糖質制限食と体重減少効果

おはようございます。今朝の京都はどんより曇っています。

今日は、午後から雑誌の取材です。高雄病院栄養部の協力を得て、糖質制限食の写真も撮影します。テーマは「糖質制限食と体重減少効果」です。

今回のブログ、すかんぴんさんから「体重が増加する」とのコメント・質問をいただきましたので、丁度良いタイミングでした。

『血液検査の結果が出ました。
 こん◎◎は。
江部先生の本を読んで始めた「糖質制限食」も3ヶ月が経ち、米飯が無くても気にならなくなりました。(まだ、お菓子の類を食べてしまいますが、できるだけ少なくするようにしています。)
 先日の検査結果(血糖値+肝機能他)は以下の通りでした。
GLU     105 
GOT     16
GPT      25 
γ−GOT   26   
T−CHO  149 
TG      56 
T−BIL   0.9 
Amy     45
(9/11現在 HbA1c 4.9)

今回は膵臓の状態を見てみよう、ということでアミラーゼのチェックもしてみたのですが、これも普通以下。実は、入院時にこの数値が400を超えており、胃潰瘍・十二指腸潰瘍→膵炎→高血糖となった可能性も指摘されました。
ただ、血液検査の数値はよくても体重の増加傾向が著しく、最近の悩みの種です。野菜を食べている割には便秘もあります。薬は相変わらずスターシスとベイスンの併用です。
糖質を避けて野菜を多めにしているんですが・・・。
どうしたもんでしょうか??
   
by すかんぴん 2008/09/29』


すかんぴんさん。コメントありがとうございます。

私も体重増加に悩んだ時期がありますので、お気持ちよくわかりますよ。

さて、「同一カロリーの摂取であれば、何を食べても減量効果は変わらない」という<カロリー神話>は、大多数の医師・栄養士において現在も根強い信仰のようになっています。

私もかつてはカロリー神話を信じていましたが、人体の生理・代謝を系統的に理論的に考察してみると、はっきり間違いということがわかりました。

まず私自身の体験ですが、42〜43歳ごろから体重は徐々に増加し腹回りも順調に育っていきました。

このごろは週2回のテニスの帰りにスポーツジムにもよって自転車こぎや腹筋・背筋運動もやってましたが、なぜかしっかり摘めるお肉が増えているので筋肉増強ではなく脂肪増強に間違いありません。

食事は、主食は玄米や胚芽米で、おかずは野菜や豆腐や魚が中心で、油脂や動物性の肉は極力控えて、カロリーにも注意して、いわゆる「ヘルシー食」を実践していました。

食事も運動も、一般の中年男性に比べれば、はるかに健康的だったのに、「何故だ!!」戸惑いと憤りが湧いてくるものの誰のせいでもありませんし現実は厳しいものでした。
  
2002年、52歳で糖尿病発覚時にはとうとう体重67kgになって、血圧は160/100、腹囲は86cmと、メタボリック・シンドロームの診断基準を見事に満たしていました。HbA1cは6.3%、身長は167cm。

ここに至り、2002年6月からスーパー糖質制限食を開始しました。

その結果半年間の糖質制限食で、体重は56kgにおち、血圧も120/70、HbA1Cも4.9%と改善しました。メタボリック・シンドロームも解消しました。

糖質制限食になって、それまで控えていたビーフステーキなど脂質たっぷりの食品をよく食べるようになったので「ヘルシー食」時代と同等以上にカロリーは摂取していますがこの成果です。

お酒の量も全く同等に飲んでいますが、「純米酒とエビスビール」から、「焼酎と赤ワイン」に完全に切り替えました。赤ワインは例外として、「醸造酒」→「蒸留酒」への変更です。

私一人の成功体験のみ語っても、説得力が弱いので、糖質制限食で減量できるメカニズムを生理学・生化学を駆使して理論的に考察してみましょう。

カロリー制限食と糖質制限食では、痩せる効果に大きな差があるのですが、「糖質制限食」でやせるメカニズムに関しては、以下の四つの要素が重要です。

糖質制限食」では、糖質を摂取しないので
1 肥満ホルモン(追加分泌インスリン**)がほとんどでない。
2 体脂肪が常に燃えている。
3 血中のケトン体値が高まり、尿中にカロリーと共に生理的に排泄される。
4 肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われそれに高エネルギーが消費される。

一方、従来の「カロリー制限食」では、糖質を摂取するので
A 血糖値が上昇して肥満ホルモン(追加分泌インスリン)がたっぷり分泌される。
B 体脂肪は燃えなくなり、血糖値が中性脂肪に変わり蓄積される。
C ケトン体は尿中に出なくなる。
D  肝臓の糖新生はストップする。

この<1、2、3、4>と<A、B、C、D>の比較をしてみれば、「糖質制限食」のほうが「インスリン・スイッチが作動するカロリー制限食」より、ダイエット効果があることがお解りいただけると思います。

<1、2、3、4>に関しては、摂取カロリーとは全く無関係の生理学的な事実であり、あくまでも糖質を摂取するか否かが鍵となります。

このように、少なくとも同一カロリーである限りは、糖質制限食が脂肪制限食よりダイエット効果が高いことは、理論的に証明できたと思います。

すかんぴんさん、今のすかんぴんさんのデータなら糖質制限食を実践されれば、スターシスもベイスンも必要ないと思いますよ。スーパー糖質制限食なら体重も減ると思います。主治医とよく相談されて薬の中止を考慮されては如何でしょう。なお、スターシスも2〜3時間と短い時間ですがインスリン分泌を促進しますので、(24時間作用するSU剤よりはましですが)体重増加傾向はありえます。

**
肥満ホルモン(インスリン
糖質を摂取して血糖値が上昇すると、インスリンが追加分泌されて、血糖は骨格筋や心筋などの細胞に取り込まれて利用されたり、グリコーゲンとして蓄えられます。しかし、血中の余剰の血糖は中性脂肪に変えられて体脂肪として蓄積されていきます。インスリンが肥満ホルモンと呼ばれる所以です。糖質制限食なら血糖値はほとんど上昇しないので、インスリンもほとんど追加分泌されません。

江部康二
テーマ: 糖質制限食 -  ジャンル: ヘルス・ダイエット
by ドクター江部  at 09:28 |  肥満・ダイエット |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
プロフィール

ドクター江部

Author:ドクター江部
江部康二です。京都の高雄病院で勤務しています。漢方やアトピー治療でご存知の方もおられるかと思いますが、最近、自分が糖尿病だということが発覚し、糖尿病の新しい食事療法『糖質制限食』に力を入れてます。これからも宜しくお願いしますね。

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