75g経口ブドウ糖負荷試験と機能性低血糖について
【15/07/05 みなこ

初めまして
現在47歳の主婦です。
75g経口ブドウ糖負荷試験繋がりで質問させて頂きます。

若い頃より突然飢餓的な空腹に襲われることがあり、 その際に冷や汗や震え、手に力が入らなくなるなどの症状が出ます。

血糖値に異常があるのではと予想して、 ブドウ糖負荷試験(2時間)を受けました。

負荷前  80
30分後  144
60分後  216
90分後  217
120分後 222

食後高血糖ですね。
でも糖尿病ではないので気にすることはないとのこと。
低血糖症のことも聞いてみたのですが、あなたの場合は逆だから違いますよ、と。
境界型とも言われませんでした。

私は糖尿病でも低血糖症でもないのでしょうか?
2時間の計測では判断できないかもしれないですね。

最近の一番の悩みは、食後40〜50分経つと、激しい睡魔に襲われることです。
眠気を我慢するのではなく、眠いと感じる前に寝てしまっています。
座ったままで。

糖質20g以下を心がけること以外に、 対策やアドバイスがありましたらお願いいたします。】


こんにちは。

みなこさんから、75gブドウ糖負荷試験と機能性低血糖についてコメント・質問をいただきました。

みなこさんのデータは、負荷後2時間血糖値が222mg/dlなので診断基準的には「糖尿病型」です。

一回だけでは診断確定ではないですが、異なる日の再検査で、

随時血糖値200mg/dl以上、
空腹時血糖値126mg/dl以上
HbA1c6.5%以上

があれば、糖尿病と診断されます。

食後40~50分後の激しい睡魔ですが、糖質摂取に伴う血糖値の急激な上昇によるものと思われます。
負荷前:80mg/dl  →30分後:144mg/dl  → 60分後:216mg/dl

血糖値が1時間足らずで急激に上昇しても、下降しても眠たくなったり、ぼーっとしたりします。
みなこさんの場合、1時間で136mg上昇しています。


「若い頃より突然飢餓的な空腹に襲われることがあり、 その際に冷や汗や震え、手に力が入らなくなるなどの症状が出ます。」

この症状は機能性低血糖の可能性が高いと思います。

75gOGTTで4~5時間後に血糖値が60mg/dlをきっている可能性があります。

そのときに、強い空腹感・冷や汗・震え・脱力などが出現すると考えられます。

日常生活の中では、例えば、午後0:30に、糖質ありの昼食後、4~5時間後の午後4:30~5:30くらいに上記機能性低血糖の症状がでやすいと思います。


みなこさんの現在の問題点は「食後高血糖」「食後の激しい睡魔」「機能性低血糖」の3つです。
これらは、いずれもスーパー糖質制限食で改善されると思います。
それで必要十分と思います。


江部康二



【<糖尿病治療ガイド>
75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)検査手順

①朝まで10時間以上の絶食のあと検査開始。午前9時頃が好ましい。
②空腹のまま採血し血糖値を測定する。
③次にブドウ糖を飲用させる。
④ブドウ糖負荷後、30分、1時間、2時間に採血し血糖値を測定する。
⑤空腹時血糖値と75gOGTTによる判定基準に従い、糖尿病型・正常型・境界型のいずれかに判定する。

*検査終了まで、喫煙・運動は控える。

A)75gOGTTは糖尿病の診断に必須ではない。
自覚症状などから明らかな高血糖が疑われるときは、まず空腹時血糖値または随時血糖値を測定すべきである。高血糖状態で75gOGTTを行えば、さらなる高血糖を引き起こし有害である。

B)75gOGTTで空腹時と30分後のインスリン値を測定すれば、インスリン分泌能の指標であるインスリン分泌指数が計算できる。

C)75gOGTTで30分後と1時間後の血糖値は糖尿病の診断には必ずしも必要ないが、糖尿病ハイリスク群を見いだすのに役立つ。】



<糖尿病型・正常型・境界型の区分と判定基準>

75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)および、
随時血糖値、空腹時血糖値による判定基準をまとめると以下のようになります。

A)正常型
「空腹時血糖値が110mg/dl未満かつ120分後血糖値が140mg/dl未満」
を満たせば正常型。

B)境界型
正常型にも糖尿病型にも属さない場合をいう。

C)糖尿病型
「空腹時血糖値が126mg/dl以上またはOGTT120分後血糖値、随時血糖値が200mg/dl以上」
を満たせば糖尿病型。


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
機能性低血糖と糖質制限食
こんにちは。

はなさんから、低血糖について、コメント・質問をいただきました。


【13/12/12 はな

低血糖について

初めまして。一年糖質制限を行っている29歳女です。

江部先生のブログでは沢山勉強させて頂いており、本当にいつも感謝しています。

私は24歳の頃から低血糖症状に悩まされていました。家族に糖尿の人はいません。

今考えればそれまでの食事があまりにもひどく、夕食にお菓子を食べたり、麺類、パン、まさに一日三食糖質漬けだったのですが、その頃はそれが問題だとは夢にも思わず、ただ仕事で疲れているからだろうと、夕方にチョコレートなどを食べてその場しのぎをしながら数年が過ぎました。去年からは低血糖が頻繁に起こるようになり、それまでは夕方だけだった症状が、朝食後三時間くらいでもおこるようになりました。

自分自身でいろいろ調べた所、パンやインスタントラーメン、チョコレートスナックを食べた後に特に低血糖を起こしてしまうという所まで分かり、今年の初めに糖質制限に出会いました。

糖質制限は劇的な変化をもたらし、血糖値の変動が落ち着いたからか、私はほとんど低血糖を起こさなくなり、体重も5kg程減り、今は157cm, 体重は43.3です。

前置きが長くなり申し訳ありません。さて、ここからが質問なのですが、最近私は血糖測定器を買いました。

今でも時々だけ昼にパンを食べるのですが、そうすると、たまに低血糖を起こしてしまうので、血糖値の推移を調べようと思ったからです。

試しにパンを含んだランチを食べて血糖を測ってみた所、空腹時85の血糖値が、30分後には165でした。1時間値は134、2時間値は112でした。尚、食べたパンはバゲット一切れ程度で、決して量としては多くありません。一緒にジンジャーエールも飲みました。メインはサラダでした。

いろいろな所でこの値が正常なのか調べましたが、なかなか分かりません。ただ、本当に正常な人は沢山食べても140程度までしか上がらないという情報を見ました。私の値はそれに比べると高いですが、その後二時間で正常に落ちていますので、これはあまり糖尿病としては心配しなくてもいいのでしょうか?

そしてこの時はその後低血糖を起こしませんでしたが、以前起こしていた頻繁な低血糖は糖尿病の初期症状だったと考えてもよろしいのでしょうか?それ以外に低血糖を起こしてしまう病気があるのでしょうか?
お忙しい中長文で大変恐縮ですが、もし先生から何かお言葉頂ければ幸いです。】


はなさん。
低血糖症状が、糖質制限食で改善して良かったですね。

ただ、身長157cm、 体重は43.3kgなら、BMIは17.57で、少しやせすぎです。

脂質・タンパク質はしっかり摂取して、まずはBMI:18を確保し、そして徐々にBMI:20を目指しましょう。

機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。

易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。

ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。

やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。

機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。

家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。

境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。

そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが、2型糖尿病の特徴なので、「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」というパターンは、結構あると思います。

一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。

こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。当然、高校生や大学生は言うまでもありません。

いずれにせよ<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>というパターンです。

従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。

未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。

糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。

スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分の少量の糖質に対応して、せいぜい2~3倍くらいまでです。

この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。

機能性低血糖症の場合、糖質摂取後30分で120~140mg程度に上昇した血糖値が、60分で60mgになったりします。

これだと眠気も来そうですね。

さらに4時間後とかに40mgとかまで下がることもあります。

血糖値が40mgなら明らかな低血糖ですが、60mg以上あって正常範囲でも、血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。

大多数の機能性低血糖症が、スーパー糖質制限食で改善する可能性が高いと思います。

スーパー糖質制限食で改善しない症状に関しては「機能性低血糖症」以外の原因を考える必要があります。

「試しにパンを含んだランチを食べて血糖を測ってみた所、空腹時85の血糖値が、
30分後には165でした。1時間値は134、2時間値は112でした。」


糖質を75gを負荷した場合は、1時間値が、180mg未満、2時間値が140mg未満で、正常型となります。

はなさんの場合、糖質量がどのくらいあったかよくわかりませんが、30分後165mgというのは正常範囲ですが、29才としては少し上昇が速いですね。

全く糖尿病歴のない20代の人は、75gの糖質を摂取したとしても140mgを超えることはまずありません。

40才代とかになると、正常人でも、150mg、160mg/dlに上昇する人は珍しくありません。

はなさんの場合は糖尿病になりやすい素因がありそうですので、今後糖質制限食を続けていけば、将来の糖尿病発症が予防できると思いますよ。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
機能性低血糖と糖質制限食
よよさん。
コメントありがとうございます。

糖質制限食歴5年ですか。

継続は力なりです。

このまま美味しく楽しく糖質制限食をお続けくださいね。

私もキューピーのマヨネーズをこよなく愛するマヨラーです。

モリドルオリーブオイルも美味しいです。

「頂き物などのお菓子を空腹時に食べると2時間半くらいして、必ずと言っていいほど、頭がボーッとするやら体に力が入らないいわゆる機能性低血糖症状になります。

以前やむを得ず、おむすびだけの昼食を済まして 畑仕事をしたときにも同じく症状に見舞われました。正に恐怖を感じます。」



糖質を摂取して、血糖値が上昇すると、インスリンが追加分泌されます。

糖尿人あるいは遺伝的に糖尿病素因のある人の場合、追加分泌がまず出遅れることが多いので、食後高血糖になりやすいです。

そして、出遅れた追加分泌インスリンが遷延して、血糖値が正常下限まで下がった後も、出続けることがあり、低血糖を誘発します。

追加分泌インスリンが、ほとんど出せなくなっている段階の重症の糖尿病ではこのようなことは生じませんので、よよさんの場合は、上述のように糖質摂取後の追加分泌インスリンが出遅れて遷延するタイプのようです。

スーパー糖質制限食(糖質制限のスイーツなど)なら、インスリン追加分泌はほとんど出ないので機能性低血糖になることもありません。

インスリンには、24時間ずっと出ている基礎分泌と糖質摂取時に出る追加分泌があります。

基礎分泌が不足すると、早朝空腹時血糖値が上昇していきます。

早朝空腹時血糖値は、110mg/dl未満が正常型、110~126未満が境界型、126以上が糖尿病型です。

食後高血糖(境界型レベル)が数年間続いて、膵臓のβ細胞を障害していき、遂にインスリン基礎分泌が不足して、糖尿病型になるというのが、日本人の糖尿病の典型的パターンです。

遺伝的に糖尿病の素因がある人で、まだ糖尿病発症していない場合は、糖質摂取時に、追加分泌インスリンが遷延して、機能性低血糖を起こしやすいことがあります。

よよさんも、緩やかでもいいので糖質制限食を実践することで、現実の機能性低血糖を防ぎつつ、将来の糖尿病発症も予防するのがよいと思います。

内科医師TrueLife さんのコメントも参考になりますよ。

TrueLife さんありがとうございます。

江部康二


【13/06/14 よよ

私の膵臓は?
お邪魔することをお許しください。

先生のご活躍で私を含め、多くの糖尿人が救われているのは本当に有り難いことです。

糖質制限を始めて5年目です。56キロあった体重が51キロをキープしています。

甘味料はラカントS以外使っていません。以前は肥ると思い敬遠していたキューピーマヨネーズ(カロリーオフではないもの)を堂々と食べ、オイルはオリーブ油。

モリドルオリーブオイルは最高ですね。その昔糖尿病になったら、人生の楽しみが半減するものと思っていました。

でも、面倒なカロリー計算をすることもなく、糖質を気にかけるだけでこんなにも楽しく食事ができるなんて素晴らしいですね。

あらてつさんの努力のお陰で低糖質パンや市販のケーキよりも抜群に美味しいスイーツなど口にできるのですから幸せです。

ところで、糖質制限のスイーツは少しくらい多く食べても全く低血糖症状を起こすことはありませんが、頂き物などのお菓子を空腹時に食べると2時間半くらいして、必ずと言っていいほど、頭がボーッとするやら体に力が入らないいわゆる機能性低血糖症状になります。

以前やむを得ず、おむすびだけの昼食を済まして 畑仕事をしたときにも同じく症状に見舞われました。正に恐怖を感じます。

先生にお尋ねしたいのですが、私の場合低血糖を起こすほど大量のインスリンが出てしまうということなのでしょうか。そうすると、まだ膵臓のβ細胞は元気で働いてくれているわけでしょうか。

基礎分泌量が少ないから食後すぐに高血糖を生じ、まだそこそこ膵臓も正常の域にあるから、遅ればせながら頑張ってインスリンを出し過ぎてしまうのでしょうか。

機能性低血糖症状というのは本格的糖尿病になる前段階ということでしょうか。

糖尿病を発症する前には、誰もが経験するものなのでしょうか。お忙しいと思いますが、コメント頂けたら有り難いです。】




テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖尿病とラーメン実験と機能性低血糖
こんにちは。

今回は、ジロリアンさんから、ラーメン実験と機能性低血糖という興味深いコメントを頂きました。


【11/05/07 ジロリアン
江部先生お久しぶりです。
コメントさせて頂くのは昨年の3月3日ぶりです。
先生と出会い、スーパー糖質制限食によって 血糖コントロールが良好となり、体も絶好調で お酒を大量に飲んでも、翌日は二日酔いがありません。
まぁ、大量に飲んではいけないのでしょうが、 体が調子が良いからか量が飲めてしまうのです。
でも、気をつけないといけませんよね。

さて今回、スーパー糖質制限食1年4ヶ月になり、 久々に自分の体で人体実験をしてみました。
大好きだったラーメンを食べて血糖値を測定してみたのです。

麺が約300gのものを食べました。
食前血糖値  98mg
食後30分   143mg
食後1時間  241mg
食後2時間  249mg
食後3時間   60mg
食後4時間  174mg
食後7時間  223mg

食後3時間で急激に血糖値が下がっています。
この時、急に体が怠くなり、脂汗が出て震えも来ました。
両足の膝から下に痺れのような感覚もありました。
血糖値がこれ以上下がったら危ないと思い、 効果の程は分かりませんが、 飴を一つ食べてから、フラつくので寝ていました。
しばらくして体が楽になったので血糖値を計ると174mgでした。
ラーメンを食べてからは何も食べていないのに 食後7時間でも200mgオーバーとは 精製炭水化物恐るべしです。

実は、糖質制限食を始めてから ラーメンを食べるのは今回が3回目なのですが、 今まで、低血糖の症状はありませんでした。 ですので今回の低血糖症状は少し驚きで 糖質は危険であると再認識した次第です。】



ジロリアン さん。
お久しぶりです。

スーパー糖質制限食で血糖コントロールが良好、良かったです。
本日は貴重な実験報告、ありがとうございました。

ゆでた麺が約300gなら、糖質含有量は83.6gです。

食前血糖値  98mg
食後30分   143mg
食後1時間  241mg
食後2時間  249mg
食後3時間   60mg
食後4時間  174mg
食後7時間  223mg

1gの糖質が約3mg血糖値を上昇させるとして、83.6gなら250mg上昇で、<98+250=348>

ピークの食後血糖値は348mgになってもおかしくないので、それなりに内因性のインスリン追加分泌が出ているようです。

食後30分143mgなので、追加分泌インスリンの第1相は、血糖値上昇を45mgに抑える程度には出ています。

一方、追加分泌インスリンの第2相は出遅れて、食後1時間241mg、食後2時間 249mgと、それぞれ143mg、151mgの上昇です。

出遅れた追加分泌インスリンが、その分遷延して出続けるので、食後3時間60mgと一気に下降しています。そのため機能性低血糖の症状が生じています。

2型糖尿人における、典型的な機能性低血糖パターンです。

ただ、インスリン分泌能が、もっと衰えてしまった2型糖尿病なら、低血糖が生じるほどインスリンを分泌できませんので、ジロリアンさんは、まあまあ糖尿人としては軽くて良かったと言えますね。

「食後4時間174mg、食後7時間223mg」

飴1個にしては、血糖値が上がりすぎですね。

また糖質そのものの吸収は、数分から2時間で終了ですので、ゆでた麺が約300g(糖質含有量83.6g)が、7時間後まで影響を及ぼすことはないと思います。

食後4時間と7時間の血糖値の上昇は、低血糖に対して生体が一生懸命反応して、血糖上昇作用のあるグルカゴン、アドレナリン、副腎皮質ホルモンが結構大量に分泌されて、肝臓の糖新生も亢進したのでしょうね。

ともあれ、これだけのことを起こすわけですから

「精製炭水化物恐るべし」

ですね。


江部康二


☆☆☆インスリン

インスリンは人体で唯一血糖値を下げるホルモンで、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞でつくられ分泌されます。

24時間少量持続的にでている基礎分泌のインスリンと、食後血糖値が上昇したときにその10~20倍の量が出る追加分泌のインスリンがあります。

基礎分泌のインスリンの量では、筋肉・脂肪細胞などの糖輸送体*Glut4は、細胞内部に沈んでいるのでほとんど血糖を取り込むことができません。

糖質を摂取し血糖値が急上昇しインスリンが大量に追加分泌されると、Glut4が細胞表面に移動し、筋肉・脂肪細胞が血糖を取り込みます。

このとき余った血糖が中性脂肪に変わるので、インスリンは別名肥満ホルモンと呼ばれています。

追加分泌のインスリンには、即分泌される第1相と少し遅れて出る第2相があります。正常人は、血糖値が上昇し始めたら即インスリンが追加分泌されます。

この第1相反応は、もともとプールされていたインスリンが5~10分間分泌されて、糖質摂取時の急激な食後高血糖を防いでいます。

その後、膵臓のベータ細胞は、第2相反応と呼ばれるやや少なめの持続するインスリン分泌を行います。

これは、食事における糖質の残りをカバーしています。即ち、糖質を摂取している間は、第2相のインスリン分泌が持続します。

2型糖尿病患者は、通常、第1相反応が低下或いはなくなっていることが多いようです。従って、糖質摂取時に血糖値の急激な上昇(グルコーススパイク)が起きてしまいます。

また、第二相も低下していることが多いので、糖質を摂取する限り、一旦上昇した血糖値はなかなか下がってきません。

糖質制限食ならば、食後高血糖はほとんど生じません。従って、追加分泌インスリンは、ごく少量ですみます。


(*)
糖輸送体(Glut:glucose transporter)

ブドウ糖が細胞膜を通過して細胞内に取り込まれるためには、グルコーストランスポーター(糖輸送体)と呼ばれる膜蛋白が必要です。

Glut1~Glut14まで報告されています。
Glut1(脳、赤血球、網膜などの糖輸送体)はインスリン非依存性で、常に細胞の表面にあり、血流さえあればすぐに血糖を取り込めます。
Glut2(肝臓、膵臓のβ細胞などの糖輸送体)はインスリン非依存性です。
Glut4(筋肉細胞、脂肪細胞の糖輸送体)はインスリン依存性です。
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機能性低血糖症・2011年
こんにちは。

ここのところ、機能性低血糖に関わるコメントが続いてますので、復習を兼ねて、整理してみます。


機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。

易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。

ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。

機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。

家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。

境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。

そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが、2型糖尿病の特徴なので、「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」というパターンは、結構あると思います。

一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。

こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。当然、高校生や大学生は言うまでもありません。

いずれにせよ

<糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖>

というパターンです。

従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。

糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。

スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分のせいぜい2~3倍くらいまでです。

糖質制限食実践中は、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われるので、通常は基本的に適正血糖値が保たれます。

ちなみに脂質は、インスリンを分泌させません。タンパク質は、ごく少量インスリンを分泌させます。

この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。

診断は、75g経口ブドウ糖負荷試験で行います。

通常、糖尿病の診断のためには空腹時に開始して、ブドウ糖を服用後2時間までの血糖値を測定します。機能性低血糖症の場合は、ブドウ糖服用後5時間まで血糖値を検査します。

機能性低血糖症の場合、負荷後30分で120~140mg程度に上昇した血糖値が、60分で60mgになったりします。これだと眠気も来そうですね。さらに4時間後とかに40mgとかまで下がることもあります。

血糖値が40mgなら明らかな低血糖ですが、60mg以上あって正常範囲でも、血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。

また、空腹時の検査開始時血糖値より20%以上、負荷後血糖値が下がる時点があることが多いようです。

例えば負荷前空腹時血糖値が90mgくらいで、ブドウ糖負荷後4時間で60mgとかになります。これで33%下がってますね。

本来血糖値が正常になれば、インスリン追加分泌も即中止になるはずなのですが、出過ぎた場合と遷延した場合には必要以上に血糖値が下がります。


ともあれ5時間の「75gブドウ糖経口負荷試験」って、患者さんもスタッフもちょっと大変なので、高雄病院では実施していません。だいたいは問診で見当がつきますし・・・。

大多数の機能性低血糖症が、糖質制限食で改善する可能性が高いと思います。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット