2011年06月30日 (木)
おはようございます。
今回は、高インスリン血症と高血糖と発がんリスクのお話しです。
1)2005年の第65回米国糖尿病学会で、カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告しました。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
この研究は、高インスリン血症の発ガン促進作用を検証した研究です。
Samantha博士等は内因性であれ、外因性であれ、
「循環しているインスリンレベルが増加すると腫瘍の進展や死亡率が高まる。」
との考えを示しました。
インスリンは、人体に絶対に必要不可欠なホルモンですが、分泌量や必要量が少なくてすめば、それにこしたことはないようです。
2)インスリンが高い男性は大腸がんになりやすい
記事:共同通信社 2007年3月1日
【血液中の糖分を筋肉などが取り込むのを促すホルモン、インスリンの値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸がんになりやすいとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎(つがね・しょういちろう)国立がんセンター予防研究部長)が1日発表した。
こうした人は肥満や高インスリン血症、糖尿病に陥っている恐れがあり、ホルモンバランスが崩れることも加わって発がんを促している可能性があるという。
インスリンは健康診断などで一般的に測定されてはいないが、研究班の大谷哲也(おおたに・てつや)・群馬大助手によると、生活習慣を改善し肥満を解消すれば、低下させるのに役立つ。同助手は「将来は、大腸がんのリスクを評価する指標にインスリン値を使えるかも」としている。
研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。体内でインスリンがつくられる際にできる副産物でインスリン測定の代用になる「Cペプタイド」の血中濃度と大腸がん発症との関係を調べた。
その結果、男性ではCペプタイド濃度が高いと発症の危険度が上昇する傾向を確認。最も濃度が高いグループの危険度は、最も低いグループの3.2倍だった。特に結腸がんでこの傾向が強く、危険度は3.5倍に拡大した。
女性ではこうした傾向はみられなかった。大谷助手は「性や地域によって発がんの仕組みが異なるのかもしれない」と分析している。】
このように日本人においても、高インスリン血症は大腸がんのリスクとなるようです。
大腸がん(盲腸がん、結腸がん、直腸がん)の中で、特に結腸がんは最大3.5倍の増加がみられたそうです。
高インスリン血症があると、細胞増殖、成長促進など、さまざまな働きをするIGF-Iの働きが活発になります。IGF-Iの働きが過剰になると、大腸がんの発生リスクが高くなるとされています。高インスリン血症があると、IGF-Iに結合してその働きを抑えるIGFBP-1の産生が抑制されてしまい、IGF-Iが過剰に働くようになるとされています。
3)食後高血糖ガイドライン2007国際糖尿病連合によれば、食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連するとのことです。
「食後高血糖は膵癌の発症に関与している可能性があります(1~3)。
成人男女35,658例を対象とした前向き大規模コホート研究(65)において、膵癌の死亡率と負荷後血糖値との間に強い相関が認められました。
負荷後血糖値121mg/dL未満に保たれた者と比較し、負荷後血糖値が200mg/dLを上回った者の膵癌発症の相対リスクは2.15でした。
この関連は女性よりも男性で強く認められました。
食後高血糖に伴うる膵癌発症のリスク上昇は他の研究でも認められています(2)(3)。」
(1) Gapstur SM, Gann PH, Lowe W, Liu K,
Colangelo L, Dyer A. Abnormal glucose metabolism
and pancreatic cancer mortality. JAMA 2000;
283(19):2552-2558.
(2) Larsson SC, Bergkvist L, Wolk A.
Consumption of sugar and sugar-sweetened foods
and the risk of pancreatic cancer in a prospective
study. Am J Clin Nutr 2006; 84(5):1171-1176.
(3) Michaud DS, Liu S, Giovannucci E, Willett
WC, Colditz GA, Fuchs CS. Dietary sugar, glycemic
load, and pancreatic cancer risk in a prospective
study. J Natl Cancer Inst 2002; 94(17):1293-1300.
結論です。
やはり、高インスリン血症と高血糖には、発がんリスクがあるようです。
江部康二
今回は、高インスリン血症と高血糖と発がんリスクのお話しです。
1)2005年の第65回米国糖尿病学会で、カナダのSamantha博士等が、10309名の糖尿病患者の研究成果を報告しました。
「メトフォルミン(インスリン分泌を促進させない薬)を使用しているグループに比べて、インスリンを注射しているグループは、癌死亡率が1.9倍高まる。SU剤(インスリン分泌促進剤)内服しているグループは癌死亡率が1.3倍高まる。」
この研究は、高インスリン血症の発ガン促進作用を検証した研究です。
Samantha博士等は内因性であれ、外因性であれ、
「循環しているインスリンレベルが増加すると腫瘍の進展や死亡率が高まる。」
との考えを示しました。
インスリンは、人体に絶対に必要不可欠なホルモンですが、分泌量や必要量が少なくてすめば、それにこしたことはないようです。
2)インスリンが高い男性は大腸がんになりやすい
記事:共同通信社 2007年3月1日
【血液中の糖分を筋肉などが取り込むのを促すホルモン、インスリンの値が高い男性は、低い男性に比べ最大で3倍程度、大腸がんになりやすいとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎(つがね・しょういちろう)国立がんセンター予防研究部長)が1日発表した。
こうした人は肥満や高インスリン血症、糖尿病に陥っている恐れがあり、ホルモンバランスが崩れることも加わって発がんを促している可能性があるという。
インスリンは健康診断などで一般的に測定されてはいないが、研究班の大谷哲也(おおたに・てつや)・群馬大助手によると、生活習慣を改善し肥満を解消すれば、低下させるのに役立つ。同助手は「将来は、大腸がんのリスクを評価する指標にインスリン値を使えるかも」としている。
研究班は、全国9地域で40-69歳の男女約4万人を、1990年から2003年まで追跡。体内でインスリンがつくられる際にできる副産物でインスリン測定の代用になる「Cペプタイド」の血中濃度と大腸がん発症との関係を調べた。
その結果、男性ではCペプタイド濃度が高いと発症の危険度が上昇する傾向を確認。最も濃度が高いグループの危険度は、最も低いグループの3.2倍だった。特に結腸がんでこの傾向が強く、危険度は3.5倍に拡大した。
女性ではこうした傾向はみられなかった。大谷助手は「性や地域によって発がんの仕組みが異なるのかもしれない」と分析している。】
このように日本人においても、高インスリン血症は大腸がんのリスクとなるようです。
大腸がん(盲腸がん、結腸がん、直腸がん)の中で、特に結腸がんは最大3.5倍の増加がみられたそうです。
高インスリン血症があると、細胞増殖、成長促進など、さまざまな働きをするIGF-Iの働きが活発になります。IGF-Iの働きが過剰になると、大腸がんの発生リスクが高くなるとされています。高インスリン血症があると、IGF-Iに結合してその働きを抑えるIGFBP-1の産生が抑制されてしまい、IGF-Iが過剰に働くようになるとされています。
3)食後高血糖ガイドライン2007国際糖尿病連合によれば、食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連するとのことです。
「食後高血糖は膵癌の発症に関与している可能性があります(1~3)。
成人男女35,658例を対象とした前向き大規模コホート研究(65)において、膵癌の死亡率と負荷後血糖値との間に強い相関が認められました。
負荷後血糖値121mg/dL未満に保たれた者と比較し、負荷後血糖値が200mg/dLを上回った者の膵癌発症の相対リスクは2.15でした。
この関連は女性よりも男性で強く認められました。
食後高血糖に伴うる膵癌発症のリスク上昇は他の研究でも認められています(2)(3)。」
(1) Gapstur SM, Gann PH, Lowe W, Liu K,
Colangelo L, Dyer A. Abnormal glucose metabolism
and pancreatic cancer mortality. JAMA 2000;
283(19):2552-2558.
(2) Larsson SC, Bergkvist L, Wolk A.
Consumption of sugar and sugar-sweetened foods
and the risk of pancreatic cancer in a prospective
study. Am J Clin Nutr 2006; 84(5):1171-1176.
(3) Michaud DS, Liu S, Giovannucci E, Willett
WC, Colditz GA, Fuchs CS. Dietary sugar, glycemic
load, and pancreatic cancer risk in a prospective
study. J Natl Cancer Inst 2002; 94(17):1293-1300.
結論です。
やはり、高インスリン血症と高血糖には、発がんリスクがあるようです。
江部康二
2011年06月29日 (水)
こんにちは。
日経メディカル別冊編集のウェブ版に
「ダイエット清涼飲料の飲みすぎは禁物、胴囲の増加が飲まない人の6倍に」
という記事が載りました。
2011年6月24日~28日に開催された第71回米国糖尿病学会で発表された研究報告の紹介です。
384人を計9.6年観察しての結果です。
結論として、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群では、胴囲が平均4.74cm増えており、飲まない人の6倍に達していたとのことです。
演者らは、
「加糖飲料の消費を減らそうという努力は、ダイエット飲料の消費拡大につながっている。しかし、今回の結果は、ダイエット飲料の消費拡大に思わぬ落とし穴があることを示した」
と結論。
その上で、
「カロリーを減らすためにダイエット炭酸飲料の消費を促すことは、必ずしも賢明な対策とは言いがたい。カロリーはゼロかもしれないが、もたらす結果は期待通りではない」
と述べています。
この結果は、性別、登録時の胴囲、年齢、人種、教育水準、地域、余暇時の運動、糖尿病、喫煙状態およびフォローアップ期間の長さで補正した後のものです。
こうなると、カロリーゼロで何故、胴囲が増えるのかという疑問が湧いてきます。
記事にはこれ以上の記載はありませんが、上記の如く運動などの補正はしてあります。
記載がないので、ここからは想像に過ぎませんが、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群は、それ以外にも食生活全般が肥満しやすいスタイルと言うことなのでしょうか?
毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいて、それ以外も糖質制限食なら、胴囲が増えるとは思えません。
毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群は、おそらく炭水化物も結構摂取する食生活スタイルである可能性が高いと思います。
江部康二
以下は日経メディカル別冊編集のウェブ版・学会ダイジェストからの転載です。
☆☆☆☆☆
学会ダイジェスト:第71回米国糖尿病学会2011.6.27
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/ada2011/201106/520445.html
2011年6月24日~28日 San Diego, U.S.A.
2011. 6. 26
『ダイエット清涼飲料の飲みすぎは禁物、胴囲の増加が飲まない人の6倍に』
関連ジャンル: 糖尿病 メタボリックシンドローム 肥満 サプリ・食品
テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのSharon P Fowler氏
ダイエット清涼飲料を1日2本以上飲んでいる人は、胴囲の増加が飲まない人の6倍に達していることが報告された。サンアントニオ長寿高齢化研究(SALSA)により明らかになったもので、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのSharon P Fowler氏(写真)らが、6月24日から米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。
カロリーゼロをうたうダイエット清涼飲料の消費は、肥満やメタボリック症候群および糖尿病の発症増加と関係していると言われてきた。演者らは、これらの関係を検証するため、サンアントニオ長寿高齢化研究(San Antonio Longitudinal Study of Aging ;SALSA)の参加者を対象に、ダイエット清涼飲料の消費が胴囲に及ぼす影響を調べた。胴囲は、内臓脂肪の指標であり、また糖尿病や心血管疾患、癌および他の慢性疾患の主たる危険因子として広く使われている。
対象は、SALSA参加者のうち、登録時にダイエット清涼飲料の消費に関するデータを収集できていた384人。これを1日当たりのダイエット清涼飲料の消費量ごとに、0本、0.5本未満、0.5~1本未満、1~2本未満、2本以上の5群に層別化して、解析を行った。人種、教育水準において一部に有意差が見られたほかは、それぞれの対象群は同様の背景であった。
登録時から平均3.6年間隔で3回のフォローアップ検査を行い、身長、体重、胴囲およびダイエット清涼飲料の消費量について変化を追った。データは共分散分析(ANCOVA)を用いて解析し、各群の平均胴囲変化を全てのフォローアップ期間で比較した。なお、結果は、性別、登録時の胴囲、年齢、人種、教育水準、地域、余暇時の運動、糖尿病、喫煙状態およびフォローアップ期間の長さで補正した。
計9.6年追跡した結果、全体で見ると、ダイエット清涼飲料の消費群は、胴囲が2.11±0.33cm増加していたが、非消費群では0.76±0.24cmの増加にとどまっていた(p<0.01)。また、ダイエット清涼飲料消費と胴囲の変化の間には、正の関係が確認された(p<0.001)。各群でみると、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群では胴囲が平均4.74cm増えており、飲まない人の6倍に達していた(p<0.001)。
今回の結果をもとに演者らは、「加糖飲料の消費を減らそうという努力は、ダイエット飲料の消費拡大につながっている。しかし、今回の結果は、ダイエット飲料の消費拡大に思わぬ落とし穴があることを示した」と結論。その上で、「カロリーを減らすためにダイエット炭酸飲料の消費を促すことは、必ずしも賢明な対策とは言いがたい。カロリーはゼロかもしれないが、もたらす結果は期待通りではない」などと指摘した。
(日経メディカル別冊編集)
日経メディカル別冊編集のウェブ版に
「ダイエット清涼飲料の飲みすぎは禁物、胴囲の増加が飲まない人の6倍に」
という記事が載りました。
2011年6月24日~28日に開催された第71回米国糖尿病学会で発表された研究報告の紹介です。
384人を計9.6年観察しての結果です。
結論として、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群では、胴囲が平均4.74cm増えており、飲まない人の6倍に達していたとのことです。
演者らは、
「加糖飲料の消費を減らそうという努力は、ダイエット飲料の消費拡大につながっている。しかし、今回の結果は、ダイエット飲料の消費拡大に思わぬ落とし穴があることを示した」
と結論。
その上で、
「カロリーを減らすためにダイエット炭酸飲料の消費を促すことは、必ずしも賢明な対策とは言いがたい。カロリーはゼロかもしれないが、もたらす結果は期待通りではない」
と述べています。
この結果は、性別、登録時の胴囲、年齢、人種、教育水準、地域、余暇時の運動、糖尿病、喫煙状態およびフォローアップ期間の長さで補正した後のものです。
こうなると、カロリーゼロで何故、胴囲が増えるのかという疑問が湧いてきます。
記事にはこれ以上の記載はありませんが、上記の如く運動などの補正はしてあります。
記載がないので、ここからは想像に過ぎませんが、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群は、それ以外にも食生活全般が肥満しやすいスタイルと言うことなのでしょうか?
毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいて、それ以外も糖質制限食なら、胴囲が増えるとは思えません。
毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群は、おそらく炭水化物も結構摂取する食生活スタイルである可能性が高いと思います。
江部康二
以下は日経メディカル別冊編集のウェブ版・学会ダイジェストからの転載です。
☆☆☆☆☆
学会ダイジェスト:第71回米国糖尿病学会2011.6.27
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/ada2011/201106/520445.html
2011年6月24日~28日 San Diego, U.S.A.
2011. 6. 26
『ダイエット清涼飲料の飲みすぎは禁物、胴囲の増加が飲まない人の6倍に』
関連ジャンル: 糖尿病 メタボリックシンドローム 肥満 サプリ・食品
テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのSharon P Fowler氏
ダイエット清涼飲料を1日2本以上飲んでいる人は、胴囲の増加が飲まない人の6倍に達していることが報告された。サンアントニオ長寿高齢化研究(SALSA)により明らかになったもので、テキサス大学サンアントニオ健康科学センターのSharon P Fowler氏(写真)らが、6月24日から米サンディエゴで開催されている米国糖尿病学会(ADA2011)で発表した。
カロリーゼロをうたうダイエット清涼飲料の消費は、肥満やメタボリック症候群および糖尿病の発症増加と関係していると言われてきた。演者らは、これらの関係を検証するため、サンアントニオ長寿高齢化研究(San Antonio Longitudinal Study of Aging ;SALSA)の参加者を対象に、ダイエット清涼飲料の消費が胴囲に及ぼす影響を調べた。胴囲は、内臓脂肪の指標であり、また糖尿病や心血管疾患、癌および他の慢性疾患の主たる危険因子として広く使われている。
対象は、SALSA参加者のうち、登録時にダイエット清涼飲料の消費に関するデータを収集できていた384人。これを1日当たりのダイエット清涼飲料の消費量ごとに、0本、0.5本未満、0.5~1本未満、1~2本未満、2本以上の5群に層別化して、解析を行った。人種、教育水準において一部に有意差が見られたほかは、それぞれの対象群は同様の背景であった。
登録時から平均3.6年間隔で3回のフォローアップ検査を行い、身長、体重、胴囲およびダイエット清涼飲料の消費量について変化を追った。データは共分散分析(ANCOVA)を用いて解析し、各群の平均胴囲変化を全てのフォローアップ期間で比較した。なお、結果は、性別、登録時の胴囲、年齢、人種、教育水準、地域、余暇時の運動、糖尿病、喫煙状態およびフォローアップ期間の長さで補正した。
計9.6年追跡した結果、全体で見ると、ダイエット清涼飲料の消費群は、胴囲が2.11±0.33cm増加していたが、非消費群では0.76±0.24cmの増加にとどまっていた(p<0.01)。また、ダイエット清涼飲料消費と胴囲の変化の間には、正の関係が確認された(p<0.001)。各群でみると、毎日2本以上のダイエット清涼飲料を飲んでいる群では胴囲が平均4.74cm増えており、飲まない人の6倍に達していた(p<0.001)。
今回の結果をもとに演者らは、「加糖飲料の消費を減らそうという努力は、ダイエット飲料の消費拡大につながっている。しかし、今回の結果は、ダイエット飲料の消費拡大に思わぬ落とし穴があることを示した」と結論。その上で、「カロリーを減らすためにダイエット炭酸飲料の消費を促すことは、必ずしも賢明な対策とは言いがたい。カロリーはゼロかもしれないが、もたらす結果は期待通りではない」などと指摘した。
(日経メディカル別冊編集)
2011年06月28日 (火)
こんにちは。
今回は、ほりぐちさんから、糖質制限食で血糖値が劇的に改善とのコメントと、若干の質問をいただきました。
【11/06/27 ほりぐち
ほりぐち と申します。
投稿の方法がよくわからなくて・・・・
ここに書いております。
5月24日に体調が悪く掛り付けの医院で相当進んだ糖尿と判断され血液検査を行いました。
結果は血糖値:595、HbA1c:11.7でした。
結果、ジャヌビア錠を毎朝1錠のむ、糖分は摂取は極力控えるようにと処方されました。
数日間様子を見ましたが、尿糖の検査結果は+++以上で下がる気配は見られませんでした。(ドラッグですぐ検査紙を購入しました)
心配になりインターネットで検索、先生のブログを発見、アマゾンで本を入手してさっそく5月31日から糖質ゼロの食事に切り替えました。
2日後には尿糖は+次の日には+-と激変しました。(この後。自分の判断でジャヌビアを飲むのを中止しました。)
尿糖では判断できないので血糖値の測定器を購入して血糖値も200以下になっていることが確認できました。
1カ月後の6月24日医院で採血しました。
結果は血糖値:595⇒109、HbA1c:11.7⇒9.5、中性脂肪:114⇒63、総コレステロール:234⇒282、HDL:62⇒76、LDL:149⇒193でした。
結果には大満足ですが、少し気になる点は総コレステロールが高くなったことです。
特にうれしかったのは中性脂肪の値が下がったことです。エコー検査で肝脂肪の蓄積を
注意されていましたので・・・
コメントをお願いしたいのは
1・先生には、ジャヌビアは十日以上飲んでいないことを告げたのですがジャヌビアは続けてもらはないといけませんと処方されました。飲んだ方がいいのでしょうか?
2・食事の時1回だけ家族と同じものを食べて食後1時間値で300近くになったのにびっくりしたのですが、糖質ゼロはずっと続けないといけないのでしょうか?
3・朝起きてすぐの血糖値より少し動いた朝食前の方が高いのですが気にしなくていいのでしょうか?
目にとめて頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします、(77歳男性)
投稿の方法が間違っていましたら正しい方法をおしえていただけると助かります】
ほりぐちさん。
本のご購入ありがとうございます。
ちゃんとコメント欄に投稿されてますよ。
ブログ記事の一番下の青い帯、編集のCM(コメント)をクリックして、投稿していただけばよろしいですので・・・。
さて、
5月24日 血糖値:595、HbA1c:11.7
6月24日 血糖値:109、HbA1c:9.5
劇的改善ですね。
良かったです。
中性脂肪が改善してHDLコレステロールが増加、良い傾向です。
総コレステロールとLDLコレステロールは、このまま経過をみられてよいと思います。
半年~1.2年で基準値となることが多いです。
『1・先生には、ジャヌビアは十日以上飲んでいないことを告げたのですがジャヌビアは続けてもらはないといけませんと処方されました。飲んだ方がいいのでしょうか?』
現在、糖質制限食だけで、しっかり改善しておられますので、ジャヌビアなしで経過をみてよいと思います。ドクターにもう1ヶ月、薬なしで様子をみたいとご相談下さい。7月の検査で、HbA1cは7%台になると思いますので、薬なしでもOKとなるのではないでしょうか?
『2・食事の時1回だけ家族と同じものを食べて食後1時間値で300近くになったのにびっくりしたのですが、糖質ゼロはずっと続けないといけないのでしょうか? 』
つらくなければ、このままスーパー糖質制限食をお続け下さい。
スーパー糖質制限食でも野菜に含まれる糖質がありますので、総摂取カロリーの12%くらいが糖質となります。
糖質だけが血糖値を上昇させ、脂質・タンパク質は上昇させません。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
お酒が飲める人は、蒸留酒や糖質ゼロ発泡酒や辛口赤ワインなどOKですので、スーパー糖質制限食がつらくありません。一方、お酒が飲めない人は、ややつらいかもしれませんが、強い味方がいます。
糖質制限ドットコム http://www.toushitsuseigen.com/
これらで、糖質制限食OKな食材や調味料、
パン、スイーツ、お好み焼き、蒲鉾、どら焼き、カレー、シチュー、ハンバーグ、
ポン酢、ウースターソース、お好みソース・・・等々
を販売しています。
ネットでも電話でもご購入いただけます。
『3・朝起きてすぐの血糖値より少し動いた朝食前の方が高いのですが気にしなくていいのでしょうか? 』
糖尿人特有の暁現象と思われます。
糖尿人においては、就寝後8~10時間で、血糖値が上昇することがあり、これを暁現象と呼びます。
早朝空腹時血糖値が110mg未満、
食後2時間血糖値が140mg未満、
HbA1cが6.5%未満→さらには5.8%未満、
を達成していれば、糖尿病合併症が予防できますので、暁現象はあまり気にしなくてよいと思います。
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。
一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。
しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となります。
また、就寝時より起床時の血糖値の方が、高値となることがあります。
バーンスタイン医師によれば、糖尿人においては、就寝後8~10時間に血糖値が上昇することがあり、暁現象というそうです。この場合、就寝時より起床時の血糖値が高値となります。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。
1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、
起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。
正常人はこのとき、インスリンを産生して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
江部康二
今回は、ほりぐちさんから、糖質制限食で血糖値が劇的に改善とのコメントと、若干の質問をいただきました。
【11/06/27 ほりぐち
ほりぐち と申します。
投稿の方法がよくわからなくて・・・・
ここに書いております。
5月24日に体調が悪く掛り付けの医院で相当進んだ糖尿と判断され血液検査を行いました。
結果は血糖値:595、HbA1c:11.7でした。
結果、ジャヌビア錠を毎朝1錠のむ、糖分は摂取は極力控えるようにと処方されました。
数日間様子を見ましたが、尿糖の検査結果は+++以上で下がる気配は見られませんでした。(ドラッグですぐ検査紙を購入しました)
心配になりインターネットで検索、先生のブログを発見、アマゾンで本を入手してさっそく5月31日から糖質ゼロの食事に切り替えました。
2日後には尿糖は+次の日には+-と激変しました。(この後。自分の判断でジャヌビアを飲むのを中止しました。)
尿糖では判断できないので血糖値の測定器を購入して血糖値も200以下になっていることが確認できました。
1カ月後の6月24日医院で採血しました。
結果は血糖値:595⇒109、HbA1c:11.7⇒9.5、中性脂肪:114⇒63、総コレステロール:234⇒282、HDL:62⇒76、LDL:149⇒193でした。
結果には大満足ですが、少し気になる点は総コレステロールが高くなったことです。
特にうれしかったのは中性脂肪の値が下がったことです。エコー検査で肝脂肪の蓄積を
注意されていましたので・・・
コメントをお願いしたいのは
1・先生には、ジャヌビアは十日以上飲んでいないことを告げたのですがジャヌビアは続けてもらはないといけませんと処方されました。飲んだ方がいいのでしょうか?
2・食事の時1回だけ家族と同じものを食べて食後1時間値で300近くになったのにびっくりしたのですが、糖質ゼロはずっと続けないといけないのでしょうか?
3・朝起きてすぐの血糖値より少し動いた朝食前の方が高いのですが気にしなくていいのでしょうか?
目にとめて頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします、(77歳男性)
投稿の方法が間違っていましたら正しい方法をおしえていただけると助かります】
ほりぐちさん。
本のご購入ありがとうございます。
ちゃんとコメント欄に投稿されてますよ。
ブログ記事の一番下の青い帯、編集のCM(コメント)をクリックして、投稿していただけばよろしいですので・・・。
さて、
5月24日 血糖値:595、HbA1c:11.7
6月24日 血糖値:109、HbA1c:9.5
劇的改善ですね。
良かったです。
中性脂肪が改善してHDLコレステロールが増加、良い傾向です。
総コレステロールとLDLコレステロールは、このまま経過をみられてよいと思います。
半年~1.2年で基準値となることが多いです。
『1・先生には、ジャヌビアは十日以上飲んでいないことを告げたのですがジャヌビアは続けてもらはないといけませんと処方されました。飲んだ方がいいのでしょうか?』
現在、糖質制限食だけで、しっかり改善しておられますので、ジャヌビアなしで経過をみてよいと思います。ドクターにもう1ヶ月、薬なしで様子をみたいとご相談下さい。7月の検査で、HbA1cは7%台になると思いますので、薬なしでもOKとなるのではないでしょうか?
『2・食事の時1回だけ家族と同じものを食べて食後1時間値で300近くになったのにびっくりしたのですが、糖質ゼロはずっと続けないといけないのでしょうか? 』
つらくなければ、このままスーパー糖質制限食をお続け下さい。
スーパー糖質制限食でも野菜に含まれる糖質がありますので、総摂取カロリーの12%くらいが糖質となります。
糖質だけが血糖値を上昇させ、脂質・タンパク質は上昇させません。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿人の血糖値を約3mg上昇させます。
お酒が飲める人は、蒸留酒や糖質ゼロ発泡酒や辛口赤ワインなどOKですので、スーパー糖質制限食がつらくありません。一方、お酒が飲めない人は、ややつらいかもしれませんが、強い味方がいます。
糖質制限ドットコム http://www.toushitsuseigen.com/
これらで、糖質制限食OKな食材や調味料、
パン、スイーツ、お好み焼き、蒲鉾、どら焼き、カレー、シチュー、ハンバーグ、
ポン酢、ウースターソース、お好みソース・・・等々
を販売しています。
ネットでも電話でもご購入いただけます。
『3・朝起きてすぐの血糖値より少し動いた朝食前の方が高いのですが気にしなくていいのでしょうか? 』
糖尿人特有の暁現象と思われます。
糖尿人においては、就寝後8~10時間で、血糖値が上昇することがあり、これを暁現象と呼びます。
早朝空腹時血糖値が110mg未満、
食後2時間血糖値が140mg未満、
HbA1cが6.5%未満→さらには5.8%未満、
を達成していれば、糖尿病合併症が予防できますので、暁現象はあまり気にしなくてよいと思います。
空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。
一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。
正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。
しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。
インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となります。
また、就寝時より起床時の血糖値の方が、高値となることがあります。
バーンスタイン医師によれば、糖尿人においては、就寝後8~10時間に血糖値が上昇することがあり、暁現象というそうです。この場合、就寝時より起床時の血糖値が高値となります。
朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。
1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、
起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。
暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。
早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。
正常人はこのとき、インスリンを産生して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。
江部康二
2011年06月27日 (月)
こんにちは。
スーパー糖質制限食に発ガンのリスクはあるのでしょうか?
総摂取カロリーに対して
「脂質56%、タンパク質32%、糖質12%」
という構成比がスーパー糖質制限食です。
当然、従来の一般的な食生活に比べれば、高脂質・高タンパク食となります。
ブログ読者の皆さんが一番心配なのは、高脂質・高タンパク食を長年続けたら、何らかのガンになり易くなるのではないかという懸念でしょう。
これに対しては、
「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」
というのが、結論です。
すなわち、
「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが増えるというエビデンスはない。」
ですし、一方
「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが減るというエビデンスもない。」
ということです。
これは、糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団におけるガンの発生を、10年.20年経過を追ったような臨床研究は、現時点で存在しないので、当然の結論です。
【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究
「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」
要旨
「低炭水化物食と死亡率の関連を長期にわたって調べたデータはほとんどない。今回,前向きコホート研究で,Nurses' Health Study(訳注:看護師の健康調査)に参加した85,168人の女性とHealth Professionals' Follow-up Study(訳注:医療従事者追跡研究)に参加した44,548人の男性を最大26年間追跡した。動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率,心血管死亡率,がん死亡率が高かった。一方,植物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率と心血管死亡率が低かった。」】
この論文の、
「糖質制限食(低炭水化物食)で、動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では、全死亡率、心血管死亡率、がん死亡率が高かった。」
を根拠にして、糖質制限食は発ガンのリスクが懸念されると言う人もいますが、これは根本的な誤解です。
この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35~42%を、炭水化物から摂取しているグループにおける話です。
総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取しているグループ は、この論文のどこにも登場しないので、比較不能です。
つまり、高雄病院流のスーパー糖質制限食を実践している人においては、この論文は全く参考になりません。
炭水化物を総摂取エネルギーの60%食べているグループに比べれば、炭水化物35~42%のグループのほうが、確かに低糖質食です。それで低炭水化物食のコホート研究としたのでしょう。
一方、糖質を総摂取エネルギーの12%しか食べていないグループに比べれば、炭水化物35~42%のグループは3倍以上の高糖質食であり、低糖質食とは言えません。
これまで多くの研究で、高インスリン血症による腫瘍増殖・発ガン促進作用が示されています。
糖質を総摂取エネルギーの12%とする、スーパー糖質制限食なら食事1回分の糖質は10~20gで、追加分泌インスリンは、せいぜい基礎分泌の約2倍ていどです。
一方、炭水化物摂取比率35~42%のグループは、1回の食事の糖質は50g以上であり、食事の度に約10~20倍の追加分泌インスリンが分泌されます。
すなわち、炭水化物摂取比率35~42%のグループでは、明白な発ガンリスクとなるインスリン分泌が改善できていません。
これだけのインスリン分泌量は、糖質60%のグループとさほど変わらないと思います。
スーパー糖質制限食なら、発ガンリスクのインスリン分泌は極少量で済みます。
これらのことは生理学的な事実です。
また国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」2007年、によれば、食後高血糖そのものが、ある種のガンのリスクとなります。
糖質を総摂取エネルギーの12%とするスーパー糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、炭水化物摂取比率35~42%のグループは、1日3回以上食後高血糖を生じます。
「インスリン分泌が極少量」「食後高血糖がない」という、発ガンリスクを軽減させる効果があるスーパー糖質制限食において、長年続けることでそれらを上回る何らかの発ガンリスクが、存在するのかしないのかということは
、今後長期にわたり検討していく必要はあるでしょう。
幸い、現在までそのような謎の発ガンリスクは知られていませんが・・・。
結論です。
「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」のですが、発ガンリスクが明白に確認されているインスリンの分泌が、スーパー糖質制限食なら、極少量に抑えられることは、生理学的事実です。
また、発ガンリスクの一つの食後高血糖も、スーパー糖質制限食なら生じません。
江部康二
スーパー糖質制限食に発ガンのリスクはあるのでしょうか?
総摂取カロリーに対して
「脂質56%、タンパク質32%、糖質12%」
という構成比がスーパー糖質制限食です。
当然、従来の一般的な食生活に比べれば、高脂質・高タンパク食となります。
ブログ読者の皆さんが一番心配なのは、高脂質・高タンパク食を長年続けたら、何らかのガンになり易くなるのではないかという懸念でしょう。
これに対しては、
「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」
というのが、結論です。
すなわち、
「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが増えるというエビデンスはない。」
ですし、一方
「スーパー糖質制限食で発ガンのリスクが減るというエビデンスもない。」
ということです。
これは、糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団におけるガンの発生を、10年.20年経過を追ったような臨床研究は、現時点で存在しないので、当然の結論です。
【低炭水化物食と全死亡率および死因別死亡率:二つのコホート研究
「Annals of Internal medicine
September 7 2010 vol.153 Issue5 p289-298
Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality:Two Cohort Studies
Teresa T. Fung, Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu」
要旨
「低炭水化物食と死亡率の関連を長期にわたって調べたデータはほとんどない。今回,前向きコホート研究で,Nurses' Health Study(訳注:看護師の健康調査)に参加した85,168人の女性とHealth Professionals' Follow-up Study(訳注:医療従事者追跡研究)に参加した44,548人の男性を最大26年間追跡した。動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率,心血管死亡率,がん死亡率が高かった。一方,植物性脂肪および蛋白質を重視した食事では,全死亡率と心血管死亡率が低かった。」】
この論文の、
「糖質制限食(低炭水化物食)で、動物性脂肪および蛋白質を重視した食事では、全死亡率、心血管死亡率、がん死亡率が高かった。」
を根拠にして、糖質制限食は発ガンのリスクが懸念されると言う人もいますが、これは根本的な誤解です。
この論文はあくまでも、総摂取エネルギーの35~42%を、炭水化物から摂取しているグループにおける話です。
総摂取エネルギーの12%を糖質から摂取しているグループ は、この論文のどこにも登場しないので、比較不能です。
つまり、高雄病院流のスーパー糖質制限食を実践している人においては、この論文は全く参考になりません。
炭水化物を総摂取エネルギーの60%食べているグループに比べれば、炭水化物35~42%のグループのほうが、確かに低糖質食です。それで低炭水化物食のコホート研究としたのでしょう。
一方、糖質を総摂取エネルギーの12%しか食べていないグループに比べれば、炭水化物35~42%のグループは3倍以上の高糖質食であり、低糖質食とは言えません。
これまで多くの研究で、高インスリン血症による腫瘍増殖・発ガン促進作用が示されています。
糖質を総摂取エネルギーの12%とする、スーパー糖質制限食なら食事1回分の糖質は10~20gで、追加分泌インスリンは、せいぜい基礎分泌の約2倍ていどです。
一方、炭水化物摂取比率35~42%のグループは、1回の食事の糖質は50g以上であり、食事の度に約10~20倍の追加分泌インスリンが分泌されます。
すなわち、炭水化物摂取比率35~42%のグループでは、明白な発ガンリスクとなるインスリン分泌が改善できていません。
これだけのインスリン分泌量は、糖質60%のグループとさほど変わらないと思います。
スーパー糖質制限食なら、発ガンリスクのインスリン分泌は極少量で済みます。
これらのことは生理学的な事実です。
また国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」2007年、によれば、食後高血糖そのものが、ある種のガンのリスクとなります。
糖質を総摂取エネルギーの12%とするスーパー糖質制限食なら、食後高血糖は生じませんが、炭水化物摂取比率35~42%のグループは、1日3回以上食後高血糖を生じます。
「インスリン分泌が極少量」「食後高血糖がない」という、発ガンリスクを軽減させる効果があるスーパー糖質制限食において、長年続けることでそれらを上回る何らかの発ガンリスクが、存在するのかしないのかということは
、今後長期にわたり検討していく必要はあるでしょう。
幸い、現在までそのような謎の発ガンリスクは知られていませんが・・・。
結論です。
「スーパー糖質制限食と発ガンのリスクに関するエビデンスはない」のですが、発ガンリスクが明白に確認されているインスリンの分泌が、スーパー糖質制限食なら、極少量に抑えられることは、生理学的事実です。
また、発ガンリスクの一つの食後高血糖も、スーパー糖質制限食なら生じません。
江部康二
2011年06月26日 (日)
こんにちは。
1)食後高血糖が有害→エビデンスあり。
2)食後高血糖を起こすのは糖質だけ→ADA(米国糖尿病協会)(*)
3)糖質制限食なら食後高血糖は生じない→理論的にもデータ的にも明白。
4)カロリー制限食なら必ず食後高血糖を生じる→理論的にもデータ的にも明白。
(*)ADA:Life With Diabetes A Siries of Teaching Outlines by the Michigan Diabetes Research and Training Center 2004
2011年6月24日、25日のブログ記事で、
1)2)を明示しました。
2)より、
3)3食主食抜きのスーパー糖質制限食なら、1日通して食後高血糖を生じないのは理論的に明白であり、事実、高雄病院の糖尿病入院患者さん500人以上のデータでも明らかです。
また、
2)より、
4)カロリー制限食(高糖質食)では必ず食後高血糖を生じるのは理論的に明白であり、高雄病院の糖尿病入院患者さん500人以上のデータでも明らかです。
さて糖質制限食には3つのパターンがあります。
<糖質制限食の3パターン>
A)、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
B)、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
C)、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
糖尿人であれば、当然
A)のスーパー糖質制限食が最適であり、これなら1日通して食後高血糖のリスクはほとんどありません。
一方、
B)をスタンダードとしているのは、サラリーマン諸氏の場合、昼食が弁当や定食などがほとんどで、現実として主食抜きは困難という事情によるものです。
しかし、糖尿人が昼食の1回とはいえ、主食(糖質)を摂取すれば、必ず食後高血糖を生じます。
食後高血糖が有害であることは、明白です。
それで、高雄病院では、主食(糖質)摂取直前30秒に、「グルコバイやベイスンなどα-GI阻害剤」や「グルファストなど速効型インスリン分泌促進剤」を単独あるいは併用して、食後2時間血糖値140mg/dl未満をめざします。
しかし、これらの薬剤の効果は限定的であり、なかなかこの目標達成は簡単ではありません。
C)のプチ糖質制限食は、1日2回食後高血糖が生じるので、糖尿人にはお奨めできません。
このように、糖尿人が食後高血糖という明白なリスクを防ぐためには、スーパー糖質制限食が基本であり、やむを得ない場合には「スタンダード糖質制限食+内服薬」という位置づけとなります。
江部康二
1)食後高血糖が有害→エビデンスあり。
2)食後高血糖を起こすのは糖質だけ→ADA(米国糖尿病協会)(*)
3)糖質制限食なら食後高血糖は生じない→理論的にもデータ的にも明白。
4)カロリー制限食なら必ず食後高血糖を生じる→理論的にもデータ的にも明白。
(*)ADA:Life With Diabetes A Siries of Teaching Outlines by the Michigan Diabetes Research and Training Center 2004
2011年6月24日、25日のブログ記事で、
1)2)を明示しました。
2)より、
3)3食主食抜きのスーパー糖質制限食なら、1日通して食後高血糖を生じないのは理論的に明白であり、事実、高雄病院の糖尿病入院患者さん500人以上のデータでも明らかです。
また、
2)より、
4)カロリー制限食(高糖質食)では必ず食後高血糖を生じるのは理論的に明白であり、高雄病院の糖尿病入院患者さん500人以上のデータでも明らかです。
さて糖質制限食には3つのパターンがあります。
<糖質制限食の3パターン>
A)、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
B)、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
C)、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
糖尿人であれば、当然
A)のスーパー糖質制限食が最適であり、これなら1日通して食後高血糖のリスクはほとんどありません。
一方、
B)をスタンダードとしているのは、サラリーマン諸氏の場合、昼食が弁当や定食などがほとんどで、現実として主食抜きは困難という事情によるものです。
しかし、糖尿人が昼食の1回とはいえ、主食(糖質)を摂取すれば、必ず食後高血糖を生じます。
食後高血糖が有害であることは、明白です。
それで、高雄病院では、主食(糖質)摂取直前30秒に、「グルコバイやベイスンなどα-GI阻害剤」や「グルファストなど速効型インスリン分泌促進剤」を単独あるいは併用して、食後2時間血糖値140mg/dl未満をめざします。
しかし、これらの薬剤の効果は限定的であり、なかなかこの目標達成は簡単ではありません。
C)のプチ糖質制限食は、1日2回食後高血糖が生じるので、糖尿人にはお奨めできません。
このように、糖尿人が食後高血糖という明白なリスクを防ぐためには、スーパー糖質制限食が基本であり、やむを得ない場合には「スタンダード糖質制限食+内服薬」という位置づけとなります。
江部康二
2011年06月25日 (土)
こんにちは。
昨日の記事では、食後高血糖が有害というエビデンスを明示しました。
そして、米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは、含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち、糖質だけが血糖値を上昇させます。
即ち、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)をを起こすのは糖質だけです。脂質・タンパク質は摂取しても、血糖値を上昇させません。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が 、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されています。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので、食後血糖値は3mgも上昇しないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。食後の急激は高血糖も勿論生じません。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、 カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、 一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後の急激な高血糖が必ず生じるのです。
江部康二
昨日の記事では、食後高血糖が有害というエビデンスを明示しました。
そして、米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは、含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち、糖質だけが血糖値を上昇させます。
即ち、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)をを起こすのは糖質だけです。脂質・タンパク質は摂取しても、血糖値を上昇させません。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が 、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されています。
1gの糖質が体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので、食後血糖値は3mgも上昇しないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。食後の急激は高血糖も勿論生じません。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、 カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、 一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後の急激な高血糖が必ず生じるのです。
江部康二
2011年06月24日 (金)
こんばんは。
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)が、2007年に「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を発表しました。
食後高血糖について、少し気になったので、あらためて検討してみました。
http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf
このサイトは、同ガイドラインの日本語訳PDFファイルです。
興味がある人は、覗いてみてください。
国際糖尿病連合(IDF)「食後血糖値の管理に関するガイドライン」によれば、食後血糖値の急激な上昇をコントロールすることは、糖尿病合併症を防ぐ上で、HbA1cの目標値達成と同様、あるいはそれ以上の重要性をもつ可能性があるというエビデンスが増えてきているそうです。
食後高血糖と糖尿病合併症(心血管リスク、網膜症、認知症、ある種のがん・・・)に関するエビデンスが列挙してあります。
こうなると、グルコーススパイクを防ぐことが、極めて大切な意味をもつということで、そのためには、糖質制限食が最適の治療法ですね。
以下は転載禁止なので、国際糖尿病連合(IDF)「食後血糖値の管理に関するガイドライン」の要約です。
問1 食後高血糖は有害か?
食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
推奨
食後高血糖は有害なので、対策を講じる必要がある。
問2 食後高血糖の治療は有効か?
食後血糖値に対する薬剤治療は血管イベントを減少させる。
食後および空腹時血糖値の両方をコントロールすることは、血糖管理を達成する上で重要な戦略である。
推奨
食後高血糖を呈する者に対して,食後血糖値を低下させる治療戦略を実施する
問3 食後血糖値の治療にはどのような治療法が有効か。
糖負荷の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
ある種の薬剤は選択的に食後血糖値を低下させる。
推奨
食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
問4 食後血糖値管理の目標は何か、それをどのように評価すべきか。
推奨
低血糖とならない限り,食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。
血糖値測定(SMBG)で食後血糖値のモニタリングをするのが有効である。
江部康二
国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)が、2007年に「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を発表しました。
食後高血糖について、少し気になったので、あらためて検討してみました。
http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf
このサイトは、同ガイドラインの日本語訳PDFファイルです。
興味がある人は、覗いてみてください。
国際糖尿病連合(IDF)「食後血糖値の管理に関するガイドライン」によれば、食後血糖値の急激な上昇をコントロールすることは、糖尿病合併症を防ぐ上で、HbA1cの目標値達成と同様、あるいはそれ以上の重要性をもつ可能性があるというエビデンスが増えてきているそうです。
食後高血糖と糖尿病合併症(心血管リスク、網膜症、認知症、ある種のがん・・・)に関するエビデンスが列挙してあります。
こうなると、グルコーススパイクを防ぐことが、極めて大切な意味をもつということで、そのためには、糖質制限食が最適の治療法ですね。
以下は転載禁止なので、国際糖尿病連合(IDF)「食後血糖値の管理に関するガイドライン」の要約です。
問1 食後高血糖は有害か?
食後および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である。
推奨
食後高血糖は有害なので、対策を講じる必要がある。
問2 食後高血糖の治療は有効か?
食後血糖値に対する薬剤治療は血管イベントを減少させる。
食後および空腹時血糖値の両方をコントロールすることは、血糖管理を達成する上で重要な戦略である。
推奨
食後高血糖を呈する者に対して,食後血糖値を低下させる治療戦略を実施する
問3 食後血糖値の治療にはどのような治療法が有効か。
糖負荷の低い食事は食後血糖値のコントロールに有益である。
ある種の薬剤は選択的に食後血糖値を低下させる。
推奨
食後血糖値をコントロールするためには、食事療法および薬物療法を考慮すべきである。
問4 食後血糖値管理の目標は何か、それをどのように評価すべきか。
推奨
低血糖とならない限り,食後2時間血糖値は140mg/dLを超えないようにする。
血糖値測定(SMBG)で食後血糖値のモニタリングをするのが有効である。
江部康二
2011年06月23日 (木)
こんばんは。
インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて、肥満人さんから、コメント・質問をいただきました。
復習を兼ねて、考えてみましょう。
今回の記事は、一部、小難しいところがあるので、飛ばして読んで貰ってもいいですよ。
【11/06/23 肥満人
インククレチンについての素朴な疑問です
江部先生
糖尿に関する根源的な解説
思わず納得です!
ちょうど
インクレチンのことについても
記述されていましたので
日ごろ 素人なりに 感じていた 素朴な疑問を コメントさせていただきます
よくSU剤はすい臓にムチ打つ(24時間)といわれますがインクレチン関連製剤も作用機序はちがっても β細胞に働きかけて インスリンを出させるという点はSU剤とかわりないように思えます。
ただ、インクレチン関連製剤が鞭打ついうことはほとんどいわれていないのですが これは インクレチン関連製剤が理論的には 消化器官が糖分を吸収したときのみ 作用することになっていて (グルファストのような速攻型製剤同様)作用時間がごく短時間なためダメージが少ないということで二次無効の可能性はすくないのでしょうか?】
肥満人さん。
コメント、ありがとうございます。
まずインクレチンとSU剤の作用機序には、明確な違いがあります。
インクレチンは、食事摂取により消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンで、上部小腸にあるK細胞から分泌されるGIPと、下部小腸にあるL細胞から分泌されるGlp1があります。
Glp1の主な生理作用はインスリン分泌促進作用ですが、それ以外に膵グルカゴン分泌抑制作用、消化管運動抑制作用、インスリン感受性亢進作用、そして膵β細胞保護・増殖作用が認められています。GIPはGlp1に比べると作用は弱いとされています。
そして、Glp1やGIPを分解するDPP-4という酵素を阻害して分解を抑制し、インクレチンの血中濃度を上昇させて保つのが、DPP-4阻害剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)です。
さて、上述のようにインクレチンがインスリン分泌を促す仕組みと、SU剤がインスリン分泌を促す仕組み(☆)は、実は異なっています。
難しい箇所は省いて、超簡単に言うと、SU剤はβ細胞表面のSU受容体と結合して、カリウムチャンネルを閉じっぱなしにしてしまい、その結果カルシウムが細胞内に流入してインスリンを分泌させます。
この場合、SU剤の作用時間(24~12時間)の間は、血糖が高かろうが低かろうが関係なく、ずっとインスリンはだだ漏れ状態です。だから低血糖が生じやすいのですね。
そして、インスリンを分泌しっぱなしのβ細胞が、疲弊していく可能性があるわけです。
まあ、SU剤というのは、人為的に無理矢理カリウムチャンネルを閉じて、β細胞を騙しているようなものですかね。
一方、インクレチンは、糖質や脂質を摂取すると消化管から分泌されて、β細胞のインクレチン受容体に作用してβ細胞内のサイクリックAMPを上昇させ、インスリン分泌の増幅経路に働きます。
こちらは、糖質を食べて血糖値が上昇し、β細胞内にとりこまれてATPが産生されて、カリウムチャンネルが閉じてカルシウムが細胞内に入ってきたときだけ、増幅経路に働いてインスリンを分泌させます。
血糖値が下がって108mg/dlくらいになると、β細胞はブドウ糖を取り込まなくなり細胞内カルシウムは増加しないので、インクレチン濃度が高くても増幅経路は作用せず、インスリンは分泌されません。
つまり、
1)糖質摂取→血糖値上昇→糖輸送体でβ細胞内にブドウ糖取り込み→β細胞内ATP上昇→カリウムチャンネル閉鎖→脱分極→カルシウムチャンネル活性化→細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌
という、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の一般的な経路の最後の過程
A)細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌
の経路をインクレチンによるβ細胞内サイクリックAMP上昇が増幅させて、
インスリン分泌を促すわけですね。
B)「β細胞内『カルシウム濃度+サイクリックAMP濃度』上昇」→インスリン分泌増幅
というわけです。
こういう作用機序なので、インクレチンは血糖値が高いときのみに、インスリン分泌作用を有し、108mg/dl以下に血糖値が下がってきたら、インスリン分泌作用がなくなるわけなので、単独使用では低血糖は理論的には起こりません。
またSU剤のように、24時間β細胞を鞭打つといった側面は皆無なので、β細胞も疲弊しないのだと思います。
江部康二
(☆)<SU剤の作用機序とブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路>
血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、ブドウ糖は膵臓のβ細胞の表面に発現するGLUT2(糖輸送体2)により、細胞の中に取り込まれます。
取り込まれたブドウ糖は代謝を受け、ミトコンドリアでATP(エネルギー)が産生されます。このATP濃度が増すと、β細胞表面のカリウムチャンネルが閉じます。
そうするとKが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じます。
その結果、カルシウムチャンネルが活性化しカルシウムが細胞内に流入します。カルシウム濃度が上昇すると、β細胞は活発になり、インスリンを分泌します。
この一連の流れが、ブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路です。
SU剤は、カリウムチャンネルの一部を構成するSU受容体と結合して、ATP濃度とは無関係にカリウムチャンネルを閉じてしまいます。
SU剤によりカリウムチャンネルが閉じてしまえば、上述の一般的なインスリン分泌経路の一連の流れと同様に、(Kが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じ、カルシウムチャンネルが活性化し)カルシウムが細胞内に流入しカルシウム濃度が上昇し、β細胞は活発になりインスリンを分泌します。
インクレチンとSU剤のインスリン分泌促進作用機序の違いについて、肥満人さんから、コメント・質問をいただきました。
復習を兼ねて、考えてみましょう。
今回の記事は、一部、小難しいところがあるので、飛ばして読んで貰ってもいいですよ。
【11/06/23 肥満人
インククレチンについての素朴な疑問です
江部先生
糖尿に関する根源的な解説
思わず納得です!
ちょうど
インクレチンのことについても
記述されていましたので
日ごろ 素人なりに 感じていた 素朴な疑問を コメントさせていただきます
よくSU剤はすい臓にムチ打つ(24時間)といわれますがインクレチン関連製剤も作用機序はちがっても β細胞に働きかけて インスリンを出させるという点はSU剤とかわりないように思えます。
ただ、インクレチン関連製剤が鞭打ついうことはほとんどいわれていないのですが これは インクレチン関連製剤が理論的には 消化器官が糖分を吸収したときのみ 作用することになっていて (グルファストのような速攻型製剤同様)作用時間がごく短時間なためダメージが少ないということで二次無効の可能性はすくないのでしょうか?】
肥満人さん。
コメント、ありがとうございます。
まずインクレチンとSU剤の作用機序には、明確な違いがあります。
インクレチンは、食事摂取により消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンで、上部小腸にあるK細胞から分泌されるGIPと、下部小腸にあるL細胞から分泌されるGlp1があります。
Glp1の主な生理作用はインスリン分泌促進作用ですが、それ以外に膵グルカゴン分泌抑制作用、消化管運動抑制作用、インスリン感受性亢進作用、そして膵β細胞保護・増殖作用が認められています。GIPはGlp1に比べると作用は弱いとされています。
そして、Glp1やGIPを分解するDPP-4という酵素を阻害して分解を抑制し、インクレチンの血中濃度を上昇させて保つのが、DPP-4阻害剤(ジャヌビア、エクア、ネシーナなど)です。
さて、上述のようにインクレチンがインスリン分泌を促す仕組みと、SU剤がインスリン分泌を促す仕組み(☆)は、実は異なっています。
難しい箇所は省いて、超簡単に言うと、SU剤はβ細胞表面のSU受容体と結合して、カリウムチャンネルを閉じっぱなしにしてしまい、その結果カルシウムが細胞内に流入してインスリンを分泌させます。
この場合、SU剤の作用時間(24~12時間)の間は、血糖が高かろうが低かろうが関係なく、ずっとインスリンはだだ漏れ状態です。だから低血糖が生じやすいのですね。
そして、インスリンを分泌しっぱなしのβ細胞が、疲弊していく可能性があるわけです。
まあ、SU剤というのは、人為的に無理矢理カリウムチャンネルを閉じて、β細胞を騙しているようなものですかね。
一方、インクレチンは、糖質や脂質を摂取すると消化管から分泌されて、β細胞のインクレチン受容体に作用してβ細胞内のサイクリックAMPを上昇させ、インスリン分泌の増幅経路に働きます。
こちらは、糖質を食べて血糖値が上昇し、β細胞内にとりこまれてATPが産生されて、カリウムチャンネルが閉じてカルシウムが細胞内に入ってきたときだけ、増幅経路に働いてインスリンを分泌させます。
血糖値が下がって108mg/dlくらいになると、β細胞はブドウ糖を取り込まなくなり細胞内カルシウムは増加しないので、インクレチン濃度が高くても増幅経路は作用せず、インスリンは分泌されません。
つまり、
1)糖質摂取→血糖値上昇→糖輸送体でβ細胞内にブドウ糖取り込み→β細胞内ATP上昇→カリウムチャンネル閉鎖→脱分極→カルシウムチャンネル活性化→細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌
という、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の一般的な経路の最後の過程
A)細胞内カルシウム濃度上昇→インスリン分泌
の経路をインクレチンによるβ細胞内サイクリックAMP上昇が増幅させて、
インスリン分泌を促すわけですね。
B)「β細胞内『カルシウム濃度+サイクリックAMP濃度』上昇」→インスリン分泌増幅
というわけです。
こういう作用機序なので、インクレチンは血糖値が高いときのみに、インスリン分泌作用を有し、108mg/dl以下に血糖値が下がってきたら、インスリン分泌作用がなくなるわけなので、単独使用では低血糖は理論的には起こりません。
またSU剤のように、24時間β細胞を鞭打つといった側面は皆無なので、β細胞も疲弊しないのだと思います。
江部康二
(☆)<SU剤の作用機序とブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路>
血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、ブドウ糖は膵臓のβ細胞の表面に発現するGLUT2(糖輸送体2)により、細胞の中に取り込まれます。
取り込まれたブドウ糖は代謝を受け、ミトコンドリアでATP(エネルギー)が産生されます。このATP濃度が増すと、β細胞表面のカリウムチャンネルが閉じます。
そうするとKが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じます。
その結果、カルシウムチャンネルが活性化しカルシウムが細胞内に流入します。カルシウム濃度が上昇すると、β細胞は活発になり、インスリンを分泌します。
この一連の流れが、ブドウ糖刺激による一般的なインスリンの分泌経路です。
SU剤は、カリウムチャンネルの一部を構成するSU受容体と結合して、ATP濃度とは無関係にカリウムチャンネルを閉じてしまいます。
SU剤によりカリウムチャンネルが閉じてしまえば、上述の一般的なインスリン分泌経路の一連の流れと同様に、(Kが細胞外にでなくなり、細胞膜の脱分極が起こり細胞内外で電位差が生じ、カルシウムチャンネルが活性化し)カルシウムが細胞内に流入しカルシウム濃度が上昇し、β細胞は活発になりインスリンを分泌します。
2011年06月22日 (水)
こんにちは。
人類の主食が穀物でなかったことの(状況)証拠・・・。
イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解は?
インクレチンは何故2分で失活する?
血糖値を下げるシステムはインスリンだけでバックアップがないのは何故?
GLUT4だけがインスリン依存性なのは何故?
あくまで仮説(思考実験)なのですが、発想を思いきって転換すると興味深いことが見えてきます。
以下過去のブログに断片的に書いたことなどのまとめです。
<イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解>
今は穀物が人類の主食となっており、皆、当たり前に思い何の疑問も持っていません。しかし、こちらもまた当たり前なのですが、農耕が始まる前の人類の主食は、決して穀物ではありません。
ヒューマン・ニュートリションという英国の最も権威ある栄養学の本があります。920ぺージに及ぶ大著で、10版を重ねている名著です。この本の75ページに
『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいブドウ糖」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血糖およびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』
という記述があります。
人類の本来の主食は穀物ではないし、まだまだ穀物ベースの食物に適応していないと、明記してあり、私も全く同感です。
ヒューマン・ニュートリションでは、穀物の過剰摂取の害、特に精製炭水化物による「血糖およびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。
これは私が日頃主張している「現代人は精製炭水化物頻回過剰摂取によるブドウ糖ミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」という説と、全く同じといっていいと思います。
なお、<炭水化物=糖質+食物繊維>です。食物繊維は人体に吸収されないので、カロリーもゼロで、血糖値も上昇させません。カウントすべきは糖質のみです。
ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版 2004年
JS Garrow
WPT james
A Ralph 編
日本語版監修 細谷憲政
<インクレチンとDPP-4阻害剤、インクレチンは何故2分で失活する?>
DPP-4阻害剤という糖尿病の薬が、日本でも健康保険に収載されて2009年12月から発売されました。DPP-4阻害剤は、インクレチンというホルモンを血中にとどめる作用があります。インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンであり、GIPとGlp-1があります。
これらは、高血糖時には、SU剤とは異なる機序でインスリン分泌を促進させます。また、インスリン生合成を促進させます。血糖値が正常のときにはインスリン分泌を促進させず、食後高血糖の時にだけインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいです。
まことに都合のいいホルモンなのですが、DPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのです。このDPP-4という酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中に当分(約24時間ちかく)存在して、血糖降下作用を発揮してくれることになります。そこで登場したのが、ジャヌビア・グラクティブ・ネシーナ・エクアなどのDPP-4阻害剤です。
DPP-4阻害剤、まことに論理的に構築されたいい薬なのですが、少し根源的な疑問が湧いてきます。何故このような都合のいいホルモンが、人体においてわずか2分で分解され効果を失ってしまうのでしょうか。
考えられる一番リーズナブルな説明は、人類の進化の過程で、インクレチンは食後約2分ていど働けばもう必要充分であり、あとは消え去るのみだったということでしょう。
すなわち、農耕前の狩猟・採集時代約400万年間は、日常的な血糖値の上昇は、ほとんど無かったのですから、インクレチンが24時間も活性化している必然性はかけらもありません。復習ですが、血糖値を上げるのは糖質のみで、タンパク質・脂質はあげません。
農耕開始前の人類の食生活は、魚貝類・小動物・動物の肉・内臓・骨髄・野草・野菜・キノコ・海藻・昆虫などが日常的な食料です。時々食べることができたのは、木の実・ナッツ・果物・山芋などでしょう。
これらの中で、日常的には野菜、たまにナッツや果物を摂取したときに、その糖質量に応じて軽度血糖値が上昇しますので、インクレチンはそれに対応していたものと考えられます。そうであれば食後だけ約2分間働けば充分です。
農耕が始まり穀物を常食し、食後高血糖が日常的に生じるようになった後は、インクレチンにおおいに活躍して欲しいところですが、如何せん400万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまう癖がついているのです。
10000~4000年くらいの穀物が主食の歴史ていどでは、新たな都合のいい突然変異は生じなかったのでしょう。今この時代にDPP-4阻害剤の登場というのは、歴史の皮肉を感じます。
ともあれ、インクレチンが約2分間で分解されるという生理学的事実は、人類は主食が穀物(糖質)ではない状況で、400万年進化してきたことの、証拠といえます。
<血糖値を上昇させるシステムと血糖値を下げるシステム>
脳は、ケトン体をエネルギー源として、いくらでも利用できます。しかし、人体で唯一赤血球だけは、ミトコンドリアというエネルギー生産装置をもっていないので、ブドウ糖しか利用できません。従って、人体は赤血球のために、最低限の血糖値を常に確保する必要があり、多重のバックアップシステムを持っています。
グルカゴンやエピネフリンというホルモン、副腎皮質ステロイドホルモンなどは血糖上昇作用があります。そして肝臓でアミノ酸やグリセロール(中性脂肪の分解産物)や乳酸から糖新生してブドウ糖をつくり、血糖値を確保します。
一方、血糖値を下げるシステムは唯一インスリンのみです。 糖質をほとんど摂取しない農耕以前の400万年間は、血糖値が上がることはまれであり、追加分泌インスリンはほとんど必要なかったため、バックアップシステムをつくる必然性がなかったと考えられます。このことも、人類の主食が穀物(糖質)ではなかったことの状況証拠です。
<インスリンとGLUT4>
ブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。インスリンが追加分泌されると、通常は細胞内に沈んでいるGLUT4が細胞表面に移動して、血糖値を取り込めるようになるのです。
インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。
そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは
『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション→血糖値の細胞内への取り込み』
というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。
しかし、狩猟・採集時代には、今のような穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。
年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみです。この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。
すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。
また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓にも取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられ脂肪細胞に蓄えられます。
この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に変換されることも少なかったと思います。
次に果糖と中性脂肪について考えてみます。
果物に含まれる糖質の主成分の果糖ですが、実におもしろい性質を持っています。果糖が脂肪合成を誘導しやすい糖質であることは、以前から知られています。ヒトにおいて、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、血中の中性脂肪濃度を上昇させ、インスリン抵抗性を生じることが報告されています。
果物中の果糖は、GLUT5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。このとき果糖は、ブドウ糖より急速に代謝されるという特徴があります。
果糖は、肝臓での脂肪合成酵素群の発現を促進させる作用も持っており、急速に代謝されることと合わせて、とても中性脂肪に変わり易いのです。このように、果物の果糖は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質をもっており、現代では要注意食材といえます。
さて、それでは再び、狩猟・採集時代の人類の食生活を考えてみましょう。
果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年や20万年前に、アフリカの人類が、運良く果物にありついたとき、
A)『ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン追加分泌少量→GLUT4が脂肪細胞表面に移動して血糖を取り込んで中性脂肪に変えて蓄積』
B)『果糖→インスリンとは無関係にGLUT5により吸収されて肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪合成』
これらA)B)の2つのシステムが稼働したはずです。
A)B)の2つのシステムは、農耕以前の人類の食生活と生存競争において、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。
即ち、体に中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットであったからです。
果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕以前の人類においてはとても大きな利点であったと考えられます。
体脂肪をあるていど蓄えることができるのが、現世人類の大きな特徴です。特に現世人類の女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置としてはとても優れたものであり、現世人類が6属21種の人類の中で唯一生き残った大きな理由の一つと言えます。
現世人類のごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生存可能という、大きなアドバンテージがあるのです。
まとめると、農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。
同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)の方は、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。
インスリンが分泌されたときだけ稼働するというGLUT4のシステムは、他のGLUTに比べて大変特殊であり不思議な代物です。
しかし、毎食糖質を摂取する現代からみると不思議なシステムですが、糖質がたまにしか摂取できない時代においては、必要な時だけ稼働するというとても合理的なものといえます。
農耕以前の400万年間、人類はたまに運良く手に入った果物やナッツなどを食べ、血糖値が軽度上昇したときだけ「インスリン+GLUT4」を稼働させて、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである中性脂肪を蓄えていたのです。
普段は必要ないので、GLUT4は細胞内で鎮座していたのでしょう。「インスリン+GLUT4」の特殊性も、人類の主食が穀物(糖質)でなかった状況証拠と言えます。
<炭水化物(糖質)の歴史的存在意義および価値は?>
さて人類の進化の歴史において、炭水化物(糖質)の存在意義および価値は?ひらたく言うと、糖質は何のためにあったのでしょうか?
必須アミノ酸、必須脂肪酸は、厳然と存在します。人体で生産することができないアミノ酸と脂肪酸は、必ず食物から摂取する必要があります。また、ビタミンも体内で合成できないものがほとんどで、食物から摂取する必要があります。これに対して、必須糖質は存在しません。
体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、食物から摂取する必要はないのです。人体内で絶対に必要なブドウ糖は、赤血球のためです。赤血球は、ミトコンドリアというエネルギー生産装置を持っていないので、ブドウ糖しか利用できません。
脳は、脂肪酸の分解物のケトン体をいくらでもエネルギー源としますし、ブドウ糖も利用します。他の心筋、骨格筋、体細胞は日常的には脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源として、時々ブドウ糖も利用します。
人類の進化の歴史において、農耕が始まる前の狩猟・採集時代における糖質の役割は、中性脂肪蓄積が第一義であったと考えられます。
初期の人類において、中性脂肪を体脂肪として蓄えておくことは、日常的に襲ってくる飢餓への、唯一のセーフティーネットであったと考えられます。
狩猟・採集時代に時々手に入った糖質は、野生の果物、ナッツ類、山芋などです。運良くこれらを得たとき、少量のインスリンが追加分泌されて、脂肪細胞のGLUT4が細胞表面に上がりブドウ糖を取り込んで中性脂肪に変えていたのです。
また果物の果糖は、ブドウ糖にはほとんど変わりませんが、吸収されて肝臓にいたり、ブドウ糖より速やかに中性脂肪になり蓄積されます。
果物の糖質には、ブドウ糖、ショ糖、果糖などがあります。このように、人類の進化の過程では、糖質は時々しか手に入らない貴重な中性脂肪蓄積のもとだったと考えられます。
本来、中性脂肪蓄積が第一義であった糖質を、農耕が定着して以降は、日常的に摂取するようになりました。さらにこの200年は、精製炭水化物を常食するようになったので、大量の追加分泌インスリンがでて、大変中性脂肪が蓄積されやすい状況となり、肥満が発症しやすくなったのです。
江部康二
人類の主食が穀物でなかったことの(状況)証拠・・・。
イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解は?
インクレチンは何故2分で失活する?
血糖値を下げるシステムはインスリンだけでバックアップがないのは何故?
GLUT4だけがインスリン依存性なのは何故?
あくまで仮説(思考実験)なのですが、発想を思いきって転換すると興味深いことが見えてきます。
以下過去のブログに断片的に書いたことなどのまとめです。
<イギリスのヒューマン・ニュートリションの見解>
今は穀物が人類の主食となっており、皆、当たり前に思い何の疑問も持っていません。しかし、こちらもまた当たり前なのですが、農耕が始まる前の人類の主食は、決して穀物ではありません。
ヒューマン・ニュートリションという英国の最も権威ある栄養学の本があります。920ぺージに及ぶ大著で、10版を重ねている名著です。この本の75ページに
『現代の食事では、・・・・・デンプンや遊離糖に由来する「利用されやすいブドウ糖」を大量に摂取するようになっている。このような食事内容は血糖およびインスリン値の定期的な上昇をもたらし、糖尿病、冠状動脈疾患、がん、老化等、多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている。農業の発明以来、ヒトは穀物をベースとした食物を摂取するようになったが、進化に要する時間の尺度は長く、ヒトの消化管はまだ穀物ベースの食物に適応していない。ましてや高度に加工された現代の食物に対して、到底適応しきれてないのである。』
という記述があります。
人類の本来の主食は穀物ではないし、まだまだ穀物ベースの食物に適応していないと、明記してあり、私も全く同感です。
ヒューマン・ニュートリションでは、穀物の過剰摂取の害、特に精製炭水化物による「血糖およびインスリン値の定期的な上昇」が多くの点で健康に有害と強調しています。
これは私が日頃主張している「現代人は精製炭水化物頻回過剰摂取によるブドウ糖ミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌が生活習慣病の元凶である。」という説と、全く同じといっていいと思います。
なお、<炭水化物=糖質+食物繊維>です。食物繊維は人体に吸収されないので、カロリーもゼロで、血糖値も上昇させません。カウントすべきは糖質のみです。
ヒューマン・ニュートリション 基礎・食事・臨床 第10版 2004年
JS Garrow
WPT james
A Ralph 編
日本語版監修 細谷憲政
<インクレチンとDPP-4阻害剤、インクレチンは何故2分で失活する?>
DPP-4阻害剤という糖尿病の薬が、日本でも健康保険に収載されて2009年12月から発売されました。DPP-4阻害剤は、インクレチンというホルモンを血中にとどめる作用があります。インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンであり、GIPとGlp-1があります。
これらは、高血糖時には、SU剤とは異なる機序でインスリン分泌を促進させます。また、インスリン生合成を促進させます。血糖値が正常のときにはインスリン分泌を促進させず、食後高血糖の時にだけインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいです。
まことに都合のいいホルモンなのですが、DPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのです。このDPP-4という酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中に当分(約24時間ちかく)存在して、血糖降下作用を発揮してくれることになります。そこで登場したのが、ジャヌビア・グラクティブ・ネシーナ・エクアなどのDPP-4阻害剤です。
DPP-4阻害剤、まことに論理的に構築されたいい薬なのですが、少し根源的な疑問が湧いてきます。何故このような都合のいいホルモンが、人体においてわずか2分で分解され効果を失ってしまうのでしょうか。
考えられる一番リーズナブルな説明は、人類の進化の過程で、インクレチンは食後約2分ていど働けばもう必要充分であり、あとは消え去るのみだったということでしょう。
すなわち、農耕前の狩猟・採集時代約400万年間は、日常的な血糖値の上昇は、ほとんど無かったのですから、インクレチンが24時間も活性化している必然性はかけらもありません。復習ですが、血糖値を上げるのは糖質のみで、タンパク質・脂質はあげません。
農耕開始前の人類の食生活は、魚貝類・小動物・動物の肉・内臓・骨髄・野草・野菜・キノコ・海藻・昆虫などが日常的な食料です。時々食べることができたのは、木の実・ナッツ・果物・山芋などでしょう。
これらの中で、日常的には野菜、たまにナッツや果物を摂取したときに、その糖質量に応じて軽度血糖値が上昇しますので、インクレチンはそれに対応していたものと考えられます。そうであれば食後だけ約2分間働けば充分です。
農耕が始まり穀物を常食し、食後高血糖が日常的に生じるようになった後は、インクレチンにおおいに活躍して欲しいところですが、如何せん400万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまう癖がついているのです。
10000~4000年くらいの穀物が主食の歴史ていどでは、新たな都合のいい突然変異は生じなかったのでしょう。今この時代にDPP-4阻害剤の登場というのは、歴史の皮肉を感じます。
ともあれ、インクレチンが約2分間で分解されるという生理学的事実は、人類は主食が穀物(糖質)ではない状況で、400万年進化してきたことの、証拠といえます。
<血糖値を上昇させるシステムと血糖値を下げるシステム>
脳は、ケトン体をエネルギー源として、いくらでも利用できます。しかし、人体で唯一赤血球だけは、ミトコンドリアというエネルギー生産装置をもっていないので、ブドウ糖しか利用できません。従って、人体は赤血球のために、最低限の血糖値を常に確保する必要があり、多重のバックアップシステムを持っています。
グルカゴンやエピネフリンというホルモン、副腎皮質ステロイドホルモンなどは血糖上昇作用があります。そして肝臓でアミノ酸やグリセロール(中性脂肪の分解産物)や乳酸から糖新生してブドウ糖をつくり、血糖値を確保します。
一方、血糖値を下げるシステムは唯一インスリンのみです。 糖質をほとんど摂取しない農耕以前の400万年間は、血糖値が上がることはまれであり、追加分泌インスリンはほとんど必要なかったため、バックアップシステムをつくる必然性がなかったと考えられます。このことも、人類の主食が穀物(糖質)ではなかったことの状況証拠です。
<インスリンとGLUT4>
ブドウ糖が、細胞膜を通過するためには、特別な膜輸送タンパク質が必要です。それが糖輸送体(GLUT)であり、現在GLUT1~GLUT14まで確認されています。GLUT1は赤血球・脳・網膜などの糖輸送体で常に細胞の表面にあり、血流さえあれば即血糖を取り込めます。
これに対して筋肉細胞と脂肪細胞に特異的なのがGLUT4で、基礎分泌のインスリンレベルだと、通常は細胞内部に沈んでいます。GLUT1~GLUT14の中で、インスリンに依存しているのはGLUT4だけで特殊です。インスリンが追加分泌されると、通常は細胞内に沈んでいるGLUT4が細胞表面に移動して、血糖値を取り込めるようになるのです。
インスリンやGLUT4の役割を、農耕が始まる前の狩猟・採集時代にまで遡って考察してみました。
そもそも、GLUT4は、今でこそ(農耕開始以後)獅子奮迅の大活躍なのですが、農耕前は、ほとんど活動することはなかったと考えられます。つまり、農耕後、日常的に穀物を摂取して、食後血糖値が上昇するようになってからは
『食後血糖値上昇→インスリン追加分泌→GLUT4が筋肉細胞・脂肪細胞表面にトランスロケーション→血糖値の細胞内への取り込み』
というシステムが、毎日食事のたびに稼働するようになりました。
しかし、狩猟・採集時代には、今のような穀物はありませんので、たまの少量の糖質摂取(果物やナッツ類)で、ごく軽度血糖値上昇があり、インスリン少量追加分泌のときだけGLUT4の出番があったに過ぎません。
年間を通して、時々運良く、果物やナッツ類が採集できた場合のみです。この頃は、血糖値は慌てて下げなくてはいけないほど上昇していないので、GLUT4の役割は、筋肉細胞で血糖値を下げるというよりは、脂肪細胞で中性脂肪を作らせて冬に備える役割のほうが、はるかに大きな意味を持っていたと思います。
すなわち、農耕以前は「インスリン+GLUT4」のコンビは、たまに運良く糖質(野生の果物やナッツ類)を摂取して時だけ、もっぱら中性脂肪生産システムとして活躍していたものと考えられます。
また、糖質を摂取すれば血糖値が上昇し、インスリンには無関係に、肝臓にも取り込まれてグリコーゲンを蓄積しますが、余った血糖が中性脂肪に変えられ脂肪細胞に蓄えられます。
この中性脂肪蓄積システムも、農耕後には日常的に稼働していますが、狩猟・採集時代には、食後血糖値の上昇はほとんどないので、肝臓に取り込まれるブドウ糖もごく少量であり、中性脂肪に変換されることも少なかったと思います。
次に果糖と中性脂肪について考えてみます。
果物に含まれる糖質の主成分の果糖ですが、実におもしろい性質を持っています。果糖が脂肪合成を誘導しやすい糖質であることは、以前から知られています。ヒトにおいて、高果糖食が肝臓での脂肪合成を促進し、血中の中性脂肪濃度を上昇させ、インスリン抵抗性を生じることが報告されています。
果物中の果糖は、GLUT5によって吸収されますが、血糖にはほとんど変わらずに肝臓まで運ばれ、ブドウ糖代謝系に入ります。このとき果糖は、ブドウ糖より急速に代謝されるという特徴があります。
果糖は、肝臓での脂肪合成酵素群の発現を促進させる作用も持っており、急速に代謝されることと合わせて、とても中性脂肪に変わり易いのです。このように、果物の果糖は中性脂肪をためやすく肥満しやすい性質をもっており、現代では要注意食材といえます。
さて、それでは再び、狩猟・採集時代の人類の食生活を考えてみましょう。
果物には果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖質が含まれています。10万年や20万年前に、アフリカの人類が、運良く果物にありついたとき、
A)『ブドウ糖やショ糖→血糖値少し上昇→インスリン追加分泌少量→GLUT4が脂肪細胞表面に移動して血糖を取り込んで中性脂肪に変えて蓄積』
B)『果糖→インスリンとは無関係にGLUT5により吸収されて肝臓に運ばれて速やかに中性脂肪合成』
これらA)B)の2つのシステムが稼働したはずです。
A)B)の2つのシステムは、農耕以前の人類の食生活と生存競争において、極めて重要な意味を持っていたと考えられます。
即ち、体に中性脂肪を蓄えることは、ご先祖にとって、飢餓に備えるための唯一無二のセーフティーネットであったからです。
果糖がインスリンに依存せずに、肝臓でブドウ糖より速く代謝され中性脂肪に変わるのも、農耕以前の人類においてはとても大きな利点であったと考えられます。
体脂肪をあるていど蓄えることができるのが、現世人類の大きな特徴です。特に現世人類の女性の乳房とお尻は、脂肪の蓄積装置としてはとても優れたものであり、現世人類が6属21種の人類の中で唯一生き残った大きな理由の一つと言えます。
現世人類のごく普通の体型の女性なら、その体脂肪により、水さえあれば母子ともに2ヶ月くらいは生存可能という、大きなアドバンテージがあるのです。
まとめると、農耕以前の糖質を摂取しない日常の食生活においては、「インスリン+GLUT4」のコンビは、ほとんど働く必然性はなかったわけです。
同じ糖輸送体でも、GLUT1(脳・赤血球・網膜の糖輸送体)の方は、インスリンには無関係に常に細胞表面にあって、農耕前も農耕以後も24時間常に活動しているわけで、GLUT4とは大きな違いがあります。
インスリンが分泌されたときだけ稼働するというGLUT4のシステムは、他のGLUTに比べて大変特殊であり不思議な代物です。
しかし、毎食糖質を摂取する現代からみると不思議なシステムですが、糖質がたまにしか摂取できない時代においては、必要な時だけ稼働するというとても合理的なものといえます。
農耕以前の400万年間、人類はたまに運良く手に入った果物やナッツなどを食べ、血糖値が軽度上昇したときだけ「インスリン+GLUT4」を稼働させて、飢餓に対する唯一のセーフティーネットである中性脂肪を蓄えていたのです。
普段は必要ないので、GLUT4は細胞内で鎮座していたのでしょう。「インスリン+GLUT4」の特殊性も、人類の主食が穀物(糖質)でなかった状況証拠と言えます。
<炭水化物(糖質)の歴史的存在意義および価値は?>
さて人類の進化の歴史において、炭水化物(糖質)の存在意義および価値は?ひらたく言うと、糖質は何のためにあったのでしょうか?
必須アミノ酸、必須脂肪酸は、厳然と存在します。人体で生産することができないアミノ酸と脂肪酸は、必ず食物から摂取する必要があります。また、ビタミンも体内で合成できないものがほとんどで、食物から摂取する必要があります。これに対して、必須糖質は存在しません。
体内で必要なブドウ糖は、肝臓で糖新生してまかなうので、食物から摂取する必要はないのです。人体内で絶対に必要なブドウ糖は、赤血球のためです。赤血球は、ミトコンドリアというエネルギー生産装置を持っていないので、ブドウ糖しか利用できません。
脳は、脂肪酸の分解物のケトン体をいくらでもエネルギー源としますし、ブドウ糖も利用します。他の心筋、骨格筋、体細胞は日常的には脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源として、時々ブドウ糖も利用します。
人類の進化の歴史において、農耕が始まる前の狩猟・採集時代における糖質の役割は、中性脂肪蓄積が第一義であったと考えられます。
初期の人類において、中性脂肪を体脂肪として蓄えておくことは、日常的に襲ってくる飢餓への、唯一のセーフティーネットであったと考えられます。
狩猟・採集時代に時々手に入った糖質は、野生の果物、ナッツ類、山芋などです。運良くこれらを得たとき、少量のインスリンが追加分泌されて、脂肪細胞のGLUT4が細胞表面に上がりブドウ糖を取り込んで中性脂肪に変えていたのです。
また果物の果糖は、ブドウ糖にはほとんど変わりませんが、吸収されて肝臓にいたり、ブドウ糖より速やかに中性脂肪になり蓄積されます。
果物の糖質には、ブドウ糖、ショ糖、果糖などがあります。このように、人類の進化の過程では、糖質は時々しか手に入らない貴重な中性脂肪蓄積のもとだったと考えられます。
本来、中性脂肪蓄積が第一義であった糖質を、農耕が定着して以降は、日常的に摂取するようになりました。さらにこの200年は、精製炭水化物を常食するようになったので、大量の追加分泌インスリンがでて、大変中性脂肪が蓄積されやすい状況となり、肥満が発症しやすくなったのです。
江部康二
2011年06月21日 (火)
おはようございます。
東京で開催される糖質制限食講演会のご案内です。
医療関係者向け講演会を2011年2月に東京で行いましたが、一般向けは久しぶりです。
今回、2011年7月10日(日)開催の「国際中医薬膳管理師会・設立3周年特別記念講演会」に
「テーラーメードダイエットと糖質制限食」~人類の食生活 糖尿病・肥満の解決~
というタイトルで、講師にお招きいただきました。
国際中医薬膳管理師会は薬剤師、栄養士を中心とした会ですが一般の方もおられます。
今回の講演会は、一般の方も自由に参加いただけます。
糖質制限食の基礎と臨床、最新知識をわかりやすくお話ししますので、皆さん是非奮ってご参加下さいね。 (^_^)
よろしくお願い申しあげます。 m(_ _)m
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は国際中医薬膳管理師会事務局からのメッセージです。
国際中医薬膳管理師会・設立3周年特別記念講演会
テーラーメードダイエットと糖質制限食
~人類の食生活 糖尿病・肥満の解決~
講師 高雄病院理事長 江部康二先生
糖尿病、肥満で悩んでいませんか?
カロリ制限しなくてはいけない、好きなお酒を我慢しなくてはいけない、
好きなステーキを食べられない・・。
食事制限でストレスを感じておられる方々、食事指導に携わる方々へ。
我々、国際中医薬膳管理師会は、薬膳を日々の食事にとり入れた、
テーラーメードな食事を提案しています。
このたび、会設立3周年特別記念講演会に、江部康二先生をお招きして、
糖質制限食に関してご講演いただくことになりました。
今までの常識では考えられない、目から鱗の糖質制限食に関するお話しです。
サイン会も予定していますので、是非皆様、お誘いの上ご参加下さい。
日時:2011年7月10日(日)14:30~17:00(受付は14:00~)
会場:笹川記念会館/4階 東京都港区三田3-12-12(TEL:03-3454–5062)
会費:3500円(国際中医薬膳管理師会会員は3000円)
申し込み:下記内容を記載の上、FAX、又はEメールにてお申し込みください。
FAX 020-4663-1435
Eメール yakuzenkanrishikai_soumu@yahoo.co.jp 総務部(湯澤)
※但し、FAX 回線がNTT・ソフトバンク以外で、IP 電話・光回線の場合は、
FAX 0246-46-2721
入金先:ゆうちょ銀行 普通 記号10190 番号87281901
名義人/国際中医薬膳管理師会 コクサイチュウイヤクゼンカンリシカイ
※申し込まれた方には、入金確認済次第、受講券をお送りします。
※当日の現金支払いは受付できませんので、必ず事前振込をお願いいたします。
定員:160名
申し込み期限:6月末
お名前:
所属:国際中医薬膳管理師会 正会員、準会員、一般会員
その他( )
住所:〒
TEL:
携帯TEL:
PCメール:
※国際中医薬膳管理師会入会(一般会員・年会費:3000円)に関するお問い合わせは
上記アドレス(総務部)までお願いいたします。
東京で開催される糖質制限食講演会のご案内です。
医療関係者向け講演会を2011年2月に東京で行いましたが、一般向けは久しぶりです。
今回、2011年7月10日(日)開催の「国際中医薬膳管理師会・設立3周年特別記念講演会」に
「テーラーメードダイエットと糖質制限食」~人類の食生活 糖尿病・肥満の解決~
というタイトルで、講師にお招きいただきました。
国際中医薬膳管理師会は薬剤師、栄養士を中心とした会ですが一般の方もおられます。
今回の講演会は、一般の方も自由に参加いただけます。
糖質制限食の基礎と臨床、最新知識をわかりやすくお話ししますので、皆さん是非奮ってご参加下さいね。 (^_^)
よろしくお願い申しあげます。 m(_ _)m
江部康二
☆☆☆☆☆
以下は国際中医薬膳管理師会事務局からのメッセージです。
国際中医薬膳管理師会・設立3周年特別記念講演会
テーラーメードダイエットと糖質制限食
~人類の食生活 糖尿病・肥満の解決~
講師 高雄病院理事長 江部康二先生
糖尿病、肥満で悩んでいませんか?
カロリ制限しなくてはいけない、好きなお酒を我慢しなくてはいけない、
好きなステーキを食べられない・・。
食事制限でストレスを感じておられる方々、食事指導に携わる方々へ。
我々、国際中医薬膳管理師会は、薬膳を日々の食事にとり入れた、
テーラーメードな食事を提案しています。
このたび、会設立3周年特別記念講演会に、江部康二先生をお招きして、
糖質制限食に関してご講演いただくことになりました。
今までの常識では考えられない、目から鱗の糖質制限食に関するお話しです。
サイン会も予定していますので、是非皆様、お誘いの上ご参加下さい。
日時:2011年7月10日(日)14:30~17:00(受付は14:00~)
会場:笹川記念会館/4階 東京都港区三田3-12-12(TEL:03-3454–5062)
会費:3500円(国際中医薬膳管理師会会員は3000円)
申し込み:下記内容を記載の上、FAX、又はEメールにてお申し込みください。
FAX 020-4663-1435
Eメール yakuzenkanrishikai_soumu@yahoo.co.jp 総務部(湯澤)
※但し、FAX 回線がNTT・ソフトバンク以外で、IP 電話・光回線の場合は、
FAX 0246-46-2721
入金先:ゆうちょ銀行 普通 記号10190 番号87281901
名義人/国際中医薬膳管理師会 コクサイチュウイヤクゼンカンリシカイ
※申し込まれた方には、入金確認済次第、受講券をお送りします。
※当日の現金支払いは受付できませんので、必ず事前振込をお願いいたします。
定員:160名
申し込み期限:6月末
お名前:
所属:国際中医薬膳管理師会 正会員、準会員、一般会員
その他( )
住所:〒
TEL:
携帯TEL:
PCメール:
※国際中医薬膳管理師会入会(一般会員・年会費:3000円)に関するお問い合わせは
上記アドレス(総務部)までお願いいたします。
2011年06月21日 (火)
おはようございます。
今回は、じゅんさんから、糖質制限食で糖尿病、高脂血症、高血圧、LDLコレステロール値改善という、とても嬉しいコメントをいただきました。
【11/06/19 じゅん
健康診断A判定
お久しぶりです。じゅんです。
ちょうど2年前に健康診断で糖尿病、高脂血症、高血圧で要検査のE判定でした。
その時は100kg、血糖値124mg/dl、HbA1c7.1、LDL198mg/dl、血圧160/100ありました。
1年後:86kg、92mg/dl、4.8、 128mg/dl、 140/95
今年:79.5kg、88mg/dl、4.8、120mg/dl、124/82
で見事A判定になりました。
実はそれまで5年間ぐらい期外収縮とパニック障害で体調が悪く、心療内科に通っており、ソラナックスやパキシルをずっと飲んでいました。2年前に糖質制限食を始めてから、心の浮き沈みがなくなり、仕事が忙しくてもストレスを全く感じなくなり、心身ともにタフになりました。
思春期から緊張すると吐き気がすることが悩みだったのが、全く無くなりました。2年前から無投です。最高に幸せです。】
じゅんさん。
素晴らしい改善ですね。
健康診断E判定→A判定、おめでとうございます。
確かに、体重、血糖値、HbA1c、LDL-C、血圧すべて劇的な改善です。
2年前:100kg、 124mg/dl、 7.1%、 198mg/dl、 160/100
1年後:86kg、 92mg/dl、 4.8、 128mg/dl、 140/95
2年後:79.5kg、 88mg/dl、 4.8、 120mg/dl、 124/82
期外収縮とパニック障害も糖質制限食で改善し、内服薬も必要なしとはすごいです。
糖質制限食で全身の血流・代謝がよくなり自然治癒力が高まるので、いろんな症状が改善する可能性があります。
また、食前と食後の血糖値の差がほとんどなくなるので、糖質を摂取している人に比べると心理的に安定しやすくなる可能性があります。
勿論、糖質制限食でパニック障害や緊張など心理的症状がすべて治るとは言えませんし、効果には個人差があると思います。
それでも単なる食事療法である糖質制限食に、このような様々な治療効果が期待できることは、とても興味深いことです。
江部康二
今回は、じゅんさんから、糖質制限食で糖尿病、高脂血症、高血圧、LDLコレステロール値改善という、とても嬉しいコメントをいただきました。
【11/06/19 じゅん
健康診断A判定
お久しぶりです。じゅんです。
ちょうど2年前に健康診断で糖尿病、高脂血症、高血圧で要検査のE判定でした。
その時は100kg、血糖値124mg/dl、HbA1c7.1、LDL198mg/dl、血圧160/100ありました。
1年後:86kg、92mg/dl、4.8、 128mg/dl、 140/95
今年:79.5kg、88mg/dl、4.8、120mg/dl、124/82
で見事A判定になりました。
実はそれまで5年間ぐらい期外収縮とパニック障害で体調が悪く、心療内科に通っており、ソラナックスやパキシルをずっと飲んでいました。2年前に糖質制限食を始めてから、心の浮き沈みがなくなり、仕事が忙しくてもストレスを全く感じなくなり、心身ともにタフになりました。
思春期から緊張すると吐き気がすることが悩みだったのが、全く無くなりました。2年前から無投です。最高に幸せです。】
じゅんさん。
素晴らしい改善ですね。
健康診断E判定→A判定、おめでとうございます。
確かに、体重、血糖値、HbA1c、LDL-C、血圧すべて劇的な改善です。
2年前:100kg、 124mg/dl、 7.1%、 198mg/dl、 160/100
1年後:86kg、 92mg/dl、 4.8、 128mg/dl、 140/95
2年後:79.5kg、 88mg/dl、 4.8、 120mg/dl、 124/82
期外収縮とパニック障害も糖質制限食で改善し、内服薬も必要なしとはすごいです。
糖質制限食で全身の血流・代謝がよくなり自然治癒力が高まるので、いろんな症状が改善する可能性があります。
また、食前と食後の血糖値の差がほとんどなくなるので、糖質を摂取している人に比べると心理的に安定しやすくなる可能性があります。
勿論、糖質制限食でパニック障害や緊張など心理的症状がすべて治るとは言えませんし、効果には個人差があると思います。
それでも単なる食事療法である糖質制限食に、このような様々な治療効果が期待できることは、とても興味深いことです。
江部康二
2011年06月20日 (月)
こんばんは。
2011年5月19日~21日、札幌で開催された第54回日本糖尿病学会において、 大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏らが、
「2型糖尿病患者、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向」
という研究を発表しました。
2型糖尿病患者の220人(男性138人、女性82人)に聞き取り調査をした結果、糖尿病患者では、罹病期間が長い患者ほど、あるいは血糖コントロールが不良な患者ほど、失われた歯が多くなる傾向が認められたそうです。
喫煙と歯磨き回数1日1回未満もリスクとなります。 (☆)参考
私は、糖尿病歴9年ですが、虫歯はゼロで、歯は全て残っています。
歯周症もほとんどありません。タバコは吸いません。
2011年現在61才ですから、それなりに優秀な成績と思います。(⌒o⌒)v
正確には20才のとき、右の奥歯に虫歯ができて1回だけ治療して、アマルガムが詰めてあり、それが41年そのままもっています。その時の歯医者さん、随分名医だったと感謝しています。 m(_ _)m
学生時代は、甘いものはそんなに食べていなかったですが、チョコレートだけは大好きで毎日のように食べてました。
20才時唯一の虫歯は、きっとチョコレート印です。( ̄_ ̄|||)
さて、虫歯と歯周病は、歯を失う二大原因です。そして虫歯も歯周症も、最大の原因はプラーク(歯垢)です。
プラークは、ただの食べカスではなく、生きた細菌の塊です。歯垢中の細菌は、食物中の糖質を栄養源にしてどんどん増えていきます。
プラーク(歯垢)は重量で、約80%が細菌です。むし歯菌の代表選手ミュータンス菌が、砂糖などからつくる不溶性グルカンからできるネバネバプラークと、それ以外の酸産生菌群がさまざまな糖質を利用してできる、
水溶性のサラサラプラークがあります。
歯の表面のエナメル質にできる虫歯は主に前者、歯周病などで露出した歯根面にできるセメント質のむし歯は後者が関係しています。
プラークコントロールをせずに放置すると、細菌が糖質を分解して作り出す酸や毒素で虫歯や歯周病が発症します。逆に言えば糖質制限食なら、プラークは激減します。
私は、2002年6月から糖質制限食を実践していますが、驚いたことに歯垢がほとんどできなくなりました。
糖質制限食で細菌の餌がなくなり、兵糧責めで繁殖できないので歯垢も激減したものと考えられます。
それでもたまに糖質(豚カツや餃子)を食べると、てきめんその日は歯垢ができます。
もともと歯は丈夫な方でしたが、糖質を食べていた頃は歯垢は結構できやすいほうで、毎年1回、歯医者さんに、たっぷり溜まった歯石を取ってもらってました。
1年間でこんなにできるのかというくらい、カチカチの歯石が沢山取れたものでした。
歯垢に唾液中のカルシウムが結びついて歯石になります。従って、歯垢ができなくなったら歯石も激減します。
勿論、最低限のプラークコントロールというか、超音波歯ブラシと歯間ブラシで朝1回、3分間くらいの手入れと、食後は通常の歯磨きを30秒くらいはしてます。
ブログ読者の 糖質制限食実践中の皆さん、如何でしょう?歯垢は減りましたか?
糖尿人は、歯周症を起こしやすいことが知られています。
また最近は、歯周症があると糖尿病が悪化しやすいと言われています。
<糖尿病→血糖コントロール不良→歯周症→糖尿病悪化・・・>
という悪循環パターンですね。
糖質制限食なら、血糖コントロールは良好となり、プラークも減って歯周症や虫歯の予防となり、まさに一石二鳥どころか、一石三鳥ですね。 (^^)
糖尿人の御同輩、糖質制限食で歯垢を減らして、最低限のプラークコントロールも実施して歯周病や虫歯予防を目指しましょうね。
江部康二
(☆)参考
以下は2011. 5. 24の日経メディカル別冊編集・オンライン版の記事を転載です。
2型糖尿病患者、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向
大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏
2型糖尿病患者では、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向が分かった。また、糖尿病患者は「糖尿病と歯周病の関係」についての知識は持ち合わせているが、その知識が歯磨きなどのセルフケアに活かされていない実態も報告された。2型糖尿病患者220人を対象に実施した聞き取り調査で明らかになったもので、その成果は大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。
安藤氏らは、糖尿病の合併症として注目される歯周病について、糖尿病患者自身がどのように認識し、対策に取り組んでいるのかを把握する目的で、アンケート方式による聞き取り調査を実施した。
対象は、同病院で治療を受けている2型糖尿病患者の220人(男性138人、女性82人)。聞き取り調査では、年齢、罹病期間、HbA1c(JDS値、以下同)、喫煙習慣、歯磨き回数、歯周病の知識などを尋ねた。また、歯周病の重症度を把握するために、「今までに失われた歯の本数」も自己申告してもらった。対照群は、非糖尿病の生活習慣病患者30人とし、同様の調査を実施した。
調査の結果、糖尿病患者では、罹病期間が長い患者ほど、あるいは血糖コントロールが不良な患者ほど、失われた歯が多くなる傾向が認められた。
年齢に着目すると、高齢になるほど失われた歯が多くなっていたが、糖尿病患者の方が非糖尿病患者より若いころから歯を失っていた。また、喫煙との関係では、糖尿病患者では喫煙習慣があることが歯を失うリスクと考えられた。
歯周病の知識とセルフケアの関係についてみると、糖尿病患者では歯周病に関する知識の有無に関わらず、毎日1回以上の歯磨きの習慣がある人が多かった。ただし、非糖尿病患者と比べると、糖尿病患者では歯磨きが実行できていない割合が高かった。
これらを踏まえ、罹患期間10年以上、血糖コントロールがHbA1c>8.0%、喫煙、歯磨き回数が毎日1回未満の4つを歯周病リスクとし、これらのリスクの数と失った歯の数との関係をみたところ、リスクの数が多いほど失った歯の本数の多い人の割合が高かった。
今回の結果から演者らは、2型糖尿病患者に対しては、発症早期から歯周病に対する教育指導が必要であり、定期的な歯科受診を支援していくことが重要と結論づけた。
2011年5月19日~21日、札幌で開催された第54回日本糖尿病学会において、 大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏らが、
「2型糖尿病患者、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向」
という研究を発表しました。
2型糖尿病患者の220人(男性138人、女性82人)に聞き取り調査をした結果、糖尿病患者では、罹病期間が長い患者ほど、あるいは血糖コントロールが不良な患者ほど、失われた歯が多くなる傾向が認められたそうです。
喫煙と歯磨き回数1日1回未満もリスクとなります。 (☆)参考
私は、糖尿病歴9年ですが、虫歯はゼロで、歯は全て残っています。
歯周症もほとんどありません。タバコは吸いません。
2011年現在61才ですから、それなりに優秀な成績と思います。(⌒o⌒)v
正確には20才のとき、右の奥歯に虫歯ができて1回だけ治療して、アマルガムが詰めてあり、それが41年そのままもっています。その時の歯医者さん、随分名医だったと感謝しています。 m(_ _)m
学生時代は、甘いものはそんなに食べていなかったですが、チョコレートだけは大好きで毎日のように食べてました。
20才時唯一の虫歯は、きっとチョコレート印です。( ̄_ ̄|||)
さて、虫歯と歯周病は、歯を失う二大原因です。そして虫歯も歯周症も、最大の原因はプラーク(歯垢)です。
プラークは、ただの食べカスではなく、生きた細菌の塊です。歯垢中の細菌は、食物中の糖質を栄養源にしてどんどん増えていきます。
プラーク(歯垢)は重量で、約80%が細菌です。むし歯菌の代表選手ミュータンス菌が、砂糖などからつくる不溶性グルカンからできるネバネバプラークと、それ以外の酸産生菌群がさまざまな糖質を利用してできる、
水溶性のサラサラプラークがあります。
歯の表面のエナメル質にできる虫歯は主に前者、歯周病などで露出した歯根面にできるセメント質のむし歯は後者が関係しています。
プラークコントロールをせずに放置すると、細菌が糖質を分解して作り出す酸や毒素で虫歯や歯周病が発症します。逆に言えば糖質制限食なら、プラークは激減します。
私は、2002年6月から糖質制限食を実践していますが、驚いたことに歯垢がほとんどできなくなりました。
糖質制限食で細菌の餌がなくなり、兵糧責めで繁殖できないので歯垢も激減したものと考えられます。
それでもたまに糖質(豚カツや餃子)を食べると、てきめんその日は歯垢ができます。
もともと歯は丈夫な方でしたが、糖質を食べていた頃は歯垢は結構できやすいほうで、毎年1回、歯医者さんに、たっぷり溜まった歯石を取ってもらってました。
1年間でこんなにできるのかというくらい、カチカチの歯石が沢山取れたものでした。
歯垢に唾液中のカルシウムが結びついて歯石になります。従って、歯垢ができなくなったら歯石も激減します。
勿論、最低限のプラークコントロールというか、超音波歯ブラシと歯間ブラシで朝1回、3分間くらいの手入れと、食後は通常の歯磨きを30秒くらいはしてます。
ブログ読者の 糖質制限食実践中の皆さん、如何でしょう?歯垢は減りましたか?
糖尿人は、歯周症を起こしやすいことが知られています。
また最近は、歯周症があると糖尿病が悪化しやすいと言われています。
<糖尿病→血糖コントロール不良→歯周症→糖尿病悪化・・・>
という悪循環パターンですね。
糖質制限食なら、血糖コントロールは良好となり、プラークも減って歯周症や虫歯の予防となり、まさに一石二鳥どころか、一石三鳥ですね。 (^^)
糖尿人の御同輩、糖質制限食で歯垢を減らして、最低限のプラークコントロールも実施して歯周病や虫歯予防を目指しましょうね。
江部康二
(☆)参考
以下は2011. 5. 24の日経メディカル別冊編集・オンライン版の記事を転載です。
2型糖尿病患者、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向
大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏
2型糖尿病患者では、血糖コントロールが不良なほど歯周病で失われる歯が多い傾向が分かった。また、糖尿病患者は「糖尿病と歯周病の関係」についての知識は持ち合わせているが、その知識が歯磨きなどのセルフケアに活かされていない実態も報告された。2型糖尿病患者220人を対象に実施した聞き取り調査で明らかになったもので、その成果は大阪市立十三市民病院の安藤秀子氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。
安藤氏らは、糖尿病の合併症として注目される歯周病について、糖尿病患者自身がどのように認識し、対策に取り組んでいるのかを把握する目的で、アンケート方式による聞き取り調査を実施した。
対象は、同病院で治療を受けている2型糖尿病患者の220人(男性138人、女性82人)。聞き取り調査では、年齢、罹病期間、HbA1c(JDS値、以下同)、喫煙習慣、歯磨き回数、歯周病の知識などを尋ねた。また、歯周病の重症度を把握するために、「今までに失われた歯の本数」も自己申告してもらった。対照群は、非糖尿病の生活習慣病患者30人とし、同様の調査を実施した。
調査の結果、糖尿病患者では、罹病期間が長い患者ほど、あるいは血糖コントロールが不良な患者ほど、失われた歯が多くなる傾向が認められた。
年齢に着目すると、高齢になるほど失われた歯が多くなっていたが、糖尿病患者の方が非糖尿病患者より若いころから歯を失っていた。また、喫煙との関係では、糖尿病患者では喫煙習慣があることが歯を失うリスクと考えられた。
歯周病の知識とセルフケアの関係についてみると、糖尿病患者では歯周病に関する知識の有無に関わらず、毎日1回以上の歯磨きの習慣がある人が多かった。ただし、非糖尿病患者と比べると、糖尿病患者では歯磨きが実行できていない割合が高かった。
これらを踏まえ、罹患期間10年以上、血糖コントロールがHbA1c>8.0%、喫煙、歯磨き回数が毎日1回未満の4つを歯周病リスクとし、これらのリスクの数と失った歯の数との関係をみたところ、リスクの数が多いほど失った歯の本数の多い人の割合が高かった。
今回の結果から演者らは、2型糖尿病患者に対しては、発症早期から歯周病に対する教育指導が必要であり、定期的な歯科受診を支援していくことが重要と結論づけた。
2011年06月19日 (日)
こんにちは。
今月、2冊目の本のご紹介です。
ソフトバンクの新書のシリーズから
『腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」』江部康二
が出版されました。
新書は初めて出版となります。
発売前の予約段階から、すでに好評で、アマゾンのランキングでも好位置キープで嬉しい限りです。 (^_^)
新書で安価で、最新の糖質制限食理論と実践のノウハウがいっぱいつまっていますので、是非ご一読いただければ幸いです。 (^^)
本書で提唱する糖質制限食ダイエット、キーワードは「糖質制限」だけで、あと面倒なカロリー計算などは不要です。あんまり簡単なので「ずぼらダイエット」と呼ばれることもあります。
「簡単なのはいいけれど糖質を食べなかったら低血糖になりはしませんか?」と突っ込みが入りそうですが、肝臓の「糖新生」でいつでもブドウ糖をつくっているので低血糖にはならず、全く問題はありません。
さて、初めて糖質制限食の内容を知ったとき、多くの人はきっとびっくりされたことでしょう。
「脂肪はしっかり摂取していいので、糖質だけは減らそう」
という糖質制限食の基本スタンスは、従来のダイエットの常識である「脂肪制限」とは、真っ向から対立するものだからです。
実は私も兄、江部洋一郎院長(当時)が、1999年に高雄病院に初めて糖質制限食を導入したときは、非常識でとんでもない代物と無視していました。
常識の壁は高く厚いものであり、私だけでなく3人いる管理栄養士も同様の対応でした。
そんなとき2001年に私の糖尿病患者さんが血糖値560mg/dl、HbA1c14.5%という重症で入院され、通常のカロリー制限食で1週間経過しても食後血糖値は400mg/dl以上と、あまり改善がありませんでした。
そこでものは試しにと、糖質制限食を導入したところ、食後血糖値はその日から180mg/dlを超えることはなくなり、劇的な改善をみました。内服薬もインスリン注射もまったくなしで、3ヶ月後にはHbA1c6.2%となりました。
この糖質制限食第一号患者さんを経験した後は、目から鱗が落ちた思いで、糖質制限食を研究することになりました。
その後、2002年に自分自身が糖尿病と発覚してから、さらに徹底的に勉強し、糖質制限食は糖尿病だけでなく、肥満やメタボリック・シンドロームを始めとして、様々な生活習慣病に効果があることを多くの症例を経験して確信しました。
糖質制限食というと変わった食事というイメージですが、実は人類本来の自然な食事、人類の健康食なのです。
人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが約400万年前です。
その後、6属21種の人類が栄枯盛衰・進化を繰り返し、現在残っているのは、現世人類(ホモ・サピエンス)だけです。
この間農耕が始まるまでの400万年間は、生業は狩猟・採集で、全ての人類が糖質制限食でした。
このように人類の栄養・代謝・生理すべて糖質制限食に適応するように進化してきていますし、勿論妊娠・出産・子育て・日常生活も糖質制限食の中で行われてきました。
農耕が始まり定着して最近の約4000年間だけが、主食が穀物(糖質)へと変化しました。
即ち穀物(糖質)を主食としたのは、人類の歴史の中でわずか1/1000の期間に過ぎないのです。
糖質制限食と高糖質食、どちらが人類にとって自然な食事なのかはいうまでもありません。
糖質制限食という人類の本来の食事、人類の健康食を実践することで、肥満や糖尿病やメタボといった様々な生活習慣病が改善するのもむべなるかなです。
本書が読者の皆さんの、肥満解消そして健康に役立てば幸いです。
江部康二
今月、2冊目の本のご紹介です。
ソフトバンクの新書のシリーズから
『腹いっぱい食べて楽々痩せる「満腹ダイエット」』江部康二
が出版されました。
新書は初めて出版となります。
発売前の予約段階から、すでに好評で、アマゾンのランキングでも好位置キープで嬉しい限りです。 (^_^)
新書で安価で、最新の糖質制限食理論と実践のノウハウがいっぱいつまっていますので、是非ご一読いただければ幸いです。 (^^)
本書で提唱する糖質制限食ダイエット、キーワードは「糖質制限」だけで、あと面倒なカロリー計算などは不要です。あんまり簡単なので「ずぼらダイエット」と呼ばれることもあります。
「簡単なのはいいけれど糖質を食べなかったら低血糖になりはしませんか?」と突っ込みが入りそうですが、肝臓の「糖新生」でいつでもブドウ糖をつくっているので低血糖にはならず、全く問題はありません。
さて、初めて糖質制限食の内容を知ったとき、多くの人はきっとびっくりされたことでしょう。
「脂肪はしっかり摂取していいので、糖質だけは減らそう」
という糖質制限食の基本スタンスは、従来のダイエットの常識である「脂肪制限」とは、真っ向から対立するものだからです。
実は私も兄、江部洋一郎院長(当時)が、1999年に高雄病院に初めて糖質制限食を導入したときは、非常識でとんでもない代物と無視していました。
常識の壁は高く厚いものであり、私だけでなく3人いる管理栄養士も同様の対応でした。
そんなとき2001年に私の糖尿病患者さんが血糖値560mg/dl、HbA1c14.5%という重症で入院され、通常のカロリー制限食で1週間経過しても食後血糖値は400mg/dl以上と、あまり改善がありませんでした。
そこでものは試しにと、糖質制限食を導入したところ、食後血糖値はその日から180mg/dlを超えることはなくなり、劇的な改善をみました。内服薬もインスリン注射もまったくなしで、3ヶ月後にはHbA1c6.2%となりました。
この糖質制限食第一号患者さんを経験した後は、目から鱗が落ちた思いで、糖質制限食を研究することになりました。
その後、2002年に自分自身が糖尿病と発覚してから、さらに徹底的に勉強し、糖質制限食は糖尿病だけでなく、肥満やメタボリック・シンドロームを始めとして、様々な生活習慣病に効果があることを多くの症例を経験して確信しました。
糖質制限食というと変わった食事というイメージですが、実は人類本来の自然な食事、人類の健康食なのです。
人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが約400万年前です。
その後、6属21種の人類が栄枯盛衰・進化を繰り返し、現在残っているのは、現世人類(ホモ・サピエンス)だけです。
この間農耕が始まるまでの400万年間は、生業は狩猟・採集で、全ての人類が糖質制限食でした。
このように人類の栄養・代謝・生理すべて糖質制限食に適応するように進化してきていますし、勿論妊娠・出産・子育て・日常生活も糖質制限食の中で行われてきました。
農耕が始まり定着して最近の約4000年間だけが、主食が穀物(糖質)へと変化しました。
即ち穀物(糖質)を主食としたのは、人類の歴史の中でわずか1/1000の期間に過ぎないのです。
糖質制限食と高糖質食、どちらが人類にとって自然な食事なのかはいうまでもありません。
糖質制限食という人類の本来の食事、人類の健康食を実践することで、肥満や糖尿病やメタボといった様々な生活習慣病が改善するのもむべなるかなです。
本書が読者の皆さんの、肥満解消そして健康に役立てば幸いです。
江部康二
2011年06月19日 (日)
おはようございます。
ある和歌山の外科医さんから、肝硬変と糖質制限食についてコメント・質問をいただきました。
【11/06/19 ある和歌山の外科医
質問です。
江部 康二 先生
はじめまして。
和歌山県で外科医をしております。
私も、高度肥満で、今年の4月からダイエットをしております。ダイエット当初は、身長167cm、体重97kg、HbA1c 8.3%であったのが、この6月中旬で85kg、HbA1c 5.3%まで改善しました。
江部先生の糖質制限ダイエットについてはダイエットの途中で、桐山先生の書籍から知り、先生の執筆された、danchuの増刊号で知ることとなり、途中から、運動療法(きついものではないのですが)と併用しております。先生の糖質制限ダイエットについて、効果がテキメンしており、周りにも、やせたいと言っている方にはお勧めしているしだいであります。(ご存知だと思われますが、医師は不養生ですから)
ところで、質問なのですが、私の専門が肝臓外科であり、肝硬変の患者に対応することが多いです。先生の書籍のなかでふれられていないのですが、肝硬変の患者に対しても、この、糖質制限ダイエットについては活用できるのでしょうか?また、適応範囲内がございましたら、教えてください。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。】
ある和歌山の外科医さん。
本のご購入ありがとうございます。
2011年4月:167cm、体重97kg、HbA1c 8.3%
2011年6月:85kg、HbA1c 5.3%
素晴らしい改善ですね。
おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
さてご質問の、「肝硬変と糖質制限食」ですが、結論から言いますと適応となりませんし、禁忌と思います。
理由は、肝硬変の段階に至ると、肝臓の「糖新生」能力が低下しているためです。
糖質制限食実践により、食後高血糖はリアルタイムに改善します。
一方、糖質を摂取しなくても、通常は肝臓で「糖新生」をしているので、低血糖にはなりません。
空腹時や夜間睡眠時には、普通食(糖質あり)を食べている人でも、アミノ酸や乳酸やグリセロール(脂肪の分解物)を原料に肝臓で糖新生をして、血糖値を確保しています。
糖質制限食実践中は、例えばビーフステーキを食べている最中にも、肝臓で糖新生していて、これに要すエネルギーが減量効果の一つを占めていると思います。
このように糖新生能力があることを前提に、糖質制限食実践があるわけです。
従いまして、肝硬変で糖新生能力が低下している場合は、糖質制限食実践により低血糖になる可能性がありますので、肝硬変に糖質制限食は適応となりませんし、禁忌と思います。
江部康二
ある和歌山の外科医さんから、肝硬変と糖質制限食についてコメント・質問をいただきました。
【11/06/19 ある和歌山の外科医
質問です。
江部 康二 先生
はじめまして。
和歌山県で外科医をしております。
私も、高度肥満で、今年の4月からダイエットをしております。ダイエット当初は、身長167cm、体重97kg、HbA1c 8.3%であったのが、この6月中旬で85kg、HbA1c 5.3%まで改善しました。
江部先生の糖質制限ダイエットについてはダイエットの途中で、桐山先生の書籍から知り、先生の執筆された、danchuの増刊号で知ることとなり、途中から、運動療法(きついものではないのですが)と併用しております。先生の糖質制限ダイエットについて、効果がテキメンしており、周りにも、やせたいと言っている方にはお勧めしているしだいであります。(ご存知だと思われますが、医師は不養生ですから)
ところで、質問なのですが、私の専門が肝臓外科であり、肝硬変の患者に対応することが多いです。先生の書籍のなかでふれられていないのですが、肝硬変の患者に対しても、この、糖質制限ダイエットについては活用できるのでしょうか?また、適応範囲内がございましたら、教えてください。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。】
ある和歌山の外科医さん。
本のご購入ありがとうございます。
2011年4月:167cm、体重97kg、HbA1c 8.3%
2011年6月:85kg、HbA1c 5.3%
素晴らしい改善ですね。
おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
さてご質問の、「肝硬変と糖質制限食」ですが、結論から言いますと適応となりませんし、禁忌と思います。
理由は、肝硬変の段階に至ると、肝臓の「糖新生」能力が低下しているためです。
糖質制限食実践により、食後高血糖はリアルタイムに改善します。
一方、糖質を摂取しなくても、通常は肝臓で「糖新生」をしているので、低血糖にはなりません。
空腹時や夜間睡眠時には、普通食(糖質あり)を食べている人でも、アミノ酸や乳酸やグリセロール(脂肪の分解物)を原料に肝臓で糖新生をして、血糖値を確保しています。
糖質制限食実践中は、例えばビーフステーキを食べている最中にも、肝臓で糖新生していて、これに要すエネルギーが減量効果の一つを占めていると思います。
このように糖新生能力があることを前提に、糖質制限食実践があるわけです。
従いまして、肝硬変で糖新生能力が低下している場合は、糖質制限食実践により低血糖になる可能性がありますので、肝硬変に糖質制限食は適応となりませんし、禁忌と思います。
江部康二
2011年06月18日 (土)
こんにちは。
さんちさんから、糖質制限食でHbA1c改善、糖尿病腎症第2期への適応は如何というコメント・質問をいただきました。
【11/06/17 さんち
はじめまして
5月1日に初めて糖尿病検査をし、HbA1cが7・1ということで糖尿病人の仲間入りをしましたさんちです。41歳女性です。最初は絶望してしまい、まだ子供も小学生だしどうしようと泣いてしまいましたが、たまたま江部先生のご本に出会える幸運に恵まれ、勉強しました。スーパー糖質制限で一ヶ月半、先週また二度目の検査に行ったところ、いきなり5・5ということで、クリニックの先生に大変驚かれました。ただ初期の眼底出血が左目にあることと、尿アルブミンが47ということで、それはまだ心配しなくていいと言われました。この尿アルブミンが高いと、糖質制限をしてお肉やチーズを中心に食べることはマズイですか?私としては血圧も安定し、体の調子もいいのでこのままスーパー糖質制限を続行したいと思っています。なおこの一ヶ月半、糖質制限と毎日一時間のウォーキングをしたところ、体重が83キロから67キロに減りました。これはかなり大きい数字だとおもうのですが問題ありませんか。いろいろ質問して本当に申し訳ありません。何卒宜しくお願いします!】
さんち さん。
本のご購入ありがとうございます。
【2011年5月1日に初めて糖尿病検査をし、HbA1cが7・1 %、83kg。
スーパー糖質制限食実践1ヶ月半後 HbA1c5.5%、67kg。】
素晴らしい改善ですね。
血圧も安定して体調も良好、良かったです。(^-^)v(^-^)v
体重減少の速度には個人差がありますが、1ヶ月半で、83kg→67kg、16kgの減少です。
1週間に2~3kgの減量ですが、問題ないと思います。
ここからは減量速度は、やや緩やかになり、一番適切な体重で落ち着くと思います。
クリニックの先生は、糖質制限食に理解がある方なのですね。 (^_^)
【尿アルブミンが高いと、糖質制限をしてお肉やチーズを中心に食べることはマズイですか?】
血中クレアチニン値が正常で、尿中アルブミンが陽性の、糖尿病腎症第2期は糖質制限食の適応です。
糖質制限食で血糖コントロール良好を保てば、尿中アルブミンは正常化することが多いです。
このまま、美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さい。
江部康二
さんちさんから、糖質制限食でHbA1c改善、糖尿病腎症第2期への適応は如何というコメント・質問をいただきました。
【11/06/17 さんち
はじめまして
5月1日に初めて糖尿病検査をし、HbA1cが7・1ということで糖尿病人の仲間入りをしましたさんちです。41歳女性です。最初は絶望してしまい、まだ子供も小学生だしどうしようと泣いてしまいましたが、たまたま江部先生のご本に出会える幸運に恵まれ、勉強しました。スーパー糖質制限で一ヶ月半、先週また二度目の検査に行ったところ、いきなり5・5ということで、クリニックの先生に大変驚かれました。ただ初期の眼底出血が左目にあることと、尿アルブミンが47ということで、それはまだ心配しなくていいと言われました。この尿アルブミンが高いと、糖質制限をしてお肉やチーズを中心に食べることはマズイですか?私としては血圧も安定し、体の調子もいいのでこのままスーパー糖質制限を続行したいと思っています。なおこの一ヶ月半、糖質制限と毎日一時間のウォーキングをしたところ、体重が83キロから67キロに減りました。これはかなり大きい数字だとおもうのですが問題ありませんか。いろいろ質問して本当に申し訳ありません。何卒宜しくお願いします!】
さんち さん。
本のご購入ありがとうございます。
【2011年5月1日に初めて糖尿病検査をし、HbA1cが7・1 %、83kg。
スーパー糖質制限食実践1ヶ月半後 HbA1c5.5%、67kg。】
素晴らしい改善ですね。
血圧も安定して体調も良好、良かったです。(^-^)v(^-^)v
体重減少の速度には個人差がありますが、1ヶ月半で、83kg→67kg、16kgの減少です。
1週間に2~3kgの減量ですが、問題ないと思います。
ここからは減量速度は、やや緩やかになり、一番適切な体重で落ち着くと思います。
クリニックの先生は、糖質制限食に理解がある方なのですね。 (^_^)
【尿アルブミンが高いと、糖質制限をしてお肉やチーズを中心に食べることはマズイですか?】
血中クレアチニン値が正常で、尿中アルブミンが陽性の、糖尿病腎症第2期は糖質制限食の適応です。
糖質制限食で血糖コントロール良好を保てば、尿中アルブミンは正常化することが多いです。
このまま、美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さい。
江部康二
2011年06月17日 (金)
アメリカ糖尿病食近況2011
こんにちは。
今回は糖尿東京人(在米)さんから、アメリカ糖尿病食近況について、コメントをいただきました。
【11/06/16 糖尿東京人(在米)
アメリカ糖尿食近況
江部先生
この一年アメリカ駐在になりHBA1cが無投薬で4.8~5.2と 数値が良好でしたのでご無沙汰していました。
依然として日本の食事指導が総カロリー規制だと知り ややショックを受けコメントさせていただきました。
患者自身が「糖質摂取量と上昇血糖値」が比例している一点さえ教えられていれば自分の身体で試して実感するでしょうに、知らないことの怖さを感じます。
ところで、本題のアメリカですが、日本とはかなり違う方向で食事指導がされています。
インスリンが一番効果的なのは当然として、西海岸の都市部では肥満と糖質のコントロールが投薬以上に重要だという医師のほうが多いです。
患者の状態により、発覚直後の血糖値を下げるためにほぼ糖質をカットするという処置はありますが、 糖質自体は不可欠な栄養素なので、いかに血糖値を上げないように必要最低限の糖質を摂取する方法を指導されます。
1食事の最初に主食類をとらない、野菜や肉類を先にとり
後半に主食類を。
2糖質量は個人の糖尿コントロール状態により減量幅を決める。
主食の減った分は野菜を増やす。
3主食の種類も全粒粉など繊維質の多いものを選び
固く調理することで吸収を遅らせる。
4インスリン分泌のある人は食後ならばデザートもOK、
その分は主食の糖質量と調整する
私の先生はこんな感じでした、「FEWER, SLOWER, LATER」 (糖質は少なめに、吸収の遅いものを、あとから摂取)という感じで食事の重点はカロリー制限よりも糖質の量と取り方に置かれています。
私のいるカリフォルニアはアジア系が多く、食事指導の際も人種にあった話をしてもらえます。
アジア系の非肥満者の糖尿発症率が高いのは認識されていて担当医師のグループでは、食事が原因だと考えているそうです。
白人の典型的な食事と比べ糖質が多く、「空腹にいきなり糖質」的な食事多く膵臓への負担が大きいそうです。
非肥満のアジア系患者は、食事指導で糖質をコントロールするだけで数値が大幅に改善し、過半数が無投薬で観察状態になるそうです。
糖尿発症率が高いのは遺伝子ではなく食事習慣だろうと考えているようです。
アメリカでは個々の医師の裁量幅が広く、患者も治療を自由に選べるあくまで西海岸の都市部での一歩進んだ糖尿意識です。
人口が少なく生活習慣病医不足の中西部、南部では今でも 「EAT LESS, WALK MORE, AND LOSE WEIGHT」
(食事を減らして歩いて減量)が基本です。
即座に手術などが必要なく、毎日の食事が将来の病状を大きく左右する糖尿は永くつきあう友達のようで、悪魔のような存在ですね。】
糖尿東京人(在米)さん。
お久しぶりです。
とても貴重な情報をありがとうございます。
「HbA1cが無投薬で4.8~5.2%」
絶好調ですね。
良かったです。
【依然として日本の食事指導が総カロリー規制だと知りややショックを受けコメントさせていただきました。 患者自身が「糖質摂取量と上昇血糖値」が比例している一点さえ教えられていれば自分の身体で試して実感するでしょうに、 知らないことの怖さを感じます。】
その通りです。
日本では医師も栄養士も
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させない」
という基本的なことを、学校で教育されていないことが、根本的におかしいです。
栄養学に関しては文明国とはとても思えない医学教育レベルです。医師や栄養士が知らないのですから、患者教育以前の問題です。
幸い、日本糖尿病協会発行の「さかえ」2011年1月号の<食品交換表の温故知新>という特別企画記事で、京都大学大学院、人間・環境学研究科、教授、津田謹輔先生が、現行の食品交換表について
「・・・診療の場で最も大切な血糖コントロールと血糖値に大きな影響を与える糖質について特別の記載がありません。血糖コントロールが合併症予防に重要であり、食後血糖値に影響するのは、エネルギーではなく糖質であることを明記してよいのではないかと思います。」
と述べておられるので、やっと欧米水準に一歩近づこうとしている現状と思います。。
【西海岸の都市部では肥満と糖質のコントロールが投薬以上に重要だという医師のほうが多いです。
患者の状態により、発覚直後の血糖値を下げるためにほぼ糖質をカットするという処置はありますが、糖質自体は不可欠な栄養素なので、いかに血糖値を上げないように必要最低限の糖質を摂取する方法を指導されます。
1食事の最初に主食類をとらない、野菜や肉類を先にとり
後半に主食類を。
2糖質量は個人の糖尿コントロール状態により減量幅を決める。
主食の減った分は野菜を増やす。
3主食の種類も全粒粉など繊維質の多いものを選び
固く調理することで吸収を遅らせる。
4インスリン分泌のある人は食後ならばデザートもOK、
その分は主食の糖質量と調整する
私の先生はこんな感じでした、「FEWER, SLOWER, LATER」(糖質は少なめに、吸収の遅いものを、あとから摂取)という感じで 食事の重点はカロリー制限よりも糖質の量と取り方に置かれています。】
基本的には、糖質制限と低GI食品の組み合わせですね。
これなら、欧米人の2型糖尿病のほとんどを占める、BMI30以上の肥満でインスリン抵抗性が主で、インスリン分泌能力はまだ残っている糖尿人には、一定の効果があると思います。
しかし、肥満がなくインスリン分泌不足が主たる要因である日本の糖尿人には、GIはあまり役に立ちません。
やはり糖質制限食にまさる食事療法はありません。
インスリン抵抗性が主の欧米タイプの糖尿人にも、実際には糖質制限食のほうが有効です。
【アジア系の非肥満者の糖尿発症率が高いのは認識されていて 担当医師のグループでは、食事が原因だと考えているそうです。
白人の典型的な食事と比べ糖質が多く、「空腹にいきなり糖質」的な食事多く膵臓への負担が大きいそうです。
非肥満のアジア系患者は、食事指導で糖質をコントロールするだけで数値が大幅に改善し、過半数が無投薬で観察状態になるそうです。
糖尿発症率が高いのは遺伝子ではなく食事習慣だろうと考えているようです。】
これは、その通りと思います。
【アメリカでは個々の医師の裁量幅が広く、患者も治療を自由に選べるあくまで西海岸の都市部での一歩進んだ糖尿意識です。 人口が少なく生活習慣病医不足の中西部、南部では今でも 「EAT LESS, WALK MORE, AND LOSE WEIGHT」 (食事を減らして歩いて減量)が基本です。】
そうらしいですね。
カリフォルニア州の西海岸の都市部やニューヨークでは、糖質制限食OKレストランやスーパーに糖質制限食コーナーまであるようです。
一方で、田舎の州ではカロリー制限食で糖質50~60%という感じで日本糖尿病学会の推奨する食事療法と同一のようですね。
ともあれ糖尿人は、美味しく楽しく糖質制限食で自己管理したいものです。
江部康二
こんにちは。
今回は糖尿東京人(在米)さんから、アメリカ糖尿病食近況について、コメントをいただきました。
【11/06/16 糖尿東京人(在米)
アメリカ糖尿食近況
江部先生
この一年アメリカ駐在になりHBA1cが無投薬で4.8~5.2と 数値が良好でしたのでご無沙汰していました。
依然として日本の食事指導が総カロリー規制だと知り ややショックを受けコメントさせていただきました。
患者自身が「糖質摂取量と上昇血糖値」が比例している一点さえ教えられていれば自分の身体で試して実感するでしょうに、知らないことの怖さを感じます。
ところで、本題のアメリカですが、日本とはかなり違う方向で食事指導がされています。
インスリンが一番効果的なのは当然として、西海岸の都市部では肥満と糖質のコントロールが投薬以上に重要だという医師のほうが多いです。
患者の状態により、発覚直後の血糖値を下げるためにほぼ糖質をカットするという処置はありますが、 糖質自体は不可欠な栄養素なので、いかに血糖値を上げないように必要最低限の糖質を摂取する方法を指導されます。
1食事の最初に主食類をとらない、野菜や肉類を先にとり
後半に主食類を。
2糖質量は個人の糖尿コントロール状態により減量幅を決める。
主食の減った分は野菜を増やす。
3主食の種類も全粒粉など繊維質の多いものを選び
固く調理することで吸収を遅らせる。
4インスリン分泌のある人は食後ならばデザートもOK、
その分は主食の糖質量と調整する
私の先生はこんな感じでした、「FEWER, SLOWER, LATER」 (糖質は少なめに、吸収の遅いものを、あとから摂取)という感じで食事の重点はカロリー制限よりも糖質の量と取り方に置かれています。
私のいるカリフォルニアはアジア系が多く、食事指導の際も人種にあった話をしてもらえます。
アジア系の非肥満者の糖尿発症率が高いのは認識されていて担当医師のグループでは、食事が原因だと考えているそうです。
白人の典型的な食事と比べ糖質が多く、「空腹にいきなり糖質」的な食事多く膵臓への負担が大きいそうです。
非肥満のアジア系患者は、食事指導で糖質をコントロールするだけで数値が大幅に改善し、過半数が無投薬で観察状態になるそうです。
糖尿発症率が高いのは遺伝子ではなく食事習慣だろうと考えているようです。
アメリカでは個々の医師の裁量幅が広く、患者も治療を自由に選べるあくまで西海岸の都市部での一歩進んだ糖尿意識です。
人口が少なく生活習慣病医不足の中西部、南部では今でも 「EAT LESS, WALK MORE, AND LOSE WEIGHT」
(食事を減らして歩いて減量)が基本です。
即座に手術などが必要なく、毎日の食事が将来の病状を大きく左右する糖尿は永くつきあう友達のようで、悪魔のような存在ですね。】
糖尿東京人(在米)さん。
お久しぶりです。
とても貴重な情報をありがとうございます。
「HbA1cが無投薬で4.8~5.2%」
絶好調ですね。
良かったです。
【依然として日本の食事指導が総カロリー規制だと知りややショックを受けコメントさせていただきました。 患者自身が「糖質摂取量と上昇血糖値」が比例している一点さえ教えられていれば自分の身体で試して実感するでしょうに、 知らないことの怖さを感じます。】
その通りです。
日本では医師も栄養士も
「血糖値を上昇させるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は上昇させない」
という基本的なことを、学校で教育されていないことが、根本的におかしいです。
栄養学に関しては文明国とはとても思えない医学教育レベルです。医師や栄養士が知らないのですから、患者教育以前の問題です。
幸い、日本糖尿病協会発行の「さかえ」2011年1月号の<食品交換表の温故知新>という特別企画記事で、京都大学大学院、人間・環境学研究科、教授、津田謹輔先生が、現行の食品交換表について
「・・・診療の場で最も大切な血糖コントロールと血糖値に大きな影響を与える糖質について特別の記載がありません。血糖コントロールが合併症予防に重要であり、食後血糖値に影響するのは、エネルギーではなく糖質であることを明記してよいのではないかと思います。」
と述べておられるので、やっと欧米水準に一歩近づこうとしている現状と思います。。
【西海岸の都市部では肥満と糖質のコントロールが投薬以上に重要だという医師のほうが多いです。
患者の状態により、発覚直後の血糖値を下げるためにほぼ糖質をカットするという処置はありますが、糖質自体は不可欠な栄養素なので、いかに血糖値を上げないように必要最低限の糖質を摂取する方法を指導されます。
1食事の最初に主食類をとらない、野菜や肉類を先にとり
後半に主食類を。
2糖質量は個人の糖尿コントロール状態により減量幅を決める。
主食の減った分は野菜を増やす。
3主食の種類も全粒粉など繊維質の多いものを選び
固く調理することで吸収を遅らせる。
4インスリン分泌のある人は食後ならばデザートもOK、
その分は主食の糖質量と調整する
私の先生はこんな感じでした、「FEWER, SLOWER, LATER」(糖質は少なめに、吸収の遅いものを、あとから摂取)という感じで 食事の重点はカロリー制限よりも糖質の量と取り方に置かれています。】
基本的には、糖質制限と低GI食品の組み合わせですね。
これなら、欧米人の2型糖尿病のほとんどを占める、BMI30以上の肥満でインスリン抵抗性が主で、インスリン分泌能力はまだ残っている糖尿人には、一定の効果があると思います。
しかし、肥満がなくインスリン分泌不足が主たる要因である日本の糖尿人には、GIはあまり役に立ちません。
やはり糖質制限食にまさる食事療法はありません。
インスリン抵抗性が主の欧米タイプの糖尿人にも、実際には糖質制限食のほうが有効です。
【アジア系の非肥満者の糖尿発症率が高いのは認識されていて 担当医師のグループでは、食事が原因だと考えているそうです。
白人の典型的な食事と比べ糖質が多く、「空腹にいきなり糖質」的な食事多く膵臓への負担が大きいそうです。
非肥満のアジア系患者は、食事指導で糖質をコントロールするだけで数値が大幅に改善し、過半数が無投薬で観察状態になるそうです。
糖尿発症率が高いのは遺伝子ではなく食事習慣だろうと考えているようです。】
これは、その通りと思います。
【アメリカでは個々の医師の裁量幅が広く、患者も治療を自由に選べるあくまで西海岸の都市部での一歩進んだ糖尿意識です。 人口が少なく生活習慣病医不足の中西部、南部では今でも 「EAT LESS, WALK MORE, AND LOSE WEIGHT」 (食事を減らして歩いて減量)が基本です。】
そうらしいですね。
カリフォルニア州の西海岸の都市部やニューヨークでは、糖質制限食OKレストランやスーパーに糖質制限食コーナーまであるようです。
一方で、田舎の州ではカロリー制限食で糖質50~60%という感じで日本糖尿病学会の推奨する食事療法と同一のようですね。
ともあれ糖尿人は、美味しく楽しく糖質制限食で自己管理したいものです。
江部康二
2011年06月16日 (木)
こんばんは。
2011年6月10日、メディアに
「武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスク?」
といった内容の記事が掲載されました。
【http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110610-00000001-cbn-soci
武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスクで
医療介護CBニュース 6月10日(金)12時17分配信
フランス政府の医薬品規制当局は6月9日、武田薬品工業の糖尿病治療薬アクトスとコンペタクト(アクトスとメトホルミンの配合剤)の新規患者への投与を禁止したと発表した。武田によると、フランスの規制当局が独自に行った疫学調査で、アクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認されたため。現在投与中の患者については、医師が個別に判断する。
フランスの規制当局の対応を受け、欧州医薬品庁(EMA)は20日から23日にかけて開かれる医薬品委員会(CHMP)の月例会議で、アクトスと膀胱がんのリスクの関係を検討する。
アクトスは昨年度全世界で3879億円を売り上げた武田の最主力製品で、このうちフランスを含めた欧州での売上高は295億円。】
北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏が「アクトスと膀胱がん」に対する論考をしておられます。☆(参考)
山田氏の論考を参考に、以下、簡単に要約してみました。
まず、アクトス(ピオグリタゾン)は発売前の研究において、雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告されています。しかし、この作用は雌ラットでは確認されていません。
今回のフランスの疫学調査も、男性においてのみ、アクトスで膀胱癌のリスクが有意差をもって認められたということです。
KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は、米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているアクトスとと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究です。
10年間の試験期間が予定されており、今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されました(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。
それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち、アクトス内服患者3万173人をアクトス非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ、全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかったものの、2年以上使用している患者ではぎりぎりで有意なリスクの増加が認められました。
上述のように、フランス政府の決定はありましたが、欧州医薬品庁(EMA)や米国医薬品庁(FDA)は、アクトス使用には制限を加えず、モニタリングを続けるということです。
アクトスは、体重増加、浮腫、心不全などの副作用が一定懸念され私自身は、もともとほとんど使っていません。
一方、前医で処方され副作用もなく経過がいい糖尿人で、糖質制限食がキッチリできない人には、そのまま継続処方することがあります。
糖質制限食がキッチリできる人もいれば、できない人もいます。
今後は、アクトスに関して、男性には今まで以上の慎重投与というスタンスで、いきたいと思います。
一方、痩せ型の女性糖尿人には、体重増加作用を期待して、アクトス少量投与も選択肢の一つかとは思います。
江部康二
以下は
医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年6月11日号に掲載された、北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏のアクトスと膀胱がんに対する論考です。
いつもながら、ニュートラルでわかりやすい解説となっています。
☆(参考)
【「ピオグリタゾンの膀胱がんリスク」を考察する
フランスの新規処方禁止勧告を受けて
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
問題の背景:見えない情報が不安と憶測,不適切な判断を生みかねない
6月11日の日本経済新聞紙面に掲載された「フランスの行政当局は『アクトス(ピオグリタゾン)服用で膀胱がんの発症リスクがわずかに高まる』との調査結果をもとに,糖尿病患者へ新たに処方しないように武田薬品工業の仏子会社へ指示した」との記事をご覧になった方も多いと思う(関連記事1,関連記事2)。
今回の仏医薬品庁(Afssaps)の決定は,同国内での疫学調査CNAMTS(Caisse d’assurance maladie de travailleurs salaries)に基づくものであるが,この試験の結果は現時点では英文でのpublicationがない。よって,情報は不十分なのであるが,見えない情報が不安と憶測をもたらし,不適切な判断を生むことだけは避けたいと考え,現時点でわたしの知りうる情報を,それに関連する文献とともに提示し,わたしなりに考察してみたい。
ポイント1:勧告の根拠は仏国内疫学調査CNAMTS
ピオグリタゾンは発売前の研究において,雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告された。しかし,この作用は雌ラットでは確認されず,また,雌雄を問わずマウスでも確認されなかったので,雄ラットに特有の現象と考えられていた。
ところが,ピオグリタゾンの動脈硬化症の予防効果を証明したとされるPROActive試験(Lancet 2005; 366: 1279-1289)において,有意ではないもののピオグリタゾン群での膀胱がんの増加が示唆されたこともあり,各国でピオグリタゾン使用患者での膀胱がんの発症率を検討する疫学試験が計画された。
CNAMTSは仏国内の保健データベースであるSNIIRAM(System national interregimes de l’assurance maladie)内の約150万人の糖尿病患者(年齢40~79歳)に関する2006~09年のデータを用いて,膀胱がんの発症率を検討した後ろ向きコホート研究である。登録された糖尿病患者は149万1,060人であり,うち15万5,535人がピオグリタゾン内服患者(男性53.8%)であり,133万5,525人がピオグリタゾン非内服患者(男性53.4%)であった。ピオグリタゾン非内服患者のうち68.2%がメトホルミン,55.5%がスルホニル尿素(SU)薬,27.6%がインスリンを使用していた。
ポイント2:男性ではピオグリタゾン内服患者で膀胱がんリスクが上昇
各種糖尿病薬の投与患者における膀胱がんの発症率を,当該薬剤以外の薬剤投与患者における膀胱がんの発症率と比較して得られたハザード比(HR)は以下の通りであった(表1)。
このデータからピオグリタゾンは男性において膀胱がんのリスクが有意に上昇していると判定された。そこで,ピオグリタゾンの投与期間や累積投与量で分類してリスクの上昇の程度を検討したところ,HRは以下の通りであった(表2,3)。
私の考察1:米国のKPNC試験やAERSでも類似の結果だが…
前述のように,ピオグリタゾンの持つデメリットとして膀胱がんの可能性が雄のラットで指摘されていたために,ほかにも両者の関係を検討する試験が実施されている。
KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は,米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているピオグリタゾンと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究である。10年間の試験期間が予定されており,今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されている(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。
それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち,ピオグリタゾン内服患者3万173人をピオグリタゾン非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ,全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかった(HR 1.2,95%CI 0.9~1.5)ものの,2年以上使用している患者では有意なリスクの増加が認められていた(同1.4,1.03~2.0;表4,5)。
また,FDAの副作用報告(AERS)を後ろ向きに解析した研究 (Diabetes Care 2011; 34: 1369-1371)では,オッズ比(OR)は4.30(2.82~6.52)でピオグリタゾン使用者での膀胱がんの発生報告が有意に多かった。
ただし,この研究ではアカルボース(OR 5.12倍)やグリクラジド (同3.56倍)でも膀胱がんの発生頻度が有意に高くなっており,興味深いことに,グリクラジドが有意にORが高かった一方で,グリベンクラミドは0.33と有意にORが低かった。
私の考察2:今の時点でのピオグリタゾンの中止は不要であろう
こうして見てみると,いずれの試験においても,全体もしくは部分的な集団においてピオグリタゾン内服者での膀胱がんの増加が報告されている。したがって,ピオグリタゾンの膀胱がん増加に対する懸念を払拭することはできない (‘白’とは言えない)。しかし,はっきりと膀胱がんを増加させているのかと問われれば,それも今の時点では断言できないであろう (‘黒’とも言えない)。
CNAMTSについては,ピオグリタゾン内服女性のHRは (統計学的に有意ではないが)1を下回っており,かつ累積投与量や投与期間が大きくなるにつれてHRが大きくなっておらず,ピオグリタゾンが生物学的に膀胱がんを増加させているという印象を持てない。
KPNCについては,武田薬品工業がサポートについている試験での負の作用の報告で信憑性が高いが,中間報告における2年以上使用している患者でのぎりぎりで統計学的に有意なHRの上昇であり,最終報告を待ちたいところである。
FDAのAERSについては,報告バイアスがあり,有害作用の発症率の計算に使用してはいけないデータである。同じスルホニル尿素 (SU)薬であるグリクラジドとグリベンクラミドの膀胱がんに対する相違 (片や有意な上昇で,片や有意な低下)を見ても,データが科学的な作用と一致するかに疑問がある。また,同じデータベースを用いて解析された先日のElashoffらのインクレチン関連薬に関するがんの報告 (「インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍への有害性を注視せざるをえない」,「『インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍リスク』論文を撤回させた? EASDステートメント」,「不可解な再掲載,インクレチン関連薬と膵炎・腫瘍」)を見ても,それぞれの薬剤で注目されている有害作用の報告がどうしても多くなる気がする。
そう考えると,黒と断言できない膀胱がんを恐れて,新規処方を停止したという仏行政当局の決定は時期尚早に思える。一方,同国政府の決定はあってもピオグリタゾンの使用には制限を加えず,モニタリングを続けるという欧州医薬品庁(EMA)やFDAのスタンスに共感を覚える。今の時点では,ピオグリタゾンが膀胱がんへのデメリットを持つ可能性は否定できないが,臨床上得られるメリットとのバランスを考えながら,慎重に処方していくというスタンスが大切であろう※。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。(本文へ戻る)
※ KPNC試験の結果からは,ピオグリタゾンを糖尿病患者1万人に1年間投与したときに予想される膀胱がん発症リスクが1.27人増加することになり,PROActive試験の成績からは,ピオグリタゾンを大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者1万人に1年間投与することで心筋梗塞が約40人,主要な動脈硬化症(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)が約70人減少することが示唆される。】
2011年6月10日、メディアに
「武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスク?」
といった内容の記事が掲載されました。
【http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110610-00000001-cbn-soci
武田のアクトス、仏で新規患者への投与禁止-膀胱がんリスクで
医療介護CBニュース 6月10日(金)12時17分配信
フランス政府の医薬品規制当局は6月9日、武田薬品工業の糖尿病治療薬アクトスとコンペタクト(アクトスとメトホルミンの配合剤)の新規患者への投与を禁止したと発表した。武田によると、フランスの規制当局が独自に行った疫学調査で、アクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認されたため。現在投与中の患者については、医師が個別に判断する。
フランスの規制当局の対応を受け、欧州医薬品庁(EMA)は20日から23日にかけて開かれる医薬品委員会(CHMP)の月例会議で、アクトスと膀胱がんのリスクの関係を検討する。
アクトスは昨年度全世界で3879億円を売り上げた武田の最主力製品で、このうちフランスを含めた欧州での売上高は295億円。】
北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏が「アクトスと膀胱がん」に対する論考をしておられます。☆(参考)
山田氏の論考を参考に、以下、簡単に要約してみました。
まず、アクトス(ピオグリタゾン)は発売前の研究において、雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告されています。しかし、この作用は雌ラットでは確認されていません。
今回のフランスの疫学調査も、男性においてのみ、アクトスで膀胱癌のリスクが有意差をもって認められたということです。
KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は、米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているアクトスとと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究です。
10年間の試験期間が予定されており、今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されました(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。
それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち、アクトス内服患者3万173人をアクトス非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ、全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかったものの、2年以上使用している患者ではぎりぎりで有意なリスクの増加が認められました。
上述のように、フランス政府の決定はありましたが、欧州医薬品庁(EMA)や米国医薬品庁(FDA)は、アクトス使用には制限を加えず、モニタリングを続けるということです。
アクトスは、体重増加、浮腫、心不全などの副作用が一定懸念され私自身は、もともとほとんど使っていません。
一方、前医で処方され副作用もなく経過がいい糖尿人で、糖質制限食がキッチリできない人には、そのまま継続処方することがあります。
糖質制限食がキッチリできる人もいれば、できない人もいます。
今後は、アクトスに関して、男性には今まで以上の慎重投与というスタンスで、いきたいと思います。
一方、痩せ型の女性糖尿人には、体重増加作用を期待して、アクトス少量投与も選択肢の一つかとは思います。
江部康二
以下は
医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年6月11日号に掲載された、北里研究所病院糖尿病センター長、山田悟氏のアクトスと膀胱がんに対する論考です。
いつもながら、ニュートラルでわかりやすい解説となっています。
☆(参考)
【「ピオグリタゾンの膀胱がんリスク」を考察する
フランスの新規処方禁止勧告を受けて
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
問題の背景:見えない情報が不安と憶測,不適切な判断を生みかねない
6月11日の日本経済新聞紙面に掲載された「フランスの行政当局は『アクトス(ピオグリタゾン)服用で膀胱がんの発症リスクがわずかに高まる』との調査結果をもとに,糖尿病患者へ新たに処方しないように武田薬品工業の仏子会社へ指示した」との記事をご覧になった方も多いと思う(関連記事1,関連記事2)。
今回の仏医薬品庁(Afssaps)の決定は,同国内での疫学調査CNAMTS(Caisse d’assurance maladie de travailleurs salaries)に基づくものであるが,この試験の結果は現時点では英文でのpublicationがない。よって,情報は不十分なのであるが,見えない情報が不安と憶測をもたらし,不適切な判断を生むことだけは避けたいと考え,現時点でわたしの知りうる情報を,それに関連する文献とともに提示し,わたしなりに考察してみたい。
ポイント1:勧告の根拠は仏国内疫学調査CNAMTS
ピオグリタゾンは発売前の研究において,雄ラットで膀胱がんを増やす作用が報告された。しかし,この作用は雌ラットでは確認されず,また,雌雄を問わずマウスでも確認されなかったので,雄ラットに特有の現象と考えられていた。
ところが,ピオグリタゾンの動脈硬化症の予防効果を証明したとされるPROActive試験(Lancet 2005; 366: 1279-1289)において,有意ではないもののピオグリタゾン群での膀胱がんの増加が示唆されたこともあり,各国でピオグリタゾン使用患者での膀胱がんの発症率を検討する疫学試験が計画された。
CNAMTSは仏国内の保健データベースであるSNIIRAM(System national interregimes de l’assurance maladie)内の約150万人の糖尿病患者(年齢40~79歳)に関する2006~09年のデータを用いて,膀胱がんの発症率を検討した後ろ向きコホート研究である。登録された糖尿病患者は149万1,060人であり,うち15万5,535人がピオグリタゾン内服患者(男性53.8%)であり,133万5,525人がピオグリタゾン非内服患者(男性53.4%)であった。ピオグリタゾン非内服患者のうち68.2%がメトホルミン,55.5%がスルホニル尿素(SU)薬,27.6%がインスリンを使用していた。
ポイント2:男性ではピオグリタゾン内服患者で膀胱がんリスクが上昇
各種糖尿病薬の投与患者における膀胱がんの発症率を,当該薬剤以外の薬剤投与患者における膀胱がんの発症率と比較して得られたハザード比(HR)は以下の通りであった(表1)。
このデータからピオグリタゾンは男性において膀胱がんのリスクが有意に上昇していると判定された。そこで,ピオグリタゾンの投与期間や累積投与量で分類してリスクの上昇の程度を検討したところ,HRは以下の通りであった(表2,3)。
私の考察1:米国のKPNC試験やAERSでも類似の結果だが…
前述のように,ピオグリタゾンの持つデメリットとして膀胱がんの可能性が雄のラットで指摘されていたために,ほかにも両者の関係を検討する試験が実施されている。
KPNC(Kaiser Permanente Northern California)試験は,米食品医薬品局(FDA)の要請を受けて武田薬品工業が米国カリフォルニア州で実施しているピオグリタゾンと膀胱がんの関係を評価するための疫学研究である。10年間の試験期間が予定されており,今年(2011年)4月号のDiabetes Careにその5年時での中間解析結果が報告されている(Diabetes Care 2011; 34: 915-922)。
それによると,1997~2002年に登録された19万3,099人の患者のうち,ピオグリタゾン内服患者3万173人をピオグリタゾン非内服糖尿病患者16万2,926人と比較したところ,全体では有意な膀胱がんの増加は認められなかった(HR 1.2,95%CI 0.9~1.5)ものの,2年以上使用している患者では有意なリスクの増加が認められていた(同1.4,1.03~2.0;表4,5)。
また,FDAの副作用報告(AERS)を後ろ向きに解析した研究 (Diabetes Care 2011; 34: 1369-1371)では,オッズ比(OR)は4.30(2.82~6.52)でピオグリタゾン使用者での膀胱がんの発生報告が有意に多かった。
ただし,この研究ではアカルボース(OR 5.12倍)やグリクラジド (同3.56倍)でも膀胱がんの発生頻度が有意に高くなっており,興味深いことに,グリクラジドが有意にORが高かった一方で,グリベンクラミドは0.33と有意にORが低かった。
私の考察2:今の時点でのピオグリタゾンの中止は不要であろう
こうして見てみると,いずれの試験においても,全体もしくは部分的な集団においてピオグリタゾン内服者での膀胱がんの増加が報告されている。したがって,ピオグリタゾンの膀胱がん増加に対する懸念を払拭することはできない (‘白’とは言えない)。しかし,はっきりと膀胱がんを増加させているのかと問われれば,それも今の時点では断言できないであろう (‘黒’とも言えない)。
CNAMTSについては,ピオグリタゾン内服女性のHRは (統計学的に有意ではないが)1を下回っており,かつ累積投与量や投与期間が大きくなるにつれてHRが大きくなっておらず,ピオグリタゾンが生物学的に膀胱がんを増加させているという印象を持てない。
KPNCについては,武田薬品工業がサポートについている試験での負の作用の報告で信憑性が高いが,中間報告における2年以上使用している患者でのぎりぎりで統計学的に有意なHRの上昇であり,最終報告を待ちたいところである。
FDAのAERSについては,報告バイアスがあり,有害作用の発症率の計算に使用してはいけないデータである。同じスルホニル尿素 (SU)薬であるグリクラジドとグリベンクラミドの膀胱がんに対する相違 (片や有意な上昇で,片や有意な低下)を見ても,データが科学的な作用と一致するかに疑問がある。また,同じデータベースを用いて解析された先日のElashoffらのインクレチン関連薬に関するがんの報告 (「インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍への有害性を注視せざるをえない」,「『インクレチン関連薬の膵炎・腫瘍リスク』論文を撤回させた? EASDステートメント」,「不可解な再掲載,インクレチン関連薬と膵炎・腫瘍」)を見ても,それぞれの薬剤で注目されている有害作用の報告がどうしても多くなる気がする。
そう考えると,黒と断言できない膀胱がんを恐れて,新規処方を停止したという仏行政当局の決定は時期尚早に思える。一方,同国政府の決定はあってもピオグリタゾンの使用には制限を加えず,モニタリングを続けるという欧州医薬品庁(EMA)やFDAのスタンスに共感を覚える。今の時点では,ピオグリタゾンが膀胱がんへのデメリットを持つ可能性は否定できないが,臨床上得られるメリットとのバランスを考えながら,慎重に処方していくというスタンスが大切であろう※。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。(本文へ戻る)
※ KPNC試験の結果からは,ピオグリタゾンを糖尿病患者1万人に1年間投与したときに予想される膀胱がん発症リスクが1.27人増加することになり,PROActive試験の成績からは,ピオグリタゾンを大血管障害の既往を有する2型糖尿病患者1万人に1年間投与することで心筋梗塞が約40人,主要な動脈硬化症(心血管死,心筋梗塞,脳卒中)が約70人減少することが示唆される。】
2011年06月15日 (水)
こんばんは
2011年5月19日~21日、札幌で開催された第54回日本糖尿病学会において、日本人の糖尿病患者の食事摂取の状況が報告されました。
その結果は、日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに、概ね適合しているとのことです。
【日本では糖尿病患者は、一般の人よりもエネルギー摂取量が低く、栄養素別の摂取状況は日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインには概ね適合していることが明らかになった。また、日本の糖尿病患者は、欧米の糖尿病患者よりも低脂質食であることも分かった。
日本人の2型糖尿病患者の実態を調査している大規模臨床研究であるJapan Diabetes Complication Study(JDCS)によるもので、筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。】
この報告によれば、日本の2型糖尿人は、医師の指導を比較的よく守って、低カロリー低脂質で健気に頑張っていることとなります。
当時の国民健康・栄養調査と比較すると、1日のエネルギー摂取量は国民平均の2002kcalに対して、本研究対象者の1日のエネルギー摂取量は1737kcalとかなり低カロリーです。
3大栄養素のエネルギー比率は、炭水化物で53.6%、タンパク質で15.7%、脂質で27.6%です。欧米より炭水化物比率が多く、脂質比率が少ないです。
ところが、このように日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに、概ね適合しているにも関わらず、全国59施設の40~70歳の2型糖尿病患者1516人というこの大規模調査で、インスリンや経口剤も適宜使用していてもHbA1c(国際標準値)7.9±1.3%でした。日本の基準値JDSになおしたら、HbA1c7.5±1.3%です。
従来、インスリン・経口薬・運動療法・食事療法(カロリー制限)をしていても、HbA1c6.5未満のコントロール良好群に入る2型糖尿人は、3割に満たないと言われていたので、今回の報告結果も、こんなものと思います。
やはり糖質を摂取する限りは、コントロール良好への道は困難としか言いようがありません。
一方、糖質制限食なら、カロリー制限なしで、コントロール良好を保てる糖尿人は、過半数を占めると思います。
インスリンも内服薬も運動もなしで、コントロール良好の方も多数おられます。
江部康二
☆☆☆
以下は2011. 5. 23の日経メディカル別冊編集・オンライン版の記事を転載です。
【日本人の糖尿病患者の食事摂取の状況、
日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに概ね適合
筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏
日本では糖尿病患者は、一般の人よりもエネルギー摂取量が低く、栄養素別の摂取状況は日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインには概ね適合していることが明らかになった。また、日本の糖尿病患者は、欧米の糖尿病患者よりも低脂質食であることも分かった。日本人の2型糖尿病患者の実態を調査している大規模臨床研究である
Japan Diabetes Complication Study(JDCS)によるもので、筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。
欧米では糖尿病患者は肥満傾向にあり、食事制限や身体活動が奨励されるレベルに至っていないことが報告されている。一方、日本人糖尿病患者の食事摂取状況を調べた大規模な調査はなく、日本人の食事摂取状況は明らかでない。そこで堀川氏らは、日本人2型糖尿病患者の食事摂取状況と日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインへの適合状況を調べた。
対象は、全国59施設の40~70歳の2型糖尿病患者1516人。1996年に実施した食物摂取頻度調査(FFQg)で有効な回答が得られた人で、HbA1c(JDS値)が6.5%未満の場合は除外した。
対象者の基本属性は、年齢59±7歳、糖尿病罹病期間は11±7.1年、体重は58.4±9.3kg、BMIは22.9±3.0kg/m2、HbA1c(国際標準値)7.9±1.3%、インスリンの治療者は20.0%、経口薬のみの治療者は65.8%だった。
食事調査には、日常の1~2カ月程度の期間の栄養素および食品群別摂取量を推定するために使用されている調査票である食物摂取頻度調査 (FFQg)を用いた。計算には「エクセル栄養君」を使用した。
その結果、対象者の摂取エネルギーは1737kcalで、3大栄養素のエネルギー比率は、炭水化物で53.6%、タンパク質で15.7%、脂質で27.6%だった。
一般の健康な日本人の食物摂取状況を示すものとして当時の国民健康・栄養調査と比較すると、本研究対象者の1日のエネルギー摂取量は国民平均の2002kcalよりも低かった。
栄養素別にみると、炭水化物のエネルギー比率が国民平均よりやや低めではあるが、3大栄養素のエネルギー比率は対象者と国民平均はほぼ同等だった。
さらに、対象者の栄養素摂取状況と、日本糖尿病学会の推奨比率および欧米における比率を比較したところ、炭水化物エネルギー比率は、日本糖尿病学会の推奨比率(55~60%)をわずかに下回っている程度だった。また、欧米諸国が提案している糖尿病治療食のエネルギー比率(45~65%)には十分に適合していた。
海外糖尿病患者の栄養摂取状況と比較すると、日本の糖尿病患者は米国、スペイン、ヨーロッパなどの欧米諸国の糖尿病患者よりも炭水化物エネルギー比率が高く、脂質エネルギー比率が低いことが分かった。一方で、アフリカや韓国の糖尿病患者と比較すると、炭水化物エネルギー比率が低く、脂質エネルギー比率が高いことが分かった。
なお堀川氏は、本研究の限界点として、自記式調査票による調査であったため記入者の過大申告や過少申告の可能性があること、調査方法や質問紙の違いによる摂取推定量の誤差があることを挙げた。】
2011年5月19日~21日、札幌で開催された第54回日本糖尿病学会において、日本人の糖尿病患者の食事摂取の状況が報告されました。
その結果は、日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに、概ね適合しているとのことです。
【日本では糖尿病患者は、一般の人よりもエネルギー摂取量が低く、栄養素別の摂取状況は日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインには概ね適合していることが明らかになった。また、日本の糖尿病患者は、欧米の糖尿病患者よりも低脂質食であることも分かった。
日本人の2型糖尿病患者の実態を調査している大規模臨床研究であるJapan Diabetes Complication Study(JDCS)によるもので、筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。】
この報告によれば、日本の2型糖尿人は、医師の指導を比較的よく守って、低カロリー低脂質で健気に頑張っていることとなります。
当時の国民健康・栄養調査と比較すると、1日のエネルギー摂取量は国民平均の2002kcalに対して、本研究対象者の1日のエネルギー摂取量は1737kcalとかなり低カロリーです。
3大栄養素のエネルギー比率は、炭水化物で53.6%、タンパク質で15.7%、脂質で27.6%です。欧米より炭水化物比率が多く、脂質比率が少ないです。
ところが、このように日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに、概ね適合しているにも関わらず、全国59施設の40~70歳の2型糖尿病患者1516人というこの大規模調査で、インスリンや経口剤も適宜使用していてもHbA1c(国際標準値)7.9±1.3%でした。日本の基準値JDSになおしたら、HbA1c7.5±1.3%です。
従来、インスリン・経口薬・運動療法・食事療法(カロリー制限)をしていても、HbA1c6.5未満のコントロール良好群に入る2型糖尿人は、3割に満たないと言われていたので、今回の報告結果も、こんなものと思います。
やはり糖質を摂取する限りは、コントロール良好への道は困難としか言いようがありません。
一方、糖質制限食なら、カロリー制限なしで、コントロール良好を保てる糖尿人は、過半数を占めると思います。
インスリンも内服薬も運動もなしで、コントロール良好の方も多数おられます。
江部康二
☆☆☆
以下は2011. 5. 23の日経メディカル別冊編集・オンライン版の記事を転載です。
【日本人の糖尿病患者の食事摂取の状況、
日本糖尿病学会の食事療法ガイドラインに概ね適合
筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏
日本では糖尿病患者は、一般の人よりもエネルギー摂取量が低く、栄養素別の摂取状況は日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインには概ね適合していることが明らかになった。また、日本の糖尿病患者は、欧米の糖尿病患者よりも低脂質食であることも分かった。日本人の2型糖尿病患者の実態を調査している大規模臨床研究である
Japan Diabetes Complication Study(JDCS)によるもので、筑波大学水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の堀川千嘉氏(写真)らが、札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で発表した。
欧米では糖尿病患者は肥満傾向にあり、食事制限や身体活動が奨励されるレベルに至っていないことが報告されている。一方、日本人糖尿病患者の食事摂取状況を調べた大規模な調査はなく、日本人の食事摂取状況は明らかでない。そこで堀川氏らは、日本人2型糖尿病患者の食事摂取状況と日本糖尿病学会の食事療法のガイドラインへの適合状況を調べた。
対象は、全国59施設の40~70歳の2型糖尿病患者1516人。1996年に実施した食物摂取頻度調査(FFQg)で有効な回答が得られた人で、HbA1c(JDS値)が6.5%未満の場合は除外した。
対象者の基本属性は、年齢59±7歳、糖尿病罹病期間は11±7.1年、体重は58.4±9.3kg、BMIは22.9±3.0kg/m2、HbA1c(国際標準値)7.9±1.3%、インスリンの治療者は20.0%、経口薬のみの治療者は65.8%だった。
食事調査には、日常の1~2カ月程度の期間の栄養素および食品群別摂取量を推定するために使用されている調査票である食物摂取頻度調査 (FFQg)を用いた。計算には「エクセル栄養君」を使用した。
その結果、対象者の摂取エネルギーは1737kcalで、3大栄養素のエネルギー比率は、炭水化物で53.6%、タンパク質で15.7%、脂質で27.6%だった。
一般の健康な日本人の食物摂取状況を示すものとして当時の国民健康・栄養調査と比較すると、本研究対象者の1日のエネルギー摂取量は国民平均の2002kcalよりも低かった。
栄養素別にみると、炭水化物のエネルギー比率が国民平均よりやや低めではあるが、3大栄養素のエネルギー比率は対象者と国民平均はほぼ同等だった。
さらに、対象者の栄養素摂取状況と、日本糖尿病学会の推奨比率および欧米における比率を比較したところ、炭水化物エネルギー比率は、日本糖尿病学会の推奨比率(55~60%)をわずかに下回っている程度だった。また、欧米諸国が提案している糖尿病治療食のエネルギー比率(45~65%)には十分に適合していた。
海外糖尿病患者の栄養摂取状況と比較すると、日本の糖尿病患者は米国、スペイン、ヨーロッパなどの欧米諸国の糖尿病患者よりも炭水化物エネルギー比率が高く、脂質エネルギー比率が低いことが分かった。一方で、アフリカや韓国の糖尿病患者と比較すると、炭水化物エネルギー比率が低く、脂質エネルギー比率が高いことが分かった。
なお堀川氏は、本研究の限界点として、自記式調査票による調査であったため記入者の過大申告や過少申告の可能性があること、調査方法や質問紙の違いによる摂取推定量の誤差があることを挙げた。】
2011年06月15日 (水)
おはようございます。
先日ご紹介した高知アイスさんのシャーベットの糖質量について、みかさんからご質問頂きました。
『糖質制限アイス
糖質制限にアイスがでたんですね。とても嬉しいです。早速頼んでみようと思います
シャーベットは糖質量が多いもので10グラムほどありますが、糖質制限のおやつとしては許容範囲なのでしょうか?』
みかさん。
コメントありがとうございます。
糖質制限ドットコムのホームページで、おいしくってゼロシャーベットの商品詳細、原材料表示を読んでみますと、ご質問頂いた糖質量が10グラムほどあるぽんかんシャーベットでしたら、
原材料:ぽんかん果汁(高知県産)、エリスリトール、還元麦芽糖水飴、安定剤(増粘多糖類)
糖質:1カップ90mlあたり 糖質10.7g(エリスリトール除く)
ご注意:※還元麦芽糖水飴は難消化性ですがある程度吸収されます。
個人差はありますが砂糖の半分から1/3程度血糖になります。
と書いてあります。
ご質問中の10グラムの糖質は、エリスリトールを除いたものですから、原材料表示からみますと、ぽんかん果汁に含まれるショ糖や果糖、還元麦芽糖水飴と言う事になります。
仮に、この10グラムの糖質が、全て還元麦芽糖水飴だとすると、ご注意にも書いてありますように、10グラムの半分から1/3程度血糖が上がる計算になりますね。
なので、糖尿人の方がこのシャーベットを食べる時は、一回で1個全部ではなく、半分か1/3ていどにされることをおすすめします。
江部康二
先日ご紹介した高知アイスさんのシャーベットの糖質量について、みかさんからご質問頂きました。
『糖質制限アイス
糖質制限にアイスがでたんですね。とても嬉しいです。早速頼んでみようと思います
シャーベットは糖質量が多いもので10グラムほどありますが、糖質制限のおやつとしては許容範囲なのでしょうか?』
みかさん。
コメントありがとうございます。
糖質制限ドットコムのホームページで、おいしくってゼロシャーベットの商品詳細、原材料表示を読んでみますと、ご質問頂いた糖質量が10グラムほどあるぽんかんシャーベットでしたら、
原材料:ぽんかん果汁(高知県産)、エリスリトール、還元麦芽糖水飴、安定剤(増粘多糖類)
糖質:1カップ90mlあたり 糖質10.7g(エリスリトール除く)
ご注意:※還元麦芽糖水飴は難消化性ですがある程度吸収されます。
個人差はありますが砂糖の半分から1/3程度血糖になります。
と書いてあります。
ご質問中の10グラムの糖質は、エリスリトールを除いたものですから、原材料表示からみますと、ぽんかん果汁に含まれるショ糖や果糖、還元麦芽糖水飴と言う事になります。
仮に、この10グラムの糖質が、全て還元麦芽糖水飴だとすると、ご注意にも書いてありますように、10グラムの半分から1/3程度血糖が上がる計算になりますね。
なので、糖尿人の方がこのシャーベットを食べる時は、一回で1個全部ではなく、半分か1/3ていどにされることをおすすめします。
江部康二
2011年06月14日 (火)
おはようございます。
今朝の京都は、爽やかな梅雨の晴れ間がひろがっています。
暑くもなく寒くもなく、気持ちい初夏の日差しといったところでしょうか。
さて、夏といえば冷たいものが恋しくなるのですが、糖質制限をしている私たちには、いくら暑いからと言っても、コンビニで市販のアイスクリーム買って食べるわけにはいきません。
糖質制限中でも食べられる冷たいものをと思って、あらてつさんの糖質制限ドットコムを見てみると、意外なことに冷たいお菓子などがほとんどありません。
理由をあらてつさんに聞いたところ、
「私、冷たい物食べると下痢しますから。」
・・・。
返す言葉がありませんでした( ゚д゚)
そんな虚弱体質で999の持病を持つあらてつさんが、アイスクリームとゼリーを持ってやってきました。
普通のアイスかと思いきや、さにあらず。
なんと、とうとう糖質制限なアイスを作ったとのこと。
ついに虚弱体質克服かと思ったら違いまして、高知のアイスクリーム屋さんとご縁ができたので試作してもらったそうです。
そんなことなら、もっと早く作ればいいのにと思いながらも食べてみると、これがどうして美味しいではありませんか。
一般的なアイスと遜色ない、いやある意味それ以上かも知れません。
ゼリーは柚子のゼリーで、フタを開けた瞬間からとても良い柚子の香りが広がります。あまりにも柚子なので、香料を使っているのかと聞いたところ、「一切香料は使っていません、高知県産の柚子のみです!」と自慢気な返事が。
別に、あらてつさんが作ったわけではなかろうと思ったのですが、美味しいのでよしとしましょう(笑)
とにかく、糖質制限でこんな本格的な柚子ゼリーが食べられるなんて、いい時代になったものです(^^)
あらてつさん、去年からちょこちょこ高知へ行くなんて話を聞いていて、どうせ魚でも食べにいってるんだろうと思っていたら、糖質制限なスイーツを作る話をしに行ってたんですね(^_^;)
なんでも、高知は柚子の生産日本一だそうで、その特産品の柚子を使って糖質制限な商品を開発するのが目的で、高知へ度々足を運んでいたそうです。
その話の中で、高知アイスさんとおっしゃる“メイドイン土佐”にこだわった商品作りをされているメーカーさんと知り合い、提携したそうです。
この高知アイスさん、先ほどご紹介したアイスクリームやゼリーも美味しいのですが、ゆず果汁をタップリ使ったゆずドリンクも自慢の品だそうです。
そのゆずドリンクをエリスリトールを使って、カロリーゼロで糖類ゼロな糖質制限ドリンクにしたのが、おいしくってゼロ、ゆずドリンクです。
私も飲みましたが、柚子の香りと清涼感がエリスリトールとマッチして、砂糖を使ったものより美味しく感じました。これは、これからの季節おすすめですね。
あと、あらてつさんのリクエストで商品化した、ゆず生姜濃縮シロップも秀逸でした。
濃縮タイプなので、いろんなもので割って飲むことができます。
お湯や水はもちろん、お酒で割って飲めば甘いカクテルを糖質制限で楽しむことができます。
これは、なかなか画期的ではないでしょうか。
アイスクリームもいろいろ種類があって、あらてつさんのブログから抜粋すると、
漫画「美味しんぼ」で取り上げられた、高知県黒潮町の吉田さんが作る「天日塩」を使った「天日塩ジェラード」、高知の隠れた名産、緑茶を使った「煎茶アイスクリーム」、高知特産の鶏、土佐ジローの濃厚な玉子を贅沢に使った、「土佐ジローバニラアイス」、3つのラインナップです。
シャーベットも作ったそうです。
先程も出ました、生産量日本一を誇る高知県の特産品、柚子を使った「ゆずシャーベット」、同じく高知県の特産品、文旦とぽんかんを「文旦シャーベット」「ぽんかんシャーベット」に。
この中で私のお気に入りは「文旦シャーベット」
食べた瞬間、「うめー!」と雄叫び上げたくらいですから(笑)
だそうです。
おいしくってゼロシリーズ、これからの暑い季節におすすめです。
江部康二
おいしくってゼロ、ゆずゼリー
http://www.toushitsuseigen.com/shop/zero_jerry.html
おいしくってゼロ、ゆずドリンク
http://www.toushitsuseigen.com/shop/zero_drink.html
おいしくってゼロ、ゆず生姜シロップ
http://www.toushitsuseigen.com/shop/zero_syrop.html
おいしくってゼロ、アイス・シャーベット
http://www.toushitsuseigen.com/shop/zero_icecream.html
今朝の京都は、爽やかな梅雨の晴れ間がひろがっています。
暑くもなく寒くもなく、気持ちい初夏の日差しといったところでしょうか。
さて、夏といえば冷たいものが恋しくなるのですが、糖質制限をしている私たちには、いくら暑いからと言っても、コンビニで市販のアイスクリーム買って食べるわけにはいきません。
糖質制限中でも食べられる冷たいものをと思って、あらてつさんの糖質制限ドットコムを見てみると、意外なことに冷たいお菓子などがほとんどありません。
理由をあらてつさんに聞いたところ、
「私、冷たい物食べると下痢しますから。」
・・・。
返す言葉がありませんでした( ゚д゚)
そんな虚弱体質で999の持病を持つあらてつさんが、アイスクリームとゼリーを持ってやってきました。
普通のアイスかと思いきや、さにあらず。
なんと、とうとう糖質制限なアイスを作ったとのこと。
ついに虚弱体質克服かと思ったら違いまして、高知のアイスクリーム屋さんとご縁ができたので試作してもらったそうです。
そんなことなら、もっと早く作ればいいのにと思いながらも食べてみると、これがどうして美味しいではありませんか。
一般的なアイスと遜色ない、いやある意味それ以上かも知れません。
ゼリーは柚子のゼリーで、フタを開けた瞬間からとても良い柚子の香りが広がります。あまりにも柚子なので、香料を使っているのかと聞いたところ、「一切香料は使っていません、高知県産の柚子のみです!」と自慢気な返事が。
別に、あらてつさんが作ったわけではなかろうと思ったのですが、美味しいのでよしとしましょう(笑)
とにかく、糖質制限でこんな本格的な柚子ゼリーが食べられるなんて、いい時代になったものです(^^)
あらてつさん、去年からちょこちょこ高知へ行くなんて話を聞いていて、どうせ魚でも食べにいってるんだろうと思っていたら、糖質制限なスイーツを作る話をしに行ってたんですね(^_^;)
なんでも、高知は柚子の生産日本一だそうで、その特産品の柚子を使って糖質制限な商品を開発するのが目的で、高知へ度々足を運んでいたそうです。
その話の中で、高知アイスさんとおっしゃる“メイドイン土佐”にこだわった商品作りをされているメーカーさんと知り合い、提携したそうです。
この高知アイスさん、先ほどご紹介したアイスクリームやゼリーも美味しいのですが、ゆず果汁をタップリ使ったゆずドリンクも自慢の品だそうです。
そのゆずドリンクをエリスリトールを使って、カロリーゼロで糖類ゼロな糖質制限ドリンクにしたのが、おいしくってゼロ、ゆずドリンクです。
私も飲みましたが、柚子の香りと清涼感がエリスリトールとマッチして、砂糖を使ったものより美味しく感じました。これは、これからの季節おすすめですね。
あと、あらてつさんのリクエストで商品化した、ゆず生姜濃縮シロップも秀逸でした。
濃縮タイプなので、いろんなもので割って飲むことができます。
お湯や水はもちろん、お酒で割って飲めば甘いカクテルを糖質制限で楽しむことができます。
これは、なかなか画期的ではないでしょうか。
アイスクリームもいろいろ種類があって、あらてつさんのブログから抜粋すると、
漫画「美味しんぼ」で取り上げられた、高知県黒潮町の吉田さんが作る「天日塩」を使った「天日塩ジェラード」、高知の隠れた名産、緑茶を使った「煎茶アイスクリーム」、高知特産の鶏、土佐ジローの濃厚な玉子を贅沢に使った、「土佐ジローバニラアイス」、3つのラインナップです。
シャーベットも作ったそうです。
先程も出ました、生産量日本一を誇る高知県の特産品、柚子を使った「ゆずシャーベット」、同じく高知県の特産品、文旦とぽんかんを「文旦シャーベット」「ぽんかんシャーベット」に。
この中で私のお気に入りは「文旦シャーベット」
食べた瞬間、「うめー!」と雄叫び上げたくらいですから(笑)
だそうです。
おいしくってゼロシリーズ、これからの暑い季節におすすめです。
江部康二
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2011年06月13日 (月)
こんにちは。
2010年後半、日本脂質栄養学会と日本動脈硬化学会の間で、コレステロール論争が持ち上がったのは記憶に新しいところです。
日本動脈硬化学会が2007年に作成したガイドラインは、基本的に「コレステロールは低ければ低いほど良い」という立場です。
これに対して、日本脂質栄養学会は「コレステロールは高い方が長生き」というガイドラインを2010年に作成し、論争を挑みました。
この日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対して、北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏は、これまで批判的な立場をとって論陣をはって来られました。
山田悟氏は、私の信頼する医師の一人で、一貫してニュートラルな立場からエビデンスに基づいた発言をして来られました。
私自身は、これまでコレステロールが少々高めでも、スタチンなどの薬を使って下げることは殆んどしない方針で臨床活動をしてきました。
この点、山田氏の日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対する批判は一理あるだけに、私も悩んでいました。
その中で
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
に掲載された山田氏の論考は、最近発表された自治医大コホート研究で、
「各種因子を調整後も低コレステロールと高死亡率に有意な関連が認められた。」
ということを、虚心坦懐に紹介しておられます。
エビデンスに基づき、ニュートラルな立場で情報を発信するという山田氏の、面目躍如たるものがありました。
この自治医大の研究、規模も大きくて期間も長く、コホート研究としてはNIPPON DATA 80と並ぶ良質のエビデンスです。
日本動脈硬化学会は、
「NIPPON DATA80においては肝疾患が交絡因子となって、TC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させており、それを調整したら、死亡率は上昇していない。」
との見解です。
今回の自治医大のコホート研究は、その点を考慮して肝疾患などを除外して調整したあとも、低コレステロール群のほうが死亡率が高かったと報告されました。
特に女性においては、
第1群:160mg/dL未満群 →死亡率が一番高い
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群, →第2群より死亡率が低い
第4群:240mg/dL以上群 →第2群より死亡率が低い
明確に、コレステロール値が低いほど、死亡率が上昇していました。
この結果をどう解釈するかは、脂質管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
高コレステロール値容認派の私としては、ちょっぴり嬉しいエビデンスの登場でした。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
『不毛な議論はやめて実りある介入試験を』北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:昨年のコレステロール議論は鎮静化
昨年(2010年)9月,日本脂質栄養学会(以下,脂質栄養学会)が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発行したことで,コレステロールについての議論が盛り上がったことは記憶に新しい(関連記事1,2,3,4)。
しかし,このガイドラインはコレステロール異常値に対しての臨床的指針を示したものというよりは,単に日本動脈硬化学会(以下,動脈硬化学会)の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に対する異論を世間が注目したくなるような形で発表したものという色彩が強かった。これに対する動脈硬化学会の反論は以下のようなものであった。
(1)ガイドラインでありながらエビデンスレベルが明示されていない。
(2)十分に交絡因子を調整していない観察研究から因果関係を導きだしている。
(3)介入試験と観察研究であるコホート研究を混同し,介入試験なしに結論を出している。
昨年来の議論は鎮静化しているように思われるが,このたび自治医大コホート研究から,比較的しっかりと調整をしてもなお,低コレステロール値が高死亡率と関連していたという興味深い結果が発表されたのでご紹介したい(J Epidemiol 2011; 21: 67-74)。
研究のポイント1:日本の12地域1万2,334人の健常者を対象としたコホート研究
自治医大コホート研究は1992年度に開始された,北は岩手県から南は福岡県までの全国12地域での住民健診のデータを集積しているコホート研究である。この研究は,生活様式,血清脂質などと心血管疾患発症との関連を見ることを目的に開始されたもので,1992年4月~1995年7月に基礎データが集積され,計1万2,490人が登録された。
平均11.9年の経過観察(14万5,312人・年)が行われ,死亡については死亡診断書から死因を判定することとした。住民健診のデータであるので(論文の抄録のMethodsの項にはhealthy adultsを対象としたと記載されてはいるが),何らかの疾病を抱えている人を除外してはいない。
登録時40~69歳であった1万2,334人〔男性4,839人,BMI 23.1,収縮期血圧(SBP)130mmHg程度,拡張期血圧(DBP)78mmHg程度〕を対象にして,
基礎データの総コレステロール(TC)値に従って,
第1群:160mg/dL未満群,
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群,
第4群:240mg/dL以上群―の4群に分割し,
その後の死亡率や死因を検討したのが今回の報告である。
また,NIPPON DATA80において肝疾患が交絡因子となってTC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させていたことから,死因から肝疾患を除外した場合についての検討も行われた。
研究のポイント2:さまざまな調整をしても低コレステロール群の死亡率が高い
経過観察期間中のデータの欠損を除外して1万1,869人のデータが解析された。経過観察期間中に635人の男性と423人の女性が死亡し,うち34人の男性と15人の女性が肝疾患(肝臓がん,肝硬変,その他)を死因としていた。
基礎データのTC値に従って,群別の比較をすると(第2群を基準として),男性では基準群での死亡率のハザード比が最低であったものの,女性では第3群,第4群(TC高値の群)の方が第2群より低く,第1群(TC低値の群)の死亡率が最も高いという結果であった(表1)。これは,肝疾患を死因とする死亡を除外しても同様であり(表2),がんや心血管疾患の既往者を除外しても同様であった(表3)。
第1群の死因として,第2群よりもハザード比が有意に高かったのは,男性ではがん,女性では脳出血,心不全であった。
私の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(Atherosclerosis 2007; 190: 216-223)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,TC最低群での総死亡率の上昇は肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなったのに対し,TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなったというものであった。
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(表4,5)。
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(表6,7)。
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg/dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合―である。
今回の論文の筆者らも,考察において“高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性”や“低栄養の存在の可能性”や“甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績などを知りたいものである。
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は,今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。
2010年後半、日本脂質栄養学会と日本動脈硬化学会の間で、コレステロール論争が持ち上がったのは記憶に新しいところです。
日本動脈硬化学会が2007年に作成したガイドラインは、基本的に「コレステロールは低ければ低いほど良い」という立場です。
これに対して、日本脂質栄養学会は「コレステロールは高い方が長生き」というガイドラインを2010年に作成し、論争を挑みました。
この日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対して、北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏は、これまで批判的な立場をとって論陣をはって来られました。
山田悟氏は、私の信頼する医師の一人で、一貫してニュートラルな立場からエビデンスに基づいた発言をして来られました。
私自身は、これまでコレステロールが少々高めでも、スタチンなどの薬を使って下げることは殆んどしない方針で臨床活動をしてきました。
この点、山田氏の日本脂質栄養学会の「コレステロール高めが長生き」ガイドラインに対する批判は一理あるだけに、私も悩んでいました。
その中で
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
に掲載された山田氏の論考は、最近発表された自治医大コホート研究で、
「各種因子を調整後も低コレステロールと高死亡率に有意な関連が認められた。」
ということを、虚心坦懐に紹介しておられます。
エビデンスに基づき、ニュートラルな立場で情報を発信するという山田氏の、面目躍如たるものがありました。
この自治医大の研究、規模も大きくて期間も長く、コホート研究としてはNIPPON DATA 80と並ぶ良質のエビデンスです。
日本動脈硬化学会は、
「NIPPON DATA80においては肝疾患が交絡因子となって、TC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させており、それを調整したら、死亡率は上昇していない。」
との見解です。
今回の自治医大のコホート研究は、その点を考慮して肝疾患などを除外して調整したあとも、低コレステロール群のほうが死亡率が高かったと報告されました。
特に女性においては、
第1群:160mg/dL未満群 →死亡率が一番高い
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群, →第2群より死亡率が低い
第4群:240mg/dL以上群 →第2群より死亡率が低い
明確に、コレステロール値が低いほど、死亡率が上昇していました。
この結果をどう解釈するかは、脂質管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
高コレステロール値容認派の私としては、ちょっぴり嬉しいエビデンスの登場でした。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
【医師のための専門情報サイトMTPro(エムティープロ) 株式会社メディカルトリビューン2011年5月31日号】
『不毛な議論はやめて実りある介入試験を』北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
研究の背景:昨年のコレステロール議論は鎮静化
昨年(2010年)9月,日本脂質栄養学会(以下,脂質栄養学会)が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発行したことで,コレステロールについての議論が盛り上がったことは記憶に新しい(関連記事1,2,3,4)。
しかし,このガイドラインはコレステロール異常値に対しての臨床的指針を示したものというよりは,単に日本動脈硬化学会(以下,動脈硬化学会)の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に対する異論を世間が注目したくなるような形で発表したものという色彩が強かった。これに対する動脈硬化学会の反論は以下のようなものであった。
(1)ガイドラインでありながらエビデンスレベルが明示されていない。
(2)十分に交絡因子を調整していない観察研究から因果関係を導きだしている。
(3)介入試験と観察研究であるコホート研究を混同し,介入試験なしに結論を出している。
昨年来の議論は鎮静化しているように思われるが,このたび自治医大コホート研究から,比較的しっかりと調整をしてもなお,低コレステロール値が高死亡率と関連していたという興味深い結果が発表されたのでご紹介したい(J Epidemiol 2011; 21: 67-74)。
研究のポイント1:日本の12地域1万2,334人の健常者を対象としたコホート研究
自治医大コホート研究は1992年度に開始された,北は岩手県から南は福岡県までの全国12地域での住民健診のデータを集積しているコホート研究である。この研究は,生活様式,血清脂質などと心血管疾患発症との関連を見ることを目的に開始されたもので,1992年4月~1995年7月に基礎データが集積され,計1万2,490人が登録された。
平均11.9年の経過観察(14万5,312人・年)が行われ,死亡については死亡診断書から死因を判定することとした。住民健診のデータであるので(論文の抄録のMethodsの項にはhealthy adultsを対象としたと記載されてはいるが),何らかの疾病を抱えている人を除外してはいない。
登録時40~69歳であった1万2,334人〔男性4,839人,BMI 23.1,収縮期血圧(SBP)130mmHg程度,拡張期血圧(DBP)78mmHg程度〕を対象にして,
基礎データの総コレステロール(TC)値に従って,
第1群:160mg/dL未満群,
第2群:160~200mg/dL未満群,
第3群:200~240mg/dL未満群,
第4群:240mg/dL以上群―の4群に分割し,
その後の死亡率や死因を検討したのが今回の報告である。
また,NIPPON DATA80において肝疾患が交絡因子となってTC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させていたことから,死因から肝疾患を除外した場合についての検討も行われた。
研究のポイント2:さまざまな調整をしても低コレステロール群の死亡率が高い
経過観察期間中のデータの欠損を除外して1万1,869人のデータが解析された。経過観察期間中に635人の男性と423人の女性が死亡し,うち34人の男性と15人の女性が肝疾患(肝臓がん,肝硬変,その他)を死因としていた。
基礎データのTC値に従って,群別の比較をすると(第2群を基準として),男性では基準群での死亡率のハザード比が最低であったものの,女性では第3群,第4群(TC高値の群)の方が第2群より低く,第1群(TC低値の群)の死亡率が最も高いという結果であった(表1)。これは,肝疾患を死因とする死亡を除外しても同様であり(表2),がんや心血管疾患の既往者を除外しても同様であった(表3)。
第1群の死因として,第2群よりもハザード比が有意に高かったのは,男性ではがん,女性では脳出血,心不全であった。
私の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(Atherosclerosis 2007; 190: 216-223)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,TC最低群での総死亡率の上昇は肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなったのに対し,TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなったというものであった。
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(表4,5)。
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(表6,7)。
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg/dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合―である。
今回の論文の筆者らも,考察において“高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性”や“低栄養の存在の可能性”や“甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績などを知りたいものである。
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は,今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。
山田 悟(やまだ さとる)氏
1994年,慶應義塾大学医学部を卒業し,同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て,2002年から北里研究所病院で勤務。現在,同院糖尿病センター長。診療に従事する傍ら,2型糖尿病についての臨床研究や1型糖尿病の動物実験を進める。日本糖尿病学会の糖尿病専門医および指導医。
2011年06月12日 (日)
こんにちは。
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」シリーズ 第3弾
『美食家ダイエット』 ―満腹ダイエット3
「糖質オフ」で痩せた、一流シェフの家庭料理集 デザートまで楽しめます! (プレジデントムック)
が、2011年6月、発売されました。
シリーズ化されるくらいなので、
dancyu プレジデントムック 『満腹ダイエット 』(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 『酒飲みダイエット』(プレジデント社)2010年
それぞれ読者の支持を得て売れており、嬉しい限りです。
前2冊と同様、管理栄養士大柳珠美さんと私の共同監修です。
『美食家ダイエット』は、ダンチュウならではの、実力派シェフによる糖質オフレシピが満載です。
登場されるシェフの中には、自身でも糖質制限ダイエットに成功された方もおられます。
大柳さんが、その秘訣などをインタビューした記事も掲載されています。
ふすま粉やグルテン粉といった、通常食材としては扱いにくい粉が、プロの料理人ならではの感性とテクニックで美味しい料理に変身しています。
『美食家ダイエット』にはスイーツレシピもたくさん載っていますので、ちょっとお得感がありますよ。
糖質オフの新商品情報もたっぷり載っています。
糖質オフなソースやたれと素材が冷凍で届き、専用のスチーム容器にお好みの生の野菜と一緒に入れてチンするだけのレンジアップ総菜「スタイルダイニング」(ニューズシェフ)、糖質制限ドットコムの姉妹店「やせる食べ方.com」などの商品が紹介されています。
その他、糖質制限食メニューが食べられる、東京、京都のお店情報もあります。
東京の本厚木はイタリアン、新橋にはなんと糖質制限中華専門店がオープン。糖質制限食OKの中華料理は日本初登場と思います。
京都はフレンチ、焼肉のお店がそれぞれ紹介されています。
糖質制限食の最新情報が満載の
『美食家ダイエット』ダンチュウ満腹ダイエット3(プレジデント社)2011年6月
皆様のお役にたてれば幸いです。
江部康二
***参考
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」(プレジデント社)2010年
dancyu プレジデントムック 「美食家ダイエット 」(プレジデント社)2011年
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」シリーズ 第3弾
『美食家ダイエット』 ―満腹ダイエット3
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シリーズ化されるくらいなので、
dancyu プレジデントムック 『満腹ダイエット 』(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 『酒飲みダイエット』(プレジデント社)2010年
それぞれ読者の支持を得て売れており、嬉しい限りです。
前2冊と同様、管理栄養士大柳珠美さんと私の共同監修です。
『美食家ダイエット』は、ダンチュウならではの、実力派シェフによる糖質オフレシピが満載です。
登場されるシェフの中には、自身でも糖質制限ダイエットに成功された方もおられます。
大柳さんが、その秘訣などをインタビューした記事も掲載されています。
ふすま粉やグルテン粉といった、通常食材としては扱いにくい粉が、プロの料理人ならではの感性とテクニックで美味しい料理に変身しています。
『美食家ダイエット』にはスイーツレシピもたくさん載っていますので、ちょっとお得感がありますよ。
糖質オフの新商品情報もたっぷり載っています。
糖質オフなソースやたれと素材が冷凍で届き、専用のスチーム容器にお好みの生の野菜と一緒に入れてチンするだけのレンジアップ総菜「スタイルダイニング」(ニューズシェフ)、糖質制限ドットコムの姉妹店「やせる食べ方.com」などの商品が紹介されています。
その他、糖質制限食メニューが食べられる、東京、京都のお店情報もあります。
東京の本厚木はイタリアン、新橋にはなんと糖質制限中華専門店がオープン。糖質制限食OKの中華料理は日本初登場と思います。
京都はフレンチ、焼肉のお店がそれぞれ紹介されています。
糖質制限食の最新情報が満載の
『美食家ダイエット』ダンチュウ満腹ダイエット3(プレジデント社)2011年6月
皆様のお役にたてれば幸いです。
江部康二
***参考
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」(プレジデント社)2009年
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」(プレジデント社)2010年
dancyu プレジデントムック 「美食家ダイエット 」(プレジデント社)2011年
2011年06月11日 (土)
おはようございます。
今回は、肥満人さんから、
赤肉摂取と心疾患リスクについて、コメント・質問をいただきました。
【11/06/07 肥満人
赤肉はどこがだめなのでしょう?
江部先生
お疲れさまです
赤肉をたくさんとると心疾患リスクが高まるという情報はよく目にしますが どうしてなのかしろうとにはよくわかりません! ネット上でしらべても明確な答えがみつかりません
統計上だけでメカニズムは不明なのでしょうか?
それとも赤肉自体よりそれについてくる脂肪が問題なのでしょうか
(それでしたら、ヒレ肉や脂肪を除去すれば制限はほとんどなくなると思いますが)
赤肉もたんぱく質で他のたんぱく質同様アミノ酸に分解してから吸収されるはずですから同じはずでは?と素人は思ってしまいます
赤肉大好きなのでつい質問させていただきました
もしお手すきがあったらでお願いします】
肥満人さん。
「赤肉をたくさんとると心疾患リスクが高まるという情報」
ですが、何となく一人歩きしていて、れっきとした証拠になる論文が本当にあるのか、私も疑問に思っていたところです。
赤肉とは、鶏肉を除く、牛・豚・羊など四つ足動物の肉です。
それで、ネットで調べてみました。
今回は、とても運が良かったようで、1回の検索で信頼できるサイトがヒットしました。 (^^)
朝日新聞の医療サイト「アピタル」です。
そこに坪野吉孝先生が、英文論文のわかりやすい解説を載せておられます。
〔アピタル書き下ろし第12回
「加工肉」で心臓病などリスク増加 [10/07/09]
朝日新聞の医療サイト「アピタル」
https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/xqvajFAUJu〕
サーキュレーション誌という一流医学雑誌に2010年6月掲載された論文をもとに解説しておられます。
結論からいうと、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病に関して、赤肉はOKで、加工肉は×ということです。
加工肉とはソーセージやベーコンなどのことです。
「赤肉をたくさん摂取しても、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病に関しては大丈夫」
という結論は意外であり、従来の定説が覆る典型例の一つとなりました。
坪野吉孝先生は日本には珍しい「栄養疫学」の専門家です。
1994年 国立がんセンター研究所研究員(臨床疫学研究部)
1998年 ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員(栄養学部門)
2000年 東北大学大学院講師(医学系研究科公衆衛生学分野)
2002年 東北大学大学院助教授(医学系研究科公衆衛生学分野)
2004年 東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野)
2011年 山形さくら町病院精神科
早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科ジャーナリズムコース)
坪野吉孝先生の
「食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか (文春新書)2002年」
は名著だと思います。
ブログ読者の皆さん、是非ご一読を。
江部康二
参考☆☆☆☆☆
【アピタル書き下ろし第12回】「加工肉」で心臓病などリスク増加 [10/07/09]
朝日新聞の医療サイト「アピタル」
https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/xqvajFAUJu
坪野吉孝 《東北大教授》
私はソーセージやベーコンなどの加工肉が好きで、よく食べるほうだ。これらの加工肉と、牛や豚などの通常の肉類(鶏肉は除く)とを区別して、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病との関係を調べた論文が、サーキュレーション誌に2010年6月掲載された。
今回、研究グループが対象にしたのは、文献検索で選び出した20件の論文。論文で扱われていた研究は、米国(11件)を中心に計10カ国におよび、日本も1件含まれていた。20件の対象者を合計すると1,218,380人になり、心臓病が23,889例、脳卒中が2,280例、糖尿病が10,797例あった。
研究グループはそれぞれの論文の結果を集計し、総合評価を行なった。
その結果、心臓病では、牛や豚などの通常の肉類(赤肉)の摂取量が一日100g増えても、リスクは1.00倍で変わらず上昇を認めなかったが(研究4件)、加工肉の摂取量が一日50g増えた場合のリスクは、1.42倍高くなっていた(研究5件)。
糖尿病では、赤肉の摂取量が一日100g増えた場合のリスクは1.16倍だが誤差範囲の結果に留まったのに対して(研究5件)、加工肉の摂取量が一日50g増えた場合のリスクは1.19倍と誤差範囲を超えて高かった(研究7件)。
脳卒中は、研究数が3件と少なく、赤肉でも加工肉でもリスク上昇はなかった。
別の調査によると、加工肉は、赤肉と比べて、脂肪からのカロリーが高く、蛋白質からのカロリーが低かった。一方、保存料としての塩分は4倍多く、塩分以外の保存料(硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロサミン類)も約1.5倍多かった。
研究グループによると、赤肉と加工肉を区別して、冠動脈疾患・脳卒中・糖尿病との関係を、複数の論文の総合評価で明らかにしたのは今回が初めて。現状での最良の証拠を提供するものだと考察している。
加工肉と赤肉で影響が異なった理由として、加工肉に保存料として含まれる塩分の血圧上昇作用や、塩分以外の保存料による動脈硬化作用や糖尿病の誘発作用などを挙げている。
ところで、牛肉や豚肉など通常の肉類(赤肉)の高摂取でも、心臓病のリスクが上がらないという結果は意外に感じた。今後の研究では、赤肉と加工肉を区別して、病気との関係を調べることが必要になるだろう。
また、文献検索で選び出した論文は20件と少なくないが、例えば赤肉と心臓病の関係を調べた論文は4件に留まった。赤肉や加工肉と、冠動脈疾患・脳卒中・糖尿病という個別の病気との関係について、さらに研究が必要だ。その間は、加工肉の摂り過ぎに注意することが賢明のようだ。
今回は、肥満人さんから、
赤肉摂取と心疾患リスクについて、コメント・質問をいただきました。
【11/06/07 肥満人
赤肉はどこがだめなのでしょう?
江部先生
お疲れさまです
赤肉をたくさんとると心疾患リスクが高まるという情報はよく目にしますが どうしてなのかしろうとにはよくわかりません! ネット上でしらべても明確な答えがみつかりません
統計上だけでメカニズムは不明なのでしょうか?
それとも赤肉自体よりそれについてくる脂肪が問題なのでしょうか
(それでしたら、ヒレ肉や脂肪を除去すれば制限はほとんどなくなると思いますが)
赤肉もたんぱく質で他のたんぱく質同様アミノ酸に分解してから吸収されるはずですから同じはずでは?と素人は思ってしまいます
赤肉大好きなのでつい質問させていただきました
もしお手すきがあったらでお願いします】
肥満人さん。
「赤肉をたくさんとると心疾患リスクが高まるという情報」
ですが、何となく一人歩きしていて、れっきとした証拠になる論文が本当にあるのか、私も疑問に思っていたところです。
赤肉とは、鶏肉を除く、牛・豚・羊など四つ足動物の肉です。
それで、ネットで調べてみました。
今回は、とても運が良かったようで、1回の検索で信頼できるサイトがヒットしました。 (^^)
朝日新聞の医療サイト「アピタル」です。
そこに坪野吉孝先生が、英文論文のわかりやすい解説を載せておられます。
〔アピタル書き下ろし第12回
「加工肉」で心臓病などリスク増加 [10/07/09]
朝日新聞の医療サイト「アピタル」
https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/xqvajFAUJu〕
サーキュレーション誌という一流医学雑誌に2010年6月掲載された論文をもとに解説しておられます。
結論からいうと、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病に関して、赤肉はOKで、加工肉は×ということです。
加工肉とはソーセージやベーコンなどのことです。
「赤肉をたくさん摂取しても、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病に関しては大丈夫」
という結論は意外であり、従来の定説が覆る典型例の一つとなりました。
坪野吉孝先生は日本には珍しい「栄養疫学」の専門家です。
1994年 国立がんセンター研究所研究員(臨床疫学研究部)
1998年 ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員(栄養学部門)
2000年 東北大学大学院講師(医学系研究科公衆衛生学分野)
2002年 東北大学大学院助教授(医学系研究科公衆衛生学分野)
2004年 東北大学大学院教授(医学系研究科臨床疫学分野)
2011年 山形さくら町病院精神科
早稲田大学大学院客員教授(政治学研究科ジャーナリズムコース)
坪野吉孝先生の
「食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか (文春新書)2002年」
は名著だと思います。
ブログ読者の皆さん、是非ご一読を。
江部康二
参考☆☆☆☆☆
【アピタル書き下ろし第12回】「加工肉」で心臓病などリスク増加 [10/07/09]
朝日新聞の医療サイト「アピタル」
https://aspara.asahi.com/blog/medicalreport/entry/xqvajFAUJu
坪野吉孝 《東北大教授》
私はソーセージやベーコンなどの加工肉が好きで、よく食べるほうだ。これらの加工肉と、牛や豚などの通常の肉類(鶏肉は除く)とを区別して、心筋梗塞などの心臓病・脳卒中・糖尿病との関係を調べた論文が、サーキュレーション誌に2010年6月掲載された。
今回、研究グループが対象にしたのは、文献検索で選び出した20件の論文。論文で扱われていた研究は、米国(11件)を中心に計10カ国におよび、日本も1件含まれていた。20件の対象者を合計すると1,218,380人になり、心臓病が23,889例、脳卒中が2,280例、糖尿病が10,797例あった。
研究グループはそれぞれの論文の結果を集計し、総合評価を行なった。
その結果、心臓病では、牛や豚などの通常の肉類(赤肉)の摂取量が一日100g増えても、リスクは1.00倍で変わらず上昇を認めなかったが(研究4件)、加工肉の摂取量が一日50g増えた場合のリスクは、1.42倍高くなっていた(研究5件)。
糖尿病では、赤肉の摂取量が一日100g増えた場合のリスクは1.16倍だが誤差範囲の結果に留まったのに対して(研究5件)、加工肉の摂取量が一日50g増えた場合のリスクは1.19倍と誤差範囲を超えて高かった(研究7件)。
脳卒中は、研究数が3件と少なく、赤肉でも加工肉でもリスク上昇はなかった。
別の調査によると、加工肉は、赤肉と比べて、脂肪からのカロリーが高く、蛋白質からのカロリーが低かった。一方、保存料としての塩分は4倍多く、塩分以外の保存料(硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロサミン類)も約1.5倍多かった。
研究グループによると、赤肉と加工肉を区別して、冠動脈疾患・脳卒中・糖尿病との関係を、複数の論文の総合評価で明らかにしたのは今回が初めて。現状での最良の証拠を提供するものだと考察している。
加工肉と赤肉で影響が異なった理由として、加工肉に保存料として含まれる塩分の血圧上昇作用や、塩分以外の保存料による動脈硬化作用や糖尿病の誘発作用などを挙げている。
ところで、牛肉や豚肉など通常の肉類(赤肉)の高摂取でも、心臓病のリスクが上がらないという結果は意外に感じた。今後の研究では、赤肉と加工肉を区別して、病気との関係を調べることが必要になるだろう。
また、文献検索で選び出した論文は20件と少なくないが、例えば赤肉と心臓病の関係を調べた論文は4件に留まった。赤肉や加工肉と、冠動脈疾患・脳卒中・糖尿病という個別の病気との関係について、さらに研究が必要だ。その間は、加工肉の摂り過ぎに注意することが賢明のようだ。
2011年06月10日 (金)
こんにちは。
2007-10-16のブログ「羅漢果と血糖値」について、院長さんからご指摘を受けました。
院長さん、ご指摘ありがとうございます。
【11/06/05 院長
ラカンカ98%5倍濃縮顆粒
5倍濃縮の羅漢果98%顆粒ですが、精白糖と比較して血液の血糖値の上昇を測定したところ、60分後には白砂糖の約半分の値で血糖値を上昇させます。
ラカンカは血糖値を上昇させない、はウソです。
あくまで白砂糖の半分しか上昇させない、だけです。
ラカンカ自身に本来含まれる果糖とブドウ糖もあります。
(2%の甜菜糖ではなく、羅漢果自身の糖質)
どこかのホームぺージの記載を見て「安全です」と言う前に、実際に自分で測定をして確実な結果を見てから言ったほうが良いと思いますが。
信用してガバガバ飲用したら大変な事になりますよ。】
院長さんのご指摘通り、羅漢果エキスには、少量の果糖とブドウ糖が含まれていると思います。
羅漢果に詳しいサラヤ研究所の村田博士によれば、羅漢果果汁を濃縮したエキスの状態で、数%の糖質(果糖・ブドウ糖など)が含まれているそうです。
この羅漢果果汁を濃縮したエキスに、ショ糖などを加え顆粒状にしたものが、一般的に販売されている羅漢果顆粒です。
なぜショ糖を加えるかといいますと、羅漢果エキスだけでは顆粒にならないため、ショ糖や砂糖や甜菜糖、食物繊維などにエキスを吹き付けて顆粒状にする必要があるそうです。
羅漢果顆粒の製造メーカーによっては、ショ糖などをたくさん添加して原材料を安くしている可能性もあります。
従いまして、メーカーによっては、羅漢果顆粒の糖質は院長さんの仰るように、消化吸収されて他の果物と同様に、砂糖の半分くらい血糖値を上昇させるものもあると考えられます。
私の無知で2007-10-16のブログ「羅漢果と血糖値」の中で、(メーカーによらず)羅漢果顆粒には、ほんの少量の果糖が含まれるという記載をしてしまい、申し訳ありませんでした。
2007.10.16にご質問いただいた朝日さん、誤解を与える回答をしてすいませんでした。
一方、糖質制限ドットコムのあらてつさんと取引があるメーカーの羅漢果顆粒は、顆粒状にするため、5%のショ糖を添加しているそうです。
この羅漢果顆粒の成分分析を専門機関に依頼したところ、糖質量は100g中に5g、つまり5%の糖質量との結果でした。
この糖質は、先ほど書きましたように、顆粒状にするために添加した5%のショ糖です。
羅漢果顆粒の甘味成分には、このショ糖とは別に、食物繊維に分類されるトリテルペン配糖体が含まれています。
このトリテルペン配糖体は、砂糖の約300倍の甘さがあり、小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。
従って血糖値を上昇させませんし、吸収されるカロリーはほぼゼロと考えてよいと思います。
このように、5%ていどのショ糖とトリテルペン配糖体だけなら、日常的に料理に使うことにおいて、血糖を上げる心配はほとんどありません。
結局、羅漢果顆粒を使用する場合は、成分分析とまではいいませんが、袋のラベルの糖質含有量を確認するか、あるいは直接メーカーに問い合わせるかが、確実です。
なおサラヤさんのラカントSは、主成分は糖アルコールのエリスリトールで、極少量の羅漢果から抽出されたトリテルペン配糖体も入っています。
従いまして、ラカントSは、カロリーゼロで血糖値上昇ゼロというのは間違いありませんのでご安心下さい。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
<2007-10-16のブログ>
羅漢果と血糖値
こんばんは。
今日は、音声外科に声帯ポリープの検査に行ってきました。
案の定、2年前には謙虚で小さくて可愛かったポリープが、倍ぐらいに憎たらしく育ってました。声が嗄れるはずです(×。×)
まあ、手術の決心してよかったです。
さて、今日は朝日さんの質問です。
羅漢果という果実には私も以前から興味があったので簡単に調べてみました。
「はじめまして、朝日と申します。
糖尿病と診断されて三年、食事療法と運動、そして薬で身体を騙しながらきていたのですが、今年の七月に掛かりつけのお医者さまからこの「糖質制限食」を紹介されて取り組んだところ、それまでヘモグロビンAicが6.3以下にはならなかったのが、5.9まで落ちてきました。
体重も一月に1kgくらいずつ落ちているので、それまでアクトス、オグリボース、アマリールを処方されていたのですが、アマリールを外すことができましたので、続けて生きたいと思っています。
ところで、甘味料についての質問なのですが、以前買っておいた羅漢果の顆粒は使って問題ないのでしょうか?五倍濃縮で顆粒にするために甜菜糖が2%混じっています。結構買いだめしているので使いたいのですが、加減しながらなら大丈夫でしょうか?教えていただけると嬉しいのですが?
朝日 | 2007.10.16(火) 10:10 | 」
朝日さん、糖質制限食でアマリール休薬になりましたか。
減量成功も含めて良かったですね。 (*⌒ー⌒)ο∠☆:
さて羅漢果は、中国広東省、広西チアン族自治区の高冷地に栽培されるウリ科の多年生草本です。中国の一部の地域でしか生育していない貴重な植物で、その果実は、砂糖の約300倍の甘さがあります。甘味が強いので、中国では古くから乾燥させて料理の調味料、甘味飲料の原料として使っていました。
近年の研究で、羅漢果の甘味成分はMongroside Vなどのククルビタン型トリテルペン配糖体であることがわかりました。
トリテルペン配糖体は、小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。従って血糖値を上昇させませんし、吸収されるカロリーはほぼゼロと考えてよいようです。
羅漢果の甘味成分には、トリテルペン配糖体以外にもほんの少量の果糖が加わっているそうです。果糖分のカロリーは吸収されますが微々たるものでしょう。
朝日さんご購入の「羅漢果顆粒」は甜菜糖2%含有だそうですが、その程度の量なら血糖値に関しては問題ないと思いますよ。 買いためた分しっかり使ってください。
**
今回のブログ
ラカントSの公式ホームページから一部引用させてもらいました。謝謝。
http://www.lakanto.jp/lakanto/date/02.html
江部康二
2007-10-16のブログ「羅漢果と血糖値」について、院長さんからご指摘を受けました。
院長さん、ご指摘ありがとうございます。
【11/06/05 院長
ラカンカ98%5倍濃縮顆粒
5倍濃縮の羅漢果98%顆粒ですが、精白糖と比較して血液の血糖値の上昇を測定したところ、60分後には白砂糖の約半分の値で血糖値を上昇させます。
ラカンカは血糖値を上昇させない、はウソです。
あくまで白砂糖の半分しか上昇させない、だけです。
ラカンカ自身に本来含まれる果糖とブドウ糖もあります。
(2%の甜菜糖ではなく、羅漢果自身の糖質)
どこかのホームぺージの記載を見て「安全です」と言う前に、実際に自分で測定をして確実な結果を見てから言ったほうが良いと思いますが。
信用してガバガバ飲用したら大変な事になりますよ。】
院長さんのご指摘通り、羅漢果エキスには、少量の果糖とブドウ糖が含まれていると思います。
羅漢果に詳しいサラヤ研究所の村田博士によれば、羅漢果果汁を濃縮したエキスの状態で、数%の糖質(果糖・ブドウ糖など)が含まれているそうです。
この羅漢果果汁を濃縮したエキスに、ショ糖などを加え顆粒状にしたものが、一般的に販売されている羅漢果顆粒です。
なぜショ糖を加えるかといいますと、羅漢果エキスだけでは顆粒にならないため、ショ糖や砂糖や甜菜糖、食物繊維などにエキスを吹き付けて顆粒状にする必要があるそうです。
羅漢果顆粒の製造メーカーによっては、ショ糖などをたくさん添加して原材料を安くしている可能性もあります。
従いまして、メーカーによっては、羅漢果顆粒の糖質は院長さんの仰るように、消化吸収されて他の果物と同様に、砂糖の半分くらい血糖値を上昇させるものもあると考えられます。
私の無知で2007-10-16のブログ「羅漢果と血糖値」の中で、(メーカーによらず)羅漢果顆粒には、ほんの少量の果糖が含まれるという記載をしてしまい、申し訳ありませんでした。
2007.10.16にご質問いただいた朝日さん、誤解を与える回答をしてすいませんでした。
一方、糖質制限ドットコムのあらてつさんと取引があるメーカーの羅漢果顆粒は、顆粒状にするため、5%のショ糖を添加しているそうです。
この羅漢果顆粒の成分分析を専門機関に依頼したところ、糖質量は100g中に5g、つまり5%の糖質量との結果でした。
この糖質は、先ほど書きましたように、顆粒状にするために添加した5%のショ糖です。
羅漢果顆粒の甘味成分には、このショ糖とは別に、食物繊維に分類されるトリテルペン配糖体が含まれています。
このトリテルペン配糖体は、砂糖の約300倍の甘さがあり、小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。
従って血糖値を上昇させませんし、吸収されるカロリーはほぼゼロと考えてよいと思います。
このように、5%ていどのショ糖とトリテルペン配糖体だけなら、日常的に料理に使うことにおいて、血糖を上げる心配はほとんどありません。
結局、羅漢果顆粒を使用する場合は、成分分析とまではいいませんが、袋のラベルの糖質含有量を確認するか、あるいは直接メーカーに問い合わせるかが、確実です。
なおサラヤさんのラカントSは、主成分は糖アルコールのエリスリトールで、極少量の羅漢果から抽出されたトリテルペン配糖体も入っています。
従いまして、ラカントSは、カロリーゼロで血糖値上昇ゼロというのは間違いありませんのでご安心下さい。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
<2007-10-16のブログ>
羅漢果と血糖値
こんばんは。
今日は、音声外科に声帯ポリープの検査に行ってきました。
案の定、2年前には謙虚で小さくて可愛かったポリープが、倍ぐらいに憎たらしく育ってました。声が嗄れるはずです(×。×)
まあ、手術の決心してよかったです。
さて、今日は朝日さんの質問です。
羅漢果という果実には私も以前から興味があったので簡単に調べてみました。
「はじめまして、朝日と申します。
糖尿病と診断されて三年、食事療法と運動、そして薬で身体を騙しながらきていたのですが、今年の七月に掛かりつけのお医者さまからこの「糖質制限食」を紹介されて取り組んだところ、それまでヘモグロビンAicが6.3以下にはならなかったのが、5.9まで落ちてきました。
体重も一月に1kgくらいずつ落ちているので、それまでアクトス、オグリボース、アマリールを処方されていたのですが、アマリールを外すことができましたので、続けて生きたいと思っています。
ところで、甘味料についての質問なのですが、以前買っておいた羅漢果の顆粒は使って問題ないのでしょうか?五倍濃縮で顆粒にするために甜菜糖が2%混じっています。結構買いだめしているので使いたいのですが、加減しながらなら大丈夫でしょうか?教えていただけると嬉しいのですが?
朝日 | 2007.10.16(火) 10:10 | 」
朝日さん、糖質制限食でアマリール休薬になりましたか。
減量成功も含めて良かったですね。 (*⌒ー⌒)ο∠☆:
さて羅漢果は、中国広東省、広西チアン族自治区の高冷地に栽培されるウリ科の多年生草本です。中国の一部の地域でしか生育していない貴重な植物で、その果実は、砂糖の約300倍の甘さがあります。甘味が強いので、中国では古くから乾燥させて料理の調味料、甘味飲料の原料として使っていました。
近年の研究で、羅漢果の甘味成分はMongroside Vなどのククルビタン型トリテルペン配糖体であることがわかりました。
トリテルペン配糖体は、小腸で吸収されることなく大腸まで達するため、食物繊維の一つに分類されます。従って血糖値を上昇させませんし、吸収されるカロリーはほぼゼロと考えてよいようです。
羅漢果の甘味成分には、トリテルペン配糖体以外にもほんの少量の果糖が加わっているそうです。果糖分のカロリーは吸収されますが微々たるものでしょう。
朝日さんご購入の「羅漢果顆粒」は甜菜糖2%含有だそうですが、その程度の量なら血糖値に関しては問題ないと思いますよ。 買いためた分しっかり使ってください。
**
今回のブログ
ラカントSの公式ホームページから一部引用させてもらいました。謝謝。
http://www.lakanto.jp/lakanto/date/02.html
江部康二
2011年06月08日 (水)
食事誘発性熱産生(DIT)
すいません。
数字を一桁計算間違いしてました。
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は0.72→正しくは7.2kcal
以下の数字に訂正です。
江部康二
<1000キロカロリーの食事で試算>
スーパー糖質制限食
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は7.2kcal
脂質56% 560kcal→食事誘発熱産生は22.4kcal
蛋白質32% 320kcal→食事誘発熱産生は96kcal
合計125.6kcal→摂取エネルギーの12.6%
糖尿病食
糖質60% 600kcal→食事誘発熱産生は36kcal
脂質20% 200kcal→食事誘発熱産生は8kcal
蛋白質20% 200kcal→食事誘発熱産生は60kcal
合計104kcal→摂取エネルギーの10.4%
スーパー糖質制限食は糖尿病食より、約2.2%ほど食事誘発熱産生(DIT)が多いことになります。
すいません。
数字を一桁計算間違いしてました。
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は0.72→正しくは7.2kcal
以下の数字に訂正です。
江部康二
<1000キロカロリーの食事で試算>
スーパー糖質制限食
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は7.2kcal
脂質56% 560kcal→食事誘発熱産生は22.4kcal
蛋白質32% 320kcal→食事誘発熱産生は96kcal
合計125.6kcal→摂取エネルギーの12.6%
糖尿病食
糖質60% 600kcal→食事誘発熱産生は36kcal
脂質20% 200kcal→食事誘発熱産生は8kcal
蛋白質20% 200kcal→食事誘発熱産生は60kcal
合計104kcal→摂取エネルギーの10.4%
スーパー糖質制限食は糖尿病食より、約2.2%ほど食事誘発熱産生(DIT)が多いことになります。
2011年06月08日 (水)
こんにちは。
今回は、Toshi さんから食事誘発性熱産生(DIT)についてコメントいただきました。
私もうろ覚えだったので調べてみました。
Tarzan「体脂肪の燃やし方」、いいですね。私も買おうと思います。
【11/06/06 Toshi
Tarzan 579号
江部先生こんばんは
先日本屋さんにて「体脂肪の燃やし方」のタイトルになんとなくひらめきを感じ、タイトル名の雑誌を購入しました。
内容は「体脂肪を溜めない」「体脂肪を燃やす」という方面から糖質制限を勧めていて、良い意味で復習できました。
特に「DIT」という聞き慣れない単語の解説もあり、とても参考になる内容でした。やはり糖質制限は正しいんだと再認識いたしました。
これからも糖質制限が広まる事に期待しております。】
Toshiさん。
コメントありがとうございます。
食事誘発性熱産生(しょくじゆうはつせいねつさんせい)
Diet Induced Thermogenesis(DIT)
厚生労働省のページにわかりやすい解説があったので引用します。
【厚生労働省 メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト e-ヘルスネット】
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html
「食事誘発性熱産生
食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること。
食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。このため、食事をした後は安静にしていても代謝量が増えます。
この代謝の増加を食事誘発性熱産生または特異動的作用といいます。
食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは、栄養素の種類によって異なります。
たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、
糖質のみの場合は約6%、
脂質のみの場合は約4%で、
通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。
食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。
加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下します。
逆にトレーニングで筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなるとされています。
また、食事の摂り方としてよく噛まずに飲み込んだり、流動食だけを摂る場合に比べると、よく噛んで食べる方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。」
恥ずかしながら、私はタンパク質・糖質・脂質で、それぞれ食事誘発性熱産生(DIT) が異なることを知りませんでした。
タンパク質を摂取したときのDITが30%と突出しています。
肉や魚や豆腐を中心に食べると身体が温かくなるということですね。
さて、スーパー糖質制限食と糖尿病食で、DITを試算してみました。
わかりやすくするため、1食1000キロカロリーとして計算してみました。
<1000キロカロリーの食事で試算>
スーパー糖質制限食
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は7.2kcal
脂質56% 560kcal→食事誘発熱産生は22.4kcal
蛋白質32% 320kcal→食事誘発熱産生は96kcal
合計125.6kcal→摂取エネルギーの12.6%
糖尿病食
糖質60% 600kcal→食事誘発熱産生は36kcal
脂質20% 200kcal→食事誘発熱産生は8kcal
蛋白質20% 200kcal→食事誘発熱産生は60kcal
合計104kcal→摂取エネルギーの10.4%
スーパー糖質制限食は糖尿病食より、約2.2%ほど食事誘発熱産生(DIT)が多いことになります。
同一摂取カロリーなら、何を食べても食事誘発熱産生(DIT)は一緒と思い込んでましたが、実際は違うんですね。勉強になりました。
ということで、同一摂取カロリーなら、スーパー糖質制限食の方が糖尿病食よりは食事誘発熱産生(DIT)が少し多くて、ささやかだけどダイエットに有利です。
江部康二
今回は、Toshi さんから食事誘発性熱産生(DIT)についてコメントいただきました。
私もうろ覚えだったので調べてみました。
Tarzan「体脂肪の燃やし方」、いいですね。私も買おうと思います。
【11/06/06 Toshi
Tarzan 579号
江部先生こんばんは
先日本屋さんにて「体脂肪の燃やし方」のタイトルになんとなくひらめきを感じ、タイトル名の雑誌を購入しました。
内容は「体脂肪を溜めない」「体脂肪を燃やす」という方面から糖質制限を勧めていて、良い意味で復習できました。
特に「DIT」という聞き慣れない単語の解説もあり、とても参考になる内容でした。やはり糖質制限は正しいんだと再認識いたしました。
これからも糖質制限が広まる事に期待しております。】
Toshiさん。
コメントありがとうございます。
食事誘発性熱産生(しょくじゆうはつせいねつさんせい)
Diet Induced Thermogenesis(DIT)
厚生労働省のページにわかりやすい解説があったので引用します。
【厚生労働省 メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト e-ヘルスネット】
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html
「食事誘発性熱産生
食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること。
食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されます。このため、食事をした後は安静にしていても代謝量が増えます。
この代謝の増加を食事誘発性熱産生または特異動的作用といいます。
食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは、栄養素の種類によって異なります。
たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、
糖質のみの場合は約6%、
脂質のみの場合は約4%で、
通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。
食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。
加齢や運動不足で筋肉が衰えると、基礎代謝が低下するだけでなく食事誘発性熱産生も低下します。
逆にトレーニングで筋肉を増やすと食事誘発性熱産生は高くなるとされています。
また、食事の摂り方としてよく噛まずに飲み込んだり、流動食だけを摂る場合に比べると、よく噛んで食べる方が食事誘発性熱産生は高くなるといわれています。」
恥ずかしながら、私はタンパク質・糖質・脂質で、それぞれ食事誘発性熱産生(DIT) が異なることを知りませんでした。
タンパク質を摂取したときのDITが30%と突出しています。
肉や魚や豆腐を中心に食べると身体が温かくなるということですね。
さて、スーパー糖質制限食と糖尿病食で、DITを試算してみました。
わかりやすくするため、1食1000キロカロリーとして計算してみました。
<1000キロカロリーの食事で試算>
スーパー糖質制限食
糖質12% 120kcal→食事誘発熱産生は7.2kcal
脂質56% 560kcal→食事誘発熱産生は22.4kcal
蛋白質32% 320kcal→食事誘発熱産生は96kcal
合計125.6kcal→摂取エネルギーの12.6%
糖尿病食
糖質60% 600kcal→食事誘発熱産生は36kcal
脂質20% 200kcal→食事誘発熱産生は8kcal
蛋白質20% 200kcal→食事誘発熱産生は60kcal
合計104kcal→摂取エネルギーの10.4%
スーパー糖質制限食は糖尿病食より、約2.2%ほど食事誘発熱産生(DIT)が多いことになります。
同一摂取カロリーなら、何を食べても食事誘発熱産生(DIT)は一緒と思い込んでましたが、実際は違うんですね。勉強になりました。
ということで、同一摂取カロリーなら、スーパー糖質制限食の方が糖尿病食よりは食事誘発熱産生(DIT)が少し多くて、ささやかだけどダイエットに有利です。
江部康二
2011年06月07日 (火)
こんばんは。
まー さんから、「糖質制限食・・・たまーに糖質摂取」について、コメント・質問をいただきました。
【11/06/06 まー
たまーに
江部先生、今晩は。
私は炭水化物中毒から脱するのに、2年チョットかかりました。しかし、今や殆どスーパー糖質制限食でOKです。あの、ラーメン、パスタ、焼きそば、うどん好きの私が、炭水化物から脱することができましたよ。
あとは、お付き合い部分でどれ程避けられるかですね。そこで、江部先生の言われる「たまーに(糖質食OK)」は、どれ位(1ヶ月1回位?)を目安に考えておけば良いか、ご教示頂ければ幸いです。
宜しくお願い申し上げます。】
まー さん。
炭水化物依存症からの脱却、よかったですね。 (^^)
糖質を普通に摂取すれば、糖尿人ならブドウ糖スパイク、正常人でもブドウ糖ミニスパイクを生じます。
正常人ならミニスパイクのたびに、インスリンが大量に追加分泌されて、代謝がかく乱されます。
基礎分泌インスリンが5μU/mlくらいとして、糖質を一人前摂取すれば、正常人では30~100μU/mlとか、数倍~20倍とかの量が出ます。30倍くらい分泌される人もいますよ。
インスリン大量追加分泌そのものが救急車ですので、ミニスパイクの頻度は、少なければ少ないほどいいとしかいいようがありません。
目安と言っても、単純な線は引けないと思います。
ミニスパイクを10年、20年、30年、40年、50年・・・繰り替えすことにより、様々な生活習慣病になりますが、いつなるかは個人差があります。
たとえば「ミニスパイク+追加インスリン大量分泌」の繰り返しで数十年、膵臓のβ細胞が疲れ果て、一部は壊れ、インスリン分泌能力が低下して、遂に糖尿病発症というのが一般的な流れですが、いつXdayがくるかには個人差があります。
炭水化物依存症に再びならないための目安として、しいて言えば、運動量が今の普通以下の人は、狩猟・採集時代のご先祖が、たまに果物やナッツ類や、自然薯を摂取できた頻度ていどの糖質摂取なら絶対安全圏でしょうか?
筋肉が収縮していると、インスリンが追加分泌されなくても、筋肉細胞が血糖を取り込みますので、一日の運動量が多い場合は、結構糖質を摂取しても大丈夫と思います。
例えば明治時代のように、日常生活そのものが運動だった時代は、常にインスリン非依存的に、筋肉が血液中のブドウ糖をとりこむので、総摂取カロリーの70~80%を糖質から摂取していても、糖尿病や肥満はほとんどいませんでしたね。
江部康二
まー さんから、「糖質制限食・・・たまーに糖質摂取」について、コメント・質問をいただきました。
【11/06/06 まー
たまーに
江部先生、今晩は。
私は炭水化物中毒から脱するのに、2年チョットかかりました。しかし、今や殆どスーパー糖質制限食でOKです。あの、ラーメン、パスタ、焼きそば、うどん好きの私が、炭水化物から脱することができましたよ。
あとは、お付き合い部分でどれ程避けられるかですね。そこで、江部先生の言われる「たまーに(糖質食OK)」は、どれ位(1ヶ月1回位?)を目安に考えておけば良いか、ご教示頂ければ幸いです。
宜しくお願い申し上げます。】
まー さん。
炭水化物依存症からの脱却、よかったですね。 (^^)
糖質を普通に摂取すれば、糖尿人ならブドウ糖スパイク、正常人でもブドウ糖ミニスパイクを生じます。
正常人ならミニスパイクのたびに、インスリンが大量に追加分泌されて、代謝がかく乱されます。
基礎分泌インスリンが5μU/mlくらいとして、糖質を一人前摂取すれば、正常人では30~100μU/mlとか、数倍~20倍とかの量が出ます。30倍くらい分泌される人もいますよ。
インスリン大量追加分泌そのものが救急車ですので、ミニスパイクの頻度は、少なければ少ないほどいいとしかいいようがありません。
目安と言っても、単純な線は引けないと思います。
ミニスパイクを10年、20年、30年、40年、50年・・・繰り替えすことにより、様々な生活習慣病になりますが、いつなるかは個人差があります。
たとえば「ミニスパイク+追加インスリン大量分泌」の繰り返しで数十年、膵臓のβ細胞が疲れ果て、一部は壊れ、インスリン分泌能力が低下して、遂に糖尿病発症というのが一般的な流れですが、いつXdayがくるかには個人差があります。
炭水化物依存症に再びならないための目安として、しいて言えば、運動量が今の普通以下の人は、狩猟・採集時代のご先祖が、たまに果物やナッツ類や、自然薯を摂取できた頻度ていどの糖質摂取なら絶対安全圏でしょうか?
筋肉が収縮していると、インスリンが追加分泌されなくても、筋肉細胞が血糖を取り込みますので、一日の運動量が多い場合は、結構糖質を摂取しても大丈夫と思います。
例えば明治時代のように、日常生活そのものが運動だった時代は、常にインスリン非依存的に、筋肉が血液中のブドウ糖をとりこむので、総摂取カロリーの70~80%を糖質から摂取していても、糖尿病や肥満はほとんどいませんでしたね。
江部康二
2011年06月06日 (月)
こんにちは。
今回は、ぴいちゃんから、糖尿病妊娠と血糖値コントロール目標と糖質制限食について、コメント・質問をいただきました。
【11/06/06 ぴいちゃん
はじめまして
初めてコメントさせて頂きます。
今回の記事も興味深く拝見させていただきました。
お肉大好きなので参考にさせていただきます。
私は昨年末に2型糖尿病と診断されてから、困り果てていたところを糖質制限に救われたものです。
先生のサイトを参考にさせて頂き、スタンダード糖質制限を実施しています。
2010年11月の時点でHbA1cが11.3、空腹時も198と高く…
現在ではHbA1cが5.1で空腹時は78~95位に下がりました。
ちなみに投薬無し、食事と運動のみです。
主治医には褒めて頂き、先生には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ところが今回妊娠したことが分かりました。
かねてから希望していた、待望の第一子です。
現在妊娠6週初めで、主治医には『食後2時間で200を超えたらすぐ受診して下さい』と言われました。
その時はそのまま帰宅しましたが、色々調べるうちに食後は120以下に抑えるのでは?と疑問が出てきました。
先生のブログにも空腹時は100以下、食後2時間は120以下と書いてある記事があったと思いますが…。
私の主治医の指示はまちがっているのでしょうか?
とても良い先生で疑う気は無いんですが、子供の事があるので心配です。
ちなみに昨晩はうっかりお寿司を食べてしまい…食後2時間は160を越えてしまいました。子供は大丈夫かと心配です。
宜しければご意見頂ければ幸いです。】
ぴいちゃんへ。
【2010年11月、HbA1cが11.3、空腹時198 】
スタンダード糖質制限食にて、内服薬なしで
【2011年5月、HbA1cが5.1で空腹時は78~95】
素晴らしい改善です。
良かったです。
また待望の第一子妊娠、おめでとうございます。
妊娠中は、スーパー糖質制限食がお奨めです。
スタンダード糖質制限食だと、お昼に1回主食を摂取したとき、食後高血糖が生じる可能性があります。
妊娠中に使える糖尿病の薬は、基本的にインスリンだけです。できればインスリン注射なしで、スーパー糖質制限食で血糖コントロール良好を、24時間保って、母子共に元気な妊娠・出産を目指してください。
ぴいちゃんの場合は、厳密には「糖尿病妊娠」であり、「妊娠糖尿病」ではありません。
ともあれ、妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<日本糖尿病学会の妊娠中の血糖値コントロール目標>
空腹時血糖値100mg/dl未満
食後1時間値140mg/dl未満
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c5.8%未満、JDS値、
をめざします。
このコントロール目標の範囲に入っていれば、インスリンはいらないと思います。スーパー糖質制限食で、充分可能と思いますよ。
糖質制限食は、人類本来の食生活です。農耕が始まる前の、400万年間は穀物はありませんので、人類は皆、糖質制限食を実践しながら妊娠・出産・子育て、そして日常生活を営んできました。
ぴいちゃんも安心してスーパー糖質制限食をお続け下さい。
【昨晩はうっかりお寿司を食べてしまい…食後2時間は160を越えて・・・】
たまーにそんなことがあっても、基本をスーパー糖質制限食で保っていれば、心配はいりません。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
<妊娠糖尿病の新診断基準決定とその過程2010>
日本糖尿病・妊娠学会では、2009年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し、妊娠糖尿病の新診断基準を決定しました。新診断基準は、2010年7月1日から施行されました。
今回、新診断基準に移行する過程の全容がほぼ把握できましたので、報告いたします。
従来、妊娠糖尿病の診断基準は、各国ばらばらで、世界共通の診断基準は存在していませんでした。そのため、世界統一基準が求められていました。
今回、国際糖尿病・妊娠学会
[International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)]
が提唱した世界統一基準は、2009年に報告されたHAPO studyの結果に基づいています。
HAPO studyは、米国立衛生研究所(NIH)のイニシアティブのもとで、7年間にわたり9カ国15医療センターで、非糖尿病妊婦23316人に対して、妊娠24~32週に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、胎児の成長や分娩、産後のデータを前向き調査したものです。この研究には、香港とアジア系米国人も含まれています。
この結果、母親の血糖値の軽度の上昇でも、児のインスリン分泌や脂肪蓄積に影響を与えることが明らかとなりました。そのため、従来より広く妊娠糖尿病を拾い上げる新診断基準の必要性が生じたのです。
このようにして、2度の国際会議を経て、日本でも診断基準検討委員会が中心となり、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)の新診断基準に基づく、新たな妊娠糖尿病診断基準の導入が決定されたわけです。
☆☆☆☆☆
<妊娠糖尿病・新診断基準> 2010年7月1日 施行
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C (JDS) ≧6.1%
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合(*)
(*)いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.
HbA1C(JDS)<6.1%未満で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
註1についてですが、妊娠時には、インスリン抵抗性が非常に高まるので、糖代謝に大きな変化が起きてきます。
従って75gOGTT 2時間値が200mg/dl以上の場合でも、必ずしも糖尿病と断定できません。
このため、糖尿病と診断するためには、HbA1Cか空腹時血糖値で再チェックすることが必要なのです。
ただし、註1のパターンは糖尿病とは断定できませんが、高リスク妊娠糖尿病として、厳重な管理とフォローが必要となります。
従来の基準から、新診断基準に移行することにより、妊娠糖尿病の頻度は2.92%だったのが、4倍程度に増えると予想されます。
妊娠中は、通常より軽度の耐糖能異常でも検出できる特殊な状態です。妊娠糖尿病を従来より広く網をかけて、高リスク予備群を早く発見し、母子共に将来の糖尿病人口の増加をくい止めることが今回の改訂の狙いといえます。
今回は、ぴいちゃんから、糖尿病妊娠と血糖値コントロール目標と糖質制限食について、コメント・質問をいただきました。
【11/06/06 ぴいちゃん
はじめまして
初めてコメントさせて頂きます。
今回の記事も興味深く拝見させていただきました。
お肉大好きなので参考にさせていただきます。
私は昨年末に2型糖尿病と診断されてから、困り果てていたところを糖質制限に救われたものです。
先生のサイトを参考にさせて頂き、スタンダード糖質制限を実施しています。
2010年11月の時点でHbA1cが11.3、空腹時も198と高く…
現在ではHbA1cが5.1で空腹時は78~95位に下がりました。
ちなみに投薬無し、食事と運動のみです。
主治医には褒めて頂き、先生には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ところが今回妊娠したことが分かりました。
かねてから希望していた、待望の第一子です。
現在妊娠6週初めで、主治医には『食後2時間で200を超えたらすぐ受診して下さい』と言われました。
その時はそのまま帰宅しましたが、色々調べるうちに食後は120以下に抑えるのでは?と疑問が出てきました。
先生のブログにも空腹時は100以下、食後2時間は120以下と書いてある記事があったと思いますが…。
私の主治医の指示はまちがっているのでしょうか?
とても良い先生で疑う気は無いんですが、子供の事があるので心配です。
ちなみに昨晩はうっかりお寿司を食べてしまい…食後2時間は160を越えてしまいました。子供は大丈夫かと心配です。
宜しければご意見頂ければ幸いです。】
ぴいちゃんへ。
【2010年11月、HbA1cが11.3、空腹時198 】
スタンダード糖質制限食にて、内服薬なしで
【2011年5月、HbA1cが5.1で空腹時は78~95】
素晴らしい改善です。
良かったです。
また待望の第一子妊娠、おめでとうございます。
妊娠中は、スーパー糖質制限食がお奨めです。
スタンダード糖質制限食だと、お昼に1回主食を摂取したとき、食後高血糖が生じる可能性があります。
妊娠中に使える糖尿病の薬は、基本的にインスリンだけです。できればインスリン注射なしで、スーパー糖質制限食で血糖コントロール良好を、24時間保って、母子共に元気な妊娠・出産を目指してください。
ぴいちゃんの場合は、厳密には「糖尿病妊娠」であり、「妊娠糖尿病」ではありません。
ともあれ、妊娠中のコントロール目標は、「糖尿病妊娠」も「妊娠糖尿病」も
<日本糖尿病学会の妊娠中の血糖値コントロール目標>
空腹時血糖値100mg/dl未満
食後1時間値140mg/dl未満
食後2時間血糖値120mg/dl未満
HbA1c5.8%未満、JDS値、
をめざします。
このコントロール目標の範囲に入っていれば、インスリンはいらないと思います。スーパー糖質制限食で、充分可能と思いますよ。
糖質制限食は、人類本来の食生活です。農耕が始まる前の、400万年間は穀物はありませんので、人類は皆、糖質制限食を実践しながら妊娠・出産・子育て、そして日常生活を営んできました。
ぴいちゃんも安心してスーパー糖質制限食をお続け下さい。
【昨晩はうっかりお寿司を食べてしまい…食後2時間は160を越えて・・・】
たまーにそんなことがあっても、基本をスーパー糖質制限食で保っていれば、心配はいりません。
江部康二
☆☆☆☆☆参考
<妊娠糖尿病の新診断基準決定とその過程2010>
日本糖尿病・妊娠学会では、2009年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し、妊娠糖尿病の新診断基準を決定しました。新診断基準は、2010年7月1日から施行されました。
今回、新診断基準に移行する過程の全容がほぼ把握できましたので、報告いたします。
従来、妊娠糖尿病の診断基準は、各国ばらばらで、世界共通の診断基準は存在していませんでした。そのため、世界統一基準が求められていました。
今回、国際糖尿病・妊娠学会
[International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)]
が提唱した世界統一基準は、2009年に報告されたHAPO studyの結果に基づいています。
HAPO studyは、米国立衛生研究所(NIH)のイニシアティブのもとで、7年間にわたり9カ国15医療センターで、非糖尿病妊婦23316人に対して、妊娠24~32週に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、胎児の成長や分娩、産後のデータを前向き調査したものです。この研究には、香港とアジア系米国人も含まれています。
この結果、母親の血糖値の軽度の上昇でも、児のインスリン分泌や脂肪蓄積に影響を与えることが明らかとなりました。そのため、従来より広く妊娠糖尿病を拾い上げる新診断基準の必要性が生じたのです。
このようにして、2度の国際会議を経て、日本でも診断基準検討委員会が中心となり、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)の新診断基準に基づく、新たな妊娠糖尿病診断基準の導入が決定されたわけです。
☆☆☆☆☆
<妊娠糖尿病・新診断基準> 2010年7月1日 施行
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C (JDS) ≧6.1%
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合(*)
(*)いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.
HbA1C(JDS)<6.1%未満で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
註1についてですが、妊娠時には、インスリン抵抗性が非常に高まるので、糖代謝に大きな変化が起きてきます。
従って75gOGTT 2時間値が200mg/dl以上の場合でも、必ずしも糖尿病と断定できません。
このため、糖尿病と診断するためには、HbA1Cか空腹時血糖値で再チェックすることが必要なのです。
ただし、註1のパターンは糖尿病とは断定できませんが、高リスク妊娠糖尿病として、厳重な管理とフォローが必要となります。
従来の基準から、新診断基準に移行することにより、妊娠糖尿病の頻度は2.92%だったのが、4倍程度に増えると予想されます。
妊娠中は、通常より軽度の耐糖能異常でも検出できる特殊な状態です。妊娠糖尿病を従来より広く網をかけて、高リスク予備群を早く発見し、母子共に将来の糖尿病人口の増加をくい止めることが今回の改訂の狙いといえます。
2011年06月05日 (日)
こんばんは。
「糖質制限食を語る」DVD販売のお知らせです。
こちらは、視聴用のYou Tube の映像です。
☆☆☆☆☆
京都高雄病院理事長、江部康二医師
画期的な糖尿病治療食
「糖質制限食を語る」
は、こちらのサイトで販売致します。
↓ ↓ ↓
http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php
これまでに、講演会を映像化して欲しいとの声を多々頂いておりましたが、なかなか形になりませんでした。
今回、私のバンド仲間の吉田さんが、映像プロダクションをされていることもあり、DVD化の運びとなりました。
DVDなら、何度でもご自宅で見て頂けますし、メモを取るのに必死で話を聴き逃した!などといったこともないので、けっこうオススメです。
本を読むのが苦手とか面倒くさい方にもDVDならOKですね。
ご高齢の方、あるいは糖尿病のご両親へのプレゼントにもいいですよ。
糖尿病と糖質制限食について、講演会のスライドも適宜挿入しながら、江部康二がわかりやすく語っています。
本DVD、これまで遠方で来れなかった方はもちろん、一度講演聞いたけど家の玄関くぐったら9割忘れてしまった方(笑)も、是非ごらん頂ければうれしいです。
「糖質制限食をかたる」DVD
見ていただいた方々には『わかりやすい』と好評で、私としても嬉しく思っています。
しかしながら、ビデオ屋にもアマゾンにも販売ルートがありませんので、ほぼ本ブログでの広報だけが頼りです。
ブログ読者の皆さんとその口コミが「糖質制限食をかたる」DVD販売の生命線です。
何卒よろしくお願い申しあげます。
江部康二
【糖質制限食とは】
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、
タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
そして、食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、
食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので
必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はほとんどないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009
「やせる食べ方」2010
「うちの母は糖尿人」2010
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006
「 糖質制限食 春のレシピ」2007
「 糖質制限食 夏のレシピ」2007
「糖質制限食 秋のレシピ」2008
「糖質制限食 冬のレシピ」2008
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」 2010
「やせる食べ方」レシピ集 2010
(以上東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010
(ナツメ社)
「糖質オフ」ごちそうごはん 2009
(アスペクト)
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」2009
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」 2010
(プレジデント社)
2011年「糖質制限ダイエット」(講談社)
2011年「糖質オフダイエット」(レタスクラブ)
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php
などを参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
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京都高雄病院理事長、江部康二医師
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【糖質制限食とは】
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、
タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、
「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」
という記載がありましたが、2004年版では変更されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。
脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質はごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。
そして、食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。
なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースに、できるだけ糖質の摂取を低く抑えて、
食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
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一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので
必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はほとんどないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」2005
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」2008
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」2009
「やせる食べ方」2010
「うちの母は糖尿人」2010
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」2006
「 糖質制限食 春のレシピ」2007
「 糖質制限食 夏のレシピ」2007
「糖質制限食 秋のレシピ」2008
「糖質制限食 冬のレシピ」2008
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」 2010
「やせる食べ方」レシピ集 2010
(以上東洋経済新報社)
「糖尿病がどんどんよくなる糖質制限食」2010
(ナツメ社)
「糖質オフ」ごちそうごはん 2009
(アスペクト)
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」2009
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」 2010
(プレジデント社)
2011年「糖質制限ダイエット」(講談社)
2011年「糖質オフダイエット」(レタスクラブ)
DVD「糖質制限食を語る」http://www.yaserutabekata.com/shop/dvd.php
などを参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。
糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
2011年06月04日 (土)
こんばんは。
今回はエルザさんから、糖質制限食と動物性脂肪についてコメント・質問をいただきました。
【11/06/03 エルザ
動物性脂肪
はじめまして。江部先生。
これから、糖質制限食を初めてみようと思い、先生のご著作やコラムを拝見しています。
よく、動脈硬化を予防するために、動物性脂肪は避けるよう言われています。糖質制限食の場合だと、動物性脂肪はカロリー源ということになると思いますが、毎日ロースやバラ肉を食べてしまっても、良いのでしょうか?揚げ物はいかがですか?原始時代にはなかったと思いますが・・・
私は、血糖値が食後1時間値200、空腹時は95ぐらいです。
また、HDL-C 90 LDL-C 58で、やせっぽちです。】
エルザ さん。
本のご購入、ありがとうございます。
【揚げ物はいかがですか?原始時代にはなかったと思いますが・・・ 】
確かに、火を使い始めたのはいつごろなのか?
一説には50万年前とか言われてます。
少なくとも火の発見と継続的使用の、前段階では全て生食ですね。
その後の50万年間は、火の通ったものを食べているので、火を使うのは許容範囲でしょう。
あとは、総摂取カロリーに占める割合として、大雑把に脂質56%、タンパク質32%、糖質12%くらいであれば油脂を使って揚げ物をしても、まあいいかと考えてます。
次に、糖質制限食を推進する立場として、動物性脂肪の適切な摂取量はどのくらいかということですね。
① 赤肉(牛・豚・羊)
世界ガン研究基金の2007年の報告
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
世界ガン研究基金の食生活指針の中で
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。赤肉は週500g以下に。」
と記載されています。これは、ひとつの目安でしょうか。
「赤肉(牛・豚・羊)の摂取量を、週500g以下」というのは、日本人にとってはそんなに高いハードルではないですね。
ちり鍋、寄せ鍋、水炊き、湯豆腐、ちゃんこ鍋、かき鍋、石狩鍋・・・、野菜炒め、煮魚、焼き魚、おでん、ラカントSを使って麻婆豆腐、鶏肉料理・・・、週1回は、150gの牛ステーキを食べて・・・。
結構豪華な食生活でも、赤肉500g/週以下で目標達成です。
でも、赤肉500g/週以下というのは、米国人には厳しい目標ですね。
まあ、世界ガン研究基金には逆らうようですが、糖質制限食をしている場合は、私個人の意見としては、赤肉をもう少し摂取してもいいような気がします。
②脂肪摂取量
柴田博著「ここがおかしい日本人の栄養の常識」(技術評論社)2007年
を参考にさせていただいて、脂肪摂取量(動物性脂肪+植物性脂肪)80~100g/日くらいまではOKと思います。
そして脂肪摂取量が40g以下とか少なすぎるよりは、100gを超えたとしても平均寿命に関しては、はるかに良いという報告があります。
なお日本人の動物性脂肪供給量は、
2003年の統計では米国の71.5gに対してわずか34.5gです。
植物性脂肪供給量は、米国で83.9gで、脂肪全体では155.4g、
植物性脂肪供給量は、日本で51.7gで、脂肪全体では86.2gです。
この国連食料農業機関(FAO)の統計は供給量ですから、摂取量はもっと少ないです。
ちなみに世界一の脂肪供給量の国は、フランスです。
動物性脂肪106.4、植物性脂肪62.0、総脂肪168.3gです。
動物性脂肪の摂取量は、米国よりはるかに多いですが、フランスの虚血性心疾患(心筋梗塞など)罹患数は、米国よりはるかに少なくて、フレンチパラドックスと呼ばれています。
こうなると、動物性脂肪が単純に心筋梗塞に悪いとは言えないようですね。
英国心臓財団の1999年のデータによると、35〜74歳の男性の虚血性心疾患による死亡率は、米国では10万人あたり115人で、フランスでは10万人あたり83人です。
米国人は、大量の植物性脂肪を供給されており、そのほとんどは大豆油のようで、リノール酸過剰摂取の弊害が、心筋梗塞を増やしている可能性があります。
脂肪摂取量に関しては、
2010年01月28日 (木)のブログ「脂肪摂取量が多いほど寿命が延びる」
2010年02月10日(水)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量」
2010年02月12日 (金)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量・続き」
2010年02月15日 (月)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量・続き・お詫びと訂正」
をご参照下さい。
③コレステロール低下医療と脂質栄養の方向転換(プレスセミナー)
2009年10月20日(火)東京
主 催:金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター、日本脂質栄養学会
後 援:日本薬学会
「コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権」 奥山治美(*)
コレステロール低下医療の方向転換が進み始めた。リノール酸摂りすぎが多くの病気を増やしており、また数種の植物油脂は実験動物に有害作用を示す。これに対し動物性脂肪は安全性が高い。健康に良い油脂の選び方は、完全に方向転換しなければならない。
日本脂質栄養学会の奥山先生は「リノール酸の摂りすぎが良くなくて、動物性脂肪は安全性が高い」と明言しておられます。植物性油脂の主成分がリノール酸です。
④<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。
総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。
脂質熱量比率20%ですから、対照群の女性(脂質熱量比率30数%)に比べれば、動物性脂肪も植物性脂肪も含めて40%くらい摂取量を減らした計算です。
権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
動物性脂肪も間違いなく減らしていますが、心血管疾患(心筋梗塞など)は全く減りませんでした。
①②③④を合わせて考えてみると、少なくとも大食漢ではない通常の日本人が、糖質制限食を実践するとき、結構お腹いっぱい食べても、動物性脂肪や動物性タンパク(赤肉)が過剰になる心配は少ないといえますね。 (^_^)
なお高雄病院方式の糖質制限食では、バターやチーズは0K食品です。
*)奥山 治美
薬学博士 東京大学薬学部卒。東京大学大学院薬学研究科修了。東京大学助手、名古屋市立大学助教授、教授を歴任。現在金城学院大学特任教授、「脂質栄養」オープンリサーチセンター・センター長。日本脂質栄養学会初代会長。名古屋市立大学名誉教授。脳機能、生活習慣病に及ぼす脂質栄養の影響を広く研究し、新方向へ転換を推進中。油の正しい選び方・摂り方、農文協、2008年
江部康二
今回はエルザさんから、糖質制限食と動物性脂肪についてコメント・質問をいただきました。
【11/06/03 エルザ
動物性脂肪
はじめまして。江部先生。
これから、糖質制限食を初めてみようと思い、先生のご著作やコラムを拝見しています。
よく、動脈硬化を予防するために、動物性脂肪は避けるよう言われています。糖質制限食の場合だと、動物性脂肪はカロリー源ということになると思いますが、毎日ロースやバラ肉を食べてしまっても、良いのでしょうか?揚げ物はいかがですか?原始時代にはなかったと思いますが・・・
私は、血糖値が食後1時間値200、空腹時は95ぐらいです。
また、HDL-C 90 LDL-C 58で、やせっぽちです。】
エルザ さん。
本のご購入、ありがとうございます。
【揚げ物はいかがですか?原始時代にはなかったと思いますが・・・ 】
確かに、火を使い始めたのはいつごろなのか?
一説には50万年前とか言われてます。
少なくとも火の発見と継続的使用の、前段階では全て生食ですね。
その後の50万年間は、火の通ったものを食べているので、火を使うのは許容範囲でしょう。
あとは、総摂取カロリーに占める割合として、大雑把に脂質56%、タンパク質32%、糖質12%くらいであれば油脂を使って揚げ物をしても、まあいいかと考えてます。
次に、糖質制限食を推進する立場として、動物性脂肪の適切な摂取量はどのくらいかということですね。
① 赤肉(牛・豚・羊)
世界ガン研究基金の2007年の報告
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
世界ガン研究基金の食生活指針の中で
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。赤肉は週500g以下に。」
と記載されています。これは、ひとつの目安でしょうか。
「赤肉(牛・豚・羊)の摂取量を、週500g以下」というのは、日本人にとってはそんなに高いハードルではないですね。
ちり鍋、寄せ鍋、水炊き、湯豆腐、ちゃんこ鍋、かき鍋、石狩鍋・・・、野菜炒め、煮魚、焼き魚、おでん、ラカントSを使って麻婆豆腐、鶏肉料理・・・、週1回は、150gの牛ステーキを食べて・・・。
結構豪華な食生活でも、赤肉500g/週以下で目標達成です。
でも、赤肉500g/週以下というのは、米国人には厳しい目標ですね。
まあ、世界ガン研究基金には逆らうようですが、糖質制限食をしている場合は、私個人の意見としては、赤肉をもう少し摂取してもいいような気がします。
②脂肪摂取量
柴田博著「ここがおかしい日本人の栄養の常識」(技術評論社)2007年
を参考にさせていただいて、脂肪摂取量(動物性脂肪+植物性脂肪)80~100g/日くらいまではOKと思います。
そして脂肪摂取量が40g以下とか少なすぎるよりは、100gを超えたとしても平均寿命に関しては、はるかに良いという報告があります。
なお日本人の動物性脂肪供給量は、
2003年の統計では米国の71.5gに対してわずか34.5gです。
植物性脂肪供給量は、米国で83.9gで、脂肪全体では155.4g、
植物性脂肪供給量は、日本で51.7gで、脂肪全体では86.2gです。
この国連食料農業機関(FAO)の統計は供給量ですから、摂取量はもっと少ないです。
ちなみに世界一の脂肪供給量の国は、フランスです。
動物性脂肪106.4、植物性脂肪62.0、総脂肪168.3gです。
動物性脂肪の摂取量は、米国よりはるかに多いですが、フランスの虚血性心疾患(心筋梗塞など)罹患数は、米国よりはるかに少なくて、フレンチパラドックスと呼ばれています。
こうなると、動物性脂肪が単純に心筋梗塞に悪いとは言えないようですね。
英国心臓財団の1999年のデータによると、35〜74歳の男性の虚血性心疾患による死亡率は、米国では10万人あたり115人で、フランスでは10万人あたり83人です。
米国人は、大量の植物性脂肪を供給されており、そのほとんどは大豆油のようで、リノール酸過剰摂取の弊害が、心筋梗塞を増やしている可能性があります。
脂肪摂取量に関しては、
2010年01月28日 (木)のブログ「脂肪摂取量が多いほど寿命が延びる」
2010年02月10日(水)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量」
2010年02月12日 (金)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量・続き」
2010年02月15日 (月)のブログ「糖質制限食と脂質の摂取量・続き・お詫びと訂正」
をご参照下さい。
③コレステロール低下医療と脂質栄養の方向転換(プレスセミナー)
2009年10月20日(火)東京
主 催:金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター、日本脂質栄養学会
後 援:日本薬学会
「コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権」 奥山治美(*)
コレステロール低下医療の方向転換が進み始めた。リノール酸摂りすぎが多くの病気を増やしており、また数種の植物油脂は実験動物に有害作用を示す。これに対し動物性脂肪は安全性が高い。健康に良い油脂の選び方は、完全に方向転換しなければならない。
日本脂質栄養学会の奥山先生は「リノール酸の摂りすぎが良くなくて、動物性脂肪は安全性が高い」と明言しておられます。植物性油脂の主成分がリノール酸です。
④<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。
総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。
脂質熱量比率20%ですから、対照群の女性(脂質熱量比率30数%)に比べれば、動物性脂肪も植物性脂肪も含めて40%くらい摂取量を減らした計算です。
権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
動物性脂肪も間違いなく減らしていますが、心血管疾患(心筋梗塞など)は全く減りませんでした。
①②③④を合わせて考えてみると、少なくとも大食漢ではない通常の日本人が、糖質制限食を実践するとき、結構お腹いっぱい食べても、動物性脂肪や動物性タンパク(赤肉)が過剰になる心配は少ないといえますね。 (^_^)
なお高雄病院方式の糖質制限食では、バターやチーズは0K食品です。
*)奥山 治美
薬学博士 東京大学薬学部卒。東京大学大学院薬学研究科修了。東京大学助手、名古屋市立大学助教授、教授を歴任。現在金城学院大学特任教授、「脂質栄養」オープンリサーチセンター・センター長。日本脂質栄養学会初代会長。名古屋市立大学名誉教授。脳機能、生活習慣病に及ぼす脂質栄養の影響を広く研究し、新方向へ転換を推進中。油の正しい選び方・摂り方、農文協、2008年
江部康二