービスの糖尿病検査としては、HbA1cよりグリコアルブミン(GA)のほうが、適しているわけです。
<グリコアルブミン値>
15.6%未満:正常
15.6%以上16.5%未満:正常高値
16.5%以上18.3%未満:境界域
18.3%以上:糖尿病域
と判定されます。
<HbA1c値の目標値>
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療強化が困難な際の目標
HbA1cは長期の指標として糖尿病の血糖コントロール評価に用いられるのに対し、GAはやや短期の指標として治療開始時や経口糖尿病薬開始時、インスリン療法導入時など、早期の治療効果の確認に有用です。
しーさんの場合、HbA1cが5.5%、GAが12.6%といずれも正常なので問題ないと思います。
GAがHbA1cに比し低値なのは、最近の14日間くらいの血糖が正常でもかなり低めの状況だった可能性があります。
しかし、12.6%はあまりにも低いので何らかのエラーの可能性もあります。
なお、食後血糖値が250mg/dlで空腹時が50mg/dlといった場合は、それらの平均値を反映するHbA1cやGAがコントロール良好の範囲に入っていても、平均血糖変動幅増大と食後高血糖があるので、本当はコントロール不良です。
HbA1cやGAだけだとそれを見逃す可能性があるのです。
江部康二
【13/09/22 しー
GAとHbA1cの数値
江部先生にお聞きしたいことがありメールさせて頂きました。
先日健康診断でHbA1cが5.5、献血でGAが12.6でした。
GAの数値に比べHbA1cの値が高いように感じるのですが、GAの数値だけで糖尿の判断をしてもいいものでしょうか?
それとも、両方気にしないといけないのでしょうか?
また、例えばGAなどの数値が範囲内でも、血糖値も無視してはいけないものなのでしょうか?
ちなみに我が家は糖尿家系で私は現在40歳ですが、母と弟が10年以上前から糖尿病です。
ですので、江部先生のブログを知ってから、私も気を付けようと友達と外食をする以外は、糖質制限をしております。
週の半分はプリンなどの甘味を食べてしまうので、ゆるい糖質制限ですが…
血糖値はここ半年ほど測っておりません。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。】
しー さんから、グリコヘモグロビン(HbA1c)とグリコアルブミン(GA)について、コメント・質問をいただきました。
ブドウ糖は様々なタンパク質と結合して、糖タンパクとなります。
糖タンパクには赤血球ヘモグロビンと結合したグリコヘモグロビン(HbA1c)、血清アルブミンと結合したグリコアルブミン(GA)などがあり、ともに血糖コントロールの指標となります。
HbA1cは赤血球の寿命が120日であるため3ヵ月前から採血時まで、GAはアルブミンの半減期が17日であるため3週間前から採血時までの平均血糖値を反映します。
日本赤十字社は2009年3月15日から、献血協力者に対するサービスとして、肝機能検査やコレステロール値の検査に加えて、生化学検査の項目にグリコアルブミン値を追加しました。糖尿病チェックもしてくれるわけで、親切と言えば親切ですね。
HbA1Cは、過去2カ月間の血糖値の平均値と相関しますが、専用の検体が必要でコストが高くなります。
グリコアルブミン検査は、過去1カ月(とくに直近の2週間)の血糖値の平均と相関する検査値ですが、他の生化学検査と同じ一つの検体で済み、測定コストも安価です。
従って、献血時のサービスの糖尿病検査としては、HbA1cよりグリコアルブミン(GA)のほうが、適しているわけです。
<グリコアルブミン値>
15.6%未満:正常
15.6%以上16.5%未満:正常高値
16.5%以上18.3%未満:境界域
18.3%以上:糖尿病域
と判定されます。
<HbA1c値の目標値>
6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
7.0未満:合併症予防のための目標
8.0未満:治療強化が困難な際の目標
HbA1cは長期の指標として糖尿病の血糖コントロール評価に用いられるのに対し、GAはやや短期の指標として治療開始時や経口糖尿病薬開始時、インスリン療法導入時など、早期の治療効果の確認に有用です。
しーさんの場合、HbA1cが5.5%、GAが12.6%といずれも正常なので問題ないと思います。
GAがHbA1cに比し低値なのは、最近の14日間くらいの血糖が正常でもかなり低めの状況だった可能性があります。
しかし、12.6%はあまりにも低いので何らかのエラーの可能性もあります。
なお、食後血糖値が250mg/dlで空腹時が50mg/dlといった場合は、それらの平均値を反映するHbA1cやGAがコントロール良好の範囲に入っていても、平均血糖変動幅増大と食後高血糖があるので、本当はコントロール不良です。
HbA1cやGAだけだとそれを見逃す可能性があるのです。
江部康二
【13/09/22 しー
GAとHbA1cの数値
江部先生にお聞きしたいことがありメールさせて頂きました。
先日健康診断でHbA1cが5.5、献血でGAが12.6でした。
GAの数値に比べHbA1cの値が高いように感じるのですが、GAの数値だけで糖尿の判断をしてもいいものでしょうか?
それとも、両方気にしないといけないのでしょうか?
また、例えばGAなどの数値が範囲内でも、血糖値も無視してはいけないものなのでしょうか?
ちなみに我が家は糖尿家系で私は現在40歳ですが、母と弟が10年以上前から糖尿病です。
ですので、江部先生のブログを知ってから、私も気を付けようと友達と外食をする以外は、糖質制限をしております。
週の半分はプリンなどの甘味を食べてしまうので、ゆるい糖質制限ですが…
血糖値はここ半年ほど測っておりません。
お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。】
2013年09月23日 (月)
【13/09/22 BM
世界ふしぎ発見
初めまして。
糖質制限を実践しHbA1c(JDS)が10.3(12/12/4)から5.0(13/6/5)になり、その後は5%台をうろうろしております。
先生の糖質制限食のお陰です。ありがとうございます。
昨日放送の世界ふしぎ発見でイヌイットの伝統食(生肉中心)は高脂肪食なのに心筋梗塞などの現代病にかかる人が少ないと紹介されていました。
番組では極寒地に住む動物の脂肪は牛や豚のそれとは質が違うため健康に良いと結論付けていましたが、あれは単に糖質制限では?と思いました。
糖質制限食の認知がさらに広がることを願います。】
こんにちは。
BM さんから、「イヌイットの伝統食と心筋梗塞の少なさ」についてコメントいただきました。
ありがとうございます。
BM さん。
糖質制限食でHbA1cがNGSP値なら10.7%→5.4%
で、素晴らしい改善です。
良かったです。
イヌイットは、生肉と生魚が主食という完全無欠の糖質制限食を四千年以上続けてきた民族ですが、有名なダイアベルグ博士の研究によると、心筋梗塞や脳梗塞が極めて少なかったことが報告されています。
同時期、同じくらいの高脂肪食を食べていたデンマーク人においては、心筋梗塞や脳梗塞が多発していたので、その差が注目されました。
このときダイアベルグ先生は、イヌイットの血液中にはデンマーク人に比べてはるかに多くのEPAが多く含まれていて、それがイヌイットに心筋梗塞や脳梗塞が少ない理由であると結論しました。
そして極寒地に住む動物(アザラシ、北極イワナ、シロイルカなど)の脂肪には、EPAが沢山含まれているのです。
これはこれで重要な発見であり、EPAはのちに薬(エパデールなど)となり、保険薬として日本でも販売されています。
しかしながら、血中EPAが高値というだけで心筋梗塞や脳梗塞が予防できるなら、糖尿病の人も肥満の人も、何でも好き放題食べてエパデールさえ内服しておけば、それでOKということになりますが、さすがにそんな都合のいいことはありません。
真実は、BMさんがご指摘のように、スーパー糖質制限食により、常に血流・代謝が常にスムースであり、血糖変動もほとんどなく酸化ストレスもないことの方が、大きな要因であったと思われます。
EPA高値はそれも少しあるかくらいのおまけに過ぎないと思います。
1920年代から、毛皮商人により小麦が持ち込まれるようになり、徐々にバノックという無発酵パンがイヌイットの主食となります。
小麦を日常的に食べるようになってしばらくすると、心筋梗塞や脳梗塞も米国・カナダと同等かそれ以上の頻度となってしまいました。
江部康二
2013年09月21日 (土)
こんにちは。
非小細胞肺がんⅣ期の患者さんとケトン食、臨床研究についてのお知らせです。
対象は、非小細胞肺がんⅣ期の患者さんです。
化学療法や放射線治療を実施していてもOK、あるいは化学療法や放射線なしの未治療でもOKです。
非小細胞肺がんⅣ期の患者さんに、一定の治療効果を期待してケトン食(脂質75~80%)を食事療法として実践してみるという試みです。
具体的には、大阪大学大学院医学系研究科 漢方医学寄附講座 萩原圭祐先生、有光潤介先生の外来にて「非小細胞肺がんⅣ期」の患者さんとケトン食、臨床研究開始となりました。
私もアドバイザーとして研究に参加しています。
本ブログから、大阪大学大学院医学系研究科 漢方医学寄附講座を受診された非小細胞肺がんⅣ期の患者さんも、ケトン食の実践で腫瘍マーカーが改善して、私もほっと一息です。
ケトン食は、私の実践しているスーパー糖質制限食をさらに厳しくした食事療法です。
動物実験レベルでは、ケトン体高値にがん細胞抑制効果が確認されています。
ケトン食はもともとは、難治性小児てんかんの治療食で、1920代から欧米や日本で実施されています。
「コクラン ライブラリー 2010年版」「英国立医療技術評価機構・2011年版」に、小児てんかんの治療食として正式採用されました。
「アイオワ大学+NIH(米国国立衛生研究所)」で、同様のケトン食研究(非小細胞肺がんⅣ期)が、2011年8月から開始されています。
「非小細胞肺がんⅣ期」で、ケトン食による治療に興味がある患者さんがおられましたら
大阪大学大学院医学系研究科
漢方医学寄附講座
萩原圭祐先生、有光潤介先生
の大阪大学漢方外来に、予約して受診していただけば幸いです。
☆外来受診は完全予約性です。
☆阪大病院保健医療福祉ネットワーク部に主治医からご連絡頂くことが必要です。
☆阪大病院保健医療福祉ネットワーク部
http://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/institution/apply.html
TEL 06-6879-5080 FAX 06-6879-5081
受付時間 (月~金 9:00~16:00)以降のお申し込みの返信は、原則翌日(金曜日は翌週)となります。
☆診療情報提供書を必ずご持参ください。
☆「肺の小細胞がん」及び「肺がん以外のがん」は、対象となりません。
☆「非小細胞肺がんⅣ期」の患者さんだけが対象となります。
☆外来で研究内容の説明を聞いていただき、同意を得た上で治療開始となります。
また、途中で中止も可能です。現在、募集人数には余裕があります。
非小細胞肺がんⅣ期の患者さんとケトン食、臨床研究についてのお知らせです。
対象は、非小細胞肺がんⅣ期の患者さんです。
化学療法や放射線治療を実施していてもOK、あるいは化学療法や放射線なしの未治療でもOKです。
非小細胞肺がんⅣ期の患者さんに、一定の治療効果を期待してケトン食(脂質75~80%)を食事療法として実践してみるという試みです。
具体的には、大阪大学大学院医学系研究科 漢方医学寄附講座 萩原圭祐先生、有光潤介先生の外来にて「非小細胞肺がんⅣ期」の患者さんとケトン食、臨床研究開始となりました。
私もアドバイザーとして研究に参加しています。
本ブログから、大阪大学大学院医学系研究科 漢方医学寄附講座を受診された非小細胞肺がんⅣ期の患者さんも、ケトン食の実践で腫瘍マーカーが改善して、私もほっと一息です。
ケトン食は、私の実践しているスーパー糖質制限食をさらに厳しくした食事療法です。
動物実験レベルでは、ケトン体高値にがん細胞抑制効果が確認されています。
ケトン食はもともとは、難治性小児てんかんの治療食で、1920代から欧米や日本で実施されています。
「コクラン ライブラリー 2010年版」「英国立医療技術評価機構・2011年版」に、小児てんかんの治療食として正式採用されました。
「アイオワ大学+NIH(米国国立衛生研究所)」で、同様のケトン食研究(非小細胞肺がんⅣ期)が、2011年8月から開始されています。
「非小細胞肺がんⅣ期」で、ケトン食による治療に興味がある患者さんがおられましたら
大阪大学大学院医学系研究科
漢方医学寄附講座
萩原圭祐先生、有光潤介先生
の大阪大学漢方外来に、予約して受診していただけば幸いです。
☆外来受診は完全予約性です。
☆阪大病院保健医療福祉ネットワーク部に主治医からご連絡頂くことが必要です。
☆阪大病院保健医療福祉ネットワーク部
http://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/institution/apply.html
TEL 06-6879-5080 FAX 06-6879-5081
受付時間 (月~金 9:00~16:00)以降のお申し込みの返信は、原則翌日(金曜日は翌週)となります。
☆診療情報提供書を必ずご持参ください。
☆「肺の小細胞がん」及び「肺がん以外のがん」は、対象となりません。
☆「非小細胞肺がんⅣ期」の患者さんだけが対象となります。
☆外来で研究内容の説明を聞いていただき、同意を得た上で治療開始となります。
また、途中で中止も可能です。現在、募集人数には余裕があります。
2013年09月19日 (木)
おはようございます。
今日は、糖尿病治療の優先順位のお話です。
日本糖尿病学会
糖尿病治療ガイド2012-2013 血糖コントロール目標改訂版(抜粋)
http://www.jds.or.jp/uploads/fckeditor/uid000025_201303281330013eac374d.jpg
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013
3、治療の基本方針(ステップ)
インスリン非依存状態
1、食事療法と運動
性、年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、
摂取エネルギー量を決定する。有酸素運動を最大酸素摂取量の50%前後の強度で、
1回15~30分、一日2回行うことが好ましい。
2、薬物療法
食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。
3、薬物療法の内容
経口血糖降下薬や注射薬を少量からはじめ徐々に増量する。・・・・・1種類の経口血糖降下薬によって
良好な血糖コントロールが得られない場合は、作用機序の異なった薬を併用する。
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013に、上記治療方針(緑色)が記載してあります。
インスリン非依存状態というのは、内因性インスリン(自分自身で分泌するインスリン)が残っている2型糖尿病が対象という意味です。
1型糖尿病などで、内因性インスリンがゼロレベル(インスリン依存状態)の糖尿人は、このガイドラインの対象外です。
糖尿病治療ガイドには
糖尿病治療の優先順位の一番は、食事療法と運動療法と明記してあります。
まあ残念なのは、摂取エネルギー量にしか言及がなくて、
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
という、食事療法で最も肝腎な事実が無視されていることです。
この点、米国糖尿病学会では、患者用テキストブックにおいて、
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
ということを、きっちり教育します。
「食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。」
この優先順位の2番目の薬物療法開始という前に、食事療法である糖質制限食を何故考慮しないのか理解に苦しみます。
食事療法で改善するのなら、経口血糖降下薬も注射薬も必要ありません。
糖尿病以外のどんな病気においても、食事療法で改善するなら薬は要らないと思います。
食事療法と薬物療法の優先順位という話なら、医者や医療関係者でなくても、誰でも理解できると思います。
繰り返しますが、「食事療法・運動療法」→「薬物療法」なのです。
さて、食事療法と運動療法が効果がないときにやむを得ず、仕方ないので開始するのが、優先順位の2番目の「薬物療法」です。
その、薬物療法、すごい勢いで種類が増えてきました。
年々、創薬が相次いで、内服薬で7種類、注射薬で2種類の糖尿病薬が勢揃いです。
1)経口血糖降下剤(SU剤)
2)α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン)
3)ビグアナイド剤(メトホルミン、グリコラン、メルビンなど)
4)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体・アクトス)
5)速効型インスリン分泌促進剤(グルファスト、スターシス)
6)DPP-4阻害剤(ジャヌビア、ネシーナなど)
7)SGLT2阻害薬
A)インスリン注射
B)GLP-1注射薬(インクレチン関連薬)
糖尿病学会は、
「いろんな種類の糖尿病薬が開発され、治療効果が期待し易くなったが、それには専門的知識が必要・・・。」
といった見解ですが、なんだが本末転倒と思うのは私だけでしょうか?
つまり糖尿病学会推奨のエネルギー制限食(カロリ-制限食)が、本当に効果があるのなら、何故、9種類もの薬が必要なのでしょう?
次々と新薬が開発されて、とうとう9種類に達したということは、カロリー制限食と運動では、どうにもならなかったのでひたすら薬物の創薬が行われたということです。
端的に言えば、カロリー制限食が糖尿病治療に、あまり効果がないので、これだけ薬物に頼らざるを得ないということです。
さらに言えば、糖尿病から年間16000人の人工透析、3000人の失明、3000人の足切断に至るという厳しい現実の、責任はいったい誰にあるのでしょうか?
カロリー制限食を実践し、薬を飲んで注射もしても、これだけの合併症の犠牲者が多発していることは厳然たる事実です。
日本糖尿病学会は、この事実を真摯に受けとめて、しっかり自分の頭で真実を見つめ直す義務があると私は思います。
江部康二
今日は、糖尿病治療の優先順位のお話です。
日本糖尿病学会
糖尿病治療ガイド2012-2013 血糖コントロール目標改訂版(抜粋)
http://www.jds.or.jp/uploads/fckeditor/uid000025_201303281330013eac374d.jpg
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013
3、治療の基本方針(ステップ)
インスリン非依存状態
1、食事療法と運動
性、年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、
摂取エネルギー量を決定する。有酸素運動を最大酸素摂取量の50%前後の強度で、
1回15~30分、一日2回行うことが好ましい。
2、薬物療法
食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。
3、薬物療法の内容
経口血糖降下薬や注射薬を少量からはじめ徐々に増量する。・・・・・1種類の経口血糖降下薬によって
良好な血糖コントロールが得られない場合は、作用機序の異なった薬を併用する。
日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイド2012-2013に、上記治療方針(緑色)が記載してあります。
インスリン非依存状態というのは、内因性インスリン(自分自身で分泌するインスリン)が残っている2型糖尿病が対象という意味です。
1型糖尿病などで、内因性インスリンがゼロレベル(インスリン依存状態)の糖尿人は、このガイドラインの対象外です。
糖尿病治療ガイドには
糖尿病治療の優先順位の一番は、食事療法と運動療法と明記してあります。
まあ残念なのは、摂取エネルギー量にしか言及がなくて、
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
という、食事療法で最も肝腎な事実が無視されていることです。
この点、米国糖尿病学会では、患者用テキストブックにおいて、
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上げない」
ということを、きっちり教育します。
「食事療法、運動療法を2~3ヶ月続けても、なお目標の血糖コントロールを達成できない場合薬物療法を開始する。」
この優先順位の2番目の薬物療法開始という前に、食事療法である糖質制限食を何故考慮しないのか理解に苦しみます。
食事療法で改善するのなら、経口血糖降下薬も注射薬も必要ありません。
糖尿病以外のどんな病気においても、食事療法で改善するなら薬は要らないと思います。
食事療法と薬物療法の優先順位という話なら、医者や医療関係者でなくても、誰でも理解できると思います。
繰り返しますが、「食事療法・運動療法」→「薬物療法」なのです。
さて、食事療法と運動療法が効果がないときにやむを得ず、仕方ないので開始するのが、優先順位の2番目の「薬物療法」です。
その、薬物療法、すごい勢いで種類が増えてきました。
年々、創薬が相次いで、内服薬で7種類、注射薬で2種類の糖尿病薬が勢揃いです。
1)経口血糖降下剤(SU剤)
2)α-グルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ、ベイスン)
3)ビグアナイド剤(メトホルミン、グリコラン、メルビンなど)
4)インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体・アクトス)
5)速効型インスリン分泌促進剤(グルファスト、スターシス)
6)DPP-4阻害剤(ジャヌビア、ネシーナなど)
7)SGLT2阻害薬
A)インスリン注射
B)GLP-1注射薬(インクレチン関連薬)
糖尿病学会は、
「いろんな種類の糖尿病薬が開発され、治療効果が期待し易くなったが、それには専門的知識が必要・・・。」
といった見解ですが、なんだが本末転倒と思うのは私だけでしょうか?
つまり糖尿病学会推奨のエネルギー制限食(カロリ-制限食)が、本当に効果があるのなら、何故、9種類もの薬が必要なのでしょう?
次々と新薬が開発されて、とうとう9種類に達したということは、カロリー制限食と運動では、どうにもならなかったのでひたすら薬物の創薬が行われたということです。
端的に言えば、カロリー制限食が糖尿病治療に、あまり効果がないので、これだけ薬物に頼らざるを得ないということです。
さらに言えば、糖尿病から年間16000人の人工透析、3000人の失明、3000人の足切断に至るという厳しい現実の、責任はいったい誰にあるのでしょうか?
カロリー制限食を実践し、薬を飲んで注射もしても、これだけの合併症の犠牲者が多発していることは厳然たる事実です。
日本糖尿病学会は、この事実を真摯に受けとめて、しっかり自分の頭で真実を見つめ直す義務があると私は思います。
江部康二
2013年09月19日 (木)
糖質制限 お好み焼 リニューアル新発売のお知らせ
こんにちは
糖質制限ドットコムより、糖質制限 お好み焼 リニューアル新発売のお知らせです。

あらてつさんの糖質制限ドットコムでは、以前もお好み焼きを販売していましたが、製造メーカーさんの都合で生産できなくなって販売中止になったようです。
何を隠そう私江部康二は、大のお好み焼き好きでして、前作の糖質制限お好み焼きをよく食べていたのですが、生産中止になったと聞き、がっかりしていました(T_T)
あらてつさんに、何度もお好み焼きの再販はいつになるのか聞いたのですが、芳しい返事はもらえずじまい、涙と失意の日々を過ごしていたのです(T_T)
そんなある日、ハルディンさんに行ってみると、「江部先生、お好み焼きの試作ができたので召し上がられませんか」と宮本マスター。
この時、マスターの顔が天使に見えました(^O^)
さて、新しい糖質制限お好み焼き、食べてみて驚いたのは、通常のお好み焼きとなんら変わらないということです。
以前ものも、最初期に比べると改良されていたとはいえ、本物の食感にはかないませんでした。
ですが、今回の宮本マスター開発の糖質制限お好み焼きは、何も言われずに出されると分からない程の完成度です。
通常のお好み焼きと遜色ない糖質制限お好み焼きに仕上げてくれた宮本マスターに拍手を送りたいと思います\(^o^)/
もちろん、私自身での血糖測定検査も行っております。
5月16日
午後6時 血糖値:94mg
ハルディンの新お好み焼きを丸ごと1枚
午後7時 血糖値:118mg
5月29日
午後7:50 空腹時血糖値:108mg
お好み焼き1枚 摂取
午後8:50 血糖値130mg
日を変えて二回計測しました。
24mgと22mgの上昇ですから、糖質含有量からの計算値よりも若干低めの上昇ですね。
合格です(^O^)
前作より美味しくなって、価格も少し安くなって720円。
宮本マスター、いい仕事してくださいました(^^)
糖質制限ドットコムで販売中です。
ブログ読者の糖質セイゲニストの皆さん、是非どうぞ。
糖質制限 お好み焼
http://www.toushitsuseigen.com/shop/kon_okonomiyaki.html
江部康二
こんにちは
糖質制限ドットコムより、糖質制限 お好み焼 リニューアル新発売のお知らせです。

あらてつさんの糖質制限ドットコムでは、以前もお好み焼きを販売していましたが、製造メーカーさんの都合で生産できなくなって販売中止になったようです。
何を隠そう私江部康二は、大のお好み焼き好きでして、前作の糖質制限お好み焼きをよく食べていたのですが、生産中止になったと聞き、がっかりしていました(T_T)
あらてつさんに、何度もお好み焼きの再販はいつになるのか聞いたのですが、芳しい返事はもらえずじまい、涙と失意の日々を過ごしていたのです(T_T)
そんなある日、ハルディンさんに行ってみると、「江部先生、お好み焼きの試作ができたので召し上がられませんか」と宮本マスター。
この時、マスターの顔が天使に見えました(^O^)
さて、新しい糖質制限お好み焼き、食べてみて驚いたのは、通常のお好み焼きとなんら変わらないということです。
以前ものも、最初期に比べると改良されていたとはいえ、本物の食感にはかないませんでした。
ですが、今回の宮本マスター開発の糖質制限お好み焼きは、何も言われずに出されると分からない程の完成度です。
通常のお好み焼きと遜色ない糖質制限お好み焼きに仕上げてくれた宮本マスターに拍手を送りたいと思います\(^o^)/
もちろん、私自身での血糖測定検査も行っております。
5月16日
午後6時 血糖値:94mg
ハルディンの新お好み焼きを丸ごと1枚
午後7時 血糖値:118mg
5月29日
午後7:50 空腹時血糖値:108mg
お好み焼き1枚 摂取
午後8:50 血糖値130mg
日を変えて二回計測しました。
24mgと22mgの上昇ですから、糖質含有量からの計算値よりも若干低めの上昇ですね。
合格です(^O^)
前作より美味しくなって、価格も少し安くなって720円。
宮本マスター、いい仕事してくださいました(^^)
糖質制限ドットコムで販売中です。
ブログ読者の糖質セイゲニストの皆さん、是非どうぞ。
糖質制限 お好み焼
http://www.toushitsuseigen.com/shop/kon_okonomiyaki.html
江部康二
2013年09月18日 (水)
こんにちは
『医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する』
糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
東洋経済新報社
昨日の夕刊フジに、とても好意的な書評が載りました。ヾ(^▽^)
夕刊フジさん、ありがとう。 m(_ _)m
2013年9月6日より電子版が販売開始となっています。
以下の東洋経済新報社サイトの電子書籍配信先からお求めいただけます。
http://www.toyokeizai.net/spc/editorial/category/e-books-bk/
kindle版も以下のようにご購入いただけます。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00EY3CIE0
医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社
アマゾンでも購入できますので、是非ご一読を。
江部康二
夕刊フジ 2013年9月18日(17日発行)
書評
「医療の巨大転換を加速する 糖質制限食と湿潤療法のインパクト」
江部康二、夏井睦著 東洋経済新報社
異端の治療法が主流になる
医学界の「薩長同盟」成立ともいいうべきコラボが実現した。
本書は、今注目される2つの革新的な治療法の第一人者による対談だ。
「糖質制限食」とは、糖尿病治療・予防、メタボ解消法として大人気で、
種類にもよるがアルコールもOK。
「湿潤療法」とは、傷を消毒せず乾かさない治療法で、
「痛くなく早くきれいに治る」と評価される。
だが、学会は旧来の治療法に固執し、この画期的な治療法を異端視しているという。
しかし、歴史的に、医学は異端が主流になる戦いの繰り返しで進歩してきた。
例えば、昔は不治の病だった盲腸は、「異端」とされていた手術での治療法が普及し、
ほぼ助かる病気になった。
本書の普及で、守旧派は打ち倒され、日本の医療は全身するだろう。
最新の医学常識や良い医者の条件を知りたい人におすすめだ。
『医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する』
糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
東洋経済新報社
昨日の夕刊フジに、とても好意的な書評が載りました。ヾ(^▽^)
夕刊フジさん、ありがとう。 m(_ _)m
2013年9月6日より電子版が販売開始となっています。
以下の東洋経済新報社サイトの電子書籍配信先からお求めいただけます。
http://www.toyokeizai.net/spc/editorial/category/e-books-bk/
kindle版も以下のようにご購入いただけます。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00EY3CIE0
医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社
アマゾンでも購入できますので、是非ご一読を。
江部康二
夕刊フジ 2013年9月18日(17日発行)
書評
「医療の巨大転換を加速する 糖質制限食と湿潤療法のインパクト」
江部康二、夏井睦著 東洋経済新報社
異端の治療法が主流になる
医学界の「薩長同盟」成立ともいいうべきコラボが実現した。
本書は、今注目される2つの革新的な治療法の第一人者による対談だ。
「糖質制限食」とは、糖尿病治療・予防、メタボ解消法として大人気で、
種類にもよるがアルコールもOK。
「湿潤療法」とは、傷を消毒せず乾かさない治療法で、
「痛くなく早くきれいに治る」と評価される。
だが、学会は旧来の治療法に固執し、この画期的な治療法を異端視しているという。
しかし、歴史的に、医学は異端が主流になる戦いの繰り返しで進歩してきた。
例えば、昔は不治の病だった盲腸は、「異端」とされていた手術での治療法が普及し、
ほぼ助かる病気になった。
本書の普及で、守旧派は打ち倒され、日本の医療は全身するだろう。
最新の医学常識や良い医者の条件を知りたい人におすすめだ。
2013年09月17日 (火)
おはようございます。
糖質制限食、博多講演会のご案内です。
2013年10月6日(日)に博多にて、
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
をテーマに講演・座談会をおこないます。
座談会では、「糖質セイゲニストin北九州」世話人の三島さん、同会のメンバーでNHK「クローズアップ現代」にも出演された薮田さん、ホテル ニューオータニ博多で糖質制限メニューを開発された山口シェフにご登壇いただきます。
今まで以上に内容の濃い講演会ですので、九州の方は勿論、中国地方の糖尿人・メタボ人の方々も、是非とも会場に足をお運びいただければ幸甚です。
以下、事務局からの詳細です。
江部康二
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 博多講演会
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
■日時:2013年10月6日(日) 13:15~15:30頃 (受付・開場:12:50~ )
■場所:福岡交通センター 3・4ホール
福岡市博多区博多駅中央街2-1 博多バスターミナル9F
http://www.f-kc.jp/index.php?option=com_content&task=view&id=87&Itemid=56
■内容:
・講演: 江部 康二 (一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 理事長)
・座談会:
三島 学氏 (「糖質セイゲニストin北九州」世話人/三島塾代表)
薮田 亜矢子氏 (「糖質セイゲニストin北九州」メンバー)
山口 雅美氏 (「ホテルニューオータニ博多」シェフ)
江部 康二
・質疑応答
■参加費:
・賛助会員 2,000円
・一般(非会員) 2,300円
■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
■お申し込み方法
・賛助会員の方
事務局までメールにてお申し込み下さい。
・賛助会員入会をご希望の方
1.入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://toushitsuseigen.or.jp/member.html
2.お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
http://toushitsuseigen.or.jp/contact.php
「お問い合せ内容」欄に「博多講演、受講希望」とご記入下さい。
・一般(非会員)で、講演会の受講のみご希望の方
こちらのフォームよりお申し込み下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/b3217b6a262638
■お申し込みの流れ
1.会員の方はメールにて、会員以外の方は各種フォームにてご連絡下さい。
2.事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3.入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4.当日、直接会場までお越し下さい。
■注意事項
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは10月1日(火)までにお願い致します。
それ以降の返金には対応致しかねますので予めご了承ください。
糖質制限食、博多講演会のご案内です。
2013年10月6日(日)に博多にて、
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
をテーマに講演・座談会をおこないます。
座談会では、「糖質セイゲニストin北九州」世話人の三島さん、同会のメンバーでNHK「クローズアップ現代」にも出演された薮田さん、ホテル ニューオータニ博多で糖質制限メニューを開発された山口シェフにご登壇いただきます。
今まで以上に内容の濃い講演会ですので、九州の方は勿論、中国地方の糖尿人・メタボ人の方々も、是非とも会場に足をお運びいただければ幸甚です。
以下、事務局からの詳細です。
江部康二
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 博多講演会
「糖質制限食の有効性と安全性―そして可能性」
■日時:2013年10月6日(日) 13:15~15:30頃 (受付・開場:12:50~ )
■場所:福岡交通センター 3・4ホール
福岡市博多区博多駅中央街2-1 博多バスターミナル9F
http://www.f-kc.jp/index.php?option=com_content&task=view&id=87&Itemid=56
■内容:
・講演: 江部 康二 (一般社団法人 日本糖質制限医療推進協会 理事長)
・座談会:
三島 学氏 (「糖質セイゲニストin北九州」世話人/三島塾代表)
薮田 亜矢子氏 (「糖質セイゲニストin北九州」メンバー)
山口 雅美氏 (「ホテルニューオータニ博多」シェフ)
江部 康二
・質疑応答
■参加費:
・賛助会員 2,000円
・一般(非会員) 2,300円
■お支払い方法:クレジットカード/銀行振込/郵便振替 ※事前決済のみとなります。
■お申し込み方法
・賛助会員の方
事務局までメールにてお申し込み下さい。
・賛助会員入会をご希望の方
1.入会案内および会員規約をお読み下さい。
http://toushitsuseigen.or.jp/member.html
2.お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
http://toushitsuseigen.or.jp/contact.php
「お問い合せ内容」欄に「博多講演、受講希望」とご記入下さい。
・一般(非会員)で、講演会の受講のみご希望の方
こちらのフォームよりお申し込み下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/b3217b6a262638
■お申し込みの流れ
1.会員の方はメールにて、会員以外の方は各種フォームにてご連絡下さい。
2.事務局よりお支払い方法についてメールでご連絡します。
3.入金確認後、予約確定のメールをお送りします。
4.当日、直接会場までお越し下さい。
■注意事項
・予約制です。当日参加はできません。
・キャンセルは10月1日(火)までにお願い致します。
それ以降の返金には対応致しかねますので予めご了承ください。
2013年09月16日 (月)
【13/09/14 畠山昌樹
糖尿病だけでいいんでしょうか?
いろいろと勉強させて頂きありがとうございます。漢方医です。
糖尿病以外にも、高血圧やメタボ・癌等いろいろありますが、 糖質制限食が、ベストな食生活とお考えなのでしょうか? (さらに、健康的なお勧めの食事療法はあるのでしょうか?)
現代人の生活では、塩分も一日11g以上摂取している方も多いと思います。
WHOも塩分摂取は5g以下を勧告しています。
脂質も、ω6がメインでは、大腸がん等の発生リスクが高くなりますから、工夫が必要だと思います。たんぱく質もアミノ酸のバランスが大切ですし、ビタミン・ミネラルの摂取等も大切です。
また、熊は夏から秋にかけて、20kgくらい太って、冬眠しますが、本来人間も実りの秋(夏~秋)には、糖質を(も)摂取して太ることが自然なのではないでしょうか? そういう観点から、年単位での長期の糖質制限食(あるいはそのリスク)にこだわる必要は、もともと無い様に思います。
カロリー制限食 << 糖質制限食
なのは、議論の余地は、ほとんどないと思いますが、さらにその上があるのか、あるいは癌治療のケトン食を今後食事療法としてどのような位置付けで考えておられるのか、
江部先生のお考えを教えて頂けると幸いです。
どうかよろしくお願いいたします。】
畠山昌樹 さん
コメントありがとうございます。
人類は700万年間の狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のあと、最近の1万年間は、農耕時代(穀物・糖質食時代)を過ごしています。
人類の消化管・生理・栄養・代謝などのシステムは、糖質制限食で生活しながら突然変異を繰り返し、700万年かけて獲得され完成されたものです。
従って人類の身体は糖質制限食に最も適合していると考えられます。
私は糖質制限食は人類本来の食事、人類の健康食と考えています。
農耕が始まって、単位面積あたりの養える人口は、約50~60倍に増えたとされています。
このように穀物は、定期的に栽培できて、安価で保存がきき、単純エネルギー源としては、優れた側面があることは間違いないです。
しかし、700万年かけて糖質制限食に適合した人類の身体にとって、糖質の摂取比率60%というのは、とんでもないバランスであり、大きな負担となっていることもまた間違いないでしょう。
今日、生活習慣病といわれる様々な病気が、糖質制限食で改善します。
ということは「生活習慣病≒糖質過剰病」という可能性が高いのです。
実際、
糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、高血圧、アトピー性皮膚炎、花粉症、尋常性乾癬、逆流性食道炎、尋常性痤瘡、片頭痛・・・
など、種々雑多な様々な生活習慣病が糖質制限食で改善することを経験しています。
一方、畠山さんの仰る通り、実りの秋などには、果物など人類も摂取していたと思います。
ただ当時の野生の果物は、今のものに比べるとかなり小さく糖度も低かったと思われます。
そしてご指摘通り、必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルは必要ですが、糖質制限食なら、これらはまず不足することはありません。
塩分も自分で糖質制限食を作る場合は、砂糖とか使わないので自然に薄味になり、使用量が減ると思います。
外食の場合はどうしても塩分が多いと思いますが、これは仕方ありませんね。
それからケトン食は治療食です。
重症の小児てんかんや癌が適応となりますが、治療食であり健康食ではありません。
ケトン食レベルの厳しい糖質制限食は、人類700万年の歴史においても経験していないと思います。
健康な人の場合は、日頃の運動量に応じて緩やかな糖質制限食でいいと思います。
こちらは健康食ですね。畠山さんの仰るように、少々の果物も許容範囲と思います。
糖尿人はスーパー糖質制限食でないと食後高血糖を生じます。
糖尿人のスーパー糖質制限食は、治療食であり健康食です。
このように、食事療法(糖質制限食、ケトン食・・・)も、対象により分けて実践するのが現実的と考えています。
江部康二
糖尿病だけでいいんでしょうか?
いろいろと勉強させて頂きありがとうございます。漢方医です。
糖尿病以外にも、高血圧やメタボ・癌等いろいろありますが、 糖質制限食が、ベストな食生活とお考えなのでしょうか? (さらに、健康的なお勧めの食事療法はあるのでしょうか?)
現代人の生活では、塩分も一日11g以上摂取している方も多いと思います。
WHOも塩分摂取は5g以下を勧告しています。
脂質も、ω6がメインでは、大腸がん等の発生リスクが高くなりますから、工夫が必要だと思います。たんぱく質もアミノ酸のバランスが大切ですし、ビタミン・ミネラルの摂取等も大切です。
また、熊は夏から秋にかけて、20kgくらい太って、冬眠しますが、本来人間も実りの秋(夏~秋)には、糖質を(も)摂取して太ることが自然なのではないでしょうか? そういう観点から、年単位での長期の糖質制限食(あるいはそのリスク)にこだわる必要は、もともと無い様に思います。
カロリー制限食 << 糖質制限食
なのは、議論の余地は、ほとんどないと思いますが、さらにその上があるのか、あるいは癌治療のケトン食を今後食事療法としてどのような位置付けで考えておられるのか、
江部先生のお考えを教えて頂けると幸いです。
どうかよろしくお願いいたします。】
畠山昌樹 さん
コメントありがとうございます。
人類は700万年間の狩猟・採集時代(糖質制限食時代)のあと、最近の1万年間は、農耕時代(穀物・糖質食時代)を過ごしています。
人類の消化管・生理・栄養・代謝などのシステムは、糖質制限食で生活しながら突然変異を繰り返し、700万年かけて獲得され完成されたものです。
従って人類の身体は糖質制限食に最も適合していると考えられます。
私は糖質制限食は人類本来の食事、人類の健康食と考えています。
農耕が始まって、単位面積あたりの養える人口は、約50~60倍に増えたとされています。
このように穀物は、定期的に栽培できて、安価で保存がきき、単純エネルギー源としては、優れた側面があることは間違いないです。
しかし、700万年かけて糖質制限食に適合した人類の身体にとって、糖質の摂取比率60%というのは、とんでもないバランスであり、大きな負担となっていることもまた間違いないでしょう。
今日、生活習慣病といわれる様々な病気が、糖質制限食で改善します。
ということは「生活習慣病≒糖質過剰病」という可能性が高いのです。
実際、
糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、高血圧、アトピー性皮膚炎、花粉症、尋常性乾癬、逆流性食道炎、尋常性痤瘡、片頭痛・・・
など、種々雑多な様々な生活習慣病が糖質制限食で改善することを経験しています。
一方、畠山さんの仰る通り、実りの秋などには、果物など人類も摂取していたと思います。
ただ当時の野生の果物は、今のものに比べるとかなり小さく糖度も低かったと思われます。
そしてご指摘通り、必須脂肪酸、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルは必要ですが、糖質制限食なら、これらはまず不足することはありません。
塩分も自分で糖質制限食を作る場合は、砂糖とか使わないので自然に薄味になり、使用量が減ると思います。
外食の場合はどうしても塩分が多いと思いますが、これは仕方ありませんね。
それからケトン食は治療食です。
重症の小児てんかんや癌が適応となりますが、治療食であり健康食ではありません。
ケトン食レベルの厳しい糖質制限食は、人類700万年の歴史においても経験していないと思います。
健康な人の場合は、日頃の運動量に応じて緩やかな糖質制限食でいいと思います。
こちらは健康食ですね。畠山さんの仰るように、少々の果物も許容範囲と思います。
糖尿人はスーパー糖質制限食でないと食後高血糖を生じます。
糖尿人のスーパー糖質制限食は、治療食であり健康食です。
このように、食事療法(糖質制限食、ケトン食・・・)も、対象により分けて実践するのが現実的と考えています。
江部康二
2013年09月15日 (日)
【13/09/15 たま
グルコーススパイク
江部先生。
グルコーススパイクの危険性に対して、疑義を唱えている書籍があります。
今年出版されたばかりのようです。
岡本卓 著
「本当は怖い「糖質制限」」
祥伝社新書
上記本の60~62ページに、「グルコーススパイクに関する信頼できる、大規模な、前向きの無作為試験はありません。つまり、糖尿病研究に携わる世界の医師や研究者を納得させるスタディがないということです」と書かれていました。
上記の主張は本当なのでしょうか。
岡本氏は結論として、HbA1C7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがあるので、ほどほどの血糖コントロールが一番と主張しているようです。】
こんにちは。
たま さんから、食後高血糖について、コメント・質問を頂きました。
まず食後血糖値に関して信頼度の高い以下のガイドラインがあります。
国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/sites/default/files/postmeal%20glucose%20guidelines.pdf
2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/webdata/docs/Guideline_PMG_final.pdf
いずれのガイドラインにも、
「食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。」
ということが、欧米の無作為試験とメタ解析論文によるエビデンスに基づき、記載してあります。
日本においても「熊本スタディー」があります。
1987 年から 1997 年まで10 年間、熊本大学の代謝内科で実施された無作為試験です。
2型糖尿病110例の経過を観察したものです。
本試験において、血糖コントロール状態と網膜症・腎症の悪化率の関係を調べると、
空腹時血糖値 110mg/dl 未満
食後2時間血糖値 180mg/dl 未満
HbA1c 値 6.5%未満
では網膜症と腎症の発症、進展が認められませんでした。
つまり、食後2時間血糖値が180mg/dlを超えると、網膜症と腎症の発症、進展リスクがあるということです。
次に
「HbA1c7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがある。」
というのは、ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告によるものと思います。
ACCORDは、米国とカナダの77施設の10251例による大規模臨床試験です。
2008年2月、厳格血糖管理群における総死亡率および心血管死亡率が、通常血糖管理群を有意に上回ることが確認され、同試験は5年間の期間満了を待たずに平均追跡期間3.4年で中止となりました。
中止時の平均HbA1cは、厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。
さらに
「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」
という衝撃的な後ろ向きコホート研究報告が、英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に、英Cardiff大学のCraig J Currie氏により発表されました。
いずれの研究も、
普通に糖質を摂取しながら厳格に薬物療法を行う
と、HbA1cが改善しても、かえって総死亡率が上昇するというエビデンスとなります。
なぜ、このようなパラドックスが生じたのかが、ACCORDで検討されて、厳格治療群で低血糖がよく起こったのが一番の元凶で、インスリンで肥満したことなども関与という結論でした。
低血糖がよく起こったということは、平均血糖変動幅も増大して、酸化ストレスも亢進して、死亡リスクが上昇したと考えられます。
こうなると、普通に糖質を食べて薬物療法をしている糖尿人は、HbA1c7.5%くらいのほうが、合併症はいろいろでてくるかもしれないけれど、総死亡率はHbA1c6.4%より低いということになります。
しかしながら、上記はあくまでも糖質を普通に摂取している糖尿人のお話です。
糖質制限食なら、低血糖も平均血糖変動幅増大も食後高血糖も生じないので、
HbA1cは6.0%未満とかコントロール優秀なほど、合併症も生じないし、総死亡率のリスクもおおいに減ると考えられ、パラドックスはありません。
☆☆☆
2011年07月21日 (木)の本ブログ記事
「ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告、HbA1cの目標値は?」
2011年07月20日 (水)の本ブログ記事
「ACCORD後の血糖管理・推奨HbA1cは? 2011年米国糖尿病学会」
2011年07月18日 (月)の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」
もご参照いただけば幸いです。
江部康二
グルコーススパイク
江部先生。
グルコーススパイクの危険性に対して、疑義を唱えている書籍があります。
今年出版されたばかりのようです。
岡本卓 著
「本当は怖い「糖質制限」」
祥伝社新書
上記本の60~62ページに、「グルコーススパイクに関する信頼できる、大規模な、前向きの無作為試験はありません。つまり、糖尿病研究に携わる世界の医師や研究者を納得させるスタディがないということです」と書かれていました。
上記の主張は本当なのでしょうか。
岡本氏は結論として、HbA1C7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがあるので、ほどほどの血糖コントロールが一番と主張しているようです。】
こんにちは。
たま さんから、食後高血糖について、コメント・質問を頂きました。
まず食後血糖値に関して信頼度の高い以下のガイドラインがあります。
国際糖尿病連合・2011年発表 「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/sites/default/files/postmeal%20glucose%20guidelines.pdf
2007年の国際糖尿病連合「食後血糖値の管理に関するガイドライン」
http://www.idf.org/webdata/docs/Guideline_PMG_final.pdf
いずれのガイドラインにも、
「食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。」
ということが、欧米の無作為試験とメタ解析論文によるエビデンスに基づき、記載してあります。
日本においても「熊本スタディー」があります。
1987 年から 1997 年まで10 年間、熊本大学の代謝内科で実施された無作為試験です。
2型糖尿病110例の経過を観察したものです。
本試験において、血糖コントロール状態と網膜症・腎症の悪化率の関係を調べると、
空腹時血糖値 110mg/dl 未満
食後2時間血糖値 180mg/dl 未満
HbA1c 値 6.5%未満
では網膜症と腎症の発症、進展が認められませんでした。
つまり、食後2時間血糖値が180mg/dlを超えると、網膜症と腎症の発症、進展リスクがあるということです。
次に
「HbA1c7.5%がもっとも長生きであるエビデンスがある。」
というのは、ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告によるものと思います。
ACCORDは、米国とカナダの77施設の10251例による大規模臨床試験です。
2008年2月、厳格血糖管理群における総死亡率および心血管死亡率が、通常血糖管理群を有意に上回ることが確認され、同試験は5年間の期間満了を待たずに平均追跡期間3.4年で中止となりました。
中止時の平均HbA1cは、厳格血糖管理群6.4%、通常血糖管理群7.5%でした。
さらに
「2型糖尿病患者の死亡率はHbA1c7.5%前後が最も低い」
という衝撃的な後ろ向きコホート研究報告が、英国の医学雑誌Lancet誌2010年2月6日号に、英Cardiff大学のCraig J Currie氏により発表されました。
いずれの研究も、
普通に糖質を摂取しながら厳格に薬物療法を行う
と、HbA1cが改善しても、かえって総死亡率が上昇するというエビデンスとなります。
なぜ、このようなパラドックスが生じたのかが、ACCORDで検討されて、厳格治療群で低血糖がよく起こったのが一番の元凶で、インスリンで肥満したことなども関与という結論でした。
低血糖がよく起こったということは、平均血糖変動幅も増大して、酸化ストレスも亢進して、死亡リスクが上昇したと考えられます。
こうなると、普通に糖質を食べて薬物療法をしている糖尿人は、HbA1c7.5%くらいのほうが、合併症はいろいろでてくるかもしれないけれど、総死亡率はHbA1c6.4%より低いということになります。
しかしながら、上記はあくまでも糖質を普通に摂取している糖尿人のお話です。
糖質制限食なら、低血糖も平均血糖変動幅増大も食後高血糖も生じないので、
HbA1cは6.0%未満とかコントロール優秀なほど、合併症も生じないし、総死亡率のリスクもおおいに減ると考えられ、パラドックスはありません。
☆☆☆
2011年07月21日 (木)の本ブログ記事
「ACCORDとLancet誌2010年2月6日号の報告、HbA1cの目標値は?」
2011年07月20日 (水)の本ブログ記事
「ACCORD後の血糖管理・推奨HbA1cは? 2011年米国糖尿病学会」
2011年07月18日 (月)の本ブログ記事
「ACCORD試験の死亡リスクと低血糖とSMBGサブ解析2011」
もご参照いただけば幸いです。
江部康二
2013年09月14日 (土)
【糖質制限食とは】
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。
従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。
タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。
そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
日本糖尿病学会「食品交換表」の
男性1400~1800kcal
女性1200~1600kcal
ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、国立健康・栄養研究所の「日本人の食事摂取基準」(2010年)への解説に示す推定エネルギー必要量の範囲、すなわち18才以上の成人で身体活動レベルが普通なら
男性:2200~2650キロカロリー
女性:1700~1950キロカロリー
身体活動レベルが低い人は
男性:1850~2250キロカロリー
女性:1450~1700キロカロリー
くらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。
内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。
血糖値が正常範囲であるていど下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖をつくるからです。これを糖新生といいます。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症では、脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
<江部康二著 参考図書>
理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年 宮本輝先生との対談本
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド」 (別冊宝島)2012年
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病はよくなる!糖質制限食のすすめ」(文春文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」(文春文庫)2012年
「女性のための糖質制限ダイエットハンドブック」2013年(洋泉社)
「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」2013年(東洋経済新報社)
「医療の巨大転換を加速する」糖質制限食と湿潤療法のインパクト
2013年(東洋経済新報社) 夏井睦先生との対談本
レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん2009年(アスペクト)
dancyuプレジデントムック 「満腹ダイエット 」 2009年(プレジデント社)
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」2010年(東洋経済新報社)
「やせる食べ方レシピ集」 2010年(東洋経済新報社)
「糖質オフダイエット 」2011年(レタスクラブ、角川マーケティング)
「誰もがストレスなくやせられる!糖質制限ダイエット」 2011年(講談社)
「主食を抜けば糖尿病はよくなる」レシピ集2011年(東洋経済新報社)
高雄病院の「糖質制限」給食2012年(講談社)
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集2012年(ナツメ社)
糖質制限の「主食もどき」レシピ2013年(東洋経済新報社)
高雄病院Dr江部が食べている「糖質制限」ダイエット2013年(講談社)
糖質オフのダイエット弁当2013年(家の光協会)
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA刊行)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。
従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。
タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
また一日における、食前・食後・空腹時など血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。
そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
日本糖尿病学会「食品交換表」の
男性1400~1800kcal
女性1200~1600kcal
ほど厳しいカロリー制限は必要ありませんが、国立健康・栄養研究所の「日本人の食事摂取基準」(2010年)への解説に示す推定エネルギー必要量の範囲、すなわち18才以上の成人で身体活動レベルが普通なら
男性:2200~2650キロカロリー
女性:1700~1950キロカロリー
身体活動レベルが低い人は
男性:1850~2250キロカロリー
女性:1450~1700キロカロリー
くらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。
内服薬やインスリン注射なしの糖尿人が糖質制限食を実践すると食後高血糖は改善しますが、低血糖にはなりません。
血糖値が正常範囲であるていど下がると、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロール(脂肪の分解物)などから、ブドウ糖をつくるからです。これを糖新生といいます。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合、そして長鎖脂肪酸代謝異常症は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症では、脂肪酸が上手く利用できないので、適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
<江部康二著 参考図書>
理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!糖質制限食のすすめ」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年 宮本輝先生との対談本
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド」 (別冊宝島)2012年
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病はよくなる!糖質制限食のすすめ」(文春文庫)2012年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」(文春文庫)2012年
「女性のための糖質制限ダイエットハンドブック」2013年(洋泉社)
「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」2013年(東洋経済新報社)
「医療の巨大転換を加速する」糖質制限食と湿潤療法のインパクト
2013年(東洋経済新報社) 夏井睦先生との対談本
レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん2009年(アスペクト)
dancyuプレジデントムック 「満腹ダイエット 」 2009年(プレジデント社)
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」2010年(東洋経済新報社)
「やせる食べ方レシピ集」 2010年(東洋経済新報社)
「糖質オフダイエット 」2011年(レタスクラブ、角川マーケティング)
「誰もがストレスなくやせられる!糖質制限ダイエット」 2011年(講談社)
「主食を抜けば糖尿病はよくなる」レシピ集2011年(東洋経済新報社)
高雄病院の「糖質制限」給食2012年(講談社)
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集2012年(ナツメ社)
糖質制限の「主食もどき」レシピ2013年(東洋経済新報社)
高雄病院Dr江部が食べている「糖質制限」ダイエット2013年(講談社)
糖質オフのダイエット弁当2013年(家の光協会)
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
2013年09月13日 (金)
こんばんは。
精神科医師A さんから久山町研究関連論文をコメント頂きました。
精神科医師A さん、情報をありがとうございます。
【精神科医師A
久山研究の論文
中村学園大学短期大学部研究紀要39, 255-262, 2007-3-15
久山町住民の栄養素等摂取量,食品群別摂取量の40年間の変化:久山町における栄養疫学研究
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006405565
P258、表3に注目してください
友納美恵子 城田知子 内田和宏 清原裕】
上記論文の表3のデータ(久山町栄養素摂取比率の変遷)
と
久山町の糖尿病罹患率の変遷(*)のデータを、並べてみました。
久山町栄養素摂取比率の変遷と糖尿病罹患率の変遷
平成6年(1994) 平成16年(2004)
タンパク質摂取比率 16.3 14.9%
脂質摂取比率 26.2 24.5%
炭水化物摂取比率 54.2 57.2%
1988年 2002年
久山町男性糖尿病 15.0 23.6%
久山町男性耐糖能異常 42.2 59.9%
久山町でも、全国と同様に、
脂質摂取比率が減って炭水化物摂取比率が増えて、
糖尿病が増加しています。
従来の定説「食生活が欧米化して、脂質が増えて炭水化物が減って糖尿病が増えた」
というのは、日本全国においても久山町においても、間違いですね。
(*)清原裕,危険因子としての糖尿病
分子脳血管病 vol.6 no.1 2007 19-24
(清原裕教授 九州大学大学院医学研究院環境医学)
江部康二
精神科医師A さんから久山町研究関連論文をコメント頂きました。
精神科医師A さん、情報をありがとうございます。
【精神科医師A
久山研究の論文
中村学園大学短期大学部研究紀要39, 255-262, 2007-3-15
久山町住民の栄養素等摂取量,食品群別摂取量の40年間の変化:久山町における栄養疫学研究
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006405565
P258、表3に注目してください
友納美恵子 城田知子 内田和宏 清原裕】
上記論文の表3のデータ(久山町栄養素摂取比率の変遷)
と
久山町の糖尿病罹患率の変遷(*)のデータを、並べてみました。
久山町栄養素摂取比率の変遷と糖尿病罹患率の変遷
平成6年(1994) 平成16年(2004)
タンパク質摂取比率 16.3 14.9%
脂質摂取比率 26.2 24.5%
炭水化物摂取比率 54.2 57.2%
1988年 2002年
久山町男性糖尿病 15.0 23.6%
久山町男性耐糖能異常 42.2 59.9%
久山町でも、全国と同様に、
脂質摂取比率が減って炭水化物摂取比率が増えて、
糖尿病が増加しています。
従来の定説「食生活が欧米化して、脂質が増えて炭水化物が減って糖尿病が増えた」
というのは、日本全国においても久山町においても、間違いですね。
(*)清原裕,危険因子としての糖尿病
分子脳血管病 vol.6 no.1 2007 19-24
(清原裕教授 九州大学大学院医学研究院環境医学)
江部康二
2013年09月12日 (木)
こんにちは。
「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」江部康二著
東洋経済新報社
2013年8月9日から、発売中です。
今回の本、¥ 3,465と、やや高いです。 m(_ _)m
医家向けに書いた初めての本です。一般の人には少し堅苦しいと思います。医師・医療関係者・専門的な知識を得たい人のための本です。
エビデンスレベルの高い研究論文から、従来の糖尿病治療の限界を証明し、糖質制限食の有効性や安全性を実証しました。
論文も各章で整理して、読者が調べやすいように配慮してあります。
繰り返される非科学的な糖質制限食批判へも徹底反論しています。
引用文献が豊富ですので、糖質制限食批判に対して読者が反論するときには、かなりお役に立つと思います。
実際、複数の医師から
「よくまとまっている。整理されていて使いやすい。辞書がわりにも使える。糖質制限食批判への反論に便利・・・」
など、お褒めの言葉をいただきました。(^^)
食事指導・投薬方針など、高雄病院で行われている治療の実際も公開し、これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策の具体的な指針を示しました。
平均血糖変動幅増大と食後高血糖の酸化ストレスリスクなども詳しく考察しています。
内容紹介
【主要目次】
第1章 糖質制限食に関するエビデンス
第2章 従来の糖尿病治療の限界を証明する研究
第3章 糖質制限食への批判に答える研究
第4章 生理学的な事実
第5章 生理学から見る糖質制限食の安全性
第6章 栄養学的な事実
第7章 糖質制限食の実際
第8章 糖質制限食の可能性
◆前帯コピー
医師をはじめ医療関者、専門的な知識を得たい人--必読!
もう、知らないではすまされない!
エビデンスレベルの高い最新研究から、従来の糖尿病治療の限界を証明し、糖質制限食の有効性や安全性を実証。
繰り返される非科学的な糖質制限食批判へも徹底反論。
食事指導・投薬方針など、高雄病院で行われている治療の実際も公開し、これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策の具体的な指針を示す。
◆後帯コピー
これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策のバイブル
三大栄養素の生理学的な事実から考えて、血糖コントロールの上で、従来の高糖質の治療食よりも糖質制限食のほうが有利となります。
さらに、体重減少、体内の脂質状況の改善についても効果があることは、複数の非常にエビデンスレベルの高い研究により証明されています。
近年、大きな注目を集めている、食後高血糖の防止、血糖変動幅の縮小、低血糖の予防に関しても、糖質制限食は抜群の効果があり、ますます評価が高まっています。
事実、欧米では、数々のエビデンスがあり、既に糖質制限食の有効性と安全性については認められていて、公式な治療食の選択肢の一つとなっています。
これからの糖尿病治療において、日本でも、糖質制限食は重要な選択肢となるでしょう。
以下は、「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」の「はじめ」にです。
糖質制限食とは
アメリカ糖尿病学会(ADA)によれば、食べ物が摂取され消化・吸収された後、糖質は100%が血糖に変わりますが、たんぱく質と脂質は血糖に変わりません。また、糖質は摂取直後から急峻に血糖値を上昇させ、2時間以内にほとんど吸収されます。これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的な特質です。
食事で糖質を摂取したときだけは血糖値が急上昇することになり、インスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取してもインスリンの追加分泌はありませんし、たんぱく質を摂取したときにはごく少量の追加分泌があるだけです。
現在、糖尿病の治療において食後の急激な高血糖、すなわち「グルコーススパイク」が大きな問題として注目されています。食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症の危険因子として認識されるようになったからです。
そして、食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけです。
1gの糖質摂取により、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値は3mg/dl上昇するとされています。茶碗一杯分に当たる150g(252Kcal)の白米飯には55.3gの糖質が含まれており、これを摂取すれば166mg/dlの血糖上昇が起こることになります。
ところが、牛サーロインステーキを200g(約1000Kcal)食べたとしても、糖質含有量は1g未満であり、食後高血糖をほとんど生じません。
なお、1型糖尿病の場合、1gの糖質摂取で、体重64kgの人の血糖値を5mg/dl上昇させるとされています。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的な事実を基盤として、出来るだけ糖質の摂取を抑え、食後高血糖を防ぐというものです。米飯、麺類、パンなどの穀類や、イモ類など、糖質の多い食品を出来るだけ避ける食事となります。
なお、カロリー計算は原則的に不要ですが、摂取カロリーが無制限というわけではありません。
糖尿病学会の推奨する厳格なカロリー制限は必要ありませんが、身体活動レベルが低い場合は厚生労働省のいう標準的な範囲でのエネルギー摂取を行い、男性ならば1850~2250Kcal、女性ならば1450~1700Kcalを目安とします。
高雄病院で指導している糖質制限食の場合、一日の食事全てにおいて糖質を制限すると総カロリーにおける三大栄養素の比率は糖質12%、たんぱく質32%、脂質56%ほどになりますが、薬剤に頼ることなく速やかに血糖値改善が起こり、良好な血糖コントロールが可能です。
しかし、従来の糖尿病食の場合、糖質60%、たんぱく質20%、脂質20%という比率であり高糖質食となるため、一日の摂取カロリーを1200Kcalに抑えたとしても、食後高血糖を必ず生じます。白米飯と牛サーロインステーキの比較で明らかなように、高糖質食で食後高血糖を防ぐことは理論的に不可能です。
三大栄養素の生理学的な事実から考えて、血糖コントロールの上で従来の高糖質の治療食よりも糖質制限食のほうが有利となります。
さらに、体重減少、体内の脂質状況の改善についても効果があり、複数の非常にエビデンスレベルの高い研究により証明されています。
ここ数年で大きな注目を集めている低血糖の防止、血糖変動幅の縮小に関しても、糖質制限食は効果が高く、ますます治療効果への評価が高まっています。
これからの糖尿病治療において、糖質制限食は重要な選択肢となるでしょう。
本書は糖尿病および糖質制限食に関する主だった研究や知識を集めたものです。また、高雄病院で糖質制限食を10年余りにわたり指導してきた経験やデータもご紹介しております。医療関係者の皆様を初め、糖質制限食についてより詳しく知りたいと考えておられる方のご参考になるかと思っております。
なお、本書の内容は私のブログである「ドクター江部の糖尿病徒然日記」を中心に、これまでの講演会の内容やデータを加味する形で構成しています。ブログは5年以上を経過して内容が膨大になっておりますが、本書はそれを体系化しており、ブログをご覧いただく際にも便利かと思います。
糖質制限食を詳しく知っていただくためにも、またより有効に安全に実施していただくためにも、ぜひ活用していただきたいと願っております。
江部康二
「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」江部康二著
東洋経済新報社
2013年8月9日から、発売中です。
今回の本、¥ 3,465と、やや高いです。 m(_ _)m
医家向けに書いた初めての本です。一般の人には少し堅苦しいと思います。医師・医療関係者・専門的な知識を得たい人のための本です。
エビデンスレベルの高い研究論文から、従来の糖尿病治療の限界を証明し、糖質制限食の有効性や安全性を実証しました。
論文も各章で整理して、読者が調べやすいように配慮してあります。
繰り返される非科学的な糖質制限食批判へも徹底反論しています。
引用文献が豊富ですので、糖質制限食批判に対して読者が反論するときには、かなりお役に立つと思います。
実際、複数の医師から
「よくまとまっている。整理されていて使いやすい。辞書がわりにも使える。糖質制限食批判への反論に便利・・・」
など、お褒めの言葉をいただきました。(^^)
食事指導・投薬方針など、高雄病院で行われている治療の実際も公開し、これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策の具体的な指針を示しました。
平均血糖変動幅増大と食後高血糖の酸化ストレスリスクなども詳しく考察しています。
内容紹介
【主要目次】
第1章 糖質制限食に関するエビデンス
第2章 従来の糖尿病治療の限界を証明する研究
第3章 糖質制限食への批判に答える研究
第4章 生理学的な事実
第5章 生理学から見る糖質制限食の安全性
第6章 栄養学的な事実
第7章 糖質制限食の実際
第8章 糖質制限食の可能性
◆前帯コピー
医師をはじめ医療関者、専門的な知識を得たい人--必読!
もう、知らないではすまされない!
エビデンスレベルの高い最新研究から、従来の糖尿病治療の限界を証明し、糖質制限食の有効性や安全性を実証。
繰り返される非科学的な糖質制限食批判へも徹底反論。
食事指導・投薬方針など、高雄病院で行われている治療の実際も公開し、これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策の具体的な指針を示す。
◆後帯コピー
これからの糖尿病治療、メタボ・肥満対策のバイブル
三大栄養素の生理学的な事実から考えて、血糖コントロールの上で、従来の高糖質の治療食よりも糖質制限食のほうが有利となります。
さらに、体重減少、体内の脂質状況の改善についても効果があることは、複数の非常にエビデンスレベルの高い研究により証明されています。
近年、大きな注目を集めている、食後高血糖の防止、血糖変動幅の縮小、低血糖の予防に関しても、糖質制限食は抜群の効果があり、ますます評価が高まっています。
事実、欧米では、数々のエビデンスがあり、既に糖質制限食の有効性と安全性については認められていて、公式な治療食の選択肢の一つとなっています。
これからの糖尿病治療において、日本でも、糖質制限食は重要な選択肢となるでしょう。
以下は、「糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド」の「はじめ」にです。
糖質制限食とは
アメリカ糖尿病学会(ADA)によれば、食べ物が摂取され消化・吸収された後、糖質は100%が血糖に変わりますが、たんぱく質と脂質は血糖に変わりません。また、糖質は摂取直後から急峻に血糖値を上昇させ、2時間以内にほとんど吸収されます。これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的な特質です。
食事で糖質を摂取したときだけは血糖値が急上昇することになり、インスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取してもインスリンの追加分泌はありませんし、たんぱく質を摂取したときにはごく少量の追加分泌があるだけです。
現在、糖尿病の治療において食後の急激な高血糖、すなわち「グルコーススパイク」が大きな問題として注目されています。食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症の危険因子として認識されるようになったからです。
そして、食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけです。
1gの糖質摂取により、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値は3mg/dl上昇するとされています。茶碗一杯分に当たる150g(252Kcal)の白米飯には55.3gの糖質が含まれており、これを摂取すれば166mg/dlの血糖上昇が起こることになります。
ところが、牛サーロインステーキを200g(約1000Kcal)食べたとしても、糖質含有量は1g未満であり、食後高血糖をほとんど生じません。
なお、1型糖尿病の場合、1gの糖質摂取で、体重64kgの人の血糖値を5mg/dl上昇させるとされています。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的な事実を基盤として、出来るだけ糖質の摂取を抑え、食後高血糖を防ぐというものです。米飯、麺類、パンなどの穀類や、イモ類など、糖質の多い食品を出来るだけ避ける食事となります。
なお、カロリー計算は原則的に不要ですが、摂取カロリーが無制限というわけではありません。
糖尿病学会の推奨する厳格なカロリー制限は必要ありませんが、身体活動レベルが低い場合は厚生労働省のいう標準的な範囲でのエネルギー摂取を行い、男性ならば1850~2250Kcal、女性ならば1450~1700Kcalを目安とします。
高雄病院で指導している糖質制限食の場合、一日の食事全てにおいて糖質を制限すると総カロリーにおける三大栄養素の比率は糖質12%、たんぱく質32%、脂質56%ほどになりますが、薬剤に頼ることなく速やかに血糖値改善が起こり、良好な血糖コントロールが可能です。
しかし、従来の糖尿病食の場合、糖質60%、たんぱく質20%、脂質20%という比率であり高糖質食となるため、一日の摂取カロリーを1200Kcalに抑えたとしても、食後高血糖を必ず生じます。白米飯と牛サーロインステーキの比較で明らかなように、高糖質食で食後高血糖を防ぐことは理論的に不可能です。
三大栄養素の生理学的な事実から考えて、血糖コントロールの上で従来の高糖質の治療食よりも糖質制限食のほうが有利となります。
さらに、体重減少、体内の脂質状況の改善についても効果があり、複数の非常にエビデンスレベルの高い研究により証明されています。
ここ数年で大きな注目を集めている低血糖の防止、血糖変動幅の縮小に関しても、糖質制限食は効果が高く、ますます治療効果への評価が高まっています。
これからの糖尿病治療において、糖質制限食は重要な選択肢となるでしょう。
本書は糖尿病および糖質制限食に関する主だった研究や知識を集めたものです。また、高雄病院で糖質制限食を10年余りにわたり指導してきた経験やデータもご紹介しております。医療関係者の皆様を初め、糖質制限食についてより詳しく知りたいと考えておられる方のご参考になるかと思っております。
なお、本書の内容は私のブログである「ドクター江部の糖尿病徒然日記」を中心に、これまでの講演会の内容やデータを加味する形で構成しています。ブログは5年以上を経過して内容が膨大になっておりますが、本書はそれを体系化しており、ブログをご覧いただく際にも便利かと思います。
糖質制限食を詳しく知っていただくためにも、またより有効に安全に実施していただくためにも、ぜひ活用していただきたいと願っております。
江部康二
2013年09月11日 (水)
こんにちは。
高雄、嵯峨・・・
朝夕はめっきり涼しくなって、過ごしやすい今日この頃の京都です。
秋は春ほどほこりっぽくないし、とても好きな季節です。
まあ私の場合、実りの秋を楽しむのは、ごく少量にとどめますが・・・。(=_=;)
さて、糖質制限食OKのお医者さん、日本全国、北海道から沖縄までかなり増えてきました。
その中で、自分できっちり糖質制限食を実践されていて、ブログかホームページを作成しておられる医師を以下紹介したいと思います。
以下は、糖質制限食推進派医師のサイト・ブログです。
1)
夏井睦先生のサイト
「新しい創傷治療」
http://www.wound-treatment.jp/
2)
50代の男性医師カルピンチョ先生のブログ
「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/archives.html
3)
神経内科医たがしゅうさんのブログ
「たがしゅうブログ」
http://tagashuu.blog.fc2.com/
4)
医師tsuncoさんが管理するブログ
「目標・PinPinKorori。」
http://bbs11.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=ppkorori
1)2)3)は
基本がスーパー糖質制限食を実践しておられる医師のサイト・ブログです。
高雄病院のスーパー糖質制限食は1回の食事の糖質量20g以下です。
4)は、
釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)を推奨しておられる医師のブログです。
いずれのブログも、それぞれ違った特徴があり、覗いてみる価値は充分あると思いますよ。ヾ(^▽^)
江部康二
高雄、嵯峨・・・
朝夕はめっきり涼しくなって、過ごしやすい今日この頃の京都です。
秋は春ほどほこりっぽくないし、とても好きな季節です。
まあ私の場合、実りの秋を楽しむのは、ごく少量にとどめますが・・・。(=_=;)
さて、糖質制限食OKのお医者さん、日本全国、北海道から沖縄までかなり増えてきました。
その中で、自分できっちり糖質制限食を実践されていて、ブログかホームページを作成しておられる医師を以下紹介したいと思います。
以下は、糖質制限食推進派医師のサイト・ブログです。
1)
夏井睦先生のサイト
「新しい創傷治療」
http://www.wound-treatment.jp/
2)
50代の男性医師カルピンチョ先生のブログ
「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/archives.html
3)
神経内科医たがしゅうさんのブログ
「たがしゅうブログ」
http://tagashuu.blog.fc2.com/
4)
医師tsuncoさんが管理するブログ
「目標・PinPinKorori。」
http://bbs11.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=ppkorori
1)2)3)は
基本がスーパー糖質制限食を実践しておられる医師のサイト・ブログです。
高雄病院のスーパー糖質制限食は1回の食事の糖質量20g以下です。
4)は、
釜池豊秋先生の糖質ゼロ食(1日1食で、夕食、糖質は5g以下)を推奨しておられる医師のブログです。
いずれのブログも、それぞれ違った特徴があり、覗いてみる価値は充分あると思いますよ。ヾ(^▽^)
江部康二
2013年09月10日 (火)
糖質制限ドットコムより、糖質制限ピザ 新発売
こんばんは。
糖質制限ドットコムより、糖質制限ピザが新発売となりました。

このピザは、私の行きつけの糖質制限なスペイン料理屋ハルディンさんに、「糖質制限なピザを作って欲しい」とリクエストして開発してもらったものです(^_^)
何を隠そう私、けっこうピザが好きでして、糖質制限で美味しいピザが食べたいと常々思っていました。
そこで、ハルディン宮本マスターに頼んで作ってもらうことにしたのです。
一番最初の試作品は、1枚食べるとそこそこの血糖上昇があり、半分だけ食べて残りは持って帰って夜食になどとしてましたが、ハルディンの宮本マスター、どんどん糖質制限ピザのコツを掴んできたのか、最終試作品になると、ほとんど数値が上がらなくなりました(^O^)
このピザのレシピをもとに商品化したのが、今回の糖質制限ピザです。
どれくらい血糖値が上がらなかったかというと、
「あらてつさん
午後6:25分 空腹時血糖値:115mg
午後6:30 糖質制限ピザ 1個摂取
午後7:30 1時間後血糖値:118mg
午後8:30 2時間後血糖値:122mg
ゆっくり吸収されるので、2時間後がピークのようです。
江部康二」
計算値では、1枚あたりの糖質が10.2gなので、30.6mg上昇するはずですが、2時間値で7mgの上昇で収まっています。
なんでも、特性のコンニャクの粉がその秘密だそうです。
いやはや、宮本マスター良い仕事してくださいました(^O^)
私の大好きな糖質制限ピザ、ブログ読者の皆さんも是非お試しあれ。
糖質制限 PIZZA
http://www.toushitsuseigen.com/shop/set_pizza.html
江部康二
こんばんは。
糖質制限ドットコムより、糖質制限ピザが新発売となりました。

このピザは、私の行きつけの糖質制限なスペイン料理屋ハルディンさんに、「糖質制限なピザを作って欲しい」とリクエストして開発してもらったものです(^_^)
何を隠そう私、けっこうピザが好きでして、糖質制限で美味しいピザが食べたいと常々思っていました。
そこで、ハルディン宮本マスターに頼んで作ってもらうことにしたのです。
一番最初の試作品は、1枚食べるとそこそこの血糖上昇があり、半分だけ食べて残りは持って帰って夜食になどとしてましたが、ハルディンの宮本マスター、どんどん糖質制限ピザのコツを掴んできたのか、最終試作品になると、ほとんど数値が上がらなくなりました(^O^)
このピザのレシピをもとに商品化したのが、今回の糖質制限ピザです。
どれくらい血糖値が上がらなかったかというと、
「あらてつさん
午後6:25分 空腹時血糖値:115mg
午後6:30 糖質制限ピザ 1個摂取
午後7:30 1時間後血糖値:118mg
午後8:30 2時間後血糖値:122mg
ゆっくり吸収されるので、2時間後がピークのようです。
江部康二」
計算値では、1枚あたりの糖質が10.2gなので、30.6mg上昇するはずですが、2時間値で7mgの上昇で収まっています。
なんでも、特性のコンニャクの粉がその秘密だそうです。
いやはや、宮本マスター良い仕事してくださいました(^O^)
私の大好きな糖質制限ピザ、ブログ読者の皆さんも是非お試しあれ。
糖質制限 PIZZA
http://www.toushitsuseigen.com/shop/set_pizza.html
江部康二
2013年09月10日 (火)
こんにちは
昨日に続いて、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述への批判です。
Diabetes Strategy 2013年8月 号において、幣 憲一郎氏は
「国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与、・・・」
と述べておられます。
しかし、精神科医師Aさんのご指摘のように、平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果によれば、2000年から2010年にかけて、脂質摂取総量は、57.4g → 53.7g/日 と減少しており、幣 憲一郎氏は事実誤認です。
また同様に脂質摂取比率も2000年から2010年で、26.5% → 25.9% と減少しています。
すなわち真実は、
「脂質の摂取量、摂取比率ともに減少しているのに、肥満・糖尿病は増加した」
のが日本の現状なのです。
そして、糖質の摂取比率は、2000年から2010年にかけて、57.5% → 59.4% と増加しているのです。
要するに、脂質が減って糖質が増えて、糖尿病・肥満が増えたのです。
「近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している」
統計をしっかり検証すれば、まさに、精神科医師Aさんの仰る通りなのです。
このように初歩的な数字を、幣 憲一郎氏は誤解されたのか意図的なのかは不明ですが、いずれにせよ根幹を間違っておられます。
『また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている。
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、
「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」
との記載があったが、2010年版では削除された。』
こちらも精神科医師Aさんのご指摘どおりであり、厚生労働省食事摂取基準2010版は、2005年版に比べて、糖新生のこととか、インスリン抵抗性改善とか、低炭水化物・高脂肪食に対する一定の理解が認められますね。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(7)
[7]Diabetes Strategy 3(3)132-133, 2013年8月
『わが国における栄養素摂取量の現況と極端な糖質制限の考え方への疑問』
P132
国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ[1]、脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与しており、栄養学的にも大きな課題とされています。
また、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」[2]では、推定エネルギー必要量を基礎代謝量kca1/日×身体活動レベルとし、炭水化物摂取量はおおむねエネルギー比50~70%、炭水化物の最低必要量をおよそ100g/日と推計しており…
1) 厚生労働省: 6. 栄養素等摂取量。平成22年国民健康・栄養調査結果の概要、19-21, 2010
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版、第一出版、東京、2010
<批判>
1) 平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果(H24年5月)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h22-houkoku-10.pdf
174頁106表 栄養素等摂取量の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
脂質総量‐‐‐‐57.4g‐‐‐‐53.7g
穀類エネ比率‐‐41.4%‐‐‐42.5%
176頁108表 食品群別摂取エネルギー比率の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
穀類総量エネ比‐‐‐‐41.4%‐‐‐42.5%
動物性食品総量エネ比‐25.0%‐‐‐23.5%
このように、近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している
2) また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」との記載があったが、2010年版では削除された。】
昨日に続いて、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述への批判です。
Diabetes Strategy 2013年8月 号において、幣 憲一郎氏は
「国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与、・・・」
と述べておられます。
しかし、精神科医師Aさんのご指摘のように、平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果によれば、2000年から2010年にかけて、脂質摂取総量は、57.4g → 53.7g/日 と減少しており、幣 憲一郎氏は事実誤認です。
また同様に脂質摂取比率も2000年から2010年で、26.5% → 25.9% と減少しています。
すなわち真実は、
「脂質の摂取量、摂取比率ともに減少しているのに、肥満・糖尿病は増加した」
のが日本の現状なのです。
そして、糖質の摂取比率は、2000年から2010年にかけて、57.5% → 59.4% と増加しているのです。
要するに、脂質が減って糖質が増えて、糖尿病・肥満が増えたのです。
「近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している」
統計をしっかり検証すれば、まさに、精神科医師Aさんの仰る通りなのです。
このように初歩的な数字を、幣 憲一郎氏は誤解されたのか意図的なのかは不明ですが、いずれにせよ根幹を間違っておられます。
『また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている。
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、
「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」
との記載があったが、2010年版では削除された。』
こちらも精神科医師Aさんのご指摘どおりであり、厚生労働省食事摂取基準2010版は、2005年版に比べて、糖新生のこととか、インスリン抵抗性改善とか、低炭水化物・高脂肪食に対する一定の理解が認められますね。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(7)
[7]Diabetes Strategy 3(3)132-133, 2013年8月
『わが国における栄養素摂取量の現況と極端な糖質制限の考え方への疑問』
P132
国民健康・栄養調査(2010年)によれば、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加、炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされ[1]、脂質栄養の過剰摂取が日本人における肥満、そして糖尿病の増加に大きく関与しており、栄養学的にも大きな課題とされています。
また、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」[2]では、推定エネルギー必要量を基礎代謝量kca1/日×身体活動レベルとし、炭水化物摂取量はおおむねエネルギー比50~70%、炭水化物の最低必要量をおよそ100g/日と推計しており…
1) 厚生労働省: 6. 栄養素等摂取量。平成22年国民健康・栄養調査結果の概要、19-21, 2010
2) 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2010年版、第一出版、東京、2010
<批判>
1) 平成22年国民健康・栄養調査報告年次別結果(H24年5月)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h22-houkoku-10.pdf
174頁106表 栄養素等摂取量の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
脂質総量‐‐‐‐57.4g‐‐‐‐53.7g
穀類エネ比率‐‐41.4%‐‐‐42.5%
176頁108表 食品群別摂取エネルギー比率の年次推移
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐2000‐‐‐‐2010
穀類総量エネ比‐‐‐‐41.4%‐‐‐42.5%
動物性食品総量エネ比‐25.0%‐‐‐23.5%
このように、近年は脂質摂取量・動物性食品総量エネ比が減り、穀類エネ比率が上昇している。その結果、糖尿病が増加している
2) また食事摂取基準2010には、炭水化物の目標量50%以上70%未満を設定しているが、これには大きな根拠はないとしている。また糖新生がおこなわれるため、100gという数値は、真に必要な最低量ではないと明記している。脂肪の項には、高脂質/低炭水化物食はインスリン抵抗性を改善すると書かれている
食事摂取基準2005では炭水化物の目標量の項に、「わが国よりも炭水化物摂取比率が低い欧米諸国では、脂質摂取過剰による健康障害の問題から、炭水化物の摂取比率を増加させることによって脂質摂取比率を制限することの重要性が指摘されている」との記載があったが、2010年版では削除された。】
2013年09月09日 (月)
こんばんは。
精神科医師A さんから、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述に関して、多くの情報をコメント頂きました。
精神科医師Aさん、ありがとうございます。
精神科医師Aさん、ご指摘の如く
日本人の食事摂取基準(2010年版)に、
『炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等 通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである』
との記載があるなら、飢餓のときとか通常でないときは、例えばケトン体など他のエネルギー源を利用することを暗に示唆しています。
まあ、厚生労働省の食事摂取基準(2010年版)担当医師は
「赤血球はブドウ糖しか利用できないが、脳はケトン体を利用できる。」
ことはご存知なのでしょう。
一方、幣 憲一郎氏は、
『糖質は最も速やかに利用されるエネルギー源として最も重要とされる成分であり、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などは、グルコースのみをエネルギー源としているため・・・・』
と断定しておられるのは、明らかな間違いです。
脳も神経も腎尿細管も精巣もミトコンドリアを持っているので、ケトン体・脂肪酸をエネルギー源として利用できます。なお脳は血液脳関門のために、脂肪酸は利用できません。
また幣 憲一郎氏は、
『ADAの栄養勧告2008年によると、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない。」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行う上では必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。』
と述べておられますが、
『ADAは2008年以後、低炭水化物食と低脂肪食に関し、いずれも体重減少目的で1年間の有効性を認めている。炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量で、これより食事中の炭水化物が低くても脳への栄養供給は保たれる、と記載しだした。』
という、精神科医師Aさんのご指摘が正しく、幣 憲一郎氏は、完全に誤解しておられます。
幣 憲一郎氏、是非正確な知識を勉強して欲しいと思います。
糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド 2013年 (東洋経済新報社)
など読んでいただけば、嬉しい限りなのですが・・・。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(6)
【6】内分泌・糖尿病・代謝内科 35(4):367-373, 2012
『栄養サポートチーム』 幣 憲一郎
P370-371
現在、日本における摂取基準としては、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準[2010年版]」[1]があるが、あくまでも健常者を対象としているため、疾患特異性をどのように反映させるかは明確な基準がないのが現状であり、各種疾患ごとに作成されている「診療ガイドライン」に準拠すべきとされている。
P372
<糖質必要量の求め方>
糖質は最も速やかに利用されるエネルギー源として最も重要とされる成分であり、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などは、グルコースのみをエネルギー源としているため、1日100g以上の炭水化物(糖質)の摂取量を確保することが望ましいとされている。特に糖尿病患者であっても、糖尿病患者の場合American Diabetes Association (ADA)のNutrition Recommendations and Intervention for Diabete-2008[4]によると、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない。」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行う上では必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。
文献
1) 厚生労働省。日本人の食事摂取基準(2010年版)。日本人の食事摂取基準策定検討会報告書。2010。
4) American Diabetes Association; Nutrition recommendations and interventions for diabetes: a position statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care 2008; 31: S61.
【批判】
日本人の食事摂取基準(2010年版)は、2009年5月29日に公表された。109頁にはこのような記載がある。
『炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等 通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである』
言いかえれば、飢餓時にはこれと異なるわけだ
また、炭水化物の摂取量が1日100g未満となっても、糖新生が行われると明記されている。
2008年以後ADAは、「炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量」だと記載しだした。現実にはこれ以下でも糖新生が行われうるわけである。極端な低炭水化物はビタミン・ミネラル等が不足するため推奨していない】
精神科医師A さんから、京大病院・疾患栄養治療部・幣 憲一郎氏の著述に関して、多くの情報をコメント頂きました。
精神科医師Aさん、ありがとうございます。
精神科医師Aさん、ご指摘の如く
日本人の食事摂取基準(2010年版)に、
『炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等 通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである』
との記載があるなら、飢餓のときとか通常でないときは、例えばケトン体など他のエネルギー源を利用することを暗に示唆しています。
まあ、厚生労働省の食事摂取基準(2010年版)担当医師は
「赤血球はブドウ糖しか利用できないが、脳はケトン体を利用できる。」
ことはご存知なのでしょう。
一方、幣 憲一郎氏は、
『糖質は最も速やかに利用されるエネルギー源として最も重要とされる成分であり、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などは、グルコースのみをエネルギー源としているため・・・・』
と断定しておられるのは、明らかな間違いです。
脳も神経も腎尿細管も精巣もミトコンドリアを持っているので、ケトン体・脂肪酸をエネルギー源として利用できます。なお脳は血液脳関門のために、脂肪酸は利用できません。
また幣 憲一郎氏は、
『ADAの栄養勧告2008年によると、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない。」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行う上では必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。』
と述べておられますが、
『ADAは2008年以後、低炭水化物食と低脂肪食に関し、いずれも体重減少目的で1年間の有効性を認めている。炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量で、これより食事中の炭水化物が低くても脳への栄養供給は保たれる、と記載しだした。』
という、精神科医師Aさんのご指摘が正しく、幣 憲一郎氏は、完全に誤解しておられます。
幣 憲一郎氏、是非正確な知識を勉強して欲しいと思います。
糖尿病治療のための!糖質制限食パーフェクトガイド 2013年 (東洋経済新報社)
など読んでいただけば、嬉しい限りなのですが・・・。(^^)
江部康二
【13/09/08 精神科医師A
京大病院・疾患栄養治療部(6)
【6】内分泌・糖尿病・代謝内科 35(4):367-373, 2012
『栄養サポートチーム』 幣 憲一郎
P370-371
現在、日本における摂取基準としては、厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準[2010年版]」[1]があるが、あくまでも健常者を対象としているため、疾患特異性をどのように反映させるかは明確な基準がないのが現状であり、各種疾患ごとに作成されている「診療ガイドライン」に準拠すべきとされている。
P372
<糖質必要量の求め方>
糖質は最も速やかに利用されるエネルギー源として最も重要とされる成分であり、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などは、グルコースのみをエネルギー源としているため、1日100g以上の炭水化物(糖質)の摂取量を確保することが望ましいとされている。特に糖尿病患者であっても、糖尿病患者の場合American Diabetes Association (ADA)のNutrition Recommendations and Intervention for Diabete-2008[4]によると、「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない。」とエビデンスレベルで注意喚起されており、食事管理を行う上では必要量の炭水化物を摂取することが必須の条件となっている。
文献
1) 厚生労働省。日本人の食事摂取基準(2010年版)。日本人の食事摂取基準策定検討会報告書。2010。
4) American Diabetes Association; Nutrition recommendations and interventions for diabetes: a position statement of the American Diabetes Association. Diabetes Care 2008; 31: S61.
【批判】
日本人の食事摂取基準(2010年版)は、2009年5月29日に公表された。109頁にはこのような記載がある。
『炭水化物の栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等 通常はぶどう糖しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである』
言いかえれば、飢餓時にはこれと異なるわけだ
また、炭水化物の摂取量が1日100g未満となっても、糖新生が行われると明記されている。
2008年以後ADAは、「炭水化物の推奨量130gとは、糖新生を含めない場合の必要量」だと記載しだした。現実にはこれ以下でも糖新生が行われうるわけである。極端な低炭水化物はビタミン・ミネラル等が不足するため推奨していない】
2013年09月08日 (日)
こんばんは
『医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する』
糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
東洋経済新報社
2013年9月6日より電子版が販売開始となりましたので、お知らせいたします。
以下の東洋経済新報社サイトの電子書籍配信先からお求めいただけます。
http://www.toyokeizai.net/spc/editorial/category/e-books-bk/
kindle版も以下のようにご購入いただけます。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00EY3CIE0
医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する: 糖質制限食と湿潤療法のインパクト
東洋経済新報社
アマゾンでも購入できますので、是非ご一読を。
以下は、医療の巨大転換を加速する- 糖質制限食と湿潤療法のインパクトの「はじめに」です。
「はじめに」は私が書いて「おわりに」は、夏井睦先生が書いておられます。
夏井先生の「おわりに」、メチャクチャ面白いですよ。
はじめに
夏井先生との対談 出会いと流れと
湿潤療法を初めて知ったのはネットである。そのときは夏井先生の名前は確認せずにそのサイトにある記述と画像をみて、即座に本物と思った。早速要点をプリントアウトして病棟や外来に配った。
テニスを1~2週に1回しているので、幸い?転倒して手足を擦り剥くことは時々あった。
それまではイソジンで消毒してガーゼを貼って、絆創膏で固定して包帯。翌日ガーゼを消毒のために剥がすとき、たいていは傷口とくっついていて、「痛てててて!」とか言いながら何とか剥がして、再びしみて痛いのを我慢してイソジンで消毒して・・・。
いやはや今から思えば、とんでもない行為であり、自分で自分に拷問しているようなものであった。湿潤療法のサイトを見てからは水道水で洗ってティッシュで拭いてワセリンを塗って上から市販のドラッグストアで打っている被覆材を貼っておしまい。
「傷は湿潤な環境にして、余剰の水分は吸収させるか逃がす。」という原則だけ守っていれば、そのままシャワーを浴びてもOKだし、何の痛みもなく治った。
外来患者さんでもちょっとした擦過傷や火傷には湿潤療法の説明をして実践してもらい、痛みなく治るので随分感謝されたものである。
そんな頃2010年、高雄病院に脇元洋果先生が、糖質制限食や漢方を学ぶために赴任してこられた。私が湿潤療法に興味を持っていることを彼女に話すと、即「それなら本家の夏井先生を呼びましょうよ。」と提案された。脇元先生は夏井先生の外来について湿潤療法を勉強したことがあり、私などよりはるかに詳しい知識をもっていたのである。
そこからは、とんとん拍子に話はすすんで、夏井先生に連絡をとって段取りを整え、2011年1月14日、夏井先生を高雄病院に招いて湿潤療法の講演をしてもらった。この高雄病院での講演会が夏井先生との初対面であった。
私はサービス精神旺盛なので「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」「我ら糖尿人、元気なのには理由がある!」の2冊を謹呈した。大歓迎の意を込めて、河豚のフルコースで宴会をした。4時間くらい食べて呑んで、地球の歴史、原初の生命、生命の進化の話、宇宙のこと、音楽のこと、パソコンのこと・・・いっぱい話した。
結局私は酔いつぶれてしまって後半はよく覚えていないのであるが、とりあえず夏井先生の博学な知識に圧倒されたことだけはよく覚えている。
この人と(素面で)対談したらきっと楽しいだろうなとこのとき漠然と思った。作家宮本輝氏との対談以来久しぶりの興味深い企画である。
ところで夏井先生は私が謹呈した本を全く読んでいなかったそうである。たまたま2011年9月のネットの日経メディカル特集記事「糖質制限食」に江部康二という名前が載っているのをみて、どっかで聞いた名前やなと思い出して、やっと面白そうやなと、私の本を読む気になったそうである。きっかけは大事である。
そこからは早かった。夏井先生のブログで最初に糖質制限食を2011年11月に取り上げていただいて以降、次第に盛り上がっていき、ついには連日のように糖質制限食の話題が湿潤療法のサイトに登場するようになった。私の本の宣伝も連日のようにバッチリしていただいた。おかげで本の売り上げが急速に伸びて感謝感激である。
夏井先生のサイトの読者は、自分の頭で考える進取の精神を持つ医師が多く、糖質制限食にもまったく抵抗がなかったようである。糖質制限食を早速自ら実践してその効果を体験し私のブログにも訪れるというパターンで、随分アクセス数が増えて、またまた夏井先生には感謝である。「海老で鯛を釣る」ならぬ「河豚で夏井睦という大魚をつり上げた」ようである。もう2~3回は河豚を奢らねばなるまい。
夏井先生とブログ読者、江部康二とブログ読者、かっこよく言えば理論的、普通に言ったら理屈っぽいおじさんとおばさん、あるいはお兄さんとお姉さん・・・。兎に角理屈がわかる人、自分の頭で考える人には、すぐに理解できる普遍性のある理論が「湿潤療法」と「糖質制限食」である。
ところで湿潤療法に抵抗なく、すっと入り込めたと思っていたが、実際には常識の壁を突破することを一度体験していたことが大きかったのかもしれない。
すなわち、1999年に、兄江部洋一郎が糖質制限食を高雄病院に初めて導入したときは、全く信じておらず2年間凍結していたが、私自身の糖尿病患者さんに糖質制限食を導入して劇的改善を目の当たりにして一気に常識の壁を乗り越えて、初めて兄(糖質制限食)を信じた経験があったのである。
さらに「傷は絶対消毒するな」で、「大腸癌の手術をして大腸粘膜は消毒しない(消毒できない)が腹の縫合部の皮膚は毎日消毒するという矛盾」との記述をみて、何でこんな簡単な事実に自分は気がつかなかったのかと目から鱗が落ちたのである。
大腸の縫合部を日々通過していくのは生きた細菌を多数含む「UNKO」である。これで感染しないのなら、消毒は無意味ということは、理屈ですっと頭に入って理解して腑に落ちた。いままで100年間、世界中の誰も何故気がつかなかったのか?
ガイドラインに頼る医師は、自分で考えることを放棄した医師である。革命的に新しい治療法にエビデンスがあるはずがない。医師以外にも普通の人でも理屈が好きな人は自分で考え、納得して湿潤療法を実践すれば、「痛みなく傷が速やかに治る」のである。この快適な創傷治癒を一度体験すれば二度と消毒しようとは思わない。糖質制限食も又然りである。
いくら大学のお偉い糖尿病専門医が、ご飯をしっかり食べてと指導してもSMBG(血糖自己測定器)を糖尿人がもっていて実験したら食後血糖値が軽く200mgを超えることはすぐにわかる。このことが解ったら、カロリ-制限食(高糖質食)という、最低でも一日3回、食後血糖値が200mg/dlを超えるような食事療法を、いったい誰がするであろうか?
本書は、夏井先生と私が、医学界のパラダイムシフト(湿潤療法と糖質制限食)という大きなテーマを縦軸に、あとは理屈っぽい二人が、縦横無尽に医学界の問題点を取り上げて舌鋒鋭く(自画自讃)迫ったという、なかなか骨太の対談本である。
ところでユングの言う共時性とでもいうか、脇元医師がたまたま高雄病院に来ておられ、その出会いが夏井先生との新たな出会いを形づくってくれた。
物事がサクサクと進むときは、このような出会いと流れが大きな意味と持つことが多い。私は理屈っぽい無神論者であるが、「Something Great」は好きである。
2013年6月
高雄病院
江部康二
『医療の巨大転換(パラダイムシフト)を加速する』
糖質制限食と湿潤療法のインパクト
著者 江部康二 夏井睦
東洋経済新報社
2013年9月6日より電子版が販売開始となりましたので、お知らせいたします。
以下の東洋経済新報社サイトの電子書籍配信先からお求めいただけます。
http://www.toyokeizai.net/spc/editorial/category/e-books-bk/
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東洋経済新報社
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以下は、医療の巨大転換を加速する- 糖質制限食と湿潤療法のインパクトの「はじめに」です。
「はじめに」は私が書いて「おわりに」は、夏井睦先生が書いておられます。
夏井先生の「おわりに」、メチャクチャ面白いですよ。
はじめに
夏井先生との対談 出会いと流れと
湿潤療法を初めて知ったのはネットである。そのときは夏井先生の名前は確認せずにそのサイトにある記述と画像をみて、即座に本物と思った。早速要点をプリントアウトして病棟や外来に配った。
テニスを1~2週に1回しているので、幸い?転倒して手足を擦り剥くことは時々あった。
それまではイソジンで消毒してガーゼを貼って、絆創膏で固定して包帯。翌日ガーゼを消毒のために剥がすとき、たいていは傷口とくっついていて、「痛てててて!」とか言いながら何とか剥がして、再びしみて痛いのを我慢してイソジンで消毒して・・・。
いやはや今から思えば、とんでもない行為であり、自分で自分に拷問しているようなものであった。湿潤療法のサイトを見てからは水道水で洗ってティッシュで拭いてワセリンを塗って上から市販のドラッグストアで打っている被覆材を貼っておしまい。
「傷は湿潤な環境にして、余剰の水分は吸収させるか逃がす。」という原則だけ守っていれば、そのままシャワーを浴びてもOKだし、何の痛みもなく治った。
外来患者さんでもちょっとした擦過傷や火傷には湿潤療法の説明をして実践してもらい、痛みなく治るので随分感謝されたものである。
そんな頃2010年、高雄病院に脇元洋果先生が、糖質制限食や漢方を学ぶために赴任してこられた。私が湿潤療法に興味を持っていることを彼女に話すと、即「それなら本家の夏井先生を呼びましょうよ。」と提案された。脇元先生は夏井先生の外来について湿潤療法を勉強したことがあり、私などよりはるかに詳しい知識をもっていたのである。
そこからは、とんとん拍子に話はすすんで、夏井先生に連絡をとって段取りを整え、2011年1月14日、夏井先生を高雄病院に招いて湿潤療法の講演をしてもらった。この高雄病院での講演会が夏井先生との初対面であった。
私はサービス精神旺盛なので「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」「我ら糖尿人、元気なのには理由がある!」の2冊を謹呈した。大歓迎の意を込めて、河豚のフルコースで宴会をした。4時間くらい食べて呑んで、地球の歴史、原初の生命、生命の進化の話、宇宙のこと、音楽のこと、パソコンのこと・・・いっぱい話した。
結局私は酔いつぶれてしまって後半はよく覚えていないのであるが、とりあえず夏井先生の博学な知識に圧倒されたことだけはよく覚えている。
この人と(素面で)対談したらきっと楽しいだろうなとこのとき漠然と思った。作家宮本輝氏との対談以来久しぶりの興味深い企画である。
ところで夏井先生は私が謹呈した本を全く読んでいなかったそうである。たまたま2011年9月のネットの日経メディカル特集記事「糖質制限食」に江部康二という名前が載っているのをみて、どっかで聞いた名前やなと思い出して、やっと面白そうやなと、私の本を読む気になったそうである。きっかけは大事である。
そこからは早かった。夏井先生のブログで最初に糖質制限食を2011年11月に取り上げていただいて以降、次第に盛り上がっていき、ついには連日のように糖質制限食の話題が湿潤療法のサイトに登場するようになった。私の本の宣伝も連日のようにバッチリしていただいた。おかげで本の売り上げが急速に伸びて感謝感激である。
夏井先生のサイトの読者は、自分の頭で考える進取の精神を持つ医師が多く、糖質制限食にもまったく抵抗がなかったようである。糖質制限食を早速自ら実践してその効果を体験し私のブログにも訪れるというパターンで、随分アクセス数が増えて、またまた夏井先生には感謝である。「海老で鯛を釣る」ならぬ「河豚で夏井睦という大魚をつり上げた」ようである。もう2~3回は河豚を奢らねばなるまい。
夏井先生とブログ読者、江部康二とブログ読者、かっこよく言えば理論的、普通に言ったら理屈っぽいおじさんとおばさん、あるいはお兄さんとお姉さん・・・。兎に角理屈がわかる人、自分の頭で考える人には、すぐに理解できる普遍性のある理論が「湿潤療法」と「糖質制限食」である。
ところで湿潤療法に抵抗なく、すっと入り込めたと思っていたが、実際には常識の壁を突破することを一度体験していたことが大きかったのかもしれない。
すなわち、1999年に、兄江部洋一郎が糖質制限食を高雄病院に初めて導入したときは、全く信じておらず2年間凍結していたが、私自身の糖尿病患者さんに糖質制限食を導入して劇的改善を目の当たりにして一気に常識の壁を乗り越えて、初めて兄(糖質制限食)を信じた経験があったのである。
さらに「傷は絶対消毒するな」で、「大腸癌の手術をして大腸粘膜は消毒しない(消毒できない)が腹の縫合部の皮膚は毎日消毒するという矛盾」との記述をみて、何でこんな簡単な事実に自分は気がつかなかったのかと目から鱗が落ちたのである。
大腸の縫合部を日々通過していくのは生きた細菌を多数含む「UNKO」である。これで感染しないのなら、消毒は無意味ということは、理屈ですっと頭に入って理解して腑に落ちた。いままで100年間、世界中の誰も何故気がつかなかったのか?
ガイドラインに頼る医師は、自分で考えることを放棄した医師である。革命的に新しい治療法にエビデンスがあるはずがない。医師以外にも普通の人でも理屈が好きな人は自分で考え、納得して湿潤療法を実践すれば、「痛みなく傷が速やかに治る」のである。この快適な創傷治癒を一度体験すれば二度と消毒しようとは思わない。糖質制限食も又然りである。
いくら大学のお偉い糖尿病専門医が、ご飯をしっかり食べてと指導してもSMBG(血糖自己測定器)を糖尿人がもっていて実験したら食後血糖値が軽く200mgを超えることはすぐにわかる。このことが解ったら、カロリ-制限食(高糖質食)という、最低でも一日3回、食後血糖値が200mg/dlを超えるような食事療法を、いったい誰がするであろうか?
本書は、夏井先生と私が、医学界のパラダイムシフト(湿潤療法と糖質制限食)という大きなテーマを縦軸に、あとは理屈っぽい二人が、縦横無尽に医学界の問題点を取り上げて舌鋒鋭く(自画自讃)迫ったという、なかなか骨太の対談本である。
ところでユングの言う共時性とでもいうか、脇元医師がたまたま高雄病院に来ておられ、その出会いが夏井先生との新たな出会いを形づくってくれた。
物事がサクサクと進むときは、このような出会いと流れが大きな意味と持つことが多い。私は理屈っぽい無神論者であるが、「Something Great」は好きである。
2013年6月
高雄病院
江部康二
2013年09月08日 (日)
おはようございます。
たがしゅうこと大学病院神経内科医の田頭秀悟先生が、2013年9月1日からブログを開始されました。
田頭先生は、本ブログにも時々コメントをいただく糖質制限推進派の医師で、自身30kgの減量に成功されています。
興味深い記事を書いておられますので、本ブログ読者の皆さん、是非一度「たがしゅうブログ」覗いてみて下さいね。
たがしゅうブログ
http://tagashuu.blog.fc2.com/
2013年9月7日のたがしゅうブログで、調度ケトン体のことを記事にしておられたので、以下転載します。
江部康二
たがしゅうブログ 2013.9.7記事より
【ケトン食 やめたらどうなる?
糖質制限の延長戦上にケトン食という食事療法があります.
糖質を制限することによって産生されるケトン体という物質にさまざまな神経保護効果があり,これが難治性てんかんをはじめ,さまざまな疾患の治療に応用されてきています.
ケトン食は糖質を制限するだけでなく,蛋白質の摂取もある程度制限されます.平たく言えば,「脂ばっかり」の食事になります.
メニューも糖質制限食に比べると大分限られてくるので,厳密に行うのはなかなかの知識と料理の腕が要求されます.
そんな継続性の難しさから,一般的にはケトン食の継続期間目標は2年程度と言われています.
この夏,ケトン食を実際に行っている病院の見学に行って勉強して参りました.
そこでは,2年が限度と言われるケトン食を4年以上続けられている小児患者さんもおられました.
親御さんに「継続するのが辛くないですか?」と伺うと,それまでに何度も発作に見舞われていた辛い日々の事を思うと,これくらいの事は苦にはならないとのことでした.お子さんの笑顔も印象的でした.
確かにこれは実際に患者の立場に立たないとわからない感覚だなと感じました.
そんなケトン食,もしもやめたらどうなるのか,ということについても一つの情報を頂きました.
継続性の難しいケトン食ですが,一般的には臨床効果が得られたら,より継続しやすい修正アトキンス食(江部先生のスーパー糖質制限食に近い食事療法ですね)へ徐々に移行していくというのがやり方のようです.
ケトン食のメッカ,Johns Hopkins大学で1993年-2004年にケトン食開始し,6か月以上発作消失後にケトン食を中止した66人(11%)がその後どうなったかを調べた研究を教えて頂きました(Martinez, Kossoff. Baltimore. Epilepsia. 2007)
・ケトン食は数か月かけて徐々に中止.
・ケトン食継続期間:0.5-8年
・発作再発13人(20%):中止後0-5年で.
・ケトン食再開した7人中2人が発作消失
・ケトン食再開せず,薬物療法開始した5人とケトン食再開で発作消失しなかった5人の合計10人のうち7人は薬物療法により発作消失
これをみると「80%の人はケトン食をやめた後も発作のない状態を維持している」ということがわかりますし,再発してしまった人もケトン食の再開で発作消失,もしくは薬物を少し足すことで発作コントロールできているという状況だということがわかります.
「ケトン食によって一度大きく増加したケトン体はその後多少制限を緩めても多くの場合ケトン体高値が維持されるのではないか」,という考えが私の頭をめぐります.ただそこにはそれまでのケトン食の継続期間や,個人の体質さが複雑に絡み合ってくるとは思います.
非常に面白い話だと思いませんか.
たがしゅう】
たがしゅうこと大学病院神経内科医の田頭秀悟先生が、2013年9月1日からブログを開始されました。
田頭先生は、本ブログにも時々コメントをいただく糖質制限推進派の医師で、自身30kgの減量に成功されています。
興味深い記事を書いておられますので、本ブログ読者の皆さん、是非一度「たがしゅうブログ」覗いてみて下さいね。
たがしゅうブログ
http://tagashuu.blog.fc2.com/
2013年9月7日のたがしゅうブログで、調度ケトン体のことを記事にしておられたので、以下転載します。
江部康二
たがしゅうブログ 2013.9.7記事より
【ケトン食 やめたらどうなる?
糖質制限の延長戦上にケトン食という食事療法があります.
糖質を制限することによって産生されるケトン体という物質にさまざまな神経保護効果があり,これが難治性てんかんをはじめ,さまざまな疾患の治療に応用されてきています.
ケトン食は糖質を制限するだけでなく,蛋白質の摂取もある程度制限されます.平たく言えば,「脂ばっかり」の食事になります.
メニューも糖質制限食に比べると大分限られてくるので,厳密に行うのはなかなかの知識と料理の腕が要求されます.
そんな継続性の難しさから,一般的にはケトン食の継続期間目標は2年程度と言われています.
この夏,ケトン食を実際に行っている病院の見学に行って勉強して参りました.
そこでは,2年が限度と言われるケトン食を4年以上続けられている小児患者さんもおられました.
親御さんに「継続するのが辛くないですか?」と伺うと,それまでに何度も発作に見舞われていた辛い日々の事を思うと,これくらいの事は苦にはならないとのことでした.お子さんの笑顔も印象的でした.
確かにこれは実際に患者の立場に立たないとわからない感覚だなと感じました.
そんなケトン食,もしもやめたらどうなるのか,ということについても一つの情報を頂きました.
継続性の難しいケトン食ですが,一般的には臨床効果が得られたら,より継続しやすい修正アトキンス食(江部先生のスーパー糖質制限食に近い食事療法ですね)へ徐々に移行していくというのがやり方のようです.
ケトン食のメッカ,Johns Hopkins大学で1993年-2004年にケトン食開始し,6か月以上発作消失後にケトン食を中止した66人(11%)がその後どうなったかを調べた研究を教えて頂きました(Martinez, Kossoff. Baltimore. Epilepsia. 2007)
・ケトン食は数か月かけて徐々に中止.
・ケトン食継続期間:0.5-8年
・発作再発13人(20%):中止後0-5年で.
・ケトン食再開した7人中2人が発作消失
・ケトン食再開せず,薬物療法開始した5人とケトン食再開で発作消失しなかった5人の合計10人のうち7人は薬物療法により発作消失
これをみると「80%の人はケトン食をやめた後も発作のない状態を維持している」ということがわかりますし,再発してしまった人もケトン食の再開で発作消失,もしくは薬物を少し足すことで発作コントロールできているという状況だということがわかります.
「ケトン食によって一度大きく増加したケトン体はその後多少制限を緩めても多くの場合ケトン体高値が維持されるのではないか」,という考えが私の頭をめぐります.ただそこにはそれまでのケトン食の継続期間や,個人の体質さが複雑に絡み合ってくるとは思います.
非常に面白い話だと思いませんか.
たがしゅう】
2013年09月07日 (土)
こんにちは。
ケトン体シリーズ、第2弾です。
<血中ケトン体の生成と安全性>
ケトン体は肝細胞内で、
「脂肪酸→アシルCoA→カルニチンシャトル」でミトコンドリア内に
ミトコンドリア内で「アシルCoA→β酸化→アセチルCoA→ケトン体」
という順番で日常的に生成されていて、肝臓では使用されずに、他の臓器、脳や筋肉のエネルギー源として血中に供給されます。
分解されているので、大きさは脂肪酸よりだいぶ小さくなっています。
糖質を普通に摂取している人の血中ケトン体の基準値は、施設により差はありますが、「26~122μM/L 」くらいです。
つまり、日常的に糖質を摂取している人でも、これくらいの血中ケトン体は常に存在していて、心筋や骨格筋など多くの体細胞において、空腹時や睡眠時の主たるエネルギー源となっているのです。
つまり、人体のごく普通のエネルギー源であり、当然安全性は高いです。
どれくらい安全かを、もう一つのエネルギー源であるブドウ糖と比べてみると、わかりやすいですね。
絶食療法中やスーパー糖質制限食の初期には、血中ケトン体は、3000~4000μM/Lくらいで、基準値の30~40倍の高値になりますが、それ自体は、人体の各細胞において全く安全なものです。
このようなとき、一時的に酸性血症(アシドーシス)となりますが、人体には体内のpHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構があるので、生理的な血中ケトン体の高値があっても、しばらくして正常のPHに戻ります。
農耕前の100万年前や10万年前のご先祖とかでは、獲物が捕れないときなどには日常的に、絶食状態があってこのような数値を繰り返していたことでしょうし、当然、血管内皮にも無害です。
一方、血中ブドウ糖の基準値は空腹時で「70~109mg/dl」です。
食後とかで血糖値が180mg/dlを超えてくると、リアルタイムに血管内皮を傷害し酸化ストレスを引き起こし、繰り返せば動脈硬化の大きなリスクとなります。
血糖値が高値であれば、胎児にも悪影響があることは確認されています。
血糖値が300mgでも充分危ないですが、基準値の30倍の3000mgなど想像を絶した数値では、当然生体は生命を保てないでしょう。
そのため、インスリンが速やかに大量に分泌されて、食後血糖値が140~180mg/dlを超えないように、厳しく管理しているわけです。
このように検討してみると、ケトン体はブドウ糖よりは、はるかに安全性の高いエネルギー源ということができますね。
スーパー糖質制限食を実践しているとケトン体は現行の基準値よりは高値となります。
例えば、2002年からスーパー糖質制限食実践中の江部康二の血中ケトン体は、「400~800~1200/μM/L」くらいですが、血液のpHは勿論正常範囲です。
このくらいが、狩猟・採集だったころ700万年間の人類の基準値、そして生肉・生魚が主食の伝統的食生活を維持していたころのイヌイットの基準値、と思われます。
そして、農耕前の人類もイヌイットもスーパー糖質制限食を実践しながら、妊娠・出産・育児をしてきたという事実もケトン体の安全性を保証するものです。
<ケトン食における血中ケトン体の安全性の評価>
本ブログでも何回か紹介してきたKetogenic Diet(ケトン食)が、
2010年版The Cochrane Library(コクラン ライブラリー)(*)
2011年版NICE(英国立医療技術評価機構)(**)
において、難治性小児てんかん治療に採用されました。
これまでは、ケトン食に対して小児てんかんへの有効性は一定認められていましたが、治療の選択肢には入れられず、「推奨しない」とされていました。
今回、採用されたのは、難治性の小児てんかん発作を50%削減する点で有意差が得られたことが、評価されたのだと思います。
また、一時的な副作用はありえますが、重篤な副作用が無いことも認められました。ケトン食の総摂取エネルギーに占める脂質の割合は75~80%であり、高雄病院のスーパー糖質制限食を上回る、究極の糖質制限食であり、血中ケトン体は2000~4000μM/Lとなります。
脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体をいくらでも利用するのは、生理学的事実です。
ケトン食の場合、脳のエネルギー源はほとんどがケトン体であり、ブドウ糖は少ないです。
「コクラン ライブラリー」と「NICE」という、世界の医学界で高い評価を受けているガイドラインにおいて、生理的血中ケトン体高値の安全性が確認されたということは、糖質制限食を実践・推進している私達にとって、大きな追い風と言えます。
(*)The Cochrane Library2010;Issue1:1-9
(コクラン ライブラリー 2010年版)
(**)NICE (National Institute for Health and Clinical Excellence・2011)
(英国立医療技術評価機構・2011年版)
江部康二
ケトン体シリーズ、第2弾です。
<血中ケトン体の生成と安全性>
ケトン体は肝細胞内で、
「脂肪酸→アシルCoA→カルニチンシャトル」でミトコンドリア内に
ミトコンドリア内で「アシルCoA→β酸化→アセチルCoA→ケトン体」
という順番で日常的に生成されていて、肝臓では使用されずに、他の臓器、脳や筋肉のエネルギー源として血中に供給されます。
分解されているので、大きさは脂肪酸よりだいぶ小さくなっています。
糖質を普通に摂取している人の血中ケトン体の基準値は、施設により差はありますが、「26~122μM/L 」くらいです。
つまり、日常的に糖質を摂取している人でも、これくらいの血中ケトン体は常に存在していて、心筋や骨格筋など多くの体細胞において、空腹時や睡眠時の主たるエネルギー源となっているのです。
つまり、人体のごく普通のエネルギー源であり、当然安全性は高いです。
どれくらい安全かを、もう一つのエネルギー源であるブドウ糖と比べてみると、わかりやすいですね。
絶食療法中やスーパー糖質制限食の初期には、血中ケトン体は、3000~4000μM/Lくらいで、基準値の30~40倍の高値になりますが、それ自体は、人体の各細胞において全く安全なものです。
このようなとき、一時的に酸性血症(アシドーシス)となりますが、人体には体内のpHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構があるので、生理的な血中ケトン体の高値があっても、しばらくして正常のPHに戻ります。
農耕前の100万年前や10万年前のご先祖とかでは、獲物が捕れないときなどには日常的に、絶食状態があってこのような数値を繰り返していたことでしょうし、当然、血管内皮にも無害です。
一方、血中ブドウ糖の基準値は空腹時で「70~109mg/dl」です。
食後とかで血糖値が180mg/dlを超えてくると、リアルタイムに血管内皮を傷害し酸化ストレスを引き起こし、繰り返せば動脈硬化の大きなリスクとなります。
血糖値が高値であれば、胎児にも悪影響があることは確認されています。
血糖値が300mgでも充分危ないですが、基準値の30倍の3000mgなど想像を絶した数値では、当然生体は生命を保てないでしょう。
そのため、インスリンが速やかに大量に分泌されて、食後血糖値が140~180mg/dlを超えないように、厳しく管理しているわけです。
このように検討してみると、ケトン体はブドウ糖よりは、はるかに安全性の高いエネルギー源ということができますね。
スーパー糖質制限食を実践しているとケトン体は現行の基準値よりは高値となります。
例えば、2002年からスーパー糖質制限食実践中の江部康二の血中ケトン体は、「400~800~1200/μM/L」くらいですが、血液のpHは勿論正常範囲です。
このくらいが、狩猟・採集だったころ700万年間の人類の基準値、そして生肉・生魚が主食の伝統的食生活を維持していたころのイヌイットの基準値、と思われます。
そして、農耕前の人類もイヌイットもスーパー糖質制限食を実践しながら、妊娠・出産・育児をしてきたという事実もケトン体の安全性を保証するものです。
<ケトン食における血中ケトン体の安全性の評価>
本ブログでも何回か紹介してきたKetogenic Diet(ケトン食)が、
2010年版The Cochrane Library(コクラン ライブラリー)(*)
2011年版NICE(英国立医療技術評価機構)(**)
において、難治性小児てんかん治療に採用されました。
これまでは、ケトン食に対して小児てんかんへの有効性は一定認められていましたが、治療の選択肢には入れられず、「推奨しない」とされていました。
今回、採用されたのは、難治性の小児てんかん発作を50%削減する点で有意差が得られたことが、評価されたのだと思います。
また、一時的な副作用はありえますが、重篤な副作用が無いことも認められました。ケトン食の総摂取エネルギーに占める脂質の割合は75~80%であり、高雄病院のスーパー糖質制限食を上回る、究極の糖質制限食であり、血中ケトン体は2000~4000μM/Lとなります。
脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体をいくらでも利用するのは、生理学的事実です。
ケトン食の場合、脳のエネルギー源はほとんどがケトン体であり、ブドウ糖は少ないです。
「コクラン ライブラリー」と「NICE」という、世界の医学界で高い評価を受けているガイドラインにおいて、生理的血中ケトン体高値の安全性が確認されたということは、糖質制限食を実践・推進している私達にとって、大きな追い風と言えます。
(*)The Cochrane Library2010;Issue1:1-9
(コクラン ライブラリー 2010年版)
(**)NICE (National Institute for Health and Clinical Excellence・2011)
(英国立医療技術評価機構・2011年版)
江部康二
2013年09月06日 (金)
こんにちは
ケトン体、についてよく質問があるので、復習を兼ねて考察してみます。
まず、
「生理的ケトーシスは糖尿病ケトアシドーシスとは違う」
ということが、一番大切なので、しっかり覚えておきましょう。
スーパー糖質制限食を実践すると、血中ケトン体が上昇します。
ケトンとは、ケトン基をもつ化合物のこといいます。
医学・生化学の世界において、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの3者を、ケトン体として総称してきました。
このうちβ-ヒドロキシ酪酸はケトン基がないので、化学構造上は実はケトンではないのですが、ケトンであるアセト酢酸に可逆的に変換されるので、過去習慣的にケトン体の範疇に含まれて扱われてきました。
そして、人体で日常的にエネルギー源として利用されている主たるものは、ケトン体のうちβ-ヒドロキシ酪酸なのです。
アセトンは、揮発性で呼気に排出されやすいためアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸をたしたものを血中総ケトン体としています。
「総ケトン体=β-ヒドロキシ酪酸+アセト酢酸」
です。
ケトン体分画として検査依頼すると上記の数値を調べて貰えます。
さて、血中ケトン体が現行の基準値より高値となった時の安全性について、ブログ読者の皆さんから、過去複数の質問をいただきました。
ケトン体、なかなかなじみがなくてわかりにくいですよね (∵)?
一般の人は勿論、お医者さんでもケトン体の真実をご存知の方はほとんどいないというのが現状ですので、検討してみます。
<生理的ケトーシス>
結論を先にいうと、現行の基準値を超えていても、インスリン作用があるていど以上保たれているならば血中ケトン体の上昇は生理的なものであり(生理的ケトーシス)、安全性は極めて高いのでご安心ください。
生理的ケトーシスは、スーパー糖質制限食、ケトン食、絶食療法などのときに生じます。
小児難治性てんかんやGLUT1欠損症におけるケトン食実践は、2年3年に及びますが、総ケトン値は4000~6000μM/L程度でも普通です。
これらの場合インスリン作用は保たれているので、初期に一時的に酸性血症(アシドーシス)となりますが、緩衝作用によりしばらくして正常のPHに戻ります。
糖質制限食を長期間続けた場合の安全性の一環として、動脈血液ガスのpH と血中ケトン体値などを検討してみました。
2009年3月3日
7年間スーパー糖質制限食実践中の江部康二(検査時59才)
4年間スーパー糖質制限食実践中のS・T・氏(検査時61才男性)
の動脈血液ガスのデータをとってみました。
二人とも2型糖尿病です。
江部康二 S・T・氏 基準値
pH 7.450 7.450 (7.36~7.45)
PaCO2 43.0 40.9 (35~45 Torr)
PaO2 92.0 84.0 (80~100 Torr)
HCO3- 28.8 27.2 (22~26 mEq/L)
血糖値 123(食後3時間) 86mg/dl(空腹時)
血中総ケトン体 712 603 (26~122μM/L)
尿中ケトン体 陰性 陰性
2人とも血中ケトン体値は、基準値の5~6倍です。
しかし、pH は7.450と、正常値の中ではアルカリ性よりのデータです。
すなわち、生理的ケトーシスはありますが、アシドーシスはありません。
HCO3-は2人とも、正常上限からほんの少し高値です。
HCO3-などの血液緩衝作用や酸塩基平衡作用で、pH をコントロールしていると考えられます。(*)(**)
血中ケトン体値は、基準値よりは高値ですが、尿中ケトン体値は陰性です。
心筋や骨格筋のケトン体利用効率が高まり、腎の再吸収も良くなった結果と考えられます。
インスリン作用も確保されていて、このケトン体値は生理的な状態です。
おそらく我々2人のような検査データが、農耕が始まる前の人類の基準値だったと考えられます。
(*)緩衝作用
血液の緩衝機構として、重炭酸緩衝系、ヘモグロビン系、血漿蛋白系、リン酸系がある。
そのうち約65%を重炭酸緩衝系が、約30%をヘモグロビン系が担っている。
重炭酸緩衝系は、炭酸(H2CO3)と、重炭酸(HCO3-)との混合系である。
(**)酸塩基平衡
生体内では、代謝に伴ない酸が産生されるが、細胞の活動が正常に営まれるには酸塩基平衡を維持する必要がある。
体内のpHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構がある。
腎臓が主な産生部位であるHCO3-濃度と呼吸機能で調節されCO2の分圧によってpHは調整される。
<糖尿病ケトアシドーシス>
インスリン作用が欠落して、人体の糖質・脂質・タンパク質代謝が破綻した結果生じる「糖尿病ケトアシドーシス」は、生理的ケトーシスとは全く異なる重篤な病態であることを認識する必要があります。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。
強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。
つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。
『インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰』などにより、全身の高度の代謝失調、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。
遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。
インスリン作用欠乏から始まる流れ、
「インスリン作用欠乏→拮抗ホルモン過剰→全身の高度代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→緩衝作用を凌駕→ケトアシドーシス」
というのが糖尿病ケトアシドーシス発症の順番です。
糖尿病ケトアシドーシスの場合血中総ケトン体は3000μM/L以上となりますが、この場合ケトン体上昇は原因ではなく、インスリン作用欠乏の結果です。
残念なことに、多くの医師がケトン体上昇が原因であると誤解しています。
糖尿病ケトアシドーシスは、
1型で急にインスリン注射を中止したとき、1型のシックデイ、
2型のペットボトル症候群など、極めて特殊な例に限れられる重篤な病態です。
江部康二
ケトン体、についてよく質問があるので、復習を兼ねて考察してみます。
まず、
「生理的ケトーシスは糖尿病ケトアシドーシスとは違う」
ということが、一番大切なので、しっかり覚えておきましょう。
スーパー糖質制限食を実践すると、血中ケトン体が上昇します。
ケトンとは、ケトン基をもつ化合物のこといいます。
医学・生化学の世界において、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの3者を、ケトン体として総称してきました。
このうちβ-ヒドロキシ酪酸はケトン基がないので、化学構造上は実はケトンではないのですが、ケトンであるアセト酢酸に可逆的に変換されるので、過去習慣的にケトン体の範疇に含まれて扱われてきました。
そして、人体で日常的にエネルギー源として利用されている主たるものは、ケトン体のうちβ-ヒドロキシ酪酸なのです。
アセトンは、揮発性で呼気に排出されやすいためアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸をたしたものを血中総ケトン体としています。
「総ケトン体=β-ヒドロキシ酪酸+アセト酢酸」
です。
ケトン体分画として検査依頼すると上記の数値を調べて貰えます。
さて、血中ケトン体が現行の基準値より高値となった時の安全性について、ブログ読者の皆さんから、過去複数の質問をいただきました。
ケトン体、なかなかなじみがなくてわかりにくいですよね (∵)?
一般の人は勿論、お医者さんでもケトン体の真実をご存知の方はほとんどいないというのが現状ですので、検討してみます。
<生理的ケトーシス>
結論を先にいうと、現行の基準値を超えていても、インスリン作用があるていど以上保たれているならば血中ケトン体の上昇は生理的なものであり(生理的ケトーシス)、安全性は極めて高いのでご安心ください。
生理的ケトーシスは、スーパー糖質制限食、ケトン食、絶食療法などのときに生じます。
小児難治性てんかんやGLUT1欠損症におけるケトン食実践は、2年3年に及びますが、総ケトン値は4000~6000μM/L程度でも普通です。
これらの場合インスリン作用は保たれているので、初期に一時的に酸性血症(アシドーシス)となりますが、緩衝作用によりしばらくして正常のPHに戻ります。
糖質制限食を長期間続けた場合の安全性の一環として、動脈血液ガスのpH と血中ケトン体値などを検討してみました。
2009年3月3日
7年間スーパー糖質制限食実践中の江部康二(検査時59才)
4年間スーパー糖質制限食実践中のS・T・氏(検査時61才男性)
の動脈血液ガスのデータをとってみました。
二人とも2型糖尿病です。
江部康二 S・T・氏 基準値
pH 7.450 7.450 (7.36~7.45)
PaCO2 43.0 40.9 (35~45 Torr)
PaO2 92.0 84.0 (80~100 Torr)
HCO3- 28.8 27.2 (22~26 mEq/L)
血糖値 123(食後3時間) 86mg/dl(空腹時)
血中総ケトン体 712 603 (26~122μM/L)
尿中ケトン体 陰性 陰性
2人とも血中ケトン体値は、基準値の5~6倍です。
しかし、pH は7.450と、正常値の中ではアルカリ性よりのデータです。
すなわち、生理的ケトーシスはありますが、アシドーシスはありません。
HCO3-は2人とも、正常上限からほんの少し高値です。
HCO3-などの血液緩衝作用や酸塩基平衡作用で、pH をコントロールしていると考えられます。(*)(**)
血中ケトン体値は、基準値よりは高値ですが、尿中ケトン体値は陰性です。
心筋や骨格筋のケトン体利用効率が高まり、腎の再吸収も良くなった結果と考えられます。
インスリン作用も確保されていて、このケトン体値は生理的な状態です。
おそらく我々2人のような検査データが、農耕が始まる前の人類の基準値だったと考えられます。
(*)緩衝作用
血液の緩衝機構として、重炭酸緩衝系、ヘモグロビン系、血漿蛋白系、リン酸系がある。
そのうち約65%を重炭酸緩衝系が、約30%をヘモグロビン系が担っている。
重炭酸緩衝系は、炭酸(H2CO3)と、重炭酸(HCO3-)との混合系である。
(**)酸塩基平衡
生体内では、代謝に伴ない酸が産生されるが、細胞の活動が正常に営まれるには酸塩基平衡を維持する必要がある。
体内のpHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構がある。
腎臓が主な産生部位であるHCO3-濃度と呼吸機能で調節されCO2の分圧によってpHは調整される。
<糖尿病ケトアシドーシス>
インスリン作用が欠落して、人体の糖質・脂質・タンパク質代謝が破綻した結果生じる「糖尿病ケトアシドーシス」は、生理的ケトーシスとは全く異なる重篤な病態であることを認識する必要があります。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠乏による全身の高度の代謝失調状態です。
強調しますが、前提にインスリン作用の欠乏があり、それが全ての出発点です。
つまり、インスリン作用の欠乏がなければ、糖尿病ケトアシドーシスは絶対に起こらないのです。
『インスリン作用の極度の低下、インスリン拮抗ホルモンであるグルカゴン・カテコールアミン・成長ホルモンの過剰』などにより、全身の高度の代謝失調、糖利用の低下・脂肪分解の亢進がおこり、高血糖と高遊離脂肪酸血症を生じます。
遊離脂肪酸は、インスリン欠乏下の肝では、急速な酸化をうけケトン体に分解されます。
インスリン作用欠乏から始まる流れ、
「インスリン作用欠乏→拮抗ホルモン過剰→全身の高度代謝障害→糖利用低下・脂肪分解亢進→高血糖・高遊離脂肪酸→ケトン体産生亢進→緩衝作用を凌駕→ケトアシドーシス」
というのが糖尿病ケトアシドーシス発症の順番です。
糖尿病ケトアシドーシスの場合血中総ケトン体は3000μM/L以上となりますが、この場合ケトン体上昇は原因ではなく、インスリン作用欠乏の結果です。
残念なことに、多くの医師がケトン体上昇が原因であると誤解しています。
糖尿病ケトアシドーシスは、
1型で急にインスリン注射を中止したとき、1型のシックデイ、
2型のペットボトル症候群など、極めて特殊な例に限れられる重篤な病態です。
江部康二
2013年09月05日 (木)
こんにちは。
愛知県鍼灸マッサージ師会主催の 第23回 はり灸健康講座 開催のお知らせです。
平成25年9月29日 (日曜日)午後1時より午後3時30分まで
中部電力ビル2F 中電ホールにて
「糖質制限食と糖尿病 ~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
と題して、私が講師をつとめます。
入場無料です。
わかりやすいお話しを目指しますので、名古屋、東海、中部地方の糖尿人・メタボ人の方々是非ご参加くださいね。
質疑応答の時間もたっぷりとろうと思います。
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は愛知県鍼灸マッサージ師会からのお知らせです。
第23回 はり灸健康講座開催のお知らせ
鍼灸局長 佐藤康彦
皆様におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます。
はり灸健康講座も23回目となり、毎回多彩な方面の講師をお迎えして開催いたしております。
今回は、医師で(財)京都高雄病院・理事長の江部康二先生をお招きしての市民公開講座です。
演題にもあります糖質制限食を研究・治療に活用され、漢方 鍼灸も自ら実践しておられるます。
是非、患者様にも聞いていただきたい話題豊富な講座ですので、お声掛けいただきご参加ください
ますようお願い申し上げます。
記
日時 平成25年9月29日 (日曜日)
午後1時より午後3時30分まで
会場 中部電力ビル2F 中電ホール
講師 (財)京都高雄病院理事長
江部 康二 先生
演題 「糖質制限食と糖尿病~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
主催 愛知県鍼灸マッサージ師会
後援 愛知県・名古屋市・愛知県医師会
中日新聞社・東海テレビ放送
プロフィール……………………………………………………………
・ 1950年生まれ。
・ 1974年京都大学医学部卒業。
・ 1974年から京都大学胸部疾患研究所第一内科(現在京大呼吸器内科)
にて呼吸器科を学ぶ。
・ 1978年から高雄病院に医局長として勤務。1996年副院長就任。
・ 1999年高雄病院に糖質制限食導入。
・ 2000年理事長就任。
・ 2001年から糖質制限食に本格的に取り組む。
・ 2002年に自ら糖尿病であると気づいて以来、さらに糖尿病治療の研究に力を注ぎ、
「糖質制限食」の体系を確立。これにより自身の糖尿病を克服。
内科医/漢方医/(財)高雄病院理事長/社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長
■著書
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』2005年(東洋経済新報社)
作家宮本輝氏との対談本
『我ら糖尿人、元気なのにはわけがある』2009年(東洋経済新報社)
『糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食』2010年(ナツメ社)
『主食をやめると健康になる』2011年(ダイヤモンド社)
『食品別糖質量ハンドブック』2012年(洋泉社)
『糖質オフ!健康法』2012年(PHP文庫)
『女性のための糖質制限ダイエットハンドブック』2013年(洋泉社)など多数。
■ブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記(http://koujiebe.blog95.fc2.com/)
は日に10000件以上のアクセスがあり、糖尿病のかたやそのご家族から寄せられた質問への回答や、糖尿病・糖質制限食に関する情報の発信に、日々尽力している。
愛知県鍼灸マッサージ師会主催の 第23回 はり灸健康講座 開催のお知らせです。
平成25年9月29日 (日曜日)午後1時より午後3時30分まで
中部電力ビル2F 中電ホールにて
「糖質制限食と糖尿病 ~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
と題して、私が講師をつとめます。
入場無料です。
わかりやすいお話しを目指しますので、名古屋、東海、中部地方の糖尿人・メタボ人の方々是非ご参加くださいね。
質疑応答の時間もたっぷりとろうと思います。
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は愛知県鍼灸マッサージ師会からのお知らせです。
第23回 はり灸健康講座開催のお知らせ
鍼灸局長 佐藤康彦
皆様におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます。
はり灸健康講座も23回目となり、毎回多彩な方面の講師をお迎えして開催いたしております。
今回は、医師で(財)京都高雄病院・理事長の江部康二先生をお招きしての市民公開講座です。
演題にもあります糖質制限食を研究・治療に活用され、漢方 鍼灸も自ら実践しておられるます。
是非、患者様にも聞いていただきたい話題豊富な講座ですので、お声掛けいただきご参加ください
ますようお願い申し上げます。
記
日時 平成25年9月29日 (日曜日)
午後1時より午後3時30分まで
会場 中部電力ビル2F 中電ホール
講師 (財)京都高雄病院理事長
江部 康二 先生
演題 「糖質制限食と糖尿病~メタボ・生活習慣病・がん~ 」
主催 愛知県鍼灸マッサージ師会
後援 愛知県・名古屋市・愛知県医師会
中日新聞社・東海テレビ放送
プロフィール……………………………………………………………
・ 1950年生まれ。
・ 1974年京都大学医学部卒業。
・ 1974年から京都大学胸部疾患研究所第一内科(現在京大呼吸器内科)
にて呼吸器科を学ぶ。
・ 1978年から高雄病院に医局長として勤務。1996年副院長就任。
・ 1999年高雄病院に糖質制限食導入。
・ 2000年理事長就任。
・ 2001年から糖質制限食に本格的に取り組む。
・ 2002年に自ら糖尿病であると気づいて以来、さらに糖尿病治療の研究に力を注ぎ、
「糖質制限食」の体系を確立。これにより自身の糖尿病を克服。
内科医/漢方医/(財)高雄病院理事長/社団法人日本糖質制限医療推進協会理事長
■著書
『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』2005年(東洋経済新報社)
作家宮本輝氏との対談本
『我ら糖尿人、元気なのにはわけがある』2009年(東洋経済新報社)
『糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食』2010年(ナツメ社)
『主食をやめると健康になる』2011年(ダイヤモンド社)
『食品別糖質量ハンドブック』2012年(洋泉社)
『糖質オフ!健康法』2012年(PHP文庫)
『女性のための糖質制限ダイエットハンドブック』2013年(洋泉社)など多数。
■ブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記(http://koujiebe.blog95.fc2.com/)
は日に10000件以上のアクセスがあり、糖尿病のかたやそのご家族から寄せられた質問への回答や、糖尿病・糖質制限食に関する情報の発信に、日々尽力している。
2013年09月04日 (水)
こんばんは。
あらてつさんの糖質制限ドットコムから、またまた新商品がでました。
なんでも、樹齢100年以上の木だけから集めた貴重なオリーブオイルだそうです。
3月にハルディンさんで行われたスペインワインの試食会で出されて、とても好評だったオリーブオイルですね。
明らかに通常のオリーブオイルよりも濃厚で、オリーブ特有の辛みも強いのですが、一度食べたらクセになる美味しさで、参加した皆さんにも大好評でした(^O^)
以下、あらてつさんからのお知らせです。
江部康二
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2013年09月04日 (水)
おはようございます。
日経メディカルオンラインに、2013. 8. 30、興味深い記事が載りました。
BMJ誌(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌)に
「肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍」
という論文が掲載されました。
論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載。
<BMJ論文の要約>英国で行われたコホート研究の結果
1950~1976年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人が分析対象。
主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。
母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較。
全死因死亡は6551人に発生。
主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)
死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11、肥満妊婦の子では1.35で、低体重妊婦の子は0.98。
55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19、肥満妊婦の子では1.40で、若年死亡リスクの上昇。
妊娠糖尿病に、糖質制限食が極めて有用であることは、2013年1月13日(日)国立京都国際会館で開催された
第16回日本病態栄養学会年次学術集会で宗田マタニティークリニックの宗田 哲男先生、永井クリニッックの永井泰先生らのグループが発表されました。
宗田先生、永井先生のご発表では、糖質制限食で血糖は勿論のこと、体重コントロールも大変楽にできたそうです。
今回の、BMJのコホート研究は、肥満妊婦の子供においては、将来の心血管疾患や癌のリスクが増加することが示されました。
また妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していました。
英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満だそうです。
妊娠前の体重を適正に保つことが重要と著者らは述べています。
妊娠前の体重を適正に保つには糖質制限食が最適の食事療法ですし、妊娠後の体重コンントロールも糖質制限食なら容易です。
日本では妊婦の5人に1人が肥満というようなことはありませんが、肥満のある女性は注意が必要ですね。
江部康二
以下、日経メディカルオンラインから転載
海外論文ピックアップ BMJ誌より
2013. 8. 30
BMJ誌から
肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍
正常体重の妊婦の子との比較、英国で行われたコホート研究の結果
大西 淳子=医学ジャーナリスト
初回の妊婦健診の際に測定されたBMI値に基づき、過体重または肥満と判定された女性から生まれた子は、成人後の全死因死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に直面する可能性が示された。英Edinburgh大学のRebecca M Reynolds氏らが行ったレコードリンケージによるコホート研究の結果で、論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載された。
これまで、低出生体重児のその後の心血管死亡リスクは高いこと、肥満の母親から生まれた子が肥満になるリスクは高いこと、妊娠前の母親の肥満と青少年期にある子のアテローム性動脈硬化症マーカー(高血圧、脂質異常症など)値の間に関係があることなどは報告されていた。しかし、妊婦の肥満が、生まれた子が成人した後の死亡や心血管イベントのリスク上昇と関係するかどうかは明らかではなかった。
著者らは、1950年から出生記録を収集してきたスコットランドのAberdeen Maternity and Neonatal Databank(AMND)と、スコットランドの死亡登録、Scottish Morbidity record systems(SMR01)の情報を関連づけ、50~76年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人を分析対象にした。
主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較を行った。
低体重妊婦の子は1195人(出産時の母親の年齢は24.9歳、BMI測定時の妊娠週数は13.7週、出生体重は3132g、全て平均値)、正常体重妊婦の子は2万7051人(25.2歳、16.8週、3299g)、過体重妊婦の子は7913人(26.7歳、19.5週、3436g)、肥満妊婦の子は1550人(27.9歳、20.7週、3536g)で、子の男女比はほぼ1対1だった。
全死因死亡は6551人に発生。主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)だった。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いてtime-to-event解析したところ、全死因死亡は過体重妊婦、肥満妊婦の子の集団で有意に高かった。分娩時の母親の年齢、社会経済的地位、子の性別、出生体重、出生時の妊娠週数、BMI測定時の妊娠週数などで調整した死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11(95%信頼区間1.03-1.19)、肥満妊婦の子では1.35(1.17-1.55)で、低体重妊婦の子は0.98(0.84-1.14)だった。
55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19(1.09-1.30)、肥満妊婦の子では1.40(1.17-1.68)で、若年死亡リスクの上昇が示された。
子の集団の7.6%が心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、その他の脳血管疾患、その他の心血管疾患、末梢動脈疾患のいずれか)により入院していた。肥満妊婦の子は、心血管イベントによる入院のリスクも有意に高かった(調整ハザード比は1.29、1.06-1.57)。過体重妊婦の子のハザード比も1.15(1.04-1.26)と有意なリスク上昇を示した。
妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していた。英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満であることから、成人後の子の集団に及ぶ影響は公衆衛生上深刻なものになると予想され、妊娠前に体重を適切なレベルにしておく戦略が必要だと著者らは述べている。
原題は「Maternal obesity during pregnancy and premature mortality from cardiovascular event in adult offspring:follow-up of 1 323 275 person years」、全文はBMJ誌のウェブサイトで閲覧できる。
日経メディカルオンラインに、2013. 8. 30、興味深い記事が載りました。
BMJ誌(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌)に
「肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍」
という論文が掲載されました。
論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載。
<BMJ論文の要約>英国で行われたコホート研究の結果
1950~1976年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人が分析対象。
主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。
母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較。
全死因死亡は6551人に発生。
主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)
死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11、肥満妊婦の子では1.35で、低体重妊婦の子は0.98。
55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19、肥満妊婦の子では1.40で、若年死亡リスクの上昇。
妊娠糖尿病に、糖質制限食が極めて有用であることは、2013年1月13日(日)国立京都国際会館で開催された
第16回日本病態栄養学会年次学術集会で宗田マタニティークリニックの宗田 哲男先生、永井クリニッックの永井泰先生らのグループが発表されました。
宗田先生、永井先生のご発表では、糖質制限食で血糖は勿論のこと、体重コントロールも大変楽にできたそうです。
今回の、BMJのコホート研究は、肥満妊婦の子供においては、将来の心血管疾患や癌のリスクが増加することが示されました。
また妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していました。
英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満だそうです。
妊娠前の体重を適正に保つことが重要と著者らは述べています。
妊娠前の体重を適正に保つには糖質制限食が最適の食事療法ですし、妊娠後の体重コンントロールも糖質制限食なら容易です。
日本では妊婦の5人に1人が肥満というようなことはありませんが、肥満のある女性は注意が必要ですね。
江部康二
以下、日経メディカルオンラインから転載
海外論文ピックアップ BMJ誌より
2013. 8. 30
BMJ誌から
肥満妊婦の子は成人後の死亡リスクが約1.4倍
正常体重の妊婦の子との比較、英国で行われたコホート研究の結果
大西 淳子=医学ジャーナリスト
初回の妊婦健診の際に測定されたBMI値に基づき、過体重または肥満と判定された女性から生まれた子は、成人後の全死因死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に直面する可能性が示された。英Edinburgh大学のRebecca M Reynolds氏らが行ったレコードリンケージによるコホート研究の結果で、論文はBMJ誌電子版に2013年8月13日に掲載された。
これまで、低出生体重児のその後の心血管死亡リスクは高いこと、肥満の母親から生まれた子が肥満になるリスクは高いこと、妊娠前の母親の肥満と青少年期にある子のアテローム性動脈硬化症マーカー(高血圧、脂質異常症など)値の間に関係があることなどは報告されていた。しかし、妊婦の肥満が、生まれた子が成人した後の死亡や心血管イベントのリスク上昇と関係するかどうかは明らかではなかった。
著者らは、1950年から出生記録を収集してきたスコットランドのAberdeen Maternity and Neonatal Databank(AMND)と、スコットランドの死亡登録、Scottish Morbidity record systems(SMR01)の情報を関連づけ、50~76年に単胎児を妊娠37週超で出生し、初回の妊婦健診の際にBMIが記録されていた2万8540人の母親の子供3万7709人を分析対象にした。
主要転帰評価指標は、子の年齢が34~61歳になった2012年1月1日までの全死因死亡と心血管イベントによる入院に設定。母親が妊娠中に正常体重(BMI18.5~24.9)だった集団を参照として、低体重(18.5未満)群、過体重(25~29.9)群、肥満(30以上)群の間で比較を行った。
低体重妊婦の子は1195人(出産時の母親の年齢は24.9歳、BMI測定時の妊娠週数は13.7週、出生体重は3132g、全て平均値)、正常体重妊婦の子は2万7051人(25.2歳、16.8週、3299g)、過体重妊婦の子は7913人(26.7歳、19.5週、3436g)、肥満妊婦の子は1550人(27.9歳、20.7週、3536g)で、子の男女比はほぼ1対1だった。
全死因死亡は6551人に発生。主な死因は心血管疾患(男性の24%、女性の13%)と癌(男性の26%、女性の42%)だった。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いてtime-to-event解析したところ、全死因死亡は過体重妊婦、肥満妊婦の子の集団で有意に高かった。分娩時の母親の年齢、社会経済的地位、子の性別、出生体重、出生時の妊娠週数、BMI測定時の妊娠週数などで調整した死亡のハザード比は、過体重妊婦の子が1.11(95%信頼区間1.03-1.19)、肥満妊婦の子では1.35(1.17-1.55)で、低体重妊婦の子は0.98(0.84-1.14)だった。
55歳未満で死亡した子集団を対象に同様に分析したところ、過体重妊婦の子の死亡の調整ハザード比は1.19(1.09-1.30)、肥満妊婦の子では1.40(1.17-1.68)で、若年死亡リスクの上昇が示された。
子の集団の7.6%が心血管イベント(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、その他の脳血管疾患、その他の心血管疾患、末梢動脈疾患のいずれか)により入院していた。肥満妊婦の子は、心血管イベントによる入院のリスクも有意に高かった(調整ハザード比は1.29、1.06-1.57)。過体重妊婦の子のハザード比も1.15(1.04-1.26)と有意なリスク上昇を示した。
妊婦の肥満は、生まれた子の成人後の若年死亡と心血管イベントによる入院のリスク上昇に関係していた。英国では現在、妊婦の5人に1人が肥満であることから、成人後の子の集団に及ぶ影響は公衆衛生上深刻なものになると予想され、妊娠前に体重を適切なレベルにしておく戦略が必要だと著者らは述べている。
原題は「Maternal obesity during pregnancy and premature mortality from cardiovascular event in adult offspring:follow-up of 1 323 275 person years」、全文はBMJ誌のウェブサイトで閲覧できる。