2009年05月01日 (金)
こんにちは。
5月は、大好きな季節です。新緑と陽光と澄んだ空気に囲まれた高雄病院で、気分良くブログを書いてます。
さて今回は、たかさんからコメントをいただきました。
「糖尿病13年放置して
毎日、江部先生のブログを感謝しながら読ませて頂いています。
本当にありがとうございます。
私は、13年前糖尿病を宣告(空腹時血糖値233)されましたが仕事も遊びも忙しく放置してしまいました。昨年8月、目の霞があり忘れていた糖尿病が悪化したと思い病院へいきました。(何度か目の出血がありました)
結果は 空腹時血糖 204
HbA1c 10.1
網膜の初期病変(レーザーによる治療はありません)
そこから幸いにも先生のブログに出会い糖質制限と運動を始め現在に至っております。
運動は2~3分の筋トレとストレッチのセットを5~6回/日です。
53歳 男 BMI20
20.8 20.9 20.10 21.01 21.03
空腹時血糖値 204 156 142 147 143
HbA1c 10.1 9.0 7.5 6.7 6.6
ALP 324 305 277 253
(ALPはなぜか糖質制限を始めてから下りつずけています)
これは、膵臓のβ細胞が修復されているのかと? 希望的観測です。
H21.01 からは空腹時血糖値が下がらないため、スーパー糖質制限に切り替えました。
H21.03からは、空腹時血糖値とHbA1cの検査のみなのです。従いまして、インスリン値やケトン体、インスリン抵抗性などは解りません。(検査未経験です)
糖質制限で感じたこと
・空腹時血糖、HbA1c、ALPが顕著に下がります。
・代謝が上がったのか、皮膚のきめが細かくなり、毛髪が太くなりました。
・多飲、頻尿が改善されました。
今後はスーパー糖質制限を続け 140以下 6%前半を目指します。
本当にありがとうございました。
たか | 2009.04.29(水) 」
たかさん。コメントありがとうございます。
13年間放置されたわりには、空腹時血糖値もHbA1cも速やかに改善していますね。
糖尿病と診断がついた時点で、膵臓のインスリンをつくるβ細胞は、
①健常なもの
②疲弊しているもの
③既に死滅しているもの
の3種類に分けることができます。
③が2~3割を超えてくると、基礎分泌のインスリンが絶対的に不足するので、糖質制限食を実践しても早朝空腹時血糖値が、常に高値となります。
たかさんは、糖質制限食で、早朝空腹時血糖値204mg→143mgまで改善してますので、
②の細胞が回復してきていると思われます。
今後スーパー糖質制限食で、②の細胞がどこまで良くなるかがポイントですね。
スーパー糖質制限食なら、食後高血糖が改善して、まずは「糖毒」(*)が解除されます。
そして、食後高血糖が改善すればインスリン追加分泌がごく少量で済むので、膵臓のβ細胞は休養することができます。この二つの機序により、②の疲弊した細胞が回復してくるのです。
まずは140mg未満が目標で、動脈硬化の合併症が減ります。
126mg未満になれば、境界型でもっと合併症が減ります。110mg未満なら正常です。
高雄病院に入院された糖尿人で、入院時空腹時血糖値が200mgを超えていたのが、糖毒が解除され、2週間ぐらいで疲弊していたβ細胞が回復し、110mg未満となることがあります。たかさんもそうなればいいですね。
一方、入院して徹底的にスーパー糖質制限食を14日間実践しても、どうしても140mg未満とならない糖尿人もおられます。
この場合は、β細胞が一定以上壊れていて、物理機械的に基礎分泌インスリンが不足しているので、ランタスかレベミルで基礎分泌インスリンを補充する場合もあります。
ALP は膵臓とは関係なくて、胆道や骨の病気で高値となりますが、たかさんの場合、軽度高値だったのが正常値になったのでしょうか。
糖質制限食で代謝全てが安定して、自然治癒力も高まるので、ともあれ良いことと思います。
「糖質制限で感じたこと
・空腹時血糖、HbA1c、ALPが顕著に下がります。
・代謝が上がったのか、皮膚のきめが細かくなり、毛髪が太くなりました。
・多飲、頻尿が改善されました。」
糖質制限食で、血糖値はリアルタイムに改善し、HbA1cも月に1~2%改善します。代謝全てが改善し血液サラサラになし、毛細血管にいたるまで血流が良くなるので肌もしっとりし、毛髪も太くなることが多いですね。高血糖が改善するので、多飲、頻尿も良くなります。
たかさん、糖尿病合併症予防のためには、下記の目標達成を目指して美味しく楽しく末永く糖質制限食をお続け下さいね。
【糖尿人の目標】
① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満
(*)糖毒
一旦、高血糖になってしまうと、
① 高血糖により膵臓のβ細胞(インスリンを分泌)が直接ダメージを受ける。
② 高血糖により、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)
①②により高血糖→「インスリン分泌低下+インスリン抵抗性増大」→高血糖
という繰り返しを生じますが、この悪循環のことを糖毒といい、糖尿病悪化の大きな要因となっています。
江部康二
5月は、大好きな季節です。新緑と陽光と澄んだ空気に囲まれた高雄病院で、気分良くブログを書いてます。
さて今回は、たかさんからコメントをいただきました。
「糖尿病13年放置して
毎日、江部先生のブログを感謝しながら読ませて頂いています。
本当にありがとうございます。
私は、13年前糖尿病を宣告(空腹時血糖値233)されましたが仕事も遊びも忙しく放置してしまいました。昨年8月、目の霞があり忘れていた糖尿病が悪化したと思い病院へいきました。(何度か目の出血がありました)
結果は 空腹時血糖 204
HbA1c 10.1
網膜の初期病変(レーザーによる治療はありません)
そこから幸いにも先生のブログに出会い糖質制限と運動を始め現在に至っております。
運動は2~3分の筋トレとストレッチのセットを5~6回/日です。
53歳 男 BMI20
20.8 20.9 20.10 21.01 21.03
空腹時血糖値 204 156 142 147 143
HbA1c 10.1 9.0 7.5 6.7 6.6
ALP 324 305 277 253
(ALPはなぜか糖質制限を始めてから下りつずけています)
これは、膵臓のβ細胞が修復されているのかと? 希望的観測です。
H21.01 からは空腹時血糖値が下がらないため、スーパー糖質制限に切り替えました。
H21.03からは、空腹時血糖値とHbA1cの検査のみなのです。従いまして、インスリン値やケトン体、インスリン抵抗性などは解りません。(検査未経験です)
糖質制限で感じたこと
・空腹時血糖、HbA1c、ALPが顕著に下がります。
・代謝が上がったのか、皮膚のきめが細かくなり、毛髪が太くなりました。
・多飲、頻尿が改善されました。
今後はスーパー糖質制限を続け 140以下 6%前半を目指します。
本当にありがとうございました。
たか | 2009.04.29(水) 」
たかさん。コメントありがとうございます。
13年間放置されたわりには、空腹時血糖値もHbA1cも速やかに改善していますね。
糖尿病と診断がついた時点で、膵臓のインスリンをつくるβ細胞は、
①健常なもの
②疲弊しているもの
③既に死滅しているもの
の3種類に分けることができます。
③が2~3割を超えてくると、基礎分泌のインスリンが絶対的に不足するので、糖質制限食を実践しても早朝空腹時血糖値が、常に高値となります。
たかさんは、糖質制限食で、早朝空腹時血糖値204mg→143mgまで改善してますので、
②の細胞が回復してきていると思われます。
今後スーパー糖質制限食で、②の細胞がどこまで良くなるかがポイントですね。
スーパー糖質制限食なら、食後高血糖が改善して、まずは「糖毒」(*)が解除されます。
そして、食後高血糖が改善すればインスリン追加分泌がごく少量で済むので、膵臓のβ細胞は休養することができます。この二つの機序により、②の疲弊した細胞が回復してくるのです。
まずは140mg未満が目標で、動脈硬化の合併症が減ります。
126mg未満になれば、境界型でもっと合併症が減ります。110mg未満なら正常です。
高雄病院に入院された糖尿人で、入院時空腹時血糖値が200mgを超えていたのが、糖毒が解除され、2週間ぐらいで疲弊していたβ細胞が回復し、110mg未満となることがあります。たかさんもそうなればいいですね。
一方、入院して徹底的にスーパー糖質制限食を14日間実践しても、どうしても140mg未満とならない糖尿人もおられます。
この場合は、β細胞が一定以上壊れていて、物理機械的に基礎分泌インスリンが不足しているので、ランタスかレベミルで基礎分泌インスリンを補充する場合もあります。
ALP は膵臓とは関係なくて、胆道や骨の病気で高値となりますが、たかさんの場合、軽度高値だったのが正常値になったのでしょうか。
糖質制限食で代謝全てが安定して、自然治癒力も高まるので、ともあれ良いことと思います。
「糖質制限で感じたこと
・空腹時血糖、HbA1c、ALPが顕著に下がります。
・代謝が上がったのか、皮膚のきめが細かくなり、毛髪が太くなりました。
・多飲、頻尿が改善されました。」
糖質制限食で、血糖値はリアルタイムに改善し、HbA1cも月に1~2%改善します。代謝全てが改善し血液サラサラになし、毛細血管にいたるまで血流が良くなるので肌もしっとりし、毛髪も太くなることが多いですね。高血糖が改善するので、多飲、頻尿も良くなります。
たかさん、糖尿病合併症予防のためには、下記の目標達成を目指して美味しく楽しく末永く糖質制限食をお続け下さいね。
【糖尿人の目標】
① 空腹時血糖値140mg/dl未満→126mg/dl未満→さらには110mg/dl未満
② 食後2時間血糖値180mg/dlmg/dl未満→さらには140mg/dl未満
③ 理想的には食後1時間血糖値180mg/dl未満
④ HbA1c6.5%未満→さらには5.8%未満
(*)糖毒
一旦、高血糖になってしまうと、
① 高血糖により膵臓のβ細胞(インスリンを分泌)が直接ダメージを受ける。
② 高血糖により、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)
①②により高血糖→「インスリン分泌低下+インスリン抵抗性増大」→高血糖
という繰り返しを生じますが、この悪循環のことを糖毒といい、糖尿病悪化の大きな要因となっています。
江部康二