2010年06月29日 (火)
おはようございます。
尿路結石と糖質制限食について、開業医のharuさんから、コメントをいただきました。
「10/06/28 haru
結石について
いつも、日常の診療に参考にさせていただいています、開業医のharuといいます。
確かにシュウ酸摂取が多いと結石が出来やすいと思いますがカルシウムを多くとると結石の出来る確率が低下するというデータはあるようです。
カルシウムとシュウ酸は結合しやすいようで食事でカルシウムを十分にとることで吸収されずに便に排出されます。カルシウム摂取が少ないと結合できなかったシュウ酸が吸収され血中のカルシウムと結合し結石の原因となります。
そう考えるとカルシウムの豊富なアーモンドあたりを食べるのが一番いいのではないでしょうか。」
haruさん。
コメントありがとうございます。参考になります。
私もアーモンドはよく食べてますのでちょっぴり安心しました。
現在、糖質制限食と尿路結石に関して、断定的な結論を出すほどのデータはないのですが、下記のような文献もあります。
☆☆
Nephrolithiasis as a systemic disorder.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18408483
このReviewでは、メタボリックシンドロームは腎結石と関連があり、2型糖尿病、BMIの増加、高血圧、脂質異常症がそれぞれ独立した危険因子として認識されるようになってきているとの事で、私の良きアドバイザーI先生にご教示いただきました。
メタボリックシンドローム、2型糖尿病、BMIの増加、高血圧、脂質異常症は、いずれも糖質制限食で改善が望める病気ですね。
一方、
「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
という従来の説は如何なものでしょう。
この説に関しては、2010年06月22日 (火)のブログ
<尿路結石の増加・糖尿病の増加と脂質・蛋白質摂取の関係は?>
で、疑問を呈しました。
すなわち、日本尿路結石症学会が2005年に行った調査によると、尿路結石の患者数は40年前(1965年)と比べて、増えています。この患者数というのは、痛みの発作を起こした人(罹患者)の数です。
1965年、人口10万人あたり、63.8人。
1975年、人口10万人あたり、75.7人。
1985年、人口10万人あたり、91.6人。
1995年、人口10万人あたり、117.5人。
2005年、人口10万人あたり、192人。
1965年以降徐々に、尿路結石は増えています。
特に1995年~2005年までの10年間の増加は、それ以前の30年間に比べて、とんでもない人数の増加です。
そして、1995年~2005年は、厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、蛋白質・脂質の摂取率は、減少傾向にあります。
こうなると、少なくとも1995年~2005年までの10年間の尿路結石患者の激増は、蛋白質・脂質には無関係の可能性が高いといえます。
☆☆☆
医療情報サービス Minds(マインズ)
厚生労働科学研究費補助金により公開中
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0022/1/0022_G0000058_0021.html
尿路結石の調査報告
ケミファのホームページ
http://www.chemiphar.tv/healthcare/urine/index_02.html
尿路路結石の患者数は40年前に比べて約3倍に増加
結論です。
現段階では、勿論断定はできませんが、尿路結石の増加も精製された糖質の過剰摂取の影響が一因である可能性がありますね。
特に炭水化物の質が、ブドウ糖ミニスパイクを起こしやすいものほど問題と思います。
江部康二
尿路結石と糖質制限食について、開業医のharuさんから、コメントをいただきました。
「10/06/28 haru
結石について
いつも、日常の診療に参考にさせていただいています、開業医のharuといいます。
確かにシュウ酸摂取が多いと結石が出来やすいと思いますがカルシウムを多くとると結石の出来る確率が低下するというデータはあるようです。
カルシウムとシュウ酸は結合しやすいようで食事でカルシウムを十分にとることで吸収されずに便に排出されます。カルシウム摂取が少ないと結合できなかったシュウ酸が吸収され血中のカルシウムと結合し結石の原因となります。
そう考えるとカルシウムの豊富なアーモンドあたりを食べるのが一番いいのではないでしょうか。」
haruさん。
コメントありがとうございます。参考になります。
私もアーモンドはよく食べてますのでちょっぴり安心しました。
現在、糖質制限食と尿路結石に関して、断定的な結論を出すほどのデータはないのですが、下記のような文献もあります。
☆☆
Nephrolithiasis as a systemic disorder.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18408483
このReviewでは、メタボリックシンドロームは腎結石と関連があり、2型糖尿病、BMIの増加、高血圧、脂質異常症がそれぞれ独立した危険因子として認識されるようになってきているとの事で、私の良きアドバイザーI先生にご教示いただきました。
メタボリックシンドローム、2型糖尿病、BMIの増加、高血圧、脂質異常症は、いずれも糖質制限食で改善が望める病気ですね。
一方、
「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
という従来の説は如何なものでしょう。
この説に関しては、2010年06月22日 (火)のブログ
<尿路結石の増加・糖尿病の増加と脂質・蛋白質摂取の関係は?>
で、疑問を呈しました。
すなわち、日本尿路結石症学会が2005年に行った調査によると、尿路結石の患者数は40年前(1965年)と比べて、増えています。この患者数というのは、痛みの発作を起こした人(罹患者)の数です。
1965年、人口10万人あたり、63.8人。
1975年、人口10万人あたり、75.7人。
1985年、人口10万人あたり、91.6人。
1995年、人口10万人あたり、117.5人。
2005年、人口10万人あたり、192人。
1965年以降徐々に、尿路結石は増えています。
特に1995年~2005年までの10年間の増加は、それ以前の30年間に比べて、とんでもない人数の増加です。
そして、1995年~2005年は、厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、蛋白質・脂質の摂取率は、減少傾向にあります。
こうなると、少なくとも1995年~2005年までの10年間の尿路結石患者の激増は、蛋白質・脂質には無関係の可能性が高いといえます。
☆☆☆
医療情報サービス Minds(マインズ)
厚生労働科学研究費補助金により公開中
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0022/1/0022_G0000058_0021.html
尿路結石の調査報告
ケミファのホームページ
http://www.chemiphar.tv/healthcare/urine/index_02.html
尿路路結石の患者数は40年前に比べて約3倍に増加
結論です。
現段階では、勿論断定はできませんが、尿路結石の増加も精製された糖質の過剰摂取の影響が一因である可能性がありますね。
特に炭水化物の質が、ブドウ糖ミニスパイクを起こしやすいものほど問題と思います。
江部康二
2010年06月22日 (火)
こんにちは。
尿路結石と糖質制限食について、Oliverさんからコメント・質問をいただきました。
「結石
尿路結石を2度ほど経験しているのですが、病院からもらう指針によると、高蛋白・高脂質の食事が良くないそうです。高蛋白・高脂質と言えば、まさに糖質制限食だと思うのですが、大丈夫なのでしょうか?よろしくお願いします。
2010/06/21(Mon) 17:46 | URL | Oliver
Oliverさん。
コメントありがとうございます。
仰有る通り、
①「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
というのが従来の説ですね。
これって、どっかで聞いた台詞ですね。
すなわち
②「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、糖尿病・肥満が増えた。」
①②の定説を検証する前に、日本の終戦後の歴史を振り返ってみます。
1945年(昭和20年)終戦後、日本は貧しい時代で飢餓もあった。
1950年(昭和25年)~1953年(昭和28年)朝鮮戦争。
米軍への軍需物資提供で、日本経済は浮上し始める。
1955年(昭和30年)から1957年にかけて神武景気。
1959年(昭和34年)から1961年(昭和36年)にかけて岩戸景気。
1960年(昭和35年)南ベトナム解放民族戦線結成。
以後あしかけ16年(1960~1975)にわたる長期の抗戦状態に突入。
このベトナム戦争に伴い、経済が大幅に活性化。
1962年(昭和37年)から1970年(昭和45年)まで高度経済成長時代。
結局、朝鮮戦争とベトナム戦争という二つの戦争により、第二次大戦で疲弊しきっていた日本経済は、奇蹟の復興を遂げたわけです。特に、ベトナム戦争に伴う高度経済成長は、一気に日本をお金持ちの国に押し上げました。
厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、
総摂取カロリー 摂取熱量比率(% )
たん白質 脂質 炭水化物
1955年(昭和30年) 2104 12.7 7.5 79.8%
1960年(昭和35年) 2096 13.3 10.6 76.1%
1965年(昭和40年) 2184 13.1 14.8 72.1%
1970年(昭和45年) 2210 14.0 18.9 67.1%
1975年(昭和50年) 2226 14.6 22.3 63.1%
1980年(昭和55年) 2119 14.9 23.6 61.5%
1985年(昭和60年) 2088 15.1 24.5 60.4%
1990年(平成2年) 2026 15.5 25.3 59.2%
1995年(平成7年) 2042 16.0 26.4 57.6%
1997年(平成9年) 2007 16.0 26.6 57.4%
2000年(平成12年) 1948 15.9 26.5 57.5%
2001年(平成13年) 1954 15.1 25.2 59.7%
2004年(平成16年) 1902 15.0 25.3 59.7%
2005年(平成17年)1904 15.0 25.3 59.7%
2007年(平成19年) 1898 14.9 25.5 59.6%
2008年(平成20年) 1867 14.7 24.9 60.4%
1965年(昭和40年)から、鮮明に炭水化物が減少し脂質が増加し始めています。
1955年(昭和30年)に比べるとその差は顕著で、脂質は倍増し、その分7%炭水化物が減少しています。
高度経済成長が始まって3年目くらいで、裕福になって肉や乳製品など、高価な食材を摂取できるようになってこの変化が始まったのでしょう。
一方、炭水化物が減少し、脂質が増加するという傾向は、約15年間続いてストップしています。
すなわち、1980年(昭和55年)から2008年(平成20年)までの28年間は
炭水化物:57~62%
脂質:23~26%
蛋白質:15~16%
と摂取熱量比率はほとんど不変です。
その中で1997年(平成9年)の26.6%をピークに、脂質摂取比率は減少傾向にあります。
蛋白質の摂取比率も、1980年(昭和55年)14.9%ころからほとんど変化がないのですが、1997年(平成9年)16.0%以降は減少傾向です。
一方、糖質の摂取比率は 1997年(平成9年) 57.4%を底として、上昇傾向に転じています。
また、総摂取カロリーが1975年(昭和50年) 2226キロカロリーをピークに減少しています。
特に2000年(平成12年)1948キロカロリー以降は、2000キロカロリーを割り込んで減少し続けています。
これは、高齢化社会を反映しているものと思われます。高齢の人は、そんなに量を食べないですしね。
少食の高齢の人口が増加しているので、総摂取カロリーも減少しているのでしょう。
日本糖尿病学会推奨のカロリー制限糖尿食は、
「糖質55~60%、脂質20~25%、タンパク質20%」
ですので、タンパク質がやや不足気味以外は、28年間以上、糖質・脂質は、ほぼ目標達成です。
それでも、この間糖尿病や肥満は増え続けています。
そして1997年(平成9年)の26.6%をピークに、脂質摂取比率も減少傾向にあるにもかかわらず、この後も糖尿病、肥満は増え続けています。
このように
②「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、糖尿病・肥満が増えた。」
という定説は、間違いであることが、厚生労働省「国民栄養の現状」の年次的変化を分析することで、証明できたと思います。
①「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
こちらの定説も、「食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり」というのは、1965年(昭和40年)から、1980年(昭和55年)までの15年間の出来事にすぎないので、尿路結石が増えたのがそのせいかどうかかなり疑問です。
まして、1980年以降は、脂質・蛋白質の摂取率にほとんど差はありませんので、この間尿路結石が増え続けているなら、脂質・蛋白質が犯人という説はおかしいですね。
日本尿路結石症学会が2005年に行った調査によると、尿路結石の患者数は40年前(1965年)と比べて約3倍と、急激に増えています。
1965年、人口10万人あたり、63.8人。
1975年、人口10万人あたり、75.7人。
1985年、人口10万人あたり、91.6人。
1995年、人口10万人あたり、117.5人。
2005年、人口10万人あたり、192人。
同調査では男性は7人に1人、女性は15人に1人の割合で、一生に一度は尿路結石症にかかるとされています。
1965年以降確かに、尿路結石は増え続けていますね。特に1995年~2005年までの10年間の増加は、それ以前の30年間に比べて、とんでもない人数の増加です。
そして、1995年~2005年は、厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、蛋白質・脂質の摂取率は減少傾向にあります。
こうなると1995年~2005年までの10年間の尿路結石患者の激増は、蛋白質・脂質には無関係の可能性が極めて高いです。
なお、メタボリック症候群の人はそうでない人に比べたら、尿路結石再発率が1.3倍という報告もあります。
またBMI25以上の人は、そうでない人に比べて、尿路結石発症リスクが2割増えるという報告もあります。
そしてメタボの根本要因は、精製炭水化物の頻回・過剰摂取によるグルコースミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌でしたね・・・。
江部康二
尿路結石と糖質制限食について、Oliverさんからコメント・質問をいただきました。
「結石
尿路結石を2度ほど経験しているのですが、病院からもらう指針によると、高蛋白・高脂質の食事が良くないそうです。高蛋白・高脂質と言えば、まさに糖質制限食だと思うのですが、大丈夫なのでしょうか?よろしくお願いします。
2010/06/21(Mon) 17:46 | URL | Oliver
Oliverさん。
コメントありがとうございます。
仰有る通り、
①「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
というのが従来の説ですね。
これって、どっかで聞いた台詞ですね。
すなわち
②「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、糖尿病・肥満が増えた。」
①②の定説を検証する前に、日本の終戦後の歴史を振り返ってみます。
1945年(昭和20年)終戦後、日本は貧しい時代で飢餓もあった。
1950年(昭和25年)~1953年(昭和28年)朝鮮戦争。
米軍への軍需物資提供で、日本経済は浮上し始める。
1955年(昭和30年)から1957年にかけて神武景気。
1959年(昭和34年)から1961年(昭和36年)にかけて岩戸景気。
1960年(昭和35年)南ベトナム解放民族戦線結成。
以後あしかけ16年(1960~1975)にわたる長期の抗戦状態に突入。
このベトナム戦争に伴い、経済が大幅に活性化。
1962年(昭和37年)から1970年(昭和45年)まで高度経済成長時代。
結局、朝鮮戦争とベトナム戦争という二つの戦争により、第二次大戦で疲弊しきっていた日本経済は、奇蹟の復興を遂げたわけです。特に、ベトナム戦争に伴う高度経済成長は、一気に日本をお金持ちの国に押し上げました。
厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、
総摂取カロリー 摂取熱量比率(% )
たん白質 脂質 炭水化物
1955年(昭和30年) 2104 12.7 7.5 79.8%
1960年(昭和35年) 2096 13.3 10.6 76.1%
1965年(昭和40年) 2184 13.1 14.8 72.1%
1970年(昭和45年) 2210 14.0 18.9 67.1%
1975年(昭和50年) 2226 14.6 22.3 63.1%
1980年(昭和55年) 2119 14.9 23.6 61.5%
1985年(昭和60年) 2088 15.1 24.5 60.4%
1990年(平成2年) 2026 15.5 25.3 59.2%
1995年(平成7年) 2042 16.0 26.4 57.6%
1997年(平成9年) 2007 16.0 26.6 57.4%
2000年(平成12年) 1948 15.9 26.5 57.5%
2001年(平成13年) 1954 15.1 25.2 59.7%
2004年(平成16年) 1902 15.0 25.3 59.7%
2005年(平成17年)1904 15.0 25.3 59.7%
2007年(平成19年) 1898 14.9 25.5 59.6%
2008年(平成20年) 1867 14.7 24.9 60.4%
1965年(昭和40年)から、鮮明に炭水化物が減少し脂質が増加し始めています。
1955年(昭和30年)に比べるとその差は顕著で、脂質は倍増し、その分7%炭水化物が減少しています。
高度経済成長が始まって3年目くらいで、裕福になって肉や乳製品など、高価な食材を摂取できるようになってこの変化が始まったのでしょう。
一方、炭水化物が減少し、脂質が増加するという傾向は、約15年間続いてストップしています。
すなわち、1980年(昭和55年)から2008年(平成20年)までの28年間は
炭水化物:57~62%
脂質:23~26%
蛋白質:15~16%
と摂取熱量比率はほとんど不変です。
その中で1997年(平成9年)の26.6%をピークに、脂質摂取比率は減少傾向にあります。
蛋白質の摂取比率も、1980年(昭和55年)14.9%ころからほとんど変化がないのですが、1997年(平成9年)16.0%以降は減少傾向です。
一方、糖質の摂取比率は 1997年(平成9年) 57.4%を底として、上昇傾向に転じています。
また、総摂取カロリーが1975年(昭和50年) 2226キロカロリーをピークに減少しています。
特に2000年(平成12年)1948キロカロリー以降は、2000キロカロリーを割り込んで減少し続けています。
これは、高齢化社会を反映しているものと思われます。高齢の人は、そんなに量を食べないですしね。
少食の高齢の人口が増加しているので、総摂取カロリーも減少しているのでしょう。
日本糖尿病学会推奨のカロリー制限糖尿食は、
「糖質55~60%、脂質20~25%、タンパク質20%」
ですので、タンパク質がやや不足気味以外は、28年間以上、糖質・脂質は、ほぼ目標達成です。
それでも、この間糖尿病や肥満は増え続けています。
そして1997年(平成9年)の26.6%をピークに、脂質摂取比率も減少傾向にあるにもかかわらず、この後も糖尿病、肥満は増え続けています。
このように
②「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、糖尿病・肥満が増えた。」
という定説は、間違いであることが、厚生労働省「国民栄養の現状」の年次的変化を分析することで、証明できたと思います。
①「戦後食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり、尿路結石が増えた。従って尿路結石再発予防には蛋白質・脂質を減らすのが良い。」
こちらの定説も、「食生活が欧米化して高蛋白・高脂質食となり」というのは、1965年(昭和40年)から、1980年(昭和55年)までの15年間の出来事にすぎないので、尿路結石が増えたのがそのせいかどうかかなり疑問です。
まして、1980年以降は、脂質・蛋白質の摂取率にほとんど差はありませんので、この間尿路結石が増え続けているなら、脂質・蛋白質が犯人という説はおかしいですね。
日本尿路結石症学会が2005年に行った調査によると、尿路結石の患者数は40年前(1965年)と比べて約3倍と、急激に増えています。
1965年、人口10万人あたり、63.8人。
1975年、人口10万人あたり、75.7人。
1985年、人口10万人あたり、91.6人。
1995年、人口10万人あたり、117.5人。
2005年、人口10万人あたり、192人。
同調査では男性は7人に1人、女性は15人に1人の割合で、一生に一度は尿路結石症にかかるとされています。
1965年以降確かに、尿路結石は増え続けていますね。特に1995年~2005年までの10年間の増加は、それ以前の30年間に比べて、とんでもない人数の増加です。
そして、1995年~2005年は、厚生労働省「国民栄養の現状」によれば、蛋白質・脂質の摂取率は減少傾向にあります。
こうなると1995年~2005年までの10年間の尿路結石患者の激増は、蛋白質・脂質には無関係の可能性が極めて高いです。
なお、メタボリック症候群の人はそうでない人に比べたら、尿路結石再発率が1.3倍という報告もあります。
またBMI25以上の人は、そうでない人に比べて、尿路結石発症リスクが2割増えるという報告もあります。
そしてメタボの根本要因は、精製炭水化物の頻回・過剰摂取によるグルコースミニスパイクとインスリンの頻回・過剰分泌でしたね・・・。
江部康二
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