高雄病院及び江部康二の食事療法への取り組み②
おはようございます。

今日は、今から東京にでかけます。

第98回日本美容外科学会が東京ドームホテルで開催されますが、<栄養・代謝・糖尿病糖質制限食>と題して
13:00~1時間の特別講演をさせて頂くこととなりました。

このように各種学会でも徐々に糖質制限食が広がりをみせており、光栄かつ嬉しい限りです。(^-^)v(^-^)v

さて今回の記事は前日の続きです。
 

<テーラーメードの食事療法(tailor made diet)>
玄米魚菜食時代、糖質制限食時代を経て、今私は食生活において一人ひとりの年齢・体質・病状・嗜好にあわせたテーラーメードの食事療法(tailor made diet)を提唱しています。

症状改善だけなら、人類皆糖質制限食もありだと思うのですが、地球人口66億人を養うためには穀物は必須です。このことを踏まえて食べ分けが必要と思います。

例えば、小児、青少年、アトピーや喘息の若い人、成人でも糖尿病やメタボリック・シンドロームなどがない人なら、主食を未精製の穀物(例えば玄米)にして「高雄病院食生活十箇条」の実践でよいと思います。

運動選手など日常的に運動をしている青少年は、あるていどの量の未精製穀物を摂取しても、筋肉がどんどん血糖を利用するのでブドウ糖ミニスパイク(後述)も生じにくく大丈夫です。

一方、読書タイプで運動をあんまりしない青少年は、未精製の穀物でもやや少量に控えておく方が無難です。

すでに糖尿病を患っている人や、メタボリック・シンドロ-ムの人は、糖質制限食がベストの選択です。糖質制限食は糖質摂取が少ないので食後の血糖値上昇がほとんどなく、常に脂肪を燃やすエネルギーシステムが活性化しており、肥満解消にもおおいに役立ちます。

このように「テーラーメードの食事療法」の枠組のなかで考えていけば、玄米魚菜食と糖質制限食は適応対象が異なっているわけで矛盾は生じません。

玄米魚菜食、糖質制限食、断食に共通する現象があります。それは食前・食後血糖値の差が少なくて、代謝が安定することです。これが各食事療法の効果という点で決定的に重要といえます。

<ブドウ糖スパイク>
空腹時血糖値と食後血糖値の差が大きいことを「ブドウ糖スパイク」といいます。

糖尿病の人が糖質を摂取すればブドウ糖スパイクは100~200,300mg/dlとなり、リアルタイムに血管内皮に悪影響をあたえ、将来の動脈硬化や心筋梗塞のリスクとなります。

正常の人でも白いパンなど精製された糖質を食べると、60~70mgのブドウ糖ミニスパイクを生じて代謝が乱れます。ミニスパイクの度にインスリンが大量に追加分泌されます。

基礎分泌の10~30倍レベル、インスリンが追加分泌される事態は、救急車の出動に等しいととらえるのが正確と思います。(=_=;) 

このブドウ糖ミニスパイクとインスリン追加分泌を30年、40年毎日頻回に繰り返すことが、生活習慣病の根本要因と私は考えています。

玄米なら、正常の人だと20~40mgしか血糖を上昇させず、代謝が安定します。しかし、残念ながら糖尿病になってしまったら、私自身でも明らかなように、玄米でも100~200のブドウ糖スパイクを起こしてしまうので、糖質制限食が必要となるのです。

糖質制限食なら、血糖値の上下動は正常人ではほとんどなくなり、糖尿人でも少なくなります。

<おわりに>
私自身の糖尿病・メタボは上述のように糖質制限食のみで改善しました。

1984年から食事療法の研究を続けてきて今にいたるわけですが、高雄病院の基本的立場は食事療法をしっかり行えば、それだけで充分健康になれる道を目指してきました。

単身赴任のサラリーマンや下宿生活の学生さんで、外食やコンビニで済ますことが多く、食生活がどうしても偏る場合などは、サプリメントが必要なこともあると思います。

またスーパー糖質制限食開始初期に、時にこむら返りが生じることがあり、この場合カルシウム・マグネシウムの補充が有効なことがあります。

このように、サプリメントが一切いらないというのではありませんが、テーラーメードダイエットの枠組みの中で、できるだけ食事療法単独で健康増進を目指したいというのが、高雄病院の基本スタンスです。

もちろん「食事療法+西洋薬+漢方薬」は、必要に応じてありです。

今後もサプリメントや健康補助食品に頼らなくてすむような、テーラーメードダイエットを提唱していきたいと考えています。


江部康二

☆☆☆
『高雄病院食生活十箇条』 -アレルギー疾患の治療や生活習慣病予防に-

一、主食は未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
二、白パン・白砂糖など精製炭水化物の摂取は極力減らす
三、発酵食品(味噌、漬け物、納豆など)をきちんと食べる
四、液体でカロリーを摂らない(飲みものは水、番茶、麦茶、ほうじ茶など)
五、魚貝類はしっかり食べ、肉類は適量を摂る
六、季節の野菜や海草はしっかり食べ、旬の果物も適量摂る
七、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)など身体に良い油脂は積極的に摂る
八、牛乳は極力減らし、チーズやプレーンヨーグルトは適量摂る
九、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ
十、食事は楽しく、ゆっくり、よくかんで

☆☆☆
『糖質制限食十箇条』 -糖尿病や肥満が気になる人に-

一、魚貝・肉・豆腐・納豆・チーズなどタンパク質や脂質が主成分の食品はしっかり食べてよい。
二、糖質特に白パン・白米・麺類及び菓子・白砂糖など精製糖質の摂取は極力控える。
三、主食を摂るときは未精製の穀物が好ましい(玄米、全粒粉のパンなど)
四、飲料は牛乳・果汁は飲まず、成分未調整豆乳はOK。水、番茶、麦茶、ほうじ茶もOK。
五、糖質含有量の少ない野菜・海草・茸類は適量OK。果物は少量にとどめる。
六、オリーブオイルや魚油(EPA、DHA)は積極的に摂り、リノール酸を減らす。
七、マヨネーズ(砂糖無しのもの)やバターもOK。
八、お酒は蒸留酒(焼酎、ウィスキーなど)はOK、醸造酒(ビール、日本酒、など)は控える。
九、間食やおつまみはチーズ類やナッツ類を中心に適量摂る。菓子類、ドライフルーツは不可。
十、できる限り化学合成添加物の入っていない安全な食品を選ぶ。


『糖質制限食』の3パターン
一、スーパー糖質制限食は三食とも主食なし。効果は抜群で早く、一番のお薦め。
二、スタンダード糖質制限食は朝と夕は主食抜き。
三、プチ糖質制限食は夕だけ主食抜き。嗜好的にどうしてもデンプンが大好きな人に。
*抜く必要がある主食とは米飯・めん類・パンなどの米・麦製品や芋類などの炭水化物。*炭水化物=糖質+食物繊維


【糖質制限食を実践される時のご注意】
本にも書いてありますが、 糖質制限食によりリアルタイムに血糖値が改善します。

このため既に、経口血糖降下剤(オイグルコン、アマリールなど)の内服や、インスリン注射をしておられる糖尿人は低血糖の心配がありますので、必ず主治医と相談して頂きたいと思います。
一方薬、を使用してない糖尿人やメタボ人は、低血糖の心配はないので、

<理論>
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」
「主食を抜けば糖尿病は良くなる!実践編」
「我ら糖尿人、元気なのには理由がある。」
「やせる食べ方」
(東洋経済新報社)

<レシピ>
「糖尿病が良くなるごちそうレシピ」
「 糖質制限食 春のレシピ」
「 糖質制限食 夏のレシピ」
「糖質制限食 秋のレシピ」
「糖質制限食 冬のレシピ」
「血糖値を上げない! 健康おつまみ109 」
(東洋経済新報社)

「糖質オフ」ごちそうごはん
(アスペクト)

『dancyu プレジデントムック 「満腹ダイエット 」
(プレジデント社)

を参考にされ、自力で 糖質制限食を実践して糖尿病改善を目指していただけば幸いです。

なお、血液検査で血清クレアチニン値が高値で、腎障害がある場合と、活動性の膵炎がある場合は、糖質制限食は適応となりませんのでご注意ください。

糖質制限食は相対的に高タンパク・高脂肪食になるので、腎不全と活動性膵炎には適応とならないのです。

また、どのような食事療法でも合う合わないがあります。

糖質制限食もその一つですので、合わないとご自分で判断されたら、中止していただけば幸いです。



テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
高雄病院及び江部康二の食事療法への取り組み①
おはようございます。

高雄病院では、現在入院患者さんに、糖尿人には糖質制限食、アトピーさんには玄米魚菜食・・・といった形で、給食を提供しています。

今回は、ここに到る高雄病院食事療法変遷の歴史的経過を、説明したいと思います。

<玄米魚菜食>
高雄病院に初めて玄米魚菜食を導入したのは1984年のことです。病院給食として玄米を提供したのは高雄病院が日本初だったと思います。

当時、西洋医学を学び漢方医学も学び何とか目の前の患者さんの症状を改善したいという思いとはうらはらに、治療が上手くいかないこともあり臨床的に壁にぶちあたっていた時でした。

いろいろ悩みましたが、西洋医学も漢方治療も薬物療法中心なので、薬物治療の前に食生活そのものを根本的に見直す必要があるのではないかという思いが湧いてきたのです。

患者さんに食べてもらうのなら自らもということで、主食を玄米にし、ジャンクフードや甘い物も一切やめました。 10日間くらい経過して、不思議なことに中学校以来長年の付き合いであったアレルギー性鼻炎が、一旦ぴったりととまってしまいました。

ところが深酒が三日も続いたりたまに甘いものを食べると天罰てきめん、鼻炎が再発し、つくずく食生活の重要さを身をもって思い知らされてしまいました。

自らの体験も踏まえて1984年から当分の間は、アトピーも糖尿病もリウマチも喘息も肥満も・・・、全ての病気に対して玄米魚菜食を推奨していました。

<断食療法>
同時に絶食療法(断食療法)も病気治療の一環として導入しましたが、こちらも病院としては、日本初だったと思います。患者さんに断食して貰うなら自らもということで、早速試してみました。

最初の二日間は、午前中立ち眩み・脱力感がありましたが、三日目はそこそこの健康状態でした。それでも血糖値は35mg/dlと、ビックリするような数値が記録されました。普通なら意識不明で昏睡のレベルですが、断食中は血中ケトン体(脂肪の代謝産物)が高値となり、脳の主エネルギー源となるので、大丈夫なのです。脳はケトン体を利用するという事実を34才当時、既に自らの人体実験で証明していたみたいです。

その後しばらくはほぼ毎年1回断食をしたので計12~13回したことになります。鼻炎は断食後基本的にはコントロール良好です。しかし忘年会シーズン(深酒)や中国旅行(砂糖+酒)のおりはそれなりに再発して漢方薬を服用していました。

<糖尿病発症と糖質制限食>
ここ10数年は断食していませんが、第1回断食後は朝食抜きの1日2食でプチ断食を継続していて食生活にはそれなりに気をつけていたつもりでした。

しかし、2002年の病院の健康診断(52歳時)で遂にHbA1Cが6.3%と糖尿病の域に達しており、慌てて食後2時間の血糖値を測定してみると260mg/dlもあり愕然としました。血糖値を上昇させにくい玄米で実験してみても食後血糖値は240前後でほんの少し減少しただけでした。

ずっと玄米は食べているし魚中心で肉や油は控えめで、週に1.2回はテニスはしているし、普通のおじさんに比べればはるかに健康的なライフスタイルのはずでしたが、何故?

40歳過ぎからそれまでのウィスキーやブランデーから純米酒と恵比寿ビールに切り替えて当時浴びるように飲んでいたのが今から思えば敗因の一つでした。

また、毎日運動しているわけでもないのに、毎日食事の度に結構大量の糖質を摂取して食後高血糖を繰り返し、だめ押しに、毎晩純米酒と恵比寿ビールで、飲酒後高血糖を生じていたのでしょう。

この頃は、テニスの帰りにスポーツジムにもよって自転車こぎや腹筋・背筋運動もやってましたが、なぜか体重は徐々に増加し腹回りも順調に育っていきました。しっかり摘めるお肉なので筋肉増強ではなく脂肪増強に間違いありません。

旅行や講演や学会のときも、油ものはできるだけ控えて、ひたすらおにぎりやご飯を中心に食べてました。外食のときは当然玄米は無理で白米ですが、当時はそれがヘルシーと信じていたのでしっかり腹一杯食べていました。

結局、玄米・白米などを含めて摂取していた大量の糖質に対して、運動量が全くマッチしていなかったのですね。
 
52歳糖尿病発覚時には体重67kg(身長167cm)になって、血圧は160/100、腹囲は86cmと、最近流行のメタボリック・シンドロームの診断基準を見事に満たしていました。

ここにいたり、一念発起して、2002年6月から糖質制限食を開始しました。

高雄病院では、1999年から江部洋一郎院長(当時)が糖尿病治療に糖質制限食を導入し画期的な成果をあげていました。当初、半信半疑だった私も2001年に糖尿病の患者さんに初めて実施し劇的改善を得ていてたので、うまくいく確信はありました。

肉・魚・野菜・豆腐などおかずは食べ放題で主食(糖質)だけはなしです。酒は日本酒、ビールなどの糖質を含んでいる醸造酒は中止し、もっぱら焼酎としました。

その結果半年間の糖質制限食で、体重は56kgにおち、血圧も120/70、HbA1Cも正常になり、メタボリック・シンドロームも解消し、学生時代の体型にぴったり戻り、2010年現在も保っています。  

続く


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット