2012年12月31日 (月)
2012年糖質制限食10大ニュース
1)2012年1月15日(日)第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」ディベート開催。
2012年01月16日 (月)本ブログ記事ご参照ください。
2)2012年5月18日(金)第55回日本糖尿病学会年次学術集会の
Debate to Consensus 5で、糖質制限食が糖尿 病食事療法の選択肢の一つとして、
コンセンサスを得る。
2012年05月19日 (土)本ブログ記事ご参照ください。
3)桐山秀樹氏の「おやじダイエット部の奇跡」マガジンハウス (2012/4/26)
ベストセラーに
おやじダイエット部メンバー、テレビ番組「明るい未来」に出演し大反響。
4)米国糖尿病学会、2012年2月のレビュー論文で、糖質制限食を格上げ。
2012年03月16日 (金)本ブログ記事ご参照ください。
英国糖尿病学会、2011年のガイドラインで糖質制限食を選択肢の一つに
2012年10月27日 (土)本ブログ記事ご参照ください。
5)糖質制限食へのネガティブ・キャンペーン、読売新聞、日本経済新聞、
低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?のBMJ論文
①2012年07月03日 (火)の本ブログ記事ご参照ください。
「低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?という論文を検討。」
②2012年07月13日 (金)の本ブログ記事ご参照ください。
「低糖質・高蛋白質で心血管イベントが上昇!?という論文へ専門家の批判」
6)医療関係者専門サイトm3.com、糖質制限食に関する「臨床道場」に登場
5月22日~6月5日
2012年05月30日 (水)の本ブログ記事をご参照ください。
「江部康二の食生活日記、医療関係者向けサイト、m3.com」
7)夏井睦先生のホームページで糖質制限食がブレイク
2012年03月20日 (火)本ブログ記事をご参照ください。
8)北九州三島さん「糖質セイゲニストin北九州」月例会、発足し活発な活動開始。
江部康二「糖質制限食」講演会 in 北九州(5月13日)満員御礼
2012年04月28日 (土)の本ブログ記事をご参照ください。
9)糖質制限食の医学界への浸透、病院や医師会の糖質制限食講演依頼が増加
2012年07月24日 (火)の本ブログ記事をご参照ください。
10)①2012年9月3日(月)「情報ライブ ミヤネ屋」読売テレビ、生出演。
2012年09月03日 (月)の本ブログ記事をご参照ください。
②2012年9月15日(土)TBS報道特集出演
TBSの「報道特集」で糖質制限食の話題、ニュートラルでgood job。
2012年09月16日 (日)の本ブログ記事をご参照ください。
*22回日本疫学会学術総会2012年1月26〜28日 久山町研究
「米」の摂取量が少ないと、認知症リスク低下
2012年10月10日 (水)の本ブログ記事をご参照ください。
*世界初のエリスリトールチョコ、シュクリーベ誕生
2012年01月22日 (日)の本ブログ記事をご参照ください。
こんばんは。
今年は、糖質制限食の普及において、激動の年でした。
何と言っても、2012年1月15日(日)第15回日本病態栄養学会年次学術集会における
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」
ディベートの成功が出発点でした。
日本医学界に確実に糖質制限食の橋頭堡を築けたと思います。
ディベート以降、病院や医師会からの糖質制限食講演依頼が目に見えて増加しました。
その流れの中で第55回日本糖尿病学会年次学術集会のDebate to Consensus 5で、糖質制限食が糖尿病食事療法の選択肢の一つとして、コンセンサスを得たのも、カロリー制限食一辺倒からの歴史的転換と言えます。
米国糖尿病学会、英国糖尿病学会の糖質制限食に対するスタンスも、追い風となりました。
医療関係者専門サイトm3.com、糖質制限食に関する「臨床道場」も医学界への浸透に貢献してくれたと思います。
夏井睦先生のホームページで、糖質制限食の話題がおおいに盛り上がり現在に至っていることも、大きな力となりました。夏井先生のサイトは、もともと医師が多く、進取気鋭精神で湿潤療法に取り組んでおられ、糖質制限食も理論的に自分で判断して早速実践してくれた方が多かったのです。
マスコミ、出版関係では桐山秀樹氏の「おやじダイエット部の奇跡」マガジンハウス (2012/4/26)がベストセラーになり、おやじダイエット部メンバーが、TBSテレビ番組「アカルイ☆ミライ」に出演し大反響を巻き起こしました。
テレビの威力は大きく、番組で桐山さんに、江部康二の本の宣伝をしていただいたのでおおいに売り上げが伸びて感謝でした。
2012年度は、新刊も数冊上梓しました。
「アカルイ☆ミライ」をきっかけに、一般社会における「糖質制限食」の認知度は、飛躍的に向上しました。
私も、何本かテレビに出演しましたが、「情報ライブ ミヤネ屋」読売テレビとTBSテレビ「報道特集」は15~20分ぐらい出演時間があり、満足度が高かったです。
このような追い風の状況で、糖質制限食の同志が集まる会、いち早く、北九州三島さんが、「糖質セイゲニストin北九州」を立ち上げられ、月例会を開催されて、糖質制限OKなメニューを作ったり、糖質制限な話題を勉強したり、活発な活動を展開しておられます。このような会が各地にできればいいですね。
その中で抵抗勢力も、ネガティブ・キャンペーンを仕掛けてきました。
読売新聞、日本経済新聞が「低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?」という結論のBMJ論文を取り上げて、糖質制限食批判を展開しました。
しかしながらこの論文、全く信頼度の低いもので、BMJに届いた世界中の医師からのコメント全てが否定的見解という前代未聞の事態を招きました。
私もブログ記事で、完膚なきまでに批判しています。
番外編では、米の摂取量が多いと認知症が増えるという久山町研究の発表は衝撃的でした。
しっかり糖質(米)を摂取するよう栄養指導した結果、糖尿病はおろか認知症まで劇的に増加させたとは、久山町の悲劇再びです。
シュクリーベチョコ、世界初のエリスリトールチョコです。
エリスリトールが発見され量産できるようになって以来数十年、世界中でエリスリトールが主成分のチョコレートを作ろうとしてきたのですが未だかつて成功したことがなかったのです。
それをHealthy Sweet社の高森由香社長が完成させたのです。
これは、どう考えても素晴らしい快挙なので、番外編に登場させました。
さて、今年も糖質制限食10大ニュースを始めとしていろいろありましたが、ブログ読者の皆さんには、コメント・質問・ご意見・情報を沢山いただき、本ブログを盛りあげていただいてありがとうございました。
また拙著のご購入や講演会へのご参加、そして糖質制限食普及活動・・・も誠にありがとうございました。m(_ _)mVV
皆さんのおかげで、活気に溢れて内容も充実した(今年も自画自賛?)ブログを展開することができました。
2007年2月27日に開始した本ブログ、1日のアクセス数が10000~15000件という、人気ブログに成長しました。(⌒o⌒)v
これも一重に、ブログ読者の皆さんのおかげです。
一番多い日は、アクセス数が15000件を超えた日もありました。
累積アクセス数も、2012年12月31日現在で、11216902件です。
ブログ読者の皆さん、今年、1年間、お世話になりありがとうございました。
来年もよろしくお願い申し上げます。
それでは、どうぞ良いお年を。
江部康二
1)2012年1月15日(日)第15回日本病態栄養学会年次学術集会(国立京都国際会館)
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」ディベート開催。
2012年01月16日 (月)本ブログ記事ご参照ください。
2)2012年5月18日(金)第55回日本糖尿病学会年次学術集会の
Debate to Consensus 5で、糖質制限食が糖尿 病食事療法の選択肢の一つとして、
コンセンサスを得る。
2012年05月19日 (土)本ブログ記事ご参照ください。
3)桐山秀樹氏の「おやじダイエット部の奇跡」マガジンハウス (2012/4/26)
ベストセラーに
おやじダイエット部メンバー、テレビ番組「明るい未来」に出演し大反響。
4)米国糖尿病学会、2012年2月のレビュー論文で、糖質制限食を格上げ。
2012年03月16日 (金)本ブログ記事ご参照ください。
英国糖尿病学会、2011年のガイドラインで糖質制限食を選択肢の一つに
2012年10月27日 (土)本ブログ記事ご参照ください。
5)糖質制限食へのネガティブ・キャンペーン、読売新聞、日本経済新聞、
低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?のBMJ論文
①2012年07月03日 (火)の本ブログ記事ご参照ください。
「低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?という論文を検討。」
②2012年07月13日 (金)の本ブログ記事ご参照ください。
「低糖質・高蛋白質で心血管イベントが上昇!?という論文へ専門家の批判」
6)医療関係者専門サイトm3.com、糖質制限食に関する「臨床道場」に登場
5月22日~6月5日
2012年05月30日 (水)の本ブログ記事をご参照ください。
「江部康二の食生活日記、医療関係者向けサイト、m3.com」
7)夏井睦先生のホームページで糖質制限食がブレイク
2012年03月20日 (火)本ブログ記事をご参照ください。
8)北九州三島さん「糖質セイゲニストin北九州」月例会、発足し活発な活動開始。
江部康二「糖質制限食」講演会 in 北九州(5月13日)満員御礼
2012年04月28日 (土)の本ブログ記事をご参照ください。
9)糖質制限食の医学界への浸透、病院や医師会の糖質制限食講演依頼が増加
2012年07月24日 (火)の本ブログ記事をご参照ください。
10)①2012年9月3日(月)「情報ライブ ミヤネ屋」読売テレビ、生出演。
2012年09月03日 (月)の本ブログ記事をご参照ください。
②2012年9月15日(土)TBS報道特集出演
TBSの「報道特集」で糖質制限食の話題、ニュートラルでgood job。
2012年09月16日 (日)の本ブログ記事をご参照ください。
*22回日本疫学会学術総会2012年1月26〜28日 久山町研究
「米」の摂取量が少ないと、認知症リスク低下
2012年10月10日 (水)の本ブログ記事をご参照ください。
*世界初のエリスリトールチョコ、シュクリーベ誕生
2012年01月22日 (日)の本ブログ記事をご参照ください。
こんばんは。
今年は、糖質制限食の普及において、激動の年でした。
何と言っても、2012年1月15日(日)第15回日本病態栄養学会年次学術集会における
「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」
ディベートの成功が出発点でした。
日本医学界に確実に糖質制限食の橋頭堡を築けたと思います。
ディベート以降、病院や医師会からの糖質制限食講演依頼が目に見えて増加しました。
その流れの中で第55回日本糖尿病学会年次学術集会のDebate to Consensus 5で、糖質制限食が糖尿病食事療法の選択肢の一つとして、コンセンサスを得たのも、カロリー制限食一辺倒からの歴史的転換と言えます。
米国糖尿病学会、英国糖尿病学会の糖質制限食に対するスタンスも、追い風となりました。
医療関係者専門サイトm3.com、糖質制限食に関する「臨床道場」も医学界への浸透に貢献してくれたと思います。
夏井睦先生のホームページで、糖質制限食の話題がおおいに盛り上がり現在に至っていることも、大きな力となりました。夏井先生のサイトは、もともと医師が多く、進取気鋭精神で湿潤療法に取り組んでおられ、糖質制限食も理論的に自分で判断して早速実践してくれた方が多かったのです。
マスコミ、出版関係では桐山秀樹氏の「おやじダイエット部の奇跡」マガジンハウス (2012/4/26)がベストセラーになり、おやじダイエット部メンバーが、TBSテレビ番組「アカルイ☆ミライ」に出演し大反響を巻き起こしました。
テレビの威力は大きく、番組で桐山さんに、江部康二の本の宣伝をしていただいたのでおおいに売り上げが伸びて感謝でした。
2012年度は、新刊も数冊上梓しました。
「アカルイ☆ミライ」をきっかけに、一般社会における「糖質制限食」の認知度は、飛躍的に向上しました。
私も、何本かテレビに出演しましたが、「情報ライブ ミヤネ屋」読売テレビとTBSテレビ「報道特集」は15~20分ぐらい出演時間があり、満足度が高かったです。
このような追い風の状況で、糖質制限食の同志が集まる会、いち早く、北九州三島さんが、「糖質セイゲニストin北九州」を立ち上げられ、月例会を開催されて、糖質制限OKなメニューを作ったり、糖質制限な話題を勉強したり、活発な活動を展開しておられます。このような会が各地にできればいいですね。
その中で抵抗勢力も、ネガティブ・キャンペーンを仕掛けてきました。
読売新聞、日本経済新聞が「低糖質・高蛋白質摂取で心血管イベントが上昇!?」という結論のBMJ論文を取り上げて、糖質制限食批判を展開しました。
しかしながらこの論文、全く信頼度の低いもので、BMJに届いた世界中の医師からのコメント全てが否定的見解という前代未聞の事態を招きました。
私もブログ記事で、完膚なきまでに批判しています。
番外編では、米の摂取量が多いと認知症が増えるという久山町研究の発表は衝撃的でした。
しっかり糖質(米)を摂取するよう栄養指導した結果、糖尿病はおろか認知症まで劇的に増加させたとは、久山町の悲劇再びです。
シュクリーベチョコ、世界初のエリスリトールチョコです。
エリスリトールが発見され量産できるようになって以来数十年、世界中でエリスリトールが主成分のチョコレートを作ろうとしてきたのですが未だかつて成功したことがなかったのです。
それをHealthy Sweet社の高森由香社長が完成させたのです。
これは、どう考えても素晴らしい快挙なので、番外編に登場させました。
さて、今年も糖質制限食10大ニュースを始めとしていろいろありましたが、ブログ読者の皆さんには、コメント・質問・ご意見・情報を沢山いただき、本ブログを盛りあげていただいてありがとうございました。
また拙著のご購入や講演会へのご参加、そして糖質制限食普及活動・・・も誠にありがとうございました。m(_ _)mVV
皆さんのおかげで、活気に溢れて内容も充実した(今年も自画自賛?)ブログを展開することができました。
2007年2月27日に開始した本ブログ、1日のアクセス数が10000~15000件という、人気ブログに成長しました。(⌒o⌒)v
これも一重に、ブログ読者の皆さんのおかげです。
一番多い日は、アクセス数が15000件を超えた日もありました。
累積アクセス数も、2012年12月31日現在で、11216902件です。
ブログ読者の皆さん、今年、1年間、お世話になりありがとうございました。
来年もよろしくお願い申し上げます。
それでは、どうぞ良いお年を。
江部康二
2012年12月31日 (月)
おはようございます。
大学病院30代神経内科医さんより、「糖質制限を通じて見えた世界」という興味深いコメントをいただきました。
【12/12/30 tagashuu
糖質制限を通じて見えた世界
江部先生,皆様,今年は大変お世話になりました.tagashuu@大学病院30代神経内科医です.
新しい創傷治療の夏井睦先生のホームページで糖質制限を知り,先生の著書・ブログを参考に実践して1年が経ちました.
この1年は私にとって人生をかえるきっかけとなる重要な1年となりました.
糖質制限開始前には身長180cm, 体重134㎏, BMI 41.3という高度肥満者でしたが,実践から10ヶ月で102㎏まで減量できました.現在もスーパー糖質制限を続けていますが,今のところ体重は横ばいです.おそらく階段状の体重減少の途中なのでしょう.
また個人的な事情で開始前は抑うつ状態が強く,医者を辞めることや自殺まで頭をよぎっている状態でしたが,糖質制限の実践により再び前向きな考えができるようになりました.
まさに心身ともに救って頂きました.そして江部先生が基礎理論を構築していなければ,糖質制限をここまで自信を持って長期的に継続していくことはできなかったかもしれません.理論面からも納得のできるこの食事療法をこれからも一生続けていくつもりでいます.
自分が糖質制限を実践することで診療スタイルも大きく変わりました.自分が糖質制限を実践しているから,確信を持って患者さんに勧めることができます.
かつて私は別の病院の神経内科外来で脳梗塞の再発予防を担当していた時期に,非常に聞き分けのいい,医者の言うことを何でも聞いてくださる50代の男性と出会いました.
当時の食事指導はすべて栄養士に任せてしまう体たらくでした.これ以外にスタチン,糖尿病治療薬,禁煙などの治療を行い,それを患者さんはすべて遵守してくれました.
しかし,ある日その患者さんは脳梗塞を再発してしまいます.その当時は「守っていると言いながら,実は食事が守れていなかったのだろう」と勘繰ってしまっている自分がいましたが,今にして思えば糖質中心の食事指導を行ったせいだったのかもしれません.
その反省の意も込めて,今は大学病院でどれだけ周りに反対されようと糖質制限を選択肢の一つとして必ず提示する自分の新しい診療スタイルを崩さないようにしています.
そして,自分が糖質制限実践者であるからこそ,具体的かつ実践可能なアドバイスができるというのもこの1年感じたことの一つです.
たとえば,それまでの私の食事指導は「カロリーを取りすぎないように」「バランスのよい食事を」「塩分を控えること」というのが決まった3パターンでした.それ以外の詳しいことは栄養士に聞くようにという逃げの一手を打ってしまっていました.
でも今は自分の経験を通じて様々な具体的なアドバイスをすることができています.たとえば「小原がすいた時はスナック菓子や和菓子ではなく,チーズやナッツ類を選びなさい」「甘いものがどうしてもほしい時は人工甘味料を使ったり,カロリーゼロのゼリーやジュースを買いなさい」「朝はパンですますのではなく,焼き魚や卵料理,野菜サラダなどを食べるようにしなさい」などです.コンビニで買う場合は?外食の場合は?などあらゆる質問に今なら具体的に返答することができます.
糖質制限を通じて今まで見えてこなかった世界もいろいろと見えてきました.糖質処理には個人差があり,糖質の取り過ぎで太る人と,太れない人がいること.太れない人が上手に糖質を利用できているとは限らず,原因不明のめまいやアレルギー,認知症などの原因となっている可能性があること,逆流性食道炎や尋常性乾癬,多嚢胞性卵巣症候群など一見関係なさそうな病気にも糖質過剰の関与があること,ケトン食と通じた概念であり,アルツハイマー病だけでなくパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症などの変性疾患,うつ病,自閉症などの精神疾患,ミトコンドリア病に対する治療の可能性を秘めていること,アンチエイジング効果があり,健康寿命を延ばすことができるかもしれないこと,などなど数えたらきりがないほどの新事実を学びました.
糖質制限への興味は尽きません.江部先生には人生を救って頂き本当に感謝しています.
今後も先生のブログを愛読させて頂くとともに,糖質制限の普及に微力ながら貢献して参りたいと思います.
それでは皆様よいお年を.
来年も何卒宜しくお願い申し上げます.】
tagashuu@大学病院30代神経内科医さん。
拙著の御購入、そして意義深いコメント、ありがとうございます。
32kgの減量成功、心身の健康改善、良かったです。
自分自身が糖質制限食を実践している医師による患者さんへのアドバイスは、やはり説得力がありますね。
2012年5月22日(火)~6月4日(月)まで
医療関係者専門サイトのm3.comで糖質制限食に関する「臨床道場」を担当し、医師からの様々な質問に回答しました。
賛成意見と反対意見といろいろありました。
興味深かったのは、糖質制限食賛成派の医師は、ほぼ全身が自ら糖質制限食を実践しておられました。
一方、反対派の医師は、全員が糖質制限食は実践せずに、従来の常識のみを根拠に見解を述べておられました。
従来の常識に捕らわれずに、自分自身の頭で考えて物事を判断することができるタイプか否かで、はっきり分かれたようです。
「糖質制限を通じて今まで見えてこなかった世界もいろいろと見えてきました」
同感です。
文明病とか生活習慣病とか原因不明とされてきた、多くの慢性疾患が、実は糖質の頻回過剰摂取が元凶であった可能性が高いと思います。
農耕前の700万年間は、糖質は、時々手に入るラッキー食材でした。
人類が穀物を主食としたのは、長い歴史の中でわずか1/700の期間に過ぎません。
すなわち、時々手に入る果物やナッツ、そして山芋や百合根などの根茎類くらいが比較的糖質の多い食材でした。
これらのラッキー食材から得た糖質は、消化吸収されたあとインスリンにより脂肪に変わり、来るべき飢餓に備える唯一のセーフティーネットとなっていたと考えられます。
インスリンは今でこそ肥満ホルモンというありがたくない別称をもっていますが、狩猟・採集時代はその脂肪を蓄える能力は、とても重要な意味をもっていたわけです。
本来、脂肪を蓄えるためのラッキー食材だったはずの糖質を、農耕開始後は日常的に毎日食べるようになりました。
さらにこの200~300年間は精製された炭水化物を食べるようになりました。
現在先進国では、精製された炭水化物であるご飯やパンや麺、そして砂糖水のような清涼飲料水を日常的に大量に摂取しています。
このことが肥満や糖尿病や様々な生活習慣病の元凶となっていると私は思います。
人類の身体の消化・吸収・栄養・代謝システムは、700万年間の糖質制限食の過程を経て、突然変異を繰り返して完成されたものであり、糖質制限食に適合しています。
すなわち総摂取カロリーの50~60%が糖質という現代の穀物ベースの食生活は、人体にとってはとんでもなくバランスの悪いものなのです。
糖質制限食は、人類本来の食事、いわば人類の健康食ですので、糖尿病や肥満をはじめとして様々な生活習慣病が改善していくと考えられます。
江部康二
大学病院30代神経内科医さんより、「糖質制限を通じて見えた世界」という興味深いコメントをいただきました。
【12/12/30 tagashuu
糖質制限を通じて見えた世界
江部先生,皆様,今年は大変お世話になりました.tagashuu@大学病院30代神経内科医です.
新しい創傷治療の夏井睦先生のホームページで糖質制限を知り,先生の著書・ブログを参考に実践して1年が経ちました.
この1年は私にとって人生をかえるきっかけとなる重要な1年となりました.
糖質制限開始前には身長180cm, 体重134㎏, BMI 41.3という高度肥満者でしたが,実践から10ヶ月で102㎏まで減量できました.現在もスーパー糖質制限を続けていますが,今のところ体重は横ばいです.おそらく階段状の体重減少の途中なのでしょう.
また個人的な事情で開始前は抑うつ状態が強く,医者を辞めることや自殺まで頭をよぎっている状態でしたが,糖質制限の実践により再び前向きな考えができるようになりました.
まさに心身ともに救って頂きました.そして江部先生が基礎理論を構築していなければ,糖質制限をここまで自信を持って長期的に継続していくことはできなかったかもしれません.理論面からも納得のできるこの食事療法をこれからも一生続けていくつもりでいます.
自分が糖質制限を実践することで診療スタイルも大きく変わりました.自分が糖質制限を実践しているから,確信を持って患者さんに勧めることができます.
かつて私は別の病院の神経内科外来で脳梗塞の再発予防を担当していた時期に,非常に聞き分けのいい,医者の言うことを何でも聞いてくださる50代の男性と出会いました.
当時の食事指導はすべて栄養士に任せてしまう体たらくでした.これ以外にスタチン,糖尿病治療薬,禁煙などの治療を行い,それを患者さんはすべて遵守してくれました.
しかし,ある日その患者さんは脳梗塞を再発してしまいます.その当時は「守っていると言いながら,実は食事が守れていなかったのだろう」と勘繰ってしまっている自分がいましたが,今にして思えば糖質中心の食事指導を行ったせいだったのかもしれません.
その反省の意も込めて,今は大学病院でどれだけ周りに反対されようと糖質制限を選択肢の一つとして必ず提示する自分の新しい診療スタイルを崩さないようにしています.
そして,自分が糖質制限実践者であるからこそ,具体的かつ実践可能なアドバイスができるというのもこの1年感じたことの一つです.
たとえば,それまでの私の食事指導は「カロリーを取りすぎないように」「バランスのよい食事を」「塩分を控えること」というのが決まった3パターンでした.それ以外の詳しいことは栄養士に聞くようにという逃げの一手を打ってしまっていました.
でも今は自分の経験を通じて様々な具体的なアドバイスをすることができています.たとえば「小原がすいた時はスナック菓子や和菓子ではなく,チーズやナッツ類を選びなさい」「甘いものがどうしてもほしい時は人工甘味料を使ったり,カロリーゼロのゼリーやジュースを買いなさい」「朝はパンですますのではなく,焼き魚や卵料理,野菜サラダなどを食べるようにしなさい」などです.コンビニで買う場合は?外食の場合は?などあらゆる質問に今なら具体的に返答することができます.
糖質制限を通じて今まで見えてこなかった世界もいろいろと見えてきました.糖質処理には個人差があり,糖質の取り過ぎで太る人と,太れない人がいること.太れない人が上手に糖質を利用できているとは限らず,原因不明のめまいやアレルギー,認知症などの原因となっている可能性があること,逆流性食道炎や尋常性乾癬,多嚢胞性卵巣症候群など一見関係なさそうな病気にも糖質過剰の関与があること,ケトン食と通じた概念であり,アルツハイマー病だけでなくパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症などの変性疾患,うつ病,自閉症などの精神疾患,ミトコンドリア病に対する治療の可能性を秘めていること,アンチエイジング効果があり,健康寿命を延ばすことができるかもしれないこと,などなど数えたらきりがないほどの新事実を学びました.
糖質制限への興味は尽きません.江部先生には人生を救って頂き本当に感謝しています.
今後も先生のブログを愛読させて頂くとともに,糖質制限の普及に微力ながら貢献して参りたいと思います.
それでは皆様よいお年を.
来年も何卒宜しくお願い申し上げます.】
tagashuu@大学病院30代神経内科医さん。
拙著の御購入、そして意義深いコメント、ありがとうございます。
32kgの減量成功、心身の健康改善、良かったです。
自分自身が糖質制限食を実践している医師による患者さんへのアドバイスは、やはり説得力がありますね。
2012年5月22日(火)~6月4日(月)まで
医療関係者専門サイトのm3.comで糖質制限食に関する「臨床道場」を担当し、医師からの様々な質問に回答しました。
賛成意見と反対意見といろいろありました。
興味深かったのは、糖質制限食賛成派の医師は、ほぼ全身が自ら糖質制限食を実践しておられました。
一方、反対派の医師は、全員が糖質制限食は実践せずに、従来の常識のみを根拠に見解を述べておられました。
従来の常識に捕らわれずに、自分自身の頭で考えて物事を判断することができるタイプか否かで、はっきり分かれたようです。
「糖質制限を通じて今まで見えてこなかった世界もいろいろと見えてきました」
同感です。
文明病とか生活習慣病とか原因不明とされてきた、多くの慢性疾患が、実は糖質の頻回過剰摂取が元凶であった可能性が高いと思います。
農耕前の700万年間は、糖質は、時々手に入るラッキー食材でした。
人類が穀物を主食としたのは、長い歴史の中でわずか1/700の期間に過ぎません。
すなわち、時々手に入る果物やナッツ、そして山芋や百合根などの根茎類くらいが比較的糖質の多い食材でした。
これらのラッキー食材から得た糖質は、消化吸収されたあとインスリンにより脂肪に変わり、来るべき飢餓に備える唯一のセーフティーネットとなっていたと考えられます。
インスリンは今でこそ肥満ホルモンというありがたくない別称をもっていますが、狩猟・採集時代はその脂肪を蓄える能力は、とても重要な意味をもっていたわけです。
本来、脂肪を蓄えるためのラッキー食材だったはずの糖質を、農耕開始後は日常的に毎日食べるようになりました。
さらにこの200~300年間は精製された炭水化物を食べるようになりました。
現在先進国では、精製された炭水化物であるご飯やパンや麺、そして砂糖水のような清涼飲料水を日常的に大量に摂取しています。
このことが肥満や糖尿病や様々な生活習慣病の元凶となっていると私は思います。
人類の身体の消化・吸収・栄養・代謝システムは、700万年間の糖質制限食の過程を経て、突然変異を繰り返して完成されたものであり、糖質制限食に適合しています。
すなわち総摂取カロリーの50~60%が糖質という現代の穀物ベースの食生活は、人体にとってはとんでもなくバランスの悪いものなのです。
糖質制限食は、人類本来の食事、いわば人類の健康食ですので、糖尿病や肥満をはじめとして様々な生活習慣病が改善していくと考えられます。
江部康二
2012年12月30日 (日)
おはようございます。
モン吉さんから、糖質制限食3年目で耐糖能改善という嬉しいコメントを
いただきました。
【12/12/28 モン吉
検診日
こんばんは
江部先生のご提案で今回大福もち2個食べての検診でした。
糖質は2個で約70グラムです。
結果は90分後の血糖値149mgでした。
糖質制限食を始めて現在5年9か月ですが、始めて2年~2年半位はご飯1膳食べての1時間後の血糖値は軽く200越えでしたが、3年位過ぎた頃から200以内に治まるようになってきました。
今回の結果はかなりβ細胞が元気になってきたようです。
平成19年3月に発覚した時の数値と、今回の数値を比較してみました。
平成19年3月 平成24年12月
体重 68㌔ 57㌔
血圧 95-156 60-126
HbA1c(JDS) 10.7 5.2
食後血糖値 389mg 149mg
尿糖 4+ -
尿タンパク - -
GOT 23 13
GPT 40 17
γ-GT 49 15
LDL 130 119
HDL 42 82
クレアチニン 0.82 0.77
シスタチンC 0.71
尿中アルブミン(補正値) 5.4
インスリン注射も薬もなしでしたから、改めて糖質制限食の効果をとても実感しています。
一般的なカロリー制限食して、注射か薬を飲んでいたらと思うとゾッとします。
8年前に亡くなった父は一生懸命カロリー制限食をやっていて、合併症が出ていましたので。 もう少し早く知っていれば教えられたのにと心残りです。
江部先生には大変感謝しております。
益々、糖質制限食が広がっていますし、一人でも多くの方が助かって欲しいですね。】
モン吉さん
素晴らしい成果ですね。
糖質70g食べても、食後90分血糖値が149mgとは、明らかに耐糖能が改善してます。
おめでとうございます。
かつては、ご飯1膳で食後血糖値が軽く200mg超えですから「1gの糖質が3mg血糖値を上昇させる」という2型糖尿人の公式が当てはまっていたのだと思います。
今回、70gの糖質(大福2個)を食べても、食後90分血糖値が149mg/dlですから、「1gの糖質が1mg未満しか上昇させていない」ですね。
これは、耐糖能が正常型に復活しているとしか言いようがありません。
大福2個摂取後2時間血糖値はおそらく140mg/dl未満の正常型と思われます。
素晴らしいです。
平成19年3月 平成24年12月
HbA1c(JDS) 10.7 → 5.2 %
LDL 130 → 119mg/dl
HDL 42 → 82mg/dl
GPT 40 → 17IU/L
も見事です。
薬なしで
糖尿病から正常型
HbA1cも正常基準値
HDL-Cも倍増
脂肪肝も正常化
天晴れです。
食後高血糖も平均血糖変動幅増大もない良質のHbA1cであり、糖尿病合併症の心配も皆無です。
御父上のことは残念です。
私の父も同様で、77才で右大腿切断、80才で心筋梗塞・肺炎で亡くなりました。
一医師として、一糖尿人として、多くの糖尿人が、バーンスタイン医師も指摘されているように糖質制限食で正常な血糖値を保ち、透析、失明、下肢切断、心筋梗塞、脳梗塞・・・糖尿病合併症地獄から脱却されることを願ってやみません。
江部康二
モン吉さんから、糖質制限食3年目で耐糖能改善という嬉しいコメントを
いただきました。
【12/12/28 モン吉
検診日
こんばんは
江部先生のご提案で今回大福もち2個食べての検診でした。
糖質は2個で約70グラムです。
結果は90分後の血糖値149mgでした。
糖質制限食を始めて現在5年9か月ですが、始めて2年~2年半位はご飯1膳食べての1時間後の血糖値は軽く200越えでしたが、3年位過ぎた頃から200以内に治まるようになってきました。
今回の結果はかなりβ細胞が元気になってきたようです。
平成19年3月に発覚した時の数値と、今回の数値を比較してみました。
平成19年3月 平成24年12月
体重 68㌔ 57㌔
血圧 95-156 60-126
HbA1c(JDS) 10.7 5.2
食後血糖値 389mg 149mg
尿糖 4+ -
尿タンパク - -
GOT 23 13
GPT 40 17
γ-GT 49 15
LDL 130 119
HDL 42 82
クレアチニン 0.82 0.77
シスタチンC 0.71
尿中アルブミン(補正値) 5.4
インスリン注射も薬もなしでしたから、改めて糖質制限食の効果をとても実感しています。
一般的なカロリー制限食して、注射か薬を飲んでいたらと思うとゾッとします。
8年前に亡くなった父は一生懸命カロリー制限食をやっていて、合併症が出ていましたので。 もう少し早く知っていれば教えられたのにと心残りです。
江部先生には大変感謝しております。
益々、糖質制限食が広がっていますし、一人でも多くの方が助かって欲しいですね。】
モン吉さん
素晴らしい成果ですね。
糖質70g食べても、食後90分血糖値が149mgとは、明らかに耐糖能が改善してます。
おめでとうございます。
かつては、ご飯1膳で食後血糖値が軽く200mg超えですから「1gの糖質が3mg血糖値を上昇させる」という2型糖尿人の公式が当てはまっていたのだと思います。
今回、70gの糖質(大福2個)を食べても、食後90分血糖値が149mg/dlですから、「1gの糖質が1mg未満しか上昇させていない」ですね。
これは、耐糖能が正常型に復活しているとしか言いようがありません。
大福2個摂取後2時間血糖値はおそらく140mg/dl未満の正常型と思われます。
素晴らしいです。
平成19年3月 平成24年12月
HbA1c(JDS) 10.7 → 5.2 %
LDL 130 → 119mg/dl
HDL 42 → 82mg/dl
GPT 40 → 17IU/L
も見事です。
薬なしで
糖尿病から正常型
HbA1cも正常基準値
HDL-Cも倍増
脂肪肝も正常化
天晴れです。
食後高血糖も平均血糖変動幅増大もない良質のHbA1cであり、糖尿病合併症の心配も皆無です。
御父上のことは残念です。
私の父も同様で、77才で右大腿切断、80才で心筋梗塞・肺炎で亡くなりました。
一医師として、一糖尿人として、多くの糖尿人が、バーンスタイン医師も指摘されているように糖質制限食で正常な血糖値を保ち、透析、失明、下肢切断、心筋梗塞、脳梗塞・・・糖尿病合併症地獄から脱却されることを願ってやみません。
江部康二
2012年12月29日 (土)
以下MT Pro から 一部を転載
「糖質制限で正常血糖を」
Bernstein氏が動画コメント
/Medical Tribune紙連載のインタビューを終えて
[2012年12月28日]
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212081.html
「糖質制限で正常血糖を」Bernstein氏が動画コメント
Medical Tribune紙連載のインタビューを終えて
Medical Tribenu紙では12月発行号で,糖質制限食の生みの親であるRichard K. Bernstein氏に対するインタビューを4回にわたり連載した(聞き手:北里研究所病院糖尿病センター長・山田悟氏)。インタビューの最後に,
Bernstein氏から動画メッセージを寄せてもらった。(編集部)
Bernstein氏
「糖尿病患者さんは糖尿病ではない人と同じように血糖値を正常にできますし、甲状腺ホルモンT3値についても同様です。
正常血糖値を保つことは糖質制限を行えば比較的容易なことですし、私の著書『糖尿病の解決』をお読みいただければ確実に、糖尿病患者を異常な血糖のままにさせておく言い訳はなくなります」
【12/12/29 わんわんこと長谷川
江部先生。バーンスタイン先生の記事、ありがとうございました。
4回の連載を終えて、B先生の動画メッセージがあるのですが、医療関係者以外見られないようです。恐れ入りますが、ポイントを記事にしていただければうれしいです。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212081.html
少し早いですけど、私にとって今年は糖尿病と正面から向きあった年、江部先生・糖質制限食と出会った年になりました。現代が糖質過多になっていることへの先生の警鐘が一刻もはやく社会に受け入れられ、常識となり、対策が考えられるようになるようにと思います。
「仮称・糖質制限食を広げる会(東京)」は、参加表明をされた方が15名で、準備会が動き始めました。全員が初対面ですので、今はコミュニケーションを図りながら活動の仕方について話しはじめた段階です。少し時間がかかると思いますが、年が明けしばらくたってその時が来たら、首都圏の方に会への参加をあらためて、呼びかけたいと考えています。
ブログの読者の皆さんで、参加したいと思う方は、もう少し時間をください。
江部先生。皆さん。よいお年を! 】
長谷川さん
コメントありがとうございます。
ウェブの MT Pro 記事、医療関係者だけのようですね。
動画、幸いごく短いメッセージで、画面の下に日本語訳がありましたので記事にします。
「糖尿病患者さんは糖尿病ではない人と同じように血糖値を正常にできますし、
・・・・糖尿病患者を異常な血糖のままにさせておく言い訳はなくなります」
日本糖尿病学会の重鎮の先生方に、是非聞いていただきたい珠玉のメッセージですね。
カロリー制限食(高糖質食)では、決して食後高血糖を防ぐことはできないのですから、少なくともそのことを糖尿病患者さんに説明することは、医師として最低限度の義務であると私は思います。
「糖質制限食を広げる会(東京)」来年の活動開始が楽しみです。
江部康二
「糖質制限で正常血糖を」
Bernstein氏が動画コメント
/Medical Tribune紙連載のインタビューを終えて
[2012年12月28日]
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212081.html
「糖質制限で正常血糖を」Bernstein氏が動画コメント
Medical Tribune紙連載のインタビューを終えて
Medical Tribenu紙では12月発行号で,糖質制限食の生みの親であるRichard K. Bernstein氏に対するインタビューを4回にわたり連載した(聞き手:北里研究所病院糖尿病センター長・山田悟氏)。インタビューの最後に,
Bernstein氏から動画メッセージを寄せてもらった。(編集部)
Bernstein氏
「糖尿病患者さんは糖尿病ではない人と同じように血糖値を正常にできますし、甲状腺ホルモンT3値についても同様です。
正常血糖値を保つことは糖質制限を行えば比較的容易なことですし、私の著書『糖尿病の解決』をお読みいただければ確実に、糖尿病患者を異常な血糖のままにさせておく言い訳はなくなります」
【12/12/29 わんわんこと長谷川
江部先生。バーンスタイン先生の記事、ありがとうございました。
4回の連載を終えて、B先生の動画メッセージがあるのですが、医療関係者以外見られないようです。恐れ入りますが、ポイントを記事にしていただければうれしいです。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212081.html
少し早いですけど、私にとって今年は糖尿病と正面から向きあった年、江部先生・糖質制限食と出会った年になりました。現代が糖質過多になっていることへの先生の警鐘が一刻もはやく社会に受け入れられ、常識となり、対策が考えられるようになるようにと思います。
「仮称・糖質制限食を広げる会(東京)」は、参加表明をされた方が15名で、準備会が動き始めました。全員が初対面ですので、今はコミュニケーションを図りながら活動の仕方について話しはじめた段階です。少し時間がかかると思いますが、年が明けしばらくたってその時が来たら、首都圏の方に会への参加をあらためて、呼びかけたいと考えています。
ブログの読者の皆さんで、参加したいと思う方は、もう少し時間をください。
江部先生。皆さん。よいお年を! 】
長谷川さん
コメントありがとうございます。
ウェブの MT Pro 記事、医療関係者だけのようですね。
動画、幸いごく短いメッセージで、画面の下に日本語訳がありましたので記事にします。
「糖尿病患者さんは糖尿病ではない人と同じように血糖値を正常にできますし、
・・・・糖尿病患者を異常な血糖のままにさせておく言い訳はなくなります」
日本糖尿病学会の重鎮の先生方に、是非聞いていただきたい珠玉のメッセージですね。
カロリー制限食(高糖質食)では、決して食後高血糖を防ぐことはできないのですから、少なくともそのことを糖尿病患者さんに説明することは、医師として最低限度の義務であると私は思います。
「糖質制限食を広げる会(東京)」来年の活動開始が楽しみです。
江部康二
2012年12月29日 (土)
こんにちは。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第4弾、最終回です。
<見逃されがちな胃排泄遅延は血糖コントロールも困難>
迷走神経障害による胃不全麻痺と胃排泄遅延ですが、当然日本の糖尿病患者さんにもあります。糖尿病罹患、後期合併症の一つとされています。
ただ日本では、バーンスタイン医師が指摘されているほどは頻度は多くないと思います。
頻 度 につ い て の 言 及 は 困難 ですが、Horowitzらは1型糖尿病の56%に、2型糖尿病の30%に 胃排 出遅 延 がみ られ た と報 告 して います。
改定第4版、糖尿病専門医研修ガイドブック、日本糖尿病学会編(診断と治療社)の216ページに胃機能検査の項目があり、「糖尿病自律神経障害による胃腸障害は、食道、胃、小腸から直腸に至るまで異常が認められる。・・・」との記載があります。
そして「・・・胃運動障害による胃排泄遅延は血糖コントロール状態不安定の一因となり、糖尿病罹病期間の長い1型糖尿病患者でよく観察される。」とあります。
ということは、日本の2型糖尿病ではあまり頻度は高くないと思われ、私が診ている2型糖尿人においても、胃不全麻痺と胃排泄遅延による血糖コントロール不安定はあまり経験したことがありません。
高雄病院の700人以上の入院患者さんにおいても、胃排泄遅延によると思われる血糖コントロール不安定があったのは、2~3%未満と思います。つまり入院中に予想外の食後高血糖とかで困る例はほとんどなく、コントロール良好となります。
<“ひもじさ”を解消し,食事療法の強い味方となるインクレチン類似薬>
バーンスタイン医師が期待されているアミリン・アナログ(わが国では臨床導入されていない)ですが、
よくわかりません。またアミリンそのものに関しても、浅学にして知りませんでした。
アミリンはペプチドホルモンで,主に膵β細胞で産生され、摂食抑制作用、胃排泄遅延作用、グルカゴン分泌抑制作用があります。2005年3月より糖尿病治療薬としてFDAに認可されています。
一方、2型糖尿病患者の約90%に膵島におけるアミロイド沈着があるのですが、それにアミリンが関与しているという説もあり、何だかよくわかりません。
また、糖質制限食は、カロリー制限食と異なり、満足するまで食べられるので、そもそも「ひもじさ」とは無縁です。私は「ひもじさ」解消のために薬に頼る意味はないと思います。
江部康二
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45520141/
以下MT Pro から 一部を転載
[2012年12月27日(VOL.45 NO.52) p.14]
シリーズ糖尿病 vol.4(最終回) 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
糖質制限食ダイエットを成功に導くための工夫
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
<見逃されがちな胃排泄遅延は血糖コントロールも困難>
山田 血糖コントロールに影響を与える要因として,先生は消化管機能をもっと重要視すべきであると指摘されておられますね。
Bernstein 糖尿病患者さんは神経障害に起因する胃不全麻痺を合併していることが多いのです。胃不全麻痺は胃排泄遅延のことですが,これは迷走神経が障害を受けることで起こると考えられます。つまり,胃に食物が入ってきても,迷走神経の障害により胃の蠕動運動が弱まっているために,十二指腸から小腸へと押し流されない。そして,胃の膨満感,痛み,嘔気,便秘,時に下痢,胸焼けなどの症状を伴います。
胃排泄遅延は血糖コントロールにどのような影響を与えるのか。当然のことながら,食後に血糖が増えないので,経口血糖降下薬やインスリンを投与している場合は,効果が強くなり過ぎ低血糖を来します。逆に,薬剤やインスリンの効果が切れるころになって食物が小腸に入ってくると,今度は高血糖を来します。
では,胃排泄遅延を見越して薬剤やインスリンを投与すればよさそうなものですが,同じ患者さんでも常に同じ程度の胃排泄遅延を起こすとは限りません。ですから,胃排泄遅延の程度を見越して,その都度,薬剤やインスリンの投与法を変えていくというのは至難の業といえるでしょう。
それでも,患者さんに胃排泄遅延があると分かっている場合はまだいい。問題は胃排泄遅延が見逃されているケースです。医師はその他に血糖コントロールを不良にしている要因があるのではないかと考え,いろいろ余計な詮索に神経を使わされることになります。
糖尿病患者さんで膨満感や痛み,嘔気,便秘などの症状を訴えていたら必ず,またそうした症状がなくても血糖コントロールがうまくいっていない場合には,一度心電図でR-R間隔を調べてみるべきでしょう。これは本来,心拍数を調節する迷走神経の能力を知るための検査ですが,心臓の迷走神経が障害されている場合,たいがいは胃の迷走神経も障害されています。もちろん,胃を含む消化管そのものも検査して,胃炎や胃潰瘍など,糖尿病とは無関係に胃排泄遅延を来す疾患があるかどうかもチェックしておくべきであることはいうまでもありません。
胃排泄遅延が発見された際の対処法としては,胃排泄遅延を改善する薬剤を投与する,胃排泄遅延を促進するような運動やマッサージを食後に行わせる,食事療法の内容を見直すなどの方法があります。食事療法の内容の見直しでは,食事中にまとまった水分(もちろん無糖)を飲む,食物繊維を減らす(またはあらかじめブレンダーにかける),挽いていない肉を除く,夕食時の蛋白質摂取量を減らす,1日3回の食事を1日4回に分けて取るよう変更する,半液状または液状食にするなどの対策が考えられます。食物をゆっくり,よくかむことも大事です。私の患者さんの中には,食後に1時間ほど無糖ガムをかむことで血糖コントロールが改善した人もいますが,おそらくガムをかむことが胃の筋肉の動きまで刺激したのだと思います。
<“ひもじさ”を解消し,食事療法の強い味方となるインクレチン類似薬>
山田 ここ数年の間に,新しい糖尿病治療薬としてインクレチン類似薬が相次いで臨床導入されました。これは食事療法を成功させるための大きな味方になると思うのですが。
Bernstein 膵臓はβ細胞からインスリンとアミリンを,α細胞からグルカゴンを分泌し血糖をコントロールしています。インスリンとアミリンは血糖を減らすとともに,脳に満腹感を覚えさせて食欲を抑制しています。一方,グルカゴンにはインスリンとアミリンの作用に抗して血糖を増加し,食欲を亢進する作用があります。インスリンとアミリン,そしてグルカゴンは,いずれも食事摂取に伴い消化管から分泌される消化管ホルモンのグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(gastric inhibitory polypeptide;GIP)やグルカゴン様ペプチド〔glucagon-like peptide(GLP)-1〕の刺激により分泌されます。
近年,糖尿病患者の血糖コントロールを改善し,また過食を抑制することを目的として,アミリン・アナログ(わが国では臨床導入されていない),GLP-1受容体作動薬,また,GIPやGLP-1を分解することで,これらを失活させるDPP-4の阻害薬などがインクレチン類似薬として臨床導入されました。
これらインクレチン類似薬はいずれも,それ自身で血糖コントロールに有効なだけでなく,食事療法に伴う“ひもじさ”を解消してくれますので,食事療法の強い味方になると思います。私は特にアミリン・アナログに期待しています。というのは,他のインクレチン類似薬があくまでβ細胞を介して作用するものであるのに対して,アミリン・アナログはβ細胞を介さずに作用するものだからです。
つまり,アミリン・アナログはβ細胞機能が全く涸渇している1型糖尿病患者さんや,その一歩手前という2型糖尿病患者さんにも有効だと考えられます。また,アミリンは少量でも効果が非常に強くて,グルカゴンへの拮抗作用をインスリンと比較すると10〜100倍もあります。なお,うれしいことに,インクレチン類似薬で良好な血糖コントロールを保っているうちに,β細胞の再生が促進されるという報告もあります。
インクレチン類似薬の使用で注意したいのは,いずれも胃排泄機能に関しては遅延させる方向に働くことです。これは,血糖値を下げ,食欲を抑制するという同薬の作用を考えれば当然のことなのですが,特に既に胃排泄遅延のある患者さんの場合などは,ごく少量から開始するなどの配慮が必要でしょう。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第4弾、最終回です。
<見逃されがちな胃排泄遅延は血糖コントロールも困難>
迷走神経障害による胃不全麻痺と胃排泄遅延ですが、当然日本の糖尿病患者さんにもあります。糖尿病罹患、後期合併症の一つとされています。
ただ日本では、バーンスタイン医師が指摘されているほどは頻度は多くないと思います。
頻 度 につ い て の 言 及 は 困難 ですが、Horowitzらは1型糖尿病の56%に、2型糖尿病の30%に 胃排 出遅 延 がみ られ た と報 告 して います。
改定第4版、糖尿病専門医研修ガイドブック、日本糖尿病学会編(診断と治療社)の216ページに胃機能検査の項目があり、「糖尿病自律神経障害による胃腸障害は、食道、胃、小腸から直腸に至るまで異常が認められる。・・・」との記載があります。
そして「・・・胃運動障害による胃排泄遅延は血糖コントロール状態不安定の一因となり、糖尿病罹病期間の長い1型糖尿病患者でよく観察される。」とあります。
ということは、日本の2型糖尿病ではあまり頻度は高くないと思われ、私が診ている2型糖尿人においても、胃不全麻痺と胃排泄遅延による血糖コントロール不安定はあまり経験したことがありません。
高雄病院の700人以上の入院患者さんにおいても、胃排泄遅延によると思われる血糖コントロール不安定があったのは、2~3%未満と思います。つまり入院中に予想外の食後高血糖とかで困る例はほとんどなく、コントロール良好となります。
<“ひもじさ”を解消し,食事療法の強い味方となるインクレチン類似薬>
バーンスタイン医師が期待されているアミリン・アナログ(わが国では臨床導入されていない)ですが、
よくわかりません。またアミリンそのものに関しても、浅学にして知りませんでした。
アミリンはペプチドホルモンで,主に膵β細胞で産生され、摂食抑制作用、胃排泄遅延作用、グルカゴン分泌抑制作用があります。2005年3月より糖尿病治療薬としてFDAに認可されています。
一方、2型糖尿病患者の約90%に膵島におけるアミロイド沈着があるのですが、それにアミリンが関与しているという説もあり、何だかよくわかりません。
また、糖質制限食は、カロリー制限食と異なり、満足するまで食べられるので、そもそも「ひもじさ」とは無縁です。私は「ひもじさ」解消のために薬に頼る意味はないと思います。
江部康二
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45520141/
以下MT Pro から 一部を転載
[2012年12月27日(VOL.45 NO.52) p.14]
シリーズ糖尿病 vol.4(最終回) 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
糖質制限食ダイエットを成功に導くための工夫
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
<見逃されがちな胃排泄遅延は血糖コントロールも困難>
山田 血糖コントロールに影響を与える要因として,先生は消化管機能をもっと重要視すべきであると指摘されておられますね。
Bernstein 糖尿病患者さんは神経障害に起因する胃不全麻痺を合併していることが多いのです。胃不全麻痺は胃排泄遅延のことですが,これは迷走神経が障害を受けることで起こると考えられます。つまり,胃に食物が入ってきても,迷走神経の障害により胃の蠕動運動が弱まっているために,十二指腸から小腸へと押し流されない。そして,胃の膨満感,痛み,嘔気,便秘,時に下痢,胸焼けなどの症状を伴います。
胃排泄遅延は血糖コントロールにどのような影響を与えるのか。当然のことながら,食後に血糖が増えないので,経口血糖降下薬やインスリンを投与している場合は,効果が強くなり過ぎ低血糖を来します。逆に,薬剤やインスリンの効果が切れるころになって食物が小腸に入ってくると,今度は高血糖を来します。
では,胃排泄遅延を見越して薬剤やインスリンを投与すればよさそうなものですが,同じ患者さんでも常に同じ程度の胃排泄遅延を起こすとは限りません。ですから,胃排泄遅延の程度を見越して,その都度,薬剤やインスリンの投与法を変えていくというのは至難の業といえるでしょう。
それでも,患者さんに胃排泄遅延があると分かっている場合はまだいい。問題は胃排泄遅延が見逃されているケースです。医師はその他に血糖コントロールを不良にしている要因があるのではないかと考え,いろいろ余計な詮索に神経を使わされることになります。
糖尿病患者さんで膨満感や痛み,嘔気,便秘などの症状を訴えていたら必ず,またそうした症状がなくても血糖コントロールがうまくいっていない場合には,一度心電図でR-R間隔を調べてみるべきでしょう。これは本来,心拍数を調節する迷走神経の能力を知るための検査ですが,心臓の迷走神経が障害されている場合,たいがいは胃の迷走神経も障害されています。もちろん,胃を含む消化管そのものも検査して,胃炎や胃潰瘍など,糖尿病とは無関係に胃排泄遅延を来す疾患があるかどうかもチェックしておくべきであることはいうまでもありません。
胃排泄遅延が発見された際の対処法としては,胃排泄遅延を改善する薬剤を投与する,胃排泄遅延を促進するような運動やマッサージを食後に行わせる,食事療法の内容を見直すなどの方法があります。食事療法の内容の見直しでは,食事中にまとまった水分(もちろん無糖)を飲む,食物繊維を減らす(またはあらかじめブレンダーにかける),挽いていない肉を除く,夕食時の蛋白質摂取量を減らす,1日3回の食事を1日4回に分けて取るよう変更する,半液状または液状食にするなどの対策が考えられます。食物をゆっくり,よくかむことも大事です。私の患者さんの中には,食後に1時間ほど無糖ガムをかむことで血糖コントロールが改善した人もいますが,おそらくガムをかむことが胃の筋肉の動きまで刺激したのだと思います。
<“ひもじさ”を解消し,食事療法の強い味方となるインクレチン類似薬>
山田 ここ数年の間に,新しい糖尿病治療薬としてインクレチン類似薬が相次いで臨床導入されました。これは食事療法を成功させるための大きな味方になると思うのですが。
Bernstein 膵臓はβ細胞からインスリンとアミリンを,α細胞からグルカゴンを分泌し血糖をコントロールしています。インスリンとアミリンは血糖を減らすとともに,脳に満腹感を覚えさせて食欲を抑制しています。一方,グルカゴンにはインスリンとアミリンの作用に抗して血糖を増加し,食欲を亢進する作用があります。インスリンとアミリン,そしてグルカゴンは,いずれも食事摂取に伴い消化管から分泌される消化管ホルモンのグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(gastric inhibitory polypeptide;GIP)やグルカゴン様ペプチド〔glucagon-like peptide(GLP)-1〕の刺激により分泌されます。
近年,糖尿病患者の血糖コントロールを改善し,また過食を抑制することを目的として,アミリン・アナログ(わが国では臨床導入されていない),GLP-1受容体作動薬,また,GIPやGLP-1を分解することで,これらを失活させるDPP-4の阻害薬などがインクレチン類似薬として臨床導入されました。
これらインクレチン類似薬はいずれも,それ自身で血糖コントロールに有効なだけでなく,食事療法に伴う“ひもじさ”を解消してくれますので,食事療法の強い味方になると思います。私は特にアミリン・アナログに期待しています。というのは,他のインクレチン類似薬があくまでβ細胞を介して作用するものであるのに対して,アミリン・アナログはβ細胞を介さずに作用するものだからです。
つまり,アミリン・アナログはβ細胞機能が全く涸渇している1型糖尿病患者さんや,その一歩手前という2型糖尿病患者さんにも有効だと考えられます。また,アミリンは少量でも効果が非常に強くて,グルカゴンへの拮抗作用をインスリンと比較すると10〜100倍もあります。なお,うれしいことに,インクレチン類似薬で良好な血糖コントロールを保っているうちに,β細胞の再生が促進されるという報告もあります。
インクレチン類似薬の使用で注意したいのは,いずれも胃排泄機能に関しては遅延させる方向に働くことです。これは,血糖値を下げ,食欲を抑制するという同薬の作用を考えれば当然のことなのですが,特に既に胃排泄遅延のある患者さんの場合などは,ごく少量から開始するなどの配慮が必要でしょう。
2012年12月29日 (土)
おはようございます。
下記のバーンスタイン医師の見解に対して、きよすクリニック伊藤喜亮先生から、「見かけ上の甲状腺機能低下症で、本当の低下症ではない」と、ご意見をいただきました。
Bernstein
『私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。そうした患者さんは易疲労感などを訴えてクリニックを受診するのですが,検査してみるとかなり進行した糖尿病で,かつ甲状腺機能の低下が認められます。
活性型の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3)と非活性型の甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)では,特に前者の低下が顕著です。
T4の分子中にはヨードが4分子存在し,肝臓や腎臓でそのうちの1個が外れてT3になるのですが,糖尿病に伴い甲状腺機能の低下している人では,このT4からT3への変換がうまくいっていないわけです。
また,通常の甲状腺機能低下症では,T3が低下するとその代償として甲状腺ホルモン分泌刺激ホルモン(TSH)が上昇しますが,糖尿病に伴う甲状腺機能の低下ではTSHは上昇しません。』
きよすクリニック伊藤喜亮先生
『T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態は「Low T3 syndrome」と呼ばれます。
記事の中にもあるように、代謝を低下させてエネルギー消費を抑えるための生体反応と考えられています。
甲状腺が悪いのではないので、TSHは上昇していません。ですから「甲状腺機能低下」という言葉は適切ではなく、疲労感が出るほど悪い状態の糖尿病では、上述のようにエネルギー消費を抑えるために「T3を低く抑えている状態」と言えると思います。』
伊藤先生、ご指摘ありがとうございます。
私も伊藤先生のご意見に全面的に賛成です。
私も、バーンスタイン先生、いくらなんでも85%が甲状腺機能低下症とはありえないと思ってました。
T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態「Low T3 syndrome」、思い起こせば、コントロール不良の糖尿病以外にも、
慢性消耗性の疾患で低栄養のとき、時々、見かけますね。
例えば神経性食思不振症などでも見られます。
これらは、見かけ上T3が低値なだけで、本当の甲状腺機能低下症では、ありません。
江部康二
下記のバーンスタイン医師の見解に対して、きよすクリニック伊藤喜亮先生から、「見かけ上の甲状腺機能低下症で、本当の低下症ではない」と、ご意見をいただきました。
Bernstein
『私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。そうした患者さんは易疲労感などを訴えてクリニックを受診するのですが,検査してみるとかなり進行した糖尿病で,かつ甲状腺機能の低下が認められます。
活性型の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3)と非活性型の甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)では,特に前者の低下が顕著です。
T4の分子中にはヨードが4分子存在し,肝臓や腎臓でそのうちの1個が外れてT3になるのですが,糖尿病に伴い甲状腺機能の低下している人では,このT4からT3への変換がうまくいっていないわけです。
また,通常の甲状腺機能低下症では,T3が低下するとその代償として甲状腺ホルモン分泌刺激ホルモン(TSH)が上昇しますが,糖尿病に伴う甲状腺機能の低下ではTSHは上昇しません。』
きよすクリニック伊藤喜亮先生
『T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態は「Low T3 syndrome」と呼ばれます。
記事の中にもあるように、代謝を低下させてエネルギー消費を抑えるための生体反応と考えられています。
甲状腺が悪いのではないので、TSHは上昇していません。ですから「甲状腺機能低下」という言葉は適切ではなく、疲労感が出るほど悪い状態の糖尿病では、上述のようにエネルギー消費を抑えるために「T3を低く抑えている状態」と言えると思います。』
伊藤先生、ご指摘ありがとうございます。
私も伊藤先生のご意見に全面的に賛成です。
私も、バーンスタイン先生、いくらなんでも85%が甲状腺機能低下症とはありえないと思ってました。
T3が低値で、T4、TSHとも正常な病態「Low T3 syndrome」、思い起こせば、コントロール不良の糖尿病以外にも、
慢性消耗性の疾患で低栄養のとき、時々、見かけますね。
例えば神経性食思不振症などでも見られます。
これらは、見かけ上T3が低値なだけで、本当の甲状腺機能低下症では、ありません。
江部康二
2012年12月28日 (金)
こんばんは。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第3弾です。
<血糖の日内変動は臨床家の基本知識>
インスリン作用の不足で糖尿病を発症します。
「インスリン分泌不足+インスリン抵抗性」を合わせてインスリン作用不足となります。
一般に、日本人は、インスリン分泌不足が主の糖尿病で、欧米人は、インスリン抵抗性が主の糖尿病とされています。
現実に、日本人の2型糖尿病新患の平均BMIが24で、欧米人の2型糖尿病新患の平均BMIが32です。
インスリンには空腹時の基礎分泌と、食後の追加分泌があります。
追加分泌には、第一相(前もって貯蔵されている)と第二相(高血糖があれば、第一相のあと分泌される)があります。
2型糖尿病において、追加分泌第一相が、欠落あるいは、大きく不足するタイプがありますが、バーンスタイン医師はこのことを述べておられるのかと思います。
<運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右>
「ストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。」
とバーンスタイン医師は述べておられます。
ケンカしたり怒ったりのストレスで血糖は上昇しますが、そのストレスでアドレナリンが分泌されて血糖が上昇するのだと思います。
これを、ストレス→アドレナリン分泌→血糖値上昇ということで、直接ではないと述べておられるのでしょう。
<多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下>
糖尿病患者さんにおける甲状腺機能低下症は、時に見られます。
私も甲状腺機能検査は、半年毎くらいには実施しています。
「私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。」
とバーンスタイン医師は述べておられます。
しかし私の糖尿病患者さんで、甲状腺機能低下症は数%以下です。
欧米人と日本人で差があるのでしょうか?
なお、血糖コントロールが悪いと、甲状腺機能が低下しやすいです。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45510231/
以下MT Pro から 一部を転載
2012年12月20日
シリーズ糖尿病 vol.3 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
血糖コントロールに影響する他の因子とは
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
山田 悟 氏
Richard K. Bernstein氏の唱える糖質制限食の根幹にあるのは「小さな数の法則」(小紙12月6日号22ページ連載vol. 1参照)。食事療法による血糖コントロールは目標とする栄養素の摂取量以外の要因によっても影響を受け,その影響は栄養素の摂取量を多く設定するほど予測困難で制御しにくいものになる。したがって,食事療法による血糖コントロールをできるだけ予測可能で容易なものにするためには,糖質の摂取量は必要最小限に設定する方がよいとする考え方だ。では,具体的にはどのような要因が食事療法による血糖コントロールに影響を与えるのか。シリーズ3回目では,この点に関し,北里研究所病院糖尿病センター(東京都)の山田悟センター長が質問した。
血糖の日内変動は臨床家の基本知識
山田 先生は『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』* の中で,血糖コントロールに影響を及ぼす種々の因子について解説しておられますね。
Bernstein 糖尿病患者さんが食後に高血糖を示すのは,食後におけるインスリン追加分泌が欠如しているか減弱しているからです。これはもちろん正しいのですが,追加分泌が減弱している機序を詳細に検討すると,膵β細胞のインスリン産生能そのものが低下しているケースもあれば,産生能は保たれているのに貯蔵ができていないというケースもあります。後者では,血糖値は既に低い状態にもかかわらず,不適切なインスリン分泌により血糖値がさらに低下するという事態が起こりえます。また,多くの糖尿病患者さんが血糖自己測定に慣れてくると,夜中に間食などしていないにもかかわらず,就寝時よりも起床時の血糖値が高いことに気付くようになります。これは,夜中に肝臓による糖新生が亢進していたり,早朝に肝臓によるインスリン不活化が高まったりする(暁現象)ためです。
このように,血糖値というものは食事あるいは治療とは関係なく変動する部分もあるということを,まず,全ての臨床家に基本的知識として知っておいてほしいと思います。
運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右
Bernstein 食事療法による血糖コントロールに影響を及ぼす因子の中で,比較的多くの患者さんに当てはまるものとしては運動,ストレス,感染症などが挙げられます。よく運動している患者さんが運動していない患者さんより血糖値が下がりやすいのは当然です。ストレスも血糖値に影響を及ぼしますが,これは,ストレスにさらされた患者さんは過食になったり,好きな食べ物ばかり食べるようになったりして,結局は食事療法そのものがうまくいかなくなるという二次的なものではないかと思っています。少なくともストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。ストレスというのは便利な言葉で,これまで血糖コントロールがうまくいかない患者さんに対し「ストレスのせいです」とごまかしてきた臨床家は少なくないと思います。大いに自省していただきたいですね。感染症も血糖に対するインスリンの効果を大きく減弱させる重要な要因です。感冒や外傷に伴う感染症なら気付きやすいのですが,その他,歯槽膿漏など慢性感染およびその急性悪化による影響などにも気を配っておく必要があります。
多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下
山田 糖尿病患者さんでは甲状腺機能に異常があり,これは血糖コントロールというよりも,糖尿病の病態そのものにも関連することが指摘されています。
Bernstein 私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。そうした患者さんは易疲労感などを訴えてクリニックを受診するのですが,検査してみるとかなり進行した糖尿病で,かつ甲状腺機能の低下が認められます。活性型の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3)と非活性型の甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)では,特に前者の低下が顕著です。T4の分子中にはヨードが4分子存在し,肝臓や腎臓でそのうちの1個が外れてT3になるのですが,糖尿病に伴い甲状腺機能の低下している人では,このT4からT3への変換がうまくいっていないわけです。また,通常の甲状腺機能低下症では,T3が低下するとその代償として甲状腺ホルモン分泌刺激ホルモン(TSH)が上昇しますが,糖尿病に伴う甲状腺機能の低下ではTSHは上昇しません。
糖尿病では,なぜ甲状腺機能の低下が起こるのでしょうか。その機序は不明ですが,これは人類が長い歴史の中で,飢餓に対する防御機構の一環として獲得してきたものだろうと考えています。甲状腺ホルモンには全身の細胞に作用し代謝率を高めるという働きがありますが,飢餓状態においては,代謝率は高いよりも低い方が生き延びるために好都合です。おそらく糖尿病になりやすい遺伝的素因の人は,甲状腺機能が低下しやすい遺伝的素因を持つ可能性も高いのだろうと思います。
実は私自身も若いころは甲状腺機能の低下に悩まされ,易疲労感や認知症のような頭がぼうっとした症状のために学業にも支障が出るほどでした。大学に入学した当初は物理学を専攻したのですが,同じクラスには,後にニュートリノに関する研究で高名な物理学者になる優秀な友人もいました。彼と競って物理学で功績を挙げるつもりでしたが,そのうち私の健康状態では彼に伍して学業を続けていくことは無理だと悟らざるをえませんでした。もちろん,自分で悟る以前に周囲や医師から,物理学者として生きていくことは諦めるよう勧められていたのですが。
私自身の甲状腺機能低下による症状は,その後,合成T3製剤のリオチロニンを補充することで劇的に改善しました。多くの内分泌科学者が,この治療はTSH抑制につながり,心疾患や骨粗鬆症を誘発するのでよくないといいます。しかし,その科学的エビデンスは現在に至るまでありません。また,私の経験ではT3およびT4を正常範囲の半ばを超えない程度にコントロールできている限り,TSH抑制が起こるということもありません。
もう1つ,あまりよく知られていない病態ですが,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome;PCOS)にも注意していただきたいと思います。これは若い女性で男性ホルモンが増加しているときに起こるもので,月経異常や不妊などの症状を伴うとともにインスリン抵抗性を来します。血糖コントロール自体が困難というわけではありませんが,食事療法によっても減量効果が現れにくいのが特徴です。症状に対する治療法としては利尿薬のスピロノラクトンが有効とされてきましたが,私の経験ではメトホルミンも有効です。
*Bernstein氏の著書で1997年の初版発刊後,英語版は第4版まで版を重ねている。米国をはじめ世界的なベストセラーとなり,糖質制限食が一般にも知られるきっかけとなった。日本語版は小社より2005年に刊行され(国内初),現在「第3版日本語版」が最新刊となっている。
メディカルトリビューン発行 税別3,800円,販売:金芳堂
Profile of Dr. R. K. Bernstein/世界を旅して日蝕・月蝕を撮影
本編でも述べられているように,Bernstein氏は若かりしころ物理学者を志したほど物理学を愛好しており,現在でも宇宙・天文関係を中心に,その知識は専門家に引けを取らない。「もし物理学の道を歩んでいたら,糖質制限食を見いだす前に糖尿病で倒れていただろう」とはご本人の弁だが,糖質制限食を見いだすに至るまでの同氏の飽くなき探求心は,一時は物理学を究めようと決心していた科学者魂のたまものと考えられなくもない。
同氏の現在の趣味の1つは写真撮影で,日蝕や月蝕など,やはり宇宙・天文がらみの写真がクリニックの至る所に掲示されている。日蝕や月蝕を追っていると必然的に世界中を旅することになるが,糖尿病患者にとってやっかいなのが,時差に合わせてインスリン注射のタイミングを調節すること。同氏はこれに関しても身をもって最も適切な方法を考え出し,著書*の中で紹介している。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第3弾です。
<血糖の日内変動は臨床家の基本知識>
インスリン作用の不足で糖尿病を発症します。
「インスリン分泌不足+インスリン抵抗性」を合わせてインスリン作用不足となります。
一般に、日本人は、インスリン分泌不足が主の糖尿病で、欧米人は、インスリン抵抗性が主の糖尿病とされています。
現実に、日本人の2型糖尿病新患の平均BMIが24で、欧米人の2型糖尿病新患の平均BMIが32です。
インスリンには空腹時の基礎分泌と、食後の追加分泌があります。
追加分泌には、第一相(前もって貯蔵されている)と第二相(高血糖があれば、第一相のあと分泌される)があります。
2型糖尿病において、追加分泌第一相が、欠落あるいは、大きく不足するタイプがありますが、バーンスタイン医師はこのことを述べておられるのかと思います。
<運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右>
「ストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。」
とバーンスタイン医師は述べておられます。
ケンカしたり怒ったりのストレスで血糖は上昇しますが、そのストレスでアドレナリンが分泌されて血糖が上昇するのだと思います。
これを、ストレス→アドレナリン分泌→血糖値上昇ということで、直接ではないと述べておられるのでしょう。
<多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下>
糖尿病患者さんにおける甲状腺機能低下症は、時に見られます。
私も甲状腺機能検査は、半年毎くらいには実施しています。
「私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。」
とバーンスタイン医師は述べておられます。
しかし私の糖尿病患者さんで、甲状腺機能低下症は数%以下です。
欧米人と日本人で差があるのでしょうか?
なお、血糖コントロールが悪いと、甲状腺機能が低下しやすいです。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45510231/
以下MT Pro から 一部を転載
2012年12月20日
シリーズ糖尿病 vol.3 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
血糖コントロールに影響する他の因子とは
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
山田 悟 氏
Richard K. Bernstein氏の唱える糖質制限食の根幹にあるのは「小さな数の法則」(小紙12月6日号22ページ連載vol. 1参照)。食事療法による血糖コントロールは目標とする栄養素の摂取量以外の要因によっても影響を受け,その影響は栄養素の摂取量を多く設定するほど予測困難で制御しにくいものになる。したがって,食事療法による血糖コントロールをできるだけ予測可能で容易なものにするためには,糖質の摂取量は必要最小限に設定する方がよいとする考え方だ。では,具体的にはどのような要因が食事療法による血糖コントロールに影響を与えるのか。シリーズ3回目では,この点に関し,北里研究所病院糖尿病センター(東京都)の山田悟センター長が質問した。
血糖の日内変動は臨床家の基本知識
山田 先生は『バーンスタイン医師の糖尿病の解決』* の中で,血糖コントロールに影響を及ぼす種々の因子について解説しておられますね。
Bernstein 糖尿病患者さんが食後に高血糖を示すのは,食後におけるインスリン追加分泌が欠如しているか減弱しているからです。これはもちろん正しいのですが,追加分泌が減弱している機序を詳細に検討すると,膵β細胞のインスリン産生能そのものが低下しているケースもあれば,産生能は保たれているのに貯蔵ができていないというケースもあります。後者では,血糖値は既に低い状態にもかかわらず,不適切なインスリン分泌により血糖値がさらに低下するという事態が起こりえます。また,多くの糖尿病患者さんが血糖自己測定に慣れてくると,夜中に間食などしていないにもかかわらず,就寝時よりも起床時の血糖値が高いことに気付くようになります。これは,夜中に肝臓による糖新生が亢進していたり,早朝に肝臓によるインスリン不活化が高まったりする(暁現象)ためです。
このように,血糖値というものは食事あるいは治療とは関係なく変動する部分もあるということを,まず,全ての臨床家に基本的知識として知っておいてほしいと思います。
運動,ストレス,感染症なども血糖コントロールを左右
Bernstein 食事療法による血糖コントロールに影響を及ぼす因子の中で,比較的多くの患者さんに当てはまるものとしては運動,ストレス,感染症などが挙げられます。よく運動している患者さんが運動していない患者さんより血糖値が下がりやすいのは当然です。ストレスも血糖値に影響を及ぼしますが,これは,ストレスにさらされた患者さんは過食になったり,好きな食べ物ばかり食べるようになったりして,結局は食事療法そのものがうまくいかなくなるという二次的なものではないかと思っています。少なくともストレスそのものが血糖値を変動させるという科学的な根拠は今のところありません。ストレスというのは便利な言葉で,これまで血糖コントロールがうまくいかない患者さんに対し「ストレスのせいです」とごまかしてきた臨床家は少なくないと思います。大いに自省していただきたいですね。感染症も血糖に対するインスリンの効果を大きく減弱させる重要な要因です。感冒や外傷に伴う感染症なら気付きやすいのですが,その他,歯槽膿漏など慢性感染およびその急性悪化による影響などにも気を配っておく必要があります。
多くの糖尿病患者に認められる甲状腺機能の低下
山田 糖尿病患者さんでは甲状腺機能に異常があり,これは血糖コントロールというよりも,糖尿病の病態そのものにも関連することが指摘されています。
Bernstein 私の診ている糖尿病患者さんの85%は,私が最初に診た時点では甲状腺機能が低下していました。そうした患者さんは易疲労感などを訴えてクリニックを受診するのですが,検査してみるとかなり進行した糖尿病で,かつ甲状腺機能の低下が認められます。活性型の甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:T3)と非活性型の甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4)では,特に前者の低下が顕著です。T4の分子中にはヨードが4分子存在し,肝臓や腎臓でそのうちの1個が外れてT3になるのですが,糖尿病に伴い甲状腺機能の低下している人では,このT4からT3への変換がうまくいっていないわけです。また,通常の甲状腺機能低下症では,T3が低下するとその代償として甲状腺ホルモン分泌刺激ホルモン(TSH)が上昇しますが,糖尿病に伴う甲状腺機能の低下ではTSHは上昇しません。
糖尿病では,なぜ甲状腺機能の低下が起こるのでしょうか。その機序は不明ですが,これは人類が長い歴史の中で,飢餓に対する防御機構の一環として獲得してきたものだろうと考えています。甲状腺ホルモンには全身の細胞に作用し代謝率を高めるという働きがありますが,飢餓状態においては,代謝率は高いよりも低い方が生き延びるために好都合です。おそらく糖尿病になりやすい遺伝的素因の人は,甲状腺機能が低下しやすい遺伝的素因を持つ可能性も高いのだろうと思います。
実は私自身も若いころは甲状腺機能の低下に悩まされ,易疲労感や認知症のような頭がぼうっとした症状のために学業にも支障が出るほどでした。大学に入学した当初は物理学を専攻したのですが,同じクラスには,後にニュートリノに関する研究で高名な物理学者になる優秀な友人もいました。彼と競って物理学で功績を挙げるつもりでしたが,そのうち私の健康状態では彼に伍して学業を続けていくことは無理だと悟らざるをえませんでした。もちろん,自分で悟る以前に周囲や医師から,物理学者として生きていくことは諦めるよう勧められていたのですが。
私自身の甲状腺機能低下による症状は,その後,合成T3製剤のリオチロニンを補充することで劇的に改善しました。多くの内分泌科学者が,この治療はTSH抑制につながり,心疾患や骨粗鬆症を誘発するのでよくないといいます。しかし,その科学的エビデンスは現在に至るまでありません。また,私の経験ではT3およびT4を正常範囲の半ばを超えない程度にコントロールできている限り,TSH抑制が起こるということもありません。
もう1つ,あまりよく知られていない病態ですが,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome;PCOS)にも注意していただきたいと思います。これは若い女性で男性ホルモンが増加しているときに起こるもので,月経異常や不妊などの症状を伴うとともにインスリン抵抗性を来します。血糖コントロール自体が困難というわけではありませんが,食事療法によっても減量効果が現れにくいのが特徴です。症状に対する治療法としては利尿薬のスピロノラクトンが有効とされてきましたが,私の経験ではメトホルミンも有効です。
*Bernstein氏の著書で1997年の初版発刊後,英語版は第4版まで版を重ねている。米国をはじめ世界的なベストセラーとなり,糖質制限食が一般にも知られるきっかけとなった。日本語版は小社より2005年に刊行され(国内初),現在「第3版日本語版」が最新刊となっている。
メディカルトリビューン発行 税別3,800円,販売:金芳堂
Profile of Dr. R. K. Bernstein/世界を旅して日蝕・月蝕を撮影
本編でも述べられているように,Bernstein氏は若かりしころ物理学者を志したほど物理学を愛好しており,現在でも宇宙・天文関係を中心に,その知識は専門家に引けを取らない。「もし物理学の道を歩んでいたら,糖質制限食を見いだす前に糖尿病で倒れていただろう」とはご本人の弁だが,糖質制限食を見いだすに至るまでの同氏の飽くなき探求心は,一時は物理学を究めようと決心していた科学者魂のたまものと考えられなくもない。
同氏の現在の趣味の1つは写真撮影で,日蝕や月蝕など,やはり宇宙・天文がらみの写真がクリニックの至る所に掲示されている。日蝕や月蝕を追っていると必然的に世界中を旅することになるが,糖尿病患者にとってやっかいなのが,時差に合わせてインスリン注射のタイミングを調節すること。同氏はこれに関しても身をもって最も適切な方法を考え出し,著書*の中で紹介している。
2012年12月27日 (木)
こんにちは。
糖質制限食 さんから、興味深いコメントをいただきました。
【12/12/26 糖質制限食
<清涼飲料水>毎日飲む女性、脳梗塞の危険1.8倍
江部先生
先日はケトン尿の件、回答頂きどうもありがとうございました。
情報提供です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121226-00000029-mai-soci
<清涼飲料水>毎日飲む女性、脳梗塞の危険1.8倍
毎日新聞 12月26日(水)11時36分配信
コーラやジュースなどの清涼飲料水をほぼ毎日飲む女性は、ほとんど飲まない女性と比べて脳梗塞(こうそく)になる危険性が1.8倍高いとの研究結果を、国立がん研究センターが26日、発表。論文が米専門誌12月号に掲載された。清涼飲料水に多く含まれる糖分の取りすぎが、脳梗塞の危険を高めているとみられる。
調査は、90年に40~59歳だった男女3万9786人を平均18年間追跡。うち1047人(女性は377人)が脳梗塞になった。食事内容を聞き取って、甘味料を加えたカロリーのある市販の飲み物250ミリリットル程度を「ほぼ毎日飲む」「週に3、4回」「週に1、2回」「ほとんど飲まない」の4グループに分類。女性でほぼ毎日飲むグループは、ほとんど飲まないグループより、脳梗塞を発症するリスクが1.8倍高かった。男性には明らかな差がなかった。また、心筋梗塞などの虚血性心疾患、出血性脳卒中についても調べたが、男女とも関連はなかった。
脳梗塞は、動脈硬化などにより脳の血管が詰まって起こる。研究チームの磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)は、清涼飲料水の糖分が血液中の糖や中性脂肪の濃度を上げて動脈硬化につながったと分析。男性は女性より運動量が多く、エネルギーとして代謝されやすいため、影響が出にくかったとみている。磯教授は「自分なりに清涼飲料水の飲み過ぎにブレーキをかけて、賢く付き合ってほしい」と話している。】
糖質制限食さん。
コメント・情報をありがとうざいます。
「女性でほぼ毎日飲むグループは、ほとんど飲まないグループより、脳梗塞を発症するリスクが1.8倍高かった。」
糖尿人が、糖質を摂取した時の180mg/dlを超える食後高血糖(グルコーススパイク)は、活性酸素を発生させ、酸化ストレスを亢進させ、動脈硬化のリスクとなります。そして1日の平均血糖変動幅が大きいほど酸化ストレスが亢進します。
糖尿人でない耐糖能正常の人では、清涼飲料水250mlを飲んでも、血糖値が180mg/dlを超えることは、ほとんどありませんが、血糖変動幅は大きくなります。
清涼飲料水は液体の糖質で、最も急峻に血糖値を上昇させます。
耐糖能正常の人でも、グルコースミニスパイクを生じて、追加分泌インスリンが大量に出ます。
これらのことが、動脈硬化のリスクとなり、脳梗塞を増加させたのだと思います。
また、磯博康・大阪大教授が指摘しておられるように、清涼飲料水を飲むと中性脂肪が上昇して、やはり動脈硬化のリスクとなると思います。
液体の糖質(清涼飲料水)は、ほとんど毒に近いと考えた方がよいと思っています。
江部康二
糖質制限食 さんから、興味深いコメントをいただきました。
【12/12/26 糖質制限食
<清涼飲料水>毎日飲む女性、脳梗塞の危険1.8倍
江部先生
先日はケトン尿の件、回答頂きどうもありがとうございました。
情報提供です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121226-00000029-mai-soci
<清涼飲料水>毎日飲む女性、脳梗塞の危険1.8倍
毎日新聞 12月26日(水)11時36分配信
コーラやジュースなどの清涼飲料水をほぼ毎日飲む女性は、ほとんど飲まない女性と比べて脳梗塞(こうそく)になる危険性が1.8倍高いとの研究結果を、国立がん研究センターが26日、発表。論文が米専門誌12月号に掲載された。清涼飲料水に多く含まれる糖分の取りすぎが、脳梗塞の危険を高めているとみられる。
調査は、90年に40~59歳だった男女3万9786人を平均18年間追跡。うち1047人(女性は377人)が脳梗塞になった。食事内容を聞き取って、甘味料を加えたカロリーのある市販の飲み物250ミリリットル程度を「ほぼ毎日飲む」「週に3、4回」「週に1、2回」「ほとんど飲まない」の4グループに分類。女性でほぼ毎日飲むグループは、ほとんど飲まないグループより、脳梗塞を発症するリスクが1.8倍高かった。男性には明らかな差がなかった。また、心筋梗塞などの虚血性心疾患、出血性脳卒中についても調べたが、男女とも関連はなかった。
脳梗塞は、動脈硬化などにより脳の血管が詰まって起こる。研究チームの磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)は、清涼飲料水の糖分が血液中の糖や中性脂肪の濃度を上げて動脈硬化につながったと分析。男性は女性より運動量が多く、エネルギーとして代謝されやすいため、影響が出にくかったとみている。磯教授は「自分なりに清涼飲料水の飲み過ぎにブレーキをかけて、賢く付き合ってほしい」と話している。】
糖質制限食さん。
コメント・情報をありがとうざいます。
「女性でほぼ毎日飲むグループは、ほとんど飲まないグループより、脳梗塞を発症するリスクが1.8倍高かった。」
糖尿人が、糖質を摂取した時の180mg/dlを超える食後高血糖(グルコーススパイク)は、活性酸素を発生させ、酸化ストレスを亢進させ、動脈硬化のリスクとなります。そして1日の平均血糖変動幅が大きいほど酸化ストレスが亢進します。
糖尿人でない耐糖能正常の人では、清涼飲料水250mlを飲んでも、血糖値が180mg/dlを超えることは、ほとんどありませんが、血糖変動幅は大きくなります。
清涼飲料水は液体の糖質で、最も急峻に血糖値を上昇させます。
耐糖能正常の人でも、グルコースミニスパイクを生じて、追加分泌インスリンが大量に出ます。
これらのことが、動脈硬化のリスクとなり、脳梗塞を増加させたのだと思います。
また、磯博康・大阪大教授が指摘しておられるように、清涼飲料水を飲むと中性脂肪が上昇して、やはり動脈硬化のリスクとなると思います。
液体の糖質(清涼飲料水)は、ほとんど毒に近いと考えた方がよいと思っています。
江部康二
2012年12月26日 (水)
こんにちは。
共同通信社の配信記事です。
薬局で気軽に糖尿病検査 死亡率1位の徳島
共同通信社 12月25日(火) 配信
糖尿病による死亡率が全国で最も高い徳島県で、薬局を訪れた客が無料で糖尿病の検査を受けられる取り組みを、筑波大と徳島文理大の研究グループが進めている。代表者の筑波大大学院の矢作直也(やはぎ・なおや)准教授は「手軽な検査方法を広げることで、重症化する前の治療につなげたい」と期待する。
厚生労働省の2010年の調査では、成人男性の14・7%、成人女性の8・1%が医療機関などで糖尿病の疑いを指摘されたことがある。
徳島県の11年の糖尿病による死亡率は10万人当たり17・3人で全国1位。1993年以降、07年を除いて死亡率が全国1位の不名誉な記録を続けている。
糖尿病は自覚症状がないまま進行することが多く、早期発見が課題。今回の取り組みは、気軽に検査を受けてもらうことで糖尿病予備軍を浮かび上がらせることが狙いだ。徳島県内10カ所の薬局で検査を受けられる。
細い針を自分で指先に刺して微量の血液を採取し、測定器で最近1~2カ月の平均的な血糖値の高さが分かる指標「HbA1c」の値を測る。痛みはほとんどなく、結果は約6分で出る。
値が基準を超えていた場合、薬局は病院での受診を勧める。10月下旬のスタートから11月末までに検査を受けたのは417人で、うち24人が糖尿病と疑われた。
取り組みに参加しているスマイル調剤薬局山城店(徳島市)の薬剤師大田真也(おおた・しんや)さん(28)は「検査を受けるのは40~60代くらいの人が多い。正常な結果が出ると、みんなほっとした表情で帰って行く」と話した。
徳島県、糖尿病の早期発見に、役立つ良い試みですね。
しかし、発見されて医療機関を受診してカロリー制限食(高糖質食)を奨められるのでは、徳島県の糖尿病による死亡率、10万人当たり全国1位からの脱却は困難でしょうね。
江部康二
共同通信社の配信記事です。
薬局で気軽に糖尿病検査 死亡率1位の徳島
共同通信社 12月25日(火) 配信
糖尿病による死亡率が全国で最も高い徳島県で、薬局を訪れた客が無料で糖尿病の検査を受けられる取り組みを、筑波大と徳島文理大の研究グループが進めている。代表者の筑波大大学院の矢作直也(やはぎ・なおや)准教授は「手軽な検査方法を広げることで、重症化する前の治療につなげたい」と期待する。
厚生労働省の2010年の調査では、成人男性の14・7%、成人女性の8・1%が医療機関などで糖尿病の疑いを指摘されたことがある。
徳島県の11年の糖尿病による死亡率は10万人当たり17・3人で全国1位。1993年以降、07年を除いて死亡率が全国1位の不名誉な記録を続けている。
糖尿病は自覚症状がないまま進行することが多く、早期発見が課題。今回の取り組みは、気軽に検査を受けてもらうことで糖尿病予備軍を浮かび上がらせることが狙いだ。徳島県内10カ所の薬局で検査を受けられる。
細い針を自分で指先に刺して微量の血液を採取し、測定器で最近1~2カ月の平均的な血糖値の高さが分かる指標「HbA1c」の値を測る。痛みはほとんどなく、結果は約6分で出る。
値が基準を超えていた場合、薬局は病院での受診を勧める。10月下旬のスタートから11月末までに検査を受けたのは417人で、うち24人が糖尿病と疑われた。
取り組みに参加しているスマイル調剤薬局山城店(徳島市)の薬剤師大田真也(おおた・しんや)さん(28)は「検査を受けるのは40~60代くらいの人が多い。正常な結果が出ると、みんなほっとした表情で帰って行く」と話した。
徳島県、糖尿病の早期発見に、役立つ良い試みですね。
しかし、発見されて医療機関を受診してカロリー制限食(高糖質食)を奨められるのでは、徳島県の糖尿病による死亡率、10万人当たり全国1位からの脱却は困難でしょうね。
江部康二
2012年12月26日 (水)
おはようございます。
緑茶チョコ さんから、減量成功、糖質制限.COMのクリスマスケーキで血糖上昇なしという嬉しいメールをいただきました。
【12/12/26 緑茶チョコ
長文ですみません
こんばんは。
糖質制限.COMのクリスマスケーキ予約開始時にカキコミさせて頂いた境界型糖尿病でベイスン0.2(前回は間違いました×0.1)服用中の者です。(その際はニックネームを「苺」と打ちましたがNG漢字だったのでしょうか。確認せず無名になってしまい失礼しました。)今後の名前は大好きなシュクリーベの緑茶ミルクチョコから↑にします。
先日2年振りに会った友人に「すごく痩せたね!どうしたの?」と言われ、周りには糖尿病のことは話さないので「最近流行ってるプチ糖質制限ダイエットだよ」「何それ?!教えて!!」とのことで、食事はどうのこうの~、と、簡単に話しました。
でも男性だし、付き合い等で難しいだろうと思っていましたが、3週間後「5kg痩せて70kg台から抜けたよ!!ありがとう!」というメールが来ました。なんだか私まで嬉しいです。
しかし私はプチですがダイエット目的ではありませんので、やはり、外食や市販の加工食品は風味や流行りの素材主流で悩みます。糖質制限はテレビでも放送するくらい注目されて話題になっているのにあまり反映されないのは何故・・・残念です。
今日は待ちに待った血糖値を気にせず(?!)後ろめたさなしに(?!)ケーキを食べられる日(^ー^)もちろん、上記サイトで予約したケーキです♪チーズのムースケーキとナッツのノエル。
以前、普通のドーナツ店のドーナツでベイスン無しの時、また、イタリアンレストランのパスタで食前サラダ、ベイスン有り、イージーファイバー飲用の時、血糖値180になったことがあり、「HbA1c(旧)4.6なのに。境界型とは言えやっぱり・・・」と落胆しながらも食事内容の重要性を実感しましたので、今回、血糖値はどうなるのかと思い、ドキドキしながら、測ってみました。
昼食は上記チーズムースケーキ(市販のショートケーキのサイズにカット×1)→豆乳寒天をプリンサイズ×1(無調整豆乳+ラカント+粉寒天を使い毎日作っています)→ゆで卵×1の順に食べました。
朝食前:測定忘れ(前日就寝前は85)
朝食2h後:103
昼食前:87
昼食2h後:88
夕食前:84
夕食2h後:125(食事は緑色野菜、焼き魚、豆乳寒天、紅玉1/2、煎餅・・・。食後運動30分)
就寝前(現在):63(空腹感あり。普段の低血糖症状無しのため様子見)
昼食後はかなりの満腹感でしたので、測定値の表示を待つ間「ヤバい!食べ過ぎた!運動すればよかった!!血糖値高そう(>_<)」と後悔しながらドキドキしていましたが、測定器の表示を見た瞬間嬉しくて思わず「このケーキ素晴らしい」にやけながら呟いてしまいました(笑)食前に戻ってるなんて!!
このケーキは家族全員「甘さ控えめでさっぱりしていてフワフワでおいしい」と好評で、近日のナッツノエルの解凍も(笑)楽しみです。
今後もHbA1cも血糖値も薬も悪い方に進行しないように頑張ります! 】
緑茶チョコ さん。
コメントありがとうございます。
糖質制限食で、減量成功良かったです。
ご友人も、減量成功良かったです。
昼食前:87 mg/dl
糖質制限.COMの
チーズムースケーキ(市販のショートケーキのサイズにカット×1)
昼食2h後:88 mg/dl
ほとんど上昇なしですね。
素晴らしいです。
糖質制限.COMの商品は、全て私の人体実験済みですので、血糖に関してはご安心ください。
今年もあっというまに売り切れとなり、外来診察に来られた糖尿人が「ゲットできなかった」と嘆いておられました。
私は4種類のクリスマスケーキ全部頼みました。
家人と一緒に美味しく食べてますよ。
シュクリーベのチョコも、完成までに何度も私の人体実験を繰り返しましたので、糖質制限超優良食品、間違いないです。
私は、ダークチョコとまるごとアーモンドチョコが好きです。
赤ワインとシュクリーベチョコ・・・よく合いますね。
江部康二
緑茶チョコ さんから、減量成功、糖質制限.COMのクリスマスケーキで血糖上昇なしという嬉しいメールをいただきました。
【12/12/26 緑茶チョコ
長文ですみません
こんばんは。
糖質制限.COMのクリスマスケーキ予約開始時にカキコミさせて頂いた境界型糖尿病でベイスン0.2(前回は間違いました×0.1)服用中の者です。(その際はニックネームを「苺」と打ちましたがNG漢字だったのでしょうか。確認せず無名になってしまい失礼しました。)今後の名前は大好きなシュクリーベの緑茶ミルクチョコから↑にします。
先日2年振りに会った友人に「すごく痩せたね!どうしたの?」と言われ、周りには糖尿病のことは話さないので「最近流行ってるプチ糖質制限ダイエットだよ」「何それ?!教えて!!」とのことで、食事はどうのこうの~、と、簡単に話しました。
でも男性だし、付き合い等で難しいだろうと思っていましたが、3週間後「5kg痩せて70kg台から抜けたよ!!ありがとう!」というメールが来ました。なんだか私まで嬉しいです。
しかし私はプチですがダイエット目的ではありませんので、やはり、外食や市販の加工食品は風味や流行りの素材主流で悩みます。糖質制限はテレビでも放送するくらい注目されて話題になっているのにあまり反映されないのは何故・・・残念です。
今日は待ちに待った血糖値を気にせず(?!)後ろめたさなしに(?!)ケーキを食べられる日(^ー^)もちろん、上記サイトで予約したケーキです♪チーズのムースケーキとナッツのノエル。
以前、普通のドーナツ店のドーナツでベイスン無しの時、また、イタリアンレストランのパスタで食前サラダ、ベイスン有り、イージーファイバー飲用の時、血糖値180になったことがあり、「HbA1c(旧)4.6なのに。境界型とは言えやっぱり・・・」と落胆しながらも食事内容の重要性を実感しましたので、今回、血糖値はどうなるのかと思い、ドキドキしながら、測ってみました。
昼食は上記チーズムースケーキ(市販のショートケーキのサイズにカット×1)→豆乳寒天をプリンサイズ×1(無調整豆乳+ラカント+粉寒天を使い毎日作っています)→ゆで卵×1の順に食べました。
朝食前:測定忘れ(前日就寝前は85)
朝食2h後:103
昼食前:87
昼食2h後:88
夕食前:84
夕食2h後:125(食事は緑色野菜、焼き魚、豆乳寒天、紅玉1/2、煎餅・・・。食後運動30分)
就寝前(現在):63(空腹感あり。普段の低血糖症状無しのため様子見)
昼食後はかなりの満腹感でしたので、測定値の表示を待つ間「ヤバい!食べ過ぎた!運動すればよかった!!血糖値高そう(>_<)」と後悔しながらドキドキしていましたが、測定器の表示を見た瞬間嬉しくて思わず「このケーキ素晴らしい」にやけながら呟いてしまいました(笑)食前に戻ってるなんて!!
このケーキは家族全員「甘さ控えめでさっぱりしていてフワフワでおいしい」と好評で、近日のナッツノエルの解凍も(笑)楽しみです。
今後もHbA1cも血糖値も薬も悪い方に進行しないように頑張ります! 】
緑茶チョコ さん。
コメントありがとうございます。
糖質制限食で、減量成功良かったです。
ご友人も、減量成功良かったです。
昼食前:87 mg/dl
糖質制限.COMの
チーズムースケーキ(市販のショートケーキのサイズにカット×1)
昼食2h後:88 mg/dl
ほとんど上昇なしですね。
素晴らしいです。
糖質制限.COMの商品は、全て私の人体実験済みですので、血糖に関してはご安心ください。
今年もあっというまに売り切れとなり、外来診察に来られた糖尿人が「ゲットできなかった」と嘆いておられました。
私は4種類のクリスマスケーキ全部頼みました。
家人と一緒に美味しく食べてますよ。
シュクリーベのチョコも、完成までに何度も私の人体実験を繰り返しましたので、糖質制限超優良食品、間違いないです。
私は、ダークチョコとまるごとアーモンドチョコが好きです。
赤ワインとシュクリーベチョコ・・・よく合いますね。
江部康二
2012年12月25日 (火)
こんにちは。
糖質制限食の拡がりについてmmx233 さんから、コメントをいただきました。
【12/12/23 mmx233
糖質制限の拡がり
江部先生
東京からサンフランシスコへの機内食で、炭水化物を摂取しないでいるとキャビンアテンダントが質問してきました。
そこで食事制限していることを告げるとその女性の口から江部先生のご本を読んで実践しているとのことでした。
ここまで拡がりを見せていることを実感しました。
豆腐しらたきの成分表示には重量200グラムのうちカーボンが2グラム一寸でした。
ファイバーも含まれているので、とても良い食材なのでハウス食品に販売してもらいたいものです。種類もマカロニ、平打ち麺、ひやむぎ、そうめんの形状になったものがそれぞれ販売されていました。】
mmx233 さん。
コメントありがとうございます。
キャビンアテンダントさんが、私の本を読んで糖質制限食を実践中とは、嬉しいですね。(^^)
豆腐しらたき(ハウス食品)も200g中炭水化物が2gなら、糖質制限食優良食材です。
ハウス食品さん、日本でも是非販売をお願いします。
さて、2012年12月22日(土)の朝日新聞の朝刊をみていたら、作家の平野啓一郎さんが「作家の口福」というコラムを書いておられ、糖質制限食を実践しておられるそうです。
炭水化物を減らすことでダイエットに成功されてます。
「炭水化物を取りすぎると、血糖値が上がるせいか、眠たくなって仕事の効率が落ちる。文章にもキレがなくなる気がする。」
そうですね。
耐糖能が正常な人でも、血糖値が急上昇したり急降下するときに眠たくなったり、ぼーっとしたりします。
平野さん、作家の直感で、炭水化物の危険性に気がついておられます。
これで私の本も買っていただいていたら最高なのですが・・・。
キャビンアテンダントに作家・・・糖質制限食、拡がってますね。 (^_^)
江部康二
2012年12月22日(土)朝日新聞朝刊から
作家の口福
平野啓一郎
昼食は、ほとんど毎日カプレーゼ
カプレーゼとは、イタリア料理の定番の前菜で、水牛のモッツァレラチーズにトマト、バジルというシンプルなサラダである。
味付けは、塩とオリーブオイルだけで十分だが、バルサミコ酢を垂らしても美味(おい)しい。
私はこれが大好物で、この五年間、昼食はほぼ毎日これである。もちろん、外食したり、たまには別のものを食べたりもするが、年間、間違いなく二百日以上は食べている。五年間だから、千回は食べていることになる。
こうなると、もう、好物とか何とか言うより、主食である。これに加えて、千切りキャベツのサラダだとか、アボカドだとか、他の野菜を食べることもあるが、それらは特に決まっていない。言わば、おかずである。
どうしてそんなに毎日、飽きもせずに同じものを食べられるのかと、妻などは呆れ返っている。が、作るのは私で、手間いらずだし、別に体に悪い料理でもないので、そっとされている。
何がきっかけだったのか、今では最早思い出せないが、昼食に炭水化物をドカ食いするのを止めたのは、一つのきっかけだった。
ダイエットはそれなりに色々試してみたが、結局、私に一番効果的だったのは、炭水化物の量を減らす、という方法だった。まったく食べないというのは無理なので、一膳食べていたご飯を半分にするとか、せいぜい、その程度である。ラーメンやパスタなどは滅多に食べなくなった。
ダイエットのためだけでなく、炭水化物を取りすぎると、血糖値が上がるせいか、眠たくなって仕事の効率が落ちる。文章にもキレがなくなる気がする。
モッツアレラチーズを本当にウマいと思ったのは、ローマで、塩野七生さんに連れて行っていただいたレストランで食した時で、あれを超えるものを、私は未だに食べたことがない。水牛のミルクから作るだけに、日本で食べられるのは空輸されたものか、普通の牛のミルクで代用した国産のもので、鮮度が命だけに、イタリアで食べるものにはとても適わない。
日本でも、たまに一個二千円くらいで、「空輸したて!」というのが売っているが、私は大体、一日に半分食べるので、そんなにエンゲル係数を上げるわけにもいかず、時々しか買わない。
お陰で、トマトにもうるさくなったが、冬になると、その肝心のトマトがマズくなり、しかも、カプレーゼ自体も冷たい食べ物なので、他の料理をトライしてみるのだか、結局、また、元に戻っている。今日の昼も、当然そうだった。
糖質制限食の拡がりについてmmx233 さんから、コメントをいただきました。
【12/12/23 mmx233
糖質制限の拡がり
江部先生
東京からサンフランシスコへの機内食で、炭水化物を摂取しないでいるとキャビンアテンダントが質問してきました。
そこで食事制限していることを告げるとその女性の口から江部先生のご本を読んで実践しているとのことでした。
ここまで拡がりを見せていることを実感しました。
豆腐しらたきの成分表示には重量200グラムのうちカーボンが2グラム一寸でした。
ファイバーも含まれているので、とても良い食材なのでハウス食品に販売してもらいたいものです。種類もマカロニ、平打ち麺、ひやむぎ、そうめんの形状になったものがそれぞれ販売されていました。】
mmx233 さん。
コメントありがとうございます。
キャビンアテンダントさんが、私の本を読んで糖質制限食を実践中とは、嬉しいですね。(^^)
豆腐しらたき(ハウス食品)も200g中炭水化物が2gなら、糖質制限食優良食材です。
ハウス食品さん、日本でも是非販売をお願いします。
さて、2012年12月22日(土)の朝日新聞の朝刊をみていたら、作家の平野啓一郎さんが「作家の口福」というコラムを書いておられ、糖質制限食を実践しておられるそうです。
炭水化物を減らすことでダイエットに成功されてます。
「炭水化物を取りすぎると、血糖値が上がるせいか、眠たくなって仕事の効率が落ちる。文章にもキレがなくなる気がする。」
そうですね。
耐糖能が正常な人でも、血糖値が急上昇したり急降下するときに眠たくなったり、ぼーっとしたりします。
平野さん、作家の直感で、炭水化物の危険性に気がついておられます。
これで私の本も買っていただいていたら最高なのですが・・・。
キャビンアテンダントに作家・・・糖質制限食、拡がってますね。 (^_^)
江部康二
2012年12月22日(土)朝日新聞朝刊から
作家の口福
平野啓一郎
昼食は、ほとんど毎日カプレーゼ
カプレーゼとは、イタリア料理の定番の前菜で、水牛のモッツァレラチーズにトマト、バジルというシンプルなサラダである。
味付けは、塩とオリーブオイルだけで十分だが、バルサミコ酢を垂らしても美味(おい)しい。
私はこれが大好物で、この五年間、昼食はほぼ毎日これである。もちろん、外食したり、たまには別のものを食べたりもするが、年間、間違いなく二百日以上は食べている。五年間だから、千回は食べていることになる。
こうなると、もう、好物とか何とか言うより、主食である。これに加えて、千切りキャベツのサラダだとか、アボカドだとか、他の野菜を食べることもあるが、それらは特に決まっていない。言わば、おかずである。
どうしてそんなに毎日、飽きもせずに同じものを食べられるのかと、妻などは呆れ返っている。が、作るのは私で、手間いらずだし、別に体に悪い料理でもないので、そっとされている。
何がきっかけだったのか、今では最早思い出せないが、昼食に炭水化物をドカ食いするのを止めたのは、一つのきっかけだった。
ダイエットはそれなりに色々試してみたが、結局、私に一番効果的だったのは、炭水化物の量を減らす、という方法だった。まったく食べないというのは無理なので、一膳食べていたご飯を半分にするとか、せいぜい、その程度である。ラーメンやパスタなどは滅多に食べなくなった。
ダイエットのためだけでなく、炭水化物を取りすぎると、血糖値が上がるせいか、眠たくなって仕事の効率が落ちる。文章にもキレがなくなる気がする。
モッツアレラチーズを本当にウマいと思ったのは、ローマで、塩野七生さんに連れて行っていただいたレストランで食した時で、あれを超えるものを、私は未だに食べたことがない。水牛のミルクから作るだけに、日本で食べられるのは空輸されたものか、普通の牛のミルクで代用した国産のもので、鮮度が命だけに、イタリアで食べるものにはとても適わない。
日本でも、たまに一個二千円くらいで、「空輸したて!」というのが売っているが、私は大体、一日に半分食べるので、そんなにエンゲル係数を上げるわけにもいかず、時々しか買わない。
お陰で、トマトにもうるさくなったが、冬になると、その肝心のトマトがマズくなり、しかも、カプレーゼ自体も冷たい食べ物なので、他の料理をトライしてみるのだか、結局、また、元に戻っている。今日の昼も、当然そうだった。
2012年12月24日 (月)
精神科医師Aさんの人工甘味料の情報、第3弾です。
1)米国の論文
加糖飲料をやめることで、体重減少は、1年目は有意差あり。2年目は有意差なし。
2)オランダの論文
加糖飲料を人工甘味料に変えることで、有意な体重減少効果あり。
人工甘味料は、使い方次第で、体重減少に役にたちそうですね。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
甘味料のRCT研究
mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1209/1209072.html
◇加糖飲料の規制に拍車? 2報のRCTが発表。若年者対象の試験が米,オランダで実施
一部の先進国では,肥満や過体重例の増加だけでなく,発症年齢の若年化も深刻な問題となりつつある。欧米諸国では,アルコールやたばこと同様,過剰摂取による健康上の問題が懸念されるとして,砂糖や加糖飲料などに課税などの規制をかけるべきかどうかの議論が巻き起こっている。
そんな中,N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版に,若年者を対象とした加糖飲料の「制限」そして「人工甘味料入り飲料への置換」に関するランダム化比較試験(RCT)が2報報告された。
これらの演題は米国肥満学会の第30回年次学術集会(9月20~24日,米サンアントニオ)で同時発表された。付随論評では,これらの報告で加糖飲料に対する規制強化に弾みがつくのではないかとの見方も示されている
*肥満例への加糖飲料制限に関するRCT,2年目での有意な効果証明できず
加糖飲料を日常的に摂取している肥満または過体重の若年者(男性124例,平均15歳)224例を対象にしたRCTを報告したのは,米ボストン小児病院のCara B. Ebbeling氏ら(N Engl J Med 2012年9月23日オンライン版)
同氏らは,被験者への介入の有無によるその後の体重増加に対する影響を検討。介入群では加糖飲料の摂取量を減らすため,水やダイエット飲料の宅配,無糖飲料の摂取などに関するメールの送信,電話や対面での面接による飲料摂取状況の確認が行われた。コントロール群では試験参加率を維持するため(as a retention strategy),定期的に50ドルのギフトカードが送られた
試験開始から1年の介入期間後,さらに1年,介入なしの観察期間が設けられた。試験参加率は1年時点で97%,2年時点で93%
介入群および対照群のベースライン時の加糖飲料摂取状況は,いずれも1.7杯/日と同等であった。しかし,介入群では試験開始から1年時点の加糖飲料摂取量はほぼゼロにまで減少,2年目も依然として低い状態が保たれていた
同試験の1次評価項目に設定された,試験開始2年時点におけるBMI(中央値)のベースラインからの変化量に有意な差はなかった(両群における変化量の差:-0.3,P=0.46)。ただし,1年目のBMI(-0.57,P=0.045)および体重の変化量(-1.9kg,P=0.04)には有意な差が見られ,介入群で増加の程度が小さかった。人種別の解析では,介入群の対照群に対するBMI減少の差は,非ヒスパニック系人種に比べヒスパニック系人種で大きいとの結果も示されている
以上の結果から,同氏らは1年間の介入による加糖飲料の摂取量減少により,1年時点での過体重・肥満の若年者におけるBMI増加の程度が対照群に比べ,抑制されていたが,2年目では有意な差が見られなかったと結論付けている
*正常体重児の人工甘味料飲料切り替えによるBMIへの影響を二重盲検で検討
正常体重の4~11歳の小児648例を対象に,同じパッケージの加糖飲料と人工甘味料(スクラロース,アセスルファム)入り飲料を用いた二重盲検RCTを実施したのはオランダVU大学アムステルダムのJanne C. de Ruyter氏ら(N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版)
同氏らは,加糖飲料の摂取が過体重につながる理由に液糖が摂取による満足感をもたらさず,結果としてその他の食事の摂取量が減少できないことが挙げられると指摘する。ただし,加糖飲料から人工甘味料を含む飲料に切り替えた場合の体重増加を抑える効果は不明だとして,今回の試験を実施
被験者は倫理的観点から,事前の質問により「加糖飲料を普段から摂取している」と答えた小児から選定。医学的問題のあった人は除外された。18カ月にわたり,1日1缶の飲料を学校で摂取,空き缶を自分の名前入りのボックスに入れ,教師が飲用状況を確認。試験開始時,6,12,18カ月時点で身長,体重,皮下脂肪厚(skinfold thickness)や尿の検査が行われた
*18カ月で26%が脱落も,人工甘味料入り飲料でBMI・体重増が有意に抑制
アドヒアランス維持のため,試験関係者らは学校や教師,保護者,被験者らに対し,トーナメント形式の導入や,ニュースレターや誕生日カードを送るなどの介入を実施。しかし,18カ月時点で全体の26%が試験飲料の摂取を中止していた。同氏らは中止例のベースライン時のBMIが非中止例に比べ高かったこと,両親の就学年数が少ない傾向にあったなどの分析結果を示している。同氏らは脱落例の欠損値を別途推計し,帰属させて全体の解析を実施
その結果,1次評価項目に設定されたBMIのZスコア(SDスコア)のベースラインからの変化は人工甘味料入り飲料群の0.02に対し,加糖飲料群では0.15と前者で有意にBMIの増加が抑制されていた(群間差-0.13,95%CI -0.21~-0.05,P=0.001)
体重については人工甘味料入り飲料群で6.35kg(ベースラインとの比較),加糖飲料群では7.37kgと同じく前者で有意な増加抑制が認められた(群間差-1.01,95%CI -1.54~-0.48,P<0.001)。その他の評価項目を含め,試験完遂例のみの解析でも同様の傾向が見られた
試験期間中の有害事象は少数であったと報告されている。一方,試験終了時点で入手した脱落例134例の検査結果を試験完遂例(477例)に結合したところ,BMIのZスコアのベースラインからの変化は人工甘味料入り飲料群0.06,加糖飲料群0.12で(群間差0.07,95%CI -0.134~0.002,P=0.06)と有意な差はなかった
同氏らは,正常体重児に対する盲検下での加糖飲料から人工甘味料入り飲料への切り替えにより,体重増加や脂肪の蓄積が抑制されたと結論。ただし,肥満例や成人などでの有効性は不明としている
米イェール大学のSonia Caprio氏は付随論評(N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版)で,これらの報告により小児肥満の増加を抑止するための加糖飲料の規制に弾みがつくのではないかとの見方を示した。その上で,医学会などが一丸となって加糖飲料の消費量を減らすための活動を推進するときが来たと結んでいる
1)米国の論文
加糖飲料をやめることで、体重減少は、1年目は有意差あり。2年目は有意差なし。
2)オランダの論文
加糖飲料を人工甘味料に変えることで、有意な体重減少効果あり。
人工甘味料は、使い方次第で、体重減少に役にたちそうですね。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
甘味料のRCT研究
mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1209/1209072.html
◇加糖飲料の規制に拍車? 2報のRCTが発表。若年者対象の試験が米,オランダで実施
一部の先進国では,肥満や過体重例の増加だけでなく,発症年齢の若年化も深刻な問題となりつつある。欧米諸国では,アルコールやたばこと同様,過剰摂取による健康上の問題が懸念されるとして,砂糖や加糖飲料などに課税などの規制をかけるべきかどうかの議論が巻き起こっている。
そんな中,N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版に,若年者を対象とした加糖飲料の「制限」そして「人工甘味料入り飲料への置換」に関するランダム化比較試験(RCT)が2報報告された。
これらの演題は米国肥満学会の第30回年次学術集会(9月20~24日,米サンアントニオ)で同時発表された。付随論評では,これらの報告で加糖飲料に対する規制強化に弾みがつくのではないかとの見方も示されている
*肥満例への加糖飲料制限に関するRCT,2年目での有意な効果証明できず
加糖飲料を日常的に摂取している肥満または過体重の若年者(男性124例,平均15歳)224例を対象にしたRCTを報告したのは,米ボストン小児病院のCara B. Ebbeling氏ら(N Engl J Med 2012年9月23日オンライン版)
同氏らは,被験者への介入の有無によるその後の体重増加に対する影響を検討。介入群では加糖飲料の摂取量を減らすため,水やダイエット飲料の宅配,無糖飲料の摂取などに関するメールの送信,電話や対面での面接による飲料摂取状況の確認が行われた。コントロール群では試験参加率を維持するため(as a retention strategy),定期的に50ドルのギフトカードが送られた
試験開始から1年の介入期間後,さらに1年,介入なしの観察期間が設けられた。試験参加率は1年時点で97%,2年時点で93%
介入群および対照群のベースライン時の加糖飲料摂取状況は,いずれも1.7杯/日と同等であった。しかし,介入群では試験開始から1年時点の加糖飲料摂取量はほぼゼロにまで減少,2年目も依然として低い状態が保たれていた
同試験の1次評価項目に設定された,試験開始2年時点におけるBMI(中央値)のベースラインからの変化量に有意な差はなかった(両群における変化量の差:-0.3,P=0.46)。ただし,1年目のBMI(-0.57,P=0.045)および体重の変化量(-1.9kg,P=0.04)には有意な差が見られ,介入群で増加の程度が小さかった。人種別の解析では,介入群の対照群に対するBMI減少の差は,非ヒスパニック系人種に比べヒスパニック系人種で大きいとの結果も示されている
以上の結果から,同氏らは1年間の介入による加糖飲料の摂取量減少により,1年時点での過体重・肥満の若年者におけるBMI増加の程度が対照群に比べ,抑制されていたが,2年目では有意な差が見られなかったと結論付けている
*正常体重児の人工甘味料飲料切り替えによるBMIへの影響を二重盲検で検討
正常体重の4~11歳の小児648例を対象に,同じパッケージの加糖飲料と人工甘味料(スクラロース,アセスルファム)入り飲料を用いた二重盲検RCTを実施したのはオランダVU大学アムステルダムのJanne C. de Ruyter氏ら(N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版)
同氏らは,加糖飲料の摂取が過体重につながる理由に液糖が摂取による満足感をもたらさず,結果としてその他の食事の摂取量が減少できないことが挙げられると指摘する。ただし,加糖飲料から人工甘味料を含む飲料に切り替えた場合の体重増加を抑える効果は不明だとして,今回の試験を実施
被験者は倫理的観点から,事前の質問により「加糖飲料を普段から摂取している」と答えた小児から選定。医学的問題のあった人は除外された。18カ月にわたり,1日1缶の飲料を学校で摂取,空き缶を自分の名前入りのボックスに入れ,教師が飲用状況を確認。試験開始時,6,12,18カ月時点で身長,体重,皮下脂肪厚(skinfold thickness)や尿の検査が行われた
*18カ月で26%が脱落も,人工甘味料入り飲料でBMI・体重増が有意に抑制
アドヒアランス維持のため,試験関係者らは学校や教師,保護者,被験者らに対し,トーナメント形式の導入や,ニュースレターや誕生日カードを送るなどの介入を実施。しかし,18カ月時点で全体の26%が試験飲料の摂取を中止していた。同氏らは中止例のベースライン時のBMIが非中止例に比べ高かったこと,両親の就学年数が少ない傾向にあったなどの分析結果を示している。同氏らは脱落例の欠損値を別途推計し,帰属させて全体の解析を実施
その結果,1次評価項目に設定されたBMIのZスコア(SDスコア)のベースラインからの変化は人工甘味料入り飲料群の0.02に対し,加糖飲料群では0.15と前者で有意にBMIの増加が抑制されていた(群間差-0.13,95%CI -0.21~-0.05,P=0.001)
体重については人工甘味料入り飲料群で6.35kg(ベースラインとの比較),加糖飲料群では7.37kgと同じく前者で有意な増加抑制が認められた(群間差-1.01,95%CI -1.54~-0.48,P<0.001)。その他の評価項目を含め,試験完遂例のみの解析でも同様の傾向が見られた
試験期間中の有害事象は少数であったと報告されている。一方,試験終了時点で入手した脱落例134例の検査結果を試験完遂例(477例)に結合したところ,BMIのZスコアのベースラインからの変化は人工甘味料入り飲料群0.06,加糖飲料群0.12で(群間差0.07,95%CI -0.134~0.002,P=0.06)と有意な差はなかった
同氏らは,正常体重児に対する盲検下での加糖飲料から人工甘味料入り飲料への切り替えにより,体重増加や脂肪の蓄積が抑制されたと結論。ただし,肥満例や成人などでの有効性は不明としている
米イェール大学のSonia Caprio氏は付随論評(N Engl J Med 2012年9月21日オンライン版)で,これらの報告により小児肥満の増加を抑止するための加糖飲料の規制に弾みがつくのではないかとの見方を示した。その上で,医学会などが一丸となって加糖飲料の消費量を減らすための活動を推進するときが来たと結んでいる
2012年12月24日 (月)
こんばんは。
精神科医師Aさんから、人工甘味料の情報、第2弾をコメントいただきました。
ありがとうございます。
「飲料や食品などに含まれる砂糖を非栄養性甘味料(non-nutritive sweetener;NNS)で代用することにより,体重管理や糖尿病患者の血糖管理に役立つ可能性がある」
との声明を、米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)がだしたそうです。
さらにDiane Reader氏が
「炭水化物制限食にNNSを用いれば,効果的に炭水化物の摂取が抑制でき,これが体重と糖尿病の管理に役立つかもしれない」
と述べており、糖質制限食(炭水化物制限食)が米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)において普通に認知されている印象を受けました。
喜ばしいことですね。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
AHA/ADAの声明
mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45380231/
◇AHA/ADAが非栄養性甘味料に関する声明を発表。砂糖の代用で体重や血糖の管理に役立つ可能性
〔米テキサス州ダラス〕米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)は「飲料や食品などに含まれる砂糖を非栄養性甘味料(non-nutritive sweetener;NNS)で代用することにより,体重管理や糖尿病患者の血糖管理に役立つ可能性がある」とする声明をCirculation(2012; 126: 509-519)とDiabetes Care(2012; 35: 1798-1808)に発表した。ただし,「カロリーと砂糖の摂取を抑える上で,この代用が長期的に有効かどうかについて結論を出すには,科学的エビデンスが不足している」としている。
*糖尿病リスク低下につながる可能性
食事に含まれる糖質の高摂取は心血管疾患や肥満の原因となり,ひいては2型糖尿病の発症につながりうる。
AHAが推奨する食品中の添加砂糖(added sugar)の1日摂取量は,女性では100kcal以下,男性では150kcal以下である。この推奨値は,砂糖を多く含む食事が肥満や脂質異常症といった冠動脈性心疾患のリスクを高めることを示した研究に基づいている
スタンフォード大学(カリフォルニア州スタンフォード)内科学のChristopher Gardner准教授は「砂糖を多く含む食品や飲料は,一般的に高カロリーで栄養価が低い傾向にある。NNSは特効薬ではないが,適切に使えば食事に含まれる砂糖の量を減らし,摂取カロリーを制限できる。こうして体重を良好に管理できれば,最終的には糖尿病のリスク低下にもつながりうる」と述べた上で,ただし注意点もあると指摘している。
*6種類のNNSを研究
今回の声明は,主に6種類のNNS〔アスパルテーム,アセスルファムカリウム,ネオテーム,サッカリン,スクラロース,植物性甘味料(ステビア)〕に関する先行研究のレビュー結果に基づいている。それによると,砂糖などの高カロリー甘味料の代替にNNSを用いることが,糖尿病管理に重要な炭水化物の摂取制限,カロリー制限,体重や食欲のコントロール,および糖尿病と心疾患に関連する他の危険因子の減少に有用かどうかについては,データが不十分なため,結論は出ていない
Gardner准教授は「NNSの潜在的な効果を見極めるのは難しい。なぜならNNS代用による効果はNNSを含有する食品や飲料が1日の食事の中でどのように摂取されるかに左右されるからだ」と述べている
例えば「150kcalの清涼飲料の代わりにNNSを使った飲料を選択しても,その日のうちに300kcalのケーキやクッキーを摂取してしまうと,減らしたカロリーより摂取したカロリーの方が多くなるため,NNSは結果的に体重減少にはつながらない。しかし,150kcalの清涼飲料の代わりにNNSを使った飲料を選択し,その減少分のカロリーを後に摂取しなければ,摂取カロリーの総量は減るため体重管理に役立つ可能性がある」と説明している
*炭水化物制限食への利用にも有効か
また,NNSには低カロリーという利点だけでなく,砂糖の代わりとなりうるというメリットもあり,この点から糖尿病患者にとって有用といえる
声明共同作成者(ADA)の1人で,国際糖尿病センター(ミネソタ州ミネアポリス)の専門トレーニングマネジャーであるDiane Reader氏は「NNSを使った清涼飲料は血糖値をあまり上昇させないので,こうした商品が加わることで,糖尿病患者が選べる甘味商品の種類が増える」と説明している。とはいえ,NNS含有商品にも注意は必要で,「NNSが使われている食品が必ずしも,“無糖”または“健康的な食品”というわけではない」と述べている
同氏は「炭水化物制限食にNNSを用いれば,効果的に炭水化物の摂取が抑制でき,これが体重と糖尿病の管理に役立つかもしれない」と述べている
なお,今回の声明を発表するに当たり,非栄養性甘味料の安全性については評価されていない。ただし,今回の6種類のNNSはいずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受け,既に販売されているため,安全性は認められているとの前提に立っている
Gardner准教授は,ダイエット中,または砂糖の摂取を減らしたい人に向け「NNSを使った“ダイエット食品”を選択することによる食事全体への影響を考慮する必要がある。カロリーや砂糖の摂取を減らすには,野菜や果物,食物繊維の豊富な全粒穀物,無脂肪または低脂肪の乳製品など砂糖や非栄養性甘味料を用いていない食品を選択する方法もある」
と述べている
精神科医師Aさんから、人工甘味料の情報、第2弾をコメントいただきました。
ありがとうございます。
「飲料や食品などに含まれる砂糖を非栄養性甘味料(non-nutritive sweetener;NNS)で代用することにより,体重管理や糖尿病患者の血糖管理に役立つ可能性がある」
との声明を、米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)がだしたそうです。
さらにDiane Reader氏が
「炭水化物制限食にNNSを用いれば,効果的に炭水化物の摂取が抑制でき,これが体重と糖尿病の管理に役立つかもしれない」
と述べており、糖質制限食(炭水化物制限食)が米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)において普通に認知されている印象を受けました。
喜ばしいことですね。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
AHA/ADAの声明
mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45380231/
◇AHA/ADAが非栄養性甘味料に関する声明を発表。砂糖の代用で体重や血糖の管理に役立つ可能性
〔米テキサス州ダラス〕米国心臓協会(AHA)と米国糖尿病学会(ADA)は「飲料や食品などに含まれる砂糖を非栄養性甘味料(non-nutritive sweetener;NNS)で代用することにより,体重管理や糖尿病患者の血糖管理に役立つ可能性がある」とする声明をCirculation(2012; 126: 509-519)とDiabetes Care(2012; 35: 1798-1808)に発表した。ただし,「カロリーと砂糖の摂取を抑える上で,この代用が長期的に有効かどうかについて結論を出すには,科学的エビデンスが不足している」としている。
*糖尿病リスク低下につながる可能性
食事に含まれる糖質の高摂取は心血管疾患や肥満の原因となり,ひいては2型糖尿病の発症につながりうる。
AHAが推奨する食品中の添加砂糖(added sugar)の1日摂取量は,女性では100kcal以下,男性では150kcal以下である。この推奨値は,砂糖を多く含む食事が肥満や脂質異常症といった冠動脈性心疾患のリスクを高めることを示した研究に基づいている
スタンフォード大学(カリフォルニア州スタンフォード)内科学のChristopher Gardner准教授は「砂糖を多く含む食品や飲料は,一般的に高カロリーで栄養価が低い傾向にある。NNSは特効薬ではないが,適切に使えば食事に含まれる砂糖の量を減らし,摂取カロリーを制限できる。こうして体重を良好に管理できれば,最終的には糖尿病のリスク低下にもつながりうる」と述べた上で,ただし注意点もあると指摘している。
*6種類のNNSを研究
今回の声明は,主に6種類のNNS〔アスパルテーム,アセスルファムカリウム,ネオテーム,サッカリン,スクラロース,植物性甘味料(ステビア)〕に関する先行研究のレビュー結果に基づいている。それによると,砂糖などの高カロリー甘味料の代替にNNSを用いることが,糖尿病管理に重要な炭水化物の摂取制限,カロリー制限,体重や食欲のコントロール,および糖尿病と心疾患に関連する他の危険因子の減少に有用かどうかについては,データが不十分なため,結論は出ていない
Gardner准教授は「NNSの潜在的な効果を見極めるのは難しい。なぜならNNS代用による効果はNNSを含有する食品や飲料が1日の食事の中でどのように摂取されるかに左右されるからだ」と述べている
例えば「150kcalの清涼飲料の代わりにNNSを使った飲料を選択しても,その日のうちに300kcalのケーキやクッキーを摂取してしまうと,減らしたカロリーより摂取したカロリーの方が多くなるため,NNSは結果的に体重減少にはつながらない。しかし,150kcalの清涼飲料の代わりにNNSを使った飲料を選択し,その減少分のカロリーを後に摂取しなければ,摂取カロリーの総量は減るため体重管理に役立つ可能性がある」と説明している
*炭水化物制限食への利用にも有効か
また,NNSには低カロリーという利点だけでなく,砂糖の代わりとなりうるというメリットもあり,この点から糖尿病患者にとって有用といえる
声明共同作成者(ADA)の1人で,国際糖尿病センター(ミネソタ州ミネアポリス)の専門トレーニングマネジャーであるDiane Reader氏は「NNSを使った清涼飲料は血糖値をあまり上昇させないので,こうした商品が加わることで,糖尿病患者が選べる甘味商品の種類が増える」と説明している。とはいえ,NNS含有商品にも注意は必要で,「NNSが使われている食品が必ずしも,“無糖”または“健康的な食品”というわけではない」と述べている
同氏は「炭水化物制限食にNNSを用いれば,効果的に炭水化物の摂取が抑制でき,これが体重と糖尿病の管理に役立つかもしれない」と述べている
なお,今回の声明を発表するに当たり,非栄養性甘味料の安全性については評価されていない。ただし,今回の6種類のNNSはいずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受け,既に販売されているため,安全性は認められているとの前提に立っている
Gardner准教授は,ダイエット中,または砂糖の摂取を減らしたい人に向け「NNSを使った“ダイエット食品”を選択することによる食事全体への影響を考慮する必要がある。カロリーや砂糖の摂取を減らすには,野菜や果物,食物繊維の豊富な全粒穀物,無脂肪または低脂肪の乳製品など砂糖や非栄養性甘味料を用いていない食品を選択する方法もある」
と述べている
2012年12月24日 (月)
こんばんは
精神科医師Aさんから、人工甘味料の情報をコメントいただきました。
1)ダイエットソフトドリンクを1日2本以上飲む人は、そうでない人に比べて腹囲の増加があった。
2)アスパルテームを与えたマウスは、対照群に比し、血糖値が高く、インスリンレベルが低かった。
2011年6月の米国糖尿病学会(ADA)での発表ですが、いずれも1年以上経過して論文になっていないので、エビデンスとはいえないとの精神科医師Aさんの見解で私も同感です。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
Texas大学の甘味料研究
www.americanrunning.org/w/article/diet-soda-and-weight
2011年6月の米国糖尿病学会(ADA)で、the University of Texas Health Science Center at San Antonioより2種の発表が行われた。
1) the San Antonio Longitudinal Study of Aging の対象者474名の年配者を10年間調査した。Diet soft drink を1日2本以上飲む人は飲まない人に比べて、最長ウエストサイズの増加が、10年間で5倍以上に達していた。
2) マウスを20匹づつ2群に分け、片方にaspartame を与えた。3ヶ月後には、aspartam群は対照と比べ、血糖値は37%高く、インスリンレベルは27%低かった
このニュースが英語圏のメディアにセンセーショナルに報道された
ただしこの研究発表は、2012年12月現在、論文化されておらず、evidenceとはなりえない。当然ながら、2012年7月のADA/AHA合同声明には一切反映されていない
精神科医師Aさんから、人工甘味料の情報をコメントいただきました。
1)ダイエットソフトドリンクを1日2本以上飲む人は、そうでない人に比べて腹囲の増加があった。
2)アスパルテームを与えたマウスは、対照群に比し、血糖値が高く、インスリンレベルが低かった。
2011年6月の米国糖尿病学会(ADA)での発表ですが、いずれも1年以上経過して論文になっていないので、エビデンスとはいえないとの精神科医師Aさんの見解で私も同感です。
江部康二
12/12/23 精神科医師A
Texas大学の甘味料研究
www.americanrunning.org/w/article/diet-soda-and-weight
2011年6月の米国糖尿病学会(ADA)で、the University of Texas Health Science Center at San Antonioより2種の発表が行われた。
1) the San Antonio Longitudinal Study of Aging の対象者474名の年配者を10年間調査した。Diet soft drink を1日2本以上飲む人は飲まない人に比べて、最長ウエストサイズの増加が、10年間で5倍以上に達していた。
2) マウスを20匹づつ2群に分け、片方にaspartame を与えた。3ヶ月後には、aspartam群は対照と比べ、血糖値は37%高く、インスリンレベルは27%低かった
このニュースが英語圏のメディアにセンセーショナルに報道された
ただしこの研究発表は、2012年12月現在、論文化されておらず、evidenceとはなりえない。当然ながら、2012年7月のADA/AHA合同声明には一切反映されていない
2012年12月24日 (月)
こんにちは。
山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生の本「米と糖尿病」やホームページをみた人から時々質問がありますので、記事を一部再掲します。
江部康二
再掲
「米と糖尿病」を読んで2010年9月
2010年09月01日 (水)
おはようございます。
山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生が「米と糖尿病」という本を、2010年7月に出版されました。
内容は、基本的に佐藤章夫先生のホームページに記載してあることとほぼ一緒でした。
その中で、「はじめに」 に書いておられることで、かなりの疑問が解けました。
①佐藤先生ご自身が糖尿病である。1989年診断。
②1995年にヒムスワースの論文を発見。
1935年にヒムスワースが発表した、
a)正常人の耐糖能に関する論文
b)糖尿病の疫学の論文。
この2つの論文が、佐藤先生の仮説(高炭水化物食肯定論)の、肝心要な根拠である。
③佐藤先生ご自身の検査データは過去一貫してHbA1c6.5%未満であるが、尿糖陽性の可能性は高い。
①に関して、ご自身が糖尿病なので、薬物に頼らない食事療法に興味を持たれたということで、モチベーションは私と同様ですが、糖質に対する見解が真逆ですね。
私は糖質制限食で、佐藤先生は高糖質食(高炭水化物食)・・・。
これは、私はずっと臨床医で糖尿病患者さんを多数診察していますが、佐藤先生は基礎畑で臨床医ではなく、糖尿病患者さんをほとんど診ておられないという差が大きいと思います。
高雄病院では、1200人以上の糖尿病患者さんに糖質制限食を指導し、顕著な効果を確認しています。入院して糖質制限食を実践され、著明に改善された糖尿病患者さんも400人以上おられて、きっちりデータもあります。
②
a)ヒムスワースの正常人の耐糖能に関する論文。1935年発表。
「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食によって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」
というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。
一方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても、耐糖能には大きな影響を及ぼさないという報告を行いました。この報告がNew England Journal of Medicineという影響力の大きな医学誌に掲載されました。
佐藤先生は、「ウィルカーソンは間違っている」と、個人的な見解を述べておられますが、欧米の糖尿病の専門家は、ウィルカーソンの報告を支持しています。
New England Journal of Medicineのような、権威ある医学雑誌においては、まず論文が受理されるまでに、担当編集委員による厳しい審査があります。この第一関門だけでも大変な狭き門です。
また、受理されたとしても、論文として掲載されるまでには、さらに厳密な審査が行われます。
複数の専門家(レフリー)によって、論文の内容に間違いがないか、研究方法に問題はないかなどが徹底的に審査されます。
いったん受理されても、レフリーにより掲載不可になることもあるし、大改訂後掲載可というような判定もあります。
この非常に厳しい第二関門を通過して、初めて医学雑誌に論文として掲載されるわけです。
つまり、一流の医学雑誌に掲載された論文には、当該の一流の複数の専門家のお墨付き・保証があるわけです。
(製薬メーカーなどの利権が絡まない論文は、信用していいと思います。)
ですから、単なる学会報告で論文になってない研究と、一流医学雑誌に論文が掲載された研究では、信頼度にかなりの差があるわけです。
ましてや、佐藤章夫先生の個人的見解と、ニューイングランド・ジャーナルの審査を行った、複数の欧米の専門家の見識と、どちらが信頼度が高いかは、明らかです。
b)ヒムスワースの糖尿病の疫学の論文。1935年発表。
「脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物では、これと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられる」
というのがヒムスワースの結論です。
これに対して、日本の糖尿病医療を長くリードされてきた後藤由夫先生が、ヒムスワース(Himsworth)の誤解を明快に指摘しておられます。
<後藤由夫 私の糖尿病50年 -糖尿病医療の歩み->
43. 糖尿病の増減
http://dm-medical.net/14/000242.php
2. 脂肪摂取と糖尿病
「ロンドンのHimsworth(1935、1949年)は各国の糖尿病の死亡率と国民の栄養素摂取量との関係が図2のように、脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物ではこれと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられると報告した。この成績をもとにHimsworthは脂肪摂取が糖尿病の増加と関係すると結論した。筆者はこれに興味を抱き、追試して同様な成績を得たが、次に粗死亡率ではなく訂正死亡率について関係を求めた。その結果は図3のように相関関係は認められなかった。このことから、Himsworthがみていたのは脂肪摂取量の多い国は豊かで糖尿病罹病年齢まで生存するのに対し、経済的に遅れている国では脂肪摂取量が少なく、安価な炭水化物をエネルギー源として、しかも糖尿病罹病年齢まで生存する者は少なく、若年期に死亡する者が多いことをみているにすぎない、と理解された。このことから脂肪摂取が糖尿病の発症と関係するという説は否定された。動物に大量の脂肪を与える実験も行われたが、これによって糖尿病が現れたという報告もなかった。」
このように、佐藤章夫先生が、「高炭水化物食肯定論」の最大の根拠としておられるヒムスワースの二つの論文そのものが、医学的には既に否定されているわけです。
ヒムスワースの論文は、1935年発表です。その後、医学も疫学も、多大な進歩を遂げました。ヒムスワース論文は、75年前の過去の遺物に過ぎません。
③に関して
佐藤先生ご自身の検査データは65才まで過去一貫して、
HbA1c6.5%未満ということですが、
「食後に尿糖がでていると思うがまったく気にしていない。65才以後この8年は検査していない。」と述べておられます。
尿糖が陽性ということは、食後血糖値が180mg/dlを超えている可能性が極めて高く、大血管合併症を起こす可能性も否定できません。
食後高血糖が、糖尿病における動脈硬化の最大のリスク要因であることは、現在世界の医学界の共通認識ですが、佐藤先生は無視しておられ危険です。
是非、血液検査で現在のHbA1cや食後血糖値、早朝空腹時血糖値など調べていただきたいものです。加えて、頸動脈エコーや心電図も調べていただいた方が無難と思います。
なお、「米と糖尿病」を拝見して、実際に糖尿病患者さんを診察したデータが、皆無です。
健常な学生のデータとラットのデータはありますが、少なくとも本には糖尿病患者さんのデータはありません。
佐藤章夫先生は、基礎畑で予防医学がご専門であり、実際には糖尿病患者さんは、ほとんど診ておられないと思います。
糖尿病診療経験がほとんどない人が、糖尿病の本を書かれること自体が、私には不思議に思えます。
まして糖尿病患者を診察しておられない人が、安易に糖尿人に高炭水化物食を奨めることは、経験もないのに無責任であるといわれてもしかたありません。
もっとも見方を変えれば、
「糖尿病患者をほとんど診察しておられないからこそ、糖尿病臨床現場ではありえない奇妙な仮説を提唱された。」
といえるかもしれません。
佐藤章夫先生が個人的仮説(高炭水化物食肯定論)を提唱されるのはご自由と思いますが、糖尿人がそれを実践すれば、極めて危険であることだけは、指摘しておかなくてはなりません。
例えば、既に糖尿病の診断がついている人に、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施することは、倫理的に不可とされています。
必ずや、200mg、300mgの高血糖を引き起こすことがわかっている以上は、危険を冒す意味はないということです。
糖尿人が、佐藤章夫先生の仰有る用に、総摂取カロリーの70~80%を米から摂取すれば、75g経口ブドウ糖負荷試験と同様、かならず食後血糖値は200mg、300mgを超えてきます。
リアルタイムに血管内皮が障害され、酸化ストレスが発生し動脈硬化のリスクとなります。これは、世界中で認められている、生理学的事実です。
糖尿人のご同輩、しっかり自分自身で考えて、糖質制限食と高糖質食(高炭水化物食)のどちらに、理論的根拠・疫学的根拠・臨床データ上の根拠があるのか、判断して、自己責任で自己管理していただきたいと思います。
江部康二
山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生の本「米と糖尿病」やホームページをみた人から時々質問がありますので、記事を一部再掲します。
江部康二
再掲
「米と糖尿病」を読んで2010年9月
2010年09月01日 (水)
おはようございます。
山梨医科大学名誉教授、佐藤章夫先生が「米と糖尿病」という本を、2010年7月に出版されました。
内容は、基本的に佐藤章夫先生のホームページに記載してあることとほぼ一緒でした。
その中で、「はじめに」 に書いておられることで、かなりの疑問が解けました。
①佐藤先生ご自身が糖尿病である。1989年診断。
②1995年にヒムスワースの論文を発見。
1935年にヒムスワースが発表した、
a)正常人の耐糖能に関する論文
b)糖尿病の疫学の論文。
この2つの論文が、佐藤先生の仮説(高炭水化物食肯定論)の、肝心要な根拠である。
③佐藤先生ご自身の検査データは過去一貫してHbA1c6.5%未満であるが、尿糖陽性の可能性は高い。
①に関して、ご自身が糖尿病なので、薬物に頼らない食事療法に興味を持たれたということで、モチベーションは私と同様ですが、糖質に対する見解が真逆ですね。
私は糖質制限食で、佐藤先生は高糖質食(高炭水化物食)・・・。
これは、私はずっと臨床医で糖尿病患者さんを多数診察していますが、佐藤先生は基礎畑で臨床医ではなく、糖尿病患者さんをほとんど診ておられないという差が大きいと思います。
高雄病院では、1200人以上の糖尿病患者さんに糖質制限食を指導し、顕著な効果を確認しています。入院して糖質制限食を実践され、著明に改善された糖尿病患者さんも400人以上おられて、きっちりデータもあります。
②
a)ヒムスワースの正常人の耐糖能に関する論文。1935年発表。
「健康人に糖質の少ない食事を1週間与えて糖負荷試験を行った。高糖質食を与えたときには耐糖能は正常であったのに、低糖質食によって糖尿病と判定されるほどに耐糖能が悪化した。」
というのが、ヒムスワースが1935年に発表した論文の結論です。
一方、 1960年、ウィルカーソン(Wilkerson)らが、受刑者を被験者として低糖質食が耐糖能に与える影響を再検討して、糖質の摂取量を1日50グラムに制限しても、耐糖能には大きな影響を及ぼさないという報告を行いました。この報告がNew England Journal of Medicineという影響力の大きな医学誌に掲載されました。
佐藤先生は、「ウィルカーソンは間違っている」と、個人的な見解を述べておられますが、欧米の糖尿病の専門家は、ウィルカーソンの報告を支持しています。
New England Journal of Medicineのような、権威ある医学雑誌においては、まず論文が受理されるまでに、担当編集委員による厳しい審査があります。この第一関門だけでも大変な狭き門です。
また、受理されたとしても、論文として掲載されるまでには、さらに厳密な審査が行われます。
複数の専門家(レフリー)によって、論文の内容に間違いがないか、研究方法に問題はないかなどが徹底的に審査されます。
いったん受理されても、レフリーにより掲載不可になることもあるし、大改訂後掲載可というような判定もあります。
この非常に厳しい第二関門を通過して、初めて医学雑誌に論文として掲載されるわけです。
つまり、一流の医学雑誌に掲載された論文には、当該の一流の複数の専門家のお墨付き・保証があるわけです。
(製薬メーカーなどの利権が絡まない論文は、信用していいと思います。)
ですから、単なる学会報告で論文になってない研究と、一流医学雑誌に論文が掲載された研究では、信頼度にかなりの差があるわけです。
ましてや、佐藤章夫先生の個人的見解と、ニューイングランド・ジャーナルの審査を行った、複数の欧米の専門家の見識と、どちらが信頼度が高いかは、明らかです。
b)ヒムスワースの糖尿病の疫学の論文。1935年発表。
「脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物では、これと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられる」
というのがヒムスワースの結論です。
これに対して、日本の糖尿病医療を長くリードされてきた後藤由夫先生が、ヒムスワース(Himsworth)の誤解を明快に指摘しておられます。
<後藤由夫 私の糖尿病50年 -糖尿病医療の歩み->
43. 糖尿病の増減
http://dm-medical.net/14/000242.php
2. 脂肪摂取と糖尿病
「ロンドンのHimsworth(1935、1949年)は各国の糖尿病の死亡率と国民の栄養素摂取量との関係が図2のように、脂肪の摂取量の多い国ほど糖尿病死亡率が高く、また炭水化物ではこれと対照的に摂取量の多い国ほど糖尿病が少ないという傾向がみられると報告した。この成績をもとにHimsworthは脂肪摂取が糖尿病の増加と関係すると結論した。筆者はこれに興味を抱き、追試して同様な成績を得たが、次に粗死亡率ではなく訂正死亡率について関係を求めた。その結果は図3のように相関関係は認められなかった。このことから、Himsworthがみていたのは脂肪摂取量の多い国は豊かで糖尿病罹病年齢まで生存するのに対し、経済的に遅れている国では脂肪摂取量が少なく、安価な炭水化物をエネルギー源として、しかも糖尿病罹病年齢まで生存する者は少なく、若年期に死亡する者が多いことをみているにすぎない、と理解された。このことから脂肪摂取が糖尿病の発症と関係するという説は否定された。動物に大量の脂肪を与える実験も行われたが、これによって糖尿病が現れたという報告もなかった。」
このように、佐藤章夫先生が、「高炭水化物食肯定論」の最大の根拠としておられるヒムスワースの二つの論文そのものが、医学的には既に否定されているわけです。
ヒムスワースの論文は、1935年発表です。その後、医学も疫学も、多大な進歩を遂げました。ヒムスワース論文は、75年前の過去の遺物に過ぎません。
③に関して
佐藤先生ご自身の検査データは65才まで過去一貫して、
HbA1c6.5%未満ということですが、
「食後に尿糖がでていると思うがまったく気にしていない。65才以後この8年は検査していない。」と述べておられます。
尿糖が陽性ということは、食後血糖値が180mg/dlを超えている可能性が極めて高く、大血管合併症を起こす可能性も否定できません。
食後高血糖が、糖尿病における動脈硬化の最大のリスク要因であることは、現在世界の医学界の共通認識ですが、佐藤先生は無視しておられ危険です。
是非、血液検査で現在のHbA1cや食後血糖値、早朝空腹時血糖値など調べていただきたいものです。加えて、頸動脈エコーや心電図も調べていただいた方が無難と思います。
なお、「米と糖尿病」を拝見して、実際に糖尿病患者さんを診察したデータが、皆無です。
健常な学生のデータとラットのデータはありますが、少なくとも本には糖尿病患者さんのデータはありません。
佐藤章夫先生は、基礎畑で予防医学がご専門であり、実際には糖尿病患者さんは、ほとんど診ておられないと思います。
糖尿病診療経験がほとんどない人が、糖尿病の本を書かれること自体が、私には不思議に思えます。
まして糖尿病患者を診察しておられない人が、安易に糖尿人に高炭水化物食を奨めることは、経験もないのに無責任であるといわれてもしかたありません。
もっとも見方を変えれば、
「糖尿病患者をほとんど診察しておられないからこそ、糖尿病臨床現場ではありえない奇妙な仮説を提唱された。」
といえるかもしれません。
佐藤章夫先生が個人的仮説(高炭水化物食肯定論)を提唱されるのはご自由と思いますが、糖尿人がそれを実践すれば、極めて危険であることだけは、指摘しておかなくてはなりません。
例えば、既に糖尿病の診断がついている人に、75g経口ブドウ糖負荷試験を実施することは、倫理的に不可とされています。
必ずや、200mg、300mgの高血糖を引き起こすことがわかっている以上は、危険を冒す意味はないということです。
糖尿人が、佐藤章夫先生の仰有る用に、総摂取カロリーの70~80%を米から摂取すれば、75g経口ブドウ糖負荷試験と同様、かならず食後血糖値は200mg、300mgを超えてきます。
リアルタイムに血管内皮が障害され、酸化ストレスが発生し動脈硬化のリスクとなります。これは、世界中で認められている、生理学的事実です。
糖尿人のご同輩、しっかり自分自身で考えて、糖質制限食と高糖質食(高炭水化物食)のどちらに、理論的根拠・疫学的根拠・臨床データ上の根拠があるのか、判断して、自己責任で自己管理していただきたいと思います。
江部康二
2012年12月22日 (土)
【糖質制限食とは】
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。
従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。
タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
また一日における、食前・食後・空腹時など、血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。
そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
厚生労働省のいう一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち
身体活動レベルが低い人は
男性:1850~2250キロカロリー/日
女性:1450~1700キロカロリー/日
身体活動レベルが普通なら
男性:2200~2650キロカロリー/日
女性:1700~1950キロカロリー/日
身体活動レベルが高い場合
男性:2500~3050キロカロリー/日
女性:2000~2300キロカロリー/日
くらいが目安です。
結局、現時点では、基礎代謝量には、個人差もあるので、糖尿人も一般人も、BMI20以上~25未満で、
その人の一番体調のいい体重を保つような摂取エネルギー量でよいのかと思います。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応とならない(してはならない)のでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
また長鎖脂肪酸代謝異常症(日本で毎年10-50人の新患が発生)の場合も脂肪の利用・代謝が上手くいかないので糖質制限食の適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
<参考図書>
理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと コミック
以上(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(文春文庫)2012年
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「食品別糖質量ハンドブック」(洋泉社)2012年
レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年
「血糖値を上げない! 健康おつまみ109 」2010年
「やせる食べかたレシピ集」2010年
「主食を抜けば糖尿は良くなる!レシピ集」2011年
以上(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん(アスペクト)2009年
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
糖質オフダイエット (レタスクラブ、角川マーケティング)2011年
誰もがストレスなくやせられる! 糖質制限ダイエット(講談社)2011年
糖尿病・肥満を克服する高雄病院の「糖質制限」給食(講談社)2012年
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集(ナツメ社)2012年
血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド (別冊宝島 1902 ホーム) 2012年
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。
従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。
タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
また一日における、食前・食後・空腹時など、血糖値の変動幅(平均血糖変動幅)が大きいほど、酸化ストレスが増強し動脈硬化のリスクとなることがわかってきました。
そして、食後高血糖と平均血糖変動幅増大を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
厚生労働省のいう一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち
身体活動レベルが低い人は
男性:1850~2250キロカロリー/日
女性:1450~1700キロカロリー/日
身体活動レベルが普通なら
男性:2200~2650キロカロリー/日
女性:1700~1950キロカロリー/日
身体活動レベルが高い場合
男性:2500~3050キロカロリー/日
女性:2000~2300キロカロリー/日
くらいが目安です。
結局、現時点では、基礎代謝量には、個人差もあるので、糖尿人も一般人も、BMI20以上~25未満で、
その人の一番体調のいい体重を保つような摂取エネルギー量でよいのかと思います。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応とならない(してはならない)のでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
また長鎖脂肪酸代謝異常症(日本で毎年10-50人の新患が発生)の場合も脂肪の利用・代謝が上手くいかないので糖質制限食の適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
<参考図書>
理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと コミック
以上(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(文春文庫)2012年
「糖質オフ!健康法」(PHP文庫)2012年
「食品別糖質量ハンドブック」(洋泉社)2012年
レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年
「血糖値を上げない! 健康おつまみ109 」2010年
「やせる食べかたレシピ集」2010年
「主食を抜けば糖尿は良くなる!レシピ集」2011年
以上(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん(アスペクト)2009年
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
糖質オフダイエット (レタスクラブ、角川マーケティング)2011年
誰もがストレスなくやせられる! 糖質制限ダイエット(講談社)2011年
糖尿病・肥満を克服する高雄病院の「糖質制限」給食(講談社)2012年
糖尿病がどんどんよくなる「糖質制限食」おすすめレシピ集(ナツメ社)2012年
血糖コントロールの新常識! 糖質制限 完全ガイド (別冊宝島 1902 ホーム) 2012年
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
2012年12月21日 (金)
こんばんは
山田悟医師のケトーシスに対する懸念への私の追加見解を述べます。
<Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき>
バーンスタイン氏の特殊性とは、まぬーかさんのコメントのように
「最低限度のインスリン注射で、1型糖尿病でHbA1c4%台で維持されているところ」
と、私も思います。
バーンスタイン氏は、35才で顕性腎症前期(第3期A)を発症してから、糖質制限食で改善されて、78才の現在までお元気で過ごされています。
合併症を一度経験されているので、1時間に1回の血糖測定を行い、かなり神経質に血糖コントロールを優秀に保つよう努力されているのでしょう。
そのため、インスリンの量は少ないとはいえ、糖質摂取量も少ないので、低血糖を生じるぎりぎりくらいまで、タイトにコントロールされているのでしょう。
1型でも、HbA1c6.2%未満くらいを目指すなら、そこまでの血糖測定はいらないと思います。
2型でもHbA1c6.2%未満を目指せばいいのですが、例えば足かけ11年間スーパー糖質制限食を実践中の私のHbA1cは5.5~5.7%くらいです。
血糖測定も早朝空腹時血糖値を週に5~6回、食後血糖値は、何か糖質の多いものを摂取したときだけチェックです。
<緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる>
そもそも同じHbA1cでコントロール良好(6.9%未満)でも、スーパー糖質制限食なら、
「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」
という酸化ストレスリスクはほとんどないのに比べて、カロリー制限食(高糖質食)の場合は、
「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」
という酸化ストレスリスクは1日3回以上、必ず上昇しています。
すなわち、HbA1cの質が上質なのは、圧倒的に糖質制限食の方であり、カロリー制限食の場合は、質の悪いHbA1cと言えます。
山田悟医師の提唱する「緩やかな糖質制限食」の場合は、「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」は、スーパー糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食)の中間となります。
食後1時間血糖値180mg未満、食後2時間血糖値140mg未満を達成することが、酸化ストレスを減少させる上で重要です。
1回の食事における糖質量が10~20g以下のスーパー糖質制限食なら、多くの2型糖尿人において上記目標のクリアが可能です。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
1回の食事における糖質量が40gという山田流の緩やかな糖質制限食では、120mgほど血糖値が上昇します。
はたしてそれで食後1時間血糖値180mg未満、食後2時間血糖値140mg未満を達成できるのかが、大きな問題となると思います。
江部康二
山田悟医師の
ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項 抜粋
Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき
第三に,Bernstein氏が特殊だということである。私たちが面談していた数時間の間に,同氏はタイマーを用いて正確に1時間ごとに1回自己血糖測定をし,そのたびに数gのブドウ糖を低血糖対策もしくは低血糖予防のために摂取していた。このことは,同氏は覚醒中に必ず1時間ごとに血糖測定をしていることを意味するし,また1日に30gの食事からの糖質以外に,1回に数gの低血糖対策のためのブドウ糖摂取を1日に数回以上を行っていて,彼の糖質摂取量が1日に50g近くなるであろうことを示している。
ちなみに,1日50gというのは,Westman氏が提唱する糖質制限食においてケトーシスを避けるために設定された最低糖質摂取量である(ウェストマン氏の提唱する糖質制限食は1日50~150gという糖質摂取である;Am J Clin Nutr 2007; 86: 276-284)。私が見るに,Bernstein氏はケトーシスが生じるか生じないかギリギリのレベルの糖質制限食を,極端に頻度の高い自己血糖測定をすることにより,初めて安全に実施できているのである〔なぜ,Bernstein氏がリアルタイムの持続血糖モニター(CGM)を使用しないのかは聞くことができなかった〕。
緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる
第四に,極端な糖質制限でなく,緩い糖質制限食であっても臨床的な効果は十分生じるということである。Kirk氏らのレビューでは,糖質が制限される度合いにより糖質制限の有効性は直線相関で強くなることが示唆されている(J Am Diet Assoc 2008; 108: 91-100)。極端な糖質制限でなければ有効性が出ないというものではない。さればこそ,Accurso氏の総説論文でも極端な糖質制限食を推奨しないで済むわけである。
40年の経験を持つBernstein氏ご自身のなさってきた糖質制限食に対する熱い思いは受け止めつつも,安全性の観点,生活の質の観点,有効性の観点からは,ケトン体産生を伴う極端な糖質制限を広く勧めることは難しいと確信した数時間であった。
山田悟医師のケトーシスに対する懸念への私の追加見解を述べます。
<Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき>
バーンスタイン氏の特殊性とは、まぬーかさんのコメントのように
「最低限度のインスリン注射で、1型糖尿病でHbA1c4%台で維持されているところ」
と、私も思います。
バーンスタイン氏は、35才で顕性腎症前期(第3期A)を発症してから、糖質制限食で改善されて、78才の現在までお元気で過ごされています。
合併症を一度経験されているので、1時間に1回の血糖測定を行い、かなり神経質に血糖コントロールを優秀に保つよう努力されているのでしょう。
そのため、インスリンの量は少ないとはいえ、糖質摂取量も少ないので、低血糖を生じるぎりぎりくらいまで、タイトにコントロールされているのでしょう。
1型でも、HbA1c6.2%未満くらいを目指すなら、そこまでの血糖測定はいらないと思います。
2型でもHbA1c6.2%未満を目指せばいいのですが、例えば足かけ11年間スーパー糖質制限食を実践中の私のHbA1cは5.5~5.7%くらいです。
血糖測定も早朝空腹時血糖値を週に5~6回、食後血糖値は、何か糖質の多いものを摂取したときだけチェックです。
<緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる>
そもそも同じHbA1cでコントロール良好(6.9%未満)でも、スーパー糖質制限食なら、
「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」
という酸化ストレスリスクはほとんどないのに比べて、カロリー制限食(高糖質食)の場合は、
「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」
という酸化ストレスリスクは1日3回以上、必ず上昇しています。
すなわち、HbA1cの質が上質なのは、圧倒的に糖質制限食の方であり、カロリー制限食の場合は、質の悪いHbA1cと言えます。
山田悟医師の提唱する「緩やかな糖質制限食」の場合は、「食後血糖値の上昇と一日平均血糖幅の増加」は、スーパー糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食)の中間となります。
食後1時間血糖値180mg未満、食後2時間血糖値140mg未満を達成することが、酸化ストレスを減少させる上で重要です。
1回の食事における糖質量が10~20g以下のスーパー糖質制限食なら、多くの2型糖尿人において上記目標のクリアが可能です。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
1回の食事における糖質量が40gという山田流の緩やかな糖質制限食では、120mgほど血糖値が上昇します。
はたしてそれで食後1時間血糖値180mg未満、食後2時間血糖値140mg未満を達成できるのかが、大きな問題となると思います。
江部康二
山田悟医師の
ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項 抜粋
Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき
第三に,Bernstein氏が特殊だということである。私たちが面談していた数時間の間に,同氏はタイマーを用いて正確に1時間ごとに1回自己血糖測定をし,そのたびに数gのブドウ糖を低血糖対策もしくは低血糖予防のために摂取していた。このことは,同氏は覚醒中に必ず1時間ごとに血糖測定をしていることを意味するし,また1日に30gの食事からの糖質以外に,1回に数gの低血糖対策のためのブドウ糖摂取を1日に数回以上を行っていて,彼の糖質摂取量が1日に50g近くなるであろうことを示している。
ちなみに,1日50gというのは,Westman氏が提唱する糖質制限食においてケトーシスを避けるために設定された最低糖質摂取量である(ウェストマン氏の提唱する糖質制限食は1日50~150gという糖質摂取である;Am J Clin Nutr 2007; 86: 276-284)。私が見るに,Bernstein氏はケトーシスが生じるか生じないかギリギリのレベルの糖質制限食を,極端に頻度の高い自己血糖測定をすることにより,初めて安全に実施できているのである〔なぜ,Bernstein氏がリアルタイムの持続血糖モニター(CGM)を使用しないのかは聞くことができなかった〕。
緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる
第四に,極端な糖質制限でなく,緩い糖質制限食であっても臨床的な効果は十分生じるということである。Kirk氏らのレビューでは,糖質が制限される度合いにより糖質制限の有効性は直線相関で強くなることが示唆されている(J Am Diet Assoc 2008; 108: 91-100)。極端な糖質制限でなければ有効性が出ないというものではない。さればこそ,Accurso氏の総説論文でも極端な糖質制限食を推奨しないで済むわけである。
40年の経験を持つBernstein氏ご自身のなさってきた糖質制限食に対する熱い思いは受け止めつつも,安全性の観点,生活の質の観点,有効性の観点からは,ケトン体産生を伴う極端な糖質制限を広く勧めることは難しいと確信した数時間であった。
2012年12月20日 (木)
こんばんは。
山田悟医師のケトーシスに対する懸念への私の見解を述べます。
アトキンスダイエットとケトアシドーシスについて
「Dr. Atkins Diet Revolution」が出版されたのは1970年代初頭です。
今が2012年です。
約40年にわたり世界中で、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)が行われてきました。
アトキンスダイエットを実践した人は、世界中で数十万人以上、或いは100万人以上はいるでしょう。
アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)で生じるケトン体上昇は、インンスリン作用がある限り生理的なもので正常です。
この間、アトキンスダイエットでケトアシドーシスを生じたという論文は
2006年1月に、ニューイングランドジャーナルに1例報告
2006年7月に、ランセットに1例報告
40年間で、この2つだけです。
40年間で、わずか2例で、しかも2006年だけです。
極めてまれな事象です。
上述のランセットの論文には
「アトキンスダイエットで健康な成人に生命の危険のあるケトアシドーシスを生じたという論文報告は今までない。」
という記載があります。
ランセットの論文は、アトキンスダイエットで生理的ケトーシスがあった人(40才白人女性・肥満)が、たまたま胃腸疾患で嘔吐を数日繰り返して食事摂取もできず脱水となり、脱水のためにアシドーシスが生じたと考えられ、短期間で回復しています。
ニューイングランドジャーナルの論文は、同じ人(51才白人女性・肥満)が4回もケトアシドーシスを起こしており、何らかの代謝異常が背景にある可能性があります。
すなわち、ケトン体を上手く利用できない、極めてまれな特殊な体質であった可能性があります。
まれではありますが、ケトン代謝に異常がある人があり、この場合はアトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)の適応となりません。
例えば、私が最近ブログに記載している「長鎖脂肪酸代謝異常症」というまれな病気の人は、糖質制限食の適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症の人が糖質制限食を実践すれば、本当に病的ケトアシドーシスを生じる可能性があります。
このように、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)実践中のケトアシドーシスの報告は、全世界で2例です。
しかも、私見ではありますが、脱水によるアシドーシスの例と、そもそもアトキンスダイエットの適応ではない特殊体質による可能性が高い例です。
これに対して、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)による糖尿病ケトアシドーシスは、年余にわたり多発しています。
今でも日本中でペットボトル症候群で救急車で運ばれる人は後を絶ちません。
ペットボトル症候群は、決してまれな病気ではなく、日常診療で遭遇する病気です。
日本だけでも少なくとも過去、数千人以上は報告されていて、中には死亡例もあります。
ペットボトル症候群の元凶は、ほとんどにおいて液体の糖質であり、タンパク質・脂質は無関係です。
清涼飲料水の大量摂取により、膵臓のβ細胞が疲弊してインスリンを分泌できなくなり、インスリン作用が欠落して、その結果、糖尿病ケトアシドーシスになります。
すなわち糖質摂取以外では決して起こりえない重症な病態がペットボトル症候群であり、インスリン作用の欠落が必用条件で、血中ケトン体高値はあくまでも結果に過ぎません。
言い換えると、インスリン作用の欠乏がない限り、「糖尿病ケトアシドーシス」は絶対に起こりません。
ペットボトル症候群において、インスリン作用の欠乏の原因は、「清涼飲料水」すなわち「液体の糖質」以外の何者でもありません。
高糖質食と糖質制限食とどちらが危険なのかは、火を見るよりも明らかです。
(☆)
Ketoacidosis during a Low-Carbohydrate Diet.
N Engl J Med 2006; 354:97-98 January 5
(☆☆)
A life-threatening complication of Atkins diet
Lancet July 2006;367:958
江部康二
山田悟医師の
ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項 抜粋
ご自身が1日30gの糖質摂取を推奨され,40年以上実践されているBernstein先生が,そのレベルまで糖質を制限すべきだと主張される気持ちは理解できる。しかし,私自身は,その言葉に強い説得力を感じることはなかった。その理由は4点ある。
まず第一に,この概念が提唱された後で,極端な糖質制限食の代表格であるアトキンスダイエット(1日20~40g以下の炭水化物摂取に制限)によりケトアシドーシスが発症した症例が複数報告されていることである(Lancet 2006; 368: 23-24,N Engl J Med 2006; 354: 97-98)。こうした症例が存在する以上,極端な糖質制限食により生じるのは生理的ケトーシスであって,病的ケトアシドーシスではないという概念には普遍性がない。
第二に,Bernstein氏も共著者になっているAccurso氏の論文(糖質制限食の有効性とその理論的背景を述べた総説論文)においても,ケトン産生に対して議論があるとしてケトーシスから距離を置いていることである(Nutr Metab 2008; 5: 9)。インタビューの中でそのことをBernstein氏に指摘すると,この論文はFeinman氏(米ニューヨーク州立大学)の意見が強く反映されたものであるとの弁であった。これはBernstein氏のケトーシスに関する意見が彼の仲間の中においても十分な説得力を持たないことの表れと感じる。
山田悟医師のケトーシスに対する懸念への私の見解を述べます。
アトキンスダイエットとケトアシドーシスについて
「Dr. Atkins Diet Revolution」が出版されたのは1970年代初頭です。
今が2012年です。
約40年にわたり世界中で、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)が行われてきました。
アトキンスダイエットを実践した人は、世界中で数十万人以上、或いは100万人以上はいるでしょう。
アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)で生じるケトン体上昇は、インンスリン作用がある限り生理的なもので正常です。
この間、アトキンスダイエットでケトアシドーシスを生じたという論文は
2006年1月に、ニューイングランドジャーナルに1例報告
2006年7月に、ランセットに1例報告
40年間で、この2つだけです。
40年間で、わずか2例で、しかも2006年だけです。
極めてまれな事象です。
上述のランセットの論文には
「アトキンスダイエットで健康な成人に生命の危険のあるケトアシドーシスを生じたという論文報告は今までない。」
という記載があります。
ランセットの論文は、アトキンスダイエットで生理的ケトーシスがあった人(40才白人女性・肥満)が、たまたま胃腸疾患で嘔吐を数日繰り返して食事摂取もできず脱水となり、脱水のためにアシドーシスが生じたと考えられ、短期間で回復しています。
ニューイングランドジャーナルの論文は、同じ人(51才白人女性・肥満)が4回もケトアシドーシスを起こしており、何らかの代謝異常が背景にある可能性があります。
すなわち、ケトン体を上手く利用できない、極めてまれな特殊な体質であった可能性があります。
まれではありますが、ケトン代謝に異常がある人があり、この場合はアトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)の適応となりません。
例えば、私が最近ブログに記載している「長鎖脂肪酸代謝異常症」というまれな病気の人は、糖質制限食の適応となりません。
長鎖脂肪酸代謝異常症の人が糖質制限食を実践すれば、本当に病的ケトアシドーシスを生じる可能性があります。
このように、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)実践中のケトアシドーシスの報告は、全世界で2例です。
しかも、私見ではありますが、脱水によるアシドーシスの例と、そもそもアトキンスダイエットの適応ではない特殊体質による可能性が高い例です。
これに対して、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)による糖尿病ケトアシドーシスは、年余にわたり多発しています。
今でも日本中でペットボトル症候群で救急車で運ばれる人は後を絶ちません。
ペットボトル症候群は、決してまれな病気ではなく、日常診療で遭遇する病気です。
日本だけでも少なくとも過去、数千人以上は報告されていて、中には死亡例もあります。
ペットボトル症候群の元凶は、ほとんどにおいて液体の糖質であり、タンパク質・脂質は無関係です。
清涼飲料水の大量摂取により、膵臓のβ細胞が疲弊してインスリンを分泌できなくなり、インスリン作用が欠落して、その結果、糖尿病ケトアシドーシスになります。
すなわち糖質摂取以外では決して起こりえない重症な病態がペットボトル症候群であり、インスリン作用の欠落が必用条件で、血中ケトン体高値はあくまでも結果に過ぎません。
言い換えると、インスリン作用の欠乏がない限り、「糖尿病ケトアシドーシス」は絶対に起こりません。
ペットボトル症候群において、インスリン作用の欠乏の原因は、「清涼飲料水」すなわち「液体の糖質」以外の何者でもありません。
高糖質食と糖質制限食とどちらが危険なのかは、火を見るよりも明らかです。
(☆)
Ketoacidosis during a Low-Carbohydrate Diet.
N Engl J Med 2006; 354:97-98 January 5
(☆☆)
A life-threatening complication of Atkins diet
Lancet July 2006;367:958
江部康二
山田悟医師の
ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項 抜粋
ご自身が1日30gの糖質摂取を推奨され,40年以上実践されているBernstein先生が,そのレベルまで糖質を制限すべきだと主張される気持ちは理解できる。しかし,私自身は,その言葉に強い説得力を感じることはなかった。その理由は4点ある。
まず第一に,この概念が提唱された後で,極端な糖質制限食の代表格であるアトキンスダイエット(1日20~40g以下の炭水化物摂取に制限)によりケトアシドーシスが発症した症例が複数報告されていることである(Lancet 2006; 368: 23-24,N Engl J Med 2006; 354: 97-98)。こうした症例が存在する以上,極端な糖質制限食により生じるのは生理的ケトーシスであって,病的ケトアシドーシスではないという概念には普遍性がない。
第二に,Bernstein氏も共著者になっているAccurso氏の論文(糖質制限食の有効性とその理論的背景を述べた総説論文)においても,ケトン産生に対して議論があるとしてケトーシスから距離を置いていることである(Nutr Metab 2008; 5: 9)。インタビューの中でそのことをBernstein氏に指摘すると,この論文はFeinman氏(米ニューヨーク州立大学)の意見が強く反映されたものであるとの弁であった。これはBernstein氏のケトーシスに関する意見が彼の仲間の中においても十分な説得力を持たないことの表れと感じる。
2012年12月20日 (木)
おはようございます。
「第1回生活習慣病の治療をUPDATEする懇話会」
仙台 江陽グランドホテル
2012年12月18日(火)
19:40-20:40 江部康二 講演
「糖質制限食の有効性と安全性
−糖尿病・生活習慣病と糖質制限食−」
上記、仙台の講演会は、東北大学の腎・高血圧・内分泌科の中の内分泌グループ佐藤文俊先生に座長をつとめていただきました。
20名くらいの予定でしたが、医師・栄養士・看護師、40名が集まり、大盛況でした。
活発な質疑応答もあり、熱気溢れる有意義な会でした。
佐藤先生グループは「腎・高血圧・内分泌科糖尿病グループ」や「糖尿病・代謝内科」とは一線を画して、5年前から敢然と糖質制限食を実践しておられます。
同じ東北大学内でも、グループで全く違うのですね。
佐藤先生グループに敬意を表したいです。
佐藤先生は、1例ですがCGMで
<カロリー無制限糖質制限食>と<カロリー制限食(高糖質食)>
を比較されて発表されました。
血糖値の変動に関しては、勿論糖質制限食の圧勝です。
当該患者さんには、カロリー制限食では、食後血糖値が300mgを超えて、叱られたそうです。
私としても、大変心強い味方を得て嬉しい限りです。
佐藤文俊先生、お招きいただいて大変光栄であり、ありがとうございました。
糖質制限食の流れが、どんどんいい方に向いてますね。
江部康二
「第1回生活習慣病の治療をUPDATEする懇話会」
仙台 江陽グランドホテル
2012年12月18日(火)
19:40-20:40 江部康二 講演
「糖質制限食の有効性と安全性
−糖尿病・生活習慣病と糖質制限食−」
上記、仙台の講演会は、東北大学の腎・高血圧・内分泌科の中の内分泌グループ佐藤文俊先生に座長をつとめていただきました。
20名くらいの予定でしたが、医師・栄養士・看護師、40名が集まり、大盛況でした。
活発な質疑応答もあり、熱気溢れる有意義な会でした。
佐藤先生グループは「腎・高血圧・内分泌科糖尿病グループ」や「糖尿病・代謝内科」とは一線を画して、5年前から敢然と糖質制限食を実践しておられます。
同じ東北大学内でも、グループで全く違うのですね。
佐藤先生グループに敬意を表したいです。
佐藤先生は、1例ですがCGMで
<カロリー無制限糖質制限食>と<カロリー制限食(高糖質食)>
を比較されて発表されました。
血糖値の変動に関しては、勿論糖質制限食の圧勝です。
当該患者さんには、カロリー制限食では、食後血糖値が300mgを超えて、叱られたそうです。
私としても、大変心強い味方を得て嬉しい限りです。
佐藤文俊先生、お招きいただいて大変光栄であり、ありがとうございました。
糖質制限食の流れが、どんどんいい方に向いてますね。
江部康二
2012年12月19日 (水)
こんにちは。
前回のバーンスタイン医師のケトン体に関する意見に対して、連載の番外編として山田悟医師が、ご自身の見解を述べておられます。
その中で山田医師は、4つの懸念事項をあげておられます。
今回の本ブログ記事は、山田医師の懸念に対しての私の見解です。
<生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシス>
山田医師の取り上げておられる、Laffel氏の総説は私も所有しています。
生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシスの総説としてよくまとまった論文です。
Laffel氏は、生理的ケトーシスの例として、新生児や妊婦の絶食時とともにケトン食を提示しています。
さて、絶食療法やスーパー糖質制限食中には生理的ケトーシスとなります。
絶食療法中の血中ケトン体のピークは2000~4000μM/L(26~122)くらいになります。
足かけ11年間スーパー糖質制限食中の江部康二の血中ケトン値は400~1200くらいです。
勿論両者ともインスリン作用は保たれていて生理的なものなので、初期のアシドーシスは緩衝作用で補正されて、pHも速やかに正常となります。
今でこそ絶食(断食)というと大変なことというイメージですが、農耕前の人類においては、ごく日常的なことでした。
すなわち、人類の進化の過程で農耕開始前の700万年間は、常に飢餓との戦いでした。
食料を得たあと、狩猟・採集・漁労がうまくいかなければたちまち飢餓となります。
食事→飢餓→食事→飢餓・・・この繰り返しだったと考えられます。
そしてこの飢餓の時には、当然生理的ケトーシスとなっています。
つまり、農耕以前の人類においては、生理的ケトーシスは、ごく日常的に存在したものだったと言えます。
病的ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠落した糖尿病、アルコール摂取、薬物摂取などで生じます。
長くなりましたので、4つの懸念事項の続きは次回に。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212028.html
以下MT Pro 記事から 一部を転載
2012年12月13日
【寄稿】ケトン体産生を伴う極端な糖質制限の普遍化は難しい
MT紙連載・Bernstein氏へのインタビューに関連して
北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟
Medical Tribune紙では,12月6日号から4回連続で糖質制限食の生みの親Richard K. Bernstein氏へのインタビューを連載中である。聞き手はDoctor’s Eye糖尿病の執筆者である北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏。本日(12月13日)発行の第2回では,糖質制限食により生じるケトン体の産生増加(ケトーシス)についての解釈や,さらに糖尿病性ケトアシドーシスとの違いなど,まだ慎重な議論を要する話題についてのBernstein氏の意見が展開された。このBernstein氏の意見の一部に対し山田氏は疑問を抱いているが,連載の中では盛り込むことができなかった。糖質制限食を実践していく上で重要なポイントであるので,連載の番外編として紹介する。
<生理的ケトーシス,病的ケトアシドーシス>
今回,Bernstein氏が述べたケトーシスに関する概念は,極端な糖質制限食によりケトーシスになったとしても,それは生理的ケトーシスであって病的ではないとするものである。このような概念は以前から知られており(Bernstein氏自身もその形成に関わってきたのかもしれない),例えばジョスリン糖尿病センター(米ハーバード大学)のLaffel氏の総説にも,生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシスとは異なることが記載されており,生理的ケトーシスの例として,新生児,妊婦とともに糖質制限食も挙げられている(Diabetes Metab Res Rev 1999; 15: 412-426)。
<ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項>
ご自身が1日30gの糖質摂取を推奨され,40年以上実践されているBernstein先生が,そのレベルまで糖質を制限すべきだと主張される気持ちは理解できる。しかし,私自身は,その言葉に強い説得力を感じることはなかった。その理由は4点ある。
まず第一に,この概念が提唱された後で,極端な糖質制限食の代表格であるアトキンスダイエット(1日20~40g以下の炭水化物摂取に制限)によりケトアシドーシスが発症した症例が複数報告されていることである(Lancet 2006; 368: 23-24,N Engl J Med 2006; 354: 97-98)。こうした症例が存在する以上,極端な糖質制限食により生じるのは生理的ケトーシスであって,病的ケトアシドーシスではないという概念には普遍性がない。
第二に,Bernstein氏も共著者になっているAccurso氏の論文(糖質制限食の有効性とその理論的背景を述べた総説論文)においても,ケトン産生に対して議論があるとしてケトーシスから距離を置いていることである(Nutr Metab 2008; 5: 9)。インタビューの中でそのことをBernstein氏に指摘すると,この論文はFeinman氏(米ニューヨーク州立大学)の意見が強く反映されたものであるとの弁であった。これはBernstein氏のケトーシスに関する意見が彼の仲間の中においても十分な説得力を持たないことの表れと感じる。
<Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき>
第三に,Bernstein氏が特殊だということである。私たちが面談していた数時間の間に,同氏はタイマーを用いて正確に1時間ごとに1回自己血糖測定をし,そのたびに数gのブドウ糖を低血糖対策もしくは低血糖予防のために摂取していた。このことは,同氏は覚醒中に必ず1時間ごとに血糖測定をしていることを意味するし,また1日に30gの食事からの糖質以外に,1回に数gの低血糖対策のためのブドウ糖摂取を1日に数回以上を行っていて,彼の糖質摂取量が1日に50g近くなるであろうことを示している。
ちなみに,1日50gというのは,Westman氏が提唱する糖質制限食においてケトーシスを避けるために設定された最低糖質摂取量である(ウェストマン氏の提唱する糖質制限食は1日50~150gという糖質摂取である;Am J Clin Nutr 2007; 86: 276-284)。私が見るに,Bernstein氏はケトーシスが生じるか生じないかギリギリのレベルの糖質制限食を,極端に頻度の高い自己血糖測定をすることにより,初めて安全に実施できているのである〔なぜ,Bernstein氏がリアルタイムの持続血糖モニター(CGM)を使用しないのかは聞くことができなかった〕。
<緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる>
第四に,極端な糖質制限でなく,緩い糖質制限食であっても臨床的な効果は十分生じるということである。Kirk氏らのレビューでは,糖質が制限される度合いにより糖質制限の有効性は直線相関で強くなることが示唆されている(J Am Diet Assoc 2008; 108: 91-100)。極端な糖質制限でなければ有効性が出ないというものではない。さればこそ,Accurso氏の総説論文でも極端な糖質制限食を推奨しないで済むわけである。
40年の経験を持つBernstein氏ご自身のなさってきた糖質制限食に対する熱い思いは受け止めつつも,安全性の観点,生活の質の観点,有効性の観点からは,ケトン体産生を伴う極端な糖質制限を広く勧めることは難しいと確信した数時間であった。
前回のバーンスタイン医師のケトン体に関する意見に対して、連載の番外編として山田悟医師が、ご自身の見解を述べておられます。
その中で山田医師は、4つの懸念事項をあげておられます。
今回の本ブログ記事は、山田医師の懸念に対しての私の見解です。
<生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシス>
山田医師の取り上げておられる、Laffel氏の総説は私も所有しています。
生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシスの総説としてよくまとまった論文です。
Laffel氏は、生理的ケトーシスの例として、新生児や妊婦の絶食時とともにケトン食を提示しています。
さて、絶食療法やスーパー糖質制限食中には生理的ケトーシスとなります。
絶食療法中の血中ケトン体のピークは2000~4000μM/L(26~122)くらいになります。
足かけ11年間スーパー糖質制限食中の江部康二の血中ケトン値は400~1200くらいです。
勿論両者ともインスリン作用は保たれていて生理的なものなので、初期のアシドーシスは緩衝作用で補正されて、pHも速やかに正常となります。
今でこそ絶食(断食)というと大変なことというイメージですが、農耕前の人類においては、ごく日常的なことでした。
すなわち、人類の進化の過程で農耕開始前の700万年間は、常に飢餓との戦いでした。
食料を得たあと、狩猟・採集・漁労がうまくいかなければたちまち飢餓となります。
食事→飢餓→食事→飢餓・・・この繰り返しだったと考えられます。
そしてこの飢餓の時には、当然生理的ケトーシスとなっています。
つまり、農耕以前の人類においては、生理的ケトーシスは、ごく日常的に存在したものだったと言えます。
病的ケトアシドーシスは、インスリン作用の欠落した糖尿病、アルコール摂取、薬物摂取などで生じます。
長くなりましたので、4つの懸念事項の続きは次回に。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1212/1212028.html
以下MT Pro 記事から 一部を転載
2012年12月13日
【寄稿】ケトン体産生を伴う極端な糖質制限の普遍化は難しい
MT紙連載・Bernstein氏へのインタビューに関連して
北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟
Medical Tribune紙では,12月6日号から4回連続で糖質制限食の生みの親Richard K. Bernstein氏へのインタビューを連載中である。聞き手はDoctor’s Eye糖尿病の執筆者である北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏。本日(12月13日)発行の第2回では,糖質制限食により生じるケトン体の産生増加(ケトーシス)についての解釈や,さらに糖尿病性ケトアシドーシスとの違いなど,まだ慎重な議論を要する話題についてのBernstein氏の意見が展開された。このBernstein氏の意見の一部に対し山田氏は疑問を抱いているが,連載の中では盛り込むことができなかった。糖質制限食を実践していく上で重要なポイントであるので,連載の番外編として紹介する。
<生理的ケトーシス,病的ケトアシドーシス>
今回,Bernstein氏が述べたケトーシスに関する概念は,極端な糖質制限食によりケトーシスになったとしても,それは生理的ケトーシスであって病的ではないとするものである。このような概念は以前から知られており(Bernstein氏自身もその形成に関わってきたのかもしれない),例えばジョスリン糖尿病センター(米ハーバード大学)のLaffel氏の総説にも,生理的ケトーシスと病的ケトアシドーシスとは異なることが記載されており,生理的ケトーシスの例として,新生児,妊婦とともに糖質制限食も挙げられている(Diabetes Metab Res Rev 1999; 15: 412-426)。
<ケトーシスを来すレベルの極端な糖質制限食に対する4つの懸念事項>
ご自身が1日30gの糖質摂取を推奨され,40年以上実践されているBernstein先生が,そのレベルまで糖質を制限すべきだと主張される気持ちは理解できる。しかし,私自身は,その言葉に強い説得力を感じることはなかった。その理由は4点ある。
まず第一に,この概念が提唱された後で,極端な糖質制限食の代表格であるアトキンスダイエット(1日20~40g以下の炭水化物摂取に制限)によりケトアシドーシスが発症した症例が複数報告されていることである(Lancet 2006; 368: 23-24,N Engl J Med 2006; 354: 97-98)。こうした症例が存在する以上,極端な糖質制限食により生じるのは生理的ケトーシスであって,病的ケトアシドーシスではないという概念には普遍性がない。
第二に,Bernstein氏も共著者になっているAccurso氏の論文(糖質制限食の有効性とその理論的背景を述べた総説論文)においても,ケトン産生に対して議論があるとしてケトーシスから距離を置いていることである(Nutr Metab 2008; 5: 9)。インタビューの中でそのことをBernstein氏に指摘すると,この論文はFeinman氏(米ニューヨーク州立大学)の意見が強く反映されたものであるとの弁であった。これはBernstein氏のケトーシスに関する意見が彼の仲間の中においても十分な説得力を持たないことの表れと感じる。
<Bernstein氏の特殊性を考慮に入れるべき>
第三に,Bernstein氏が特殊だということである。私たちが面談していた数時間の間に,同氏はタイマーを用いて正確に1時間ごとに1回自己血糖測定をし,そのたびに数gのブドウ糖を低血糖対策もしくは低血糖予防のために摂取していた。このことは,同氏は覚醒中に必ず1時間ごとに血糖測定をしていることを意味するし,また1日に30gの食事からの糖質以外に,1回に数gの低血糖対策のためのブドウ糖摂取を1日に数回以上を行っていて,彼の糖質摂取量が1日に50g近くなるであろうことを示している。
ちなみに,1日50gというのは,Westman氏が提唱する糖質制限食においてケトーシスを避けるために設定された最低糖質摂取量である(ウェストマン氏の提唱する糖質制限食は1日50~150gという糖質摂取である;Am J Clin Nutr 2007; 86: 276-284)。私が見るに,Bernstein氏はケトーシスが生じるか生じないかギリギリのレベルの糖質制限食を,極端に頻度の高い自己血糖測定をすることにより,初めて安全に実施できているのである〔なぜ,Bernstein氏がリアルタイムの持続血糖モニター(CGM)を使用しないのかは聞くことができなかった〕。
<緩やかな糖質制限食でも臨床的効果は期待できる>
第四に,極端な糖質制限でなく,緩い糖質制限食であっても臨床的な効果は十分生じるということである。Kirk氏らのレビューでは,糖質が制限される度合いにより糖質制限の有効性は直線相関で強くなることが示唆されている(J Am Diet Assoc 2008; 108: 91-100)。極端な糖質制限でなければ有効性が出ないというものではない。さればこそ,Accurso氏の総説論文でも極端な糖質制限食を推奨しないで済むわけである。
40年の経験を持つBernstein氏ご自身のなさってきた糖質制限食に対する熱い思いは受け止めつつも,安全性の観点,生活の質の観点,有効性の観点からは,ケトン体産生を伴う極端な糖質制限を広く勧めることは難しいと確信した数時間であった。
2012年12月18日 (火)
こんにちは。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第2弾です。
糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシスについてバーンスタイン医師が語っています。
「米国では脂肪摂取が減っても、肥満は倍増で、真犯人は炭水化物」
私も講演会で、米国のデータ(全米健康調査)をよく使いますが、バーンスタイン医師と全く同様の見解です。
GIに関しては、やや意外でした。
私はGIには、特に糖尿人においてはあまり重きを置いていません。
あくまでも糖質の摂取量が肝要と考えています。
生理的ケトーシスと病理的ケトーシスに関しては、私とバーンスタイン医師の見解は完全に一致します。
日本では、糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシスの区別がついていない医師がほとんどなので、困ったものなのです。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45500241/
以下MT Pro から 一部を転載
シリーズ糖尿病 vol.2 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシス
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
Richard. K. Bernstein氏が提唱している糖質制限食は,これまでの糖尿病に対する食事療法の主流である低脂肪・高炭水化物食とは180度の方向転換を目指すものであり,それ故,戸惑いを覚える臨床家は多い。「糖質制限食では低脂肪食に比べ脂肪摂取が増える結果として,動脈硬化を発症しやすくなり,心血管疾患抑制の面で逆効果となるのではないか」,「脂肪燃焼が亢進した結果として生じるケトン体の産生増加(ケトーシス)がどのような影響をもたらすのか分からない」といった声である(本シリーズに関する山田氏のコメントはMT Proを参照) 。シリーズ2回目は,これらの疑問について同氏に答えてもらった。聞き手は北里研究所病院(東京都)糖尿病センターの山田悟センター長。
糖質制限食と組み合わせることで高脂肪食でも脂肪蓄積は防げる
山田 Bernstein先生の提唱された糖質制限食は,これまで医学界が推進してきた低脂肪・高炭水化物食とは真っ向から対立するものですね。
Bernstein 私が1型糖尿病を発症した当時,医学界では肥満および高コレステロール血症と心血管疾患との関係が注目され始めていました。そして,肥満と高コレステロール血症は脂肪の過剰摂取が原因と考えられたことから低脂肪ダイエットが推奨されるようになり,1980年代に入ると米国では国を挙げてのキャンペーンにまで拡大していきます。糖尿病の場合も肥満や合併症としての心血管疾患の対策として低脂肪ダイエットが積極的に取り入れられ,この流れは現在まで綿々と続いてきたというわけです。しかしその結果はどうかというと,惨憺たるものといわざるをえません。
食事中のカロリーに占める脂肪の割合は,米国では1955年に30%台でした。しかし低脂肪ダイエットが推奨されるようになったことで,年々減少しています。ところが,肥満の割合がそれにより減少したかというと全く逆で,60年ごろの20%台から90年には40%以上に増加しました(図)。つまり,食事による脂肪摂取を減ずれば肥満や高コレステロール血症が抑制できるという仮説は,全くの見当違いであったというわけです。
山田 低脂肪ダイエットそのものは普及しながら,米国で肥満が減少せず,むしろ増加してきた理由をどのようにお考えでしょうか。
Bernstein 低脂肪ダイエットの普及により脂肪摂取量が減少した代わりに,その分カロリーを補うことを目的に炭水化物の摂取量は大幅に増加しています。私は,これこそが米国で肥満が減少せず,増加している最大の要因であると考えています。
2002年に発表された,非常に印象的な論文があります1) 。その論文の研究者たちは非糖尿病の男性11人を対象に,グリセミックスインデックス(GI)の高い食事(高GI食)と低い食事(低GI食)とで,糖および脂質代謝,全身および内臓脂肪などへの影響がどのように異なるかについて検討しました。方法は,対象を高GI食と低GI食の2群にランダムに割り付け,5週間の試験食期間の後,5週間ウオッシュアウトし,さらにクロスオーバーで5週間の試験食期間を設けるというものです。GIとは炭水化物が糖に変化する速度の指数ですから,高GI食とは高炭水化物食,低GI食とは低炭水化物食とほぼ同義と考えてよいでしょう。なお,両群の総カロリーは蛋白質の摂取量を調節することで同等になるように設定しました。その結果,両群間で体重に変化はなかったにもかかわらず,高GI食群に比べて低GI食群では糖および脂質代謝が良好で,全身および内臓脂肪が有意に低下していました。
山田 糖質制限食では脂肪の摂取量には制限を設けないのが一般的ですから,糖質制限食では総カロリーを補うために脂肪の摂取が多くなります。それが肥満や動脈硬化を進行させるということを懸念する臨床家が多いのですが,それは杞憂だということですね。
Bernstein 事実はむしろ逆だと言ってもよいでしょう。炭水化物は単糖にまで分解され,吸収されて血中に入った後,インスリンの作用により脂肪細胞に取り込まれ,そこで脂肪に合成されます。したがって,インスリンは糖代謝に関わる一方で,脂肪の合成にも関わっているといえます。さらに,脂肪の燃焼に関わるリパーゼはインスリンにより負の制御を受けていますので,高インスリン状態下では作用が低下します。ですから,高炭水化物食では血中の糖分が増え,それを低下させるためにインスリン分泌が上昇し,それにより余分な糖が脂肪細胞に取り込まれやすくなり,脂肪合成が高まる一方,脂肪の燃焼は抑制されるということになるわけです。私は肥満になりたくないのなら脂肪を増やし,その代わり炭水化物をうんと減らせと言いたいですね。
糖質制限食によるケトーシスは糖尿病性ケトアシドーシスとは別の概念
山田 糖質制限食でもう1つ懸念されていることは,ケトーシスが増えることです。
Bernstein 私はあなたがケトーシスと言ってケトアシドーシスと言わなかったことを,とてもうれしく思います。というのは,両者は全く別であり,それに対する懸念も全く異なってくるからです。糖尿病ではインスリン不足により糖の分解が低下する結果,脂肪を最大限にまで燃焼させてエネルギーを得ようとします。そうすると脂肪燃焼の副産物として酸性物質のケトン体の産生が増え,血中および尿中のケトン体濃度が高まります。このケトン体の濃度が極端に高まり,血液が酸性を呈するようになるのがケトアシドーシスですが,これを呈するようになった糖尿病患者さんというのはひどい高血糖と低インスリン血症,さらに脱水症状を伴っている場合がほとんどです。ケトアシドーシスでは全身の細胞の働きが弱まるので,それが脳細胞にも及ぶと昏睡を引き起こすことになります。
山田 実際に糖尿病性ケトアシドーシスで昏睡にまで至る患者さんというのは,ほとんどインスリン分泌がゼロの1型糖尿病患者さんで,2型糖尿病患者さんではまれですね。
Bernstein 糖質制限食でも脂肪は燃焼させますから,当然,副産物としてのケトン体の産生は高まります。しかし,糖質制限食は高血糖を起こさないために行うもので,また,2型糖尿病ではインスリン分泌能も保たれていますし,脱水症状などにも陥らないよう管理されています。したがって,糖尿病性ケトアシドーシスと糖質制限食によるケトン体産生の上昇を同様に捉えて恐れるのは見当違いだと思います。むしろ糖質制限食によるケトン体産生の上昇は,肥満などの解消にはプラスであると捉えることもできるのではないでしょうか。
バーンスタイン医師への山田悟センター長のインタビュー記事の第2弾です。
糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシスについてバーンスタイン医師が語っています。
「米国では脂肪摂取が減っても、肥満は倍増で、真犯人は炭水化物」
私も講演会で、米国のデータ(全米健康調査)をよく使いますが、バーンスタイン医師と全く同様の見解です。
GIに関しては、やや意外でした。
私はGIには、特に糖尿人においてはあまり重きを置いていません。
あくまでも糖質の摂取量が肝要と考えています。
生理的ケトーシスと病理的ケトーシスに関しては、私とバーンスタイン医師の見解は完全に一致します。
日本では、糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシスの区別がついていない医師がほとんどなので、困ったものなのです。
江部康二
☆☆☆
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2012/M45500241/
以下MT Pro から 一部を転載
シリーズ糖尿病 vol.2 食事療法としての糖質制限食
糖質制限食の生みの親 R. K. Bernstein 氏に聞く
糖質制限食に伴う脂肪摂取増加とケトーシス
R. K. Bernstein 氏
ママロネックのクリニックにて
Richard. K. Bernstein氏が提唱している糖質制限食は,これまでの糖尿病に対する食事療法の主流である低脂肪・高炭水化物食とは180度の方向転換を目指すものであり,それ故,戸惑いを覚える臨床家は多い。「糖質制限食では低脂肪食に比べ脂肪摂取が増える結果として,動脈硬化を発症しやすくなり,心血管疾患抑制の面で逆効果となるのではないか」,「脂肪燃焼が亢進した結果として生じるケトン体の産生増加(ケトーシス)がどのような影響をもたらすのか分からない」といった声である(本シリーズに関する山田氏のコメントはMT Proを参照) 。シリーズ2回目は,これらの疑問について同氏に答えてもらった。聞き手は北里研究所病院(東京都)糖尿病センターの山田悟センター長。
糖質制限食と組み合わせることで高脂肪食でも脂肪蓄積は防げる
山田 Bernstein先生の提唱された糖質制限食は,これまで医学界が推進してきた低脂肪・高炭水化物食とは真っ向から対立するものですね。
Bernstein 私が1型糖尿病を発症した当時,医学界では肥満および高コレステロール血症と心血管疾患との関係が注目され始めていました。そして,肥満と高コレステロール血症は脂肪の過剰摂取が原因と考えられたことから低脂肪ダイエットが推奨されるようになり,1980年代に入ると米国では国を挙げてのキャンペーンにまで拡大していきます。糖尿病の場合も肥満や合併症としての心血管疾患の対策として低脂肪ダイエットが積極的に取り入れられ,この流れは現在まで綿々と続いてきたというわけです。しかしその結果はどうかというと,惨憺たるものといわざるをえません。
食事中のカロリーに占める脂肪の割合は,米国では1955年に30%台でした。しかし低脂肪ダイエットが推奨されるようになったことで,年々減少しています。ところが,肥満の割合がそれにより減少したかというと全く逆で,60年ごろの20%台から90年には40%以上に増加しました(図)。つまり,食事による脂肪摂取を減ずれば肥満や高コレステロール血症が抑制できるという仮説は,全くの見当違いであったというわけです。
山田 低脂肪ダイエットそのものは普及しながら,米国で肥満が減少せず,むしろ増加してきた理由をどのようにお考えでしょうか。
Bernstein 低脂肪ダイエットの普及により脂肪摂取量が減少した代わりに,その分カロリーを補うことを目的に炭水化物の摂取量は大幅に増加しています。私は,これこそが米国で肥満が減少せず,増加している最大の要因であると考えています。
2002年に発表された,非常に印象的な論文があります1) 。その論文の研究者たちは非糖尿病の男性11人を対象に,グリセミックスインデックス(GI)の高い食事(高GI食)と低い食事(低GI食)とで,糖および脂質代謝,全身および内臓脂肪などへの影響がどのように異なるかについて検討しました。方法は,対象を高GI食と低GI食の2群にランダムに割り付け,5週間の試験食期間の後,5週間ウオッシュアウトし,さらにクロスオーバーで5週間の試験食期間を設けるというものです。GIとは炭水化物が糖に変化する速度の指数ですから,高GI食とは高炭水化物食,低GI食とは低炭水化物食とほぼ同義と考えてよいでしょう。なお,両群の総カロリーは蛋白質の摂取量を調節することで同等になるように設定しました。その結果,両群間で体重に変化はなかったにもかかわらず,高GI食群に比べて低GI食群では糖および脂質代謝が良好で,全身および内臓脂肪が有意に低下していました。
山田 糖質制限食では脂肪の摂取量には制限を設けないのが一般的ですから,糖質制限食では総カロリーを補うために脂肪の摂取が多くなります。それが肥満や動脈硬化を進行させるということを懸念する臨床家が多いのですが,それは杞憂だということですね。
Bernstein 事実はむしろ逆だと言ってもよいでしょう。炭水化物は単糖にまで分解され,吸収されて血中に入った後,インスリンの作用により脂肪細胞に取り込まれ,そこで脂肪に合成されます。したがって,インスリンは糖代謝に関わる一方で,脂肪の合成にも関わっているといえます。さらに,脂肪の燃焼に関わるリパーゼはインスリンにより負の制御を受けていますので,高インスリン状態下では作用が低下します。ですから,高炭水化物食では血中の糖分が増え,それを低下させるためにインスリン分泌が上昇し,それにより余分な糖が脂肪細胞に取り込まれやすくなり,脂肪合成が高まる一方,脂肪の燃焼は抑制されるということになるわけです。私は肥満になりたくないのなら脂肪を増やし,その代わり炭水化物をうんと減らせと言いたいですね。
糖質制限食によるケトーシスは糖尿病性ケトアシドーシスとは別の概念
山田 糖質制限食でもう1つ懸念されていることは,ケトーシスが増えることです。
Bernstein 私はあなたがケトーシスと言ってケトアシドーシスと言わなかったことを,とてもうれしく思います。というのは,両者は全く別であり,それに対する懸念も全く異なってくるからです。糖尿病ではインスリン不足により糖の分解が低下する結果,脂肪を最大限にまで燃焼させてエネルギーを得ようとします。そうすると脂肪燃焼の副産物として酸性物質のケトン体の産生が増え,血中および尿中のケトン体濃度が高まります。このケトン体の濃度が極端に高まり,血液が酸性を呈するようになるのがケトアシドーシスですが,これを呈するようになった糖尿病患者さんというのはひどい高血糖と低インスリン血症,さらに脱水症状を伴っている場合がほとんどです。ケトアシドーシスでは全身の細胞の働きが弱まるので,それが脳細胞にも及ぶと昏睡を引き起こすことになります。
山田 実際に糖尿病性ケトアシドーシスで昏睡にまで至る患者さんというのは,ほとんどインスリン分泌がゼロの1型糖尿病患者さんで,2型糖尿病患者さんではまれですね。
Bernstein 糖質制限食でも脂肪は燃焼させますから,当然,副産物としてのケトン体の産生は高まります。しかし,糖質制限食は高血糖を起こさないために行うもので,また,2型糖尿病ではインスリン分泌能も保たれていますし,脱水症状などにも陥らないよう管理されています。したがって,糖尿病性ケトアシドーシスと糖質制限食によるケトン体産生の上昇を同様に捉えて恐れるのは見当違いだと思います。むしろ糖質制限食によるケトン体産生の上昇は,肥満などの解消にはプラスであると捉えることもできるのではないでしょうか。
2012年12月18日 (火)
おはようございます。
石田均先生とBradley論文について、精神科医師Aさんから詳しいコメントをいただきました。
ありがとうございます。
Bradley論文は英国砂糖局(SUGAR BUREAU U.K.)がスポンサーの一つである例の歪曲論文です。
本部ブログでも何度か取り上げました。
2012年になっても、相変わらず、RCT研究論文は、2009年のBradley歪曲論文しか引用できないのはお気の毒としか言いようがありませんね。
2012年01月22日 (日)の本ブログ記事
「糖質制限食批判の根拠として引用されているDiabetesの論文について」
もご参照いただけば幸いです。
4) 月刊糖尿病4(1)111-120, 2012年1月
「全身の動脈の硬化度が、低炭水化物食においてむしろ悪化する」
5) 臨床栄養121(6)696-701 ,2012年11月
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化する」
精神科医師Aさんがご指摘の如く、石田先生、「むしろ悪化する」から「相対的に悪化する」にトーンダウンしてますね。
Bradley論文を読み直されたのでしょうか?
Bradley論文の本文には、「低炭水化物食で非有意な増加」すなわち統計的に有意差なしと明記してあるので、いずれにせよ「悪化する」とは言えません。
このように本文では、「低炭水化物食で有意差なし」にも関わらず、冒頭の「結論」では「悪化を意味するかもしれない」と歪曲記載してあります。
Bradley論文の結論の「悪化を意味するかもしれない」を石田先生はさらに誤解釈して「悪化する」と断定されているのは、さすがに如何なものでしょう。
江部康二
『12/12/17 精神科医師A
石田均DrとBradley論文
臨床栄養121(6)696-701, 2012年11月号
「食品交換表改定への動きとカーボカウント」
石田均 杏林大学医学部第三内科
*日本人のための正しいカーボカウント
一方でもっとも注意すべき問題点として、日本人の糖尿病症例の日常生活のなかで、実際にカーボカウントの考え方を食事療法のなかに活用するとしても、現状ではいまだに炭水化物の摂取下限に関するコンセンサスが得られていないことがあげられる。したがって、この方法の一種の悪用によって極端な糖質制限に走ることのないように留意すべきと考えられる。実際に近年のFooらの動物実験での成績[3]から、極端な糖質制限食(炭水化物12%、たんぱく質45%、脂質43%)を長期に摂取すると、“いわゆる西洋食”(炭水化物43%、たんぱく質15%、脂質42%)―― ここで興味深いのは、脂質の含量については両者間に差がない点である――と比較して、炭水化物が12%の極端な糖質制限食では、ある意味で予想通り血糖値がむしろ低下を示し、見かけ上は“いわゆる西洋食”に比し血糖コントロールは改善するものの、一方で大動脈での動脈硬化をさらに促進することが明らかにされている(図2)。そしてそのメカニズムとして、血管修復に関与する血管内皮前駆細胞の骨髄からの動員が有意に減少することが考えられている。また、最近のBradleyらの肥満2型糖尿病症例を対象としたRCT[4]においても、低脂肪食(炭水化物60%、脂質20%)と低炭水化物食(炭水化物20%、脂質60%)を比較すると、予想に反して全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化するとの成績が示されている さらに低炭水化物食で動物性のたんぱく質、脂質を中心に摂取した場合、糖尿病の発症[5]や総死亡、心血管イベントを増加させたとの報告もなされている[6]。一方で、同様の低炭水化物食でも植物性のたんぱく質、脂質の場合には、糖尿病の発症[5]や総死亡、心血管イベントの明らかな増加は認めなかつた[6]ことから、単に食事のなかで炭水化物が占める割合だけではなく、そのたんぱく質や脂質の質にも常に留意が必要であると思われる。
3) Foo SY, Heller ER, Wykrzykowska J, et al. Vascular effects of a low‐carbohydrate high‐protein diet. Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 15418‐23
4) Bradley U, Spence M, Courtney H, et a.l Low-fat versus low‐carbohydrate weight reduclon diets-effcts on weight loss, insulin resistance, and cardiovascular risk: a randomized control trial. Diabetes 2009; 58: 2741-8
5) de Koning L, Fung TT, Liao X, et al. Low‐carbohydrate diet scores and risk of type 2 diabetes in men. Am J Clin Nutr 2011; 93: 844-50
6) Fung TT, van Dam RM, Hankinson SE et al. Low-carbohydrate diets and all‐cause and cause-specific mortality. Ann Intern Med 2010; 153: 289‐98
【解説】
石田Drはあいかわらずの低炭水化物食批判を書いている。動物実験の結果は人間にはそのままあてはまらない。2012年2月頃、トマトが糖尿病ラットのメタボを改善すると話題になったが、それも人間にはそのままあてはまらない
Bradley(2009)の論文の英文抄録を読めばわかるように、「低炭水化物食ではAIが非有意な上昇、低脂肪食ではAIが有意に低下」というだけである。ちなみに久保明Drは2012年の日本病態栄養学会のスライドでは「低炭水化物食ではAIが上昇傾向、低脂肪食ではAIが有意に低下」としている。最近の石田氏の業績目録を示す
1) 学会誌「糖尿病」54(4)257-259, 2011年4月
「(極度の低炭水化物食で)全身の動脈の硬化度がむしろ悪化しているとの成績が示されており…」
2) からだの科学269号41-44, 2011春
また、ごく最近のBradleyらの肥満2型糖尿病症例を対象としたRCTにおいても、低脂肪食(炭水化物60%、脂質20%)と低炭水化物食(炭水化物20%、脂質60%)を比較すると、予想に反して全身の動脈の硬化度が低炭水化物食においてむしろ悪化するとの成績が示されています。
3) PRACTICE 28(5)485-491, 2011年9-10月
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食においてむしろ悪化する」
4) 月刊糖尿病4(1)111-120, 2012年1月
「全身の動脈の硬化度が、低炭水化物食においてむしろ悪化する」
5) 臨床栄養121(6)696-701
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化する」
あれっと思いませんか? 当初は“むしろ悪化する”と言いまくっていましたが、臨床栄養の2012年11月号では“相対的に悪化する”に変わっている。このblogや、山田悟Drの「糖質制限食のススメ」で批判されたために、表現を変えたようです
そこで改めてBradleyの論文を読んでみました
diabetes.diabetesjournals.org/content/58/12/2741.full
低脂肪群(LF)と低炭水化物群の群間検定(ANOBA)で有意差がでたのは、TG (p=0.01)とAortic Augmentation Index (AI) (p=0.04)の2項目だけである。これだけでは「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化」とは結論づけられない
全身の動脈硬化の評価法としては、下記のHPを参照されたい。
www.jhf.or.jp/mediaWS/8th/index01.html
つまり、形態的異常については頸動脈エコー検査が、機能的異常については脈波伝播速度(PWV)がもっとも一般的である。脈波増大係数(AI)は主流ではない』
石田均先生とBradley論文について、精神科医師Aさんから詳しいコメントをいただきました。
ありがとうございます。
Bradley論文は英国砂糖局(SUGAR BUREAU U.K.)がスポンサーの一つである例の歪曲論文です。
本部ブログでも何度か取り上げました。
2012年になっても、相変わらず、RCT研究論文は、2009年のBradley歪曲論文しか引用できないのはお気の毒としか言いようがありませんね。
2012年01月22日 (日)の本ブログ記事
「糖質制限食批判の根拠として引用されているDiabetesの論文について」
もご参照いただけば幸いです。
4) 月刊糖尿病4(1)111-120, 2012年1月
「全身の動脈の硬化度が、低炭水化物食においてむしろ悪化する」
5) 臨床栄養121(6)696-701 ,2012年11月
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化する」
精神科医師Aさんがご指摘の如く、石田先生、「むしろ悪化する」から「相対的に悪化する」にトーンダウンしてますね。
Bradley論文を読み直されたのでしょうか?
Bradley論文の本文には、「低炭水化物食で非有意な増加」すなわち統計的に有意差なしと明記してあるので、いずれにせよ「悪化する」とは言えません。
このように本文では、「低炭水化物食で有意差なし」にも関わらず、冒頭の「結論」では「悪化を意味するかもしれない」と歪曲記載してあります。
Bradley論文の結論の「悪化を意味するかもしれない」を石田先生はさらに誤解釈して「悪化する」と断定されているのは、さすがに如何なものでしょう。
江部康二
『12/12/17 精神科医師A
石田均DrとBradley論文
臨床栄養121(6)696-701, 2012年11月号
「食品交換表改定への動きとカーボカウント」
石田均 杏林大学医学部第三内科
*日本人のための正しいカーボカウント
一方でもっとも注意すべき問題点として、日本人の糖尿病症例の日常生活のなかで、実際にカーボカウントの考え方を食事療法のなかに活用するとしても、現状ではいまだに炭水化物の摂取下限に関するコンセンサスが得られていないことがあげられる。したがって、この方法の一種の悪用によって極端な糖質制限に走ることのないように留意すべきと考えられる。実際に近年のFooらの動物実験での成績[3]から、極端な糖質制限食(炭水化物12%、たんぱく質45%、脂質43%)を長期に摂取すると、“いわゆる西洋食”(炭水化物43%、たんぱく質15%、脂質42%)―― ここで興味深いのは、脂質の含量については両者間に差がない点である――と比較して、炭水化物が12%の極端な糖質制限食では、ある意味で予想通り血糖値がむしろ低下を示し、見かけ上は“いわゆる西洋食”に比し血糖コントロールは改善するものの、一方で大動脈での動脈硬化をさらに促進することが明らかにされている(図2)。そしてそのメカニズムとして、血管修復に関与する血管内皮前駆細胞の骨髄からの動員が有意に減少することが考えられている。また、最近のBradleyらの肥満2型糖尿病症例を対象としたRCT[4]においても、低脂肪食(炭水化物60%、脂質20%)と低炭水化物食(炭水化物20%、脂質60%)を比較すると、予想に反して全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化するとの成績が示されている さらに低炭水化物食で動物性のたんぱく質、脂質を中心に摂取した場合、糖尿病の発症[5]や総死亡、心血管イベントを増加させたとの報告もなされている[6]。一方で、同様の低炭水化物食でも植物性のたんぱく質、脂質の場合には、糖尿病の発症[5]や総死亡、心血管イベントの明らかな増加は認めなかつた[6]ことから、単に食事のなかで炭水化物が占める割合だけではなく、そのたんぱく質や脂質の質にも常に留意が必要であると思われる。
3) Foo SY, Heller ER, Wykrzykowska J, et al. Vascular effects of a low‐carbohydrate high‐protein diet. Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 15418‐23
4) Bradley U, Spence M, Courtney H, et a.l Low-fat versus low‐carbohydrate weight reduclon diets-effcts on weight loss, insulin resistance, and cardiovascular risk: a randomized control trial. Diabetes 2009; 58: 2741-8
5) de Koning L, Fung TT, Liao X, et al. Low‐carbohydrate diet scores and risk of type 2 diabetes in men. Am J Clin Nutr 2011; 93: 844-50
6) Fung TT, van Dam RM, Hankinson SE et al. Low-carbohydrate diets and all‐cause and cause-specific mortality. Ann Intern Med 2010; 153: 289‐98
【解説】
石田Drはあいかわらずの低炭水化物食批判を書いている。動物実験の結果は人間にはそのままあてはまらない。2012年2月頃、トマトが糖尿病ラットのメタボを改善すると話題になったが、それも人間にはそのままあてはまらない
Bradley(2009)の論文の英文抄録を読めばわかるように、「低炭水化物食ではAIが非有意な上昇、低脂肪食ではAIが有意に低下」というだけである。ちなみに久保明Drは2012年の日本病態栄養学会のスライドでは「低炭水化物食ではAIが上昇傾向、低脂肪食ではAIが有意に低下」としている。最近の石田氏の業績目録を示す
1) 学会誌「糖尿病」54(4)257-259, 2011年4月
「(極度の低炭水化物食で)全身の動脈の硬化度がむしろ悪化しているとの成績が示されており…」
2) からだの科学269号41-44, 2011春
また、ごく最近のBradleyらの肥満2型糖尿病症例を対象としたRCTにおいても、低脂肪食(炭水化物60%、脂質20%)と低炭水化物食(炭水化物20%、脂質60%)を比較すると、予想に反して全身の動脈の硬化度が低炭水化物食においてむしろ悪化するとの成績が示されています。
3) PRACTICE 28(5)485-491, 2011年9-10月
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食においてむしろ悪化する」
4) 月刊糖尿病4(1)111-120, 2012年1月
「全身の動脈の硬化度が、低炭水化物食においてむしろ悪化する」
5) 臨床栄養121(6)696-701
「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化する」
あれっと思いませんか? 当初は“むしろ悪化する”と言いまくっていましたが、臨床栄養の2012年11月号では“相対的に悪化する”に変わっている。このblogや、山田悟Drの「糖質制限食のススメ」で批判されたために、表現を変えたようです
そこで改めてBradleyの論文を読んでみました
diabetes.diabetesjournals.org/content/58/12/2741.full
低脂肪群(LF)と低炭水化物群の群間検定(ANOBA)で有意差がでたのは、TG (p=0.01)とAortic Augmentation Index (AI) (p=0.04)の2項目だけである。これだけでは「全身の動脈の硬化度が低炭水化物食で相対的に悪化」とは結論づけられない
全身の動脈硬化の評価法としては、下記のHPを参照されたい。
www.jhf.or.jp/mediaWS/8th/index01.html
つまり、形態的異常については頸動脈エコー検査が、機能的異常については脈波伝播速度(PWV)がもっとも一般的である。脈波増大係数(AI)は主流ではない』
2012年12月17日 (月)
こんにちは。
daniel さんから、恐ろしい情報をコメントいただきました。
その名は、公益社団法人「糖業協会」
daniel さん
拙著の御購入ありがとうございます。
検査データ全て正常、良かったですね。
以前、本ブログで「SUGAR BUREAU U.K.(英国砂糖局)」がスポンサーの一つの歪曲論文のことをを記事にしました。
2011年05月31日 (火)の本ブログ記事
『学会誌「糖尿病」に掲載された石田均氏の糖質制限食批判論文への論評』
で批判したように、砂糖のためなら何でもやりそうな団体です。
私は全く知らなかったのですが、公益社団法人「糖業協会」そんなものが、日本にもあったのですね。
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
いやはや、まことに恐ろしいキャッチコピーです。
それでなくても現代日本人は、1日3回の精製炭水化物摂取(白ご飯、食パンなど・・・の食事)による、「グルコースミニスパイクとインスリン大量追加分泌」で1日3回、代謝の嵐を起こしています。
そんな代謝の嵐で混乱状態の身体に、さらに砂糖摂取による間食グルコースミニスパイクと追加分泌インスリンのだめ押しです。
ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版
JS Garrow
WPT james
A Ralph 編
日本語版監修 細谷憲政 医師薬出版株式会社 2004年
上記は、英国の最も権威ある栄養学の本で、920ぺージに及ぶ大著です。
2万円くらいしましたが、奮発して買いました。
この本の75ページに
『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいグルコース」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血漿グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。
農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』
と記載してあります。
ヒューマン・ニュートリションでは、穀物の過剰摂取の害、特に精製炭水化物による「血漿グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。
これも私が日頃主張している
「精製炭水化物摂取によるグルコースミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」
という説と、全く同じといっていいと思います。
公益社団法人「糖業協会」のキャッチコピー
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
とんでもないです。
農林水産省、是非、ヒューマン・ニュートリションを勉強して欲しいですね。
江部康二
【12/12/16 daniel
重版おめでとうございます
糖質制限により血液検査結果を全て正常値に戻したdanielです。
江部先生の著書は全て購入しておりますが、今回の文庫本は複数冊を購入して、知人友人に配っています。
価格も安価であり手元に置くには絶好なサイズですので、好評です。
さて、先日ボウリングに行ったのですが、大きな横断幕に下記の記載が有り驚きました。
公益社団法人 糖業協会
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
恐ろしいアナウンスです、糖尿病の外来には小児糖尿病の危険性を喚起するポスターが掲示されているにも関わらず、大勢の人が訪れる遊技場に間違った情報が大々的にアナウンスされていました。
まるで砂糖を大量に摂取すれば体調が改善されて、スポーツにおけるパフォーマンスが向上するかの様な間違った情報です。
そもそも当該「糖業協会」自体が主務官庁が農林水産省であり、国を挙げての糖尿病の推進に注力しているとは驚きです。
カローリ拝趨主義からの脱却は遠く感じました。】
daniel さんから、恐ろしい情報をコメントいただきました。
その名は、公益社団法人「糖業協会」
daniel さん
拙著の御購入ありがとうございます。
検査データ全て正常、良かったですね。
以前、本ブログで「SUGAR BUREAU U.K.(英国砂糖局)」がスポンサーの一つの歪曲論文のことをを記事にしました。
2011年05月31日 (火)の本ブログ記事
『学会誌「糖尿病」に掲載された石田均氏の糖質制限食批判論文への論評』
で批判したように、砂糖のためなら何でもやりそうな団体です。
私は全く知らなかったのですが、公益社団法人「糖業協会」そんなものが、日本にもあったのですね。
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
いやはや、まことに恐ろしいキャッチコピーです。
それでなくても現代日本人は、1日3回の精製炭水化物摂取(白ご飯、食パンなど・・・の食事)による、「グルコースミニスパイクとインスリン大量追加分泌」で1日3回、代謝の嵐を起こしています。
そんな代謝の嵐で混乱状態の身体に、さらに砂糖摂取による間食グルコースミニスパイクと追加分泌インスリンのだめ押しです。
ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版
JS Garrow
WPT james
A Ralph 編
日本語版監修 細谷憲政 医師薬出版株式会社 2004年
上記は、英国の最も権威ある栄養学の本で、920ぺージに及ぶ大著です。
2万円くらいしましたが、奮発して買いました。
この本の75ページに
『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいグルコース」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血漿グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。
農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』
と記載してあります。
ヒューマン・ニュートリションでは、穀物の過剰摂取の害、特に精製炭水化物による「血漿グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。
これも私が日頃主張している
「精製炭水化物摂取によるグルコースミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」
という説と、全く同じといっていいと思います。
公益社団法人「糖業協会」のキャッチコピー
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
とんでもないです。
農林水産省、是非、ヒューマン・ニュートリションを勉強して欲しいですね。
江部康二
【12/12/16 daniel
重版おめでとうございます
糖質制限により血液検査結果を全て正常値に戻したdanielです。
江部先生の著書は全て購入しておりますが、今回の文庫本は複数冊を購入して、知人友人に配っています。
価格も安価であり手元に置くには絶好なサイズですので、好評です。
さて、先日ボウリングに行ったのですが、大きな横断幕に下記の記載が有り驚きました。
公益社団法人 糖業協会
「砂糖で元気エネルギー」
「お砂糖プラスで賢く幸せ気分!」
「砂糖で元気エネルギーお砂糖は、脳とカラダに必要な応援団」
恐ろしいアナウンスです、糖尿病の外来には小児糖尿病の危険性を喚起するポスターが掲示されているにも関わらず、大勢の人が訪れる遊技場に間違った情報が大々的にアナウンスされていました。
まるで砂糖を大量に摂取すれば体調が改善されて、スポーツにおけるパフォーマンスが向上するかの様な間違った情報です。
そもそも当該「糖業協会」自体が主務官庁が農林水産省であり、国を挙げての糖尿病の推進に注力しているとは驚きです。
カローリ拝趨主義からの脱却は遠く感じました。】
2012年12月16日 (日)
こんにちは
PHP文庫『糖質オフ!健康法』
2012年12月6日(木)頃から書店に並んでいます。
価格は600円と今までの私の本で一番安いです。
この度、重版が決まりました。
こんなに早く重版になるとはPHP文庫担当の編集者さんもビックリだそうで、嬉しい限りです。
さて、校正があります。
重版に間に合えばいいのですが。
92ページ 最後の行
3日間から1週間→数日間から2週間
104ページ みだし
エネルギー源としてうまく
「ケトン体」を使えるようになる。
119ペー 9行目
糖尿病神経障害は当初は痛みますが、進行すると感覚がなくなり
184ページ
2行目 16州→15州
194ページ
後ろから2行目 1200キロカロリー→1000キロカロリー
200ページ
後ろから2行目、3行目
運動しない男性なら1850~2250キロカロリー、
女性なら1450~1700キロカロリー
203ページ
7行目
男性で1600~1800キロカロリー、
女性で1400~1600キロカロリー
以下は、PHP文庫『糖質オフ!健康法』の構成です。
序章:糖質オフは人間にとって一番自然な食事
1章:糖質オフの驚くべき効果
2章:糖質制限食十箇条の活用法
3章:糖質オフの効能を医学的に解説
4章:知っていると得をする小わざ
5章:使える!外食術
6章:生活習慣・体質別活用法
7章:糖質オフ Q&A
全部で8章の構成で、糖質制限食の最新知識が、満載です。
手軽に読めますので、是非ご一読くださいね。
江部康二
以下は、糖質オフ!健康法(PHP文庫)の
はじめにです。
本書で紹介する糖質制限食は、高雄病院で1999年から日本で初めて開始した食事療法です。
わかりやすく言うとご飯・パン・麺などの穀物製品や芋類などの糖質が多い食品を食べないで、肉・魚貝・豆腐・葉野菜・海藻などをしっかり摂取する食事療法です。糖質を制限したぶん、脂質とたんぱくは充分量食べます。
糖質制限食というと現代の普通の食事である高糖質食と比べると変わった食事という風に思います。しかし、実は糖質制限食こそが、人類本来の自然な食事なのです。
人類がチンパンジーと分かれて誕生したのが約700万年前です。農耕が始まるまでは人類の生業は狩猟・採集であり、全ての人類が糖質制限食でした。
約10000年前に農耕が始まり、主食が穀物へと変化し、現在まで続いています。即ち人類が穀物を主食としたのは、長い歴史の中でわずか1/700の期間に過ぎません。
歴史的に進化の過程をみると「糖質制限食」と「穀物を主食とする高糖質食」、どちらが人類にとって自然な食事なのかはいうまでもありません。
農耕以前の人類にとって糖質は言わばラッキー食材でした。すなわち時々手に入る果物やナッツ、そして山芋や百合根などの根茎類くらいが比較的糖質の多い食材でした。
運良く手に入った果物を食べて血糖値が上昇するとインスリンが分泌され筋肉に取り込まれますが、余った血糖は中性脂肪に変わり脂肪組織に蓄えられます。このように、ラッキー食材から得た糖質は、消化吸収されたあとインスリンにより脂肪に変わり、来るべき飢餓に備える唯一のセーフティーネットとなっていたと考えられます。
インスリンは今でこそ肥満ホルモンというありがたくない別称をもっていますが、狩猟・採集時代はその脂肪を蓄える能力は、とても重要な意味をもっていたわけです。本来、脂肪を蓄えるためのラッキー食材だったはずの糖質を、農耕開始後は日常的に毎日食べるようになりました。
さらにこの200~300年間は精製された炭水化物を食べるようになりました。現在先進国では、精製された炭水化物であるご飯やパンや麺、そして砂糖水のような清涼飲料水を日常的に大量に摂取しています。このことが肥満や糖尿病や様々な生活習慣病の元凶となっていると私は思います。
人類の身体の消化・吸収・栄養・代謝システムは、700万年間の糖質制限食の過程を経て、突然変異を繰り返して完成されたものであり、糖質制限食に適合しています。
イギリスの栄養学の教科書「ヒューマン・ニュートリション」に、「人類は農業の発明依頼、穀物をベーストした食生活を送るようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、人類の消化器官はまだ穀物ベースの食物に適応していない」と明快に記載してあります。
すなわち総摂取カロリーの50~60%が糖質という現代の穀物ベースの食生活は、人体にとってはとんでもなくバランスの悪いものなのです。
糖質制限食は、人類本来の食事、いわば人類の健康食ですので、糖尿病や肥満をはじめとして様々な生活習慣病が改善していきます。
しかも糖質制限食は、糖質を抜くだけで脂質やタンパク質はOKなので「美味しく楽しく」続けられるのが特長です。糖質制限食を足かけ11年続けている私にとっても、とても嬉しい食事療法なのです。
本書は糖質制限食の理論、活用法、外食術、小わざなどが幅広く解説してあり、読みやすく便利な構成となっていますので、是非ご一読いただけば幸いです。
PHP文庫『糖質オフ!健康法』
2012年12月6日(木)頃から書店に並んでいます。
価格は600円と今までの私の本で一番安いです。
この度、重版が決まりました。
こんなに早く重版になるとはPHP文庫担当の編集者さんもビックリだそうで、嬉しい限りです。
さて、校正があります。
重版に間に合えばいいのですが。
92ページ 最後の行
3日間から1週間→数日間から2週間
104ページ みだし
エネルギー源としてうまく
「ケトン体」を使えるようになる。
119ペー 9行目
糖尿病神経障害は当初は痛みますが、進行すると感覚がなくなり
184ページ
2行目 16州→15州
194ページ
後ろから2行目 1200キロカロリー→1000キロカロリー
200ページ
後ろから2行目、3行目
運動しない男性なら1850~2250キロカロリー、
女性なら1450~1700キロカロリー
203ページ
7行目
男性で1600~1800キロカロリー、
女性で1400~1600キロカロリー
以下は、PHP文庫『糖質オフ!健康法』の構成です。
序章:糖質オフは人間にとって一番自然な食事
1章:糖質オフの驚くべき効果
2章:糖質制限食十箇条の活用法
3章:糖質オフの効能を医学的に解説
4章:知っていると得をする小わざ
5章:使える!外食術
6章:生活習慣・体質別活用法
7章:糖質オフ Q&A
全部で8章の構成で、糖質制限食の最新知識が、満載です。
手軽に読めますので、是非ご一読くださいね。
江部康二
以下は、糖質オフ!健康法(PHP文庫)の
はじめにです。
本書で紹介する糖質制限食は、高雄病院で1999年から日本で初めて開始した食事療法です。
わかりやすく言うとご飯・パン・麺などの穀物製品や芋類などの糖質が多い食品を食べないで、肉・魚貝・豆腐・葉野菜・海藻などをしっかり摂取する食事療法です。糖質を制限したぶん、脂質とたんぱくは充分量食べます。
糖質制限食というと現代の普通の食事である高糖質食と比べると変わった食事という風に思います。しかし、実は糖質制限食こそが、人類本来の自然な食事なのです。
人類がチンパンジーと分かれて誕生したのが約700万年前です。農耕が始まるまでは人類の生業は狩猟・採集であり、全ての人類が糖質制限食でした。
約10000年前に農耕が始まり、主食が穀物へと変化し、現在まで続いています。即ち人類が穀物を主食としたのは、長い歴史の中でわずか1/700の期間に過ぎません。
歴史的に進化の過程をみると「糖質制限食」と「穀物を主食とする高糖質食」、どちらが人類にとって自然な食事なのかはいうまでもありません。
農耕以前の人類にとって糖質は言わばラッキー食材でした。すなわち時々手に入る果物やナッツ、そして山芋や百合根などの根茎類くらいが比較的糖質の多い食材でした。
運良く手に入った果物を食べて血糖値が上昇するとインスリンが分泌され筋肉に取り込まれますが、余った血糖は中性脂肪に変わり脂肪組織に蓄えられます。このように、ラッキー食材から得た糖質は、消化吸収されたあとインスリンにより脂肪に変わり、来るべき飢餓に備える唯一のセーフティーネットとなっていたと考えられます。
インスリンは今でこそ肥満ホルモンというありがたくない別称をもっていますが、狩猟・採集時代はその脂肪を蓄える能力は、とても重要な意味をもっていたわけです。本来、脂肪を蓄えるためのラッキー食材だったはずの糖質を、農耕開始後は日常的に毎日食べるようになりました。
さらにこの200~300年間は精製された炭水化物を食べるようになりました。現在先進国では、精製された炭水化物であるご飯やパンや麺、そして砂糖水のような清涼飲料水を日常的に大量に摂取しています。このことが肥満や糖尿病や様々な生活習慣病の元凶となっていると私は思います。
人類の身体の消化・吸収・栄養・代謝システムは、700万年間の糖質制限食の過程を経て、突然変異を繰り返して完成されたものであり、糖質制限食に適合しています。
イギリスの栄養学の教科書「ヒューマン・ニュートリション」に、「人類は農業の発明依頼、穀物をベーストした食生活を送るようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、人類の消化器官はまだ穀物ベースの食物に適応していない」と明快に記載してあります。
すなわち総摂取カロリーの50~60%が糖質という現代の穀物ベースの食生活は、人体にとってはとんでもなくバランスの悪いものなのです。
糖質制限食は、人類本来の食事、いわば人類の健康食ですので、糖尿病や肥満をはじめとして様々な生活習慣病が改善していきます。
しかも糖質制限食は、糖質を抜くだけで脂質やタンパク質はOKなので「美味しく楽しく」続けられるのが特長です。糖質制限食を足かけ11年続けている私にとっても、とても嬉しい食事療法なのです。
本書は糖質制限食の理論、活用法、外食術、小わざなどが幅広く解説してあり、読みやすく便利な構成となっていますので、是非ご一読いただけば幸いです。
2012年12月16日 (日)
おはようございます。
北九州三島さんとplants さんから、糖質制限食で歯周症改善という嬉しいコメントをいただきました。
三島さん、60歳でグラグラだった歯が、2年間経過して微動だにしないとは、素晴らしい改善です。
plants さんも、糖質制限食開始2ヶ月で、前歯グラグラが改善とは良かったです。
plants さん、空腹時血糖値が、150mg台→100~110mg/dlと改善。
これは疲弊していた膵臓のベータ細胞が、糖質制限食で休養を得てかなり回復したものと考えられます。
肥満によりインスリン抵抗性(インスリンの効きがが悪くなること)が出現してきます。
plants さん、標準体重よりまだ20kg多いなら、BMIが25をきってくると、インスリン抵抗性も改善して、さらに空腹時血糖値が90mg台になる可能性もあると思いますよ。
もっとも、空腹時血糖値110mg/dl未満ならすでに正常ですので、動脈硬化などの合併症リスクもないと思います。
なお、私は現在62歳で、歯は全部残っており、歯周症もほとんどありません。
バンド仲間の歯医者さんには1/年、歯石のチェックをして貰うだけです。
糖質制限食で歯垢は激減するので歯石も大幅に減少します。
しかし糖質12%摂取で0%ではなく、歯垢も歯石もゼロではありませんので、年1回は歯と歯肉の健康診断をします。
江部康二
【12/12/15 北九州 三島
歯周病と全身病
2年前、歯周病で前歯を1本抜きました。
その両側も、「時間の問題」と宣告されて、 年齢と諦めていました。(当時60歳)
ところが、糖質制限をして20カ月、 宣告を受けた歯は微動だにしません。
あんなにぐらぐらだったのに。
8020運動
(ハチレーニーレー、80歳で20本、自分の歯を残そうというもの。)
上下左右28本のうち、27本を、守り抜こう!
なにせ、歯の有無の問題だけでなく、 菌が全身をめぐって悪さをすることが 分かっているのだから。】
【12/12/16 plants
私も前歯がグラグラしていたのが糖質制限を開始して2ヶ月ですが 全くグラグラしなくなったので治ったみたいです。
糖質制限に出会わなかったら歯を失っていたかもしれません。
ところで今回は空腹時血糖値について質問があります。
糖尿病発覚時に空腹時血糖値が203あり、 その後カロリー制限を開始しましたがどうしても150をきることが出来ず糖質制限に挑戦しました。
すると1ヶ月で100~110で安定するようになりました。
とても嬉しかったのですが私は年齢が30代前半です。
加齢により将来基礎分泌が衰えて行く事を考えると 今の年齢のうちは空腹時は90位になりたいです。
体重は順調に落ちていますがまだ標準より20kg多いです。
糖質制限を続けてもっと体が標準に近づいたらさらに下がる可能性はあるでしょうか?
90はさすがに高望みですか?】
北九州三島さんとplants さんから、糖質制限食で歯周症改善という嬉しいコメントをいただきました。
三島さん、60歳でグラグラだった歯が、2年間経過して微動だにしないとは、素晴らしい改善です。
plants さんも、糖質制限食開始2ヶ月で、前歯グラグラが改善とは良かったです。
plants さん、空腹時血糖値が、150mg台→100~110mg/dlと改善。
これは疲弊していた膵臓のベータ細胞が、糖質制限食で休養を得てかなり回復したものと考えられます。
肥満によりインスリン抵抗性(インスリンの効きがが悪くなること)が出現してきます。
plants さん、標準体重よりまだ20kg多いなら、BMIが25をきってくると、インスリン抵抗性も改善して、さらに空腹時血糖値が90mg台になる可能性もあると思いますよ。
もっとも、空腹時血糖値110mg/dl未満ならすでに正常ですので、動脈硬化などの合併症リスクもないと思います。
なお、私は現在62歳で、歯は全部残っており、歯周症もほとんどありません。
バンド仲間の歯医者さんには1/年、歯石のチェックをして貰うだけです。
糖質制限食で歯垢は激減するので歯石も大幅に減少します。
しかし糖質12%摂取で0%ではなく、歯垢も歯石もゼロではありませんので、年1回は歯と歯肉の健康診断をします。
江部康二
【12/12/15 北九州 三島
歯周病と全身病
2年前、歯周病で前歯を1本抜きました。
その両側も、「時間の問題」と宣告されて、 年齢と諦めていました。(当時60歳)
ところが、糖質制限をして20カ月、 宣告を受けた歯は微動だにしません。
あんなにぐらぐらだったのに。
8020運動
(ハチレーニーレー、80歳で20本、自分の歯を残そうというもの。)
上下左右28本のうち、27本を、守り抜こう!
なにせ、歯の有無の問題だけでなく、 菌が全身をめぐって悪さをすることが 分かっているのだから。】
【12/12/16 plants
私も前歯がグラグラしていたのが糖質制限を開始して2ヶ月ですが 全くグラグラしなくなったので治ったみたいです。
糖質制限に出会わなかったら歯を失っていたかもしれません。
ところで今回は空腹時血糖値について質問があります。
糖尿病発覚時に空腹時血糖値が203あり、 その後カロリー制限を開始しましたがどうしても150をきることが出来ず糖質制限に挑戦しました。
すると1ヶ月で100~110で安定するようになりました。
とても嬉しかったのですが私は年齢が30代前半です。
加齢により将来基礎分泌が衰えて行く事を考えると 今の年齢のうちは空腹時は90位になりたいです。
体重は順調に落ちていますがまだ標準より20kg多いです。
糖質制限を続けてもっと体が標準に近づいたらさらに下がる可能性はあるでしょうか?
90はさすがに高望みですか?】
2012年12月15日 (土)
こんにちは。
オカノさんから、体重減少、HbA1c改善、そして歯周症改善という大変嬉しいコメントをいただきました。
【12/12/14 オカノ
はじめまして
江部先生
はじめまして。7年前に糖尿病を発症し、日々食事に気をつけながら、食事コントロールの難しさに悩んでおりました。
9月より糖質制限を始め、様々な変化が体に現れており、その効果に驚いております。
まずは体重は3ヶ月で6Kgの減少、HbA1C(JDS)で5.8→5.4へと改善しています。
ところが昨日もっと驚く変化を歯科で指摘されました。
定期的に歯科で検診を受けているのですが、歯周廻りの出血率が3ヶ月前の22%から4%に改善していたのです。磨き方を変えたかどうかを尋ねられましたが、とんと心当たりがありません。
そこで思いついたのが糖質制限。
でんぷんなどの炭水化物が口の中に入らなければ、唾液で糖化されることもありません。そうなれば、歯周病菌の餌である糖が口の中から減少し、歯周病が改善するのは当たり前なのでしょう。
これからも色々自分の体の変化を楽しみたいと思います。】
オカノさん。
コメントありがとうございます。
『歯周廻りの出血率が3ヶ月前の22%から4%に改善』
素晴らしい改善ですね。
さて、虫歯と歯周病は、歯を失う二大原因です。
そして虫歯も歯周症も、最大の原因はプラーク(歯垢)です。
プラークコントロールをせずに放置すると、細菌が糖質を分解して作り出す酸や毒素で虫歯や歯周病が発症します。逆に言えば糖質制限食なら、プラークは激減します。
プラークは、ただの食べカスではなく、生きた細菌の塊です。
歯垢中の細菌は、食物中の糖質を栄養源にしてどんどん増えていきます。
プラーク(歯垢)は重量で、約80%が細菌です。
むし歯菌の代表選手ミュータンス菌が、砂糖などからつくる不溶性グルカンからできるネバネバプラークと、それ以外の酸産生菌群がさまざまな糖質を利用してできる、水溶性のサラサラプラークがあります。
歯の表面のエナメル質にできる虫歯は主に前者、歯周病などで露出した歯根面にできるセメント質のむし歯は後者が関係しています。
ともあれ、プラークの元凶であるむし歯菌の餌は糖質です。
たんぱく質と脂質はむし歯菌の餌になりません。
糖質制限食実践により、プラークが激減しますので、歯周症の改善がおおいに期待できるわけです。
江部康二
オカノさんから、体重減少、HbA1c改善、そして歯周症改善という大変嬉しいコメントをいただきました。
【12/12/14 オカノ
はじめまして
江部先生
はじめまして。7年前に糖尿病を発症し、日々食事に気をつけながら、食事コントロールの難しさに悩んでおりました。
9月より糖質制限を始め、様々な変化が体に現れており、その効果に驚いております。
まずは体重は3ヶ月で6Kgの減少、HbA1C(JDS)で5.8→5.4へと改善しています。
ところが昨日もっと驚く変化を歯科で指摘されました。
定期的に歯科で検診を受けているのですが、歯周廻りの出血率が3ヶ月前の22%から4%に改善していたのです。磨き方を変えたかどうかを尋ねられましたが、とんと心当たりがありません。
そこで思いついたのが糖質制限。
でんぷんなどの炭水化物が口の中に入らなければ、唾液で糖化されることもありません。そうなれば、歯周病菌の餌である糖が口の中から減少し、歯周病が改善するのは当たり前なのでしょう。
これからも色々自分の体の変化を楽しみたいと思います。】
オカノさん。
コメントありがとうございます。
『歯周廻りの出血率が3ヶ月前の22%から4%に改善』
素晴らしい改善ですね。
さて、虫歯と歯周病は、歯を失う二大原因です。
そして虫歯も歯周症も、最大の原因はプラーク(歯垢)です。
プラークコントロールをせずに放置すると、細菌が糖質を分解して作り出す酸や毒素で虫歯や歯周病が発症します。逆に言えば糖質制限食なら、プラークは激減します。
プラークは、ただの食べカスではなく、生きた細菌の塊です。
歯垢中の細菌は、食物中の糖質を栄養源にしてどんどん増えていきます。
プラーク(歯垢)は重量で、約80%が細菌です。
むし歯菌の代表選手ミュータンス菌が、砂糖などからつくる不溶性グルカンからできるネバネバプラークと、それ以外の酸産生菌群がさまざまな糖質を利用してできる、水溶性のサラサラプラークがあります。
歯の表面のエナメル質にできる虫歯は主に前者、歯周病などで露出した歯根面にできるセメント質のむし歯は後者が関係しています。
ともあれ、プラークの元凶であるむし歯菌の餌は糖質です。
たんぱく質と脂質はむし歯菌の餌になりません。
糖質制限食実践により、プラークが激減しますので、歯周症の改善がおおいに期待できるわけです。
江部康二
2012年12月14日 (金)
こんばんは。
スエーデンの雪ん子さんから、スエーデンのLCHF食事療法(糖質制限食)の情報を再びコメントいただきました。
雪ん子さん、ありがとうございます。
カールスハムン・スタディー、スエーデン語ではなくて英文なので、何とか目を通してみます。
アニカ・ダールクヴィスト先生のお考えは、私達高雄病院の糖質制限食と基本的に同一ですね。心強いです。
カールスハムン・スタディー、6ヶ月目の要約を見てみましたが
糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)VS高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)
「糖質制限食は、2型糖尿病の肥満患者に効果的な方法である」
との結論でした。
江部康二
【2/12/14 雪ん子
LCHFとカールスハムン・スタディー
スウェーデンのLCHF食事療法を取り上げてくださってありがとうございます。少しでもお役に立てて嬉しいです。
長期的な臨床実験の事例が少ないと言われる糖質制限食ですが、スウェーデンでは『カールスハムン・スタディー(Karlshamns studien)』と呼ばれる臨床実験が有名で、これまでに何度も引用されています。
スウェーデン最南部に位置する人口31185人の港町、カールスハムン市が独自に研究者(ヨルゲン・ヴェスティ・ニールセンなど)に依頼する形で、糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)と高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)の2型糖尿病患者への効果を6ヶ月間調査しました。Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Reportというタイトルの論文で2005年に結果が発表されています。
そして、22ヶ月後のフォローアップが2006年に、44ヶ月後のフォローアップが2008年に発表されました。その間に、最初のグループ分けで高炭水化物食を摂取していた人の半分以上が、糖質制限食に自主的に切り替えて成果を上げていたり、それぞれのグループでその後発症した疾病や死亡者についても報告されているようです。もうご存知かもしれませんが、下に論文のリンクを添付いたします(英語)。
Jørgen Vesti Nielsen, Eva Jönsson, Anna-Karin Nilsson, Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Report, 2005.
http://fhskola.ltblekinge.se/download/18.483745d1110dfd532008000736/Lasting_Improvement.pdf
Jørgen Vesti Nielsen and Eva Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes. Stable improvement of bodyweight and glycemic control during 22 months follow-up, 2006.
http://www.biomedcentral.com/content/pdf/1743-7075-3-22.pdf
Jörgen V Nielsen and Eva A Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes: stable improvement of bodyweight and glycemic control during 44 months follow-up, 2008.
http://www.nutritionandmetabolism.com/content/5/1/14
ダールクヴィスト医師(おっしゃる通り、女性です)のブログで公開されている、カールスハムン・スタディーでの一日の平均的な栄養の内容です。この表でみると 体重60kgの女性の場合、体重1kgあたり2g近い蛋白質を摂取している計算だと、ブログには書かれていました。(スウェーデン語のままですみません。)
Genomsnitt per dag.
Kcal 1670
Protein 111g 27%
Fett 100g 53%(脂質)
Kolhydrater 80g 20%(炭水化物)
Fiber 25g
C-vitamin 135mg
Järn 12mg(鉄分)
Kalcium 835mg
tiamin 1,4mg
riboflavin 1,9mg
Rekv 3,34mg
d-vit 15,35 ug
e-vit 16mg
Niekv 46,3mg
B6 2,7mg
B12 10ug
Magn 302mg
Zink 10,8mg
Fola 409,9 ug
Sele 100,4ug
ダールクヴィストのLCHF食事療法では、糖尿病患者は一日の炭水化物摂取量を20g、そうでない人も30 - 40%に留めることを目安にしています。(バーンスタイン医師のメソッドも参照にしていました。)LCHFのモットーは、1、低炭水化物、2、自然の油分/脂肪分をもっと摂取、3、添加物や有害物質の入っていない食品(できるだけ有機栽培のオーガニック製品)を摂取だそうです。蛋白質は握りこぶし大の量を目安に、1日1、2度食べることを奨めていて、炭水化物に代わるエネルギー源には、江部先生と同じようにいい油をとるように指導しています。
ダールクヴィストも現代人のomega-6の過剰摂取を問題視しており、先日のコメントで少し書きましたが、コールドプレスのエクストラヴァージンオリーブオイルと、同じ方法で搾油したオーガニックの菜種(キャノーラ)油(スウェーデンの特産)を使うようにいっています。ただ、従来のセイヨウアブラナは有害なエルカ酸を含むので、長期的な健康への影響は不明だということです。また、オリーブオイルは体にいいとはいえ、産地が主に地中海周辺に限定されるので、 輸送にかかる二酸化炭素の排出量・フードマイル(Food Miles)を考慮すると、環境への配慮から多少消極的な奨め方になっています。
牧草や干し草を食べて育った乳牛や、自然の放し飼いで草を食べる鶏の卵は、ダールクヴィストの本によるとomega-3が豊富だそうです。(天然の魚はもちろんomega-3が豊富なのですが、養殖では穀物が飼料のベースなので、omega-6の割合が多いと、この本で知りました。) 同じ本では、ナチュラルチーズとバターは乳糖を含まないので、牛乳やヨーグルトに比べて減量に効果的だと書いてありました。(もちろん、一日の必要摂取カロリー内ですが。)
マーガリンは第二次世界大戦中に広まったバターの代用品で、化学的に生産されたものです。しかも減量のパーム油は成長が早く低コストなので多くの食品に使われていますが、熱帯雨林を大量に伐採して栽培されています。コレステロール神話が崩された現代では、こういう背景のマーガリンでなく積極的にバターを選ぶべきだとダールクヴィストは主張しています。牛乳や生クリームも高脂肪の製品を選び、肉を食べるときは周りの脂も一緒に食べるそうです。
公共放送のLCHF特集番組で調理指導をしていた人の話では、脂肪分は味が濃厚なので砂糖がなくても気持ちが満足しやすく、一度に大量に食べられないことも利点だそうです。
スウェーデンは冷凍食品や缶詰などを利用する人がとても多いのですが、LCHFでは添加物(特に旨味調味料)を避けることも重視されています。料理にかけるとろっとしたソースやドレッシングを家庭で作ることが奨められているので、生クリーム、サワークリーム、クリームチーズやブルーチーズを上手に利用するといいみたいです。(日本の家庭料理でも、バリエーションが広がるかと思います。)出来合いの食品といえば、こちらのソーセージは原料の半分近くが片栗粉で、添加物が何種類も入っています。そういう事情なので、肉類の加工品も中身に気をつけた方がいいそうです。
日本の糖質制限食とスウェーデンのLCHFでは食べるものが少し違うので、 また長くなりましたが、こちらに書き込みました。食材選びの幅が少しでも広がればと思います。】
スエーデンの雪ん子さんから、スエーデンのLCHF食事療法(糖質制限食)の情報を再びコメントいただきました。
雪ん子さん、ありがとうございます。
カールスハムン・スタディー、スエーデン語ではなくて英文なので、何とか目を通してみます。
アニカ・ダールクヴィスト先生のお考えは、私達高雄病院の糖質制限食と基本的に同一ですね。心強いです。
カールスハムン・スタディー、6ヶ月目の要約を見てみましたが
糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)VS高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)
「糖質制限食は、2型糖尿病の肥満患者に効果的な方法である」
との結論でした。
江部康二
【2/12/14 雪ん子
LCHFとカールスハムン・スタディー
スウェーデンのLCHF食事療法を取り上げてくださってありがとうございます。少しでもお役に立てて嬉しいです。
長期的な臨床実験の事例が少ないと言われる糖質制限食ですが、スウェーデンでは『カールスハムン・スタディー(Karlshamns studien)』と呼ばれる臨床実験が有名で、これまでに何度も引用されています。
スウェーデン最南部に位置する人口31185人の港町、カールスハムン市が独自に研究者(ヨルゲン・ヴェスティ・ニールセンなど)に依頼する形で、糖質制限食(炭水化物20%、蛋白質30%、脂質50%)と高炭水化物食(およそ炭水化物60%、蛋白質15%、脂質25%)の2型糖尿病患者への効果を6ヶ月間調査しました。Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Reportというタイトルの論文で2005年に結果が発表されています。
そして、22ヶ月後のフォローアップが2006年に、44ヶ月後のフォローアップが2008年に発表されました。その間に、最初のグループ分けで高炭水化物食を摂取していた人の半分以上が、糖質制限食に自主的に切り替えて成果を上げていたり、それぞれのグループでその後発症した疾病や死亡者についても報告されているようです。もうご存知かもしれませんが、下に論文のリンクを添付いたします(英語)。
Jørgen Vesti Nielsen, Eva Jönsson, Anna-Karin Nilsson, Lasting Improvement of Hyperglycaemia and Bodyweight: Low-carbohydrate Diet in Type 2 Diabetes. – A Brief Report, 2005.
http://fhskola.ltblekinge.se/download/18.483745d1110dfd532008000736/Lasting_Improvement.pdf
Jørgen Vesti Nielsen and Eva Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes. Stable improvement of bodyweight and glycemic control during 22 months follow-up, 2006.
http://www.biomedcentral.com/content/pdf/1743-7075-3-22.pdf
Jörgen V Nielsen and Eva A Joensson, Low-carbohydrate diet in type 2 diabetes: stable improvement of bodyweight and glycemic control during 44 months follow-up, 2008.
http://www.nutritionandmetabolism.com/content/5/1/14
ダールクヴィスト医師(おっしゃる通り、女性です)のブログで公開されている、カールスハムン・スタディーでの一日の平均的な栄養の内容です。この表でみると 体重60kgの女性の場合、体重1kgあたり2g近い蛋白質を摂取している計算だと、ブログには書かれていました。(スウェーデン語のままですみません。)
Genomsnitt per dag.
Kcal 1670
Protein 111g 27%
Fett 100g 53%(脂質)
Kolhydrater 80g 20%(炭水化物)
Fiber 25g
C-vitamin 135mg
Järn 12mg(鉄分)
Kalcium 835mg
tiamin 1,4mg
riboflavin 1,9mg
Rekv 3,34mg
d-vit 15,35 ug
e-vit 16mg
Niekv 46,3mg
B6 2,7mg
B12 10ug
Magn 302mg
Zink 10,8mg
Fola 409,9 ug
Sele 100,4ug
ダールクヴィストのLCHF食事療法では、糖尿病患者は一日の炭水化物摂取量を20g、そうでない人も30 - 40%に留めることを目安にしています。(バーンスタイン医師のメソッドも参照にしていました。)LCHFのモットーは、1、低炭水化物、2、自然の油分/脂肪分をもっと摂取、3、添加物や有害物質の入っていない食品(できるだけ有機栽培のオーガニック製品)を摂取だそうです。蛋白質は握りこぶし大の量を目安に、1日1、2度食べることを奨めていて、炭水化物に代わるエネルギー源には、江部先生と同じようにいい油をとるように指導しています。
ダールクヴィストも現代人のomega-6の過剰摂取を問題視しており、先日のコメントで少し書きましたが、コールドプレスのエクストラヴァージンオリーブオイルと、同じ方法で搾油したオーガニックの菜種(キャノーラ)油(スウェーデンの特産)を使うようにいっています。ただ、従来のセイヨウアブラナは有害なエルカ酸を含むので、長期的な健康への影響は不明だということです。また、オリーブオイルは体にいいとはいえ、産地が主に地中海周辺に限定されるので、 輸送にかかる二酸化炭素の排出量・フードマイル(Food Miles)を考慮すると、環境への配慮から多少消極的な奨め方になっています。
牧草や干し草を食べて育った乳牛や、自然の放し飼いで草を食べる鶏の卵は、ダールクヴィストの本によるとomega-3が豊富だそうです。(天然の魚はもちろんomega-3が豊富なのですが、養殖では穀物が飼料のベースなので、omega-6の割合が多いと、この本で知りました。) 同じ本では、ナチュラルチーズとバターは乳糖を含まないので、牛乳やヨーグルトに比べて減量に効果的だと書いてありました。(もちろん、一日の必要摂取カロリー内ですが。)
マーガリンは第二次世界大戦中に広まったバターの代用品で、化学的に生産されたものです。しかも減量のパーム油は成長が早く低コストなので多くの食品に使われていますが、熱帯雨林を大量に伐採して栽培されています。コレステロール神話が崩された現代では、こういう背景のマーガリンでなく積極的にバターを選ぶべきだとダールクヴィストは主張しています。牛乳や生クリームも高脂肪の製品を選び、肉を食べるときは周りの脂も一緒に食べるそうです。
公共放送のLCHF特集番組で調理指導をしていた人の話では、脂肪分は味が濃厚なので砂糖がなくても気持ちが満足しやすく、一度に大量に食べられないことも利点だそうです。
スウェーデンは冷凍食品や缶詰などを利用する人がとても多いのですが、LCHFでは添加物(特に旨味調味料)を避けることも重視されています。料理にかけるとろっとしたソースやドレッシングを家庭で作ることが奨められているので、生クリーム、サワークリーム、クリームチーズやブルーチーズを上手に利用するといいみたいです。(日本の家庭料理でも、バリエーションが広がるかと思います。)出来合いの食品といえば、こちらのソーセージは原料の半分近くが片栗粉で、添加物が何種類も入っています。そういう事情なので、肉類の加工品も中身に気をつけた方がいいそうです。
日本の糖質制限食とスウェーデンのLCHFでは食べるものが少し違うので、 また長くなりましたが、こちらに書き込みました。食材選びの幅が少しでも広がればと思います。】
2012年12月13日 (木)

お早うございます。
何度か紹介した、あらてつさんの糖質制限ドットコムで販売している、モリドルオリーブオイル、大変好評で、早くもリピーターがついているとのことです。
オリーブオイル業界、聞くところによるといろいろと複雑で、「エクストラヴァージンオリーブオイル」といいながら、そうでないものがかなりの割合で流通しているそうです。
ですがこのモリドルオリーブオイルは、あらてつさんが直接工場まで行って「冷温圧搾・無濾過・無添加・混ざりっけ無しのエクストラヴァージンオリーブオイル」であることを確認してきました。
あらてつさん、知っている人は知っている「かなりうるさい男」ですので、工場を隅から隅まで調べて現地の人たちに嫌がられてきたことは、想像に難くありません。
スペインでも「うるさいぶり」を遺憾なく発揮してきたあらてつさん太鼓判のモリドルオリーブオイル、私もこのブログをご覧の糖尿人、メタボ人、ダイエッターの皆さんにお勧め致します。
以下、以前の記事を再掲しますね。
江部康二
私の考案した「糖質制限食十箇条」の6番目は
「オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。」
となっています。
かつて、「植物油が身体によくて動物油が身体に悪い」というのが定説でしたが、日本の現状では、日本脂質栄養学会の提言のように、リノール酸の過剰摂取が問題となっています。
リノール酸は多くの植物油の主成分で、安価な大豆油やコーン油などの、いわゆる「サラダ油」には特に多く含まれています。
糖質制限食を実践すると、油脂分の摂取が多くなりますが、上記のような「サラダ油」を多量に摂取すると、リノール酸摂りすぎによる弊害(心臓・脳血管系疾患、欧米型癌、アレルギー性疾患、その他炎症性疾患)※1が懸念されます。
そこで、私がお勧めしているのがオリーブオイルです。
オリーブオイルの主成分は、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸です。そして大多数の栄養学者がオリーブオイルの摂取を奨めています。
オリーブオイル摂取とヒトに関しては、現在までの疫学的報告では、心血管系ににも癌予防にもよい結果がでています。私自身も、もっぱらオリーブオイルを使っています。
オリーブオイルをたっぷり摂取することで有名なのが地中海食です。
2004年の米国医師会雑誌の論文で「地中海食摂取、喫煙なし、適度なアルコール摂取、身体活動」を実践しているヨーロッパの人々において、心血管疾患と癌の発症が統計的に有意に少ないことが報告されました。※2
またヒトにおける、信頼度の高い疫学研究に関する論文が、Nature Reviews Cardiology という世界心臓連合(WHF)の公式誌にハーバード大学の研究者により2007年に報告されました。
その論文に「地中海食は、心血管系への利点と、種々の美味しい物を食べられるので持続しやすいこともあり、ますます人気が上昇している。」との記載があります。※3
また、糖質制限食で体重を増やしたい方にもオリーブオイルはお勧めです。
オリーブオイルを調理に積極的に使ってカロリーを稼ぐのです。
やせてる糖尿人には、「ナッツ類、果物適量、オリーブオイル」が三種の神器でしょうか。
この様に、糖質制限食で何かと重宝するのがオリーブオイルなのですが、正直、これまでは何を買えばいいのか選ぶのが大変でした。
スーパーに行った際いろいろと見るのですが、基本的に面倒くさがりということもあり、いつも適当に目についたものを買っていました(^_^;)
ですがこの度、あらてつさんの糖質制限ドットコムで、待望のオリーブオイル販売が始まりました。
あらてつさん曰く、スペインから直輸入しているとのことです。
オリーブオイルと言えばイタリアのイメージがあったのですが、スペインはオリーブオイル生産量が世界一だそうで、その中から少量生産の美味しい物を見つけたと喜び勇んで持ってきたのです。
このモリドルオリーブオイルは、溶剤抽出ではなく、収穫仕立てのオリーブの実を丁寧に圧搾し、フィルターでろ過せず瓶詰めしているとのこと、なるほど食べてみると、私が今までスーパーで買っていたものとは雲泥の差で、味と香りが全く違います。
一度使ってすっかり気に入ってしまい、以来、我が家では発売前のものを分けてもらい、ずっとこのオリーブオイルです(^O^)
オリーブオイル選びに迷われている糖尿人の皆さん、是非一度お試しあれ。
モリドル オリーブオイル
http://www.toushitsuseigen.com/shop/etc_oliveoil.html
江部康二
※1
日本脂質栄養学会の提言(2002年9月)
「本学会は 1992年以来、必須脂肪酸である リノール酸の摂取過剰と健康の問題について討論。その結果、日本人のリノール酸摂りすぎを是正する方向に栄養指導を改 めることが急務との結論に達した。 リノール酸摂りすぎの害(心臓・脳血管系疾患、欧米型癌、アレルギー性疾患、その他炎症性疾患)については、動物実験 のみならず臨床的にも明らかにされてきた。」
※2
Knoops KTB, de Groot LCPGM, Kromhout D, et al. 2004. Mediterranean diet, lifestyle factors, and 10-year mortality in elderly European men and women: the HALE Project. JAMA 292: 1433-39.
※3
Popular weight-loss diets: from evidence to practice
Vasanti S Malik & Frank B Hu
Nature Reviews Cardiology 4, 34–41 (1 January 2007)
2012年12月12日 (水)
こんにちは。
スエーデン在住の雪ん子さんから、スエーデンにおける糖質制限食・・・LCHF(Low Carb High Fat)について、興味深いコメント・情報をいただきました。
【12/12/11 雪ん子
スウェーデンの低炭水化物食療法、LCHF
はじめまして。
人づてに低糖質制限食を教わり、10月末より実践しています。私はスウェーデンに住んでおり、日本と同じような豆腐やおからの料理が出来ないので、こちらの食材で続けられるレシピをネットで検索していたところ、LCHF(Low Carb High Fat)と呼ばれる、スウェーデンのアニカ・ダールクヴィスト医師が提唱し始めた食事療法に行き当たりました。江部先生のように「低糖質」と細かく限定していませんが、砂糖と炭水化物を押さえて血糖値を上げないことで、2型糖尿病と肥満(およびメタボリックシンドローム)の解消を目指しています。
ダールクヴィストは1型糖尿病を患っており、スウェーデンでは一般的な保健所の医師として勤務していました。2004年に、医学部で学ぶ娘さんが学部の課題として2週間実践した低炭水化物食を知ったそうです。これまでご本人が全く減量できなかったのに見るまに痩せたことや、それにともなって長年不調だった腸の調子が良くなり(スウェーデン人に多いそうです)、関節炎や頭痛がなくなり精神的に上向きになるということを身をもって体験したことで、保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、このLCHF食事療法の指導を始めたそうです。
しかし、 これまで提唱されていたものとは正反対の食事療法なので、 日本の現状と同じようにこれを危惧する人がいて、社会庁( Socialstyrelsen)に栄養士2名がダールクヴィストを通報したそうです。食品衛生局(Livsmedelsverket) の目安では、炭水化物の摂取量は全体の食事の60%です。ダールクヴィストの食事指導が間違っていると判断された場合には医師免許の剥奪もあり得るという事態になり、社会庁がスウェーデンの糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼しました。これが2005年のことでした。2007年12月に提出されたバーネ教授の調査報告で、長期的な結果がまだ科学的に出ていないものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられたことにより、LCHF食事療法に社会庁が青信号を灯しました。2008年1月のことです。
「数十年に渡るエビデンスが…」とおっしゃる方が日本にはいるようですが、プラグマティズムの国スウェーデンだからか、影響力の強い医学ジャーナルに掲載された論文でも低炭水化物食の効果が証明されているからか、社会庁に認められて以来、スウェーデンではLCHFブームが巻き起こったそうです。こちらでは現在4人に1人がLCHFを実践しているそうです。(カルピンチョ医師のブログにもスウェーデン式ダイエットが紹介されていましたね。http://低糖質.com/review/cat16/41.html)
ダールクヴィストの食事療法の場合、タンパク質摂取量はこれまでと変わらずに、エネルギーを天然の動物性脂肪(バター、生クリーム、サワークリーム、チーズなど)と、オーガニックのオリーブオイルと菜種油(どちらもエキストラバージンのコールドプレス)で摂取することを奨めています。日本と違って、動物性タンパク質の摂取量(肉や乳製品)はもともと多いです。
2011年には、公共放送でも、このLCHFについて賛成派/反対派のインタービューを交えながら、低炭水化物食療法に関するドキュメンタリーを放送しました。糖尿病患者がスーパーで食材選びの指導を受けて料理の講習会をすることで、この食事療法について学んだり、食後の血糖値を実際に計って違いを実感することで、患者さんの中には3ヶ月間この食事を実践した人たちがいて、その成果も紹介されていました。(江部先生のブログで読むみなさんの体験談と同じ傾向の結果です。)ただ、江部先生がブログに書いていらっしゃるように、スウェーデン人は肥満がある程度進んでから糖尿病にかかるようで、この番組を見る限り、糖尿病の治療と減量は二足のわらじのように捉えられているという印象でした。
マイナー言語の国なので、なかなか日本とスウェーデンではお互いの情報が伝わりにくいですが、こういうことがありましたというご紹介をと思い、長くなりましたが筆をとりました。別にわけて、バーネ教授の答申とその日本語訳や、公共放送のドキュメンタリーへのリンクを貼ります。何かのお役に立てれば幸いです。】
雪ん子さん。
貴重な情報をありがとうございます。
スエーデンでは、糖質制限食が、公的に認められているとは、心強いかぎりです。
ダールクヴィスト医師は、アニカさんなので、女性なのかな?
ともあれ、ご自身が1型糖尿病で、2004年に娘さんから低炭水化物食の情報を得て、即実践されたのは素晴らしいです。
2004年、ダールクヴィスト医師(1型糖尿病)自らLCHF食事療法(糖質制限食)開始。
2004年、ダールクヴィスト医師が自分の保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、
このLCHF食事療法(糖質制限食)の指導を開始。
2005年、栄養士2名が、が社会庁( Socialstyrelsen)に「従来とは異なる異端の食事療法」として通報。
2005年、社会庁が糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼。
2007年12月、バーネ教授の調査報告で、LCHF食事療法(糖質制限食)は長期的な結果がまだ科学的に出ていない
ものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられた。
2008年1月、LCHF食事療法(糖質制限食)に社会庁が青信号を灯した。
スエーデン、対応が早いですね。
日本の厚生労働省が、同様に調査を開始してくれたらいいのですが・・・。
ただクリスチャン・バーネ教授の如く、糖質制限食に対してニュートラルに科学的見解を発表できるような人材が、日本にいるのか?いったい誰に調査を依頼したらいいのか?
それを思うと、我が日本国ではますます混迷を深めそうな懸念もありますね。
それでも、2000kcalの糖質制限食 VS 1600kcalのカロリー制限食(高糖質食)のハンディをあえてつけたとしてもCGMを検査すれば、症例数は少なくても一目瞭然で、100%血糖変動幅(MAGE)の優位差がでます。
2000kcalの糖質制限食 VS 1600kcalのカロリー制限食というハンディをあえてつけたとしても、新患の糖尿病患者さんのHbA1cや空腹時血糖値データを、3ヶ月くらい追えばこちらも症例は少なくとも、明確な優位差がでます。
厚生労働省、やってくれないかな?
江部康二
スエーデン在住の雪ん子さんから、スエーデンにおける糖質制限食・・・LCHF(Low Carb High Fat)について、興味深いコメント・情報をいただきました。
【12/12/11 雪ん子
スウェーデンの低炭水化物食療法、LCHF
はじめまして。
人づてに低糖質制限食を教わり、10月末より実践しています。私はスウェーデンに住んでおり、日本と同じような豆腐やおからの料理が出来ないので、こちらの食材で続けられるレシピをネットで検索していたところ、LCHF(Low Carb High Fat)と呼ばれる、スウェーデンのアニカ・ダールクヴィスト医師が提唱し始めた食事療法に行き当たりました。江部先生のように「低糖質」と細かく限定していませんが、砂糖と炭水化物を押さえて血糖値を上げないことで、2型糖尿病と肥満(およびメタボリックシンドローム)の解消を目指しています。
ダールクヴィストは1型糖尿病を患っており、スウェーデンでは一般的な保健所の医師として勤務していました。2004年に、医学部で学ぶ娘さんが学部の課題として2週間実践した低炭水化物食を知ったそうです。これまでご本人が全く減量できなかったのに見るまに痩せたことや、それにともなって長年不調だった腸の調子が良くなり(スウェーデン人に多いそうです)、関節炎や頭痛がなくなり精神的に上向きになるということを身をもって体験したことで、保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、このLCHF食事療法の指導を始めたそうです。
しかし、 これまで提唱されていたものとは正反対の食事療法なので、 日本の現状と同じようにこれを危惧する人がいて、社会庁( Socialstyrelsen)に栄養士2名がダールクヴィストを通報したそうです。食品衛生局(Livsmedelsverket) の目安では、炭水化物の摂取量は全体の食事の60%です。ダールクヴィストの食事指導が間違っていると判断された場合には医師免許の剥奪もあり得るという事態になり、社会庁がスウェーデンの糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼しました。これが2005年のことでした。2007年12月に提出されたバーネ教授の調査報告で、長期的な結果がまだ科学的に出ていないものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられたことにより、LCHF食事療法に社会庁が青信号を灯しました。2008年1月のことです。
「数十年に渡るエビデンスが…」とおっしゃる方が日本にはいるようですが、プラグマティズムの国スウェーデンだからか、影響力の強い医学ジャーナルに掲載された論文でも低炭水化物食の効果が証明されているからか、社会庁に認められて以来、スウェーデンではLCHFブームが巻き起こったそうです。こちらでは現在4人に1人がLCHFを実践しているそうです。(カルピンチョ医師のブログにもスウェーデン式ダイエットが紹介されていましたね。http://低糖質.com/review/cat16/41.html)
ダールクヴィストの食事療法の場合、タンパク質摂取量はこれまでと変わらずに、エネルギーを天然の動物性脂肪(バター、生クリーム、サワークリーム、チーズなど)と、オーガニックのオリーブオイルと菜種油(どちらもエキストラバージンのコールドプレス)で摂取することを奨めています。日本と違って、動物性タンパク質の摂取量(肉や乳製品)はもともと多いです。
2011年には、公共放送でも、このLCHFについて賛成派/反対派のインタービューを交えながら、低炭水化物食療法に関するドキュメンタリーを放送しました。糖尿病患者がスーパーで食材選びの指導を受けて料理の講習会をすることで、この食事療法について学んだり、食後の血糖値を実際に計って違いを実感することで、患者さんの中には3ヶ月間この食事を実践した人たちがいて、その成果も紹介されていました。(江部先生のブログで読むみなさんの体験談と同じ傾向の結果です。)ただ、江部先生がブログに書いていらっしゃるように、スウェーデン人は肥満がある程度進んでから糖尿病にかかるようで、この番組を見る限り、糖尿病の治療と減量は二足のわらじのように捉えられているという印象でした。
マイナー言語の国なので、なかなか日本とスウェーデンではお互いの情報が伝わりにくいですが、こういうことがありましたというご紹介をと思い、長くなりましたが筆をとりました。別にわけて、バーネ教授の答申とその日本語訳や、公共放送のドキュメンタリーへのリンクを貼ります。何かのお役に立てれば幸いです。】
雪ん子さん。
貴重な情報をありがとうございます。
スエーデンでは、糖質制限食が、公的に認められているとは、心強いかぎりです。
ダールクヴィスト医師は、アニカさんなので、女性なのかな?
ともあれ、ご自身が1型糖尿病で、2004年に娘さんから低炭水化物食の情報を得て、即実践されたのは素晴らしいです。
2004年、ダールクヴィスト医師(1型糖尿病)自らLCHF食事療法(糖質制限食)開始。
2004年、ダールクヴィスト医師が自分の保健所の診察にやってくる2型糖尿病患者や肥満に悩む人に、
このLCHF食事療法(糖質制限食)の指導を開始。
2005年、栄養士2名が、が社会庁( Socialstyrelsen)に「従来とは異なる異端の食事療法」として通報。
2005年、社会庁が糖尿病の権威クリスチャン・バーネ教授に調査を依頼。
2007年12月、バーネ教授の調査報告で、LCHF食事療法(糖質制限食)は長期的な結果がまだ科学的に出ていない
ものの、科学的な見解に基づいた実績の証明されたものであると結論づけられた。
2008年1月、LCHF食事療法(糖質制限食)に社会庁が青信号を灯した。
スエーデン、対応が早いですね。
日本の厚生労働省が、同様に調査を開始してくれたらいいのですが・・・。
ただクリスチャン・バーネ教授の如く、糖質制限食に対してニュートラルに科学的見解を発表できるような人材が、日本にいるのか?いったい誰に調査を依頼したらいいのか?
それを思うと、我が日本国ではますます混迷を深めそうな懸念もありますね。
それでも、2000kcalの糖質制限食 VS 1600kcalのカロリー制限食(高糖質食)のハンディをあえてつけたとしてもCGMを検査すれば、症例数は少なくても一目瞭然で、100%血糖変動幅(MAGE)の優位差がでます。
2000kcalの糖質制限食 VS 1600kcalのカロリー制限食というハンディをあえてつけたとしても、新患の糖尿病患者さんのHbA1cや空腹時血糖値データを、3ヶ月くらい追えばこちらも症例は少なくとも、明確な優位差がでます。
厚生労働省、やってくれないかな?
江部康二
2012年12月11日 (火)
こんにちは。
先ほど、「新しい創傷治療」のサイトの更新履歴を見ていたら、夏井睦先生から私に、以下のエールを送っていただいてました。
【2012/12/10 夏井先生のブログ 夏井先生のコメント
本屋さん巡りをしていると,糖質制限関連の本が雨後の筍のごとく増えているのに驚きます。1年前までは江部先生の本がちょっとあるくらいだったと記憶していますから,世の中,変われば変わるもんですね。これで 「糖質制限って何?」 という人間を 「糖質制限ならちょっと聞いたことがある」 という人間が上回るようになったら一気に変化が起こるはずです。もしかしたら,世の中の常識がひっくり返る瞬間に立ち会えるかもしれません。
ちなみに,わたしも糖質制限本を執筆中です。普通のダイエット本とか健康法の本では書いている方も面白くないので,ちょいと視点をずらしたあたりで書いています。ただ,自分があまり得意としない分野(例:生化学)まで話が及ぶため,かなり難儀をしています。寝ても覚めても本のことが頭に浮かび,面白そうな本を読む時間もなければ,読んだ本についてのレビューを書く時間もありません。ということは,さっさと本を書いてしまうしかない,ということですね。
そういえば,「なぜそこまで江部先生の糖質制限に入れ込むんですか?」 という質問をよくいただきますが,理由は江部先生は私よりちょっと年上だからです。私より年上ということは,私より先に死ぬ確率が高いということです。
彼は糖尿病をこの世から消滅させるという偉業に挑戦しています。彼の偉業は世の中の賞賛を浴びるのにふさわしいものです。だからこそ,江部先生は生きている間に勝利の栄冠を掴み,日本医学界が彼の業績を称える栄光に包まれるべきなのです。そのためには,彼に残された時間はせいぜい20年かそこらでしょう。だから私は,(自分の業績の宣伝はさておき)糖質制限について取り上げ,江部先生を紹介しているのです。全ては,江部先生が生きているうちに賞賛に包まれる様子を見たいから勝手連的サポーター役にしゃしゃり出ているだけです。
な~んて書いていますが,この文章を読んで江部先生はさぞかし苦笑なさっていることでしょう。その様子が目に浮かびます。
江部先生,勝利の日までお互い長生きしましょうね。生きているうちに,「ほうら,俺が昔から言っていた通りだったろう? 世の中が見事にひっくり返っただろう」 って言いましょう。死んでから 「江部先生って本当にすごい人だったんだ」 って誉められても,多分,嬉しくないもん。】
夏井睦先生、過分で過激なエールをありがとうございます(笑)
仰有るとおり、苦笑いしています。
それでも、誉められると、やっぱり嬉しいです。
あと20年ですか? (=_=;) (^^)
何だか、万一私のほうが夏井先生より長生きしたらバチがあたりそうなので、長生きを心掛けますが、夏井先生よりは年功序列で先に逝って、待つように努力?します。 (^_^)
それでも「目指せ、日野原重明先生」で、
長生きしすぎたらすいません。 m(_ _)m
夏井先生の
新しい創傷治療 「消毒とガーゼ」撲滅を目指して
http://www.wound-treatment.jp/
湿潤療法も、画期的な治療法です。
傷の消毒という100年以上続いた呪いのような医療機関の悪習慣を、一刀両断にした功績は、日本医学界がおおいに称えて然るべきです。
患者さんも消毒とガーゼという、大変な苦痛を伴う誤った治療法から解放されて、実践した人(私も含めて)は快哉を叫んでいます。
『傷はぜったい消毒するな』(夏井睦著、光文社新書,2009年) を初めて読んだ時は、目から鱗が落ちました。
例えば
「大腸癌で開腹手術して、病変を取り除き、腸を端々吻合して腹を閉じて、皮膚を縫合して終了。術後、皮膚は毎日消毒しますが、大便が通過し、細菌だらけの大腸粘膜は消毒などできません。しかし大腸を端々吻合した部位が感染することはありません。」
というくだり(正確な文章ではなく記憶で書いている要約です)は、大変わかりやすく即座に消毒の無意味さが理解できました。
夏井睦先生、鳥谷部俊一先生、ご両名は、日本医学界に燦然と輝く星であり、創傷治療を根本から変えた医療革命ともいえる功績を残された偉人といえるでしょう。
私、ご両名を、まじで掛け値無しに、尊敬してますので。
今度は、夏井先生が、苦笑いされている様子が目に浮かびます。(⌒o⌒)v
夏井睦先生、夏井バージョンの「糖質制限本」とても楽しみに待っていますよ。
江部康二
先ほど、「新しい創傷治療」のサイトの更新履歴を見ていたら、夏井睦先生から私に、以下のエールを送っていただいてました。
【2012/12/10 夏井先生のブログ 夏井先生のコメント
本屋さん巡りをしていると,糖質制限関連の本が雨後の筍のごとく増えているのに驚きます。1年前までは江部先生の本がちょっとあるくらいだったと記憶していますから,世の中,変われば変わるもんですね。これで 「糖質制限って何?」 という人間を 「糖質制限ならちょっと聞いたことがある」 という人間が上回るようになったら一気に変化が起こるはずです。もしかしたら,世の中の常識がひっくり返る瞬間に立ち会えるかもしれません。
ちなみに,わたしも糖質制限本を執筆中です。普通のダイエット本とか健康法の本では書いている方も面白くないので,ちょいと視点をずらしたあたりで書いています。ただ,自分があまり得意としない分野(例:生化学)まで話が及ぶため,かなり難儀をしています。寝ても覚めても本のことが頭に浮かび,面白そうな本を読む時間もなければ,読んだ本についてのレビューを書く時間もありません。ということは,さっさと本を書いてしまうしかない,ということですね。
そういえば,「なぜそこまで江部先生の糖質制限に入れ込むんですか?」 という質問をよくいただきますが,理由は江部先生は私よりちょっと年上だからです。私より年上ということは,私より先に死ぬ確率が高いということです。
彼は糖尿病をこの世から消滅させるという偉業に挑戦しています。彼の偉業は世の中の賞賛を浴びるのにふさわしいものです。だからこそ,江部先生は生きている間に勝利の栄冠を掴み,日本医学界が彼の業績を称える栄光に包まれるべきなのです。そのためには,彼に残された時間はせいぜい20年かそこらでしょう。だから私は,(自分の業績の宣伝はさておき)糖質制限について取り上げ,江部先生を紹介しているのです。全ては,江部先生が生きているうちに賞賛に包まれる様子を見たいから勝手連的サポーター役にしゃしゃり出ているだけです。
な~んて書いていますが,この文章を読んで江部先生はさぞかし苦笑なさっていることでしょう。その様子が目に浮かびます。
江部先生,勝利の日までお互い長生きしましょうね。生きているうちに,「ほうら,俺が昔から言っていた通りだったろう? 世の中が見事にひっくり返っただろう」 って言いましょう。死んでから 「江部先生って本当にすごい人だったんだ」 って誉められても,多分,嬉しくないもん。】
夏井睦先生、過分で過激なエールをありがとうございます(笑)
仰有るとおり、苦笑いしています。
それでも、誉められると、やっぱり嬉しいです。
あと20年ですか? (=_=;) (^^)
何だか、万一私のほうが夏井先生より長生きしたらバチがあたりそうなので、長生きを心掛けますが、夏井先生よりは年功序列で先に逝って、待つように努力?します。 (^_^)
それでも「目指せ、日野原重明先生」で、
長生きしすぎたらすいません。 m(_ _)m
夏井先生の
新しい創傷治療 「消毒とガーゼ」撲滅を目指して
http://www.wound-treatment.jp/
湿潤療法も、画期的な治療法です。
傷の消毒という100年以上続いた呪いのような医療機関の悪習慣を、一刀両断にした功績は、日本医学界がおおいに称えて然るべきです。
患者さんも消毒とガーゼという、大変な苦痛を伴う誤った治療法から解放されて、実践した人(私も含めて)は快哉を叫んでいます。
『傷はぜったい消毒するな』(夏井睦著、光文社新書,2009年) を初めて読んだ時は、目から鱗が落ちました。
例えば
「大腸癌で開腹手術して、病変を取り除き、腸を端々吻合して腹を閉じて、皮膚を縫合して終了。術後、皮膚は毎日消毒しますが、大便が通過し、細菌だらけの大腸粘膜は消毒などできません。しかし大腸を端々吻合した部位が感染することはありません。」
というくだり(正確な文章ではなく記憶で書いている要約です)は、大変わかりやすく即座に消毒の無意味さが理解できました。
夏井睦先生、鳥谷部俊一先生、ご両名は、日本医学界に燦然と輝く星であり、創傷治療を根本から変えた医療革命ともいえる功績を残された偉人といえるでしょう。
私、ご両名を、まじで掛け値無しに、尊敬してますので。
今度は、夏井先生が、苦笑いされている様子が目に浮かびます。(⌒o⌒)v
夏井睦先生、夏井バージョンの「糖質制限本」とても楽しみに待っていますよ。
江部康二