fc2ブログ
インフルエンザのとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけ。
こんにちは

そろそろ、インフルエンザが気になる季節ですが、インフルエンザのとき、使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけです。
商品名はカロナール、コカール、アンヒバなどです。

それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、アスピリン・・・これらの一般的なNSAIDSは、脳症のリスクがあるので全て使用してはいけません。


<脳炎と脳症の違い>

病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。

脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。

インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。

インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。

すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。

<インフルエンザウィルスは血中に入れない>

現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。

従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。

インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。

マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。

<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>

麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。

ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。

日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。

<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>

インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。

免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。

サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。

全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。

この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。

サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。

しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。


<解熱剤>

平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。

これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。

また、これらの解熱剤が、サイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。

結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。

アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。

インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)も使用してはいけません。

要するにアセトアミノフェンだけです。

なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性は有り得ますので、私は、子どもは勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。


☆☆☆

http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋

免疫系におけるサイトカインの役割

 病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。

 平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
インフルエンザ脳症と解熱剤
こんにちは

京都は0度で、また雪が積もりました。

幸い凍結はなかったので、無事テニスに行ってきました。

さて今日のブログは、インフルエンザ脳症と解熱剤についてです。


<脳炎と脳症の違い>

病理学的には、脳炎( encepahlitis)と は、ウィルスが直接脳に侵入、脳細胞に感染して増殖し炎症を起こすもので、脳神経細胞がウィルスによって直接破壊されます。

脳症( encephalopathy) は、脳の中にウィルスが存在しないのに脳が腫脹します。

インフルエンザウィルス感染により、まれに脳症が生じますが、原因は不明とされています。

インフルエンザウィルス自体による脳細胞の直接障害ではなく、何らかの原因により高サイトカイン血症などが引き起こされて、脳に浮腫などの障害をひき起こします。

すなわち、病理学的にはインフルエンザ脳炎は存在せず、インフルエンザ脳症が存在するということになります。

<インフルエンザウィルスは血中に入れない>

現時点でインフルエンザウィルスはA型もB型も新型も血中に入れません。

従って、インフルエンザウィルスが脳に直接感染することはないのです。

インフルエンザウィルスは、上気道・下気道・肺と消化管以外には感染できません。

マスコミでインフルエンザ脳炎とかインフルエンザ脳症と言っているのは、正確には「インフルエンザ関連脳症」という病名が一番適切です。

<麻疹ウィルスやヘルペスウィルスは血中に入れる>

麻疹ウィルスは血中に入れるので、脳にも感染して、まれではありますが、麻疹脳炎を生じ得ます。

ウイルス感染性脳炎としては単純ヘルペス脳炎が最も多いです。

日本脳炎ウィルスや狂犬病ウィルスも、脳炎を起こします。

<インフルエンザ脳症とサイトカインストーム>

インフルエンザ脳症の鍵となる現象は、サイトカイン・ストームと呼ばれる免疫系の異常反応です。

免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。

サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。

全身の細胞から通常量をはるかに超えるサイトカインが放出され、体内を嵐のように駆け巡ります。

この過剰なサイトカインストームにより、インフルエンザ関連脳症が生じると考えられています。

サイトカインストームが起こる原因は、今のところ不明です。

しかし解熱剤がサイトカインストームに悪影響を与えている可能性が示唆されています。


<解熱剤>

平成21年の厚生労働省のインフルエンザ脳症ガイドラインには、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタール)の内服は、インフルエンザ脳症の予後不良因子の一つに挙げられています。

これらの解熱剤が、インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させている可能性が示唆されています。

また、これらの解熱剤がサイトカインストームを生じたきっかけになっている可能性も否定できません。

結局、安全性が確立している、解熱剤は、アセトアミノフェンだけです。

アセトアミノフェンの商品名は、カロナール、コカール、アンヒバ座薬などです。

インフルエンザにかかったときは、アセトアミノフェン以外の他の解熱剤(ロキソニン、インダシン、ブレシン、アスピリン・・・)
も使用してはいけません。

要するにアセトアミノフェンだけです。

なお、風邪などのウィルス感染でも同様の危険性はありえますので、私は、子供は勿論のこと、大人にも解熱剤は、基本的的にアセトアミノフェンしか処方しません。


☆☆☆

http://www.jst.go.jp/crest/immunesystem/result/05.html
独立行政法人 科学技術振興機構のサイトから抜粋

免疫系におけるサイトカインの役割

 病原体に対する免疫系の攻撃としては、主に好中球やマクロファージなどの自然免疫系の貪食細胞による貪食作用、キラーT細胞による細胞傷害性物質の放出による宿主細胞の破壊、B細胞が産生する抗体による病原体の不活化などがあります。このような免疫細胞の活性化や機能抑制には、サイトカインと総称される生理活性蛋白質が重要な役割を担っています。サイトカインには白血球が分泌し、免疫系の調節に機能するインターロイキン類、白血球の遊走を誘導するケモカイン類、ウイルスや細胞の増殖を抑制するインターフェロン類など、様々な種類があり、今も発見が続いています。サイトカインは免疫系のバランスの乱れなどによってその制御がうまくいかなくなると、サイトカインストームと呼ばれるサイトカインの過剰な産生状態を引き起こし、ひどい場合には致死的な状態に陥ります。サイトカインは本来の病原体から身を守る役割のほかに、様々な疾患に関与していることが明らかになってきています。

 平野チームは、自ら発見したサイトカインの一種であるIL-6が自己免疫疾患の発症制御において、中心的な役割を担っていることを独自に開発した疾患モデルマウスを用いて明らかにしています。また、免疫細胞の中枢神経系への侵入口を発見したことから、神経系自己免疫疾患の発症仮説を提唱しています。岩倉チームは、炎症性サイトカインであるIL-17ファミリー分子の機能的役割を解析する中で、これらファミリー分子が感染防御と炎症抑制において、役割分担されていることを見出しています。



江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
インフルエンザワクチンと予防効果
こんにちは。

インフルエンザが流行っています。

インフルエンザワクチンを接種した人も接種してない人もいると思います。

知っておいて欲しいことは、インフルエンザワクチンは万能ではないということです。

感染防御力は基本的になくて、重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。

ワクチンを打っている人も打っていない人も、手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。

特に、手洗いが思った以上に有効です。

ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、 自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗いましょう。

咳やくしゃみで飛んだ飛沫が服についても、数時間で感染力を失うとされています。外出から帰宅したら着替えすることも予防に役立ちます。


以下の青字は厚生労働省サイトの記載です。

インフルエンザの予防にはみんなの「かからない」、「うつさない」という気持ちが大切です。
手洗いでインフルエンザを予防して、かかったら、マスク等せきエチケットも忘れないでください。


インフルエンザにかかった人は、必ずマスクをして他人にうつさないように配慮が必要です。

<インフルエンザワクチンの有効性>

インフルエンザワクチンは、季節性にも新型にも対応しています。

しかし、実は現行のインフルエンザワクチンには、水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。

感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので過信するのは禁物です。

理論的に考えても、ワクチンを接種することによりIgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。

従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。


下記は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。

【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」

(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。

しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには期待出来ると考えられています。」】


<院内感染>

例年と同様に2014年、2015年も全国各地の病院や施設で、職員や患者さんにインフルエンザの集団感染が起こっています。高齢の患者さんの死亡者も出ています。

これらの集団感染において、ほとんどの人はインフルエンザワクチンを接種していました。

このように、感染防御にはワクチンは、実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。

そもそもインフルエンザワクチンは「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。

感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。


<誤解>

ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、ワクチンを接種していれば、水際で感染防御できると誤解しておられるのです。

私は、過去10年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでした。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。

ここ数年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。

逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判も反省もないのは如何なものでしょう。

インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して、

「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」

と付け加えます。


<必要性>

別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。

65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。


<感染防御>

①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクを
 して乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクを
 する。その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること

ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、上記①~⑦を励行してくださいね。

これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。


<終わりに>

インフルエンザワクチン接種に、賛成の人も反対の人もあると思います。

ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。


江部康二


テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
インフルエンザ感染予防とマスク、手洗い、うがいの効果
こんばんは。

今日も朝は零度の京都です。

さて今回は、ゆかちんさんから、インフルエンザ感染予防とマスク、うがいの効果についてコメント・質問をいただきました。


「11/01/07 ゆかちん
マスクやうがいの効果
明けましておめでとうございます。先生のブログが大好きでいつも勉強させていただいてます。インフルエンザワクチンのお話も大変勉強になりました。ありがとうございます。ところで、うがいの効果について質問したく思います。各メディアで風邪やインフルエンザ予防にマスクやうがいが効果的であると啓蒙する一方、効果がほとんどないという記事も見かけます。私はマスクもうがいもこまめにしますが、周りには効果がないのに神経質だとか言う人もいて、また、そう言う人は人前で口や鼻を覆わずに平気でくしゃみや咳をするのでがっかりします。彼らに理解を得るために先生の理論的なご意見が聞けると嬉しいです。」


ゆかちんさん。
コメントありがとうございます。

インフルエンザウィルスは、口や鼻の粘膜から侵入します。理論的には眼の粘膜からも感染しえるという理屈ですが、さすがにまれと思います。

患者の咳やくしゃみによる分泌物の直接飛沫感染や、分泌物が付着した器物に触れた手で、自分の鼻や口にさわって感染します。

ウィルスが口腔や鼻咽頭の粘膜表面にとりついて、防御を突破して粘膜細胞内に侵入するのに要する時間は、20~30分くらいと言われています。

ウイルスが粘膜内にいったん侵入してしまうと、猛スピードで増殖し、16時間後には1万個に、24時間後には100万個に増えて、粘膜細胞を破壊し始めます。

そして、上気道や下気道に広がり、肺内にも感染します。鼻咽頭や口腔粘膜細胞内で増殖したインフルエンザウィルスは、飲み込まれて消化管粘膜にも感染します。

さて、マスクの効果ですが、飛沫感染をかなり防ぐことができます。

うがいは、目の前で咳をされたら20~30分以内にすれば、侵入される前に洗い流せるので、確実に効果が期待できます。

手洗いは、器物に触って手についたインフルエンザウィルスを含む分泌物を、洗い流すのに有効です。

ということで、マスク、手洗い、うがいはインフルエンザウィルス感染予防におおいに有効と考えられます。


<感染防御の心得>

①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクをして乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクをする。     
 その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
インフルエンザとワクチンと予防
おはようございます。

インフルエンザがそろそろ流行っていますが、インフルエンザワクチンは万能ではありません。

感染防御力は基本的になくて、重症化を防ぐことが期待されるていどの効能です。

ワクチンを打っている人も打っていない人も、手洗い、うがい、マスクがインフルエンザ予防の基本ですね。

当初、2010年11月頃は季節性のA香港型が流行の中心でしたが、最近は新型となっています。

毎日新聞 2010年12月31日 東京朝刊

【国立感染症研究所(感染研)によると、今シーズン国内各地で検出されたウイルスはA香港型が7割近く、新型が3割弱、残りがB型。だが、流行入りした最新の1週間(12月13~19日)に新型はA香港型の約3倍と逆転し、12月6~26日の3週間の速報値(28日現在)では新型が182件でA香港型の71件を大幅に超えた。】

以下、復習を兼ねて、インフルエンザワクチンについて、考えて見ます。


インフルエンザワクチンの有効性>
2010年度冬から接種している今回のインフルエンザワクチンは、季節性にも新型にも対応しています。しかし以前からわかっていたことですが、実は現行のインフルエンザワクチンには、水際で感染をシャットアウトするような効果はありません。

感染した後、重症化を防ぐ効果が期待されるという程度なので過信するのは禁物です。

理論的に考えても、ワクチンを注射することにより、IgG抗体が血液・体液中に産生されますが、粘膜面を防御しているIgA抗体は全くできません。

従って、インフルエンザウィルスが、咽や鼻の粘膜を突破して細胞内に侵入した後(感染が成立した後)、はじめてIgG抗体がかけつけて戦うことになります。


下記は国立感染研究所のホームページからの抜粋です。
http://www.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html

【7.インフルエンザワクチンの問題点
(2)「現行ワクチンの感染防御効果や発症阻止効果は完全ではありませんので、ワクチン接種を受けてもインフルエンザに罹患する場合があり、この場合には患者はウイルスを外部に排泄し、感染源となります。従って、集団接種を行っても社会全体のインフルエンザ流行を完全に阻止することは難しいと考えられます。」

(6)「現行のインフルエンザワクチンは皮下接種されています。しかし、不活化ワクチンの皮下接種では、インフルエンザウイルスの感染防御に中心的役割を果たすと考えられる気道の粘膜免疫や、回復過程に重要であると考えられる細胞性免疫がほとんど誘導されません。これは、インフルエンザウイルスの感染そのものを防御すると言う面では大きな短所であると考えられています。しかし、この様な欠点を持ちながらも、先に述べたように、ハイリスク群に対する現行インフルエンザワクチンの効果は明らかに認められています。また、ワクチンの皮下接種でも血中の抗体産生は十分に刺激できるので、インフルエンザに続発する肺炎などの合併症や最近問題となっているインフルエンザ脳炎・脳症の発生を抑えることには期待出来ると考えられています。」】


<院内感染>
2009年1月18日(日)新聞に、東京都の某病院(内科と認知症主体の精神科)で1月17日までに、入院患者77人と職員24人の職員が相次いでインフルエンザを発症し、女性患者3人が死亡したという痛ましい記事が載りました。ちなみに院長も感染したそうです。1月3日に20代の女性職員がインフルエンザに感染し、6日以降入院患者に広がりました。

亡くなった3人は、いずれも高齢の認知症で寝たきりの患者で、2人はワクチンを接種していました。

インフルエンザに罹患した77人の入院患者のうち、68人はワクチンを接種しており、罹患した24人の職員のうち、21人が接種を受けていました。

インフルエンザワクチン「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」ということが効能です。奇しくも上述の記事で、感染防御には実際にまったく無力だったことが明らかとなりました。

院内感染を防ぐためには、「手洗い、うがい、マスク」が必須です。


<誤解>

ところが、相変わらず多くの患者さんや医師が、水際で感染防御できると誤解しておられるのです。

私は、過去十年間以上、友人の医師などに、感染防御はできないと口を酸っぱくして言い続けてきたのですが、皆なかなか信じてもらえませんでした。どこかで誤った情報が流され続けていたのでしょうね。

ここ2~3年、新聞などでもやっと、「感染防御はできないが、重症化を防ぐ」という真実が報道されるようになりました。

逆に言えば、過去10年以上、あたかも感染防御できるような内容の報道に終始していたわけで、そのことに関して自己批判もなくてなんだか興ざめです。

インフルエンザワクチン注射を希望する患者さんがこられたら、私はこのことを説明して、「手洗いやうがい、人混みを避けるなど、基本的なことが感染防御には大事なので、ワクチンを接種したからといって油断しないでくださいね。」と付け加えます。


<必要性>

別に私は、ワクチンが無意味といっているのではありません。

65歳以上の高齢者、呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患の患者、免疫低下状態の患者などでは、インフルエンザに罹患し重症化すれば、肺炎などの重篤な合併症になり、生命に危険が及ぶこともありますから必要だと思います。若い人でも、受験生などは重症化したら困りますから、接種する意味はありますね。


<感染防御>

①医療関係者は、インフルエンザ患者を診察するときはマスクをする。
 診察が終わったら必ず手洗いをし、使い捨て紙タオルでふく。
 マスクをはずしたときはうがいをする。
②急性の咳や熱がでている当事者はエチケットとして、マスクをする。
③満員電車の中など避けようがない密閉された場所にいくときはマスクを
 して乗る。
④人混みにでたあとは、手洗い・うがいを励行する。
⑤家族が一人インフルエンザに罹患したら、家の中でも当事者はマスクを
 する。その一人は、違う部屋で寝る。
⑥咳で飛沫が飛ぶのは約1mであるので当事者から距離を取る。
⑦鼻水や痰を封じ込めるためにティッシュを使用し、使用後のティッシュは、
 できればノンタッチごみ箱に廃棄すること

ブログ読者の皆さん、インフルエンザワクチンを接種している人も、感染防御効果はないことをしっかり認識して、上記①~⑦を励行してくださいね。これが実行されていれば、上述のような院内感染が猛威をふるうことはなかったでしょう。


<終わりに>
インフルエンザワクチンに、賛成の人も反対の人もあると思います。ブログ読者の皆さんには、インフルエンザワクチンの真実を知ってもらいたくて今回記事にしました。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット