2009年12月31日 (木)
おはようございます。
2009年もいよいよ押し迫ってきました。
来年の干支は寅で、実は私は寅年なんです。
誕生日はエルビス・プレスリーと一緒で、 (^^)
2010年1月には、とうとう還暦を迎えます。
本当は60才定年で、楽隠居といきたいところですが、糖質制限食との出会いで、ここ数年、年々忙しくなってます。
まあとりあえず日本医学界に糖質制限食が定着するまで、ぼちぼち頑張ってみますので、ブログ読者の皆さん、応援よろしくお願い申しあげます。 m(_ _)m
バンド「ターニング・ポイント」も、1994年から毎月第三金曜日に懲りずに、一回も休まず続けてます。
こちらもお近くのかたなど、あるいは遠方の方も、京都に来られたときは、是非お立ち寄り下さい。
場所
憧夢(どうむ) http://www.106215.jp/
住所 京都市右京区太秦下刑部町9
電話 075-861-2040
交通
①京都市地下鉄東西線、太秦天神川駅から北へ徒歩100m
②嵐電、天神川駅から北へ徒歩150m。
日時 毎月第三金曜日
Ⅰstage 8:00~8:45p.m.
Ⅱstage 9:15~10:00p.m.
2009年は私の本のご購入、講演会へのご参加などブログ読者の皆さんには大変お世話になりました。
ありがとうございました。m(_ _)mV
来年もよろしくお願い申しあげます。
それでは、皆さん良いお年を。ヾ(^▽^)
江部康二
2009年もいよいよ押し迫ってきました。
来年の干支は寅で、実は私は寅年なんです。
誕生日はエルビス・プレスリーと一緒で、 (^^)
2010年1月には、とうとう還暦を迎えます。
本当は60才定年で、楽隠居といきたいところですが、糖質制限食との出会いで、ここ数年、年々忙しくなってます。
まあとりあえず日本医学界に糖質制限食が定着するまで、ぼちぼち頑張ってみますので、ブログ読者の皆さん、応援よろしくお願い申しあげます。 m(_ _)m
バンド「ターニング・ポイント」も、1994年から毎月第三金曜日に懲りずに、一回も休まず続けてます。
こちらもお近くのかたなど、あるいは遠方の方も、京都に来られたときは、是非お立ち寄り下さい。
場所
憧夢(どうむ) http://www.106215.jp/
住所 京都市右京区太秦下刑部町9
電話 075-861-2040
交通
①京都市地下鉄東西線、太秦天神川駅から北へ徒歩100m
②嵐電、天神川駅から北へ徒歩150m。
日時 毎月第三金曜日
Ⅰstage 8:00~8:45p.m.
Ⅱstage 9:15~10:00p.m.
2009年は私の本のご購入、講演会へのご参加などブログ読者の皆さんには大変お世話になりました。
ありがとうございました。m(_ _)mV
来年もよろしくお願い申しあげます。
それでは、皆さん良いお年を。ヾ(^▽^)
江部康二
2009年12月30日 (水)
おはようございます。
今回は、太りたいみいさんから、嬉しいコメントをいただきました。
「09/12/29 太りたいみい
タイトルなし
年の暮れですね。お忙しいことと存じます。
糖質制限食を始めて1年4ヶ月、5.9が最高だったA1Cは、5.0になりました。体重も少しずつ増加して44kgで5kg近く増えました。
早朝空腹時血糖値は90~110です。糖質制限食2時間後は140くらいですが、付き合いの飲み会後はやはり高く出ます。先日、昼食に食べるものがなくてサンドイッチ(三角形の袋入り)を1袋食べたら217。糖質恐るべしです。
尿糖が出てからかなりのカロリー制限食を始めて、体重はどんどん減るし一度にたくさん食べれなくなり力も入らなくなっていました。糖質制限食と出会って、先生の本を購入したり立ち読みしたり(本屋さんごめんなさい)、ブログで勉強して今日に至りました。一度にたくさん食べられないので、太るために夜食食べてました(焼酎つき)が、そろそろやめなきゃと思っています。
一生もんの糖尿と落ち込んでいましたが、先生のブログで明るさを見出すことができました。本当にありがとうございます。
ラカントもあるし、糖質制限の御節を頑張って作ります。
どうぞ良いお年をお迎えください。」
太りたいみいさん。
コメントありがとうございます。
糖質制限食でHbA1c、血糖値の改善、良かったです。体重も5kg近く増えましたか、こちらも順調ですね。 (^_^)
糖質制限のお節ですか、砂糖の代わりにラカントSで美味しくできそうですね。
さて、
糖質制限食を実践すれば、8~9割の人は、カロリー計算無用で、その人の一番体調がいいときの体重に落ち着きます。
例えば、肥満傾向の人であれば、若い頃の体重に減量できます。私の場合167cmで66kgだったのが学生時代の56kgにもどりました。66kgはBMIでは正常範囲でしたが、子持ちししゃも体型でお腹だけでててかなり見苦しいものがありちょっと困ってました。(=_=;)
数%の人が、みいさんと同様に
「糖質制限食で血糖値はみるみる改善したが痩せて力が入らない」
と訴えてこられます。
少食タイプの人は、糖質制限食でおかずばっかり食べると結構お腹いっぱいになり、結果として量的に不足し低カロリーになることがあります。
高雄病院入院中の糖尿人でも、500キロカロリーの1回のスーパー糖質制限食を、食べきれずに残す方がおられます。
従って、もともと少食のタイプでは、カロリー不足対策が必要です。このような場合は間食の出番です。糖質制限食OKな食材なら、間食もOKなのです。
具体的には、間食としてナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツ・・・)を20~30粒程度なら糖質が約3~5gですので、一日に2~3回は大丈夫です。(1gの糖質が約3mg、2型糖尿人の血糖値を上昇させます。)
それと、糖質制限食でやせて力が入らないという人には、通常糖尿人には奨めないのですが、敢えて果物がお奨めです。
アボカドは、100g(1個)あたりの糖質含有量が0.9gと圧倒的に少ないので糖尿人にもOKで、とてもいいですね。
その他、それぞれ100gあたり糖質10g以下の果物は、
いちご7粒、
林檎1/4個、
パパイア1/2個、
グレープフルーツ1/4個、
夏みかん1/4個、
はっさく1/3個、
メロン1/8個、
もも2/3個などです。
果物に含まれる糖質は、「果糖・ショ糖・ブドウ糖など」です。このうちメインの果糖は、血糖値をほとんど上昇させず、上記ていどの量なら食後高血糖にはなりにくいですが、カロリーはあり中性脂肪に変わりやすいので体重は増えます。あとオリーブオイルを調理に積極的に使ってカロリーを稼ぐ手もあります。
やせてる糖尿人には、「ナッツ類、果物適量、オリーブオイル」が三種の神器でしょうか。
残り数%の人は、逆に大食で糖質制限食でも痩せにくいタイプです。
大食タイプには(通常はカロリー計算無用というのですが)
男性なら1600~1800キロカロリー、
女性なら1400~1600キロカロリー、
くらいで日本糖尿病学会推奨カロリーを目安にしてくださいと、あえてアドバイスします。
つまり、同じ糖尿人で糖質制限食を実践する場合でも普通の食事量タイプ、少食タイプ、大食タイプの3通りの
アドバイスパターンがあることになります。
なかなか一筋縄ではいかないものですね。(*^^)
江部康二
今回は、太りたいみいさんから、嬉しいコメントをいただきました。
「09/12/29 太りたいみい
タイトルなし
年の暮れですね。お忙しいことと存じます。
糖質制限食を始めて1年4ヶ月、5.9が最高だったA1Cは、5.0になりました。体重も少しずつ増加して44kgで5kg近く増えました。
早朝空腹時血糖値は90~110です。糖質制限食2時間後は140くらいですが、付き合いの飲み会後はやはり高く出ます。先日、昼食に食べるものがなくてサンドイッチ(三角形の袋入り)を1袋食べたら217。糖質恐るべしです。
尿糖が出てからかなりのカロリー制限食を始めて、体重はどんどん減るし一度にたくさん食べれなくなり力も入らなくなっていました。糖質制限食と出会って、先生の本を購入したり立ち読みしたり(本屋さんごめんなさい)、ブログで勉強して今日に至りました。一度にたくさん食べられないので、太るために夜食食べてました(焼酎つき)が、そろそろやめなきゃと思っています。
一生もんの糖尿と落ち込んでいましたが、先生のブログで明るさを見出すことができました。本当にありがとうございます。
ラカントもあるし、糖質制限の御節を頑張って作ります。
どうぞ良いお年をお迎えください。」
太りたいみいさん。
コメントありがとうございます。
糖質制限食でHbA1c、血糖値の改善、良かったです。体重も5kg近く増えましたか、こちらも順調ですね。 (^_^)
糖質制限のお節ですか、砂糖の代わりにラカントSで美味しくできそうですね。
さて、
糖質制限食を実践すれば、8~9割の人は、カロリー計算無用で、その人の一番体調がいいときの体重に落ち着きます。
例えば、肥満傾向の人であれば、若い頃の体重に減量できます。私の場合167cmで66kgだったのが学生時代の56kgにもどりました。66kgはBMIでは正常範囲でしたが、子持ちししゃも体型でお腹だけでててかなり見苦しいものがありちょっと困ってました。(=_=;)
数%の人が、みいさんと同様に
「糖質制限食で血糖値はみるみる改善したが痩せて力が入らない」
と訴えてこられます。
少食タイプの人は、糖質制限食でおかずばっかり食べると結構お腹いっぱいになり、結果として量的に不足し低カロリーになることがあります。
高雄病院入院中の糖尿人でも、500キロカロリーの1回のスーパー糖質制限食を、食べきれずに残す方がおられます。
従って、もともと少食のタイプでは、カロリー不足対策が必要です。このような場合は間食の出番です。糖質制限食OKな食材なら、間食もOKなのです。
具体的には、間食としてナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツ・・・)を20~30粒程度なら糖質が約3~5gですので、一日に2~3回は大丈夫です。(1gの糖質が約3mg、2型糖尿人の血糖値を上昇させます。)
それと、糖質制限食でやせて力が入らないという人には、通常糖尿人には奨めないのですが、敢えて果物がお奨めです。
アボカドは、100g(1個)あたりの糖質含有量が0.9gと圧倒的に少ないので糖尿人にもOKで、とてもいいですね。
その他、それぞれ100gあたり糖質10g以下の果物は、
いちご7粒、
林檎1/4個、
パパイア1/2個、
グレープフルーツ1/4個、
夏みかん1/4個、
はっさく1/3個、
メロン1/8個、
もも2/3個などです。
果物に含まれる糖質は、「果糖・ショ糖・ブドウ糖など」です。このうちメインの果糖は、血糖値をほとんど上昇させず、上記ていどの量なら食後高血糖にはなりにくいですが、カロリーはあり中性脂肪に変わりやすいので体重は増えます。あとオリーブオイルを調理に積極的に使ってカロリーを稼ぐ手もあります。
やせてる糖尿人には、「ナッツ類、果物適量、オリーブオイル」が三種の神器でしょうか。
残り数%の人は、逆に大食で糖質制限食でも痩せにくいタイプです。
大食タイプには(通常はカロリー計算無用というのですが)
男性なら1600~1800キロカロリー、
女性なら1400~1600キロカロリー、
くらいで日本糖尿病学会推奨カロリーを目安にしてくださいと、あえてアドバイスします。
つまり、同じ糖尿人で糖質制限食を実践する場合でも普通の食事量タイプ、少食タイプ、大食タイプの3通りの
アドバイスパターンがあることになります。
なかなか一筋縄ではいかないものですね。(*^^)
江部康二
2009年12月28日 (月)
一般のお医者さんや栄養士さんが知らない<栄養・代謝・生理学>
「糖質制限食基礎理論」の増補・改訂・最新版です。
以下は基本的に栄養・代謝・生理学的事実であり、議論の余地はありません。
知っているか知らないかの差だけです。
【糖質制限食基礎理論】
<栄養・代謝>
①血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけである。
②タンパク質・脂質は血糖値を上昇させない。
③追加分泌インスリンが大量に必要なのは、糖質だけである。
④タンパク質を摂取すると、少量の追加分泌インスリンがでる。
⑤脂質を摂取しても、追加分泌インスリンは、分泌されない。
⑥糖質制限食で高血糖は改善するが、肝臓の糖新生などにより、低血糖にはならない。
<人体のエネルギー源Ⅰ:脂肪酸-ケトン体システム>
①脳はケトン体(脂肪酸の代謝産物)をいつでも利用できる。
②心筋・骨格筋など多くの体細胞は日常生活では脂肪酸-ケトン体が主エネルギー源であ り、人体を自動車に例えるならガソリンの代わりは脂質である。
③赤血球を除く全ての細胞はミトコンドリアを持っているので、脂肪酸-ケトン体エネル ギーシステムを利用できる。
④糖質制限食実践中や絶食中の血中ケトン体上昇は、インスリン作用が保たれており生理的なもので病的ではない。農耕開始前の人類は、皆そうであった。
<人体のエネルギー源Ⅱ:ブドウ糖-グリコーゲンシステム>
①人体で唯一赤血球だけはミトコンドリアがないのでブドウ糖しか利用できない。
②日常生活でブドウ糖を主エネルギー源として利用しているのは赤血球・脳・網膜など。
③ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステムの本質は
「常に赤血球の唯一のエネルギー源」
「筋肉が収縮したときのエネルギー源」
「血糖値が上昇しインスリンが追加分泌された時、筋肉・脂肪細胞のエネルギー源」
「日常生活では脳・網膜・生殖腺胚上皮など特殊細胞の主エネルギー源」
<血糖値確保(赤血球に絶対必要)のためのバックアップシステム>
①グルカゴン
②エピネフリン
③副腎皮質ステロイドホルモン
④アミノ酸からの糖新生
⑤グリセロール(中性脂肪の分解産物)からの糖新生
⑥乳酸から糖新生
<血糖値を下げるシステム>
①血糖値を下げるのは唯一インスリンのみでありバックアップシステムがない。
②農耕以前の399万年血糖値を下げる必要性はまれ。
<肥満改善と糖質制限食>
①糖質制限食実践中は常に脂肪が燃えている。
②糖質制限食実践中は追加分泌インスリン(肥満ホルモン)がほとんど出ない。
③糖質制限食実践中はケトン体が尿中や呼気中に排泄され、体重減少に効果。
④糖質制限食実践中は肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われ、大量のエネルギーを消費。
⑤少なくとも同一カロリーなら、①②③④の4つの利点により
糖質制限食が高糖質食に比し、体重減少効果がある。→カロリー神話の崩壊
*糖質制限食を3ヶ月~半年続けていると、体細胞のケトン体利用効率が高くなり、
血中ケトン体が高値でも利用されるので尿中や呼気中に排泄されなくなる。
*糖質を摂取すれば血糖値が急峻に上昇し、インスリンが追加分泌され
①②③④の4つの利点は、即失われるので肥満しやすい。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
①単純には摂取エネルギーが消費エネルギーをを上回れば太る、下回れば痩せる。
②通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生」
③糖質制限食なら
「消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生」に加えて、
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費、尿・呼気中ケトン体でエネルギーを消失」が追加。
江部康二
「糖質制限食基礎理論」の増補・改訂・最新版です。
以下は基本的に栄養・代謝・生理学的事実であり、議論の余地はありません。
知っているか知らないかの差だけです。
【糖質制限食基礎理論】
<栄養・代謝>
①血糖値を急峻に上昇させるのは、糖質だけである。
②タンパク質・脂質は血糖値を上昇させない。
③追加分泌インスリンが大量に必要なのは、糖質だけである。
④タンパク質を摂取すると、少量の追加分泌インスリンがでる。
⑤脂質を摂取しても、追加分泌インスリンは、分泌されない。
⑥糖質制限食で高血糖は改善するが、肝臓の糖新生などにより、低血糖にはならない。
<人体のエネルギー源Ⅰ:脂肪酸-ケトン体システム>
①脳はケトン体(脂肪酸の代謝産物)をいつでも利用できる。
②心筋・骨格筋など多くの体細胞は日常生活では脂肪酸-ケトン体が主エネルギー源であ り、人体を自動車に例えるならガソリンの代わりは脂質である。
③赤血球を除く全ての細胞はミトコンドリアを持っているので、脂肪酸-ケトン体エネル ギーシステムを利用できる。
④糖質制限食実践中や絶食中の血中ケトン体上昇は、インスリン作用が保たれており生理的なもので病的ではない。農耕開始前の人類は、皆そうであった。
<人体のエネルギー源Ⅱ:ブドウ糖-グリコーゲンシステム>
①人体で唯一赤血球だけはミトコンドリアがないのでブドウ糖しか利用できない。
②日常生活でブドウ糖を主エネルギー源として利用しているのは赤血球・脳・網膜など。
③ブドウ糖-グリコーゲンエネルギーシステムの本質は
「常に赤血球の唯一のエネルギー源」
「筋肉が収縮したときのエネルギー源」
「血糖値が上昇しインスリンが追加分泌された時、筋肉・脂肪細胞のエネルギー源」
「日常生活では脳・網膜・生殖腺胚上皮など特殊細胞の主エネルギー源」
<血糖値確保(赤血球に絶対必要)のためのバックアップシステム>
①グルカゴン
②エピネフリン
③副腎皮質ステロイドホルモン
④アミノ酸からの糖新生
⑤グリセロール(中性脂肪の分解産物)からの糖新生
⑥乳酸から糖新生
<血糖値を下げるシステム>
①血糖値を下げるのは唯一インスリンのみでありバックアップシステムがない。
②農耕以前の399万年血糖値を下げる必要性はまれ。
<肥満改善と糖質制限食>
①糖質制限食実践中は常に脂肪が燃えている。
②糖質制限食実践中は追加分泌インスリン(肥満ホルモン)がほとんど出ない。
③糖質制限食実践中はケトン体が尿中や呼気中に排泄され、体重減少に効果。
④糖質制限食実践中は肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われ、大量のエネルギーを消費。
⑤少なくとも同一カロリーなら、①②③④の4つの利点により
糖質制限食が高糖質食に比し、体重減少効果がある。→カロリー神話の崩壊
*糖質制限食を3ヶ月~半年続けていると、体細胞のケトン体利用効率が高くなり、
血中ケトン体が高値でも利用されるので尿中や呼気中に排泄されなくなる。
*糖質を摂取すれば血糖値が急峻に上昇し、インスリンが追加分泌され
①②③④の4つの利点は、即失われるので肥満しやすい。
<摂取エネルギーと消費エネルギー>
①単純には摂取エネルギーが消費エネルギーをを上回れば太る、下回れば痩せる。
②通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
「消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生」
③糖質制限食なら
「消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生」に加えて、
「肝臓の糖新生でエネルギーを消費、尿・呼気中ケトン体でエネルギーを消失」が追加。
江部康二
2009年12月27日 (日)
おはようございます。
今日は2週間ぶりに、テニスにでかけます。せめて1/週はきっちりプレイしたいのですが、なかなかままなりません。
1/週確保してると技術的に何とか保てるのですが、1/2週間では落ち目です。(-_-;)
さて今回は、みかさんから、脂肪肝と糖質制限食についてコメント・質問をいただきました。
「09/12/27 みか
脂肪肝
こんばんは。いつも読ませていただいています。
食後の血糖値が高く、糖質制限食後を初めました。
もともとやせ形で糖質制限を初めてから体重も減り出したので、カロリー不足にならないよう肉や魚を食べるようにしていたのですが、先日エコーの検査で脂肪肝を指摘されてしまいました。医者からは肉などを食べないようにと言われましたが、野菜だけだと体重が減ってしまいます。
糖質制限は体には良いと書いてあったのですが、このまま糖質制限をしていくことで脂肪肝は良くなっていくことはあるのでしょうか?」
みかさん。
脂肪肝の根本要因は、脂質ではなく糖質です。
①糖質を摂取すると血糖値が上昇します。
②血糖値が上昇すると追加分泌のインスリンが大量に分泌されます。
③追加分泌インスリンにより、筋肉細胞の糖輸送体が内部から細胞表面に移動します。
④筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)により血液中のブドウ糖は細胞内に取り込まれます。
⑤まずエネルギー源として利用し、次いでグリコーゲンとして筋肉中に蓄えます。
⑥筋肉細胞に取り込まれずに、血液中で余ったブドウ糖は全て中性脂肪に変わり、脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。
このように、追加分泌のインスリンが大量・頻回に出ることが、脂肪肝や肥満の根本要因であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。
血糖値を上昇させるのは、3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、糖質だけです。脂質・タンパク質は血糖値を上昇させません。
追加分泌インスリンが大量に必要となるのは、糖質摂取時だけです。
タンパク質は、ごく少量の追加分泌インスリンを分泌させます。
脂質は、追加分泌インスリンを分泌させません。
上述の如く人体の生理・栄養・代謝面から理論的に考えてみると、
<糖質→食後血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成→脂肪肝・肥満>
ということが明確に理解できます。
一方、糖質制限食実践で、例えば肉・魚・豆腐などを摂取すれば、当然高脂質・高タンパク食となりますが、この間常に脂肪が分解されエネルギー源として使われています。
つまり、糖質制限食を食べている最中にも同時に中性脂肪が分解されて脂肪酸やケトン体になり、骨格筋・心筋・内臓でエネルギー源として利用されているのです。
この「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が日常的に利用されているのが人類本来の姿であり、農耕前の399万年間はずっとそうでした。
糖質制限食で脂肪が分解されていた人が、糖質を摂取して血糖値が上昇すると、
「中性脂肪分解→脂肪酸・ケトン体→骨格筋・心筋・内臓のエネルギー源」
というパターンが
「血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成」
というパターンに変化し、脂肪肝・肥満につながるわけです。
私自身、2002年の糖尿病発覚の時点で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていました。
<身長167cm 体重66kg 高血圧140~180/90~110 腹囲86cm>
糖質制限食実践半年で10kg減量して56kg。
血圧は120~130/70~80。
メタボリックシンドロームの基準が全て正常になりました。
内臓脂肪CT126cm2 → 70cm2 (正常は100未満)
となりました。
腹部エコーでも脂肪肝は改善しました。
みかさん、安心して魚も肉もしっかり食べて体重が減りすぎないように、美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
今日は2週間ぶりに、テニスにでかけます。せめて1/週はきっちりプレイしたいのですが、なかなかままなりません。
1/週確保してると技術的に何とか保てるのですが、1/2週間では落ち目です。(-_-;)
さて今回は、みかさんから、脂肪肝と糖質制限食についてコメント・質問をいただきました。
「09/12/27 みか
脂肪肝
こんばんは。いつも読ませていただいています。
食後の血糖値が高く、糖質制限食後を初めました。
もともとやせ形で糖質制限を初めてから体重も減り出したので、カロリー不足にならないよう肉や魚を食べるようにしていたのですが、先日エコーの検査で脂肪肝を指摘されてしまいました。医者からは肉などを食べないようにと言われましたが、野菜だけだと体重が減ってしまいます。
糖質制限は体には良いと書いてあったのですが、このまま糖質制限をしていくことで脂肪肝は良くなっていくことはあるのでしょうか?」
みかさん。
脂肪肝の根本要因は、脂質ではなく糖質です。
①糖質を摂取すると血糖値が上昇します。
②血糖値が上昇すると追加分泌のインスリンが大量に分泌されます。
③追加分泌インスリンにより、筋肉細胞の糖輸送体が内部から細胞表面に移動します。
④筋肉細胞の糖輸送体(Glut4)により血液中のブドウ糖は細胞内に取り込まれます。
⑤まずエネルギー源として利用し、次いでグリコーゲンとして筋肉中に蓄えます。
⑥筋肉細胞に取り込まれずに、血液中で余ったブドウ糖は全て中性脂肪に変わり、脂肪細胞や肝臓に蓄えられます。
このように、追加分泌のインスリンが大量・頻回に出ることが、脂肪肝や肥満の根本要因であり、インスリンが肥満ホルモンと言われる所以です。
血糖値を上昇させるのは、3大栄養素「糖質・脂質・タンパク質」のうち、糖質だけです。脂質・タンパク質は血糖値を上昇させません。
追加分泌インスリンが大量に必要となるのは、糖質摂取時だけです。
タンパク質は、ごく少量の追加分泌インスリンを分泌させます。
脂質は、追加分泌インスリンを分泌させません。
上述の如く人体の生理・栄養・代謝面から理論的に考えてみると、
<糖質→食後血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成→脂肪肝・肥満>
ということが明確に理解できます。
一方、糖質制限食実践で、例えば肉・魚・豆腐などを摂取すれば、当然高脂質・高タンパク食となりますが、この間常に脂肪が分解されエネルギー源として使われています。
つまり、糖質制限食を食べている最中にも同時に中性脂肪が分解されて脂肪酸やケトン体になり、骨格筋・心筋・内臓でエネルギー源として利用されているのです。
この「脂肪酸-ケトン体エネルギーシステム」が日常的に利用されているのが人類本来の姿であり、農耕前の399万年間はずっとそうでした。
糖質制限食で脂肪が分解されていた人が、糖質を摂取して血糖値が上昇すると、
「中性脂肪分解→脂肪酸・ケトン体→骨格筋・心筋・内臓のエネルギー源」
というパターンが
「血糖値上昇→追加分泌インスリン大量分泌→中性脂肪合成」
というパターンに変化し、脂肪肝・肥満につながるわけです。
私自身、2002年の糖尿病発覚の時点で、メタボリックシンドロームの基準を満たしていました。
<身長167cm 体重66kg 高血圧140~180/90~110 腹囲86cm>
糖質制限食実践半年で10kg減量して56kg。
血圧は120~130/70~80。
メタボリックシンドロームの基準が全て正常になりました。
内臓脂肪CT126cm2 → 70cm2 (正常は100未満)
となりました。
腹部エコーでも脂肪肝は改善しました。
みかさん、安心して魚も肉もしっかり食べて体重が減りすぎないように、美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。
江部康二
2009年12月25日 (金)
こんばんは。
先日のブログで、米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」
のコレステロールの基準値が、現時点で一応の目安にはなると述べました。
しかし、約2億2500万年前に哺乳類が誕生して以来、コレステロールは一貫して哺乳類の生命現象の根幹をなす細胞膜の原料です。
このコレステロールが少々増えたからといって 人体に悪影響をなすとは、そもそも考えにくいことです。
こうなると 米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」
のコレステロールの基準値でさえも、考えなおす必要があるかもしれません。
確かに、家族制高コレステロール血症(人口の0.2%)の患者さんにとっては、メバロチンやリピトールなどスタチン製剤が特効薬と言えます。
しかし、それ以外の人にとっては、LDL-コレステロール高値が、動脈硬化に関係して心筋梗塞のリスクとなるか否かが、ここにきて揺らいでいます。
「LDL-コレステロール高値→心筋梗塞」という神話が現在崩壊しつつあるようです。神話が崩壊すれば、製薬メーカーには大打撃となるでしょう。
例えば、NCEP ATP IIIの2004年の改訂で、LDL-コレステロールの基準値がかなり引き下げられました。→製薬会社に有利!!
しかしこの改訂に対しては、
2004年8月1日のWashington Post紙にJerome Kassirer
Tufts医学大学教授による有名な反論が掲載されました。
Jerome Kassirer 氏は当時、ニューイングランド・ジャーナルの編集長で、製薬メーカーのひも付きの学者の見解に対して痛烈な批判を展開しました。
例えば、製薬メーカーと無関係のブリティッシュ・コロンビア大学のグループは、同じデータから、別の結論をだしたことが述べられています。→製薬会社に不利!!
この記事以降、欧米では治験が厳密になり、製薬企業と経済的関係の深い人は、ガイドライン委員会から外されるようになりました。
2004年の改訂に対して、Washington Postがかみついて以来、NCEP ATP III改訂の動きが止まっています。
以下は、東海大学の大櫛陽一先生にご教示頂いた最新の内容です。
☆高LDL-Cが心血管系疾患のリスクになるということ自体が揺らいできている。
☆欧米で「利益相反」や「製薬企業によるエビデンスの不正」が問題となって、
2004年以降、治験や医学論文に対して科学的厳密さがより強く要求されるようになった。
☆2006年以降に発表されたコレステロール低下薬に関する無作為化対照試験(RCT)であるASPEN(16)、ENHANCE(17)、SEAS(18)、GISS-HF(19)、 CORONA(20)、AURORA(21)などでは、スタチンによりLDL-Cは下がるが、心血管系イベントや総死亡には効果が無いと報告されるようになった。
ということです。
次に私の良きアドバイザーのI先生からも、メールをいただきました。
以下は「コレステロール神話」という英文のサイトのトップページをI先生が日本語に訳していただいたものです。
このサイト、ニュートラルで説得力があります。
結論としては、「コレステロール高値が心筋梗塞のリスクとなるエビデンスはない。」というものです。
☆☆☆
The Cholesterol Myths コレステロール神話
http://www.ravnskov.nu/cholesterol.htm
Here are the facts! Click on the blue arrows if you want the scientific evidence!
ここに真実があります!科学的根拠は青い数字をクリックして下さい
1 Cholesterol is not a deadly poison, but a substance vital to the cells of all mammals. There are no such things as good or bad cholesterol, but mental stress, physical activity and change of body weight may influence the level of blood cholesterol. A high cholesterol is not dangerous by itself, but may reflect an unhealthy condition, or it may be totally innocent.
コレステロールは毒物でなく、すべての哺乳類の細胞に不可欠な物質である。そのような物なので、良いコレステロールとか悪いコレステロールというようなものはない。しかし、精神的ストレス、身体活動と体重の変動は血コレステロールの濃度に影響するかもしれない。高コレステロールは単独では危険因子ではなくて、不健康な状態を反映するかもしれないし、あるいは、それは全く無実かもしれない。
2 A high blood cholesterol is said to promote atherosclerosis and thus also coronary heart disease. But many studies have shown that people whose blood cholesterol is low become just as atherosclerotic as people whose cholesterol is high.
高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病を促進すると言われている。しかし、多くの研究は、血中コレステロール低値の人々はコレステロール高値の人々と同じくらいアテローム硬化様になることを示している。
3 Your body produces three to four times more cholesterol than you eat. The production of cholesterol increases when you eat little cholesterol and decreases when you eat much. This explains why the ”prudent” diet cannot lower cholesterol more than on average a few per cent.
あなたの体は、あなたが食べる3~4倍多くのコレステロールを生産する。コレステロールの摂取が少ないとコレステロールの生産は増加し、摂取が多いと、減少する。この事は、「細心な」ダイエットがなぜ平均して2、3パーセントしか、コレステロールを低下させることができないかを説明している。
4 There is no evidence that too much animal fat and cholesterol in the diet promotes atherosclerosis or heart attacks. For instance, more than twenty studies have shown that people who have had a heart attack haven't eaten more fat of any kind than other people, and degree of atherosclerosis at autopsy is unrelated with the diet.
動物性脂肪とコレステロールの過剰摂取がアテローム性動脈硬化症または心臓発作を促進するという証拠はない。たとえば20以上の研究が、心臓発作があった人々が他の人に比べて、いかなる種類の脂肪も多く摂取しなかったことを示し、そして、検死によるアテローム性動脈硬化症の程度は食事とは無関係であった。
5 The only effective way to lower cholesterol is with drugs, but neither heart mortality or total mortality have been improved with drugs the effect of which is cholesterol-lowering only. On the contrary, these drugs are dangerous to your health and may shorten your life.
コレステロールを低下させる唯一の効果的方法は薬剤であるが、コレステロール低下単独では、心疾患による死亡率や総死亡率は改善されなかった。それどころか、これらの薬はあなたの健康を損なうおそれがあって、あなたの寿命を短くするかもしれない。
6 The new cholesterol-lowering drugs, the statins, do prevent cardio-vascular disease, but this is due to other mechanisms than cholesterol-lowering. Unfortunately, they also stimulate cancer in rodents, disturb the functions of the muscles, the heart and the brain and pregnant women taking statins may give birth to children with malformations more severe than those seen after thalidomide.
新しいコレステロール低下薬であるスタチンは心血管疾患を予防するが、これはコレステロール低下とは別のメカニズムによる。残念なことに、スタチンは、齧歯動物でガンを促進し、筋肉、心臓と脳の機能を阻害し、そして、スタチンを飲んでいる妊婦はサリドマイドで見られたのよりひどい奇形児を生むかもしれない。
7 Many of these facts have been presented in scientific journals and books for decades but are rarely told to the public by the proponents of the diet-heart idea.
これらの事実の多くは、何十年にもわたり科学ジャーナルと本に示されたが、diet-heart ideaの支持者によって、公衆に語られる事はほとんどない。
8 The reason why laymen, doctors and most scientists have been misled is because opposing and disagreeing results are systematically ignored or misquoted in the scientific press.
一般の人、医師、大部分の科学者がなぜミスリードされるかと言えば、(diet-heart ideaとは)反対で一致しない結果が科学的な報道において組織的に無視されるか、誤って引用されるからである。
9 The Benefits Of High Cholesterol
高コレステロールの利点
以下のたくさんの文献が引用されており、説得力があります。
http://www.ravnskov.nu/weblit.htm#115
☆☆☆
日本脂質栄養学会セミナーの提言
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2009102702000136.html
【科学】
コレステロール値と中性脂肪 『高い方が長生き』 日本脂質栄養学会 常識覆す研究発表
2009年10月27日 中日新聞
研究者たちが脂質栄養の方向転換などを提言したセミナー=東京都内で
コレステロール値と中性脂肪が高い方が長生きする-。これまでの医療分野の常識を覆すような研究結果を日本脂質栄養学会がまとめた。コレステロールを低下させる医療や食事による生活習慣病予防対策の見直しが必要とする。
コレステロールなどについては、これまでの数々の試験によって「血清コレステロール値が高いと心疾患(虚血性)が増える」「コレステロール値を下げると動脈硬化性疾患(心臓病、脳卒中)が予防できる」などの結果が示され、それらは医学界の常識として定着している。多くの研究者にとっては驚くべき主張といえる。
東京都内で開かれたセミナーで、浜崎智仁・富山大和漢医薬学総合研究所教授は国内外の臨床研究や疫学調査を基に「悪玉と呼ばれるLDLコレステロールは低下させなくてもよい」と報告した。LDLコレステロールが高い方が死亡率は下がる、という。
大櫛陽一・東海大医学部教授は「遺伝病である家族性高脂血症以外の人では、血中の中性脂肪の量は、食事と生体のエネルギー消費に合わせ適切に調整されている」と説明。日本人では高脂血症とされている人の方が脳卒中のリスクが低く、脳卒中になっても軽症-として「家族性高脂血症などを除き、中性脂肪を下げる必要はない」と話す。
コレステロール低下薬は科学的根拠がある薬として受け入れられているが、数々の大規模臨床試験の主任研究員を務めた仏グルノーブル第一大医学部のミッシェル・ド・ロルジュリル心臓栄養部長は「最近の臨床試験ではその有効性が認められなかった」と説明する。コレステロール値が高いことが心臓病の主因で、下げれば心臓病の罹患(りかん)率と死亡率を下げられるという理論は見直すべきだという。
奥山治美・金城学院大脂質栄養オープンリサーチセンター長は、動物性脂肪とコレステロール摂取量を減らし高リノール酸油を増やすと血中の総コレステロール値が低下し、動脈硬化を予防できる-という説を批判。「リノール酸の取りすぎが多くの病気を増やす。動物性脂肪は安全性が高い」として、健康によい油脂の選び方の方向転換を求めている。
江部康二
先日のブログで、米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」
のコレステロールの基準値が、現時点で一応の目安にはなると述べました。
しかし、約2億2500万年前に哺乳類が誕生して以来、コレステロールは一貫して哺乳類の生命現象の根幹をなす細胞膜の原料です。
このコレステロールが少々増えたからといって 人体に悪影響をなすとは、そもそも考えにくいことです。
こうなると 米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」
のコレステロールの基準値でさえも、考えなおす必要があるかもしれません。
確かに、家族制高コレステロール血症(人口の0.2%)の患者さんにとっては、メバロチンやリピトールなどスタチン製剤が特効薬と言えます。
しかし、それ以外の人にとっては、LDL-コレステロール高値が、動脈硬化に関係して心筋梗塞のリスクとなるか否かが、ここにきて揺らいでいます。
「LDL-コレステロール高値→心筋梗塞」という神話が現在崩壊しつつあるようです。神話が崩壊すれば、製薬メーカーには大打撃となるでしょう。
例えば、NCEP ATP IIIの2004年の改訂で、LDL-コレステロールの基準値がかなり引き下げられました。→製薬会社に有利!!
しかしこの改訂に対しては、
2004年8月1日のWashington Post紙にJerome Kassirer
Tufts医学大学教授による有名な反論が掲載されました。
Jerome Kassirer 氏は当時、ニューイングランド・ジャーナルの編集長で、製薬メーカーのひも付きの学者の見解に対して痛烈な批判を展開しました。
例えば、製薬メーカーと無関係のブリティッシュ・コロンビア大学のグループは、同じデータから、別の結論をだしたことが述べられています。→製薬会社に不利!!
この記事以降、欧米では治験が厳密になり、製薬企業と経済的関係の深い人は、ガイドライン委員会から外されるようになりました。
2004年の改訂に対して、Washington Postがかみついて以来、NCEP ATP III改訂の動きが止まっています。
以下は、東海大学の大櫛陽一先生にご教示頂いた最新の内容です。
☆高LDL-Cが心血管系疾患のリスクになるということ自体が揺らいできている。
☆欧米で「利益相反」や「製薬企業によるエビデンスの不正」が問題となって、
2004年以降、治験や医学論文に対して科学的厳密さがより強く要求されるようになった。
☆2006年以降に発表されたコレステロール低下薬に関する無作為化対照試験(RCT)であるASPEN(16)、ENHANCE(17)、SEAS(18)、GISS-HF(19)、 CORONA(20)、AURORA(21)などでは、スタチンによりLDL-Cは下がるが、心血管系イベントや総死亡には効果が無いと報告されるようになった。
ということです。
次に私の良きアドバイザーのI先生からも、メールをいただきました。
以下は「コレステロール神話」という英文のサイトのトップページをI先生が日本語に訳していただいたものです。
このサイト、ニュートラルで説得力があります。
結論としては、「コレステロール高値が心筋梗塞のリスクとなるエビデンスはない。」というものです。
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The Cholesterol Myths コレステロール神話
http://www.ravnskov.nu/cholesterol.htm
Here are the facts! Click on the blue arrows if you want the scientific evidence!
ここに真実があります!科学的根拠は青い数字をクリックして下さい
1 Cholesterol is not a deadly poison, but a substance vital to the cells of all mammals. There are no such things as good or bad cholesterol, but mental stress, physical activity and change of body weight may influence the level of blood cholesterol. A high cholesterol is not dangerous by itself, but may reflect an unhealthy condition, or it may be totally innocent.
コレステロールは毒物でなく、すべての哺乳類の細胞に不可欠な物質である。そのような物なので、良いコレステロールとか悪いコレステロールというようなものはない。しかし、精神的ストレス、身体活動と体重の変動は血コレステロールの濃度に影響するかもしれない。高コレステロールは単独では危険因子ではなくて、不健康な状態を反映するかもしれないし、あるいは、それは全く無実かもしれない。
2 A high blood cholesterol is said to promote atherosclerosis and thus also coronary heart disease. But many studies have shown that people whose blood cholesterol is low become just as atherosclerotic as people whose cholesterol is high.
高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病を促進すると言われている。しかし、多くの研究は、血中コレステロール低値の人々はコレステロール高値の人々と同じくらいアテローム硬化様になることを示している。
3 Your body produces three to four times more cholesterol than you eat. The production of cholesterol increases when you eat little cholesterol and decreases when you eat much. This explains why the ”prudent” diet cannot lower cholesterol more than on average a few per cent.
あなたの体は、あなたが食べる3~4倍多くのコレステロールを生産する。コレステロールの摂取が少ないとコレステロールの生産は増加し、摂取が多いと、減少する。この事は、「細心な」ダイエットがなぜ平均して2、3パーセントしか、コレステロールを低下させることができないかを説明している。
4 There is no evidence that too much animal fat and cholesterol in the diet promotes atherosclerosis or heart attacks. For instance, more than twenty studies have shown that people who have had a heart attack haven't eaten more fat of any kind than other people, and degree of atherosclerosis at autopsy is unrelated with the diet.
動物性脂肪とコレステロールの過剰摂取がアテローム性動脈硬化症または心臓発作を促進するという証拠はない。たとえば20以上の研究が、心臓発作があった人々が他の人に比べて、いかなる種類の脂肪も多く摂取しなかったことを示し、そして、検死によるアテローム性動脈硬化症の程度は食事とは無関係であった。
5 The only effective way to lower cholesterol is with drugs, but neither heart mortality or total mortality have been improved with drugs the effect of which is cholesterol-lowering only. On the contrary, these drugs are dangerous to your health and may shorten your life.
コレステロールを低下させる唯一の効果的方法は薬剤であるが、コレステロール低下単独では、心疾患による死亡率や総死亡率は改善されなかった。それどころか、これらの薬はあなたの健康を損なうおそれがあって、あなたの寿命を短くするかもしれない。
6 The new cholesterol-lowering drugs, the statins, do prevent cardio-vascular disease, but this is due to other mechanisms than cholesterol-lowering. Unfortunately, they also stimulate cancer in rodents, disturb the functions of the muscles, the heart and the brain and pregnant women taking statins may give birth to children with malformations more severe than those seen after thalidomide.
新しいコレステロール低下薬であるスタチンは心血管疾患を予防するが、これはコレステロール低下とは別のメカニズムによる。残念なことに、スタチンは、齧歯動物でガンを促進し、筋肉、心臓と脳の機能を阻害し、そして、スタチンを飲んでいる妊婦はサリドマイドで見られたのよりひどい奇形児を生むかもしれない。
7 Many of these facts have been presented in scientific journals and books for decades but are rarely told to the public by the proponents of the diet-heart idea.
これらの事実の多くは、何十年にもわたり科学ジャーナルと本に示されたが、diet-heart ideaの支持者によって、公衆に語られる事はほとんどない。
8 The reason why laymen, doctors and most scientists have been misled is because opposing and disagreeing results are systematically ignored or misquoted in the scientific press.
一般の人、医師、大部分の科学者がなぜミスリードされるかと言えば、(diet-heart ideaとは)反対で一致しない結果が科学的な報道において組織的に無視されるか、誤って引用されるからである。
9 The Benefits Of High Cholesterol
高コレステロールの利点
以下のたくさんの文献が引用されており、説得力があります。
http://www.ravnskov.nu/weblit.htm#115
☆☆☆
日本脂質栄養学会セミナーの提言
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2009102702000136.html
【科学】
コレステロール値と中性脂肪 『高い方が長生き』 日本脂質栄養学会 常識覆す研究発表
2009年10月27日 中日新聞
研究者たちが脂質栄養の方向転換などを提言したセミナー=東京都内で
コレステロール値と中性脂肪が高い方が長生きする-。これまでの医療分野の常識を覆すような研究結果を日本脂質栄養学会がまとめた。コレステロールを低下させる医療や食事による生活習慣病予防対策の見直しが必要とする。
コレステロールなどについては、これまでの数々の試験によって「血清コレステロール値が高いと心疾患(虚血性)が増える」「コレステロール値を下げると動脈硬化性疾患(心臓病、脳卒中)が予防できる」などの結果が示され、それらは医学界の常識として定着している。多くの研究者にとっては驚くべき主張といえる。
東京都内で開かれたセミナーで、浜崎智仁・富山大和漢医薬学総合研究所教授は国内外の臨床研究や疫学調査を基に「悪玉と呼ばれるLDLコレステロールは低下させなくてもよい」と報告した。LDLコレステロールが高い方が死亡率は下がる、という。
大櫛陽一・東海大医学部教授は「遺伝病である家族性高脂血症以外の人では、血中の中性脂肪の量は、食事と生体のエネルギー消費に合わせ適切に調整されている」と説明。日本人では高脂血症とされている人の方が脳卒中のリスクが低く、脳卒中になっても軽症-として「家族性高脂血症などを除き、中性脂肪を下げる必要はない」と話す。
コレステロール低下薬は科学的根拠がある薬として受け入れられているが、数々の大規模臨床試験の主任研究員を務めた仏グルノーブル第一大医学部のミッシェル・ド・ロルジュリル心臓栄養部長は「最近の臨床試験ではその有効性が認められなかった」と説明する。コレステロール値が高いことが心臓病の主因で、下げれば心臓病の罹患(りかん)率と死亡率を下げられるという理論は見直すべきだという。
奥山治美・金城学院大脂質栄養オープンリサーチセンター長は、動物性脂肪とコレステロール摂取量を減らし高リノール酸油を増やすと血中の総コレステロール値が低下し、動脈硬化を予防できる-という説を批判。「リノール酸の取りすぎが多くの病気を増やす。動物性脂肪は安全性が高い」として、健康によい油脂の選び方の方向転換を求めている。
江部康二
2009年12月24日 (木)
こんばんは。
今回は妊娠糖尿病について、新ママさんからコメント・質問をいただきました。
「09/12/23 新ママ
妊婦中の糖質制限
第一子を妊娠中、妊娠糖尿病になりました。
主治医には次の妊娠も妊娠糖尿病になると念をおされています。でも、どうしてもあの辛い妊娠生活を送りたくなく、調べていたところ、「糖質制限」を見つけました。妊娠糖尿病のことも書いてあり、希望が出てきました。しかし、妊娠糖尿病で入院した時、妊婦は通常より多くカロリーをとる必要があると栄養指導を受け、入院中は白米が丼ぶりで出てきて、炭水化物でカロリーを増していました。かなりの量でしたが、赤ちゃんのため全て食べていました。パンの時も、まっ白い食パン4枚切り2枚が出され、苦しみながら食べていました。退院後も指導に従い、多くの炭水化物をとりながら、インスリンを2~3単位打っていました。
夜寝る前のインスリンを打つことなく、朝の血糖値は70台で、たまに低血糖を起こしていました。
旦那とも最後まで、インスリン打たなくても食事でコントロールできたのでは?と思っていました。
出産直後から、通常の血糖に戻っています。先生にお聞きしたいのが、私が受けた栄養指導どおり炭水化物をとる必要はあるのか、カロリーが必要であれば妊娠中何が一番よいのか、糖質制限による胎児への影響はないのか、ということです。こちらのブログを拝見して、前向きになれた気がします。お忙しいところ、誠に申し訳ありません。」
新ママさん。
コメントありがとうございます。
まず、妊娠糖尿病のとき、炭水化物を摂る必要はありません。糖質制限食で大丈夫です。
うさぎさんのコメント(*)にもあるように、米国でも<妊娠糖尿病→低炭水化物食>という食事指導が選択肢としてあるようです。
妊娠糖尿病と診断されて、糖質制限食でインスリン注射なしで無事出産という方も、本ブログでも数名おられます。
人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが約400~500万年前・・・。その後、3属17種の人類が栄枯盛衰・進化を繰り返し、現在残っているのは、現世人類(ホモ・サピエンス)だけです。
この間399万年間は、生業は狩猟・採集で、全ての人類が糖質制限食でした。農耕が始まり定着しての4000年間だけが、主食が穀物(糖質)と変化しました。
399万年間は、人類の栄養・代謝・生理すべて糖質制限食に適応するように進化してきていますし、勿論妊娠・出産・子育て・日常生活も糖質制限食の中で行われてきました。従いまして、妊婦が糖質制限食を実践しても、何の問題もありません。
また、極北の民イヌイットも、伝統的食生活を守っていた4000年間は、糖質制限食で妊娠・出産・子育て・日常生活を送っています。
新ママさん、妊娠糖尿病の時も安心して糖質制限食でをお続け下さいね。
(*)<うさぎさんのコメント>
09/07/08 うさぎ
米国での妊娠糖尿病の食事制限
江部先生
いつも質問にご丁寧にお答えいただきありがとうございます。
先ほど主人から「うさぎさんに、江部先生から質問があるようだよ」と知らされ、出張の時のメモを探してみました。(笑)
妊娠糖尿病の糖質制限食ということで、とても興味深くお話をうかがったのですが、たまたま、出張先で出会ってお話をしただけの方なので、病院名まではわかりませんが、覚えている範囲でお知らせいたします。連絡先をお聞きしておけばよかったのですが・・・。
まず、出産された方はカリフォルニア州在住の日本人女性です。出産時の年齢は29歳だったそうです。今年3月にお会いしたときに、お子さんは生後15ヶ月だということでしたので、出産されたのは2007年の12月頃だと思います。
通っていた病院については詳しくうかがいませんでしたが、もともと、カリフォルニアの総合病院のようなところにお勤めだったそうで、一般的な病院とおっしゃっていましたが、ある程度の設備が整った病院に通っていたようです。妊娠糖尿病が発覚してからは、産婦人科と妊娠糖尿病専門の先生に診ていただいていたとのことでした。
アメリカでは保健に加入している人は妊娠24週頃に糖尿病の検査を受けることになっているらしく、妊娠26週のときに受けたブドウ糖負荷試験(グルコース50グラムを摂って1時間値を見る検査だったそうです。)で、妊娠糖尿病が発覚し、薬は一切使わずに、栄養士の指導のもと食事制限を始めたそうです。検査の結果が出て、その日のうちに栄養指導を受けたと言っていました。
「○○%の病院で・・・」という具体的なお話ではないのですが、「妊娠糖尿病になったら、低炭水化物食」というのは、かなり浸透していると聞きました。また、妊娠糖尿病でも妊婦さんの健康状態や病院の方針によって、インスリン以外の薬を使用することもあり、腎臓に問題があれば「低炭水化物&低タンパク質食(高脂肪食でしょうか?)」などということもあるそうです。
栄養士からの指導の内容は、食事の時に「避けるもの」「好きなだけ食べてよいもの」「制限するもの」などの指導を受け、好きなだけ食べてよいと言われたのは、お肉類、お魚、野菜。ご飯、麺、パンなどは極力避け、フルーツも糖分が多いので、なるべく控えるように指導されたと言っていました。
大好きなご飯は、1回の食事で15グラムまでと指導され、とてもさみしい思いをしたと言っていました。もちろん、麺類やパンも、どうしても食べたければほんの一口だけにするようにと言われたそうです。
血糖値は食事制限に慣れるまでは、1日に8回測定。血糖値を上げないために体を動かすように、とも指導されたそうです。
出産直前はストレスのために、たまにはデザートなども食べてしまったそうですが、食事制限を頑張ったおかげで、生まれた時の赤ちゃんの体重は3,000グラムを少し上回ったくらいで、とても健康に育っているそうです。
妊娠中の食事制限には、アメリカ人のご主人も協力して、冷蔵庫の中の食材に、糖質の量を書いたメモを張っておいてくれたそうです。特に制限をしていたわけではありませんが、一緒に食事をしていたご主人も自然と糖質制限になっていたようで、2ヶ月間で10パウンドほど体重が減って、お腹がへこんだと言っていました。
なお、出産後は血糖値もすっかり正常になり、普通の食事をしているそうです。
以上が覚えている限りの内容です。お役に立てますかどうか・・・。
☆☆☆
<妊娠糖尿病>
今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後初めて糖尿病になる場合があります。
これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。
妊娠糖尿病の診断基準は、国により異なっています。
妊娠糖尿病のスクリーニング検査として、グルコースチャレンジテストがあります。随時に50gブドウ糖経口負荷後1時間の血糖値が140mg/dl以上を陽性とします。
それで陽性の場合、日本では、妊娠中に75gぶどう糖負荷試験を行い、糖負荷前値100mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値150mg/dL以上の3つの基準のうち、2つ以上を満たす場合に妊娠糖尿病と診断します。
従って、非妊娠時の糖尿病の判定基準とは異なっています。
妊娠糖尿病と診断された場合には、分娩後に改めて75gブドウ糖負荷試験を行って病型を分類するとしています。
肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。
もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。
妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。
この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体が、ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。
これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。
正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し、妊娠糖尿病を発症します。
妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、出産後も糖尿病が続く人もいます。
現在では妊娠糖尿病は「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。
このため、お産が終わって、6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。
なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。
この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。
なお妊娠許可の条件として、
HbA1c6%以下が設定されています。
妊娠中は
HbA1c5.8%以下が目標です。
血糖値の目安としては、
妊娠前
食前血糖100mg/dL 未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 未満、食後1時間糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満、
となっています。
産後の検査ですが
日本糖尿病・妊娠学会http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
のサイトが参考になります。
以下は引用です。
「妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが必要なのですか?」
最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月
江部康二
今回は妊娠糖尿病について、新ママさんからコメント・質問をいただきました。
「09/12/23 新ママ
妊婦中の糖質制限
第一子を妊娠中、妊娠糖尿病になりました。
主治医には次の妊娠も妊娠糖尿病になると念をおされています。でも、どうしてもあの辛い妊娠生活を送りたくなく、調べていたところ、「糖質制限」を見つけました。妊娠糖尿病のことも書いてあり、希望が出てきました。しかし、妊娠糖尿病で入院した時、妊婦は通常より多くカロリーをとる必要があると栄養指導を受け、入院中は白米が丼ぶりで出てきて、炭水化物でカロリーを増していました。かなりの量でしたが、赤ちゃんのため全て食べていました。パンの時も、まっ白い食パン4枚切り2枚が出され、苦しみながら食べていました。退院後も指導に従い、多くの炭水化物をとりながら、インスリンを2~3単位打っていました。
夜寝る前のインスリンを打つことなく、朝の血糖値は70台で、たまに低血糖を起こしていました。
旦那とも最後まで、インスリン打たなくても食事でコントロールできたのでは?と思っていました。
出産直後から、通常の血糖に戻っています。先生にお聞きしたいのが、私が受けた栄養指導どおり炭水化物をとる必要はあるのか、カロリーが必要であれば妊娠中何が一番よいのか、糖質制限による胎児への影響はないのか、ということです。こちらのブログを拝見して、前向きになれた気がします。お忙しいところ、誠に申し訳ありません。」
新ママさん。
コメントありがとうございます。
まず、妊娠糖尿病のとき、炭水化物を摂る必要はありません。糖質制限食で大丈夫です。
うさぎさんのコメント(*)にもあるように、米国でも<妊娠糖尿病→低炭水化物食>という食事指導が選択肢としてあるようです。
妊娠糖尿病と診断されて、糖質制限食でインスリン注射なしで無事出産という方も、本ブログでも数名おられます。
人類が、ゴリラやチンパンジーと分かれたのが約400~500万年前・・・。その後、3属17種の人類が栄枯盛衰・進化を繰り返し、現在残っているのは、現世人類(ホモ・サピエンス)だけです。
この間399万年間は、生業は狩猟・採集で、全ての人類が糖質制限食でした。農耕が始まり定着しての4000年間だけが、主食が穀物(糖質)と変化しました。
399万年間は、人類の栄養・代謝・生理すべて糖質制限食に適応するように進化してきていますし、勿論妊娠・出産・子育て・日常生活も糖質制限食の中で行われてきました。従いまして、妊婦が糖質制限食を実践しても、何の問題もありません。
また、極北の民イヌイットも、伝統的食生活を守っていた4000年間は、糖質制限食で妊娠・出産・子育て・日常生活を送っています。
新ママさん、妊娠糖尿病の時も安心して糖質制限食でをお続け下さいね。
(*)<うさぎさんのコメント>
09/07/08 うさぎ
米国での妊娠糖尿病の食事制限
江部先生
いつも質問にご丁寧にお答えいただきありがとうございます。
先ほど主人から「うさぎさんに、江部先生から質問があるようだよ」と知らされ、出張の時のメモを探してみました。(笑)
妊娠糖尿病の糖質制限食ということで、とても興味深くお話をうかがったのですが、たまたま、出張先で出会ってお話をしただけの方なので、病院名まではわかりませんが、覚えている範囲でお知らせいたします。連絡先をお聞きしておけばよかったのですが・・・。
まず、出産された方はカリフォルニア州在住の日本人女性です。出産時の年齢は29歳だったそうです。今年3月にお会いしたときに、お子さんは生後15ヶ月だということでしたので、出産されたのは2007年の12月頃だと思います。
通っていた病院については詳しくうかがいませんでしたが、もともと、カリフォルニアの総合病院のようなところにお勤めだったそうで、一般的な病院とおっしゃっていましたが、ある程度の設備が整った病院に通っていたようです。妊娠糖尿病が発覚してからは、産婦人科と妊娠糖尿病専門の先生に診ていただいていたとのことでした。
アメリカでは保健に加入している人は妊娠24週頃に糖尿病の検査を受けることになっているらしく、妊娠26週のときに受けたブドウ糖負荷試験(グルコース50グラムを摂って1時間値を見る検査だったそうです。)で、妊娠糖尿病が発覚し、薬は一切使わずに、栄養士の指導のもと食事制限を始めたそうです。検査の結果が出て、その日のうちに栄養指導を受けたと言っていました。
「○○%の病院で・・・」という具体的なお話ではないのですが、「妊娠糖尿病になったら、低炭水化物食」というのは、かなり浸透していると聞きました。また、妊娠糖尿病でも妊婦さんの健康状態や病院の方針によって、インスリン以外の薬を使用することもあり、腎臓に問題があれば「低炭水化物&低タンパク質食(高脂肪食でしょうか?)」などということもあるそうです。
栄養士からの指導の内容は、食事の時に「避けるもの」「好きなだけ食べてよいもの」「制限するもの」などの指導を受け、好きなだけ食べてよいと言われたのは、お肉類、お魚、野菜。ご飯、麺、パンなどは極力避け、フルーツも糖分が多いので、なるべく控えるように指導されたと言っていました。
大好きなご飯は、1回の食事で15グラムまでと指導され、とてもさみしい思いをしたと言っていました。もちろん、麺類やパンも、どうしても食べたければほんの一口だけにするようにと言われたそうです。
血糖値は食事制限に慣れるまでは、1日に8回測定。血糖値を上げないために体を動かすように、とも指導されたそうです。
出産直前はストレスのために、たまにはデザートなども食べてしまったそうですが、食事制限を頑張ったおかげで、生まれた時の赤ちゃんの体重は3,000グラムを少し上回ったくらいで、とても健康に育っているそうです。
妊娠中の食事制限には、アメリカ人のご主人も協力して、冷蔵庫の中の食材に、糖質の量を書いたメモを張っておいてくれたそうです。特に制限をしていたわけではありませんが、一緒に食事をしていたご主人も自然と糖質制限になっていたようで、2ヶ月間で10パウンドほど体重が減って、お腹がへこんだと言っていました。
なお、出産後は血糖値もすっかり正常になり、普通の食事をしているそうです。
以上が覚えている限りの内容です。お役に立てますかどうか・・・。
☆☆☆
<妊娠糖尿病>
今まで糖尿病でなかったのに、妊娠した後初めて糖尿病になる場合があります。
これが「妊娠糖尿病」で、妊婦の約3%くらいにみられます。
妊娠糖尿病の診断基準は、国により異なっています。
妊娠糖尿病のスクリーニング検査として、グルコースチャレンジテストがあります。随時に50gブドウ糖経口負荷後1時間の血糖値が140mg/dl以上を陽性とします。
それで陽性の場合、日本では、妊娠中に75gぶどう糖負荷試験を行い、糖負荷前値100mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値150mg/dL以上の3つの基準のうち、2つ以上を満たす場合に妊娠糖尿病と診断します。
従って、非妊娠時の糖尿病の判定基準とは異なっています。
妊娠糖尿病と診断された場合には、分娩後に改めて75gブドウ糖負荷試験を行って病型を分類するとしています。
肥満、糖尿病の家族歴、高齢、などが妊娠糖尿病のリスクとなります。
もともとの糖尿病患者が妊娠することを「糖尿病合併妊娠」といい、二つはわけて分類されています。
妊娠すると、胎盤が形成され「母体・胎盤・胎児」がひとつのユニットとなります。
この時、健常な胎児を発育・成長させるために胎盤や母体が、ヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL)、成長ホルモン、グルカゴン、カテコラミン、糖質コルチコイドなどのホルモンを分泌し、それらによりインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)がでてきます。
これらのホルモンは、妊娠の進行とともに増加しますから、特に妊娠中期以後にインスリン抵抗性が増加して、血糖値が上昇しやすくなります。
正常の妊婦は、インスリン抵抗性が増強する時期には、インスリンを多く分泌して血糖値が上昇しないように対処します。しかし、必要なだけのインスリンを分泌することができない体質の妊婦は、血糖値が上昇し、妊娠糖尿病を発症します。
妊娠糖尿病は、通常は妊娠期間が終わったら、糖尿病の症状は消失します。しかし、出産後も糖尿病が続く人もいます。
現在では妊娠糖尿病は「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」と定義されています。
このため、お産が終わって、6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行って、正常型、境界型、糖尿病型に分類します。
なお日本では、若い女性の2型糖尿病が少し増えています。従って、可能性として、「糖尿病が既にあったのに検査していなくて見過ごされていて、たまたま妊娠して検査したら糖尿病が発見された。」というパターンがあり得ます。
この場合は、「妊娠糖尿病」ではなくて「糖尿病合併妊娠」の見逃しになります。高血糖に由来する奇形の発生は、妊娠7週までに規定されることが明らかになっていますので、妊娠機会のある女性は、糖尿病や境界型の有無を調べておくのがお奨めですね。
なお妊娠許可の条件として、
HbA1c6%以下が設定されています。
妊娠中は
HbA1c5.8%以下が目標です。
血糖値の目安としては、
妊娠前
食前血糖100mg/dL 未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満、
妊娠中
食前血糖100mg/dL 未満、食後1時間糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖120mg/dL 未満、
となっています。
産後の検査ですが
日本糖尿病・妊娠学会http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/
のサイトが参考になります。
以下は引用です。
「妊娠糖尿病の人はお産後も定期的な健診が必要といわれましたが必要なのですか?」
最近の報告では、妊娠糖尿病の人は産後早期の3~6ヶ月の検査でも、5.4%が糖尿病、全体で25%に何らかの耐糖能異常が見られると報告されています。その他の報告を集計すると、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追求すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。
また、妊娠糖尿病の人を定期的に11年間追求した研究では、産後11年経った平均年齢40.6歳時にはメタボリックシンドロームの発症率は27.2%であり正常妊婦さんの8.2%に比較して明らかに高頻度に発症することが報告されています。
したがって、産後も定期的に耐糖能異常があるかどうかスクリーニングをうけることが大切であり、同時に食事や運動に気をつけていく必要があります。
(岡山大学 平松祐司)2007年11月
江部康二
2009年12月23日 (水)
こんばんは。
今回は、たけさんから、LDL-コレステロールとスタチンについてコメント・質問を頂きました。
「09/12/22 たけ
スタチン
LDL140の糖尿病患者です
以前は110位でしたが最近上昇
主治医に希望すればスタチンを
処方すると言われています
薬はできるなら使いたくないのですが
スタチンは
動脈硬化そのものを修復する効果や
アルツハイマー予防など様々な効果がいわれています
一方、肝機能障害などの副作用もあり、
以前重篤な肝機能障害をわずらったこともあり
思案しているところです。」
たけさん。
コメントありがとうございます。
LDL-コレステロール140mg/dlの糖尿人で糖質制限食実践中なら、少なくとも160mgまでは、薬の必要はないと思います。
日本の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、
<高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞家族歴、加齢(*)、HDL-C低値>の
LDLコレステロール以外の6項目の危険因子が
ゼロ(低リスク群)、
危険因子1~2(中リスク群)、
危険因子3以上(高リスク群)、
そして心筋梗塞や狭心症の既往歴のある群の4群が設定されています。
糖尿病があれば高リスク群に分類されます。
低リスク群は、LDLコレステロール160mg/dl未満、
中リスク群は、140mg/dl未満、
高リスク群は、120mg/dl未満
冠動脈疾患の既往がある群は、100mg/dl未満
が目標とされています。
LDL-コレステロール値に関しては、日本のガイドラインは厳しすぎるので、米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)の2001年のガイドライン(**)にしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は、190mg/dl
中程度リスク者で、160mg/dl
高リスク者で、130mg/dl
が一つの目安になります。
米国のガイドラインでも、糖尿病があると、それだけで高リスク群に入れられます。
これは、糖尿病の人が通常のカロリー制限食(高糖質食)を摂取していると、必ず食後高血糖が生じ、大血管の動脈硬化が進行し、将来の心筋梗塞のリスクとなるからと思われます。
しかし、糖質制限食なら、糖尿人でも食後高血糖は生じません。
従って、糖尿人でも糖質制限食を実践していて、糖尿人の目標
① 空腹時血糖値126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値140mg/dl未満
③ 食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c5.8%未満
を達成していれば、糖尿病のために心筋梗塞のリスクが増すことはないので、ガイドラインの分類はあてはまりません。年齢により、中リスク群か低リスク群に分類されると思います。低リスク群なら190mgまで大丈夫ということとなります。
(*)加齢:男性45才以上、女性55才以上
(**)米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」のLDL-コレステロールの基準は、現時点で比較的信頼度が高いと考えられます。
2004年に改定があり、LDL-コレステロールの基準値が、かなり引き下げられましたましたが、製剤メーカーのひも付きの学者が多く関わっており信頼度は低いとされています。
江部康二
今回は、たけさんから、LDL-コレステロールとスタチンについてコメント・質問を頂きました。
「09/12/22 たけ
スタチン
LDL140の糖尿病患者です
以前は110位でしたが最近上昇
主治医に希望すればスタチンを
処方すると言われています
薬はできるなら使いたくないのですが
スタチンは
動脈硬化そのものを修復する効果や
アルツハイマー予防など様々な効果がいわれています
一方、肝機能障害などの副作用もあり、
以前重篤な肝機能障害をわずらったこともあり
思案しているところです。」
たけさん。
コメントありがとうございます。
LDL-コレステロール140mg/dlの糖尿人で糖質制限食実践中なら、少なくとも160mgまでは、薬の必要はないと思います。
日本の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」では、
<高血圧、糖尿病、喫煙、心筋梗塞家族歴、加齢(*)、HDL-C低値>の
LDLコレステロール以外の6項目の危険因子が
ゼロ(低リスク群)、
危険因子1~2(中リスク群)、
危険因子3以上(高リスク群)、
そして心筋梗塞や狭心症の既往歴のある群の4群が設定されています。
糖尿病があれば高リスク群に分類されます。
低リスク群は、LDLコレステロール160mg/dl未満、
中リスク群は、140mg/dl未満、
高リスク群は、120mg/dl未満
冠動脈疾患の既往がある群は、100mg/dl未満
が目標とされています。
LDL-コレステロール値に関しては、日本のガイドラインは厳しすぎるので、米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)の2001年のガイドライン(**)にしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は、190mg/dl
中程度リスク者で、160mg/dl
高リスク者で、130mg/dl
が一つの目安になります。
米国のガイドラインでも、糖尿病があると、それだけで高リスク群に入れられます。
これは、糖尿病の人が通常のカロリー制限食(高糖質食)を摂取していると、必ず食後高血糖が生じ、大血管の動脈硬化が進行し、将来の心筋梗塞のリスクとなるからと思われます。
しかし、糖質制限食なら、糖尿人でも食後高血糖は生じません。
従って、糖尿人でも糖質制限食を実践していて、糖尿人の目標
① 空腹時血糖値126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値140mg/dl未満
③ 食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c5.8%未満
を達成していれば、糖尿病のために心筋梗塞のリスクが増すことはないので、ガイドラインの分類はあてはまりません。年齢により、中リスク群か低リスク群に分類されると思います。低リスク群なら190mgまで大丈夫ということとなります。
(*)加齢:男性45才以上、女性55才以上
(**)米国で2001年に制定されたガイドライン
「NCEP ATP III」のLDL-コレステロールの基準は、現時点で比較的信頼度が高いと考えられます。
2004年に改定があり、LDL-コレステロールの基準値が、かなり引き下げられましたましたが、製剤メーカーのひも付きの学者が多く関わっており信頼度は低いとされています。
江部康二
2009年12月22日 (火)
こんにちは。
旧英国領の国に住んでおられる、まぬーかさんから、海外の医療(英国)について、貴重なコメントをいただきました。
「09/12/22 まぬーか
松さんの参考になれば
私は英国在住ではなく、旧英国領の国に住んでおりますが、医療事情はかなり似ていますので、ご参考になればと思いコメントさせていただきます。
まず、各先進国の医療制度はマイケルムーア監督のシッコという映画を観られると良いです。ただしかなり誇張はあります。
英国ではGP制度(ジェネラルプラクティス)で主治医を登録し、病院は主治医を通して利用できます。病院は手術、入院費も無料です。緊急の場合はGPを通さなくても利用できます。
しかし現実は病院の予約はかなり時間がかかります。
私の友人は英国の永住権を持っていて、現在はスペイン在住ですが、歯の治療、一般的な健康チェックは英国に戻らず、タイへ行くそうです。これが現実を物語っていると思われます。
糖尿病の治療はわかりませんが、アジア人が白人に比べてインスリン分泌能が半分という認識はあると思います。
検査の単位が違うので覚えておかれると便利です。血糖値の単位はmmol/Lですので、mg/dlの数値を18で割ります。またコレステロールの値は38で割ります。TGは日本と同じと思います。
A1cは最近mmol/mmolでも表示されます。正常値は4.0-6.0パーセント、20-42mmol/mmoldです。たぶん英国のA1cは米国と同じく日本の数値から0.3か0.4%引いたものと思います。
また食料品ですが、成分表示がついていますのでCarb量を知るのに便利です。
ご参考になれば幸いです。」
まぬーかさん。
興味深い情報をありがとうございます。とても参考になります。
「しかし現実は病院の予約はかなり時間がかかります。
私の友人は英国の永住権を持っていて、現在はスペイン在住ですが、歯の治療、一般的な健康チェックは英国に戻らず、タイへ行くそうです。これが現実を物語っていると思われます。」
最近、米国の患者さんが、タイで手術を受けるケースが増えているそうです。
これは、米国本土で手術すれば莫大な医療費が必要なのに、タイなら数分の一ですむので、往復の旅費を差し引いても充分おつりがくるからです。
米国の民間保険会社がビジネスとしてとらえて、利潤をあげるために、米国の契約患者に勧めています。
患者さんにとっても、早くて安くて親切で、タイのほうが好ましい側面も多いようです。米国で勉強したタイ人医師が多くて、タイの医療レベルは結構良いのです。
まぬーかさんのご友人は、英国永住権があるので、英国で歯の治療をして、健康チェックなら無料なのに、わざわざ金を払ってもタイのほうがメリットが大きいということですね。
江部康二
旧英国領の国に住んでおられる、まぬーかさんから、海外の医療(英国)について、貴重なコメントをいただきました。
「09/12/22 まぬーか
松さんの参考になれば
私は英国在住ではなく、旧英国領の国に住んでおりますが、医療事情はかなり似ていますので、ご参考になればと思いコメントさせていただきます。
まず、各先進国の医療制度はマイケルムーア監督のシッコという映画を観られると良いです。ただしかなり誇張はあります。
英国ではGP制度(ジェネラルプラクティス)で主治医を登録し、病院は主治医を通して利用できます。病院は手術、入院費も無料です。緊急の場合はGPを通さなくても利用できます。
しかし現実は病院の予約はかなり時間がかかります。
私の友人は英国の永住権を持っていて、現在はスペイン在住ですが、歯の治療、一般的な健康チェックは英国に戻らず、タイへ行くそうです。これが現実を物語っていると思われます。
糖尿病の治療はわかりませんが、アジア人が白人に比べてインスリン分泌能が半分という認識はあると思います。
検査の単位が違うので覚えておかれると便利です。血糖値の単位はmmol/Lですので、mg/dlの数値を18で割ります。またコレステロールの値は38で割ります。TGは日本と同じと思います。
A1cは最近mmol/mmolでも表示されます。正常値は4.0-6.0パーセント、20-42mmol/mmoldです。たぶん英国のA1cは米国と同じく日本の数値から0.3か0.4%引いたものと思います。
また食料品ですが、成分表示がついていますのでCarb量を知るのに便利です。
ご参考になれば幸いです。」
まぬーかさん。
興味深い情報をありがとうございます。とても参考になります。
「しかし現実は病院の予約はかなり時間がかかります。
私の友人は英国の永住権を持っていて、現在はスペイン在住ですが、歯の治療、一般的な健康チェックは英国に戻らず、タイへ行くそうです。これが現実を物語っていると思われます。」
最近、米国の患者さんが、タイで手術を受けるケースが増えているそうです。
これは、米国本土で手術すれば莫大な医療費が必要なのに、タイなら数分の一ですむので、往復の旅費を差し引いても充分おつりがくるからです。
米国の民間保険会社がビジネスとしてとらえて、利潤をあげるために、米国の契約患者に勧めています。
患者さんにとっても、早くて安くて親切で、タイのほうが好ましい側面も多いようです。米国で勉強したタイ人医師が多くて、タイの医療レベルは結構良いのです。
まぬーかさんのご友人は、英国永住権があるので、英国で歯の治療をして、健康チェックなら無料なのに、わざわざ金を払ってもタイのほうがメリットが大きいということですね。
江部康二
2009年12月21日 (月)
こんばんは。
2009年12月初め発売の、江部康二監修及び、NPO法人糖質制限食ネット・リボーン理事、管理栄養士大柳珠美さん監修
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
おかげさまで結構売れ行き好調です。
これに味をしめたわけではないのですが、今度は、20代の女性向けに江部康二が自分で執筆して、糖質制限食のいろんなノウハウの詰まったダイエット本をだそうと考えています。
dancyuも含めて、今までは、おじさんがメインでおばさまも少しというのが読者層だったのですが、新企画ということです。
つきましてはブログ読者の皆様へのお願いなのですが、糖質制限食でダイエットに成功された20代の女性の方を、数例募集しています。
勿論、匿名でダイエット成功例として本に掲載させて頂きたいと思っています。採用された方には、その本を2冊謹呈致します。
ご協力いただける方は、
高雄病院のホームページ
http://takao-hospital.jp/
右下端の高雄病院Eメールアドレス
takao-info@ac.auone-net.jp
に、
年齢、生年、(もしよろしければ月日)
性別、
身長、
糖質制限食実践状況(スーパー、スタンダード、プチ)
ダイエット前の体重、○月○日。
ダイエット後の体重、○月○日。
経過
連絡先、
をメールしていただければ幸いです。
もしくは、
高雄病院Eメールアドレス
takao-info@ac.auone-net.jp
に直接メールして頂いても結構です。
よろしくお願い申しあげます。
江部康二
2009年12月初め発売の、江部康二監修及び、NPO法人糖質制限食ネット・リボーン理事、管理栄養士大柳珠美さん監修
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
おかげさまで結構売れ行き好調です。
これに味をしめたわけではないのですが、今度は、20代の女性向けに江部康二が自分で執筆して、糖質制限食のいろんなノウハウの詰まったダイエット本をだそうと考えています。
dancyuも含めて、今までは、おじさんがメインでおばさまも少しというのが読者層だったのですが、新企画ということです。
つきましてはブログ読者の皆様へのお願いなのですが、糖質制限食でダイエットに成功された20代の女性の方を、数例募集しています。
勿論、匿名でダイエット成功例として本に掲載させて頂きたいと思っています。採用された方には、その本を2冊謹呈致します。
ご協力いただける方は、
高雄病院のホームページ
http://takao-hospital.jp/
右下端の高雄病院Eメールアドレス
takao-info@ac.auone-net.jp
に、
年齢、生年、(もしよろしければ月日)
性別、
身長、
糖質制限食実践状況(スーパー、スタンダード、プチ)
ダイエット前の体重、○月○日。
ダイエット後の体重、○月○日。
経過
連絡先、
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もしくは、
高雄病院Eメールアドレス
takao-info@ac.auone-net.jp
に直接メールして頂いても結構です。
よろしくお願い申しあげます。
江部康二
2009年12月20日 (日)
【コメント・質問に関するお知らせ・お願い】
ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。
読者の皆さんからご意見いただきましたが、確かに普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、主治医にご相談頂けば助かります。m(_ _)m
普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)
掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。質問によってはコメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。
また、各地の糖質制限食による糖尿病治療が可能な医院の情報は、ブログにリンクしてある「糖質制限食SNS 糖質制限ひろば」で公表してますので、そちらをご覧ください。
一方、コメント・質問がかなり増えてきていますので、なかなか即お答えすることが困難となってきています。
できるだけ全ての質問に本文かコメントでお答えするよう努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m
それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、コメント欄にお答えするか、一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、よろしくお願い申し上げます。
江部康二
【糖質制限食とは】2009年11月改訂・最新版
食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わります。
タンパク質・脂質は血糖に変わりません。→改訂
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。これらは、含有エネルギーとは無関係な、三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在、糖尿病において食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が、大きな問題として注目されています。
食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。
なお、1gの糖質が、体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは、理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお、糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
☆☆☆
『糖質制限食十箇条』 -糖尿病や肥満が気になる人に-
一、魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べてよい。
二、糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控える。
三、主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
四、飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶もOK。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツは不可。
十、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。
『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は低血糖の心配がありますので、必ず主治医と相談して頂きたいと思います。一方薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
を参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
なお、血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。糖質制限食は、相対的に高タンパク食になるので、腎不全には適応とならないのです。
ブログ読者の皆さんには、いつもコメントいただき、ありがとうございます。
読者の皆さんからご意見いただきましたが、確かに普通のお医者さんに相談可能な個人的な内容の質問は、主治医にご相談頂けば助かります。m(_ _)m
普通のお医者さんでは解答不能の、糖質制限食に関わる質問は、何でもどんどんしていただけば嬉しいです。 (^_^)
掲載OKの質問に関して、読者の皆さんに共有していただきたい情報の場合は、ブログ本文にて、できるだけ順番にお答えしたいと思います。質問によってはコメント欄でお早めにお答えする場合もありますのでご了承ください。
また、各地の糖質制限食による糖尿病治療が可能な医院の情報は、ブログにリンクしてある「糖質制限食SNS 糖質制限ひろば」で公表してますので、そちらをご覧ください。
一方、コメント・質問がかなり増えてきていますので、なかなか即お答えすることが困難となってきています。
できるだけ全ての質問に本文かコメントでお答えするよう努力はしていますが、できないときはご容赦願います。m(_ _)m
それから、「管理人のみ閲覧できる」「匿名希望」などの質問に関しては、コメント欄にお答えするか、一般的な話題に置き換えてブログに記載するようにしていますので、よろしくお願い申し上げます。
江部康二
【糖質制限食とは】2009年11月改訂・最新版
食べ物が消化・吸収されたあと、糖質は100%血糖に変わります。
タンパク質・脂質は血糖に変わりません。→改訂
また糖質は、摂取直後から急峻に血糖値を高く速く上昇させ、2時間以内にほとんどすべてが吸収されます。これらは、含有エネルギーとは無関係な、三大栄養素の生理学的特質です。
このように糖質、脂質、タンパク質のうち糖質だけが血糖値を上昇させます。従って、糖質を摂取した時にはインスリンが大量に追加分泌されます。脂質を摂取しても、インスリンの追加分泌はありません。タンパク質は、ごく少量のインスリンを追加分泌させます。
現在、糖尿病において食後の急激な高血糖(グルコーススパイク)が、大きな問題として注目されています。
食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険因子として確立されたからです。そして食後高血糖を起こすのは三大栄養素のなかで糖質だけなのです。
1gの糖質が、体重64kgの2型糖尿病の人の血糖値を約3mg上昇させます。炊いた白ご飯茶碗1杯150g(252kcal)には55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。
一方、牛サーロインステーキを200g(約1000キロカロリー)食べても糖質含有量は1gもないので、食後高血糖はほとんど生じないのです。
なお、1gの糖質が、体重64kgの1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させます。
糖質制限食の基本的な考え方は、上述のような生理学的事実をベースにできるだけ糖質の摂取を低く抑えて、食後高血糖を防ぐというものです。簡単に言えば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。
抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類など糖質が主成分のものです。
3食主食抜きのスーパー糖質制限食(糖質12%、タンパク質32%、脂質56%)なら、薬に頼ることなく速やかにリアルタイムで良好な血糖コントロールが可能です。
一方、上述の白ご飯とステーキの例でも明らかなように、カロリー計算に基づいて血糖値をコントロールすることは、理論的に不可能です。
従って、現行の日本糖尿病学会推薦の糖尿病食(糖質60%、タンパク質20%、脂質20%)を実践する限りは、
一日の摂取カロリーを1200キロカロリーと低く抑えたとしても、食後高血糖が必ず生じるのです。
糖尿病の改善には、カロリー制限より糖質制限ということがおわかりいただけたと思います。
なお、糖質制限食は、カロリー無制限ということではありません。
一般的な標準摂取カロリーの範囲、すなわち男性なら1600~2000キロカロリー、女性なら1200~1600キロカロリーくらいが目安です。
☆☆☆
『糖質制限食十箇条』 -糖尿病や肥満が気になる人に-
一、魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べてよい。
二、糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控える。
三、主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
四、飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶もOK。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツは不可。
十、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。
『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。
*炭水化物=糖質+食物繊維
【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服やインスリン注射をしておられる糖尿人は低血糖の心配がありますので、必ず主治医と相談して頂きたいと思います。一方薬を使用してない糖尿人は、低血糖の心配はないので、
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
(東洋経済新報社)
「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)
を参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。
なお、血液検査で血清クレアチニン値が高値で腎障害がある場合、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。糖質制限食は、相対的に高タンパク食になるので、腎不全には適応とならないのです。
2009年12月18日 (金)
こんにちは。
米国、カリフォルニア州在住の糖尿東京人さんから、またまた貴重な情報を頂きました。
「09/12/18 糖尿東京人
USAさん
江部先生、USAさん
こんにちは、コメントをしてよいものか迷った末 書かせていただきます。
USAさんの住んでいる州での状況がわからないのですが、 おそらくカーボコントロール治療をする先生が各州に
いると思います。
カリフォルニアではカロリー制限指導と、 カーボコントロールのどちらに重点をおくかは先生により違います。
良いか悪いかはさておき、米国ではガイドラインが絶対でなく 個々の医師により診療方針に幅がありますね。
患者も通う病院や医師を自分の好みや、相性で選ぶことができますが、 それには相応の対価が必要となります。
同じ糖尿診察でも先生により報酬額が大きく違うと思います。
この点が、いま米国でも話題になっている「自由か平等か」の問題でお金、保険のある人のみが自由に医療を選択でき、保険のない人は インフルエンザにかかってもドラッグストアで$5くらいの風邪薬しか使えない状態になっています。
私の知る範囲ですが、アメリカの糖尿治療でカーボコントロールを 推している先生は、カリフォルニア、ワシントン州、オレゴン、ミネソタ とマンハッタンに多いようで、健常者のあいだでローカーボ食習慣が浸透している地域と重なる気がします。
少なくともカリフォルニアの沿海部ではアトキンスやナチュラルハイジーンといった高度なダイエットプログラムでなく 一般人もカーボを減らす傾向にあります。
一般のパン屋でもローカーボと記した種類がおかれ、チェーンのハンバーガー店もバンレスで注文でき、LAから全米に広がった「Cheesecake Factory」では砂糖小麦不使用のローカーボチーズケーキが売れ行き2番なはずです。
このような地域性もあると思いますが、糖尿になったらまずはパンはローカーボ、 パスタはDreamfieldsというのがデフォルトになっています。
検査で確定診断が出たら、減量のためにカロリーを減らし、 食後高血糖予防にカーボコントロールというアドバイスを与えられ、 最終的に自分で治療方針を決めるようになります。
私の場合は、まだインスリン分泌がある2型なので、まずはカーボを減らし血糖を低値安定させ維持、それが上手くいかなくなって投薬、さらに将来薬もきかなくなるか、インスリン分泌がなくなってきたら注射をするという方針になりました。
食事制限をしない場合、現時点で糖質吸収を鈍らせたり、肝臓で糖を作らないようにする薬を使う選択もありました。
あとは、加入している保険のカバー範囲によって病院側も治療を決めるようです。 手厚い保険に加入していて治療選択に自由がきいたのでプログラムに参加したり セカンドオピニオンとして数名の医師からお話を聞き、自分にあった先生に 委ねることが出来ました。最高級な保険だと治療を受けるため他州まで の旅費をもカバーするようです。
保険によってセカンドオピニオンが自費になる場合等は最初に診てもらった先生の方針が全てになってしまいます。
やはり高い医療費を保険でカバーして自由な医療を受けるという、 米国の事情は良し悪しではないかと思います。
個人の推測ですが、しっかり医療選択のできた糖尿患者とそうでない患者の病状進行は大きく違う気がするので、平均値でしっかりと医療の受けられる 日本の制度は優れていると思います。それだから医療崩壊が始まっているのかも
しれませんが。」
「09/12/18 糖尿東京人 追記
ホームドクターや病院で紹介してもらえるところは その医療機関のグループ、学会同僚が多く治療方針も似ていることが多いです。
米国でセカンドオピニオン等、代替治療を 試してみたいときには、加入している医療保険のカウンセラーに尋ねるのが一般的です。
どのような治療を望んでいるか伝え、保険のカバーする範囲と自費に分けて様々な選択肢を出してもらえます。
カウンセリングがカバーされていない場合は自身で医師を探し、相談した治療法を保険会社にカバーするか確認しないとならず少々面倒なことになります。」
「09/12/18 糖尿東京人
タイトルなし
もう一点、アジア系や先住民が少ない地域では白人に合った治療しか受けられないかもしれませんね。
先住民、アジア系の多いLA、SF、Seattle等では痩せ形(あくまで米国基準)なのに2型が多く、 インスリン分泌が極端に少ないアジア系の患者はカーボを減らすだけでかなり改善すると大抵の医師は把握しています。
おそらく糖尿病レシピ等も白人体質が基準で白人健常者に比べてローカーボなのでしょうから、マイノリティのアジア系は体質に合わせてアレンジする必要がありますね。江部先生の糖質制限食は米国でもアジア、先住民系に合うのだと思います。私もプチ糖質制限でA1cは4%台に収まっています。
州自治がしっかりしているので単一疾患の医療方針を連邦で統一するのはほぼ不可能だと思います。
地域による食習慣も全く違い、糖尿食に対する医師の考えにも地域性があると思います。
病状が悪化してからの治療は全米で同じで、初期段階から投薬をするか、食事を工夫して無投薬で過ごすかの違いですから、患者にはおおごとでも医師にとってはそれほど大きな違いではないのかもしれません。
居住国の医療が不満であれば帰国するか、妥協するしかないわけで、その国なりの活路もあるはずです、食事や医療機関情報、口コミは各都市にあるDiabetic Communityで活発に交わされていますので参加なさってみるのもいいかと。」
糖尿東京人さん、いつもありがとうございます。とても参考になります。
米国でも、現段階では糖尿病専門医の多くはカロリー制限食を推奨すると思います。
一方、糖尿東京人さんに、以前情報を頂いた「カリフォルニア州立のUCSF(*)」では、糖質制限食にも理解がある教育プログラムでしたね。
「私の知る範囲ですが、アメリカの糖尿治療でカーボコントロールを 推している先生は、カリフォルニア、ワシントン州、オレゴン、ミネソタ とマンハッタンに多いようで、健常者のあいだでローカーボ食習慣が 浸透している地域と重なる気がします。」
これは、興味深い情報です。
usaさん、参考になりますでしょうか?
「糖尿になったらまずはパンはローカーボ、パスタはDreamfieldsというのがデフォルトになっています。」
糖尿病には、主食はとりあえず低炭水化物というのが、カリフォルニア州では標準食なのですね。各州によって違いがあるとはいえ、カリフォルニアってなんか最先端な感じがします。
「私の場合は、まだインスリン分泌がある2型なので、 まずはカーボを減らし血糖を低値安定させ維持、それが上手くいかなくなって投薬、 さらに将来薬もきかなくなるか、インスリン分泌がなくなってきたら注射をするという方針になりました。 食事制限をしない場合、現時点で糖質吸収を鈍らせたり、肝臓で糖を作らないようにする薬を使う選択もありました。」
糖尿東京人さんの場合は、糖質制限食を今後も実践されれば、血糖コントロールは良好が保たれて、疲弊していた膵臓のβ細胞も休養ができて回復することも期待できますよ。少なくとも、投薬の必要性はまずないと思います。
「あとは、加入している保険のカバー範囲によって病院側も治療を決めるようです。 手厚い保険に加入していて治療選択に自由がきいたのでプログラムに参加したりセカンドオピニオンとして数名の医師からお話を聞き、自分にあった先生に委ねることが出来ました。最高級な保険だと治療を受けるため他州までの旅費をもカバーするようです。
保険によってセカンドオピニオンが自費になる場合等は最初に診てもらった先生の方針が全てになってしまいます。」
糖尿東京人さんは、手厚い民間の保険に加入しておられたので、自分の望む治療を受けることができたのですね。
良かったですが、保険料も当然、高額になるのでしょうね。マイケル・ムーア監督の映画やテレビの「ER」をみても米国の医療の負の部分はかなり大きいと思います。
日本の場合、国民皆保険で、米国の民間保険に比べれば、極めて安い保険料で、誰でも平等な医療を享受できるのは素晴らしいことだと思います。
それにつけても、何とかこれ以上の医療崩壊をくい止めないと・・・。
今回オバマ大統領が、米国版国民皆保険を目指していますが、かなり苦戦しているようです。
クリントン大統領の時代にもヒラリーさんが、国民皆保険を目指して失敗したのは記憶に新しいです。
オバマ大統領には是非、頑張ってほしいですね。
(*)UCSF(University of California San Francisco)
江部康二
米国、カリフォルニア州在住の糖尿東京人さんから、またまた貴重な情報を頂きました。
「09/12/18 糖尿東京人
USAさん
江部先生、USAさん
こんにちは、コメントをしてよいものか迷った末 書かせていただきます。
USAさんの住んでいる州での状況がわからないのですが、 おそらくカーボコントロール治療をする先生が各州に
いると思います。
カリフォルニアではカロリー制限指導と、 カーボコントロールのどちらに重点をおくかは先生により違います。
良いか悪いかはさておき、米国ではガイドラインが絶対でなく 個々の医師により診療方針に幅がありますね。
患者も通う病院や医師を自分の好みや、相性で選ぶことができますが、 それには相応の対価が必要となります。
同じ糖尿診察でも先生により報酬額が大きく違うと思います。
この点が、いま米国でも話題になっている「自由か平等か」の問題でお金、保険のある人のみが自由に医療を選択でき、保険のない人は インフルエンザにかかってもドラッグストアで$5くらいの風邪薬しか使えない状態になっています。
私の知る範囲ですが、アメリカの糖尿治療でカーボコントロールを 推している先生は、カリフォルニア、ワシントン州、オレゴン、ミネソタ とマンハッタンに多いようで、健常者のあいだでローカーボ食習慣が浸透している地域と重なる気がします。
少なくともカリフォルニアの沿海部ではアトキンスやナチュラルハイジーンといった高度なダイエットプログラムでなく 一般人もカーボを減らす傾向にあります。
一般のパン屋でもローカーボと記した種類がおかれ、チェーンのハンバーガー店もバンレスで注文でき、LAから全米に広がった「Cheesecake Factory」では砂糖小麦不使用のローカーボチーズケーキが売れ行き2番なはずです。
このような地域性もあると思いますが、糖尿になったらまずはパンはローカーボ、 パスタはDreamfieldsというのがデフォルトになっています。
検査で確定診断が出たら、減量のためにカロリーを減らし、 食後高血糖予防にカーボコントロールというアドバイスを与えられ、 最終的に自分で治療方針を決めるようになります。
私の場合は、まだインスリン分泌がある2型なので、まずはカーボを減らし血糖を低値安定させ維持、それが上手くいかなくなって投薬、さらに将来薬もきかなくなるか、インスリン分泌がなくなってきたら注射をするという方針になりました。
食事制限をしない場合、現時点で糖質吸収を鈍らせたり、肝臓で糖を作らないようにする薬を使う選択もありました。
あとは、加入している保険のカバー範囲によって病院側も治療を決めるようです。 手厚い保険に加入していて治療選択に自由がきいたのでプログラムに参加したり セカンドオピニオンとして数名の医師からお話を聞き、自分にあった先生に 委ねることが出来ました。最高級な保険だと治療を受けるため他州まで の旅費をもカバーするようです。
保険によってセカンドオピニオンが自費になる場合等は最初に診てもらった先生の方針が全てになってしまいます。
やはり高い医療費を保険でカバーして自由な医療を受けるという、 米国の事情は良し悪しではないかと思います。
個人の推測ですが、しっかり医療選択のできた糖尿患者とそうでない患者の病状進行は大きく違う気がするので、平均値でしっかりと医療の受けられる 日本の制度は優れていると思います。それだから医療崩壊が始まっているのかも
しれませんが。」
「09/12/18 糖尿東京人 追記
ホームドクターや病院で紹介してもらえるところは その医療機関のグループ、学会同僚が多く治療方針も似ていることが多いです。
米国でセカンドオピニオン等、代替治療を 試してみたいときには、加入している医療保険のカウンセラーに尋ねるのが一般的です。
どのような治療を望んでいるか伝え、保険のカバーする範囲と自費に分けて様々な選択肢を出してもらえます。
カウンセリングがカバーされていない場合は自身で医師を探し、相談した治療法を保険会社にカバーするか確認しないとならず少々面倒なことになります。」
「09/12/18 糖尿東京人
タイトルなし
もう一点、アジア系や先住民が少ない地域では白人に合った治療しか受けられないかもしれませんね。
先住民、アジア系の多いLA、SF、Seattle等では痩せ形(あくまで米国基準)なのに2型が多く、 インスリン分泌が極端に少ないアジア系の患者はカーボを減らすだけでかなり改善すると大抵の医師は把握しています。
おそらく糖尿病レシピ等も白人体質が基準で白人健常者に比べてローカーボなのでしょうから、マイノリティのアジア系は体質に合わせてアレンジする必要がありますね。江部先生の糖質制限食は米国でもアジア、先住民系に合うのだと思います。私もプチ糖質制限でA1cは4%台に収まっています。
州自治がしっかりしているので単一疾患の医療方針を連邦で統一するのはほぼ不可能だと思います。
地域による食習慣も全く違い、糖尿食に対する医師の考えにも地域性があると思います。
病状が悪化してからの治療は全米で同じで、初期段階から投薬をするか、食事を工夫して無投薬で過ごすかの違いですから、患者にはおおごとでも医師にとってはそれほど大きな違いではないのかもしれません。
居住国の医療が不満であれば帰国するか、妥協するしかないわけで、その国なりの活路もあるはずです、食事や医療機関情報、口コミは各都市にあるDiabetic Communityで活発に交わされていますので参加なさってみるのもいいかと。」
糖尿東京人さん、いつもありがとうございます。とても参考になります。
米国でも、現段階では糖尿病専門医の多くはカロリー制限食を推奨すると思います。
一方、糖尿東京人さんに、以前情報を頂いた「カリフォルニア州立のUCSF(*)」では、糖質制限食にも理解がある教育プログラムでしたね。
「私の知る範囲ですが、アメリカの糖尿治療でカーボコントロールを 推している先生は、カリフォルニア、ワシントン州、オレゴン、ミネソタ とマンハッタンに多いようで、健常者のあいだでローカーボ食習慣が 浸透している地域と重なる気がします。」
これは、興味深い情報です。
usaさん、参考になりますでしょうか?
「糖尿になったらまずはパンはローカーボ、パスタはDreamfieldsというのがデフォルトになっています。」
糖尿病には、主食はとりあえず低炭水化物というのが、カリフォルニア州では標準食なのですね。各州によって違いがあるとはいえ、カリフォルニアってなんか最先端な感じがします。
「私の場合は、まだインスリン分泌がある2型なので、 まずはカーボを減らし血糖を低値安定させ維持、それが上手くいかなくなって投薬、 さらに将来薬もきかなくなるか、インスリン分泌がなくなってきたら注射をするという方針になりました。 食事制限をしない場合、現時点で糖質吸収を鈍らせたり、肝臓で糖を作らないようにする薬を使う選択もありました。」
糖尿東京人さんの場合は、糖質制限食を今後も実践されれば、血糖コントロールは良好が保たれて、疲弊していた膵臓のβ細胞も休養ができて回復することも期待できますよ。少なくとも、投薬の必要性はまずないと思います。
「あとは、加入している保険のカバー範囲によって病院側も治療を決めるようです。 手厚い保険に加入していて治療選択に自由がきいたのでプログラムに参加したりセカンドオピニオンとして数名の医師からお話を聞き、自分にあった先生に委ねることが出来ました。最高級な保険だと治療を受けるため他州までの旅費をもカバーするようです。
保険によってセカンドオピニオンが自費になる場合等は最初に診てもらった先生の方針が全てになってしまいます。」
糖尿東京人さんは、手厚い民間の保険に加入しておられたので、自分の望む治療を受けることができたのですね。
良かったですが、保険料も当然、高額になるのでしょうね。マイケル・ムーア監督の映画やテレビの「ER」をみても米国の医療の負の部分はかなり大きいと思います。
日本の場合、国民皆保険で、米国の民間保険に比べれば、極めて安い保険料で、誰でも平等な医療を享受できるのは素晴らしいことだと思います。
それにつけても、何とかこれ以上の医療崩壊をくい止めないと・・・。
今回オバマ大統領が、米国版国民皆保険を目指していますが、かなり苦戦しているようです。
クリントン大統領の時代にもヒラリーさんが、国民皆保険を目指して失敗したのは記憶に新しいです。
オバマ大統領には是非、頑張ってほしいですね。
(*)UCSF(University of California San Francisco)
江部康二
2009年12月17日 (木)
こんばんは。
長い進化の過程を経て、哺乳類・人類の生命活動の根幹をなすコレステロールが少々増えたからといって、人体に悪いと言うことは、基本的には考えにくいことでした。
しかし過去、大きな疫学的研究で「LDL-コレステロール高値→心筋梗塞」というエビデンスが蓄積されたかに見えていました。
ところが、製薬会社との癒着研究の問題もあり、特に2004年以降、再検討が必要と考えられるようになってきました。
コレステロールに関して、とても興味深い情報を入手しましたので以下に転載します。
☆☆☆☆☆
プレス セミナー
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsln/Media-seminar-cholesterol2009.html
Changes in the Directions of Cholesterol-Lowering Medication and Lipid Nutrition
コレステロール低下医療と脂質栄養の方向転換
日 時:2009年10月20日(火) 13:00-16:30
場 所:如水会館 東京都千代田区一ツ橋2-1-1
対 象:メディア関係者、医療関係者、コレステロール医療・脂質栄養に関心のある方
13:00 開会の辞 小林哲幸(お茶の水女子大・理・教授)
13:10 『コレステロールを低下させる必要はありません』
浜崎 智仁 (富山大・和漢医薬学総研・教授、日本脂質栄養学会理事長)
13:50 『日本人はLDL-Cと中性脂肪の高い方が長生きする』
大櫛 陽一(東海大・医・教授)
14:50 『Cholesterol-lowering medicine testing: enigmatic and confusing』
(コレステロール低下薬の検証:謎と混乱)
Michel de Lorgeril (仏・グルノーブル大・医・教授)
15:40 『コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権』
奥山治美(金城学院大・薬・教授、脂質栄養オープンリサーチセンター長)
16:20 閉会の辞 大原直樹(金城学院大・薬・教授)
※講演要旨、演者略歴は裏面をご覧ください。
主 催:金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター
(文部科学省オープン・リサーチ・センター整備事業)
日本脂質栄養学会
後 援:日本薬学会
この件に関するお問い合わせ
〒463-8521 名古屋市守山区大森2丁目1723番地
金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター
センター長(薬学部教授) 奥 山 治 美
TEL:052-798-0180(代)
E-mail:okuyamah@kinjo-u.ac.jp
【講演要旨】
「コレステロールを低下させる必要はありません」 浜崎智仁
わが国で行われたスタチンの臨床試験の結果には多くの問題があり、有効性を示したことにはならない。一般集団では血清コレステロール値と心疾患の間の相関は明確ではなく、コレステロール値の高い群のほうがむしろ総死亡率が低い。
「日本人はLDL-Cと中性脂肪の高い方が長生きする」 大櫛陽一
日本総合医学会の検診結果から、全国70万人のコレステロール値の基準範囲を求めた。一方、伊勢原市民を10年追跡した結果、総死亡率とLDL-C値、および中性脂肪レベルとは負の相関が認められた。
「 Cholesterol-lowering medicine testing: enigmatic and confusing 」 Michel de Lorgeril
(コレステロール低下薬の検証:謎と混乱)
スタチンはエビデンスのある薬として受け入れられてきた。ところが、企業の手から離れた臨床試験では、その有効性が認められなかった(世紀のスキャンダル)。超一流の医学誌に掲載された論文にまつわる謎を解き明かす。
「コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権」 奥山治美
コレステロール低下医療の方向転換が進み始めた。リノール酸摂りすぎが多くの病気を増やしており、また数種の植物油脂は実験動物に有害作用を示す。これに対し動物性脂肪は安全性が高い。健康に良い油脂の選び方は、完全に方向転換しなければならない。
【演者略歴(プロフィール)】
浜崎 智仁
医学博士 千葉大学医学部卒。富山大学和漢医薬学総合研究所教授。日本脂質栄養学会理事長。魚油の健康に及ぼす効果に関して、わが国でパイオニア的な研究を進め、行動・性格などに関する臨床研究を行い、コレステロールと総脂肪に関する研究を展開中。著書、コレステロールは高い方が長生きする、エール出版など多数。
大櫛 陽一
大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立羽曳野病院、大阪府立成人病センター、大阪府立母子センター、大阪府立病院などを経て、現在東海大学医学部教授。2006年日本総合健診医学会シンポジウムで全国70万人の検診結果から、日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。「メタボの罠」(角川SCC新書)など著書多数。
Michel de Lorgeril
心臓病学および栄養学専門医・フランス国立科学研究センター(CNRS)正規研究員
グルノーブル第一大学医学部教授
著書、コレステロール 嘘とプロパガンダ (浜崎智仁訳)、篠原出版新社、2009年
奥山 治美
薬学博士 東京大学薬学部卒。東京大学大学院薬学研究科修了。東京大学助手、名古屋市立大学助教授、教授を歴任。現在金城学院大学特任教授、「脂質栄養」オープンリサーチセンター・センター長。日本脂質栄養学会初代会長。名古屋市立大学名誉教授。脳機能、生活習慣病に及ぼす脂質栄養の影響を広く研究し、新方向へ転換を推進中。油の正しい選び方・摂り方、農文協、2008年
長い進化の過程を経て、哺乳類・人類の生命活動の根幹をなすコレステロールが少々増えたからといって、人体に悪いと言うことは、基本的には考えにくいことでした。
しかし過去、大きな疫学的研究で「LDL-コレステロール高値→心筋梗塞」というエビデンスが蓄積されたかに見えていました。
ところが、製薬会社との癒着研究の問題もあり、特に2004年以降、再検討が必要と考えられるようになってきました。
コレステロールに関して、とても興味深い情報を入手しましたので以下に転載します。
☆☆☆☆☆
プレス セミナー
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsln/Media-seminar-cholesterol2009.html
Changes in the Directions of Cholesterol-Lowering Medication and Lipid Nutrition
コレステロール低下医療と脂質栄養の方向転換
日 時:2009年10月20日(火) 13:00-16:30
場 所:如水会館 東京都千代田区一ツ橋2-1-1
対 象:メディア関係者、医療関係者、コレステロール医療・脂質栄養に関心のある方
13:00 開会の辞 小林哲幸(お茶の水女子大・理・教授)
13:10 『コレステロールを低下させる必要はありません』
浜崎 智仁 (富山大・和漢医薬学総研・教授、日本脂質栄養学会理事長)
13:50 『日本人はLDL-Cと中性脂肪の高い方が長生きする』
大櫛 陽一(東海大・医・教授)
14:50 『Cholesterol-lowering medicine testing: enigmatic and confusing』
(コレステロール低下薬の検証:謎と混乱)
Michel de Lorgeril (仏・グルノーブル大・医・教授)
15:40 『コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権』
奥山治美(金城学院大・薬・教授、脂質栄養オープンリサーチセンター長)
16:20 閉会の辞 大原直樹(金城学院大・薬・教授)
※講演要旨、演者略歴は裏面をご覧ください。
主 催:金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター
(文部科学省オープン・リサーチ・センター整備事業)
日本脂質栄養学会
後 援:日本薬学会
この件に関するお問い合わせ
〒463-8521 名古屋市守山区大森2丁目1723番地
金城学院大学「脂質栄養」オープン・リサーチ・センター
センター長(薬学部教授) 奥 山 治 美
TEL:052-798-0180(代)
E-mail:okuyamah@kinjo-u.ac.jp
【講演要旨】
「コレステロールを低下させる必要はありません」 浜崎智仁
わが国で行われたスタチンの臨床試験の結果には多くの問題があり、有効性を示したことにはならない。一般集団では血清コレステロール値と心疾患の間の相関は明確ではなく、コレステロール値の高い群のほうがむしろ総死亡率が低い。
「日本人はLDL-Cと中性脂肪の高い方が長生きする」 大櫛陽一
日本総合医学会の検診結果から、全国70万人のコレステロール値の基準範囲を求めた。一方、伊勢原市民を10年追跡した結果、総死亡率とLDL-C値、および中性脂肪レベルとは負の相関が認められた。
「 Cholesterol-lowering medicine testing: enigmatic and confusing 」 Michel de Lorgeril
(コレステロール低下薬の検証:謎と混乱)
スタチンはエビデンスのある薬として受け入れられてきた。ところが、企業の手から離れた臨床試験では、その有効性が認められなかった(世紀のスキャンダル)。超一流の医学誌に掲載された論文にまつわる謎を解き明かす。
「コレステロール仮説の崩壊と動物性油脂の復権」 奥山治美
コレステロール低下医療の方向転換が進み始めた。リノール酸摂りすぎが多くの病気を増やしており、また数種の植物油脂は実験動物に有害作用を示す。これに対し動物性脂肪は安全性が高い。健康に良い油脂の選び方は、完全に方向転換しなければならない。
【演者略歴(プロフィール)】
浜崎 智仁
医学博士 千葉大学医学部卒。富山大学和漢医薬学総合研究所教授。日本脂質栄養学会理事長。魚油の健康に及ぼす効果に関して、わが国でパイオニア的な研究を進め、行動・性格などに関する臨床研究を行い、コレステロールと総脂肪に関する研究を展開中。著書、コレステロールは高い方が長生きする、エール出版など多数。
大櫛 陽一
大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立羽曳野病院、大阪府立成人病センター、大阪府立母子センター、大阪府立病院などを経て、現在東海大学医学部教授。2006年日本総合健診医学会シンポジウムで全国70万人の検診結果から、日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表。「メタボの罠」(角川SCC新書)など著書多数。
Michel de Lorgeril
心臓病学および栄養学専門医・フランス国立科学研究センター(CNRS)正規研究員
グルノーブル第一大学医学部教授
著書、コレステロール 嘘とプロパガンダ (浜崎智仁訳)、篠原出版新社、2009年
奥山 治美
薬学博士 東京大学薬学部卒。東京大学大学院薬学研究科修了。東京大学助手、名古屋市立大学助教授、教授を歴任。現在金城学院大学特任教授、「脂質栄養」オープンリサーチセンター・センター長。日本脂質栄養学会初代会長。名古屋市立大学名誉教授。脳機能、生活習慣病に及ぼす脂質栄養の影響を広く研究し、新方向へ転換を推進中。油の正しい選び方・摂り方、農文協、2008年
2009年12月16日 (水)
こんにちは。
コレステロールの基準値に関していろんな情報が乱れ飛んでいて、2009年12月時点でも臨床現場を混乱させています。
このような状況の中で世界的に見て、米国で2001年に制定されたガイドライン「NCEP ATP III」のLDL-コレステロールの基準(*)は比較的信頼度が高いと考えられます。 (^_^)
ヨーロッパでも受け入れられていると思います。
一方、NCEP ATP IIIの2004年の改訂で、LDL-コレステロールの基準値がかなり引き下げられました。→製薬会社に有利!!
しかしこの改訂に対しては、2004年8月1日のWashington Post紙に有名な反論が掲載されました。
この記事は、この改訂に携わった数名のスタチン(**)製剤メーカーのひも付きの学者に対して、痛烈な批判が展開してあります。
例えば、製薬メーカーと無関係のブリティッシュ・コロンビア大学のグループは、同じデータから、別の結論をだしたそうです。→製薬会社に不利!!
この記事以降、欧米では治験が厳密になり、製薬企業と経済的関係の深い人は、ガイドライン委員会から外されるようになりました。
以下は、東海大学の大櫛陽一先生にご教示頂いた最新の内容です。
☆高LDL-Cが心血管系疾患のリスクになるということ自体が揺らいできている。
☆欧米で「利益相反」や「製薬企業によるエビデンスの不正」が問題となって、2004年以降、治験や医学論文に対して科学的厳密さがより強く要求されるようになった。
☆2006年以降に発表されたコレステロール低下薬に関する無作為化対照試験(RCT)であるASPEN(16)、ENHANCE(17)、SEAS(18)、GISS-HF(19)、 CORONA(20)、AURORA(21)などでは、スタチンによりLDL-Cは下がるが、心血管系イベントや総死亡には効果が無いと報告されるようになった。
ということです。
なお、2007年に改定された日本動脈硬化学会のガイドラインは、残念ながら問題が多く、信頼度は低いです。( ̄_ ̄|||)
LDL-コレステロール値に関しては、日本のガイドラインは厳しすぎるので、米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)の2001年のガイドラインにしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は190mg/dl、
中程度リスク者で160mg/dl、
高リスク者で130mg/dl
が一つの目安になります。
(*)札幌厚生病院循環器科のホームページに解説があります。
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/atp3.php3
NCEP ATP III 2001年の解説。
2004年の改定は信用できないのでこの解説がいいです。
(**)スタチン
LDLコレステロールを下げる薬。
江部康二
コレステロールの基準値に関していろんな情報が乱れ飛んでいて、2009年12月時点でも臨床現場を混乱させています。
このような状況の中で世界的に見て、米国で2001年に制定されたガイドライン「NCEP ATP III」のLDL-コレステロールの基準(*)は比較的信頼度が高いと考えられます。 (^_^)
ヨーロッパでも受け入れられていると思います。
一方、NCEP ATP IIIの2004年の改訂で、LDL-コレステロールの基準値がかなり引き下げられました。→製薬会社に有利!!
しかしこの改訂に対しては、2004年8月1日のWashington Post紙に有名な反論が掲載されました。
この記事は、この改訂に携わった数名のスタチン(**)製剤メーカーのひも付きの学者に対して、痛烈な批判が展開してあります。
例えば、製薬メーカーと無関係のブリティッシュ・コロンビア大学のグループは、同じデータから、別の結論をだしたそうです。→製薬会社に不利!!
この記事以降、欧米では治験が厳密になり、製薬企業と経済的関係の深い人は、ガイドライン委員会から外されるようになりました。
以下は、東海大学の大櫛陽一先生にご教示頂いた最新の内容です。
☆高LDL-Cが心血管系疾患のリスクになるということ自体が揺らいできている。
☆欧米で「利益相反」や「製薬企業によるエビデンスの不正」が問題となって、2004年以降、治験や医学論文に対して科学的厳密さがより強く要求されるようになった。
☆2006年以降に発表されたコレステロール低下薬に関する無作為化対照試験(RCT)であるASPEN(16)、ENHANCE(17)、SEAS(18)、GISS-HF(19)、 CORONA(20)、AURORA(21)などでは、スタチンによりLDL-Cは下がるが、心血管系イベントや総死亡には効果が無いと報告されるようになった。
ということです。
なお、2007年に改定された日本動脈硬化学会のガイドラインは、残念ながら問題が多く、信頼度は低いです。( ̄_ ̄|||)
LDL-コレステロール値に関しては、日本のガイドラインは厳しすぎるので、米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)の2001年のガイドラインにしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は190mg/dl、
中程度リスク者で160mg/dl、
高リスク者で130mg/dl
が一つの目安になります。
(*)札幌厚生病院循環器科のホームページに解説があります。
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/atp3.php3
NCEP ATP III 2001年の解説。
2004年の改定は信用できないのでこの解説がいいです。
(**)スタチン
LDLコレステロールを下げる薬。
江部康二
2009年12月15日 (火)
おはようございます。
段々クリスマスが近づいてきます。
今年は早めに、
糖質制限ドットコムhttp://www.toushitsuseigen.com/
のクリスマスケーキ、京都「菓子職人」稲井敬一郎シェフ入魂の「クリスマス・ショコラ」をゲットしました。
あっという間に売り切れたので間に合って良かったです。 (^^)
買い損ねた皆さん、どうもすいません。m(_ _)m
クリスマスまでは、
「ノンシュガー生チョコレート ショコラ・ドゥ・ゼロ」
「ノンシュガーチョコケーキ フォンダンショコラ」
「ローカーボチーズケーキ・ピュア」
で、スイーツ三昧です。
私、あまり甘いものはいらないのですが、チョコレートだけは昔から好きでした。ベリーチョコも時々、半分くらい食べます。
ベリーチョコの甘味料は、糖アルコールのマルチトールなので、砂糖の半分くらい血糖値をあげますが、美味しいですね。
さて今回は、米国在住のusaさんから、興味深いコメント・質問をいただきました。
「09/12/08 usa
米国の日帰り糖尿病教育プログラムについて
11月24日のコメント、大変興味深かったです。しかし、カリフォルニアでの大学病院でそのようなことを行っているというのは同じ米国在住の私からみると、信じがたいです。
というのは、私の経験上、州によって糖尿病自体の見解、治療さえも統一されていないのが現状と、思わざるをえないからです。正直、大変混乱しています。
ぜひ、治療方針を全米統一させていただきたいものです。
「米国都市部では糖尿に限らず一般人にも広くローカーボが
ライフスタイル化して肥満と糖尿に効果を上げています 」
テレビの料理番組や、出版本では確かにローカーボのものがあります。
数冊読みましたが、糖尿というよりはダイエットを対象にしているようです。
糖尿用ダイエットレシピは一応、カーボは控えていますが、日本人患者からするとありえない量です。
さて、先日3つ目の糖尿病専門病院を受診いたしました。この病院は今までの個人病院とちがい、都市部にある小児糖尿病患者の教育なども受け持っている大病院でした。
その結果、前2病院では1型と診断され、即インスリン、内服薬を処方されましたが、やっとこの医師に、抗体がないので、2型であると診断されました。
米国では1型患者の割合が日本より多いと読みましたが、私のような患者をすべて1型として、インスリン治療をしているので、各国統一の診断基準があったらもっと、少ないはずだと思います。
2回の診察で体重が増えていないことで (何を食べても増えません、これ以上ローカーボを増やすと血糖値があがります)、もっと、カーボをとるべきだと念をおされ、さらにLDLコレステロールの値(日本の人間ドックの結果を参照し)7月時点で166と高値であるため、薬を飲むべきだといわれました。
「米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)のガイドラインにしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は190mg/dl、
中程度リスク者で160mg/dl、
高リスク者で130mg/dl 」
中程度リスクの私は6gオーバーなので、薬をすすめられたということでしょうか?
私は糖質制限食、約5か月目ですが、ここで、薬を飲んで下げたほうがよいのか、様子をみるべきなのか教えていただけないでしょうか?
検診は11月にいったのですが、その時点では検査は一切しません。
近所のファミリードクターに薬を処方してもらうようにとのことでした。
分業化されているので、糖尿に直接関係無いものは、自分のところでは見ないという感じでした。
合併症が心配なので、検査をお願いすると、発病から5年以内では絶対におこらないから、大丈夫だと言われ、やってもらえませんでした。何の根拠が?と信じがたい発言でしたが、それ以上は患者としては何も言えません。
江部先生の病院のように尿検査はおろか、腎機能や他の検査は一切やりません。
もし、こちらのブログに出会っていなかったら、1型と診断され、とっくにインスリン注射のお世話になっていたことでしょう。信じがたいと思いますが、これがアメリカの現状です。3つの病院すべて納得のいく糖質制限食の説明は聞いたことがありません。
カリフォルニア大学病院でやっていることが、全州に広まっていただきたいものです。
バーンスタイン医師の診察には約3日間で約6000ドルかかります。NY以外の患者は宿泊費、交通費を含めると10000ドルは下りません。本を読むとありとあらゆる検査をしてくれて、これぞ糖尿病治療の本質だと思わせてくれますが、なかなか手が出ないものです。
私としては、こちらのブログを頼りに自分で治療方法を探っていくしかありません。何のために糖尿病医がいるのかわかりません。
それに比べればCAの日帰り教育プログラムはとても身近な手段ですね。が、このお話がごく1部の患者のみにしか知られていないのは残念です。どのようにしたらこのような情報が手に入るのでしょうか?
以上、現状をお伝えいたしたくコメントさせていただきました。」
usaさん。
コメントありがとうございます。
3つ目の糖尿病専門病院で、やっと1型ではなくて2型の診断ですか。まあとりあえず良かったです。
先月、スイス在住の糖尿人の日本人女性、フランス在住の糖尿人の日本人女性からも本ブログにコメントをいただきました。
お二人ともそれぞれ糖尿病専門医に診察してもらった結果、抗GAD抗体(-)にも関わらず痩せ型の糖尿病というだけで、やはり1型糖尿病と断定されたそうです。
まあ、それが欧米の常識なのでしょう。
勿論私からみれば、usaさんと同様、お二人とも2型糖尿病です。
米国人の2型糖尿病の平均BMIが約32で、日本人の2型糖尿病の平均BMIが約24です。BMI32というのは、例えば身長160cmで体重82kgです。これは、日本では半端じゃない肥満ですね。
日本人では、やせ型の2型糖尿人が結構いるのに対して、欧米では、そもそもやせ型の2型糖尿人がほとんどいないということです。
米国・スイス・フランスの糖尿病専門医が皆さんそろって藪医者だったということではなく、それぐらい、やせ型の2型糖尿人が欧米では少ないと言う事実があるのですね。
「私の経験上、州によって糖尿病自体の見解、治療さえも統一されていないのが現状と、思わざるをえないからです。正直、大変混乱しています。 ぜひ、治療方針を全米統一させていただきたいものです。」
私も同感ですが、米国でも統一は難しそうです。
11月24日、25日のブログ「米国の日帰り糖尿病教育プログラム」に登場したカリフォルニア州立大(UCSF)の糖尿病教育日帰りプログラムは、糖質制限食的にもなかなかの優れものでしたが、本当に全米各州で治痒方針がばらつくようです。
先月、高雄病院に入院されていた、ペンシルバニア在住の日本人糖尿人女性に伺ったところ、ペンシルバニア州立大学では、糖尿病専門医は、基本的にカロリー制限食を勧めるそうです。
「LDLコレステロールの値(日本の人間ドックの結果を参照し)7月時点で166と高値であるため、薬を飲むべきだといわれました。」
usaさんの糖尿病のコントロールは現在どのていどでしょうか?
LDL-Cの値、どのくらいから薬物介入が意義があるのか、現在、医学界で論争中となっています。 (∵)?
東海大学の大櫛陽一先生の大規模疫学調査では、少なくとも日本人女性の場合、家族制高コレステロール血症(人口の0.2%)の人以外は、薬は必要ないとのことです。
LDL-コレステロールについては、最新の情報を調べて、その内ブログ記事にします。
「合併症が心配なので、検査をお願いすると、発病から5年以内では絶対におこらないから、大丈夫だと言われ、やってもらえませんでした。」
食後高血糖が数年以上続いて、合併症がでることがほとんどですので、米国医師の仰有ることにも一理あります。
一方、糖尿病予備軍の段階の食後高血糖(140~199mg)レベルでも数年続けば、心臓の血管に動脈硬化を起こすことがわかってますので、油断は禁物です。
「バーンスタイン医師の診察には約3日間で約6000ドルかかります。NY以外の患者は宿泊費、交通費を含めると10000ドルは下りません。本を読むとありとあらゆる検査をしてくれて、これぞ糖尿病治療の本質だと思わせてくれますが、なかなか手が出ないものです。」
バーンスタイン先生、3日間で60万~100万円・・・。
この料金設定はびっくりしましたが、米国では当たり前なのですね。
これは以前にも記事に書きましたが、日本の医療費が、欧米に比べたら極端に安いということです。
道路もダムもしばし凍結でも、日本国民の命に別状はありません。民主党さん、鳩山さん、ちゃんと初心を貫いて、医療費増加政策で、これ以上の医療崩壊・福祉崩壊をくいとめることが、国民の命を守る最優先の課題ですよ。
江部康二
段々クリスマスが近づいてきます。
今年は早めに、
糖質制限ドットコムhttp://www.toushitsuseigen.com/
のクリスマスケーキ、京都「菓子職人」稲井敬一郎シェフ入魂の「クリスマス・ショコラ」をゲットしました。
あっという間に売り切れたので間に合って良かったです。 (^^)
買い損ねた皆さん、どうもすいません。m(_ _)m
クリスマスまでは、
「ノンシュガー生チョコレート ショコラ・ドゥ・ゼロ」
「ノンシュガーチョコケーキ フォンダンショコラ」
「ローカーボチーズケーキ・ピュア」
で、スイーツ三昧です。
私、あまり甘いものはいらないのですが、チョコレートだけは昔から好きでした。ベリーチョコも時々、半分くらい食べます。
ベリーチョコの甘味料は、糖アルコールのマルチトールなので、砂糖の半分くらい血糖値をあげますが、美味しいですね。
さて今回は、米国在住のusaさんから、興味深いコメント・質問をいただきました。
「09/12/08 usa
米国の日帰り糖尿病教育プログラムについて
11月24日のコメント、大変興味深かったです。しかし、カリフォルニアでの大学病院でそのようなことを行っているというのは同じ米国在住の私からみると、信じがたいです。
というのは、私の経験上、州によって糖尿病自体の見解、治療さえも統一されていないのが現状と、思わざるをえないからです。正直、大変混乱しています。
ぜひ、治療方針を全米統一させていただきたいものです。
「米国都市部では糖尿に限らず一般人にも広くローカーボが
ライフスタイル化して肥満と糖尿に効果を上げています 」
テレビの料理番組や、出版本では確かにローカーボのものがあります。
数冊読みましたが、糖尿というよりはダイエットを対象にしているようです。
糖尿用ダイエットレシピは一応、カーボは控えていますが、日本人患者からするとありえない量です。
さて、先日3つ目の糖尿病専門病院を受診いたしました。この病院は今までの個人病院とちがい、都市部にある小児糖尿病患者の教育なども受け持っている大病院でした。
その結果、前2病院では1型と診断され、即インスリン、内服薬を処方されましたが、やっとこの医師に、抗体がないので、2型であると診断されました。
米国では1型患者の割合が日本より多いと読みましたが、私のような患者をすべて1型として、インスリン治療をしているので、各国統一の診断基準があったらもっと、少ないはずだと思います。
2回の診察で体重が増えていないことで (何を食べても増えません、これ以上ローカーボを増やすと血糖値があがります)、もっと、カーボをとるべきだと念をおされ、さらにLDLコレステロールの値(日本の人間ドックの結果を参照し)7月時点で166と高値であるため、薬を飲むべきだといわれました。
「米国(日本より心筋梗塞が3倍多い)のガイドラインにしたがい、
低リスクの人の薬物療法開始は190mg/dl、
中程度リスク者で160mg/dl、
高リスク者で130mg/dl 」
中程度リスクの私は6gオーバーなので、薬をすすめられたということでしょうか?
私は糖質制限食、約5か月目ですが、ここで、薬を飲んで下げたほうがよいのか、様子をみるべきなのか教えていただけないでしょうか?
検診は11月にいったのですが、その時点では検査は一切しません。
近所のファミリードクターに薬を処方してもらうようにとのことでした。
分業化されているので、糖尿に直接関係無いものは、自分のところでは見ないという感じでした。
合併症が心配なので、検査をお願いすると、発病から5年以内では絶対におこらないから、大丈夫だと言われ、やってもらえませんでした。何の根拠が?と信じがたい発言でしたが、それ以上は患者としては何も言えません。
江部先生の病院のように尿検査はおろか、腎機能や他の検査は一切やりません。
もし、こちらのブログに出会っていなかったら、1型と診断され、とっくにインスリン注射のお世話になっていたことでしょう。信じがたいと思いますが、これがアメリカの現状です。3つの病院すべて納得のいく糖質制限食の説明は聞いたことがありません。
カリフォルニア大学病院でやっていることが、全州に広まっていただきたいものです。
バーンスタイン医師の診察には約3日間で約6000ドルかかります。NY以外の患者は宿泊費、交通費を含めると10000ドルは下りません。本を読むとありとあらゆる検査をしてくれて、これぞ糖尿病治療の本質だと思わせてくれますが、なかなか手が出ないものです。
私としては、こちらのブログを頼りに自分で治療方法を探っていくしかありません。何のために糖尿病医がいるのかわかりません。
それに比べればCAの日帰り教育プログラムはとても身近な手段ですね。が、このお話がごく1部の患者のみにしか知られていないのは残念です。どのようにしたらこのような情報が手に入るのでしょうか?
以上、現状をお伝えいたしたくコメントさせていただきました。」
usaさん。
コメントありがとうございます。
3つ目の糖尿病専門病院で、やっと1型ではなくて2型の診断ですか。まあとりあえず良かったです。
先月、スイス在住の糖尿人の日本人女性、フランス在住の糖尿人の日本人女性からも本ブログにコメントをいただきました。
お二人ともそれぞれ糖尿病専門医に診察してもらった結果、抗GAD抗体(-)にも関わらず痩せ型の糖尿病というだけで、やはり1型糖尿病と断定されたそうです。
まあ、それが欧米の常識なのでしょう。
勿論私からみれば、usaさんと同様、お二人とも2型糖尿病です。
米国人の2型糖尿病の平均BMIが約32で、日本人の2型糖尿病の平均BMIが約24です。BMI32というのは、例えば身長160cmで体重82kgです。これは、日本では半端じゃない肥満ですね。
日本人では、やせ型の2型糖尿人が結構いるのに対して、欧米では、そもそもやせ型の2型糖尿人がほとんどいないということです。
米国・スイス・フランスの糖尿病専門医が皆さんそろって藪医者だったということではなく、それぐらい、やせ型の2型糖尿人が欧米では少ないと言う事実があるのですね。
「私の経験上、州によって糖尿病自体の見解、治療さえも統一されていないのが現状と、思わざるをえないからです。正直、大変混乱しています。 ぜひ、治療方針を全米統一させていただきたいものです。」
私も同感ですが、米国でも統一は難しそうです。
11月24日、25日のブログ「米国の日帰り糖尿病教育プログラム」に登場したカリフォルニア州立大(UCSF)の糖尿病教育日帰りプログラムは、糖質制限食的にもなかなかの優れものでしたが、本当に全米各州で治痒方針がばらつくようです。
先月、高雄病院に入院されていた、ペンシルバニア在住の日本人糖尿人女性に伺ったところ、ペンシルバニア州立大学では、糖尿病専門医は、基本的にカロリー制限食を勧めるそうです。
「LDLコレステロールの値(日本の人間ドックの結果を参照し)7月時点で166と高値であるため、薬を飲むべきだといわれました。」
usaさんの糖尿病のコントロールは現在どのていどでしょうか?
LDL-Cの値、どのくらいから薬物介入が意義があるのか、現在、医学界で論争中となっています。 (∵)?
東海大学の大櫛陽一先生の大規模疫学調査では、少なくとも日本人女性の場合、家族制高コレステロール血症(人口の0.2%)の人以外は、薬は必要ないとのことです。
LDL-コレステロールについては、最新の情報を調べて、その内ブログ記事にします。
「合併症が心配なので、検査をお願いすると、発病から5年以内では絶対におこらないから、大丈夫だと言われ、やってもらえませんでした。」
食後高血糖が数年以上続いて、合併症がでることがほとんどですので、米国医師の仰有ることにも一理あります。
一方、糖尿病予備軍の段階の食後高血糖(140~199mg)レベルでも数年続けば、心臓の血管に動脈硬化を起こすことがわかってますので、油断は禁物です。
「バーンスタイン医師の診察には約3日間で約6000ドルかかります。NY以外の患者は宿泊費、交通費を含めると10000ドルは下りません。本を読むとありとあらゆる検査をしてくれて、これぞ糖尿病治療の本質だと思わせてくれますが、なかなか手が出ないものです。」
バーンスタイン先生、3日間で60万~100万円・・・。
この料金設定はびっくりしましたが、米国では当たり前なのですね。
これは以前にも記事に書きましたが、日本の医療費が、欧米に比べたら極端に安いということです。
道路もダムもしばし凍結でも、日本国民の命に別状はありません。民主党さん、鳩山さん、ちゃんと初心を貫いて、医療費増加政策で、これ以上の医療崩壊・福祉崩壊をくいとめることが、国民の命を守る最優先の課題ですよ。
江部康二
2009年12月14日 (月)
こんばんは。
今朝は4度でした。
久しぶりに冬らしい寒さでしたね。
さて今回は、豆しばさんから、脳のエネルギー源についてコメント・質問をいただきました。
【09/12/06 豆しば
またまた質問です。
江部先生 こんにちは。
今回も興味津々の記事参考になります。
ところで、いろいろなHPや雑誌の記事などで、相変わらずよく目にするのですが、下記のような見解はどこから来るのでしょうか?
以下のような文章では、ひと時足らずも糖質をカットすることが怖くなってしまいます。
「糖質が不足すると、エネルギー不足となり、疲労感におそわれます。特に脳は、ブドウ糖が唯一のエネルギーなので、血糖値が下がると集中力が欠け極端に低下すると意識を失うこともあります。
通常、血糖値が下がると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが分解されてブドウ糖になります。これが尽きると、今度は、からだを構成するたんぱく質(アミノ酸)がブドウ糖に変化してエネルギーにします。これを糖新生といいます。たんぱく質が失われるので肌の衰えを招くことに。ダイエット中でも、一日100g以上の糖質を確保しましょう。」】
豆しばさん。
コメントありがとうございます。
NHKの「ためしてガッテン」を初めとして、いろんなマスコミで質問のような誤った情報が発信されてますので、困りものですね。(-_-メ)
それでは、検証してみましょう。
<脳とエネルギー源、ブドウ糖とケトン体、糖新生>
まず、糖質制限食で高血糖は改善しますが、別に低血糖になるわけではありません。糖質制限食実践で、正常の血糖値になるだけです。
糖質制限食を実践して糖質の摂取量が減少しても、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロールなどからブドウ糖をつくるからです。→糖新生
肝臓の糖新生は、人体においてごく日常的に行われています。
糖質を摂取している人においても、夜間睡眠中とか、食後数時間経過したら、誰でも肝臓で糖新生を行っています。
食物吸収が終了した直後には、肝臓のグリコーゲン分解が、循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。
食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生に切り替わります。
ですから、人類の400万年の歴史において、ごく普通に肝臓の糖新生は行われてきたわけで、珍しいことでも何でもありません。
①脂肪組織→グリセロール(脂肪酸の分解物)や脂肪酸→肝臓→糖新生→脂肪組織・筋肉
②筋肉→アミノ酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
③ブドウ糖代謝→乳酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
①②③はごく日常的に誰でも行っており、肝臓、筋肉、脂肪組織の間で行ったり来たり、日々糖新生の調節が行われているわけです。従いまして、肌の衰え云々はあり得ないです。
次に、脳は、ブドウ糖だけでなく、脂肪酸の代謝産物のケトン体をいくらでも利用します。
ですから「脳がエネルギー源としてブドウ糖しか利用できない」というのは明確に間違いです。
日常生活では、心筋・骨格筋など多くの体細胞は、脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としているのに対し、脳・赤血球・網膜・生殖腺胚上皮などの特殊な細胞は、ブドウ糖を利用しています。また赤血球は、ブドウ糖だけが唯一のエネルギー源です。
しかし、脳を含めて赤血球以外の細胞は、全て内部にミトコンドリアを有すので、脂肪酸・ケトン体をエネルギー源にできます。
確かに生理学的には、脳は骨格筋や心筋と違って、安静時にもブドウ糖を利用していることは間違いありません。このことが誤解されて「脳はブドウ糖しか利用できない」という誤った情報が一人歩きしたのでしょう。しかし、脳はケトン体という脂肪の分解産物もいつでも利用できるのです。
例えばガイトン臨床生理学(有名な医師用の生理学の教科書です)によれば、
「イヌイットは時々完全脂肪食を摂取するが、通常ブドウ糖しかエネルギー源として利用しない脳細胞も、この時は50~75%のエネルギ-を脂質(ケトン体)から得られるようになる」
そうです。
豆しばさん、狩猟・採集が生業だった399万年間のご先祖様と同様、安心して糖質制限食をお続け下さいね。(^o^)v
江部康二
今朝は4度でした。
久しぶりに冬らしい寒さでしたね。
さて今回は、豆しばさんから、脳のエネルギー源についてコメント・質問をいただきました。
【09/12/06 豆しば
またまた質問です。
江部先生 こんにちは。
今回も興味津々の記事参考になります。
ところで、いろいろなHPや雑誌の記事などで、相変わらずよく目にするのですが、下記のような見解はどこから来るのでしょうか?
以下のような文章では、ひと時足らずも糖質をカットすることが怖くなってしまいます。
「糖質が不足すると、エネルギー不足となり、疲労感におそわれます。特に脳は、ブドウ糖が唯一のエネルギーなので、血糖値が下がると集中力が欠け極端に低下すると意識を失うこともあります。
通常、血糖値が下がると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンが分解されてブドウ糖になります。これが尽きると、今度は、からだを構成するたんぱく質(アミノ酸)がブドウ糖に変化してエネルギーにします。これを糖新生といいます。たんぱく質が失われるので肌の衰えを招くことに。ダイエット中でも、一日100g以上の糖質を確保しましょう。」】
豆しばさん。
コメントありがとうございます。
NHKの「ためしてガッテン」を初めとして、いろんなマスコミで質問のような誤った情報が発信されてますので、困りものですね。(-_-メ)
それでは、検証してみましょう。
<脳とエネルギー源、ブドウ糖とケトン体、糖新生>
まず、糖質制限食で高血糖は改善しますが、別に低血糖になるわけではありません。糖質制限食実践で、正常の血糖値になるだけです。
糖質制限食を実践して糖質の摂取量が減少しても、肝臓でアミノ酸・乳酸・グリセロールなどからブドウ糖をつくるからです。→糖新生
肝臓の糖新生は、人体においてごく日常的に行われています。
糖質を摂取している人においても、夜間睡眠中とか、食後数時間経過したら、誰でも肝臓で糖新生を行っています。
食物吸収が終了した直後には、肝臓のグリコーゲン分解が、循環血液中に入るブドウ糖の主要な供給源です。
食後数時間が経過し、絶食状態が持続すると、ブドウ糖の供給源は、肝のグリコーゲン分解から糖新生に切り替わります。
ですから、人類の400万年の歴史において、ごく普通に肝臓の糖新生は行われてきたわけで、珍しいことでも何でもありません。
①脂肪組織→グリセロール(脂肪酸の分解物)や脂肪酸→肝臓→糖新生→脂肪組織・筋肉
②筋肉→アミノ酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
③ブドウ糖代謝→乳酸→肝臓→糖新生→筋肉・脂肪組織
①②③はごく日常的に誰でも行っており、肝臓、筋肉、脂肪組織の間で行ったり来たり、日々糖新生の調節が行われているわけです。従いまして、肌の衰え云々はあり得ないです。
次に、脳は、ブドウ糖だけでなく、脂肪酸の代謝産物のケトン体をいくらでも利用します。
ですから「脳がエネルギー源としてブドウ糖しか利用できない」というのは明確に間違いです。
日常生活では、心筋・骨格筋など多くの体細胞は、脂肪酸・ケトン体を主エネルギー源としているのに対し、脳・赤血球・網膜・生殖腺胚上皮などの特殊な細胞は、ブドウ糖を利用しています。また赤血球は、ブドウ糖だけが唯一のエネルギー源です。
しかし、脳を含めて赤血球以外の細胞は、全て内部にミトコンドリアを有すので、脂肪酸・ケトン体をエネルギー源にできます。
確かに生理学的には、脳は骨格筋や心筋と違って、安静時にもブドウ糖を利用していることは間違いありません。このことが誤解されて「脳はブドウ糖しか利用できない」という誤った情報が一人歩きしたのでしょう。しかし、脳はケトン体という脂肪の分解産物もいつでも利用できるのです。
例えばガイトン臨床生理学(有名な医師用の生理学の教科書です)によれば、
「イヌイットは時々完全脂肪食を摂取するが、通常ブドウ糖しかエネルギー源として利用しない脳細胞も、この時は50~75%のエネルギ-を脂質(ケトン体)から得られるようになる」
そうです。
豆しばさん、狩猟・採集が生業だった399万年間のご先祖様と同様、安心して糖質制限食をお続け下さいね。(^o^)v
江部康二
2009年12月13日 (日)
簡易血糖自己測定(SMBG)器
こんばんは。
さきほどテニスから帰ってきました。
昨夜も忘年会だったので、若干二日酔い気味でテニスの調子はイマイチでした。
さて今回はゆきんこさんから、血糖自己測定器について、コメント・質問をいただきました。
「09/12/12 ゆきんこ
タイトルなし
こんばんは。ブログ毎日拝見いたしております。
(先生からの返信もお待ちしているのですが…)
このところSMGBについてしらべております。
先生はニプロフリースタイルフリーダムをお使いだということですが、全くの素人でもすぐ使いこなせるものなのでしょうか?
ブログを読ませて頂くと、計測する回数などは人それぞれのような感じがいたしますが、どういう計り方が望ましいのでしょうか?
あと、あるサイトでSMBGの保険適用のことが書いてありました。
でも、ネットで調べると普通にネットでも買えるようです。
普通はお医者様から買うものなのでしょうか?
ご教授よろしくおねがいいたします。」
ゆきんこさん。
コメント欄に返事がありますのでご確認くださいね。
ネットで血糖自己測定器、手に入ると思います。説明書をみれば誰でもすぐに使えます
。
ネット販売は、法律的には灰色みゾーンたいですが、誰も迷惑しないので・・・(∵)?
インスリン注射を打っている人は、医学管理料の中に健康保険内で含まれているという解釈で、病院が無料で血糖自己測定器を貸しだしてくれます。
センサー・針も保険分は無料で支給してくれます。インスリン注射をしていない人は私費で購入となります。
早朝空腹時血糖値を適宜測定すれば、自分の基礎分泌インスリンがどのくらい残っているかがわかります。
食後1時間値と2時間値を適宜測定することもよい情報源となります。
糖尿人においては、どちらが高値かは個人差があります。
正常人では30分値から1時間値が必ず高値で、2時間値は必ず下がります。
糖質を摂取したときの食後血糖値と、糖質制限食のときの食後血糖値を測定して、どれくらい違うか見てみるのも面白いですね。
自分のSMBG(血糖自己測定)記録をしっかりデータとして残しておくととても参考になります。
2009年10月19日 (月) のブログ
「血糖自己測定(SMBG)と簡易血糖自己測定器」
もご参照いただけば幸いです。
江部康二
こんばんは。
さきほどテニスから帰ってきました。
昨夜も忘年会だったので、若干二日酔い気味でテニスの調子はイマイチでした。
さて今回はゆきんこさんから、血糖自己測定器について、コメント・質問をいただきました。
「09/12/12 ゆきんこ
タイトルなし
こんばんは。ブログ毎日拝見いたしております。
(先生からの返信もお待ちしているのですが…)
このところSMGBについてしらべております。
先生はニプロフリースタイルフリーダムをお使いだということですが、全くの素人でもすぐ使いこなせるものなのでしょうか?
ブログを読ませて頂くと、計測する回数などは人それぞれのような感じがいたしますが、どういう計り方が望ましいのでしょうか?
あと、あるサイトでSMBGの保険適用のことが書いてありました。
でも、ネットで調べると普通にネットでも買えるようです。
普通はお医者様から買うものなのでしょうか?
ご教授よろしくおねがいいたします。」
ゆきんこさん。
コメント欄に返事がありますのでご確認くださいね。
ネットで血糖自己測定器、手に入ると思います。説明書をみれば誰でもすぐに使えます
。
ネット販売は、法律的には灰色みゾーンたいですが、誰も迷惑しないので・・・(∵)?
インスリン注射を打っている人は、医学管理料の中に健康保険内で含まれているという解釈で、病院が無料で血糖自己測定器を貸しだしてくれます。
センサー・針も保険分は無料で支給してくれます。インスリン注射をしていない人は私費で購入となります。
早朝空腹時血糖値を適宜測定すれば、自分の基礎分泌インスリンがどのくらい残っているかがわかります。
食後1時間値と2時間値を適宜測定することもよい情報源となります。
糖尿人においては、どちらが高値かは個人差があります。
正常人では30分値から1時間値が必ず高値で、2時間値は必ず下がります。
糖質を摂取したときの食後血糖値と、糖質制限食のときの食後血糖値を測定して、どれくらい違うか見てみるのも面白いですね。
自分のSMBG(血糖自己測定)記録をしっかりデータとして残しておくととても参考になります。
2009年10月19日 (月) のブログ
「血糖自己測定(SMBG)と簡易血糖自己測定器」
もご参照いただけば幸いです。
江部康二
2009年12月11日 (金)
こんにちは。
一昨日、下鴨の江部診療所の診察が終わって、午後8:30頃、はす向かいの生協に寄ると、天然ブリのしゃぶしゃぶ、天然アジの刺身、鰹のたたき、養殖鯛の刺身、焼き鳥のつくねが、半額だったので早速ゲットしました。
98円均一の、豆腐と鰆のみそ漬けも買って、なかなか豊かな糖質制限な夕餉でした。
昨夜は、高雄病院医局の忘年会で、フグのフルコースでした。
飲んで食べて一人¥8000くらいでしたが、たまの贅沢ですね。
勿論、天然ではなくて養殖のフグでしたが、とても美味しかったですよ。
てっぴ、てっさ、唐揚げ、焼きふぐ、鍋、雑炊・・・
年に1~2~3回ならまあいいやと、勢いで河豚雑炊食べました。(* ̄▽ ̄*)
赤ワインと焼酎も少々?飲みました。
帰ってから、食卓においてあった苺も3つ食べちゃいました。
今朝の空腹時血糖値128mg/dlありました。(-_-;)
やや反省の江部康二です。
さて、焼酎といえば、今回はよしさんから、機能性低血糖症(反応性低血糖症)と蒸留酒について、コメント・質問をいただきました。
「09/12/05 よし
タイトルなし
こんにちは。
いつも拝見させて頂いております。
ひとつお伺いしたいのですが、
反応性低血糖症の場合でも、蒸留酒は
大丈夫でしょうか?
また、その場合どのくらいの量までokでしょうか?
お忙しい中、申し訳ありませんが、
どうぞよろしくお願いします。」
よしさん。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
インスリン追加分泌が遷延する場合は起こりやすいです。
<血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が最も、機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖を生じません。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると結構おられますので注意が必要ですね。
さて、蒸留酒は糖質を含んでいないので、血糖値を上昇させません。そしてアルコール単独では、インスリンの追加分泌はありません。従いまして、アルコール摂取だけで、いわゆる機能性低血糖症にはなりません。
一方、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
特に糖尿人で、経口血糖降下剤やインスリン注射をしている人が低血糖症状を起こしたときは、アルコールを飲んでいると重症化しやすいので注意が必要です。
また、空腹時にアルコールを飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、これまた充分な注意が必要です。
このSU剤やインスリン注射をしている時の低血糖症は、機能性低血糖症とは異なる概念です。
なお、空きっ腹で、大量のアルコール摂取をしたりすれば、肝臓の糖新生がブロックされて食事からのブドウ糖も供給されないので、糖尿人、正常人、機能性低血糖の人を問わず、誰でも低血糖症状になりやすいので注意が必要です。
最後に機能性低血糖の人も含めて、糖質制限食ではアルコール(蒸留酒)OKですが、肝臓を壊さない程度・酔っぱらわない程度の良識的・常識的量でお願いします。
江部康二
一昨日、下鴨の江部診療所の診察が終わって、午後8:30頃、はす向かいの生協に寄ると、天然ブリのしゃぶしゃぶ、天然アジの刺身、鰹のたたき、養殖鯛の刺身、焼き鳥のつくねが、半額だったので早速ゲットしました。
98円均一の、豆腐と鰆のみそ漬けも買って、なかなか豊かな糖質制限な夕餉でした。
昨夜は、高雄病院医局の忘年会で、フグのフルコースでした。
飲んで食べて一人¥8000くらいでしたが、たまの贅沢ですね。
勿論、天然ではなくて養殖のフグでしたが、とても美味しかったですよ。
てっぴ、てっさ、唐揚げ、焼きふぐ、鍋、雑炊・・・
年に1~2~3回ならまあいいやと、勢いで河豚雑炊食べました。(* ̄▽ ̄*)
赤ワインと焼酎も少々?飲みました。
帰ってから、食卓においてあった苺も3つ食べちゃいました。
今朝の空腹時血糖値128mg/dlありました。(-_-;)
やや反省の江部康二です。
さて、焼酎といえば、今回はよしさんから、機能性低血糖症(反応性低血糖症)と蒸留酒について、コメント・質問をいただきました。
「09/12/05 よし
タイトルなし
こんにちは。
いつも拝見させて頂いております。
ひとつお伺いしたいのですが、
反応性低血糖症の場合でも、蒸留酒は
大丈夫でしょうか?
また、その場合どのくらいの量までokでしょうか?
お忙しい中、申し訳ありませんが、
どうぞよろしくお願いします。」
よしさん。
機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。
インスリン追加分泌が遷延する場合は起こりやすいです。
<血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>
というパターンです。
従って、精製炭水化物が最も、機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。
糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖を生じません。
この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると結構おられますので注意が必要ですね。
さて、蒸留酒は糖質を含んでいないので、血糖値を上昇させません。そしてアルコール単独では、インスリンの追加分泌はありません。従いまして、アルコール摂取だけで、いわゆる機能性低血糖症にはなりません。
一方、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
特に糖尿人で、経口血糖降下剤やインスリン注射をしている人が低血糖症状を起こしたときは、アルコールを飲んでいると重症化しやすいので注意が必要です。
また、空腹時にアルコールを飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、これまた充分な注意が必要です。
このSU剤やインスリン注射をしている時の低血糖症は、機能性低血糖症とは異なる概念です。
なお、空きっ腹で、大量のアルコール摂取をしたりすれば、肝臓の糖新生がブロックされて食事からのブドウ糖も供給されないので、糖尿人、正常人、機能性低血糖の人を問わず、誰でも低血糖症状になりやすいので注意が必要です。
最後に機能性低血糖の人も含めて、糖質制限食ではアルコール(蒸留酒)OKですが、肝臓を壊さない程度・酔っぱらわない程度の良識的・常識的量でお願いします。
江部康二
2009年12月10日 (木)
おはようございます。
今回は、糖質制限食と食後の脂質代謝、ケトン体と胎児について研修医さんからコメント・質問をいただきました。
「09/12/05 研修医I
糖質制限食と糖尿病合併症
江部先生こんばんは。
先生のブログを拝見し糖質制限食は血糖コントロールを良好に保ち、合併症の進展・抑制に有効であり特にグルコーススパイクを抑制することは動脈硬化の抑制に重要と感じたのですが、糖質制限食の実践で高脂肪食に傾き食後の脂質代謝異常を引き起こしトータルで動脈硬化を進展させる可能性はないでしょうか?また、妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では糖質制限食により高濃度のケトン体が生じ胎児の知能低下を引き起こす可能性はないでしょうか?」
研修医さん。
コメントありがとうございます。
脂質代謝異常症を起こすのは、高糖質食です。
特に、メタボでインスリン抵抗性がある人が高糖質食を食べると、食後も翌朝の空腹時中性脂肪値も高値となります。
現在、高雄病院では、スーパー糖質制限食実践中の患者さんの空腹時、食後2時間、5時間の中性脂肪値を検査していますが、いずれも正常範囲です。
ケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)は、人体内で筋肉や脂肪など体細胞のほとんどで日常的にエネルギー源として利用されています。従って催奇形性はありませんし、胎児への悪影響もありません。
糖質制限食を実践すれば、生理的にケトン体が上昇しますが、これは全く正常です。
勿論、胎児にも母体にも何の問題もありません。
ちなみに、スーパー糖質制限食を2002年から続けている私の
2009年9月のデータでは、
血中ケトン体値:530μM/L(26~122)
尿中ケトン体:陰性
です。
農耕以前の狩猟・採集が生業だったころの人類のケトン体の基準値は、これぐらいだったと考えられます。
農耕以前は人類皆糖質制限食で、妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。
農耕以前の人類は、皆、今のケトン体の基準値より、はるかに高い血中ケトン体濃度であったと考えられます。
また、イヌイットも4000年間、生肉・生魚が主食のスーパー糖質制限食で妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。
江部康二
☆☆☆
インスリンとリポタンパクリパーゼと中性脂肪
2009年11月23日 (月)
こんにちは。
今回は、「インスリンとリポタンパクリパーゼと中性脂肪」のお話しです。
インスリンは、
①筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)を抑制します。
②脂肪細胞中の リポタンパクリパーゼ(LPL)を活性化します。
筋肉細胞や脂肪細胞の毛細血管の壁には、リポタンパクリパーゼ(LPL)があります。
リポタンパクリパーゼ(LPL)が、キロミクロンやV-LDLの積み荷の中性脂肪を、脂肪酸とグリセロールに分解して、筋肉細胞や脂肪細胞に取り込ませてエネルギー源として利用させ、余ったら中性脂肪に再合成して蓄えるのです。
健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。
糖質摂取で血糖値が上昇して、追加分泌インスリンがでます。脂質摂取でキロミクロンも出現します。
筋肉細胞では、インスリンによりリポタンパクリパーゼ(LPL)が抑制されるので、脂肪酸・ケトン体をエネルギーとして使えなくなるので、もっぱらブドウ糖を利用します。それで血糖値は下がります。
一方、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)は、インスリンにより活性化されるので、中性脂肪をどんどん分解し、脂肪酸とグリセロールにしてエネルギー源として利用しますが、余剰のものは中性脂肪に再合成して脂肪細胞に蓄えます。
このようにして、血液中の中性脂肪は基準値に下がります。
健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人は、このように、少々何を食べても血糖値も中性脂肪値も基準値内にすぐ戻ります。
一方、肥満などでインスリン抵抗性がある人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。
インスリン抵抗性の本質は、「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」とされています。
インスリン本来の作用とは、「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」です。
インスリン抵抗性があると、生理的なインスリン濃度では、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)が充分に活性化されず、脂肪細胞内にそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。それでキロミクロンの積み荷の中性脂肪は減りません。
そして、脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。
肝臓でのVLDL合成は、通常はインスリン濃度が増えれば抑制されますが、インスリン抵抗性があるため、抑制がきかず合成されるのです。
一方、筋肉細胞もインスリン抵抗性はあり、血糖値をやや取り込みにくくなっていますが、追加分泌インスリンにより筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)はある程度抑制されます。
糖尿病になっていない段階なら、筋肉細胞は脂肪酸を取り込めない代わりに、ブドウ糖を取り込んで血糖値は下がりますが、中性脂肪は分解されず血中に残ります。
このようにインスリン抵抗性がある人が、<糖質+脂質>を摂取すれば、食事由来のキロミクロンと肝臓由来のVLDLの両方で血中の中性脂肪が高値となります。この場合、食後高中性脂肪血症は遷延して、空腹時中性脂肪値も高値となることが多いです。
インスリン抵抗性がある人が、スーパー糖質制限食を摂取した時は、追加分泌インスリンは極少量しか出ません。従いまして、筋肉中のリポタンパクリパーゼは、食中・食後もよく働いてキロミクロンの中性脂肪を分解して筋肉細胞に取り込みます。そして血中の中性脂肪値は減少するわけです。 (^^)
いやはや食後脂質代謝は、なかなか複雑で難しいです。おぼろげに解ったことを説明してみましたが、まだ不十分と思います。(・・?)
今回は、糖質制限食と食後の脂質代謝、ケトン体と胎児について研修医さんからコメント・質問をいただきました。
「09/12/05 研修医I
糖質制限食と糖尿病合併症
江部先生こんばんは。
先生のブログを拝見し糖質制限食は血糖コントロールを良好に保ち、合併症の進展・抑制に有効であり特にグルコーススパイクを抑制することは動脈硬化の抑制に重要と感じたのですが、糖質制限食の実践で高脂肪食に傾き食後の脂質代謝異常を引き起こしトータルで動脈硬化を進展させる可能性はないでしょうか?また、妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では糖質制限食により高濃度のケトン体が生じ胎児の知能低下を引き起こす可能性はないでしょうか?」
研修医さん。
コメントありがとうございます。
脂質代謝異常症を起こすのは、高糖質食です。
特に、メタボでインスリン抵抗性がある人が高糖質食を食べると、食後も翌朝の空腹時中性脂肪値も高値となります。
現在、高雄病院では、スーパー糖質制限食実践中の患者さんの空腹時、食後2時間、5時間の中性脂肪値を検査していますが、いずれも正常範囲です。
ケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)は、人体内で筋肉や脂肪など体細胞のほとんどで日常的にエネルギー源として利用されています。従って催奇形性はありませんし、胎児への悪影響もありません。
糖質制限食を実践すれば、生理的にケトン体が上昇しますが、これは全く正常です。
勿論、胎児にも母体にも何の問題もありません。
ちなみに、スーパー糖質制限食を2002年から続けている私の
2009年9月のデータでは、
血中ケトン体値:530μM/L(26~122)
尿中ケトン体:陰性
です。
農耕以前の狩猟・採集が生業だったころの人類のケトン体の基準値は、これぐらいだったと考えられます。
農耕以前は人類皆糖質制限食で、妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。
農耕以前の人類は、皆、今のケトン体の基準値より、はるかに高い血中ケトン体濃度であったと考えられます。
また、イヌイットも4000年間、生肉・生魚が主食のスーパー糖質制限食で妊娠・出産・育児・日常生活を行っていたことをお忘れなく・・・。
江部康二
☆☆☆
インスリンとリポタンパクリパーゼと中性脂肪
2009年11月23日 (月)
こんにちは。
今回は、「インスリンとリポタンパクリパーゼと中性脂肪」のお話しです。
インスリンは、
①筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)を抑制します。
②脂肪細胞中の リポタンパクリパーゼ(LPL)を活性化します。
筋肉細胞や脂肪細胞の毛細血管の壁には、リポタンパクリパーゼ(LPL)があります。
リポタンパクリパーゼ(LPL)が、キロミクロンやV-LDLの積み荷の中性脂肪を、脂肪酸とグリセロールに分解して、筋肉細胞や脂肪細胞に取り込ませてエネルギー源として利用させ、余ったら中性脂肪に再合成して蓄えるのです。
健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。
糖質摂取で血糖値が上昇して、追加分泌インスリンがでます。脂質摂取でキロミクロンも出現します。
筋肉細胞では、インスリンによりリポタンパクリパーゼ(LPL)が抑制されるので、脂肪酸・ケトン体をエネルギーとして使えなくなるので、もっぱらブドウ糖を利用します。それで血糖値は下がります。
一方、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)は、インスリンにより活性化されるので、中性脂肪をどんどん分解し、脂肪酸とグリセロールにしてエネルギー源として利用しますが、余剰のものは中性脂肪に再合成して脂肪細胞に蓄えます。
このようにして、血液中の中性脂肪は基準値に下がります。
健康でスリムな体型で内臓脂肪も正常範囲の人は、このように、少々何を食べても血糖値も中性脂肪値も基準値内にすぐ戻ります。
一方、肥満などでインスリン抵抗性がある人が、主食で糖質を摂取して、あと普通に脂質も摂取したと仮定します。
インスリン抵抗性の本質は、「生理的なインスリン濃度では、本来の作用が発揮できないこと」とされています。
インスリン本来の作用とは、「筋肉・肝臓・脂肪におけるエネルギーの蓄積」です。
インスリン抵抗性があると、生理的なインスリン濃度では、脂肪細胞のリポタンパクリパーゼ(LPL)が充分に活性化されず、脂肪細胞内にそれ以上エネルギー蓄積をできない状態となっています。それでキロミクロンの積み荷の中性脂肪は減りません。
そして、脂肪細胞が脂肪酸を細胞内に蓄えることができなくなると、肝臓に過剰に供給します。肝臓でもインスリン抵抗性があり、過剰な遊離脂肪酸は中性脂肪の合成を促進して、VLDLとして血中に放出されますので食後高中性脂肪血症となります。
肝臓でのVLDL合成は、通常はインスリン濃度が増えれば抑制されますが、インスリン抵抗性があるため、抑制がきかず合成されるのです。
一方、筋肉細胞もインスリン抵抗性はあり、血糖値をやや取り込みにくくなっていますが、追加分泌インスリンにより筋肉中のリポタンパクリパーゼ(LPL)はある程度抑制されます。
糖尿病になっていない段階なら、筋肉細胞は脂肪酸を取り込めない代わりに、ブドウ糖を取り込んで血糖値は下がりますが、中性脂肪は分解されず血中に残ります。
このようにインスリン抵抗性がある人が、<糖質+脂質>を摂取すれば、食事由来のキロミクロンと肝臓由来のVLDLの両方で血中の中性脂肪が高値となります。この場合、食後高中性脂肪血症は遷延して、空腹時中性脂肪値も高値となることが多いです。
インスリン抵抗性がある人が、スーパー糖質制限食を摂取した時は、追加分泌インスリンは極少量しか出ません。従いまして、筋肉中のリポタンパクリパーゼは、食中・食後もよく働いてキロミクロンの中性脂肪を分解して筋肉細胞に取り込みます。そして血中の中性脂肪値は減少するわけです。 (^^)
いやはや食後脂質代謝は、なかなか複雑で難しいです。おぼろげに解ったことを説明してみましたが、まだ不十分と思います。(・・?)
2009年12月09日 (水)
こんにちは。
今回はmkさんから
正常型・境界型・糖尿病型と尿糖についてコメント・質問をいただきました。
「09/11/19 mk
先生のブログ毎日拝見させて頂いております。
他にはない情報量と具体的な質問や回答がありとても勉強になります。
そこでまた質問があるのですが、
正常人と境界型と糖尿人、血糖値によって3種類に分けられていますが、正常な人や境界型の人は75g以上の糖分を摂取しても尿糖は出ないのでしょうか?
また糖質制限食をしている場合、膵臓の回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?例えば3日間糖質制限していても、4日目に1食だけ食後高血糖になるような食事をした場合膵臓の回復はリセットされてしまうのでしょうか?
食後高血糖を抑えるのに軽い運動がいいと言われますが、食前の運動では食後高血糖は防げないのでしょうか?
正直自分で血糖値を計れば計るほど深みにはまっていくような気がしてなりません。
お時間があるときで結構ですのでアドバイス頂けたら幸いです。」
mkさん。
コメントありがとうございます。
「正常人と境界型と糖尿人、血糖値によって3種類に分けられていますが、正常な人や境界型の人は75g以上の糖分を摂取しても尿糖は出ないのでしょうか?」
糖尿病の診断基準の一つに、75g経口ブドウ糖負荷試験があります。
75g経口ブドウ糖負荷試験の基準だと、例えば1時間値が180mg~200mg/dlを超えても、2時間値が140mg未満なら正常型となります。
あくまでも個人差はあるのですが、血糖値が180mg/dlを超えると尿糖陽性になることが多いです。
ということは、正常型でも境界型でも、尿糖陽性はあり得るということになります。
「また糖質制限食をしている場合、膵臓の回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?」
この質問も、個人差が大きく一律には言えません。
入院時空腹時血糖値200mgを超えていた糖尿人が、7~10日間のスーパー糖質制限食で、空腹時血糖値100mgとなる人もおられます。
このような方は、疲弊していた膵臓のβ細胞がかなり回復したと考えられます。
一方、スーパー糖質制限食を2週間続けても、200mg→160mgていどにしか改善しない糖尿人もおられます。
この場合は、すでに膵臓のβ細胞が一定以上の割合で壊れていて、基礎分泌のインスリンを、充分量分泌することが困難な段階にある糖尿人と考えられます。
「例えば3日間糖質制限していても、4日目に1食だけ食後高血糖になるような食事をした場合膵臓の回復はリセットされてしまうのでしょうか?」
リセットまではいかないでしょうが、
180mg/dlを超える時間帯には、膵臓のβ細胞は何らかの傷害を受けています。
180mg/dlを超えない時間帯が長いほど、単純に膵臓のβ細胞には優しいのです。
4日に1回、1~2時間、血糖値が180mg/dlを超えるくらいは、影響は少ないとは思いますが・・・
「食後高血糖を抑えるのに軽い運動がいいと言われますが、食前の運動では食後高血糖は防げないのでしょうか?」
食後30分の30分間の運動で、どのくらい血糖値の上昇が防げるかを、高雄病院で数人の糖尿病患者さんにお願いして実験してみました。
その結果は、非常に個人差が大きかったです。まーさんと同様、60分値は改善しても、90分値、120分値は再び上昇というパターンの人もおられました。
<食後30分から30分間運動>VS<運動無し> 50g糖質摂取時
空腹時→食後60分→食後120分血糖値の比較
例えばA・Mさん
運動あり 127→164→197mg
運動なし 139→255→222mg
食前→食後60分
運動して37mg上昇
運動しなかったら116mg上昇
食前→食後120分
運動して70mg上昇
運動しなかったら83mg上昇
運動したほうが、60分値はかなり大幅な改善ですが、120分値は少しましですが、そんなには変わりませんでした。
N・Sさん
運動あり 111→133→127mg
運動無し 108→189→126mg
食前→食後60分
運動して22mg上昇
運動しなかったら81mg上昇
食前→食後120分
運動して16mg上昇
運動しなかったら18mg上昇
やはり運動したほうが、60分値はかなりましですが、120分値はあまり変わりません。
まあ、N・Sさんの場合は、運動により食後高血糖は全く生じていないので、こういうタイプは運動療法がとても有効と思います。
N・Mさん
運動あり 174→278→307mg
運動無し 136→278→211mg
食前→食後60分
運動して108mg上昇
運動しなかったら142mg上昇
食前→食後120分
運動して133mg上昇
運動しなかったら75mg上昇
運動しても60分値で108mg上昇してますから、良好な運動効果とはいえませんがそれでも運動しないよりましです。
ところがN・Mさんは120分値は運動した方が133mgも上昇して、運動しないほうがかえってましです。この方は、食後30分に30分の歩行というメニューでは運動療法は無効といえます。
このように食後高血糖に対する、食後30分、30分の歩行実験では、三者三様であり、かなり個人差が大きいことが判明しました。
この個人差に関しては、BMIが高いほど運動効果がでにくいということと、インスリン基礎分泌が少ないと運動効果がでにくい傾向がありました。
それから食前の運動に関してですが、筋収縮によるインスリンに無関係なGLUT4トランスロケーション(筋肉細胞の糖輸送体が細胞表面に出てきて血糖を取り込みやすくなる)は、通常は運動終了後2~3時間経過すると消失します。
しかし、骨格筋は運動によって消費した筋グリコーゲンを回復させるために、その後も活発に血糖を取り込み続ける必要があります。
そのため運動終了後、2~3時間経過した後も、活動していた筋においてはインスリン感受性が亢進していて、一定量のインスリン刺激に対して、いつもよりたくさんのGLUT4がトランスロケーションして、血糖を取り込んでグリコーゲンに変えます。
従いまして、筋肉中のグリコーゲンがかなり減少するレベルの運動を食前にすれば、少々の糖質を食べても食後高血糖を防げることになります。
一方、激しい運動はアドレナリンなどのホルモンが分泌されてかえって血糖値が上昇することもあり加減が難しいですね。
江部康二
今回はmkさんから
正常型・境界型・糖尿病型と尿糖についてコメント・質問をいただきました。
「09/11/19 mk
先生のブログ毎日拝見させて頂いております。
他にはない情報量と具体的な質問や回答がありとても勉強になります。
そこでまた質問があるのですが、
正常人と境界型と糖尿人、血糖値によって3種類に分けられていますが、正常な人や境界型の人は75g以上の糖分を摂取しても尿糖は出ないのでしょうか?
また糖質制限食をしている場合、膵臓の回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?例えば3日間糖質制限していても、4日目に1食だけ食後高血糖になるような食事をした場合膵臓の回復はリセットされてしまうのでしょうか?
食後高血糖を抑えるのに軽い運動がいいと言われますが、食前の運動では食後高血糖は防げないのでしょうか?
正直自分で血糖値を計れば計るほど深みにはまっていくような気がしてなりません。
お時間があるときで結構ですのでアドバイス頂けたら幸いです。」
mkさん。
コメントありがとうございます。
「正常人と境界型と糖尿人、血糖値によって3種類に分けられていますが、正常な人や境界型の人は75g以上の糖分を摂取しても尿糖は出ないのでしょうか?」
糖尿病の診断基準の一つに、75g経口ブドウ糖負荷試験があります。
75g経口ブドウ糖負荷試験の基準だと、例えば1時間値が180mg~200mg/dlを超えても、2時間値が140mg未満なら正常型となります。
あくまでも個人差はあるのですが、血糖値が180mg/dlを超えると尿糖陽性になることが多いです。
ということは、正常型でも境界型でも、尿糖陽性はあり得るということになります。
「また糖質制限食をしている場合、膵臓の回復にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?」
この質問も、個人差が大きく一律には言えません。
入院時空腹時血糖値200mgを超えていた糖尿人が、7~10日間のスーパー糖質制限食で、空腹時血糖値100mgとなる人もおられます。
このような方は、疲弊していた膵臓のβ細胞がかなり回復したと考えられます。
一方、スーパー糖質制限食を2週間続けても、200mg→160mgていどにしか改善しない糖尿人もおられます。
この場合は、すでに膵臓のβ細胞が一定以上の割合で壊れていて、基礎分泌のインスリンを、充分量分泌することが困難な段階にある糖尿人と考えられます。
「例えば3日間糖質制限していても、4日目に1食だけ食後高血糖になるような食事をした場合膵臓の回復はリセットされてしまうのでしょうか?」
リセットまではいかないでしょうが、
180mg/dlを超える時間帯には、膵臓のβ細胞は何らかの傷害を受けています。
180mg/dlを超えない時間帯が長いほど、単純に膵臓のβ細胞には優しいのです。
4日に1回、1~2時間、血糖値が180mg/dlを超えるくらいは、影響は少ないとは思いますが・・・
「食後高血糖を抑えるのに軽い運動がいいと言われますが、食前の運動では食後高血糖は防げないのでしょうか?」
食後30分の30分間の運動で、どのくらい血糖値の上昇が防げるかを、高雄病院で数人の糖尿病患者さんにお願いして実験してみました。
その結果は、非常に個人差が大きかったです。まーさんと同様、60分値は改善しても、90分値、120分値は再び上昇というパターンの人もおられました。
<食後30分から30分間運動>VS<運動無し> 50g糖質摂取時
空腹時→食後60分→食後120分血糖値の比較
例えばA・Mさん
運動あり 127→164→197mg
運動なし 139→255→222mg
食前→食後60分
運動して37mg上昇
運動しなかったら116mg上昇
食前→食後120分
運動して70mg上昇
運動しなかったら83mg上昇
運動したほうが、60分値はかなり大幅な改善ですが、120分値は少しましですが、そんなには変わりませんでした。
N・Sさん
運動あり 111→133→127mg
運動無し 108→189→126mg
食前→食後60分
運動して22mg上昇
運動しなかったら81mg上昇
食前→食後120分
運動して16mg上昇
運動しなかったら18mg上昇
やはり運動したほうが、60分値はかなりましですが、120分値はあまり変わりません。
まあ、N・Sさんの場合は、運動により食後高血糖は全く生じていないので、こういうタイプは運動療法がとても有効と思います。
N・Mさん
運動あり 174→278→307mg
運動無し 136→278→211mg
食前→食後60分
運動して108mg上昇
運動しなかったら142mg上昇
食前→食後120分
運動して133mg上昇
運動しなかったら75mg上昇
運動しても60分値で108mg上昇してますから、良好な運動効果とはいえませんがそれでも運動しないよりましです。
ところがN・Mさんは120分値は運動した方が133mgも上昇して、運動しないほうがかえってましです。この方は、食後30分に30分の歩行というメニューでは運動療法は無効といえます。
このように食後高血糖に対する、食後30分、30分の歩行実験では、三者三様であり、かなり個人差が大きいことが判明しました。
この個人差に関しては、BMIが高いほど運動効果がでにくいということと、インスリン基礎分泌が少ないと運動効果がでにくい傾向がありました。
それから食前の運動に関してですが、筋収縮によるインスリンに無関係なGLUT4トランスロケーション(筋肉細胞の糖輸送体が細胞表面に出てきて血糖を取り込みやすくなる)は、通常は運動終了後2~3時間経過すると消失します。
しかし、骨格筋は運動によって消費した筋グリコーゲンを回復させるために、その後も活発に血糖を取り込み続ける必要があります。
そのため運動終了後、2~3時間経過した後も、活動していた筋においてはインスリン感受性が亢進していて、一定量のインスリン刺激に対して、いつもよりたくさんのGLUT4がトランスロケーションして、血糖を取り込んでグリコーゲンに変えます。
従いまして、筋肉中のグリコーゲンがかなり減少するレベルの運動を食前にすれば、少々の糖質を食べても食後高血糖を防げることになります。
一方、激しい運動はアドレナリンなどのホルモンが分泌されてかえって血糖値が上昇することもあり加減が難しいですね。
江部康二
2009年12月09日 (水)
おはようございます。
今回は、人工甘味料と腎障害についてゆかさんから、コメント・質問をいただきました。
「09/12/06 ゆか
人工甘味料
先生こんにちは
先日慢性腎炎の事で質問させて頂きましたゆかです
この前、アメリカの研究で人工甘味料の摂取で腎機能の低下が2倍早まるという記事を読みました。
いずれも腎機能が正常な女性対象に人工甘味料を摂取するグループと摂取しないグループにわけて研究したところ、人工甘味料を摂取したグループに通常の2倍もの腎機能の低下がみられたと言うものでした。
糖質制限にいつも役立ってる甘味料(私はパルスィートを使っています )は人工甘味料ですよね?
もし正常な腎機能の方達が2倍の早さで低下するのであれば、慢性腎炎の私はもっと低下が早くなるということですか?
そうだとしたらやはり砂糖を使うしか方法がないのでしょうか…(:_;)
せっかく数値が安定してるのに、目の前を塞がれた様で残念でなりません…」
ゆかさん。
ヘルスデージャパンさんのウェブサイトhttp://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2163&Itemid=5
に以下の記事が載っていました。
ヘルスデージャパンさん、転載させてもらいました。すいません。
ゆかさんの仰有っているのはこのことですね。
【高塩分食、人工甘味料使用炭酸飲料が腎障害に関連(2009.11.12掲載)
塩分の高い食事や人工甘味料を使用した飲料を摂取すると、腎機能低下のリスクが増大することが2つの研究で示された。「現在、腎疾患における食事の役割については限られたデータしかない。さらに研究を重ねる必要はあるが、われわれの研究から、ナトリウムの多い食事や人工甘味料の入った炭酸飲料の摂取が腎機能低下の原因となることが示された」と、両研究を行った米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(ボストン)のJulie Lin博士は述べている。
第1の研究では、米国看護師健康研究(Nurses' Health Study)に参加した3,000人強の女性の食事と腎機能低下について検討した。その結果、正常な腎機能を維持していた女性の中では、食事の塩分の高い人ほど腎機能の低下が大きく、ナトリウム摂取が腎疾患の進行を促進するとの動物実験データと一致する結果であった。
第2の研究では、同じ女性を対象に砂糖および人工甘味料の入った飲料と腎機能低下について検討。その結果、1日2サービング以上の人工甘味料入り炭酸飲料を摂取すると、腎機能低下が加速するリスクが2倍になることが判明。砂糖入り炭酸飲料と腎機能低下との関連は認められなかった。人工甘味料入り飲料と腎機能低下との関連は、年齢、肥満、高血圧、糖尿病、喫煙、運動、カロリー摂取量および心血管疾患などの因子を考慮してもなお認められた。人工甘味料がどのように腎機能低下に影響するのかついては、さらに研究を重ねる必要があると研究グループは述べている。
両研究は、米サンディエゴで開催された米国腎臓学会(ASN)年次集会(腎臓週間2009)で発表された。(HealthDay News 11月2日)】
ゆかさん。
コメントありがとうございます。
塩分の摂取量が多いのと、人工甘味料入り炭酸飲料2本/日以上の人が、腎機能低下のリスクが増大するということですね。
もともと人工甘味料の総量規制はあるのですが、腎機能に関しても逆に言えば、1本/日までは大丈夫ということです。炭酸飲料の1サービングというと、350mlくらいなのでしょうか?
米国の研究の人工甘味料は、米国FDA(食品医薬品局)が認定している
「アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム」
の5種類と思います。
パルスイートゼロの主成分はエリスリトールで、成分の98%以上を占めています。アスパルテーム、アセスルファムカリウムは極少量です。
エリスリトールの安全性は確立していて、人工甘味料には分類されずに糖アルコールに分類されます
。
パルスイートゼロ、まず心配ないと思います。
アスパルテーム、アセスルファムカリウムが少量でも嫌ならばラカントSなら、「エリスリトール+羅漢果」で、人工甘味料は一切使っていないので、大丈夫ですよ。
江部康二
今回は、人工甘味料と腎障害についてゆかさんから、コメント・質問をいただきました。
「09/12/06 ゆか
人工甘味料
先生こんにちは
先日慢性腎炎の事で質問させて頂きましたゆかです
この前、アメリカの研究で人工甘味料の摂取で腎機能の低下が2倍早まるという記事を読みました。
いずれも腎機能が正常な女性対象に人工甘味料を摂取するグループと摂取しないグループにわけて研究したところ、人工甘味料を摂取したグループに通常の2倍もの腎機能の低下がみられたと言うものでした。
糖質制限にいつも役立ってる甘味料(私はパルスィートを使っています )は人工甘味料ですよね?
もし正常な腎機能の方達が2倍の早さで低下するのであれば、慢性腎炎の私はもっと低下が早くなるということですか?
そうだとしたらやはり砂糖を使うしか方法がないのでしょうか…(:_;)
せっかく数値が安定してるのに、目の前を塞がれた様で残念でなりません…」
ゆかさん。
ヘルスデージャパンさんのウェブサイトhttp://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2163&Itemid=5
に以下の記事が載っていました。
ヘルスデージャパンさん、転載させてもらいました。すいません。
ゆかさんの仰有っているのはこのことですね。
【高塩分食、人工甘味料使用炭酸飲料が腎障害に関連(2009.11.12掲載)
塩分の高い食事や人工甘味料を使用した飲料を摂取すると、腎機能低下のリスクが増大することが2つの研究で示された。「現在、腎疾患における食事の役割については限られたデータしかない。さらに研究を重ねる必要はあるが、われわれの研究から、ナトリウムの多い食事や人工甘味料の入った炭酸飲料の摂取が腎機能低下の原因となることが示された」と、両研究を行った米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(ボストン)のJulie Lin博士は述べている。
第1の研究では、米国看護師健康研究(Nurses' Health Study)に参加した3,000人強の女性の食事と腎機能低下について検討した。その結果、正常な腎機能を維持していた女性の中では、食事の塩分の高い人ほど腎機能の低下が大きく、ナトリウム摂取が腎疾患の進行を促進するとの動物実験データと一致する結果であった。
第2の研究では、同じ女性を対象に砂糖および人工甘味料の入った飲料と腎機能低下について検討。その結果、1日2サービング以上の人工甘味料入り炭酸飲料を摂取すると、腎機能低下が加速するリスクが2倍になることが判明。砂糖入り炭酸飲料と腎機能低下との関連は認められなかった。人工甘味料入り飲料と腎機能低下との関連は、年齢、肥満、高血圧、糖尿病、喫煙、運動、カロリー摂取量および心血管疾患などの因子を考慮してもなお認められた。人工甘味料がどのように腎機能低下に影響するのかついては、さらに研究を重ねる必要があると研究グループは述べている。
両研究は、米サンディエゴで開催された米国腎臓学会(ASN)年次集会(腎臓週間2009)で発表された。(HealthDay News 11月2日)】
ゆかさん。
コメントありがとうございます。
塩分の摂取量が多いのと、人工甘味料入り炭酸飲料2本/日以上の人が、腎機能低下のリスクが増大するということですね。
もともと人工甘味料の総量規制はあるのですが、腎機能に関しても逆に言えば、1本/日までは大丈夫ということです。炭酸飲料の1サービングというと、350mlくらいなのでしょうか?
米国の研究の人工甘味料は、米国FDA(食品医薬品局)が認定している
「アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム」
の5種類と思います。
パルスイートゼロの主成分はエリスリトールで、成分の98%以上を占めています。アスパルテーム、アセスルファムカリウムは極少量です。
エリスリトールの安全性は確立していて、人工甘味料には分類されずに糖アルコールに分類されます
。
パルスイートゼロ、まず心配ないと思います。
アスパルテーム、アセスルファムカリウムが少量でも嫌ならばラカントSなら、「エリスリトール+羅漢果」で、人工甘味料は一切使っていないので、大丈夫ですよ。
江部康二
2009年12月08日 (火)
こんにちは。
またまた私の良きアドバイザー、I先生から、貴重な情報をいただきましたので読者の皆さんにご報告です。
この論文の結論要旨は、
「1000キロカロリの食事で、高脂肪食・低炭水化物食で最も体重が減少し、高炭水化物・低脂肪食では体重減少が最も少なかった。」
です。
以下、I先生からのコメントです。
【THE TREATMENT OF OBESITY: A COMPARISON OF THE EFFECTS OF DIET AND OF THYROID EXTRACT
LYON and DUNLOP QJM.1932; 1: 331-352
http://qjmed.oxfordjournals.org/cgi/pdf_extract/1/2/331
これは1932年と古い論文ですが、PCFバランスと体重の変化というような研究は特別な機械もいらないため、昔から行われていたようです。
この論文の中では、まず、基礎実験として、すべて1000kilocalorieに統一した 4種類の食事で、一日にどのくらい体重が減るかを調べています。
高炭水化物/低脂肪では49g
高炭水化物/高蛋では122g
低炭水化物/高蛋では183g
低炭水化物/高脂肪では205g
だそうです。この値から体重が減らないカロリーを推定すると高炭水化物/低脂肪で1700 kilocalorieから低炭水化物/高脂肪では2700 kilocalorieとなるそうです。
実際の実験では、800から2,700 kilocalorieといろいろなカロリーで、PFCバランスを変えて実験しているのですが、カロリーはいろいろでも体重は炭水化物の含有量に反比例したそうです。
カロリーが当てにならないのは実感としてわかっていましたが、この研究結果は予想以上でした。】
I先生、またまたありがとうございます。m(_ _)mV
「高炭水化物食が太る」「高脂肪食が痩せる」という極めて明快な結論の論文ですね。
このように「炭水化物が一番太る」とはっきり示した論文が昔からあったにもかかわらず、医学界全体がいつのまにか根拠もないのに「脂肪が太る」にころっと変わっていったのは、何故なのでしょう?
不思議です。
穀物メジャーの陰謀などあったのかと勘ぐりたくなりますね。 ( ̄_ ̄|||)
江部康二
またまた私の良きアドバイザー、I先生から、貴重な情報をいただきましたので読者の皆さんにご報告です。
この論文の結論要旨は、
「1000キロカロリの食事で、高脂肪食・低炭水化物食で最も体重が減少し、高炭水化物・低脂肪食では体重減少が最も少なかった。」
です。
以下、I先生からのコメントです。
【THE TREATMENT OF OBESITY: A COMPARISON OF THE EFFECTS OF DIET AND OF THYROID EXTRACT
LYON and DUNLOP QJM.1932; 1: 331-352
http://qjmed.oxfordjournals.org/cgi/pdf_extract/1/2/331
これは1932年と古い論文ですが、PCFバランスと体重の変化というような研究は特別な機械もいらないため、昔から行われていたようです。
この論文の中では、まず、基礎実験として、すべて1000kilocalorieに統一した 4種類の食事で、一日にどのくらい体重が減るかを調べています。
高炭水化物/低脂肪では49g
高炭水化物/高蛋では122g
低炭水化物/高蛋では183g
低炭水化物/高脂肪では205g
だそうです。この値から体重が減らないカロリーを推定すると高炭水化物/低脂肪で1700 kilocalorieから低炭水化物/高脂肪では2700 kilocalorieとなるそうです。
実際の実験では、800から2,700 kilocalorieといろいろなカロリーで、PFCバランスを変えて実験しているのですが、カロリーはいろいろでも体重は炭水化物の含有量に反比例したそうです。
カロリーが当てにならないのは実感としてわかっていましたが、この研究結果は予想以上でした。】
I先生、またまたありがとうございます。m(_ _)mV
「高炭水化物食が太る」「高脂肪食が痩せる」という極めて明快な結論の論文ですね。
このように「炭水化物が一番太る」とはっきり示した論文が昔からあったにもかかわらず、医学界全体がいつのまにか根拠もないのに「脂肪が太る」にころっと変わっていったのは、何故なのでしょう?
不思議です。
穀物メジャーの陰謀などあったのかと勘ぐりたくなりますね。 ( ̄_ ̄|||)
江部康二
2009年12月08日 (火)
おはようございます。
今回は、甘いみかんさんから、
「油の摂取量を増やすとカロリーが上がるが逆に痩せていく」
というコメントをいただきました。
「お久しぶりです
どうも自分自身、同じものを食べていても油の摂取量を増やすとカロリーが上がりますが
逆に痩せていくように感じます 。油が糖質の摂取を妨げているということはないでしょうか?
2009/12/07(Mon) 13:16 | URL | 甘いみかん | 」
甘いみかんさん。
お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
油と糖質を一緒に摂取すると、GIは下がります。 白米より、バターライスのほうがGIは低いです。
従って、糖尿病でない人には一定の意味があると思います。
なお吸収速度がゆっくりになりますが、合計吸収量は一緒です。 摂取した糖質は最終的に100%吸収されて血糖に変わります。
例えばグルコバイは当初、やせ薬として開発されましたが、そちらには無効だったようです。
また、糖尿人においては、GIが低いものでも、普通に主食(デンプン)を摂取すれば、血糖値は200mgを超えてきますのでGIの意味合いは少ないです。
倹約遺伝子の持ち主か否かにもよりますが、2400キロカロリの糖質制限食で体重減少する人が1800キロカロリの糖質たっぷり食では太ることがあります。
とここまで、コメント欄で書いたのですが、調度いいタイミングで、いつも糖質制限食理論でアドバイスをいただいているDrから、日清オイリオの「ヘルシーリセッタ」のHPのことでメールをいただきました。
I先生、いつもありがとうございます。m(_ _)mVV
脂肪を摂取すると痩せるというグラフが載っているそうで、私も早速、覗いて見ました。
日清オイリオの「ヘルシーリセッタ」
http://www.nisshin-oillio.com/healthy/syohin_r03.shtml
HPに
「肥満気味の方に、通常の油(調合サラダ油)に替えてヘルシーリセッタを14g/日を 含む食事を12週間(3ヶ月間)続けた結果、体脂肪、内臓脂肪面積、体重、ウエストが減少しました。」
との記載があります。
ヘルシーリセッタ摂取後3ヶ月で、5kg減少しています。メーカーはこれを強調していますが、一方で興味深い事実がグラフから見て取れます。
すなわち、対照群の普通のサラダ油を14g/日ほど摂取したグループも、3ヶ月で3kgの減量に成功していたのです。
ということは、甘いみかんさんのご指摘通り、油そのものに体重減少効果がある可能性がでてきましたね。
糖質制限食的にも、とても面白いグラフです。
江部康二
今回は、甘いみかんさんから、
「油の摂取量を増やすとカロリーが上がるが逆に痩せていく」
というコメントをいただきました。
「お久しぶりです
どうも自分自身、同じものを食べていても油の摂取量を増やすとカロリーが上がりますが
逆に痩せていくように感じます 。油が糖質の摂取を妨げているということはないでしょうか?
2009/12/07(Mon) 13:16 | URL | 甘いみかん | 」
甘いみかんさん。
お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
油と糖質を一緒に摂取すると、GIは下がります。 白米より、バターライスのほうがGIは低いです。
従って、糖尿病でない人には一定の意味があると思います。
なお吸収速度がゆっくりになりますが、合計吸収量は一緒です。 摂取した糖質は最終的に100%吸収されて血糖に変わります。
例えばグルコバイは当初、やせ薬として開発されましたが、そちらには無効だったようです。
また、糖尿人においては、GIが低いものでも、普通に主食(デンプン)を摂取すれば、血糖値は200mgを超えてきますのでGIの意味合いは少ないです。
倹約遺伝子の持ち主か否かにもよりますが、2400キロカロリの糖質制限食で体重減少する人が1800キロカロリの糖質たっぷり食では太ることがあります。
とここまで、コメント欄で書いたのですが、調度いいタイミングで、いつも糖質制限食理論でアドバイスをいただいているDrから、日清オイリオの「ヘルシーリセッタ」のHPのことでメールをいただきました。
I先生、いつもありがとうございます。m(_ _)mVV
脂肪を摂取すると痩せるというグラフが載っているそうで、私も早速、覗いて見ました。
日清オイリオの「ヘルシーリセッタ」
http://www.nisshin-oillio.com/healthy/syohin_r03.shtml
HPに
「肥満気味の方に、通常の油(調合サラダ油)に替えてヘルシーリセッタを14g/日を 含む食事を12週間(3ヶ月間)続けた結果、体脂肪、内臓脂肪面積、体重、ウエストが減少しました。」
との記載があります。
ヘルシーリセッタ摂取後3ヶ月で、5kg減少しています。メーカーはこれを強調していますが、一方で興味深い事実がグラフから見て取れます。
すなわち、対照群の普通のサラダ油を14g/日ほど摂取したグループも、3ヶ月で3kgの減量に成功していたのです。
ということは、甘いみかんさんのご指摘通り、油そのものに体重減少効果がある可能性がでてきましたね。
糖質制限食的にも、とても面白いグラフです。
江部康二
2009年12月07日 (月)
こんばんは。
江部康二及び、NPO法人糖質制限食ネット・リボーン理事、管理栄養士大柳珠美さん監修の
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
が発売されました。
「糖尿病の画期的食事療法である糖質制限食が、ダイエット(体重減少)にも最強の味方になりますよ。」という
内容のムックです。
dancyu編集長の町田成一氏と、私、江部康二の居酒屋対談が、顔写真入りで冒頭の6ページに載っています。 (^_^)
焼酎を飲みながらの対談なので、いつもよりややテンションが高くて、その分、読みやすいかも・・・ (* ̄▽ ̄*)
ご協力頂いた京都の居酒屋「馳走いなせや」さん(075-255-7250)の糖質制限な素材を生かした丁寧な料理も写真入りで載っています。
糖質制限OKな料理を特別に選んで並べていただきました。 謝謝 m(_ _)m
町田編集長は、ご自分で糖質制限食を実践され、3週間で体重が5kg、ウェスト3cm減!に成功されました。ヽ(*`▽´)ノ
後半は、糖質制限OKな料理のレシピが、大きな写真入りでたくさん紹介してあり、美味しそうで見やすくて、高雄病院のスタッフの評判も抜群です。コンビニの上手な利用法も載ってます。
なかなか盛りだくさんで、読みやすい、お得感に溢れる本となりました。ご興味のある方は、是非ご一読ください。
なおdancyuからのメッセージで、読者アンケート調査にご協力いただいた方には抽選で、
NPO法人糖質制限食ネット・リボーンの賛助会員
「アイランドホテル&リゾート那須」http://www.island-resortnasu.com/hotel/ で
私が監修した糖質制限食ディナー「リゾートダイエット」付きペア宿泊券を3組に、
そしてやはりNPO法人糖質制限食ネット・リボーンの賛助会員の
「糖質制限ドットコム」http://www.toushitsuseigen.com/ の食材を、
5名のかたにプレゼントということです。
江部康二
江部康二及び、NPO法人糖質制限食ネット・リボーン理事、管理栄養士大柳珠美さん監修の
『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
おいしい「糖質オフ」料理で楽しくやせる本 』(プレジデント社)
が発売されました。
「糖尿病の画期的食事療法である糖質制限食が、ダイエット(体重減少)にも最強の味方になりますよ。」という
内容のムックです。
dancyu編集長の町田成一氏と、私、江部康二の居酒屋対談が、顔写真入りで冒頭の6ページに載っています。 (^_^)
焼酎を飲みながらの対談なので、いつもよりややテンションが高くて、その分、読みやすいかも・・・ (* ̄▽ ̄*)
ご協力頂いた京都の居酒屋「馳走いなせや」さん(075-255-7250)の糖質制限な素材を生かした丁寧な料理も写真入りで載っています。
糖質制限OKな料理を特別に選んで並べていただきました。 謝謝 m(_ _)m
町田編集長は、ご自分で糖質制限食を実践され、3週間で体重が5kg、ウェスト3cm減!に成功されました。ヽ(*`▽´)ノ
後半は、糖質制限OKな料理のレシピが、大きな写真入りでたくさん紹介してあり、美味しそうで見やすくて、高雄病院のスタッフの評判も抜群です。コンビニの上手な利用法も載ってます。
なかなか盛りだくさんで、読みやすい、お得感に溢れる本となりました。ご興味のある方は、是非ご一読ください。
なおdancyuからのメッセージで、読者アンケート調査にご協力いただいた方には抽選で、
NPO法人糖質制限食ネット・リボーンの賛助会員
「アイランドホテル&リゾート那須」http://www.island-resortnasu.com/hotel/ で
私が監修した糖質制限食ディナー「リゾートダイエット」付きペア宿泊券を3組に、
そしてやはりNPO法人糖質制限食ネット・リボーンの賛助会員の
「糖質制限ドットコム」http://www.toushitsuseigen.com/ の食材を、
5名のかたにプレゼントということです。
江部康二
2009年12月06日 (日)
おはようございます。
今回は、「糖質制限食」と「高糖質低脂質食」とで、どちらが体重減少効果があるかを、理論的・疫学的に考察してみます。
高糖質低脂質食とは、従来ヘルシーと信じられてきた、糖質が主で脂質をできるだけ減らした食事のことです。
長い間、根拠は曖昧なまま医学界では、この高糖質低脂質食が、健康に良くて体重減少効果があると信じられてきましたが、その間違いを検証したいと思います。
<糖質制限食:糖質12% 脂質56% タンパク質32%>
<高糖質低脂質食:糖質60% 脂質20% タンパク質20%>
【理論的考察】
糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食J)とでは、痩せる効果に大きな差があるのですが、「糖質制限食」でやせるメカニズムに関しては、以下の四つの要素が重要です。
「糖質制限食」では、糖質を摂取しないので
1 肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がほとんどでない。
2 体脂肪が常に燃えている。
3 血中のケトン体値が高まり、尿中に含有カロリーと共に生理的に排泄される。
4 肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われそれに高エネルギーが消費される。
一方、従来の「カロリー制限食」では、糖質を摂取するので
A 血糖値が上昇して肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がたっぷり分泌される。
B 体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C ケトン体は尿中に出なくなる。
D 肝臓の糖新生はストップする。
この<1、2、3、4>と<A、B、C、D>の比較をしてみれば、「糖質制限食」のほうが「インスリン・スイッチが作動するカロリー制限食」より、ダイエット効果があることがお解りいただけると思います。
すなわち、糖質を摂取すれば、<1、2、3、4>という体重減少への利点が、全て消えてしまうわけです。
<1、2、3、4>と<A、B、C、D>に関しては、摂取カロリーとは全く無関係の生理学的な事実であり、あくまでも糖質を摂取するか否かが鍵となります。
このように、少なくとも同一カロリーである限りは、糖質制限食が脂肪制限食よりダイエット効果が高いことは、理論的に証明できたと思います。
単純には、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば太るし、下回れば痩せます。
通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生>です。
糖質制限食なら
<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生> に加えて、
《肝臓の糖新生でエネルギーを消費+尿中ケトン体でエネルギーを消失》が追加です。
この2つの追加分に関しては、今まで医学界でほとんど知られていなかったと思います。
【疫学的証拠】
①
体重減少に関しては、
2008年のニューイングランド・ジャーナル、イスラエルの研究報告
NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
「低炭水化物食(糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」
が、長年の食事療法の論争に決着をつけたと思います。
これは、ネットの1個人の意見や仮説ではなく、322人を2年間追跡した権威ある疫学的研究です。
<低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。>
• イスラエルの322人(男性86%)
• (1)低脂肪法(カロリー制限あり)
• (2)オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
• (3)低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンス式ダイエット)
• 3グループの食事法を2年間経過観察。
• 低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
体重などを分析した結果、2年後の体重減少幅の平均は
(1)低脂肪法 2.9キロ
(2)地中海法 4.4キロ
(3)低炭水化物法 4.7キロ
となり、
(3)低炭水化物法が最も減少していた。また、善玉コレステロールも増えていた。
②
2007年3月のJAMA(米国医師会雑誌)に、
「the A TO Z Weight Loss Study: a randomized trial.」という論文が発表されました。
アトキンス(Atkins)、ゾーン(Zone)、ラーン(LEARN)、オーニッシュ(Ornish)ダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果をみた研究論文です。
311人の女性を上記4グループに分けて追跡したものです。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものです。
結果は、アトキンス ダイエット( 糖質制限食)が最も、体重を減少させ、HDL-コレステロールを増加、中性脂肪を減少させることが明らかとなりました。 (^O^)
アトキンス ダイエットは低糖質食で私達の 糖質制限食と基本的考えは一緒です。1年間で平均4.7kg減少です。
ゾーン ダイエットはタンパク質・炭水化物・脂質の比率を40:30:30にするというものです。平均1.6kg減少です。
ラーン ダイエットは高炭水化物、低脂肪食です。平均2.6kg減少です。
オーニッシュ ダイエッは菜食主義風のダイエットです。カロリーの10%を脂肪分から、20%をたんぱく質、70%を炭水化物からという割合の食事です。平均2.2kg減症です。最も高炭水化物で、最も低脂肪です。
コレステロ-ルや飽和脂肪酸を多く含む食品は禁止なので、肉は食べられませんが、一部の乳製品(無脂肪のヨーグルトや牛乳、低脂肪チーズ等)や卵白はOKです。魚も禁止です。
また、果物や穀類などの精製されていない炭水化物(糖質+食物繊維)は良いのですが、砂糖などの精製された糖質は制限されます。蜂蜜やアルコールもだめです。玄米や全粒粉のパンを主食として、野菜や果物が中心で、日本の玄米菜食に近いですね。
このようにニューイングランド・ジャーナルと米国医師会雑誌という2つの権威ある医学雑誌に載った論文で、「糖質制限食」が「高糖質低脂質食」より体重減少効果があることが証明されました。
【結論】
理論的にも疫学的にも、体重減少効果に関して糖質制限食のほうが、高糖質低脂質食より有効であることが証明できたと思います。
江部康二
今回は、「糖質制限食」と「高糖質低脂質食」とで、どちらが体重減少効果があるかを、理論的・疫学的に考察してみます。
高糖質低脂質食とは、従来ヘルシーと信じられてきた、糖質が主で脂質をできるだけ減らした食事のことです。
長い間、根拠は曖昧なまま医学界では、この高糖質低脂質食が、健康に良くて体重減少効果があると信じられてきましたが、その間違いを検証したいと思います。
<糖質制限食:糖質12% 脂質56% タンパク質32%>
<高糖質低脂質食:糖質60% 脂質20% タンパク質20%>
【理論的考察】
糖質制限食とカロリー制限食(高糖質食J)とでは、痩せる効果に大きな差があるのですが、「糖質制限食」でやせるメカニズムに関しては、以下の四つの要素が重要です。
「糖質制限食」では、糖質を摂取しないので
1 肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がほとんどでない。
2 体脂肪が常に燃えている。
3 血中のケトン体値が高まり、尿中に含有カロリーと共に生理的に排泄される。
4 肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われそれに高エネルギーが消費される。
一方、従来の「カロリー制限食」では、糖質を摂取するので
A 血糖値が上昇して肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がたっぷり分泌される。
B 体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C ケトン体は尿中に出なくなる。
D 肝臓の糖新生はストップする。
この<1、2、3、4>と<A、B、C、D>の比較をしてみれば、「糖質制限食」のほうが「インスリン・スイッチが作動するカロリー制限食」より、ダイエット効果があることがお解りいただけると思います。
すなわち、糖質を摂取すれば、<1、2、3、4>という体重減少への利点が、全て消えてしまうわけです。
<1、2、3、4>と<A、B、C、D>に関しては、摂取カロリーとは全く無関係の生理学的な事実であり、あくまでも糖質を摂取するか否かが鍵となります。
このように、少なくとも同一カロリーである限りは、糖質制限食が脂肪制限食よりダイエット効果が高いことは、理論的に証明できたと思います。
単純には、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば太るし、下回れば痩せます。
通常のカロリー制限食(高糖質食)なら
<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生>です。
糖質制限食なら
<消費エネルギー=基礎代謝+運動エネルギー+食事誘発熱産生> に加えて、
《肝臓の糖新生でエネルギーを消費+尿中ケトン体でエネルギーを消失》が追加です。
この2つの追加分に関しては、今まで医学界でほとんど知られていなかったと思います。
【疫学的証拠】
①
体重減少に関しては、
2008年のニューイングランド・ジャーナル、イスラエルの研究報告
NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
「低炭水化物食(糖質制限食)が最も体重を減少させ、HDL-Cを増加させた。」
が、長年の食事療法の論争に決着をつけたと思います。
これは、ネットの1個人の意見や仮説ではなく、322人を2年間追跡した権威ある疫学的研究です。
<低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。>
• イスラエルの322人(男性86%)
• (1)低脂肪法(カロリー制限あり)
• (2)オリーブ油の地中海法(カロリー制限あり)
• (3)低炭水化物法(カロリー制限なしのアトキンス式ダイエット)
• 3グループの食事法を2年間経過観察。
• 低炭水化物法が最も体重減少。HDL-Cも増加。
• NENGLJ MED JULY17,2008、 VOL359. NO.3 229-241
体重などを分析した結果、2年後の体重減少幅の平均は
(1)低脂肪法 2.9キロ
(2)地中海法 4.4キロ
(3)低炭水化物法 4.7キロ
となり、
(3)低炭水化物法が最も減少していた。また、善玉コレステロールも増えていた。
②
2007年3月のJAMA(米国医師会雑誌)に、
「the A TO Z Weight Loss Study: a randomized trial.」という論文が発表されました。
アトキンス(Atkins)、ゾーン(Zone)、ラーン(LEARN)、オーニッシュ(Ornish)ダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果をみた研究論文です。
311人の女性を上記4グループに分けて追跡したものです。これら4種のダイエット法は、いずれも米国でポピュラーなものです。
結果は、アトキンス ダイエット( 糖質制限食)が最も、体重を減少させ、HDL-コレステロールを増加、中性脂肪を減少させることが明らかとなりました。 (^O^)
アトキンス ダイエットは低糖質食で私達の 糖質制限食と基本的考えは一緒です。1年間で平均4.7kg減少です。
ゾーン ダイエットはタンパク質・炭水化物・脂質の比率を40:30:30にするというものです。平均1.6kg減少です。
ラーン ダイエットは高炭水化物、低脂肪食です。平均2.6kg減少です。
オーニッシュ ダイエッは菜食主義風のダイエットです。カロリーの10%を脂肪分から、20%をたんぱく質、70%を炭水化物からという割合の食事です。平均2.2kg減症です。最も高炭水化物で、最も低脂肪です。
コレステロ-ルや飽和脂肪酸を多く含む食品は禁止なので、肉は食べられませんが、一部の乳製品(無脂肪のヨーグルトや牛乳、低脂肪チーズ等)や卵白はOKです。魚も禁止です。
また、果物や穀類などの精製されていない炭水化物(糖質+食物繊維)は良いのですが、砂糖などの精製された糖質は制限されます。蜂蜜やアルコールもだめです。玄米や全粒粉のパンを主食として、野菜や果物が中心で、日本の玄米菜食に近いですね。
このようにニューイングランド・ジャーナルと米国医師会雑誌という2つの権威ある医学雑誌に載った論文で、「糖質制限食」が「高糖質低脂質食」より体重減少効果があることが証明されました。
【結論】
理論的にも疫学的にも、体重減少効果に関して糖質制限食のほうが、高糖質低脂質食より有効であることが証明できたと思います。
江部康二
2009年12月04日 (金)
おはようございます。
昨日から、雨がしとしと降り続けている京都です。
さて今回は、マリマリさんからレプチンについてコメント・質問をいただきました。
「09/11/10 マリマリ
レプチンについて
『われら糖尿人・・・』を読ませていただき、大変面白かったので、『主食を抜けば糖尿病はよくなる!』も読みました。私は糖尿病ではありませんが、身近に糖尿病の人がいますし、食事療法には興味があるので。
昨日の朝日新聞の夕刊コラム、「アンチエイジング10歳若返る」で、「脂肪は、体の栄養状態を食欲中枢に伝え、食欲を調節するレプチンと言うホルモンを効きにくくする。同じカロリーの糖質に比べると、太りやすいのだ。」と書いてありました。
本を読んで脂肪より糖質の方が太りやすいと思っていたので、どういうことなのだろうかとわからなくなりました。レプチンの作用は糖質や脂肪の代謝とはまた別の仕組みで働くのでしょうか?
脂肪を摂ると栄養状態がいいと体が判断して、
太りにくくなるのならわかるのですが・・・。」
マリマリさん。
コメントそして本のご購入、ありがとうございます。回答が遅くなってすいません。
レプチンに関してはわかっていることと、まだよくわかってないことがあるようでいろいろ調べていました。
レプチンは、脂肪細胞が分泌するホルモンで、脳の視床下部に作用して満腹感を感じさせ強力に摂食抑制させ、エネルギー消費昂進をもたらし、体重を適正に保つとされています。
一方、ほとんどの肥満者において血中レプチン濃度は、体脂肪量に比例して上昇しています。
すなわち肥満者においては、血中レプチン濃度は高値なのに、レプチン抵抗性による作用不足の状態にあり、肥満していると考えられています。
さまざまな摂食調節因子が発見されいて、摂食促進と抑制に働いて肥満症の発症に関与し、複雑な状態をなしています。
例えば、
摂食促進:副腎皮質ホルモン、ノルアドレナリン、成長ホルモン・・・
摂食抑制:レプチン、インスリン、セロトニン・・・
早食いすると、レプチンが分泌される前にどんどん食べてしまうので、満腹感がなくて、ついつい食べ過ぎてしまい、肥満しやすくなります。しかし、いまのところ、単純に肥満の原因や過程を説明することは困難です。
2009年11月9日の朝日新聞の夕刊コラム
「脂肪は、体の栄養状態を食欲中枢に伝え、食欲を調節するレプチンと言うホルモンを効きにくくする。同じカロリーの糖質に比べると、太りやすいのだ。」
という記事についてですが、??です。(∵)?
「高脂肪食は血中レプチンレベルを上昇させて摂食抑制し体重コントロールに繋がる」
という奈良教育大学のラットの研究がありました。(*)
朝日新聞の記事とは正反対ですね。
ともあれ、糖質制限食VSカロリー制限食(高糖質食)では、糖質制限食のほうが体重減少効果があることは、はっきりしています。
江部康二
(*)
<高脂肪食摂取が血中レプチン濃度に及ぼす影響>
http://near.nara-edu.ac.jp/handle/10105/1358
昨日から、雨がしとしと降り続けている京都です。
さて今回は、マリマリさんからレプチンについてコメント・質問をいただきました。
「09/11/10 マリマリ
レプチンについて
『われら糖尿人・・・』を読ませていただき、大変面白かったので、『主食を抜けば糖尿病はよくなる!』も読みました。私は糖尿病ではありませんが、身近に糖尿病の人がいますし、食事療法には興味があるので。
昨日の朝日新聞の夕刊コラム、「アンチエイジング10歳若返る」で、「脂肪は、体の栄養状態を食欲中枢に伝え、食欲を調節するレプチンと言うホルモンを効きにくくする。同じカロリーの糖質に比べると、太りやすいのだ。」と書いてありました。
本を読んで脂肪より糖質の方が太りやすいと思っていたので、どういうことなのだろうかとわからなくなりました。レプチンの作用は糖質や脂肪の代謝とはまた別の仕組みで働くのでしょうか?
脂肪を摂ると栄養状態がいいと体が判断して、
太りにくくなるのならわかるのですが・・・。」
マリマリさん。
コメントそして本のご購入、ありがとうございます。回答が遅くなってすいません。
レプチンに関してはわかっていることと、まだよくわかってないことがあるようでいろいろ調べていました。
レプチンは、脂肪細胞が分泌するホルモンで、脳の視床下部に作用して満腹感を感じさせ強力に摂食抑制させ、エネルギー消費昂進をもたらし、体重を適正に保つとされています。
一方、ほとんどの肥満者において血中レプチン濃度は、体脂肪量に比例して上昇しています。
すなわち肥満者においては、血中レプチン濃度は高値なのに、レプチン抵抗性による作用不足の状態にあり、肥満していると考えられています。
さまざまな摂食調節因子が発見されいて、摂食促進と抑制に働いて肥満症の発症に関与し、複雑な状態をなしています。
例えば、
摂食促進:副腎皮質ホルモン、ノルアドレナリン、成長ホルモン・・・
摂食抑制:レプチン、インスリン、セロトニン・・・
早食いすると、レプチンが分泌される前にどんどん食べてしまうので、満腹感がなくて、ついつい食べ過ぎてしまい、肥満しやすくなります。しかし、いまのところ、単純に肥満の原因や過程を説明することは困難です。
2009年11月9日の朝日新聞の夕刊コラム
「脂肪は、体の栄養状態を食欲中枢に伝え、食欲を調節するレプチンと言うホルモンを効きにくくする。同じカロリーの糖質に比べると、太りやすいのだ。」
という記事についてですが、??です。(∵)?
「高脂肪食は血中レプチンレベルを上昇させて摂食抑制し体重コントロールに繋がる」
という奈良教育大学のラットの研究がありました。(*)
朝日新聞の記事とは正反対ですね。
ともあれ、糖質制限食VSカロリー制限食(高糖質食)では、糖質制限食のほうが体重減少効果があることは、はっきりしています。
江部康二
(*)
<高脂肪食摂取が血中レプチン濃度に及ぼす影響>
http://near.nara-edu.ac.jp/handle/10105/1358
2009年12月03日 (木)
おはようございます。
新人糖尿人ペサ太郎さんから、嬉しい報告をいただきました。
「09/12/03 新人糖尿人ペサ太郎
タイトルなし
江部先生お返事ありがとうございました。
昨日、病院で採血検査をしてきました。
結果は当日出た項目だけですが
グリコアルブミン・・・19.3(HbA1cに変換すると約6.43という説明でした)
空腹時血糖値・・・100
人間ドック時の数値の HbA1cは半分 空腹時血糖値は3分の1となりました
今後も教育入院や食後の血糖値上昇データ採取目的入院はあるかもしれませんが現状はほぼ正常値となりました
2週間でこの結果に家内共々一安心しております。
最近はふすまパンの味にも慣れて美味しく感じますw
病院の先生にも現状の食生活を続ければOKですねと言われましたが、糖質制限をしていることは未だ告げておりません・・・
まーこれに関してはおいおい考えて時期をみて話すつもりです。
また経過等報告して皆さんの参考になればと思います。
ちなみに家内は妊婦なのですがラカントSを使い食事を作り分けしてくれてますが、胎児や妊婦に与える影響等もしくは妊婦の方の経験談等ありましたらまた機会がある時に教えてください。
家内が二重で食事の準備をしてるのが大変そうなので・・・
では失礼します」
新人糖尿人ペサ太郎さん。
嬉しいコメントありがとうございます。
「グリコアルブミン・・・19.3(HbA1cに変換すると約6.43という説明でした)
空腹時血糖値・・・100
人間ドック時の数値の
HbA1cは半分
空腹時血糖値は3分の1となりました」
素晴らしい改善ですね。
おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
おめでとうと言えば、奥さんもおめでたなのですね。
これまたおめでとうございます。ヾ(^▽^)
妊婦でもラカントSは、何の問題もありません。糖質制限食で妊娠・出産されたかたもおられます。
私の長女も、妊娠中は緩い糖質制限食で体重コントロールして無事出産しました。
妊娠糖尿病になり、糖質制限食で血糖コントロールして、インスリン注射なしで無事出産されたかたも、本ブログで知る限りでも数名以上おられます。
米国在住の方が妊娠糖尿病になり、糖質制限食実践で無事出産というコメントもいただいたことがあります。
イヌイットは、かつて4000年間、糖質制限食で生活し、妊娠・出産です。
そもそも人類は、農耕前の399年間は、狩猟・採集が生業で、やはり糖質制限食で妊娠・出産ですね。
江部康二
新人糖尿人ペサ太郎さんから、嬉しい報告をいただきました。
「09/12/03 新人糖尿人ペサ太郎
タイトルなし
江部先生お返事ありがとうございました。
昨日、病院で採血検査をしてきました。
結果は当日出た項目だけですが
グリコアルブミン・・・19.3(HbA1cに変換すると約6.43という説明でした)
空腹時血糖値・・・100
人間ドック時の数値の HbA1cは半分 空腹時血糖値は3分の1となりました
今後も教育入院や食後の血糖値上昇データ採取目的入院はあるかもしれませんが現状はほぼ正常値となりました
2週間でこの結果に家内共々一安心しております。
最近はふすまパンの味にも慣れて美味しく感じますw
病院の先生にも現状の食生活を続ければOKですねと言われましたが、糖質制限をしていることは未だ告げておりません・・・
まーこれに関してはおいおい考えて時期をみて話すつもりです。
また経過等報告して皆さんの参考になればと思います。
ちなみに家内は妊婦なのですがラカントSを使い食事を作り分けしてくれてますが、胎児や妊婦に与える影響等もしくは妊婦の方の経験談等ありましたらまた機会がある時に教えてください。
家内が二重で食事の準備をしてるのが大変そうなので・・・
では失礼します」
新人糖尿人ペサ太郎さん。
嬉しいコメントありがとうございます。
「グリコアルブミン・・・19.3(HbA1cに変換すると約6.43という説明でした)
空腹時血糖値・・・100
人間ドック時の数値の
HbA1cは半分
空腹時血糖値は3分の1となりました」
素晴らしい改善ですね。
おめでとうございます。(^-^)v(^-^)v
おめでとうと言えば、奥さんもおめでたなのですね。
これまたおめでとうございます。ヾ(^▽^)
妊婦でもラカントSは、何の問題もありません。糖質制限食で妊娠・出産されたかたもおられます。
私の長女も、妊娠中は緩い糖質制限食で体重コントロールして無事出産しました。
妊娠糖尿病になり、糖質制限食で血糖コントロールして、インスリン注射なしで無事出産されたかたも、本ブログで知る限りでも数名以上おられます。
米国在住の方が妊娠糖尿病になり、糖質制限食実践で無事出産というコメントもいただいたことがあります。
イヌイットは、かつて4000年間、糖質制限食で生活し、妊娠・出産です。
そもそも人類は、農耕前の399年間は、狩猟・採集が生業で、やはり糖質制限食で妊娠・出産ですね。
江部康二
2009年12月02日 (水)
おはようございます。
2009年もいよいよ年末です。私も忘年会が目白押しです。
自分が一番やばいですが(=_=;) 、皆さんもお酒の飲み過ぎに注意して下さいね。
さて今回は、きょうすけさんから、1型糖尿病と2型糖尿病についてコメント・質問をいただきました。
「09/11/19 きょうすけ
1型糖尿病、2型糖尿病
江部先生
いつもブログを拝見し勉強させて頂いております。
さて、ランゲルハンス島のβ細胞破壊の件で教えていただきたいことがあります。
糖尿病とはランゲルハンス島のβ細胞の機能低下と認識しておりますが、どの程度まで進行しているかという検査は行えるのでしょうか?
そして、完全に機能しなくなれば1型糖尿病という病名に変わってしまうのでしょうか?
私自身、2型糖尿病と診断され5年ほど経ち、経口薬を服用し糖質制限を心がけておりますがHbA1c:6.8、空腹時血糖145というような状態です。糖質制限の徹底が出来ていないのでしょうか?膵臓が休まっている感じが致しません。
薬を飲む事とは膵臓が休まらないと言う事なのでしょうかね?
また、アドバイスを頂ければと思います。」
きょうすけさん。
コメントありがとうございます。
糖尿病は、血糖を下げるインスリンというホルモンの作用不足によって引き起こされる病気です。
インスリンは、膵臓のβ細胞でつくられ、常時分泌されている基礎分泌と、食事で血糖値が上がった時に分泌される追加分泌があります。
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の二つの要因が合わさって、結果としてインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。
(*)
『インスリン分泌指数(II)』
インスリン追加分泌のうち初期分泌能はインスリン分泌指数でみます。
75g経口ブドウ糖負荷試験を行います。
II=<30分インスリン値-空腹時インスリン値>÷<30分血糖値-空腹時血糖値>
II: insulinogenic index
糖尿病患者ではインスリン分泌指数(II:insulinogenic index)は0.4未満となります。
境界型でも0.4未満の人は将来、糖尿病になりやすいです。
『HOMA-β(ほーまべーたー)』
インスリン分泌機能を評価する指標。
空腹時血糖と空腹時のインスリン値をもとに残存した内因性インスリン分泌能力を推定する式。
HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63) で、
正常値:40-60
(**)
『インスリン』
インスリンには、24時間ずっとベースに少量分泌されている基礎分泌のインスリンと、食後に血糖値が上昇した時に出る、追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
一般的には、基礎分泌のインスリンが低下してくると、早朝空腹時血糖値が上昇してきます。一番多いパターンは、食後高血糖が数年続いたあとに、この状態になります。
ですから、空腹時血糖での健康診断は、食後高血糖を見逃してしまうのであまり良くないのです。
(***)
『HOMA-R=インスリン抵抗性の指標』
HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン濃度÷405
インスリン抵抗性評価のための検査です。
2.5以上が抵抗性あり。1.6以下が正常。
つぎに糖尿病の分類について考えて見ます。
<糖尿病の分類>
さて、1型糖尿病と2型糖尿病、皆さん言葉は聞いたことはあるでしょうが、その実態はというと、案外誤解されていることも多いので、今回は、整理整頓してみます。
実は、私も恥ずかしながら、調べてみるまで知らなかったことが結構ありました。σ(=_=;)ヾ
糖尿病の分類ですが、最近は、従来の
インスリン依存型糖尿病(IDDM)、
インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)
という言い方はしなくなりました。
糖尿病を病因による分類と、現在の状態を表す分類に整理した方が、すっきりするからです。
■病因による分類
①1型糖尿病(従来のIDDMとほぼ一致)
1型糖尿病は、膵β細胞の破壊によりインスリン分泌が枯渇し発症します。小児期に起こることが多いため、小児糖尿病とも呼ばれます。近年、1型糖尿病の多くは、自己免疫機序(免疫の誤作動)により数ヶ月~数年にわたってβ細胞が破壊され、発症することが明らかになってきました(自己免疫性1型糖尿病)。
従って、1型糖尿病は、生活習慣病でも先天性の病気でもありません。過去の何らかのウイルス感染が、免疫の誤作動のきっかけになっている場合が多いのですが、ウイルス感染は、とっくに治った後の出来事ですから、1型糖尿病が感染することはありません。
2型糖尿病ほど色濃い遺伝は関与しませんが、何らかのウィルスに感染しやすい、あるいは、感染後に免疫の誤作動を起こしやすい遺伝的体質はあるようです。欧米のデータでは、1型糖尿病と診断された小児の10~12%のみに、1型糖尿病の一親等の血縁者がいるとされており、一卵性双生児の1型糖尿病同時発生率は、50%以下です。
1型糖尿病の頻度は、日本人では、欧米の白人に比べて明らかに低く、 10~20分の一と言われています。例えば日本の小児の1型糖尿病は、ノルウェーの20分の1、米国の約15分の1です。
なお、自己免疫異常の明らかでない1型糖尿病も存在します(特発性1型糖尿病)。
②2型糖尿病(従来のNIDDMとほぼ一致)
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の二つの要因により、結果としてインスリン作用不足となり、発症する糖尿病です。
インスリン抵抗性とは、肥満などの要因によりインスリンの効きが悪くなることです。例えば、今までは5μU/ml ていどの量のインスリンで筋肉細胞が血糖値を取り込めていたのが、抵抗性があると、10とか20μU/mlの量がないと取り込めなくなるのです。
欧米では、インスリン抵抗性が高い状態の方が主たる原因として多いのですが、日本では、膵臓のインスリン分泌能低下の方が重要な原因となります。これは、インスリン分泌能力が、日本人やアジア人は、欧米白人より弱いことによります。
遺伝的因子と生活習慣が、からみあって発症する生活習慣病です。日本の糖尿病の95%以上は、2型糖尿病です。
欧米人に比べ、日本人は肥満者も少ないのに 2型糖尿病が多いのは、日本人が、民族的に2型糖尿病になりやすい体質(遺伝的素因)を 持っているためと考えられます。
遺伝的素因が日本人と同じ日系2世米国人で、 日本人よりも2~3倍、米国の白人と比べると数倍以上の差で糖尿病が多いといわれています。
親や肉親が糖尿病だと、糖尿病の家族歴がない人に比べて 糖尿病になりやすいことは間違いありません。しかし、遺伝するのは糖尿病そのものではなく、「糖尿病になりやすい体質」です。 この体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、など様々な環境因子が加わってはじめて2型糖尿病が発症すると考えられています。
私、江部康二のように、、両親が2型糖尿病だったら40~50%の確率で2型糖尿病を発症します。
*上記は医学界の共通認識ですが、食べ過ぎに関しては、私は特に精製された糖質の過剰摂取が問題と考えています。
江部康二も糖質制限食を実践する限りは、糖尿人ではなく正常人です。
■糖尿病の状態の表現
①インスリン依存状態
②インスリン非依存状態
普通は、1型糖尿病はインスリン依存状態で、2型糖尿病はインスリン非依存状態かなと、誰でも思いますよね。
でも、事はそれほどシンプルではありません。
例えば1型糖尿病でも、数年かけてゆっくり膵臓のβ細胞が破壊されるタイプであれば、発症後数年は、インスリン非依存状態でコントロールできることもあるわけです。まあ、さすがに10年以上、非依存状態というのはやや困難とは思いますが・・・。
一方、2型糖尿病でも、糖毒状態で悪循環していれば、徐々に膵臓のβ細胞が壊れていくわけですから、10年・20年・30年レベルの年期の入った糖尿病だったら、自前のインスリン分泌がほとんどない患者さんもでてきます。こうなると2型糖尿病でも、インスリン依存状態となるわけです。
また、2型糖尿病の人が感染症、外科的処置などによりインスリン需要が増大する場合も、インスリン注射を必要としますので、一時的なインスリン依存状態といえます。
糖質制限食は、1型糖尿病、2型糖尿病ともに効果があります。
1型糖尿病ではインスリンの量を減らすことが可能になります。
2型糖尿病ではインスリン・経口薬の減量や離脱が可能です。
「私自身、2型糖尿病と診断され5年ほど経ち、経口薬を服用し糖質制限を心がけておりますがHbA1c:6.8、空腹時血糖145というような状態です。
糖質制限の徹底が出来ていないのでしょうか?
膵臓が休まっている感じが致しません。
薬を飲む事とは膵臓が休まらないと言う事なのでしょうかね?」
きょうすけさん、空腹時血糖値がやや高値なので、インスリン基礎分泌がやや低下しています。スーパー糖質制限食でβ細胞に休養を与えて、基礎分泌回復をめざしてください。
主治医と相談されて、β細胞保護作用がある、2009年12月発売のDPP-4阻害剤(ジャヌビア或いはグラクティブ)も選択肢の一つですね。
江部康二
2009年もいよいよ年末です。私も忘年会が目白押しです。
自分が一番やばいですが(=_=;) 、皆さんもお酒の飲み過ぎに注意して下さいね。
さて今回は、きょうすけさんから、1型糖尿病と2型糖尿病についてコメント・質問をいただきました。
「09/11/19 きょうすけ
1型糖尿病、2型糖尿病
江部先生
いつもブログを拝見し勉強させて頂いております。
さて、ランゲルハンス島のβ細胞破壊の件で教えていただきたいことがあります。
糖尿病とはランゲルハンス島のβ細胞の機能低下と認識しておりますが、どの程度まで進行しているかという検査は行えるのでしょうか?
そして、完全に機能しなくなれば1型糖尿病という病名に変わってしまうのでしょうか?
私自身、2型糖尿病と診断され5年ほど経ち、経口薬を服用し糖質制限を心がけておりますがHbA1c:6.8、空腹時血糖145というような状態です。糖質制限の徹底が出来ていないのでしょうか?膵臓が休まっている感じが致しません。
薬を飲む事とは膵臓が休まらないと言う事なのでしょうかね?
また、アドバイスを頂ければと思います。」
きょうすけさん。
コメントありがとうございます。
糖尿病は、血糖を下げるインスリンというホルモンの作用不足によって引き起こされる病気です。
インスリンは、膵臓のβ細胞でつくられ、常時分泌されている基礎分泌と、食事で血糖値が上がった時に分泌される追加分泌があります。
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の二つの要因が合わさって、結果としてインスリン作用不足となり、糖尿病を発症します。
(*)
『インスリン分泌指数(II)』
インスリン追加分泌のうち初期分泌能はインスリン分泌指数でみます。
75g経口ブドウ糖負荷試験を行います。
II=<30分インスリン値-空腹時インスリン値>÷<30分血糖値-空腹時血糖値>
II: insulinogenic index
糖尿病患者ではインスリン分泌指数(II:insulinogenic index)は0.4未満となります。
境界型でも0.4未満の人は将来、糖尿病になりやすいです。
『HOMA-β(ほーまべーたー)』
インスリン分泌機能を評価する指標。
空腹時血糖と空腹時のインスリン値をもとに残存した内因性インスリン分泌能力を推定する式。
HOMA-β=360×空腹時インスリン値(μU/ml)÷(空腹時血糖値mg/ml-63) で、
正常値:40-60
(**)
『インスリン』
インスリンには、24時間ずっとベースに少量分泌されている基礎分泌のインスリンと、食後に血糖値が上昇した時に出る、追加分泌のインスリンがあります。
追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。
一般的には、基礎分泌のインスリンが低下してくると、早朝空腹時血糖値が上昇してきます。一番多いパターンは、食後高血糖が数年続いたあとに、この状態になります。
ですから、空腹時血糖での健康診断は、食後高血糖を見逃してしまうのであまり良くないのです。
(***)
『HOMA-R=インスリン抵抗性の指標』
HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン濃度÷405
インスリン抵抗性評価のための検査です。
2.5以上が抵抗性あり。1.6以下が正常。
つぎに糖尿病の分類について考えて見ます。
<糖尿病の分類>
さて、1型糖尿病と2型糖尿病、皆さん言葉は聞いたことはあるでしょうが、その実態はというと、案外誤解されていることも多いので、今回は、整理整頓してみます。
実は、私も恥ずかしながら、調べてみるまで知らなかったことが結構ありました。σ(=_=;)ヾ
糖尿病の分類ですが、最近は、従来の
インスリン依存型糖尿病(IDDM)、
インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)
という言い方はしなくなりました。
糖尿病を病因による分類と、現在の状態を表す分類に整理した方が、すっきりするからです。
■病因による分類
①1型糖尿病(従来のIDDMとほぼ一致)
1型糖尿病は、膵β細胞の破壊によりインスリン分泌が枯渇し発症します。小児期に起こることが多いため、小児糖尿病とも呼ばれます。近年、1型糖尿病の多くは、自己免疫機序(免疫の誤作動)により数ヶ月~数年にわたってβ細胞が破壊され、発症することが明らかになってきました(自己免疫性1型糖尿病)。
従って、1型糖尿病は、生活習慣病でも先天性の病気でもありません。過去の何らかのウイルス感染が、免疫の誤作動のきっかけになっている場合が多いのですが、ウイルス感染は、とっくに治った後の出来事ですから、1型糖尿病が感染することはありません。
2型糖尿病ほど色濃い遺伝は関与しませんが、何らかのウィルスに感染しやすい、あるいは、感染後に免疫の誤作動を起こしやすい遺伝的体質はあるようです。欧米のデータでは、1型糖尿病と診断された小児の10~12%のみに、1型糖尿病の一親等の血縁者がいるとされており、一卵性双生児の1型糖尿病同時発生率は、50%以下です。
1型糖尿病の頻度は、日本人では、欧米の白人に比べて明らかに低く、 10~20分の一と言われています。例えば日本の小児の1型糖尿病は、ノルウェーの20分の1、米国の約15分の1です。
なお、自己免疫異常の明らかでない1型糖尿病も存在します(特発性1型糖尿病)。
②2型糖尿病(従来のNIDDMとほぼ一致)
インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の二つの要因により、結果としてインスリン作用不足となり、発症する糖尿病です。
インスリン抵抗性とは、肥満などの要因によりインスリンの効きが悪くなることです。例えば、今までは5μU/ml ていどの量のインスリンで筋肉細胞が血糖値を取り込めていたのが、抵抗性があると、10とか20μU/mlの量がないと取り込めなくなるのです。
欧米では、インスリン抵抗性が高い状態の方が主たる原因として多いのですが、日本では、膵臓のインスリン分泌能低下の方が重要な原因となります。これは、インスリン分泌能力が、日本人やアジア人は、欧米白人より弱いことによります。
遺伝的因子と生活習慣が、からみあって発症する生活習慣病です。日本の糖尿病の95%以上は、2型糖尿病です。
欧米人に比べ、日本人は肥満者も少ないのに 2型糖尿病が多いのは、日本人が、民族的に2型糖尿病になりやすい体質(遺伝的素因)を 持っているためと考えられます。
遺伝的素因が日本人と同じ日系2世米国人で、 日本人よりも2~3倍、米国の白人と比べると数倍以上の差で糖尿病が多いといわれています。
親や肉親が糖尿病だと、糖尿病の家族歴がない人に比べて 糖尿病になりやすいことは間違いありません。しかし、遺伝するのは糖尿病そのものではなく、「糖尿病になりやすい体質」です。 この体質を持った人に、食べ過ぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、など様々な環境因子が加わってはじめて2型糖尿病が発症すると考えられています。
私、江部康二のように、、両親が2型糖尿病だったら40~50%の確率で2型糖尿病を発症します。
*上記は医学界の共通認識ですが、食べ過ぎに関しては、私は特に精製された糖質の過剰摂取が問題と考えています。
江部康二も糖質制限食を実践する限りは、糖尿人ではなく正常人です。
■糖尿病の状態の表現
①インスリン依存状態
②インスリン非依存状態
普通は、1型糖尿病はインスリン依存状態で、2型糖尿病はインスリン非依存状態かなと、誰でも思いますよね。
でも、事はそれほどシンプルではありません。
例えば1型糖尿病でも、数年かけてゆっくり膵臓のβ細胞が破壊されるタイプであれば、発症後数年は、インスリン非依存状態でコントロールできることもあるわけです。まあ、さすがに10年以上、非依存状態というのはやや困難とは思いますが・・・。
一方、2型糖尿病でも、糖毒状態で悪循環していれば、徐々に膵臓のβ細胞が壊れていくわけですから、10年・20年・30年レベルの年期の入った糖尿病だったら、自前のインスリン分泌がほとんどない患者さんもでてきます。こうなると2型糖尿病でも、インスリン依存状態となるわけです。
また、2型糖尿病の人が感染症、外科的処置などによりインスリン需要が増大する場合も、インスリン注射を必要としますので、一時的なインスリン依存状態といえます。
糖質制限食は、1型糖尿病、2型糖尿病ともに効果があります。
1型糖尿病ではインスリンの量を減らすことが可能になります。
2型糖尿病ではインスリン・経口薬の減量や離脱が可能です。
「私自身、2型糖尿病と診断され5年ほど経ち、経口薬を服用し糖質制限を心がけておりますがHbA1c:6.8、空腹時血糖145というような状態です。
糖質制限の徹底が出来ていないのでしょうか?
膵臓が休まっている感じが致しません。
薬を飲む事とは膵臓が休まらないと言う事なのでしょうかね?」
きょうすけさん、空腹時血糖値がやや高値なので、インスリン基礎分泌がやや低下しています。スーパー糖質制限食でβ細胞に休養を与えて、基礎分泌回復をめざしてください。
主治医と相談されて、β細胞保護作用がある、2009年12月発売のDPP-4阻害剤(ジャヌビア或いはグラクティブ)も選択肢の一つですね。
江部康二
2009年12月01日 (火)
おはようございます。
今回は、新人糖尿人ペサ太郎さんから、ペットボトル症候群と糖質制限食について、貴重な体験のコメントをいただきました。
「先生はじめまして。
今年34歳になった新人糖尿人です。
今年の四月には血糖値、HgA1cの数値も正常だったのですが、夏に向けて5月からダイエットを兼ねて私生活、仕事に自転車と食事制限を取り入れ7月までで82kg→75kgまで頑張りました。
しかし、11月11日に人間ドッグで検診中に呼ばれて即入院してくださいと・・・
空腹時血糖 298
食後60分 529
〃120分 560
HgA1c 12.6
という結果でした・・・
何故、酒も煙草もしない私が・・・ここ最近食事も普段の生活も節制してたのにこんな結果にと目の前が真っ暗になりました・・・
病院では急激に糖尿になったため1型が疑われましたが、本日、GAD抗体の検査の結果おそらく2型であろうと言われました。今後精密な検査もありますがひとまずは安心というところです。
糖尿になったと思われる原因は8月~9月末までに健康と、筋肉を柔らかくすると思い毎日飲んでいた100%グレープフルーツジュース一日750mlを1本摂取と果物の食べ過ぎによるペットボトル症候群のようなものかなと?
ちなみに人間ドッグの病院は糖尿内科の専門医がいなかったので翌日、専門医のいる別の病院に行きました。
医師には仕事の引き継ぎと出張もあるし、できれば入院はしたくないと伝えたところ、入院はGADの結果(外注検査の為数日かかる為)が出てからでいいし、すぐどうこうはならないからといわれ拍子抜けしてしまい、併せて病気に対する医師の対応と判断の違いに不安を抱き、ネットで血眼になって糖尿病について調べているところ、先生のこのブログと糖質制限食に巡り逢いました。
11月14日の夜から本日の採血検査、尿検査(採血は私が病院に希望)までブログさ賢人たる先輩糖尿人の方々を参考にして毎日30分の散歩と糖質制限食と若干のサプリと義母の特製ところてんで頑張り(以外と楽しくw)検査に挑んだところ、朝食後(当然糖質制限食)食後3時間後だったにも関わらず、血糖値が140ジャストという結果でした
病院の先生も1週間も経たないのにこのような結果に大変驚いておられ、
「一体何したの?」
って言われれたんですが、野菜多めで先生(診察していただいている)のいうとおりカロリー控えめでバランス良く食事しただけですよって言いましたw
何故かというと今週月曜日に糖質制限食についての見解を聞きに病院に行ったら全否定されたもんで・・・ww
しかし私はできれば薬にも頼りたくないですし、まだ自分は若いし、すい臓は復活すると信じてます!
ただ2カ月フルーツジュースを絶え間なく摂取し、膵臓に無理させすぎたので拗ねてるだけだと・・・
とにかく先生のおっしゃるように食後の急激な血糖値の上昇や疲れているすい臓を鞭打つのが良くないのは利にかなっていると思いましたので、これからも私は自分がいいと思った糖質制限を実践していこうと思います!
ただ今後迷走もするでしょうし、問題もあると思いますし、医師や栄養士の指示も参考にはしますが、次回12月4日に再度hgA1cを含む再検査をして、インスリン等の薬を使用せずにすむよう頑張りたいと思います。
また今後とも勉強して限りなく正常な数値にしてうまく糖尿病と付き合っていこうと思います。
江部先生の【ドクター江部の糖尿病徒然日記】 と糖質制限食に出会えたことに感謝をと思い書き込みさせていただきました。
今後とも我々糖尿人の船頭になってください。
2009/11/18(Wed) 22:51 | URL | 新人糖尿人ペサ太郎」
新人糖尿人ペサ太郎さん。
コメントありがとうございます。
「11月11日 人間ドック
空腹時血糖 298mg/dl
食後60分 529
〃120分 560
HbA1c 12.6%」
「その後1週間足らずで、朝食後(当然糖質制限食)食後3時間後だったにも関わらず、血糖値が140mg/dl ジャストという結果でした。」
これはとても素晴らしい改善です。
入院せずにすんで、良かったですね。(^-^)v(^-^)v
危機的状況は、完全に脱出できていますよ。
11月11日の人間ドックの検査データは、ペサ太郎さんの仰有る通り、ペットボトル症候群だったと考えられます。
人間ドックがたまたまあって、運が良かったです。
知らずに同じような食生活を続けていたら、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、意識の混濁や昏睡に陥るケースもありますので・・・。
「8月~9月末までに健康と、筋肉を柔らかくすると思い毎日飲んでいた100%グレープフルーツジュース一日750mlを1本摂取と果物の食べ過ぎ」
確かにこれが約2ヶ月毎日続いたなら、典型的ペットボトル症候群になってもおかしくないです。
ペットボトル症候群の場合、ごく短期間に発症しますので、膵臓のβ細胞は疲弊しているだけで、壊れている細胞はまだほとんどないと思います。
従って、スーパー糖質制限食を実践していけば、食後のインスリン追加分泌はほとんど必要ないので、膵臓のβ細胞はしっかり休養できます。
わずか、1週間足らずで朝食後3時間の血糖値が140mgに改善していますので、既にβ細胞がかなり回復してきていますね。
34才とお若いですので、このまましっかりスーパー糖質制限食を続けていかれれば、経口血糖降下薬やインスリンはなしでコントロール良好となる可能性が極めて高いですよ。自信を持って下さいね。
とりあえずスーパー糖質制限食で下記を目指して下さい。
【糖尿人の目標】
糖尿病合併症予防のために
① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満
*ペットボトル症候群
ペットボトルを持ち歩いたりして、清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと糖尿病の素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が、このように吸収されやすい糖質を多量に摂取していると、飲む度に血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されるのですが、ついにはインスリンの供給が追いつかなくなり血糖値が高くなります。
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となります。それが続けば、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
この様なときは、緊急入院して点滴で脱水を補正し、インスリン注射を一日3回して、血糖値をコントロールします。
コントロールできれば糖毒状態は急速に改善し、インスリン分泌能力も回復することがほとんどです。
**糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
江部康二
今回は、新人糖尿人ペサ太郎さんから、ペットボトル症候群と糖質制限食について、貴重な体験のコメントをいただきました。
「先生はじめまして。
今年34歳になった新人糖尿人です。
今年の四月には血糖値、HgA1cの数値も正常だったのですが、夏に向けて5月からダイエットを兼ねて私生活、仕事に自転車と食事制限を取り入れ7月までで82kg→75kgまで頑張りました。
しかし、11月11日に人間ドッグで検診中に呼ばれて即入院してくださいと・・・
空腹時血糖 298
食後60分 529
〃120分 560
HgA1c 12.6
という結果でした・・・
何故、酒も煙草もしない私が・・・ここ最近食事も普段の生活も節制してたのにこんな結果にと目の前が真っ暗になりました・・・
病院では急激に糖尿になったため1型が疑われましたが、本日、GAD抗体の検査の結果おそらく2型であろうと言われました。今後精密な検査もありますがひとまずは安心というところです。
糖尿になったと思われる原因は8月~9月末までに健康と、筋肉を柔らかくすると思い毎日飲んでいた100%グレープフルーツジュース一日750mlを1本摂取と果物の食べ過ぎによるペットボトル症候群のようなものかなと?
ちなみに人間ドッグの病院は糖尿内科の専門医がいなかったので翌日、専門医のいる別の病院に行きました。
医師には仕事の引き継ぎと出張もあるし、できれば入院はしたくないと伝えたところ、入院はGADの結果(外注検査の為数日かかる為)が出てからでいいし、すぐどうこうはならないからといわれ拍子抜けしてしまい、併せて病気に対する医師の対応と判断の違いに不安を抱き、ネットで血眼になって糖尿病について調べているところ、先生のこのブログと糖質制限食に巡り逢いました。
11月14日の夜から本日の採血検査、尿検査(採血は私が病院に希望)までブログさ賢人たる先輩糖尿人の方々を参考にして毎日30分の散歩と糖質制限食と若干のサプリと義母の特製ところてんで頑張り(以外と楽しくw)検査に挑んだところ、朝食後(当然糖質制限食)食後3時間後だったにも関わらず、血糖値が140ジャストという結果でした
病院の先生も1週間も経たないのにこのような結果に大変驚いておられ、
「一体何したの?」
って言われれたんですが、野菜多めで先生(診察していただいている)のいうとおりカロリー控えめでバランス良く食事しただけですよって言いましたw
何故かというと今週月曜日に糖質制限食についての見解を聞きに病院に行ったら全否定されたもんで・・・ww
しかし私はできれば薬にも頼りたくないですし、まだ自分は若いし、すい臓は復活すると信じてます!
ただ2カ月フルーツジュースを絶え間なく摂取し、膵臓に無理させすぎたので拗ねてるだけだと・・・
とにかく先生のおっしゃるように食後の急激な血糖値の上昇や疲れているすい臓を鞭打つのが良くないのは利にかなっていると思いましたので、これからも私は自分がいいと思った糖質制限を実践していこうと思います!
ただ今後迷走もするでしょうし、問題もあると思いますし、医師や栄養士の指示も参考にはしますが、次回12月4日に再度hgA1cを含む再検査をして、インスリン等の薬を使用せずにすむよう頑張りたいと思います。
また今後とも勉強して限りなく正常な数値にしてうまく糖尿病と付き合っていこうと思います。
江部先生の【ドクター江部の糖尿病徒然日記】 と糖質制限食に出会えたことに感謝をと思い書き込みさせていただきました。
今後とも我々糖尿人の船頭になってください。
2009/11/18(Wed) 22:51 | URL | 新人糖尿人ペサ太郎」
新人糖尿人ペサ太郎さん。
コメントありがとうございます。
「11月11日 人間ドック
空腹時血糖 298mg/dl
食後60分 529
〃120分 560
HbA1c 12.6%」
「その後1週間足らずで、朝食後(当然糖質制限食)食後3時間後だったにも関わらず、血糖値が140mg/dl ジャストという結果でした。」
これはとても素晴らしい改善です。
入院せずにすんで、良かったですね。(^-^)v(^-^)v
危機的状況は、完全に脱出できていますよ。
11月11日の人間ドックの検査データは、ペサ太郎さんの仰有る通り、ペットボトル症候群だったと考えられます。
人間ドックがたまたまあって、運が良かったです。
知らずに同じような食生活を続けていたら、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、意識の混濁や昏睡に陥るケースもありますので・・・。
「8月~9月末までに健康と、筋肉を柔らかくすると思い毎日飲んでいた100%グレープフルーツジュース一日750mlを1本摂取と果物の食べ過ぎ」
確かにこれが約2ヶ月毎日続いたなら、典型的ペットボトル症候群になってもおかしくないです。
ペットボトル症候群の場合、ごく短期間に発症しますので、膵臓のβ細胞は疲弊しているだけで、壊れている細胞はまだほとんどないと思います。
従って、スーパー糖質制限食を実践していけば、食後のインスリン追加分泌はほとんど必要ないので、膵臓のβ細胞はしっかり休養できます。
わずか、1週間足らずで朝食後3時間の血糖値が140mgに改善していますので、既にβ細胞がかなり回復してきていますね。
34才とお若いですので、このまましっかりスーパー糖質制限食を続けていかれれば、経口血糖降下薬やインスリンはなしでコントロール良好となる可能性が極めて高いですよ。自信を持って下さいね。
とりあえずスーパー糖質制限食で下記を目指して下さい。
【糖尿人の目標】
糖尿病合併症予防のために
① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満
*ペットボトル症候群
ペットボトルを持ち歩いたりして、清涼飲料水を1日2~3リットル毎日飲み続ける人がいます。
もともと糖尿病の素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が、このように吸収されやすい糖質を多量に摂取していると、飲む度に血糖値が上昇してインスリンが追加分泌されるのですが、ついにはインスリンの供給が追いつかなくなり血糖値が高くなります。
一旦血糖値が高くなると糖毒状態となります。それが続けば、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態になり、ものの1~2週間で意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。
この様なときは、緊急入院して点滴で脱水を補正し、インスリン注射を一日3回して、血糖値をコントロールします。
コントロールできれば糖毒状態は急速に改善し、インスリン分泌能力も回復することがほとんどです。
**糖毒
① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→細胞レベルでのインスリン抵抗性増大
高血糖があると①と②が体内で生じます。インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。
≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫
この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。
なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。
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