fc2ブログ
糖毒、糖新生、暁現象、糖質制限食、薬物療法。

【17/03/10 ぶーすか

下がらない血糖値

江部先生こんばんは。いつもブログを拝読しております。

糖尿病が発覚し10年近くが経ちます。当初メデットを服用しながら糖質制限をしたところ、数ヶ月でHbA1cは9.6から6.2まで下がり、これですっかり安心した私は、勝手に通院を止め段々と元の食生活に戻ってしまいました。いつでもまた糖質制限をすれば、簡単に血糖値を下げられると変な自信を持ったのだと思います。

しかし最近物凄い睡魔に襲われたり、夜中に何度もトイレに起きる、朝起きると手に痺れがあったりと自分でもこれはマズイなという症状が現れ、久しぶりに血糖測定値で計ってみたところ326という驚愕の数値が出ました。会社の健康診断でも、空腹時血糖230、HbA1c12.8という最悪の数値を叩き出しました。

また糖質制限をすれば下がるだろうと、ひと月前から1日60グラム前後になるような食事をしています。

ところがです。全く血糖値が下がらないのです。朝起きて計れば200台前半。食後2時間も250くらいと、ずっと200台をキープしています。先日初めて198が出ましたが、ほとんど200台です。(さすがに300台にはなりませんが)

ひと月も糖質制限をして血糖値が下がらないのは、もう私の膵臓の細胞は働いていないのでしょうか。

病院にも行かなきゃと思うのですが、糖質制限で下げられるならできれば行きたくありません。

江部先生の見解をお聞かせ願えませんか。糖質制限.comでもミックス粉やパン等を購入させていただいておりますが、私の身体にはもう糖質制限は意味のないものなのかと不安です。】


ぶーすか さん

1ヶ月間のスーパー糖質制限食実践でも血糖値が下がらないなら、糖毒状態に陥っている可能性があります。

① 高血糖の持続→膵臓のランゲルハンス島のβ細胞にダメージ→インスリン分泌低下
② 高血糖の持続→筋肉細胞レベルでのインスリン抵抗性増大

高血糖があると①と②が体内で生じます。

インスリン分泌低下と抵抗性増大が生じれば、ますます高血糖となります。

≪高血糖の持続→インスリン分泌低下とインスリン抵抗性増大→高血糖の持続→≫

この悪循環パターンを、臨床的には「糖毒」 と呼びます。

一日の血糖値の日内変動が、常に180~200mg/dlを超えていると糖毒状態となります。

なぜ、高血糖自体がインスリン分泌を低下させるのか、インスリン抵抗性を増大させるのか、最先端の研究で調べられてはいるのですが、はっきり言ってまだよくわからないのが現状です。

糖尿病の罹病歴が4~5年くらいなら、「スーパー糖質制限食」で食後高血糖がリアルタイムに改善し、さらに早朝空腹時血糖値も改善し糖毒状態が解除されることがほとんどです。

しかし、10年近い糖尿病歴があると、「スーパー糖質制限食」で食後高血糖はリアルタイムに改善したとしても、一日を通して、180~200mg/dlを切ってこない状況になります。

こうなるとなかなか糖毒も解除されないし、早朝空腹時血糖値も、180~200mg/dlを切れない状態が持続します。

1回の食事の糖質量が、10~20g以下の糖質制限食でも、早朝空腹時血糖値が198~200mg以上あるのは、夜中の糖新生が過剰になっていると考えられます。

糖尿病がない人は、夜中に肝臓が糖新生を開始してもインスリンがリアルタイムに反応して、糖新生を制御します。

しかし糖尿人においては、インスリン作用が不足しているため糖新生を制御できません。

2型糖尿人において、眠前11時頃の血糖値が100mg/dlくらいでも朝起きて測定すると、夜中に何にも食べていないのに、120~130mg/dlになることがあり、これを暁現象と呼びます。

ぶーすかさんの場合は、糖尿病歴10年近くであり、「暁現象+糖毒」のために、早朝空腹時血糖値が、180~200mg/dlを切れない状態が持続しているのだと思います。

スーパー糖質制限食を1ヶ月実践でも改善があまりみられないので、基本的に病院に行くことが必要です。

「暁現象+糖毒」の悪循環を断ち切るには、はっきり言って入院加療が必要な状態です。

入院しての適切な食事と内服薬でインスリン注射を打たなくても、改善すると思います。


「暁現象+糖毒」の状態を解除するためにはスーパー糖質制限食を実践しつつ、

①SGLT2阻害薬
②メトグルコ
③DPP-4阻害薬


①②③を適宜併用することが必要と思います。


江部康二
テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
暁現象と糖新生とメトグルコ
【14/12/29 しらねのぞるば

暁現象と糖新生
早朝起床時の血糖値が高くなる原因に,ソモジー効果と暁現象が挙げられていますが,ソモジー効果は夜間低血糖のリバウンドであり,暁現象は明け方に成長ホルモンの分泌が増えるためと説明されています.

糖質制限食(スーパーですが,時々緩みます)を継続して3年以上になりますが,私も起床時の血糖値が不安定な時があります. 糖質制限のおかげで,食後血糖値,及び昼食前・夕食前の空腹時血糖値は安定しているのですが,起床時だけはまれに110以上になるのです.

そこで,この暁現象が,[成長ホルモン亢進]→[インスリン作用阻害]→[結果として糖新生優勢]の機序で血糖値を上げているものならば,暁現象が始まる時間帯に糖新生を抑制すれば血糖値上昇は起こらないのではないか,と考えて以下の実験を行ってみました.

メトホルミンは,通常服用後血漿中濃度が2~3時間後にピークになりますから(※),起床の2~3時間前にメトホルミンをのめば糖新生が抑制されて血糖値上昇が起りにくくなるはずです. 私の起床時刻はだいたい6時~6時半なのですが,具合のいいことに夜間に1~2回は,トイレに立ちます. そこで,このトイレ時刻がたまたま起床の2~3時間前であった場合には,メトホルミン(250mg×1錠)を服用してみることにしてみました. メトホルミンを【A】服用しなかった場合/【B】服用した場合で,それぞれ n=10の結果が下記の通りでした.

(※)=大日本住友製薬 メトグルコ添付文書 第8版

【A】服用しなかった場合
101, 107, 97, 104, 102, 98, 102, 107, 108, 102

【B】服用した場合
92, 94, 88, 96, 89, 90, 99, 95, 84, 96

平均値±標準偏差で見ると,
【A】は102.8±3.7,【B】は92.3±4.5であり,p=0.0002で有意です.

この結果から,暁現象による血糖値上昇はたしかに糖新生によるものであり,それをメトホルミンで抑制すると,私の場合は起床時血糖値が約10mg/dl低下することがわかりました.

もちろん結果がこうだからといって,これを続ける気はありませんが,やはりほんの少しだけまだ基礎インスリン分泌が足りないのですね.

新年からは,あまり緩まずにスーパー糖質制限に邁進して参ります.来年もよろしくお願い申し上げます.】



こんばんは。

京都は1月1日の昼過ぎから雪が降り始め、どんどん積もって、2日の朝には家の屋根や車の屋根に20cmくらいの積雪量となりました。

道は凍結で、テニスに出かけるのも止めました。

2日の昼過ぎに少し溶けかけたかと思ったのもつかの間で、また夕方から雪がしんしんと降り積もり、3日の朝には2日の朝以上の積雪量となりました。

2日間にわたって、屋根も道路も山も車も、見渡せば雪です。

長いこと京都に住んでいますが、2日続けて積雪・凍結というのは初体験かもしれません。
雪景色の観賞なんて余裕はありません。
いやはや寒いです。 (-_-;)

さて。

しらねのぞるば さん から、暁現象と糖新生とメトグルコについて、貴重なコメント・データをいただきました。
ありがとうございます。

しらねのぞるば さんのデータ、とてもわかりやすいですね。

早朝の空腹時血糖値は、正常人では、寝る前より低いのが普通です。

ところが、糖尿人においては、就寝前よりも朝起きたときの血糖値のほうが高いという現象は、糖尿人によくみられ、「暁現象」と呼ばれています。

スーパー糖質制限食で、食後血糖値はHbA1cはおおいに改善しても、早朝空腹時血糖値だけが下がりにくいという糖尿人はよくあり、かくいう私もその一人です。

朝方3~4時ころは、基礎分泌インスリンは一番低値になります。

さらにこの時間帯、成長ホルモンとコルチゾールが増えて血糖が上がりやすくなるのですが、正常人は即座にインスリン分泌を増やして対応します。

糖尿人はインスリンを増加させてそれに対抗できないから、暁現象を生じるとされています。

成長ホルモンは、肝臓でのグリコーゲン分解を促し、また抗インスリン作用(インスリンを抑制し、血糖値を上昇させる)を持つため、血糖値を上昇させます。

コルチゾールは肝臓での糖新生を促進させて、血糖値を上昇させます。

夜間睡眠時は、肝臓がブドウ糖を合成して(糖新生)血液中に送り、血糖値を維持しますが、もともと糖尿人は正常人に比べて糖新生が増加しています。

この時間帯、基礎分泌インスリンは、正常人なら少し分泌されれば血糖値が下がりますが、2型の糖尿人は正常人の2倍の量が必要だといわれていますので、そもそもハンディがありますね。

糖新生が多くなると、正常人なら即座に基礎分泌インスリンの分泌を増加させて対応します。

しかし、糖尿人はインスリンの分泌量調整がスムースにいかないために、糖新生を制御できず、暁現象が起きると考えられます。


午前3~4時頃~午前6時頃の、の肝臓の糖新生を抑制するため、メトグルコ(250)1錠を、午前3時に内服すると

【A】服用しなかった場合
101, 107, 97, 104, 102, 98, 102, 107, 108, 102

【B】服用した場合
92, 94, 88, 96, 89, 90, 99, 95, 84, 96

平均値±標準偏差で見ると、
【A】は102.8±3.7,【B】は92.3±4.5であり,p=0.0002で有意です.


早朝起床時の血糖値が、見事に10mgくらい下がってますね。

血中濃度を上手く保てば、メトグルトは確実に肝臓の糖新生を抑制しています。

私も、早朝空腹時血糖値を下げる意味で、寝る前のメトホルミン内服を勧めることがあります。

しらねのぞるば さんのように、夜中の3時にメトホルミンを内服するのがより論理的ですが、さすがに無理なので・・・。

でも、朝昼夕とかにダラッと内服するよりは、夕食後と眠前とか工夫して処方する方が、早朝空腹時血糖値を下げるには有効という印象を持っています。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
早朝空腹時血糖値と暁現象
【14/10/21shina

糖質制限7か月で効果が見られないのはなぜ?

始めまして
スーパー糖質制限を開始して、約7か月経過します。

ご飯、パン、麺類は一切食べず 肉、魚、野菜、豆腐類と かなりがんばっているつもりですが、 A1cや空腹時血糖値は、悪化はしないものの たいして変わりません。

A1cは開始から今まで、6.3前後
空腹時血糖値は、130~160
昼にサバ缶だけ食べて
夕方6時の血糖値がこの値です。
当初は、A1cが5.5ぐらい
血糖値が80ぐらいになると思っていました。
なぜでしょうか?

補足 渋い赤ワインは飲んでいます。
薬は、低血糖予防のため、飲むのをやめたり 今日は、ちと糖質がやばいと思えば飲んだりとしています。
ということで、効果が出ない原因がわかりません。
体質なのかやり方に不備があるか、ご教授ください。】


こんにちは。

shina さん から、空腹時血糖値が、スーパー糖質制限食開始7ヶ月経過しても下がらないというコメントを頂きました。

shina さん、10時間以上絶食後の早朝空腹時血糖値は如何でしょう?

糖尿病歴の長さにもよると思いますが、早朝空腹時血糖値:130~160mg/dl ならば暁現象と思われます。

朝の出だしが、130~160mg/dlと底上げならば、平均血糖値の指標であるHbA1cが5%台にならないと思います。

スーパー糖質制限食で食後高血糖は改善したけれど、早朝空腹時血糖値だけがなかなか下がらないとのコメントをよくいただきます。

例えば、

「寝る前午後11時の血糖値は100mg/dlと好調だったのに、その後何も食べずに寝て起きて、翌朝午前9時の血糖値は130mg~160mg/dlに上昇していた。」

といったことが糖尿人において時々見られます。

この眠前より翌朝の血糖値が上昇することを、糖尿人特有の「暁現象」と呼びます。

多くの場合、就寝後8~10時間で、血糖値が一番上昇します。

空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。

グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。

一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。

正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。

しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。

インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝臓の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となり、暁現象を生じるものと考えられます。

朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。

1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。

暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。

早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。

正常人はこのとき、インスリンを増産して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。

暁現象の改善のために、

①スーパー糖質制限食で膵臓のβ細胞に休養を与える。
②筋トレで筋肉量を増やす。
③有酸素運動を継続して、筋肉細胞へのインスリンの効きを良くする。

内服薬なしで①②③を根気よく続けるのもよい方法と思います。

①②③で早朝空腹時血糖値の改善がないときは、薬剤としてはメトホルミン(ビグアナイド剤、メトグルコ、メルビンなど)内服で、肝臓の糖新生を抑制する選択肢もあります。

メトホルミンは、米国糖尿病学会の勧告では、2型糖尿人において、第一選択剤と評価されています。

またDPP-4阻害剤にはグルカゴン分泌抑制作用もあり、これが夜間の糖新生を抑制して早朝空腹時血糖値低下に繋がります。

単剤で、改善目標が達成できないときは「メトホルミン+DPP-4阻害剤」内服で、まずは、早朝空腹時血糖値140mg/dl未満を目指します。

早朝空腹時血糖値が140mg/dlを超えると、いろいろリスクが出てきます。

日本糖尿病学会は、合併症予防のための目標値として、2013年6月1日から、早朝空腹時血糖値130mg/dl未満を推奨しています。

スーパー糖質セイゲニストとしては、目指すのは早朝空腹時血糖値110mg/dl未満の正常値ですね。


江部康二


テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット
糖質制限食でHbA1c改善、暁現象改善。
【14/08/13 オスティナート

糖質制限食を始めて2年1ヶ月が過ぎました

江部先生こんにちは

先生の著書とブログそして皆様の投稿を頼りに糖質制限食を始めて2年1ヶ月が過ぎました。

その間、糖質制限に理解のある医師が見つからず、毎日の自己血糖値測定(4~6回/日)と年1回の人間ドックだけで今日まで来ました。

最近では、私の経営する糖質制限食レストランのお客様にも、医師・看護師・栄養士などの医療関係者が増えてきました。

これからは糖質制限に理解のある医師のもとでHOMAやケトン体等も調べてもらおうと思っています。


人間ドックの成績書が送られてきましたのでご報告いたします。


      2012/6     2012/7     2013/7    2014/7

FPG      227     112       131     105

HbA1c     8.2      6.9       5.4      5.0

TC       171     167             200

LDL-C     141      107       75      90

HDL-C     72       44       82      97

TG       127      98       48      66

GOT      15       21       20      23

GPT       9       15       18      14

γ-GTP      22      18              17


自分なりに感じたことをお話しします。

始めなかなか改善しなかった暁現象が、7ヶ月前から急に改善し、96~106mg/DLの範囲で落ち着いてきました。
次にLDL-C/HDL-C は最初乱高下しましたがここ1年ほど安定してきました。現在0.92です。
TCは去年167と低めで気になっていましたが、今年は200となり一安心です。
体重は-9kgでBMI19なのでもう少し増やさなければいけなのでしょう。
ただし体調がいいので悩むところです。

尿酸値は糖尿病発症時4.4~今回7.8とまだ乱高下しています、
納先生のおっしゃるとおりストレスが関係しているのでしょうか。
その他腎臓・肝臓・膵臓・脂質すべてA評価でした。

糖質制限食は、最初なかなか効果が表れない場合でも、1年2年と続けるうちにだんだんといい方向に向かっていくようです。
焦らずに、今後もレストランに来て下さるお客様と一緒に頑張っていきます。】



こんにちは。
仙台のオスティナートさんから、糖質制限食でHbA1c改善、暁現象改善という嬉しいコメントをいただきました。

オスティナートさん、糖質制限食実践、2年1ヶ月のご報告ありがとうございます。
空腹時血糖値、HbA1c見事な改善ですね。
とても参考になります。

「その間、糖質制限に理解のある医師が見つからず、毎日の自己血糖値測定(4~6回/日)と年1回の人間ドックだけで今日まで来ました。」

血糖自己測定を毎日しておられたら、血糖値に関しては、特に問題はないと思います。

HbA1cに関しては、

空腹時血糖値:110mg/dl未満
食後1時間血糖値:180mg/dl未満
食後2時間血糖値:140mg/dl未満

を達成していたら、6.0%未満になりますので、日本糖尿病学会の評価基準では、良好を通り越して、優秀(基準値内)レベルとなります。

「最近では、私の経営する糖質制限食レストランのお客様にも、医師・看護師・栄養士などの医療関係者が増えてきました。 これからは糖質制限に理解のある医師のもとでHOMAやケトン体等も調べてもらおうと思っています。」

それは良かったです。

私の知り合いの仙台の医師も、糖質制限食レストラン・オスティナートに食事に行っておられると思います。


「始めなかなか改善しなかった暁現象が、7ヶ月前から急に改善し、96~106mg/DLの範囲で落ち着いてきました。」

これも素晴らしいです。

糖質制限食で1年半経過してから、暁現象が改善したとは興味深いです。
とても参考になります。

LDL-C/HDL-C 比も、0.92なら絶好調ですね。

「体重は-9kgでBMI19なのでもう少し増やさなければいけなのでしょう。
ただし体調がいいので悩むところです。」


しっかりお腹いっぱい満足いくまで糖質制限な食事を堪能して、糖質制限OKのお酒も飲んで、適正体重になると思います。

とりあえず、BMI20くらいが目安ですが、体調良好なのでこのまま様子みられていいと思います。

「尿酸値は糖尿病発症時4.4~今回7.8とまだ乱高下しています、納先生のおっしゃるとおりストレスが関係しているのでしょうか。」

尿酸値の上昇は、元鹿児島大学教授の納光弘先生(痛風の専門家でご自身が痛風)によれば、ストレスが一番とのことです。

私の経験では、相対的に低カロリーの時に尿酸値が上昇しやすいのでご注意ください。

例えば絶食療法(断食療法)では、尿酸値が著明に上昇します。(6mg→10mg/dlとかです。)

「糖質制限食は、最初なかなか効果が表れない場合でも、1年2年と続けるうちにだんだんといい方向に向かっていくようです。 焦らずに、今後もレストランに来て下さるお客様と一緒に頑張っていきます。」

そうですね、暁現象やLDL-C/HDL-C 比の改善には少し時間がかかりましたね。
この経過はおおいに参考になります。

今度仙台に行きましたら、
是非、
糖質制限食レストランオスティナート http://r-ostinato.com/
住所 980-0022 宮城県仙台市青葉区五橋二丁目7-8 朝日プラザ五橋Ⅲ 101号
TEL 予約専用 022-748-5068

を訪れたいと思いますので、
オスティナートさん、よろしくお願い申し上げます。


江部康二

テーマ:糖質制限食
ジャンル:ヘルス・ダイエット
早朝空腹時血糖値と暁現象
こんにちは。

スーパー糖質制限食でHbA1cは改善したけれど、早朝空腹時血糖値だけがなかなか下がらないとのコメントをよくいただきます。

例えば、

「寝る前午後11時の血糖値は100mg/dlと好調だったのに、その後何も食べずに寝て起きて、翌朝午前9時の血糖値は130mg/dlに上昇していた。」

といったことが糖尿人において時々見られます。

この眠前より翌朝の血糖値が上昇することを、糖尿人特有の「暁現象」と呼びます。

多くの場合、就寝後8~10時間で、血糖値が一番上昇します。

空腹時には、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生が、血糖の供給源となります。

グリコーゲン分解に関しては、糖尿人と正常人との間に差はないとされています。

一方、糖新生は、糖尿人においては、増加することが多いです。

正常人においては、血液中のインスリンが5μU/ml以上あれば、糖新生は急激に低下します。

しかし、2型糖尿病においては、正常人の2倍以上のインスリンが必要とされることが多いのです。

インスリン基礎分泌が不足してくると、夜間の肝の糖新生を制御できずに、早朝空腹時血糖値が高値となり、暁現象を生じるものと考えられます。

朝に血糖値が上昇するまでの時間と増加量には、個人差があります。

1型糖尿人のバーンスタイン医師は、充分量の持続型インスリン3単位を就寝前に注射しているにもかかわらず、起床時の血糖値が10~100mg/dlほど就寝時より高値となるそうです。

暁現象の機序は、完全に解明されているわけではありませんが、肝臓が早朝には、他の時間帯以上に、血液中に循環しているインスリンを不活化させるとういう説があります。そのため、肝臓の糖新生が高まります。

インスリンが、外部から注射したものであれ、内部でつくったものであれ同様です。

早朝空腹時ですから、インスリンを打っていない人では、基礎分泌のインスリンが循環している時間帯ですね。

正常人はこのとき、インスリンを増産して調整しますが、糖尿人はそれが不足するので暁現象が発生します。

暁現象の改善のために、

①スーパー糖質制限食で膵臓のβ細胞に休養を与える。
②筋トレで筋肉量を増やす。
③有酸素運動を継続して、筋肉細胞へのインスリンの効きを良くする。

内服薬を増やさずに①②③を根気よく続けるのもよい方法と思います。

また内服薬のDPP-4阻害剤(エクア、ジャヌビア、グラクティブ、ネシーナなど)は、内服継続により膵臓のインスリン分泌能力が改善したという報告が最近ありました。

インスリン分泌能力が改善したら、早朝空腹時血糖値も改善する可能性があります。

なおDPP-4阻害剤にはグルカゴン分泌抑制作用もあり、これが空腹時血糖値低下に繋がります

上記実践しても、早朝空腹時血糖値が改善しないときは、メトホルミン(ビグアナイド剤、メトグルコ、メルビンなど)内服で、肝臓の糖新生を抑制する選択肢もあります。

メトホルミンは米国糖尿病学会の勧告では、2型糖尿人において、第一選択剤と評価されています。

早朝空腹時血糖値が140mg/dlを超えると、いろいろリスクが出てきます。

日本糖尿病学会は、合併症予防のための目標値として

2013年6月1日から、早朝空腹時血糖値130mg/dl未満を推奨しています。

スーパー糖質セイゲニストとしては、目指すのは早朝空腹時血糖値110mg/dl未満の正常値ですね。



江部康二

テーマ:糖尿病
ジャンル:ヘルス・ダイエット