2010年08月31日 (火)
おはようございます。
ケンさんから、糖質制限食実践による糖尿病改善の経過をコメントいただきました。
「10/08/28 ケン
こんぱんはケンです。
私からの質問を採り上げて頂き有難うございます。
私は約1年ほど前に糖尿と診断され、その当時(35歳)A1cは12近くありました。
その後カロリー制限をし、運動もして体重が90kgから75kg(身長175cm) まで減り5ヶ月ほど前に先生の本と出合い糖質制限食を始め、 現在はA1c4.8~5.2・体重も63kgとなりました。
気になる点はBUNが20~25と高値なことです。
しかしこれは問題ないのですよね?
過去に尿中アルブミンが39と高値だったことがありましたが現在は13です。
(尿中アルブミンが39のときはBUNが25でした)
クレアチニンは0.62~0.74です。
糖質制限食は本当にすばらしいです。
有難うございます。
先生の指摘されている通り私の父も軽い糖尿で、父方の両親は糖尿の合併症で 亡くなっております。
糖尿家系なのでもともとすい臓の機能がよくなかったのかも知れませんね。
ただ、私の場合現在はインスリン抵抗性は正常なのですが、以前は肥満だったのでもちろんインスリン抵抗性は良くなかったと思います。
糖質制限を始めて5ヶ月、血糖コントロールも良いと思うのですい臓も休めたと思うのですが、インスリン抵抗性タイプかどうかはよく分かりません。(たぶんインスリン抵抗性タイプでないとおもいますが・・・)
現在は玄米100gとおかす(糖質少なめ、量いっぱい)を食べると1時間値は140~150です。
すい臓を休ませる期間は5.6ヶ月は十分なのでしょうか?
これ以上の回復も1~2年と長いスパンで糖質制限食を続ければありえるでしょうか?
糖尿人には贅沢な願望ですが、可能性があればと思っております。
何度も質問をして申し訳ございません。
またお時間のございますときにご返信頂ければ幸いです。
貴重なお時間を頂き本当に有難うございます。」
ケンさん。
90kg→75kg→63kg (身長175cm)
糖質制限食で減量成功よかったですね。 (^^)
HbA1c 12%近く→4.8~5.2 %
尿中アルブミン 39→13
こちらも劇的改善おめでとうございます。 (^_^)
「気になる点はBUNが20~25と高値なことです。 しかしこれは問題ないのですよね? 」
BUNの高値は糖質制限食(相対的高タンパク食)による生理的変化であり、心配いりません。
クレアチニンは0.62~0.74で正常ですので、腎機能のほうは大丈夫です。
「糖質制限を始めて5ヶ月、血糖コントロールも良いと思うので、すい臓も休めたと思うのですが、インスリン抵抗性タイプかどうかはよく分かりません。」
HbA1cが12%の頃は、平均血糖値は
<12%-1.7>×30=309mg
で、完全な糖毒状態です。
この頃は、「高血糖による膵臓β細胞の障害」と「高血糖によるインスリン抵抗性」があったと考えられます。
発症時、「175cm。90kg」ですから、BMI:29.4と肥満ですので、それによるインスリン抵抗性もあったと思います。
現在HbA1cが5.2 %なら、平均血糖値は105mgなので、糖毒の悪循環からは完全に脱却しています。
体重も63kgですから、BMI:20.6で標準体重ですので、肥満によるインスリン抵抗性も改善しています。
「現在は玄米100gとおかず(糖質少なめ、量いっぱい)を食べると1時間値は140~150です。 」
食後1時間値が140~150mgなら、食後2時間値は140mg未満の可能性が高いので目標達成OKですね。
炊いた玄米100gなら、糖質含有量は約23gです。
2型糖尿人なら「23g×3mg=69mg」血糖値が上昇するはずなので、追加分泌インスリンがあるていど回復しています。
「すい臓を休ませる期間は5.6ヶ月は十分なのでしょうか? これ以上の回復も1~2年と長いスパンで糖質制限食を続ければありえるでしょうか?」
6ヶ月の休養は、β細胞回復の一つの目安・区切りと思います。
「半年休養して、β細胞が回復し、1年休養したらさらに倍回復」
ということではありません。
「半年のスーパー糖質制限食による休養→疲弊していたβ細胞がほぼ回復」
これを、維持することが大切です。
ケンさんも、疲弊していた膵臓のβ細胞がかなり回復していますが、もし再び糖質を日常的に1日3~5回摂取する食生活に戻れば、頻回のブドウ糖ミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌で、β細胞も再度疲弊していき、インスリン分泌能は低下すると思います。
江部康二
ケンさんから、糖質制限食実践による糖尿病改善の経過をコメントいただきました。
「10/08/28 ケン
こんぱんはケンです。
私からの質問を採り上げて頂き有難うございます。
私は約1年ほど前に糖尿と診断され、その当時(35歳)A1cは12近くありました。
その後カロリー制限をし、運動もして体重が90kgから75kg(身長175cm) まで減り5ヶ月ほど前に先生の本と出合い糖質制限食を始め、 現在はA1c4.8~5.2・体重も63kgとなりました。
気になる点はBUNが20~25と高値なことです。
しかしこれは問題ないのですよね?
過去に尿中アルブミンが39と高値だったことがありましたが現在は13です。
(尿中アルブミンが39のときはBUNが25でした)
クレアチニンは0.62~0.74です。
糖質制限食は本当にすばらしいです。
有難うございます。
先生の指摘されている通り私の父も軽い糖尿で、父方の両親は糖尿の合併症で 亡くなっております。
糖尿家系なのでもともとすい臓の機能がよくなかったのかも知れませんね。
ただ、私の場合現在はインスリン抵抗性は正常なのですが、以前は肥満だったのでもちろんインスリン抵抗性は良くなかったと思います。
糖質制限を始めて5ヶ月、血糖コントロールも良いと思うのですい臓も休めたと思うのですが、インスリン抵抗性タイプかどうかはよく分かりません。(たぶんインスリン抵抗性タイプでないとおもいますが・・・)
現在は玄米100gとおかす(糖質少なめ、量いっぱい)を食べると1時間値は140~150です。
すい臓を休ませる期間は5.6ヶ月は十分なのでしょうか?
これ以上の回復も1~2年と長いスパンで糖質制限食を続ければありえるでしょうか?
糖尿人には贅沢な願望ですが、可能性があればと思っております。
何度も質問をして申し訳ございません。
またお時間のございますときにご返信頂ければ幸いです。
貴重なお時間を頂き本当に有難うございます。」
ケンさん。
90kg→75kg→63kg (身長175cm)
糖質制限食で減量成功よかったですね。 (^^)
HbA1c 12%近く→4.8~5.2 %
尿中アルブミン 39→13
こちらも劇的改善おめでとうございます。 (^_^)
「気になる点はBUNが20~25と高値なことです。 しかしこれは問題ないのですよね? 」
BUNの高値は糖質制限食(相対的高タンパク食)による生理的変化であり、心配いりません。
クレアチニンは0.62~0.74で正常ですので、腎機能のほうは大丈夫です。
「糖質制限を始めて5ヶ月、血糖コントロールも良いと思うので、すい臓も休めたと思うのですが、インスリン抵抗性タイプかどうかはよく分かりません。」
HbA1cが12%の頃は、平均血糖値は
<12%-1.7>×30=309mg
で、完全な糖毒状態です。
この頃は、「高血糖による膵臓β細胞の障害」と「高血糖によるインスリン抵抗性」があったと考えられます。
発症時、「175cm。90kg」ですから、BMI:29.4と肥満ですので、それによるインスリン抵抗性もあったと思います。
現在HbA1cが5.2 %なら、平均血糖値は105mgなので、糖毒の悪循環からは完全に脱却しています。
体重も63kgですから、BMI:20.6で標準体重ですので、肥満によるインスリン抵抗性も改善しています。
「現在は玄米100gとおかず(糖質少なめ、量いっぱい)を食べると1時間値は140~150です。 」
食後1時間値が140~150mgなら、食後2時間値は140mg未満の可能性が高いので目標達成OKですね。
炊いた玄米100gなら、糖質含有量は約23gです。
2型糖尿人なら「23g×3mg=69mg」血糖値が上昇するはずなので、追加分泌インスリンがあるていど回復しています。
「すい臓を休ませる期間は5.6ヶ月は十分なのでしょうか? これ以上の回復も1~2年と長いスパンで糖質制限食を続ければありえるでしょうか?」
6ヶ月の休養は、β細胞回復の一つの目安・区切りと思います。
「半年休養して、β細胞が回復し、1年休養したらさらに倍回復」
ということではありません。
「半年のスーパー糖質制限食による休養→疲弊していたβ細胞がほぼ回復」
これを、維持することが大切です。
ケンさんも、疲弊していた膵臓のβ細胞がかなり回復していますが、もし再び糖質を日常的に1日3~5回摂取する食生活に戻れば、頻回のブドウ糖ミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌で、β細胞も再度疲弊していき、インスリン分泌能は低下すると思います。
江部康二
2010年08月30日 (月)
こんにちは。
今回は、千歳さんからHOMA-RとHbA1cの関係などについて、コメント・質問をいただきました。
HOMA-Rが高値でもHbA1cは正常なのは何故?
「10/08/27 千蔵
HOMA-R
千蔵です。1日1食糖質ゼロで8ヶ月経過しています。おかげさまで、A1cは、4.8前後(糖質制限開始前は9.0)で安定しているのですが、HOMA-Rが3.0前後で止まってしまい。低下しません。空腹時血糖値は、120前後、IRI10.0前後で推移しています。主治医の専門医さんからは、インシュリン受容体の感度が悪く、高インシュリン血症の状態だという説明を受けています。つまり、インシュリンは出ているのだが、抵抗性が高いということですね。
身長174センチで体重が85キロ(糖質制限開始前は95キロ)ですから、肥満が抵抗性を高めているので、何とか、この1食(毎晩宴会状態)の食べすぎ飲みすぎを抑え、運動量を増やすべく、努力はするつもりです。
それにしても、今ひとつ、HbA1cとHOMA-Rの関係がしっくりしないのです。今の状態をどう理解すれば良いのか、糖尿病なのか、境界型なのか、抵抗性が高いだけなのか、主治医の先生もその辺はっきり言わないので、忸怩たる思いがあります。わたしと同じような状態の方もいらっしゃると思います。是非、ご教示ください。若い主治医の専門医さんは、糖質制限に興味を持ってくれていて、診断の度に「お酒はいいんですか」とか「脂質は?」とか質問してきます。今度、江部先生の本を貸してあげようと思っています。それでは、よろしくお願いします。」
「10/08/27 外科医
糖尿病の可能性
千蔵さんへ
A1cが9.0であった時点で糖尿病であった(少なくとも糖尿病型)と思いますよ。それが糖質制限で改善したのでしょう。データからすると、インスリン抵抗性の糖尿病だと思いますが。現時点で75gOGTT、IRIを見れば正確な診断ができると思います。」
「10/08/27 千蔵
外科医さんありがとうございます
A1cが4.8の今の状態でも糖尿病でしょうか。
主治医の専門医さん、OGTTやってくれないんですよ。A1c値のせいでしょうか。保険適用のルールかなんかにあるんでしょうか。まあ、突っ込んで聞いてみます。
ありがとうございます。」
「10/08/27 外科医
千蔵さん
たとえて言うならば、血圧の高い人が薬物療法で血圧が正常になったとします。これは、高血圧が治癒したのではなくて、うまくコントロールされたということです。なので、千蔵さんは糖質制限という極めて効果的な治療を行ったので、うまく糖尿病をコントロールされていると考えるべきでしょう。江部先生が言うように糖尿病と明らかに診断されている患者さんには75gOGTTは行いません。高血糖になり昏睡になることすらあります。ただ、どうしても診断してもらいたい時は、ほかにも検査方法があるので主治医につっこんでみてください。」
「10/08/27 千蔵
外科医さん、なるほど、よくわかりました
数値は、コントロールされているが、治ったわけではないということですね。江部先生の言うとおり、気長に楽しく糖質制限を続けます。別に検査が好きなわけでもありませんし。」
千歳さん。
若い主治医の先生、糖質制限食に興味をもっていただけて良かったですね。
外科医さん。
コメントありがとうございます。
基本的に外科医さんの仰有る通りと思います。
「A1cは、4.8前後(糖質制限開始前は9.0)で安定しているのですが、HOMA-Rが3.0前後で止まってしまい。低下しません。空腹時血糖値は、120前後、IRI10.0前後。
身長174センチで体重が85キロ(糖質制限開始前は95キロ)」
HbA1c4.8%なら、平均血糖値は
(4.8%-1.7)×30=93mg/dl
とかなり、低いです。
千歳さんの場合、主治医の仰有る通り、インスリン分泌能は充分、というか多いくらいあるようです。
糖質制限食実践で食後高血糖がほとんどなくて、空腹時とあまり変わらないくらい、なおかつ食後4時間くらい経過したら血糖値は60~70mgくらいに下がっていると思われます。
身長174センチで体重が85キロ→BMI:28.1
10kg減量しておられますが、まだ肥満であり、インスリン抵抗性が残存しています。そのため早朝空腹時血糖値が、境界型レベルで正常型になっていません。IRI10.0も正常範囲の中ですが、高めと考えた方がいいです。
HOMA-Rはインスリン抵抗性の指標です。
インスリン抵抗性があっても、血糖値は正常の人もいます。
『例えば、身長180cm、体重160kgの米国白人男性Aさんをモデルに考えて見ましょう。
BMIは49で超肥満です。
空腹時血糖値は108mgで、まだ正常型、しかし空腹時インスリンは30と高値、HOMA-Rは8と高値です。
Aさんは、インスリン抵抗性はたっぷりありますが、それを上回る大量のインスリンを分泌し続けているので高血糖ではなくて、いまだ糖尿病にはなっていません。
しかし大量の基礎分泌・追加分泌インスリンにより超肥満で、このままでは将来180~200kgレベルの肥満になりかねません。
白人はインスリン分泌能力がアジア人の倍あるとされ、糖尿病にはなりにくいけれど超肥満にやりやすいのです』
千歳さんは、今後スーパー糖質制限食で75kgまで減量すれば、BMI24.8で標準体重です。
痩せにくければ、運動と若干のカロリー制限も考慮です。
標準体重になれば、インスリン抵抗性も正常化して、空腹時血糖値も正常化する可能性が高いですね。
江部康二
今回は、千歳さんからHOMA-RとHbA1cの関係などについて、コメント・質問をいただきました。
HOMA-Rが高値でもHbA1cは正常なのは何故?
「10/08/27 千蔵
HOMA-R
千蔵です。1日1食糖質ゼロで8ヶ月経過しています。おかげさまで、A1cは、4.8前後(糖質制限開始前は9.0)で安定しているのですが、HOMA-Rが3.0前後で止まってしまい。低下しません。空腹時血糖値は、120前後、IRI10.0前後で推移しています。主治医の専門医さんからは、インシュリン受容体の感度が悪く、高インシュリン血症の状態だという説明を受けています。つまり、インシュリンは出ているのだが、抵抗性が高いということですね。
身長174センチで体重が85キロ(糖質制限開始前は95キロ)ですから、肥満が抵抗性を高めているので、何とか、この1食(毎晩宴会状態)の食べすぎ飲みすぎを抑え、運動量を増やすべく、努力はするつもりです。
それにしても、今ひとつ、HbA1cとHOMA-Rの関係がしっくりしないのです。今の状態をどう理解すれば良いのか、糖尿病なのか、境界型なのか、抵抗性が高いだけなのか、主治医の先生もその辺はっきり言わないので、忸怩たる思いがあります。わたしと同じような状態の方もいらっしゃると思います。是非、ご教示ください。若い主治医の専門医さんは、糖質制限に興味を持ってくれていて、診断の度に「お酒はいいんですか」とか「脂質は?」とか質問してきます。今度、江部先生の本を貸してあげようと思っています。それでは、よろしくお願いします。」
「10/08/27 外科医
糖尿病の可能性
千蔵さんへ
A1cが9.0であった時点で糖尿病であった(少なくとも糖尿病型)と思いますよ。それが糖質制限で改善したのでしょう。データからすると、インスリン抵抗性の糖尿病だと思いますが。現時点で75gOGTT、IRIを見れば正確な診断ができると思います。」
「10/08/27 千蔵
外科医さんありがとうございます
A1cが4.8の今の状態でも糖尿病でしょうか。
主治医の専門医さん、OGTTやってくれないんですよ。A1c値のせいでしょうか。保険適用のルールかなんかにあるんでしょうか。まあ、突っ込んで聞いてみます。
ありがとうございます。」
「10/08/27 外科医
千蔵さん
たとえて言うならば、血圧の高い人が薬物療法で血圧が正常になったとします。これは、高血圧が治癒したのではなくて、うまくコントロールされたということです。なので、千蔵さんは糖質制限という極めて効果的な治療を行ったので、うまく糖尿病をコントロールされていると考えるべきでしょう。江部先生が言うように糖尿病と明らかに診断されている患者さんには75gOGTTは行いません。高血糖になり昏睡になることすらあります。ただ、どうしても診断してもらいたい時は、ほかにも検査方法があるので主治医につっこんでみてください。」
「10/08/27 千蔵
外科医さん、なるほど、よくわかりました
数値は、コントロールされているが、治ったわけではないということですね。江部先生の言うとおり、気長に楽しく糖質制限を続けます。別に検査が好きなわけでもありませんし。」
千歳さん。
若い主治医の先生、糖質制限食に興味をもっていただけて良かったですね。
外科医さん。
コメントありがとうございます。
基本的に外科医さんの仰有る通りと思います。
「A1cは、4.8前後(糖質制限開始前は9.0)で安定しているのですが、HOMA-Rが3.0前後で止まってしまい。低下しません。空腹時血糖値は、120前後、IRI10.0前後。
身長174センチで体重が85キロ(糖質制限開始前は95キロ)」
HbA1c4.8%なら、平均血糖値は
(4.8%-1.7)×30=93mg/dl
とかなり、低いです。
千歳さんの場合、主治医の仰有る通り、インスリン分泌能は充分、というか多いくらいあるようです。
糖質制限食実践で食後高血糖がほとんどなくて、空腹時とあまり変わらないくらい、なおかつ食後4時間くらい経過したら血糖値は60~70mgくらいに下がっていると思われます。
身長174センチで体重が85キロ→BMI:28.1
10kg減量しておられますが、まだ肥満であり、インスリン抵抗性が残存しています。そのため早朝空腹時血糖値が、境界型レベルで正常型になっていません。IRI10.0も正常範囲の中ですが、高めと考えた方がいいです。
HOMA-Rはインスリン抵抗性の指標です。
インスリン抵抗性があっても、血糖値は正常の人もいます。
『例えば、身長180cm、体重160kgの米国白人男性Aさんをモデルに考えて見ましょう。
BMIは49で超肥満です。
空腹時血糖値は108mgで、まだ正常型、しかし空腹時インスリンは30と高値、HOMA-Rは8と高値です。
Aさんは、インスリン抵抗性はたっぷりありますが、それを上回る大量のインスリンを分泌し続けているので高血糖ではなくて、いまだ糖尿病にはなっていません。
しかし大量の基礎分泌・追加分泌インスリンにより超肥満で、このままでは将来180~200kgレベルの肥満になりかねません。
白人はインスリン分泌能力がアジア人の倍あるとされ、糖尿病にはなりにくいけれど超肥満にやりやすいのです』
千歳さんは、今後スーパー糖質制限食で75kgまで減量すれば、BMI24.8で標準体重です。
痩せにくければ、運動と若干のカロリー制限も考慮です。
標準体重になれば、インスリン抵抗性も正常化して、空腹時血糖値も正常化する可能性が高いですね。
江部康二
2010年08月29日 (日)
こんばんは。
第27回和漢医薬学会学術大会
場所 京都薬科大学
特別講演3 「糖質制限食による糖尿病治療」
無事1時間お話しして、かなり苦労して先ほど帰宅しました。
京都市の山科では、流しのタクシーがほとんどいません。 (*_*)
基本的に京都薬科大で学会事務局にタクシーを呼んでもらったら、何の問題もなかったのですが、道で適当に拾おうとして結局ゲットするのに30分近くかかってしまいました。(;_;)
和漢医薬学会学術大会は、600人を超える参加者で大盛況でした。
学会参加中の漢方専門医指導医のドクターから、新たに糖質講演食の講演を承りました。またさらにネットワークが広がっていきます。
漢方医はもともと、部分と共に全体を診る、マクロの視点をもっているので、要素還元主義で部分を文責・追求する西洋医に比べれば、糖質制限食という一見変わった食事療法にも異和感を覚えず、受け入れていただける確率が高いように思います。 (^_^)
さて、津上 さんから嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/29 津上
謝意
7月2日の人間ドックで、A1c 6.1、空腹時血糖値159となりました。
(身長170センチ、体重72キロ)
12年前に糖尿病と診断され(体重78キロ)、徐々に悪化したものです。
これまでは、空腹時血糖値は糖尿病と判断されるが、A1cが5%台を維持してきたため、産業医の意見は様子を見ましょうでした。今回は、糖尿病の治療をしてくださいでした。
その日のうちに、江部先生のホームページにたどり着くことができ、これだと思いました。これまで自己流で行ってきた食事療法が、「糖質制限食」に近いものだったからです。
すぐに、先生の著作を4冊購入し勉強すると同時に、スーパーに近い制限食を実施しました。
昨日、血糖値測定器を購入し、夕食前血糖値を測ったら、75、一時間後が100、二時間後が68です。アルコールの力も借りてはいますが、非常にいい数値になり感謝しております。体重は67~8Kgになっています。
有難うございました。
ところで、国立循環器研究センターのホームページに江部先生の考えがほとんどそのまま紹介されています。
ご存知でしたか?
糖尿病の食 -“テーラーメード食事療法”のすすめ-
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/pamph74.html#anchor-1」
津上さん。
本のご購入、貴重な情報を、ありがとうございます。
スーパー糖質制限食にて血糖コントロールの改善、体重の減少良かったですね。
国立循環器病センター
動脈硬化・代謝内科
部長 吉政 康直 先生
は、国立循環器病センターのホームページの中に
[74]糖尿病の食 -“テーラーメード食事療法”のすすめ-
と題して、拙著「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」と糖質制限食をとりあげ、とても好意的に、ご解説いただいてます。
嬉しい意味で想定外の大病院(国立循環器病センター)にも、ネットワークが広がっていくのは大変心強いですね。
吉政先生、ありがとうございます。
江部康二
第27回和漢医薬学会学術大会
場所 京都薬科大学
特別講演3 「糖質制限食による糖尿病治療」
無事1時間お話しして、かなり苦労して先ほど帰宅しました。
京都市の山科では、流しのタクシーがほとんどいません。 (*_*)
基本的に京都薬科大で学会事務局にタクシーを呼んでもらったら、何の問題もなかったのですが、道で適当に拾おうとして結局ゲットするのに30分近くかかってしまいました。(;_;)
和漢医薬学会学術大会は、600人を超える参加者で大盛況でした。
学会参加中の漢方専門医指導医のドクターから、新たに糖質講演食の講演を承りました。またさらにネットワークが広がっていきます。
漢方医はもともと、部分と共に全体を診る、マクロの視点をもっているので、要素還元主義で部分を文責・追求する西洋医に比べれば、糖質制限食という一見変わった食事療法にも異和感を覚えず、受け入れていただける確率が高いように思います。 (^_^)
さて、津上 さんから嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/29 津上
謝意
7月2日の人間ドックで、A1c 6.1、空腹時血糖値159となりました。
(身長170センチ、体重72キロ)
12年前に糖尿病と診断され(体重78キロ)、徐々に悪化したものです。
これまでは、空腹時血糖値は糖尿病と判断されるが、A1cが5%台を維持してきたため、産業医の意見は様子を見ましょうでした。今回は、糖尿病の治療をしてくださいでした。
その日のうちに、江部先生のホームページにたどり着くことができ、これだと思いました。これまで自己流で行ってきた食事療法が、「糖質制限食」に近いものだったからです。
すぐに、先生の著作を4冊購入し勉強すると同時に、スーパーに近い制限食を実施しました。
昨日、血糖値測定器を購入し、夕食前血糖値を測ったら、75、一時間後が100、二時間後が68です。アルコールの力も借りてはいますが、非常にいい数値になり感謝しております。体重は67~8Kgになっています。
有難うございました。
ところで、国立循環器研究センターのホームページに江部先生の考えがほとんどそのまま紹介されています。
ご存知でしたか?
糖尿病の食 -“テーラーメード食事療法”のすすめ-
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/pamph74.html#anchor-1」
津上さん。
本のご購入、貴重な情報を、ありがとうございます。
スーパー糖質制限食にて血糖コントロールの改善、体重の減少良かったですね。
国立循環器病センター
動脈硬化・代謝内科
部長 吉政 康直 先生
は、国立循環器病センターのホームページの中に
[74]糖尿病の食 -“テーラーメード食事療法”のすすめ-
と題して、拙著「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」と糖質制限食をとりあげ、とても好意的に、ご解説いただいてます。
嬉しい意味で想定外の大病院(国立循環器病センター)にも、ネットワークが広がっていくのは大変心強いですね。
吉政先生、ありがとうございます。
江部康二
2010年08月29日 (日)
おはようございます。
昨夜は、京都ハイアット・リージェンシーホテルで、京大医学部49年度卒業生の同窓会があり、32名が集まりました。
皆さん、それなりにほどよく年をとってましたが、数年以上ぶりでも、誰だかわからないというレベルの人は、幸いいませんでした。 (^^)
108人の同窓生の内、物故会員が5名で、この2年間は皆無事でした。平均年齢が60~62才くらいの集団ですから、まあ、ましなほうということでした。
糖質制限食に関しては、興味を持ってくれる同級生がさらに増えてました。
奥さんが、私の熱心なファンで、本が出たらすぐ購入しているという同級生もおられて嬉しい限りでした。ヾ(^▽^)
さて今回は、マイマイさんから、糖尿人と食材を食べる順番について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/27 マイマイ
タイトルなし
いつも拝見しております。
糖質制限を半年行っていて、体調はとてもよいです。
質問なのですが、定食スタイルの食事の時、食べる順番で血糖値が上がりにくいとかありますか?
よろしくお願いします。」
マイマイさん。
糖質制限食で体調良好、良かったです。
「食材を食べる順番で、食後血糖値が影響を受けるか?」
というご質問ですが、正常人では明確に差がありますが、糖尿人でも少し差があるようです。
2010年7月4日(日)東京慈恵医大で開催された第9回日本GI研究会で、15名の糖尿病患者さんに
①野菜サラダ→10分後、白ご飯
②白ご飯→10分後、野菜サラダ
の順番で食事を摂取して食後血糖値を調べた研究が発表されました。
(今井佐恵子先生 大阪府立大学 総合リハビリテーション学部)
結果は②のように、いきなり白ご飯(糖質)を食べると血糖値は単純に上昇しやすいです。
①のように、先に野菜サラダを食べて後に白ご飯なら、血糖の上昇速度は遅くなります。
30分後血糖値:②217±40 → ①172±31
60分後血糖値:②208±56 → ①187±41
ただ現実には、野菜サラダだけを食べて、10分間待って白ご飯というのは、かなり間延びしてしまいますから、ちょっとつらいですね。 ε-(-Д-)
まあ10分間待たずにすぐに食べても、10~20mgは下がるかもしれませんので、工夫としてはありですが・・・
やはり、アバウトではありますが、
「体重64kgの2型糖尿人では、1gの糖質が約3mg血糖値を上げる」
という原則に従って、糖質のグラム数だけ、把握して食事をする方が簡単ですし、現実的と思いますよ。
江部康二
昨夜は、京都ハイアット・リージェンシーホテルで、京大医学部49年度卒業生の同窓会があり、32名が集まりました。
皆さん、それなりにほどよく年をとってましたが、数年以上ぶりでも、誰だかわからないというレベルの人は、幸いいませんでした。 (^^)
108人の同窓生の内、物故会員が5名で、この2年間は皆無事でした。平均年齢が60~62才くらいの集団ですから、まあ、ましなほうということでした。
糖質制限食に関しては、興味を持ってくれる同級生がさらに増えてました。
奥さんが、私の熱心なファンで、本が出たらすぐ購入しているという同級生もおられて嬉しい限りでした。ヾ(^▽^)
さて今回は、マイマイさんから、糖尿人と食材を食べる順番について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/27 マイマイ
タイトルなし
いつも拝見しております。
糖質制限を半年行っていて、体調はとてもよいです。
質問なのですが、定食スタイルの食事の時、食べる順番で血糖値が上がりにくいとかありますか?
よろしくお願いします。」
マイマイさん。
糖質制限食で体調良好、良かったです。
「食材を食べる順番で、食後血糖値が影響を受けるか?」
というご質問ですが、正常人では明確に差がありますが、糖尿人でも少し差があるようです。
2010年7月4日(日)東京慈恵医大で開催された第9回日本GI研究会で、15名の糖尿病患者さんに
①野菜サラダ→10分後、白ご飯
②白ご飯→10分後、野菜サラダ
の順番で食事を摂取して食後血糖値を調べた研究が発表されました。
(今井佐恵子先生 大阪府立大学 総合リハビリテーション学部)
結果は②のように、いきなり白ご飯(糖質)を食べると血糖値は単純に上昇しやすいです。
①のように、先に野菜サラダを食べて後に白ご飯なら、血糖の上昇速度は遅くなります。
30分後血糖値:②217±40 → ①172±31
60分後血糖値:②208±56 → ①187±41
ただ現実には、野菜サラダだけを食べて、10分間待って白ご飯というのは、かなり間延びしてしまいますから、ちょっとつらいですね。 ε-(-Д-)
まあ10分間待たずにすぐに食べても、10~20mgは下がるかもしれませんので、工夫としてはありですが・・・
やはり、アバウトではありますが、
「体重64kgの2型糖尿人では、1gの糖質が約3mg血糖値を上げる」
という原則に従って、糖質のグラム数だけ、把握して食事をする方が簡単ですし、現実的と思いますよ。
江部康二
2010年08月28日 (土)
こんにちは。
今回は、ケンさんから、インスリン分泌能についてコメント・質問をいただきました。
「10/08/27 ケン
インスリン分泌指数につきまして
こんにちは。
インスリン分泌指数につきましてご質問させて頂きました。
私の場合HOMA-Rは0.9・HOMA-βは37と先生の数式の計算で数値が出たのですが、 インスリン抵抗性は正常、内因性インスリン分泌機能は正常でないがやや少ない程度と なりました。
インスリン分泌指数は30分値を計っていないので分からないのですが、 内因性インスリン分泌機能はそれほどひどくないのに75gの糖を摂取すると 1時間値は250とかになってしまうのは1相反応が低下しているからかと思われるのですが、 これは糖質制限により回復する又は回復させる方法はあるのでしょうか?
お時間のございます時にご指導頂ければ幸いです。」
ケンさん。
ご質問に関連しているので、まずは、糖尿病発症とインスリン分泌能の関係を考えてみます。
2型糖尿病患者の非糖尿病の近親者を調べたら、追加分泌インスリンの第1相が欠如している人が時々いるようです。
つまり、先天的に膵臓のベータ細胞の機能がよろしくない一群の人達がいて、当然、将来糖尿病になりやすいというパターンが一つ存在するわけです。
順天堂大学の河盛隆造教授によれば、2型糖尿病患者の子供や孫など、若い人に経口ブドウ糖負荷試験を行うと、血糖値は正常を保っているが、30分インスリン値も2時間インスリン値も低い例が高率に見られたそうです。*
このデータだと、遺伝的に追加分泌の第1相も第2相も不足気味の一群がいるといえます。これらの素因のある方々が長年精製炭水化物を摂取していると、もともと不足気味の追加分泌インスリンが、β細胞の疲弊によりさらに不足して、40代・50代で糖尿病発症ということになります。もともとの日本人に、一番多い糖尿病発症パターンでしょうか。
一方で、2型糖尿病患者の非糖尿病の近親者を調べたら、インスリン抵抗性**が認められても、インスリン追加分泌の第1相反応は保たれている場合もあります。
例えば、経口ブドウ糖負荷試験で、血糖値が軽度上昇していて、30分インスリン値が高い例が近年増えているようです。(河盛教授)
これは、インスリン抵抗性が高まったため、インスリンが過剰に分泌されているパターンであり、脂肪肝や内臓脂肪肥満を伴っていることが多いようです。こちらは、インスリン分泌能力は保たれていますね。
このように、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性(合わせてインスリンの作用不足)で糖尿病を発症しますが、日本人には分泌低下が主の糖尿人が多く、欧米人には抵抗性が主の糖尿人が多いとされています。
しかし、上述の如く、日本でもインスリン抵抗性が主の糖尿病が、少し増えてきているようです。
「内因性インスリン分泌機能はそれほどひどくないのに75gの糖を摂取すると 1時間値は250とかになってしまうのは1相反応が低下しているからかと思われるのですが、これは糖質制限により回復する又は回復させる方法はあるのでしょうか?」
ケンさんの場合、ご指摘どおり、追加分泌インスリンの第1相が先天的に欠如、あるいは不足しているタイプと考えられます。従って、先天的な部分は、残念ながら回復はしないと考えられます。
しかし、追加分泌インスリンの第1相が、先天的に欠如、あるいは不足しているタイプでも、膵臓のβ細胞が疲弊していない若い頃は、糖尿病にはなりません。40・50代でβ細胞が疲弊して、初めて糖尿病となります。
糖尿病を発症し、一旦、高血糖になってしまうと、高血糖そのものがベータ細胞にダメージを与えてインスリン分泌低下になり、また高血糖そのものがインスリン抵抗性を高めてしまいます。
<高血糖→インスリン分泌抑制とインスリン抵抗性増大→高血糖>
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
ともあれ、糖質制限食を実践することで食後高血糖を防ぐことができるので、糖毒の悪循環を断ち切ることが可能です。
そうすると、うまくすれば、疲弊していたβ細胞が休養できてあるていど回復することも期待できます。
個人差が大きいとは思いますが、ケンさんの場合も、若い頃と同じレベルまでの回復は無理としてもスーパー糖質制限食実践で一定の改善があればいいですね。
*参考文献
「今日の血糖コントロールの考え方」
順天堂大学内科学 教授 河盛隆造 日本醫事新報 No.4193(2004年9月4日)
**インスリン抵抗性
細胞レベルでインスリンの効きが悪くなることをいいます。
インスリン抵抗性は、HOMA-R指数が参考となります。
空腹時の血糖値とインスリン濃度から、以下の計算式によって求めます。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン濃度÷405>
インスリン分泌が比較的よく保たれている、軽症の糖尿病患者さんのインスリン抵抗性を把握する方法として、よく利用されています。
この数値が大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
しかし、空腹時血糖値140mg以下の場合はいいのですが、140mgを超える場合はやや信頼性が劣ります。
江部康二
今回は、ケンさんから、インスリン分泌能についてコメント・質問をいただきました。
「10/08/27 ケン
インスリン分泌指数につきまして
こんにちは。
インスリン分泌指数につきましてご質問させて頂きました。
私の場合HOMA-Rは0.9・HOMA-βは37と先生の数式の計算で数値が出たのですが、 インスリン抵抗性は正常、内因性インスリン分泌機能は正常でないがやや少ない程度と なりました。
インスリン分泌指数は30分値を計っていないので分からないのですが、 内因性インスリン分泌機能はそれほどひどくないのに75gの糖を摂取すると 1時間値は250とかになってしまうのは1相反応が低下しているからかと思われるのですが、 これは糖質制限により回復する又は回復させる方法はあるのでしょうか?
お時間のございます時にご指導頂ければ幸いです。」
ケンさん。
ご質問に関連しているので、まずは、糖尿病発症とインスリン分泌能の関係を考えてみます。
2型糖尿病患者の非糖尿病の近親者を調べたら、追加分泌インスリンの第1相が欠如している人が時々いるようです。
つまり、先天的に膵臓のベータ細胞の機能がよろしくない一群の人達がいて、当然、将来糖尿病になりやすいというパターンが一つ存在するわけです。
順天堂大学の河盛隆造教授によれば、2型糖尿病患者の子供や孫など、若い人に経口ブドウ糖負荷試験を行うと、血糖値は正常を保っているが、30分インスリン値も2時間インスリン値も低い例が高率に見られたそうです。*
このデータだと、遺伝的に追加分泌の第1相も第2相も不足気味の一群がいるといえます。これらの素因のある方々が長年精製炭水化物を摂取していると、もともと不足気味の追加分泌インスリンが、β細胞の疲弊によりさらに不足して、40代・50代で糖尿病発症ということになります。もともとの日本人に、一番多い糖尿病発症パターンでしょうか。
一方で、2型糖尿病患者の非糖尿病の近親者を調べたら、インスリン抵抗性**が認められても、インスリン追加分泌の第1相反応は保たれている場合もあります。
例えば、経口ブドウ糖負荷試験で、血糖値が軽度上昇していて、30分インスリン値が高い例が近年増えているようです。(河盛教授)
これは、インスリン抵抗性が高まったため、インスリンが過剰に分泌されているパターンであり、脂肪肝や内臓脂肪肥満を伴っていることが多いようです。こちらは、インスリン分泌能力は保たれていますね。
このように、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性(合わせてインスリンの作用不足)で糖尿病を発症しますが、日本人には分泌低下が主の糖尿人が多く、欧米人には抵抗性が主の糖尿人が多いとされています。
しかし、上述の如く、日本でもインスリン抵抗性が主の糖尿病が、少し増えてきているようです。
「内因性インスリン分泌機能はそれほどひどくないのに75gの糖を摂取すると 1時間値は250とかになってしまうのは1相反応が低下しているからかと思われるのですが、これは糖質制限により回復する又は回復させる方法はあるのでしょうか?」
ケンさんの場合、ご指摘どおり、追加分泌インスリンの第1相が先天的に欠如、あるいは不足しているタイプと考えられます。従って、先天的な部分は、残念ながら回復はしないと考えられます。
しかし、追加分泌インスリンの第1相が、先天的に欠如、あるいは不足しているタイプでも、膵臓のβ細胞が疲弊していない若い頃は、糖尿病にはなりません。40・50代でβ細胞が疲弊して、初めて糖尿病となります。
糖尿病を発症し、一旦、高血糖になってしまうと、高血糖そのものがベータ細胞にダメージを与えてインスリン分泌低下になり、また高血糖そのものがインスリン抵抗性を高めてしまいます。
<高血糖→インスリン分泌抑制とインスリン抵抗性増大→高血糖>
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
ともあれ、糖質制限食を実践することで食後高血糖を防ぐことができるので、糖毒の悪循環を断ち切ることが可能です。
そうすると、うまくすれば、疲弊していたβ細胞が休養できてあるていど回復することも期待できます。
個人差が大きいとは思いますが、ケンさんの場合も、若い頃と同じレベルまでの回復は無理としてもスーパー糖質制限食実践で一定の改善があればいいですね。
*参考文献
「今日の血糖コントロールの考え方」
順天堂大学内科学 教授 河盛隆造 日本醫事新報 No.4193(2004年9月4日)
**インスリン抵抗性
細胞レベルでインスリンの効きが悪くなることをいいます。
インスリン抵抗性は、HOMA-R指数が参考となります。
空腹時の血糖値とインスリン濃度から、以下の計算式によって求めます。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン濃度÷405>
インスリン分泌が比較的よく保たれている、軽症の糖尿病患者さんのインスリン抵抗性を把握する方法として、よく利用されています。
この数値が大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
しかし、空腹時血糖値140mg以下の場合はいいのですが、140mgを超える場合はやや信頼性が劣ります。
江部康二
2010年08月27日 (金)
こんばんは。
ハチ公さんから、糖蜜と焼酎に関して、コメント・質問をいただきました。
「10/08/26 ハチ公
焼酎
いつもお疲れ様です。お忙しいところすみません。焼酎は蒸留酒なのでビールから転向しようとスーパーで手に取ったところ、原材料欄が『糖蜜』のみになってました。これは糖尿人には悪いのではないでしょうか。」
ハチ公さん。
私も糖蜜のことなにも知りませんでした。 (∵)?
それで糖蜜とはなにかをまず、ネットで調べてみました。
都合良く、日本酒造組合中央会のホームページに糖蜜のことが、簡潔に書いてありました。
糖蜜に関しては、ウィキペディアの解説はわかりにくかったです。
『日本酒造組合中央会
http://www.weblio.jp/content/%E7%B3%96%E8%9C%9C%E9%85%92
焼酎・泡盛用語集
糖蜜(とうみつ)
サトウキビから砂糖を製造するときにできる副産物。収穫したサトウキビを細かく破砕し、圧搾機でしぼると糖度15~17%の糖汁(糖水)が得られる。これを加熱し、沈殿槽に移し、沈殿物を除いた清澄液を濃縮、結晶させた後、遠心分蜜機へ送ると粗糖(原料糖)と糖蜜ができる。粗糖はさらに、洗糖、溶解、濃縮、結晶、分蜜を繰り返し、上白・中白・三温糖の精製糖をつくる。糖蜜は50~60%の糖分を含む黒褐色の液体で、焼酎甲類・ラム・調味料など、発酵工業の原料として非常に優れている。昭和三〇年代から四〇年代にかけて多用されたが、工場廃水の規制が厳しくなり、近年その使用量は減少している。』
簡単にいうと、流通している糖蜜は、サトウキビから砂糖(ショ糖)を取り出した後の、残り物の黒褐色の液体で、その中に50~60%の糖質が含まれています。そして焼酎甲類・ラム酒の原料として使用されているのですね。
焼酎甲類ですから、乙類焼酎(本格焼酎)とは違います。一般にホワイトリカーと呼ばれて、梅酒の原料などに使われるのが甲類焼酎です。*
原料が糖蜜で糖質たっぷりですが、蒸留されて甲類焼酎となると、もう糖質は含まれていません。ですので糖質制限食OK食材ではあります。
もっとも、今は安くて美味しい、本格焼酎がいろいろありますので、甲類焼酎を飲むよりは、そちらのほうがお奨めですね。 (^^)
*
日本酒造組合中央会
焼酎・泡盛用語集
ホワイトリカー(ほわいとりかー)
焼酎甲類の別称。特に家庭で梅酒などのホーム・リカーをつくるのに用いられる焼酎甲類は、ホワイトリカーとうたわれていることが多い。焼酎、特に甲類の落ち込みが激しかった昭和四〇年代の初め、その失地回復のために業界で考え出された呼称である。昭和四六年、酒団法によっても認められ、焼酎甲類をホワイトリカー(1)、焼酎乙類を本格焼酎またはホワイトリカー(2)と表示してもよいことになったが、乙類はもっぱら本格焼酎と表示されるので、ホワイトリカーといえばほとんどの場合焼酎甲類のことを指す。
江部康二
ハチ公さんから、糖蜜と焼酎に関して、コメント・質問をいただきました。
「10/08/26 ハチ公
焼酎
いつもお疲れ様です。お忙しいところすみません。焼酎は蒸留酒なのでビールから転向しようとスーパーで手に取ったところ、原材料欄が『糖蜜』のみになってました。これは糖尿人には悪いのではないでしょうか。」
ハチ公さん。
私も糖蜜のことなにも知りませんでした。 (∵)?
それで糖蜜とはなにかをまず、ネットで調べてみました。
都合良く、日本酒造組合中央会のホームページに糖蜜のことが、簡潔に書いてありました。
糖蜜に関しては、ウィキペディアの解説はわかりにくかったです。
『日本酒造組合中央会
http://www.weblio.jp/content/%E7%B3%96%E8%9C%9C%E9%85%92
焼酎・泡盛用語集
糖蜜(とうみつ)
サトウキビから砂糖を製造するときにできる副産物。収穫したサトウキビを細かく破砕し、圧搾機でしぼると糖度15~17%の糖汁(糖水)が得られる。これを加熱し、沈殿槽に移し、沈殿物を除いた清澄液を濃縮、結晶させた後、遠心分蜜機へ送ると粗糖(原料糖)と糖蜜ができる。粗糖はさらに、洗糖、溶解、濃縮、結晶、分蜜を繰り返し、上白・中白・三温糖の精製糖をつくる。糖蜜は50~60%の糖分を含む黒褐色の液体で、焼酎甲類・ラム・調味料など、発酵工業の原料として非常に優れている。昭和三〇年代から四〇年代にかけて多用されたが、工場廃水の規制が厳しくなり、近年その使用量は減少している。』
簡単にいうと、流通している糖蜜は、サトウキビから砂糖(ショ糖)を取り出した後の、残り物の黒褐色の液体で、その中に50~60%の糖質が含まれています。そして焼酎甲類・ラム酒の原料として使用されているのですね。
焼酎甲類ですから、乙類焼酎(本格焼酎)とは違います。一般にホワイトリカーと呼ばれて、梅酒の原料などに使われるのが甲類焼酎です。*
原料が糖蜜で糖質たっぷりですが、蒸留されて甲類焼酎となると、もう糖質は含まれていません。ですので糖質制限食OK食材ではあります。
もっとも、今は安くて美味しい、本格焼酎がいろいろありますので、甲類焼酎を飲むよりは、そちらのほうがお奨めですね。 (^^)
*
日本酒造組合中央会
焼酎・泡盛用語集
ホワイトリカー(ほわいとりかー)
焼酎甲類の別称。特に家庭で梅酒などのホーム・リカーをつくるのに用いられる焼酎甲類は、ホワイトリカーとうたわれていることが多い。焼酎、特に甲類の落ち込みが激しかった昭和四〇年代の初め、その失地回復のために業界で考え出された呼称である。昭和四六年、酒団法によっても認められ、焼酎甲類をホワイトリカー(1)、焼酎乙類を本格焼酎またはホワイトリカー(2)と表示してもよいことになったが、乙類はもっぱら本格焼酎と表示されるので、ホワイトリカーといえばほとんどの場合焼酎甲類のことを指す。
江部康二
2010年08月27日 (金)
こんにちは。
今回は、もっちさんから、血糖値が高めなのにHbA1cが正常なのは何故?というコメント・質問をいただきました。
「10/08/26 もっち
糖質制限食のおかげです
江部先生
いつも先生のブログを拝見させて頂いております。
私は糖質制限食を実施して空腹時血糖値は126mg/dlから
調子のいい時は75mg/dl位まで改善致しました!!
HbA1cは5.2から4.7まで改善しました!!
糖質制限食のおかげだと、江部先生には本当に感謝しております。
ただ、私はお酒が大好きで糖質制限食OKの焼酎やウイスキーを毎日おいしくいただいています。
蒸留酒は糖質が含まれていないので、血糖値には全く影響を与えないのですが
ただ、、、お酒を飲むと、たまにですが糖質を過剰に摂取してしまうのです
アルコールによって自分の弱い部分出てしまって、我慢出来なくなってしまうのです。
アルコールは理性を失うというのは、本当ですね。。
まじめに糖質制限食を実践して、常に空腹時血糖値が75mg/dl~80mg/dlという
非常に優秀な状態をキープしていたのに、たった1回の誘惑に負け糖質(例えばポテトフライや
スナック菓子等)をたくさん食べてしまい、翌日の空腹時が145mg/dlだったりする時があって
自分の甘さに本当に深い自己嫌悪に陥ります。そんな日は仕事もプライベートも落ち込んでしまいます。
ただ、その後またまじめに糖質制限食を実践していると、空腹時血糖値は90mg/dlくらいまで
下がります・・・と、この繰り返しです。
こんな事をしていたら、どんなにまじめに糖質制限食を実践しても そのうち空腹時血糖値が100mg/dlを切らなくなってしまうのでは・・・と不安を感じております。
目標はどんな状況にあっても、意志を強くもって、糖質は1回の食事につき10gくらいまでに押さえたいと思います。
そうすれば食後高血糖のリスクは回避出来ますよね。
私は糖尿病と診断された時に空腹時の血糖値は126mg/dl ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dl、HbA1cは5.2でした。
私は空腹時の血糖値や食後の血糖値が高いのですが、HbA1cは5.2以上になった事は一度もないのです。どうしてHbA1cのみ正常値なのかが本当に不思議なのです。原因はどんな事が考えられますでしょうか?
一度、早朝空腹時IRI(インスリン)を測定したところ、2.2U/mlでした。
ただ、糖質制限食を非常にまじめにではないですが実践しておりますので、現在はもう少し数値は下がっているかもしれません。(希望としては下がっていて欲しいです)
脱線する事無く、糖質制限食が続けられれば、合併症の心配もないですし、健康で過ごせると思います。
今後も先生のブログや著書を励みに頑張って行きたいと思います。」
もっちさん。
「糖尿病と診断された時に、空腹時の血糖値は126mg/dl
ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dl、HbA1cは5.2でした。 」
診断基準に基づけば、
空腹時血糖値126mg/dl→ぎりぎりですが、糖尿病型
負荷後2時間血糖値200mg/dl→ぎりぎりですが、やはり糖尿病型
早朝空腹時IRI(インスリン)2.2U/ml→正常下限かやや低め
もっちさん、発症時には確かに糖尿病型です。しかし程度は軽くて、境界型にかぎりなく近いです。
一方現在は、
空腹時血糖値75mg/dl位、HbA1c4.7%
なら、正常です。糖質制限食を実践する限りは、正常人ですね。
75g経口ブドウ糖負荷試験というのは、液体のブドウ糖を75gという通常の食事ではありえないような、
過酷な血糖を上昇させやすい条件です。
従って、既に糖尿病という診断がついている人には、経口ブドウ糖負荷試験は、倫理的に実施すべきではないとされているくらいです。
「私は空腹時の血糖値や食後の血糖値が高いのですが、HbA1cは5.2以上になった事は一度もないのです。どうしてHbA1cのみ正常値なのかが本当に不思議なのです。原因はどんな事が考えられますでしょうか?」
HbA1cは過去、1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。空腹時も食後も含めての平均です。
HbA1c5.2%であれば
(5.2%-1.7)×30=105
平均血糖値は105mg/dlです。
ということは、1日24時間の中で、食後血糖値が高い時間帯は、かなり少なかったということになります。
75g経口ブドウ糖負荷試験という過酷な条件では、200mgという食後高血糖がありましたが、日常の食事ではそれほどまでは上昇していなかったと考えられます。
また、空腹時血糖値もいつも126mgではなく、もっと低いことが多かったと考えられます。
清く正しくより、美味しく楽しく糖質制限食ですので、あまりストイックに頑張らなくてもいいと思いますよ。
カロリー制限食で食後高血糖が日常的にあるのは、はっきりいって危険です。
しかし、たまに、羽目を外したくらいでは、膵臓のβ細胞は壊れませんのでご心配なく。
スーパー糖質制限食で、1回の糖質摂取量を10~20g、で、お酒も適量嗜みながら、長く続けることを目指してくださいね。 (^_^)
江部康二
今回は、もっちさんから、血糖値が高めなのにHbA1cが正常なのは何故?というコメント・質問をいただきました。
「10/08/26 もっち
糖質制限食のおかげです
江部先生
いつも先生のブログを拝見させて頂いております。
私は糖質制限食を実施して空腹時血糖値は126mg/dlから
調子のいい時は75mg/dl位まで改善致しました!!
HbA1cは5.2から4.7まで改善しました!!
糖質制限食のおかげだと、江部先生には本当に感謝しております。
ただ、私はお酒が大好きで糖質制限食OKの焼酎やウイスキーを毎日おいしくいただいています。
蒸留酒は糖質が含まれていないので、血糖値には全く影響を与えないのですが
ただ、、、お酒を飲むと、たまにですが糖質を過剰に摂取してしまうのです
アルコールによって自分の弱い部分出てしまって、我慢出来なくなってしまうのです。
アルコールは理性を失うというのは、本当ですね。。
まじめに糖質制限食を実践して、常に空腹時血糖値が75mg/dl~80mg/dlという
非常に優秀な状態をキープしていたのに、たった1回の誘惑に負け糖質(例えばポテトフライや
スナック菓子等)をたくさん食べてしまい、翌日の空腹時が145mg/dlだったりする時があって
自分の甘さに本当に深い自己嫌悪に陥ります。そんな日は仕事もプライベートも落ち込んでしまいます。
ただ、その後またまじめに糖質制限食を実践していると、空腹時血糖値は90mg/dlくらいまで
下がります・・・と、この繰り返しです。
こんな事をしていたら、どんなにまじめに糖質制限食を実践しても そのうち空腹時血糖値が100mg/dlを切らなくなってしまうのでは・・・と不安を感じております。
目標はどんな状況にあっても、意志を強くもって、糖質は1回の食事につき10gくらいまでに押さえたいと思います。
そうすれば食後高血糖のリスクは回避出来ますよね。
私は糖尿病と診断された時に空腹時の血糖値は126mg/dl ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dl、HbA1cは5.2でした。
私は空腹時の血糖値や食後の血糖値が高いのですが、HbA1cは5.2以上になった事は一度もないのです。どうしてHbA1cのみ正常値なのかが本当に不思議なのです。原因はどんな事が考えられますでしょうか?
一度、早朝空腹時IRI(インスリン)を測定したところ、2.2U/mlでした。
ただ、糖質制限食を非常にまじめにではないですが実践しておりますので、現在はもう少し数値は下がっているかもしれません。(希望としては下がっていて欲しいです)
脱線する事無く、糖質制限食が続けられれば、合併症の心配もないですし、健康で過ごせると思います。
今後も先生のブログや著書を励みに頑張って行きたいと思います。」
もっちさん。
「糖尿病と診断された時に、空腹時の血糖値は126mg/dl
ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dl、HbA1cは5.2でした。 」
診断基準に基づけば、
空腹時血糖値126mg/dl→ぎりぎりですが、糖尿病型
負荷後2時間血糖値200mg/dl→ぎりぎりですが、やはり糖尿病型
早朝空腹時IRI(インスリン)2.2U/ml→正常下限かやや低め
もっちさん、発症時には確かに糖尿病型です。しかし程度は軽くて、境界型にかぎりなく近いです。
一方現在は、
空腹時血糖値75mg/dl位、HbA1c4.7%
なら、正常です。糖質制限食を実践する限りは、正常人ですね。
75g経口ブドウ糖負荷試験というのは、液体のブドウ糖を75gという通常の食事ではありえないような、
過酷な血糖を上昇させやすい条件です。
従って、既に糖尿病という診断がついている人には、経口ブドウ糖負荷試験は、倫理的に実施すべきではないとされているくらいです。
「私は空腹時の血糖値や食後の血糖値が高いのですが、HbA1cは5.2以上になった事は一度もないのです。どうしてHbA1cのみ正常値なのかが本当に不思議なのです。原因はどんな事が考えられますでしょうか?」
HbA1cは過去、1~2ヶ月の平均血糖値の指標です。空腹時も食後も含めての平均です。
HbA1c5.2%であれば
(5.2%-1.7)×30=105
平均血糖値は105mg/dlです。
ということは、1日24時間の中で、食後血糖値が高い時間帯は、かなり少なかったということになります。
75g経口ブドウ糖負荷試験という過酷な条件では、200mgという食後高血糖がありましたが、日常の食事ではそれほどまでは上昇していなかったと考えられます。
また、空腹時血糖値もいつも126mgではなく、もっと低いことが多かったと考えられます。
清く正しくより、美味しく楽しく糖質制限食ですので、あまりストイックに頑張らなくてもいいと思いますよ。
カロリー制限食で食後高血糖が日常的にあるのは、はっきりいって危険です。
しかし、たまに、羽目を外したくらいでは、膵臓のβ細胞は壊れませんのでご心配なく。
スーパー糖質制限食で、1回の糖質摂取量を10~20g、で、お酒も適量嗜みながら、長く続けることを目指してくださいね。 (^_^)
江部康二
2010年08月26日 (木)
こんばんは。
HOMA-Rの正確性について、内科大学院生さんから、コメントいただきました。
「10/08/26 内科大学院生
ゆうりさんへ
ゆうりさん
こんにちは。
内科大学院生と申します。
HOMA-Rは糖尿病専門医がよく使う計算値ですが、絶対的な値ではなく、おおよその目安の値です。
特に空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は、正確性に欠き、1.6以下だっととしてもそれが正常(インスリン抵抗性なし)という解釈には直接つながりません。その理由を書くと、非常に難しくなるので割愛させていただきますが、HOMA-Rがどのような値なのかを簡単に説明させていただきますね。
江部先生がご指摘の通り、HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405>
という式で計算しますが、どういう値かを簡単に説明させていただくと、
まず空腹時の血糖値を120mg/dlと固定します。
このときのインスリン値が10であれば、
HOMA-Rは120×10÷405=2.96・・・となりますよね?
もしこのときのインスリン値が5であれば
HOMA-Rは120×5÷405=1.48・・・となります。
つまり血糖値120を保つのにインスリンはどれくらい必要かを示す値というわけです。
当然、インスリンが少ない量(この場合5)で血糖値を120に保てる方が、インスリンが作用しやすいということですから、インスリン抵抗性が少ないということになります。
ただし先ほど述べたように、この値は絶対的なものではありませんので・・・
ご参考になれば幸いです。
内科大学院生」
内科大学院生さん。
ご指摘ありがとうございます。
「HOMA-Rは空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は正確性にかける」
とガイドラインに書いてあるのをうっかり忘れていました。
助かりました。
HOMA-Rに関して、わかりやすい説明をありがとうございます。
江部康二
HOMA-Rの正確性について、内科大学院生さんから、コメントいただきました。
「10/08/26 内科大学院生
ゆうりさんへ
ゆうりさん
こんにちは。
内科大学院生と申します。
HOMA-Rは糖尿病専門医がよく使う計算値ですが、絶対的な値ではなく、おおよその目安の値です。
特に空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は、正確性に欠き、1.6以下だっととしてもそれが正常(インスリン抵抗性なし)という解釈には直接つながりません。その理由を書くと、非常に難しくなるので割愛させていただきますが、HOMA-Rがどのような値なのかを簡単に説明させていただきますね。
江部先生がご指摘の通り、HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405>
という式で計算しますが、どういう値かを簡単に説明させていただくと、
まず空腹時の血糖値を120mg/dlと固定します。
このときのインスリン値が10であれば、
HOMA-Rは120×10÷405=2.96・・・となりますよね?
もしこのときのインスリン値が5であれば
HOMA-Rは120×5÷405=1.48・・・となります。
つまり血糖値120を保つのにインスリンはどれくらい必要かを示す値というわけです。
当然、インスリンが少ない量(この場合5)で血糖値を120に保てる方が、インスリンが作用しやすいということですから、インスリン抵抗性が少ないということになります。
ただし先ほど述べたように、この値は絶対的なものではありませんので・・・
ご参考になれば幸いです。
内科大学院生」
内科大学院生さん。
ご指摘ありがとうございます。
「HOMA-Rは空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は正確性にかける」
とガイドラインに書いてあるのをうっかり忘れていました。
助かりました。
HOMA-Rに関して、わかりやすい説明をありがとうございます。
江部康二
2010年08月26日 (木)
こんばんは。
今回は、HOMA-β(インスリン分泌能)について、ゆうりさんから、コメント・質問をいただきました。
「10/08/26 ゆうり
インスリン分泌の記事大変参考になりました
江部先生おはようございます。
お忙しいところ申し訳ありません。
主治医にはインスリンは出ているので心配ないと言われたのですが、 早朝空腹時が高くずっと不思議に思っていました。
夫の数値です。
空腹時インスリン3.4(μu/ml)
空腹時血糖値149(mg/ml)
これを計算式に当てはめると、HOMA-Rは基準値なのですが、HOMA-βは14位です。
かなり低下していますよね。それで早朝空腹時が高いのですよね?
今後も糖質制限を自己責任で続けていきますが、HOMA-βは一度低下したものは改善出来ないのでしょうか?」
ゆうりさん。
早朝空腹時血糖値が149mg/dlなので、基礎分泌インスリンは、一応正常範囲に出てはいるのですが、やや不足気味と言えるでしょう。HOMA-βも、14(40~60)と低値です。
HOMA-β(インスリン分泌能)は、個人差はありますが、かなりの人で改善する可能性があります。
糖尿病を発症したということは、日本人の場合、その時点でインスリン分泌能が低下していることがほとんどです。
また、糖尿病のために、食後血糖値が180mg/dlを超えてくると、糖毒のため膵臓のβ細胞が障害されます。
糖毒が長引けば、β細胞は疲弊するだけでなく死滅していき、ますますインスリン分泌能は低下します。
スーパー糖質制限食で、血糖コントロールが良好となり、180mg/dlを食後も超えなくなると、糖毒が解除されて、膵臓のβ細胞への障害がなくなります。
また、スーパー糖質制限食ならインスリンを分泌する必要性もごく少量ですむので、β細胞がしっかり休養できます。
この二つの要因により、疲弊していたβ細胞が回復すれば、インスリン分泌能も改善します。そうすると、当然HOMA-βの数値も改善していきます。
しかし、既に死滅してしまったβ細胞は、回復しません。疲弊したβ細胞と死滅したβ細胞の割合により、回復の度合いも個人差がでてくるわけですね。
ちなみに、私のHOMA-βも正常には戻っていませんが、30%くらいは改善しました。
江部康二
今回は、HOMA-β(インスリン分泌能)について、ゆうりさんから、コメント・質問をいただきました。
「10/08/26 ゆうり
インスリン分泌の記事大変参考になりました
江部先生おはようございます。
お忙しいところ申し訳ありません。
主治医にはインスリンは出ているので心配ないと言われたのですが、 早朝空腹時が高くずっと不思議に思っていました。
夫の数値です。
空腹時インスリン3.4(μu/ml)
空腹時血糖値149(mg/ml)
これを計算式に当てはめると、HOMA-Rは基準値なのですが、HOMA-βは14位です。
かなり低下していますよね。それで早朝空腹時が高いのですよね?
今後も糖質制限を自己責任で続けていきますが、HOMA-βは一度低下したものは改善出来ないのでしょうか?」
ゆうりさん。
早朝空腹時血糖値が149mg/dlなので、基礎分泌インスリンは、一応正常範囲に出てはいるのですが、やや不足気味と言えるでしょう。HOMA-βも、14(40~60)と低値です。
HOMA-β(インスリン分泌能)は、個人差はありますが、かなりの人で改善する可能性があります。
糖尿病を発症したということは、日本人の場合、その時点でインスリン分泌能が低下していることがほとんどです。
また、糖尿病のために、食後血糖値が180mg/dlを超えてくると、糖毒のため膵臓のβ細胞が障害されます。
糖毒が長引けば、β細胞は疲弊するだけでなく死滅していき、ますますインスリン分泌能は低下します。
スーパー糖質制限食で、血糖コントロールが良好となり、180mg/dlを食後も超えなくなると、糖毒が解除されて、膵臓のβ細胞への障害がなくなります。
また、スーパー糖質制限食ならインスリンを分泌する必要性もごく少量ですむので、β細胞がしっかり休養できます。
この二つの要因により、疲弊していたβ細胞が回復すれば、インスリン分泌能も改善します。そうすると、当然HOMA-βの数値も改善していきます。
しかし、既に死滅してしまったβ細胞は、回復しません。疲弊したβ細胞と死滅したβ細胞の割合により、回復の度合いも個人差がでてくるわけですね。
ちなみに、私のHOMA-βも正常には戻っていませんが、30%くらいは改善しました。
江部康二
2010年08月25日 (水)
おはようございます。
今回は、Toshi さんから、インスリンそしてインスリン分泌能・インスリン抵抗性について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/23 Toshi
インスリン分泌についてのご質問
いつも先生のブログ&著書を読み参考にさせていただいております。
先日血液検査時に空腹時のインスリンを測定して下記のような結果が出ました。
空腹時インスリン4.7(μu/ml)
空腹時血糖値120(mg/ml)
この結果からHOMA-Rは1.4、HOMA-βは29.7となりインスリン抵抗性は正常化、インスリン分泌はまだまだ低下気味となりました。
10ヶ月前の入院時はインスリンが2.2、血糖値が480でしたのでかなり改善して、先生の糖質制限食のおかげと思っております
そこでHOMA-βについてご質問ですが、この値(インスリン分泌低下)をどのように認識したらよいのでしょうか?
インスリン追加分泌はブドウ糖検査で、基礎分泌は尿中ペプチド検査で分かると認識しているのですが、HOMA-βは基礎分泌なのか追加分泌なのか、または他の分泌に関する数字なのかいまいち理解出来ていません。
お忙しいとは思いますが、ご教授いただけると助かります。
P.S.先生の著書「主食を抜けば・・・」の文庫本化は考えていらっしゃいますか?いつでもどこでも読みたいのでハードカーバーはきついです。是非文庫本化をお願いします。」
Toshiさん。
本のご購入ありがとうございます。
また、糖質制限食実践による血糖値の改善も良かったですね。
文庫本化ですが、「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」現在、おかげさまでハードカバーが結構売れ続けている関係上、出版社がタイミングを計っているようです。
さて、HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405>
という式で計算します。
homeostasis model assessment insulin resistance→略して HOMA-R
HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。 1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
ToshiさんのHOMA-Rは1.4 なので、正常範囲ですね。
HOMA-βは残存した内因性インスリン分泌機能を推定する指数です。
空腹時血糖と空腹時のインスリン値をもとに、計算します。
homeostatic model assessment beta cell function→略してHOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63)>
という式で計算します。
正常値:40-60
早朝空腹時インスリン値(基礎分泌インスリン)をもとに計算しますので、HOMA-βは基本的に基礎分泌インスリンを反映しています。
ToshiさんのHOMA-βは29.7 ですので、やや低下していますね。
インスリン追加分泌第1相をみるのが、インスリン分泌指数です。
インスリン分泌指数: insulinogenic index→略してII
75gブドウ糖負荷試験で調べます。
II=<30分インスリン値-空腹時インスリン値>÷<30分血糖値-空腹時血糖値>
という式で計算します。
0.4以上あれば正常です。0.4未満は糖尿病型です。 0.4未満の場合、現在負荷試験が正常型や境界型でも将来糖尿病になりやすいとされています。
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプタイド(CPR)というものを調べます。**
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時CPRを測定することで、インスリンの基礎分泌能力があるていどわかります。
蓄尿して一日尿中のCPRを測定することは、一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
インスリンは、人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的に出ている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときに、その10~30倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
これは、食事における糖質の残りをカバーしています。即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。
2型糖尿人は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。
また、第二相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。
糖質制限食ならば、野菜分のごく少量の糖質だけなので、2型糖尿人においても、食後高血糖はほとんど生じません。追加分泌インスリンも、ごく少量ですみます。
**
C-ペプタイド(CPR)
C-ペプタイド(CPR)は、インスリン生合成の過程におけるプロインスリンの分解によって生じる副産物です。
インスリンとCPRの分泌動態には平行関係が存在します。
血中・尿中のCPR濃度を測定することにより、膵ランゲルハンス島β細胞機能、内因性インスリン分泌能を推測することができます。
江部康二
今回は、Toshi さんから、インスリンそしてインスリン分泌能・インスリン抵抗性について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/23 Toshi
インスリン分泌についてのご質問
いつも先生のブログ&著書を読み参考にさせていただいております。
先日血液検査時に空腹時のインスリンを測定して下記のような結果が出ました。
空腹時インスリン4.7(μu/ml)
空腹時血糖値120(mg/ml)
この結果からHOMA-Rは1.4、HOMA-βは29.7となりインスリン抵抗性は正常化、インスリン分泌はまだまだ低下気味となりました。
10ヶ月前の入院時はインスリンが2.2、血糖値が480でしたのでかなり改善して、先生の糖質制限食のおかげと思っております
そこでHOMA-βについてご質問ですが、この値(インスリン分泌低下)をどのように認識したらよいのでしょうか?
インスリン追加分泌はブドウ糖検査で、基礎分泌は尿中ペプチド検査で分かると認識しているのですが、HOMA-βは基礎分泌なのか追加分泌なのか、または他の分泌に関する数字なのかいまいち理解出来ていません。
お忙しいとは思いますが、ご教授いただけると助かります。
P.S.先生の著書「主食を抜けば・・・」の文庫本化は考えていらっしゃいますか?いつでもどこでも読みたいのでハードカーバーはきついです。是非文庫本化をお願いします。」
Toshiさん。
本のご購入ありがとうございます。
また、糖質制限食実践による血糖値の改善も良かったですね。
文庫本化ですが、「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」現在、おかげさまでハードカバーが結構売れ続けている関係上、出版社がタイミングを計っているようです。
さて、HOMA-Rとはインスリン抵抗指数のことです。
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405>
という式で計算します。
homeostasis model assessment insulin resistance→略して HOMA-R
HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。 1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
ToshiさんのHOMA-Rは1.4 なので、正常範囲ですね。
HOMA-βは残存した内因性インスリン分泌機能を推定する指数です。
空腹時血糖と空腹時のインスリン値をもとに、計算します。
homeostatic model assessment beta cell function→略してHOMA-β
<HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63)>
という式で計算します。
正常値:40-60
早朝空腹時インスリン値(基礎分泌インスリン)をもとに計算しますので、HOMA-βは基本的に基礎分泌インスリンを反映しています。
ToshiさんのHOMA-βは29.7 ですので、やや低下していますね。
インスリン追加分泌第1相をみるのが、インスリン分泌指数です。
インスリン分泌指数: insulinogenic index→略してII
75gブドウ糖負荷試験で調べます。
II=<30分インスリン値-空腹時インスリン値>÷<30分血糖値-空腹時血糖値>
という式で計算します。
0.4以上あれば正常です。0.4未満は糖尿病型です。 0.4未満の場合、現在負荷試験が正常型や境界型でも将来糖尿病になりやすいとされています。
通常は、血液中のインスリン(IRI)そのものを測定しますが、インスリン注射中の糖尿人は、C-ペプタイド(CPR)というものを調べます。**
IRIの測定は、注射したインスリンの影響を受けますので不正確になりますが、CPRの方は、外から注射したインスリンとは無関係の、内因性インスリンの分泌状態を示しています。
早朝空腹時CPRを測定することで、インスリンの基礎分泌能力があるていどわかります。
蓄尿して一日尿中のCPRを測定することは、一日の内因性インスリン分泌総量(基礎分泌+追加分泌)の指標となります。
インスリンは、人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。
24時間少量持続的に出ている基礎分泌のインスリンと、糖質を摂取して食後血糖値が上昇したときに、その10~30倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。
この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。
その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれる持続するインスリン分泌を行います。
これは、食事における糖質の残りをカバーしています。即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。
2型糖尿人は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。
また、第二相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。
糖質制限食ならば、野菜分のごく少量の糖質だけなので、2型糖尿人においても、食後高血糖はほとんど生じません。追加分泌インスリンも、ごく少量ですみます。
**
C-ペプタイド(CPR)
C-ペプタイド(CPR)は、インスリン生合成の過程におけるプロインスリンの分解によって生じる副産物です。
インスリンとCPRの分泌動態には平行関係が存在します。
血中・尿中のCPR濃度を測定することにより、膵ランゲルハンス島β細胞機能、内因性インスリン分泌能を推測することができます。
江部康二
2010年08月24日 (火)
こんにちは。
2010年10月31日(日)
リボーン・シンポジウム特別企画
とことん語る糖質制限食〜『満腹ダイエット』で今日から健常人
のご案内です。
dancyu(ダンチュウ)』編集長、町田成一さんをゲストに迎えて、おおいに美味しく楽しく語り合おうと思っています。
是非、皆さんのご参加をお待ちしております。
江部康二
以下は、NPO法人糖質制限食ネット・リボーンの事務局、曽我部ゆかりさんからのお知らせです。
☆★☆★☆
ドクター江部のブログ読者の皆様へ
前略 暦の上では秋を迎えましたが、衰えることのない猛暑が続いております。いかがお過ごしでしょうか。
リボーン・シンポジウム特別企画のお知らせです。
今回は、ゲストに『dancyu(ダンチュウ)』編集長の町田成一氏を迎え、楽しくワイワイ居酒屋での会話風に、糖質制限食を語りあう企画となります。
もちろん楽しいだけではありません。今日からできる満腹ダイエットの醍醐味を知り、症状改善に役立ててくださいね。
今回は、特別企画のため、参加費の事前振込をしていただくことにしました。詳細をご覧ください。ご協力よろしくお願いいたします。リボーン曽我部ゆかり
リボーン・シンポジウム特別企画
とことん語る糖質制限食〜『満腹ダイエット』で今日から健常人
■開催日時 2010年10月31日(日)
ゲスト講師 町田成一(『dancyu(ダンチュウ)』編集長)
パネリスト 江部康二(内科医 高雄病院理事長 リボーン理事長)
大柳珠美(管理栄養士 リボーン理事)
昨年末に発売され話題となった『dancyu』特別編集『満腹ダイエット』。この7月に発売となった第2弾『dancyu』特別編集『酒呑みダイエット』も話題を呼んでいます。監修は、リボーン理事長の江部康二と同じく理事の大柳珠美の二人。誌面で公開された編集長の町田成一氏との居酒屋対談が話題となりました。それを受けて、リボーンでは、町田編集長をゲストにお招きし、居酒屋鼎談風のシンポジウムを企画しました。医学界だけでなく、グルメ界においても旬な風となった「糖質制限食」。糖尿病の方も、ダイエットや美容目的の方も、楽しくおいしいダイエットを目指しましょう。皆様のご参加をお待ちしております。(『dancyu』は、おいしい食べ歩き、料理づくり、素材探しなど、食を楽しみたい人のための月刊誌です)
■会場 なかのサンプラザ研修室10(7階)
■アクセス JP中野駅北口下車1分。
サンプラザ正面エントランスから入り左手のエレベータで7階へ
■プログラム 13時開場
13時30分〜14時00分 基調講演 江部康二
14時00分〜14時15分 休憩
14時15分〜16時00分 鼎談 ゲスト 町田成一
パネリスト 大柳珠美 司会 江部康二
16時00分〜16時10分 休憩
16時10分〜16時30分 質疑応答&試食会
■参加費 リボーン会員 2800円 リボーン会員ペア 4400円
一 般 3500円 一般ペア 5600円
※ペア券は、ご家族に限り適用とさせていただきますのでご了承ください。
■定員 105名(リボーン会員優先となります)
■申込 事前に郵便振替でご送金ください。当日受付は致しません。
申込〆切 10月21日
入場券は発行しませんので、当日郵便振替の伝票をご持参ください。
郵便振替 口座番号 00110−9−393366
口座名称 リボーン
■主催 NPO法人糖質制限食ネット・リボーン
■問い合わせ リボーン事務局 電話03−3388−5428 e-mail reborn@big.or.jp
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
曽我部 ゆかり
reborn@big.or.jp
NPO法人糖質制限食ネット・リボーン
事務局 中野区新井4−4−2−4B
03−3388−5428
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
2010年10月31日(日)
リボーン・シンポジウム特別企画
とことん語る糖質制限食〜『満腹ダイエット』で今日から健常人
のご案内です。
dancyu(ダンチュウ)』編集長、町田成一さんをゲストに迎えて、おおいに美味しく楽しく語り合おうと思っています。
是非、皆さんのご参加をお待ちしております。
江部康二
以下は、NPO法人糖質制限食ネット・リボーンの事務局、曽我部ゆかりさんからのお知らせです。
☆★☆★☆
ドクター江部のブログ読者の皆様へ
前略 暦の上では秋を迎えましたが、衰えることのない猛暑が続いております。いかがお過ごしでしょうか。
リボーン・シンポジウム特別企画のお知らせです。
今回は、ゲストに『dancyu(ダンチュウ)』編集長の町田成一氏を迎え、楽しくワイワイ居酒屋での会話風に、糖質制限食を語りあう企画となります。
もちろん楽しいだけではありません。今日からできる満腹ダイエットの醍醐味を知り、症状改善に役立ててくださいね。
今回は、特別企画のため、参加費の事前振込をしていただくことにしました。詳細をご覧ください。ご協力よろしくお願いいたします。リボーン曽我部ゆかり
リボーン・シンポジウム特別企画
とことん語る糖質制限食〜『満腹ダイエット』で今日から健常人
■開催日時 2010年10月31日(日)
ゲスト講師 町田成一(『dancyu(ダンチュウ)』編集長)
パネリスト 江部康二(内科医 高雄病院理事長 リボーン理事長)
大柳珠美(管理栄養士 リボーン理事)
昨年末に発売され話題となった『dancyu』特別編集『満腹ダイエット』。この7月に発売となった第2弾『dancyu』特別編集『酒呑みダイエット』も話題を呼んでいます。監修は、リボーン理事長の江部康二と同じく理事の大柳珠美の二人。誌面で公開された編集長の町田成一氏との居酒屋対談が話題となりました。それを受けて、リボーンでは、町田編集長をゲストにお招きし、居酒屋鼎談風のシンポジウムを企画しました。医学界だけでなく、グルメ界においても旬な風となった「糖質制限食」。糖尿病の方も、ダイエットや美容目的の方も、楽しくおいしいダイエットを目指しましょう。皆様のご参加をお待ちしております。(『dancyu』は、おいしい食べ歩き、料理づくり、素材探しなど、食を楽しみたい人のための月刊誌です)
■会場 なかのサンプラザ研修室10(7階)
■アクセス JP中野駅北口下車1分。
サンプラザ正面エントランスから入り左手のエレベータで7階へ
■プログラム 13時開場
13時30分〜14時00分 基調講演 江部康二
14時00分〜14時15分 休憩
14時15分〜16時00分 鼎談 ゲスト 町田成一
パネリスト 大柳珠美 司会 江部康二
16時00分〜16時10分 休憩
16時10分〜16時30分 質疑応答&試食会
■参加費 リボーン会員 2800円 リボーン会員ペア 4400円
一 般 3500円 一般ペア 5600円
※ペア券は、ご家族に限り適用とさせていただきますのでご了承ください。
■定員 105名(リボーン会員優先となります)
■申込 事前に郵便振替でご送金ください。当日受付は致しません。
申込〆切 10月21日
入場券は発行しませんので、当日郵便振替の伝票をご持参ください。
郵便振替 口座番号 00110−9−393366
口座名称 リボーン
■主催 NPO法人糖質制限食ネット・リボーン
■問い合わせ リボーン事務局 電話03−3388−5428 e-mail reborn@big.or.jp
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曽我部 ゆかり
reborn@big.or.jp
NPO法人糖質制限食ネット・リボーン
事務局 中野区新井4−4−2−4B
03−3388−5428
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2010年08月24日 (火)
おはようございます。
今回も、興味深いコメントをマー坊さんからいただきました。
23年間の尋常性乾癬が、糖質制限食実践で8~9割方、改善したそうです。
「10/08/23 マー坊
タイトルなし
はじめまして!いつもブログみてます。23年間尋常かんせんで悩まされたた者です。今年2月から糖質制限してるものです。現在10キロやせて、体の80%がかんせんでしたが今は10%以下です。今思えば社会人になってビールや牛肉を食べだした頃と一致します。
先生の考えを100%支持いたします。かんせん学会とかにも出てカツを入れて頂きたいと思います。」
マー坊さん。
貴重な情報ありがとうございます。
また23年間のしんどい皮膚症状が大幅に改善、良かったですね。体重減少もよかったです。
尋常性乾癬と糖質制限食に関して、さわさんの体験談を本ブログにコメントいただいて、記事にさせていただきました。(2009年08月27日 (木)、2010年08月21日 (土) のブログ)
イヌイットが生肉・生魚が主食の伝統的食生活を堅持しているころは、尋常性乾癬がほとんどなかったという歴史的事実にも惹かれました。
その後、高雄病院や江部診療所でも尋常性乾癬の患者さんに、糖質制限食を勧めてみました。
きちんとスーパー糖質制限食を実践された患者さんは、確実に皮膚症状が改善しておられます。
一方、なかなかスーパー糖質制限食が実践できない患者さんも多く、この場合は、当然皮膚症状の改善もありません。
尋常性乾癬とビールの関係については、
2010年08月19日 (木)のブログ、「尋常性乾癬とビールと糖質制限食
」をご参照いただけば幸いです。
尋常性乾癬と牛肉・牛脂の関係は、さわさんの場合は明らかですが、他の人にも共通なのか、現在検討中です。
まあ、伝統的食生活のころのイヌイットも、当然牛肉は食べていませんが・・・。
江部康二
今回も、興味深いコメントをマー坊さんからいただきました。
23年間の尋常性乾癬が、糖質制限食実践で8~9割方、改善したそうです。
「10/08/23 マー坊
タイトルなし
はじめまして!いつもブログみてます。23年間尋常かんせんで悩まされたた者です。今年2月から糖質制限してるものです。現在10キロやせて、体の80%がかんせんでしたが今は10%以下です。今思えば社会人になってビールや牛肉を食べだした頃と一致します。
先生の考えを100%支持いたします。かんせん学会とかにも出てカツを入れて頂きたいと思います。」
マー坊さん。
貴重な情報ありがとうございます。
また23年間のしんどい皮膚症状が大幅に改善、良かったですね。体重減少もよかったです。
尋常性乾癬と糖質制限食に関して、さわさんの体験談を本ブログにコメントいただいて、記事にさせていただきました。(2009年08月27日 (木)、2010年08月21日 (土) のブログ)
イヌイットが生肉・生魚が主食の伝統的食生活を堅持しているころは、尋常性乾癬がほとんどなかったという歴史的事実にも惹かれました。
その後、高雄病院や江部診療所でも尋常性乾癬の患者さんに、糖質制限食を勧めてみました。
きちんとスーパー糖質制限食を実践された患者さんは、確実に皮膚症状が改善しておられます。
一方、なかなかスーパー糖質制限食が実践できない患者さんも多く、この場合は、当然皮膚症状の改善もありません。
尋常性乾癬とビールの関係については、
2010年08月19日 (木)のブログ、「尋常性乾癬とビールと糖質制限食
」をご参照いただけば幸いです。
尋常性乾癬と牛肉・牛脂の関係は、さわさんの場合は明らかですが、他の人にも共通なのか、現在検討中です。
まあ、伝統的食生活のころのイヌイットも、当然牛肉は食べていませんが・・・。
江部康二
2010年08月23日 (月)
こんばんは。
2010年8月28日(土)、29日(土)に、京都薬科大学で、第27回和漢医薬学会学術大会が開催されます。
今回の大会では、「和漢薬と生活習慣を科学する」を主題として、特別講演3題、シンポジウム4題、ランチョンセミナーと一般講演(ポスター)の発表があります。
和漢医薬学会ですから、和漢生薬や漢方エキス薬を含む、天然医薬品領域の科学的な基礎研究や臨床応用の発表が行われます。
特に、今回は糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に対する、生薬や漢方薬の役割を考えるため、基礎と臨床の両面からのシンポジウムもあります。
生活習慣病、糖尿病関連ということで、私も特別講演「糖質制限食による糖尿病治療」をさせて頂くこととなりました。
伝統ある和漢医薬学会に呼んで頂き、特別講演ができることは嬉しい限りです。糖質制限食の医学界への認知度が、また一歩前進したという思いです。
医師、薬剤師の学会ですので、残念ながら一般の人は参加できません。
ブログ読者の、医師、薬剤師の皆さん、お時間がありましたら是非ご参加ください。
☆☆☆
第27回和漢医薬学会学術大会・特別講演
2010年8月29日(日) 14:30~15:30 A会場 京都薬科大学
座長:西田 愼二(大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座)
「糖質制限食による糖尿病治療」
演者:江部 康二(高雄病院)
京都薬科大学
〒607-8414
京都府京都市山科区御陵中内町5
☆☆☆
「糖質制限食による糖尿病治療」抄録
Life With Diabetes(2004.ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わるが、蛋白質・脂質は血糖に変わらない。糖質は摂取直後から急峻に血糖値を上昇させ2時間以内にほとんどすべてが吸収される。一方蛋白質・脂質は血糖値に影響を与えない。これらは、含有エネルギーとは無関係な、3大栄養素の生理学的特質である。現在グルコーススパイクが、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されている。そしてグルコーススパイクを生じるのは3大栄養素のなかで糖質だけである。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、グルコーススパイクを防ぐというものである。糖質制限食なら薬に頼ることなく即座に良好な血糖コントロールが可能である。一方、カロリー計算に基づいて食後血糖値をコントロールすることは理論的に不可能である。
糖質制限食実践中は常に脂肪が燃え、追加分泌インスリン(肥満ホルモン)はごく少量ですみ、尿中・呼気中にケトン体が排泄され、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われる。この4つの利点で、脂肪制限食より糖質制限食のほうが体重減少効果がある。糖質摂取によりこの4つの利点はは全て失われる。
脳はブドウ糖だけでなくケトン体をエネルギー源として利用する。日常生活では心筋・骨格筋など多くの体細胞は脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としているのに対して、脳・網膜・生殖腺胚上皮・赤血球など特殊な細胞だけがブドウ糖を主エネルギー源としている。赤血球はミトコンドリアを持っていないのでブドウ糖だけが唯一のエネルギー源である。しかし脳を含めてそれ以外のミトコンドリアを内部に有す細胞は全て、脂肪酸・ケトン体をエネルギー源にできる。
人類の食生活は食前・食後血糖値の変化で「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができる。生命体の健康には恒常性を保つことが重要である。人類の血糖値の恒常性は399万年間保たれていたが、その変動幅は農耕開始後3800年間2倍程度となった。精製炭水化物摂取が始まったここ200年はその幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるを得なくなり、年余にわたり膵臓が疲弊すれば糖尿病を発症する。生活習慣病の元凶は精製炭水化物過剰摂取によるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌と考えられる。
江部康二
2010年8月28日(土)、29日(土)に、京都薬科大学で、第27回和漢医薬学会学術大会が開催されます。
今回の大会では、「和漢薬と生活習慣を科学する」を主題として、特別講演3題、シンポジウム4題、ランチョンセミナーと一般講演(ポスター)の発表があります。
和漢医薬学会ですから、和漢生薬や漢方エキス薬を含む、天然医薬品領域の科学的な基礎研究や臨床応用の発表が行われます。
特に、今回は糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に対する、生薬や漢方薬の役割を考えるため、基礎と臨床の両面からのシンポジウムもあります。
生活習慣病、糖尿病関連ということで、私も特別講演「糖質制限食による糖尿病治療」をさせて頂くこととなりました。
伝統ある和漢医薬学会に呼んで頂き、特別講演ができることは嬉しい限りです。糖質制限食の医学界への認知度が、また一歩前進したという思いです。
医師、薬剤師の学会ですので、残念ながら一般の人は参加できません。
ブログ読者の、医師、薬剤師の皆さん、お時間がありましたら是非ご参加ください。
☆☆☆
第27回和漢医薬学会学術大会・特別講演
2010年8月29日(日) 14:30~15:30 A会場 京都薬科大学
座長:西田 愼二(大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座)
「糖質制限食による糖尿病治療」
演者:江部 康二(高雄病院)
京都薬科大学
〒607-8414
京都府京都市山科区御陵中内町5
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「糖質制限食による糖尿病治療」抄録
Life With Diabetes(2004.ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わるが、蛋白質・脂質は血糖に変わらない。糖質は摂取直後から急峻に血糖値を上昇させ2時間以内にほとんどすべてが吸収される。一方蛋白質・脂質は血糖値に影響を与えない。これらは、含有エネルギーとは無関係な、3大栄養素の生理学的特質である。現在グルコーススパイクが、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されている。そしてグルコーススパイクを生じるのは3大栄養素のなかで糖質だけである。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、グルコーススパイクを防ぐというものである。糖質制限食なら薬に頼ることなく即座に良好な血糖コントロールが可能である。一方、カロリー計算に基づいて食後血糖値をコントロールすることは理論的に不可能である。
糖質制限食実践中は常に脂肪が燃え、追加分泌インスリン(肥満ホルモン)はごく少量ですみ、尿中・呼気中にケトン体が排泄され、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われる。この4つの利点で、脂肪制限食より糖質制限食のほうが体重減少効果がある。糖質摂取によりこの4つの利点はは全て失われる。
脳はブドウ糖だけでなくケトン体をエネルギー源として利用する。日常生活では心筋・骨格筋など多くの体細胞は脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としているのに対して、脳・網膜・生殖腺胚上皮・赤血球など特殊な細胞だけがブドウ糖を主エネルギー源としている。赤血球はミトコンドリアを持っていないのでブドウ糖だけが唯一のエネルギー源である。しかし脳を含めてそれ以外のミトコンドリアを内部に有す細胞は全て、脂肪酸・ケトン体をエネルギー源にできる。
人類の食生活は食前・食後血糖値の変化で「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができる。生命体の健康には恒常性を保つことが重要である。人類の血糖値の恒常性は399万年間保たれていたが、その変動幅は農耕開始後3800年間2倍程度となった。精製炭水化物摂取が始まったここ200年はその幅は3倍となり、インスリンを大量・頻回に分泌せざるを得なくなり、年余にわたり膵臓が疲弊すれば糖尿病を発症する。生活習慣病の元凶は精製炭水化物過剰摂取によるグルコースミニスパイクとインスリン過剰分泌と考えられる。
江部康二
2010年08月22日 (日)
【糖質制限食とは】
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは、含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」という記載がありましたが、2004年版では削除されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が、大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を、約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。 なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかに、リアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということが、おわかりいただけたと思います。
なお、糖質制限食はカロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服や、インスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので、必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はほとんどないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
「やせる食べ方」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」
(以上東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
dancyu プレジデントムック 「酒飲みダイエット 」
(プレジデント社)
などを参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
【糖質制限食コントロール・教育入院のご案内・保険適応】
お問い合わせは高雄病院
http://www.takao-hospital.jp/
住所:京都市右京区梅ヶ畑畑町3
電話:075-871-0245
ベットが空くまでお待ち頂くこともありますがご了承下さい。
【糖質制限食外来治療のご案内・予約制・保険適応】
高雄病院 電話:075-871-0245
京都市右京区梅ヶ畑畑町3
高雄病院京都駅前診療所 電話:075-352-5050
京都市下京区七条通り烏丸東入ル(50M)北側 ネオフィス 七条烏丸4F
http://www.takao-hospital.net/
江部診療所 電話:075-712-8133
京都市左京区下鴨高木町6 アトリエ・フォー 2F
【糖質制限食 質問、記事、本に関するお知らせ・お願い】
ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。
糖質制限食に関する質問についてですが、実際に高雄病院や江部診療所に来院されて診察した患者さんに対しては、医師としての責任・債務がありますので、個別に説明もしっかりさせて頂いていますし、フォローもしております。
一方、ブログ読者の皆さんの質問に関しては、糖質制限食に詳しい医師として、ボランティアで回答させていただいています。
診察もしておりませんしフォローもできませんので、責任もとれません。私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。
また、ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。
従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、自己責任でよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m
そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。
普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)
掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。質問によっては、コメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。
一方、コメント・質問がかなり増えてきていますので、なかなか即、お答えすることが困難となってきています。
できるだけ全ての質問に本文かコメントでお答えするよう努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m
それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、コメント欄にお答えするか、一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、よろしくお願い申し上げます。
江部康二
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わりますが、タンパク質・脂質は血糖に変わりません。
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。
これらは、含有エネルギーとは無関係な三大栄養素の生理学的特質です。
1997年版のLife With Diabetes(ADA)では、「タンパク質は約半分が血糖に変わり、脂質は10%未満が血糖に変わる」という記載がありましたが、2004年版では削除されています。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在糖尿病において、食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が、大きな問題として注目されています。
食後高血糖が、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは、三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病患者の血糖値を、約3mg上昇させます。
炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。 なお、1gの糖質が体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。
簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかに、リアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということが、おわかりいただけたと思います。
なお、糖質制限食はカロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。
このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服や、インスリン注射をしておられる糖尿人は、低血糖の心配がありますので、必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方、薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はほとんどないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
「やせる食べ方」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「血糖値を上げない!健康おつまみ109」
(以上東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
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(プレジデント社)
などを参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合、肝硬変の場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。
糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。
肝硬変では、糖新生能力が低下しているため適応となりません。
なお、機能性低血糖症の場合、炭水化物依存症レベルが重症のとき、糖新生能力が低下していることがあり、まれに低血糖症を生じますので注意が必要です。
また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら中止していただけば幸いです。
【糖質制限食コントロール・教育入院のご案内・保険適応】
お問い合わせは高雄病院
http://www.takao-hospital.jp/
住所:京都市右京区梅ヶ畑畑町3
電話:075-871-0245
ベットが空くまでお待ち頂くこともありますがご了承下さい。
【糖質制限食外来治療のご案内・予約制・保険適応】
高雄病院 電話:075-871-0245
京都市右京区梅ヶ畑畑町3
高雄病院京都駅前診療所 電話:075-352-5050
京都市下京区七条通り烏丸東入ル(50M)北側 ネオフィス 七条烏丸4F
http://www.takao-hospital.net/
江部診療所 電話:075-712-8133
京都市左京区下鴨高木町6 アトリエ・フォー 2F
【糖質制限食 質問、記事、本に関するお知らせ・お願い】
ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。
糖質制限食に関する質問についてですが、実際に高雄病院や江部診療所に来院されて診察した患者さんに対しては、医師としての責任・債務がありますので、個別に説明もしっかりさせて頂いていますし、フォローもしております。
一方、ブログ読者の皆さんの質問に関しては、糖質制限食に詳しい医師として、ボランティアで回答させていただいています。
診察もしておりませんしフォローもできませんので、責任もとれません。私の回答は、あくまでも一般論としての参考意見とお考え頂けば幸いです。
また、ブログ記事や本に関しても同様に、糖質制限食に関する一般論としての参考意見とお考え下さい。
従いまして、読者の皆さんが私の参考意見を読まれて、どのように利用されるかは、自己責任でよろしくお願い申し上げます。m(_ _)m
そして読者の皆さんからもご意見いただきましたが、普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、ご自分の主治医にご相談頂けば助かります。
普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)
掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。質問によっては、コメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。
一方、コメント・質問がかなり増えてきていますので、なかなか即、お答えすることが困難となってきています。
できるだけ全ての質問に本文かコメントでお答えするよう努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m
それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、コメント欄にお答えするか、一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、よろしくお願い申し上げます。
江部康二
2010年08月22日 (日)
こんばんは。
先ほどテニスから帰ってきました。
今日はたまたま調子が良くて、全勝でした。 (^^)v
さて、さわさんから補足のコメントをいただきました。
さわさん、ありがとうございます。
江部康二
「10/08/22 さわ
補足です。
江部先生、今回のコメントを記事にして頂き、ありがとうございました。
「オレイン酸がメインである=マヨネーズ」
が、いつの間にか勝手に
「オレイン酸がメインである=豚肉」
とすりかわってしまっていたようです。
申し訳ありませんでした。
ちなみに、少量の天然のトランス脂肪酸が含まれているはずのチーズ、バターは制限なしで毎日食べていました。
マヨネーズやオリーブオイルも同様です。
牛脂の危険性(あくまでも自分にとってですが)は10年前から気がついていましたが、今回のような正確な実験ができたのは初めてなので、自分自身でも驚いています。
高雄病院や江部診療所の尋常性乾癬の患者さんでも、実験してくれる人がいれば、とても興味深い事実が新たにわかることだと思います。
世の中の尋常性乾癬の患者で糖質制限をしている方はあまりいないようですので。」
先ほどテニスから帰ってきました。
今日はたまたま調子が良くて、全勝でした。 (^^)v
さて、さわさんから補足のコメントをいただきました。
さわさん、ありがとうございます。
江部康二
「10/08/22 さわ
補足です。
江部先生、今回のコメントを記事にして頂き、ありがとうございました。
「オレイン酸がメインである=マヨネーズ」
が、いつの間にか勝手に
「オレイン酸がメインである=豚肉」
とすりかわってしまっていたようです。
申し訳ありませんでした。
ちなみに、少量の天然のトランス脂肪酸が含まれているはずのチーズ、バターは制限なしで毎日食べていました。
マヨネーズやオリーブオイルも同様です。
牛脂の危険性(あくまでも自分にとってですが)は10年前から気がついていましたが、今回のような正確な実験ができたのは初めてなので、自分自身でも驚いています。
高雄病院や江部診療所の尋常性乾癬の患者さんでも、実験してくれる人がいれば、とても興味深い事実が新たにわかることだと思います。
世の中の尋常性乾癬の患者で糖質制限をしている方はあまりいないようですので。」
2010年08月21日 (土)
こんにちは。
糖質制限食で尋常性乾癬が改善されたさわさんから、最新のコメントをいただきました。
「10/08/20 さわ
尋常性乾癬について
江部先生こんばんは。
ご無沙汰しております。
今日は近況報告をさせてください。
前回コメントした時は尋常性乾癬は99%完治していたため、それから自分なりにいろいろと実験をしてみました。
経過
2008年3月~2010年3月
ほぼ99%の乾癬が消滅)
この時点では自分の乾癬の原因は糖質と牛脂、豚脂だと思っていました。
2010年4月~5月
意識して、牛肉を多く食べる。
ひざから下の約30%に乾癬が発生。
糖質制限をしているため、患部の広がり方は非常に緩やかでしたが、着実に広がっていく。
2010年6月
牛肉を一切食べずに過ごす。
脂たっぷりの豚肉は毎日欠かさず食べる。
1ヶ月かけて徐々に患部が消滅していく。
2010年7~8月
6月に続き、脂たっぷりの豚肉は毎日欠かさず食べる。
7月初旬に100%患部が消滅する。(発症後22年間で初めての経験です。)
ということで、自分なりの結論が出ました。
自分の乾癬にとっての最も重要な原因は「糖質」であり「牛脂(天然のトランス脂肪酸)」はその触媒である。
オレイン酸がメインである豚脂は全く影響なしです。
乾癬の原因は様々ですし、「糖質」や「牛脂」を避けても完治しない方もいらっしゃるでしょうが、
自分的の場合は今回の実験で22年かけて初めて100%の克服ができたわけですし、参考になる方も多数いらっしゃるかと思いコメントさせて頂きました。
余談ですが
毎日炭水化物と牛脂の大量摂取で1ヶ月以内に全身に乾癬を広がらせる自信もあります。
そんなことは決してしませんが・・・
江部先生のブログのカテゴリ「体に良いアブラとは」が凄く参考になりました。
ありがとうございました。」
さわさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
22年間の尋常性乾癬の100%治癒、おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
尋常性乾癬は、医学的には極めて難治性の疾患です。さわさんも20年間以上つきあって来られたのですから、まさに難治であったわけです。
五訂日本食品標準成分表によると
牛ロース100g中に、脂肪が37.4gで、その内オレイン酸が15.4gです。
豚ロース100g中に、脂肪が14.6gで、その内オレイン酸が5.94gです。
ですので、牛脂と豚脂の成分のオレイン酸は、比率的にほとんど差はないようです。
天然のトランス脂肪酸は、反芻動物(牛・羊・山羊など)の肉やバターに含まれています。*
一方、豚は反芻動物ではないので、豚肉にはトランス脂肪酸は含まれていないと思います。
『自分の乾癬にとっての最も重要な原因は「糖質」であり「牛脂(天然のトランス脂肪酸)」はその触媒である。』
さわさんのご指摘どおりと私も思います。
牛脂と豚脂の成分の差で顕著なのは、トランス脂肪酸ありとなしの差です。他の脂肪酸の成分は、そんなに差はないと思います。
牛脂(天然のトランス脂肪酸)が、尋常性乾癬悪化の触媒となっているのが、さわさん固有の特徴なのか、はたまた皆に共通の現象なのか、とても興味深いです。
高雄病院や江部診療所の尋常性乾癬の患者さんで、糖質制限食でかなり改善した方が複数おられます。これらの患者さんにご協力いただいて、牛肉(牛脂)をやめていただいて、100%治癒にどの程度近づくか試してもらおうと思います。
*
牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸です。
江部康二
糖質制限食で尋常性乾癬が改善されたさわさんから、最新のコメントをいただきました。
「10/08/20 さわ
尋常性乾癬について
江部先生こんばんは。
ご無沙汰しております。
今日は近況報告をさせてください。
前回コメントした時は尋常性乾癬は99%完治していたため、それから自分なりにいろいろと実験をしてみました。
経過
2008年3月~2010年3月
ほぼ99%の乾癬が消滅)
この時点では自分の乾癬の原因は糖質と牛脂、豚脂だと思っていました。
2010年4月~5月
意識して、牛肉を多く食べる。
ひざから下の約30%に乾癬が発生。
糖質制限をしているため、患部の広がり方は非常に緩やかでしたが、着実に広がっていく。
2010年6月
牛肉を一切食べずに過ごす。
脂たっぷりの豚肉は毎日欠かさず食べる。
1ヶ月かけて徐々に患部が消滅していく。
2010年7~8月
6月に続き、脂たっぷりの豚肉は毎日欠かさず食べる。
7月初旬に100%患部が消滅する。(発症後22年間で初めての経験です。)
ということで、自分なりの結論が出ました。
自分の乾癬にとっての最も重要な原因は「糖質」であり「牛脂(天然のトランス脂肪酸)」はその触媒である。
オレイン酸がメインである豚脂は全く影響なしです。
乾癬の原因は様々ですし、「糖質」や「牛脂」を避けても完治しない方もいらっしゃるでしょうが、
自分的の場合は今回の実験で22年かけて初めて100%の克服ができたわけですし、参考になる方も多数いらっしゃるかと思いコメントさせて頂きました。
余談ですが
毎日炭水化物と牛脂の大量摂取で1ヶ月以内に全身に乾癬を広がらせる自信もあります。
そんなことは決してしませんが・・・
江部先生のブログのカテゴリ「体に良いアブラとは」が凄く参考になりました。
ありがとうございました。」
さわさん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
22年間の尋常性乾癬の100%治癒、おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
尋常性乾癬は、医学的には極めて難治性の疾患です。さわさんも20年間以上つきあって来られたのですから、まさに難治であったわけです。
五訂日本食品標準成分表によると
牛ロース100g中に、脂肪が37.4gで、その内オレイン酸が15.4gです。
豚ロース100g中に、脂肪が14.6gで、その内オレイン酸が5.94gです。
ですので、牛脂と豚脂の成分のオレイン酸は、比率的にほとんど差はないようです。
天然のトランス脂肪酸は、反芻動物(牛・羊・山羊など)の肉やバターに含まれています。*
一方、豚は反芻動物ではないので、豚肉にはトランス脂肪酸は含まれていないと思います。
『自分の乾癬にとっての最も重要な原因は「糖質」であり「牛脂(天然のトランス脂肪酸)」はその触媒である。』
さわさんのご指摘どおりと私も思います。
牛脂と豚脂の成分の差で顕著なのは、トランス脂肪酸ありとなしの差です。他の脂肪酸の成分は、そんなに差はないと思います。
牛脂(天然のトランス脂肪酸)が、尋常性乾癬悪化の触媒となっているのが、さわさん固有の特徴なのか、はたまた皆に共通の現象なのか、とても興味深いです。
高雄病院や江部診療所の尋常性乾癬の患者さんで、糖質制限食でかなり改善した方が複数おられます。これらの患者さんにご協力いただいて、牛肉(牛脂)をやめていただいて、100%治癒にどの程度近づくか試してもらおうと思います。
*
牛などの反芻動物の胃内に共生するバクテリアは、シス型の不飽和脂肪酸をトランス型に変換する特殊な酵素を持っています。このバクテリアが産生するトランス脂肪酸は主にバクセン酸です。
江部康二
2010年08月20日 (金)
こんにちは。
日本糖尿病・妊娠学会では、2009年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し、妊娠糖尿病の新診断基準を決定しました。新診断基準は、2010年7月1日から施行されました。
急なことだったので、いつから新診断基準に移行したのかよくわからずに、ブログ記事でも、内容が2転・3転して読者の皆さんにはご迷惑をおかけしました。
今回、新診断基準に移行する過程の全容がほぼ把握できましたので、報告いたします。
従来、妊娠糖尿病の診断基準は、各国ばらばらで、世界共通の診断基準は存在していませんでした。そのため、世界統一基準が求められていました。
今回、国際糖尿病・妊娠学会
[International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)]
が提唱した世界統一基準は、2009年に報告されたHAPO studyの結果に基づいています。
HAPO studyは、米国立衛生研究所(NIH)のイニシアティブのもとで、7年間にわたり9カ国15医療センターで、非糖尿病妊婦23316人に対して、妊娠24~32週に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、胎児の成長や分娩、産後のデータを前向き調査したものです。この研究には、香港とアジア系米国人も含まれています。
この結果、母親の血糖値の軽度の上昇でも、児のインスリン分泌や脂肪蓄積に影響を与えることが明らかとなりました。そのため、従来より広く妊娠糖尿病を拾い上げる新診断基準の必要性が生じたのです。
このようにして、2度の国際会議を経て、日本でも診断基準検討委員会が中心となり、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)の新診断基準に基づく、新たな妊娠糖尿病診断基準の導入が決定されたわけです。
<妊娠糖尿病・新診断基準> 2010年7月1日 施行
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)註1
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合*
*いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.国際標準化を重視する立場から、新しいHbA1C値(%)は、従来わが国で使用していたJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%を加えたNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値を使用するものとする。
註2.HbA1C< 6.5%未満(HbA1C(JDS)<6.1%未満)で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準ということになります。
註2についてですが、妊娠時には、インスリン抵抗性が非常に高まるので、糖代謝に大きな変化が起きてきます。
従って75gOGTT 2時間値が200mg/dl以上の場合でも、必ずしも糖尿病と断定できません。
このため、糖尿病と診断するためには、HbA1Cか空腹時血糖値で再チェックすることが必要なのです。
ただし、註2のパターンは糖尿病とは断定できませんが、高リスク妊娠糖尿病として、厳重な管理とフォローが必要となります。
従来の基準から、新診断基準に移行することにより、妊娠糖尿病の頻度は2.92%だったのが、4倍程度に増えると予想されます。
妊娠中は、通常より軽度の耐糖能異常でも検出できる特殊な状態です。妊娠糖尿病を従来より広く網をかけて、高リスク予備群を早く発見し、母子共に将来の糖尿病人口の増加をくい止めることが今回の改訂の狙いといえます。
江部康二
日本糖尿病・妊娠学会では、2009年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し、妊娠糖尿病の新診断基準を決定しました。新診断基準は、2010年7月1日から施行されました。
急なことだったので、いつから新診断基準に移行したのかよくわからずに、ブログ記事でも、内容が2転・3転して読者の皆さんにはご迷惑をおかけしました。
今回、新診断基準に移行する過程の全容がほぼ把握できましたので、報告いたします。
従来、妊娠糖尿病の診断基準は、各国ばらばらで、世界共通の診断基準は存在していませんでした。そのため、世界統一基準が求められていました。
今回、国際糖尿病・妊娠学会
[International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)]
が提唱した世界統一基準は、2009年に報告されたHAPO studyの結果に基づいています。
HAPO studyは、米国立衛生研究所(NIH)のイニシアティブのもとで、7年間にわたり9カ国15医療センターで、非糖尿病妊婦23316人に対して、妊娠24~32週に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行い、胎児の成長や分娩、産後のデータを前向き調査したものです。この研究には、香港とアジア系米国人も含まれています。
この結果、母親の血糖値の軽度の上昇でも、児のインスリン分泌や脂肪蓄積に影響を与えることが明らかとなりました。そのため、従来より広く妊娠糖尿病を拾い上げる新診断基準の必要性が生じたのです。
このようにして、2度の国際会議を経て、日本でも診断基準検討委員会が中心となり、国際糖尿病・妊娠学会(IADPSG)の新診断基準に基づく、新たな妊娠糖尿病診断基準の導入が決定されたわけです。
<妊娠糖尿病・新診断基準> 2010年7月1日 施行
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)註1
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合*
*いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.国際標準化を重視する立場から、新しいHbA1C値(%)は、従来わが国で使用していたJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%を加えたNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値を使用するものとする。
註2.HbA1C< 6.5%未満(HbA1C(JDS)<6.1%未満)で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準ということになります。
註2についてですが、妊娠時には、インスリン抵抗性が非常に高まるので、糖代謝に大きな変化が起きてきます。
従って75gOGTT 2時間値が200mg/dl以上の場合でも、必ずしも糖尿病と断定できません。
このため、糖尿病と診断するためには、HbA1Cか空腹時血糖値で再チェックすることが必要なのです。
ただし、註2のパターンは糖尿病とは断定できませんが、高リスク妊娠糖尿病として、厳重な管理とフォローが必要となります。
従来の基準から、新診断基準に移行することにより、妊娠糖尿病の頻度は2.92%だったのが、4倍程度に増えると予想されます。
妊娠中は、通常より軽度の耐糖能異常でも検出できる特殊な状態です。妊娠糖尿病を従来より広く網をかけて、高リスク予備群を早く発見し、母子共に将来の糖尿病人口の増加をくい止めることが今回の改訂の狙いといえます。
江部康二
2010年08月19日 (木)
こんにちは。
MT Pro(医師向けのサイトです)http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1008/1008041.html
に興味深い記事が載りました。☆☆☆
約11万例の女性看護師を対象とした前向き研究(Nurses' Health Study II:NHS II)において、1週間に約25g以上のアルコール(ビール小びん2本分に相当)を摂取する女性では全く摂取しない女性に比べ乾癬のリスクが2倍近く高まることがArch Dermatol8月16日オンライン版に報告されたのです。
本研究の報告者は、
「米国人女性を対象とした今回の検討から、アルコール飲料のなかでも、通常のビールだけが年齢や喫煙,BMI,運動,食事からの葉酸摂取といった因子とは独立して乾癬発症リスクを上昇させた。」
と述べています。
通常のビールによるリスクが最も高く、ライトビールやワインやその他の酒類との関連はなかったそうです。
ビール好きにはとても悲しいニュースということですが、これはアルコールというより、ビールに含まれる糖質が関係していると私は思います。
2009年10月23日 (金)のブログ「 糖質制限食と糖尿病と尋常性乾癬」で記事にしましたが、長年の尋常性乾癬が糖質制限食で劇的に改善した例が複数あります。
イヌイットが生肉・生魚が主食であった伝統的食生活を保っている間は、尋常性乾癬は極めてまれな病気でした。
これらのことを考えあわせると、糖質の頻回・過剰摂取が尋常性乾癬の大きなリスクである可能性が高いのです。
1週間に約25g以上のアルコールを摂取するグループにおいて、ビールはワインなどに比べればかなり糖質の量が多いです。ビールで日常的に糖質を摂取することが、尋常性乾癬のリスクに繋がったと考えられます。
発表者も
「ビールが大麦を原料とした発酵飲料であることから、乾癬発症にはアルコールよりも、潜在的なグルテン感受性の存在がリスク上昇に関連している可能性が考えられる。一方,ライトビールではリスク上昇が見られなかったことについては,はっきりしたことはわからないとしながらも、通常のビールに比べ、穀物の含有量が少ないためではないか」
と述べて、穀物の含有量にも言及しています。
グルテンは大麦由来のタンパク質ですが、穀物含有量に関しては発表者も私と同意見のようです。
尋常性乾癬の治療に糖質制限食が有効、また一つ有力な状況証拠の出現ですね。
江部康二
☆☆☆MT Pro記事
ビール好きには悲しいニュース?
乾癬リスク上昇と関連の可能性/米Nurses' Health Study[2010年8月17日]
米Nurses' Health Study
米Channing LaboratoryのAbrar A. Qureshi氏らは約11万例の女性看護師を対象とした前向き研究(Nurses' Health Study II:NHS II)から,1週間に約25gのアルコール(ビール小びん2本分に相当)を摂取する女性では全く摂取しない女性に比べ乾癬のリスクが2倍近く高まることをArch Dermatol8月16日オンライン版に報告した。アルコール飲料の種類別の検討では,通常のアルコール濃度のビール(nonlight beer)によるリスクが最も高かった一方,ライトタイプのビールやワイン,その他の酒類との関連は認められなかったという。
アルコールよりも穀物由来のグルテンがリスクに関与か
乾癬は白人に多い慢性かつ難治性の皮膚疾患の1つだが,発症原因は明らかでない。Qureshi氏らによると,これまでアルコールが乾癬の発症や増悪と関連する可能性が指摘されており,いくつかの後ろ向き研究による報告もあるという。
同氏らは今回,米国内の22~44歳の女性看護師11万6,671人を登録したNHS Ⅱのコホートにおける前向き研究を実施,アルコール飲料摂取とその種類による乾癬リスクとの関連を検討した。
1991~2005年の追跡期間中,2年に1度アルコール摂取に関する調査を実施。乾癬については,2005年の調査で試験登録時から医師の診断を受けたことがあるかを尋ね,乾癬に関するスクリーニング質問票(Psoriasis Screening Tool:PST)で確認が行われた。1991年以前に乾癬と診断されていた人は除外された。
期間中に乾癬と診断された1,150例のうち,1,069例が解析対象となった。アルコール飲料を1週間に2.3ドリンク(1ドリンク:アルコール12.8gと定義)以上摂取していた場合,全く摂取しない人に比べ乾癬の多変量相対リスク(RR)は1.72(95%CI 1.15~2.57,P for trend=0.003)であった。
アルコール摂取のサブグループにおいて,アルコール飲料の種類およびその量による解析を行ったところ,アルコール濃度やカロリーが低いライトビール,白ワイン,赤ワイン,その他の酒類(liquor)では,摂取量と乾癬の発症リスクに有意な関連は認められなかった。一方,通常のビールでは週に5ドリンク以上を摂取した場合,乾癬の発症リスクは2.29倍(95%CI 1.36~3.85,P for trend=0.003)に上昇していた。
同氏らは米国人女性を対象とした今回の検討から,アルコール飲料のなかでも,通常のビールだけが年齢や喫煙,BMI,運動,食事からの葉酸摂取といった因子とは独立して乾癬発症リスクを上昇させたと結論。同コホートよりも通常のビールの消費量が高いと考えられる米国一般人口での,週5ドリンク以上のビールによる乾癬の超過リスクは15.3%と推定されるという。
なお,ビールが大麦を原料とした発酵飲料であることから,乾癬発症にはアルコールよりも,潜在的なグルテン感受性の存在がリスク上昇に関連している可能性が考えられると同氏らは指摘。一方,ライトビールではリスク上昇が見られなかったことについては,はっきりしたことはわからないとしながらも,通常のビールに比べ,穀物の含有量が少ないためではないかと分析している。
(坂口 恵)
MT Pro(医師向けのサイトです)http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1008/1008041.html
に興味深い記事が載りました。☆☆☆
約11万例の女性看護師を対象とした前向き研究(Nurses' Health Study II:NHS II)において、1週間に約25g以上のアルコール(ビール小びん2本分に相当)を摂取する女性では全く摂取しない女性に比べ乾癬のリスクが2倍近く高まることがArch Dermatol8月16日オンライン版に報告されたのです。
本研究の報告者は、
「米国人女性を対象とした今回の検討から、アルコール飲料のなかでも、通常のビールだけが年齢や喫煙,BMI,運動,食事からの葉酸摂取といった因子とは独立して乾癬発症リスクを上昇させた。」
と述べています。
通常のビールによるリスクが最も高く、ライトビールやワインやその他の酒類との関連はなかったそうです。
ビール好きにはとても悲しいニュースということですが、これはアルコールというより、ビールに含まれる糖質が関係していると私は思います。
2009年10月23日 (金)のブログ「 糖質制限食と糖尿病と尋常性乾癬」で記事にしましたが、長年の尋常性乾癬が糖質制限食で劇的に改善した例が複数あります。
イヌイットが生肉・生魚が主食であった伝統的食生活を保っている間は、尋常性乾癬は極めてまれな病気でした。
これらのことを考えあわせると、糖質の頻回・過剰摂取が尋常性乾癬の大きなリスクである可能性が高いのです。
1週間に約25g以上のアルコールを摂取するグループにおいて、ビールはワインなどに比べればかなり糖質の量が多いです。ビールで日常的に糖質を摂取することが、尋常性乾癬のリスクに繋がったと考えられます。
発表者も
「ビールが大麦を原料とした発酵飲料であることから、乾癬発症にはアルコールよりも、潜在的なグルテン感受性の存在がリスク上昇に関連している可能性が考えられる。一方,ライトビールではリスク上昇が見られなかったことについては,はっきりしたことはわからないとしながらも、通常のビールに比べ、穀物の含有量が少ないためではないか」
と述べて、穀物の含有量にも言及しています。
グルテンは大麦由来のタンパク質ですが、穀物含有量に関しては発表者も私と同意見のようです。
尋常性乾癬の治療に糖質制限食が有効、また一つ有力な状況証拠の出現ですね。
江部康二
☆☆☆MT Pro記事
ビール好きには悲しいニュース?
乾癬リスク上昇と関連の可能性/米Nurses' Health Study[2010年8月17日]
米Nurses' Health Study
米Channing LaboratoryのAbrar A. Qureshi氏らは約11万例の女性看護師を対象とした前向き研究(Nurses' Health Study II:NHS II)から,1週間に約25gのアルコール(ビール小びん2本分に相当)を摂取する女性では全く摂取しない女性に比べ乾癬のリスクが2倍近く高まることをArch Dermatol8月16日オンライン版に報告した。アルコール飲料の種類別の検討では,通常のアルコール濃度のビール(nonlight beer)によるリスクが最も高かった一方,ライトタイプのビールやワイン,その他の酒類との関連は認められなかったという。
アルコールよりも穀物由来のグルテンがリスクに関与か
乾癬は白人に多い慢性かつ難治性の皮膚疾患の1つだが,発症原因は明らかでない。Qureshi氏らによると,これまでアルコールが乾癬の発症や増悪と関連する可能性が指摘されており,いくつかの後ろ向き研究による報告もあるという。
同氏らは今回,米国内の22~44歳の女性看護師11万6,671人を登録したNHS Ⅱのコホートにおける前向き研究を実施,アルコール飲料摂取とその種類による乾癬リスクとの関連を検討した。
1991~2005年の追跡期間中,2年に1度アルコール摂取に関する調査を実施。乾癬については,2005年の調査で試験登録時から医師の診断を受けたことがあるかを尋ね,乾癬に関するスクリーニング質問票(Psoriasis Screening Tool:PST)で確認が行われた。1991年以前に乾癬と診断されていた人は除外された。
期間中に乾癬と診断された1,150例のうち,1,069例が解析対象となった。アルコール飲料を1週間に2.3ドリンク(1ドリンク:アルコール12.8gと定義)以上摂取していた場合,全く摂取しない人に比べ乾癬の多変量相対リスク(RR)は1.72(95%CI 1.15~2.57,P for trend=0.003)であった。
アルコール摂取のサブグループにおいて,アルコール飲料の種類およびその量による解析を行ったところ,アルコール濃度やカロリーが低いライトビール,白ワイン,赤ワイン,その他の酒類(liquor)では,摂取量と乾癬の発症リスクに有意な関連は認められなかった。一方,通常のビールでは週に5ドリンク以上を摂取した場合,乾癬の発症リスクは2.29倍(95%CI 1.36~3.85,P for trend=0.003)に上昇していた。
同氏らは米国人女性を対象とした今回の検討から,アルコール飲料のなかでも,通常のビールだけが年齢や喫煙,BMI,運動,食事からの葉酸摂取といった因子とは独立して乾癬発症リスクを上昇させたと結論。同コホートよりも通常のビールの消費量が高いと考えられる米国一般人口での,週5ドリンク以上のビールによる乾癬の超過リスクは15.3%と推定されるという。
なお,ビールが大麦を原料とした発酵飲料であることから,乾癬発症にはアルコールよりも,潜在的なグルテン感受性の存在がリスク上昇に関連している可能性が考えられると同氏らは指摘。一方,ライトビールではリスク上昇が見られなかったことについては,はっきりしたことはわからないとしながらも,通常のビールに比べ,穀物の含有量が少ないためではないかと分析している。
(坂口 恵)
2010年08月18日 (水)
おはようございます。
今回は、otoki さんから、糖質制限食で肝機能・耐糖能・HbA1c改善という嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/17 otoki
恐るべし糖質制限食
江部先生 こんばんは
久し振りの検査結果が出て維持改善され喜んでいます。
今回驚いたことは肝機能の改善です。
09年10月 10年8月
r-GTP 116 36 (毎日飲んでます)
AST 39 18
ALT 67 15
HDL-C 60 76.8
LDL-C 133 83
TG 89 81
A1c 8.7 5.4
今回は食後血糖値を知りたくて腹いっぱい朝食を食べ一時間半後に検査しました。
数値は159でした。(その後は分かりませんが・・・)
今のところ糖尿人から予備人?まで格が下がり良かったと思っていますが・・
担当医はこのままの制限食を維持しましょう。と・・
江部先生の著書に出会って良かったです。
ありがとうございます。」
otoki さん。
コメントありがとうございます。
肝機能の改善は脂肪肝が正常に戻ったものと考えられます。
昔は「たかが脂肪肝、放っておけばいい。」とか言っていた時代もありますが、近年非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が問題となっています。
飲酒歴がないにもかかわらず肝組織所見がアルコール性肝障害に似た所見を呈する疾患のことを、非アルコール性脂肪肝炎(Non alcoholic steatohepatitis NASH)といいます。肥満などに伴う一般的な脂肪肝の約1割に、このNASHが発症します。
NASHは単純な脂肪肝とは異なり、将来肝硬変や肝ガンになる可能性があるので、要注意なのです。
otoki さんは、アルコールは飲み続けながら、糖質制限食を実践されて、肝機能が改善しておられます。ということは、少なくともアルコール性肝障害ではなかったということになります。
09年10月時点で単なる脂肪肝だったのか、NASHだったのかはわかりませんが、ともあれ、危機脱出ですね。
なおNASHの発症には、肥満・高インスリン血症・酸化ストレスなどが関係しているとされています。
それなら、まさにスーパー糖質制限食で、おおいに改善が期待できる疾患の一つです。
「A1c:8.7% →5.4%」
素晴らしい改善ですね。(^-^)v(^-^)v
HbA1c8.7%だったころは、平均血糖値が210mg/dlですから、完全無欠の糖尿病です。食後血糖値は軽く200を超えていたことでしょう。現在5.4%ですから、平均血糖値は111mg/dlです。
「今回は食後血糖値を知りたくて腹いっぱい朝食を食べ一時間半後に検査しました。 数値は159でした。」
あえて、糖質をお腹いっぱい食べて検査されたのですね。
90分後の血糖値が159mgなら、2時間後は140mg未満で正常型になっていた可能性もあります。
ともあれ、完全無欠の糖尿病型から少なくとも境界型レベルまで、耐糖能が改善したことは間違いありません。
糖質制限食で耐糖能改善、おめでとうございます。ヾ(^▽^)
担当医も糖質制限食に理解のある方なのですね。良かったです。
徐々に理解ある医師が増えてきていますが、嬉しい限りです。(^_^)
江部康二
今回は、otoki さんから、糖質制限食で肝機能・耐糖能・HbA1c改善という嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/17 otoki
恐るべし糖質制限食
江部先生 こんばんは
久し振りの検査結果が出て維持改善され喜んでいます。
今回驚いたことは肝機能の改善です。
09年10月 10年8月
r-GTP 116 36 (毎日飲んでます)
AST 39 18
ALT 67 15
HDL-C 60 76.8
LDL-C 133 83
TG 89 81
A1c 8.7 5.4
今回は食後血糖値を知りたくて腹いっぱい朝食を食べ一時間半後に検査しました。
数値は159でした。(その後は分かりませんが・・・)
今のところ糖尿人から予備人?まで格が下がり良かったと思っていますが・・
担当医はこのままの制限食を維持しましょう。と・・
江部先生の著書に出会って良かったです。
ありがとうございます。」
otoki さん。
コメントありがとうございます。
肝機能の改善は脂肪肝が正常に戻ったものと考えられます。
昔は「たかが脂肪肝、放っておけばいい。」とか言っていた時代もありますが、近年非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が問題となっています。
飲酒歴がないにもかかわらず肝組織所見がアルコール性肝障害に似た所見を呈する疾患のことを、非アルコール性脂肪肝炎(Non alcoholic steatohepatitis NASH)といいます。肥満などに伴う一般的な脂肪肝の約1割に、このNASHが発症します。
NASHは単純な脂肪肝とは異なり、将来肝硬変や肝ガンになる可能性があるので、要注意なのです。
otoki さんは、アルコールは飲み続けながら、糖質制限食を実践されて、肝機能が改善しておられます。ということは、少なくともアルコール性肝障害ではなかったということになります。
09年10月時点で単なる脂肪肝だったのか、NASHだったのかはわかりませんが、ともあれ、危機脱出ですね。
なおNASHの発症には、肥満・高インスリン血症・酸化ストレスなどが関係しているとされています。
それなら、まさにスーパー糖質制限食で、おおいに改善が期待できる疾患の一つです。
「A1c:8.7% →5.4%」
素晴らしい改善ですね。(^-^)v(^-^)v
HbA1c8.7%だったころは、平均血糖値が210mg/dlですから、完全無欠の糖尿病です。食後血糖値は軽く200を超えていたことでしょう。現在5.4%ですから、平均血糖値は111mg/dlです。
「今回は食後血糖値を知りたくて腹いっぱい朝食を食べ一時間半後に検査しました。 数値は159でした。」
あえて、糖質をお腹いっぱい食べて検査されたのですね。
90分後の血糖値が159mgなら、2時間後は140mg未満で正常型になっていた可能性もあります。
ともあれ、完全無欠の糖尿病型から少なくとも境界型レベルまで、耐糖能が改善したことは間違いありません。
糖質制限食で耐糖能改善、おめでとうございます。ヾ(^▽^)
担当医も糖質制限食に理解のある方なのですね。良かったです。
徐々に理解ある医師が増えてきていますが、嬉しい限りです。(^_^)
江部康二
2010年08月17日 (火)
こんにちは。
EBM(証拠に基づいた医学)で、信頼度が高いはずの大規模無作為化偽薬対照二重盲検試験・JUPITERに重大な疑惑が生じました。
JUPITER試験は、心血管疾患既往でも糖尿病でもなく、LDL-C値もHDL-C値も正常な中高年、つまり、現在の治療ガイドラインでは、スタチンの適応にはならない人のうち、hsCRPが高い(2mg/L以上)人をスクリーニングして、強力なLDL-C低下作用を持つrosuvastatin(一日20mg)で血管性疾患初発予防を行った、無作為化偽薬対照二重盲検試験です。世界26ヶ国の施設で17802人を組入れ、03年から08年にかけて実施されました。
hsCRPというのは、高感度CRPのことです。
近年動脈硬化の元は、血管内の炎症がベースにあるとされ、高感度CRPはその指標となります。rosuvastatinは商品名はクレストールです。
2008年にNew England Journal of Medicine誌に、掲載されたJUPITER試験の結果は、44%もの1次エンドポイント(冠状動脈性心疾患)減少と20%の総死亡抑制を示していました。
この時点では、クレストール(スタチン製剤)の有効性を明確に表したものと言えました。
ところが、2010年6月28日のArch Intern Med誌に、JUPITER試験を巡る論文が4編も掲載されました。
そのいずれもが、44%もの1次エンドポイント減少と、20%の総死亡抑制を示したJUPITER試験の結果には不備があり、ロスバスタチンの心血管イベントに対する1次予防効果は、過大評価で慎重な解釈を要するというものでした。
日経メディカル オンライン *では、国立循環器病センター駒村和雄先生の解説で、
「Arch Intern Med誌から CVD1次予防としてのスタチン、総死亡は減少せず」
とのタイトルで報じています。
すなわち、JUPITERを含む11試験で1次予防効果について、英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らが、メタ解析**を行ったところ、研究間のバラツキを考慮するランダム効果モデルでも、考慮しない固定効果モデルでも、スタチンによる死亡率の有意な減少は、認められなかったとのことです。
つまり、スタチン製剤の効果を確かめるためのJUPITERを含む大規模な11試験を、客観的に全て解析し直したところ、死亡率の有意な減少はなかったということで、これは衝撃的な内容です。
世界中で4000万人以上の人が内服しているスタチン製剤でLDL-コレステロールを下げても、死亡率を減少させる効果がなかったということになるのですが、これでは何のための薬かわかりませんね。
英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らの、メタ解析だけで、スタチン製剤が無効と断定することはさすがに早計ではありますが、壮大な医療費の無駄遣いの可能性もあることには留意する必要があります。
スタチン製剤だけで300億ドル(2兆8000億円)近い医療費と思われます。ちなみに、世界の医薬品の売り上げトップは、リピトール(スタチン製剤)です。
さらに
「JUPITER試験の14人の著者のうち9人が企業との経済的関係があり、論文の筆頭著者で試験責任者のPaul Ridker氏が高感度C反応性蛋白(hsCRP)測定の特許を取得しており、データ安全性監視委員会委員長であるRory Collins氏が多数の企業主導の脂質低下試験にかかわっている――。」
ということならば、
「大規模無作為化偽薬対照二重盲検試験」という、本来EBMの王道ともいえる臨床試験でさえも、結果を鵜呑みにすることはできないということですね。
江部康二
*
Arch Intern Med誌・日経メディカル・オンライン2010・スタチン疑惑
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/lecture/komamura/201008/516261.html
JUPITER試験に対する疑惑表明か、平衡感覚か
同一号に4編の論文、いずれも同試験の解釈は慎重を要すると主張
【著者プロフィール
駒村 和雄(大阪大学)こまむら かずお氏。1956年生まれ。阪大医学部卒。同大第一内科(当時)に入局し、大阪警察病院、ハーバード大留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所・心臓動態研究室室長。2008年、兵庫医療大学教授。2010年、大阪大学大学院薬学研究科招聘教員。
連載の紹介
日々、多くの専門雑誌から新しい研究成果が発表されます。真っ先に原著論文には目を通しても、総説や論説まではなかなか読み込む時間がないという人が多いはず。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏が、注目される総説・論説をピックアップ。専門医の目による評価を加えながら解説します。】
6月28日付のArch Intern Med誌に、JUPITER試験を巡る論文が4編も掲載された。
そのいずれもが、44%もの1次エンドポイント減少と20%の総死亡抑制を示したJUPITER試験[1,2]の結果には不備があり、ロスバスタチンの心血管イベントに対する1次予防効果は過大評価で慎重な解釈を要するというものだった。
日経メディカル オンライン 循環器プレミアムでは、この4論文の中で英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らによるメタ解析[3]、およびそれについての米国ミシガン大学のLee A. Green氏の論評[4]を既に紹介している。今回はこれに周辺の情報も加えて、改めて考えてみたい。
メタ解析について循環器プレミアムでは、「Arch Intern Med誌から CVD1次予防としてのスタチン、総死亡は減少せず」とのタイトルで報じた[5]。Ray氏らがJUPITERを含む11試験で1次予防効果についてメタ解析を行ったところ、研究間のバラツキを考慮するランダム効果モデルでも、考慮しない固定効果モデルでも、スタチンによる死亡率の有意な減少は認められなかった。
糖尿病患者のみを対象とした試験を除外しても、死亡率の有意な抑制効果は見られなかった。この結果からRay氏らは、JUPITER試験での総死亡の20%減少とは、試験を早期に終了した場合に起こり得る誇張された結果ではないかと推測した[3]。
論説[4]の中でGreen氏は、臨床試験の早期終了は有効性の過大評価とリスクの過小評価に結び付くことを関係者は分かっているだろうが、同時に、早期のマーケティングを可能にし、臨床試験の費用も節約できるなど、スポンサー企業はもとより研究チームにとっても大きな利益に結び付くこともよく分かっていると指摘した。
同号に掲載された「論文」で最も過激だっだのが、フランス・ジョセフフーリエ大学のMichel de Lorgeril氏らによるものだった[6]。彼らは、JUPITERにかかわる主要人物の利益相反に重大な問題が潜んでいると、個人攻撃とも取られかねない主張を行った。
14人の著者のうち9人が企業との経済的関係があり、論文の筆頭著者で試験責任者のPaul Ridker氏が高感度C反応性蛋白(hsCRP)測定の特許を取得しており、データ安全性監視委員会委員長であるRory Collins氏が多数の企業主導の脂質低下試験にかかわっている――。
臨床試験の科学上の問題点よりも、関係者たちの「strong commercial interest in the study」について、当のRidker氏が「一体どこが研究論文なんだ。データは何もなく、ただ意見を述べているだけじゃないか」[7]と憤慨するような内容の論文だった。
**メタ解析 薬学用語解説より
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%A7%A3%E6%9E%90%E3%80%80
Meta-Analysis、メタアナリシス
過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。採用するデータは、信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行う。一般的には、様々な試験の要約統計量を用いるが、生データを結合して解析する場合もある。叙述的な総説とは異なり、体系的、組織的、統計学的、定量的に研究結果をレビューするという特徴がある。メタアナリシスは、複数の研究で得られた効果が一致しない場合、個々の研究の標本サイズが小さく有意な効果を見いだせない場合、大きな標本サイズの研究が経済的・時間的に困難な場合、に有用であるとされている。
医学分野では対象や研究方法が多様で、各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きい。例えば、公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。これは研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」や、学会誌等の編集者が,統計学的に有意な結果の得られていないものはリジェクトする「出版バイアス」のためである。このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念が指摘されている。また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと過大評価することになる。メタアナリシスでは、バイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価しようとしている。
こうしたメタアナリシス研究を押し進めることを目的として、1992年には、英国政府の支援のもとにオックスフォードにコクラン・センター(Cochrane Centre)が作られた。The Cochrane Libraryとは、コクラン共同計画が行っているメタアナリシスである。ランダム化比較試験の行われたデータをすべて集め、その中から信頼できるものを選び、総合評価を行っている。(2007.8.31 掲載)
EBM(証拠に基づいた医学)で、信頼度が高いはずの大規模無作為化偽薬対照二重盲検試験・JUPITERに重大な疑惑が生じました。
JUPITER試験は、心血管疾患既往でも糖尿病でもなく、LDL-C値もHDL-C値も正常な中高年、つまり、現在の治療ガイドラインでは、スタチンの適応にはならない人のうち、hsCRPが高い(2mg/L以上)人をスクリーニングして、強力なLDL-C低下作用を持つrosuvastatin(一日20mg)で血管性疾患初発予防を行った、無作為化偽薬対照二重盲検試験です。世界26ヶ国の施設で17802人を組入れ、03年から08年にかけて実施されました。
hsCRPというのは、高感度CRPのことです。
近年動脈硬化の元は、血管内の炎症がベースにあるとされ、高感度CRPはその指標となります。rosuvastatinは商品名はクレストールです。
2008年にNew England Journal of Medicine誌に、掲載されたJUPITER試験の結果は、44%もの1次エンドポイント(冠状動脈性心疾患)減少と20%の総死亡抑制を示していました。
この時点では、クレストール(スタチン製剤)の有効性を明確に表したものと言えました。
ところが、2010年6月28日のArch Intern Med誌に、JUPITER試験を巡る論文が4編も掲載されました。
そのいずれもが、44%もの1次エンドポイント減少と、20%の総死亡抑制を示したJUPITER試験の結果には不備があり、ロスバスタチンの心血管イベントに対する1次予防効果は、過大評価で慎重な解釈を要するというものでした。
日経メディカル オンライン *では、国立循環器病センター駒村和雄先生の解説で、
「Arch Intern Med誌から CVD1次予防としてのスタチン、総死亡は減少せず」
とのタイトルで報じています。
すなわち、JUPITERを含む11試験で1次予防効果について、英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らが、メタ解析**を行ったところ、研究間のバラツキを考慮するランダム効果モデルでも、考慮しない固定効果モデルでも、スタチンによる死亡率の有意な減少は、認められなかったとのことです。
つまり、スタチン製剤の効果を確かめるためのJUPITERを含む大規模な11試験を、客観的に全て解析し直したところ、死亡率の有意な減少はなかったということで、これは衝撃的な内容です。
世界中で4000万人以上の人が内服しているスタチン製剤でLDL-コレステロールを下げても、死亡率を減少させる効果がなかったということになるのですが、これでは何のための薬かわかりませんね。
英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らの、メタ解析だけで、スタチン製剤が無効と断定することはさすがに早計ではありますが、壮大な医療費の無駄遣いの可能性もあることには留意する必要があります。
スタチン製剤だけで300億ドル(2兆8000億円)近い医療費と思われます。ちなみに、世界の医薬品の売り上げトップは、リピトール(スタチン製剤)です。
さらに
「JUPITER試験の14人の著者のうち9人が企業との経済的関係があり、論文の筆頭著者で試験責任者のPaul Ridker氏が高感度C反応性蛋白(hsCRP)測定の特許を取得しており、データ安全性監視委員会委員長であるRory Collins氏が多数の企業主導の脂質低下試験にかかわっている――。」
ということならば、
「大規模無作為化偽薬対照二重盲検試験」という、本来EBMの王道ともいえる臨床試験でさえも、結果を鵜呑みにすることはできないということですね。
江部康二
*
Arch Intern Med誌・日経メディカル・オンライン2010・スタチン疑惑
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/lecture/komamura/201008/516261.html
JUPITER試験に対する疑惑表明か、平衡感覚か
同一号に4編の論文、いずれも同試験の解釈は慎重を要すると主張
【著者プロフィール
駒村 和雄(大阪大学)こまむら かずお氏。1956年生まれ。阪大医学部卒。同大第一内科(当時)に入局し、大阪警察病院、ハーバード大留学などを経て95年から国立循環器病センター。98年、同センター研究所・心臓動態研究室室長。2008年、兵庫医療大学教授。2010年、大阪大学大学院薬学研究科招聘教員。
連載の紹介
日々、多くの専門雑誌から新しい研究成果が発表されます。真っ先に原著論文には目を通しても、総説や論説まではなかなか読み込む時間がないという人が多いはず。国立循環器病センターで重症心不全の臨床に長年携わり、ACCやAHAのフェローを務める駒村氏が、注目される総説・論説をピックアップ。専門医の目による評価を加えながら解説します。】
6月28日付のArch Intern Med誌に、JUPITER試験を巡る論文が4編も掲載された。
そのいずれもが、44%もの1次エンドポイント減少と20%の総死亡抑制を示したJUPITER試験[1,2]の結果には不備があり、ロスバスタチンの心血管イベントに対する1次予防効果は過大評価で慎重な解釈を要するというものだった。
日経メディカル オンライン 循環器プレミアムでは、この4論文の中で英国ケンブリッジ大学のKausik K. Ray氏らによるメタ解析[3]、およびそれについての米国ミシガン大学のLee A. Green氏の論評[4]を既に紹介している。今回はこれに周辺の情報も加えて、改めて考えてみたい。
メタ解析について循環器プレミアムでは、「Arch Intern Med誌から CVD1次予防としてのスタチン、総死亡は減少せず」とのタイトルで報じた[5]。Ray氏らがJUPITERを含む11試験で1次予防効果についてメタ解析を行ったところ、研究間のバラツキを考慮するランダム効果モデルでも、考慮しない固定効果モデルでも、スタチンによる死亡率の有意な減少は認められなかった。
糖尿病患者のみを対象とした試験を除外しても、死亡率の有意な抑制効果は見られなかった。この結果からRay氏らは、JUPITER試験での総死亡の20%減少とは、試験を早期に終了した場合に起こり得る誇張された結果ではないかと推測した[3]。
論説[4]の中でGreen氏は、臨床試験の早期終了は有効性の過大評価とリスクの過小評価に結び付くことを関係者は分かっているだろうが、同時に、早期のマーケティングを可能にし、臨床試験の費用も節約できるなど、スポンサー企業はもとより研究チームにとっても大きな利益に結び付くこともよく分かっていると指摘した。
同号に掲載された「論文」で最も過激だっだのが、フランス・ジョセフフーリエ大学のMichel de Lorgeril氏らによるものだった[6]。彼らは、JUPITERにかかわる主要人物の利益相反に重大な問題が潜んでいると、個人攻撃とも取られかねない主張を行った。
14人の著者のうち9人が企業との経済的関係があり、論文の筆頭著者で試験責任者のPaul Ridker氏が高感度C反応性蛋白(hsCRP)測定の特許を取得しており、データ安全性監視委員会委員長であるRory Collins氏が多数の企業主導の脂質低下試験にかかわっている――。
臨床試験の科学上の問題点よりも、関係者たちの「strong commercial interest in the study」について、当のRidker氏が「一体どこが研究論文なんだ。データは何もなく、ただ意見を述べているだけじゃないか」[7]と憤慨するような内容の論文だった。
**メタ解析 薬学用語解説より
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%83%A1%E3%82%BF%E8%A7%A3%E6%9E%90%E3%80%80
Meta-Analysis、メタアナリシス
過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。採用するデータは、信頼できるものにしぼり、それぞれに重み付けを行う。一般的には、様々な試験の要約統計量を用いるが、生データを結合して解析する場合もある。叙述的な総説とは異なり、体系的、組織的、統計学的、定量的に研究結果をレビューするという特徴がある。メタアナリシスは、複数の研究で得られた効果が一致しない場合、個々の研究の標本サイズが小さく有意な効果を見いだせない場合、大きな標本サイズの研究が経済的・時間的に困難な場合、に有用であるとされている。
医学分野では対象や研究方法が多様で、各種のバイアスが入りやすく、また研究の質のばらつきが大きい。例えば、公表論文は有意な結果のみが発表されることが多い。これは研究者がポジティブな結果が得られたときにのみ発表する「報告バイアス」や、学会誌等の編集者が,統計学的に有意な結果の得られていないものはリジェクトする「出版バイアス」のためである。このため、単に報告を集めるだけでは、ポジティブ方向へバイアスがかかるという懸念が指摘されている。また、質の低い論文を他の優れた研究成果と同等に評価対象としてしまうと過大評価することになる。メタアナリシスでは、バイアスの影響を極力排除し、評価基準を統一して客観的・科学的に多数の研究結果を数量的、総括的に評価しようとしている。
こうしたメタアナリシス研究を押し進めることを目的として、1992年には、英国政府の支援のもとにオックスフォードにコクラン・センター(Cochrane Centre)が作られた。The Cochrane Libraryとは、コクラン共同計画が行っているメタアナリシスである。ランダム化比較試験の行われたデータをすべて集め、その中から信頼できるものを選び、総合評価を行っている。(2007.8.31 掲載)
2010年08月17日 (火)
おはようございます。
今回は、セインさんから「日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリー」について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/16 セイン
タイトルなし
質問です(重要ではありません)
8月14日の記事の中にある
「日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリー」についてなのですが、先生には、珍しく数字が入ってないなぁって思って日本糖尿病学会のHP等を検索したのですが、意外なことに思いつく限りの項目で検索してもヒットしませんでした。
どうなっているんでしょうか?
カロリー無制限で一日三食食べて生活している
セインとしては、ちょっとだけ、気になるところであります。
お時間があったら、教えてください。」
セインさん。
コメントありがとうございます。
「糖尿病専門医研修ガイドブック」(2009)を見てみました。
目標とすべき摂取エネルギー量という項目がありました。
1)まず標準体重を決める。
標準体重=[(身長m)2 ×22kg]
2)次に運動量に合わせて摂取エネルギー量を決める。
①軽労作(デスクワークなど):25~30(kcal)×標準体重(kg)
②普通の労作(立ち仕事):30~35(kcal)×標準体重(kg)
③重い労作(力仕事):35(kcal)×標準体重(kg)
例えば私でしたら、身長が167cm(1.67m)なので、標準体重は
1.67×1.67×22=61.4kg
仕事は軽労作なので
25~30(kcal)×61.4(kg)=1535~1842kcal
となります。
現実には、スーパー糖質制限食実践でお腹いっぱい食べて
「1800~2000kcal/日 +アルコール」パターンで
体重は57kgです。
このように、糖質制限食においては、大多数の人はカロリー計算は無用でお腹いっぱい食べてOKです。しかし数%の人で、スーパー糖質制限食でも体重が減りにくいことがあります。
所謂、倹約遺伝子タイプと思われますが、このような方においては、「糖質制限食」に加えて、上述の日本糖尿病学会推奨の「カロリー制限食」も必要と思われます。
江部康二
今回は、セインさんから「日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリー」について、コメント・質問をいただきました。
「10/08/16 セイン
タイトルなし
質問です(重要ではありません)
8月14日の記事の中にある
「日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリー」についてなのですが、先生には、珍しく数字が入ってないなぁって思って日本糖尿病学会のHP等を検索したのですが、意外なことに思いつく限りの項目で検索してもヒットしませんでした。
どうなっているんでしょうか?
カロリー無制限で一日三食食べて生活している
セインとしては、ちょっとだけ、気になるところであります。
お時間があったら、教えてください。」
セインさん。
コメントありがとうございます。
「糖尿病専門医研修ガイドブック」(2009)を見てみました。
目標とすべき摂取エネルギー量という項目がありました。
1)まず標準体重を決める。
標準体重=[(身長m)2 ×22kg]
2)次に運動量に合わせて摂取エネルギー量を決める。
①軽労作(デスクワークなど):25~30(kcal)×標準体重(kg)
②普通の労作(立ち仕事):30~35(kcal)×標準体重(kg)
③重い労作(力仕事):35(kcal)×標準体重(kg)
例えば私でしたら、身長が167cm(1.67m)なので、標準体重は
1.67×1.67×22=61.4kg
仕事は軽労作なので
25~30(kcal)×61.4(kg)=1535~1842kcal
となります。
現実には、スーパー糖質制限食実践でお腹いっぱい食べて
「1800~2000kcal/日 +アルコール」パターンで
体重は57kgです。
このように、糖質制限食においては、大多数の人はカロリー計算は無用でお腹いっぱい食べてOKです。しかし数%の人で、スーパー糖質制限食でも体重が減りにくいことがあります。
所謂、倹約遺伝子タイプと思われますが、このような方においては、「糖質制限食」に加えて、上述の日本糖尿病学会推奨の「カロリー制限食」も必要と思われます。
江部康二
2010年08月16日 (月)
こんにちは。
今日は京都市内、車がまばらでとても走りやすかったです。
まあ、お盆に働いている甲斐がありましたけど・・・。(-_-;)
さて。
2010年7月1日に、1999年以来11年ぶりとなる、糖尿病診断基準の改定が施行されました。
詳細は、2010年07月17日 (土) のブログ「糖尿病の新しい診断基準と実施時期」をご参照いただけば幸いです。
今の時期に何故改訂?という疑問に応える記事が、メディカル・トリビューンの2010年8月5日号に載ったので、簡単にまとめてみます。
【日本糖尿病学会は2004年に「対糖尿病5か年計画」を策定し、糖尿病の研究と診療の向上を目指してきました。この間、アジア人のインスリン分泌能力は欧米人の約1/2であることや、欧米人とアジア人では2型糖尿病の主要な原因遺伝子が異なることが明らかとなりました。
診療面では3000人弱だった糖尿病専門医が4000人以上に増強されました。しかしながら2007年の調査で日本の糖尿病患者は約890万人で、年間約30万人ずつ増加している状況が判明しました。
患者の約半数は定期的な治療を受けておらず、定期的な治療を受けている患者においても、2/3はコントロール不良というのが現状です。
こういった状況を受けて、糖尿病の罹患率と合併症の減少をめざし、「第2次対糖尿病戦略5か年計画」が策定されました。
①糖尿病の早期診断・早期治療体制の構築(Diagnosis and Care)
②研究の推進と人材の育成(Research to Cure)
③エビデンスの構築と普及(Evidence for Optimum Care)
④国際連携(Aliance for Diabetes)
⑤糖尿病予防(Mentoring Program for Prevention)
⑥糖尿病の抑制(Stop the DM)
頭文字をとって、DREAMESが掲げられたわけです。
今回の診断基準の改定(新診断基準)により、HbA1cと血糖値を同一日に測定することになり、1回の検査で糖尿病の診断ができるようになりました。
また、従来のHbA1c値(JDS値)に、0.4%を加えるという極めて簡便な手法で、NGSP値によるHbA1c値と同一であることが示され、国際標準化が可能となりました。
新診断基準はDREAMESの6項目中とりわけ①と④を推進する強力な手段となると期待されています。】
以上、メディカル・トリビューンの記事のまとめでした。
ここまでは、いいお話しですし私も賛成です。
一方、現在の状況は、2004年の「対糖尿病5か年計画」以降も糖尿病は増え続け、糖尿病専門医の数も増加したのに、治療を受けている糖尿病患者の2/3はコントロール不良です。
つまり、日本糖尿病学会の様々な努力にも関わらず、糖尿病治療の現状は、決して上手くいっていないということです。
DREAMESの①②③④はいいとしても、
⑤糖尿病予防
⑥糖尿病の抑制
に関しては、久山町研究やUKPDSを考慮すれば、糖質を摂取する限りは不可能である可能性が高いと思います。
このままではDREAMESが悪夢と化してしまいます。 (*_*)
糖質制限食であれば、⑤⑥の目標達成は容易ですね。
こちらは DREAMES come true ですね。(^_^)
江部康二
今日は京都市内、車がまばらでとても走りやすかったです。
まあ、お盆に働いている甲斐がありましたけど・・・。(-_-;)
さて。
2010年7月1日に、1999年以来11年ぶりとなる、糖尿病診断基準の改定が施行されました。
詳細は、2010年07月17日 (土) のブログ「糖尿病の新しい診断基準と実施時期」をご参照いただけば幸いです。
今の時期に何故改訂?という疑問に応える記事が、メディカル・トリビューンの2010年8月5日号に載ったので、簡単にまとめてみます。
【日本糖尿病学会は2004年に「対糖尿病5か年計画」を策定し、糖尿病の研究と診療の向上を目指してきました。この間、アジア人のインスリン分泌能力は欧米人の約1/2であることや、欧米人とアジア人では2型糖尿病の主要な原因遺伝子が異なることが明らかとなりました。
診療面では3000人弱だった糖尿病専門医が4000人以上に増強されました。しかしながら2007年の調査で日本の糖尿病患者は約890万人で、年間約30万人ずつ増加している状況が判明しました。
患者の約半数は定期的な治療を受けておらず、定期的な治療を受けている患者においても、2/3はコントロール不良というのが現状です。
こういった状況を受けて、糖尿病の罹患率と合併症の減少をめざし、「第2次対糖尿病戦略5か年計画」が策定されました。
①糖尿病の早期診断・早期治療体制の構築(Diagnosis and Care)
②研究の推進と人材の育成(Research to Cure)
③エビデンスの構築と普及(Evidence for Optimum Care)
④国際連携(Aliance for Diabetes)
⑤糖尿病予防(Mentoring Program for Prevention)
⑥糖尿病の抑制(Stop the DM)
頭文字をとって、DREAMESが掲げられたわけです。
今回の診断基準の改定(新診断基準)により、HbA1cと血糖値を同一日に測定することになり、1回の検査で糖尿病の診断ができるようになりました。
また、従来のHbA1c値(JDS値)に、0.4%を加えるという極めて簡便な手法で、NGSP値によるHbA1c値と同一であることが示され、国際標準化が可能となりました。
新診断基準はDREAMESの6項目中とりわけ①と④を推進する強力な手段となると期待されています。】
以上、メディカル・トリビューンの記事のまとめでした。
ここまでは、いいお話しですし私も賛成です。
一方、現在の状況は、2004年の「対糖尿病5か年計画」以降も糖尿病は増え続け、糖尿病専門医の数も増加したのに、治療を受けている糖尿病患者の2/3はコントロール不良です。
つまり、日本糖尿病学会の様々な努力にも関わらず、糖尿病治療の現状は、決して上手くいっていないということです。
DREAMESの①②③④はいいとしても、
⑤糖尿病予防
⑥糖尿病の抑制
に関しては、久山町研究やUKPDSを考慮すれば、糖質を摂取する限りは不可能である可能性が高いと思います。
このままではDREAMESが悪夢と化してしまいます。 (*_*)
糖質制限食であれば、⑤⑥の目標達成は容易ですね。
こちらは DREAMES come true ですね。(^_^)
江部康二
2010年08月15日 (日)
こんばんは。
今テニスを終えて、コンビニによって、帰ってきたところです。
今日は、スタイルフリーとうずらの卵、タン塩、ツブ貝と氷を買いました。
さて、糖質制限中の間食について、内科大学院生さんからコメント・質問をいただきました。
「0/08/12 内科大学院生
糖質制限中の間食について
江部先生
こんばんは。
今日は糖質制限の間食について、ご相談があります。
私の患者さんの中に間食をやめられないという人が結構います。
糖質制限の効果は理解していて、食事のご飯を減らすなどしてある程度は改善するのですが、間食や夜勤前や夜勤中の間食のコントロールがどうしてもうまくいかず、HbA1cやGAが下がり止まっているのです。
先生は間食に、チーズやナッツ類、アボカドなどを勧めていらっしゃいますが、コレステロールが高くなることや高カロリーを気にして、避ける患者さんも多いですし、チーズだけを食べるのは難しい方も多くいます。お酒を飲む方はチーズだけでも好みますが・・・
果物などは少量(糖質10g以下)にしても、中性脂肪が上がりやすいですし、果糖はその多くはブドウ糖に変わらないとはいえ、私の印象では果物は他の食品に比べ、血糖値を上昇させやすい部類ものだと思っているので、あまり勧めていません。
(今度、私の患者さんで試した果物だけの血糖上昇の変化について、お示しさせていただきますね。糖質量をほぼ一緒にしても、血糖値の上がりやすさにはかなりの違いがありました。特にブドウ、バナナ、パイナップル、スイカは血糖値がかなり高くなります)
本当は、『蒸し大豆』などを勧めたいのですが、購入できる店が限られており、インターネットを使わない患者さまが手に入れるのは難しいです。
ソイジョイなどは確かに糖質11-13gぐらいですが、中高年以上には受け入れられにくい食品です。
おやつに納豆、豆腐、厚揚げ、アボカドというのも持ち運びが難しく、車内で食べるのには非常に困難ですし、やはりおやつにはなかなか食べにくい食、品のようです。
おからマドレーヌなどを自分で作れる方は別ですが、ご多忙の方も多く、
『どこのコンビニでも買えるもので、高くないものを教えて下さい』 というリクエストも多いです。
結局、時間が無いので、夜勤に向かう車の中でおにぎりやサンドイッチで済ませてしまう方が多いのです。
当然、食後の血糖は250以上になってしまいます。
カロリーが低いからと言って、せんべいを食べて、血糖値が上昇してしまう方もたくさんいます。
こういう方にはとにかく商品の糖質量をチェックするように説明してはおりますが・・・
ソーセージよりは糖質が多いですが、コンビニで安価で買えるものの中で、私はフランクフルトなどを勧めています。からあげはなどは、その衣が気になりますが、そんなに悪くないとも説明しています。
ぶしつけな質問で大変申し訳ありませんが、簡単にお店で買うことが出来て、間食にお勧めの食品を教えていただけますか?
宜しくお願い致します。
内科大学院生 」
内科大学院生さん。
いつもコメントありがとうございます。
「先生は間食に、チーズやナッツ類、アボカドなどを勧めていらっしゃいますが、
コレステロールが高くなることや高カロリーを気にして、避ける患者さんも多いですし、チーズだけを食べるのは難しい方も多くいます。お酒を飲む方はチーズだけでも好みますが・・・」
チーズやナッツ類、アボカドは確かに高脂肪・高カロリーですが、糖質制限食OK食材であり、コレステロールを上げることもないと思いますよ。
<米国医師会雑誌2006年2月8日号>の論文をみても高脂肪・高カロリー食が総コレステロール値を上昇させることはありませんでした。*
私自身も、スーパー糖質制限食8年間、高脂肪・高タンパク食で、チーズやナッツ類は日常的に間食していますが、データは
TC:228
TG:30
HDL-C:119.0
LDL-C:103
です。
「果物などは少量(糖質10g以下)にしても、中性脂肪が上がりやすいですし、果糖はその多くはブドウ糖に変わらないとはいえ、私の印象では果物は他の食品に比べ、血糖値を上昇させやすい部類ものだと思っているので、あまり勧めていません。
(今度、私の患者さんで試した果物だけの血糖上昇の変化について、お示しさせていただきますね。糖質量をほぼ一緒にしても、血糖値の上がりやすさにはかなりの違いがありました。特にブドウ、バナナ、パイナップル、スイカは血糖値がかなり高くなります)」
果物は、仰有る通り、アボカド以外は、糖質制限食△~×食品ですね。
私も基本的にはあまり奨めません。
私の場合は、糖質制限食で血糖コントロールはよくなったけれど、痩せて困るというようなタイプに限り、果物の間食を奨めています。1回1/3個くらいを1日2~3回です。このような痩せで少食タイプは数%おられます。
「ソーセージよりは糖質が多いですが、コンビニで安価で買えるものの中で、私はフランクフルトなどを勧めています。からあげはなどは、その衣が気になりますが、そんなに悪くないとも説明しています。」
フランクフルトは1本50g中6.2gの糖質ですので、ギリギリですね。
私は近所のスーパーで、日本ハムの「新鮮生活ZERO糖質ゼロスティックソーセージ」を買いだめして冷蔵庫にストックしています。賞味期限も1ヶ月半くらいはあるので便利です。病院に行くときも持って行ったりしています。同様に『蒸し大豆』も買いだめして適宜間食しています。
唐揚げの衣・・・片栗粉5gないしは小麦粉5g糖質の総量はおおよそ4g/1人前ですので、普通の唐揚げならOK食品ですね。
焼き鳥の塩焼きがあれば、これもいいですね。甘だれの焼き鳥は、砂糖が半端じゃないので×です。
ゆで卵とか燻製卵とか温泉卵もコンビニOK食品です。生ハムやサラミソーセージもOK食品です。かみ応えがあるところで、鮭とばや天日干しのスルメや貝柱もいいですね。タン塩やミミガーやツブ貝もありますよ。
何だか、いつの間にやらお酒のおつまみ風になってしまうきらいはありますが、私も診療の合間などに間食しています。
糖尿人の皆さんも、1回の糖質量だけをチェックして、いろいろ工夫して、美味しく楽しく間食もして頂けばと思います。 (^^)
江部康二
*<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。対照群は30数%の脂質熱量比率と思われます。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的には、トップランクに位置する権威あるものです。権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
つまり糖質制限食では相対的に高脂肪食となりますが、脂肪をたくさん摂取したグループにおいても、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクが増えることはなく、総コレステロール値に関しても有意差はなく、その安全性が保証されたことになります。
今テニスを終えて、コンビニによって、帰ってきたところです。
今日は、スタイルフリーとうずらの卵、タン塩、ツブ貝と氷を買いました。
さて、糖質制限中の間食について、内科大学院生さんからコメント・質問をいただきました。
「0/08/12 内科大学院生
糖質制限中の間食について
江部先生
こんばんは。
今日は糖質制限の間食について、ご相談があります。
私の患者さんの中に間食をやめられないという人が結構います。
糖質制限の効果は理解していて、食事のご飯を減らすなどしてある程度は改善するのですが、間食や夜勤前や夜勤中の間食のコントロールがどうしてもうまくいかず、HbA1cやGAが下がり止まっているのです。
先生は間食に、チーズやナッツ類、アボカドなどを勧めていらっしゃいますが、コレステロールが高くなることや高カロリーを気にして、避ける患者さんも多いですし、チーズだけを食べるのは難しい方も多くいます。お酒を飲む方はチーズだけでも好みますが・・・
果物などは少量(糖質10g以下)にしても、中性脂肪が上がりやすいですし、果糖はその多くはブドウ糖に変わらないとはいえ、私の印象では果物は他の食品に比べ、血糖値を上昇させやすい部類ものだと思っているので、あまり勧めていません。
(今度、私の患者さんで試した果物だけの血糖上昇の変化について、お示しさせていただきますね。糖質量をほぼ一緒にしても、血糖値の上がりやすさにはかなりの違いがありました。特にブドウ、バナナ、パイナップル、スイカは血糖値がかなり高くなります)
本当は、『蒸し大豆』などを勧めたいのですが、購入できる店が限られており、インターネットを使わない患者さまが手に入れるのは難しいです。
ソイジョイなどは確かに糖質11-13gぐらいですが、中高年以上には受け入れられにくい食品です。
おやつに納豆、豆腐、厚揚げ、アボカドというのも持ち運びが難しく、車内で食べるのには非常に困難ですし、やはりおやつにはなかなか食べにくい食、品のようです。
おからマドレーヌなどを自分で作れる方は別ですが、ご多忙の方も多く、
『どこのコンビニでも買えるもので、高くないものを教えて下さい』 というリクエストも多いです。
結局、時間が無いので、夜勤に向かう車の中でおにぎりやサンドイッチで済ませてしまう方が多いのです。
当然、食後の血糖は250以上になってしまいます。
カロリーが低いからと言って、せんべいを食べて、血糖値が上昇してしまう方もたくさんいます。
こういう方にはとにかく商品の糖質量をチェックするように説明してはおりますが・・・
ソーセージよりは糖質が多いですが、コンビニで安価で買えるものの中で、私はフランクフルトなどを勧めています。からあげはなどは、その衣が気になりますが、そんなに悪くないとも説明しています。
ぶしつけな質問で大変申し訳ありませんが、簡単にお店で買うことが出来て、間食にお勧めの食品を教えていただけますか?
宜しくお願い致します。
内科大学院生 」
内科大学院生さん。
いつもコメントありがとうございます。
「先生は間食に、チーズやナッツ類、アボカドなどを勧めていらっしゃいますが、
コレステロールが高くなることや高カロリーを気にして、避ける患者さんも多いですし、チーズだけを食べるのは難しい方も多くいます。お酒を飲む方はチーズだけでも好みますが・・・」
チーズやナッツ類、アボカドは確かに高脂肪・高カロリーですが、糖質制限食OK食材であり、コレステロールを上げることもないと思いますよ。
<米国医師会雑誌2006年2月8日号>の論文をみても高脂肪・高カロリー食が総コレステロール値を上昇させることはありませんでした。*
私自身も、スーパー糖質制限食8年間、高脂肪・高タンパク食で、チーズやナッツ類は日常的に間食していますが、データは
TC:228
TG:30
HDL-C:119.0
LDL-C:103
です。
「果物などは少量(糖質10g以下)にしても、中性脂肪が上がりやすいですし、果糖はその多くはブドウ糖に変わらないとはいえ、私の印象では果物は他の食品に比べ、血糖値を上昇させやすい部類ものだと思っているので、あまり勧めていません。
(今度、私の患者さんで試した果物だけの血糖上昇の変化について、お示しさせていただきますね。糖質量をほぼ一緒にしても、血糖値の上がりやすさにはかなりの違いがありました。特にブドウ、バナナ、パイナップル、スイカは血糖値がかなり高くなります)」
果物は、仰有る通り、アボカド以外は、糖質制限食△~×食品ですね。
私も基本的にはあまり奨めません。
私の場合は、糖質制限食で血糖コントロールはよくなったけれど、痩せて困るというようなタイプに限り、果物の間食を奨めています。1回1/3個くらいを1日2~3回です。このような痩せで少食タイプは数%おられます。
「ソーセージよりは糖質が多いですが、コンビニで安価で買えるものの中で、私はフランクフルトなどを勧めています。からあげはなどは、その衣が気になりますが、そんなに悪くないとも説明しています。」
フランクフルトは1本50g中6.2gの糖質ですので、ギリギリですね。
私は近所のスーパーで、日本ハムの「新鮮生活ZERO糖質ゼロスティックソーセージ」を買いだめして冷蔵庫にストックしています。賞味期限も1ヶ月半くらいはあるので便利です。病院に行くときも持って行ったりしています。同様に『蒸し大豆』も買いだめして適宜間食しています。
唐揚げの衣・・・片栗粉5gないしは小麦粉5g糖質の総量はおおよそ4g/1人前ですので、普通の唐揚げならOK食品ですね。
焼き鳥の塩焼きがあれば、これもいいですね。甘だれの焼き鳥は、砂糖が半端じゃないので×です。
ゆで卵とか燻製卵とか温泉卵もコンビニOK食品です。生ハムやサラミソーセージもOK食品です。かみ応えがあるところで、鮭とばや天日干しのスルメや貝柱もいいですね。タン塩やミミガーやツブ貝もありますよ。
何だか、いつの間にやらお酒のおつまみ風になってしまうきらいはありますが、私も診療の合間などに間食しています。
糖尿人の皆さんも、1回の糖質量だけをチェックして、いろいろ工夫して、美味しく楽しく間食もして頂けばと思います。 (^^)
江部康二
*<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。対照群は30数%の脂質熱量比率と思われます。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的には、トップランクに位置する権威あるものです。権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
つまり糖質制限食では相対的に高脂肪食となりますが、脂肪をたくさん摂取したグループにおいても、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクが増えることはなく、総コレステロール値に関しても有意差はなく、その安全性が保証されたことになります。
2010年08月15日 (日)
おはようございます。
ベイスンが、耐糖能異常に対して保険適応となってました。
この件に関して、千咲さん、ゆうこさんから、コメント・質問をいただきました。
「10/08/14 千咲
予備軍での薬の処方について
先日は大阪近郊の医院をご紹介くださり、ありがとうございました。(お礼が遅くなってすみません)
きちんと診断を受けたわけではありませんが、おそらく食後高血糖のある糖尿病予備軍であるとの自覚のある、37歳女性です。
最近ゆるゆるとHbA1Cが上昇してきているので、自己流ではありますが、ここ半年ほど前から糖質制限を心がけた食生活に変えています。
ただ、自己血糖測定をしているわけではないので、実際に糖質を摂取した場合、どのくらい血糖値が上がっているのかはわかりません。
よく先生のブログで、糖質制限を行っている場合でも糖質を取らざるを得ない状況の時などのみ、ベイスンあるいはグルファストなどを食前服用し、食後の高血糖を押さえるというやり方をお見かけしますが、こちらは保険適用であるとのこと。
私のように、今はまだ糖尿人ではないが、予防を為に食後高血糖にならないように気をつけているなどの場合はこのような方法は取れないということでしょうか?
それとも、まだ糖尿病との診断がおりてなければ、たまの外食などで高血糖になってもそれほど神経質にならなくてもよいのか。糖質制限について、色々と調べたりするにつれて、糖質を摂取する事が怖くなってしまいます。
それなら、自己血糖測定をすればいいだけの話かもしれませんが・・・。」
「10/08/14 ゆうこ
ベイスン
日本では昨年、ベイスンが糖尿病予備軍に対する処方が保険診療で認可されたので、まずは診察を受けてみてはいかがですか?」
千咲さん、ゆうこさん。
コメントありがとうございます。
「ベイスンが耐糖能異常に対して保険適応になった。」
という話しを聞いた記憶がかすかにあったような気がしますが、すっかり忘れていました。( ̄_ ̄|||)
ゆうこさん、思い出させていただいて感謝です。
念のために調べてみました。
☆☆☆ ミクス outline
武田薬品 糖尿病治療薬ベイスンで糖尿病予防効能の承認取得
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38064/Default.aspx
公開日時 2009/10/20 05:01
【武田薬品は10月19日、糖尿病治療薬ベイスン錠0.2、同OD錠0.2(一般名:ボグリボース)に、血糖値を正常に戻す力を示す耐糖能に異常がある患者の、2型糖尿病の発症を抑制する効能追加承認を日本で取得したと発表した。
この効能の取得は日本で初めてという。承認は16日付で取得した。ただし投与は、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る。
厚生労働省保険局医療課は承認と同時に、健康保険上の取り扱いを通知し、耐糖能異常と判断された上で
「食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されず、かつ高血圧症、脂質異常症(高トリグリセド血症、低HDLコレステロール血症等)のいずれかほ基礎疾患として有する患者を対象とする場合に限り、保険適用されるものとする」との見解を示した。
同社によると、これまでの臨床試験ではほどんど患者がいずれかを有していた。耐糖能異常の患者数を明確に示したデータはないという。ベイスンの08年度国内売上高は471億円。この効能で欧米への申請はしていない。】
2010年10月16日に、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制に、ベイスン錠0.2、同OD錠0.2が、保険適応となったのですね。
ベイスン錠0.3、同OD錠0.3は、耐糖能異常には適応となっていません。下記ベイスンの効能*をご参照ください。
保険適応となるためには、一定のハードルがあります。
①耐糖能異常**と判断され、糖尿病発症抑制の基本である食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されず、かつ高血圧症、脂質異常症(高トリグリセリド血症、低HDL コレステロール血症等)のいずれかを基礎疾患として有する患者を対象とする場合に限り、保険適用される。
②診療報酬明細書には、耐糖能異常と判断した根拠(判断した年月日とその結果)、食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されなかった旨及び高血圧症又は脂質異常症の診断名を記載する。
つまり①②をクリアしないと保険適応となりません。
千咲さん、とりあえず主治医と相談してみて下さいね。
江部康二
*ベイスンの効能
【効能A】
糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)
【効能B】
耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制(錠0.2のみ)(ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)
**耐糖能異常
空腹時血糖値が110mg/dl~126mg/dL未満あるいは
75g経口ブドウ糖負荷試験の血糖2時間値が140~199mg/dL
ベイスンが、耐糖能異常に対して保険適応となってました。
この件に関して、千咲さん、ゆうこさんから、コメント・質問をいただきました。
「10/08/14 千咲
予備軍での薬の処方について
先日は大阪近郊の医院をご紹介くださり、ありがとうございました。(お礼が遅くなってすみません)
きちんと診断を受けたわけではありませんが、おそらく食後高血糖のある糖尿病予備軍であるとの自覚のある、37歳女性です。
最近ゆるゆるとHbA1Cが上昇してきているので、自己流ではありますが、ここ半年ほど前から糖質制限を心がけた食生活に変えています。
ただ、自己血糖測定をしているわけではないので、実際に糖質を摂取した場合、どのくらい血糖値が上がっているのかはわかりません。
よく先生のブログで、糖質制限を行っている場合でも糖質を取らざるを得ない状況の時などのみ、ベイスンあるいはグルファストなどを食前服用し、食後の高血糖を押さえるというやり方をお見かけしますが、こちらは保険適用であるとのこと。
私のように、今はまだ糖尿人ではないが、予防を為に食後高血糖にならないように気をつけているなどの場合はこのような方法は取れないということでしょうか?
それとも、まだ糖尿病との診断がおりてなければ、たまの外食などで高血糖になってもそれほど神経質にならなくてもよいのか。糖質制限について、色々と調べたりするにつれて、糖質を摂取する事が怖くなってしまいます。
それなら、自己血糖測定をすればいいだけの話かもしれませんが・・・。」
「10/08/14 ゆうこ
ベイスン
日本では昨年、ベイスンが糖尿病予備軍に対する処方が保険診療で認可されたので、まずは診察を受けてみてはいかがですか?」
千咲さん、ゆうこさん。
コメントありがとうございます。
「ベイスンが耐糖能異常に対して保険適応になった。」
という話しを聞いた記憶がかすかにあったような気がしますが、すっかり忘れていました。( ̄_ ̄|||)
ゆうこさん、思い出させていただいて感謝です。
念のために調べてみました。
☆☆☆ ミクス outline
武田薬品 糖尿病治療薬ベイスンで糖尿病予防効能の承認取得
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/38064/Default.aspx
公開日時 2009/10/20 05:01
【武田薬品は10月19日、糖尿病治療薬ベイスン錠0.2、同OD錠0.2(一般名:ボグリボース)に、血糖値を正常に戻す力を示す耐糖能に異常がある患者の、2型糖尿病の発症を抑制する効能追加承認を日本で取得したと発表した。
この効能の取得は日本で初めてという。承認は16日付で取得した。ただし投与は、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る。
厚生労働省保険局医療課は承認と同時に、健康保険上の取り扱いを通知し、耐糖能異常と判断された上で
「食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されず、かつ高血圧症、脂質異常症(高トリグリセド血症、低HDLコレステロール血症等)のいずれかほ基礎疾患として有する患者を対象とする場合に限り、保険適用されるものとする」との見解を示した。
同社によると、これまでの臨床試験ではほどんど患者がいずれかを有していた。耐糖能異常の患者数を明確に示したデータはないという。ベイスンの08年度国内売上高は471億円。この効能で欧米への申請はしていない。】
2010年10月16日に、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制に、ベイスン錠0.2、同OD錠0.2が、保険適応となったのですね。
ベイスン錠0.3、同OD錠0.3は、耐糖能異常には適応となっていません。下記ベイスンの効能*をご参照ください。
保険適応となるためには、一定のハードルがあります。
①耐糖能異常**と判断され、糖尿病発症抑制の基本である食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されず、かつ高血圧症、脂質異常症(高トリグリセリド血症、低HDL コレステロール血症等)のいずれかを基礎疾患として有する患者を対象とする場合に限り、保険適用される。
②診療報酬明細書には、耐糖能異常と判断した根拠(判断した年月日とその結果)、食事療法及び運動療法を3~6ヵ月間行っても改善されなかった旨及び高血圧症又は脂質異常症の診断名を記載する。
つまり①②をクリアしないと保険適応となりません。
千咲さん、とりあえず主治医と相談してみて下さいね。
江部康二
*ベイスンの効能
【効能A】
糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)
【効能B】
耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制(錠0.2のみ)(ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)
**耐糖能異常
空腹時血糖値が110mg/dl~126mg/dL未満あるいは
75g経口ブドウ糖負荷試験の血糖2時間値が140~199mg/dL
2010年08月14日 (土)
おはようございます。
今朝も蝉がうるさく鳴いてます。
さて今回は、スーパー糖質制限食と1回の糖質摂取量について、dancing-ufoさんからコメント・質問をいただきました。
「10/08/13 dancing-ufo
大変勇気づけられます。
はじめまして。
47歳、悩める会社員です。
先日の人間ドックで 空腹時血糖値121、haic6.1と衝撃的な数値が でてしまい、9月下旬に経口ブドウ糖検査を 受けることとなりました。
身から出たサビなので運命と割り切って受け入れるしかないとは思いつつも、何とか数値を改善させたいといろいろなサイトを観ていたところ、先生のブログに出会いました。
私もさっそく糖質制限食に挑戦しております。
(3食主食抜き)
はじめはこれで体がもつのか?
とは思いましたが、 人生がかかっているだけあって、 意外と続けられそうです。
とにかく頑張ってみます。
そこで、先生に一つ質問があるのですが、糖質12g入りのプロテインダイエットというダイエット食を朝食に使おうと思っておりますが、 この程度の糖質の摂取はよろしいでしょうか。
先生がお考えになっている1日の糖質摂取量は どの程度までとお考えでしょうか。 御意見を賜れば幸甚に存じます。
吉報をお届けできるよう、 頑張ってみます。
ありがとうございました。」
dancing-ufoさん。
スーパー糖質制限食では、1回の糖質量を<10~20g>が目安です。
スーパー糖質制限食における糖質は、ほとんどが野菜分の糖質です。
」
私の場合は1日2食ですので、糖質摂取量は、
<10~20g>×2回/日
となります。
昼は病院の給食なら約500キロカロリーです。夕食は1200~1500キロカロリーです。
それに加えて、「糖質ゼロ発泡酒+焼酎水割り3~5杯」です。
1日3食の人は糖質摂取量は
<10~20g>×3回/日
が目安です。
高雄病院の給食では、スーパー糖質制限食で、1日3食で、1200~1600キロカロリーのメニューがあります。1回の糖質量は、<10~15g>くらいです。
「糖質12g入りのプロテインダイエットというダイエット食を朝食に使おうと思っております。」
この糖質量なら、上述の目安に照らし合わせるとOKですね。
「はじめはこれで体がもつのか? とは思いましたが、 人生がかかっているだけあって、 意外と続けられそうです。」
糖質制限食ですので、脂質・タンパク質はカロリー無制限でお腹いっぱい食べてもらってよろしいですよ。
約9割の人はそんなものですが、約数%非常な大食漢のタイプがおられます。
プロレスラーやお相撲さんはおいといて、例えば、ステーキ400~500gは普通に食べるとか、ヨーグルト500g入りを1箱は1回で食べるし1日3箱でも普通に食べる・・・・
こういった大食漢タイプの人は、「糖質制限食+カロリー制限食」を念頭において頂くこととなります。
一応、日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリーが目安ですね。
なお、糖質制限食は人類草創期のご先祖様の食生活に戻るだけですので、そんなに変わった食事ということではありませんので・・・。
dancing-ufoさん、安心して美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
今朝も蝉がうるさく鳴いてます。
さて今回は、スーパー糖質制限食と1回の糖質摂取量について、dancing-ufoさんからコメント・質問をいただきました。
「10/08/13 dancing-ufo
大変勇気づけられます。
はじめまして。
47歳、悩める会社員です。
先日の人間ドックで 空腹時血糖値121、haic6.1と衝撃的な数値が でてしまい、9月下旬に経口ブドウ糖検査を 受けることとなりました。
身から出たサビなので運命と割り切って受け入れるしかないとは思いつつも、何とか数値を改善させたいといろいろなサイトを観ていたところ、先生のブログに出会いました。
私もさっそく糖質制限食に挑戦しております。
(3食主食抜き)
はじめはこれで体がもつのか?
とは思いましたが、 人生がかかっているだけあって、 意外と続けられそうです。
とにかく頑張ってみます。
そこで、先生に一つ質問があるのですが、糖質12g入りのプロテインダイエットというダイエット食を朝食に使おうと思っておりますが、 この程度の糖質の摂取はよろしいでしょうか。
先生がお考えになっている1日の糖質摂取量は どの程度までとお考えでしょうか。 御意見を賜れば幸甚に存じます。
吉報をお届けできるよう、 頑張ってみます。
ありがとうございました。」
dancing-ufoさん。
スーパー糖質制限食では、1回の糖質量を<10~20g>が目安です。
スーパー糖質制限食における糖質は、ほとんどが野菜分の糖質です。
」
私の場合は1日2食ですので、糖質摂取量は、
<10~20g>×2回/日
となります。
昼は病院の給食なら約500キロカロリーです。夕食は1200~1500キロカロリーです。
それに加えて、「糖質ゼロ発泡酒+焼酎水割り3~5杯」です。
1日3食の人は糖質摂取量は
<10~20g>×3回/日
が目安です。
高雄病院の給食では、スーパー糖質制限食で、1日3食で、1200~1600キロカロリーのメニューがあります。1回の糖質量は、<10~15g>くらいです。
「糖質12g入りのプロテインダイエットというダイエット食を朝食に使おうと思っております。」
この糖質量なら、上述の目安に照らし合わせるとOKですね。
「はじめはこれで体がもつのか? とは思いましたが、 人生がかかっているだけあって、 意外と続けられそうです。」
糖質制限食ですので、脂質・タンパク質はカロリー無制限でお腹いっぱい食べてもらってよろしいですよ。
約9割の人はそんなものですが、約数%非常な大食漢のタイプがおられます。
プロレスラーやお相撲さんはおいといて、例えば、ステーキ400~500gは普通に食べるとか、ヨーグルト500g入りを1箱は1回で食べるし1日3箱でも普通に食べる・・・・
こういった大食漢タイプの人は、「糖質制限食+カロリー制限食」を念頭において頂くこととなります。
一応、日本糖尿病学会の糖尿病食における推奨カロリーが目安ですね。
なお、糖質制限食は人類草創期のご先祖様の食生活に戻るだけですので、そんなに変わった食事ということではありませんので・・・。
dancing-ufoさん、安心して美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
2010年08月13日 (金)
こんばんは。
今回は、心温まるエピソードのご紹介です。
小福さんが、妊娠糖尿病で入院しておられた、産婦人科(小阪産病院)で、すんなり糖質制限食を提供していただいたということで、不思議 (∵)? 、かつ良かったなと思っていました。 (^_^)
その後、本ブログ糖尿人仲間の大阪のシンドバットさんから、コメントをいただいて、奥さんが小阪産病院の看護師さんであり、病院の栄養士さんに糖質制限食のアドバイスをして頂いたということが判明しました。
これで謎が解けました。
ありがとうございました。私からも御礼申し上げます。m(_ _)mV
糖質制限食・草の根ネットワークがうまく機能して、小福さん、とても良かったですね。大変嬉しい話題でした。
小福さん、総合病院ではいろいろ苦労されたようですが、無事出産でおめでとうございます。糖質制限食・草の根ネットワークがさらに広まっていけばいいですね。(^^)
江部康二
「10/08/12 小福
話題に取り上げていただいてありがとうございます
先生の優しい口調を思い出しながらコメント読ませていただきました(^^)
糖質制限にご協力いただけた病院は、大阪の小阪にある小阪産病院です。少々高めですが、看護士さんも先生もとっても親身になっていただけるすばらしい産婦人科です。
総合病院より個人病院の方が食事がいいとよく聞きます。糖質制限を実行されている妊婦さんは、個人病院で先に食事に協力していただけるか確認されるといいかもしれませんね。
それと、糖質制限中の方には、総合病院での出産はちょっと大変かもと言う印象を受けました。
私は、今回救急車で小阪産病院から未熟児で有名な総合病院へ救急車で搬送されての出産となったんですが、こちらの病院で食後高血糖の話をすると、「じゃ、主食は出さないでおきますね」とだけ言われました。で、出産後の朝食の内容が、牛乳・バナナ・食パン2枚・マーガリン・2口大のオムレツ・ブロッコリー1個だったので、主食である食パン2枚がない状態でおぼんに出されて閉口しました(×_×)
リスクのある妊婦さんと未熟児に関しては腕のいい安心できる有名な病院でしたので、赤ちゃん優先の私には仕方のないこと・・。主人に王将でおかずをたくさん買ってきてもらって電子レンジで温めてすごしました。
あと、マヨネーズ・ブロックチーズ・ナッツ・アボカドを冷蔵庫に入れて食べました。
出産後は、4日間の短期入院なので問題ありませんでしたが、総合病院で切迫早産や流産で入院の場合は、きっとやせ細って大変なことになってたなぁ~と、糖質制限者の産院選びの重要なことを痛感いたしました。
糖質制限中の妊婦さんは、不安でいっぱいだと思いますので、ご参考いただければと思います。」
「 10/08/12 大阪のシンドバッド
RE.話題に取り上げていただいてありがとうございます
江部先生 みなさん こんばんは
大阪のシンドバッドです。
小福さん ご出産おめでとうございます。
私のかみさんは小阪産病院の看護スタッフでして、 小福さんの事は存じておりましたよ(笑 )
院長先生にも以前糖質制限のことはかみさんから話をしてありますので、認識はして頂いているようです。
ただ今回は、スタッフ一同経験が無く栄養士さんは結構あたふたしていたようです。
それで、それとなく我が家の献立等を栄養士さんに伝えたそうです。
かみさんも、ついに糖質制限が広まってきたと実感したそうです。
なにはともあれおめでとうございます。」
「10/08/12 小福
大阪のシンドバッドさま
どうりでっ!
妊娠した時に、院長先生に反対されるかもと思いながら「糖質制限してます」って伝えたんです。
そしたら、「あぁ、炭水化物抜いてるだけでしょ」ってあっさり認めていただけて、驚いていたんです。
入院中の食事も、最初はじゃがいもが出たりでうまく伝わらず、その都度私がしたい食事を涙ながらに伝えていたんです。
2回目の入院の時は、何も伝えなくてもとろみ付けのカタクリをやめてくれたり、ばっちり糖質制限メニューになっていてビックリしてたんです!
大阪のシンドバッドさんのおかげだったんですね~ヽ(^◇^*)/
産婦人科に限らず総合病院でも糖質制限食を選択できる時代がくればいいなぁ~と望んでいます。
おかげ様で無事に出産できました。ありがとうございました。」
今回は、心温まるエピソードのご紹介です。
小福さんが、妊娠糖尿病で入院しておられた、産婦人科(小阪産病院)で、すんなり糖質制限食を提供していただいたということで、不思議 (∵)? 、かつ良かったなと思っていました。 (^_^)
その後、本ブログ糖尿人仲間の大阪のシンドバットさんから、コメントをいただいて、奥さんが小阪産病院の看護師さんであり、病院の栄養士さんに糖質制限食のアドバイスをして頂いたということが判明しました。
これで謎が解けました。
ありがとうございました。私からも御礼申し上げます。m(_ _)mV
糖質制限食・草の根ネットワークがうまく機能して、小福さん、とても良かったですね。大変嬉しい話題でした。
小福さん、総合病院ではいろいろ苦労されたようですが、無事出産でおめでとうございます。糖質制限食・草の根ネットワークがさらに広まっていけばいいですね。(^^)
江部康二
「10/08/12 小福
話題に取り上げていただいてありがとうございます
先生の優しい口調を思い出しながらコメント読ませていただきました(^^)
糖質制限にご協力いただけた病院は、大阪の小阪にある小阪産病院です。少々高めですが、看護士さんも先生もとっても親身になっていただけるすばらしい産婦人科です。
総合病院より個人病院の方が食事がいいとよく聞きます。糖質制限を実行されている妊婦さんは、個人病院で先に食事に協力していただけるか確認されるといいかもしれませんね。
それと、糖質制限中の方には、総合病院での出産はちょっと大変かもと言う印象を受けました。
私は、今回救急車で小阪産病院から未熟児で有名な総合病院へ救急車で搬送されての出産となったんですが、こちらの病院で食後高血糖の話をすると、「じゃ、主食は出さないでおきますね」とだけ言われました。で、出産後の朝食の内容が、牛乳・バナナ・食パン2枚・マーガリン・2口大のオムレツ・ブロッコリー1個だったので、主食である食パン2枚がない状態でおぼんに出されて閉口しました(×_×)
リスクのある妊婦さんと未熟児に関しては腕のいい安心できる有名な病院でしたので、赤ちゃん優先の私には仕方のないこと・・。主人に王将でおかずをたくさん買ってきてもらって電子レンジで温めてすごしました。
あと、マヨネーズ・ブロックチーズ・ナッツ・アボカドを冷蔵庫に入れて食べました。
出産後は、4日間の短期入院なので問題ありませんでしたが、総合病院で切迫早産や流産で入院の場合は、きっとやせ細って大変なことになってたなぁ~と、糖質制限者の産院選びの重要なことを痛感いたしました。
糖質制限中の妊婦さんは、不安でいっぱいだと思いますので、ご参考いただければと思います。」
「 10/08/12 大阪のシンドバッド
RE.話題に取り上げていただいてありがとうございます
江部先生 みなさん こんばんは
大阪のシンドバッドです。
小福さん ご出産おめでとうございます。
私のかみさんは小阪産病院の看護スタッフでして、 小福さんの事は存じておりましたよ(笑 )
院長先生にも以前糖質制限のことはかみさんから話をしてありますので、認識はして頂いているようです。
ただ今回は、スタッフ一同経験が無く栄養士さんは結構あたふたしていたようです。
それで、それとなく我が家の献立等を栄養士さんに伝えたそうです。
かみさんも、ついに糖質制限が広まってきたと実感したそうです。
なにはともあれおめでとうございます。」
「10/08/12 小福
大阪のシンドバッドさま
どうりでっ!
妊娠した時に、院長先生に反対されるかもと思いながら「糖質制限してます」って伝えたんです。
そしたら、「あぁ、炭水化物抜いてるだけでしょ」ってあっさり認めていただけて、驚いていたんです。
入院中の食事も、最初はじゃがいもが出たりでうまく伝わらず、その都度私がしたい食事を涙ながらに伝えていたんです。
2回目の入院の時は、何も伝えなくてもとろみ付けのカタクリをやめてくれたり、ばっちり糖質制限メニューになっていてビックリしてたんです!
大阪のシンドバッドさんのおかげだったんですね~ヽ(^◇^*)/
産婦人科に限らず総合病院でも糖質制限食を選択できる時代がくればいいなぁ~と望んでいます。
おかげ様で無事に出産できました。ありがとうございました。」
2010年08月12日 (木)
こんばんは。
妊娠糖尿病の新診断基準ですが、日本糖尿病学会2010年7月1日発効の文章に記載されていました。
従いまして今回の
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
は、
「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準ということになります。
ここに訂正させていただきます。
江部康二
妊娠糖尿病の新診断基準ですが、日本糖尿病学会2010年7月1日発効の文章に記載されていました。
従いまして今回の
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
は、
「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準ということになります。
ここに訂正させていただきます。
江部康二
2010年08月12日 (木)
おはようございます。
夜中午前2時か3時頃から、猛烈な雨が降り始めました。
うつらうつらしていたら、ピカッと光ってゴロゴロゴロ!!
慌てて、午前4時頃起き出して、つけっぱなしのパソコンの電源を落とすため、うろうろしていたら、家人に泥棒と間違われて閉口しました。(-_-;)
さて今回は、小福さんから、妊娠糖尿病になり糖質制限食で無事出産という嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/11 小福
先生のおかげで、無事出産できました
大阪講演の時にいろいろ質問させていただいた妊婦ですが、覚えていらっしゃいますでしょうか?
昨年の6月より糖質制限をしております。
hba1c5.8%→5.0%を維持するようになり、3人目の子供を授かることができました。
これも先生のおかげだと感謝しております。
さて、今回妊娠できたものの切迫流産、切迫早産と2度入院することになりました。
切迫早産の入院中、ウテメリンを点滴をすることになったんですが、ブドウ糖を使うということで、生理食塩水に変更してもらうことになりました。
ところが、ウテメリンのせいか、シックデイ状態だったためか、食事前にもかかわらず常時尿糖検査薬でプラスがでるようになりました。
私が通っていた産婦人科は、糖質制限食メニューで対応していただけたため、捕食にアボカドやナッツや納豆を持ち込むことで体重の急激な減少なしに過ごすことができましたが、やはり尿糖がプラス状態で過ごすというのは不安でなりませんでした。
結局、予定日10月8日だったのが2ヶ月も早く、8月1日に産まれたため、点滴期間2週間で済みました。
2週間も常時尿糖プラスでしたが、無事1400gの元気な男の子を出産することができました。
ありがとうございました。
出産後、ひとつわからないことが起こりました。
それは、以前より耐糖能がアップしている様なのです。痩せのインスリン分泌遅延の私は、炭水化物1gで5mg血糖値が上昇します。
今は、少し食事にやきそばひとくちとかご飯ひとくちとか、カツとかプラスで食べても尿糖がおりないのです。
おやつにミスタードーナツのフレンチクルーラー(糖質約11g)を食べても搾乳をすぐにすれば血糖値の上昇が抑えられています。
これは、やはり授乳が終わると元に戻るのでしょうか?
一生口にできないと思っていた食べ物を許容範囲が増えた今の間にちょっと食べておきたいなぁなんて思いがあります。血糖値を測定しながらできる範囲までの炭水化物を摂取しても問題ないでしょうか?
また、乳糖として体外へ糖を出すことができているのであれば、その母乳を赤ちゃんが飲んでも糖尿になったりしないでしょうか?
長くなりましたが、ご教授いただきますようお願いいたします。
最後に、糖質制限食をされているさまざまな方(妊婦編、病気入院編、痩せた糖尿患者編など)がどうやって乗り越えたらいいか入院先の先生への対策、低炭水化物&高カロリーメニューなどの本が出版されれば今後の励みになると思いますので、よろしくお願いいたします。」
小福さん。
赤ちゃん誕生、おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
「私が通っていた産婦人科は、糖質制限食メニューで対応していただけたため、捕食にアボカドやナッツや納豆を持ち込むことで体重の急激な減少なしに過ごすことができましたが、やはり尿糖がプラス状態で過ごすというのは不安でなりませんでした。」
糖質制限食メニューで対応していただける産婦人科とは、素晴らしいですね。もし差し支えなければ、その産婦人科の名称をご教示いただけば幸いです。
ウテメリンは、切迫流産のときに使うお薬で、子宮の筋肉の収縮をおさえて、流産を防止します。副作用としてまれに高血糖がありますが、これはやむをえなかったことと思います。尿糖陽性には、仰有るとおり、シック・デイも関係しているかもしれません。
「血糖値を測定しながらできる範囲までの炭水化物を摂取しても問題ないでしょうか? 」
問題ないと思いますよ。
2010年08月09日 (月)のブログのえみこさんも、糖質制限食実践で耐糖能が改善しておられます。小福さんも、耐糖能が改善している可能性もありますね。また、お乳は血液から作っていますから、当然そこに血糖も入ります。
「ミスタードーナツのフレンチクルーラー(糖質約11g)を食べても搾乳をすぐにすれば血糖値の上昇が抑えられています。」
これはお乳に血糖が移行して、母体の血糖値上昇が抑えられているように思います。
「乳糖として体外へ糖を出すことができているのであれば、その母乳を赤ちゃんが飲んでも糖尿になったりしないでしょうか? 」
母乳の乳糖は、赤ちゃんの主食です。赤ちゃんは糖尿病ではないので、普通に乳糖を消化吸収して、すくすく育ってくれることでしょう。
日本糖尿病・妊娠学会によれば
1.授乳は2型糖尿病の発症予防につながる
2.1型糖尿病の発生率は母乳を飲んでいた子供で低い
3.妊娠糖尿病だった女性では授乳が糖尿病への進行を抑える
4.糖尿病母体から生まれた子供では母乳を飲んだ子の方が肥満や糖尿病の発生が少ない
などの研究発表があり、授乳は母親にも子供にも糖尿病によいとされています。
江部康二
夜中午前2時か3時頃から、猛烈な雨が降り始めました。
うつらうつらしていたら、ピカッと光ってゴロゴロゴロ!!
慌てて、午前4時頃起き出して、つけっぱなしのパソコンの電源を落とすため、うろうろしていたら、家人に泥棒と間違われて閉口しました。(-_-;)
さて今回は、小福さんから、妊娠糖尿病になり糖質制限食で無事出産という嬉しいコメントをいただきました。
「10/08/11 小福
先生のおかげで、無事出産できました
大阪講演の時にいろいろ質問させていただいた妊婦ですが、覚えていらっしゃいますでしょうか?
昨年の6月より糖質制限をしております。
hba1c5.8%→5.0%を維持するようになり、3人目の子供を授かることができました。
これも先生のおかげだと感謝しております。
さて、今回妊娠できたものの切迫流産、切迫早産と2度入院することになりました。
切迫早産の入院中、ウテメリンを点滴をすることになったんですが、ブドウ糖を使うということで、生理食塩水に変更してもらうことになりました。
ところが、ウテメリンのせいか、シックデイ状態だったためか、食事前にもかかわらず常時尿糖検査薬でプラスがでるようになりました。
私が通っていた産婦人科は、糖質制限食メニューで対応していただけたため、捕食にアボカドやナッツや納豆を持ち込むことで体重の急激な減少なしに過ごすことができましたが、やはり尿糖がプラス状態で過ごすというのは不安でなりませんでした。
結局、予定日10月8日だったのが2ヶ月も早く、8月1日に産まれたため、点滴期間2週間で済みました。
2週間も常時尿糖プラスでしたが、無事1400gの元気な男の子を出産することができました。
ありがとうございました。
出産後、ひとつわからないことが起こりました。
それは、以前より耐糖能がアップしている様なのです。痩せのインスリン分泌遅延の私は、炭水化物1gで5mg血糖値が上昇します。
今は、少し食事にやきそばひとくちとかご飯ひとくちとか、カツとかプラスで食べても尿糖がおりないのです。
おやつにミスタードーナツのフレンチクルーラー(糖質約11g)を食べても搾乳をすぐにすれば血糖値の上昇が抑えられています。
これは、やはり授乳が終わると元に戻るのでしょうか?
一生口にできないと思っていた食べ物を許容範囲が増えた今の間にちょっと食べておきたいなぁなんて思いがあります。血糖値を測定しながらできる範囲までの炭水化物を摂取しても問題ないでしょうか?
また、乳糖として体外へ糖を出すことができているのであれば、その母乳を赤ちゃんが飲んでも糖尿になったりしないでしょうか?
長くなりましたが、ご教授いただきますようお願いいたします。
最後に、糖質制限食をされているさまざまな方(妊婦編、病気入院編、痩せた糖尿患者編など)がどうやって乗り越えたらいいか入院先の先生への対策、低炭水化物&高カロリーメニューなどの本が出版されれば今後の励みになると思いますので、よろしくお願いいたします。」
小福さん。
赤ちゃん誕生、おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
「私が通っていた産婦人科は、糖質制限食メニューで対応していただけたため、捕食にアボカドやナッツや納豆を持ち込むことで体重の急激な減少なしに過ごすことができましたが、やはり尿糖がプラス状態で過ごすというのは不安でなりませんでした。」
糖質制限食メニューで対応していただける産婦人科とは、素晴らしいですね。もし差し支えなければ、その産婦人科の名称をご教示いただけば幸いです。
ウテメリンは、切迫流産のときに使うお薬で、子宮の筋肉の収縮をおさえて、流産を防止します。副作用としてまれに高血糖がありますが、これはやむをえなかったことと思います。尿糖陽性には、仰有るとおり、シック・デイも関係しているかもしれません。
「血糖値を測定しながらできる範囲までの炭水化物を摂取しても問題ないでしょうか? 」
問題ないと思いますよ。
2010年08月09日 (月)のブログのえみこさんも、糖質制限食実践で耐糖能が改善しておられます。小福さんも、耐糖能が改善している可能性もありますね。また、お乳は血液から作っていますから、当然そこに血糖も入ります。
「ミスタードーナツのフレンチクルーラー(糖質約11g)を食べても搾乳をすぐにすれば血糖値の上昇が抑えられています。」
これはお乳に血糖が移行して、母体の血糖値上昇が抑えられているように思います。
「乳糖として体外へ糖を出すことができているのであれば、その母乳を赤ちゃんが飲んでも糖尿になったりしないでしょうか? 」
母乳の乳糖は、赤ちゃんの主食です。赤ちゃんは糖尿病ではないので、普通に乳糖を消化吸収して、すくすく育ってくれることでしょう。
日本糖尿病・妊娠学会によれば
1.授乳は2型糖尿病の発症予防につながる
2.1型糖尿病の発生率は母乳を飲んでいた子供で低い
3.妊娠糖尿病だった女性では授乳が糖尿病への進行を抑える
4.糖尿病母体から生まれた子供では母乳を飲んだ子の方が肥満や糖尿病の発生が少ない
などの研究発表があり、授乳は母親にも子供にも糖尿病によいとされています。
江部康二
2010年08月11日 (水)
おはようございます。
妊娠糖尿病の診断基準が変更になりました。
内科大学院生さんから、コメント・情報をいただきました。
正確には「日本糖尿病・妊娠学会」の基準の変更です。
2010年6月21付けの日妊娠糖尿病診断基準検討委員会の広報に、そのことが記載してあります。
「10/08/10 内科大学院生
前日の妊娠糖尿病について
妊娠糖尿病についてですが、2010年に改定案がでております。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2010/03/009891.php
恐らくえみこさんは、それに従って妊娠糖尿病の診断を受けたのだと思います。
【妊娠糖尿病GDM 改定案】
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dL(5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dL(10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dL(8.5mmol/l)
えみこさんの場合は、空腹時の血糖値が93ですので、新基準(改定案)に従うと
妊娠糖尿病の診断になってしまいますね。
ただしコントロール目標については以前のものと変わりませんし、糖質制限食を続けることで間違いなく食後高血糖は防げますので、無事出産出来ると思います。
えみこさん、私の患者様でも糖質制限をし、無事妊娠、出産をしている妊婦さんは多くいますので、ご安心ください。
内科大学院生」
内科大学院生さん。
ありがとうございます。
従来の基準は、「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準です。
今回の
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
は、現時点では「日本糖尿病・妊娠学会」単独の基準ということです。
2010年08月09日 (月)のブログ記事の記載
75g糖負荷試験による妊娠糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会、日本産婦人科学会)
静脈血漿ブドウ糖値(mg/dl)
空腹時値 ≧100
負荷後1時間値 ≧180
負荷後2時間値 ≧150
以上のうち2つ以上を満たすもの
は現時点では、「日本糖尿病学会」の最新の基準ではあります。
おそらく、今後話し合いが持たれて、「日本糖尿病学会」も「日本糖尿病・妊娠学会」の新しい基準に合わせていくものと思われます。
日本糖尿病・妊娠学会の新しい定義【妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)】とは、
「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。」
現行の日本糖尿病学会の定義
妊娠糖尿病とは
「妊娠中に発症、もしくは初めて発見された認識された耐糖能低下」
新しい定義では、妊娠中に通常の糖尿病の診断基準を満たした時点で、妊娠糖尿病ではなく、「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」と診断されます。
つまり、妊娠糖尿病とは、糖尿病とはっきり確定する前段階の「糖代謝異常」のことだけを言うこととなります。
糖尿病よりは、軽い段階の糖代謝異常ですね。
定義が明確になり、わかりやすくなりました。その一方、妊娠糖尿病の基準は、今までより厳しく設定されています。
妊娠糖尿病は、各種の母体ならびに胎児・新生児合併症を生じること、分娩後にいったん正常化しても将来糖尿病に進展する可能性が高いことが確認されています。
そのため早期発見に努め、適切な治療・管理を行う必要があるので、今回の改正は、リーズナブルなものと思われます。
ブログ読者の妊娠糖尿病・糖尿病の妊婦さんで、糖質制限食を実践され、無事妊娠、出産というかたは複数おられます。また、内科大学院生さんの患者さんでも同様とのことですね。
そして、狩猟・採集生活だった頃のご先祖様や生肉・生魚が主食だった頃のイヌイットは、皆糖質制限食で妊娠・出産・育児・日常生活をしていたことも、お忘れなく。
妊娠糖尿病・糖尿病の妊婦さんも安心して糖質制限食を実践していただけると思います。
江部康二
以下は、妊娠糖尿病診断基準検討委員会の広報です。
☆☆☆
「妊娠糖尿病診断基準」変更について 2010年6月21日
日本糖尿病・妊娠学会会員各位
日本糖尿病・妊娠学会
理事長 中林正雄
妊娠糖尿病診断基準検討委員会
委員長 平松祐司
HAPO studyをもとにInternational Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)から提唱された妊娠糖尿病の世界共通診断基準につき、昨年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し検討してきました。その結果、下記のように決定しましたので報告いたします。
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。
妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)註1
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合*
*いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.国際標準化を重視する立場から、新しいHbA1C値(%)は、従来わが国で使用していたJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%を加えたNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値を使用するものとする。
註2.HbA1C< 6.5%未満(HbA1C(JDS)<6.1%未満)で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
検討委員会メンバー
委員長:平松祐司
理事長:中林正雄
産科:杉山 隆、安日一郎
内科:大森安恵、穴澤園子、清水一紀
妊娠糖尿病の診断基準が変更になりました。
内科大学院生さんから、コメント・情報をいただきました。
正確には「日本糖尿病・妊娠学会」の基準の変更です。
2010年6月21付けの日妊娠糖尿病診断基準検討委員会の広報に、そのことが記載してあります。
「10/08/10 内科大学院生
前日の妊娠糖尿病について
妊娠糖尿病についてですが、2010年に改定案がでております。
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2010/03/009891.php
恐らくえみこさんは、それに従って妊娠糖尿病の診断を受けたのだと思います。
【妊娠糖尿病GDM 改定案】
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dL(5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dL(10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dL(8.5mmol/l)
えみこさんの場合は、空腹時の血糖値が93ですので、新基準(改定案)に従うと
妊娠糖尿病の診断になってしまいますね。
ただしコントロール目標については以前のものと変わりませんし、糖質制限食を続けることで間違いなく食後高血糖は防げますので、無事出産出来ると思います。
えみこさん、私の患者様でも糖質制限をし、無事妊娠、出産をしている妊婦さんは多くいますので、ご安心ください。
内科大学院生」
内科大学院生さん。
ありがとうございます。
従来の基準は、「日本糖尿病・妊娠学会」と「日本糖尿病学会」の両方が合意した基準です。
今回の
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
は、現時点では「日本糖尿病・妊娠学会」単独の基準ということです。
2010年08月09日 (月)のブログ記事の記載
75g糖負荷試験による妊娠糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会、日本産婦人科学会)
静脈血漿ブドウ糖値(mg/dl)
空腹時値 ≧100
負荷後1時間値 ≧180
負荷後2時間値 ≧150
以上のうち2つ以上を満たすもの
は現時点では、「日本糖尿病学会」の最新の基準ではあります。
おそらく、今後話し合いが持たれて、「日本糖尿病学会」も「日本糖尿病・妊娠学会」の新しい基準に合わせていくものと思われます。
日本糖尿病・妊娠学会の新しい定義【妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)】とは、
「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。」
現行の日本糖尿病学会の定義
妊娠糖尿病とは
「妊娠中に発症、もしくは初めて発見された認識された耐糖能低下」
新しい定義では、妊娠中に通常の糖尿病の診断基準を満たした時点で、妊娠糖尿病ではなく、「妊娠時に診断された明らかな糖尿病」と診断されます。
つまり、妊娠糖尿病とは、糖尿病とはっきり確定する前段階の「糖代謝異常」のことだけを言うこととなります。
糖尿病よりは、軽い段階の糖代謝異常ですね。
定義が明確になり、わかりやすくなりました。その一方、妊娠糖尿病の基準は、今までより厳しく設定されています。
妊娠糖尿病は、各種の母体ならびに胎児・新生児合併症を生じること、分娩後にいったん正常化しても将来糖尿病に進展する可能性が高いことが確認されています。
そのため早期発見に努め、適切な治療・管理を行う必要があるので、今回の改正は、リーズナブルなものと思われます。
ブログ読者の妊娠糖尿病・糖尿病の妊婦さんで、糖質制限食を実践され、無事妊娠、出産というかたは複数おられます。また、内科大学院生さんの患者さんでも同様とのことですね。
そして、狩猟・採集生活だった頃のご先祖様や生肉・生魚が主食だった頃のイヌイットは、皆糖質制限食で妊娠・出産・育児・日常生活をしていたことも、お忘れなく。
妊娠糖尿病・糖尿病の妊婦さんも安心して糖質制限食を実践していただけると思います。
江部康二
以下は、妊娠糖尿病診断基準検討委員会の広報です。
☆☆☆
「妊娠糖尿病診断基準」変更について 2010年6月21日
日本糖尿病・妊娠学会会員各位
日本糖尿病・妊娠学会
理事長 中林正雄
妊娠糖尿病診断基準検討委員会
委員長 平松祐司
HAPO studyをもとにInternational Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)から提唱された妊娠糖尿病の世界共通診断基準につき、昨年末から日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会とも協議し検討してきました。その結果、下記のように決定しましたので報告いたします。
定義:
妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM):妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない糖代謝異常である。
妊娠時に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes in pregnancy)は含めない。
診断基準:
妊娠中に発見される耐糖能異常hyperglycemic disorders in pregnancyには、
1) 妊娠糖尿病gestational diabetes mellitus (GDM)、
2) 妊娠時に診断された明らかな糖尿病overt diabetes in pregnancy
の2つがあり次の診断基準により診断する
1)妊娠糖尿病 (GDM)
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl (5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl (10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl (8.5mmol/l)
2)妊娠時に診断された明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy
以下のいずれかを満たした場合に診断する。
1.空腹時血糖値≧126mg/dl
2.HbA1C ≧6.5%(HbA1C (JDS) ≧6.1%)註1
3.確実な糖尿病網膜症が存在する場合
4.随時血糖値≧200mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200mg/dlの場合*
*いずれの場合も空腹時血糖かHbA1Cで確認
註1.国際標準化を重視する立場から、新しいHbA1C値(%)は、従来わが国で使用していたJapan Diabetes Society (JDS)値に0.4%を加えたNational Glycohemoglobin Standardization Program(NGSP)値を使用するものとする。
註2.HbA1C< 6.5%未満(HbA1C(JDS)<6.1%未満)で75gOGTT 2時間値≧200mg/dlの場合は、妊娠時に診断された明らかな糖尿病とは判定し難いので、High risk GDMとし、妊娠中は糖尿病に準じた管理を行い、出産後は糖尿病に移行する可能性が高いので厳重なフォローアップが必要である。
検討委員会メンバー
委員長:平松祐司
理事長:中林正雄
産科:杉山 隆、安日一郎
内科:大森安恵、穴澤園子、清水一紀
2010年08月09日 (月)
こんにちは。
今回は、妊娠糖尿病と糖質制限食と耐糖能について、えみこさんからコメント・質問をいただきました。
糖質制限食実践で、明らかに耐糖能が改善し、75gブドウ糖負荷試験のデータが正常となっておられます。
山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫先生の、ご意見とは反する一例ですね。
「10/08/09 えみこ
タイトルなし
初めてコメントします。現在15週目の妊婦です。妊娠初期(7週)の血液検査で、ヘモグロビンA1Cが5.7で指摘を受けたため、いろいろ調べて糖質制限にたどりつき、スタンダード(たまにスーパー)糖質制限を始めました。
同じ時期に受けた健康診断での空腹時血糖は69でした。
そして今日75g糖負荷試験をうけ、 以下の結果となり、空腹時血糖で妊娠糖尿病と診断されました。
空腹時 93
1時間後 104
2時間後 93
空腹時血糖が上がっていることが気になっています。このまま糖質制限を続けることに、何か問題はありますでしょうか?」
えみこさん。
コメントありがとうございます。
妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)は、各種の母体ならびに胎児・新生児合併症を生じること、たとえ分娩後にいったん正常化しても将来糖尿病に進展する可能性が高いことから、その早期発見に努め、適切な治療・管理を行う必要があります。
以下は2009年発行の糖尿病専門医研修ガイドブックからの引用です。
1.妊娠糖尿病の定義
日本糖尿病学会は妊娠糖尿病とは
「妊娠中に発症、もしくは初めて発見された認識された耐糖能低下」
と定義しています。
2.75g糖負荷試験による妊娠糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会、日本産婦人科学会)
静脈血漿ブドウ糖値(mg/dl)
空腹時値 ≧100
負荷後1時間値 ≧180
負荷後2時間値 ≧150
以上のうち2つ以上を満たすもの
従いまして、現行の診断基準からは、えみこさんの75gブドウ糖負荷試験の検査結果
空腹時 93
1時間後 104
2時間後 93
は正常となります。
一方、妊娠初期(7週)の血液検査で、ヘモグロビンA1Cが5.7%ということは、平均血糖値がその時点で120mg/dlくらいあったことになりますので、主治医の仰有るように、妊娠糖尿病の可能性があったと思います。。
スタンダード(たまにスーパー)糖質制限食を実践したことで、膵臓のβ細胞が休養できて、耐糖能が改善したものと思われます。
空腹時 93 mg/dl、1時間後 104 mg/dl、2時間後 93mg/dlというのは、充分正常にインスリンが追加分泌され、インスリン作用はとても良く働いています。
糖尿病専門医研修ガイドブックによれば、健常妊婦のデータにおいても、空腹時と食後1時間の血糖値の差は、
30~40mgありますので、 えみこさんのほうが11mgしか上昇してなくて、インスリン作用としては、はるかに良いデータですね。
空腹時血糖値が69mg→93mgは、妊娠の進行とともにインスリン抵抗性は増すので、妊娠初期に妊娠糖尿病の可能性があり、その影響と思います。
ともあれ、妊娠中の血糖値コントロール目標は、
空腹時血糖値100mg/dl未満、
食後1時間値140mg/dl未満、
食後2時間血糖値120mg/dl未満、
HbA1c5.8%未満、
なのでえみこさん、空腹時も食後も充分達成していますよ。
75gブドウ糖負荷試験(液体の大量のブドウ糖)というのは、これ以上ないような血糖値を上げやすい条件ですので、通常の食事だともっといいデータの可能性があります。
このまま安心して、糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
今回は、妊娠糖尿病と糖質制限食と耐糖能について、えみこさんからコメント・質問をいただきました。
糖質制限食実践で、明らかに耐糖能が改善し、75gブドウ糖負荷試験のデータが正常となっておられます。
山梨医科大学名誉教授・佐藤章夫先生の、ご意見とは反する一例ですね。
「10/08/09 えみこ
タイトルなし
初めてコメントします。現在15週目の妊婦です。妊娠初期(7週)の血液検査で、ヘモグロビンA1Cが5.7で指摘を受けたため、いろいろ調べて糖質制限にたどりつき、スタンダード(たまにスーパー)糖質制限を始めました。
同じ時期に受けた健康診断での空腹時血糖は69でした。
そして今日75g糖負荷試験をうけ、 以下の結果となり、空腹時血糖で妊娠糖尿病と診断されました。
空腹時 93
1時間後 104
2時間後 93
空腹時血糖が上がっていることが気になっています。このまま糖質制限を続けることに、何か問題はありますでしょうか?」
えみこさん。
コメントありがとうございます。
妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)は、各種の母体ならびに胎児・新生児合併症を生じること、たとえ分娩後にいったん正常化しても将来糖尿病に進展する可能性が高いことから、その早期発見に努め、適切な治療・管理を行う必要があります。
以下は2009年発行の糖尿病専門医研修ガイドブックからの引用です。
1.妊娠糖尿病の定義
日本糖尿病学会は妊娠糖尿病とは
「妊娠中に発症、もしくは初めて発見された認識された耐糖能低下」
と定義しています。
2.75g糖負荷試験による妊娠糖尿病の診断基準(日本糖尿病学会、日本産婦人科学会)
静脈血漿ブドウ糖値(mg/dl)
空腹時値 ≧100
負荷後1時間値 ≧180
負荷後2時間値 ≧150
以上のうち2つ以上を満たすもの
従いまして、現行の診断基準からは、えみこさんの75gブドウ糖負荷試験の検査結果
空腹時 93
1時間後 104
2時間後 93
は正常となります。
一方、妊娠初期(7週)の血液検査で、ヘモグロビンA1Cが5.7%ということは、平均血糖値がその時点で120mg/dlくらいあったことになりますので、主治医の仰有るように、妊娠糖尿病の可能性があったと思います。。
スタンダード(たまにスーパー)糖質制限食を実践したことで、膵臓のβ細胞が休養できて、耐糖能が改善したものと思われます。
空腹時 93 mg/dl、1時間後 104 mg/dl、2時間後 93mg/dlというのは、充分正常にインスリンが追加分泌され、インスリン作用はとても良く働いています。
糖尿病専門医研修ガイドブックによれば、健常妊婦のデータにおいても、空腹時と食後1時間の血糖値の差は、
30~40mgありますので、 えみこさんのほうが11mgしか上昇してなくて、インスリン作用としては、はるかに良いデータですね。
空腹時血糖値が69mg→93mgは、妊娠の進行とともにインスリン抵抗性は増すので、妊娠初期に妊娠糖尿病の可能性があり、その影響と思います。
ともあれ、妊娠中の血糖値コントロール目標は、
空腹時血糖値100mg/dl未満、
食後1時間値140mg/dl未満、
食後2時間血糖値120mg/dl未満、
HbA1c5.8%未満、
なのでえみこさん、空腹時も食後も充分達成していますよ。
75gブドウ糖負荷試験(液体の大量のブドウ糖)というのは、これ以上ないような血糖値を上げやすい条件ですので、通常の食事だともっといいデータの可能性があります。
このまま安心して、糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二