2015年05月03日 (日)
【15/05/03 じゅん
大腸がん
肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上がる。
って別のサイトでかいてました。
糖質制限食は大丈夫なんでしょうか?心配で質問させていただきましたorz】
こんばんは。
じゅんさんから、肉の食べ過ぎと大腸がんのリスについて、コメント・質問をいただきました。
「ニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上がる」というのは、あくまでも仮説にすぎないと思います。
一方、赤身の肉・加工肉ですが、がんのリスクを高めることを示唆する文献はあります。
確かに、そういう結論のいろんな文献がありますが、全て糖質を30数%~50~60%摂取している集団のデータなので、 スーパー糖質制限食実践者(糖質摂取比率12%)にはあてはまりません。
次に世界ガン研究基金の2007年の報告について検討してみます。
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
このサイトで、必要な確認だけして、内容を検討してみました。
まずは、ウィキペディアの解説です。
よくまとまっているので、以下に引用しました。
【食生活指針
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E7%94%9F%E6%B4%BB%E6%8C%87%E9%87%9D
世界がん研究基金によるがん予防の勧告
1997年に4500以上の研究を研究を元に、「食べもの、栄養とがん予防」 (Food, Nutrition, and the Prevention of Cancer: A Global Perspective) が報告された。日本では、がん予防14か条、タバコの制限を加えてがん予防15か条として紹介された。
2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防[15]」が報告されている。
①肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。 推薦:標準体重の維持、BMI25未満。
②運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。
③体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。
④植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。 推奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。
トランス脂肪酸は心臓病のリスクとなるが、がんへの関与は知られていない。
⑤動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。 ゴール:赤肉は週300g以下に。 推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。
⑥アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。
⑦保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。 推奨:塩辛い食べものを避ける。
塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。
⑧サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。 推奨:がん予防のためにサプリメントに頼らない。
⑨母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。
⑩がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。
***
タバコの煙もがんの主因であると強調している。また、タバコとアルコールは相乗作用で発癌物質となる。】
世界ガン研究基金の報告においても
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。 ゴール:赤肉は週300g以下に。 推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。」
と、明快な記載ですね。
しかし、世界ガン研究基金の報告の元になった数多くの文献も、全て糖質を30数%~50~60%摂取している集団のデータなので、 スーパー糖質制限食実践者にはあてはまらないと思います。
世界がん研究基金の報告では、肥満に関しては、大腸・食道・膵臓・腎臓・子宮内膜(子宮)・乳房のガンになるリスクが高まるとしています。
これら6つのガンに関しては、はっきり肥満がリスクになるということです。
また、胆嚢に関しては、肥満がおそらく発ガンのリスクを高めるとしています。
肥満がリスクになるガンは、高インスリン血症が関与している可能生が高いと思います。
「高インスリン血症」と「高血糖」には、発ガンリスクであるというエビデンスがあります。
ごく普通の食事をしている集団(糖質摂取比率30数%~60%)においては、糖質摂取比率12%のスーパー糖質制限食集団に比べると、糖尿病でない耐糖能正常の人においても、必ず「食後高血糖」と「高インスリン血症」を生じています。
「食後高血糖」と「高インスリン血症」を日常的に生じている集団においては、世界ガン研究基金の報告のように
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける」
方が、発ガンに関して、安全な可能性が高いということは私も賛成です。
しかし、「食後高血糖」と「高インスリン血症」を日常的に生じていないスーパー糖質制限食集団には、「赤み肉や加工肉で発ガンリスク」という文献的エビデンスは皆無なわけですので、何ともいいようがありません。
個人的には「高インスリン血症」と「高血糖」という発ガンリスクがほとんどないスーパー糖質制限食なら、少なくとも、肥満関連のガンや西欧型のガンに対しては、予防効果がある可能性が高いと思いますが、あくまでも仮説であり、エビデンスがあるわけではありません。
加工肉にはいろいろな添加物が多いので、少量がいいかと思います。
そして魚と肉との比率は、大ざっぱに<1:1>くらいがいいかなと思っています。
勿論、魚が多くてもいいです。
私自身はスーパー糖質制限食を 2002年から実践して足かけ14年目ですが、赤みの肉はしっかり食べています。
鶏肉も魚貝も卵も大豆製品もよく食べますし、葉野菜、海藻、茸もよく食べます。
間食でチーズ、ナッツ、スルメ、焼き海苔、干し海老、メザシ・・・もよく食べます。
果物は、少量を時に食べることがあります。
<スーパー糖質制限食とヒト発癌に関する考察>
A)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク上昇というエビデンスはない。」
B)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク減少というエビデンスもない。」
C)「糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団における癌の発生を、長期間経過観察した臨床研究は、存在しない。」
1)スーパー糖質制限食で、明確な発癌リスクである高血糖と高インスリン血症は、
一日を通して確実に改善する。
2)スーパー糖質制限食で、発癌リスクを減らすHDL-Cが増加する。
3)スーパー糖質制限食を長期間続けて将来発癌リスクが上昇するとしたら
1)2)の利点を帳消しにしてさらにそれを上回る何らかの発癌リスクがあると仮定するしかない。
◇ →そのようなリスクは知られてない。
4)
1)2)3)を考慮すれば、あくまでも仮説であるが、
スーパー糖質制限食により、西欧型癌の予防効果が期待できる。
江部康二
大腸がん
肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上がる。
って別のサイトでかいてました。
糖質制限食は大丈夫なんでしょうか?心配で質問させていただきましたorz】
こんばんは。
じゅんさんから、肉の食べ過ぎと大腸がんのリスについて、コメント・質問をいただきました。
「ニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上がる」というのは、あくまでも仮説にすぎないと思います。
一方、赤身の肉・加工肉ですが、がんのリスクを高めることを示唆する文献はあります。
確かに、そういう結論のいろんな文献がありますが、全て糖質を30数%~50~60%摂取している集団のデータなので、 スーパー糖質制限食実践者(糖質摂取比率12%)にはあてはまりません。
次に世界ガン研究基金の2007年の報告について検討してみます。
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
このサイトで、必要な確認だけして、内容を検討してみました。
まずは、ウィキペディアの解説です。
よくまとまっているので、以下に引用しました。
【食生活指針
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E7%94%9F%E6%B4%BB%E6%8C%87%E9%87%9D
世界がん研究基金によるがん予防の勧告
1997年に4500以上の研究を研究を元に、「食べもの、栄養とがん予防」 (Food, Nutrition, and the Prevention of Cancer: A Global Perspective) が報告された。日本では、がん予防14か条、タバコの制限を加えてがん予防15か条として紹介された。
2007年11月1日、世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に「食べもの、栄養、運動とがん予防[15]」が報告されている。
①肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。 推薦:標準体重の維持、BMI25未満。
②運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。
③体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。
④植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。 推奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。
トランス脂肪酸は心臓病のリスクとなるが、がんへの関与は知られていない。
⑤動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。 ゴール:赤肉は週300g以下に。 推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。
⑥アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。
⑦保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。 推奨:塩辛い食べものを避ける。
塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。
⑧サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。 推奨:がん予防のためにサプリメントに頼らない。
⑨母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。
⑩がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。
***
タバコの煙もがんの主因であると強調している。また、タバコとアルコールは相乗作用で発癌物質となる。】
世界ガン研究基金の報告においても
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。 ゴール:赤肉は週300g以下に。 推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。」
と、明快な記載ですね。
しかし、世界ガン研究基金の報告の元になった数多くの文献も、全て糖質を30数%~50~60%摂取している集団のデータなので、 スーパー糖質制限食実践者にはあてはまらないと思います。
世界がん研究基金の報告では、肥満に関しては、大腸・食道・膵臓・腎臓・子宮内膜(子宮)・乳房のガンになるリスクが高まるとしています。
これら6つのガンに関しては、はっきり肥満がリスクになるということです。
また、胆嚢に関しては、肥満がおそらく発ガンのリスクを高めるとしています。
肥満がリスクになるガンは、高インスリン血症が関与している可能生が高いと思います。
「高インスリン血症」と「高血糖」には、発ガンリスクであるというエビデンスがあります。
ごく普通の食事をしている集団(糖質摂取比率30数%~60%)においては、糖質摂取比率12%のスーパー糖質制限食集団に比べると、糖尿病でない耐糖能正常の人においても、必ず「食後高血糖」と「高インスリン血症」を生じています。
「食後高血糖」と「高インスリン血症」を日常的に生じている集団においては、世界ガン研究基金の報告のように
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける」
方が、発ガンに関して、安全な可能性が高いということは私も賛成です。
しかし、「食後高血糖」と「高インスリン血症」を日常的に生じていないスーパー糖質制限食集団には、「赤み肉や加工肉で発ガンリスク」という文献的エビデンスは皆無なわけですので、何ともいいようがありません。
個人的には「高インスリン血症」と「高血糖」という発ガンリスクがほとんどないスーパー糖質制限食なら、少なくとも、肥満関連のガンや西欧型のガンに対しては、予防効果がある可能性が高いと思いますが、あくまでも仮説であり、エビデンスがあるわけではありません。
加工肉にはいろいろな添加物が多いので、少量がいいかと思います。
そして魚と肉との比率は、大ざっぱに<1:1>くらいがいいかなと思っています。
勿論、魚が多くてもいいです。
私自身はスーパー糖質制限食を 2002年から実践して足かけ14年目ですが、赤みの肉はしっかり食べています。
鶏肉も魚貝も卵も大豆製品もよく食べますし、葉野菜、海藻、茸もよく食べます。
間食でチーズ、ナッツ、スルメ、焼き海苔、干し海老、メザシ・・・もよく食べます。
果物は、少量を時に食べることがあります。
<スーパー糖質制限食とヒト発癌に関する考察>
A)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク上昇というエビデンスはない。」
B)「スーパー糖質制限食で発癌のリスク減少というエビデンスもない。」
C)「糖質摂取比率12%の集団と通常食の集団における癌の発生を、長期間経過観察した臨床研究は、存在しない。」
1)スーパー糖質制限食で、明確な発癌リスクである高血糖と高インスリン血症は、
一日を通して確実に改善する。
2)スーパー糖質制限食で、発癌リスクを減らすHDL-Cが増加する。
3)スーパー糖質制限食を長期間続けて将来発癌リスクが上昇するとしたら
1)2)の利点を帳消しにしてさらにそれを上回る何らかの発癌リスクがあると仮定するしかない。
◇ →そのようなリスクは知られてない。
4)
1)2)3)を考慮すれば、あくまでも仮説であるが、
スーパー糖質制限食により、西欧型癌の予防効果が期待できる。
江部康二
2014年12月29日 (月)
こんにちは。
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第5版(2012年)、93ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常(特に高トリグリセリド血症)がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、決められた上限量を守る患者である
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
忘年会、クリスマス、新年会と飲酒の機会が多くなるのが年末年始です。
今回は、糖尿人と飲酒、飲酒と肝臓・膵臓、飲酒とガンについて考えてみましょう。
アルコールそのものは、血糖値を全く上昇させませんし、体重増加作用もないので、適量の飲酒は糖尿病には影響ないと思います。
しかしWHO(世界保健機関)の2007年の報告では、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
そして、特に2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱くて、少量の飲酒で赤くなるタイプでは、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となるとしています。
日本の従来の糖尿病治療では、飲酒は原則禁止ですが、一定の条件下で許可されることもあります。
糖尿病専門医研修ガイドブック・改定第5版(2012年)、93ページによれば、その条件は、以下の5項目をクリアしていることです。
1)、良好な血糖コントロールが長期にわたって得られている
2)、糖尿病の合併症がないか、あっても軽度である
3)、脂質代謝異常(特に高トリグリセリド血症)がない
4)、肝・膵疾患がない
5)、決められた上限量を守る患者である
4)の肝臓や膵臓の疾患がないことが、条件となっているのは、アルコールが、肝臓と膵臓に一定の負担をかけることが明らかだからです。
アルコール性肝障害は大変有名で、皆さんよくご存知と思います。
それから急性膵炎による入院の80%以上を、胆道疾患とアルコール多飲が占めています。
これはアルコール多飲であって、適量なら急性膵炎など起こしません。
また個人差があると思いますが、適量のアルコールなら肝障害にもなりません。
で、5)はなかなか耳が痛いですね。(=_=;)
私の場合、1)~4)は完璧にクリアなのですが、5)だけはハードルが高いです。 (*- -)(*_ _)
それでは、アルコールの適量とはどのくらいなのでしょう?
欧米では、「適量」を守れば糖尿人でも、飲酒OKとしています。
例えば、米国糖尿病学会では、アルコール24g/日を食事と共にとるていどなら適量としています。
30mlの液体のアルコールが、重さとしては24gです。
アルコール24g(30ml)というのは、
おおよそ
糖質ゼロ発泡酒350ml缶を2本
辛口ワイン150ml×2杯
ウイスキー30ml(シングル)×3杯
25%の焼酎なら、120ml
です。
アルコールそのものは、1gが約7キロカロリーの燃焼エネルギーをもっていますが、摂取時の利用効率は約70%です。
エネルギー源としては、<アルコール→糖質→脂質→タンパク質>の順で利用されます。
またアルコールは、糖質や脂質と違って摂取しても体重増加作用がありませんし、血糖値も上昇させませんし、ビタミンやミネラルにも乏しいので、empty calory と言われています。
なお、アルコールを摂取すると、人体に対する毒物とみなされて優先的に肝臓で分解されますので、その間、同じ補酵素を使う糖新生がブロックされてしまいます。
従って、アルコールを摂取すると結果として、肝臓の糖新生を抑制することとなります。
一定量以上のアルコールを摂取すれば、肝臓の夜間糖新生はブロックされ、翌朝の早朝空腹時血糖値は、下がる可能性が高いです。
しかしながら、血糖値を下げる目的で、大量の飲酒をするようなことは、発がん、肝炎、膵炎のリスクとなるので、勿論NGですね。
また、空腹時に飲んだりすれば、糖新生が抑制される分、インスリン注射やスルフォニル尿素剤を内服している人は、低血糖を起しやすくなるので、充分な注意が必要です。
江部康二
2014年11月25日 (火)
【14/11/25 Momo
脂肪と乳癌
初めまして。
今年8月、網膜静脈閉塞症で眼底出血しました。高血圧、高コレステロール、更年期に入り体重が15kg程増加。
これを気に糖質制限を真剣に始めようと思っております。糖質制限食ノートも早速購入させて頂きました。
少し気になるのは世間では脂質が乳癌のリスクを高めると言われています。
牛乳、乳製品、牛肉など、乳癌リスクを上げるとおもわれますか?】
こんにちは。
Momo さんから、脂肪は乳ガン発症のリスクか否か?
というコメント・質問をいただきました。
Momo さん、糖質制限食90日間健康ノート(洋泉社)のご購入、ありがとうございます。
ご質問の件ですが、確かに『脂肪悪玉説』が、戦後、先進国を席巻して、
「大腸ガン、乳ガン、心筋梗塞などの元凶は脂肪摂取過剰である。」
という(根拠のない)定説がまことしやかに信じられてきたと思います。
これに対して、大変興味深い研究結果が発表されました。
米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において
「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」
という報告がなされたのです。(*)
米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威ある医学雑誌です。
RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも一番高いです。
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。
高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。
2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。
残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。
平均的米国女性に対して、約半分近くまで、脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。
研究をデザインした医師は、
「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる」=『脂肪悪玉説』
という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。
すなわち、
「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」
と信じてこのRCTを開始したと考えられます。
ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。
これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。
結論です。
「5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。」
ということになります。
脂肪悪玉説を根底から覆す、良質の信頼度の高いエビデンスですね。
なお、世界ガン研究基金は2007年の報告で、肥満があると、大腸・食道・膵臓・腎臓・子宮内膜(子宮)・乳房のガンになるリスクが高まるとしています。
これら6つのガンに関しては、はっきり肥満がリスクになるということです。
また、胆嚢に関しては、肥満がおそらく発ガンのリスクを高めるとしています。
Momo さん、乳癌も肥満が関与しているので、とりあえず、BMI25未満を目指しましょう。
美味しく楽しく楽に続けられるという意味でも、糖質制限食が肥満にはもっとも有効な治療法です。 (^_^)
(*)Journal of American Medical Association(JAMA)誌
2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告。
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease
: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial
JAMA ,295(6):629-642. 643-654. 655-666.
江部康二
脂肪と乳癌
初めまして。
今年8月、網膜静脈閉塞症で眼底出血しました。高血圧、高コレステロール、更年期に入り体重が15kg程増加。
これを気に糖質制限を真剣に始めようと思っております。糖質制限食ノートも早速購入させて頂きました。
少し気になるのは世間では脂質が乳癌のリスクを高めると言われています。
牛乳、乳製品、牛肉など、乳癌リスクを上げるとおもわれますか?】
こんにちは。
Momo さんから、脂肪は乳ガン発症のリスクか否か?
というコメント・質問をいただきました。
Momo さん、糖質制限食90日間健康ノート(洋泉社)のご購入、ありがとうございます。
ご質問の件ですが、確かに『脂肪悪玉説』が、戦後、先進国を席巻して、
「大腸ガン、乳ガン、心筋梗塞などの元凶は脂肪摂取過剰である。」
という(根拠のない)定説がまことしやかに信じられてきたと思います。
これに対して、大変興味深い研究結果が発表されました。
米国医師会雑誌、2006年2月8日号に掲載された3本の論文において
「<低脂肪+野菜豊富な食生活>は乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを下げないし、総コレステロール値も不変であった。」
という報告がなされたのです。(*)
米国医師会雑誌は、インパクトファクターが高く、ニューイングランドジャーナルに次ぐ権威ある医学雑誌です。
RCT研究論文ですので、エビデンスレベルも一番高いです。
5万人弱の閉経女性を対象に、対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した結果です。
高額の費用をつぎ込んだ大規模臨床試験で、二度とできない高いレベルの研究です。
2万5千人ずつにグループ分けをして、一方は、脂肪熱量比率20%で強力に低脂肪食を指導しました。
残るグループは脂肪制限なしなので、米国女性平均なら30数%の脂肪摂取比率です。
平均的米国女性に対して、約半分近くまで、脂肪摂取比率を厳格に減らして臨床試験を実施したわけです。
研究をデザインした医師は、
「高脂肪食が大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクを増大させる」=『脂肪悪玉説』
という従来の定説を掲げて、それを証明するためにこのRCTを実施したと思います。
すなわち、
「低脂肪食実践により、大腸ガン、乳ガン、心血管疾患のリスクが減少する」
と信じてこのRCTを開始したと考えられます。
ところが、豈図らんや、低脂肪食は、乳癌、大腸癌、心血管疾患リスクを全く下げなかったのです。
これは、即ち、脂肪悪玉説が根底から否定されたということです。
結論です。
「5万人を8年間追跡したJAMA掲載のRCT研究論文で、少なくとも乳ガン・大腸ガン・心血管疾患に関しては、脂肪悪玉説は否定された。」
ということになります。
脂肪悪玉説を根底から覆す、良質の信頼度の高いエビデンスですね。
なお、世界ガン研究基金は2007年の報告で、肥満があると、大腸・食道・膵臓・腎臓・子宮内膜(子宮)・乳房のガンになるリスクが高まるとしています。
これら6つのガンに関しては、はっきり肥満がリスクになるということです。
また、胆嚢に関しては、肥満がおそらく発ガンのリスクを高めるとしています。
Momo さん、乳癌も肥満が関与しているので、とりあえず、BMI25未満を目指しましょう。
美味しく楽しく楽に続けられるという意味でも、糖質制限食が肥満にはもっとも有効な治療法です。 (^_^)
(*)Journal of American Medical Association(JAMA)誌
2006年2月8日号の疾患ごとにまとめられた3本の論文で報告。
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer
Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease
: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial
JAMA ,295(6):629-642. 643-654. 655-666.
江部康二
2014年10月07日 (火)
【14/10/07 岸和田のセイゲニスト
糖質制限で胆石も消失!
先日は、隆祥館書店さんの出版記念講演会にて、有意義なお話しをお聴かせ頂き有難うございました。
講習会は、薄暗い室内(スライドでの講習会)、昼食直後なので眠気が少し心配でありましたが、ランチが糖質制限食(安ステーキ)の為か、先生のお話しが面白いのか、眠気も皆無で、集中して受講することが出来ました!(笑)
糖質依存からの脱却、大幅な減量、そして先日のエコー検査では、糖質制限以前(約半年前)に数個あった胆石もなぜか消失していました!
ちなみに、胆石症で過去に二度入院経験もあります。(^^;)
しかも糖質制限してからは、胆石症患者にはご法度とされる、かなり脂っこい食事(肉や魚、チーズや卵、唐揚げにマヨネーズ掛け)を毎日食しているのにも関わらずです!
あと少し心配は、こんな食事内容で大腸癌にならないのか位です。
ぬか喜びせず、野菜などの食物繊維も食べていきたいと思います。(^^;)
本当に有難うございました。m(_ _)m】
岸和田のセイゲニストさん
2014年10月5日(日)
隆祥館書店主催「江部康二出版記念 講演会・大阪」
ご参加、ありがとうございます。
60名の参加者で、医師も数名きておられ、熱心な質疑応答で、盛り上がりました。
サイン会も、長蛇の列でマジックインキがかすれるほどでした。
大阪の医師のネットワークも広がりそうです。
さて、糖質依存からの脱却、大幅な減量、良かったです。
糖質制限以前(約半年前)に数個あった胆石が消失したのはびっくりですね。私も初めて聞きました。
どなたか、岸和田のセイゲニストさんと同様に、胆石が糖質制限食で消えたという経験をお持ちの方はおられますか?
「しかも糖質制限してからは、胆石症患者にはご法度とされる、かなり脂っこい食事(肉や魚、チーズや卵、唐揚げにマヨネーズ掛け)を毎日食しているのにも関わらずです!
あと少し心配は、こんな食事内容で大腸癌にならないのか位です。」
糖質制限食を推進する、我々糖質セイゲニストとして、動物性脂肪の適切な摂取量はどのくらいかということですね。
1)<赤肉(牛・豚・羊)摂取と世界ガン研究基金2007年の報告>
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
世界ガン研究基金の食生活指針の中で
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。赤肉は週500g以下に。」
と記載されています。これは、ひとつの目安でしょうか。
「赤肉(牛・豚・羊)の摂取量を、週500g以下」というのは、日本人にとってはそんなに高いハードルではないですね。
ちり鍋、寄せ鍋、水炊き、湯豆腐、ちゃんこ鍋、かき鍋、石狩鍋・・・、野菜炒め、煮魚、焼き魚、おでん、ラカントSを使って麻婆豆腐、鶏肉料理・・・、週1回は、150gの牛ステーキを食べて・・・。
結構豪華な食生活でも、赤肉500g/週以下で目標達成です。
岸和田のセイゲニストさんも、目標達成ではないでしょうか。
でも、赤肉500g/週以下というのは、米国人には厳しい目標ですね。
まあ、世界ガン研究基金には逆らうようですが、スーパー糖質制限食をしている場合は、「食後高血糖」と「食後高インスリン血症」という明らかな発がんリスクがほとんどないので、私個人の意見としては、赤肉をもう少し摂取しても大丈夫という気がします。
2)<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが、米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。
脂質熱量比率20%に減らしたわけですから、対照群の女性(脂質熱量比率30数%)に比べれば、動物性脂肪も植物性脂肪も含めて4割くらい脂肪摂取量を減らした計算です。
動物性脂肪も間違いなく減らしていますが、乳がん、大腸がん、心血管疾患(心筋梗塞など)は全く減りませんでした。
権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
少なくとも大腸がんと乳がんのリスクに関しては、脂肪を強力に減らしても、全く無意味だったわけですね。
岸和田のセイゲニストさんも、少し安心されていいと思いますよ。
江部康二
糖質制限で胆石も消失!
先日は、隆祥館書店さんの出版記念講演会にて、有意義なお話しをお聴かせ頂き有難うございました。
講習会は、薄暗い室内(スライドでの講習会)、昼食直後なので眠気が少し心配でありましたが、ランチが糖質制限食(安ステーキ)の為か、先生のお話しが面白いのか、眠気も皆無で、集中して受講することが出来ました!(笑)
糖質依存からの脱却、大幅な減量、そして先日のエコー検査では、糖質制限以前(約半年前)に数個あった胆石もなぜか消失していました!
ちなみに、胆石症で過去に二度入院経験もあります。(^^;)
しかも糖質制限してからは、胆石症患者にはご法度とされる、かなり脂っこい食事(肉や魚、チーズや卵、唐揚げにマヨネーズ掛け)を毎日食しているのにも関わらずです!
あと少し心配は、こんな食事内容で大腸癌にならないのか位です。
ぬか喜びせず、野菜などの食物繊維も食べていきたいと思います。(^^;)
本当に有難うございました。m(_ _)m】
岸和田のセイゲニストさん
2014年10月5日(日)
隆祥館書店主催「江部康二出版記念 講演会・大阪」
ご参加、ありがとうございます。
60名の参加者で、医師も数名きておられ、熱心な質疑応答で、盛り上がりました。
サイン会も、長蛇の列でマジックインキがかすれるほどでした。
大阪の医師のネットワークも広がりそうです。
さて、糖質依存からの脱却、大幅な減量、良かったです。
糖質制限以前(約半年前)に数個あった胆石が消失したのはびっくりですね。私も初めて聞きました。
どなたか、岸和田のセイゲニストさんと同様に、胆石が糖質制限食で消えたという経験をお持ちの方はおられますか?
「しかも糖質制限してからは、胆石症患者にはご法度とされる、かなり脂っこい食事(肉や魚、チーズや卵、唐揚げにマヨネーズ掛け)を毎日食しているのにも関わらずです!
あと少し心配は、こんな食事内容で大腸癌にならないのか位です。」
糖質制限食を推進する、我々糖質セイゲニストとして、動物性脂肪の適切な摂取量はどのくらいかということですね。
1)<赤肉(牛・豚・羊)摂取と世界ガン研究基金2007年の報告>
World cancer reserch fund
http://www.wcrf-uk.org/preventing_cancer/recommendations.php
世界ガン研究基金の食生活指針の中で
「動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。赤肉は週500g以下に。」
と記載されています。これは、ひとつの目安でしょうか。
「赤肉(牛・豚・羊)の摂取量を、週500g以下」というのは、日本人にとってはそんなに高いハードルではないですね。
ちり鍋、寄せ鍋、水炊き、湯豆腐、ちゃんこ鍋、かき鍋、石狩鍋・・・、野菜炒め、煮魚、焼き魚、おでん、ラカントSを使って麻婆豆腐、鶏肉料理・・・、週1回は、150gの牛ステーキを食べて・・・。
結構豪華な食生活でも、赤肉500g/週以下で目標達成です。
岸和田のセイゲニストさんも、目標達成ではないでしょうか。
でも、赤肉500g/週以下というのは、米国人には厳しい目標ですね。
まあ、世界ガン研究基金には逆らうようですが、スーパー糖質制限食をしている場合は、「食後高血糖」と「食後高インスリン血症」という明らかな発がんリスクがほとんどないので、私個人の意見としては、赤肉をもう少し摂取しても大丈夫という気がします。
2)<米国医師会雑誌2006年2月8日号>
米国の大規模介入試験において脂質熱量比率20%で強力に指導したグループは、対照群に比較して意外なことに、心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクを下げないことが、米国医師会雑誌2006年2月8日号で報告されました。総コレステロール値に関しても、両群に優位な差はありませんでした。
この研究は、5万人弱の閉経女性を対象に対照群を置き、平均8年間にわたって追跡した大がかりなもので、所謂EBM(科学的根拠に基づいた医療)的にはトップランクに位置する権威あるものです。
脂質熱量比率20%に減らしたわけですから、対照群の女性(脂質熱量比率30数%)に比べれば、動物性脂肪も植物性脂肪も含めて4割くらい脂肪摂取量を減らした計算です。
動物性脂肪も間違いなく減らしていますが、乳がん、大腸がん、心血管疾患(心筋梗塞など)は全く減りませんでした。
権威ある研究により、従来の常識(脂肪悪玉説)が根底から覆ったわけです。
少なくとも大腸がんと乳がんのリスクに関しては、脂肪を強力に減らしても、全く無意味だったわけですね。
岸和田のセイゲニストさんも、少し安心されていいと思いますよ。
江部康二
2014年09月16日 (火)
こんにちは。
今回は、がんについて、再考してみます。
がんには、生活習慣病型と感染症型との2つのタイプがあります。
A)
生活習慣病型のがんについて、世界がん研究基金が2007年に
「腎臓がん、膵臓がん、食道がん、子宮体がん、大腸がん、乳がんの6つと、おそらく胆のうがんの7つには肥満がかかわっている」
と報告しています。
リスクを下げるには「適正体重の維持」が肝要であり、BMI20~25未満に保つことを推奨しています。
肥満は生活習慣に起因しているため、これら7つのがんは生活習慣病型と呼ばれており、日本を含めた先進諸国で急増しているタイプです。
そして、生活習慣病型のがんについて、元凶ではないかと疑われているのが、高血糖であり高インスリン血症なのです。
高インスリン血症も高血糖も肥満すると起こりやすくなりますが、この2つに発がんリスクがあることが、明らかになっています。
生活習慣病型のがんについて、スーパー糖質制限食には予防効果のある可能性が非常に高いと考えられます。
なぜならば、肥満、高インスリン血症、高血糖、これら生活習慣病型のがんにつながると疑われている要因の全てについて、スーパー糖質制限食で防ぐことができるからです。
肥満、高インスリン血症、高血糖は、いずれも糖質過剰な食生活で起こります。
生活習慣病型のがんに関しては、
1)高インスリン血症がない(高インスリン血症は発がんリスクでエビデンスあり)
2)食後高血糖がない(食後高血糖も発がんリスクでエビデンスあり)
3)肥満がない(肥満も発がんリスクでありエビデンスあり)
4)HDLコレステロールが増加する(HDLコレステロールにはがん予防効果あり)
あくまでも仮説ですが、1)2)3)4)の利点により、生活習慣病型のがんは、スーパー糖質制限食で予防できる可能性があります。
B)
感染症型のがんとしては、胃がん、肝がん、子宮頸がんなどがあります。
これらは、感染症が引き金になって起こるタイプのがんです。
がん細胞は、正常な細胞が増殖するときに遺伝子つまりDNAの複製に失敗して、生まれてしまいます。
細菌やウイルスに感染すると、炎症を起こし細胞が頻繁に壊れます。それを修復するには細胞が増殖しなければなりませんが、このときにDNAの複製にエラーが起こり、それが蓄積されると、がん細胞が発生します。
つまり、細菌やウイルス感染により慢性炎症が起こり持続し、細胞傷害と再生を繰り返す機会が増えて細胞内の遺伝子異常が蓄積されて発症するのが、感染症型のがんなのです。
持続炎症により細胞が頻繁に壊れると、細胞はそれだけ多くの増殖をしなければなりません。
DNAの複製を頻繁に繰り返すため、エラーが起こりやすくなり、がん細胞の発生リスクが増すわけです。
胃がんはヘリコバクターピロリという特殊な細菌の持続感染、肝がんの場合はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染、子宮頸がんの場合は、ヒトパピローマウイルスの持続感染が、主な原因でがん化を起こします。
感染症型のがんに関しては、スーパー糖質制限食でも予防は困難と考えられます。
何故なら細菌やウイルスの持続感染を食事療法(スーパー糖質制限食)で取り除くことはできないからです。
かつて伝統的な食生活(スーパー糖質制限食)の頃のイヌイットも、外部から新たに持ち込まれたEBウィルスのために、鼻咽頭と唾液腺のがんが多く発生した歴史があります。
EBウィルス持続感染で特に鼻咽頭と唾液腺のがんになったのは、イヌイットの民族としての特異性とされています。
同じEBウィルス感染で、アフリカではバーキットリンパ腫発症が多いのです。
江部康二
今回は、がんについて、再考してみます。
がんには、生活習慣病型と感染症型との2つのタイプがあります。
A)
生活習慣病型のがんについて、世界がん研究基金が2007年に
「腎臓がん、膵臓がん、食道がん、子宮体がん、大腸がん、乳がんの6つと、おそらく胆のうがんの7つには肥満がかかわっている」
と報告しています。
リスクを下げるには「適正体重の維持」が肝要であり、BMI20~25未満に保つことを推奨しています。
肥満は生活習慣に起因しているため、これら7つのがんは生活習慣病型と呼ばれており、日本を含めた先進諸国で急増しているタイプです。
そして、生活習慣病型のがんについて、元凶ではないかと疑われているのが、高血糖であり高インスリン血症なのです。
高インスリン血症も高血糖も肥満すると起こりやすくなりますが、この2つに発がんリスクがあることが、明らかになっています。
生活習慣病型のがんについて、スーパー糖質制限食には予防効果のある可能性が非常に高いと考えられます。
なぜならば、肥満、高インスリン血症、高血糖、これら生活習慣病型のがんにつながると疑われている要因の全てについて、スーパー糖質制限食で防ぐことができるからです。
肥満、高インスリン血症、高血糖は、いずれも糖質過剰な食生活で起こります。
生活習慣病型のがんに関しては、
1)高インスリン血症がない(高インスリン血症は発がんリスクでエビデンスあり)
2)食後高血糖がない(食後高血糖も発がんリスクでエビデンスあり)
3)肥満がない(肥満も発がんリスクでありエビデンスあり)
4)HDLコレステロールが増加する(HDLコレステロールにはがん予防効果あり)
あくまでも仮説ですが、1)2)3)4)の利点により、生活習慣病型のがんは、スーパー糖質制限食で予防できる可能性があります。
B)
感染症型のがんとしては、胃がん、肝がん、子宮頸がんなどがあります。
これらは、感染症が引き金になって起こるタイプのがんです。
がん細胞は、正常な細胞が増殖するときに遺伝子つまりDNAの複製に失敗して、生まれてしまいます。
細菌やウイルスに感染すると、炎症を起こし細胞が頻繁に壊れます。それを修復するには細胞が増殖しなければなりませんが、このときにDNAの複製にエラーが起こり、それが蓄積されると、がん細胞が発生します。
つまり、細菌やウイルス感染により慢性炎症が起こり持続し、細胞傷害と再生を繰り返す機会が増えて細胞内の遺伝子異常が蓄積されて発症するのが、感染症型のがんなのです。
持続炎症により細胞が頻繁に壊れると、細胞はそれだけ多くの増殖をしなければなりません。
DNAの複製を頻繁に繰り返すため、エラーが起こりやすくなり、がん細胞の発生リスクが増すわけです。
胃がんはヘリコバクターピロリという特殊な細菌の持続感染、肝がんの場合はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染、子宮頸がんの場合は、ヒトパピローマウイルスの持続感染が、主な原因でがん化を起こします。
感染症型のがんに関しては、スーパー糖質制限食でも予防は困難と考えられます。
何故なら細菌やウイルスの持続感染を食事療法(スーパー糖質制限食)で取り除くことはできないからです。
かつて伝統的な食生活(スーパー糖質制限食)の頃のイヌイットも、外部から新たに持ち込まれたEBウィルスのために、鼻咽頭と唾液腺のがんが多く発生した歴史があります。
EBウィルス持続感染で特に鼻咽頭と唾液腺のがんになったのは、イヌイットの民族としての特異性とされています。
同じEBウィルス感染で、アフリカではバーキットリンパ腫発症が多いのです。
江部康二