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インクレチンとDPP-4阻害剤②
こんばんは。

国内初のDPP-4阻害剤ジャヌビアグラクティブ)が承認され、2009年12月に販売開始されました。

私も早速、10名ていどに処方しましたが、かなりの有効性がありました。

例えば、心は糖質制限食を目指しておられますが、身体が間食を求めるタイプのキャラで、なかなかコントロール良好となりがたい糖尿人・・・(-_-;)

高雄病院入院後、退院して数ヶ月はHbA1c6%くらいをキープしているけれど、徐々に緩んで6.5%、7%、7.5%・・・。

ちょっと引き締めて7.1%・・・。

また緩んで7.3%・・・。

こんな感じで1年あまり、なかなか7%を切れなかった糖尿人が、ジャヌビア内服1ヶ月でHbA1c6.3%と1%改善した例を経験しました。 (^_^)

また、糖質制限食は、食後高血糖は速やかに改善しますが、早朝空腹時血糖値だけはなかなか減りがたい場合があります。

このような糖尿人にジャヌビアを投与したところ、翌日にはSMBGで、早朝空腹時血糖値200mg→150mgと改善した例もありました。

使用経験、わずか1ヶ月ですが、このように明らかな有効例を複数経験しました。

では、このDPP-4阻害剤とは、いったいどんな薬なのでしょう?

それに答えるには、まずインクレチンの説明が必要です。

インクレチンとは、小腸から分泌されるホルモンであり、GIPとGlp-1があります。これらは高血糖時には、SU剤とは異なる機序でインスリン分泌を促進させます。またインスリン生合成を促進させます。
さらに動物モデルでは、膵β細胞の保護作用が確認されています。

血糖値が低いときにはインスリン分泌をほとんど促進させず、食後高血糖の時にインスリン分泌を促進させるので、低血糖も起こしにくいです。

まことに都合のいいホルモンなのですが、DPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのです。

このDPP-4という酵素の働きを阻害してやれば、インクレチンは血中に当分存在して、血糖降下作用を発揮してくれることになります。

そこで登場したのが、DPP-4阻害剤です。

この薬は内服薬であり、1日1回投与でよいので、使い勝手がいいです。まったく同じ成分(一般名シタグリプチン)の、ジャヌビア(万有製薬)とグラクティブ(小野製薬)が同時に発売されました。

健康保険収載で、SU剤、インスリン抵抗性改善剤(アクトス)、メトホルミンなどビグアナイド剤との併用もOKですし、単独使用もOKです。

理論的には、グルコバイなどαグルコシダーゼ阻害薬やグルファスト、そしてインスリンなどとも併用できそうな気がしますが、保険収載されていません。

膵β細胞保護作用など、糖質制限食的にも好ましいところがあるので、コントロールがあと一歩の糖尿人には、使ってみたいお薬ですね。

なお、インクレチンがDPP-4という酵素によって速やかに分解され、血中の半減期は約2分と短いのは、399万年の人類の進化の過程では、食後高血糖がほとんどなかったせいと考えられます。

農耕が始まり、食後高血糖が日常的に生じるようになった後は、インクレチンにおおいに活躍して欲しいところですが、如何せん399万年間の進化の重みは大きくて、DPP-4が律儀にすぐ分解してしまう癖がついているのですね。

今この時代にDPP-4阻害剤の登場、なんだか歴史の皮肉を感じます。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
膵島細胞移植
こんばんは。

今日は、雪がちらついて寒い一日でした。さきほど江部診療所の夜診を終えて帰宅しました。

昨夜の高雄病院の夜診終了直前、フジテレビ「とくダネ」から電話がかかってきました。

膵島細胞移植の早期拒絶反応を制御する方法を、福岡大学と理研が共同開発したということなので、コメントが欲しいとのことでした。

聞いてみると、糖尿病学会のえらい先生方に新聞記事のFAXを送信して、コメントを頼んだけど全然返信がなかったそうで、私のような下々の医師に電話がかかったみたいです。

FAXで新聞記事を送ってもらって読んでみました。

膵島細胞移植は、肝臓の門脈内注射で治療を行うことができるので、身体への負担が極めて少なく、かなり期待された治療法でした。血管内注射により肝臓の中に膵島細胞を移植するわけです。

ところが、免疫抑制剤を使用していても移植後数時間でおこる早期拒絶反応のため、移植した膵島細胞が破壊されてしまい、数回の移植を行う必要がありました。

この早期拒絶反応を起こすメカニズムにHMGB1というタンパク質が関わっていることを突き止めたそうです。

福岡大学と理研は今回、糖尿病モデルマウスを使って血中のHMGB1量を測定し、拒絶反応診断法と拒絶反応制御法を開発したそうです。

具体的にはHMGB1抗体を投与して、拒絶反応回避に成功し、移植効率が今までの約4倍と飛躍的に改善したそうです。

マウスでは成功したので、今後理論的にはヒトにも応用できそうです。

しかし、安全性を確立してヒトに応用できるまでには、今後数年以上は必要と思います。今後順調に研究が進めば、インスリン注射を打っている糖尿人には福音となりますね。

というわけで、今朝のフジテレビ「とくダネ」に江部康二の上記のようなコメントが放送されたようです。


江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
山芋・菊芋と血糖値
こんにちは。

昨晩は、結局、雪にはなりませんでした。

今冬は、まだ一回も積もるほどの雪はありませんでした。高雄病院は、山の麓なのでまだまだ安心はできませんが・・・。

さて、今回は、くわぽんさんから、山芋と菊芋についてコメント・質問をいただきました。


【10/01/30 くわぽん
タイトルなし
インフルエンザ、、、強毒性だったら凄まじいことになっていたと、、。パンデミックは止めようがないですね。
ところで、質問させてください。
山芋(長芋)のムチンが血糖値上昇を抑えると先生の本にありましたが、これは加熱したらダメということなのでしょうか?芋大好き人間だった?私の唯一の食える芋なので、気になります。
また、東京医科歯科大学の藤田名誉教授が「キク芋はでんぷんを含まず、イヌリンがあるので血糖値上昇は緩く糖尿病の人の主食に。」と新聞に書かれていましたが江部先生のデータにありましたらお聞かせ願えると幸せです。
勝手な質問で恐縮です。お暇がありましたらで結構ですので、、、。】


くわぽんさん。
山芋は加熱したら、普通に血糖値が上昇します。生だと、ムチンの働きで消化・吸収がゆっくりとなるので食後高血糖があるていど防げます。生なら他の芋よりははるかにましですが、糖質なのであるていど血糖値は上昇します。

次に、菊芋です。
五訂日本食品標準成分表によると
菊芋100g:35kcal
タンパク質 :1.9g
脂質:0.2g
糖質:13.1  ほとんどがイヌリン
食物繊維:2.0
水分:81.2g

菊芋は名前はイモと付きますが、キク科の多年草で、根はショウガの形に似たイモ状です。糖質はありますが、ジャガイモやサツマイモのようにデンプンは含まれていません。

フジ日本精糖は世界で初めて、砂糖からイヌリンを作ることに成功した会社です。
そのホームページによれば

「イヌリンは水に非常に良く溶ける食物繊維です。 普段よく食べているタマネギ、ゴボウなどといった多くの植物に存在します。キクイモやチコリには 特に多く含まれています。 血糖値の上昇を抑制するなど多くの生理作用が期待されるため、欧米では古くから糖尿病患者用の食事に利用されています。

食材 イヌリン含量
キクイモ 15~20%
チコリ 15~20%
ニンニク 9~16%
ニラ 3~10%
タマネギ 2~6%

イヌリンはヒトの胃や腸などの消化管では消化・吸収されにくい難消化性の糖質(食物繊維)です。消化・吸収される消化性糖質のでん粉やオリゴ糖とは異なり、胃や小腸ではまったく分解されません。大腸ではじめて腸内の善玉菌であるビフィズス菌などの餌として利用されます。イヌリンのカロリー値は、消化性糖質の約半分にあたる2kcal/gと推定されています。」

通常の糖質は4kcal/gですから、イヌリンは糖アルコールのマルチトール・ソルビトール・キシリトールなどと同じ程度のカロリーです。血糖値に関しては、やはり糖アルコールと同様に通常の半分くらい上昇させると思います。

100g中に13.1gのイヌリンですので、通常の糖質に換算したら6.5gということになります。

1gの糖質が3mg血糖値を上昇させます。

菊芋は、大量に食べなければ食後血糖値が180mgを超えないと思います。しかし、300gも食べると食後血糖値180mgを超える可能性がありますので注意が必要です。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
日本糖尿病学会・関東甲信越地方会2010.1.30(土)山田悟先生
こんばんは。

今日は、朝から雨がしとしと降り続けています。先ほどからみぞれに変わり、明日の朝が心配です。

さて、今日のブログはとても嬉しい話題です。

2010年1月30日(土)大宮ソニックシティにおいて、日本糖尿病学会の関東甲信越地方会が開催されました。

その学会で北里大研究所病院・糖尿病センター長・山田悟先生(*)が、

「主食抜き指導にて血糖コントロールが改善した一例」

という演題で発表されました。

糖質制限食の普及という話題で、江部康二の紹介もして頂きました。

山田悟先生は、日本糖尿病学会専門医・指導医で、糖尿病専門医対象の教育講演もされています。

第2会場の最終演題だったそうで、通常は多くの聴衆は帰路についてしまい、会場は閑散としてしまうことがほとんどです。

ところが、予想に反して山田悟先生の演題発表の段階で、第二会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりで、発表に対して4人の質問者が立ち、座長が終了を宣言した後も、更に3人の質問者があり、かつてない大盛り上がり大会だったそうです。


質問

① 「どんな症例に低糖質食は合うのか、あるいはどんな症例だとうまくいかないのか」

② 「低糖質食の長期予後はどうか」

③ 「主食抜き指導でカロリーが低下したことが本症例にメリットをもたらしたのではないのか」

④ 「腎症の患者に対してはどうか。また、腎症をどのように評価するか。随時尿の尿たんぱくではアバウトではないのか。」

⑤ 「低糖質食を導入するに当たって運動療法を変更させたか?」

⑥ 「(山田が提示した)症例は、HbA1cが7%後半から6%前半まで改善しているが、正常化しているわけではない。もっと改善させるべく、どんなことをすべきだと思うか?」

⑦ 「脂質の摂取量が増えるが、どんな脂をとれと指導するのか?」

⑧ 「低糖質食にすることにより何kcal 増やしてもよいと指導するのか?」

⑨ 「炭水化物をどれくらい制限すると尿ケトンが出てくるのか?」

メールを頂きましたが、山田先生、全ての質問に丁寧にわかりやすく答えておられました。

この質問内容をみても、単に低糖質食に興味を覚えたというレベルではなく、実際にやってみるにあたってどうすればよいかという内容の質問が多数あり、低糖質食への意識の高まりを強く感じられたそうです。

いよいよ、糖尿病学会レベルでも、糖質制限食の認知度は高まってきているようです。
2010年度がおおいに楽しみです。

山田悟先生、お疲れさまでした。
ありがとうございました。


(*)
北里大研究所病院
糖尿病センター長
山田悟先生
出身: 慶応義塾大学医学部(1994卒)
研修: 慶応義塾大学病院
専門: 糖尿病
資格: 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医 ・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本医師会認定産業医


江部康二


☆☆☆糖質制限食・過去の学会発表
山門一平,江部康二,金大成,大櫛陽一:2型糖尿病における低炭水化物食の有用性とテーラーメード運動処方,第52回日本糖尿病学会年次学術集会.2009年

☆☆☆糖質制限食・過去の医学雑誌掲載
1)江部康二他:糖尿病食事療法として糖質制限食を実施した3症例,
      京都医学会雑誌51(1):125-130、2004
2)坂東浩,中村巧:カーボカウントと糖質制限食, 治療,90(12):3105-3111,2008
3) 江部康二:主食を抜けば(糖質を制限すれば)糖尿病は良くなる!,
  治療,91(4):682-683,2009
4)中村巧,坂東浩:昨日の常識・食事療法ではカロリー制限すべきである
今日の常識・食事療法では糖質制限すべきである 治療,91(12):2858-2859,2009
5)江部康二:低糖質食(糖質制限食carbohydrate restriction)の意義,
  内科,105(1):100-103,2010

テーマ:糖質制限食
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