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ステロイド糖尿病
こんにちは

今回はWOOさんから、ステロイド糖尿病についてコメント・質問をいただきました。

「10/01/04 WOO
ステロイド糖尿病
再度ご相談させていただきます。
プレドニンが10㎎/日から5㎎/日になりましたがステロイド糖尿病が改善されません。
ステロイド投与は、かれこれ1年になります。
インスリンが無しでの昼・夕食後の血糖値が200前後だったりします。
食後運動をするようにしたので、血糖値は160くらいまで下げられるようには
なりましたが、食後運動をするのは仕事の都合もあり困ってます。
プレドニンがゼロになって永続の可能性はありますでしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが再度コメントいたけますと幸いです。よろしくお願いいたします。」


WOOさん。
ステロイド糖尿病について、まず簡単に整理してみましょう。

副腎皮質ホルモンを一定以上の量、長期にわたり投与することにより、糖尿病・耐糖能異常をきたすことがあります。
文献によると、副腎皮質ホルモンの長期投与で糖尿病状態となる頻度は約8%です。

副腎皮質ホルモンの分泌過剰症であるクッシング症候群という病気がありますが、約80%に軽い耐糖能異常が認められます。

ステロイド(糖質コルチコイド)の作用として

①肝臓の糖新生亢進作用、
②骨格筋などのインスリン抵抗性の亢進
③高グルカゴン血症
④食欲増進作用

があります。

これらの作用により耐糖能が低下すると考えられます。

例えば、コルチゾールという副腎皮質ホルモン投与後、2~3時間で血糖値が上昇し始め、約5~8時間でピークとなります。

ステロイド投与により糖尿病を発症する場合ですが、現実にはもともと糖尿病の素因があった人が発症することが多いです。

まあ、この場合は、ステロイド糖尿病というよりは、2型糖尿病の発症にステロイド投与が他の環境因子などと共に一つのきっかけとなったということですね。

厳密な意味でのステロイド糖尿病は、外部からのステロイド投与がなくなれば、糖尿病が消失することが定義となります。

従いまして、W00さんの家族歴に糖尿病が全くなくて、肥満などの要因もない場合は、純粋なステロイド糖尿病で、プレドニンが休薬となれば、治る可能性が高いと言えます。

一方、家族歴に糖尿病があれば、2型糖尿病の可能性もありえると思います。

いずれにせよ、スーパー糖質制限食でコントロール可能と思いますが・・・


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
ステロイド糖尿病?
おはようございます。

今回はケロさんから、ステロイド糖尿病に関してコメント・質問をいただきました。

「ステロイド糖尿病
初めまして
7月に糖尿病と診断されたケロといいます。
糖尿病と診断されてからすぐに先生の本を数冊購入し、即実行させて頂き、
診断時Hba1c8.6→現在5.8
まで改善することができました。
先生、本当にありがとうございます。

しかし先日、血液検査をして頂きHOMA-rとHOMA-βを調べてもらった所
HOMA-rは3.5
HOMA-βは93%
でした。
完全なインスリン抵抗性との説明を受けましたが、インスリン分泌は十分に出てるとの事。
なぜだか気になりネットでいろいろと調べてみたら、ステロイド糖尿病はHOMA-rが3以上、HOMA-βは50~100% が診断基準みたいな事が書いてありました。
私は喘息、アトピーがあり、今はアドエア100を使っています。発作がある時にはプレドニン5mgを処方されることもありました。アトピーに関してはステロイドを使用した事もあります。
…と言うことは、私はステロイド糖尿病の可能性があるのでしょうか?

ステロイド糖尿病は何か違いがあるのでしょうか?
もし、ステロイド糖尿病だったとして、糖質制限は続けても問題ないでしょうか?
2009/09/17(Thu) 23:20 | URL | ケロ」


ケロさん。
コメントそして本のご購入ありがとうございます。
HbA1cの見事な改善、良かったですね。

HOMA-R
<HOMA-R=空腹時血糖値×空腹時インスリン値÷405>
HOMA-Rが大きいほど、インスリン抵抗性が強いと考えられます。
1.6以下が正常で、2.5以上は抵抗性があると考えられます。
ケロさんは3.5ですので、主治医殿の仰有る通りインスリン抵抗性がありますね。

HOMA-β
インスリンの分泌機能を示す指標です。
空腹時血糖と空腹時のインスリン値をもとに内因性インスリン分泌能力を推定します。
<HOMA-β = 360×空腹時インスリン値 [μU/ml] ÷ (空腹時血糖値 - 63) >
正常値:40-60
ケロさんは、93なら多いくらいインスリンが分泌されています。

インスリン抵抗性があるため、過剰のインスリン分泌で代償しているのでしょう。通常は、肥満があるとインスリン抵抗性が出現します。糖質制限食で体重が適正まで減少すれば、インスリン抵抗性も改善すると思いますよ。

ステロイド糖尿病は、難病などでステロイド剤を長期に内服したことによって生じる続発性糖尿病です。

ステロイドが血糖値を上昇させる理由は3つあります。

1.肝臓における糖新生亢進作用
2.インスリン抵抗性の亢進
3.膵β細胞におけるインスリン分泌抑制作用

一方、気管支喘息の標準治療である吸入ステロイド薬は長期に使用しても、経口ステロイド薬のような全身的副作用の心配はありません。

私も気管支喘息の患者さんによく処方しますが、糖尿病など全身的副作用の経験はありません。 アドエアは吸入ステロイド薬の一つですね。

経口ステロイド薬の1回使用量がミリグラム単位であるのに対して、吸入ステロイド薬の1回量はマイクログラム(1/1000ミリグラム)単位と、薬は非常に少ない量ですみます。このことが全身的副作用がほとんどない理由の一つです。また、たまにプレドニンを内服したていどでは、ステロイド糖尿病にはなりません。

従ってケロさんは通常の糖尿病で、ステロイド糖尿病ではありません。このまま美味しく楽しく糖質制限食をお続け下さいね。

なおステロイド糖尿病の時にも糖質制限食を実践すれば、通常の糖質を摂取する糖尿病食よりは血糖値は改善しますが、治療の本質はステロイド内服薬の減量・離脱ですね。


江部康二
テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット