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三原糖尿病治療学術講演会 ~低炭水化物療法は、是か非か?~ ご報告
おはようございます。

2012年8月30日(木)18:30から三原市の興生総合病院で、

第一回三原糖尿病治療学術講演会 ~低炭水化物療法は、是か非か?~

が開催されました。

まず、興生総合病院の日本糖尿病療養指導士の東森恵先生の講演

「当院における食事療法の現状と問題」

があり、そのあと私が

「糖尿病に対する糖質制限食の有効性・安全性」

と題して1時間講演しました。

三原市・尾道市・福山市などから、医師.栄養士.看護師約120名の参加者で立ち見がでる盛況でした。

質疑応答も相次いで、熱気にあふれる会でした。

座長は興生総合病院心臓血管センター長の平井章三先生でした。

平井先生によれば、循環器専門医の間では、すでに糖質制限食がブームだそうです。

先生ご自身、異形狭心症(動脈硬化はないのに血管のれん縮で生じる狭心症)の患者さんに、数種類の投薬をしてもうまくいかないとき、糖質制限食を導入すると、薬を減らしても発作がなくなるそうです。

異形狭心症の患者さんの食後の血糖値とインスリンを測定してみるとインスリンが100μU/mlとか大量に追加分泌されている人がおられるそうです。(基礎分泌インスリン:1.7~10.4μU/ml)

このような場合、3~4時間後に急速に血糖値が下降して、そのようなときに冠動脈のれん縮が生じる可能性があります。

それが糖質制限食で防げるということと思います。

私も初めて知りました。

大変勉強になりました。
平井章三先生ありがとうございました。

NHKのクローズアップ現代(糖尿病学会よりの内容?)は、講演のため見ることができませんでした。

しかし、このように糖尿病学会の関知しないところで、循環器専門医や脳卒中専門医には糖質制限食が確実に浸透しています。

嬉しいことです。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
読売新聞記事への反論③ やはり新聞読者の誤解が生じていた。
こんにちは。

rakko さんとR・パーカーさんから

2012.8.26の読売新聞の記事をみて、

『2年間しか糖質制限をしてはいけないんだと思ってしまいました。』
『2年以上続けると危険なのかなあ・・と素直に(笑)受けとってしまいました。』

とのコメントをいただきました。

rakko さんとR・パーカーさん、ありがとうございます。

やはり新聞読者の誤解が生じていたのですね。

米国糖尿病学会2011年の栄養勧告は、有益性の保証期間を2年としていますが、それ以上は危険と言っているわけではありません。

過去の論文の考察により、2年間までは保証しますが、それ以上はデータがないのでわかりませんという姿勢です。

実はカロリー制限食(高糖質食)に関しても、2~3年以上経過観察したRCT研究論文のデータはほとんどありません。

長期安全性がわからないという意味では、糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食)は同等です。

それなのに糖質制限食だけが危険と誤解させる記事は、著しくアンフェアです。

読売新聞の記者さんは、あの記事により、現実に読者に誤解を生じさせているわけですから、是非反省して欲しいです。


江部康二


【12/08/29 rakko
こんにちは
いつもブログを拝見させていただいております。
我が家は読売新聞を読んでいます。日曜日の糖質制限のページを見て、2年間しか糖質制限をしてはいけないんだと思ってしまいました。でも今日のブログを読ませていただいて、ホッと安堵いたしました。ありがとうございます。】



【12/08/29 R・パーカー
該当記事を読みました。
はじめまして。
当日該当記事を読みました。江部先生の危惧どおり、糖質制限を知ったばかりの私は「2年以上続けると危険なのかなあ・・」と素直に(笑)受けとってしまいました。
あいだに入る人によって第三者に伝わる情報は如何様にもなる。
ホントにこわいですね・・

まあ結果その記事を読んだことで、その足で江部先生の著書をすぐネット注文することになったのですから、私にとってはよかったのかもしれませんが(笑)

私事になりますが、実母のガンの闘病生活、長年の実父の糖尿病の闘病生活をみてきて、玄米菜食はもとよりいろいろ我が身をもって試しつづけ、(私はそのおかげで?プラス酒たばこ一切やらず、メタボ知らずの健康体・・のはず)食事の節制の仕方や通説の理論、お医者の指示など、そのことに少し入り込んで勉強するといろいろ腑に落ちない点が出てきて、なんかおかしいなあ、と常々思い続けてきました。

それが江部先生の著書を読んでホントにスッキリ納得!

いろいろ考えてきたことがまさしくテトリスのように組みあわさって、自分の中で積み上げてきた理論がキレイに統合された気がします。

とりあえず自分で試さないと気が済まないたちなので、昨日からスーパーではじめています。元々脂肪が殆ど無い体質なので、脂質を少し多めに取らないと、ですかね。

とりあえず、 先ずはありがとうございました。

これからブログ読ませていただきます。

よろしくお願い致します。】


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
読売新聞記事への反論② 米国糖尿病学会が糖質制限食を推奨
こんにちは。

2012.8.26の読売新聞朝刊記事への反論②です。

2012.8.26の読売新聞記事

『糖質制限食の考え方・・・・・米国糖尿病学会は08年、食事療法の一つとして認めている。
・・・・・・米国糖尿病学会も2年を限度とし、・・・・・・』


2007年までの米国糖尿病学会の栄養勧告では、炭水化物を1日130g以下に制限することは推奨できないと、明確に糖質制限食に対して否定的な見解でした。

その後2008年の栄養勧告で、

「減量が望まれる糖尿病患者には低カロリー食、もしくは低炭水化物食によるダイエットが推奨される」

と、糖質制限食に対して、初の肯定的な見解が出されました。

2011年には有益性の保証期間が1年から2年に延びました。

そして2012年の最終最新の勧告でもこれを継承しています。

2008年に、ニューイングランドジャーナルに報告されたRCT研究論文(2年間の研究)DIRECT(*)などにより、2011年には、有益性の保証期間が1から2年に延長されたものと思います。

読売新聞の『米国糖尿病学会も2年を限度とし、・・・』という文言は、まるで糖質制限食を3年以上続けたら危険であるかのような誤解を新聞読者にもたらしますので、アンフェアです。

米国糖尿病学会2011年の栄養勧告は、有益性の保証期間を2年としていますが、それ以上は危険と言っているわけではありません。

過去の論文の考察により、2年間までは保証しますが、それ以上はデータがないのでわかりませんという姿勢です。

実はカロリー制限食(高糖質食)に関しても、2~3年以上経過観察したRCT研究論文のデータはほとんどないので、
長期安全性がわからないという意味では、糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食)は同等です。

読売新聞の、糖質制限食だけが長期安全性が確立していないという印象をもたらす文言は、明らかにフェアではありません。

ジャーナリストとしての自負がおありなら、もう少しニュートラルに記事を書いてほしいものです。


(*)ニューイングランドジャーナル(DIRECTという論文)
 Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet.
 NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
 糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、HbA1cを改善させた。
 2年間の研究。




江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
読売新聞記事への反論①ケトン体について
こんにちは。

2012.8.26(日)読売新聞朝刊記事への反論①です。

2012.8.26(日)読売新聞記事

『・・・ところが06年、極端な糖質制限によって、脂肪が分解されてできるケトン体という物質が血中に増えすぎ、危険が状態に陥ったとする報告が海外で相次いだ・・・』


「Dr. Atkins Diet Revolution」が出版されたのは1970年代初頭です。

今が2012年です。

約40年にわたり世界中で、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)が行われてきました。

アトキンスダイエットを実践した人は、世界中で数十万人以上、或いは100万人以上はいるでしょう。

アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)で生じるケトン体上昇は、インンスリン作用がある限り生理的なもので正常です。

この間、アトキンスダイエットでケトアシドーシスを生じたという論文は

2006年1月に、ニューイングランドジャーナルに1例報告
2006年7月に、ランセットに1例報告です。

40年間で、この2つだけです。

この2つだけの論文報告に対して「相次いだ」という表現は、新聞読者に誤解を生むもので、是非正確な表現で、訂正記事をだしてほしいと思います。

40年間で、わずか2例で、しかも2006年だけです。

極めてまれな事象であり、決して、相次いではいません。

上述のランセットの論文には

「アトキンスダイエットで健康な成人に生命の危険のあるケトアシドーシスを生じたという論文報告は今までない。」

という記載があります。

ランセットの論文は、アトキンスダイエットで生理的ケトーシスがあった人(40才白人女性・肥満)が、たまたま胃腸疾患で嘔吐を数日繰り返して食事摂取もできず、脱水となり、脱水のためにアシドーシスが生じたと考えられ、短期間で回復しています。

ニューイングランドジャーナルの論文は、同じ人(51才白人女性・肥満)が4回もケトアシドーシスを起こしており、何らかの代謝異常が背景にある可能性があります。

すなわち、ケトン体を上手く利用できない、極めてまれな特殊な体質であった可能性があります。

極めてまれではありますが、ケトン代謝に異常がある人があり、この場合はアトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)の適応となりません。

このように、アトキンスダイエット(スーパー糖質制限食)実践中のケトアシドーシスの報告は、全世界で2例です。

しかも、私見ではありますが、脱水によるアシドーシスの例と特殊体質による例です。

これに対して、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)による糖尿病ケトアシドーシスは、相次いだどころではありません。年余にわたり多発しています。

今でも日本中でペットボトル症候群で救急車で運ばれる人は後を絶ちません。

ペットボトル症候群は、決してまれな病気ではなく、日常診療で遭遇する病気です。

日本だけでも少なくとも過去、数千人以上は報告されていて、中には死亡例もあります。

ペットボトル症候群の元凶は、ほとんどにおいて液体の糖質であり、タンパク質・脂質は無関係です。

すなわち糖質摂取以外では決して起こりえない重症な病態がペットボトル症候群です。

こちらは、病理的なケトン体上昇で、インスリン作用の欠落が必要条件です。

高糖質食と糖質制限食とどちらが危険なのか、火を見るよりも明らかですね。


(☆)
Ketoacidosis during a Low-Carbohydrate Diet.
N Engl J Med  2006; 354:97-98 January 5

(☆☆)
A life-threatening complication of Atkins diet
Lancet July 2006;367:958

江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
NHKゆうどきネットワークのレポート
北九州三島さんから2012年8月27日(月)に放映された「NHKゆうどきネットワーク」のレポートをいただきました。

三島さん、ありがとうございます。

糖質制限食とダイエットの企画で、好意的な流れだったようです。

関西では放映されなかったので、とてもありがたいです。


江部康二


12/08/28 北九州 三島
ゆうどき レポート
NHK・ゆうどきネットワーク・2012.8.27.17:05~
「そこが知りたい糖質制限ダイエット」レポート

●プロローグ
カット商品⇒ハルディンの宮本さん⇒梅花⇒江部先生⇒町の人

●三大栄養素の説明
糖質=ごはん、麺類、ジャガイモ、砂糖、蜂蜜
蛋白質=肉
脂質=バター
<ポイント>お腹いっぱい食べても痩せられる、糖尿病治療として始まる
<どうすればいい・どのくらい>不安に答える
●スペイン料理「ハルディン」宮本永一さん、40歳、
1年で、-13kg、176cm、65kg、14%=理想的体型、腰痛が楽になった
(以前は、78kg、24%、足が痛い、調子が悪い)
朝:冷や奴、納豆、ハムエッグ、ごはん半分(以前の4分の1以下)
3時:皮つき鶏肉、鰹たたきサラダ、ラタトーユ *カロリーたっぷり
夜10時:糖質オフビール、サラダステーキ200g、アボカド、パプリカ・茄子炒め
*運動⇒リカバー⇒食欲⇒太る
●高雄病院、江部康二医師
インスリンは、肥満ホルモン、
ぶどう糖⇒インスリン⇒細胞に脂肪として蓄積⇒肥満、糖尿病
見渡せば糖質・過剰に摂取・生活習慣病
●北里病院・山田悟医師
<楽しく続けられる糖尿病治療>
従来のカロリー制限はお腹がすく
糖質制限は一つの治療法
スタイルを良くするとは限らない
目安:糖質20~40%/1食
<効果・安全性>
パン6枚切りの半分、ご飯2分の1
蛋白質はエネルギーとして消費される、満腹感がある、相対的に摂取が減る
<向かない人>
自己判断でせず、主治医に相談
腎臓病、妊婦、子どもはエビデンスがないので
●新宿・小池弘人医師
秘訣① 食生活を洗い出す
1週間分の食事を☑、日本酒・おそば・小麦・米はNG~蛍光ペンで塗ると真っ赤
秘訣② 隠れ糖質を☑
NG:カレー(ジャガイモ・玉ねぎ・人参・ルーの小麦粉)
OK:ハンバーグ(玉ねぎ無し・卵・パン粉・おろし醤油)
③おやつはがまん
NG:チョコ、ケーキ
OK:ナッツ、チーズ
◎糖質制限レストラン、ケーキ屋さんが増えている
◎スーパーで糖質オフ砂糖(人工甘味料?)を販売
NG:くだもの、かぼちゃ、トマト、まめ(ソラマメ、あずき)、根菜
OK:大豆、葉物
NG:醸造酒(ビール、日本酒)
OK:ワイン1~2杯、蒸留(焼酎、ウィスキー)
◎全体量を把握、バランス、食べ過ぎず
●大柳珠美さん
<豆腐で親子丼、牛丼…。>
豆腐をタオルに包んで、1~2時間、冷蔵庫へ(水分を抜く)
ボールに入れて、へらでつぶす、レンジで温める
ご飯の食感が出る、糖質1.8g(ご飯の30分の1)
<お好み焼き>
豆腐をへらでペーストに、野菜、チーズでまとめる
ソース1(糖質30%も):醤油1
糖質70%オフ

ポイント:根菜を葉物にすることでビタミンは摂れる
ポイント:1~2週間で減量を実感
ポイント:糖質を脂質に置き換える、中性脂肪が下がる、魚+オリーブオイルの料理
ポイント:旅行では食事を楽しむ、しかし、お米は控える
ポイント:効果における性差はなし
ポイント:野菜ジュース、かぼちゃなど女性が好む“隠れ糖質”を見極める


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
医師が糖尿人に高糖質食を勧めるのは、理論的にも倫理的にも問題。
こんにちは。

2012年8月26日(日)の読売新聞に、糖質制限ブームという記事が掲載されました。

その中で、効果と問題点という表がありました。

この問題点に関しては、

「信頼度の低いコホート論文の報告を検証せずに一方的に取り上げていることと一部事実誤認」

「ケトン体の論文に関して、一部事実誤認」

「ストレスホルモンに関しても一部事実誤認」

がありますので、適宜本ブログ記事で反論します。

今回は、

「20年・30年後の動脈硬化や発ガンリスクの問題は、糖質制限食に関してもカロリー制限食(高糖質食)に関しても、いずれも長期間の安全性に関するエビデンスはない」

という事実をもとに、

「今ここにある危機」として、カロリー制限食(高糖質食)の問題点について、理論的・倫理的に考察してみます。


1) 
必須アミノ酸、必須脂肪酸はあるが、必須糖質はない。→生理学的事実

2) 
血糖値を上げるのは糖質だけで、脂質・タンパク質は上げない。
→生理学的事実

3) 
食後高血糖と平均血糖変動幅の増大が酸化ストレスの大きなリスクである。→エビデンスあり
すなわち、これらは動脈硬化の大きなリスクである。→エビデンスあり
高血糖・動脈硬化は糖尿病合併症の大きなリスクである。→エビデンスあり

4) 
食後高血糖を生じ、平均血糖変動幅を増大させるのは糖質だけである。
→生理学的事実
タンパク質・脂質は食後高血糖を生じず、平均血糖変動幅を増大させない。
→生理学的事実


1)2)3)4)を考慮すれば、

医師が糖尿人に高糖質食を勧めること自体が、理論的に破綻しています。

食後高血糖を必ず生じる高糖質食を糖尿人に勧めるのは倫理的にも、おおいに問題です。

そして医師が、糖尿人にカロリー制限食(高糖質食)をどうしても勧めたいなら、
1)2)3)4)を説明した上で、その勧める根拠を示すのが、倫理面から考えても当然と思います。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
スーパー糖質制限食とエビデンスと理論

【12/08/25 山西

脂肪摂取と大腸がん

開業医ですがいつも興味をもってブログを拝読させていただいています。糖質制限について大腸がんなどの発生率は個人的には最も関心のあるテーマです。

以前に同じ質問をさせていただきましたがまだ十分納得出来るとは正直申し上げれない心境です。

疫学や栄養学の分野では薬剤効果を検討する論文のように比較条件をマッチングさせて明快に結論がでるようなデザインでまとめることは困難のように思えます。

今回先生が紹介されたJAMAの文献は先生の著書でも取り上げられていますが脂肪制限と糖質制限の結果生じる脂肪過剰摂取とでは同列には比較検討できないように思えます。

スパー糖質制限していたイヌイット人の話でも彼らの平均寿命、死亡原因疾患内容にもし大きな違いがあれば母集団として比較することは困難と思います。

たとえばイヌイットの平均寿命がとても短いならそれだけで癌発生率は低くなってしまいます。 癌や動脈硬化疾患への影響についてすっきりしたデータが出ることを切望しています 

多くのブログ読書がそうであるのと同様に糖質制限食が糖尿病治療に革命を起こしていると思っており心から今後の普及発展を期待して止みません。】



こんにちは。

山西先生から、糖質制限食の長期安全性についてコメントをいただきました。

山西 先生、ありがとうございます。

2012.8.25の記事のJAMAの論文は、

「脂肪摂取比率30数%のグループと20%のグループの比較で優位差なし」です。

大腸ガン・乳ガン・心血管疾患全て優位差なしです。

スーパー糖質制限食なら、脂肪摂取比率50~60%ですから、そのような集団を長期に追跡した論文は存在しませんので、ご指摘どおり、スーパー糖質制限食の長期的安全性に関するエビデンスはありません。

一方、脂肪を20%まで厳格に制限しても、少なくとも大腸ガン・乳ガン・心血管疾患に関しては無意味というエビデンスはあると言えます。

またカロリー制限食(高糖質食)の長期的安全性・有効性に関しても、エビデンスはありません。

「癌や動脈硬化疾患への影響についてすっきりしたデータが出ることを切望しています。」

ご指摘のように、食事療法の長期間のRCT研究論文は極めて困難です。

また、コホート研究は参考になりますが、一定のバイアスが入ることは否めません。

従いまして、エビデンス的にすっきりは、今後も極めて困難と思います。

論文による信頼できるエビデンスが期待できない以上は、理論的に考えることが最善と思います。

私自身は、

1)過去エビデンスがある血液検査の動脈硬化のリスク要因が、スーパー糖質制限食で全て改善する。

2)発ガンの大きな要因としてエビデンスがある高血糖と高インスリン血症が、スーパー糖質制限食で改善する。

3)発ガン予防のエビデンスがあるHDL-コレステロールが、スーパー糖質制限食で上昇する。

スーパー糖質制限食実践により、1)2)3)の利点があります。

他の、どのような食事療法も1)2)3)の利点をクリアすることは不可能です。

例えば糖質を摂取すれば、高血糖と高インスリン血症を生じ、HDL-コレステロールは減少し、中性脂肪は増加します。

理論的にこれほど明白な利点があるので、私は迷うことなく、2002年から2012年まで足かけ11年
スーパー糖質制限食を実践していますし、患者さんにも勧めています。

私は医師であり糖尿人でもありますが、食後高血糖を必ず生じるカロリー制限食(高糖質食)を糖尿病患者さんに勧めることは、倫理的な観点から見てもとてもできません。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
スーパー糖質制限食で血糖値改善・・・亜急性甲状腺炎の影響は?
こんにちは。

解決ZERO さんから、スーパー糖質制限食で血糖値改善という嬉しいコメントを頂きました。


【12/08/25 解決ZERO

”スーパー制限食”実感してます

先日、“光明が見えてきました”と投稿しましたが、スーパー制限食の効を実感しております。

6月にスタンダードからスーパー制限食に変更しましたが、変更と同時くらいに亜急性甲状腺炎を発症してしまい2ヶ月強の間結果が出ずにいました。

甲状腺炎の回復と共にスーパー制限食の効果が顕著になってきました。

今月で糖尿人となって22年目となりましたが、長年酷使した膵臓にも効果が現れてきたのです。

現在、就寝前レベミル6単位、朝食後ジャヌビア1錠を服用しています。

甲状腺炎発症後
早朝空腹時 130~150
食後1時間 160~180
食後2時間 150~160
最近は
早朝空腹時 85~105
食後1時間 140~160
食後2時間 120~150
(体調や食事の内容、仕事量によってこの範囲を逸脱することは有ります)

こんな感じになってきました、恐るべし甲状腺ホルモン!!

また、昼食や夕食前の血糖値も90~110前後となってきています。

9月初旬に血液検査を予定しているので楽しみです。

ちなみに、今日の変化です

早朝空腹時   84
朝食後1時間 145
昼食前     88
食後1時間  113
食後2時間  128
夕食前    105
食後1時間  116(値が低すぎで若干?)

先生の著書やブログでも、糖尿人にはスーパーがおすすめと有りますが本当にお勧めですね。

最初の半年をスタンダード制限食で過ごしたことが残念に思えてきたこの頃です。

糖質制限食のに出会えた事に感謝し、この輪が大きく広がる事を祈念しております。】


解決ZERO  さん。
コメントありがとうございます。

亜急性甲状腺炎で甲状腺ホルモンの血中濃度が上昇すると血糖値も上昇してますね。

亜急性甲状腺炎が回復すると、空腹時血糖値が、45mgくらい改善して85~105mg
食後血糖値も、20~30mg改善ですね。

仰る通り、甲状腺ホルモン恐るべしです。

亜急性甲状腺炎回復後のデータなら、糖尿人のコントロール目標を完全クリアですね。

レベミル6単位と少量なのも好ましいです。

「レベミル+ジャヌビア」も良い組み合わせです。

このまま、美味しく楽しくスーパー糖質制限食で、コントロール優秀を保ってくださいね。



糖尿病合併症予防のための糖尿人の目標

① 空腹時血糖値110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値140mg/dl未満
③ 食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c(NGSP値)6.9%未満→さらには6.2%未満



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
大腸ガンと脂肪摂取は無関係。JAMA論文、エビデンスあり。
おはようございます。

消化器医さんから、大腸ガンと脂肪摂取についてコメント・質問をいただきました。


【12/08/24 消化器医
大腸がんと脂肪摂取

江部先生初めまして。

私は内科開業医です。専門は消化器科ですが勤務医の頃から糖尿病の患者さんの診療も多くおこなってきました。従来の食事療法、薬物療法では入院させれば一過性にデータは良くなるものの半年もすればまた元通り、ということの繰り返しでした。また糖尿病患者さんの薬の多さ、高価さにも辟易していました。

先日、糖尿病学会の門脇理事長が糖質制限食が危険であるという声明を発表し、ニュースになりましたね。私は逆にこのニュースで糖質制限食に興味を持ち先生の「主食を抜けば糖尿病は良くなる」をさっそく読んでみました。まったく理に適っている治療法であると思いました。

さて、一部のドクターから脂肪摂取と大腸癌の発生について懸念が寄せられています。

曰く、戦後食生活が欧米化し脂肪摂取が多くなったので日本人の大腸癌が多くなった、という説です。日本人全体の食生活の変化と大腸癌の発生率を比較しただけで、一定のグループについて調査したわけでもなく研究とも言えない説だと思いますが。

数年前、国立がんセンターがコホート調査をおこない、食物線維やEPA、DHAには大腸癌を防ぐ作用はないという発表はありましたが脂肪摂取は項目に入っていないようです。私の探した中では脂肪摂取と大腸癌との相関関係を研究したちゃんとした論文は見つかりません。

医師として患者さんに糖質制限食を強くプッシュするには多少の引っかかりを感ずる点です。

江部先生はこの説についてどうお考えでしょうか。

私の仮説ですが、脂質摂取が発癌と比例するのは脂質の中でもトランス脂肪酸の摂取が増えたからではないかと考えています。】


消化器医さん。

糖質制限食が理にかなった治療法というコメント、ありがとうございます。

ご質問の件ですが、確かに脂肪悪玉説が、戦後、先進国を席巻して、「大腸ガン、乳ガン、心筋梗塞などの元凶は脂肪摂取過剰である。」という(根拠のない)定説がまことしやかに信じられてきたと思います。

これに対して、大変興味深い研究結果が発表されました。

米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において

「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」

という報告がなされたのです。

米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威有る医学雑誌です。

RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも信頼度が高いです。

5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。

高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。

2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。

残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。

平均的米国女性に対して、約半分近くまで、脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。

研究をデザインした医師は、

「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる=脂肪悪玉説」

という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。

すなわち、

「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」

と信じてこのRCTを開始したと考えられます。

ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。

これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。

結論です。

『5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。』

ということになります。

脂肪悪玉説を根底から覆す良質の信頼度の高いエビデンスですね。


*Journal of American Medical Association(JAMA)誌
2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告。

*Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer
  Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease
  : The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial
JAMA ,295(6):629-642.  643-654. 655-666.



江部康二

テーマ:糖尿病
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志太医師会 糖質制限食・学術講演会 ご報告
こんにちは。

2012年8月23日(木)19:00~20:30 まで、静岡県 志太医師会 学術講演会 が開催されて、

糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か? ~糖尿病治療の新しい潮流~

と題して、糖質制限食のお話しをしてきました。

医師・栄養士が約30人参加され、講演、質疑応答・・・懇親会とおおいに盛り上がりました。

すでに糖質制限食を実践し、ダイエットに成功された医師もおられました。

志太医師会学術担当理事の丹羽弘之先生が、今回の企画を担当され、私を招聘していただきました。

丹羽先生は、糖質制限食実践で15kgの減量に成功されて、学生時代の体型に戻られたそうです。

懇親会では、糖質制限なおかずをたっぷりと焼酎の水割りを少々飲みました。

懇親会でもたっぷり時間をとって、糖質制限食の話が尽きませんでした。

講演のたびに、糖質制限食に理解のある医師がどんどん増えていき、嬉しい限りです。

夜遅くなるのは想定範囲内ということで、この日は、23:24着の新幹線で名古屋駅へ。

そのまま名古屋駅の階上のマリオットアソシアホテルに泊まりました。

翌、8月24日(金)は名古屋から朝帰りで江部診療所に出勤しました。

最後になりましたが、丹羽弘之先生、学術講演会に招聘いただきありがとうございました。

藤枝市在住の糖尿人、メタボ人の皆さん、糖質制限食のことならまずは、丹羽弘之先生とご相談くださいね。

にわ医院   丹羽 弘之 先生
内科・胃腸科・循環器科・呼吸器科・アレルギー科
静岡県藤枝市藤岡1-15-11
電話:054-645-2800



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」 25000部に
おはようございます。

おかげさまで最近、アマゾンで

腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」(ソフトバンククリエイティブ、2011年6月)

が、よく売れています。

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2012年8月現在、第5刷で25,000部となりました。

この本に関する校正があるので、下記に列記します。

人類の歴史を、かつて400万年としてきましたが、「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社、2011年11月)からは、700万年と変えました。主としてこの事に関する校正です。


A)
134ページ 6属21種→7属23種
135ページ 400万年→700万年
139ページ 400万年→700万年
140ページ 4000年→1万から7000年
141ページ 4000年→1万年       
       400万年→700万年     
       1000分の1→700分の1
145ページ 400万年→700万年
147ページ 約399→約700
148ページ 399→700
154ページ 399→700
156ページ 399→700
191ページ 400万年→700万年
       4000年→1万年
       400万→700万
192ページ  1000分の1→700分の1


B)
51ページの<カロリーが尿と呼気で排泄される>の項目ですが高比良英雄博士の「断食研究」(岩波書店)昭和4年を調べたら、ケトン体の尿中排泄はあるのですが、思ったより極少ないのです。

一方、糖質制限食で食事誘発熱産生(特異動的作用)が増加することがわかりました。

食事誘発熱産生(特異動的作用)が増加すると消費エネルギーが増加するのでダイエット効果があります。

この変更は、やはり「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社、2011年11月)からです。

この校正は、現在検討中ですが、難しいかもしれません。

腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」を、ご購入頂いた方は、この点もご留意いただけば幸いです。



江部康二


以下は、腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」の後書きの抜粋です。


本書で提唱する糖質制限食ダイエット、キーワードは「糖質制限」だけで、あと面倒なカロリー計算などは不要です。あんまり簡単なので「ずぼらダイエット」と呼ばれることもあります。

「簡単なのはいいけれど糖質を食べなかったら低血糖になりはしませんか?」と突っ込みが入りそうですが、肝臓の「糖新生」でいつでもブドウ糖をつくっているので低血糖にはならず、全く問題はありません。
 
さて、初めて糖質制限食の内容を知ったとき、多くの人はきっとびっくりされたことでしょう。

「脂肪はしっかり摂取していいので、糖質だけは減らそう」

という糖質制限食の基本スタンスは、従来のダイエットの常識である「脂肪制限」とは、真っ向から対立するものだからです。

実は私も兄、江部洋一郎院長(当時)が、1999年に高雄病院に初めて糖質制限食を導入したときは、非常識でとんでもない代物と無視していました。

常識の壁は高く厚いものであり、私だけでなく3人いる管理栄養士も同様の対応でした。

そんなとき2001年に私の糖尿病患者さんが血糖値560mg/dl、HbA1c14.5%という重症で入院され、通常のカロリー制限食で1週間経過しても食後血糖値は400mg/dl以上と、あまり改善がありませんでした。

そこでものは試しにと、糖質制限食を導入したところ、食後血糖値はその日から180mg/dlを超えることはなくなり、劇的な改善をみました。内服薬もインスリン注射もまったくなしで、3ヶ月後にはHbA1c6.2%となりました。

この糖質制限食第一号患者さんを経験した後は、目から鱗が落ちた思いで、糖質制限食を研究することになりました。

その後、2002年に自分自身が糖尿病と発覚してから、さらに徹底的に勉強し、糖質制限食は糖尿病だけでなく、肥満やメタボリック・シンドロームを始めとして、様々な生活習慣病に効果があることを多くの症例を経験して確信しました。

糖質制限食というと変わった食事というイメージですが、実は人類本来の自然な食事、人類の健康食なのです。

人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが約400万年前です。

その後、7属23種の人類が栄枯盛衰・進化を繰り返し、現在残っているのは、現世人類(ホモ・サピエンス)だけです。

この間農耕が始まるまでの700万年間は、生業は狩猟・採集で、全ての人類が糖質制限食でした。

このように人類の栄養・代謝・生理すべて糖質制限食に適応するように進化してきていますし、勿論妊娠・出産・子育て・日常生活も糖質制限食の中で行われてきました。

農耕が始まり定着して最近の約10000年間だけが、主食が穀物(糖質)へと変化しました。

即ち穀物(糖質)を主食としたのは、人類の歴史の中でわずか1/700の期間に過ぎないのです。

糖質制限食と高糖質食、どちらが人類にとって自然な食事なのかはいうまでもありません。

糖質制限食という人類の本来の食事、人類の健康食を実践することで、肥満や糖尿病やメタボといった様々な生活習慣病が改善するのもむべなるかなです。
 
本書が読者の皆さんの、肥満解消そして健康に役立てば幸いです。

江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食1年と8ヶ月、コントロール良好、ケトン体の評価は?
おはようございます。

Yamamoto _ma さん から、糖質制限食1年と8ヶ月、現在HbA1c 5.5%(NGSP値) 空腹時血糖値107mg/dl
コントロール良好というコメントをいただきました。

【12/08/18 Yamamoto _ma
ケトン血症・脱水?
糖質制限食を開始して1年と8カ月となりました。
 
血糖のコントロールは良好で、現在HbA1c 5.5(5.1) 空腹時血糖値107です。
江部先生には感謝感謝です。

ここ半年、歳も歳(65)で認知症予防のためケトン体(3-ヒドロキシ酪酸)の量を増加させたいと意図しまして、糖質制限をしながら脂肪の摂取をかなり増やした食生活にしました。

一日オリーブオイル大サジ4杯ぐらい、アボガド半個、チーズ30g 脂身の豚肉150gまたは牛肉、近頃多く出回ってる安いサーモン、野菜、果物少々の内容です。

肉の脂身は安全という日本脂質栄養学会を信じております。 これが旨いのですよね(笑)

で、先日の検査でこちらからのオプションとしてケトン体の数値とCペプタイド-1 を検査してもらうことにしました。

で、結果は・・・

総ケトン体    2140MMOL/L
アセト酢酸     200MMOL/L
3ヒドロキシ酪酸    1940MMOL/L
C-ペプチド       0.8

とあいなりました。

まあ、DMですので0.8はしかたないでしょう。

ケトン体に関してはまあまあいい線行ってるじゃない!って気分で喜んでおります。

この高脂肪食、高カロリー食で、なんと体重3kg減となりました。長い階段なんのその、スイスイ登れます。体調絶好調です。

ここで問題が発生しました。

主治医が上記結果を見て、あたふたした様子で、他の先生にも相談しますが、「医者として責任持てません」と怒り始めました。糖質制限食は全く理解してないのは承知しておりましたが、これ以上この医師と付き合っても、なんだかこちらが医師をからっかているようで、申し訳なくどうしようか悩みどこなのです。

ところで、門脇理事長の言うケトン血症・脱水というのは何んのことなんでしょうかねぇ。】


Yamamoto _ma さん。
糖尿病はコントロール良好を超えて、正常値でコントロール優秀ですね。(⌒o⌒)v

総ケトン体    2140MMOL/L
アセト酢酸     200MMOL/L
3ヒドロキシ酪酸    1940MMOL/L


ケトン体の数値も素晴らしいデータです。 (^_^)

スーパー糖質制限食をきっちりやっておられるのですね。

Yamamoto _ma さんのケトン体の数値は、農耕開始以前の700万年間の、人類のご先祖のデータと同じと思います。

インスリン作用があるときは、ケトン体の上昇は生理的なもので、まったく正常であり、何の問題もありません。

例えば、絶食療法とかスーパー糖質制限食とかケトン食療法を実践中は、ケトン体値は、Yamamoto _ma さんと同様の数値となります。

この「生理的ケトン体高値」という状態に対して「病理的ケトン体高値」という病態があります。

門脇理事長は、「病理的ケトン体高値」のことを懸念しておられるのだと思います。

しかし、スーパー糖質制限食で生じるのは前述の如く「生理的ケトン体高値」であり、「病理的ケトン体高値」は生じません。このことを、混同され誤解しておられるものと思います。

病理的ケトン体高値というのは、「糖尿病ケトアシドーシス」がほとんどです。

こちらはインスリン作用が欠落した重症糖尿病例においてのみ発症する病態で、生命の危険があります。

Yamamoto _ma さんの主治医は、この「糖尿病ケトアシドーシス」と、誤解されて狼狽えられたのだと思います。

なお、脱水云々に関しては、そもそもスーパー糖質制限食とは無関係の話です。

スーパー糖質制限食を実践して普通に水を飲んでいたら、脱水になどなりません。

2012年08月02日 (木)の本ブログ記事

「日本糖尿病学会・門脇理事長の糖質制限食批判(読売新聞)への反論」

もご参照いただけば幸いです。



江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
根拠のない栄養指導から脱却、そして湿潤療法成功
こんばんは。

バルタンさんから、根拠のない栄養指導から脱却して、糖質制限食で血糖値が改善、そしてひどいヤケドに湿潤療法成功で、痛みもなく完治という嬉しいコメントをいただきました。


【12/08/18 バルタン

はじめまして。バルタンと申します。

今年春の健康診断でバセドウと空腹時血糖値が高いことがわかり、バセドウはメルカゾール服用、血糖値が高い点については糖尿病と診断され、栄養指導を受けました。

当時の空腹時血糖値は117で、栄養指導後一ヶ月の随時血糖値は300になっておりました(食後1時間)。

最初に栄養指導で炭水化物をしっかり摂るよう指導されましたが、病院の主催する糖尿病教室では、糖分摂取により血糖値が上がると説明されて訳がわからなくなりました。だったらなぜ栄養指導で炭水化物を食べろと言われるのか。質問して見たところ、私の場合は痩せる必要がないから食事のバランスの方が大事なのだと言われました。(身長156cm 体重48kg当時)

結局糖尿病の仕組みの説明と栄養指導の根拠のなさにあきれて自分でネットで調べ始めたところこちらのブログにたどり着きました。

一通り読ませていただき、我流糖質制限を続けたところ、前回の検査では随時血糖値は130に下がりました。メルカゾールのおかげか、バセドウの状態もすこし良くなりました。さらに、体重は48kgから46kgに落ちました。
栄養指導の根拠が見いだせなかったのは、炭水化物をしっかり食べろということに根拠がなかったのだと実感いたしました。

そんなわけで、先生にとても感謝しております。また、疑問に思ったことは徹底的に調べるべきだとも実感いたしました。 ありがとうございます。

余談になりますが、以前指にひどいヤケドをいたしました。皮がべろりと剥けるほどの状態でしたが、湿潤療法の病院で治療いただきましたところ、全く跡も残らず完治いたしました。病院に行くまでは痛みが酷かったのですが、体温と同じ温度(これがとても重要)のぬるま湯で患部を洗い、剝けた皮膚を取り除いてワセリンを塗ったら痛みがなくなりました。その後一度も痛みませんでした。参考までに書き添えさせていただきます。

今後も先生のブログを参考に糖質制限していこうと思います。】


バルタンさん。
コメントありがとうございます。

症状改善良かったです。

自分で考えることは、医師においても患者さんにおいても、大切なことですね。

糖尿病合併症は命に関わることです。

過去の常識のみに安住して、理論的に考えることを放棄した医師や栄養士は、患者さんに対して失礼と思います。

【最初に栄養指導で炭水化物をしっかり摂るよう指導されましたが、病院の主催する糖尿病教室では、糖分摂取により血糖値が上がると説明されて訳がわからなくなりました。だったらなぜ栄養指導で炭水化物を食べろと言われるのか。質問して見たところ、私の場合は痩せる必要がないから食事のバランスの方が大事なのだと言われました。(身長156cm 体重48kg当時)
結局糖尿病の仕組みの説明と栄養指導の根拠のなさにあきれて自分でネットで調べ始めたところこちらのブログにたどり着きました。】


素直でまっとうなご意見です。

あるていど糖質制限食の基本原理「糖質だけが血糖値を上げ、タンパク質・脂質は上げない」くらいは一般の病院の医師・栄養士も知識として浸透し始めているようです。

しかし、結局食事のバランスとか根拠のない理由で、糖質摂取を薦めるとはまことに残念です。

食後高血糖が、動脈硬化のリスク要因として最大級のリスクということには明白なエビデンスがあるのに、何故唯一、血糖値を上昇させる高糖質食を推奨するのか理解に苦しみます。

目を覚まして、自分自身の頭で、しっかり理論的に考えて欲しいものです。

また、湿潤療法成功、良かったですね。

夏井睦先生の提唱されている、湿潤療法(傷は絶対消毒するな)は、とても理論的な効果抜群の画期的治療法です。

毎日の更新履歴も面白いですよ。

最近は糖質制限食のお話もよくでてきて参考になりますのでブログ読者の皆さん、是非、覗いてみてくださいね。

夏井先生のホームページです。 
http://www.wound-treatment.jp/



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
主食をやめると健康になる - 糖質制限食で体質が変わる! 第6刷
こんばんは。

主食をやめると健康になる - 糖質制限食で体質が変わる!(ダイヤモンド社)

2011年11月から発売開始していますが、おかげさまで、順調な売れ行きです。

2012年8月、第6刷で累計23000部となりました。

第2刷からは、下記の「校正」が反映されています。

第3刷からは、下記の「校正」「追加校正」が反映されています。

タ#12441;イヤモント#12441;新刊


「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005年(東洋経済新報社)
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年(東洋経済新報社)
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)

に続いて、最新糖質制限食基礎理論の充実した内容と、糖尿病以外の生活習慣病やガンについての考察が加わった本となりました。

エビデンスレベルの疫学研究も、多数紹介しています。

さらに豊富な症例も提示しています。

レシピ本ではなく、理論・疫学・臨床・・・の本です。

下記URLからアマゾンの本書の場所に飛べます。
http://p.tl/Io4o

私のブログ記事のなかで、公開OKをいただいた書き込みからの引用もあります。

ブログ読者の皆さんには、この場を借りて御礼申し上げます。m(_ _)mV

何回か見たつもりですが、もう一箇所、追加校正がありました。 m(_ _)m


<追加校正>
198ページ 
 4行目 約5g→約5mg

<校正>
1ページ
 5行目 16版→17版

51ページ
 最後から3行目に
 ④肝細胞はミトコンドリア内でケトン体を生成するが自分は利用せず他に供給する。

53ページ
 3行目 
 摂取していたのは脂質であり→摂取していたのは脂質・たんぱく質であり

60ページ
 5行目
 赤血球を除く→赤血球と肝臓をのぞく

65ページ
 8行目
 「英国政府ガイドライン」→「英国立医療技術評価機構」

69ページ
 4行目
・・・利用できない。のあとに「肝臓はケトン体を生成するが自分では利用しない。」

75ページ
 グラフ・・・糖尿病の人が→糖尿人が

82ページ
 最後に、「肝臓はケトン体を生成するが自分は利用しない。」

89ページ
 後ろから5行目
「これに対して・・・必要はありません。」
      ↓
「これに対して、糖質は食べ物から摂る必要はありません。肝臓でアミノ酸などから糖新生によりブドウ糖を生成できるからです。即ち必須糖質は存在しません。」


108ページ
 4行目
 2008年の調査では→2008年の調査で受診者の数は

116ページ
 7行目
 1~2割死んでいます。→1~2割死んでいることが多いのです。

133ページ
 7行目
 「グルット1」を獲得→「グルット1」など細胞表面に糖輸送体を獲得

 後ろから2行目 
 グルット1を→グルット1などを


以下は、

「主食をやめると健康になる ー 糖質制限食で体質が変わる!」(ダイヤモンド社)

の、<はじめに>と<おわりに>です。


江部康二



☆☆☆☆☆
<はじめに>

1999年に、兄・江部洋一郎院長(当時)が高雄病院に初めて糖質制限食を導入しました。当初は半信半疑だった私も、2001年から糖尿病患者さんに積極的に実践して目覚ましい成果をあげ、その後は病院全体で研究を進めるようになりました。

そして4年間の実績をもとに『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』(東洋経済新報社、2005年)を上梓しました。幸い現在までに16版を重ねるロングセラーとなり、世に「糖質制限食」という言葉を認知させるきっかけになったと自負しております。

『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』では、糖尿病治療を中心に執筆しました。このとき、すでに糖質制限食が肥満やメタボリックシンドロームにも有効だということはわかっていましたが、あえて糖尿病だけにしぼった内容としました。

肥満やメタボにも有効といった文言が追加されると読者に軽薄な印象を与える可能性があることや、いわゆるダイエット本と見なされるのは本意ではなかったからです。そのため、ベストセラーよりロングセラーを想定して比較的かたい内容とし、その意図は達成されたと思います。

2007年2月からは、ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」を開始して、糖質制限食について紹介したり、糖尿病についてのさまざまなご質問にお答えするようになりました。現在1日のアクセス数が7000〜8000件ということも、かなり糖質制限食の普及効果があったと思います。

そして本書では、糖質制限食が医学会にも世間にも少しずつ広がりつつある現状をふまえて、高雄病院の10年以上の経験、1400人以上の患者さんの治療実績をもとに、糖尿病以外のより幅広い疾患、生活習慣病についても解説しました。

糖質制限食は「変わった食事」というイメージを持たれがちですが、実は人類本来の自然な食事です。人類が誕生したのが約700万年前で、農耕が始まるまでは狩猟・採集を生業とし、すべての人類が糖質制限食を実践していました。農耕開始後1万年間だけが、主食が穀物(糖質)へと変化しました。

すなわち穀物を主食としたのは、人類の歴史のなかでわずか700分の1の期間にすぎないのです。糖質制限食と高糖質食、どちらが人類にとって自然な食事なのかは言うまでもありません。糖質制限食はいわば人類の健康食なので、糖尿病や肥満・メタボに限らず、さまざまな生活習慣病が改善するのも当たり前といえば当たり前なのです。

しかも糖質制限食は、主食を抜くだけで「おいしく楽しく」続けられるのが特長です。従来のカロリー制限食に比べれば、肉も魚も蒸留酒もOKでお腹いっぱい食べることができ、はるかにラクに実践できます。本書ではその効果と実践法をくわしく紹介します。

なお、執筆にあたっては個人情報を保護する配慮をしていますが、私のブログ記事のなかで公開OKをいただいた書き込みからの引用もあります。ブログ読者の皆さんにはこの場を借りて御礼申し上げます。

2011年11月  高雄病院理事長 江部康二


<おわりに>

2010年12月に「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」(ナツメ社)を上梓して、1年が経過しました。そしてこの1年間で糖質制限食に関する新しい知識がまた蓄積されました。

今回はとくにガンに関して、現状でできる限りの情報を集めそれを基に考察をしてみました。それが、第4章「糖質制限食とガン」です。まずエビデンスとなる質の高いレベルの文献を集めてみました。その結果、高インスリン血症・空腹時高血糖・食後高血糖が、それぞれ独立して発ガンのリスクとなることが明らかとなりました。

またガン細胞はブドウ糖しかエネルギー源に利用できないことは周知の事実です。そしてその理由として、ガン細胞のミトコンドリアは、酵素に不備があり正常細胞のようにケトン体や脂肪酸は利用できないことが文献で確認できました。ミトコンドリアとは細胞内のエネルギー生産装置です。

これらのエビデンスと事実を背景に糖質制限食とガンに関して、予防の可能性や治療の可能性に言及してみました。糖質制限食により発ガンリスクである高インスリン血症・空腹時高血糖・食後高血糖が全て改善します。あくまでも仮説の段階に過ぎない理論ですが、それなりの説得力はあると自負しています。

例えば、マウスの動物実験の段階ではありますが、糖質制限食により発ガン予防効果が確認されています。さらに、本文には間に合わず紹介できなかったのですが、ヒトにおいてケトン食でガンが消失したという文献を見つけました。ケトン食は本文でも紹介していますが、脂質摂取比率75~80%という究極の糖質制限食です。栄養と代謝という米国の医学雑誌に2010年、グリオブラストーマ(膠芽腫)が2ヶ月間の<放射線+化学療法+ケトン食>治療で消失したというイタリアの研究者の症例報告が掲載されています。(*)膠芽腫は脳腫瘍の中でも最も悪性度の高いガンで<放射線+化学療法>治療ではまず治りません。糖質制限食によるガン治療に一筋の光明が見えた気がします。

ついで糖質制限食による減量効果に関して大変興味深い事実が確認できました。食物を摂取すると食後1時間から数時間にわたり熱産生が増加し代謝が更新します。これを食物の特異動的作用(SDA)とよびます。摂取した糖質、脂質、タンパク質の化学エネルギーのうち、それぞれ約6%、4%、30%は熱として失われ、生体で利用することができません。SDAが30%と圧倒的に高いのがタンパク質です。従って高タンパク食である糖質制限食は通常食に比べれば、特異動的作用(SDA)の比率が大きくなりその分、減量効果があることになります。

もう一つ忘れてはならないことがあります。それは農耕以前の人類においては飢餓は日常的な出来事であり、体脂肪はそれに対する唯一のセーフティーネットであったというとです。この観点から、筋肉と脂肪細胞の糖輸送体4(GLUT4)の謎を解き明かしてみました。糖輸送体というのは細胞におけるブドウ糖取り込み装置です。GLUT4は14種ある糖輸送体のうち唯一インスリンに依存していて普段は細胞内に沈んでいていざという時だけ細胞表面に移動するという極めてユニークな存在で、知的興味は尽きません。

このように、糖質制限食の最新理論がわかりやすく解説してあるのが本書です。糖質制限食をすでに実践して本を読んでおられる方にも充分読み応えがあると思います。また初めて糖質制限食に接する読者においても、系統的にオールラウンドな知識を学ぶことができる本となっていますので、是非ご一読いただけば幸いです。

最後になりましたが、本書の新しい糖質制限食理論構築において、適切なアドバイスで援助して頂いた、京都府立医科大学大学院 総合医療・医学教育学教室 助教 森 浩子先生に深謝いたします。

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
日本列島人類(日本人)の「狩猟採集時代」と「農耕時代」
おはようございます。

よく「日本人は昔から農耕民族であり・・・」といった話をされる医師や栄養士がおられるのですが、これは事実とは全く異なっています。

すなわち、明白な事実誤認です。

日本列島人類(日本人)は、「狩猟採集時代」のほうが「農耕時代」よりはるかに長い、というのが、論争の余地のない歴史的事実です。

狩猟・採集時代(旧石器時代・縄文時代)が約8万7千年、農耕時代(弥生時代)が約3000年です。

本日は、日本人の「狩猟採集時代」と「農耕時代」を振り返って検討してみます。


<旧石器時代>
日本列島に初めて人類が移住してきたのが約9万年前で、旧石器時代と呼ばれています。

縄文以前の9万年前頃から16000年前の旧石器時代の日本列島では、マンモスやナウマンゾウやニホンシカ、イノシシなど狩猟が生業だったようです。

旧石器時代の人々は、大型哺乳動物を追い、キャンプ生活・遊動生活を営みながら頻繁に移動生活を繰り返してきました。

以下はウィキペディアから、抜粋して転載です。

ウィキペディア
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%88%97%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%97%A7%E7%9F%B3%E5%99%A8%E6%99%82%E4%BB%A3
によれば
【それより以前の日本列島の旧石器時代は、人類が日本列島へ移住してきた時に始まり、終わりは1万6000年前と考えられている。日本列島での人類の足跡も9〜8万年前(岩手県遠野市金取遺跡)に遡る。

日本列島には、幾度となく北、西、南の陸峡(宗谷・津軽・対馬・朝鮮などの海峡)を通って、いろいろな動物が渡ってきて、それらの動物群を追って旧石器人が渡ってきたともいわれている。

2万年以前の日本列島には43万年前にやってきたナウマンゾウなどの中国北部の動物群やそれ以前からいたものが棲息していたが、最終氷期に大陸と繋がった北海道だけはマンモス動物群が宗谷陸橋を渡ってくることが出来たので、それらの混合相となった。

旧石器時代人は、主として狩猟によって食料を得ていた。当時の遺跡からは、野牛・原牛・ナウマンゾウなどの大型哺乳類の骨、ニホンシカ、イノシシ、ノウサギなどの中・小哺乳動物の骨が発見されている。そして、大型哺乳動物を解体する作業場となるキル・サイトも発見されている。このように、旧石器時代人は、大型哺乳動物を追う狩人たちであったと思われる。竪穴住居跡を伴う遺跡がほとんど発見されていないのは、旧石器時代人がキャンプ生活をしながら移動を繰り返していたからだとも推定されている。

漁労の直接的な証拠は発見されていないが、そのような活動があっただろうとは推測されている。まず、伊豆諸島の黒曜石が南関東で出土しており、同諸島で細石刃が発見されている。ここから、旧石器人も何らかの航海技術や海上交通の手段を持っていたことが想像できる。さらに、日本の旧石器文化がシベリアとの強い関連性があることが分かっており、そのシベリアで固定式のヤスや離頭式の銛頭(もりがしら)が見つかっている。日本は酸性土壌のため人骨や獣骨が残りにくいが、日本でも同様の道具を用いて刺突漁を行なっていた可能性がある。

縄文時代の人々にとっては、植物採取が食料獲得の中で大きな比重を占めていたが、旧石器時代の人々にとってはどちらかというと狩猟が主体であったようだ。当時は数百kmにも及ぶ距離を移動していたというから、それは移動性のある動物の行動生態と関連しそうであるし、また彼らの道具を見ると、植物質資源の加工・処理に有利な頑丈なタイプの石器(削器や石斧)よりも、狩猟具に使いそうな先の尖った石器(有背石刃、尖頭器)や壊れ易いが鋭い刃(石刃、細石刃)のある石器というような道具が発達したからである。】


<旧石器から縄文へ>

最終氷期(ウルム氷期)は、約2万年前の最盛期が過ぎると地球規模で温暖化に向かいました。そして温暖化により海位が徐々に上昇していきました。約13000年前には海位は100m以上上昇して、中国大陸と陸続きであったところに現在の日本海が出現し、1万年前に氷期が終わります。

そして、針葉樹林が日本列島全体に生えていたのが、西南日本から太平洋沿岸伝いに落葉広葉樹林が拡がり、北海道を除いて列島のほとんどが落葉広葉樹林と照葉樹林におきかわりました。コナラ亜属やブナ属、クリ属など堅果類が繁茂するようになりました。

また、温暖化による植生の変化は、マンモスやトナカイ、あるいはナウマンゾウやオオツノジカなどの大型哺乳動物の生息環境を悪化させ、約1万年前までには、日本列島から、これらの大型哺乳動物がほぼ絶滅してしまいました。

<縄文時代>

縄文時代は、年代でいうと今から約1万6000年前から約3,000年前であり、世界史では中石器時代ないし新石器時代に相当する時代です。

縄文時代で最も古い定住集落が発見されているのが九州南部で、およそ1万1000年前に季節的な定住が始まり、1万年ほど前に通年の定住も開始されたと推測されています。 縄文時代ミズナラ、コナラ、クルミ、クリ、トチノキといった堅果類の採集が盛んに行われるようになりました。

狩猟・植物採取・漁労の3つの新たな生業体系が、縄文時代の生産力を発展させました。


<弥生時代>

一般に約3000年前から約1700年前(西暦300年)までが弥生時代とされています。

稲作を中心とする農耕社会が成立し、北部九州から本州最北端以北を除く日本列島各地へ急速に広まりました。
 
紀元(西暦0年)前後には100くらいの「国」が中国と通交していたとされています。当時の日本列島は中国から倭・倭国と呼ばれていました。

2世紀後半に倭国大乱と呼ばれる内乱が生じ、その後邪馬台国の卑弥呼が倭国王となりました。卑弥呼は魏との通交により倭国連合の安定を図りました。

弥生時代のあとは、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代・・・と続いていきます。


<日本における稲作の歴史>

日本では、弥生時代以降が、稲作中心の農耕時代です。

一方、縄文後期、現在から約4000~5000年前に、陸稲の栽培されていた可能性が有力となっています。水田の開始は弥生時代で約2500年前です。

本格的な稲作・農耕社会が始まるのは弥生時代ですが、縄文後期には一部地域で陸稲の栽培が行われていたようです。

縄文時代の陸稲は、<狩猟・植物採取・漁労>の3つの生業体系に、プラスαの一部陸稲といった位置づけです。



従いまして、「日本人は農耕民族」といったお話は、「弥生時代」(約3000年前~約1700年前)以降だけにに言えることです。

そして、「旧石器時代」(約9万年前頃~約16000年前)はもっぱら狩猟が主たる生業です。

「縄文時代」(約1万6000年前~約3,000年前)は<狩猟・植物採取・漁労>の3つが主たる生業となります。

最後にもう一度「日本人は昔から農耕民族であり・・・」といった話は、明白な事実誤認であることを強調しておきたいと思います。


本日の原稿は

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%84%E6%96%87%E6%99%82%E4%BB%A3
縄文時代  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A5%E7%94%9F%E6%99%82%E4%BB%A3
弥生時代  フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2#.E5.BC.A5.E7.94.9F.E6.99.82.E4.BB.A3
日本の歴史 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

を参考にさせていただきました。
ありがとうございました。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
「ジョスリン糖尿病学」推奨の炭水化物摂取比率は40%以下
おはようございます。

精神科医Aさんから、ジョスリン糖尿病学の記載に関する大変興味深いコメントを頂きました。

精神科医Aさん、ありがとうございます。

精神科医Aさんのご指摘通り、ジョスリン糖尿病学・第2版(2007医学書院・訳本)のP693に、

「ジョスリン糖尿病センターは、太りすぎや肥満合併2型糖尿病患者の食事療法勧告を改定し、炭水化物は総摂取カロリーの40%以下とする」

いう記載があります。

故ジョスリン博士は、糖尿病学の父と呼ばれた医師であり、ジョスリン糖尿病センターは、全米で最も有名な糖尿病治療の病院です。

ジョスリン糖尿病学・第2版は、原著第14版(2005年)の訳本であり、ジョスリン糖尿病センターの診断学・治療学を余すことなく網羅した名著です。1345ページに及ぶ大著です。

原著第14版(2005年)は全米で最も権威のある糖尿病の教科書といえます。

全米の2型糖尿病の新患の平均BMIは31なので、半数以上の糖尿人は「太りすぎや肥満合併2型糖尿病患者」に相当します。

精神科医Aさんのご指摘どおり、ジョスリン糖尿病学には

「炭水化物は総摂取カロリーの40%以下とする」

と明確に記載してあるのに対して、

門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、

「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と述べておられます。

つまり、ご自身が翻訳者の一人であるジョスリン糖尿病学の記述に対して、根拠もあげずに真っ向から否定しておられるのですが、氏はジョスリン糖尿病学を読んでおられないのでしょうか?。

ともあれ、根拠もあげずに40%未満の糖質制限食を否定された門脇理事長の私見よりも、ジョスリン糖尿病学の記載のほうが、はるかに信頼に値すると考えるのは、精神科医Aさんや私だけでしょうか?

ジョスリン糖尿病学の、タンパク質が総摂取カロリーの30%というのも、日本糖尿病学会の推奨比率に比べると
はるかに多く、大変興味深いです。

例えば2000kcal/日の摂取なら、タンパク質は150g/日の摂取となります。

スーパー糖質制限食で、タンパク質摂取は総摂取カロリーの32%ですから、ほとんど一緒ですね。

日本糖尿病学会の重鎮諸氏は、このジョスリン糖尿病学の「推奨タンパク質摂取:総摂取カロリーの30%」に対してもどのようにお考えなのか、是非お伺いしたい所ですね。


【12/08/16 精神科医師A
Joslin 糖尿病センター
Joslin 糖尿病センターの栄養指導の勧告です(2005年制定)
www.aadi.joslin.org/files/Nutrition_ClinGuide.pdf

ジョスリン糖尿病学 第2版(2007医学書院)に掲載されています。
門脇孝Drも翻訳に参加してます
www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031855395&Action_id=121&Sza_id=C0


P693
Joslin糖尿病センターは最近太りすぎや肥満合併2型糖尿病患者の食事療法勧告を改定した。血糖コントロールと減量を達成するための食事療法を定めるためにさらに研究が求められるが、われわれは、負のカロリーバランスとする食事計画を個々の患者ごとに決定する際には以下の勧告を使用している。

[炭水化物] 総カロリーの40%以下とし、野菜、果物、そのままか砕いた穀物のような低グリセミックインデックス食を主な摂取カロリーとすべきである。細かく挽いた穀物、パスタ、パン、シリアル、いもといったでんぶん質の食品はできるだけ避けるべきである。

[蛋白質] 筋肉とエネルギー消費をまかなうために、総摂取カロリーの30%は蛋白質とすべきである。望ましい蛋白源は、赤身や挽肉より、魚類、特に冷水魚で、鮭、まぐろ、鰯、その他、鶏肉、七面鳥、他の食用鳥類、大豆である。さらに、蛋白質は満腹感を増し、低蛋白食は食欲を増してしまうというデータがある。蛋白質は患者が望ましい低カロリー食を達成し維持するのを助ける。

[脂質] 脂質は毎日の総カロリーのうち30%とし、主に一価と多価不飽和脂肪(例えば、木の実、オリープ油、キヤノーラ油)と魚類から摂取すべきである。ω-3脂肪酸を多く含有していればもっとよい。牛肉、豚肉、羊肉のような飽和脂肪を多く含む肉、高脂質の製品は少量にすべきである。同様に、トランス脂肪酸を多く含む食品は避けるべきである。


門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い」などと言っている。一方、Joslin の訳書では「炭水化物=総カロリーの40%以下」となっている。矛盾した内容である。】



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
インスリン療法中の糖尿病患者は大腸ガンのリスクあり。こわい話③
こんにちは。

ケアネットから、少しこわい情報が送信されてきたので検討してみます。

Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版、2012年8月9日号に掲載された論文によると、インスリン療法中の2型糖尿病患者は、厳格な大腸がんスクリーニングが必要とのことです。(*)

「Cペプタイド値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸癌になりやすい。厚生労働省研究班が2007年3月1日、疫学調査結果を発表し論文化。研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。              Int J Cancer. 2007 May 1;120(9):2007-12.」

以前、本ブログでも上記を記事にしましたが、Cペプタイドが高値(すなわち高インスリン血症)だと、男性では大腸ガンのリスクになります。

今回の論文では、インスリン注射の投与期間が長いほど、大腸ガンのリスクが増えたことが報告されました。

基礎分泌インスリンがなければ、ヒトは生きることができません。

インスリンが発見される前は、インスリン分泌がゼロの1型糖尿病は、診断後の平均余命が半年でした。

すなわち基礎分泌インスリンは絶対に必要なものです。

しかし基礎分泌インスリンは、肥満などによるインスリン抵抗性がなければ、結構少量で間に合うものです。

一方、追加分泌インスリンは、少なければ少ないほど健康には良いと考えられます。

追加分泌インスリンが大量にでれば、肥満もしやすいです。

糖尿病で、やむを得ずインスリン注射を打っている場合も、インスリンの量は少ないほど人体にはやさしいです。

インスリン注射を多く打っている場合、アルツハイマー病のリスクも4倍になります。

糖質制限食の考え方を取り入れて、インスリン注射の量を減らすことを目指すのが、糖尿人の王道と思います。


江部康二


(*)
【2012/08/16 :ケアネット

インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。
(ケアネット 金沢 浩子)】


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
人類の起源 定説より前? 700~800万年前
こんにちは。

2012年8月15日(水)の朝日新聞朝刊に「人類の起源 定説より前?」という記事が載りました。

私も2005年に「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(東洋経済新報社)を刊行したころは、人類の起源は約400万年前と書いていました。

その後の研究で、2011年に「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)出版時は、人類の起源は約700万年前と考えるようになりました。

今回の日米独英の共同チームの精度の高い分析で人類の起源が700~800万年前とされたので、私としても一安心です。

現時点で、人類の起源は約700万年前という認識でいきたいと思います。

今回の朝日新聞の記事は以下です。


2012年8月15日(水) 朝日新聞朝刊
人類の起源 定説より前?
700~800万年前
日米独英で分析

『人類がチンパンジーとの共通祖先から分かれたのは、700~800万年前だった可能性が高いとする研究成果を京都大など日米独英の共同研究チームがまとめ、13日付の米科学アカデミー紀要に発表した。これまでの分析より、人類の起源が早かったことになる。研究チームはヒトと野生のチンパンジーの世代交代の年数、DNAの変異の起きる確率から祖先が分かれた時期を特定した。従来のDNA分析は両者が別れたのは400~600万年前としていた。しかし、600~700万年前の人類化石がアフリカで見つかっており、時期にずれがあった。チンパンジーの世代交代の平均年数を正確に反映させ、精度の高い分析法で計算しなおした(波多野陽)』




江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖尿人と子供達の75gOGTT
こんにちは。

子を持つ糖尿人さんから、興味深いデータをコメントしていただきました。


『12/08/13 子を持つ糖尿人

親が糖尿人の子供が注意する事とは

54歳の糖尿親父です。47歳の糖尿病発症の時に江部先生のブログと本に出合い、迷うことなく直ちにスーパー糖質制限食を開始しましたところ、身長173cm、体重85kg→60kg、HbA1c7.2→5.2、尿タンパク(+)→(-)と劇的に改善しました。

最初処方されていたグルコバイもすぐに処方されなくなり、現在では2か月に1回の血液検査のみの通院となっております。江部先生に出合えた幸運を感謝しております。

ところで、 私が糖尿病を発症したため(妻は非糖尿人)子供たちに糖尿病の素質が遺伝しているのか知りたくて(江部先生の過去のブログにも【75gOGTTは糖尿病の診断だけでなく糖尿病ハイリスク群を見いだすのにも役立つ】と書いてありましたので)、ふたりの子供の16歳の誕生日に75gブドウ糖負荷試験を実施しました。

糖尿病を親に持つ子供たちは、発症を防ぐためには、糖質制限食の実施を含めて何が重要かご教示いただければ幸いです。

娘(検査時16歳/165cm/54kg/部活なし、現在22歳)
    血糖  IRI
空腹時 77   2.4
30分後 103 34
60分後 103 29
120分後 95 20
HbA1c 4.9
インスリン分泌指数 1.2

息子(現在16歳/182cm/64kg/部活は陸上短距離)
    血糖  IRI
空腹時 87   2.7
30分後 153 35
60分後 153 33
120分後115 26
HbA1c 5.0
インスリン分泌指数 0.5 』



子を持つ糖尿人 さん。

47歳で糖尿病発症、直ちにスーパー糖質制限食開始。

身長173cm、
体重85kg→60kg、
HbA1c7.2→5.2、
尿タンパク(+)→(-)

と劇的に改善。

糖尿病腎症第3期Aからの劇的な改善で、素晴らしいです。(⌒o⌒)v

現在54才なら、足かけ8年のスーパー糖質制限食ですね。

私が52才糖尿病発覚で、スーパー糖質制限食開始、現在62才で、足かけ11年目です。

子供さんの貴重なデータを、コメントいただき、ありがとうございます。
大変参考になります。

娘さんは、16才時、インスリン分泌指数1.2(0.4以上が正常)と正常です。

75gOGTTの前後の血糖の変動幅も小さく、完全に正常型ですので、父上よりは、母上の体質を受け継がれたものと思います。

将来の糖尿病発症のリスクも、母上と同様でほとんどないと考えられます。

一方、息子さんは、16才時、娘さんに比べてOGTT前後の血糖値の上昇幅が大きく(倍くらい)、 インスリン分泌指数は0.5で正常下限です。

息子さんは、子を持つ糖尿人さんの体質を、しっかり受け継いでおられてインスリン追加分泌第一相の指数が、0.5で、ギリギリ正常です。

現在、OGTTは診断基準的には正常型ですが、お姉さんと比べると、将来2型糖尿病に大変なりやすいパターンと言えます。

緩やかでいいので、糖質制限食を実践すれば将来の糖尿病発症が防げると思います。

また運動で筋肉量を多く保つことも糖尿病発症予防に役立つので、陸上部はとてもいいですね。

娘さんと息子さんとで、明確な差がでましたが、糖尿病体質の遺伝の差と思います。



江部康二



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
「カロリーゼロ」「カロリーオフ」「糖質ゼロ」「糖質オフ」の意味は
おはようございます。

「健康増進法」では、食品において栄養に関する表示を行える制度として、「栄養成分表示」(第31条)を定めています。

この「栄養表示基準に基づく栄養成分表示」において、

1.「無」「ゼロ」「ノン」「レス」など“含まない”という表示
2.「低」「ひかえめ」「少」「ライト」「ダイエット」「オフ」など“低い”という表示

を記載する時に、守るべき基準値が定められています。


具体的には、

「カロリーゼロ」:
 食品100gあたり5kcal以下(一般に飲用の液体では100mlあたり5kcal以下)

「カロリーオフ」:
 食品100gあたり40kcal以下(一般に飲用の液体では100mlあたり20kcal以下)

 と定められています。

「糖質ゼロ」:食品100gあたり0.5g以下(一般に飲用の液体では100mlあたり0.5g以下)

「糖質オフ」:食品100gあたり5g以下(一般に飲用の液体では100mlあたり2.5g以下)

 と定められています。
 
従って、「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」という表示がしてあっても、カロリーが全くないとか糖質が全く含まれていない、ということではありませんので、一定の注意が必要ですね。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食で、インスリン指数、抵抗性が正常に
こんばんは。

糖質制限新人さんから、糖質制限食で、インスリン指数、抵抗性が正常になったとのコメントをいただきました。

【12/08/13 糖質制限新人
OGGTの結果

糖質制限を始めて4.5カ月経ちました。

昨年12月a1c7.3空腹血糖値152で糖尿病判定を受けました。
現在a1c5.1(新)空腹血糖値93
先月末にOGTTを受けました。
結果は
30分 189
60分 222
120分 178
180分 120(自己測定)
インスリン指数0.90
インスリン抵抗性1.35
以上の結果になりました。

以前インスリン抵抗性は4.7あったのでかなりの改善があったようです。

主治医の先生は境界型ですね。インスリン指数、抵抗性は正常になったとおっしゃいました。

主治医の先生も糖質制限に理解がある先生に変えてのOGTTでした。

いまいちこの数字が良いのかわかりませんが、(60分で222もあるので・・・。) 糖質制限を開始してからa1cは-0.3落ちましたし、体重も3キロ減で、結果がついて来ていると思っています。

私の考える血糖コントロールは食後血糖値のコントロールなので、糖質制限を信じて実行しています。

OGTTの結果は糖質制限で体質が良くなったと思っても良いのでしょうか?

またこの数字は先生から見てどう思われますか?

お忙しい中、質問ばかりですみません。 】



2011年12月、HbA1c:7.3% 空腹血糖値152mg/dl

HbA1cと空腹時血糖値が共に糖尿病型なので、診断基準を立派に満たす糖尿病でしたね。

2012年7月、HbA1c:5.1%(NGSP) →コントロール良好を超えて、優秀ですね。

2012年7月OGTT
空腹血糖値93
30分 189
60分 222
120分 178
180分 120(自己測定)
インスリン指数0.90
インスリン抵抗性1.35

2012年7月のOGTTでは、

インスリン指数が0.9(0.4以上)と著明な改善で正常値。

インスリン抵抗性も1.35(1.6以下)と正常。

すなわち、2012年12月の時点では、糖尿病の診断でしたが、糖質制限食実践4.5ヶ月で、境界型にまで改善されてます。

インスリン指数と抵抗性も正常値なので、かなりいい感じに改善されてますよ。 (^^)



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
2012年8月10日・ハートの日講演会のご報告
おはようございます。

2012年8月10日(金)
岐阜ハートセンター・ハートの日・講演会(サマランカホール)
「糖質制限食によるメタボリックシンドロームの解決」

大勢の参加者で盛り上がりました。

ブログ読者の皆さんもかなりの人数、ご参加いただきありがとうございました。m(_ _)m

先に講演された東大の石井直方先生は、スロートレーニング(スロトレ)でご高名です。

講演会では、だれでも簡単にできるし、週に2回のスロトレでで筋肉量が増えるというお話をされました。

講演後の座談会で、もう少し突っ込んで質問をしてみました。

1、2、3、4秒でゆっくりスクワットで膝を曲げ、
1、2、3、4秒でゆっくり軽く曲がった状態まで膝を伸ばす。

8セットを1日に3回・・・

これだけです。

言葉で書くと簡単ですが、さらに突っ込んで聞くと8セットやると筋肉がパンパンになるそうで、やはり筋肉量を本気で増やそうを思えば一定の覚悟がいるようです。(=_=;) 

座談会終了後も、質問が相次ぎなかなか会場を離れることができないくらい、熱気にあふれた会でした。

講演会終了後の懇親会、岐阜の料亭では、糖質制限な料理を頼んで頂いていました。

長良川の鮎も食べましたよ。

何だか高級な料亭で、とても美味しかったです。

岐阜ハートセンター院長の、上野 勝己先生ありがとうございました。

上野先生からは「今度は医師対象のセミナーを開催しましょう。」とのお話で、さらに糖質制限食の輪が広がっていきそうです。 (^_^)

懇親会のあと名古屋に宿泊して、朝京都に帰り、 土曜日午前中の江部診療所の外来をこなしました。

土曜日の夜はテニスクラブの宴会で、日曜日はやや二日酔いで、テニスをしました。(^^)


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い
【本ブログのコメント・質問・記事に関するお願い】

ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。

糖質制限食に関する質問についてですが、実際に高雄病院や江部診療所に来院されて診察した患者さんに対しては、医師としての責任・債務がありますので、個別に説明もしっかりさせて頂いていますし、フォローもしております。

一方、ブログ読者の皆さんの質問に関しては、糖質制限食に詳しい医師として、ボランティアで回答させていただいています。

診察もしておりませんしフォローもできませんので、責任もとれません。

私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。

また、ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。

従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、自己責任でよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m

そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。

またネットで簡単に検索可能なことは、ご自分でお調べください。

質問が増えてきましたので、糖質制限食と関わりがないと判断した質問にはお答えできない場合もありますので、ご了承ください。m(_ _)m

普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)

掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。

質問によってはコメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。

一方、質問がかなり増えてきていますので、なかなか即、お答えすることが困難となってきています。

糖質制限食に関わりのある全ての質問に、本文かコメントでお答えするようできるだけ努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m

それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、コメント欄にお答えするか、一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、よろしくお願い申し上げます。

なお、糖質制限食が世の中・医学界にかなり浸透してきたことは間違いありません。

2012年1月15日(日)、第15回日本病態栄養学会年次学術集会が国立京都国際会館で開催され、

「糖尿病治療に低炭水化物食は是か?非か?」というディベートセッションが行われ、私が是側の演者で講演しましたが、大きな反響を呼びました。医学界にも確実に糖質制限食が広がっています。

さらに、2012年5月18日(金)
第55回日本糖尿病学会年次学術集会のDebate to Consensus 5で、糖質制限食が糖尿病食事療法の選択肢の一つとして、コンセンサスが得られました。

カロリー制限食一辺倒からの、まさに歴史的な転換です。

一方、糖質130g/日の緩やかな糖質制限食が糖尿病治療食の選択肢の一つとしてコンセンサスを得たわけですが、糖質130g/日未満のスーパー糖質制限食に関してはまだ認められたとは言えません。

今後さらなる努力が必要です。

ブログ読者の皆さんには、これまでと同様応援のほどよろしくお願い申しあげます。m(_ _)mV

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食とは
【糖質制限食とは】

米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。 

また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。

これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。 
 
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、

「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」

という記載がありましたが、2004年版では変更されています。

このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。

従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。

脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。

現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。

食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。

そして、食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。

1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。

炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。

一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満の上昇しかないのです。 

なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。

糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。

簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。

抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
 
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。

一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。

従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。

糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。

なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。

一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち

男性なら1600~2400キロカロリー
女性なら1200~1800キロカロリー

くらいが目安です。


【糖質制限食を実践される時のご注意】

本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので必ず主治医と相談して頂きたいと思います。

一方、薬を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はほとんどないので、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病やメタボ改善を目指していただけば幸いです。

血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。

肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。

なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。


<参考図書>

理論
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005年
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008年
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009年
「やせる食べ方」2010年
「うちの母は糖尿人」2010年 監修:江部康二 著:伊藤きのと
(東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010年(ナツメ社)
腹いっぱい食べて楽々痩せる『満腹ダイエット』 (ソフトバンク新書) 2011年
「主食をやめると健康になる」(ダイヤモンド社)2011年

レシピ
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006年
「糖質制限食 春のレシピ」2007年
「糖質制限食 夏のレシピ」2007年
「糖質制限食 秋のレシピ」2008年
「糖質制限食 冬のレシピ」2008年
「血糖値を上げない! 健康おつまみ109 」2010年
「やせる食べかたレシピ集」2010年
「主食を抜けば糖尿は良くなる!レシピ集」2011年
(東洋経済新報社)

「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)2009年

dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」(プレジデント社)2010年
dancyu プレジデントムック 「美食家ダイエット 」(プレジデント社)2011年
dancyu プレジデントムック 「スイーツダイエット」 (プレジデン社)2012年

糖質オフダイエット (レタスクラブ、角川マーケティング)2011年
誰もがストレスなくやせられる! 糖質制限ダイエット(講談社)2011年
糖尿病・肥満を克服する高雄病院の「糖質制限」給食(講談社)2012年

DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php 2011年
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
千石温泉 日当山の温泉水 ご紹介です。
こんにちは。

今日は、江部診療所での診察が終わり次第、岐阜ハートセンター、「ハートの日」講演会に向かいます。

私の出番は、

19:00〜20:00(サマランカホール)
ハート講演会「糖質制限食によるメタボリックシンドロームの解決」
講師:江部康二

20:00〜20:30(サマランカホール)
ハート座談会「メタボリックシンドロームへの挑戦」
石井 直方 先生、江部 康二 、上野 勝己先生

です。

その他、14:00~20:30までいろんな企画がある楽しいイベントです。

参加費は無料ですので、岐阜の糖尿人、メタボ人の方々ふるってご参加くださいね。

さて。

今日は、最近の私のお気に入りを紹介します。

糖質制限ドットコムのあらてつさんがブログで何度か紹介していた、千石温泉 日当山の温泉水 です。

2012-08-09 18.13.28

今年の5月、ブログ読者、北九州 三島さん主催で、糖質制限食講演会in北九州が開催されました。

その時、三島さんのご紹介で、鹿児島 植村さんから送って頂いたのが、この千石温泉の「日当山の温泉水」です。

私は、普段は珈琲かお茶ばかりなので、ミネラルウォーターは殆んど飲みませんでした。

たまに各地の名水を頂いたりするのですが、スタッフで分けることが多かったです(^_^;)

ですが、この 千石温泉 日当山の温泉水 は、届いた分全部、あらてつさんに車に積んでもらって、持って帰りました(^O^)

温泉の成分になるのでしょうか、明らかに他のミネラルウォーターよりも味が濃く、口に含んだ感触がヌルっと感じるくらいです。

最初はその独特の感触と味に違和感を感じましたが、飲み慣れると普通の水では全く物足りなくなります。

家ではそのまま飲んだり、焼酎を割ったりするのに使っています。

この 千石温泉 日当山の温泉水 で焼酎を割ると、酔い覚めが良くなる気がして、ついつい飲み過ぎてしまうのが困りものですが(^_^;)

因みに千石温泉さんでは、この温泉水でしこんだ焼酎、 千の華 も販売されています。

とても飲みやすい芋焼酎で、当たり前ですが日当山の温泉水との相性は抜群ですね。

あと、不思議なことに、日当山の温泉水 は、お腹に溜る感じがしません。

温泉成分が吸収に一役かっているのか、ス~っと体に染み込んでいく感じがします。

温泉水は血糖値に影響を与えませんで、糖尿人の水分補給量にもってこいです(^^)

「日当山の温泉水」について詳しくは


千石温泉ホームページ

日当山の温泉水 SENGOKU
http://sengokuonsen.jimdo.com/%E6%B8%A9%E6%B3%89%E6%B0%B4sengoku/

本格芋焼酎 千の華

http://sengokuonsen.jimdo.com/%E6%9C%AC%E6%A0%BC%E7%84%BC%E9%85%8E%E5%8D%83%E3%81%AE%E8%8F%AF/



読者の皆さん、是非一度お試しあれ。

 

江部康二



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高雄病院の「糖質制限」給食が、5刷りに
給食本

おはようございます。

糖尿病・肥満を克服する高雄病院の「糖質制限」給食  江部康二著、講談社、2012年4月刊行

おかげさまで、5刷り目1万部の重版が決定いたしました。(^^)

これで累計2万4千部となりました。

講談社的にも、想定以上の売れ行きなのだそうです。

講談社販売部のコメントも、

「4月刊行以来、非常に好調な売れ行きを示し、書店店頭における糖質制限ブームをリードする存在となってます。紀伊國屋でも日販でもトップセールスを維持してます。今後多いに伸びる本だと確信し、広告宣伝等の施策も強化していく予定です」

と気合いが入って来ました。

アマゾン・楽天などのネットでも、ボチボチ健闘してますが、全国の書店で満遍なく売れていて、紀伊國屋でトップセールスに入っているとは嬉しい限りです。

過去約600人の入院糖尿病患者さんに供給して、血糖コントロールに画期的な実績を上げてきた、高雄病院の「糖質制限」給食。

余すことなく、1ヶ月間31日分の日替わりメニューのレシピを写真付きで紹介しました。

講談社・編集の谷山涼葉さんによれば、

『高雄病院の「糖質制限」給食こそは、日本の糖質制限食の王道です。』

この発言にすっかり乗せられてその気になって、本書が企画されました。

高雄病院栄養課には、部長の橋本眞由美さんをはじめ、全面的にお世話になり感謝です。

現在、入院糖尿病患者さんだけでなく、外来通院糖尿病患者さんにも、昼食に高雄病院の「糖質制限」給食(予約が必要です)を提供しています。

本書の特徴は、各項目を読みやすい文字数に簡略にまとめて、糖質制限食の理論や疫学研究を紹介してあることです。

最新の糖質制限食基礎知識が、さくさくと手に入ると思います。

もう一つ、私、江部康二の一週間の糖質制限食ライフ(朝食、昼食、夕食)が取り上げられているのも特徴です。

外食、自宅での食事、アルコールなど密着取材して記載しています。

取材は自分自身で、講演旅行のときも、手帳にメモをとって記録しました。

患者さんの体験談も男女それぞれ、載せさせていただきました。

K・Kさん、井上和子さん、ありがとうございました。

糖質制限食最新の基礎知識と高雄病院のレシピを、本書1冊で得ることができます。

是非、ご一読いただけば幸いです。


江部康二


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ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食の同志・・・厚生労働省にも
こんにちは。

mushioda さんから、とても興味深い情報をコメントいただきました。

【12/08/07 mushioda

厚生労働省の

厚生労働省の局長をやった医科系の同級生と今夜飲んだのですが、彼も糖質制限をしており、江部先生のブログをよく読んでいました。

彼によれば、糖質制限が広がると糖尿病治療薬(のかなりの部分)が不要になるので、メーンストリームは糖質制限を嫌う。

しかし、糖質制限は合理的であり世界の大勢である、と先生と同じことを言っていました。

私は血糖値は抑えこんでいますが悪玉コレステロールが高い。彼が言うには江部先生も言っているが、あまり気にする必要はない、と。同志が身近にいました。】


mushioda さん。
興味深いお話しをありがとうございます。

厚生労働省の局長といえば、その上はもうトップの事務次官ですから、医科系の同級生さん、結構出世しておられたのですね。

そのまま、局長で頑張って糖質制限食普及活動をしていただけば、最高の展開だったのですが、今は厚生労働省を退職されたのですね。

うーむ、残念。

それでも厚生労働省の局長をつとめられた方が、自ら糖質制限食実践中で、その合理性を認めていただいているとは、嬉しい限りです。



江部康二

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ジャンル:ヘルス・ダイエット
新聞・雑誌の記事と糖質制限食
おはようございます。

精神科医Aさんから、興味深い記事を3つコメントいただきました。

1)は、糖質制限食に否定的な読売新聞の記事ですが、2012年07月26日 (木)の本ブログ記事「読売新聞・医療ルネサンス、糖質制限食に賛否両論という記事の検討」で取り上げた、信頼度の低い「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」論文を、全く無批判に何の検証もせず引用しています。従って、読売新聞のこの記事も信頼度は低いです。


2)野中広務さんのダイエット法が「糖質制限食」なのですね。
 こちらも、読売新聞ですが、糖質制限食に肯定的な記事ですね。


3)週刊朝日の記事で、参院自民党で「糖質制限ダイエット」が流行っているというもので、2012年07月16日 (月)の本ブログ記事「東洋経済新報社の本が、3冊増刷、ロングセラー」でも少し取り上げました。

なかなか興味深い記事で、参院自民の先生方が、糖質制限ダイエットに取り組み成功されているそうです。



江部康二

【12/08/07 精神科医師A

新聞雑誌記事

1)<2012年8月6日 読売新聞>
Q: 主食を減らす炭水化物ダイエット、効果あるの?
A: 運動せずに糖質制限を続けると、病気にもつながりかねません
www.yomiuri.co.jp/job/biz/qaetc/20120804-OYT8T00662.htm
◇[解]クールビズとダイエット 医療情報部次長・吉田清久


2)<2012.5.3 読売新聞東京朝刊11頁 >

だれしも男も女もダイエットに挑戦したことがあるだろう。80代半ばの高齢でこれに取り組み、3か月で9キロもの減量に成功した人がいる。小渕内閣で官房長官を務めた野中広務さん(86)。そのダイエット法は簡単で「大好きな肉類はそのままに、ご飯やめん類など炭水化物の摂取を抑えるだけ」という。

実は野中さん、70代だった十数年前、自民党幹事長代理や官房長官を歴任していた頃も、同じようなダイエットに励んでいた。

当時は毎朝、議員宿舎の食堂で朝駆けの記者たちと一緒に四百数十円の朝定食をとっていたが、野中さんだけはご飯抜き。豆腐やみそ汁、タマネギのスライスにカツオ節をまぶしたサラダを食べていた。それで77キロから59キロまで落とした。その頃の写真を見るとげっそり痩せており、ダイエットのことを知らない自民党幹部は「大病を患っているのでは」と、心配していたものだ。

齢(よわい)80を超えての今回のダイエット。感想を聞くと、涼しい顔で「一番ええのが、腹が引っ込んで、昔に仕立てたスーツを着られることやな。もっとも、最近食べ過ぎて、2キロばかりリバウンドしたがね」。

政府は節電のため、クールビズを1か月前倒しして5月からの実施を呼びかけている。東日本大震災があった昨年に続くものだが、メタボな人は上着やネクタイがないと、腹回りが気になる。クールビズをきっかけに減量に取り組む人も少なくないというが、この夏、野中さんをみならい、ダイエットに挑戦するか。



3)<週刊朝日2012年7月20日号>

◇自民党内でダイエットが流行 理由は「党の顔」になるため?
 週刊朝日2012年7月12日(木)7時6分配信

消費増税をめぐる攻防の主戦場は参院に移り、11日の本会議で審議がスタートした。"うるさ型"が多い参院自民のセンセイ方は手ぐすねを引いて待っているかと思ったら、実はダイエットに夢中だった。

参院自民で一大ブームとなっているのは「糖質制限ダイエット」。食事の量は変えず、甘いものや、糖質が多く含まれる炭水化物などを控える方式だ。

自他ともに認める「成功例」は林芳正政調会長代理(51)。防衛相や経済財政相を歴任した政策通で、なんと13キロもやせた。

「昨年7月ごろに始め、月に1~2キロくらいのペースで落ちました。白米や甘いもの、ビールを一切絶つわけではなく、時々は食べてもいい。量を制限するわけでもないので、ストレスなくやせられました」(林氏)

9月の党総裁選への出馬が取りざたされている。政治家も見た目が重視される時代だけに、「ダイエットは党の顔になるためですか?」とズバリ尋ねると、 「推薦人が集まれば、逃げるつもりはありません」 と「出馬宣言」した。

衛藤晟一参院幹事長代行(64)や宮沢洋一参院政審会長代理(62)、世耕弘成参院国対委員長代理(49)も着々と痩身中らしい。

身も心も細る思いで国政に取り組むのが、政治家の本分であることをくれぐれもお忘れなく。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高糖質食(カロリー制限食を含む)の糖尿病合併症リスクについて
おはようございます。

高糖質食(カロリー制限食を含む)の糖尿病合併症リスクについて、エビデンスと生理学的事実に則った視点から検討してみます。

まずは、同一摂取カロリー(1400kcal)での 血糖日内変動の比較 

           糖尿病食(高糖質食)  スーパー糖質制限食
             2005.8.24         2005.8.26
朝食前           88            64mg/dl
朝食後2時間       321           87
昼食前           212           77
昼食後2時間       178            100
夕食前           88             80
夕食後2時間       261            106
眠前            222             82


上記データは2型糖尿病の女性の日内変動の比較です。

いずれも、内服薬なしのデータです。

検査時のHbA1c:6.1%(JDS)で、HbA1cの評価基準では、コントロール良好です。

しかし、高糖質食の日内変動検査では著明な食後高血糖を生じて、血糖変動幅が乱高下しているのが、よくわかります。

一方、スーパー糖質制限食では、食後高血糖は生じず、血糖変動幅もほとんどありません。

本例は、特殊な例ではありません。

糖尿人であれば誰でも糖質を一人前摂取すれば、必ず食後高血糖を生じ、血糖変動幅が乱高下するのです。

これは純然たる生理学的事実であり、論争の余地はかけらもありません。

日本糖尿病学会として、上記比較検査を行って頂けば、簡単に確認できることと思います。

A)食後高血糖が酸化ストレスを生じて動脈硬化のリスク要因となることにはエビデンスがある。

B)一日平均血糖変動幅が酸化ストレスを生じて動脈硬化のリスク要因となることにはエビデンスがある。

C)高糖質食が、食後高血糖と血糖変動幅を乱高下させることは、生理学的事実である。

D)糖質制限食が、食後高血糖を生じず、血糖変動幅もほとんど生じさせないことは、生理学的事実である。

A)B)という明確なエビデンスがあるにも関わらず、食後高血糖と血糖変動幅の乱高下を起こす「カロリー制限・高糖質食」を、糖尿病食としてランクAで推奨するなら、日本糖尿病学会はその根拠を示すべきです。

しかし、「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」2010の食事療法の部分の記載をみると、逆に科学的根拠がないことが明示してあります。

すなわち、RCT研究論文などの根拠がまったく存在しないので、単なる専門家の話し合い(コンセンサス)をもとにランクAで推奨としているわけで、思わず「これはジョークなの?」と突っ込みを入れたくなる代物です。

食後高血糖と血糖変動幅を乱高下させる食事療法(カロリー制限・高糖質食)は酸化ストレスを生じて、短期的(リアルタイム)に動脈硬化のリスクとなります。

短期的に、食後血糖値改善効果がなく、動脈硬化の大きなリスクとなる高糖質食を、中期的・長期的に続けていけば、当然の帰結として様々な糖尿病合併症を発症してくることとなります。

私は医師でもあり、自身糖尿人でもあるので、患者目線と医師目線の両方を持っています。

一糖尿人としては、動脈硬化の大きなリスクとなる高糖質食(カロリー制限食を含む)を食べようとは、絶対に思いません。

そして、一医師としては、動脈硬化の大きなリスクとなる高糖質食(カロリー制限食を含む)を、何の説明もなく糖尿病患者さんに勧めること自体が、倫理的におおいに問題があると考えています。



江部康二



テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
スーパー糖質制限食VSカロリー制限食(高糖質食)、有効性と安全性
こんばんは。

今回は、スーパー糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食)の有効性と安全性を検証してみます。

まずは、現在の医学界の土俵に則って、EBMの観点から考察です。

evidence based medhicine(根拠に基づいた医学)→略してEBM

EBMにおいて最も信頼度が高いとされているのが、RCT研究(無作為割り付け臨床試験)論文です。


1)EBMの視点からは、糖質制限食の有効性において肯定的な信頼度の高いRCT研究論文が、
  少なくとも3つあります。

・ニューイングランドジャーナル(DIRECTという論文)
 Iris Shai,et all:Weight Loss with a Low-Carbohydrate,Mediterranean,or Low-Fat Diet. NENGLJ MED JULY17,2008、VOL359. NO.3 229-241
 糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、HbA1cを改善させた。
 2年間の研究。

・米国医師会雑誌、JAMA(AtoZ studyという論文)
 Comparison of the Atkins, Zone, Ornish, and LEARN Diets for Change in Weight and Related Risk Factors Among Overweight Premenopausal Women
 The A TO Z Weight Loss Study: A Randomized Trial ,JAMA297:969-977
 糖質制限食が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させ、中性脂肪を改善させた。
 1年間の研究。

・「低炭水化物食」と「低脂質・低カロリー食」を比較したRCT論文のメタアナリシス
 Systematic review of randomized controlled trials of low-carbohydrate vs. low-fat/low-calorie diets in the management of obesity and its comorbidities M. Hession,et all
 Obesity Reviews Volume 10, Issue 1, pages 36–50, January 2009
(国際肥満研究連合の公式ジャーナル)
体重減少、中性脂肪減少、HDL-C増加は糖質制限食が低脂質・低カロリー食に比し有効。

いずれもインパクト・ファクターは高いです。

2)糖質制限食に否定的なRCT研究論文は、1つだけです。

米国糖尿病協会の医学雑誌Diabetesに載った論文です。

2012.1.15の日本病態栄養学会でも、非側の久保先生が提示されたRCT研究論文はこの1つだけでした。

『Una Bradley1, Michelle Spence2, C. Hamish Courtney1, Michelle C. McKinley2, Cieran N. Ennis1, David R. McCance1, Jane McEneny2, Patrick M. Bell1, Ian S. Young2 and Steven J. Hunter1
Low-Fat Versus Low-Carbohydrate Weight Reduction Diets
Effects on Weight Loss, Insulin Resistance, and Cardiovascular Risk: A Randomized Control Trial
Diabetes 58:2741-2748』

この論文、典型的な歪曲論文です。

冒頭の「結果」や「結論」では意図的に、糖質制限食に不利に見える記載(Aortic augumentation index悪化を意味するかもしれない)がありますが、本文をみると実は有意差なしです。

つまり動脈硬化のリスクとはなりません。

さらに、英文原著の本文を読むと、低炭水化物食群において中性脂肪値とHbA1cが有意差をもって改善していますが、低脂肪高炭水化物食群では改善なしです。

このことを冒頭の「結果」や「結論」では意図的に隠しています。

そして英国砂糖局がスポンサーの一つです。

杏林大教授・石田均先生もこの論文を引用して糖質制限食批判をしておられます。

現在まで、RCT研究論文で糖質制限食に否定的なものは、このDiabetesの歪曲論文のみで、久保先生も石田先生も引用しておられるのですが、是非本文をしっかり読みなおして頂きたいと思います。

このようにまずRCT研究論文の、短期的・中期的有効性のエビデンスレベルでは、糖質制限食が圧勝です。

一方、長期的安全性に関しては、スーパー糖質制限食にもカロリー制限食にも、共にエビデンスと呼べる論文報告は、ありません。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット