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Q&A 境界型糖尿病
こんばんは。京都はとってもとっても暑いです。
暑いのを言い訳にスタイルフリーもう2本飲んでしまいました。

さて、

東山さんから、質問です。
非公開希望かと解釈していたのですが、携帯からの書き込みは、勝手に非公開になるそうです。それで、今回了解をもらいましたので、公開してお答え致します。

「件名 : おはようございます
 知人が病院で血液検査をして糖尿ではないけど境界型と言われ脳のCTなど色々検査してみようと医師に言われたそうです。糖尿なら高雄の受診も検討したいとゆうことで検査結果羅列します。
 59歳女性 T-CHO249 HDL-C73 TG136 HbA1c5.7 空腹時血糖101
どうでしょう?立派な糖尿人かもですかね、高血圧で朝晩薬を飲んでいますので
その上糖尿となると色々な病気のリスクが高まると恐れおののいています。
先生どうでしょうか? 東山」


境界型糖尿病と言われて、おののいておられるそうですが、丁度良いタイミングで医師から指摘されたと思います。そうです、今なら十分間に合いますのでどうぞご心配なく。 (´_`)V

「HbA1c5.7 空腹時血糖101」 59才女性で、このデータなら一応正常範囲ですね。
でも、糖尿人の<コントロール優>の目標値はHbA1c5.8%未満なので、まさにギリギリの所ですね。

HbA1cは通常、過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映しているので、それがギリギリということは、空腹時血糖値は101mgと正常でも、食後高血糖がすでにある可能性が高いですね。それで境界型の指摘を受けたのでしょう。

○空腹時血糖値110mg未満、負荷後2時間後血糖値140mg未満は正常です。

○空腹時血糖値126mg以上、負荷後2時間後血糖値200mg以上は糖尿病です。


正常でも糖尿病でもない群を『境界型』といいます。

**負荷後というのは、75gのブドウ糖を経口摂取してからと言う意味ですが、主食(糖質)を通常に食べて代用しても、まあ大きな問題はありません。

○空腹時血糖値126mg未満で、負荷後2時間血糖値が140~199mgの範囲にある人を、WHOの定義ではIGT(impaired gulucose tolerance)といいます。

○空腹時血糖値が110~125mgで、2時間値が140mg未満の群を、WHOの定義ではIFG(Impaired Fasting Glucose )といいます。


IGTとIFGを合わせて、『境界型』です。

さて、同じ境界型ならIGTでもIFGでもそんな変わりはないやろうと思いがちですが、ところがどっこい、大きな差があるのです。

食後高血糖を示すIGTの方々は、糖尿病の代表的な合併症である、網膜症、腎症、神経障害などの細小血管障害を来たすことは少ないのですが、大きな血管の動脈硬化症を起こし、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険は、正常人に比べかなり大きいことが疫学的研究でわかったのです。

IGTの人は肥満、高血圧、高脂血症を伴うメタボリック症候群の病状を示すことも多く、このような場合さらに動脈硬化症の危険が増加します。

* IFGのほうは、大血管の動脈硬化との関連は指摘されていません。
 
東山さんの知人の59才女性、IGTの可能性がありますので、 やはり糖質制限食が一番のお薦めです。スーパー糖質制限食が無理なら、スタンダードでもプチでもいいです。(5.9のブログ参照していただけば幸いです)
  
それも困難なら、生活習慣病予防の食生活十箇条のパターン(精製炭水化物を食べない)でも効果はありますよ。(2.27のブログ参照していただけば幸いです)

勿論、高雄病院受診もお薦め選択肢の一つですね。

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
体重減少効果、糖質制限食と高糖質食の比較
こんばんは。まだ夏休みぼけから抜け切れていない江部康二です。

またまた、とても興味深い権威ある論文が2007年3月のJAMA(米国医師会雑誌)に発表されました。
(the A TO Z Weight Loss Study: a randomized trial.)

アトキンス(Atkins)、ゾーン(Zone)、ラーン(LEARN)、オーニッシュ(Ornish)ダイエットのそれぞれの1年間の体重減少効果をみた研究論文です。311人の女性を上記4グループに分けて追跡したものです。

結果は、アトキンス ダイエット糖質制限食)が最も、体重を減少させ、HDL-コレステロールを増加、中性脂肪を減少させることが明らかとなりました。 (^O^)」

アトキンス ダイエットは低糖質食で私達の 糖質制限食と基本的考えは一緒です。1年間で平均4.7kg減少です。

ゾーン ダイエットはタンパク質・炭水化物・脂質の比率を40:30:30にするというものです。平均1.6kg減少です。

ラーン ダイエットは高炭水化物、低脂肪食です。平均2.6kg減少です。

オーニッシュ ダイエッは菜食主義風のダイエットです。カロリーの10%を脂肪分から、20%をたんぱく質、70%を炭水化物からという割合の食事です。平均2.2kg減症です。
最も高炭水化物で、最も低脂肪です。
コレステロ-ルや飽和脂肪酸を多く含む食品は禁止なので、肉は食べられませんが、一部の乳製品(無脂肪のヨーグルトや牛乳、低脂肪チーズ等)や卵白はOKです。魚も禁止です。また、果物や穀類などの精製されていない炭水化物(糖質+食物繊維)は良いのですが、砂糖などの精製された糖質は制限されます。蜂蜜やアルコールもだめです。
玄米や全粒粉のパンを主食として、野菜や果物が中心で、日本の玄米菜食に近いですね。


このほか、2005年にJAMAに掲載された論文でも、高タンパク食は高炭水化物食に比べて、HDL-コレステロールを増加、LDL-コレステロールと中性脂肪を減少させ、心臓の冠動脈疾患のリスク軽減させることが示唆されています。

これらの研究結果により、従来推奨されてきた脂肪制限食は、減量における有用性には否定的であり、心臓の冠動脈疾患のリスク軽減に関しても否定的であることが明らかとなりました。

一方、 糖質制限食(低炭水化物食)は長期的な有用性は確認されていませんが、短期的には、減量に対して低脂肪食より有用であることは明らかとなりました。

高雄病院の1999年から始まって2007年の現在までの 糖質制限食の経験でも、「肥満の改善、血糖値の改善、中性脂肪値の減少、HDL-コレステロールの増加」など、米国の最新の研究成果とよく一致しています。

長期的な有用性に関しても、代謝全てが基本的に改善するので悪かろうはずがありません。

それにしても、ここ2.3年の米国の論文は 糖質制限食にとって、大変貴重な追い風であり喜ばしい限りです。

また、今回参考にした、JAMAの2つの論文は日本の医学雑誌「治療」の2007年7月号「動脈硬化性疾患の診みかた」の中に引用されていて、日本の医学界も徐々に変わりつつあるのかなとほのかな期待を抱く江部康二でした。(o^。^o)

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
Q&A 肺炎球菌ワクチンと糖尿病
こんばんは。富士見高原から帰ってきた月曜日は京都も比較的涼しくて意外だったのですが、やはりそう甘くはなくて、暑くなってきました。

例年は、京都東インターで降りて料金所で窓を開けたら、ムワッと熱気が押し寄せて、高原との違いを思い知らされるのですが、今年はそれがなかったのです。

こんなん書くとETCでないことが見え見えですね。私のパジェロには、ETCカードどころかそれを挿入するための機器もついていません。

因みに、車買って以来、洗車したことや室内掃除したことは一度もありませんよ。しかし、こうやって甘やかさずに鍛えたからか、車の中身は丈夫ですよ。

さて、

saka10さんから肺炎球菌ワクチンに関する質問がありました。
糖尿病の人は、細菌感染のリスクがありますので検討してみましょう。

「全然関係ない質問ですみません
江部先生こんばんは。いつも、勉強させていただいております。
今回は記事と関係のない質問ですみません。
今、ADAのComplete Guide to Diabetesを読んでいるのですが、Diabetes care scheduleとして、一度は肺炎球菌ワクチンを接種することが書かれていました。糖尿病による易感染性を考慮してのことと思われます。
私のような中高年でも肺炎球菌ワクチンの接種をするべきでしょうか?
それとも、健常人のようにもっと高齢になってから接種を考慮すればよいのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんが、御教示いただければ幸いです。
by: saka10 * 2007/07/22 18:20」


成人市中肺炎の約3割が肺炎球菌が原因です。肺炎球菌によって、多くの高齢者が死亡しています。この肺炎球菌による感染症を予防するためのワクチンが、肺炎球菌ワクチンです。

肺炎球菌には80種類以上の型があって、それぞれの型に対して免疫をつける必要がありますが、肺炎球菌ワクチンを接種しておけば、そのうちで感染する機会の多い23種類の型に対して免疫をつけることができます。

これらの23種類の型で、すべての肺炎球菌による感染症の8割ぐらいを占めています。

1回の接種で23の型ほとんどに対し、有効レベル以上の免疫ができます。この免疫はよく持続して5年以上続きます。

肺炎球菌ワクチン接種により、60~80%の人に予防効果が期待できます。2回目の接種で強い反応がでることがあり、日本では再接種は行われていません。

接種後の副作用には、注射部位の腫れや痛み、微熱などがありますが、たいてい3日くらいで治ります。

肺炎球菌ワクチンの対象になるのは、以下のような人です。
(参考) 日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」

1.65歳以上の高齢者で、肺炎球菌ワクチンを受けたことのない人
2.2~64歳で下記の慢性疾患やリスクのある人
(1)慢性心不全
(2)慢性呼吸器疾患
(3)糖尿病
(4)アルコール中毒
(5)慢性肝疾患
(6)髄液漏
3.摘脾を受けた人、脾機能不全の人
4.養護老人ホームや長期療養施設などの居住者
5.易感染症患者:
(1)HIV感染者
(2)長期にわたって免疫低下をおこす治療を受けている人(白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性の悪性腫瘍、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、移植など)
(3)副腎皮質ステロイドの全身投与を長期間受けている人


確かに米国と同様、日本のガイドラインでも、糖尿病は肺炎ワクチン接種対象に含まれていますが、現実的な対応としてはコントロールがよい場合、64才以下なら打たなくても良いと思います。ワクチンの効果が5年以上ですが、少なくとも10年の保証はありませんので・・・。

しかし、統計によりますと、きっちり病院に通院して治療していても、HbA1cが6.4%以下のコントロール良好な糖尿人は約30%なので、残り70%はコントロール不良で肺炎球菌感染のリスクがあることになりますね。

そうするとコントロールが良くない糖尿人は64才以下でも肺炎球菌ワクチンを接種したほうがいいかもしれません。

65才以上の糖尿人は、肺炎球菌ワクチンを接種したほうがよいでしょう。まあこれだと一般人と一緒ですね。 糖質制限食でHbA1cが6.4%以下に保たれている糖尿人なら、リスクは一般人と同程度と考えられます。

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食と糖尿病と蕎麦
こんばんは。
昨夕、富士見高原テニス合宿から帰ってきました。
夕方京都についたあと、京都組で宴会だったので、家に着いたら11時近くでした。
お酒飲まない親切な友人Oさんに家まで、車を運転してもらいました。謝謝。\(^_^ )( ^_^)/

雨はそこそこ降りましたが、一応、毎日テニスはできました。
「清く正しく」より「おいしく楽しく」が信条ですので、実は信州で蕎麦食べました。

血糖値200超えたかも!? (*- -)(*_ _)
でもおいしかったし、年1回のことやから、まあいいかと・・・

さて米国在住のKさんから、コメント・質問がありました。

「江部先生、こんにちは
またまた早速質問へのお返事ありがとうございました。
先日LAのスーパーに行ったところ、Carb Masterという名のヨーグルトが販売されていました。Carbが4g。こちらはどこを探しても無糖ヨーグルトが売っていないので、どうしても食べたくなったらこれにしようと思っています。
それとLow Carbダイエットの人への冷凍食品。よく見たら砂糖は4gにおさえられているものの、糖質全体では1食24gもあるものもありました。
また質問で申し訳ないのですが。
ここ2週間で3日ぐらい、朝一番で測った空腹時血糖値がここ最近見たことがないくらい(122-136)高くなってびっくりしていました。夕べ食後2時間値が118、その後何も食べていないのに10時間後に今朝寝起きに測ったら122でした。
3日で共通しているのはもやしとバターのみ。もやしと牛肉やベーコンをバターで炒めて食べました。バターは脂肪と食べるとゆっくり血糖値をあげると聞いたのですが本当なのでしょうか?バターや止めた方がいいのでしょうか?
スーパー制限食をしているものの、空腹時血糖値が100をきったことはなく空腹時も食後2時間も100から125の間。そしてスーパーにしてから体重がパタッと落ちなくなってしまいました。0.1gも落ちない日々が1ヶ月も続きすっかりモチベーションがさがり、講演会に参加できたらもう一度モチベーションもあがるのになぁ、とお知らせを見るたびに思っています。アトピーの講演会にも参加したい。。。
ぜひ日本に一時帰国した際には参加させていただきますね。
by: K * 2007/07/30 22:51」

Kさん、Carb Master、100g中に4gの糖質ということでしょうか?
いつも言っているように、1gの糖質が約3mg血糖値を上昇させますので、まず大丈夫と思います。
「Low Carbダイエットの人への冷凍食品。よく見たら砂糖は4gにおさえられているものの、糖質全体では1食24gもあるものもありました。」
 これはさすがに困りものですね。
以前、米国では低糖質食の表示は、100gあたり糖質9g以下のものとして統一しようという動きもあったようですがまだうまくいってないのでしょうか?

さてご質問ですが、糖質は約15~90分で100%血糖に変わり、タンパク質は約2~数時間で50%が血糖に変わり、脂質は数時間~10数時間かけて10%未満が血糖に変わります。

従って、前の晩の8.9時以降とかにタンパク質を摂取すると、翌日の早朝空腹時血糖値に若干の影響がでます。
バターなどの脂質は10%未満ですから、影響は少ないと思います。

それから、空腹時血糖値110未満は正常、126mg未満は境界領域なので、Kさんのデータはそんなに心配はいりません。

また、食後2時間血糖値も140mg未満が正常なので、Kさんのデータは正常範囲ですよ。

体重も直線的には減りません。しかしスーパー 糖質制限食を実践していれば、体内の脂肪が必ず燃えているので、体重が減らないようでも少なくとも体脂肪率は減っています。
めげずに 糖質制限食続けてくださいね。

江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット